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特許7050184ルテニウムの半導体用処理液及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】ルテニウムの半導体用処理液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20220331BHJP
   C23F 1/40 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H01L21/308 F
C23F1/40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020565512
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2020026635
(87)【国際公開番号】W WO2021059666
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2019176727
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019193081
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019211875
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020045869
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伴光
(72)【発明者】
【氏名】吉川 由樹
(72)【発明者】
【氏名】下田 享史
(72)【発明者】
【氏名】根岸 貴幸
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/074601(WO,A1)
【文献】特開2008-042014(JP,A)
【文献】特開2002-161381(JP,A)
【文献】特開2014-062297(JP,A)
【文献】特表2011-503326(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150990(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00-4/04
G03F 7/00
G03F 7/06-7/07
G03F 7/12-7/14
G03F 7/26-7/42
H01L 21/027
H01L 21/28-21/30
H01L 21/304-21/3063
H01L 21/308
H01L 21/3205-21/3213
H01L 21/329
H01L 21/44-21/445
H01L 21/46
H01L 21/465-21/467
H01L 21/768
H01L 23/522
H01L 23/532
H01L 29/40-29/49
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水を含有し、合計質量に対して前記臭素含有化合物の添加量が臭素元素量として0.008質量%以上2.0質量%未満、前記酸化剤の添加量が0.1質量ppm以上10質量%以下であり、かつpHが8以上14以下である、ルテニウムの半導体用処理液。
【請求項2】
少なくとも臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物、および水を含有し、合計質量に対して前記臭素含有化合物の添加量が臭素元素量として0.008質量%以上2.0質量%未満、前記酸化剤の添加量が0.1質量ppm以上10質量%以下であり、かつpHが8以上14以下であり、前記臭素含有化合物が、次亜臭素酸イオンと、亜臭素酸、亜臭素酸イオン、臭素酸、臭素酸イオンおよび臭化物イオンの一種または複数種とを含むものであり、前記次亜臭素酸イオンの濃度が、臭素元素量として0.001mol/L以上0.20mol/L以下である、ルテニウムの半導体用処理液。
【請求項3】
半導体用処理液中に含まれる臭素元素1モル中の前記次亜臭素酸イオンの割合が0.5モルを超える、請求項2に記載の半導体用処理液。
【請求項4】
前記臭素含有化合物の添加量が臭素元素量として0.08質量%以上2.0質量%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のルテニウムの半導体用処理液。
【請求項5】
前記臭素含有化合物の添加量が臭素元素量として0.01質量%以上2質量%未満、前記酸化剤の添加量が0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のルテニウムの半導体用処理液。
【請求項6】
前記ルテニウムがルテニウム系金属またはルテニウム合金である、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【請求項7】
前記酸化剤が次亜塩素酸化合物またはオゾンである、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【請求項8】
前記臭素含有化合物が臭素塩、または臭化水素である、請求項1~のいずれか1項に
記載の半導体用処理液。
【請求項9】
前記臭素塩が臭化テトラアルキルアンモニウムである、請求項に記載の半導体用処理液。
【請求項10】
前記塩基化合物が水酸化テトラメチルアンモニウムである、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【請求項11】
前記pHが12以上14以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【請求項12】
前記酸化剤および前記塩基化合物を含有する溶液と、前記臭素含有化合物とを混合させる工程を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の半導体用処理液の製造方法。
【請求項13】
前記酸化剤と前記塩基化合物の水溶液に、前記臭素含有化合物を混合させる工程を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の半導体用処理液の製造方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の製造方法により半導体用処理液を製造した後、該半導体用処理液で、基板に堆積したルテニウム系金属膜および/またはルテニウム合金膜をエッチングする基板の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造工程において、ルテニウムを含む半導体ウエハのルテニウムのエッチング等を行うための処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子のデザインルールの微細化が進んでおり、配線抵抗が増大する傾向にある。配線抵抗が増大した結果、半導体素子の高速動作が阻害されることが顕著になっており、対策が必要となっている。そこで、配線材料としては、従来の配線材料よりも、エレクトロマイグレーション耐性や抵抗値の低減された配線材料が所望されている。
【0003】
従来の配線材料であるアルミニウム、銅と比較して、ルテニウムは、エレクトロマイグレーション耐性が高く、配線の抵抗値を低減可能という理由で、特に、半導体素子のデザインルールが10nm以下の配線材料として、注目されている。その他、配線材料だけでなく、ルテニウムは、配線材料に銅を使用した場合でも、エレクトロマイグレーションを防止することが可能なため、銅配線用のバリアメタルとして、ルテニウムを使用することも検討されている。
【0004】
ところで、半導体素子の配線形成工程において、ルテニウムを配線材料として選択した場合でも、従来の配線材料と同様に、ドライ又はウェットのエッチングによって配線が形成される。しかしながら、ルテニウムはエッチングガスによるドライでのエッチングやCMP研磨によるエッチング、除去が難しいため、より精密なエッチングが所望されており、具体的には、ウェットエッチングが注目されている。
【0005】
ルテニウムをウェットエッチングする場合、ルテニウムの溶解速度、すなわち、エッチング速度が重要である。エッチング速度が速ければ、短時間でルテニウムを溶解させることができるため、単位時間当たりのウエハ処理枚数を増やすことができる。
【0006】
ルテニウムをアルカリ性条件下でウェットエッチングする場合、ルテニウムは、例えばRuO やRuO 2-として処理液中に溶解する。RuO やRuO 2-は、処理液中でRuOへと変化し、その一部がガス化して気相へ放出される。RuOは強酸化性であるため人体に有害であるばかりでなく、容易に還元されてRuOパーティクルを生じる。一般的に、パーティクルは歩留まり低下を招くため半導体形成工程において非常に問題となる。このような背景から、RuOガスの発生を抑制する事は非常に重要となる。
【0007】
このような半導体用ウエハからルテニウムをエッチングするために用いられる処理液として、特許文献1には、次亜塩素酸イオン及び溶媒を含み、25℃でpHが7を超え12.0未満であるルテニウムを有するウエハの処理液が提案されている。該液は次亜塩素酸イオンを含み、半導体ウエハの端面部や裏面部に付着したルテニウムおよびタングステンを除去できることが示されている。
【0008】
特許文献2には、臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水が添加、混合されてなり、合計質量に対して上記臭素含有化合物の添加量が臭素元素量として2~25質量%、酸化剤の添加量が0.1~12質量%であり、かつpHが10以上12未満であることを特徴とするルテニウム系金属のエッチング組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2019/142788号
【文献】国際公開第2011/074601号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ルテニウムを有する半導体ウエハからルテニウムをエッチングするには、ルテニウムのエッチング速度とRuOガス抑制を両立させることが重要である。しかしながら、本発明者の検討によれば、先行技術文献に記載された従来の処理液では、以下の点で改善の余地があることが分かった。
【0011】
例えば、特許文献1には、ルテニウムを有するウエハの処理液として、pHが7を超え12.0未満である処理液が記載されている。特許文献1に記載の処理液では、ルテニウムのエッチング速度は十分であるが、RuOガスについては言及されておらず、実際に特許文献1に記載の方法ではRuOガス発生を抑制する事は出来なかった。すなわち、特許文献1に記載のルテニウムを有するウエハの処理液では、ルテニウムのエッチング速度とRuOガス制御を両立することは難しかった。
【0012】
特許文献2に記載のルテニウム系金属のエッチング組成物は、pH10以上12未満であることを特徴としているが、このpH域においてはルテニウムのエッチングに伴いRuOガスが生じるため、改善の余地があった。また、特許文献2ではRuOガスの抑制については言及されておらず、実際に特許文献2に記載の方法ではRuOガス発生を抑制する事は出来なかった。また、該エッチング組成物は薬液安定性が悪く、ルテニウムのエッチング速度が時間の経過とともに大きく変動するという問題があった。さらに、該処理液の調製法として、臭素含有化合物を酸性条件にて酸化剤により酸化することで得られる酸化物に、塩基化合物を混合してpHを塩基性に適切に調整する方法が示されているが、該酸化物と該塩基化合物を混合して臭素ガスの発生を数時間待つことや、pHを酸性から塩基性にするために高濃度の該塩基化合物を多量に加える必要があるなど、処理液のハンドリングにおいて改善の余地があった。したがって本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体ウエハの表面、端面部および裏面部に付着したルテニウムを十分な速度でエッチングでき、その速度の安定性に優れ、かつ、RuOガスの発生を抑制できる処理液および該処理液を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。そして、次亜臭素酸イオンを含有する処理液でルテニウムを処理することで、高速にルテニウムをエッチングできることを見出した。さらに、アルカリ性の処理液に添加された臭素含有化合物が処理液中の酸化剤により酸化され、臭素酸化物となることでルテニウムをより高速にエッチングできることを見出した。さらに、適切なpH範囲、臭素含有化合物濃度範囲及び酸化剤濃度範囲とすることで、十分なエッチング速度で安定させ、かつ、RuOガス発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
【0015】
項1 次亜臭素酸イオンを含有する、ルテニウムの半導体用処理液。
【0016】
項2 前記次亜臭素酸イオンが0.001mol/L以上0.20mol/L以下である、項1に記載の半導体用処理液。
【0017】
項3 前記次亜臭素酸イオンが0.01mol/L以上0.10mol/L以下である、項1または2に記載の半導体用処理液。
【0018】
項4 前記半導体用処理液にさらに酸化剤が含まれ、該酸化剤の酸化還元電位が、次亜臭素酸イオン/Br系の酸化還元電位を超える、項1~3のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0019】
項5 前記半導体用処理液に含まれる酸化剤が次亜塩素酸イオンまたはオゾンである、項4に記載の半導体用処理液。
【0020】
項6 さらにテトラアルキルアンモニウムイオンを含有する、項1~5のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0021】
項7 前記テトラアルキルアンモニウムイオンがテトラメチルアンモニウムイオンである、項6に記載の半導体用処理液。
【0022】
項8 半導体用処理液中に含まれる臭素元素1モル中の前記次亜臭素酸イオンの割合が0.5モルを超える、項1~7のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0023】
項9 前記処理液のpHが8以上14以下である、項1~8のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0024】
項10 前記処理液のpHが12以上13未満である、項1~9のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0025】
項11 少なくとも臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水を含有し、合計質量に対して前記臭素含有化合物の添加量が臭素元素量として0.008質量%以上10質量%未満、前記酸化剤の添加量が0.1質量ppm以上10質量%以下であり、かつpHが8以上14以下である、ルテニウムの半導体用処理液。
【0026】
項12 前記臭素含有化合物の添加量が臭素元素量として0.08質量%以上2.0質量%未満である、項11に記載のルテニウムの半導体用処理液。
【0027】
項13 前記臭素含有化合物の添加量が臭素元素量として0.01質量%以上2質量%未満、前記酸化剤の添加量が0.1質量%以上10質量%以下である、項11または12に記載のルテニウムの半導体用処理液。
【0028】
項14 前記ルテニウムがルテニウム系金属またはルテニウム合金である、項11~13のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0029】
項15 前記酸化剤が次亜塩素酸化合物またはオゾンである、項11~14のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0030】
項16 前記臭素含有化合物が臭素塩、または臭化水素である、項11~15のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0031】
項17 前記臭素塩が臭化テトラアルキルアンモニウムである、項16に記載の半導体用処理液。
【0032】
項18 前記臭化テトラアルキルアンモニウムが臭化テトラメチルアンモニウムである、項17に記載の半導体用処理液。
【0033】
項19 前記塩基化合物が水酸化テトラメチルアンモニウムである、項11~18のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0034】
項20 前記pHが12以上14以下である、項11~19のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0035】
項21 前記pHが12以上13未満である、項11~20のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0036】
項22 前記ルテニウム系金属がルテニウムを70原子%以上含有する、項14に記載の半導体用処理液。
【0037】
項23 前記ルテニウム系金属が金属ルテニウムである、項14に記載の半導体用処理液。
【0038】
項24 前記ルテニウム合金がルテニウムを70原子%以上99.99原子%以下含有する、項14に記載の半導体用処理液。
【0039】
項25 半導体用処理液中に含まれる臭素元素1モル中の前記次亜臭素酸イオンの割合が0.5モルを超える、項11~24のいずれか1項に記載の半導体用処理液。
【0040】
項26 前記酸化剤および前記塩基化合物を含有する溶液と、前記臭素含有化合物とを混合させる工程を有する、項11~25のいずれか1項に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0041】
項27 前記酸化剤と前記塩基化合物の水溶液に、前記臭素含有化合物を混合させる工程を有する、項11~25のいずれか1項に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0042】
項28 項26または27に記載の製造方法により半導体用処理液を製造した後、該半導体用処理液で、基板に堆積したルテニウム系金属膜および/またはルテニウム合金膜をエッチングする基板の処理方法。
【0043】
項29 塩基化合物を含有する溶液と、次亜臭素酸、次亜臭素酸塩、臭素水、または臭素ガスとを混合させる工程を有する、ルテニウムの半導体用処理液の製造方法。
【0044】
項30 次亜塩素酸化合物および塩基化合物を含有する溶液と、臭素含有化合物とを混合させる工程を有する、ルテニウムの半導体用処理液の製造方法。
【0045】
項31 次亜塩素酸化合物および塩基化合物を含有する溶液と、臭素含有化合物とを混合させる工程が、前記次亜塩素酸化合物および前記塩基化合物を含有する溶液に、前記臭素含有化合物を添加して混合する工程である、項30に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0046】
項32 前記溶液が水溶液である、項29~31のいずれか1項に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0047】
項33 前記ルテニウムがルテニウム系金属またはルテニウム合金である、項29~32のいずれか1項に記載の製造方法。
【0048】
項34 前記塩基化合物が水酸化テトラメチルアンモニウムである、項29~33のいずれか1項に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0049】
項35 前記臭素含有化合物が臭素塩、または臭化水素である、項30~34のいずれか1項に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0050】
項36 前記臭素塩が臭化オニウムである、項35に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0051】
項37 前記臭化オニウムが臭化第四級オニウムまたは臭化第三級オニウムである、項36に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0052】
項38 前記臭化第四級オニウムが臭化テトラアルキルアンモニウムである、項37に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0053】
項39 水酸化テトラアルキルアンモニウムと臭化物イオンから、前記臭化テトラアルキルアンモニウムを製造する、項38に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0054】
項40 水酸化テトラアルキルアンモニウムと臭化水素から、前記臭化テトラアルキルアンモニウムを製造する、項38または39に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0055】
項41 前記臭素塩が臭化アンモニウム、臭化ナトリウム、または臭化カリウムである、項35に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0056】
項42 前記次亜塩素酸化合物を含有する溶液が次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液である、項30~41のいずれか1項に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0057】
項43 前記次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液を製造する工程として、水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液を準備する準備工程と、前記水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液と、塩素を接触させる反応工程とを含み、反応工程における気相部の二酸化炭素濃度が100体積ppm以下であり、反応工程における液相部のpHが、10.5以上である、項42に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0058】
項44 前記準備工程で準備する水酸化テトラアルキルアンモニウムの、アルキル基の炭素数が1~10である、項43に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0059】
項45 前記反応工程における反応温度が-35℃以上25℃以下である、項43または44に記載の半導体用処理液の製造方法。
【0060】
項46 前記反応工程における、水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液中の二酸化炭素濃度が0.001ppm以上500ppm以下である、項43~45のいずれか1項に記載の半導体用処理液の製造方法。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、半導体形成工程において、ルテニウムを十分速い速度で安定してウェットエッチングすることができ、さらに、RuOガス発生を抑制することができる。これにより、単位時間当たりのウエハ処理効率が向上するだけでなく、RuOパーティクルによる歩留まり低下を抑制し、かつ、人体に安全な処理が可能になり、製造コストと安全性の両立が達成される。
【0062】
さらに、本発明に記載の方法によれば、アルカリ性の処理液中で臭素含有組成物を酸化剤により直接酸化し、臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸イオン、亜臭素酸、亜臭素酸イオン、臭素酸、臭素酸イオン、過臭素酸、過臭素酸イオンを速やかに作り出すことができる。このように製造した処理液には次亜臭素酸イオンが含まれるため、臭素ガスの発生を長時間待つことなく、直ちにルテニウムのエッチングを行うことが可能となり、半導体製造に要する時間を短縮できる。
【0063】
さらに、処理液のpHを酸性からアルカリ性に調整する必要がないため、処理液に添加する塩基化合物の量を大幅に減らすことができ、処理液のハンドリングが容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0064】
(半導体用処理液)
本発明の処理液は、次亜臭素酸イオン(BrO)を含むことを特徴とする処理液である。次亜臭素酸イオンは強酸化性を有する酸化剤であり、次亜臭素酸イオンを含む本発明の処理液は、アルカリ性条件下でルテニウムを高速にエッチングすることができる。さらに、pH、酸化剤の種類及び濃度を適切に選択することにより、RuOガス発生を抑制しながら、安定したエッチング速度でルテニウムをエッチングできる処理液である。そのため、本発明の処理液は、半導体製造工程におけるエッチング工程、残渣除去工程、洗浄工程、CMP工程等で好適に用いることができる処理液である。なお、本明細書において、ルテニウムの半導体とは、ルテニウムを含む半導体のことを意味する。
【0065】
本発明の処理液を用いれば、RuOガスの発生を抑制し、かつ、半導体ウエハの表面、端面部および裏面部に付着したルテニウムを十分なエッチング速度で除去できる。本発明での十分なエッチング速度とは、10Å/min以上のエッチング速度であることをいう。ルテニウムのエッチング速度が10Å/min以上あれば、エッチング工程、残渣除去工程、洗浄工程、CMP工程等で好適に用いることができる。また、ルテニウムをエッチングした際に発生するRuOガス量は、処理条件(例えば、溶解したルテニウムの量、用いた処理液の体積、処理温度、容器やチャンバーの体積や材質、等)に依存する。そのため、RuOガス発生量を比較する際は、これらの条件を考慮して行うことが重要となるが、簡易的には、ルテニウムを含有するウエハの単位面積当たりの発生量として評価できる。エッチングにより発生したRuOガスを適当な吸収液(例えば、NaOH水溶液などのアルカリ性溶液)にトラップし、トラップ液中のルテニウム量を定量した後、用いたウエハの面積で割ることで、ルテニウムを含有するウエハの単位面積当たりのRuO発生量を求めることができる。したがって、RuOガス抑制効果を確認するには、単位面積当たりのRuOガス発生量を比較すればよい。単位面積当たりのRuO発生量が低い処理液は、RuOガスの発生を抑制しており、RuOパーティクルの生成を抑制することができるため、ルテニウムのエッチングに好適に用いることができる。
【0066】
本発明における処理液は、ルテニウムのエッチングは可能であるが、銅、コバルト、チタン、白金、窒化チタン、窒化タンタル等の金属をエッチングしない、あるいはルテニウム系金属に比べてエッチング速度が極めて小さい。そのため半導体製造工程等において、これらの金属を含む基板材料に対してダメージを与えずにルテニウム系金属を選択的にエッチングすることも可能である。
【0067】
本発明において、ルテニウムのエッチング速度が安定しているとは、次亜臭素酸イオンを含む処理液によるルテニウムのエッチング速度が、経時的に変化しないことを意味する。具体的には、同じ処理液を用いてルテニウムを有する複数枚のウエハ(ウエハの枚数をnとする)をエッチングした際、1枚目のウエハにおけるルテニウムのエッチング速度と、n枚目のウエハにおけるルテニウムのエッチング速度が実質的に同じであることを意味する。ここで、実質的に同じであるとは、1枚目のウエハにおけるルテニウムのエッチング速度に対して、n枚目のウエハにおけるルテニウムのエッチング速度の変動幅、すなわちエッチング速度の増減が、±20%以内であることを意味する。また、n枚目のウエハにおけるルテニウムのエッチング速度が、1枚目のウエハにおけるルテニウムのエッチング速度に対して、±20%以内の増減である時間を、エッチング速度の安定時間とする。エッチング速度の安定時間の好適な値は、本発明の処理液が使用される条件や製造プロセスにより異なるが、例えば、エッチング速度の安定時間が1時間以上である処理液は、半導体製造プロセスに好適に用いることができる。処理液のハンドリングに時間的余裕をもてることや、プロセスタイムを柔軟に設定できることを考慮すると、エッチング速度の安定時間が10時間以上である処理液であることがより好ましい。
【0068】
ルテニウムのエッチング速度が経時的に変化しない処理液、または、エッチング速度の安定時間が長い処理液は、半導体製造工程において、該処理液を用いたルテニウムのエッチングを安定して行うことが可能になるだけでなく、処理液の再利用(リユース)も可能となるため、生産性、コストの面においても優れた処理液となる。
【0069】
本発明の処理液に含まれる次亜臭素酸イオンは、処理液中で発生させてもよいし、次亜臭素酸塩として処理液に添加してもよい。ここで言う次亜臭素酸塩とは、次亜臭素酸イオンを含有する塩、または該塩を含む溶液のことである。次亜臭素酸イオンを処理液中で発生させるには、例えば、臭素ガスを処理液に吹き込めばよい。この場合、次亜臭素酸イオンを効率よく発生させる観点から、処理液は50℃以下であることが好ましい。処理液が50℃以下であれば効率よく次亜臭素酸イオンを発生できるだけでなく、発生した次亜臭素酸イオンを安定にルテニウムのエッチングに用いることができる。さらに、臭素をより多く処理液に溶解させるためには、処理液の温度は30℃以下であることがより好ましく、25℃以下であることが最も好ましい。処理液の温度の下限は特に制限されないが、処理液が凍結しないことが好ましい。したがって、処理液は-35℃以上であることが好ましく、-15℃以上であることがより好ましく、0℃以上であることが最も好ましい。該臭素ガスを吹き込む処理液のpHは特に制限されないが、処理液のpHがアルカリ性であれば、次亜臭素酸イオンの生成後、すぐにルテニウムのエッチングに供することができる。
【0070】
さらに、処理液に臭素ガスを吹き込むことで次亜臭素酸イオンを発生させる場合、処理液に臭化物イオン(Br)が含まれていると、臭素ガス(Br)の溶解性が向上する。処理液に溶解したBrがBrやBr と反応し、Br やBr のような錯イオンを形成し、処理液中で安定化するためである。Br、Br、Br 、Br 等を多く含む処理液は、次亜臭素酸イオンをより多く生成できるため、本発明の処理液として好適に用いることができる。
【0071】
また、酸化剤により臭素含有化合物を酸化することで、処理液中で次亜臭素酸イオンを作り出すこともできる。
【0072】
次亜臭素酸イオンを化合物として処理液に添加するには、次亜臭素酸、臭素水、および/または次亜臭素酸塩を加えればよい。次亜臭素酸塩としては、次亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸テトラアルキルアンモニウムが好適であり、半導体製造において問題となる金属イオンを含まないという点で、次亜臭素酸又は次亜臭素酸テトラアルキルアンモニウムがさらに好適である。
【0073】
該次亜臭素酸テトラアルキルアンモニウムは、水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液に臭素ガスを通じることで容易に得られる。また、次亜臭素酸と水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液を混合することでも得られる。さらに、次亜臭素酸ナトリウムなどの次亜臭素酸塩に含まれるカチオンを、イオン交換樹脂を用いてテトラアルキルアンモニウムイオンに置換することでも次亜臭素酸テトラアルキルアンモニウムを得ることができる。
【0074】
本発明の処理液における該次亜臭素酸イオンの濃度は、本発明の目的を逸脱しない限り特に制限されることはないが、好ましくは、次亜臭素酸イオンに含まれる臭素元素量として0.001mol/L以上0.20mol/L以下である。0.001mol/L未満ではルテニウムをエッチングする速度が小さく、実用性が低い。一方、0.20mol/Lを超える場合は、次亜臭素酸イオンの分解が生じやすくなるため、ルテニウムのエッチング速度が安定しにくくなる。ルテニウムのエッチングを十分な速度で安定して行うためには、該次亜臭素酸イオンの濃度が次亜臭素酸イオンに含まれる臭素元素量として0.001mol/L以上0.20mol/L以下であるであることが好ましく、0.005mol/L以上0.20mol/L以下であることがさらに好ましく、0.01mol/L以上0.10mol/L以下であることが最も好ましい。
【0075】
ルテニウムのエッチング速度の低下を緩やかにし、エッチング速度を安定させるためには、処理液に含まれる臭素元素1モル中の次亜臭素酸イオンの割合が0.5モルを超えることが好ましい。上記の通り、次亜臭素酸イオンはルテニウムの酸化反応や分解反応により容易にBrへと変化する。Brはルテニウムをエッチングしないため、処理液中のBrを速やかに次亜臭素酸イオンへと酸化して、高ルテニウムエッチング能を有する化学種(次亜臭素酸イオン;BrO)の濃度を高く保つことが、安定したルテニウムエッチングのために重要である。本発明の処理液に含まれる臭素元素1モル中の次亜臭素酸イオンの割合が0.5モルを超えている場合、すなわち、処理液中の全臭素元素のうち半数より多くの臭素元素がBrOとして存在している場合、ルテニウムエッチング能を有する化学種の濃度は十分高いとみなすことができ、ルテニウムのエッチング速度が安定化する。
【0076】
処理液中の次亜臭素酸イオンの濃度は、広く公知の方法を用いて確認することができる。例えば、紫外可視吸光光度法を用いれば、次亜臭素酸イオンに起因する吸収が容易に確認され、その吸収ピーク(処理液のpHや次亜臭素酸イオン濃度等に依るが、概ね330nm付近)の強度から次亜臭素酸イオン濃度を求めることができる。さらに、ヨウ素滴定によっても次亜臭素酸イオン濃度を求めることができる。他にも処理液の酸化還元電位(ORP)やpHから次亜臭素酸イオン濃度を求めることができる。非接触でありかつ連続測定が可能であるという観点から、紫外可視吸光光度法による測定が最も好ましい。なお、紫外可視吸光光度法により次亜臭素酸イオン濃度を測定する際、他の化学種による吸収がある場合は、スペクトル分割やベースライン補正などのデータ処理や、リファレンスの適切な選択などを行うことで、次亜臭素酸イオン濃度を十分な精度で求めることができる。
【0077】
次亜臭素酸(HBrO)と次亜臭素酸イオン(BrO)の酸解離定数(pK)は8.6であるため、pHが低い場合等、処理液のpHによってHBrOとBrOが共存する場合がある。処理液にHBrOとBrOが含まれる場合は、HBrOとBrOの合計濃度を上記次亜臭素酸イオンの濃度として扱えばよい。
【0078】
次亜臭素酸イオンがルテニウムを溶解するメカニズムの詳細は必ずしも明らかでないが、処理液中で次亜臭素酸イオン又は次亜臭素酸イオンから生じた次亜臭素酸がルテニウムを酸化し、RuO、RuO またはRuO 2-とすることで処理液中に溶解していると推測している。ルテニウムをRuO またはRuO 2-として溶解することで、RuOガスの発生量を低減し、RuOパーティクルの発生を抑制することが可能となる。ルテニウムをRuO またはRuO 2-として溶解するためには、処理液のpHがアルカリ性であることが好ましく、処理液のpHが8以上14以下であることがより好ましく、pHが12以上14以下であることがさらに好ましく、pHが12以上13未満であることが最も好ましい。処理液のpHが12以上13未満であれば、ルテニウムはRuO またはRuO 2-として処理液中に溶解するため、RuOガスの発生量を大幅に低減し、RuOパーティクルの発生を抑制することができる。一方、処理液のpHが8未満である場合、ルテニウムはRuOやRuOに酸化されやすくなるため、RuOパーティクル量が増加するとともに、RuOガス発生量が増大する傾向にある。また、pHが14を超えるとルテニウムの溶解が生じにくくなり、十分なルテニウムエッチング速度を得ることが難しくなるため、半導体製造における生産効率が低下する。
【0079】
処理液のpHを調整するために、酸またはアルカリを処理液に添加することができる。該酸としては、無機酸、有機酸のいずれであってもよく、一例を挙げれば、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、酢酸、硫酸、ペルオキソ二硫酸、ギ酸、酢酸などのカルボン酸等であるが、この他にも半導体用の処理液に用いられる広く公知の酸を何ら制限なく用いることができる。該アルカリとしては、半導体製造において問題となる金属イオンを含まないことから、有機アルカリを用いることが好ましい。有機アルカリの一例を挙げれば、テトラアルキルアンモニウムイオンと水酸化物イオンからなる、水酸化テトラアルキルアンモニウムである。該水酸化テトラアルキルアンモニウムの例を挙げれば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。なかでも、単位重量当たりの水酸化物イオン数が多く、高純度品が容易に入手可能であることから、該有機アルカリは水酸化テトラアルキルアンモニウムであることが好ましく、水酸化テトラメチルアンモニウムであることがより好ましい。
【0080】
処理液中に含まれる上記テトラアルキルアンモニウムイオンは、1種類であってもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。
【0081】
本発明の処理液は、酸化剤を含有することが好ましい。酸化剤が本発明の処理液に含まれることで、次亜臭素酸イオンが分解して生じた臭化物イオン(Br)を再び次亜臭素酸イオンに酸化する役割を果たす。
【0082】
ルテニウムを酸化する際、次亜臭素酸イオンはBrへと還元される。また、次亜臭素酸イオンは処理液中で容易に自然分解し、一部がBrへと変化する。さらに、次亜臭素酸イオンは紫外線、可視光線により分解が促進され、一部がBrへと変化する。さらに、次亜臭素酸イオンは加熱や酸との接触、金属との接触によっても分解が進み、一部がBrへと変化する。次亜臭素酸イオンの還元や分解により生じたBrはルテニウムを溶解しないため、次亜臭素酸イオンの還元または分解が進むとルテニウムのエッチング速度が低下する。処理液に適切な酸化剤が含まれることで、還元または分解により生じたBrを次亜臭素酸イオンに酸化することができ、ルテニウムのエッチング速度の低下を緩やかにすることが可能となる。すなわち、次亜臭素酸イオンと適切な酸化剤が処理液に含まれることで、エッチング速度の安定時間が長くなる。
【0083】
処理液中に含まれてもよい酸化剤は、酸化剤/該酸化剤が還元して生じる化学種間の酸化還元電位が、次亜臭素酸イオン/Br系の酸化還元電位を超えることが好ましい。このような酸化剤を用いれば、Brを次亜臭素酸イオンに酸化することができる。処理液中に含まれてもよい酸化剤/該酸化剤が還元して生じる化学種間の酸化還元電位は、酸化剤及び該酸化剤が還元して生じる化学種の濃度、溶液の温度およびpH等により変化するが、これらの条件に依らず、酸化剤/該酸化剤が還元して生じる化学種間の酸化還元電位が、次亜臭素酸イオン/Br系の酸化還元電位を超えていればよい。
【0084】
一方、処理液中に含まれてもよい酸化剤の、酸化剤/該酸化剤が還元して生じる化学種間の酸化還元電位の上限は、本発明の目的を逸脱しない限り特に制限されることはない。しかしながら、該酸化還元電位がRuO /RuO系の酸化還元電位(1.0V vs. SHE)より高い場合は、処理液に溶解したRuO が酸化剤によりRuOへと酸化され、RuOガス発生が増える可能性がある。このような場合は処理液に加える酸化剤の量や、酸化剤を添加するタイミングを適宜調整することで、RuO からRuOへの酸化を抑制し、RuOガス発生量を制御することが可能である。
【0085】
本発明の処理液に含まれてもよい酸化剤は、半導体製造において問題となる金属元素を含まないことから、次亜塩素酸イオンまたはオゾンの利用が好ましい。中でも、処理液への溶解度が高く、溶液内で安定に存在し、濃度調整しやすいという点で次亜塩素酸イオンがより好適である。
【0086】
次亜塩素酸イオン及びオゾンは、アルカリ性の処理液中(pHが8以上14以下)でBrを次亜臭素酸イオンに再酸化する能力を有する。これは、次亜塩素酸イオン/Cl系の酸化還元電位が0.89V、オゾン/酸素系の酸化還元電位が1.24Vであるのに対し、次亜臭素酸イオン/Br系の酸化還元電位が0.76Vであることからもわかる。なお、上記酸化還元電位はpH14(25℃)における、標準水素電極に対する値である。したがって、次亜臭素酸イオンと次亜塩素酸イオンまたはオゾンを含む本発明の処理液は、Brを次亜臭素酸イオンに酸化することで処理液中の次亜臭素酸イオンの濃度を高濃度に保つことができるため、ルテニウムのエッチング速度を安定させることが可能である。
【0087】
酸化剤として次亜塩素酸イオンを用いた例を表8に示す。いずれのpHにおいても酸化還元電位は、次亜塩素酸イオン/Cl系の方が、次亜臭素酸イオン/Br系よりも高い事が分かる。このように次亜臭素酸イオンと次亜塩素酸イオンを共に含む本発明の処理液は、ルテニウムのエッチング速度の安定時間が長くなるため、特に好適に利用できる。一方、過酸化水素のようにアルカリ性で酸化力の弱い酸化剤を用いた場合には、Brを次亜塩素酸イオンへと効率よく酸化することができないため、ルテニウムのエッチング速度は低い。
【0088】
本発明の処理液における次亜塩素酸イオンの濃度は、本発明の趣旨を逸脱しない限り制限されないが、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。次亜塩素酸イオンの濃度が0.1質量%より小さいとBrを効率よく酸化することができず、ルテニウムのエッチングレートが低下する。一方、次亜塩素酸イオンの添加量が10質量%より大きいと、次亜塩素酸イオンの安定性が低下するので適当でない。RuOガス抑制とルテニウムのエッチング速度を両立させる観点から、酸化剤の濃度は、0.3質量%以上7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることが最も好ましい。
【0089】
一方で、次亜臭素酸イオンに対する次亜塩素酸イオンの割合が高いと、次亜塩素酸イオンと次亜臭素酸イオンとの反応により臭素酸イオンになる反応が進行するため、次亜臭素酸イオン濃度が低下する。
【0090】
本発明の処理液におけるオゾンの濃度は、本発明の趣旨を逸脱しない限り制限されないが、0.1質量ppm以上1000質量ppm(0.1質量%)以下であることが好ましい。0.1質量ppm未満では、Brを次亜臭素酸イオンに酸化する速度が遅く、ルテニウムのエッチング速度に影響しない。また、オゾンを処理液中に安定に溶解させるという観点から、オゾンの濃度は1質量ppm以上500質量ppm以下がより好ましい。さらに、オゾンの濃度が5質量ppm以上200質量ppm以下であれば、Brを効率よく次亜臭素酸イオンに酸化させることができるため特に好ましい。また、オゾンの発生方法、処理液への溶解方法は広く公知の方法を何ら問題なく用いることができ、例えば、酸素を含む気体に放電することでオゾンを生成し、該オゾンを含む気体を処理液と接触させることで、オゾンの一部又は全部が処理液に溶解し、オゾンを含む処理液とすることができる。オゾンと処理液の接触は、連続的に行ってもよく、間欠的に行ってもよい。オゾンと処理液の接触を、ルテニウムのエッチングを始める前に行うことで、BrO濃度低下の少ない、エッチング速度の安定した処理液とすることができる。一方、ルテニウムをエッチングした処理液、すなわち、RuO/RuO /RuO 2-等を含む処理液とオゾンを接触させる場合は、オゾンを少量ずつ、間欠的に処理液と接触させることで、RuOガス発生増大を防ぐことができる。
【0091】
上記次亜塩素酸イオンの生成方法は特に制限されることはなく、どのような方法で生成させた次亜塩素酸イオンであっても、本発明の処理液に好適に使用できる。次亜塩素酸イオンの発生方法としては、例えば、次亜塩素酸塩の添加、塩素ガスの吹き込みなどを好適に用いることができる。なかでも、次亜塩素酸塩を処理液に添加する方法は、次亜塩素酸イオンの濃度制御がしやすく、また、該次亜塩素酸塩の取り扱いも容易であることからさらに好適である。このような次亜塩素酸塩を例示すれば、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸であり、なかでも、半導体製造において問題となる金属を含まないという観点から、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムまたは次亜塩素酸が特に好適であり、高濃度でも安定に存在できることから次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムが最も好適である。
【0092】
上記次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムとしては、アルキル基1つ当たりの炭素数が1~20であるテトラアルキルアンモニウムイオンを含む次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムが好適である。具体的には、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラエチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラプロピルアンモニウム、次亜塩素酸テトラブチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラペンチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラヘキシルアンモニウムであり、単位重量当たりの次亜塩素酸イオンが多いという観点から、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラエチルアンモニウムがさらに好適である。次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムは、高純度品を容易に入手できるため、最も好適である。
【0093】
上記次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムの製造方法は特に制限されず、広く公知の方法により製造したものを用いることができる。例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムに塩素を吹き込む方法や、次亜塩素酸と水酸化テトラメチルアンモニウムを混合する方法、イオン交換樹脂を用いて次亜塩素酸塩溶液中のカチオンをテトラメチルアンモニウムに置換する方法、次亜塩素酸塩を含む溶液の蒸留物と水酸化テトラメチルアンモニウムを混合する方法などにより製造された、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムを好適に用いることができる。
【0094】
本発明の処理液に次亜塩素酸イオンまたはオゾンと、Brが共に含まれる場合、次亜塩素酸イオンまたはオゾンにより継続的にBrがBrOに酸化されるかどうかは、処理液に含まれる次亜塩素酸イオンとBrの量比、またはオゾンとBrの量比による。処理液中に存在する次亜塩素酸イオンまたはオゾンのモル濃度よりもBrのモル濃度が高い場合、Brの全量をBrOに酸化することはできない。したがって、本発明の処理液における次亜塩素酸イオンまたはオゾンのモル濃度は、Brのモル濃度よりも高いほうが好ましい。オゾンのような気体状の酸化剤を処理液に通気してBrをBrOに酸化する場合は、通気する気体状の酸化剤の総モル数が、処理液に含まれるBrのモル数より多いことが望ましい。
【0095】
処理液中で次亜臭素酸イオンを作り出す方法として、酸化剤により臭素含有化合物を酸化する方法がある。処理液に含まれる臭素含有化合物と酸化剤の量比は、該臭素含有化合物と該酸化剤が反応して次亜臭素酸イオンが生じる際の化学量論比と反応速度、及び、処理液に含まれるBrと酸化剤が反応して次亜臭素酸イオンが生じる際の化学量論比と反応速度を考慮して決定することが好ましいが、実際には、これらの反応には複数の要因が複雑に影響しあっているため、臭素含有化合物と酸化剤の適切な量比を求めることは困難である。しかしながら、該酸化剤濃度を該酸化剤の化学当量(モル当量)で除した値に対する、該臭素含有化合物濃度を該臭素含有化合物の化学当量(モル当量)で除した値の比が、0.001~100の範囲であれば、該酸化剤により該臭素含有化合物からBrOを効率よく生成できるだけでなく、BrOの還元反応または分解反応により生じたBrを再度BrOに酸化することができるため、ルテニウムのエッチング速度が安定化する。
【0096】
例えば、上記臭素含有化合物が臭化テトラメチルアンモニウムであり、上記酸化剤が次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムである場合、これらの化学種間の反応における臭素含有化合物の化学当量(モル当量)と酸化剤の化学当量(モル当量)は等しいため、該酸化剤の濃度に対する該臭素含有化合物のモル濃度の比が0.001~100の範囲であればよい。
【0097】
処理液に含まれる次亜臭素酸イオンと次亜塩素酸イオンの量比は、次亜臭素酸イオンの減少速度、より正確には次亜臭素酸イオンの還元反応及び/または分解反応によりBrが生成される速度と、次亜塩素酸イオンによるBrからBrOへの酸化反応の速度とを考慮して決めるのが好ましいが、実際には、これらの反応には複数の要因が複雑に影響しあっているため、次亜臭素酸イオンと次亜塩素酸イオンの適切な量比を求めることは困難である。しかしながら、次亜塩素酸イオンのモル濃度に対する次亜臭素酸イオンのモル濃度の比(次亜臭素酸イオンのモル濃度/次亜塩素酸イオンのモル濃度)が、0.001~100の範囲であれば、BrOの還元反応または分解反応により生じたBrを次亜塩素酸イオンにより再度BrOに酸化することができ、ルテニウムのエッチング速度が安定化する。
【0098】
本発明におけるルテニウムの半導体用処理液のpHは8以上14以下であることが好ましい。該処理液のpHが8以上14以下であれば、ルテニウムを効率よくエッチングでき、ルテニウムのエッチング速度は安定し、さらに、RuOガスの発生量低減が期待できる。ルテニウムのエッチング速度はpHが低いほど速いが、pHが低くなるほどRuOガス発生量が増大する。したがって、ルテニウムを含有する半導体ウエハを処理する際には、エッチング速度とRuOガス抑制を両立できるpHを選択することが極めて重要である。この観点から、本発明におけるルテニウムの半導体用処理液のpHは12以上14以下にすることがより好ましく、12以上13未満であることがさらに好ましい。処理液のpHを12以上13未満とすることで、ルテニウムのエッチングを十分な速度で行うことができ、さらに、RuOガス発生を抑制することが可能となる。処理液のpHが8未満である場合、RuOパーティクルが生じやすい傾向にある。
【0099】
本発明の処理液が適用される半導体ウエハに含まれるルテニウムは、いかなる方法により形成されていてもよい。ルテニウムの成膜には、半導体製造工程で広く公知の方法、例えば、CVD、ALD、PVD、スパッタ、めっき等を利用できる。本発明においてルテニウムとは、ルテニウム系金属またはルテニウム合金のことである。
【0100】
本発明において「ルテニウム系金属」とは、金属ルテニウムのほか、ルテニウムを70原子%以上含有するルテニウム金属、ルテニウムの酸化物(RuO)、窒化物(RuN)、酸窒化物(RuNO)等を指す。ここでルテニウムの酸化物は、二酸化ルテニウム、三酸化二ルテニウム(三水和物)のことである。また、本発明において「ルテニウム合金」とは、ルテニウムを70原子%以上99.99原子%以下含有し、かつ不可避的に含有される濃度より高い濃度のルテニウム以外の金属を含む合金を指す。本発明において、ルテニウム系金属とルテニウム合金を特に区別する必要のないときは、これらをルテニウムと記載する。
【0101】
ルテニウム合金は、ルテニウムの他にどのような金属を含んでいてもよいが、ルテニウム合金に含まれる金属の一例を挙げれば、タンタル、シリコン、銅、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム、バナジウム、コバルト、ニッケル、マンガン、金、ロジウム、パラジウム、チタン、タングステン、モリブデン、白金、イリジウムなどが挙げられ、これらの酸化物、窒化物、シリサイドを含んでいてもよい。
【0102】
これらのルテニウムは、金属間化合物や、イオン性化合物、錯体であってもよい。また、ルテニウムはウエハの表面に露出していてもよいし、他の金属や金属酸化膜、絶縁膜、レジスト等に覆われていてもよい。他の材料に覆われている場合であっても、ルテニウムが本発明の処理液に接触してルテニウムの溶解が起こる際、RuOガス発生抑制効果が発揮される。さらに、本発明の処理液は、ルテニウムを積極的に溶解させない場合、すなわち、ルテニウムが保護の対象である処理であっても、極僅かに溶解したルテニウムから発生するRuOガスを抑制する事が可能である。
【0103】
例えば、ルテニウム配線形成工程において本発明の処理液を用いる場合は、次のようになる。まず、半導体(例えばSi)からなる基体を用意する。用意した基体に対して、酸化処理を行い、基体上に酸化シリコン膜を形成する。その後、低誘電率(Low-k)膜からなる層間絶縁膜を成膜し、所定の間隔でビアホールを形成する。ビアホール形成後、熱CVDによって、ルテニウムをビアホールに埋め込み、さらにルテニウム膜を成膜する。このルテニウム膜を本発明の処理液を用いてエッチングすることで、RuOガス発生を抑制しながら平坦化を行う。これにより、RuOパーティクルが抑制された、信頼性の高いルテニウム配線を形成できる。
【0104】
本発明の処理液の別の態様は、少なくとも臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水を含有する処理液である。以下、順を追って説明する。
(臭素含有化合物)
本発明の処理液に用いられる臭素含有化合物は、臭素原子を含み、後述する酸化剤により酸化されて臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸イオン、亜臭素酸、亜臭素酸イオン、臭素酸、臭素酸イオン、過臭素酸、過臭素酸イオン、臭化物イオンを生じるものであればどのような化合物であってもよい。一例を挙げれば、臭素塩、臭化水素、からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。ここでいう臭化水素とは、臭化水素ガスでもよいし、臭化水素の水溶液である臭化水素酸でもよい。臭素塩としては、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、臭化アンモニウム、臭化オニウム等を挙げることができる。ここでいう臭化オニウムとは、オニウムイオンと臭化物イオンから形成される化合物である。オニウムイオンは、単原子陰イオンに過剰のプロトン(水素陽イオン)が付加してできた多原子陽イオンの化合物である。具体的には、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、フルオロニウムイオン、クロロニウムイオン、ブロモニウムイオン、ヨードニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、セレノニウムイオン、テルロニウムイオン、アルソニウムイオン、スチボニウムイオン、ビスムトニウムイオン等の陽イオンである。また、処理液中で次亜臭素酸または次亜臭素酸イオンを生成する化合物も、臭素含有化合物として好適に用いることができる。このような化合物の例として、ブロモヒダントイン類、ブロモイソシアヌル酸類、ブロムスルファミン酸類、ブロムクロラミン類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。より具体的に化合物を例示すれば、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、トリブロモイソシアヌル酸などである。
【0105】
上記臭素含有化合物は、臭化水素、または臭素塩として処理液に加えられてもよいし、臭素塩を含む溶液として処理液に加えられてもよいし、臭素ガスとして処理液に加えられてもよい。半導体製造工程におけるハンドリングが容易であることから、該臭素含有化合物は、臭素塩または臭素塩を含む溶液もしくは臭化水素として、他の処理液と混合することが好ましい。処理液に含まれる臭素含有化合物は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
半導体製造においては、金属または金属イオンの混入が歩留まり低下を引き起こすことから、該臭素含有化合物は金属を含まないことが望ましい。臭素ガス、臭化水素、臭素塩のうち臭化オニウムは金属を実質的に含まないことから、本発明の臭素含有化合物として好適に用いることができる。なかでも、臭化オニウムのうち、臭化第四級オニウム、臭化第三級オニウム、及び臭化水素は工業的に入手しやすく、取り扱いが容易であることから、本発明の臭素含有化合物としてさらに好適である。
【0107】
臭化第四級オニウムは、処理液内で安定に存在し得るアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンからなる臭素塩である。臭化第四級オニウムの一例を挙げれば、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化メチルトリエチルアンモニウム、臭化ジエチルジメチルアンモニウム、臭化トリメチルプロピルアンモニウム、臭化ブチルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルノニルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルステアリルアンモニウム、臭化デカメソニウム、臭化フェニルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化ジメチルピロリジニウム、臭化ジメチルピペリジウム、臭化-1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、臭化-1-ブチル-3-メチルピリジニウムなどである。また、第三級アミン、第二級アミン、第一級アミンにプロトンが付加した化合物も、臭素含有化合物として用いることができる。臭素含有化合物として一例を挙げれば、メチルアミン臭化水素酸塩、ジメチルアミン臭化水素酸塩、エチルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、トリエチルアミン臭化水素酸塩、2-ブロモエチルアミン臭化水素酸塩、2-ブロモエチルジエチルアミン臭化水素酸、エチレンジアミン二臭化水素酸塩、プロピルアミン臭化水素酸塩、ブチルアミン臭化水素酸塩、tert-ブチルアミン臭化水素酸塩、ネオペンチルアミン臭化水素酸塩、3-ブロモ-1-プロピルアミン臭化水素酸塩、ドデシルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキサンアミン臭化水素酸塩、ベンジルアミン臭化水素酸塩等である。臭化第四級ホスホニウムの一例を挙げれば、臭化テトラメチルホスホニウム、臭化テトラエチルホスホニウム、臭化テトラプロピルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、臭化フェニルトリメチルホスホニウム、臭化メトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム等である。臭化第三級オニウムは、処理液内で安定に存在し得るスルホニウムイオンからなる臭素塩である。臭化第三級スルホニウムの一例を挙げれば、臭化トリメチルスルホニウム、臭化トリエチルスルホニウム、臭化トリプロピルスルホニウム、臭化トリブチルスルホニウム、臭化トリフェニルスルホニウム、臭化-(2カルボキシエチル)ジメチルスルホニウムなどである。中でも、安定性が高く、高純度品が工業的に入手しやすく、安価であるといった理由から、アンモニウムイオンからなる臭素塩である臭化第四級オニウムが好ましい。
【0108】
上記臭化第四級オニウムは、安定性に特に優れ、容易に合成可能な臭化テトラアルキルアンモニウムであることが好ましい。
【0109】
該臭化テトラアルキルアンモニウムにおいて、アルキル基の炭素数は特に限定されず、四つのアルキル基の炭素数は同じであってもよく、異なっていてもよい。このような臭化アルキルアンモニウムとして、アルキル基一つ当たりの炭素数が1~20の臭化テトラアルキルアンモニウムが好適に使用できる。なかでも、重量当たりの臭素原子数が多いことから、アルキル基の炭素数が少ない臭化テトラアルキルアンモニウムがさらに好適に使用できる。一例を挙げれば、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム等であり、なかでも臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムが好適であり、臭化テトラメチルアンモニウムが最も好適である。処理液に含まれる臭素含有化合物は1つであっても、複数であってもよい。
【0110】
本発明に使用する臭化テトラアルキルアンモニウムは、市販されている臭化テトラアルキルアンモニウムを使用しても構わないし、テトラアルキルアンモニウムイオンと臭化物イオンから臭化テトラアルキルアンモニウムを製造したものを使用しても構わない。臭化テトラアルキルアンモニウムの製造方法としては、水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む水溶液と臭化物イオンを含む水溶液、または水に溶けると臭化物イオンを発生する臭素含有ガス、例えば臭化水素などを混合するだけでよい。
【0111】
臭化テトラアルキルアンモニウムを製造するために使用する水酸化テトラアルキルアンモニウムとしては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。なかでも、単位重量当たりの水酸化物イオン数が多く、高純度品が容易に入手可能であることから、水酸化テトラメチルアンモニウムであることがより好ましい。
【0112】
臭化テトラアルキルアンモニウムを製造するために使用する臭化物イオンを発生させる臭素イオン源としては、臭化水素、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、臭化アンモニウム等があげられる。なかでも、金属を実質的に含まないこと、工業的に入手しやすく、高純度品が容易に入手可能であることから、臭化水素が好適である。
【0113】
該臭素含有化合物の添加量は特に限定されることはなく、ルテニウムのエッチング速度、処理液の安定性、該臭素含有化合物の溶解性、コストなどを考慮して決定すればよい。処理液に添加された該臭素含有化合物は、後述する酸化剤により酸化され、ルテニウムのエッチングに有効な化学種、具体的には、臭素(Br)、次亜臭素酸(HBrO)、次亜臭素酸イオン(BrO)、亜臭素酸(HBrO)、亜臭素酸イオン(BrO )、臭素酸(HBrO)、臭素酸イオン(BrO )、過臭素酸(HBrO)、過臭素酸イオン(BrO )、臭化物イオン(Br)となる。
【0114】
上記ルテニウムのエッチングに有効な化学種のうち、HBrO、BrO、HBrO、BrO 、HBrO、BrO を含む処理液はルテニウムのエッチング速度が大きいため、処理液はこれらの化学種を含むことが好ましい。なかでも、HBrO及びBrO(以下、BrO等と表記することもある)を多く含む処理液はルテニウムのエッチング速度が特に大きいため、処理時間を短くできるという点でさらに好ましい。
【0115】
したがって、該臭素含有化合物を酸化剤により酸化する場合は、該臭素含有化合物に含まれる臭素原子を、HBrO、BrO、HBrO、BrO 、HBrO、BrO へと酸化させることが好ましく、なかでも、BrO等へと酸化させることがより好ましい。
【0116】
処理液に含まれるBrO等の割合を高めることで、ルテニウムのエッチング速度を上げることが出来る。具体的には、処理液に含まれる臭素元素1モル中のBrOの割合が、0.5モルを超える処理液とすることで、ルテニウムを効率よくエッチングすることができる。
【0117】
上記ルテニウムのエッチングに有効な化学種、すなわち、Br、HBrO、BrO、HBrO、BrO 、HBrO、BrO 、HBrO、BrO の分解や、ルテニウムとの反応によりBr-が生成される場合には、Brを再度ルテニウムのエッチングに有効な化学種に酸化しうる酸化剤が処理液中に含まれていることが好ましい。このような酸化剤が処理液中に存在すれば、上記ルテニウムのエッチングに有効な化学種の濃度を高く保つことができ、ルテニウムのエッチング速度を維持することが可能となる。BrO等が不均化反応などにより分解する場合、HBrOまたはBrO を経由して、HBrOまたはBrO 及びBrが生じる場合がある。本発明の処理液は、BrO等に加えて、HBrO、BrO 、HBrO、BrO 、Br等が一種または複数種含まれている場合でも、ルテニウムのエッチングに好適に用いることができる処理液である。処理液中に、ルテニウムのエッチングに有効な化学種が複数含まれる場合も、該処理液中に、Brを再度ルテニウムのエッチングに有効な化学種に酸化しうる酸化剤が含まれていることが好ましい。
また、処理液内にBrOに加えて、BrOの分解生成物(例えば、HBrO、BrO 、HBrO、BrO 、Brなど)が含まれると、処理液中のBrO濃度変化が緩やかとなり、ルテニウムのエッチング速度がより安定する。したがって、本発明の処理液には、前述のBrOの分解生成物が一種または複数種含まれていてもよい。例えば、BrO、BrO を含む本発明の処理液は、ルテニウムのエッチングに好適に用いることができる。
【0118】
ルテニウムのエッチングを効率よく行うためには、処理液に含まれる臭素元素1モル中のBrOの割合が、0.5モルを超えることが好ましい。
【0119】
臭素含有化合物またはBrのルテニウムのエッチングに有効な化学種への酸化、及び、ルテニウムのエッチングを、共にアルカリ性の処理液中で行うことで、処理液に含まれる臭素元素1モル中のBrOの割合が0.5モルを超える処理液とすることができる。アルカリ性の処理液中では、臭素含有化合物またはBrは酸化剤により直接BrO等へ酸化されるためである。
【0120】
処理液のpHがアルカリ性であれば、酸化剤によるBrの酸化とルテニウムのエッチングを繰り返し、連続的に行うことが可能になる。すなわち、(A)Brが酸化剤によりルテニウムのエッチングに有効な化学種へと酸化される反応と、(B)ルテニウムのエッチングに有効な化学種がルテニウムをエッチングすることでBrに戻る反応、が繰り返し生じる。これにより、処理液中の臭素元素1モル中のBrOの割合が0.5モルを超え、効率的にルテニウムをエッチングすることができる。
【0121】
さらに、上記(A)、(B)の反応が繰り返し連続的に起こる場合、処理液中のBrO等の濃度はほぼ一定に保たれることになるため、ルテニウムのエッチング速度が安定する。
【0122】
上記(A)Brが酸化剤によりルテニウムのエッチングに有効な化学種へと酸化される反応が進行すると、処理液中の酸化剤が消費される。処理液中の酸化剤がすべて反応に使われてしまうと、それ以上、臭素含有化合物またはBrの酸化は生じなくなる。しかしながら、ルテニウムのエッチングに有効な化学種が多い処理液、すなわち、臭素元素1モル中のBrOの割合が0.5モルを超えるような処理液では、ルテニウムエッチング能を直ちに失うことはなく、処理液中のルテニウムのエッチングに有効な化学種がなくなるまで、ルテニウムをエッチングすることができる。
【0123】
一方、酸性の処理液中で臭素含有化合物またはBrのルテニウムのエッチングに有効な化学種への酸化を行うと、臭素含有化合物又はBrが酸化剤により酸化され、臭素ガスが発生する。該臭素ガスがアルカリに吸収される際、次亜臭素酸塩と臭素塩をモル比1対1の割合で生成する。したがって、処理液に含まれるBrOの割合は、該処理液に含まれる臭素元素1モルに対して0.5モルとなり、0.5を超えることはない。当然のことながら、処理液に含まれる臭素含有化合物またはBrの全量が酸化されなかった場合は、処理液に含まれるBrOの割合は、該処理液に含まれる臭素元素1モルに対して0.5より小さくなる。
【0124】
酸性条件で臭素含有化合物またはBrのルテニウムのエッチングに有効な化学種への酸化を行い、アルカリ性でルテニウムのエッチングを行う場合、酸化剤によるルテニウムのエッチングに有効な化学種の生成と、ルテニウムのエッチングの間に、臭素ガス発生に要する時間や処理液のpH調整に要する時間が必要になるため、ルテニウムエッチングプロセスが断続的になり、生産性が著しく悪化する。そのため、酸性条件における酸化剤によるルテニウムのエッチングに有効な化学種の生成は、ルテニウムのエッチングを行う前に一度だけ行うことにならざるを得ない。この場合、上記(A)(B)の反応が繰り返し連続的に生じることはないため、処理液に含まれる臭素元素1モル中のBrOの割合は0.5以下となる。
【0125】
上記処理液を用いてルテニウムをエッチングすると、ルテニウムのエッチングに有効な化学種はルテニウムとの反応により一方的に減少するため、処理液に含まれる臭素元素1モル中のBrOの割合は0.5よりもさらに小さくなる。
【0126】
処理液に含まれる臭素元素1モル中のBrOの割合が0.5モル以下の処理液では、処理液に含まれる臭素元素1モル中のBrOの割合が0.5モルを超える処理液に比べ、ルテニウムのエッチング速度の安定性、エッチングできるルテニウム膜の枚数、処理液のライフタイムが大幅に低下する。したがって、ルテニウムのエッチングを安定して効率よく行うためには、処理液をアルカリ性とし、処理液に含まれる臭素元素1モル中のBrOの割合が0.5モルを超える処理液とすることが好ましい。
【0127】
該臭素含有化合物は、処理液の合計質量に対して上記臭素含有化合物の添加量が臭素元素量として0.008質量%以上10質量%未満であることが好ましい。0.008質量%未満では、ルテニウムをエッチングする速度が遅く、実用性が低い。10質量%以上では、ルテニウムのエッチング速度を制御しにくく、製造プロセスとしてコントロールが難しい。したがって、エッチング速度が大きく、エッチング速度を制御して効率よく製造を行う観点から、本発明の処理液に含まれる臭素含有化合物の添加量は、臭素元素量として0.008質量%以上10質量%未満であることが好ましい。また、本発明の処理液に含まれる臭素含有化合物の添加量の上限は、臭素元素量として2質量%未満であることがより好ましい。臭素含有化合物の添加量が2.0質量%未満であれば、ルテニウムのエッチングに有効な化学種、特に、HBrO、BrO、HBrO、BrO の不均化反応が起こりにくく、これらの化学種の濃度変動を抑制でき、エッチング速度がより安定になる。さらに、臭素含有化合物の添加量が2.0質量%未満であれば、ルテニウムのエッチング速度を制御することで時間当たりに発生するRuOガス濃度を低く抑えることができ、RuOパーティクルの発生をより少なくできる。
また、本発明の処理液に含まれる臭素含有化合物の添加量の下限は、臭素元素量として0.01質量%以上であることがより好ましい。臭素含有化合物の添加量が0.01質量%以上であれば、ルテニウムのエッチングに有効な化学種が効率的に生成され、エッチング速度がさらに大きく、かつ、安定したエッチング速度で効率的にルテニウムをエッチングすることができる。したがって、本発明の処理液に含まれる臭素含有化合物の添加量は、臭素元素量として0.01質量%以上2質量%未満であることがさらに好ましい。また、スループットを上げ、生産効率を向上させる観点から、臭素含有化合物の添加量は、臭素元素量として0.04質量%以上2.0質量%未満であることがさらに好ましい。さらに、酸化剤によるルテニウムのエッチングに有効な化学種への再酸化が生じやすくなるためエッチング速度がより安定になるという観点から、臭素含有化合物の添加量は、臭素素元素量として0.08質量%以上2.0質量%未満であることが最も好ましい。
【0128】
該臭素含有化合物を含む溶液のpHは特に限定されないが、pH8以上14以下であることが望ましく、12以上13以下であることが、より好ましい。このpH範囲の溶液であれば、後述する酸化剤を含む溶液と該臭素含有化合物を含む溶液とを混合した際に生じるpH低下を小さくすることができ、本発明の処理液を安定に製造し、保存し、使用することが可能となる。該臭素含有化合物を含む溶液のpHを8未満にする場合には、後述する酸化剤を含む溶液と該臭素含有化合物を含む溶液とを混合した際に、混合後の処理液のpHがアルカリ性となるよう、該臭素含有化合物を含む溶液のpHと液量を調整すればよい。
【0129】
ヨウ素含有化合物を、該臭素含有化合物と同様に用いることも可能である。この場合、該ヨウ素含有化合物に含まれるヨウ素が、処理液に含まれる酸化剤により酸化されることで、ルテニウムをエッチングする化学種となり得る。
【0130】
(酸化剤)
本発明の処理液に用いられる酸化剤は、臭素含有化合物を酸化し、ルテニウムのエッチングに有効な化学種を生成しうる機能を有する。具体的には、硝酸、硫酸、過硫酸、ペルオキソ二硫酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、これらの塩、およびこれらの塩が解離して生ずるイオン、さらに、過酸化水素、オゾン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、過マンガン酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、セリウム塩などが挙げられる。これらの酸化剤は単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。本発明の処理液にこれらの酸化剤を添加する際は、用いる酸化剤の性状に応じて、固体、液体、気体のいずれか適当なものを選べばよい。
【0131】
上記酸化剤のうち、アルカリ性でも安定に存在できることから、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、およびこれらの塩、およびこれらの塩が解離して生ずるイオン、オゾンまたは過酸化水素が好ましく、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、およびこれらの塩、およびこれらの塩が解離して生ずるイオン、オゾンまたは過酸化水素がより好ましく、次亜塩素酸イオンまたはオゾンがさらに好ましく、次亜塩素酸イオンが最も好ましい。
【0132】
該酸化剤として次亜塩素酸、その塩である次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム、またはオゾンを用いると、実質的に金属の混入を防ぐことができるため、半導体製造用の処理液として好適である。なかでも、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムは、アルカリ中でも安定に存在し、上記臭素含有化合物を効率よく酸化できることから特に好適である。
【0133】
該酸化剤の濃度は特に制限されることはなく、該臭素含有化合物をルテニウムのエッチングに有効な化学種へと酸化できる量を添加すればよい。
上記酸化剤の添加量は0.1質量ppm以上10質量%以下が好ましい。該酸化剤の添加量が0.1質量ppmより小さいと臭素含有化合物を効率よく酸化することができず、ルテニウムのエッチングレートが低下する。すなわち該酸化剤を混合しない組成では、エッチングレートが低い。一方、該酸化剤の添加量が10質量%より大きいと、該酸化剤の安定性が低下するので適当でない。RuOガス抑制とルテニウムのエッチング速度を両立させる観点から、酸化剤の濃度は、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることが最も好ましい。なお、酸化剤がオゾンである場合は、前述した濃度範囲であることが好ましい。
【0134】
酸化剤を含む溶液のpHは特に限定されないが、pH8以上14以下であることが望ましく、12以上13以下であることが、より好ましい。このpH範囲の溶液であれば、上記臭素含有化合物を含む溶液と該酸化剤を含む溶液とを混合した際に生じるpH低下を小さくすることができ、本発明の処理液を安定に製造し、保存し、使用することが可能となる。該酸化剤を含む溶液のpHを8未満にする場合には、上記臭素含有化合物を含む溶液と該酸化剤を含む溶液とを混合した際に、混合後の処理液のpHがアルカリ性となるよう、該酸化剤を含む溶液のpHと液量を調整すればよい。
【0135】
<次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液の製造方法>
上記のとおり、本発明の処理液に含まれてもよい酸化剤としては、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムが好ましい。そこで、以下に、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムの製造方法について、好ましい態様を述べる。該酸化剤の製造方法は、水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液を準備する準備工程、および、水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液と塩素を接触させる反応工程を含む。
【0136】
(水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液を準備する準備工程)
水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液中には、通常は大気に由来する二酸化炭素が含まれている。二酸化炭素は、炭酸イオン、又は重炭酸イオンとして溶液中に存在している。二酸化炭素濃度は、特に制限されないが、炭酸イオンに換算して、0.001ppm以上500ppm以下(質量基準である)であることが好ましく、0.005ppm以上300ppm以下であることがより好ましく、0.01ppm以上100ppm以下であることがさらに好ましい。前記水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液に含まれる二酸化炭素濃度が0.001ppm以上500ppm以下であることにより、得られる次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液のpH変化を抑制できる。その結果、該次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液の保存安定性を向上できる。
【0137】
本実施形態において、水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液は、アルキル基の炭素数が1~10である水酸化テトラアルキルアンモニウムの溶液であることが好ましく、炭素数1~5である水酸化テトラアルキルアンモニウムの溶液であることがより好ましい。具体的な水酸化テトラアルキルアンモニウムを例示すると、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどである。これらの水酸化テトラアルキルアンモニウムは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、水酸化テトラアルキルアンモニウムに含まれる4つのアルキル基の炭素数は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0138】
(水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液と塩素を接触させる反応工程)
水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液と塩素を接触、反応させることにより、水酸化テトラアルキルアンモニウムの水酸化物イオンが、塩素によって生成された次亜塩素酸イオンと置換され、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液が生成する。
【0139】
本実施形態において、気相部中の二酸化炭素濃度の上限は、100体積ppmであるが、0.001~100体積ppm、好ましくは、0.01~80体積ppmであれば、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液のpHを十分に制御することが可能となり、保存安定性に優れた次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液を製造することができる。
【0140】
本実施形態の反応工程における液相部のpHの範囲は、10.5以上である。上限は特に限定はされないが、反応中のpHが過度に高いと、反応終了後に同じpHで長期間保存すると、次亜塩素酸イオンが分解され、有効塩素濃度が低下することがある。したがって、反応工程における液相部のpHは14未満であることが好ましく、13.9未満がより好ましく、11以上13.8未満がさらに好ましい。pHが前記範囲であれば、得られる次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液の保存中に、次亜塩素酸イオンの分解が抑制され、保存安定性が向上する。
【0141】
本実施形態の反応工程における水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液の反応温度の範囲は、-35℃以上25℃以下が好ましく、-15℃以上25℃以下がより好ましく、0℃以上25℃以下がさらに好ましい。反応温度が前記範囲であれば、水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液と塩素が十分に反応し、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液を高い生成効率で得ることができる。
【0142】
このことから明らかな通り、本実施形態の製造方法で得られた次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム溶液は、保存安定性に優れており、本発明の処理液に含まれる酸化剤として好適に使用することができる。
【0143】
(塩基化合物)
本発明の処理液に用いられる塩基化合物としては、特に制限されるものではないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、アンモニア、コリン、水酸化アルキルアンモニウム等が用いられる。これらの塩基化合物のなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、コリン、水酸化アルキルアンモニウムは入手が容易であり、処理液に用いたときに高いルテニウムエッチング速度が得られるため、好適である。アンモニア、コリン、水酸化アルキルアンモニウムは金属を含まないため、本発明の処理液として特に好適に使用できる。水酸化アルキルアンモニウムとしては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどが工業的に入手可能であり、高純度な半導体製造用グレードが容易に入手可能という点で、水酸化テトラメチルアンモニウムが最も好適である。上記塩基化合物は、固体もしくは水溶液として処理液に添加することができる。
【0144】
上記塩基化合物の濃度は、本発明の目的を逸脱しない限り特に制限されないが、塩基化合物を含む溶液のpHがpH8以上14以下の範囲にあることが望ましく、12以上13以下であることが、より好ましい。塩基化合物を含む溶液のpHがこのpH範囲内であれば、上記酸化剤を含む溶液と該臭素含有化合物を含む溶液とを混合した際に生じるpH低下を小さくすることができ、本発明の処理液を安定に製造し、保存し、使用することが可能となる。
【0145】
(水)
本発明の処理液に含まれる水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水、超純水が好ましい。このような水は、半導体製造に広く利用されている公知の方法で得ることができる。
【0146】
(pH)
本発明の処理液のpHは8以上14以下であることが好ましい。処理液のpHがこの範囲にあれば、ルテニウムを十分な速さでエッチングし、かつ、RuOガス発生を抑制することが可能である。処理液のpHが8よりも低い場合はRuOパーティクルの発生が顕著になり、半導体素子の歩留まりが悪化する。一方、処理液のpHが14を超える場合は上記酸化剤の分解が生じるため、臭素含有化合物の酸化が一定でなくなる恐れが生じる。これは、ルテニウムのエッチング速度が一定でないことを意味し、半導体製造工程におけるプロセスコントロールを複雑にするため避ける必要がある。
【0147】
ルテニウムのエッチングに伴うRuOガス発生量は、処理液のpHが高いほど少なくなる。一方、ルテニウムのエッチング速度は処理液のpHが高いほど低くなる。したがって、RuOガス抑制とエッチング速度の両立を達成する観点から、処理液のpHは、12以上14以下であることが好ましく、より好ましくは、12以上13未満であることが、さらに好ましい。処理液のpHが上記範囲であれば、本発明の処理液に含まれるルテニウムのエッチングに有効な化学種が、十分なエッチング速度でルテニウムを溶解し、かつ、RuOガス発生を抑制し得る。
【0148】
ルテニウム金属をエッチングするときのpHは、11以上14以下であることが好ましく、12以上13未満であることが、さらに好ましい。処理液のpHがこの範囲にあると、ルテニウム金属のエッチングにおいて、エッチング速度とRuOガス発生量低減が可能となる。
ルテニウム合金をエッチングするときのpHは、12以上14以下であることが好ましく、12以上13未満であることが、さらに好ましい。
【0149】
(処理液の製造方法)
本発明の処理液が、臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水を含む場合、該処理液は一液であってもよく、二液またはそれ以上の溶液であってもよい。処理液が一液である場合、臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水をすべて含む溶液となる。処理液が二液またはそれ以上である場合、各液を混合することにより、処理液を製造すればよい。また、処理液が二液またはそれ以上である場合、各液は臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物、水の少なくとも一つ以上を含む。さらに後述するその他の成分を含んでもよい。処理液が一液、二液以上のいずれの場合であっても、臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物が処理液内に同時に存在することで、臭素含有化合物が酸化剤により酸化され、ルテニウムのエッチングに有効な化学種が生じる。
【0150】
処理液を複数にする場合、臭素含有化合物を含む処理液と、酸化剤を含む処理液とに分けることが好ましい。臭素含有化合物と酸化剤を分けることで、酸化剤による臭素含有化合物の酸化を防ぎ、本発明の処理液を安定に保存することが可能になる。
【0151】
処理液の混合方法は、半導体薬液の混合方法として広く公知の方法を用いることができる。例えば、混合タンクを用いる方法、半導体製造装置の配管内で混合する方法(インラインミキシング)、ウエハ上に複数の液を同時にかけることで混合する方法等を好適に用いることができる。
【0152】
複数にした処理液を混合して処理液を製造する場合、該処理液の混合はいつ行ってもよい。臭素含有化合物の酸化に時間を要する場合は、ルテニウムをエッチングする前に処理液を混合することで、ルテニウムのエッチングに有効な化学種を発生する時間を設けることができる。この場合、臭素含有化合物の酸化に時間を要すると、製造ラインにおけるボトルネックとなるため、スループットの低下を招く事がある。このような理由から酸化に要する時間は短い方が良く、1時間以下である事が好ましい。臭素含有化合物の酸化に要する時間は、酸化剤濃度、臭素含有化合物濃度、処理液のpH、処理液の温度、処理液の撹拌方法などを適切に選択することで制御できる。例えば、酸化剤を用いて臭素含有化合物を酸化する事で次亜臭素酸イオンを生成する場合、反応速度論の観点から、反応物質の濃度を高くする事で酸化に要する時間を短くする事が可能である。この場合、酸化剤および臭素含有化合物両方の濃度を高くしてもよいし、いずれかの濃度だけを高くしてもよい。また、混合時の処理液の温度を上げることで、臭素含有化合物の酸化に要する時間を短縮することもできる。
また、ルテニウムのエッチングに有効な化学種の濃度が低い場合、処理液のライフタイムが短く、製造プロセスの制御が難しくなることが考えられる。このような場合には、ルテニウムエッチングを実施する直前に混合を行うのが好ましい。
【0153】
したがって、複数の処理液を混合する場合は、酸化剤及び塩基化合物を含む溶液と、臭素含有化合物を含む溶液とを混合することが好ましく、次亜塩素酸イオンと塩基化合物を含む溶液と、臭素含有化合物を含む溶液とを混合することがさらに好ましい。上記次亜塩素酸イオンと塩基化合物を含む溶液は、アルカリ性であることが好ましい。また、混合は、酸化剤及び塩基化合物を含む溶液に、臭素含有化合物を添加することが好ましい。これは、例えば、酸化剤が次亜塩素酸を含むアルカリ溶液、臭素含有化合物を含む溶液が酸性溶液である場合に、前者を後者に対して徐々に添加すると、次亜塩素酸が酸性溶液中にて分解する事で有毒な塩素ガスが発生する恐れがあるためである。該酸化剤及び塩基化合物を含む溶液、および臭素含有化合物を含む溶液は、いずれも、溶液でも水溶液でも構わないが、有機または無機溶媒等、溶媒が水以外である場合、溶媒が酸化剤と反応する事により酸化剤が分解されてしまう恐れがある。このような理由から、該溶液は水溶液である事が好ましい。
【0154】
本発明の処理液の混合においては、混合後の処理液のpHがアルカリ性であることが好ましい。具体的には、該処理液のpHが8以上14以下であることが好ましい。混合前の処理液がpH8より低い場合は、混合後の処理液(臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物および水を含む)がpH8以上14以下となるよう、塩基化合物及び/又は水の濃度を調整する。このように、混合後の処理液のpHを8以上14以下に保つことで、臭素含有化合物が酸化剤により速やかにルテニウムのエッチングに有効な化学種へと変化し、ルテニウム膜のエッチングを安定した十分な速度で行うことが可能となる。
【0155】
複数の処理液を混合してルテニウムのエッチングに有効な化学種を生成する場合、混合される該処理液のpHは同じであっても、異なっていてもよい。該処理液のpHが同じである場合、混合後の処理液のpHが大きく変化することはなく、ルテニウムのエッチング液として好適に用いることができる。
【0156】
複数の処理液を混合してルテニウムのエッチングに有効な化学種を生成する場合、混合後の組成(臭素含有化合物濃度、酸化剤濃度、塩基性化合物濃度、pH)が前述の範囲内であればよく、混合される該処理液の混合比および混合順序などの混合方法は特に制限されない。ただし、例えば、次亜塩素酸化合物を含むアルカリ溶液と、臭素含有化合物を含む酸性溶液を混合する場合、局所的に次亜塩素酸化合物の分解が進行する恐れがあるため、この場合は、次亜塩素酸化合物を含むアルカリ溶液へ臭素含有化合物を含む酸性溶液を混合する事が好ましい。
本発明において、次亜塩素酸化合物とは、処理液中で次亜塩素酸または次亜塩素酸イオンを生成する化合物を指す。該次亜塩素酸化合物の一例を挙げれば、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、ヒダントイン類、イソシアヌル酸類、スルファミン酸類、クロラミン類などを挙げることができる。なかでも効率的に次亜塩素酸または次亜塩素酸イオンを生成できることから、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩であることが好ましい。該次亜塩素酸としては、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムが好ましく、なかでも、単位重量当たりの次亜塩素酸または次亜塩素酸イオンの量が多いことから、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムであることがより好ましい。
【0157】
臭素含有化合物が酸化剤により酸化されることで生じる、ルテニウムのエッチングに有効な化学種は、処理液のpH、酸化還元電位(ORP)などによって異なるが、主に、臭素、または臭化物イオン、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸およびこれらのイオンである。
【0158】
また、本発明の処理液において、金属、具体的には、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の含有量がそれぞれ1ppb以下であることが好ましい。
【0159】
本発明の処理液、及び該処理液に用いられる臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物、水、溶媒、その他の添加剤に含まれるアンモニア及びアミン類は少ないことが好ましい。アンモニア及びアミン類が処理液に存在すると、酸化剤や臭素含有化合物、臭素含有化合物から生じたルテニウムのエッチングに有効な化学種などと反応し、処理液の安定性を低下させるためである。例えば、塩基化合物に水酸化テトラメチルアンモニウムを用いる場合は、該塩基化合物に含まれるアンモニア及びアミン類、特に、トリメチルアミンが処理液の安定性低下の原因となることがある。そのため、本発明の処理液に水酸化テトラメチルアンモニウムを用いる場合は、該塩基化合物に含まれるアミン類の合計が100ppm以下であることが好ましい。アミン類の合計が100ppm以下であれば、酸化剤や臭素含有化合物、臭素含有化合物から生じたルテニウムのエッチングに有効な化学種との反応による影響は軽微であり、処理液の安定性を損なうことは無い。
【0160】
本発明の処理液を製造する場合は、光による酸化剤、臭素含有化合物から生じたルテニウムのエッチングに有効な化学種などの分解を防ぐため、遮光して行うことが好ましい。
【0161】
また、本発明の処理液の製造においては、二酸化炭素の処理液への溶解を防ぐことが好ましい。本発明の処理液がアルカリ性である場合、二酸化炭素は容易に処理液に溶解し、pH変化を引き起こす原因となりうる。処理液のpHが変化すると、ルテニウムのエッチング速度が変動する要因となるだけでなく、処理液の安定性も低下する。二酸化炭素の処理液への溶解は、不活性ガスをフローして製造装置内の二酸化炭素をパージする、不活性ガス雰囲気下で反応を行う等の方法で低減することができる。製造装置内の二酸化炭素が100ppm以下であれば、二酸化炭素の溶解による影響は無視できる。
【0162】
本発明の処理液の製造においては、反応容器の処理液と接する面はガラスまたは有機高分子材料で形成されていることが好ましい。該反応容器の内面がガラスまたは有機高分子材料で形成されていれば、金属、金属酸化物、有機物等の不純物混入をより低減できるためである。該反応容器の内面に使用する有機高分子材料としては、塩化ビニル系樹脂(軟質・硬質塩化ビニル樹脂)、ナイロン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)、フッ素系樹脂等を使用できる。中でも、成型のし易さ、耐溶剤性、不純物の溶出が少ないもの等を考慮すると、フッ素系樹脂が好ましい。該フッ素樹脂としては、フッ素原子を含有する樹脂(ポリマー)であれば特に制限されず、公知のフッ素樹脂を用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体、及びパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)の環化重合体等が挙げられる。
【0163】
(その他の添加剤)
本発明の処理液には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で、従来から半導体用処理液に使用されているその他の添加剤を配合してもよい。例えば、その他の添加剤として、酸、金属防食剤、水溶性有機溶媒、フッ素化合物、酸化剤、還元剤、錯化剤、キレート剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、安定化剤などを加えることができる。これらの添加剤は単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。
【0164】
これらの添加剤に由来して、また、処理液の製造上の都合などにより、本発明の処理液には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等が含まれていてもよい。例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等が含まれてもよい。しかし、これらアルカリ金属イオン、およびアルカリ土類金属イオン等は、半導体ウエハ上に残留した場合、半導体素子に悪影響(半導体ウエハの歩留まり低下等の悪影響)を及ぼすことから、その量は少ない方が好ましく、実際には限りなく含まれない方がよい。そのため、例えばpH調整剤としては、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ金属や水酸化アルカリ土類金属ではなく、アンモニア、アミン、コリン又は水酸化テトラアルキルアンモニウム等の有機アルカリであることが好ましい。
【0165】
具体的には、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンはその合計量が、1質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましく、500ppb以下であることが最も好ましい。
【0166】
本発明の処理液は、さらに、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒を含む本発明の処理液は、RuOのガス発生を抑制することができる。該有機溶媒は、本発明の処理液の機能を損なわなければどのようなものを用いてもよい。一例を挙げれば、スルホラン、アセトニトリル、四塩化炭素、1,4-ジオキサン等であるが、当然のことながら、有機溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0167】
本発明の処理液によりルテニウムをエッチングするときの温度は特に制限されないが、ルテニウムのエッチング速度、処理液の安定性、RuOガス発生量などを考慮して決定すればよい。RuOガスは処理温度が高いほど発生量が多くなるため、処理温度は低い方が好ましい。一方、ルテニウムのエッチング速度は、高温であるほど大きくなる。RuOガス抑制とルテニウムのエッチング速度を両立させる観点から、ルテニウムをエッチングする温度は10℃~90℃が好ましく、15℃~70℃がより好ましく、20℃~60℃であることが最も好ましい。
【0168】
本発明の処理液によりルテニウムをエッチングするときの処理時間は、0.1~120分、好ましくは0.3~60分の範囲であり、エッチング条件や使用される半導体素子により適宜選択すればよい。本発明の処理液を使用した後のリンス液としては、アルコールのような有機溶媒を使用することもできるが、脱イオン水でリンスするだけでも十分である。
【0169】
本発明の処理液を用いれば、RuOガスの発生を抑制し、かつ、半導体ウエハの端面部や裏面部に付着したルテニウムを十分なエッチング速度(10Å/min以上)で除去できる。10Å/min以上のエッチング速度が必要である場合は、処理液に含まれる次亜臭素酸イオン濃度、次亜塩素酸イオン濃度、臭素含有化合物濃度、酸化剤濃度、処理液のpH、処理温度、処理液とウエハの接触方法、などを適切に選択すればよい。
【0170】
上記本発明の処理液を製造した後、該処理液で基盤に堆積したルテニウム系金属膜および/またはルテニウム合金膜をエッチングできる。
【0171】
(処理液の保存)
本発明の処理液は、低温及び/あるいは遮光して保存する事が好ましい。低温及び/あるいは遮光にて保存する事で、処理液中の酸化剤や次亜臭素酸イオンなどの分解を抑制する効果が期待できる。さらに、不活性ガスを封入した容器で処理液を保存し、二酸化炭素の混入を防ぐことで、処理液の安定性を維持することができる。また、該容器の内面、すなわち処理液と接する面は、ガラスまたは有機高分子材料で形成されていることが好ましい。該反応容器の内面がガラスまたは有機高分子材料で形成されていれば、金属、金属酸化物、有機物等の不純物混入をより低減できるためである。該反応容器の内面に使用する有機高分子材料としては、本発明の処理液の製造において例示した材料を好適に用いることができる。また、処理液を保存するときのpHは適宜選択することができるが、次亜臭素酸イオン、臭素含有化合物、酸化剤、その他の添加剤等の分解を防ぐために、処理液のpHはアルカリ性であることが好ましく、8以上14以下であることがさらに好ましく、12以上14以下であることが最も好ましい。
【実施例
【0172】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
(pH測定方法)
実施例及び比較例で調製した処理液10mLを、卓上型pHメーター(LAQUA F―73、堀場製作所社製)を用いてpH測定した。pH測定は、処理液を調製し、25℃で安定した後に、実施した。
【0173】
(ルテニウムの成膜および膜厚変化量)
実施例および比較例で使用したルテニウム膜は次のように成膜した。シリコンウエハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を形成し、その上にスパッタ法を用いてルテニウムを1200Å(±10%)成膜した。四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理前のルテニウム膜厚とした。エッチング処理後も同様に四探針抵抗測定器によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理後のルテニウム膜厚とした。エッチング処理後のルテニウム膜厚とエッチング処理前のルテニウム膜厚の差を、エッチング処理前後の膜厚変化量とした。
【0174】
(二酸化ルテニウムの成膜および膜厚変化量)
実施例で使用した二酸化ルテニウム膜は次のように成膜した。シリコンウエハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を形成し、その上にスパッタ法を用いて二酸化ルテニウムを1000Å(±10%)成膜した。四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理前の二酸化ルテニウム膜厚とした。エッチング処理後も同様に四探針抵抗測定器によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理後の二酸化ルテニウム膜厚とした。エッチング処理後の二酸化ルテニウム膜厚とエッチング処理前の二酸化ルテニウム膜厚の差を、エッチング処理前後の膜厚変化量とした。
【0175】
(ルテニウムまたは二酸化ルテニウムのエッチング速度の算出方法)
実施例及び比較例の処理液60mLを、蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に準備した。10×20mmとした各サンプル片を、処理液中に25℃で1分間浸漬してルテニウムまたは二酸化ルテニウムのエッチング処理を行った。
また、処理液60mLを蓋付きフッ素樹脂製容器に準備し、60℃に加温したウォーターバス(ThermoFisher Scientific製、Isotemp汎用フード付きウォーターバス)に1時間浸漬し、処理液温度を60℃とした。10×20mmとした各サンプル片を、処理液中に60℃で1分間浸漬してルテニウムまたは二酸化ルテニウムのエッチング処理を行った。
エッチング処理前後の膜厚変化量を、浸漬した時間で除した値をエッチング速度として算出し、本発明におけるエッチング速度として評価した。処理温度および処理時間は表5に示した。また処理前後の膜厚変化量が5オングストローム未満である場合は、エッチングされていないものとした。
【0176】
(RuOガスの定量分析)
RuOガスの発生量は、ICP-OESを用いて測定した。密閉容器に処理液を5mLとり、膜厚1200Åのルテニウムを成膜した10×20mmのSiウエハ1枚を、25℃または60℃でルテニウムが全て溶解するまで浸漬させた。その後、密閉容器にAirをフローし、密閉容器内の気相を吸収液(1mol/L NaOH)の入った容器にバブリングして、浸漬中に発生したRuOガスを吸収液にトラップした。この吸収液中のルテニウム量をICP-OESにより測定し、発生したRuOガス中のRu量を求めた。処理液に浸漬したSiウエハ上のルテニウムが全て溶解したことは、四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)により浸漬前および浸漬後のシート抵抗をそれぞれ測定し、膜厚に換算する事で確認した。RuOガス吸収液中に含まれるRuの重量をRu付ウエハの面積で割った値を用いて、RuOガス発生量を評価した。RuOガス発生量が40μg/cm以下であるものは、RuOガス発生が抑制されているとした。
【0177】
表1~表4に処理液の組成を、表5に各評価結果を、表6に処理液の調製条件を、表7に酸化剤の製造条件を、表8に25℃における次亜塩素酸イオン(ClO)/Cl系および次亜臭素酸イオン(BrO)/Br系の酸化還元電位(計算値)を、表9に臭化テトラメチルアンモニウム水溶液の調製条件を示す。
【0178】
(次亜臭素酸イオンおよび次亜塩素酸イオン濃度の算出方法)
次亜臭素酸イオンおよび次亜塩素酸イオン濃度の測定は紫外可視分光光度計(UV-2600、島津製作所社製)を用いた。濃度既知の次亜臭素酸イオンおよび次亜塩素酸イオン水溶液を用いて検量線を作成し、製造した処理液中の次亜臭素酸イオンおよび次亜塩素酸イオン濃度を決定した。次亜臭素酸イオン濃度は、臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物を混合した後、吸収スペクトルが安定したときの測定データから求めた。
【0179】
<実施例1>
(エッチング対象のサンプルの準備)
(ルテニウムの成膜および膜厚変化量)に記載した方法でルテニウム膜を成膜し、10×20mmにカットしたサンプル片を評価に用いた。
【0180】
(酸化剤の製造)
2Lのガラス製三ツ口フラスコ(コスモスビード社製)に25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液209g、超純水791gを混合して、CO含有量が0.5ppmであり、5.2質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を得た。このときのpHは13.8であった。
【0181】
次いで、三ツ口フラスコの内に回転子(AsOne社製、全長30mm×径8mm)を入れ、一つの開口部に温度計保護管(コスモスビード社製、底封じ型)と温度計を投入し、もう一つの開口部に塩素ガスボンベ、および窒素ガスボンベに接続され、任意で塩素ガス/窒素ガスの切換えが可能な状態にしたPFA製チューブ(フロン工業株式会社製、F-8011-02)の先端を該溶液底部に浸漬させ、残りの一つの開口部は5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で満たしたガス洗浄瓶(AsOne社製、ガス洗浄瓶、型番2450/500)に接続した。次に、二酸化炭素濃度が1ppm未満の窒素ガスをPFA製チューブから、0.289Pa・m/秒(0℃換算時)で20分間流すことで気相部の二酸化炭素を追いだした。この時、気相部の二酸化炭素濃度は、1ppm以下であった。
【0182】
その後、マグネットスターラー(AsOne社製、C-MAG HS10)を三ツ口フラスコ下部に設置して300rpmで回転、撹拌し、三ツ口フラスコ外周部を氷水で冷却しながら、塩素ガス(フジオックス社製、仕様純度99.4%)を0.059Pa・m/秒(0℃換算時)で180分間、供給し、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液(酸化剤;3.51質量%相当、0.28mol/L)と水酸化テトラメチルアンモニウム(0.09質量%相当、0.0097mol/L)の混合溶液を得た。この時、反応中の液温は11℃であった。
【0183】
(処理液の製造)
上記操作により得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液と水酸化テトラメチルアンモニウムの混合溶液99.21gに97質量%の臭化テトラメチルアンモニウム(東京化成工業社製)0.79g(0.77質量%相当、0.05mol/L、臭素元素量として0.40質量%)を添加し、表1~表4に記載された組成の処理液100gを得た。ここで、表3に記載の水とは酸化剤が次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムである場合には塩化テトラメチルアンモニウムを含んだ水のことである。
【0184】
(評価)
製造した直後の処理液のpH、ルテニウムのエッチング速度、RuOガス発生量、次亜臭素酸イオン濃度を評価した。ルテニウムのエッチング速度の評価は、上記「ルテニウムのエッチング速度の算出方法」により行った。RuOガス発生量の評価は、上記「RuOガスの定量分析」により行った。次亜臭素酸イオン濃度の評価は、上記「次亜臭素酸イオン濃度の算出方法」により行った。エッチング速度の安定性評価は次の通り行った。製造した処理液のエッチング速度を、10時間毎に上記「ルテニウムのエッチング速度の算出方法」により評価した。得られたエッチング速度が製造した直後のエッチング速度に対して±20%以内の増減であった時間を、エッチング速度の安定時間とした。
【0185】
<実施例2~23、比較例1~3>
実施例2~23、比較例1~3は、臭素含有化合物濃度、酸化剤濃度、塩基化合物濃度、pHが、表1~表4に示した組成となるように実施例1と同様の方法で処理液を調製し、実施例1と同様に準備したルテニウム膜(サンプル片)を用いて評価を行った。なお、比較例1,2は処理前後の膜厚変化量が5オングストローム未満であったため、Ruはエッチングされていないと判断した。そのためRuOガスの評価は行わなかった。実施例19、22では、臭素含有化合物として臭化水素酸(酸性)を用い、酸化剤及び塩基化合物を含む水溶液(アルカリ性)と混合して次亜臭素酸イオンを含む水溶液(アルカリ性)を調整した後、ルテニウムのエッチングを実施しているが、他の実施例同様、ルテニウムのエッチング速度が大きく、エッチング速度の安定性に優れ、RuOガス抑制効果が高いことが確認できた。
【0186】
<実施例24>
(酸化剤および塩基化合物を含有する溶液の調製)
実施例1に記載の酸化剤の製造方法にて、酸化剤濃度、塩基化合物濃度、pHが、表6に示した組成となるような、酸化剤および塩基化合物を含有する溶液(A液)を調製した。
【0187】
(臭素含有化合物を含有する溶液の調製)
97質量%の臭化テトラメチルアンモニウム(東京化成工業社製)3.97g(3.85質量%相当、0.25mol/L)、25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液0.354g、超純水95.6gを混合して、表6に示した組成となるような、臭素含有化合物を含有する溶液(B液)を調製した。
(処理液の製造)
上記の操作により得られたA液80gへB液20gを添加し、表1~表4に記載された組成の処理液100gを得た。
【0188】
(評価)
得られた処理液について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。
<実施例25~30>
実施例25~30は、臭素含有化合物濃度、酸化剤濃度、塩基化合物濃度、pHが、表1~表4の組成となるよう、表6に示した組成、混合比および混合方法に従い、実施例24と同様の方法で処理液を調製し、評価を行った。表6中の反応時間は、A液とB液の混合後にエッチングレートが安定化するまでの時間、すなわち次亜臭素酸イオン(BrO)濃度が安定化するまでの時間を意味し、次亜臭素酸イオン濃度を1分毎に測定した際の濃度変化が±5%以内に収まるまでの時間である。
<実施例31>
(処理液の製造)
超純水94.43gへ、オルト過ヨウ素酸(富士フィルム和光純薬製)1.14g(1.14質量%相当、0.05mol/L)および臭化テトラメチルアンモニウム(東京化成製、97質量%)0.79g(0.77質量%相当、0.05mol/L)を加え3時間放置したのち、25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液をpHが11になるまで添加する事で、表1~表4に記載された組成の処理液100gを得た。
【0189】
(評価)
得られた処理液について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。
<実施例32>
(処理液の製造)
超純水78.21gへ、臭化テトラメチルアンモニウム(東京化成工業社製、97質量%)0.79g(0.77質量%相当、0.05mol/L)および25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液16.0gを加えたのち、オルト過ヨウ素酸(富士フィルム和光純薬製)5.0g(5.0質量%相当、0.22mol/L)を添加する事で、表1~表4に記載された組成の処理液100gを得た。
【0190】
(評価)
得られた処理液について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。
<実施例33~35>
実施例33~35は、表7に記載の条件に従い実施例1と同様の方法により酸化剤を製造し、臭素含有化合物濃度、酸化剤濃度、塩基化合物濃度、pHが、表1~表4に示した組成となるように実施例1と同様の方法で処理液を調製した。実施例1と同様の方法で評価を行った。
<実施例36>
(臭化テトラメチルアンモニウムの製造)
25%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(富士フイルム和光純薬工業社製)9.12gに超純水90.88gを加えて2.28%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を調製した。次に47%臭化水素酸(東京化成工業社製)4.3gに超純水95.7gを加えて2.02%臭化水素酸を調製した。2.28%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液50gと2.02%臭化水素酸50gを混合することで、表9に記載の臭化テトラメチルアンモニウム水溶液100gを得た。
(処理液の製造)
実施例1と同様の方法により得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液と水酸化テトラメチルアンモニウムの混合溶液80gに、3.85%臭化テトラメチルアンモニウム水溶液20gを加えることで表1~4に記載された組成の処理液100gを得た。
(評価)
得られた処理液について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。
【0191】
<実施例37>
実施例3と同様の方法で、表1~表4に記載の組成の処理液を得た。製造した直後の処理液のpH、二酸化ルテニウムのエッチング速度、RuOガス発生量、次亜臭素酸イオン濃度を評価した。二酸化ルテニウムのエッチング速度の評価は、上記「二酸化ルテニウムのエッチング速度の算出方法」により行った。RuOガス発生量の評価は、上記「RuOガスの定量分析」により行った。次亜臭素酸イオン濃度の評価は、上記「次亜臭素酸イオン濃度の算出方法」により行った。エッチング速度の安定性評価は次の通り行った。製造した処理液のエッチング速度を、10時間毎に上記「二酸化ルテニウムのエッチング速度の算出方法」により評価した。得られたエッチング速度が製造した直後のエッチング速度に対して±20%以内の増減であった時間を、エッチング速度の安定時間とした。
【0192】
<実施例38>
臭素酸ナトリウム(和光純薬製)0.075g(0.05mol/L)を含む、表1に示す実施例1と同じ濃度の臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物を含むpH12の処理液を調製した。得られた処理液について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。
【0193】
<実施例39>
臭素酸ナトリウム(和光純薬製)0.075g(0.05mol/L)を含む、表1に示す実施例10と同じ濃度の臭素含有化合物、酸化剤、塩基化合物を含むpH12の処理液を調製した。を得られた処理液について、実施例1と同様の方法にて評価を行った。
【0194】
表1~表5に、処理液の組成および各評価結果を示す。表5に示したように、比較例1および2では、ルテニウムは全くエッチングされておらず、エッチングが可能であった比較例3においても、エッチングレートおよび安定性は低く、RuOガスの発生量は許容値の2倍高かったため、エッチングレート、安定性、RuOガス抑制能の全てを満たす事はできなかった。対して、本実施例の処理液は、いずれも、ルテニウムのエッチング速度が速いだけでなく、エッチング速度の安定性に優れ、さらに、RuOガス抑制効果が高く、上記3つの性能を満足する事を確認した。実施例24~30の結果から、これらの処理液は、エッチングレートが安定化するまでの時間が1時間以内と十分早い事を確認した。実施例37は実施例3と同じ次亜臭素酸イオン濃度および同じpHの処理液であるが、二酸化ルテニウムに対しても高いエッチング性能を有することが確認できた。実施例38、39では処理液中にBrO,BrO ,Brが存在することで、エッチング速度の安定性が向上した。
【0195】
【表1】
【0196】
【表2】
【0197】
【表3】
【0198】
【表4】
【0199】
【表5】
【0200】
【表6】
【0201】
【表7】
【0202】
【表8】
【0203】
【表9】