IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】製パン練り込み用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/16 20060101AFI20220404BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20220404BHJP
   A21D 10/00 20060101ALI20220404BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20220404BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20220404BHJP
   C11C 3/10 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A21D2/16
A21D13/00
A21D10/00
A23D7/00 506
A23D9/00 502
C11C3/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016221869
(22)【出願日】2016-11-14
(65)【公開番号】P2018078811
(43)【公開日】2018-05-24
【審査請求日】2019-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 秀将
(72)【発明者】
【氏名】沼野 新一
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-267654(JP,A)
【文献】特開2015-139428(JP,A)
【文献】特開2016-077240(JP,A)
【文献】特開2010-081819(JP,A)
【文献】特開2010-259411(JP,A)
【文献】特開2013-102745(JP,A)
【文献】特開2013-233089(JP,A)
【文献】特開2015-082981(JP,A)
【文献】特開2015-104345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00-17/00
A23D 7/00-9/06
C11C 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素価60以上70以下であるパーム分別軟部油をエステル交換して得られたエステル交換油脂を油相中に40~100質量%含有し、比重が0.4~0.8であり、油脂を連続相とする、水分含有量が0.5質量%以下である可塑性製パン練り込み用油脂組成物。
【請求項2】
乳化剤を0.1~5質量%含有する請求項1記載の製パン練り込み用油脂組成物。
【請求項3】
澱粉類、水及びイーストを含む製パン原料を混捏した生地に、ヨウ素価60以上70以下であるパーム分別軟部油をエステル交換して得られたエステル交換油脂を油相中に40~100質量%含有し、比重が0.4~0.8であり、油脂を連続相とする、水分含有量が0.5質量%以下である可塑性製パン練り込み用油脂組成物を添加し、さらに混捏するパン生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン生地への油脂混合性が良好で、パン生地のべたつきが抑えられ、且つ、内相、食感に優れたパンを製造することができる製パン練り込み用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パン生地製造時の油脂の役割は重要である。パン生地では、油脂がグルテン膜に沿って配置されることで、好ましい伸展性、乾き性良好、などの扱いやすい生地になると同時に、ホイロやオーブン内での生地伸展性良好により体積が大きく、ソフトなパンとなる。
【0003】
ただし、油脂を用いて得られるパンはソフトではあるがしっとり感が劣るパンになってしまう。
そのため、ソフトではあり、且つしっとり感が良好なパンを得るため、水を多く配合した多加水生地とする方法、油脂配合量を増量する方法、アミラーゼなどの酵素を用いる方法、乳化剤を使用する方法、さらにはこれらの組み合わせる方法が広く行われている。
【0004】
しかし、多加水生地とする方法は簡単にしっとり感の高いパンを得ることができるが、パン生地はべたつきが激しく、各種の成形を行うことが困難となる。
【0005】
油脂配合量を増量する方法は、低融点の油脂を使用した場合はしっとり感が向上するが、油脂のべたつきが感じられるようになり、高融点の油脂を使用するとしっとり感の向上効果が急激に低下してしまう。また、生地への油脂の添加時に、小麦粉類100質量部に対し添加量が15質量部以上となると、低融点の油脂であると生地が滑ってしまって生地に入るまでの時間がさらに延び、高融点の油脂であると塊状となって転がるだけでなかなか生地に入っていかない問題、すなわち、油脂混合性が悪いという問題があった。この場合、時間がかかるうちに生地温度が上昇してしまったり、均質にパン生地に練り込むことができなくなったりしてしまう。
【0006】
また、アミラーゼなどの酵素を使用する方法は、少量添加でパンの品質を劇的に改良することができるが、その効果を得るための、生地種類、温度、生地製造時間、そして添加量の調整が大変難しく、また、生地がべたつきやすく、パンの食感も歯切れが悪くねちゃついた食感になりやすいという問題があった。
【0007】
さらに、乳化剤を添加すると、乾いた感じの生地でありながら伸展性は良好であり、さらに得られるパンの品質(食感)も優れたものとなるが、しっとり感についてはその改良効果が弱く、添加量を増やすと歯切れが悪化し、ねちゃつきやくちゃつきが感じられるようになってしまう。また、最近の消費者の志向により、乳化剤を多く使用せずとも類似の効果を出すことが要望されている。
【0008】
また、ソフトでしっとりとした食感のパンを得るための製造方法として、ベーシックスイートドウ方式というパン生地の製造方法が知られている。このベーシックスイートドウ方式とは、油脂、卵、糖類等の副原料をシュガーバッター法で起泡させ、ここに小麦粉類、イースト、水等の主原料を添加していく方式である。
【0009】
このベーシックスイートドウ方式で得られたパンは、たしかにソフトでしっとりした食感を呈するが、その効果は大量の油脂と卵の添加によって、極めてリッチな配合の生地になっていることにより得られるものである。各種パンの中でもこのようなリッチな配合のものは少なく、この製造方法を適用することが可能なパンは極めて少ない。
【0010】
そのため、吸水量、あるいは油脂や卵の配合量が少ない場合であっても、また特殊な配合や製法に拠らずとも、ソフトでしっとりした食感のパンを得る方法が各種検討され、開示されている。
例えば、ゲル化剤や増粘多糖類を使用する方法(例えば特許文献1~3参照)が提案されたが、この方法ではパン生地がべたついて扱いにくいという問題があることに加え、得られたパンがねちゃついた食感になってしまうという問題がある。
【0011】
そのため、低比重の油脂を製パン練り込み用油脂として使用する方法が提案された(例えば特許文献4、5参照)。この方法によれば、生地配合に関係なく、普通の製パン法の練り込み油脂と同じ使い方で、良好なソフト性と良好な食感(歯切れ・口溶け)のパンが得られる。しかしながら、特許文献4の方法は、得られるパンがねちゃつきやすく、パンの内相の改善が不十分であるという問題があり、特許文献5の方法は、使用油脂の硬さのために使用時に調温が必要である問題やソフト性が不足するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2006-320207号公報
【文献】特開2004-187526号公報
【文献】特開平10-179012号公報
【文献】特開2010-259411号公報
【文献】特開2011-200191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、パン生地への油脂混合性が良好で、パン生地のべたつきが抑えられ、且つ、内相、食感に優れたパンを製造することができる製パン練り込み用油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、低比重の油脂組成物の配合油脂として特定のエステル交換油脂を使用することで、上記目的が達成可能であることを見出した。
すなわち本発明は、パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂を油相中に40~100質量%含有し、比重が0.9未満であり、油脂を連続相とする製パン練り込み用油脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製パン練り込み用油脂組成物は、調温せずとも使用可能でパン生地に均質にすばやく練り込まれるなど、パン生地への油脂混合性が良好である。さらに、乳化剤の使用量が少ない場合、さらには乳化剤を使用しない場合であってもパン生地のべたつきを抑えることができ、さらに、本発明の製パン練り込み用油脂組成物を用いて得られたパンは、内相膜が薄く、ソフトでしっとりした食感でありながら、歯切れが良好であり、ねちゃつきがない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の製パン練り込み用油脂組成物について詳述する。
まず本発明で使用する、パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂について述べる。
本発明の製パン練り込み用油脂組成物は、パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂を含有する。
上記エステル交換油脂は、パーム分別軟部油を70質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%含有する油脂配合物をエステル交換した油脂である。
【0017】
ここで、上記油脂配合物に使用するパーム分別軟部油とは、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部であり、通常、ヨウ素価52~70のものである。本発明に用いられるパーム分別軟部油としては、ヨウ素価が52以上のパームオレインを使用することが好ましく、ヨウ素価54以上のパームオレインを使用することがより好ましく、ヨウ素価60以上のパームスーパーオレインを使用することがさらに好ましい。
【0018】
上記油脂配合物は、必要に応じ、上記パーム分別軟部油以外の油脂を含有する場合がある。上記油脂配合物に必要に応じ配合する、上記パーム分別軟部油以外の油脂は、求める油脂組成物の硬さに応じ、適宜選択することができ、具体的には、大豆油、キャノーラ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂等の常温で固体の油脂も用いることができ、さらに、これらの油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。
本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0019】
また、上記エステル交換油脂を得るためのエステル交換反応は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよく、また、ランダムエステル反応であっても、位置選択性のエステル交換反応であってもよいが、化学的触媒又は位置選択性のない酵素を用いた、ランダムエステル反応であることがより好ましい。
【0020】
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記位置選択性のない酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂あるいはケイ藻土やセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
【0021】
上記油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂の好ましいSFC(固体脂含量)は、0℃で30~55%、好ましくは35~45%であり、10℃で20~45%、好ましくは25~35%であり、20℃で5~25%、好ましくは、10~20%であり、40℃で0~5%、好ましくは1~4%である。
【0022】
本発明の製パン練り込み用油脂組成物は、上記パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂を、油相中に40~100質量%、好ましくは50~100質量%、さらに好ましくは55~95質量%含有する。
上記エステル交換油脂の含有量が40質量%未満であると、油脂混合性の改良効果が見られないことに加え、得られるパンの内相が粗いものになりやすく、食感もソフト性が劣るものになりやすく、さらには体積も小さくなってしまいやすい。
【0023】
本発明の製パン練り込み用油脂組成物には、硬さの調整のためなど、必要に応じ、上記エステル交換油脂以外にその他の油脂を含有する場合がある。
上記のその他の油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。本発明はこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記その他の油脂の含有量は、本発明の製パン練り込み用油脂組成物の油相中に、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは5~45質量%である。
【0024】
本発明の製パン練り込み用油脂組成物は油脂を連続相とする。本発明において「油脂を連続相とする」とは、製パン練り込み用油脂組成物に含まれるエステル交換油脂のみが油脂の連続相を形成している場合のみならず、製パン練り込み用油脂組成物に含まれる全ての油脂が一体となって油脂の連続相を形成している場合も含む。本発明の製パン練り込み用油脂組成物は、油脂を連続相とする油脂組成物であれば、水分を含有するマーガリンやファットスプレッドであってもよく、また、水分を実質的に含有しないショートニングであってもよい。本発明の製パン練り込み用油脂組成物が水分を含有する場合、その乳化型が、水を分散相とする油中水型や、油脂が分散した水を分散相とする油中水中油型などの油脂を連続相とするものであれば二重乳化以上の多重乳化型であってもよい。本発明の製パン練り込み用油脂組成物は、改良効果が高い点、及び、生地のべとつきが防止される点で、水分を実質的に含有しない、すなわち水分含有量が0.5質量%以下であることが好ましい。本発明の製パン練り込み用油脂組成物における水分含有量は、例えば、常圧乾燥減量法により測定することができる。
【0025】
本発明の製パン練り込み用油脂組成物は、乳化剤の使用量が少ない場合、さらには乳化剤を使用しない場合であっても十分な効果が得られるものである。しかしながら、本発明の製パン練り込み用油脂組成物は、乳化剤を好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~2質量%含有する。本発明の製パン練り込み用油脂組成物における乳化剤の含有量が上述の範囲であると、製パン練り込み用油脂組成物が粘りのある物性となることにより、パン生地への混合性を高めると同時に、おそらくは混合時の気相の抜けを抑え、より高い本発明の効果が得られる点、さらには製パン練り込み用油脂組成物の保存中の物性の安定化、さらには、得られるパンの老化抑制の効果をも得ることができる。
【0026】
上記乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド、レシチン、リゾレシチンを用いることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
なお本発明では、上記乳化剤の中でもポリグリセリン脂肪酸エステル、なかでもジグリセリン不飽和脂肪酸エステルを用いることが、パン生地への油脂混合性が特に優れ、且つ得られるパンの食感が好ましいものとなる点で好ましい。
なお、上記乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる場合、本発明の製パン練り込み用油脂組成物中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、好ましくは0.2~2質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0027】
なお本発明の製パン練り込み用油脂組成物は、必要により、その他の材料を含有する場合がある。その他の材料として、上白糖・グラニュー糖・ブドウ糖・果糖・蔗糖・麦芽糖・乳糖・液糖・水飴・オリゴ糖・還元糖・はちみつ等の糖類、コーンスターチ・タピオカ澱粉・馬鈴薯澱粉・小麦澱粉・米澱粉・モチ米澱粉などの澱粉や加工澱粉、キサンタンガム・アルギン酸ナトリウム・グアガム・ローカストビーンガム・カラギーナンなどの増粘安定剤、卵類、β-カロチン・カラメル・紅麹色素などの着色料、トコフェロール・茶抽出物などの酸化防止剤、デキストリン、カゼイン・ホエー・クリーム・脱脂粉乳・発酵乳・牛乳・全粉乳・ヨーグルト・練乳・加糖練乳・全脂練乳・脱脂練乳・濃縮乳・純生クリーム・ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)・植物性ホイップ用クリーム・乳清ミネラルなどの乳や乳製品、ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・クリームチーズ・ゴーダチーズ・チェダーチーズなどのチーズ類、原料アルコール、焼酎・ウイスキー・ウオッカ・ブランデーなどの蒸留酒、ワイン・日本酒・ビールなどの醸造酒、各種リキュール、無機塩類、食塩、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類などの食品素材、コンソメ・ブイヨンなどの植物及び動物エキス、食品添加物などを用いることができる。その他の材料は、本発明の目的を損なわない限り任意の量を使用することができるが、上記製パン練り込み用油脂組成物中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0028】
本発明の製パン練り込み用油脂組成物の比重は0.9未満、好ましくは0.4~0.85、さら好ましくは0.5~0.8、最も好ましくは0.6~0.8である。上記の製パン練り込み用油脂組成物の比重が0.9以上だと、得られたパンがねちゃつくので好ましくない。また、本発明の製パン練り込み用油脂組成物は、比重が0.4以上であると、パン生地への混合性が良好となり、製パン練り込み用油脂組成物をパン生地へ均質に練り込むことが容易となるため好ましい。製パン練り込み用油脂組成物の比重は、容積法により測定することができる。具体的には、一定容積の計量カップに油脂組成物を充填し、該カップ内の油脂組成物の質量を測定し、その質量を計量カップの容積で除して得られる数値を製パン練り込み用油脂組成物の比重とする。なお、製パン練り込み用油脂組成物の比重は20℃において測定するものとする。
【0029】
なお、本発明の製パン練り込み用油脂組成物の性状は、流動状やペースト状などの物性であってもよいが、製パン時の練り込み時の混合性が良好である点で、可塑性であることが好ましい。
【0030】
次に上記の製パン練り込み用油脂組成物の製造方法について説明する。
上記製パン練り込み用油脂組成物を得る方法としては、パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂を油相中に40~100質量%含有する、油脂を連続相とする油脂組成物を比重が0.9未満となるように含気させる方法、あるいはパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂を油相中に40~100質量%含有する、油脂を連続相とする油脂組成物の製造過程で比重が0.9未満となるように含気させる方法などを挙げることができる。
【0031】
油脂組成物に含気させる方法の場合は、連続式の含気装置を使用して連続的に注入する方法であっても、また、たて型ミキサー等を使用してクリーミングする方法であってもよい。
また、油脂組成物の製造過程で含気させる方法の場合は、連続式の含気装置を使用して連続的に注入する方法であることが好ましい。
【0032】
さらに、本発明のパン生地について述べる。
本発明のパン生地は本発明の製パン練り込み用油脂組成物を含有するものである。
本発明でいうパン生地の種類としては、澱粉類、水及びイーストを含む製パン原料を混捏した生地であれば特に制限されず、食パン生地、フランスパン生地、バラエティブレッド生地、ブリオッシュ生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地、マフィン生地、ピザ生地、スコーン生地、蒸しパン生地、ワッフル生地、イングリッシュマフィン生地、バンズ生地、イーストパイ生地等のパン生地を挙げることができる。
【0033】
本発明のパン生地における上記本発明の製パン練り込み用油脂組成物の含有量は、通常のパン生地製造時の添加量ととくに変わることなく、パン生地の種類に応じて適宜決定することができるが、パン生地で使用する澱粉類100質量部に対し、好ましくは3~45質量部、さらに好ましくは5~20質量部である。ここで含有量が3質量部よりも少ないと本発明の効果が得られがたく、45質量部よりも多いとパン生地がべたつきやすい。
【0034】
上記澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉及び胚芽などの小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉などのその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシュ―ナッツ粉、オーナッツ粉及び松実粉などの堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉及び米澱粉などの澱粉並びにこれらの澱粉に酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理及びグラフト化処理から選択される1以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
本発明では、澱粉類中、好ましくは小麦粉類を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは100質量%使用することが望ましい。
また小麦粉類は強力粉のみ又は、強力粉と薄力粉の併用が好ましい。
【0035】
本発明のパン生地の水分含有量は、パン生地で使用する澱粉類100質量部に対し、好ましくは30~150質量部、さらに好ましくは50~100質量部である。
上記の水としては、天然水や水道水の他に、パン生地で用いる水分を含む材料中の水分も含むものとする。水分を含む材料としては、牛乳、濃縮乳、クリームなどの乳や乳製品、卵類、液糖などが挙げられる。また乳化物を使用する場合には、上記水の含有量とは、該乳化物に含まれる水分をも含む。
【0036】
本発明のパン生地で用いるイーストとしては、ドライイースト、生イースト、冷蔵パン用イースト、冷凍パン用イースト等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明のパン生地におけるイーストの含有量は、特に制限されるものではないが、澱粉類100質量部に対し、生イーストの場合は、好ましくは1.5~10質量部、ドライイーストの場合は、好ましくは0.5~4質量部である。
【0037】
本発明のパン生地は必要によりその他の材料を含有している場合がある。本発明のパン生地に用いられるその他の材料としては、例えば、アルギン酸・アルギン酸塩・キサンタンガム・グアーガム・ローカストビーンガム・カラギーナン・ペクチン・カルボキシメチルセルロース・寒天・グルコマンナンなどの食物繊維、上記の本発明の製パン練り込み用油脂組成物以外の練り込み用油脂組成物、ロールイン油脂、フラワーペースト、バタークリーム、糖類や甘味料、澱粉、増粘安定剤、β-カロチン・カラメル・紅麹色素などの着色料、トコフェロール・茶抽出物などの酸化防止剤、デキストリン、カゼイン・ホエー・クリーム・脱脂粉乳・発酵乳・牛乳・全粉乳・ヨーグルト・練乳・加糖練乳・全脂練乳・脱脂練乳・濃縮乳・純生クリーム・ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)・植物性ホイップ用クリームなどの乳や乳製品、ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・クリームチーズ・ゴーダチーズ・チェダーチーズなどのチーズ類、全卵、生卵黄、生卵白、殺菌全卵、殺菌卵黄、殺菌卵白、加塩全卵、加塩卵黄、加塩卵白、加糖全卵、加糖卵黄、加糖卵白、酵素処理全卵、酵素処理卵黄などの卵類、原料アルコール、焼酎・ウイスキー・ウオッカ・ブランデーなどの蒸留酒、ワイン・日本酒・ビールなどの醸造酒、各種リキュール、グリセリン脂肪酸エステル・グリセリン酢酸脂肪酸エステル・グリセリン乳酸脂肪酸エステル・グリセリンコハク酸脂肪酸エステル・グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコール脂肪酸エステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド・レシチンなどの乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、生地改良剤、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類などの食品素材、コンソメ・ブイヨンなどの植物及び動物エキス、食品添加物などを挙げることができる。その他の材料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、好ましくは、上記澱粉類100質量部に対して合計で200質量部以下となる範囲で用いることができる。
【0038】
なお、上記の「本発明の製パン練り込み用油脂組成物以外の練り込み用油脂組成物」としては、例えば、パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂を含有しない油脂組成物、パーム分別軟部油を70質量%未満含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂を含有する油脂組成物、比重が0.9以上の油脂組成物、水中油型乳化脂、バター、粉末油脂組成物などが挙げられる。
なお、上記の本発明の製パン練り込み用油脂組成物以外の練り込み用油脂組成物を使用する場合の含有量は、本発明のパン生地で使用する澱粉類100質量部に対して、好ましくは0~30質量部、さらに好ましくは0~10質量部、最も好ましくは0~5質量部である。
【0039】
また、上記の糖類や甘味料としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、液糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、転化糖液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖、ポリデキストロース、還元乳糖、還元水飴、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、はちみつ、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、甘草などが挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0040】
さらに本発明のパン生地の製造方法について説明する。
本発明のパン生地の製造方法は、澱粉類、水及びイーストを含む製パン原料を混捏した生地に、パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂を油相中に40~100質量%含有し、比重が0.9未満であり、油脂を連続相とする製パン練り込み用油脂組成物を添加し、さらに混捏するものである。
【0041】
なぜ本発明のパン生地の製造方法に拠るとソフトでしっとりした食感でありながら、歯切れが良好なものとなる理由については明らかではないが、おそらくは下記のような理由によるものと考えられる。
すなわち、混捏により良質のグルテン構造等の骨格構造が形成された生地に、特定のエステル交換油脂により一定の粘りが出た低比重の油脂組成物を添加すると、混合時に、油脂中の気相が破壊・合一されることなく生地中に分散され、その気相が核となってイースト発酵により膨張し、きめ細かな薄い膜のパン生地となることで、生地伸展性が高まり、また、得られるパンも体積が大きく、きめ細かな薄い膜のクラムのパンとなることで、保水性が高くソフトでしっとりとした食感でありながら歯切れが良好になるのではないかと考えられる。
【0042】
なお、本発明のパン生地の製造方法においては、速成法、ストレート法、中種法、液種法、サワー種法、酒種法、ホップ種法、中麺法、チョリーウッド法、連続製パン法、冷蔵生地法、冷凍生地法等の製パン法を適宜選択することができる。上記冷凍生地法は、混涅直後に冷凍する板生地冷凍法、分割丸め後に生地を冷凍する玉生地冷凍法、成型後に生地を冷凍する成型冷凍法、最終発酵(ホイロ)後に生地を冷凍するホイロ済み冷凍法等の種々の方法が採用できる。
なお、得られた本発明のパン生地は、通常のパンと同様に、フロアータイム、分割、ベンチタイム、成形、ホイロ後に、焼成などの加熱工程を経ることにより、パンを得ることができる。
【0043】
最後に本発明のパンについて説明する。
本発明のパンは、本発明のパン生地を焼成することによって得ることができ、ソフトでしっとりした食感でありながら、歯切れが良好であり、ねちゃつきがないという特徴を有する。
なお、焼成温度や時間などの各種条件は通常のパン同様、適宜選択可能である。
また、上記焼成は蒸し焼きを含むものである。
【実施例
【0044】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は質量基準である。
【0045】
<製パン練り込み用油脂組成物の製造>
〔実施例1〕
ヨウ素価65のパーム分別軟部油のランダムエステル交換油脂とコーン油とを60:40の質量比で混合した混合油脂98.9質量部を60℃に加温して十分に溶解し、グリセリンモノ脂肪酸エステル0.5質量部、レシチン0.5質量部及び色素液0.1質量部を添加・溶解した油相を、急冷可塑化工程(冷却速度-20℃/分以上)にかけ、急冷可塑化後に窒素ガスを分散することで比重0.75の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Aを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Aは、油相を連続相とするものであり、水分含有量が0.1質量%未満であった。
【0046】
〔実施例2〕
グリセリンモノ脂肪酸エステル及びレシチンを無添加とし、混合油脂の配合量を99.1質量部とした以外は実施例1と同様の配合・製法により、比重0.75の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Bを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Bは、油相を連続相とするものであり、水分含有量が0.1質量%未満であった。
【0047】
〔実施例3〕
ジグリセリン不飽和脂肪酸エステル(ジグリセリンオレイン酸エステル:理研ビタミン製)0.5質量部を配合し、混合油脂の配合量を98.4質量部とした以外は実施例1と同様の配合・製法により、比重0.75の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Cを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Cは、油相を連続相とするものであり、水分含有量が0.1質量%未満であった。
【0048】
〔実施例4〕
グリセリンモノ脂肪酸エステル及びレシチンを無添加とし、ジグリセリン不飽和脂肪酸エステル(ジグリセリンオレイン酸エステル:理研ビタミン製)1質量部を配合した以外は実施例1と同様の配合・製法により、比重0.75の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Dを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Dは、油相を連続相とするものであり、水分含有量は0.1質量%未満であった。
【0049】
〔実施例5〕
窒素ガスを入れる量を調整したほかは実施例1と同様の配合・製法により、比重0.45の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Eを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Eは、油相を連続相とするものであり、水分含有量が0.1質量%未満であった。
【0050】
〔実施例6〕
窒素ガスを入れる量を調整したほかは実施例1と同様の配合・製法により、比重0.60の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Fを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Fは、油相を連続相とするものであり、水分含有量が0.1質量%未満であった。
【0051】
〔実施例7〕
ヨウ素価65のパーム分別軟部油のランダムエステル交換油脂とコーン油とを60:40の質量比で混合した混合油脂98.9質量部を81.1質量部に変更し、得られた油相に、水18.4質量部及び食塩0.5質量部からなる水相とを添加し、55℃の温度で混合乳化して油中水型乳化物とし、殺菌し、急冷可塑化工程(冷却速度-20℃/分以上)にかけ、急冷可塑化後に窒素ガスを分散することで比重0.75の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Gを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Gは、油中水型乳化物であったことから油相を連続相とするものであり、水分含有量が18.4質量%であった。
【0052】
〔比較例1〕
ヨウ素価65のパーム分別軟部油のランダムエステル交換油脂に代えて、ヨウ素価51のパーム油のランダムエステル交換油脂を使用した以外は実施例2と同様の配合・製法により、比重0.75の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Hを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Hは、油相を連続相とするものであり、水分含有量が0.1質量%未満であった。
【0053】
〔比較例2〕
ヨウ素価65のパーム分別軟部油のランダムエステル交換油脂とコーン油とを60:40の質量比で混合した混合油脂に代えて、ヨウ素価51のパーム油:ヨウ素価35のパームステアリン:ヨウ素価51のパーム油のエステル交換油脂が70:5:25の質量比で混合した混合油脂を使用した以外は実施例2と同様の配合・製法により、比重0.75の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Iを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Iは、油相を連続相とするものであり、水分含有量が0.1質量%未満であった。
【0054】
〔比較例3〕
ヨウ素価65のパーム分別軟部油のランダムエステル交換油脂とコーン油との配合質量比を60:40から20:80に変更した以外は実施例2と同様の配合・製法により、比重0.75の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Jを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Jは、油相を連続相とするものであり、水分含有量が0.1質量%未満であった。
【0055】
〔比較例4〕
窒素ガスを入れる量を調整したほかは実施例1と同様の配合・製法により、比重0.90の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Kを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Kは、油相を連続相とするものであり、水分含有量が0.1質量%未満であった。
【0056】
〔比較例5〕
窒素ガスを入れる工程を省略したほかは、実施例7と同様の配合・製法により比重0.95の可塑性を有する製パン練り込み用油脂組成物Lを得た。なお、製パン練り込み用油脂組成物Lは、油中水型乳化物であったことから油相を連続相とするものであり、水分含有量が18.4質量%であった。
【0057】
<製パン試験1>
〔実施例8~14、比較例6~10〕
実施例1~7、比較例1~5で得られた製パン練り込み用油脂組成物A~Lを使用し、下記の配合と製法によりワンローフ食パンA~Lを製造した。
【0058】
(配合)
中種配合
強力粉70質量部、イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、水40質量部
本捏配合
強力粉30質量部、上白糖8質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1質量部、水24質量部、製パン練り込み用油脂組成物6質量部
【0059】
(製法)
上記の中種配合の全原料をミキサーボウルに投入し、たて型ミキサーにセットしフックを使用して、低速3分、中速1分ミキシングし、中種生地(捏ね上げ温度=24℃)を得た。この中種生地を28℃、相対湿度80%にて4時間の発酵を行った。
上記の発酵を行った中種生地に、本捏配合の製パン練り込み用油脂組成物以外の材料を添加し、たて型ミキサーでフックを使用して、低速3分、中速2分、高速1分ミキシングした後、本捏配合の製パン練り込み用油脂組成物(15℃に調温)を添加して、低速3分、中速2分、高速1分ミキシングし、パン生地(捏ね上げ温度=27℃)を得た。得られたパン生地は、20分フロアタイムをとり、分割し(390g)、丸め、20分ベンチタイムを取った後、モルダーを使用してワンローフ成形し、ワンローフ型にいれ、38℃、相対湿度80%、45分のホイロを取った後、190℃のオーブンで25分焼成してワンローフ食パンを得た。
【0060】
<評価方法及び評価基準>
実施例8~14、比較例6~10で得られたワンローフ食パンA~Lを以下の基準に従って評価し、結果を表1に記載した。
なお、油脂混合性(練りこまれ状態)については、製パン練り込み用油脂組成物を添加後の低速3分、中速2分、高速1分のミキシング中において、油脂の練り込まれ状況を目視により観察し、下記の評価基準に従って評価を行い、結果を同じく表1に記載した。
【0061】
(内相)
○:気泡膜が薄く、均一である。
△:気泡膜が不均一で、やや目が詰まっている。
×:気泡膜が厚く、不均一で、目が詰まっている。
【0062】
(食感)
焼成1日後のワンローフ食パンについて、ソフト性、しっとり感、及び歯切れを、パネラー21名にて下記の基準にて評価し、その一番多かった評価を表1に記載した。なお同数の場合は一段上の評価とした。
(ソフト性)
◎:非常にソフト
○+:ソフト
○:ややソフト
△:やや硬い
×:硬い
(しっとり感)
◎:非常に良好
○+:良好
○:やや良好
△:ややぱさつき感がある
×:ぱさついている
(歯切れ)
◎:歯切れがよい
○+:やや歯切れがよい
○:やや歯切れが悪い
△:歯切れが悪く、ねちゃつく
×:非常に歯切れが悪く、非常にねちゃつく
【0063】
(油脂混合性)
◎:塊状になることなくペースト状で生地に練り込まれ、且つ、中速2分で均質に練り込まれている。
○+:やや生地が滑りながらも、ほぼペースト状で生地に練り込まれ、且つ、中速2分で均質に練り込まれている。
○:軽く、やや転がりながらも生地に練り込まれ、且つ、中速2分で均質に練り込まれている。
○-:やや塊状になることもあるが、ほぼペースト状で生地に練り込まれ、且つ、中速2分で均質に練り込まれている。
△+:塊状になりながらも生地に練り込まれ、且つ、中速2分で均質に練り込まれている。
△:塊状になり、中速2分でも均質に練り込まれなかったが高速1分までに均質に練り込まれた。
×:塊状になり、中速2分・高速1分でも均質に練り込まれることはなく塊が残ってしまった。
××:生地が滑って、中速2分でも均質に練り込まれることはなかった。
(生地べたつき評価基準)
◎:べたつきなし
○+:わずかにべたつきあり
○:ややべたつきあり
△:べたつきあり
×:非常にべたつく
【0064】
【表1】
【0065】
<製パン試験2>
〔実施例15~16、比較例11~12〕
製パン練り込み用油脂組成物A、B、H、Lを用い、下記の配合と製法によりブリオッシュ風ロールパンA、B、H、Lを製造した。
【0066】
(配合)
中種配合
強力粉70質量部、イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、水40質量部、
本捏配合
強力粉 30質量部、脱脂粉乳2質量部、卵黄15質量部、食塩1質量部、水3質量部、製パン練り込み用油脂組成物30質量部
【0067】
(製法)
上記の中種配合の全原料をミキサーボウルに投入し、たて型ミキサーにセットしフックを使用して、低速3分、中速2分ミキシングし、中種生地(捏ね上げ温度=24℃)を得た。この中種生地を28℃、相対湿度80%にて2時間の発酵を行った。
上記の発酵を行った中種生地に、本捏配合の製パン練り込み用油脂組成物以外の材料を添加し、たて型ミキサーでフックを使用して、低速3分、中速2分、高速1分ミキシングした後、本捏配合の製パン練り込み用油脂組成物を添加して、低速3分、中速4分、高速1分ミキシングし、パン生地(捏ね上げ温度=26℃)を得た。得られたパン生地は、30分フロアタイムをとり、分割し(80g)、丸め、30分ベンチタイムを取った後、ロール成形し、38℃、相対湿度75%、45分のホイロを取った後、180℃のオーブンで12分焼成してブリオッシュ風ロールパンを得た。
【0068】
<評価方法及び評価基準>
実施例15~16、比較例11~12で得られたブリオッシュ風ロールパンA、B、H、Lを以下の基準に従って評価し、結果を表2に記載した。
なお、油脂混合性(練りこまれ状態)については、製パン練り込み用油脂組成物を添加後の低速3分、中速4分、高速1分のミキシング中において、油脂の練り込まれ状況を目視により観察し、下記の評価基準に従って評価を行い、結果を同じく表2に記載した。
【0069】
(内相)
○:気泡膜が薄く、均一である。
△:気泡膜が不均一で、やや目が詰まっている。
×:気泡膜が厚く、不均一で、目が詰まっている。
【0070】
(食感)
焼成1日後のブリオッシュ風ロールパンについて、ソフト性、しっとり感、及び歯切れを、パネラー13名にて下記の基準にて評価し、その一番多かった評価を表2に記載した。なお同数の場合は一段上の評価とした。
(ソフト性)
◎:非常にソフト
○+:ソフト
○:ややソフト
△:やや硬い
×:硬い
(しっとり感)
◎:非常に良好
○+:良好
○:やや良好
△:ややぱさつき感がある
×:ぱさついている
(歯切れ)
◎:歯切れがよい
○+:やや歯切れがよい
○:やや歯切れが悪い
△:歯切れが悪く、ねちゃつく
×:非常に歯切れが悪く、非常にねちゃつく
【0071】
(油脂混合性)
◎:塊状になることなくペースト状で生地に練り込まれ、且つ、中速4分で均質に練り込まれている。
○+:やや生地が滑りながらも、ほぼペースト状で生地に練り込まれ、且つ、中速4分で均質に練り込まれている。
○:軽く、やや転がりながらも生地に練り込まれ、且つ、中速4分で均質に練り込まれている。
○-:やや塊状になることもあるが、ほぼペースト状で生地に練り込まれ、且つ、中速4分で均質に練り込まれている。
△+:塊状になりながらも生地に練り込まれ、且つ、中速4分で均質に練り込まれている。
△:塊状になり、中速4分でも均質に練り込まれなかったが高速1分までに均質に練り込まれた。
×:塊状になり、中速4分・高速1分でも均質に練り込まれることはなく塊が残ってしまった。
××:生地が滑って、中速4分でも均質に練り込まれることはなかった。
(生地べたつき評価基準)
◎:べたつきなし
○+:わずかにべたつきあり
○:ややべたつきあり
△:べたつきあり
×:非常にべたつく
【0072】
【表2】