(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】排気ガスの排出構造および庇ユニット
(51)【国際特許分類】
F01N 13/20 20100101AFI20220404BHJP
F01N 1/24 20060101ALI20220404BHJP
F23L 17/02 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
F01N13/20 Z
F01N1/24 E
F23L17/02 602F
(21)【出願番号】P 2018136645
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】川原 和之
(72)【発明者】
【氏名】武者 裕之
(72)【発明者】
【氏名】重山 圭
(72)【発明者】
【氏名】竹村 昌史
(72)【発明者】
【氏名】松平 博人
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 道昭
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-069659(JP,A)
【文献】登録実用新案第3110176(JP,U)
【文献】特開昭50-121637(JP,A)
【文献】実開平02-147644(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00- 1/24
F01N 5/00- 5/04
F01N 13/00-13/20
F23L 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機からダクトを通じて送出される排気ガスを大気中に排出するための排出構造であって、
前記ダクトと連通する煙突と、
前記煙突の開口端を覆う庇ユニットと、
を備え、
前記庇ユニットは、
前記煙突の開口端の上方に位置する端部材と、
前記端部材と前記開口端との間に配列された複数の拡散板と、
前記複数の拡散板の周囲を環状に取り囲む遮蔽体と、
前記遮蔽体の内側にて前記複数の拡散板の周囲を取り囲む格子状又は網状の異物侵入防止構造と、
を含み、
前記複数の拡散板により上下に複数段の排出通路が形成され、各排出通路が前記煙突に連通することを特徴とする排気ガスの排出構造。
【請求項2】
前記拡散板を3つ以上備えることを特徴とする請求項1に記載の排気ガスの排出構造。
【請求項3】
前記端部材における前記煙突の軸線上に吸音材が配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガスの排出構造。
【請求項4】
最上段の排出通路が、前記吸音材で方向転換させられた排気ガスを大気中へ導出するための導出通路であることを特徴とする請求項3に記載の排気ガスの排出構造。
【請求項5】
少なくとも最上段の拡散板には吸音材が設けられていないことを特徴とする請求項3又は4に記載の排気ガスの排出構造。
【請求項6】
前記排出通路を形成する上下の拡散板の少なくともいずれかに吸音材が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の排気ガスの排出構造。
【請求項7】
前記煙突の内面に吸音材が配設されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の排気ガスの排出構造。
【請求項8】
前記拡散板は、笠状の本体を有し、その本体の中央に開口部を有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の排気ガスの排出構造。
【請求項9】
前記煙突の開口面積と最下段の拡散板の開口面積との差と、上下に隣接する拡散板の開口面積の差と、最上段の拡散板の開口面積とが等しいか、もしくは裕度±30%の範囲に設定されていることを特徴とする請求項8に記載の排気ガスの排出構造。
【請求項10】
前記遮蔽体の内側面に吸音材が配設されていることを特徴とする
請求項1~9のいずれかに記載の排気ガスの排出構造。
【請求項11】
前記吸音材は、保護材により飛散が防止されていることを特徴とする請求項3~7のいずれかに記載の排気ガスの排出構造。
【請求項12】
前記異物侵入防止構造は、
前記複数の拡散板の周囲に上下方向に複数配列された平板と、
前記複数の平板を固定する固定構造と、
を含み、
前記平板の傾斜角が、前記拡散板の傾斜角と実質的に等しく設定されていることを特徴とする
請求項1~11のいずれかに記載の排気ガスの排出構造。
【請求項13】
原動機の排気ガスを排出する煙突の開口端に取り付けられる庇ユニットであって、
前記煙突の開口端の上方に配置される端部材と、
前記端部材と前記開口端との間に配列される複数の拡散板と、
前記複数の拡散板の周囲を環状に取り囲む遮蔽体と、
前記遮蔽体の内側にて前記複数の拡散板の周囲を取り囲む格子状又は網状の異物侵入防止構造と、
を含み、
前記複数の拡散板により上下に複数段の排出通路が形成されることを特徴とする庇ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機から送出される排気ガスを大気中に排出する排出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
降雨による洪水が懸念される地域には、治水設備として排水機場が設けられる。大雨によって中小河川から溢れ出た雨水は、立坑を介して地下放水路に供給され、排水機場の吸込水槽に貯留される。吸込水槽の水位が基準値を超えるとポンプが駆動され、雨水が汲み上げられて大河川へ放出される。
【0003】
ところで、排水機場におけるポンプの駆動にはガスタービンが用いられる。このガスタービンからは燃焼排気によるガスが発生するため、その排気ガスをダクトおよび煙突を介して屋外に排出する。煙突出口には、雨水の侵入を防止するための笠体が設けられる。
【0004】
このようなポンプ設備を建築する場合、周辺の住環境を損なわないよう、ガスタービンの排気音対策が求められる。特に都市部においては騒音仕様が厳しく設定されるため、排気経路に十分な大きさの消音器を設置する必要がある。しかし、仕様を満たすために消音器を大きくすると、機場内の動線やメンテナンス用のスペースを確保し難くなるといった不都合が生じる。そこで、消音器とは別に、煙突および笠体の内面に沿って吸音材を配設し、減音効果を高めることも考えられる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発明者らの検証によると、このようにして減音効果が高められたとしても、排気ガスが煙突出口と笠体との間を通過する際に気流音が発生し、それが騒音仕様に対して無視できない大きさになることが分かった。なお、このような騒音対策の問題は、排水機場のポンプ設備に限らず、原動機からの排気ガスをダクトを介して大気中に排出する設備においては同様に生じ得る。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、原動機から送出される排気ガスによる騒音を抑制可能な排出構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、原動機からダクトを通じて送出される排気ガスを大気中に排出する排出構造である。この排気ガスの排出構造は、ダクトと連通する煙突と、煙突の開口端を覆う庇ユニットと、を備える。庇ユニットは、煙突の開口端の上方に位置する端部材と、端部材と開口端との間に配列された複数の拡散板と、を含む。複数の拡散板により上下に複数段の排出通路が形成され、各排出通路が煙突に連通する。
【0009】
本発明の別の態様は、原動機の排気ガスを排出する煙突の開口端に取り付けられる庇ユニットである。この庇ユニットは、煙突の開口端の上方に配置される端部材と、端部材と開口端との間に配列される複数の拡散板と、を含む。複数の拡散板により上下に複数段の排出通路が形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原動機からの排気音を抑制可能な排気ガスの排出構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例に係る排出構造が適用された設備を概略的に表す図である。
【
図4】鳥侵入防止構造の詳細を表す部分拡大図である。
【
図5】排気ユニットの上部を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態は、建屋に設置された原動機の排気ガスを、煙突を介して大気中に排出するための排出構造である。この排出構造は、原動機そのものが発生する排気音や、排気ガスが煙突を通過する際に生じる気流音(これらを特に区別しない場合は「排気音」と総称する)を低減するための構造を含む。原動機は、後述のようにポンプを駆動するガスタービンであってもよいし、その他の駆動対象を駆動する内燃機関等であってもよい。原動機から送出された排気ガスは、ダクトを通じて煙突に導かれ、大気に放出される。煙突に雨水が侵入することを防止するため、その開口端(上端開口部)を覆うように庇ユニットが設けられる。
【0013】
庇ユニットは、笠状の端部材(笠体)と複数の拡散板を含む。複数の拡散板は、煙突の開口端と端部材との間に配列される。それにより、上下に複数段の排出通路が形成され、各排出通路が煙突に連通する。すなわち、庇ユニットには、煙突からの排気ガスを分流するための複数段の排出通路が形成されている。上下に隣接する拡散板の間の空間が排出通路となる。拡散板を3つ以上備えることで、3段以上の排出通路を形成でき、排気ガスの分流を促進できる。端部材は、単体で煙突の屋根を構成してもよいし、最上段の拡散板と一体となって屋根を構成してもよい。各段の拡散板は、笠状の本体を有し、その本体の中央に開口部を有するものとしてもよい。それにより、庇ユニットの下段(上流側)に排出された排気ガスの一部を上段(下流側)に流すことができる。あるいは、各段を複数の拡散板にて構成し、各段の中央に複数の拡散板に囲まれる開放領域を形成してもよい。
【0014】
この態様によれば、複数の拡散板によって排気ガスが分流されることで、庇ユニットの側方への流れを平滑化(整流)できる。すなわち、従来のように庇ユニットに屋根だけを設けると、庇ユニット内で排気ガスの流速に大きな偏りが生じ、流速の高い部分で気流音が大きくなる。この点、この態様によれば、複数段の排出通路に分流させることでその流速の偏りを抑制し、気流音の高まりを抑制できる。結果的に排気音を低減できる。
【0015】
本実施形態では、端部材の内側に吸音材が配設される。吸音材が煙突の軸線上に位置することで、煙突から排出されたガスのうち最上段まで導かれるものは吸音材に当たり、減音される。それにより、全体として排気ガスの減音効果をさらに高めることができる。この場合、最上段の排出通路が、吸音材で方向転換させられた(進路を妨げられた)排気ガスを大気中へ導出するための導出通路を形成するとよい。最上段の拡散板と端部材により庇ユニットの屋根を構成すれば、その導出通路を実現しやすい。端部材に吸音材を設ける一方で、最上段の拡散板には吸音材を設けない構成としてもよい。それにより、最上段の排出通路の面積を十分に確保でき、気流音の発生を抑制できる。拡散板については全て、吸音材を設けない構成としてもよい。
【0016】
あるいは逆に、排出通路を形成する上下の拡散板の少なくともいずれかに吸音材を設ける構成としてもよい。それにより、各段の排出通路に吸音材を配置することができる。上述した分流効果により気流音の発生をある程度抑えつつ、吸音材による減音を促進するものである。ただし、吸音材を設けることで拡散板ひいては庇ユニットの総重量が大きくなる。また、吸音材の設置に伴ってコストが上昇する。このため、騒音仕様が満たされる場合には、拡散板への吸音材の設置は省略するのが好ましい。
【0017】
複数段の拡散板は、上段のものほど中央の開口面積が小さくなるようにする。このような構成により、煙突の開口部から排出されるガスを下方から段階的に振り分けることができる。その場合、煙突の開口面積と最下段の拡散板の開口面積との差と、上下に隣接する拡散板の開口面積の差と、最上段の拡散板の開口面積とを等しくするのが好ましい。ここでいう「等しい」とは、同一である場合のほか誤差範囲を含む。また、それらが等しくなくとも、裕度±30%の範囲に収めるのが好ましい。それにより、各排出通路を流れる排気ガスの流量を均等にすることができ、複数の拡散板による減音効果が良好となる。なお、複数の排気通路で排気ガスの流れが不均等になったとしても、分流によって流れが改善されるため、気流音の発生を抑制することはできる。
【0018】
複数の拡散板の周囲を環状に取り囲むように遮蔽体を設けてもよい。遮蔽体は、板材を環状に成形した遮蔽板としてもよいし、ブロックを環状に配設した遮蔽ブロックとしてもよい。このような構成により、庇ユニットの側方に向けて流れる排気ガスの流出方向を上方又は上下方向に向けるなど、規制できる。それにより、庇ユニットの水平方向への音の放射を抑え、庇ユニット周辺の騒音レベルを低減できる。庇ユニット周辺に設置されている建築構造物等が排気ガスに晒され、熱変形する等の事態を防止できる。遮蔽体の内周面に吸音材を配設すると、音の放射をより効果的に抑えることができる。
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態を具体化した実施例について説明する。なお、以下の実施例およびその変形例において、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0020】
[実施例]
図1は、実施例に係る排出構造が適用された設備を概略的に表す図である。本実施例の排気ガスの排出構造は、排水機場のポンプ設備1に適用される。
排水機場には、吸込水槽2および吐出水槽4が設けられている。吸込水槽2には地下放水路等から供給された雨水が貯留される。吐出水槽4は、図示略の放水路を介して大河川につながっている。
【0021】
ポンプ設備1は、吸込水槽2と吐出水槽4とをつなぐ配管10と、配管10に設けられたポンプ12と、ポンプ12を駆動するガスタービン14と、ガスタービン14の排気ガスを大気中に放出する排気ユニット16を備える。本実施例のポンプ12は、立軸斜流ポンプであり、鉛直方向に延びるケーシング20と、ケーシング20の軸線に沿って延びる主軸22と、主軸22の先端に設けられた羽根車24を含む。ガスタービン14と主軸22との間には減速機25が設けられている。ケーシング20は、配管10の一部を構成し、下端に吸込口となるベルマウス26を有する。
【0022】
配管10は、吸込水槽2の階上に配置される曲がり管28と、曲がり管28の下端から吸込水槽2へ垂下される吊下管30と、曲がり管28の先端から吐出水槽4へ延びる吐出管32を有する。吊下管30がケーシング20を吊り下げている。主軸22は、曲がり管28を貫通し、さらに階上の減速機25に接続されている。吐出管32には、その上流側から逆止弁34および吐出弁36が設けられている。吐出弁36は、ポンプ12の駆動時に吸込水槽2から吐出水槽4への水路を連絡し、雨水の排出を可能にする。逆止弁34は、吐出水槽4から吸込水槽2への雨水の逆流を防止する。
【0023】
減速機25は、直交軸タイプの減速機であり、傘歯車ユニットを内蔵する。減速機25の入力軸は、ガスタービン14の出力軸に接続されている。減速機25の出力軸は、ポンプ12の主軸22に接続されている。
【0024】
排気ユニット16は、一次消音器40、接続管42、二次消音器44、煙突46および庇ユニット48を含む。ガスタービン14の排気口が一次消音器40に接続され、その一次消音器40が接続管42を介して二次消音器44に接続されている。二次消音器44は、煙突46を下方から支持するように設けられている。煙突46は屋上に開口し、その開口端を覆うように庇ユニット48が設けられている。一次消音器40、接続管42および二次消音器44により、ガスタービン14と煙突46とをつなぐ「ダクト」が形成される。ガスタービン14の排気ガスは、一次消音器40、接続管42、二次消音器44、煙突46および庇ユニット48を経て大気中に放出される(二点鎖線参照)。
【0025】
以上のような構成において、吸込水槽2の水位が基準値を上回るとガスタービン14が作動し、ポンプ12が駆動される。それにより、吸込水槽2の貯留水(雨水)がベルマウス26から吸い上げられ、配管10を通って吐出水槽4へと導かれる。
【0026】
このとき、ガスタービン14から送出された排気ガスは、一次消音器40、接続管42、二次消音器44、煙突46および庇ユニット48を順次通過する過程で減音される。その排気音の低減は、2つの消音器40,44だけでなく、煙突46および庇ユニット48に設けられた排気構造によっても実現される。
【0027】
次に、排気構造の詳細について説明する。
図2は、庇ユニット48の構成を表す図である。
図2(a)は庇ユニット48の斜視図である。
図2(b)は遮蔽体を除いた状態を示し、
図2(c)はさらに鳥侵入防止構造を除いた状態を示す。
図3は、拡散板の構成を表す図である。
図3(a)は拡散板の斜視図であり、
図3(b)は縦断面図である。
図3(c)は拡散板の機能を示す。
図4は、鳥侵入防止構造の詳細を表す部分拡大図である。
図4(a)は正面視を示す。
図4(b)は
図4(a)のA-A矢視断面図である。
【0028】
図2(a)に示すように、庇ユニット48は、整流ユニット50、鳥侵入防止構造52および遮蔽体54を同心状に組み付けて構成される。
図2(c)に示すように、整流ユニット50は、上下に配列された3つの拡散板56と、最上段の拡散板56の上面中央を覆う笠状の端部材57を有する。以下、3つの拡散板56を区別する場合には、下段のものを「第1拡散板56a」、中段のものを「第2拡散板56b」、上段のものを「第3拡散板56c」と称す。
【0029】
3つの拡散板56は、複数の支柱62により固定される。第3拡散板56cの開口部60を上方から覆うように端部材57が取り付けられている。上下に隣接する拡散板56の間に排気ガスを通過させるための排出通路が形成される。
【0030】
図3(a)および(b)に示すように、拡散板56は、笠状(円錐形状)の本体58を有し、その本体58の中央に開口部60を有する。本体58は平面視円形状をなし、開口部60は円孔からなる。本体58は、径方向外側に向けて下方に傾斜し、その傾斜面は水平面に対して傾斜角θをなす。傾斜角θは例えば10°~30°の範囲で設定してもよい。
図3(c)に示すように、下方からの排気ガスの一部は、拡散板56の内側面に当たって方向転換させられ、排出通路に導かれる(矢印参照)。なお、このように拡散板56の傾斜面を下り勾配とすることで、雨や雪の堆積を抑制できる。
【0031】
3つの拡散板56について、本体58の外径はほぼ等しくされているが、開口部60の内径は、上段の拡散板56ほど小さくされている。これは各段の排気ガスの流量を調整するためであるが、その詳細については後述する。
【0032】
図2(b)に示すように、整流ユニット50を包囲するように鳥侵入防止構造52が設けられている。庇ユニット48内に鳥が侵入した場合、ガス排出不良などの不具合が発生し、ガスタービン14の正常な運転に支障をきたす可能性がある。鳥侵入防止構造52は、このような不具合を回避するものである。鳥侵入防止構造52は、アッパープレート64とロアプレート66との間に複数段のスラット68(羽根)を配列して構成される。アッパープレート64とロアプレート66とは、いずれも環状をなし、外周縁に沿って設けられた複数の支柱70により互いに固定されている。ロアプレート66には、拡散板56の支柱62の下端が固定されている。
【0033】
スラット68は、アッパープレート64とほぼ同じ曲率を有する円弧状の平板からなり、各支柱70の間に複数段設けられている。スラット68の両端は、隣接する支柱70にそれぞれ固定されている。すなわち、複数の支柱70が、複数のスラット68を固定する「固定構造」として機能する。なお、本実施例ではスラット68を7段とする例を示しているが、その段数については適宜設定できる。スラット68には、その長手方向に沿って複数の挿通孔72が設けられている。各段のスラット68の挿通孔72が同軸状に配置されており、防鳥ワイヤ74がそれらを上下に貫通している。防鳥ワイヤ74の上端はアッパープレート64に固定され、下端はロアプレート66に固定されている。
【0034】
図4(a)および(b)に示すように、スラット68は、外側に向けて下方に傾斜するように設けられ、拡散板56と同様に水平面に対して傾斜角θをなす。隣接する防鳥ワイヤ74の間隔p1が、隣接するスラット68の間隔p2と同程度になるように設定されている。本実施例では、間隔p1,p2をそれぞれ50~100mm程度に設定している。また、スラット68の厚みを6mm、防鳥ワイヤ74の径を1mm程度としている。これら複数のスラット68と複数の防鳥ワイヤ74とにより、格子構造が形成される。上下のスラット68の間隔p2は、上下の拡散板56の間隔よりも相当小さい。このため、スラット68が排気ガスの通気抵抗となってしまうところ、スラット68の傾斜角を拡散板56のそれと同程度とすることで、その通気抵抗が小さくされている。
【0035】
図2(a)に示すように、鳥侵入防止構造52をさらに包囲するように遮蔽体54(遮蔽板)が設けられている。遮蔽体54は、金属板を環状に成形して得られる。遮蔽体54は、支柱70から延びる複数の梁(
図5の梁76参照)により支持されている。遮蔽体54と鳥侵入防止構造52との間には、通気通路78が形成される。通気通路78は、上方および下方に開口している。このような構成により、整流ユニット50から側方に向けて排出された排気ガスを上方又は下方に方向転換させることができる。それにより、庇ユニット48の周辺の構造物等が排気ガスに晒されることを防止できる。なお、遮蔽体54そのものにも鳥侵入防止効果はある。
【0036】
図5は、排気ユニット16の上部を模式的に表す断面図である。
図6は、
図5のB-B矢視断面図である。
図5に示すように、煙突46の開口端47と端部材57との間に3つの拡散板56が配置されることで3段の排出通路80が形成されている。すなわち、開口端47と第1拡散板56aとの間に第1排出通路80a、第1拡散板56aと第2拡散板56bとの間に第2排出通路80b、第2拡散板56bと第3拡散板56cとの間に第3排出通路80cが形成されている。
【0037】
端部材57の下面中央には吸音材82が設けられ、その下面にガラスクロス84およびパンチングメタル86が配設されている。吸音材82は、例えばロックウール又はグラスウールからなる。ガラスクロス84およびパンチングメタル86は、吸音材82の飛散を防止する「保護材」として機能する。すなわち、端部材57における煙突46の軸線上に吸音材82が配設されている。図示のように、パンチングメタル86の外周縁が、第3拡散板56cの開口部60cの内周縁とほぼ同じ高さとなるようにされている。
【0038】
第3拡散板56cの開口部60cには、パンチングメタル86が嵌合している。第2拡散板56bの開口部60bは、第1拡散板56aの開口部60aよりも小さい。このため、庇ユニット48の軸線に沿って3つの拡散板56およびその周辺部材による段差が形成される。それにより、煙突46からの排気ガスは、3段の排出通路80a~80cに段階的に分流される。煙突46の軸線に沿って直進した排気ガスは、吸音材82により減音され、その大部分が第3排出通路80cへ導かれる。すなわち、最上段の第3排出通路80cが、吸音材82で方向転換した排気ガスを大気中へ導出する「導出通路」を形成する。
【0039】
図6にも示すように、煙突46は、角筒形状(断面正方形状)をなし、その上端部が庇ユニット48内に突出し、下端部が二次消音器44のケーシングとフランジ接合されている。煙突46は、その上端部と下端部との間に拡径部90を有する。その拡径部90に吸音材92が内貼りされている。吸音材92の内側にはガラスクロス94およびパンチングメタル96(保護材)が配設されている。
【0040】
次に、排出構造による作用効果について説明する。
図7は、排出構造による整流効果を表す図である。
図8は、排出構造による減音効果を表す図である。
図7に示すように、煙突46の開口端47の面積をS1、第1拡散板56aの開口部60aの面積をS2、第2拡散板56bの開口部60bの面積をS3とすると、S1-S2=S2-S3=S3となるように設定されている。これにより、各部を通過する排気ガスの平均流速が等しい場合に、各排出通路80a~80cに導かれる流量Q1~Q3が概ね等しくなるようにされている。なお、これらの値は、概ね等しければよく、裕度±30%の範囲に収まればよい。
【0041】
図中矢印にて示すように、二次消音器44および煙突46を通過した排気ガスは、各拡散板56で順次方向転換させられ、各排出通路80に沿って半径方向外向きに流れる。排気ガスは、各排出通路80から排出されると、鳥侵入防止構造52を通過する。そして、遮蔽体54の内面で方向転換させられ、通気通路78の上方又は下方に導かれ、大気中に排出される。なお、通気通路78の断面積は、煙突46の開口面積S1と同等以上とされている。
【0042】
このように3段の排出通路80によって分流され、排気ガスの流速が均一化されるため、気流音の発生が抑制される。既に述べたように、鳥侵入防止構造52におけるスラット68の傾斜角を拡散板56の傾斜角に合わせたため、排気ガスが鳥侵入防止構造52を通過する際の気流音の発生も抑制される。
【0043】
また
図8に示すように、排気ガスが煙突46を通過する際、吸音材92により排気音が吸収される(二点鎖線矢印参照)。さらに、煙突46の軸線上、つまり排気ガスの進行方向の突き当りに吸音材82を設けたため、排出通路80に流れ込むガスの排気音についても効果的に低減できる。煙突46に沿って直進する排気ガスを吸音材82に概ね垂直に当てることができるため、反射による音圧レベルの上昇を防ぐこともできる。排気ガスが通気通路78の上方又は下方から排出される段階では、その排気音が相当低減されている。
【0044】
以上説明したように、本実施例によれば、複数の拡散板56によって排気ガスが分流されることで、庇ユニット48の側方への流れを平滑化できる。すなわち、排気ガスを複数段の排出通路80に分流させることでその流速の偏りを抑制し、気流音の高まりを抑制できる。さらに、煙突46および端部材57に吸音材を内貼りすることで、排気音を吸収(低減)できる。結果的に、全体として排気音を効果的に低減できる。吸音材による減音効果が期待できるため、消音器40,44を大きくする必要もない。
【0045】
なお、このように複数の拡散板を設けて分流をさせなくとも、庇ユニットの屋根(庇)を大きくすることで排気ガスの流速を下げ、気流音の発生を抑制することも考えられる。しかし、屋根の大型化は庇ユニット全体の大型化や総重量の増大につながり、設置スペースや強度上の問題が発生する。本実施例によれば、そのような問題を生じさせることなく、排気音を低減できる。
【0046】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はその特定の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0047】
図9は、変形例に係る排気構造を表す断面図である。
本変形例では、庇ユニット148において、端部材57のみならず、各拡散板56および遮蔽体54にも吸音材82が内貼りされている。端部材57と同様、吸音材82の内側には、ガラスクロス84およびパンチングメタル86(保護材)が配置される。
【0048】
本変形例によれば、複数段の排出通路80による気流音の抑制に加え、吸音材82による減音により、排気音のさらなる低減が期待できる。ただし、拡散板56および遮蔽体54にも吸音材82を設けることで、庇ユニット148の総重量が大きくなる。また、吸音材82の設置に伴って部品コストが上昇する。このため、吸音材82を拡散板56および遮蔽体54の双方に配設するのか、あるいは片方にのみ配置するのかについては、騒音仕様に応じて適宜調整する。言い換えれば、複数の拡散板56による気流音の抑制効果により騒音仕様が十分に満たされれば、拡散板56や遮蔽体54に吸音材を設けなくてもよいか、最小限に留めることができる。その結果、庇ユニットの軽量化を実現できる。
【0049】
なお、本変形例では、各拡散板56の下面に吸音材82を配設したが、排出通路80内に配置されれば拡散板56の上下面のいずれに設けてもよい。例えば
図9に示した構成において、第2拡散板56bの上面および下面の双方に吸音材82を配設し、第3拡散板56cの吸音材82を省略してもよい。第3排出通路80cには、端部材57に設けた吸音材82によって減音された排気ガスが導入される。このため、第3排出通路80cについては吸音材82の設置を省略してもよい。
【0050】
また、本変形例では、遮蔽体54および拡散板56のそれぞれについて、内側面全体に吸音材82を配設する構成を例示したが、吸音材82を複数のパーツに分割し、適宜間隔をあけて配置してもよい。煙突46の吸音材92についても同様である。
【0051】
上記実施例では、拡散板の本体を平面視円形状としたが、平面視多角形状としてもよい。また、拡散板の本体を単一の部材ではなく、複数の部材を環状に配置して笠状に構成してもよい。
【0052】
上記実施例では、3つの拡散板により3段の排出通路を形成する例を示した。変形例においては拡散板を4つ以上設け、排出通路を4段以上設けてもよい。ただし、庇ユニット48の高さを大きくすることなく排出通路の数のみを増加させた場合、排出通路の断面積が小さくなることで排気ガスの流速が上がり、気流音の低減効果が小さくなる場合がある。逆に排出通路数が多すぎると、各排出通路の断面が小さくなることで通気抵抗が大きくなり、排気性能を低下させるおそれがある。このため、庇ユニット48の高さに応じて適度な数に設定する。
【0053】
上記実施例では、煙突を断面正方形状としたが、断面六角形状等の断面多角形状としてもよい。また、煙突を段付角筒形状としたが、単なる角筒形状とし、吸音材を内貼りしてもよい。その場合、煙突の内面に段差が形成されることになる。あるいは、円筒形状又は段付円筒形状(断面円形状)としてもよい。なお、吸音材の形状が板状になる場合、煙突を断面多角形状とするほうが施工しやすい。
【0054】
上記実施例では、鳥侵入防止構造52の構成として、スラット68と防鳥ワイヤ74による格子構造を採用した。変形例においては、スラットを複数の仕切板(平板等)にて支持することで格子構造を実現してもよい。あるいは、防鳥金網(例えば25mm四方の網目を有するクランプ金網等)による網状構造を採用してもよい。排気ガスの流速が比較的小さい場合、金網本体や取付鋼材などで発生する気流音の影響は少ないと考えられる。なお、排気ガスの流速が大きい場合には、上記実施例の構成を採用するほうが好ましい。
【0055】
上記実施例では、
図2(a)および
図7等に示したように、遮蔽体54と鳥侵入防止構造52との間の通気通路78を上方および下方に開口させる例を示した。変形例においては、通気通路78を上方にのみ開口させてもよい。
【0056】
上記実施例および変形例では、「異物侵入防止構造」として鳥侵入防止構造52を例示したが、その用途は「鳥侵入防止」に限られない。例えば、鳥以外の小動物の侵入防止、暴風雨時などの飛来物の侵入防止など、その他の異物侵入防止(異物混入防止)に適用可能であることは言うまでもない。
【0057】
上記実施例では、原動機の駆動対象として斜流ポンプを例示したが、遠心ポンプ、軸流ポンプその他のポンプを対象としてもよい。原動機についてもガスタービンに限らず、ディーゼルエンジンその他の内燃機関としてもよい。原動機の設置対象についても排水機場に限らず、製鉄場や工場、農場その他の設備としてよい。上記実施例の排気構造は、原動機の排気ガスを排出する煙突を有する設備に適用できる。
【0058】
なお、本発明は上記実施例や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施例や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施例や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ポンプ設備、2 吸込水槽、4 吐出水槽、10 配管、12 ポンプ、14 ガスタービン、16 排気ユニット、25 減速機、34 逆止弁、36 吐出弁、40 一次消音器、42 接続管、44 二次消音器、46 煙突、47 開口端、48 庇ユニット、50 整流ユニット、52 鳥侵入防止構造、54 遮蔽体、56 拡散板、57 端部材、62 支柱、64 アッパープレート、66 ロアプレート、68 スラット、70 支柱、72 挿通孔、74 防鳥ワイヤ、78 通気通路、80 排出通路、82 吸音材、84 ガラスクロス、86 パンチングメタル、92 吸音材、94 ガラスクロス、96 パンチングメタル、148 庇ユニット。