(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】熱電変換素子、熱電変換モジュール、及び移動体
(51)【国際特許分類】
H01L 35/32 20060101AFI20220401BHJP
H01L 35/14 20060101ALI20220401BHJP
H01L 35/30 20060101ALI20220401BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H01L35/14
H01L35/30
H02N11/00 A
(21)【出願番号】P 2017220412
(22)【出願日】2017-11-15
【審査請求日】2020-07-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田所 准
(72)【発明者】
【氏名】菊地 大輔
(72)【発明者】
【氏名】味村 裕
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-030187(JP,A)
【文献】特開2006-319210(JP,A)
【文献】実開昭57-071358(JP,U)
【文献】特開2006-125341(JP,A)
【文献】特許第4285665(JP,B2)
【文献】実開昭59-058961(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/32
H01L 35/14
H01L 35/30
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型熱電変換材料を有するp型熱電変換材料部と、n型熱電変換材料を有するn型熱電変換材料部とが接合された熱電変換素子であって、
前記p型熱電変換材料部と前記n型熱電変換材料部は、いずれも棒状部材であり、前記p型熱電変換材料部と前記n型熱電変換材料部の一側面同士が対向し、対向する両側面のうち前記棒状部材の高さ方向一端側部分同士のみが接合されており、
前記対向する両側面同士の接合部分は、前記対向する両側面のうち一方の側面を正面視した場合に、前記棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側と他端側とで、前記棒状部材の高さ方向に平行な方向の長さが異なる形状である熱電変換素子。
【請求項2】
前記対向する両側面のうち一方の側面を正面視した場合、前記対向する両側面同士の接合部分の形状は、直角三角形、台形、又は弧形である請求項1に記載の熱電変換素子。
【請求項3】
前記p型熱電変換材料がp型Siクラスレート化合物であり、前記n型熱電変換材料がn型Siクラスレート化合物である請求項1又は請求項2に記載の熱電変換素子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱電変換素子を備える熱電変換モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の熱電変換モジュールを搭載した移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱電変換素子、熱電変換モジュール、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、p型熱電変換材料を有するp型熱電変換材料部112とn型熱電変換材料を有するn型熱電変換材料部111とを直接的に接合して断面U字状に形成した熱電変換素子が開示されている(
図9を参照)。このU字状熱電変換素子のp型熱電変換材料部112とn型熱電変換材料部111は、いずれも四角柱状部材であり、互いに対向する側面のうち四角柱状部材の高さ方向一端側部分同士が直接的に接合されて接合部分121が形成され、他端側部分は離間していてスリット131が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱電変換素子は、実装時等に振動や衝撃を受けたり、使用時等に熱サイクル環境下に置かれて熱応力を受けたりするため、接合部分に亀裂が生じやすく、接合部分が分離すると熱電変換素子の熱電性能が消失してしまうという問題があった。特に、熱電変換素子が特定の方向からの熱を利用して発電するという使用形態の場合には、接合部分に大きな温度分布が生じて、その熱応力により接合部分に損傷が生じるおそれがあった。
本発明は、特定の方向からの熱を利用して発電するという使用形態の場合であっても、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部の接合部分に損傷が生じにくい熱電変換素子、熱電変換モジュール、及び移動体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る熱電変換素子は、p型熱電変換材料を有するp型熱電変換材料部と、n型熱電変換材料を有するn型熱電変換材料部とが接合された熱電変換素子であって、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部は、いずれも棒状部材であり、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部の一側面同士が対向し、対向する両側面のうち棒状部材の高さ方向一端側部分同士のみが接合されており、対向する両側面同士の接合部分は、対向する両側面のうち一方の側面を正面視した場合に、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側と他端側とで、棒状部材の高さ方向に平行な方向の長さが異なる形状であることを要旨とする。
【0006】
本発明の別の態様に係る熱電変換モジュールは、上記一態様に係る熱電変換素子を備えることを要旨とする。
本発明のさらに別の態様に係る移動体は、上記別の態様に係る熱電変換モジュールを搭載したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の方向からの熱を利用して発電するという使用形態の場合であっても、熱電変換素子のp型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部の接合部分に損傷が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る熱電変換素子の一実施形態の構造を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の熱電変換素子の要部を説明する断面図である。
【
図3】変形例の熱電変換素子の構造を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図3の熱電変換素子の要部を説明する断面図である。
【
図5】p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部の接合部分の形状の例を示す図である。
【
図6】
図1~4の熱電変換素子の作用効果を、従来の熱電変換素子と比較しつつ模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明に係る熱電変換モジュールの一実施形態の構造を模式的に示す図である。
【
図8】従来の熱電変換素子の構造を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について、以下に詳細に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0010】
本実施形態の熱電変換素子は、
図1に示すように、p型熱電変換材料を有するp型熱電変換材料部12と、n型熱電変換材料を有するn型熱電変換材料部11とが接合された熱電変換素子であって、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11は、いずれも棒状部材であり、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の一側面同士が対向し、対向する両側面のうち棒状部材の高さ方向一端側部分同士のみが接合されている。対向する両側面同士の接合部分21は、対向する両側面のうち一方の側面を正面視した場合に、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側と他端側とで、棒状部材の高さ方向に平行な方向の長さが異なる形状である。
【0011】
詳述すると、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11は、同一形状の四角柱状部材であり、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の一側面同士が、外縁を一致させて対向している。そして、対向する両側面のうち柱状部材の高さ方向一端側部分同士(
図1の例では、柱状部材の上端側部分同士)のみが、電極等を介することなく直接的に接合されて接合部分21が形成されているとともに、柱状部材の高さ方向他端側部分(
図1の例では、柱状部材の下端側部分)は離間していてスリット31が形成されている。よって、
図1の熱電変換素子は、全体として断面U字状に形成されている。p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11との接合方法は、両者が物理的且つ電気的に接続されるならば、特に限定されない。
【0012】
次に、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の接合部分21について、
図1、2を参照しながら詳述する。
図2は、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11を接合部分21において分離して、接合部分21を含むp型熱電変換材料部12の側面を正面視した模式図である。
【0013】
図2において接合部分21は、以下のような形状をなしている。すなわち、接合部分21は、棒状部材の高さ方向(
図2においては上下方向)に直交する方向(
図2においては左右方向)の一端側と他端側とで、棒状部材の高さ方向に平行な方向の長さが異なる形状をなしている。
図2から分かるように、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側(
図2においては左側)の長さaよりも他端側(
図2においては右側)の長さbの方が長い。換言すれば、接合部分21の正面視形状は台形状であり、長さの異なる2つの底辺が、接合部分21の前記一端側の辺と他端側の辺となっている。
【0014】
接合部分21の正面視形状は台形状に限定されるものではなく、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側と他端側とで長さが異なる形状であるならば、他の形状でも差し支えない。例えば、接合部分21の正面視形状は、
図3、4に示すように直角三角形でもよい。
図3、4に示す変形例の場合には、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側(
図4においては左側)の長さaはゼロとなっている。
【0015】
あるいは、
図5の(c)に示すように弧形でもよい。
図5の(c)に示す変形例の場合には、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側(
図5においては左側)の長さaはゼロとなっている。なお、弧形とは、曲線上の2点の間にある部分の形状を意味する。
【0016】
このように、接合部分21の正面視形状は、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側と他端側とで長さが異なる形状であるならば、特に限定されるものではなく、
図5の(a)、(b)、(c)にまとめて示すように、直角三角形等の三角形、台形、弧形など、種々の形状を取り得る。
【0017】
なお、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の形状は、四角柱状に限定されず他の柱状であってもよく、例えば、三角柱状、六角柱状等の多角柱状であってもよいし、円柱状、半円柱状であってもよい。また、多角柱状、円柱状、半円柱状等のどのような柱状の場合でも、直角柱状、斜角柱状のいずれであってもよい。さらに、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の形状は、接合して熱電変換素子を形成することが可能であればよく、例えば角錐状、角錐台状、円錐状、円錐台状、楕円体状でもよい。さらに、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の形状は、同一でなくてもよい。
【0018】
p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11のそれぞれの両端部のうち、接合部分21が存在する側の端部(
図1の例では上端部)を高温側端部とし、スリット31が存在する側の端部(
図1の例では下端部)を低温側端部とする。低温側端部には、ハンダ、金属ペースト等の接合方法を用いて電極及び配線を接続する。そして、高温側端部を加熱するなどして高温側端部と低温側端部との間に温度差を設ければ、熱電変換素子の熱電作用により発電することができる。本実施形態の熱電変換素子は、例えば廃熱発電に利用可能である。廃熱の発生源は特に限定されるものではないが、自動車、電車、航空機、船舶等の移動体があげられる。また、工場、焼却場、発電所等の産業・民生用プロセスにおいて発生する廃熱も利用可能である。
【0019】
本実施形態の熱電変換素子は、U字状熱電変換素子ではあるものの、上記のように、従来のU字状熱電変換素子とは異なる構造を有している。すなわち、
図8に示す従来のU字状熱電変換素子の場合には、p型熱電変換材料部112とn型熱電変換材料部111の接合部分121の正面視形状は、
図6の(b)に示すように矩形であり、棒状部材の高さ方向に直交する方向(
図6においては上下方向)の一端側の長さと他端側の長さは同一である。これに対して、本実施形態の熱電変換素子は、上記のように、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の接合部分21の正面視形状は、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側の長さと他端側の長さが異なる形状である。
【0020】
このような構造の差異によって、本実施形態の熱電変換素子は、特定の方向からの熱を利用して発電するという使用形態の場合であっても、熱電変換素子のp型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の接合部分21に損傷が生じにくいという優れた特性を有している。したがって、本実施形態の熱電変換素子は、
図8に示す従来のU字状熱電変換素子に比べて、熱電性能が消失しにくい。本実施形態の熱電変換素子がこのような特性を有するメカニズムについては、後に詳述する。
【0021】
また、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11が電極を介することなく直接的に接合されているため、p型熱電変換材料部と電極との間、及び、n型熱電変換材料部と電極との間の両接合界面に化合物層が形成されることがない場合や、熱電変換材料部と電極の間において線膨張係数に大きな差がない場合がある。そのため、例えば熱電変換素子を直火で加熱した後に水冷するなど、熱電変換素子に高い負荷が作用するような使い方がなされたとしても、熱電変換素子に割れ、クラック等の損傷が発生し難く、耐久性が高い。さらに、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の接合界面における抵抗値がほぼゼロとなるため、発電量を増大することができ、発電効率を向上することができる。また、部品数が少なくて済むため、組み立てコストを低減することができる。
【0022】
なお、p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11の少なくとも一方には、接合された一側面以外の面に開口する貫通孔又は有底穴を設けてもよい。使用時に高温側端部と低温側端部との温度差が大きくなるように貫通孔又は有底穴を設ければ、熱電変換素子の熱電性能を向上させることができる。p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11の少なくとも一方には、貫通孔と有底穴のいずれか一方を設けてもよいし、両方を設けてもよい。また、貫通孔と有底穴を設ける個数は、いずれも1個でもよいし複数個でもよい。
【0023】
ここで、本実施形態の熱電変換素子が「接合部分21に損傷が生じにくい」という優れた特性を有するメカニズムについて、
図3を参照しながら詳細に説明する。
図3の(b)は従来のU字状熱電変換素子であるが、p型熱電変換材料部112のn型熱電変換材料部111に対向する側面を正面視した場合に、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一方側(
図3の例では下側)から炎150等の熱源を用いて熱電変換素子を加熱すると、熱電変換素子の温度は熱源に近い側から遠い側に向かって順に上昇していくため、正面視矩形の接合部分121には大きな温度分布が生じることとなる。
【0024】
詳述すると、
図3の(b)の例では、接合部分121の温度は、炎150による加熱を受ける下側の角部が最も高温となり、この下側の角部を基点として同心円状に温度分布が生じ、下側の角部の対角の位置にある上側の角部が最も低温となる。
図3の(b)においては、破線により温度分布を示している。
【0025】
一方、
図3の(a)は本実施形態の熱電変換素子であるが、p型熱電変換材料部12のn型熱電変換材料部11に対向する側面を正面視した場合に、
図3の(b)の例と同様に、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一方側(
図3の例では下側)から炎50等の熱源を用いて熱電変換素子を加熱しても、正面視直角三角形の接合部分21には大きな温度分布が生じることはない。
【0026】
詳述すると、
図3の(a)の例でも、接合部分21の温度は、炎50による加熱を受ける下側の角部が最も高温となり、この下側の角部を基点として同心円状に温度分布が生じ、下側の角部に対向する直角三角形の斜辺の部分が最も低温となる。
図3の(a)においても、破線により温度分布を示している。
図3の(a)と(b)との比較から、両者ともに温度分布は生じているものの、温度分布を示す破線の数から考えて、接合部分21と接合部分121が同面積であっても本実施形態の熱電変換素子の方が従来の熱電変換素子よりも大きな温度分布が生じにくいことが分かる。
【0027】
よって、本実施形態の熱電変換素子は、特定の方向からの熱を利用して発電するという使用形態の場合であっても、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の接合部分21に大きな温度分布が生じにくいので、接合部分21にその熱応力による損傷が生じにくい。
【0028】
ただし、特定の方向からの熱を利用して本実施形態の熱電変換素子で発電する場合に上記の優れた特性を発現するためには、特定の方向からの熱は、熱電変換素子の高温側端部の「特定の部分」で受ける必要がある。すなわち、接合部分21に大きな温度分布が生じにくい部分で、特定の方向からの熱を受ける必要がある。この「特定の部分」は、以下の通りである。
【0029】
前述したように、接合部分21を含むp型熱電変換材料部12の側面を正面視した場合に、接合部分21は、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側と他端側とで、棒状部材の高さ方向に平行な方向の長さが異なる形状をなしているが、接合部分21の一端側と他端側のうち棒状部材の高さ方向に平行な方向の長さが長い方の部分において、特定の方向からの熱を受ける必要がある。すなわち、
図2の例であれば、長さaよりも長さbの方が長いので、高温側端部のうち
図2における右側の部分で、特定の方向からの熱を受ける必要がある。したがって、
図6の(a)では、接合部分21は、
図6における上端側よりも下端側の方が棒状部材の高さ方向に平行な方向の長さが長い形状を有しているので、高温側端部のうち
図6における下側の部分で、炎50による加熱を受けている。
【0030】
よって、本実施形態の熱電変換素子は、火炎のような一方向に熱を発する熱源を利用して発電する熱電変換モジュールに好適に使用できる。本実施形態の熱電変換素子を用いて構成された熱電変換モジュールについて説明する。例えば、
図7に示す熱電変換モジュール60は、
図1又は
図3に示す本実施形態の熱電変換素子と、p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11を電気的に直列に接続する低温側配線42と、熱電変換素子及び低温側配線42を固定する低温側絶縁基板41と、電力を取り出す端子43、43と、を備えている。
【0031】
そして、本実施形態の熱電変換モジュール60は、
図7に示すように、複数の熱電変換素子が環状に並べられており、一の熱電変換素子が有するp型熱電変換材料部12の低温側端部と、別の熱電変換素子が有するn型熱電変換材料部11の低温側端部とが、低温側配線42を介して電気的に直列に配列された構成を有している。
【0032】
低温側絶縁基板41は、p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11と、低温側配線42とを固定する機能を備え、さらに熱電変換モジュール60から均一に放熱させる機能を備える。
低温側配線42の材料は、導電性金属であればよく、Cu、Ag、Alなどが使用できる。低温側絶縁基板41の材料は、低温側配線42との間を絶縁できる材料である必要があり、例えばアルミナが使用できる。
【0033】
本実施形態の熱電変換モジュール60においては、p型熱電変換材料部12とn型熱電変換材料部11の接合部分21のうち前述の一端側と他端側とで長さが長い方の部分が、熱源に対向して熱を受けるように、各熱電変換素子を配置する。例えば、接合部分21の一端側と他端側とで長さが長い方の部分を鉛直方向上方に向けた場合には、熱電変換モジュール60よりも鉛直方向上方に熱源を配置する。
【0034】
このような本実施形態の熱電変換モジュール60は、ガスコンロ、ガスバーナー、アルコールランプ等の燃焼炎を利用する燃焼装置に搭載してもよい。そうすれば、燃焼装置の燃焼熱を利用して発電することができる。また、このような本実施形態の熱電変換モジュール60は、自動車等の移動体に搭載してもよい。その際には、移動体の廃熱を利用した発電に使用できる。
【0035】
次に、本実施形態の熱電変換素子に用いられる熱電変換材料について説明する。p型熱電変換材料及びn型熱電変換材料の種類は特に限定されるものではないが、例えば600℃以上の熱源を用い且つ大気中での使用(例えば直火加熱)を想定するならば、Siクラスレート化合物等のクラスレート化合物を用いることができる。クラスレート化合物を用いる場合は、p型熱電変換材料及びn型熱電変換材料の少なくとも一方をクラスレート化合物とすればよい。
【0036】
p型熱電変換材料及びn型熱電変換材料の少なくとも一方をクラスレート化合物とすれば、p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11の電気伝導性が高くなり、熱の伝導性を低減できる。そのため、高温側端部と低温側端部の間の温度差が増大され、発電量を増大することができる。また、p型熱電変換材料とn型熱電変換材料を、構造の類似しているSiクラスレート化合物とすれば、接合部分21の接合強度が向上し、熱電変換素子が損傷しにくい。なお、p型熱電変換材料及びn型熱電変換材料は、Siクラスレート化合物を主成分としていれば、添加物や不純物を少量含有していてもよい。
【0037】
ここで、Siクラスレート化合物について説明する。Siクラスレート化合物は、複数のSi原子によって構成された結晶格子の内部空間にゲスト原子が封じ込められた化合物であり、化学式AxBySizで表すことができる。化学式AxBySiz中のAはバリウム(Ba)であってもよい。また、化学式AxBySiz中のBはガリウム(Ga)及びアルミニウム(Al)であってもよいし、銅(Cu)又はニッケル(Ni)であってもよい。
【0038】
あるいは、p型熱電変換材料として使用する場合は、化学式AxBySiz中のBは、Ga、Al、Cu、Ni、金(Au)及び白金(Pt)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の元素であればよい。一般的に、BがAu又はPtであるときに、Siクラスレート化合物がp型熱電変換材料を形成する傾向にある。
【0039】
また、p型熱電変換材料及びn型熱電変換材料として使用する場合は、化学式AxBySiz中のAとしてBaを選択し、BとしてGa及びAlを選択したBa-Ga-Al-Siクラスレート化合物が好ましい。Ba-Ga-Al-Siクラスレート化合物は、主に、基本的な格子がSiのクラスレート格子から構成され、Ba原子がその内部に内包され、クラスレート格子を構成する原子の一部がGa、Alで置換された構造を有している。このクラスレート化合物は、Ba、Ga、Si、Alが同時に含まれた化合物である。
【0040】
Ba-Ga-Al-Siクラスレート化合物の化学式BaaGabAlcSidの組成比a、b、c、dは、概ねa+b+c+d=54という関係を有する。また、Ga、Al、Siの各組成比b、c、dは、概ねb+c+d=46という関係を有する。これらの関係を満たせば、当該Ba-Ga-Al-Siクラスレート化合物はSiクラスレート相を主体とするものとなり、理想的な結晶構造をとり得る。
【0041】
Ga、Al以外の元素でも置換されたSiクラスレート化合物を、熱電変換材料として使用することも可能である。例えば、化学式BaaGabAlcCudNieAufPtgSihで表されるSiクラスレート化合物があげられる。このSiクラスレート化合物のBa、Ga、Al、Cu、Ni、Au、Pt、Siの各組成比a、b、c、d、e、f、g、hは、概ねa+b+c+d+e+f+g+h=54という関係を有する。また、Ga、Al、Cu、Ni、Au、Pt、Siの各組成比b、c、d、e、f、g、hは、概ねb+c+d+e+f+g+h=46という関係を有する。これらの関係を満たせば、当該Siクラスレート化合物はSiクラスレート相を主体とするものとなり、理想的な結晶構造をとり得る。
【0042】
例えば化学式BaaGabAlcSihで表される化合物がSiクラスレート化合物となる組成は、7≦a≦9、0≦b≦15、0≦c≦15、27≦h≦35である。また、例えば化学式BaaCudSihで表される化合物がSiクラスレート化合物となる組成は、7≦a≦9、2≦d≦10、36≦h≦44である。さらに、例えば化学式BaaNieSihで表される化合物がSiクラスレート化合物となる組成は、7≦a≦9、1≦e≦7、39≦h≦45である。さらに、例えば化学式BaaAufSihで表される化合物がSiクラスレート化合物となる組成は、7≦a≦9、2≦f≦10、36≦h≦44である。さらに、例えば化学式BaaPtgSihで表される化合物がSiクラスレート化合物となる組成は、7≦a≦9、1≦g≦7、39≦h≦45である。
【0043】
Ba-Ga-Al-Siクラスレート化合物に少量の添加物、不純物が含まれた化合物を、Siクラスレート化合物として使用してもよい。すなわち、化学式BaaGabAlcSidXxで表されるBa-Ga-Al-Si-X系のクラスレート化合物を使用してもよい。ここで、Xはホウ素(B)、Pdである。ホウ素(B)やPdは、ゼーベック係数を上昇させるのに有用な場合がある。
【0044】
Ba-Ga-Al-Si-X系のクラスレート化合物の化学式BaaGabAlcSidXxのBa、Ga、Al、Si、Xの各組成比a、b、c、d、xは、概ねa+b+c+d+x=54という関係を有する。なお、Ba-Ga-Al-Si-X系のクラスレート化合物に少量の添加物、不純物が含まれた化合物を、Siクラスレート化合物として使用してもよい。
【0045】
次に、本実施形態の熱電変換素子の製造方法の一例について説明する。まず、Siクラスレート化合物の製造方法を説明する。所定の原子組成を有し且つ均一なSiクラスレート化合物のインゴットを製造する。まず、所望の原子組成となるように、所定量の原料(Eu、Ba、Sr、Ga、Al、Si等)を秤量し混合する(混合工程)。原料は、元素単体であってもよいし、合金や化合物であってもよい。また、その形状は、粉末でも片状でも塊状でもよいが、短時間で均質に混ざり合った状態とするためには、微細な粉末状が好ましい。ただし、Baについては、酸化を防ぐために塊状が好ましい。なお、Siの原料として単体のSiではなくAl-Siの母合金を用いると、融点を低下させることができる。
【0046】
次に、混合した原料を加熱し、溶融させる(溶融工程)。溶融方法は特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。溶融方法としては、例えば、抵抗発熱体による加熱溶解、高周波誘導溶解、アーク溶解、プラズマ溶解、電子ビーム溶解などがあげられる。溶融の際に原料を入れるルツボの素材としては、グラファイト、アルミナ、コールドクルーシブル等が、加熱方法に応じて用いられる。溶融は、原料の酸化を防ぐために、不活性ガス雰囲気下又は真空雰囲気下で行うことが好ましい。
【0047】
加熱時間としては、全ての原料が液体状態で均質に混ざり合う時間が必要とされるが、Siクラスレート化合物の製造に要するエネルギー量を考慮して、加熱時間を短時間としてもよい。例えば、加熱時間は、1分間以上100分間以下としてもよく、さらに1分間以上10分間以下としてもよく、1分間以上5分間以下としてもよい。また、溶融時には、機械的又は電磁的な方法により攪拌を加えてもよい。
【0048】
続いて、溶融した原料からインゴットを製造する。インゴットの製造方法は特に限定されるものではなく、鋳型を用いて鋳造してもよいし、ルツボ中で凝固させてもよい。そして、できあがったインゴットを均質化するために、インゴットを加熱してアニール処理を施してもよい。
【0049】
得られたインゴットをボールミル等を用いて粉砕すると、微粒子状のSiクラスレート化合物を得ることができる。得られる微粒子は、焼結性を向上するために細かい粒度とすることが好ましい。例えば、微粒子の粒径は、好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上75μm以下である。
【0050】
所望の粒径の微粒子とするために、ボールミル等でインゴットを粉砕した後に、粒度を調整してもよい。粒度の調整方法としては、ISO3310-1に規定されたレッチェ社製試験ふるいとレッチェ社製ふるい振とう機AS200デジットを用いたふるい分け等があげられる。ふるい分けをガスアトマイズ法等の各種アトマイズ法やフローイングガスエバポレーション法等に変えて、微粉末を製造してもよい。
【0051】
次に、p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11の製造方法を説明する。得られた微粒子状のSiクラスレート化合物を焼結して、均質で空隙の少ない所定形状(例えば四角柱状等の柱状)の焼結体(p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11)を得ることができる。焼結方法としては、放電プラズマ焼結法、ホットプレス法、熱間等方圧加圧焼結法などを用いることができる。
【0052】
放電プラズマ焼結法を用いる場合は、その焼結の一条件となる焼結温度は、好ましくは600℃以上1000℃以下であり、より好ましくは900℃以上1000℃以下である。焼結時間は、好ましくは1分間以上10分間以下であり、より好ましくは3分間以上7分間以下である。焼結圧力は、好ましくは40MPa以上80MPa以下であり、より好ましくは50MPa以上70MPa以下である。
【0053】
焼結温度が600℃未満では焼結が完了しないおそれがあり、焼結温度が1000℃超過では微粒子状のSiクラスレート化合物が溶融する場合がある。焼結時間が1分未満では密度が低くなるおそれがあり、焼結時間が10分を超えると焼結が完了・飽和し、それ以上時間をかける意義がないと考えられる。
【0054】
特に、焼結工程では、微粒子状のSiクラスレート化合物を上記焼結温度まで加熱してその温度で上記焼結時間保持し、その後に当該Siクラスレート化合物を加熱前の温度まで冷却する。この場合、微粒子状のSiクラスレート化合物を焼結温度まで加熱する工程とその温度で保持している工程とでは加圧状態とし、その後の当該Siクラスレート化合物を冷却する工程では加圧状態を解除する。かかる圧力操作によれば、Siクラスレート化合物の焼結体の焼結工程での割れを抑制することができる。
【0055】
焼結工程により得られたp型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11のそれぞれの焼結体を接合して、接合体を作製する(接合工程)。例えば、p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11が同一形状の四角柱状部材である場合には、それぞれの一側面同士を外縁が一致するように対向させ、対向する両側面のうち四角柱状部材の高さ方向一端側部分同士のみを直接的に接合する。焼結体の接合には、拡散接合法を用いることが望ましい。
【0056】
あるいは、上記の焼結工程と接合工程を同時に行って、p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11の接合体を製造してもよい。すなわち、スリット31を有する接合体を形成するための焼結型に、p型熱電変換材料の微粒子とn型熱電変換材料の微粒子とを層状に重ねて充填し、焼結することにより、p型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11が接合された
図1に示すような形状の接合体を、一段の工程で製造することができる。
【0057】
このようにして得られたp型熱電変換材料部12及びn型熱電変換材料部11が直接接合された接合体を所望の形状に整形加工することにより(整形加工工程)、熱電変換素子を製造する。あるいは、所望の形状を有する焼結型を用意して、上記の焼結工程、接合工程、整形加工工程を一段の工程で行ってもよい。
このような第一実施形態の熱電変換素子は、
図8に示すような従来の熱電変換素子に比べて、製造方法が容易であり、低コストである。
【0058】
〔実施例〕
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
(熱電変換素子の作製)
純度99%以上の高純度のBaと、純度99.9%以上の高純度のAl、Ga、Si、Auを、以下に示す配合比率(配合量(単位はg))で混合して、原料混合物A、Bを得た(混合工程)。原料混合物Aの配合比率は、Ba:12.8g、Al:3.0g、Ga:7.7g、Si:8.9gである。原料混合物Bの配合比率は、Ba:14.4g、Si:14.4g、Au:14.5gである。
【0059】
得られた原料混合物A、Bをそれぞれ水冷銅ハース上に載置し、Ar(アルゴン)雰囲気中において300Aの電流で1分間アーク溶解した後に、水冷銅ハース上で常温まで冷却することによりインゴットを得た。原料の不均一を解消するためにインゴットを反転して、再度アーク溶解を行った後に上記と同様に冷却した。このような工程を5回繰り返して、Siクラスレート化合物を有するインゴットを得た(インゴット製造工程)。
【0060】
次に、インゴットの均一性を高めるために、アルゴン雰囲気中においてインゴットを900℃で6時間加熱するアニール処理を施した(アニール処理工程)。なお、得られたインゴットの組成は、各元素の固溶限や第二相、第三相の生成に伴い、原料の仕込み組成(配合比率)とは若干ずれることがある。
【0061】
得られたインゴットを、メノウ製遊星ボールミルを用いて粉砕し、微粒子を得た(粉砕工程)。このとき、得られた微粒子の粒径が75μm以下となるように、ISO3310-1規格のレッチェ社製試験ふるいとレッチェ社製ふるい振とう機AS200デジットを用いて、粒度を調整した。
【0062】
得られた各微粒子の性能を確認するために、特性評価用焼結体を作製した。焼結型に各微粒子を充填し、放電プラズマ焼結法(SPS法)を用いて焼結を行った。焼結時には、圧力50MPaまで加圧した後に加熱した。真空雰囲気下にて焼結を行ったが、Arガスなどの不活性雰囲気下で焼結を行ってもよい。焼結型の表面を測温することで、900~1050℃程度まで加熱を行い、その温度で5分間焼結をしてから加圧状態を解除し、室温まで冷却して特性評価用焼結体を得た。冷却時の温度が500℃以上の状態では、特性評価用焼結体を真空雰囲気下で保持することが好ましいが、500℃未満では大気雰囲気下で保持しても差し支えない。
【0063】
なお、各微粒子は、それぞれ原子組成が異なることから、いずれもSiクラスレート化合物であるものの、好適な焼結温度は異なる。焼結温度が低すぎると、低密度な焼結体となり割れの原因となりうる。また、焼結温度が高すぎると、サンプルが溶融するおそれがある。そのため、温度と焼結の進行度合いとを確認しながら、それぞれ好適な焼結温度を選択する必要がある。
このようにして原料混合物Aから得られた特性評価用焼結体は、n型熱電変換特性を示し、原料混合物Bから得られた特性評価用焼結体は、p型熱電変換特性を示した。
【0064】
得られた各微粒子がn型熱電変換特性又はp型熱電変換特性を示すことが確認できたので、これら微粒子から、
図1に示すものと同形状の熱電変換素子を作製した。すなわち、得られた各微粒子を、スリットを有する接合体を形成するための焼結型に充填して焼結を行い、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部とが接合されてなる熱電変換素子を作製した。焼結型には、まず原料混合物Aから得られた微粒子を充填し、その上に原料混合物Bから得られた微粒子を層状に重ねて充填した。このとき、原料混合物Aから得られた微粒子の層の上面をなるべく水平に形成し、原料混合物Aから得られた微粒子の層と原料混合物Bから得られた微粒子の層との境界が水平になることが望ましい。
【0065】
なお、原料混合物Aから得られた微粒子と原料混合物Bから得られた微粒子の混合物を、原料混合物Aから得られた微粒子の層と原料混合物Bから得られた微粒子の層との間に配して焼結してもよい。そうすれば、原料混合物Aから得られた微粒子の層と原料混合物Bから得られた微粒子の層との境界において、固相拡散をより促進することができるので、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部とがより強固に接合される。
【0066】
焼結方法としては、放電プラズマ焼結法(SPS法)を用いた。焼結時には、圧力50MPaまで加圧した後に加熱した。真空雰囲気下にて焼結を行ったが、Arガスなどの不活性雰囲気下で焼結を行ってもよい。焼結型の表面を測温することで、900℃程度まで加熱を行い、その温度で5分間焼結をしてから加圧状態を解除し、室温まで冷却して接合体を得た。
【0067】
このとき、原料混合物Aから得られた微粒子と原料混合物Bから得られた微粒子とが、ともに緻密に焼結されることが望ましいので、焼結温度としては、両者の焼結温度よりも高温の900℃を選択した。また、冷却時の温度が500℃以上の状態では、焼結体を真空雰囲気下で保持することが好ましいが、500℃未満では大気雰囲気下で保持しても差し支えない。
【0068】
このようにして得られたp型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部の接合体を、奥行1mm×幅5mm×高さ5mmの外形寸法に整形して、
図1に示すものと同形状の熱電変換素子を得た。p型熱電変換材料部のn型熱電変換材料部に対向する側面を正面視した場合に、接合部分の形状は台形状であるが、長さの異なる2つの底辺のうち長い方の底辺の長さaは3mm、短い方の底辺の長さbは1mmである。
【0069】
ここで、高さとは、p型熱電変換材料部及びn型熱電変換材料部の互いに対向する側面に沿い且つ高温側端部と低温側端部とを結ぶ方向の長さに相当し、幅とは、p型熱電変換材料部及びn型熱電変換材料部の互いに対向する側面に直交する方向の長さに相当し、奥行とは、p型熱電変換材料部及びn型熱電変換材料部の互いに対向する側面に沿い且つ高温側端部と低温側端部とを結ぶ方向に直交する方向の長さに相当する。
【0070】
なお、p型熱電変換材料とn型熱電変換材料が直接固相拡散することで、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部が直接的に接合できればよいので、上記の方法以外の方法でも接合体を製造することができる。
例えば、原料混合物Aから得られた微粒子を焼結して得られた焼結体を、焼結型内に設置し、そこに原料混合物Bから得られた微粒子を充填して、焼結体の上に原料混合物Bから得られた微粒子を配する。これを、原料混合物Aから得られた微粒子の焼結温度よりも低温で焼結することで、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部が直接的に接合された焼結体が得られる。p型熱電変換材料とn型熱電変換材料の焼結温度が異なる場合には、このような方法を採用することもできる。
【0071】
あるいは、原料混合物Aから得られた微粒子と原料混合物Bから得られた微粒子とを別々に焼結して、各焼結体を接触させた状態で通電接合を行ってもよい。この方法であれば、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部が固相拡散により接合される。
さらには、原料混合物Aから得られた微粒子と原料混合物Bから得られた微粒子とを別々に焼結して、各焼結体を加圧接触させた状態を維持したまま、電気炉等を用いて高温に熱処理する方法を採用することもできる。
【0072】
上記のようにして得られた熱電変換素子の高温側端部を、火炎により加熱した。詳述すると、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部の接合部分の正面視形状は台形であり、棒状部材の高さ方向に直交する方向の一端側と他端側とで、棒状部材の高さ方向に平行な方向の長さが異なる形状を有している。p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部の接合部分のうち前述の一端側と他端側とで長さが長い方の部分が火炎からの熱を受けるように、熱電変換素子を配置した。
【0073】
その結果、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部の接合部分に大きな温度分布が生じなかったため、熱応力による接合部分の損傷が生じにくかった。よって、本実施例の熱電変換素子を使用した熱電変換モジュールや発電装置は、信頼性が非常に高い。
これに対して、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部の接合部分が正面視矩形である従来の熱電変換素子は、高温側端部を火炎により加熱したところ、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部の接合部分に大きな温度分布が生じたため、熱応力による接合部分の損傷が生じた。
【符号の説明】
【0074】
11 n型熱電変換材料部
12 p型熱電変換材料部
21 接合部分
31 スリット
60 熱電変換モジュール