(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ロール式粉砕機による粉砕物の製造方法及びロール式粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 4/02 20060101AFI20220401BHJP
A23L 7/00 20160101ALI20220401BHJP
B02C 4/06 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B02C4/02
A23L7/00
B02C4/06
(21)【出願番号】P 2017185547
(22)【出願日】2017-09-27
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】酒井 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】保阪 亜祐実
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-066190(JP,A)
【文献】特開平03-178348(JP,A)
【文献】特公昭30-004414(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00- 7/18
B02C 9/00-11/08
B02C 15/00-17/24
B02C 19/00-25/00
A23L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する一対のロールの間隙に原料粉粒体を通し、前記原料粉粒体を粉砕し粉砕物を得る粉砕工程と、
前記粉砕物をサンプリングするサンプリング工程と、
前記サンプリング工程においてサンプリングされたサンプルの粒度分布を測定する測定工程と、
前記測定工程において測定された前記サンプルの粒度分布に
基づいて前記一対のロールの間隙を、調整機構に調整させる調整制御工程と、を有し、
前記サンプリング工程は、前記一対のロールの粉砕領域のロール長手方向における一方側の予め定められた範囲の前記粉砕物のサンプリングである第1サンプリング、及び前記一対のロールの粉砕領域の前記ロール長手方向における他方側の予め定められた範囲の前記粉砕物のサンプリングである第2サンプリングを行い、
前記測定工程は、前記第1サンプリングでサンプリングされた第1サンプルの粒度分布である第1の粒度分布、及び前記第2サンプリングでサンプリングされた第2サンプルの粒度分布である第2の粒度分布の測定を行い、
前記調整制御工程は、前記第1の粒度分布に基づいて前記一対のロールの前記ロール長手方向における一方側の間隙を前記調整機構に調整させ、前記第2の粒度分布に基づいて前記一対のロールの前記ロール長手方向における他方側の間隙を前記調整機構に調整させることを特徴とするロール式粉砕機による粉砕物の製造方法。
【請求項2】
前記調整
制御工程においては、
前記第1の粒度分布に基づいて算出される前記第1サンプルの特性値が特性値の目標値よりも大きいときは、前記一対のロールの
前記ロール長手方向における一方側の間隙を特性値が小さくなるように
前記調整機構に調整させ、前記第1サンプルの特性値が特性値の目標値よりも小さいときは、前記一対のロールの一方側の間隙を特性値が大きくなるように
前記調整機構に調整させ、
前記第2の粒度分布に基づいて算出される前記第2サンプルの特性値が特性値の目標値よりも大きいときは、前記一対の
ロールの前記ロール長手方向における他方側の間隙を特性値が小さくなるように
前記調整機構に調整させ、前記第2サンプルの特性値が特性値の目標値よりも小さいときは、前記一対のロールの他方側の間隙を特性値が大きくなるように
前記調整機構に調整させ、
前記特性値は、(1)光回折法における、体積による中位径、(2)光回折法における、粒径による中位径、(3)予め定めた篩目で篩った際の篩下の重量、(4)予め定めた篩目で篩った際の篩下の体積、(5)予め定めた目開きの異なる複数の篩で篩った場合の最頻の粒径、(6)各粒径領域ごとに分離し、密度を測定し、最も密度が高い領域の粒子径、(7)各粒径領域ごとに分離し、密度を測定し、最も密度が低い領域の粒子径、(8)各粒径領域ごとに分離し、表面積を測定し、最も単位重量当たりの表面積が大きい粒子径、(9)各粒径領域ごとに分離し、表面積を測定し、最も単位重量当たりの表面積が小さい粒子径の少なくとも一つであることを特徴とする
請求項1記載のロール式粉砕機による粉砕物の製造方法。
【請求項3】
前記調整
制御工程において、前記一対のロールの間隙の調整限界の下限または上限に調整した場合でも前記サンプルの特性値が前記予め定められた範囲内にならない場合に警報を発することを特徴とする
請求項2記載のロール式粉砕機による粉砕物の製造方法。
【請求項4】
前記一対のロールは、セモリナを必要粒度に粉砕するリダクション工程で用いられるスムースロールであることを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載のロール式粉砕機による粉砕物の製造方法。
【請求項5】
回転する一対のロールの間隙に原料粉粒体を通し、前記原料粉粒体を粉砕し粉砕物を得る粉砕装置と、
前記粉砕装置で粉砕された前記粉砕物をサンプリングするサンプリング機構と、
前記サンプリング機構においてサンプリングされたサンプルの粒度分布を測定する測定装置と、
前記測定装置において測定された前記サンプルの粒度分布に基づいて
前記一対のロールの間隙を調整する調整機構に前記一対のロールの間隔を調整させる調整制御部と、を備え、
前記サンプリング機構は、前記一対のロールの粉砕領域のロール長手方向における一方側の予め定められた範囲の前記粉砕物のサンプリングを行う第1サンプリング機構、及び前記一対のロールの粉砕領域の前記ロール長手方向における他方側の予め定められた範囲の前記粉砕物のサンプリングを行う第2サンプリング機構を備え、
前記測定装置は、前記第1サンプリング機構でサンプリングされた第1サンプルの粒度分布である第1の粒度分布の測定を行う第1測定装置、及び前記第2サンプリング機構でサンプリングされた第2サンプルの粒度である第2の粒度分布の測定を行う第2測定装置を備え、
前記調整機構は、前記第1の粒度分布に基づいて前記一対のロールの前記ロール長手方向における一方側の間隙を調整する第1調整機構、及び前記第2の粒度に基づいて前記一対のロールの前記ロール長手方向における他方側の間隙を調整する第2調整機構を備え、
前記調整制御部は、前記一対のロールの前記ロール長手方向における一方側の間隙を前記第1調整機構に調整させ、前記一対のロールの前記ロール長手方向における他方側の間隙を前記第2調整機構に調整させることを特徴とするロール式粉砕機。
【請求項6】
前記第1測定装置及び前記第2測定装置は、1つの装置であることを特徴とする
請求項5記載のロール式粉砕機。
【請求項7】
前記調整制御部は、
前記第1の粒度分布に基づいて算出される前記第1サンプルの特性値が特性値の目標値よりも大きいときは、前記一対のロールの一方側の間隙を特性値が小さくなるように
前記第1調整機構に調整させ、前記第1サンプルの特性値が特性値の目標値よりも小さいときは、前記一対のロールの一方側の間隙を特性値が大きくなるように
前記第1調整機構に調整させ、
前記第2の粒度分布に基づいて算出される前記第2サンプルの特性値が特性値の目標値よりも大きいときは、前記一対のロールの他方側の間隙を特性値が小さくなるように
前記第2調整機構に調整させ、前記第2サンプルの特性値が特性値の目標値よりも小さいときは、前記一対のロールの他方側の間隙を特性値が大きくなるように
前記第2調整機構に調整させ、
前記特性値は、(1)光回折法における、体積による中位径、(2)光回折法における、粒径による中位径、(3)予め定めた篩目で篩った際の篩下の重量、(4)予め定めた篩目で篩った際の篩下の体積、(5)予め定めた目開きの異なる複数の篩で篩った場合の最頻の粒径、(6)各粒径領域ごとに分離し、密度を測定し、最も密度が高い領域の粒子径、(7)各粒径領域ごとに分離し、密度を測定し、最も密度が低い領域の粒子径、(8)各粒径領域ごとに分離し、表面積を測定し、最も単位重量当たりの表面積が大きい粒子径、(9)各粒径領域ごとに分離し、表面積を測定し、最も単位重量当たりの表面積が小さい粒子径の少なくとも一つであることを特徴とする
請求項5または6記載のロール式粉砕機。
【請求項8】
前記調整機構において、前記一対のロールの間隙の調整限界の下限または上限に調整した場合でも前記サンプルの特性値が前記予め定められた範囲内にならない場合に警報を発する警報部を備えることを特徴とする請求項7記載のロール式粉砕機。
【請求項9】
前記一対のロールは、
セモリナを必要粒度に粉砕するリダクション工程で用いられるスムースロールであることを特徴とする
請求項5~8の何れか一項に記載のロール式粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する一対のロールの間隙を通すことで原料粉粒体を粉砕して粉砕物を得るロール式粉砕機による粉砕物の製造方法及びロール式粉砕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小麦を製粉して小麦粉を作る製粉工程における小麦を挽く工程である挽砕工程においては、まず、精選した小麦のブレーキングが行われる。ブレーキングには、目立てロールであるブレーキロールを備えたロール式粉砕機が使用され、ブレーキングにより種々の粒度の小麦の破砕片(セモリナ)を得る。次にブレーキングにより得たセモリナをシフターにより篩分し、皮部から分離するグレーディングを行う。なお皮部には、かなりの胚乳部が付着しているので、これは次の段階のブレーキロールを備えたロール式粉砕機で再度破砕される。次にグレーディングにより取り除けなかった皮部をセモリナから取り除くピューリフィケーションを行う。
【0003】
次にピューリフィケーションにより純化された、選別、篩分けされたセモリナを細かく砕いて必要な粒度の小麦粉にするリダクションを行う。リダクションには、目の立っていない滑面ロールであるスムースロールを備えたロール式粉砕機を使用する。次にリダクションにおいて必要な粒度に粉化された小麦粉から残っている皮部を篩分けする。なお、小麦の粉砕を行うロール式粉砕機は、特許文献1などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでリダクションにおいては、セモリナの品質を劣化させないように段階を経てセモリナを粉砕していく必要がある。従ってスムースロールを備えたロール式粉砕機を複数段用いており、それぞれのスムースロールを備えたロール式粉砕機により得られる最適なセモリナの品質が規定されている。
【0006】
従来は作業員がスムースロールを備えたロール式粉砕機により粉砕されたセモリナの回収を行い、ロール温度等のロール式粉砕機の運転状況を見ながら手動によりロール式粉砕機のスムースロールの間隙を調整していた。
【0007】
しかしながら、作業員が粉砕されたセモリナの粒度に関する特性値を求め、この粒度に関する特性値に基づいて手動によりロール式粉砕機のロール間隙を調整する場合には、作業員の作業負荷が大きくなり、ロール間隙の調整を頻繁に行うことは困難であった。また、作業員ごとにロール間隙の調整精度にばらつきが生じるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、選別、篩分けされたセモリナを常時予め規定された粒度に粉砕するロール式粉砕機による粉砕物の製造方法及びロール式粉砕機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロール式粉砕機による粉砕物の製造方法は、回転する一対のロールの間隙に原料粉粒体を通し、前記原料粉粒体を粉砕し粉砕物を得る粉砕工程と、前記粉砕物をサンプリングするサンプリング工程と、前記サンプリング工程においてサンプリングされたサンプルの粒度分布を測定する測定工程と、前記測定工程において測定された前記サンプルの粒度分布に基づいて算出される前記サンプルの特性値が予め定められた範囲内になるように前記一対のロールの間隙を調整する調整工程、を有することを特徴とする。
【0010】
また本発明のロール式粉砕機による粉砕物の製造方法は、前記サンプリング工程においては、前記一対のロールの粉砕領域の一方側の予め定められた範囲の前記粉砕物のサンプリングである第1サンプリング、及び前記一対のロールの粉砕領域の他方側の予め定められた範囲の前記粉砕物のサンプリングである第2サンプリングを行い、前記測定工程においては、前記第1サンプリングでサンプリングされた第1サンプルの粒度分布である第1の粒度分布、及び前記第2サンプリングでサンプリングされた第2サンプルの粒度分布である第2の粒度分布の測定を行い、前記調整工程においては、前記第1の粒度分布に基づいて算出される前記第1サンプルの特性値が予め定められた範囲内になるように前記一対のロールの一方側の間隙を調整し、前記第2の粒度分布に基づいて算出される前記第2サンプルの特性値が予め定められた範囲内になるように前記一対のロールの他方側の間隙を調整することを特徴とする。
【0011】
また本発明のロール式粉砕機による粉砕物の製造方法は、前記調整工程においては、前記第1サンプルの特性値が特性値の目標値よりも大きいときは、前記一対のロールの一方側の間隙を特性値が小さくなるように調整し、前記第1サンプルの特性値が特性値の目標値よりも小さいときは、前記一対のロールの一方側の間隙を特性値が大きくなるように調整し、前記第2サンプルの特性値が特性値の目標値よりも大きいときは、前記一対のローの他方側の間隙を特性値が小さくなるように調整し、前記第2サンプルの特性値が特性値の目標値よりも小さいときは、前記一対のロールの他方側の間隙を特性値が大きくなるように調整することを特徴とする。
【0012】
また本発明のロール式粉砕機による粉砕物の製造方法は、前記調整工程において、前記一対のロールの間隙の調整限界の下限または上限に調整した場合でも前記サンプルの特性値が前記予め定められた範囲内にならない場合に警報を発することを特徴とする。
【0013】
また本発明のロール式粉砕機による粉砕物の製造方法は、前記一対のロールがセモリナを必要粒度に粉砕するリダクション工程で用いられるスムースロールであることを特徴とする。
【0014】
また本発明のロール式粉砕機による粉砕物の製造方法は、前記一対のロールが前記リダクション工程で用いられる複数のスムースロールのうち、上段側に設置されている前記スムースロールであることを特徴とする。
【0015】
本発明のロール式粉砕機は、回転する一対のロールの間隙に原料粉粒体を通し、前記原料粉粒体を粉砕し粉砕物を得る粉砕装置と、前記粉砕装置で粉砕された前記粉砕物をサンプリングするサンプリング機構と、前記サンプリング機構においてサンプリングされたサンプルの粒度分布を測定する測定装置と、前記測定装置において測定された前記サンプルの粒度分布に基づいて算出される前記サンプルの特性値が予め定められた範囲内になるように前記一対のロールの間隙を調整する調整機構と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また本発明のロール式粉砕機は、前記サンプリング機構が前記一対のロールの粉砕領域の一方側の予め定められた範囲の前記粉砕物のサンプリングを行う第1サンプリング機構、及び前記一対のロールの粉砕領域の他方側の予め定められた範囲の前記粉砕物のサンプリングを行う第2サンプリング機構を備え、前記測定装置が前記第1サンプリング機構でサンプリングされた第1サンプルの粒度分布である第1の粒度分布の測定を行う第1測定装置、及び前記第2サンプリング機構でサンプリングされた第2サンプルの粒度である第2の粒度分布の測定を行う第2測定装置を備え、前記調整機構が前記第1の粒度分布に基づいて算出される前記第1サンプルの特性値が予め定められた範囲内になるように前記一対のロールの一方側の間隙を調整する第1調整機構、及び前記第2の粒度に基づいて算出される前記第2サンプルの特性値が予め定められた範囲内になるように前記一対のロールの他方側の間隙を調整する第2調整機構を備えることを特徴とする。
【0017】
また本発明のロール式粉砕機は、前記第1測定装置及び前記第2測定装置が1つの装置であることを特徴とする。
【0018】
また本発明のロール式粉砕機は、前記第1調整機構は、前記第1サンプルの特性値が特性値の目標値よりも大きいときは、前記一対のロールの一方側の間隙を特性値が小さくなるように調整し、前記第1サンプルの特性値が特性値の目標値よりも小さいときは、前記一対のロールの一方側の間隙を特性値が大きくなるように調整し、前記第2調整機構は、前記第2サンプルの特性値が特性値の目標値よりも大きいときは、前記一対のロールの他方側の間隙を特性値が小さくなるように調整し、前記第2サンプルの特性値が特性値の目標値よりも小さいときは、前記一対のロールの他方側の間隙を特性値が大きくなるように調整することを特徴とする。
【0019】
また本発明のロール式粉砕機は、前記調整機構において、前記一対のロールの間隙の調整限界の下限または上限に調整した場合でも前記サンプルの特性値が前記予め定められた範囲内にならない場合に警報を発する警報部を備えることを特徴とする。
【0020】
また本発明のロール式粉砕機は、前記一対のロールは、前記セモリナを必要粒度に粉砕するリダクション工程で用いられるスムースロールであることを特徴とする。
【0021】
また本発明のロール式粉砕機は、前記一対のロールは、前記リダクション工程で用いられる複数のスムースロールのうち、上段側に設置されている前記スムースロールであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、選別、篩分けされたセモリナを常時予め規定された粒度に粉砕するロール式粉砕機による粉砕物の製造方法及びロール式粉砕機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施の形態に係る小麦製粉における挽砕工程を示す図である。
【
図2】(a)は実施の形態に係る挽砕工程で使用するスムースロールを備えたロール式粉砕機の構成を示す上面から見た模式図、(b)は側面から見た模式図である。
【
図3】実施の形態に係るスムースロールを備えたロール式粉砕機のシステム構成を示す図である。
【
図4】実施の形態に係るスムースロールを備えたロール式粉砕機で粉砕されたセモリナの粒度分布制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、実施の形態に係る小麦の製粉における挽砕工程について説明する。
図1は実施の形態に係る小麦製粉における挽砕工程を示す図である。
図1に示すようまずブレーキング工程において精選した小麦のブレーキングが行われる。即ち精選した小麦を目立てロールであるブレーキロールを備えたロール式粉砕機(1Bロール)により破砕し、種々の粒度の小麦の破砕片(セモリナ)を得る。次にグレーディング工程において、1Bロールによるブレーキングにより得たセモリナをシフターにより篩分し、皮部から分離する。なお皮部には、かなりの胚乳部が付着しているので、皮部はブレーキング工程に戻され、次の段階のブレーキロールを備えたロール式粉砕機(2Bロール)で再度破砕される。
【0025】
同様にブレーキング工程において、2Bロールによるブレーキングにより得たセモリナは、グレーディング工程においてシフターにより篩分され、皮部から分離される。分離された皮部はブレーキング工程に戻され、次の段階のブレーキロールを備えたロール式粉砕機(3Bロール)で再度破砕される。またブレーキング工程において、3Bロールによるブレーキングにより得たセモリナは、グレーディング工程においてシフターにより篩分され、皮部から分離される。分離された皮部はブレーキング工程に戻され、次の段階のブレーキロールを備えたロール式粉砕機(4Bロール)で再度破砕される。またブレーキング工程において、4Bロールによるブレーキングにより得たセモリナは、グレーディング工程においてシフターにより篩分され、皮部から分離される。このグレーディングにより篩分けされた皮部は、大ふすま、または小ふすまとして取り出される。
【0026】
グレーディング工程においては、ブレーキング工程において皮部から分離されセモリナがシフターにより粒度別に分けられる。
【0027】
次にピューリフィケーション工程において、グレーディング工程において粒度別に分けられたセモリナのそれぞれについて、グレーディングにより取り除けなかった皮部を取り除く。取り除かれた皮部は、小ふすまとして取り出される。
【0028】
次にリダクション工程において、ピューリフィケーション工程において純化され、選別、篩分けされたセモリナを細かく砕いて必要な粒度の小麦粉にする。リダクション工程においては、複数段のロール式粉砕機10,11,12,13,14,15,16を使用し、段階を経て順次セモリナを細かく砕いて必要な粒度の小麦粉にする。なおロール式粉砕機10,11,12,13,14,15,16は、目の立っていない滑面ロールであるスムースロールを備えたロール式粉砕機であり、ロール式粉砕機10,11,12,13,14,15,16により順次セモリナを細かく砕いて必要な粒度の小麦粉にするために、各ロール式粉砕機10,11,12,13,14,15,16毎に、粉砕した小麦粉の粒度分布の目標値である目標粒度分布が規定されている。
【0029】
リダクション工程において、各ロール式粉砕機10,11,12,13,14,15,16により必要な粒度に粉化された小麦粉は、篩分けされ皮部を小ふすまとして取り除く。また篩分けされた小麦粉は、粒度に応じて下流側に配置されている各ロール式粉砕機により再度粉砕される。
【0030】
図2(a)、(b)は、実施の形態に係るスムースロールを備えたロール式粉砕機10の構成を示す図である。ロール式粉砕機10は一対のスムースロール10a,10bを有し、回転する一対のスムースロール10a,10bの間隙に原料粉粒体であるセモリナを通し、セモリナを粉砕し粉砕物である小麦粉を得るロール式粉砕機である。
【0031】
ロール式粉砕機10は、一対のスムースロール10a,10bの粉砕領域の一方側の予め定められた範囲の小麦粉(第1サンプル)のサンプリングを行う第1サンプリング機構20a、及び一対のスムースロール10a,10bの粉砕領域の他方側の予め定められた範囲の小麦粉(第2サンプル)のサンプリングを行う第2サンプリング機構20bを備えている。また第1サンプリング機構20aでサンプリングされた第1サンプルの粒度分布である第1の粒度分布の測定を行う第1粒度分布測定装置21a、及び第2サンプリング機構20bでサンプリングされた第2サンプルの粒度分布である第2の粒度分布の測定を行う第2粒度分布測定装置21bを備えている。
【0032】
更に第1粒度分布測定装置21aにより測定された第1の粒度分布に基づいて算出される第1サンプルの特性値が予め定められた範囲内になるように、一対のスムースロール10a,10bの一方側の間隙を調整する第1間隙調整機構22a、及び第2粒度分布測定装置21bにより測定された第2の粒度分布に基づいて算出される第2サンプルの特性値が予め定められた範囲内になるように、一対のスムースロール10a,10bの他方側の間隙を調整する第2間隙調整機構22bを備えている。
【0033】
ここで特性値は、(1)光回折法における、体積による中位径、(2)光回折法における、粒径による中位径、(3)予め定めた篩目で篩った際の篩下の重量、(4)予め定めた篩目で篩った際の篩下の体積、(5)予め定めた目開きの異なる複数の篩で篩った場合の最頻の粒径、(6)各粒径領域ごとに分離し、密度を測定し、最も密度が高い領域の粒子径、(7)各粒径領域ごとに分離し、密度を測定し、最も密度が低い領域の粒子径、(8)各粒径領域ごとに分離し、表面積を測定し、最も単位重量当たりの表面積が大きい粒子径、(9)各粒径領域ごとに分離し、表面積を測定し、最も単位重量当たりの表面積が小さい粒子径、などである。
【0034】
図3は、実施の形態に係るロール式粉砕機10のシステム構成の一部を示す図である。ロール式粉砕機10は、装置の全体を統括的に制御する制御部30を備えている。制御部30には、ロール式粉砕機10により粉砕された粉砕物である小麦粉の特性値の目標値である目標特性値を入力する入力部32、入力部32により入力された目標特性値を記憶する記憶部34が接続されている。また、制御部30には、一対のスムースロール10a,10bの間隙を調整限界の上限又は下限まで調整した場合においても、粉砕物である小麦粉の特性値が目標特性値にならない場合に警報を発する警報部33、入力部32により入力された目標特性値の値や、警報部による警報の表示を行う表示部31が接続されている。
【0035】
更に、第1サンプリング機構20a、第2サンプリング機構20b、第1粒度分布測定装置21a、第2粒度分布測定装置21b、第1間隙調整機構22a、第2間隙調整機構22bが接続されている。ここでロール式粉砕機10の第1サンプリング機構20a、第2サンプリング機構20b、第1粒度分布測定装置21a、第2粒度分布測定装置21b、第1間隙調整機構22a、第2間隙調整機構22b、制御部30、表示部31、入力部32、警報部33、記憶部34がスムースロール10a,10bの間隙を調整する間隙調整部を構成している。
【0036】
図4は、実施の形態に係るロール式粉砕機を用いてセモリナを必要粒度に粉砕するロール式粉砕機による粉砕物の製造方法を示すフローチャートである。ロール式粉砕機10によりセモリナの粉砕を行う場合には、第1サンプリング機構20aにより一対のスムースロール10a,10bの粉砕領域の一方側の予め定められた範囲の粉砕物である小麦粉のサンプリング(第1のサンプリング)を行う(ステップS11)。次に第1粒度分布測定装置21aにより第1サンプリング機構20aでサンプリングされた第1サンプルの粒度分布(第1の粒度分布)の測定を行い(ステップS12)、第1の粒度分布を制御部30に送信する。
【0037】
また第2サンプリング機構20bにより一対のスムースロール10a,10bの粉砕領域の他方側の予め定められた範囲の粉砕物である小麦粉のサンプリング(第2のサンプリング)を行う(ステップS13)。
【0038】
次に第2粒度分布測定装置21bにより第2サンプリング機構20bでサンプリングされた第2サンプルの粒度粒度分布(第2の粒度分布)の測定を行い、第2の粒度分布を制御部30に送信する(ステップS14)。
【0039】
次に制御部30は、第1粒度分布測定装置21aにより測定された第1の粒度分布に基づいて算出される第1サンプルの特性値が記憶部34に記憶されている目標特性値になるように、一対のスムースロール10a,10bの一方側の間隙を調整する第1調整値を算出する(ステップS15)。また制御部30は、第2粒度分布測定装置21bにより測定された第2の粒度分布に基づいて算出される第2サンプルの特性値が記憶部34に記憶されている目標特性値になるように、一対のスムースロール10a,10bの他方側の間隙を調整する第2調整値を算出する(ステップS16)。
【0040】
次に制御部30は、第1調整値、第2調整値が一対のスムースロール10a,10bの間隙の調整限界の上限又は下限内であるか否かを判別し(ステップS17)、上限又は下限を超えている場合には、警報部33により警報を発する(ステップS20)。即ち一対のスムースロール10a,10bの間隙の調整限界の下限または上限に調整した場合でも第1サンプルの特性値又は第2サンプルの特性値が目標特性値にならない場合に警報を発する。
【0041】
第1調整値、第2調整値が一対のスムースロール10a,10bの間隙の調整限界の上限又は下限内である場合には、第1調整値を第1間隙調整機構22aに送信し、第1間隙調整機構22aにより第1調整値に基づいて一対のスムースロール10a,10bの一方側の間隙を調整する(ステップS18)。
【0042】
ここで第1間隙調整機構22aは、第1サンプルの特性値が特性値の目標値よりも大きいときは、一対のスムースロール10a,10bの一方側の間隙を特性値が小さくなるように調整し、第1サンプルの特性値が特性値の目標値よりも小さいときは、一対のスムースロール10a,10bの一方側の間隙を特性値が大きくなるように調整する。
【0043】
また第2調整値を第2間隙調整機構22bに送信し、第2間隙調整機構22bにより第2調整値に基づいて一対のスムースロール10a,10bの他方側の間隙を調整する(ステップS19)。
【0044】
ここで第2間隙調整機構22bは、第2サンプルの特性値が特性値の目標値よりも大きいときは、一対のスムースロール10a,10bの他方側の間隙を特性値が小さくなるように調整し、第2サンプルの特性値が特性値の目標値よりも小さいときは、一対のスムースロール10a,10bの他方側の間隙を特性値が大きくなるように調整する。そしてステップS11に戻り、ステップS11~S20の処理を繰り返す。
【0045】
なおロール式粉砕機11,12,13,14,15,16の構成は、ロール式粉砕機10の構成と同様に間隙調整部を備えたものであっても、間隙調整部を備えていないものであってもよいが、ロール式粉砕機11,12,13,14,15,16の中で上段側に設置されているロール式粉砕機は、間隙調整部を備えていることが好ましい。
【0046】
この実施の形態に係るロール式粉砕機による粉砕物の製造方法及びロール式粉砕機によれば、作業員の負担を増大させることなく一定時間間隔で繰り返しロール式粉砕機のロール間隙の調整を行うことができることから、製造される小麦粉を高品質なものとすることができる。また作業員ごとにロール間隙の調整精度にばらつきが生じるという問題も解消することができる。
【0047】
なお上述の実施の形態においては、第1粒度分布測定装置21aと、第2粒度分布測定装置21bを備えているが、1つの粒度分布測定装置により、第1サンプリング機構20aでサンプリングされた第1サンプルの粒度粒度分布(第1の粒度分布)の測定を行い、更に第2サンプリング機構20bでサンプリングされた第2サンプルの粒度粒度分布(第2の粒度分布)の測定を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10,11,12,13,14,15,16…ロール式粉砕機、10a,10b…スムースロール、20a…第1サンプリング機構、20b…第2サンプリング機構、21a…第1粒度分布測定装置、21b…第2粒度分布測定装置、22a…第1間隙調整機構、22b…第2間隙調整機構、30…制御部、31…表示部、32…入力部、33…警報部、34…記憶部