IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製粉株式会社の特許一覧 ▶ 東洋アルミエコープロダクツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-仕切り付容器 図1
  • 特許-仕切り付容器 図2
  • 特許-仕切り付容器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】仕切り付容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220401BHJP
   B65D 1/36 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B65D81/34 W
B65D1/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018001913
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019119511
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】久永 良明
(72)【発明者】
【氏名】中村 保司
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-050052(JP,A)
【文献】特開2000-271004(JP,A)
【文献】米国特許第05322182(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 1/00-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、
底壁の周縁から立ち上がる周壁と、
底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を複数の小部屋に仕切る仕切り壁と、を備え、
前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁の底壁に対する傾斜角度よりも、底壁に対する傾斜角度の小さな、前記底壁との境界、前記周壁との境界、および前記仕切り壁との境界を各辺とする、略多角形状のマイクロ波分散面を有する、仕切り付容器。
【請求項2】
前記マイクロ波分散面は、前記底壁との境界線、前記周壁との境界線、および前記仕切り壁との境界線を三辺とする、略三角形である請求項1に記載の仕切り付容器。
【請求項3】
前記小部屋の角隅部のうち、前記周壁と前記仕切り壁とがなす角度が鋭角の角隅部にのみ、前記マイクロ波分散面を有する、請求項1または2に記載の仕切り付容器。
【請求項4】
前記マイクロ波分散面は、前記仕切り壁の上縁部にまで達していない、請求項1から3のいずれかに記載の仕切り付容器。
【請求項5】
前記マイクロ波分散面の前記底壁に対する傾斜角度は、20~60度である請求項1から4のいずれかに記載の仕切り付容器。
【請求項6】
前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した点と、前記マイクロ波分散面の前記底壁との境界線との距離は、10~30mmである請求項5に記載の仕切り付容器。
【請求項7】
パルプモールド製である請求項1から6のいずれかに記載の仕切り付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納された食品を電子レンジにより加熱調理するのに好適な仕切り付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプモールド製や合成樹脂製の容器に、冷凍食品等の食品を収納してなる食品収納体が市販されている。この種の食品収納体では、容器ごと電子レンジで加熱して、食品の解凍や加熱調理がおこなわれる。
そのような食品収納体に使用可能な容器として、特許文献1のように、収納された複数の食品同士が混ざり合わないように、内部の収納空間を仕切り壁により複数の小部屋に区画し、各小部屋に種類の異なる食品を収納した仕切り付容器もよく用いられている。
【0003】
ここで、電子レンジのマイクロ波は、容器の各小部屋の角隅部等、尖った箇所に集中する性質があること、いわゆるアンテナ効果があることが知られている。また、角隅部等が円弧状に丸みを帯びた形状である場合には、その円弧の中心箇所(円の中心箇所)にマイクロ波が集中することも知られている。
マイクロ波が小部屋の角隅部や角隅部の円弧の中心箇所に集中すると、その箇所の食品が過加熱状態となって焦げ等が発生するとともに、食品の中心箇所などの他の箇所にマイクロ波が照射されず、他の箇所では加熱が不十分になって均一に加熱されない問題がある。
【0004】
仕切り付容器の場合、仕切り壁により区画された各小部屋の角隅部は、仕切り壁と周壁との交わる箇所が平面視で鋭角な場合もあり、そのような尖った角隅部およびその角隅部の円弧の中心箇所には特にマイクロ波が集中しやすく、局所的な過加熱の発生や不均一な加熱の発生が顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-160647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の解決すべき課題は、収納された食品を電子レンジにより加熱調理するのに好適な仕切り付容器について、マイクロ波が仕切り壁の角隅部等に集中して、当該箇所の食品が過剰に加熱されたり、他の箇所の加熱が不十分になることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するため、発明にかかる仕切り付容器を、底壁と、底壁の周縁から立ち上がる周壁と、底壁と周壁により区画される上方に開口する収納空間を複数の小部屋に仕切る仕切り壁と、を備え、前記小部屋の前記底壁と周壁と仕切り壁とが合流する角隅部に、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間のいずれの間にも介在し、かつ周壁および仕切り壁よりも底壁に対する傾斜角度の小さなマイクロ波分散面を有する構成としたのである。
【0008】
このように電子レンジによる加熱調理時にマイクロ波が集中しがちな小部屋の角隅部において、底壁と周壁の間、周壁と仕切り壁の間、および仕切り壁と底壁の間に、平坦なマイクロ波分散面を介在させたので、角隅部がいわば面取りされたような状態となり、角隅部の尖りが低減されて、マイクロ波の集中が抑制される。また、角隅部にマイクロ波分散面が存在しない場合は、底壁と周壁と仕切り壁とがほぼ一点で合流するため、その一点のみ(角隅部が丸みを帯びている場合にはその円弧の中心箇所のみ)にマイクロ波が集中することになるが、マイクロ波分散面が介在することで、集中箇所が複数箇所(底壁と周壁とマイクロ波分散面との合流箇所、周壁と仕切り壁とマイクロ波分散面との合流箇所、仕切り壁と底壁とマイクロ波分散面との合流箇所、の少なくとも3点)に分散される。したがって、小部屋の角隅部に収納された食品の過加熱が抑制される。また、マイクロ波が分散されるため、食品の均一加熱が図られる。
特に、角隅部が丸みを帯びた円弧形状である場合には、マイクロ波分散面が存在すると、角隅部が面取りされて抉られたようになっている分だけ、マイクロ波が集中しがちなその円弧の中心箇所が食品が加熱されにくい小部屋の中央箇所へと近づくため、均一加熱が一層図られる。
【0009】
発明にかかる仕切り付容器において、前記底壁、周壁、仕切り壁の外面がほぼ平坦な場合、前記マイクロ波分散面は、前記底壁との境界線、前記周壁との境界線、および前記仕切り壁との境界線を三辺とする、略三角形となる。
【0010】
発明にかかる仕切り付容器において、前記小部屋の角隅部のうち、前記周壁と前記仕切り壁とがなす角度が鋭角の角隅部にのみ、前記マイクロ波分散面を有する構成を採用するのが好ましい。
このようにすると、小部屋の角隅部のうち、もっともマイクロ波が集中しやすい鋭角の角隅部にはマイクロ波分散面が配されているため、マイクロ波の集中が十分に抑制されることになる。
一方、マイクロ波分散面が設けられた角隅部は、いわば底上げされた状態となって、小部屋の収容量が減少するとともに、その角隅部が浮き上がった状態となるため、容器を机等に載置した際の安定性が低下するおそれがあるが、もともと鋭角の角隅部に比べてマイクロ波が集中しにくい鈍角の角隅部にはマイクロ波分散面を設けないことで、小部屋の減容化や、容器の安定性の向上が図られる。
【0011】
発明にかかる仕切り付容器において、前記マイクロ波分散面は、前記仕切り壁の上縁部にまで達していない構成を採用するのが好ましい。
このようにすると、仕切り付容器が傾く等して、特定の小部屋に収納された比較的流動性の高い食品がマイクロ波分散面に乗り上げた場合にも、そのまま仕切り壁を乗り越えることはないため、隣接する他の小部屋へと流れ込んで他の食品と混ざってしまう事態が防止される。
【0012】
発明にかかる仕切り付容器において、前記マイクロ波分散面の前記底壁に対する傾斜角度は、20~60度である構成を採用するのが好ましい。
マイクロ波分散面の傾斜角度が60度を上回ると、底壁に対する周壁および仕切り壁の立ち上がり角度とあまり変わらなくなり、周壁および仕切り壁とほぼ同一平面となり、また傾斜角度が20度を下回ると、底壁とほぼ同一平面となって、マイクロ波分散効果が十分に得られない恐れがあるからである。
【0013】
発明にかかる仕切り付容器において、前記マイクロ波分散面の前記周壁と前記仕切り壁との境界線上に位置する頂点から前記底壁へと垂直に下した点と、前記マイクロ波分散面の前記底壁との境界線との距離は、10~30mmである構成を採用するのが好ましい。
前記距離が10mmを下回ると、マイクロ波分散面の寸法が小さすぎて、充分なマイクロ波の分散効果が得られない可能性があるからである。
また前記距離が30mmを上回ると、マイクロ波分散面の寸法が大きすぎて、小部屋の収納能力が不十分となり、また容器の静置時における安定性も悪くなる恐れがあるからである。
【0014】
発明にかかる仕切り付容器において、その素材は特に限定されないが、パルプモールド製とすると、廃棄等する際に環境に対する負荷が小さいため好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の仕切り付容器を以上のように構成したので、収納された食品を電子レンジにより加熱調理する際に、マイクロ波が仕切り壁の角隅部等に集中して、当該箇所の食品が過剰に加熱されることを抑制し、併せて、マイクロ波の分散による食品の均一的な加熱が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の仕切り付容器の斜視図
図2】(a)は実施形態の仕切り付容器の平面図、(b)は(a)のA-A線断面図
図3】(a)は図2(a)のB-B線断面図、(b)は図2(a)のC-C線断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ実施形態の仕切り付容器について説明する。
図1から図3に示す実施形態の仕切り付容器10は、内容物たる冷凍食品等の食品の電子レンジによる加熱調理に好適なものであり、マイクロ波が特定の箇所に集中してその箇所の食品が過加熱されることを抑制するものである。
【0018】
実施形態の仕切り付容器10は、図3(b)のように、パルプモールド層10aとパルプモールド層10aの両面に積層された耐水層10bの多層構造となっている。パルプモールド層10aは、葦やサトウキビのようなパルプ材を原料とし、これを成型することで得られる。
その製造方法としては、公知の方法を利用可能であり、たとえば、パルプ懸濁液を準備し、このパルプ懸濁液から網型でパルプを抄き上げ、この抄き上げ物を加熱しながら雌雄のプレス金型によりプレスして、成型物を成型することが例示できる。
【0019】
パルプの種類、バインダーの種類、網型のメッシュ数、加熱温度、プレス圧、プレス時間、雌雄のプレス金型間のクリアランス等は特に限定されない。
パルプモールド層の肉厚も特に限定されないが、小さすぎると強度が確保できず、大きすぎると材料コストが嵩むこと等の理由から、0.2mm~2.0mmであることが好ましい。
耐水層10bは、パルプモールド層10aの両面に合成樹脂を塗工することにより形成されている。また、合成樹脂の塗工に替えて、パルプモールド層10aの両面の全面に熱可塑性フィルムを加熱溶着させることでも形成することができる。この耐水層10bにより、耐水性に劣るパルプモールド層10aに食品の水分が浸み込むのが防止されている。
このような耐水層10bを合成樹脂の塗工により構成する場合、合成樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、アクリル系、スチレン-アクリル系、エチレン-酢酸ビニル系、スチレン-ブタジエンラバー系、ポリビニルアルコール系、塩化ビニリデン系、ワックス系、フッ素系、シリコーン系の樹脂、これらの共重合体およびこれらの組み合わせ等が例示できる。なかでも、水系溶媒が使用できる合成樹脂エマルジョンや水溶性樹脂が好ましい。また、耐水層10bを熱可塑性フィルムにより形成する場合、熱可塑性フィルムの種類は特に限定されないが、ポリプロピレン(PP)系フィルム、ポリエチレン(PE)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)系フィルムが例示できる。
耐水層10bの厚みも特に限定されないが、5~200μmが例示できる。パルプモールド層10aに合成樹脂製の耐水層10bが形成されていても、この程度の厚みの小さなものであれば、容器リサイクル法では、紙容器に分類され、燃焼ごみとして処理可能である。仕切り付容器10の全体がプラスチックで形成されている場合に比較して、環境への負荷が大きいプラスチックの使用量を大幅に削減可能である。
本実施形態における耐水層10bは、パルプモールド層10aの両面に形成されていたが、食品と接する内面のみに形成することもできる。
【0020】
図1から図3のように、実施形態の仕切り付容器10は、底壁11と、周壁12と、仕切り壁13と、マイクロ波分散面14とを備え、上述のようにして、底壁11、周壁12、仕切り壁13およびマイクロ波分散面14が一体に成型されている。
【0021】
図2(a)のように、底壁11は、平面視で略矩形をなしており、その四隅は丸みを帯び、かつその四辺である対向する長辺および対向する短辺がそれぞれ外向きに湾曲して膨らんでいる。図2(b)のように、底壁11の中央部は、底壁11の全体形状と相似形の底上げ部11aとなっており、底壁11の強度向上が図られている。
【0022】
図1から図3のように、周壁12は、底壁11の周縁部から開口に向けて拡がる向きにやや傾斜して立ち上がっている。周壁12は、底壁11の長辺に対応する対向する二つの幅広面と短辺に対応する対向する二つの幅狭面とからなる、丸みを帯びた角筒形をなしている。
周壁12の開口縁の全周には、水平方向かつ外向きに張りだすフランジ12aが付属している。フランジ12aには、上に凸の嵌合部12bが設けられており、図示省略の蓋の周縁部と凹凸が嵌合するようになっている。
底壁11と周壁12により、仕切り付容器10の内部には、上方に開口する収納空間が形成されている。
【0023】
図1および図2のように、仕切り壁13は、収納空間を寸法の異なる二つの小部屋R1、R2に区画している。図示において、R1のほうがR2よりも寸法が大きくなっている。仕切り壁13は底壁11からほぼ垂直に立ち上がり、収納空間を横切ってその両端部がそれぞれ周壁12の対向する幅広面に連結されている。仕切り壁13は、周壁12の幅狭面と平行にはなっておらず、幅狭面に対して傾斜している。仕切り壁13の幅狭面に対する傾斜角度は特に限定されないが、10度~20度であることが例示できる。図示では、約15度である。
このため、図示のように、各小部屋R1、R2の仕切り壁13に隣接する二つの角隅部のうち、平面視で、一方の角隅部における仕切り壁13と周壁12とのなす角度が鋭角となり、他方の角隅部における仕切り壁13と周壁12とのなす角度が鈍角となっている。仕切り壁13の一方の端部においては、大きい方の小部屋R1の角隅部は平面視で鋭角となり、小さい方の小部屋R2の角隅部は平面視で鈍角となっており、仕切り壁13の他方の端部においては、大きい方の小部屋R1の角隅部は平面視で鈍角となり、小さい方の小部屋R2の角隅部は平面視で鋭角となっている。
【0024】
図1および図2(b)のように、仕切り壁13は、中空であって、底壁11上の底部および周壁12上の両端部が開口している。このため、仕切り壁13の内部にマイクロ波が進入可能となっている。
仕切り壁13は、中央の壁本体13aと、両端の連結部13bとからなり、連結部13bは壁本体13aよりも幅広にかつ周壁に向けてその幅が次第に広がるように形成され、また壁本体13aよりも高さが低く形成されている。この連結部13bにより、仕切り付容器10全体の耐折り曲げ性が向上している。壁本体13aの高さは、周壁12の高さよりも低いため、仕切り壁13は、仕切り付容器10の開口縁にまで至っていない。
【0025】
図1および図2のように、平坦な面であるマイクロ波分散面14は、各小部屋R1、R2の4つの角隅部のうち、仕切り壁13と隣接する角隅部であって、かつ平面視で仕切り壁13と周壁12とのなす角度が鋭角となる角隅部にのみ、各小部屋に1つずつ、計2つ設けられている。この仕切り壁13と周壁12とのなす角度が鋭角となるのは、各小部屋に収納する食品の大きさや意匠性等の観点からであるが、当該角度が鋭角になるほど角隅部の過加熱が発生しやすくなってしまう。そこで、後述するマイクロ波分散面を形成することによるマイクロ波分散効果で過加熱の発生が抑制されている。このようなことから、当該角度は90度未満であれば程度の差はあるがマイクロ波分散効果は奏する。しかし、90度に近くなる程角隅部の過加熱はそもそも発生しにくくなるため、当該角度が80度以下である場合にはマイクロ波分散面による効果がより顕著になる。また、当該角度を15度のような非常に鋭角にした場合にはマイクロ波分散面による効果が発揮されるが、一方で当該角度があまりに鋭角になると、当該角度の角隅部を有する小部屋の容量が非常に小さくなる。そのような観点から、当該角度は30度から80度とすることがバランスがよい。ただし、この範囲以外の鋭角に設定することを除外するものではない。かかる角隅部は、仕切り壁13と周壁12と底壁11が合流する箇所であって、マイクロ波分散面14は、仕切り壁13と周壁12との間、周壁12と底壁11との間、底壁11と仕切り壁13との間の、いずれの間にも介在している。
【0026】
マイクロ波分散面14は、略三角形であって、その三辺は、それぞれマイクロ波分散面14と底壁11との境界線、マイクロ波分散面14と周壁12との境界線、マイクロ波分散面14と仕切り壁13との境界線からなる。
マイクロ波分散面14の3つの頂点は、それぞれ仕切り壁13と周壁12の境界線、周壁12と底壁11の境界線、底壁11と仕切り壁13の境界線上に位置しており、仕切り壁13、周壁12、および底壁11の境界のカーブに対応して丸みを帯びている。
マイクロ波分散面14の3つの頂点のうち、仕切り壁13と周壁12の境界線上に位置する頂点(上頂点)は、仕切り壁13の連結部13bの上下方向の中ほどに位置しており、連結部13bの上縁にまで達していない。
また、マイクロ波分散面14の3辺のうち、底壁11との境界線に相当する辺は、底壁11の底上げ部11aと底上げ部以外の箇所とに跨っている。
【0027】
ここで、マイクロ波分散面14の底壁11に対する傾斜角度は、周壁12および仕切り壁13の底壁11に対する立ち上がり角度よりも小さくなっており、周壁12および仕切り壁13と比較して、いわゆる寝た状態にある。
マイクロ波分散面14の底壁11に対する傾斜角度は、周壁12および仕切り壁13の底壁11に対する立ち上がり角度よりも小さい限りにおいて特に限定されないが、20度~60度であるのが好ましく、35度~55度であるのがさらに好ましい。図示では、傾斜角度は約45度である。傾斜角度が20度を下回るとマイクロ波分散面14と底壁11との間の傾斜角度が小さくほぼ面一状態となり、傾斜角度が60度を上回るとマイクロ波分散面14と周壁12および仕切り壁13との間の傾斜角度が小さくほぼ面一状態となり、マイクロ波分散効果が十分に得られない恐れがあるからである。
【0028】
マイクロ波分散面14の寸法は特に限定されないが、図3(b)の高さH(仕切り壁13と周壁12の境界線上に位置する頂点より、底壁11から延長した同一水平面上に下した垂線の長さ)は10mm~30mmであるのが好ましい。また図3(b)の長さL(前記垂線と底壁11から延長した同一水平面との交点とマイクロ波分散面14と底壁11との境界線との距離)は10mm~30mmであるのが好ましく、15mm~25mmであるのがさらに好ましい。高さHおよび長さLともに10mmを下回ると、マイクロ波分散面が小さくなりすぎて分散効果が十分に得られない恐れがあり、30mmを上回ると、マイクロ波分散面が大きくなりすぎて小部屋の角隅部が大きくえぐれたようになって、小部屋の容量が小さくなるとともに、容器を静置した場合の安定性も悪くなる恐れがあるからである。
【0029】
実施形態の仕切り付容器10の構成は以上のようであり、いまこの仕切り付容器10の各小部屋に冷凍食品等の食品を収納したものを、電子レンジにより加熱すると、小部屋の周壁と仕切り壁とが平面視で鋭角に交わる角隅部には、マイクロ波分散面が設けられて、マイクロ波の集中が妨げられているため、当該箇所に収納された食品の過加熱およびその過加熱に伴なう焦げの発生が抑制されている。
また、マイクロ波が当該箇所以外の箇所に分散するため、食品の均一加熱が図られる。
【実施例
【0030】
本発明の実施例および比較例を挙げて、本発明の内容を一層明確にする。
【0031】
図1から図3に示したものと同形のパルプモールド製の実施例の仕切り付容器および比較例の仕切り付容器を準備した。
ここで、各容器の両面には、パルプモールドの両面に、合成樹脂としてサイデン化学株式会社製の商品名サイビノールEK-61(スチレン・アクリル共重合体(アクリル樹脂成分55質量%、スチレン樹脂成分45質量%)、固形分濃度40質量%)を水で希釈したものを塗布し、乾燥させて厚みが約60μmの耐水層を形成した。
各容器のそれぞれ大きい方の小部屋にペンネグラタンを、小さいほうの小部屋に肉団子を等量充填したうえで、冷凍した。
ここで各容器の寸法等は、以下のとおりであり、比較例の仕切り付容器は、マイクロ波分散面が存在しない点を除くと、実施例の仕切り付容器と同形同寸である。
容器の寸法:横23cm(フランジ部含む)×縦17cm(フランジ部含む)×高さ4cm
容器の収納空間(2つに区画された小部屋および仕切り壁を含む)の寸法(収納空間内での最大値):横20.6cm×縦16.3cm×仕切り壁の高さ3.1cm
フランジの幅:0.88cm(連接部含む)
容器の厚み:約1mm
マイクロ波分散面の底壁に対する傾斜角度R:約45度
マイクロ波分散面が形成された角隅部における平面視での仕切り壁と周壁とのなす角度:約75度
マイクロ波分散面の高さH:約20mm
マイクロ波分散面の長さL:約20mm
【0032】
実施例および比較例の食品が充填され冷凍された仕切り付容器を、電子レンジ(株式会社日立製作所製のMRO-GS7 2011年製)により、600Wで6分間加熱し、各小部屋に収納された食品の中心温度と当該食品の最高温度とを、サーモグラフィ(日本アビオニクス株式会社製のThermo GEAR G120)により各3回測定した。
その測定結果に基づいて、中心温度と最高温度の温度差を算出するとともに、過加熱の抑制が実現されているか、均一加熱が実現されているかを評価し、またそれらの総合評価をおこなった。
【0033】
結果を表1に示す。
ここで、表中、過加熱の抑制評価については、最高温度が85℃未満である場合、焦げが発生しにくいとして〇とし、最高温度が85℃以上である場合、焦げが発生しやすいとして×とした。また、均一加熱の評価については、最高温度と中心温度の温度差が5℃以下の場合、均一加熱がほぼ実現されているとして〇とし、5℃超10℃以下の場合、均一加熱が不十分であるとして△とし、10℃超の場合、均一加熱がまったくなされていないとして×とした。
また、総合評価については、過加熱の抑制と均一加熱のいずれもが達成できていないと総合評価としては不十分であるとして、過加熱の抑制評価と均一加熱の評価のいずれか低い方の評価に合わせることとした。
【0034】
【表1】
【0035】
表1からわかるように、実施例ではいずれの測定回でも、過加熱の抑制と均一加熱が実現されているのに対して、比較例ではいずれの測定回でも、過加熱の抑制と均一加熱の少なくともいずれか一方が不十分であって、総合評価として基準を満たすことができなかった。
【0036】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
【0037】
実施形態では、仕切り付容器10を環境への負荷が小さいものとしてパルプモールド製としたが、材質はこれに限定されず、例えば紙製や合成樹脂製としてもよい。合成樹脂の種類も特に限定されず、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示できる。
また実施形態では、仕切り付容器10を平面視で略矩形としたが、仕切り付容器10の形状はこれに限定されず、平面視で円形や楕円形としたり多角形としたりしてもよい。
実施形態では、仕切り付容器10の仕切り壁13を単一のものとしたが、複数の仕切り壁13を並列させたり、直交させたりして設けてもよい。
【0038】
実施形態では、マイクロ波分散面14を小部屋の仕切り壁との境界の角隅部のうち、周壁と仕切り壁とのなす角度が平面視で鋭角の角隅部のみに設けたが、周壁と仕切り壁とのなす角度が平面視で鈍角の角隅部にも設けてもよい。小部屋の角隅部のうち、仕切り壁と隣接しない側の角隅部(たとえば屈曲する周壁により形成される角隅部)にも、マイクロ波分散面を設けてもよい。
実施形態では、マイクロ波分散面14を略三角形のものとしたが、マイクロ波分散面の形状はこれに限定されず、たとえば周壁12が屈曲している場合には、その屈曲に沿った多角形状となる。
実施形態では、マイクロ波分散面14を平坦面状なものとしたが、湾曲面状のものとしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 仕切り付容器
10a パルプモールド層
10b 耐水層
11 底壁
11a 底上げ部
12 周壁
12a フランジ
12b 嵌合部
13 仕切り壁
13a 壁本体
13b 連結部
14 マイクロ波分散面
R1、R2 小部屋
R マイクロ波分散面の傾斜角度
H マイクロ波分散面の高さ
L マイクロ波分散面の長さ
図1
図2
図3