(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20220404BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220404BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20220404BHJP
H01L 21/363 20060101ALI20220404BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20220404BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H01L29/78 617T
H01L29/78 618B
H01L29/78 619A
H01L29/78 616L
H01L29/78 616M
H01L29/78 616V
H01L21/316 X
H01L21/363
C23C16/42
C23C14/08 K
(21)【出願番号】P 2018125125
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小林 忠正
(72)【発明者】
【氏名】座間 秀昭
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175732(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0287593(US,A1)
【文献】特開2014-039009(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2014-0020602(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/316
H01L 21/363
C23C 16/42
C23C 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体を主成分とする半導体層を形成することと、
前記半導体層の少なくとも一部を覆う第1絶縁体層を形成することと、
前記第1絶縁体層から前記半導体層の一部を露出させることと、
前記半導体層および前記第1絶縁体層の全体を覆う第2絶縁体層を形成することと、を含み、
前記第1絶縁体層を形成することは、シリコンとイソシアネート基とを含み、かつ、水素を含まない第1原料ガスを用いたプラズマCVD法によって、シリコン酸化物を主成分とする前記第1絶縁体層を形成することであり、
前記半導体層の一部を露出させることは、前記半導体層におけるソース領域とドレイン領域とを前記第1絶縁体層から露出させることであり、
前記第2絶縁体層を形成することは、シリコンと水素とを含む第2原料ガスを用いたプラズマCVD法によって、シリコン酸化物を主成分とする前記第2絶縁体層を形成することである
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体装置の製造方法は、
前記ソース領域と前記ドレイン領域とを前記第1絶縁体層から露出させた後、かつ、前記第2絶縁体層を形成する前に、前記ソース領域と前記ドレイン領域とを、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス、H
2ガス、および、N
2ガスから構成される群から選択される少なくとも1つから生成したプラズマに曝すことをさらに含む
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1絶縁体層を形成することは、前記半導体層の全体を覆うように前記第1絶縁体層を形成することであり、
前記半導体層の一部を露出させることは、前記第1絶縁体層をエッチングすることによって、前記ソース領域と前記ドレイン領域とを前記第1絶縁体層から露出させることである
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1原料ガスは、Si(NCO)
4、Si(NCO)
3Cl、Si(NCO)
2Cl
2、および、Si(NCO)Cl
3から構成される群から選択されるいずれか1つであり、
前記第2原料ガスは、Si
nH
2n+2ガス(n=1~4)、SiH
nCl
4-nガス(n=1~3)、SiH
n(C
mH
2m+1)
4-nガス(n=0~3、m=1~4)、および、SiH
n(OC
mH
2m+1)
4-nガス(n=0~3、m=1~4)から構成される群から選択されるいずれか1つである
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体層は、酸化物半導体が主成分である少なくとも1つの層を含み、
前記層の主成分は、InとOとを含む酸化物半導体、GaとOとを含む酸化物半導体、および、ZnとOとを含む酸化物半導体から構成される群から選択されるいずれか1つである
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記層の主成分は、InGaZnO、GaZnO、InZnO、InTiZnO、InAlZnO、ZnTiO、ZnO、ZnAlO、ZnCuO、および、InSnZnOから構成される群から選択されるいずれか1つである
請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物半導体を主成分とする半導体層を備える薄膜トランジスタとして、トップゲート型の薄膜トランジスタが知られている。トップゲート型の薄膜トランジスタは、例えば、基板と、基板上に形成された半導体層と、半導体層上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備えている。また、トップゲート型の薄膜トランジスタは、ソース電極とドレイン電極とを備え、各電極は、半導体層に接続されている。ゲート絶縁膜には、シリコン酸化物によって形成された層が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ゲート絶縁膜は、プラズマCVD法を用いて形成されることがある。ゲート絶縁膜を形成するときには、シラン(SiH4)およびテトラエトキシシラン(TEOS)のいずれかが、ゲート絶縁膜の原料として用いられることが多い。これらの材料は水素を含むため、半導体層上に形成されたゲート絶縁膜も水素を含む。ゲート絶縁膜中の水素は、ゲート絶縁膜と半導体層との界面において半導体層に向けて拡散し、半導体層を還元することによって、半導体層中に酸素の欠損を生じさせる。こうした半導体層での酸素の欠損は、半導体層を含む薄膜トランジスタの特性、ひいては薄膜トランジスタを備える半導体装置の特性を不安定化させるため、特性のより安定した半導体装置を製造する方法が求められている。
【0005】
本発明は、半導体装置の特性を安定化させることを可能とした半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための半導体装置の製造方法は、酸化物半導体を主成分とする半導体層を形成することと、前記半導体層の少なくとも一部を覆う第1絶縁体層を形成することと、前記第1絶縁体層から前記半導体層の一部を露出させることと、前記半導体層および前記第1絶縁体層の全体を覆う第2絶縁体層を形成することと、を含む。前記第1絶縁体層を形成することは、シリコンとイソシアネート基とを含み、かつ、水素を含まない第1原料ガスを用いたプラズマCVD法によって、シリコン酸化物を主成分とする前記第1絶縁体層を形成することである。前記半導体層の一部を露出させることは、前記半導体層におけるソース領域とドレイン領域とを前記第1絶縁体層から露出させることである。前記第2絶縁体層を形成することは、シリコンと水素とを含む第2原料ガスを用いたプラズマCVD法によって、シリコン酸化物を主成分とする前記第2絶縁体層を形成することである。
【0007】
上記構成によれば、第1絶縁体層を形成するときに、水素を含まない第1原料ガスを用いて第1絶縁体層を形成することによって、半導体層のなかで、第1絶縁体層に接する部分に第1絶縁体層から水素が拡散することが抑えられる。一方で、第2絶縁体層を形成するときには、水素を含む第2原料ガスを用いるため、ソース領域およびドレイン領域において水素を含む活性種に由来する水素の拡散が生じる。これにより、半導体層のなかで、第1絶縁体層に覆われた部分であるチャンネル領域では水素の拡散による酸素欠損が抑えられる一方で、ソース領域およびドレイン領域は、水素の拡散によって低抵抗化される。結果として、半導体装置における特性を安定化させることができる。
【0008】
上記半導体装置の製造方法において、前記半導体装置の製造方法は、前記ソース領域と前記ドレイン領域とを前記第1絶縁体層から露出させた後、かつ、前記第2絶縁体層を形成する前に、前記ソース領域と前記ドレイン領域とを、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス、H2ガス、および、N2ガスから構成される群から選択される少なくとも1つから生成したプラズマに曝すことをさらに含んでもよい。
【0009】
上記構成によれば、ソース領域とドレイン領域とをプラズマに曝すことによって、ソース領域およびドレイン領域の各々を低抵抗化することができる。
【0010】
上記半導体装置の製造方法において、前記第1絶縁体層を形成することは、前記半導体層の全体を覆うように前記第1絶縁体層を形成することであり、前記半導体層の一部を露出させることは、前記第1絶縁体層をエッチングすることによって、前記ソース領域と前記ドレイン領域とを前記第1絶縁体層から露出させることである。
【0011】
上記構成によれば、第1絶縁体層のエッチングによってソース領域とドレイン領域とが第1絶縁体層から露出されるまでの間は、半導体層の全体が第1絶縁体層によって覆われているため、半導体層が第1絶縁体層によって保護される。
【0012】
上記半導体装置の製造方法において、前記第1原料ガスは、Si(NCO)4、Si(NCO)3Cl、Si(NCO)2Cl2、および、Si(NCO)Cl3から構成される群から選択されるいずれか1つであり、前記第2原料ガスは、SinH2n+2ガス(n=1~4)、SiHnCl4-nガス(n=1~3)、SiHn(CmH2m+1)4-nガス(n=0~3、m=1~4)、および、SiHn(OCmH2m+1)4-nガス(n=0~3、m=1~4)から構成される群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0013】
上記半導体装置の製造方法において、前記半導体層は、酸化物半導体が主成分である少なくとも1つの層を含み、前記層の主成分は、InとOとを含む酸化物半導体、GaとOとを含む酸化物半導体、および、ZnとOとを含む酸化物半導体から構成される群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0014】
上記半導体装置の製造方法において、前記層の主成分は、InGaZnO、GaZnO、InZnO、InTiZnO、InAlZnO、ZnTiO、ZnO、ZnAlO、ZnCuO、および、InSnZnOから構成される群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】半導体装置の製造方法における一実施形態において半導体層の形成に用いられる装置の一例であるスパッタ装置の概略構成を示すブロック図。
【
図2】第1絶縁体層および第2絶縁体層の形成に用いられる装置の一例であるプラズマCVD装置の概略構成を示すブロック図。
【
図3】半導体装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図4】半導体装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図5】半導体装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図6】半導体装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図7】半導体装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図8】半導体装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図9】半導体装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図10】半導体装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図11】半導体装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図12】試験例1の薄膜トランジスタにおけるId‐Vg特性を示すグラフ。
【
図13】試験例2の薄膜トランジスタにおけるId‐Vg特性を示すグラフ。
【
図14】試験例3の薄膜トランジスタにおけるId‐Vg特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から
図14を参照して、半導体装置の製造方法における一実施形態を説明する。以下では、半導体装置の製造方法に用いられるスパッタ装置の構成、CVD装置の構成、半導体装置の製造方法、および、試験例を順に説明する。
【0017】
[スパッタ装置の構成]
図1を参照してスパッタ装置の構成を説明する。
図1が示すように、スパッタ装置10は、半導体層を形成するための成膜空間を区画する真空槽11を備えている。真空槽11の内部には、半導体層が成膜される成膜対象Sを支持する支持部12が位置している。支持部12は、例えば、成膜対象Sを支持するステージである。
【0018】
真空槽11のなかで、支持部12と対向する位置には、半導体層を形成するためのカソード13が位置している。カソード13は、ターゲット13aとバッキングプレート13bとを含んでいる。ターゲット13aの主成分は酸化物半導体である。酸化物半導体は、InとOとを含む酸化物半導体、GaとOとを含む酸化物半導体、および、ZnとOとを含む酸化物半導体から構成される群から選択されるいずれか1つであることが好ましい。また、酸化物半導体は、InGaZnO(IGZO)、GaZnO、InZnO、InTiZnO、InAlZnO、ZnTiO、ZnO、ZnAlO、ZnCuO、および、InSnZnOから構成される群から選択されるいずれか1つであることが好ましい。ターゲット13aのうち、90質量%以上が、酸化物半導体である。なお、半導体層は、上述した酸化物半導体の群から選択されるいずれか1つを主成分とする1つの層のみから構成されてもよいし、2つ以上の層から構成されてもよい。
【0019】
バッキングプレート13bは、金属製である。バッキングプレート13bを形成するための材料は、例えば銅である。バッキングプレート13bには、上述したターゲット13aが固定されている。なお、カソード13の全体が真空槽11内に位置していなくてもよく、少なくともターゲット13aの被スパッタ面が真空槽11内に露出していればよい。
【0020】
スパッタ装置10は、ターゲット電源14を備えている。ターゲット電源14は、バッキングプレート13bに接続されている。ターゲット電源14がバッキングプレート13bに電圧を印加することによって、バッキングプレート13bを介してターゲット13aに電圧が印加される。
【0021】
スパッタ装置10は、排気部15とスパッタガス供給部16とをさらに備えている。排気部15は、真空槽11が区画する成膜空間を所定の圧力にまで減圧する。排気部15は、例えばポンプとバルブとを含んでいる。スパッタガス供給部16は、ターゲット13aをスパッタするためのプラズマの生成に用いられるスパッタガスを真空槽11内に供給する。スパッタガス供給部16は、例えば、スパッタガスを所定の流量で供給するマスフローコントローラーである。スパッタガス供給部16は、スパッタ装置10の外部に位置するボンベに接続している。スパッタガス供給部16の供給するスパッタガスは、例えばアルゴンガスなどの希ガスであってもよいし、酸素ガスなどの酸素含有ガスであってもよい。
【0022】
スパッタ装置10では、成膜対象Sが支持部12に配置されると、排気部15が所定の圧力にまで成膜空間を減圧する。次いで、スパッタガス供給部16がスパッタガスを真空槽11内に供給した後、ターゲット電源14が、バッキングプレート13bを介してターゲット13aに電圧を印加する。これにより、ターゲット13aにおける被スパッタ面の周りにプラズマが生成される。プラズマ中の正イオンがターゲット13aに向けて飛行することによって、ターゲット13aの被スパッタ面がスパッタされる。結果として、成膜対象Sの成膜面に酸化物半導体を主成分とする半導体層が形成される。
【0023】
[プラズマCVD装置の構成]
図2を参照してプラズマCVD装置の構成を説明する。以下では、第1絶縁体層を形成するために用いられるプラズマCVD装置の構成を説明する。なお、第2絶縁体層を形成するために用いられるプラズマCVD装置は、第1絶縁体層を形成するためのプラズマCVD装置と比べて、貯蔵部に貯蔵される成膜材料が異なるのみである。そのため、第1絶縁体層を形成するためのプラズマCVD装置の構成を説明し、第2絶縁体層を形成するために用いられるプラズマCVD装置の構成の詳しい説明を省略する。
【0024】
図2が示すように、プラズマCVD装置20は、第1絶縁体層を形成するための成膜空間を区画する真空槽21を備えている。真空槽21の内部には、半導体層31が形成された成膜対象Sを支持する支持部22が位置している。支持部22は、例えば、半導体層31と成膜対象Sとの積層体を支持するステージである。
【0025】
真空槽21のなかで、支持部22と対向する位置には、拡散部23が位置している。拡散部23は、第1絶縁体層を形成するためのガスを真空槽21内に拡散する機能を有している。拡散部23は、例えば金属製のシャワープレートである。拡散部23は、プラズマCVD装置20が備える電極の一例でもある。
【0026】
プラズマCVD装置20は排気部24を備え、排気部24は、真空槽21が区画する成膜空間を所定の圧力にまで減圧する。排気部24は、スパッタ装置10の排気部15と同様、例えばポンプとバルブとを含んでいる。
【0027】
プラズマCVD装置20は、成膜ガス供給ユニット25、酸素含有ガス供給部26、加熱部27、および、高周波電源28をさらに備えている。成膜ガス供給ユニット25は、恒温槽25a、貯蔵部25b、および、成膜ガス供給部25cを含んでいる。恒温槽25aは、貯蔵部25bおよび成膜ガス供給部25cを収容する収容空間を区画し、収容空間の温度を所定の温度に保つ。貯蔵部25bは、液体状の成膜材料Mを貯蔵している。貯蔵部25b内では、成膜材料Mが気液平衡の状態である。成膜ガス供給部25cは真空槽21に接続され、気化した成膜材料Mを所定の流量で真空槽21内に供給するマスフローコントローラーである。
【0028】
成膜材料Mは、例えばテトライソシアネートシラン(Si(NCO)4:TICS)である。プラズマCVD装置20は、TICSと酸素とを用いたプラズマCVD法によってシリコン酸化物(SiOx)を主成分とする第1絶縁体層を形成する。第1絶縁体層の原料であるTICSが水素を含まないため、第1絶縁体層における水素原子の濃度が、1×1021個/cm3以下の値になりやすい。
【0029】
なお、成膜材料Mには、TICSに限らず、シリコン(Si)とイソシアネート基(NCO)とを含み、かつ、水素を含まない材料を用いることができる。成膜材料Mには、例えば、Si(NCO)3Cl、Si(NCO)2Cl2、および、Si(NCO)Cl3のいずれかを用いることができる。プラズマCVD装置20では、成膜材料Mが気化したガスである第1原料ガスが真空槽21に供給される。
【0030】
酸素含有ガス供給部26は、加熱部27を介して真空槽21に接続されている。酸素含有ガス供給部26は、例えば酸素ガス(O2)を所定の流量で真空槽21に供給するマスフローコントローラーである。酸素含有ガス供給部26は、プラズマCVD装置20の外部に位置するボンベに接続されている。加熱部27は、酸素含有ガス供給部26から出力されたO2ガスを所定の温度に加熱する。加熱部27は、例えば50℃以上200℃以下の温度にO2ガスを加熱する。
【0031】
なお、酸素含有ガス供給部26は、O2ガスに限らず、O3ガス、N2Oガス、COガス、および、CO2ガスのいずれか1つを酸素含有ガスとして供給してもよい。また、酸素含有ガス供給部26から供給される酸素含有ガスは、不活性ガスによって希釈された状態で真空槽21に供給されてもよい。不活性ガスには、例えば、N2ガス、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、および、Xeガスなどを用いることができる。
【0032】
高周波電源28は拡散部23に接続している。高周波電源28が拡散部23に電力を供給すると、真空槽21のなかにおける拡散部23の周りに、TICSとO2ガスとから構成される混合ガスから、プラズマが生成される。高周波電源28は、例えば13.56MHzあるいは27.12MHzの周波数を有した高周波電力を拡散部23に供給する。
【0033】
プラズマCVD装置20では、半導体層31が積層された成膜対象Sが支持部22に配置されると、排気部24が所定の圧力にまで真空槽21内を減圧する。次いで、成膜ガス供給部25cがTICSを真空槽21に供給し、かつ、酸素含有ガス供給部26がO2ガスを真空槽21に供給した後、高周波電源28が拡散部23に電力を供給する。これにより、拡散部23の周りに、上述した混合ガスからプラズマが生成される。そして、プラズマ中の活性種が半導体層31上に到達することによって、半導体層31上にシリコン酸化物(SiOx)を主成分とする第1絶縁体層が形成される。
【0034】
なお、第2絶縁体層を形成するためのプラズマCVD装置では、貯蔵部が、上述した成膜材料Mに代えて、シリコンと水素とを含む成膜材料を貯蔵している。シリコンと水素とを含む成膜材料には、SinH2n+2(n=1~4)、SiHnCl4-n(n=1~3)、SiHn(CmH2m+1)4-n(n=0~3、m=1~4)、および、SiHn(OCmH2m+1)4-n(n=0~3、m=1~4)から構成される群から選択されるいずれか1つを挙げることができる。成膜ガス供給ユニットは、原料ガスとしてシリコンと水素とを含む第2原料ガスを供給する。これにより、プラズマCVD装置は、シリコン酸化物(SiOx)を主成分とする第2絶縁体層を形成する。第2絶縁体層の原料は水素を含むため、第2絶縁体層における水素原子の濃度が、1×1021個/cm3よりも高い値になりやすい。
【0035】
[半導体装置の製造方法]
図3から
図11を参照して、半導体装置の製造方法を説明する。
半導体装置の製造方法は、酸化物半導体を主成分とする半導体層を形成することと、半導体層の少なくとも一部を覆う第1絶縁体層を形成することと、第1絶縁体層から半導体層の一部を露出させることと、半導体層および第1絶縁体層の全体を覆う第2絶縁体層を形成することとを含む。第1絶縁体層を形成することは、シリコンとイソシアネート基とを含む第1原料ガスを用いたプラズマCVD法によって、シリコン酸化物を主成分とする第1絶縁体層を形成することである。半導体層の一部を露出させることは、半導体層におけるソース領域とドレイン領域とを第1絶縁体層から露出させることである。第2絶縁体層を形成することは、シリコンと水素とを含む第2原料ガスを用いたプラズマCVD法によって、シリコン酸化物を主成分とする第2絶縁体層を形成することである。以下、図面を参照して、半導体装置の製造方法をより詳しく説明する。
【0036】
図3が示すように、半導体装置を製造するときには、まず、成膜対象Sを準備する。成膜対象Sは、ガラス基板S1と、ガラス基板S1上に位置するバリア層S2とを備えている。バリア層S2は、例えばSiN
x、SiO
x、および、AlO
xから構成される群から選択されるいずれか1つによって形成された層から構成される。なお、成膜対象Sは、バリア層S2を備えなくてもよいし、ガラス基板S1およびバリア層S2以外の層を備えてもよい。
【0037】
次いで、成膜対象Sに半導体層31を形成する。上述したように、半導体層31は1つの層のみから構成されてもよいし、複数の層から構成されてもよい。半導体層31を構成する層の主成分は酸化物半導体である。酸化物半導体には、上述した群から選択されるいずれか1つを用いることができる。バリア層S2のなかで、ガラス基板S1に接する面とは反対側の面が表面である。半導体層31は、表面における一部に形成される。
【0038】
なお、半導体層31は、例えば以下のように形成される。まず、バリア層S2の表面における全体に半導体層31が形成される。次いで、半導体層31の一部がエッチングによって除去されることによって、半導体層31は、バリア層S2の表面における一部のみに位置する。あるいは、半導体層31は、マスクを用いた成膜によって、バリア層S2の表面における一部のみに形成されてもよい。
【0039】
上述したように、半導体層31は、酸化物半導体が主成分である少なくとも1つの層を含む。半導体層31が含む層の主成分は、InとOとを含む酸化物半導体、GaとOとを含む酸化物半導体、および、ZnとOとを含む酸化物半導体から構成される群から選択されるいずれか1つである。また、半導体層31が含む層の主成分は、InGaZnO、GaZnO、InZnO、InTiZnO、InAlZnO、ZnTiO、ZnO、ZnAlO、ZnCuO、および、InSnZnOから構成される群から選択されるいずれか1つである。
【0040】
図4が示すように、第1絶縁体層32が形成される。第1絶縁体層32を形成することは、半導体層31の全体を覆うように第1絶縁体層32を形成することである。すなわち、第1絶縁体層32は、半導体層31の表面における全体、および、半導体層31の側面を覆う。上述したように、第1絶縁体層32が形成されるときには、第1原料ガスとして、Si(NCO)
4、Si(NCO)
3Cl、Si(NCO)
2Cl
2、および、Si(NCO)Cl
3から構成される群から選択されるいずれか1つが用いられる。
【0041】
図5が示すように、第1絶縁体層32の全体にゲート電極33が形成される。ゲート電極33を形成するための材料には、例えばモリブデン(Mo)を挙げることができる。ゲート電極33は、例えば、
図1を参照して先に説明したスパッタ装置10に準じた装置を用いて形成することができる。
【0042】
図6が示すように、レジストマスク34を用いてゲート電極33をエッチングする。なお、ゲート電極33をエッチングするときには、まず、ゲート電極33の全体にフォトレジストを塗布する。次いで、フォトレジストを露光および現像することによって、所定のパターンを有したレジストマスク34を形成する。そして、レジストマスク34を用いたドライエッチングによって、ゲート電極33をエッチングする。
【0043】
図7が示すように、レジストマスク34とゲート電極33とを用いて第1絶縁体層32をエッチングする。これにより、第1絶縁体層32の下層である半導体層31の一部が第1絶縁体層32から露出する。バリア層S2の表面と対向する平面視において、半導体層31のなかで、第1絶縁体層32を挟む2つの部分のうち、一方がソース領域31Sであり、他方がドレイン領域31Dである。第1絶縁体層32は、レジストマスク34とゲート電極33とを用いたドライエッチングによって、半導体層31におけるソース領域31Sとドレイン領域31Dとが第1絶縁体層32から露出するようにエッチングされる。バリア層S2の表面と対向する平面視において、半導体層31のなかで、第1絶縁体層32と重なる部分が、チャンネル領域31Cである。
【0044】
すなわち、本実施形態において、半導体層31の一部を露出させることは、第1絶縁体層32をエッチングすることによって、ソース領域31Sとドレイン領域31Dとを第1絶縁体層32から露出させることである。これにより、第1絶縁体層32のエッチングによってソース領域31Sとドレイン領域31Dとが第1絶縁体層32から露出されるまでの間は、半導体層31の全体が第1絶縁体層32によって覆われているため、半導体層31が第1絶縁体層32によって保護される。
【0045】
図8が示すように、ソース領域31Sとドレイン領域31DとをArガスから生成したプラズマPに曝す。本実施形態における半導体装置の製造方法は、ソース領域31Sとドレイン領域31Dとを第1絶縁体層32から露出させた後、かつ、第2絶縁体層を形成する前に、ソース領域31Sとドレイン領域31DとをArガスから生成したプラズマPに曝すことをさらに含む。ソース領域31Sとドレイン領域31DとをArガスから生成したプラズマに曝すことによって、ソース領域31Sおよびドレイン領域31Dの各々を低抵抗化することができる。なお、プラズマPは、Arガスに限らず、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス、H
2ガス、および、N
2ガスから構成される群から選択される少なくとも1つから生成したプラズマであってよい。
【0046】
なお、本実施形態では、ソース領域31Sとドレイン領域31DとをプラズマPに曝す前に、ゲート電極33からレジストマスク34を除去している。しかしながら、ソース領域31Sとドレイン領域31DとをプラズマPに曝した後に、ゲート電極33からレジストマスク34を除去してもよい。
【0047】
図9が示すように、第2原料ガスを用いて第2絶縁体層を形成する。第2絶縁体層を形成するときには、上述したように、第2原料ガスとして、Si
nH
2n+2ガス(n=1~4)、SiH
nCl
4-nガス(n=1~3)、SiH
n(C
mH
2m+1)
4-nガス(n=0~3、m=1~4)、および、SiH
n(OC
mH
2m+1)
4-nガス(n=0~3、m=1~4)から構成される群から選択されるいずれか1つを用いることができる。第2原料ガスは水素を含むため、第2絶縁体層を形成するときに生成されたプラズマPには、水素を含む活性種が含まれる。水素を含む活性種には、水素イオン、および、水素ラジカルを挙げることができる。
【0048】
そのため、第2絶縁体層が形成されるときには、半導体層31のなかで、ソース領域31Sおよびドレイン領域31Dが、水素を含む活性種を含むプラズマPに曝される。これにより、ソース領域31Sおよびドレイン領域31Dの各々における水素原子の濃度を、半導体層31におけるチャンネル領域31Cにおける水素原子の濃度よりも高くすることができる。
【0049】
一方で、バリア層S2の表面と対向する平面視において、半導体層31のチャンネル領域31Cは、第1絶縁体層32とゲート電極33とによって覆われている。そのため、ソース領域31Sとドレイン領域31Dにおいて、水素を含む活性種の拡散が生じる一方で、チャンネル領域31Cにおいて水素を含む活性種が拡散することが抑えられる。これにより、チャンネル領域31Cにおける水素原子の濃度が高まることが抑えられる。
【0050】
このように、第1絶縁体層32を形成するときに、水素を含まない第1原料ガスを用いて第1絶縁体層32を形成することによって、チャンネル領域31Cに第1絶縁体層32から水素が拡散することが抑えられる。一方で、第2絶縁体層35を形成するときには、水素を含む第2原料ガスを用いるため、ソース領域31Sおよびドレイン領域31Dにおいて水素を含む活性種に由来する水素の拡散が生じる。これにより、半導体層31のなかで、チャンネル領域31Cでは水素の拡散による酸素欠損が抑えられる一方で、ソース領域31Sおよびドレイン領域31Dは、水素の拡散によって低抵抗化される。結果として、半導体装置における特性を安定化させることができる。
【0051】
図10が示すように、第2絶縁体層35は、半導体層31、第1絶縁体層32、ゲート電極33の全体を覆うように、バリア層S2上に形成される。これにより、半導体層31およびゲート電極33が、外部から絶縁される。
【0052】
上述したように、第2絶縁体層35における水素原子の濃度は、第1絶縁体層32における水素原子の濃度よりも高い。第2絶縁体層35における水素原子の濃度は、1×1021個/cm3よりも高い一方で、第1絶縁体層32における水素原子の濃度は、1×1021個/cm3以下である。
【0053】
図11が示すように、ソース領域31Sにソース電極36が接続され、ドレイン領域31Dにドレイン電極37が接続される。これにより、半導体装置の一例である薄膜トランジスタ30を得ることができる。なお、ソース領域31Sにソース電極36が接続され、ドレイン領域31Dにドレイン電極37が接続されるときには、まず、第2絶縁体層35に、ソース電極36用の貫通孔35Hと、ドレイン電極37用の貫通孔35Hとが形成される。貫通孔35Hの形成には、ドライエッチングを用いることができる。
【0054】
次いで、各貫通孔35Hを埋めるように導電膜を形成した後、導電膜をパターニングすることによって、ソース電極36とドレイン電極37とを形成する。導電膜の形成には、
図1を用いて先に説明したスパッタ装置を用いることができる。導電膜のエッチングには、例えばドライエッチングを用いることができる。ソース電極36およびドレイン電極37を形成するための材料には、例えば、Mo、および、アルミニウム(Al)を用いることができる。
【0055】
[試験例]
図12から
図14を参照して、試験例を説明する。
[絶縁体層における水素原子の濃度]
シリコン酸化物を主成分とする絶縁体層の水素濃度に関わる試験例について説明する。
【0056】
プラズマCVD装置を用いた以下の成膜条件による成膜によって、試験例の絶縁体層を得た。この際、高周波電力の値を400W以上4000W以下の間で変更し、絶縁体層の形成時における高周波電力の値が互いに異なる複数の絶縁体層を得た。そして、各試験例の絶縁体層について、水素原子の濃度を測定した。各絶縁体層に対する測定の結果は、表1に示す通りであった。なお、絶縁体層における水素原子の濃度の測定には、二次イオン質量分析機(ADEPT1010、アルバック・ファイ(株)製)を用いた。
【0057】
[成膜条件]
・成膜材料M :TICS
・成膜材料Mの流量 :55sccm
・酸素含有ガス :O2ガス
・酸素含有ガスの流量 :2500sccm
・成膜空間の圧力 :175Pa
・高周波電力 :400W以上4000W以下
・拡散部23における電極面積:2700cm2
【0058】
【0059】
また、プラズマCVD装置を用いた以下の成膜条件による成膜によって、試験例の絶縁体層を得た。この際、成膜材料Mとして、SiH4またはTEOSを用いた。各試験例の絶縁体層について、水素原子の濃度を測定した。各絶縁体層に対する測定の結果は、表2に示す通りであった。
【0060】
[成膜条件(TEOS)]
・成膜材料M :TEOS
・成膜材料Mの流量 :100sccm
・酸素含有ガス :O2ガス
・酸素含有ガスの流量 :5000sccm
・成膜空間の圧力 :175Pa
・高周波電力 :1600W
・拡散部23における電極面積:2700cm2
【0061】
[成膜条件(SiH4)]
・成膜材料M :SiH4
・成膜材料Mの流量 :70sccm
・酸素含有ガス :N2Oガス
・酸素含有ガスの流量 :3500sccm
・成膜空間の圧力 :200Pa
・高周波電力 :800W
・拡散部23における電極面積:2700cm2
【0062】
【0063】
[試験例1]
ガラス基板S1と、SiNxとSiOxとを積層したバリア層S2とから構成される成膜対象Sを準備し、スパッタ法を用いて半導体層31であるInGnZnO層を形成した。そして、TICSを用いたプラズマCVD法によって第1絶縁体層32を形成し、次いで、第1絶縁体層32上に、スパッタ法を用いてゲート電極33としてMo層を形成した。ゲート電極33上にレジストマスク34を形成した後に、レジストマスク34を用いたドライエッチングによって、ゲート電極33と第1絶縁体層32とを記載の順にパターニングした。
【0064】
次に、半導体層31の一部をArガスから生成したプラズマに曝した。そして、SiH4を用いたプラズマCVD法によって、半導体層31、第1絶縁体層32、および、ゲート電極33の全体を覆うように、第2絶縁体層35を形成した。第2絶縁体層35に貫通孔35Hを形成した後に、貫通孔35Hを埋めるようにMo層を形成した。次いで、Mo層をパターニングすることによって、ソース電極36とドレイン電極37とを形成した。これにより、試験例1の薄膜トランジスタ30を得た。
【0065】
なお、試験例1では、半導体層31の厚さを50nmに設定し、第1絶縁体層32の厚さを100nmに設定し、第2絶縁体層の厚さを200nmに設定した。また、半導体層31、第1絶縁体層32、および、第2絶縁体層35を以下の条件で形成した。
【0066】
[半導体層31]
・ターゲット :InGaZnO
・スパッタガス :Arガス/O2ガス
・スパッタガスの流量 :80sccm/6sccm
・成膜空間の圧力 :0.3Pa
・ターゲットに印加される電力:240W
・ターゲットの面積 :81cm2(直径4インチ)
【0067】
[第1絶縁体層32]
・成膜材料M :TICS
・成膜材料Mの流量 :55sccm
・酸素含有ガス :O2ガス
・酸素含有ガスの流量 :2500sccm
・成膜空間の圧力 :175Pa
・高周波電力 :1000W
・拡散部23における電極面積:2700cm2
【0068】
[第2絶縁体層35]
・成膜材料M :SiH4
・成膜材料Mの流量 :70sccm
・酸素含有ガス :N2Oガス
・酸素含有ガスの流量 :3500sccm
・成膜空間の圧力 :200Pa
・高周波電力 :800W
・拡散部23における電極面積:2700cm2
【0069】
[試験例2]
第1絶縁体層32を形成するときにSiH4を用いた以外は、試験例1の薄膜トランジスタ30を製造したときと同様の方法によって、試験例2の薄膜トランジスタを得た。なお、第1絶縁体層32を形成するときの条件を、試験例1において第2絶縁体層35を形成するときと同じ条件に設定した。
【0070】
[試験例3]
第2絶縁体層35を形成するときにTICSを用いた以外は、試験例1の薄膜トランジスタ30を製造したときと同様の方法によって、試験例3の薄膜トランジスタを得た。なお、第2絶縁体層35を形成するときの条件を、試験例1において第1絶縁体層32を形成するときと同じ条件に設定した。
【0071】
[測定結果]
試験例1から試験例3の各々の薄膜トランジスタについて、Id‐Vg特性を測定した。試験例1の薄膜トランジスタにおけるId‐Vg特性は
図12に示す通りであり、試験例2の薄膜トランジスタにおけるId‐Vg特性は
図13に示す通りであり、試験例3の薄膜トランジスタにおけるId‐Vg特性は
図14に示す通りであった。ドレイン‐ソース間の電圧(Vds)が5Vであり、かつ、ドレイン電流(Id)が1×10
-9Aであるときを、薄膜トランジスタがオン状態であると定義した。
【0072】
図12が示すように、試験例1の薄膜トランジスタでは、ゲート閾値電圧が1Vであることが認められた。これに対して、
図13が示すように、試験例2の薄膜トランジスタでは、ゲート電圧の値に関わらずドレイン電流が1×10
-3A程度であることが認められ、また、
図14が示すように、試験例3の薄膜トランジスタでは、ゲート電圧の値に関わらずドレイン電流が1×10
-14Aと1×10
-13Aとの間の値であることが認められた。
【0073】
こうした結果から、試験例1の薄膜トランジスタは安定な特性を有すると言える。これに対して、試験例2の薄膜トランジスタは、半導体層の全体が低抵抗であるために、安定な特性を有しないと言える。また、試験例3の薄膜トランジスタは、半導体層の全体が高抵抗であるために、安定な特性を有しないと言える。
【0074】
以上説明したように、半導体装置の製造方法の一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)第1絶縁体層32を形成するときに、水素を含まない第1原料ガスを用いて第1絶縁体層32を形成することによって、チャンネル領域31Cに第1絶縁体層32から水素が拡散することが抑えられる。一方で、第2絶縁体層35を形成するときには、水素を含む第2原料ガスを用いるため、ソース領域31Sおよびドレイン領域31Dにおいて水素を含む活性種に由来する水素の拡散が生じる。これにより、半導体層31のなかで、チャンネル領域31Cでは水素の拡散による酸素欠損が抑えられる一方で、ソース領域31Sおよびドレイン領域31Dは、水素の拡散によって低抵抗化される。結果として、半導体装置における特性を安定化させることができる。
【0075】
(2)ソース領域31Sとドレイン領域31DとをArガスから生成したプラズマに曝すことによって、ソース領域31Sおよびドレイン領域31Dの各々を低抵抗化することができる。
【0076】
(3)第1絶縁体層32のエッチングによってソース領域31Sとドレイン領域31Dとが第1絶縁体層32から露出されるまでの間は、半導体層31の全体が第1絶縁体層32によって覆われているため、半導体層31が第1絶縁体層32によって保護される。
【0077】
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
[プラズマ処理]
・ソース領域31Sとドレイン領域31DとをArガスから生成されたプラズマPに曝すことを省略してもよい。この場合であっても、第2絶縁体層35が形成されるときに、第2原料ガスに由来する水素を含む活性種が、ソース領域31Sとドレイン領域31Dとにおいて拡散する。これにより、ソース領域31Sとドレイン領域31Dとを低抵抗化することは可能である。
【0078】
[第1絶縁体層]
・第1絶縁体層32のエッチングによって、ソース領域31Sとドレイン領域31Dとが第1絶縁体層32から露出されなくてもよい。この場合には、第1絶縁体層32の成膜時にマスクを用いることによって、半導体層31におけるソース領域31Sとドレイン領域31Dとが第1絶縁体層32から露出されてもよい。この場合には、半導体層31上に第1絶縁体層32を形成することが、第1絶縁体層32を形成することと、第1絶縁体層32からソース領域31Sとドレイン領域31Dとを露出させることを含む。
【符号の説明】
【0079】
10…スパッタ装置、11…真空槽、12…支持部、13…カソード、13a…ターゲット、13b…バッキングプレート、14…ターゲット電源、15…排気部、16…スパッタガス供給部、20…プラズマCVD装置、21…真空槽、22…支持部、23…拡散部、24…排気部、25…成膜ガス供給ユニット、25a…恒温槽、25b…貯蔵部、25c…成膜ガス供給部、26…酸素含有ガス供給部、27…加熱部、28…高周波電源、30…薄膜トランジスタ、31…半導体層、31C…チャンネル領域、31D…ドレイン領域、31S…ソース領域、32…第1絶縁体層、33…ゲート電極、34…レジストマスク、35…第2絶縁体層、35H…貫通孔、36…ソース電極、37…ドレイン電極、M…成膜材料、P…プラズマ、S…成膜対象、S1…ガラス基板、S2…バリア層。