IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニ・チャーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-吸収性物品用の吸収体 図1
  • 特許-吸収性物品用の吸収体 図2
  • 特許-吸収性物品用の吸収体 図3
  • 特許-吸収性物品用の吸収体 図4
  • 特許-吸収性物品用の吸収体 図5
  • 特許-吸収性物品用の吸収体 図6
  • 特許-吸収性物品用の吸収体 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】吸収性物品用の吸収体
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20220401BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/532 200
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020518882
(86)(22)【出願日】2018-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2018018931
(87)【国際公開番号】W WO2019220568
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】宇田 匡志
(72)【発明者】
【氏名】田房 弘光
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-10594(JP,A)
【文献】特開2002-35036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品用の吸収体であって、
厚さ方向において互いに対向する第1面と第2面とを有する吸収性コアと、前記吸収性コアを前記厚さ方向に貫通する複数の開口部とを有し、
前記吸収性コアが、吸水性繊維と、前記吸水性繊維よりも長い長繊維とを含み、
前記開口部が、第1開口部と、前記第1開口部と間隔を空けて第1方向へ並ぶ第2開口部とを有し、
前記長繊維が、前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方の面において、前記第1開口部の周辺に位置する第1長繊維と、前記第2開口部の周辺に位置する第2長繊維とを有し、
前記第1長繊維と前記第2長繊維とが直接的又は他の長繊維を介して間接的に互いに交差することを特徴とする前記吸収体。
【請求項2】
前記第1長繊維が、前記第1開口部と前記第2開口部との間に位置する離間部分を横断して前記第2開口部の周辺まで延びており、前記第2長繊維が、前記離間部分を横断して前記第1開口部の周辺へ延びている請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記開口部が、前記第1方向と直交する第2方向と、前記第1開口部の中心と重なって前記第2方向へ沿って延びる第1仮想線と、前記第2開口部の中心と重なって前記第2方向へ沿って延びる第2仮想線とをさらに有し、前記第1長繊維と前記第2長繊維とが前記第1及び第2仮想線と交差するように前記離間部分を横断している請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記長繊維は、前記第1方向へ延びる第3長繊維をさらに有し、前記第3長繊維が前記第1長繊維及び前記第2長繊維と互いに交差する請求項1~3のいずれかに記載の吸収体。
【請求項5】
前記長繊維の一部が、前記開口部を跨いでいる請求項1~4のいずれかに記載の吸収体。
【請求項6】
前記長繊維は、熱可塑性樹脂繊維であって、平均繊維長が6~70mmである請求項1~5のいずれかに記載の吸収体。
【請求項7】
前記吸収性コアは、超吸収性ポリマー粒子をさらに有し、前記超吸収性ポリマー粒子の質量は、5~400g/mである請求項1~6のいずれかに記載の吸収体。
【請求項8】
前記開口部の1個当たりの面積は12~150mmであって、前記吸収性コアの面積に対する前記複数の開口部の総面積の比率は、1~50%である請求項1~7のいずれかに記載の吸収体。
【請求項9】
前記開口部は、矩形状を有する請求項1~8のいずれかに記載の吸収体。
【請求項10】
前記開口部は、菱形状を有する請求項1~8のいずれかに記載の吸収体。
【請求項11】
前記長繊維は、前記吸収性コアの全体において均一に配置されている請求項1~10のいずれかに記載の吸収体。
【請求項12】
前記長繊維は、前記開口部の開口縁部において他の領域に比べて密に配置されている請求項1~10のいずれかに記載の吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品用の吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品用の吸収体は、公知である。例えば、特許文献1には、透液性シートに包被され、所要の形状に賦形された、パルプ繊維等の(セルロース系)吸収性繊維と、高吸収性ポリマー粒子とを含む吸収性コアを備えた吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-35036号公報(P2002-35036A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された吸収体は、比較的に肉薄であって、吸液性コアを厚さ方向へ貫通する複数の開口部が設けられていることから、好適な通気性を有するとともに、柔軟性に優れ、着用状態において着用者の身体形状に沿うように変形してフィットさせることができる。
【0005】
しかしながら、吸収体が着用者の鼠蹊部間に挟圧された状態で脚部を動かすことによって、開口部の周縁部の形状が崩れてしまい、開口を閉塞するおそれがある。着用中に開口部が閉塞することによって、着用者に違和感を与えたり、通気性及び身体への追従性が低下するおそれがある。かかる事態を避けるために、吸収体を肉厚にしたり、複数の開口部の開口率を低くした場合には、同様に、所望の通気性や変形容易性を発揮することができない。
【0006】
本発明は、従来の吸収性物品用の吸収体の改良であって、着用中に開口部の形状が維持されて、所望の通気性及び変形容易性を発揮することのできる吸収性物品用の吸収体の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、吸収性物品用の吸収体に関する。
【0008】
本発明に係る吸収性物品用の吸収体は、厚さ方向において互いに対向する第1面と第2面とを有する吸収性コアと、前記吸収性コアを前記厚さ方向に貫通する複数の開口部とを有し、前記吸収性コアが、吸水性繊維と、前記吸水性繊維よりも長い長繊維とを含み、前記開口部が、第1開口部と、前記第1開口部と間隔を空けて第1方向へ並ぶ第2開口部とを有し、前記長繊維が、前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方の面において、前記第1開口部の周辺に位置する第1長繊維と、前記第2開口部の周辺に位置する第2長繊維とを有し、前記第1長繊維と前記第2長繊維とが直接的又は他の長繊維を介して間接的に互いに交差することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る吸収性物品用の吸収体は、以下の好ましい実施態様を有する。
(1)前記第1長繊維が、前記第1開口部と前記第2開口部との間に位置する離間部分を横断して前記第2開口部の周辺まで延びており、前記第2長繊維が、前記離間部分を横断して前記第1開口部の周辺へ延びている。
(2)前記開口部が、前記第1方向と直交する第2方向と、前記第1開口部の中心と重なって前記第2方向へ沿って延びる第1仮想線と、前記第2開口部の中心と重なって前記第2方向へ沿って延びる第2仮想線とをさらに有し、前記第1長繊維と前記第2長繊維とが前記第1及び第2仮想線と交差するように前記離間部分を横断している。
(3)前記長繊維は、前記第1方向へ延びる第3長繊維をさらに有し、前記第3長繊維が前記第1長繊維及び前記第2長繊維と互いに交差する。
(4)前記長繊維の一部が、前記開口部を跨いでいる。
(5)前記長繊維は、熱可塑性樹脂繊維であって、平均繊維長が6~70mmである。
(6)前記吸収性コアは、超吸収性ポリマー粒子をさらに有し、前記超吸収性ポリマー粒子の質量は、5~400g/mである。
(7)前記開口部の1個当たりの面積は12~150mmであって、前記吸収性コアの面積に対する前記複数の開口部の総面積の比率は、1~50%である。
(8)前記開口部は、矩形状を有する。
(9)前記開口部は、菱形状を有する。
(10)前記長繊維は、前記吸収性コア全体において均一に配置されている。
(11)前記長繊維は、前記開口部の開口縁部において他の領域に比べて密に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る吸収性物品用の吸収体によれば、着用中に開口部が完全に閉塞されるのが抑制され、所望の通気性及び変形容易性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面は、本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
図1】本発明に係る吸収性物品用の吸収体を使用した、生理用ナプキンの一部破断斜視図。
図2】(a)吸収性コアの一部破断平面図。(b)図2の一点鎖線II(b)で囲んだ領域の拡大図。
図3図2(b)の一点鎖線IIIで囲んだ領域の拡大図。
図4】吸収性コアが体液を吸収した後の第1開口部の拡大図。
図5】(a)吸収体の変形例の一例における図3と同様の図。(b)変形例の他の一例における図3と同様の図。(c)変形例のさらに他の一例における図3と同様の図。
図6】(a)吸収体のさらに他の変形例の一例における図2と同様の平面図。(b)吸収体のさらに他の変形例の一例における図2と同様の平面図。(c)吸収体のさらに他の変形例の一例における図2と同様の平面図。(d)吸収体のさらに他の変形例の一例における図2と同様の平面図。(e)吸収体のさらに他の変形例の一例における図2と同様の平面図。
図7】本発明に係る吸収体の他の使用例を示す、使い捨ておむつの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記の実施の形態は、図1図7に示す使い捨て吸収性物品用の吸収体に関し、発明の不可欠な構成ばかりではなく、選択的及び好ましい構成を含む。
【0013】
図1図3を参照すると、本発明の吸収性物品の一例として示す、生理用ナプキン10は、縦方向Y及び横方向Xと、肌対向面とその反対側に位置する非肌対向面とを有し、透液性の表面シート11と、不透液性の裏面シート12と、それらの両シート間に介在する吸収体13とを備える。
【0014】
裏面シート12は、表面シート11よりもさらに横方向の外側へ延出しており、その表面側において一対のサイドシート15が固定されている。表面シート11、裏面シート12及びサイドシート15の一部によって、吸収体13よりも縦方向Yの外側に位置するエンドフラップ16が形成され、裏面シート12とサイドシート15とによって、吸収体13よりも横方向Xの外側に位置し、中央部分において横方向Xの外側へ凸曲する一対のウイング部を有する一対のサイドフラップ17が形成される。互いに対向するシート11,12,15どうしは、公知の接着手段、例えば、ホットメルト接着剤を介して互いに接合されるとともに、生理用ナプキン10の外周に沿って延びる外周シール部19を介して互いに溶着されている。
【0015】
表面シート11には、当該技術分野においての慣用の材料、例えばスパンボンド不織布やメルトボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とスパンボンド不織布とを積層したSMS不織布等の熱可塑性樹脂繊維で形成された不織布や開孔プラスチックフィルム等を使用することができる。裏面シート12には、同様に、当該技術分野においての慣用の材料、例えば、不透液性または透湿不透液性のプラスチックフィルム、各種の熱可塑性樹脂繊維から形成された繊維不織布、プラスチックフィルムの外面に繊維不織布を接合したラミネートシートを好適に用いることができる。
【0016】
吸収体13は、所要の形状に賦形された吸収性コア20と、吸収性コア20を包被するコアラップシート21とを有する。コアラップシート21は、オプションであって、吸収性コア20が所要の保形性を有する限りにおいて、吸収体13は、吸収性コア20のみから形成されていてもよい。吸収体13は、各シートよりも剛性が高い、いわゆる半剛性であって、縦方向Yの外側へ凸曲する第1及び第2端縁13a,13bと、第1及び第2端縁13a,13b間において縦方向Yへ直線状に延びる両側縁13c,13dとを有する。
【0017】
図示していないが、吸収体13の縦方向Y及び横方向Xの中央部分には、他の領域に比べて吸収性コア20の質量が高く、かつ、他の領域に比べて厚さ寸法が大きい中高部分を形成することもできる。このように、吸収体13に中高部分が形成されることによって、着用者の排泄口に中高部分を密着させてより効果的に経血を吸収、保持することができる。なお、吸収体13が中高部分を有する場合には、体液をより効果的に吸収するために、中高部分において開口部40を疎に配置又は全く配置していなくてもよい。
【0018】
吸収性コア20は、吸水性繊維25と、超吸収性ポリマー粒子(SAP(super absorbent polymer)粒子)26及び吸水性繊維25よりも長い長繊維30とを含む混合物から形成される。吸水性繊維25には、当該技術分野において慣用されたセルロース系の材料、例えば、針葉樹または広葉樹を原料とする木材パルプ、麻、綿等を原材料とする非木材パルプ、レーヨン繊維等の再生セルロース繊維、アセテート繊維等の半剛性繊維等が好適に使用される。
【0019】
SAP粒子26は、当該技術分野において周知のものを使用することができる。例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、デンプンアクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、天然多糖類等によって形成された粒子を使用することができる。
【0020】
長繊維30は、吸水性繊維25よりも長い繊維長を有する天然繊維または合成繊維であって、好ましくは、熱可塑性樹脂繊維が使用される。熱可塑性樹脂繊維は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン等の成分を単一で使用してなる単一繊維やこれらの複数の成分からなる複合繊維である。
【0021】
複合繊維としては、少なくとも2種以上の互いに異なる融点を有する成分を含んだものが好ましく、例えば、芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、海島型繊維、扁平、Y型、C型等の異型繊維等が使用される。特に、工業的な安価性から、鞘部の成分の融点が芯部の成分の融点よりも低い芯鞘繊維、例えば、PET/PE、PP/PE(芯部/鞘部)等の芯鞘繊維が好適に使用される。芯成分と鞘成分との質量比、断面積比や直径比については、所要の捲縮率や製造時の紡糸性等を考慮して、すなわち、鞘成分の比率が小さすぎると融着性が低下する一方、鞘成分の比率が大きすぎると紡糸性が低下する傾向があるので、適宜調整することが必要であって、例えば、それらの比率は、10/90~90/10、好ましくは、30/70~70/30である。熱可塑性樹脂繊維の「融点」は、示差走熱量分析計において、昇温速度10℃/分で測定した場合の、固形状から液状に変化する際の吸熱ピークのピークトップ温度を意味する。示差走熱量分析計としては、例えば、株式会社島津製作所社製のDSC-60型DSC測定装置を用いることができる。
【0022】
コアラップシート21は、液拡散性及び吸収性コア20の保形のために使用されるものであって、ティッシュペーパの他に、熱可塑性樹脂繊維で形成されていて親水化処理を施された不織布等を使用することができる。また、コアラップシート21は、吸収性コア20全体を包被する1枚のシートであってもよいし、吸収性コアの肌対向面側を包被する上部コアラップシートと、非肌対向面側を包被する下部コアラップシートとの複数のシートから形成されていてもよい。
【0023】
図2(a),(b)を参照すると、吸収性コア20には、縦方向Y及び横方向Xにおいて互いに間隔を空けて配置された複数の開口部40が形成されている。吸収体13(吸収性コア20)は、横方向Xの寸法を2等分する縦断中心線Pと、縦方向Yの寸法を2等分する横断中心線Qとを有する。
【0024】
開口部40は、略正方形状であって、横方向Xと縦方向Yとにおいて互いに等間隔に配列された、いわゆる千鳥状に配置されており、縦断中心線P及び横断中心線Qに関して斜めに延びる複数の列50が形成されている。具体的には、縦断中心線P及び横断中心線Qに関して傾斜して交差する第1方向K1に沿うように複数の列50が形成されており、各列は、第1方向K1と直交する第2方向K2において互いに間隔を空けて配置されている。なお、第1方向K1は縦断中心線Pに対して適宜の傾斜角度で交差することができるが、図示例では、約45度傾斜して交差している。また、複数の開口部40は等間隔ではなく、異なる間隔で配置されていてもよい。
【0025】
このように、吸収性コア20に複数の開口部40が形成されることによって、通気性に優れ、体液吸収後における生理用ナプキン10内部の蒸れを防止することができる。また、吸収性コア20は、柔軟性に優れ、吸収体13が着用者の鼠蹊部間に挟圧された状態において、開口部40近傍を起点として複数の箇所で折り曲げることによって、曲状の身体形状に沿って変形させることができる。
【0026】
図2(b)を参照すると、開口部40の1辺の長さt1は、4~15mm、好ましくは、6~12mmである。1辺の長さt1が4mm未満の場合には、着用中に開口部40が潰れやすくなって通気性が低下するおそれがある。一方、1辺の長さt1が15mmを超える場合には、開口部40が比較的に大きくなり過ぎて、着用者及び/又は着用補助者に対して吸収性に対する不安感を与えるおそれがあるとともに、実際に、経血や尿等の体液が吸収体13に移行し難くなって、吸収性能が低下するおそれがある。
【0027】
第1方向K1における開口部どうしの離間寸法R1と第2方向K2における開口部どうしの離間寸法R2は、ほぼ同等であって、4~15mm、好ましくは、6~12mmである。離間寸法R1,R2が4mm未満の場合には、着用中に開口部40が潰れやすくなって通気性が低下するおそれがあり、かつ、開口部40の割合が多くなって、着用者及び/又は着用補助者に対して吸収性に対する不安感を与えるおそれがある。一方、離間寸法R1,R2が15mmを超える場合には、開口部40の割合が相対的に少なくなって所要の通気性及び変形容易性を発揮することができないおそれがある。
【0028】
図3は、説明の便宜上、図2(b)に一点鎖線IIIで囲んだ領域を約45度反時計回りに回転させた拡大図であって、複数の開口部40からなる各列50のうちの任意の第1列51は、第1方向K1において離間する第1及び第2開口部41,42を有する。また、第1列51と第2方向K2において隣接する第2列52は、第1方向K1において離間する第3及び第4開口部43,44を有する。第1開口部41と第2開口部42、第3開口部43と第4開口部44は、それぞれ、第1方向K1においてそれらの間に位置する離間部分71,72を介して互いに対向して位置している。なお、図2(a),(b)及び図3は、吸収性コア20の肌対向面側(第1面側)を平面的に視た図であるが、吸収性コア20の肌対向面側(第1面側)及び非肌対向面側(第2面側)とのうちの少なくとも一方が図示した態様を有していることが好ましい。また、説明の便宜上、図3及び図4においては、第1~第4開口部41-44の周辺においてネットワーク構造を形成する長繊維30を黒太線、他の開口部40の周辺においてネットワーク構造を形成する長繊維30については薄い黒線で示している。
【0029】
また、以下において、第1及び第2列51,52における第1~第4開口部41-44の周辺に位置する長繊維30の構成について説明するが、各列50のすべての開口部40においても一部を除いて同様の構成を有するものである。また、開口部40の周辺における長繊維30のネットワーク構造については、第1及び第2列51,52の第1~第4開口部41-44と並んで位置する他の開口部40、第2方向K2において第1及び第2列51,52に隣接する列の開口部40も同様の構成を有しているが、説明の便宜上、各図において省略している。なお、各開口部40の保形のためには、各開口部40の周辺に位置するすべての長繊維30どうしが直接的又は間接的に互いに交差していることが好ましい。
【0030】
第1及び第2開口部41,42は、それぞれ、第2方向K2へ延びる外端辺41a,42aと対向辺41b,42bと、第1方向K1へ延びる第1及び第2側辺(両側辺)41c,41d,42c,42dとを有する。同様に、第3及び第4開口部43,44は、それぞれ、第2方向K2へ延びる外端辺43a,44aと対向辺43b,44bと、第1方向K1へ延びる第1及び第2側辺(両側辺)43c,43d,44c,44dとを有する。
【0031】
吸収性コア20は、既述のとおり、吸水性繊維25と、好ましくは熱可塑性樹脂繊維から形成された長繊維30と、オプションとしてSAP粒子26とを含む。長繊維30は、第1列51において、第1開口部41の周辺に位置する保形用長繊維31と、第2開口部42の周辺に位置する保形用長繊維32とを有する。ここで、「保形用長繊維31,32がそれぞれ第1及び第2開口部41,42の周辺に位置する」とは、保形用長繊維31,32が、それぞれ、第1開口部41と第2開口部42との外周全体を囲むように、少なくとも第1及び第2開口部41,42のうちの第1方向K1へ延びる第1側辺41c,42cと第2方向K2へ延びる対向辺41b,42bとに沿うように延びていることを意味する。
【0032】
図示した態様においては、第1開口部41の周辺に位置する保形用長繊維31が、第1開口部41の第1側辺41cの外側から第1開口部41と第2開口部42との間に位置する離間部分71を横断して第2開口部42の周辺(第2開口部42の第2側辺42d側)まで延びている。また、第2開口部42の周辺に位置する保形用長繊維32が、第2開口部42の第1側辺42cの外側から離間部分71を横断して第1開口部41の周辺(第1開口部41の第2側辺42d側)へ延びている。このように、保形用長繊維31,32が、それぞれ対向する開口部41,42へ向かって延びていることによって、離間部分71において互いに直接的に交差している。
【0033】
第2列52においても第1列51と同様に、保形用長繊維33が第3開口部43の周辺に位置し、保形用長繊維34が第4開口部44の周辺に位置している。また、保形用長繊維33が、第3開口部43の第1側辺43cの外側から第3開口部43と第4開口部44との間に位置する離間部分72を横断して第4開口部44の周辺(第4開口部44の第2側辺44d側)まで延びている。保形用長繊維34は、第4開口部44の第1側辺44cの外側から離間部分72を横断して第3開口部43の周辺(第3開口部43の第2側辺43d側)へ延びていて、保形用長繊維33と保形用長繊維34とは、離間部分72において互いに直接的に交差している。
【0034】
また、長繊維30は、各開口部41-44の周辺に位置する保形用長繊維33,34と互いに交差するように、第1方向K1へ延びる連結用長繊維35-37を有する。連結用長繊維35-37は、第2方向K2において、第2列52の外側に位置する連結用長繊維35と、第1列51と第2列52との間に位置する連結用長繊維36と、第1列51の外側に位置する連結用長繊維37とを有する。具体的には、第2方向K2へほぼ直線状に延びる連結用長繊維35が保形用長繊維33,34と交差し、第2方向K2へ湾曲しながら延びる連結用長繊維36が保形用長繊維31-34と交差し、第2方向K2へほぼ直線状に延びる連結用長繊維37が保形用長繊維31,32と交差している。このように、保形用長繊維31-34が互いに直接的に、または、連結用長繊維35-37を介して間接的に交差することによって、各開口部41-44の周辺には、長繊維30によるネットワーク構造が形成されている。
【0035】
ここで、長繊維30どうしが互いに交差するとは、吸収性コア20の厚さ方向において単に互いに重なることを意味することのほかに、繊維どうしが交絡することを含む。繊維どうしの交絡は、物理的に繊維が絡み合うことのほかに、製造時の熱処理によって熱可塑性樹脂繊維どうしが互いに熱融着された交絡点を形成する場合を含む。本実施形態の長繊維30は、単なる交差、物理的な交絡及び融着による交絡点のいずれの態様も含むものであって、長繊維30による強固なネットワーク構造を構成するためには、単なる交差部分よりも物理的に交絡している部分を多く含むことが好ましく、物理的に交絡した部分よりも熱融着された交絡点を多く含むことがさらに好ましい。
【0036】
図4を参照すると、生理用ナプキン10の着用状態において、排泄された体液は吸収性コア20及び吸水性繊維25において吸収、保持される。具体的には、吸水性繊維25及びSAP粒子26に吸収されるとともに、繊維間隙に一時的に体液が貯留されるが、吸収体13が着用者の鼠蹊部間に挟圧されることによって、吸収体13の両側縁部には内方へ向かう押圧力が作用し、吸収性コア20の全域に形成された複数の開口部40が崩れて、閉塞してしまうおそれがある。それに加えて、体液を吸収・保持したSAP粒子26は膨潤してゲル化し、複数のSAP粒子26が寄せ集まって塊状になる。SAP粒子26がゲル化して塊状になることによって、塊状になった部分が第1開口部41に進入しようとしてその周縁部の形状が崩れて、排泄前の開口形状を保持することが困難になる。このように、第1開口部41の開口面積が縮小又は完全に閉塞することによって、吸収性コア20が所望の通気性及び変形容易性を発揮することができないおそれがある。
【0037】
本実施形態においては、保形用長繊維31-34が各開口部41-44の周辺に位置し、かつ、平面視において、それらが互いに直接的及び/または単独または複数の他の長繊維を介して間接的に交差してネットワーク構造を形成することによって、開口部41-44の形状が崩れるのを抑制することができる。したがって、吸収体13が着用者の鼠蹊部間に挟圧され、かつ、SAP粒子26が塊状になって開口部41-44を閉塞しようとしても、開口部41-44が完全に閉塞されることはない。すなわち、その開口面積を一定程度維持できる程度に保形されることによって、所望の通気性および変形容易性を発揮して、着用中における蒸れや身体への動きに対する追従性が低下するのを抑制することができる。図4を参照すると、体液吸収後においてSAP粒子26が膨潤してゲル化して塊状部分が複数形成されている。SAP粒子26の塊状部分が形成されることによって、第1開口部41は、型崩れをして着用前の矩形状を保つことができず、異形状に変化しているが、第1開口部41の周辺に位置する長繊維31,32,36,37がネットワーク構造を形成することによって完全には閉塞されておらず、所要の開口面積を保持している。
【0038】
保形用長繊維31-34が、第1~第4開口部41-44を保形するためには、各開口部41-44の全周を囲むように延在することが好ましいが、少なくとも、着用状態において、各開口部41-44が完全に閉塞されることはなく、その開口面積を一定程度維持できる程度に保形されるようにそれらの周辺に位置していることが好ましい。具体的には、開口部41-44の周辺に位置する保形用長繊維31-34は、それらが周辺に位置する一方の開口部41-44の中心点O1~O4と重なって第2方向K2へ沿って延びる、すなわち、横断中心線Qに並行して延びる仮想線N1,N2と、一方の開口部41-44と対向する他方の開口部41-44の中心点O1-O4と重なって第2方向K2へ延びる仮想線N1,N2と交差するように、離間部分71,72を横断していることが好ましい。
【0039】
より具体的に言えば、例えば、第1開口部41の周辺に位置する保形用長繊維31の一方端は、第1開口部41の第1側辺41cの第2方向K2の外側において、第1開口部41の仮想線N1と交差するとともに、その中央部分が第2開口部42の周辺に位置する保形用長繊維32の中央部分と離間部分71において交差し、その他端が第2開口部42の第2側辺42dの第2方向K2の外側において、第2開口部42の中心点O2と重なって第2方向K2へ延びる仮想線N2と交差するように位置している。第2~第4開口部42-44の周辺に位置する保形用長繊維32-34も同様の形態を有している。なお、本実施形態においては、開口部40が同形同大であることから、第2方向K2において並ぶ開口部40どうし、すなわち、第1開口部41と第3開口部43、第2開口部42と第4開口部44において、それぞれの中心点O1-O4と重なる仮想線N1,N2が一致しているが、互いに異なる大きさ、形状の場合には、当然に、該仮想線N1,N2はそれぞれ異なるものとなる。
【0040】
保形用長繊維31-34が互いに直接的に交差してネットワーク構造を形成することによって、各開口部41-44を保形することも可能であるが、本実施形態においては、第1方向K1へ延びる連結用長繊維35を介して間接的にも交差していることによって、より強固なネットワーク構造が形成され、より高い保形性を発揮することができる。なお、吸収性コア20において、複数の開口部40に一時的に体液が貯留されるが、開口部40の内周面に位置する吸水性繊維25及びSAP粒子26によって速やかに吸収、拡散される。
【0041】
複数の開口部40は、本質的に吸収性コアを厚さ方向に貫通する貫通孔であるが、その製造工程において、開口部40からすべての長繊維を排除することは困難であり、開口部40に僅かに長繊維の一部が位置する場合を含む。図3を参照すると、長繊維30の一部30aが、第3開口部43を跨いでいる。このように、長繊維の一部30aが開口部40を跨ぐことによって、開口部40の周辺に位置するネットワーク構造とともに、着用中に開口部40が潰されて閉塞するのを抑制するように作用することができる。また、長繊維の一部には、パルプ繊維からなる吸水性繊維が交絡されていてもよい。かかる場合には、長繊維30によるネットワーク構造がより強化される。
【0042】
長繊維30は、熱可塑性樹脂繊維であって、平均繊維長が6~70mm、好ましくは15~40mmである。長繊維30の平均繊維長が6mm未満であると、任意の熱可塑性樹脂繊維が、他の熱可塑性樹脂繊維及び/又は吸水性繊維25と絡み難くなる傾向がある。平均繊維長が70mmを超える場合には、熱可塑性樹脂繊維の開繊性が著しく低下して、吸収体13がその一部に開繊されていない熱可塑性樹脂繊維を含むことによって、吸収体13の均一性が低下するおそれがある。
【0043】
吸水性繊維25は主として平均繊維長が2~5mmのパルプ繊維であって、それが吸収性コア20に混合されて離間部分71,72に位置することによって、僅かながらにも開口部40の保形性にも寄与しうるが、本実施形態に使用される開口部40は比較的に大きく形成されていることから、パルプ繊維が開口部40の周辺から離間部分71,72を横断して第1方向K1において対向する他の開口部40の周辺まで延びることはない。長繊維30は、パルプ繊維よりも長く、かつ、少なくとも離間部分71,72の長さ(離間寸法R1,R2)よりも長いことから、パルプ繊維に比べて各開口部40の保形性に寄与しうる。
【0044】
<平均繊維長の測定方法>
長繊維30の熱可塑性樹脂繊維、並びに吸水性繊維25のうちのパルプ繊維以外の繊維、例えば、再生セルロース繊維や半合成繊維の平均繊維長は、JIS L 1015:2010の附属書Aの「A7.1 繊維長の測定」の「A7.1.1 A法(標準法)目盛りが付いたガラス板上で個々の繊維の長さを測定する方法」に従って測定する。 なお、上記方法は、1981年に発行されたISO 6989に相当する試験方法である。また、パルプ繊維の平均繊維長は、重さ加重平均繊維長を意味し、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off-line)]により測定されるL(w)値を意味する。
【0045】
SAP粒子26の質量は、5~400g/m、好ましくは、10~300g/mである。SAP粒子26は、体液を吸収することによって自重の数十~数百倍に膨潤することから、開口部40を閉塞するように作用するものであって、できるだけその質量が低いことが好ましいが、SAP粒子26の質量が5g/m未満であるには、吸収性コア20の吸収容量が低下して排泄された体液をすべて吸収、保持することができずに横漏れを生じるおそれがある。一方、SAP粒子26の質量が400g/mを超える場合には、SAP粒子26のゲル化して塊状になる部分が比較的に多くなって、開口部40が長繊維30によるネットワーク構造に囲まれていたとしても、該塊状部分が開口部40の全周縁部が押し潰されるように進入して、閉塞してしまうおそれがある。
【0046】
開口部40の1個当たりの面積は、12~150mmである。開口部40の1個当たりの面積が12mm未満の場合には、開口部40が比較的に小さくなり過ぎて着用中に閉塞してしまい、通気性が低下するおそれがある。一方、開口部40の1個当たりの面積が150mmを超える場合には、開口部40が比較的に大きく見えて、着用者及び/又は着用補助者に対して、吸収体13の吸収性に対する不安感を与えるおそれがある。
【0047】
吸収性コアの面積に対する複数の開口部の総面積の比率は、1~50%である。開口部40の面積は、従来の吸収性物品の吸収体(吸収性コア)に画成される開口部に比して大きく形成されており、それぞれの開口部40から確実に内部の空気を通過させることができるとともに、着用中における吸収性コア20の変曲点として機能しうる。開口部40が比較的に大きな面積を有することによって、長繊維30のネットワーク構造によって保形されつつ、着用者の股間部に挟圧されたり、SAP粒子の塊状部分に押し潰されて僅かに開口面積が縮小されても、完全に閉塞されることはない。
【0048】
長繊維30は、開口部40を効果的に保形するために、吸収性コア30全体にほぼ均一に配置されていることが好ましい。長繊維30が、吸収性コア30全体にほぼ均一に配置されていることによって、吸収性コア30が肉薄であっても比較的に高い剛性を有し、例えば、着用中に、縦方向Y及び/又は横方向Xから開口部40を閉塞しようとする力が作用したとしても、吸収性コア30全体でかかる力を受け止めて、開口部40が閉塞するのを抑制することができる。
【0049】
また、長繊維30は、開口部40を効果的に保形するために、開口部40の開口縁部において他の領域に比べて密に配置されていてもよい。例えば、吸収性コア20に混合された長繊維30のうち、開口部41-44の周辺に位置する保形用長繊維31-34と連結用長繊維35-37とが開口部41-44の保形に寄与しうるが、開口部41-44の周辺に位置していない長繊維30は開口部41-44の保形にあまり寄与するものではないともいえるので、比較的に疎に配置されていてもよい。
【0050】
開口部40は、同形同大状の各辺の長さが等しい矩形、すなわち、ほぼ正方形状であって、角部が先鋭状を有している。角部が先鋭状を有していることによって、それが曲状である場合に比べて、長繊維30がその周辺において屈曲した状態で位置することから、長繊維30どうしがより多く交絡してネットワーク構造を形成しやすくなる。
【0051】
また、開口部40が正方形であることによって、吸収体13に対して着用時に鼠蹊部によって横方向Xの内側へ向かう力が作用しても、それと交差するように直線状に延びる両側辺によってかかる力を広く受け止めることができ、開口部40が閉塞するのを抑制することができる。加えて、複数の正方形状の開口部40の横方向Xへ延びる対向辺が、離間部分71,72を介して互いに対向することによって、離間部分71,72において身体形状に沿って縦方向Yに屈曲させることができる。
【0052】
開口部40は、図示例と異なり、第1方向K1が縦断中心線P及び/又は横断中心線Qと並行するように配置されていてもよい。ただし、図示例のように、第1方向K1が縦断中心線P及び/又は横断中心線Qと傾斜するように延びていることによって、着用状態において、着用者が大腿部を動かしたときに生じる吸収体13に対して斜めに作用するそれを閉塞しようとする力を、斜めに延びる両側辺によって受け止めることによって、開口部40が閉塞し難くなるといえる。
【0053】
開口部40は、第1方向K1又は第2方向K2へ長い矩形状、すなわち、長方形状であってもよい。開口部40が、長方形状を有することによって、第1方向K1へ延びる辺の長さと第2方向K2へ延びる辺の長さとが互いに異なることによって、正方形である場合に比べて、より不規則に屈曲した状態で配置されて、長繊維30どうしがより多く交絡されるといえる。また、開口部40は、所要の技術的効果を発揮し得る限りにおいて、矩形状ではなく、円形、楕円形、菱形、多角形状であってもよい。
【0054】
特に、開口部40が、菱形状の場合であって、開口部40の縦方向Yの寸法よりも横方向Xの寸法が大きい場合には、後記の製造方法によれば、横方向Xへ繊維が配向されやすくなるので、横方向Xに加えられる力によって開口部40が閉塞され難くなるといえる。一方、開口部40が菱形状の場合であって、開口部40の縦方向Yの寸法が横方向Xの寸法よりも大きい場合には、後記の製造方法によれば、縦方向Yへ繊維が配向されやすくなるので、開口部40は縦方向Yに対する剛性が向上して、例えば、着用者の膣口付近のフィット性を向上させることができる。さらに、開口部40は、同形同大状ではなく、互いに異なる大きさや形状であってもよく、例えば、各列50が、大小異なる大きさからなる矩形状と円形状の開口部40を組み合わせて形成されていてもよい。
【0055】
既述のとおり、長繊維30は、複合繊維、例えば、芯部と、前記芯部よりも低い融点を有する鞘部とからなる芯鞘繊維から形成することができる。長繊維30が芯鞘繊維から形成される場合には、製造工程の熱処理加工において比較的に低い設定温度によって、熱可塑性樹脂繊維からなる長繊維30どうしを交絡点において互いに溶着させることができるとともに、捲縮させることができる。長繊維30が捲縮することによって、互いに交絡しやすくなって、より強固なネットワーク構造を形成することができる。また、長繊維30が、捲縮率の互いに異なる複数種類の複合繊維を有していてもよい。かかる場合には、長繊維30どうしの捲縮度合いが異なることによって、不規則に交絡して、より強固なネットワーク構造を形成することができる。なお、製造工程の熱処理加工としては、例えば、吸収性コア20を賦形するために行う加圧・加熱加工、生理用ナプキン10の表面に施す熱エンボス加工等がある。これらの熱処理加工をすることによって、少なくとも吸収性コア20の熱処理加工された面に位置する長繊維30の一部が溶融される。
【0056】
かかる吸収性コア20の製造方法についていえば、この種の分野において慣用された製法を用いることができ、例えば、以下のような方法によって製造することができる。
【0057】
吸収性コア20の製造装置は、ダクトと、ダクトと対向して位置する、周面に凹状の型枠を有する成型ドラムとを備え、ダクトの上流に位置する各供給経路を経て、SAP粒子26、長繊維(熱可塑性樹脂繊維)30及び吸水性繊維25が、ダクト内部に供給される。ダクト内部では、成型ドラムのサクション機構を介してダクトの流入口からその流出口へ向かって空気が吸引されている。SAP粒子26、長繊維30及び吸水性繊維25は、気流に乗ってダクト内部を飛動して混合されてコア材料となって、流出口へ向かって移動する。
【0058】
回転する成型ドラムがダクトの流出口と対向するとサクション機構を介して空気が型枠からドラムの内部へ向かって吸引されるので、混合されたコア材料が型枠に堆積する。型枠の底面には複数の突起部が配置されており、突起部にはコア吸収性材料が堆積されない。その後、型枠に堆積されたコア材料は、サクション機構の吸引力によって型枠内に保持されながら成型ドラムの回転によってコンベアに近づき、コンベアと対向したときにコンベアの下方に位置するサクション機構の吸引力でコア材料が型枠からコンベアに引き取られる。その後、コア材料は、走行するコンベアによって加圧・加熱圧縮工程において圧縮されて、吸収性コア20となる。
【0059】
かかる製法によれば、コア材料が成型ドラムの型枠に堆積するときに、型枠の底面に配置された複数の突起部には堆積されないことによって、吸収性コア20に複数の開口部40を形成することができる。また、ダクトから突起部上に向かう長繊維30は、突起部に当たってその周辺に跳ねよけられることから、平面視において突起部を囲むようにその周辺に位置することになる。複数の突起部においても同様に長繊維30が跳ねよけられることによって、平面視において、各突起部の周辺に位置する長繊維30どうしが互いに直接的又は間接的に交差される。ただし、かかる製法においては、例えば、突起部の形状を先鋭状にしてその周辺により跳ねよけさせることで長繊維30どうしを交差させてネットワーク構造を形成してもよい。突起部の形状を先鋭状にすること、または/それに加えて、ダクト内でSAP粒子26と混在される前に、長繊維30と吸水性繊維25とを搬送路において比較的に長い時間混合させた状態とすることで長繊維30どうし、長繊維30と吸水性繊維25とが互いによくブレンドされて絡み合うことによって、成型ドラムの型枠に堆積するときに、互いに絡み合った状態を維持させてもよい。
【0060】
また、他の製造方法としては、例えば、上記の製造工程において、成型ドラムの型枠の底面に複数の突起を配置せずに、コア材料が成型ドラムからコンベアに引き取られた後、圧縮工程の前又はその後において、複数の先鋭状のピンでコア材料を切断することなく、掻き分けるようにして挿し入れて引き抜くことによって、複数の開口部40を形成することができる。かかる場合においても、先鋭状のピンで掻き分けられた長繊維30が、平面視において、開口部40を囲むようにその周辺に位置し、かつ、各開口部40の周辺に位置する長繊維30どうしが互いに間接的又は直接的に互いに交差しうる。ただし、かかる製法では、長繊維30が実質的に切断されることなく吸収性コア20に先鋭状のピンを挿し入れて複数の開口40を形成するために、長繊維30の質量、分布範囲、分布面積、開口部40の大きさや開口率、吸収性コア20のコンベア上の搬送速度やピンの挿入速度等のすべての諸条件を適宜調整する必要がある。
【0061】
<吸収体の厚さ寸法の測定方法>
吸収体13の厚さ寸法(mm)は、株式会社大栄科学精器製作所製 FS-60DS[測定面44mm(直径),測定圧3g/cm]を準備し、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)の下、吸収体13の異なる5つの部位を加圧し、各部位における加圧10秒後の厚さを測定し、5つの測定値の平均値を吸収体13の厚さ寸法とする。
【0062】
図5(a)は、本発明に係る吸収性物品用の吸収体13の変形例の一例を示す図3と同様の図である。本変形例においては、各開口部41-44が、矩形状ではなく、円形状を有している。各開口部41-44の周辺に位置する円形状の保形用長繊維31-34は、それらが周辺に位置する各開口部41-44の中心点O1~O4と重なって第2方向K2へ沿って延びる、すなわち、横断中心線Qに並行して延びる仮想線(図示せず)と、それらが周辺に位置する各開口部41-44と対向する開口部41-44の中心点O1-O4と重なって第2方向K2へ延びる仮想線(図示せず)と交差するように、離間部分71,72を横断している。したがって、長繊維30によるネットワーク構造によって、開口部41-44が完全に閉塞されない程度に保形しうる。
【0063】
図5(b)は、本発明に係る吸収性物品用の吸収体13の変形例の他の一例を示す図である。本変形例においては、第1開口部41の周辺に位置する保形用長繊維31が、第1開口部41の半周を囲むように曲状に延在しており、第2開口部42の周辺に位置する保形用長繊維32が、第2開口部41の半周を囲むように曲状に延在している。これらの保形用長繊維31,32は離間部分71において互いに直接的に交差しているが、連結用長繊維35-37を介して間接的に交差していない。かかる場合であっても、保形用長繊維33,34が直接的においてのみ互いに交差することによって、開口部41-44を保形しうるネットワーク構造を形成することができる。第3及び第4開口部43,44の周辺に位置する保形用長繊維33,34も、保形用長繊維31,32と同様の形態を有する。
【0064】
図5(c)は、本発明に係る吸収性物品用の吸収体13の変形例のさらに他の一例を示す図である。本変形例においては、第1開口部41の周辺に位置する保形用長繊維31が、第1開口部41の半周を囲むように曲状に延在しており、第2開口部42の周辺に位置する保形用長繊維32が、第2開口部42の半周を囲むように曲状に延在している。これらの保形用長繊維31,32は離間部分71で第1方向K1へ離間対向して位置しており、直接的に互いに交差しておらず、第1方向K1へ延びる連結用長繊維36によって間接的にのみ互いに交差している。かかる場合であっても、保形用長繊維31,32が間接的においてのみ互いに交差することによって、開口部41-44を保形しうるネットワーク構造を形成することができる。第3及び第4開口部43,44の周辺に位置する保形用長繊維33,34も、保形用長繊維31,32と同様の形態を有する。
【0065】
図6(a)~(e)は、本発明に係る吸収体13の変形例のさらに他の一例を示す平面図である。図6(a)に示す実施態様においては、吸収体13の縦方向Y及び横方向Xの中央部分74において、複数の開口部40が配置されていない。かかる実施態様において、例えば、吸収性物品が生理用ナプキン10である場合に、着用者の膣口付近と対向する中央部分74に複数の開口部40を配置しないことによって、経血を十分かつ速やかに吸収することができる。加えて、中央部分74以外の領域では、複数の開口部40が配置されていることによって、所要の通気性を発揮するとともに、着用者の身体に対する適度な追従性を有する。
【0066】
図6(b)に示す実施態様においては、吸収体13の縦方向Y及び横方向Xの中央部分74においてのみ、複数の開口部40が配置されている。かかる実施態様においては、例えば、吸収性物品が使い捨ておむつの場合に、中央部分74に配置された複数の開口部40で体液を引き込むように吸収することによって、体液を効果的にスポット吸収することができる。
【0067】
図6(c)に示す実施態様においては、吸収体13の全体に複数の開口部40が配置されているとともに、第1方向K1に並ぶ各列50において、大小異なる大きさを有する開口部40A,40Bが交互に配置されている。かかる実施形態においては、開口部40が、複数の同形同大の開口部のみからなる場合に比べて、吸収体13の意匠性が向上するとともに、比較的に小さな開口部40Bが配置されていることによって、着用者及び/又は着用補助者に対して、吸収体13の吸収性に対する不安感を抑制することができる。
【0068】
図6(d)に示す実施態様においては、吸収体13の横方向Xの中央部分である中間部分75の縦方向Yの寸法の全域において、複数の開口部40が配置されていない。かかる実施態様においては、開口部40が吸収体13全体に配置されている場合に比べて、意匠性が向上するとともに、中間部分75の縦方向Yの寸法の全域に複数の開口部40が配置されていないことによって、着用者及び/又は着用補助者に対して、吸収体13の吸収性に対する不安感を抑制することができる。
【0069】
図6(e)に示す実施態様においては、吸収体13には、複数の開口部40が配置された開口域76と、複数の開口部40が配置されていない非開口域77とが縦方向Yにおいて交互に配置されている。かかる実施態様においては、開口域76と非開口域77とが縦方向Yにおいて交互に配置されていることによって、複数の開口部40が吸収体13全体に等間隔で配置されている場合に比べて意匠性が向上するとともに、複数の開口域76によって吸収体13の所要の通気性及び身体に対する追従性を維持しながら、縦方向Yにおいてそれらの間に非開口域77が位置することによって、吸収体13が横方向Xに対して所要の剛性を有し、着用時におけるヨレを抑制することができる。
【0070】
図7は、本発明に係る吸収性物品用の吸収体13の使用例の一例を示すものであって、本使用例においては、吸収体13は、使い捨ておむつ(吸収性物品)80に使用されている。使い捨ておむつ80は、前後ウエストパネル84,85の両側縁部を接合するサイドシームを剥離して、横方向及び縦方向へ伸展した状態を示されている。
【0071】
使い捨ておむつ80は、前ウエスト域81と、後ウエスト域82と、前後ウエスト域81,82間に位置するクロッチ域83とを有する。また、おむつ80は、前ウエスト域81とクロッチ域83の一部を画成する前ウエストパネル84と、後ウエスト域82とクロッチ域83の一部を画成する後ウエストパネル85と、前後ウエストパネル84,85の肌対向面側において縦方向へ延びる吸液構造体86とを備え、前後ウエストパネル84,85の両側縁部どうしが互いに重ね合わされた状態において、縦方向へ間隔を空けて配置された複数のシーム部88を介して互いに接合されることによって、ウエスト開口と一対のレッグ開口とが画成される。吸収体13は、吸液構造体86内においてクロッチ域83から前後ウエスト域81,82に延在している。
【0072】
おむつ80は、予め前後ウエスト域81,82の両側縁部が接合された、いわゆるパンツ型であって、生理用ナプキン10と同様に、着用状態において、クロッチ域83に位置する吸収体13は着用者の鼠蹊部間に挟圧されるとともに、体液を吸収したSAP粒子26が膨潤してゲル化して塊状部分が形成されて開口部40の形状が崩されるおそれがあるが、長繊維30がネットワーク構造を形成することによって、開口部40を保形して所要の通気性及び変形容易性を発揮することができる。なお、本発明に係る吸収性物品としては、パンツ型おむつだけではなく、開放型おむつであってもよい。
【0073】
吸収性物品10,80を構成する部材には、特に明記されていない限りにおいて、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている公知の材料を制限なく用いることができる。また、本明細書において使用されている「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」等の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いてある。
【符号の説明】
【0074】
10 生理用ナプキン(吸収性物品)
20 吸収性コア
25 吸水性繊維
26 超吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)
30 長繊維
30a 長繊維の一部
31 保形用長繊維(第1長繊維、第2長繊維)
32 保形用長繊維(第1長繊維、第2長繊維)
33 保形用長繊維(第1長繊維、第2長繊維)
34 保形用長繊維(第1長繊維、第2長繊維)
35 連結用長繊維(第3長繊維)
36 連結用長繊維(第3長繊維)
37 連結用長繊維(第3長繊維)
40 開口部
41 第1開口部
42 第2開口部
43 第3開口部
44 第4開口部
71 離間部分
72 離間部分
80 使い捨ておむつ(吸収性物品)
K1 第1方向
K2 第2方向
N1 仮想線(第1仮想線)
N2 仮想線(第2仮想線)
O1-O4 開口部の中心点
X 横方向
Y 縦方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7