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特許7051831ジアザジベンゾフランまたはジアザジベンゾチオフェン構造を有する化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】ジアザジベンゾフランまたはジアザジベンゾチオフェン構造を有する化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/048 20060101AFI20220404BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20220404BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C07D491/048 CSP
C07D495/04 105Z
H05B33/22 B
H05B33/14 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019517355
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2017074585
(87)【国際公開番号】W WO2018060307
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】16191703.4
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】アミール、パルハム
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、エバール
(72)【発明者】
【氏名】アンニャ、ヤッシュ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス、グロスマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス、クローバー
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-084531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0207082(US,A1)
【文献】国際公開第2015/108301(WO,A1)
【文献】特開2016-147851(JP,A)
【文献】特表2013-510803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0325799(US,A1)
【文献】国際公開第2016/102040(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 491/048
C07D 495/04
C07D 519/00
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)の構造を有する化合物。
【化1】
(式中、使用される記号は以下のとおりである:
は、OまたはSであり;
は、N(Ar)、O、S、C(Rまたは-RC=CR-であり;
Wは、出現毎に同一であるかまたは異なり、NまたはCR あり、ただし、1つの環中でW基のうちの2以下がNであり、ここでW基中のR ラジカルは縮合ヘテロ芳香族環系を形成せず
は、結合、または5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
Aは、出現毎に同一であるかまたは異なり、N、CArまたはCAr(ここで、ちょうど2つのAが少なくとも1つのCArまたはCAr基によって分離されている)であり、ただし、2つのNがこのAに隣接する場合、AはCArであり;
Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;
Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;
Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(Ar、N(R、C(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)(Ar、P(Ar、B(Ar、Si(Ar、Si(R、1~40の炭素原子を有する、直鎖の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基または3~40の炭素原子を有する、分岐もしくは環状の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよく、ここで、1以上の隣接しないCH基は-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=S、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOまたはSOによって置きかえられていてもよく、かつ1以上の水素原子がD、F、Cl、Br、I、CNまたはNOによって置きかえられていてもよい)、または5~40の芳香族環原子を有し、1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、5~40の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または5~40の芳香族環原子を有し、1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アラルキルもしくはヘテロアラルキル基、またはこれらの系の組み合わせであり;同時に、2以上の置換基Rが、ともに、単環状もしくは多環状の、脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく;
Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上の非芳香族Rラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;同時に、同一の、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、またはホウ素原子に結合された2つのArラジカルが、単結合、またはB(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)Rから選択されるブリッジによって、ブリッジを介してともに結合されることも可能であり;
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、B(OR、CHO、C(=O)R、CR=C(R、C(=O)OR、C(=O)N(R、Si(R、P(R、B(R、N(R、NO、P(=O)(R、OSO、OR、S(=O)R、S(=O)、1~40の炭素原子を有する、直鎖の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基または3~40の炭素原子を有する、分岐もしくは環状の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよく、ここで1以上の隣接しないCH基が-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=S、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOまたはSOによって置きかえられていてもよく、かつ1以上の水素原子がD、F、Cl、Br、I、CNまたはNOによって置きかえられていてもよい)、または5~40の芳香族環原子を有し、かつそれぞれのケースにおいて1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、5~40の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの系の組み合わせであり;同時に、2以上の隣接するR置換基が、ともに、単環状もしくは多環状の、脂肪族もしくは芳香族環系を形成していてもよく;
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、Fまたは1~20の炭素原子を有する、脂肪族、芳香族および/またはヘテロ芳香族ヒドロカルビルラジカル(ここで、水素原子がFによって置き換えられていてもよい)であり;同時に、2以上の隣接するR置換基が、ともに、単環状もしくは多環状の、脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく;
nは、0、1、2または3であり;
だだし、Y基がN(Ar)、OまたはSである場合、Arラジカルは、Arラジカルに結合されていてもよい、R、RおよびR置換基を含む、カルバゾール基を含まない)
【請求項2】
式(I)、(II)または(III)の構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【化2】
(式中、記号Ar、Ar、Y、Y、L、R、nおよびWは、請求項1に記載の意味を有する
【請求項3】
前記化合物が、式(Ia)、(IIa)または(IIIa)の構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【化3】
(式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、請求項1または2に記載の意味を有する
【請求項4】
前記化合物が、式(Ib)、(IIb)または(IIIb)の構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【化4】
(式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、請求項1または2に記載の意味を有する
【請求項5】
前記化合物が、式(Ic)、(IIc)または(IIIc)の構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【化5】
(式中、記号Ar、Ar、Y、L,Y、R、nおよびWは、請求項1または2に記載の意味を有する
【請求項6】
前記化合物が、式(Id)、(IId)または(IIId)の構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【化6】
(式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、請求項1または2に記載の意味を有する
【請求項7】
前記化合物が、式(Ie)、(IIe)または(IIIe)の構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【化7】
(式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、請求項1または2に記載の意味を有する
【請求項8】
前記化合物が、式(If)、(IIf)または(IIIf)の構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【化8】
(式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、請求項1または2に記載の意味を有する
【請求項9】
前記化合物が、式(Ig)、(IIg)または(IIIg)の構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【化9】
(式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、請求項1または2に記載の意味を有する
【請求項10】
前記化合物が、式(Ih)、(IIh)または(IIIh)の構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【化10】
(式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、請求項1または2に記載の意味を有する
【請求項11】
記号YがC(R)であり、かつRが、それぞれのケースにおいて同一であるかまたは異なり、5~40の芳香族環原子を有し、かつそれぞれのケースにおいて1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
記号Yが式(Y-2)の基であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【化11】
(式中、点線は隣接する原子への結合を示し、Rは請求項1に記載のとおりであり、かつmは0、1、2、3または4である)
【請求項13】
Ar基が式(Ar-1)の基で示されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【化12】
(式中、Lは、結合、または5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり、記号Rは請求項1に記載の意味を有し、mは0、1、2、3または4であり、かつ点線は結合を示す)
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の1以上の化合物を含む、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーであって、前記化合物からポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーへの1以上の結合が存在する、オリゴマー、ポリマー、またはデンドリマー。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物および/または請求項14に記載のオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマー、および蛍光発光体、燐光発光体、ホスト材料、マトリックス材料、電子輸送材料、電子注入材料、正孔伝導材料、正孔注入材料、電子ブロック材料、および正孔ブロック材料からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる化合物を含んでなる組成物。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物、請求項14に記載のオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマー、および/または請求項15に記載の少なくとも1つの組成物、および少なくとも1つの溶剤を含んでなる配合物。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物または請求項14に記載のオリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーを調製する方法であって、カップリング反応において、少なくとも1つのジアザジベンゾフランまたはジアザジベンゾチオフェン基を含んでなる化合物が、少なくとも1つのカルバゾール、フルオレン、フェナントレン、ベンゾフランおよび/またはベンゾチオフェンラジカルを含んでなる基に結合されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物、請求項14に記載の、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマー、または請求項15に記載の組成物の、電子素子における、ホスト材料、マトリックス材料、電子輸送材料、電子注入材料および/または正孔ブロック材料としての使用。
【請求項19】
請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物、請求項14に記載の、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマー、または請求項15に記載の組成物を含んでなる電子素子。
【請求項20】
前記電子素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機太陽電池、有機光検出器、有機感光体、有機電場消光素子、発光電子化学電池、および有機レーザーダイオードからなる群から選択される、請求項19に記載の電子素子。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に電子素子での使用のための、ジアザジベンゾフランまたはジアザジベンゾチオフェン誘導体に関する。本発明は、さらに、本発明の化合物を調製するための方法およびそれらを含んでなる電子素子に関する。
【0002】
有機半導体が機能材料として使用されている有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の構造は、例えば、US4539507、US5151629、EP0676461およびWO98/27136に開示されている。使用される発光材料は多くの場合、燐光を発する有機金属錯体である。量子力学的な理由で、燐光発光体として有機金属化合物を使用すると、最大4倍のエネルギー効率と出力効率が可能である。一般的にはまだ、OLEDにおいて、特に燐光を発するOLEDにおいても、例えば、効率、作動電圧および寿命に関して改善が求められている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子の特性は、使用される発光体によってのみ決定されるわけではない。ここで、特に重要であるのは、使用される他の材料、例えば、ホストおよびマトリックス材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、および電子または励起子ブロック材料、である。これらの材料に対する改善は、エレクトロルミネッセンス素子の明確な改善をもたらすことができる。
【0004】
従来技術によると、ヘテロ芳香族化合物(例えば、ジアザベンゾフラン誘導体)は、燐光発行化合物のためのマトリックス材料として、および電子輸送材料として、しばしば使用される。さらに、カルバゾール誘導体はマトリックス材料としても使用される。この機能として知られる例に、カルバゾール基で置換されたジアザジベンゾフラン誘導体が挙げられ、JP5604848B2、WO2015/182872A1に開示される。さらに、WO2014/157599A1およびWO2015/182872A1は、フルオレン、フェナントレン、トリフェニレン基またはジベンゾチオフェン基で置換されたジアザジベンゾフラン誘導体について開示する。しかしながら、ジアザジベンゾフラン基は、ジアザジベンゾフラン基のジアザフェニルラジカル中にアリールまたはヘテロアリール基による2つの置換基を必ずしも有していない。さらに、記載された化合物のいくつかは、ジアザジベンゾフラン基中に2つのジアザフェニルラジカルを有する。
【0005】
一般的に、例えばマトリックス材料として使用されるこれらの材料のケースにおいて、依然として、素子の改善、特に寿命に関してだけでなく、効率や作動電圧に関しても改善が求められている。
【0006】
それゆえ、本発明によって解決される問題は、有機電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子、における使用に好適であり、かつこの素子で使用された良好な素子特性に導く化合物を提供すること、および対応する電子素子を提供することである。
【0007】
より特には、本発明によって解決される問題は、高い寿命、良好な効率、および低作動電圧へと導く化合物を提供することである。特に、マトリックス材料の特性も、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命および効率に重大な影響を与える。
【0008】
本発明による解決されるさらなる問題は、燐光または蛍光OLEDにおける、特にマトリックス材料としての、使用に好適な化合物を提供することである。本発明の特に目的は、赤色、黄色、および緑色燐光OLEDに好適な、ならびに青色燐光OLEDにも可能となる、マトリックス材料を提供することである。
【0009】
さらに、本発明によって解決されるさらなる問題は、燐光または蛍光OLEDにおける、特に電子輸送材料として、使用するのに好適な化合物を提供することでもある。
【0010】
さらに、本化合物は、非常に簡単な手法で加工することができ、特に、良好な溶解性および膜形成性を示さなければならない。例えば、本化合物は、加熱時の酸化安定性および改善されたガラス転移温度を示さなければならない。
【0011】
さらなる目的は、非常に安価でかつ一定の品質で、優れた性能を備えた電子素子を提供することにある。
【0012】
さらに、電子素子は、多くの目的のために使用する、または適合させることができなければならない。さらに特に、電子素子の性能は、広い温度範囲で維持されなければならない。
【0013】
驚くべきことに、以後詳細に開示される特定の化合物がこれらの問題を解決し、従来技術の不利な点を除去することができることがわかった。この化合物の使用によって、特に、寿命、効率および作動電圧に関して、有機電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子、の非常に良好な特性をもたらす。それゆえ、そのような化合物を含む、電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子、および対応する好ましい形態は、本発明によって提供される。
【0014】
よって、本発明は、以下の式(A)の構造を含んでなる化合物を提供するものである:
【化1】
式中、使用される記号は以下のとおりである:
は、OまたはSであり;
は、N(Ar)、O、S、C(Rまたは-RC=CR-であり;
Wは、出現毎に同一であるかまたは異なり、NまたはCR、好ましくはCR、であり、ただし、1つの環中でW基のうちの2以下がNであり;
は、結合、または5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
Aは、出現毎に同一であるかまたは異なり、N、CArまたはCAr(ここで、ちょうど2つのAが少なくとも1つのCArまたはCAr基によって分離されている)であり、ただし、2つのNがこのAに隣接する場合、AはCArであり;
Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;
Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;
Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(Ar、N(R、C(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)(Ar、P(Ar、B(Ar、Si(Ar、Si(R、1~40の炭素原子を有する、直鎖の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基または3~40の炭素原子を有する、分岐もしくは環状の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよく、ここで、1以上の隣接しないCH基は-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=S、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOまたはSOによって置きかえられていてもよく、かつここで1以上の水素原子がD、F、Cl、Br、I、CNまたはNOによって置きかえられていてもよい)、または5~40の芳香族環原子を有し、1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、5~40の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または5~40の芳香族環原子を有し、1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アラルキルもしくはヘテロアラルキル基、またはこれらの系の組み合わせであり;同時に、2以上の置換基Rが、ともに、単環状もしくは多環状の、脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく;
Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上の非芳香族Rラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;同時に、同一の、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、またはホウ素原子に結合された2つのArラジカルが、単結合、またはB(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)Rから選択されるブリッジによって、ブリッジを介してともに結合されることも可能であり;
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、B(OR、CHO、C(=O)R、CR=C(R、C(=O)OR、C(=O)N(R、Si(R、P(R、B(R、N(R、NO、P(=O)(R、OSO、OR、S(=O)R、S(=O)、1~40の炭素原子を有する、直鎖の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基または3~40の炭素原子を有する、分岐もしくは環状の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよく、ここで1以上の隣接しないCH基が-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=S、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOまたはSOによって置きかえられていてもよく、かつここで1以上の水素原子がD、F、Cl、Br、I、CNまたはNOによって置きかえられていてもよい)、または5~40の芳香族環原子を有し、かつそれぞれのケースにおいて1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、5~40の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの系の組み合わせであり;同時に、2以上の隣接するR置換基が、ともに、単環状もしくは多環状の、脂肪族もしくは芳香族環系を形成していてもよく;
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、Fまたは1~20の炭素原子を有する、脂肪族、芳香族および/またはヘテロ芳香族ヒドロカルビルラジカル(ここで、水素原子がFによって置き換えられていてもよい)であり;同時に、2以上の隣接するR置換基が、ともに、単環状もしくは多環状の、脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく;
nは、0、1、2または3、好ましくは0、1または2、より好ましくは0または1、特に好ましくは0であり;
だだし、Y基がN(Ar)、OまたはSである場合、Arラジカルは、Arラジカルに結合されていてもよい、R、RおよびR置換基を含む、カルバゾール基を含まない。
【0015】
本発明の意味において、隣接する炭素原子は、互いに直接結合された炭素原子である。さらに、ラジカルの定義中で、「隣接するラジカル」は、これらのラジカルが同一の炭素原子または隣接する炭素原子に結合されていることを意味する。これらの定義は、同様に、特に、用語「隣接する基」および「隣接する置換基」に適用される。
【0016】
2以上のラジカルが互いに環を形成してもよいという表現は、本発明の意味において、特に、2つのラジカルが、2つの水素原子の形式的除去下で、化学結合によって互いに連結されていることを意味するものと解される。これは、以下のスキームにより例示される:
【化2】
【0017】
さらに、しかしながら、上記の表現はまた、2つのラジカルのうちの1つが水素である場合、2つ目のラジカルが水素原子の結合された位置に結合し、環を形成することを意味するものと解される。これは、以下のスキームにより例示される:
【化3】
【0018】
本発明の意味において、縮合アリール基、縮合芳香族環系、または縮合ヘテロ芳香族環系は、1つの共通辺を介して2以上の芳香族基が互いに縮合している、すなわち縮環している、例えば、2つの炭素原子が、例えば、ナフタレンにおけるように、少なくとも2つの芳香族もしくはヘテロ芳香族環に属している基である。対照的に、例えば、フルオレンは、フルオレン中の2つの芳香族基が共通辺を有していないので、本発明の意味においては縮合アリール基ではない。対応する定義が、ヘテロアリール基およびヘテロ原子を含んでいてもよいが含んでいなくてもよい縮合環系に適用される。
【0019】
本発明の意味において、アリール基は、6~40の炭素原子を含み;本発明の意味において、ヘテロアリール基は、2~40の炭素原子と少なくとも1つのヘテロ原子を含み、ただし、炭素原子とヘテロ原子の合計が少なくとも5である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。アリール基またはヘテロアリール基は、ここでは単一の芳香環、すなわちベンゼン、または単一のヘテロ芳香族環、例えばピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合された、アリールもしくはヘテロアリール基、例えばナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等を意味するものと解される。
【0020】
本発明の意味において、芳香族環系は、環系中に6~40の炭素原子を有する。本発明の意味において、ヘテロ芳香族環系は、環系中に、1~40の炭素原子と少なくとも1つのヘテロ原子を含み、ただし、炭素原子とヘテロ原子の合計が少なくとも5である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。本発明の意味において、芳香族もしくはヘテロ芳香環系は、必ずしもアリールもしくはヘテロアリール基のみを含むのではなく、その中で2以上の、アリールもしくはヘテロアリール基が非芳香族単位(H以外の原子が好ましくは10%未満)、例えば、炭素、窒素もしくは酸素原子またはカルボニル基によって遮断されていることもできる系を意味するものと解されるべきである。例えば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等の系もまた、本発明の意味において、芳香族環系とみなされ、また、その中に2以上のアリール基が、例えば、直鎖状もしくは環状の、アルキル基で、またはシリル基で遮断されている系も同様である。さらに、2以上の、アリールもしくはヘテロアリール基が互いに直接結合している系、例えば、ビフェニル、テルフェニル、クウォーターフェニルもしくはビピリジンは、同様に芳香族もしくはヘテロ芳香族環系とみなされる。
【0021】
本発明の意味において、環状の、アルキル、アルコキシ、またはチオアルコキシ基は、単環式、二環式、または多環式の基を意味するものと解される。
【0022】
本発明の意味において、C~C20のアルキル基(その中でそれぞれの、水素原子もしくはCH基が、上述の基によって置き換えられていてもよい)は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチル、2-ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、t-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、ネオヘキシル、シクロヘキシル、1-メチルシクロペンチル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、アダマンチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1-ジメチル-n-ヘキサ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘプタ-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクタ-1-イル、1,1-ジメチル-n-デセ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ドデセ-1-イル、1,1-ジメチル-n-テトラデセ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘキサデセ-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクタデセ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキサ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘプタ-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクタ-1-イル、1,1-ジエチル-n-デセ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ドデセ-1-イル、1,1-ジエチル-n-テトラデセ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキサデセ-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクタデセ-1-イル、1-(n-プロピル)シクロヘキサ-1-イル、1-(n-ブチル)シクロヘキサ-1-イル、1-(n-ヘキシル)シクロヘキサ-1-イル、1-(n-オクチル)シクロヘキサ-1-イル、および1-(n-デシル)シクロヘキサ-1-イルラジカルを意味するものと解される。アルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、またはシクロオクタジエニルを意味するものと解される。アルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、またはオクチニルを意味するものと解される。C~C40のアルコキシ基は、例えば、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、または2-メチルブトキシを意味するものと解される。
【0023】
5~40の芳香族環原子を有し、それぞれの場合において上述のラジカルによって置換されていてもよく、また任意の所望の位置で、芳香族もしくはヘテロ芳香族系に結合していてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系は、例えば、次のものから誘導される基を意味するものと解される:ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンゾフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、シス-もしくはトランス-モノベンゾインデノフルオレン、シス-もしくはトランス-ジベンゾインデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントリミダゾール、ピリジミダゾール、ピラジニミダゾール、キノキサリニミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、およびベンゾチアジアゾール。
【0024】
好ましい形態において、本発明の化合物は、式(I)、(II)または(III)の構造を形成していてもよい。
【化4】
式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、上記の式(A)に記載の意味を有する。好ましくは、式(I)および/または(II)の構造を有する化合物である。
【0025】
好ましくは、本発明の化合物は式(Ia)、(IIa)および/または(IIIa)の構造を含んでいてもよい。
【化5】
式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、上記、特に式(A)、(I)、(II)または(III)、に記載の意味を有し、好ましくは式(Ia)および/または(IIa)の構造である。
【0026】
好ましくは、本発明の化合物は式(Ib)、(IIb)および/または(IIIb)のうちの少なくとも1つの構造を含んでいてもよい。
【化6】
式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、上記、特に式(A)、(I)、(II)または(III)、に記載の意味を有し、好ましくは式(Ib)および/または(IIb)の構造である。
【0027】
好ましくは、本発明の化合物は式(Ic)、(IIc)および/または(IIIc)のうちの少なくとも1つの構造を含んでいてもよい。
【化7】
式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、上記、特に式(A)、(I)、(II)または(III)、に記載の意味を有し、好ましくは式(Ic)および/または(IIc)の構造である。
【0028】
化合物が、式(Id)、(IId)および/または(IIId)の構造を少なくとも1つ含んでなるケースであってもよい。
【化8】
式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、上記、特に式(A)、(I)、(II)または(III)、に記載の意味を有し、好ましくは式(Id)および/または(IId)の構造である。
【0029】
上記に詳述された式(Ia)~(IIId)の構造を含んでなる化合物のうち、好ましいものは、式(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)および/または(IIId)の構造を含むこれらの化合物であり、特に好ましくは式(Ic)、(IIc)および/または(IIIc)の構造を有する化合物である。
【0030】
さらに、化合物が、式(Ie)、(IIe)および/または(IIIe)の構造を少なくとも1つ含んでなるケースであってもよい。
【化9】
式中、記号Ar、Ar、Y、L、R、Y,nおよびWは、上記、特に式(A)、(I)、(II)または(III)、に記載の意味を有し、好ましくは(Ie)および/または(IIe)の構造である。
【0031】
さらに、化合物が式(If)、(IIf)および/または(IIIf)の構造を少なくとも1つ含んでなるケースであってもよい。
【化10】
式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、上記、特に式(A)、(I)、(II)または(III)、に記載の意味を有し、好ましくは式(If)および/または(IIf)の構造である。
【0032】
好ましくは、本発明の化合物は式(Ig)、(IIg)および/または(IIIg)の少なくとも1つの構造を含んでなるものであってよい。
【化11】
式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、上記、特に式(A)、(I)、(II)または(III)、に記載の意味を有し、好ましくは式(Ig)および/または(IIg)の構造であってよい。
【0033】
本発明の化合物が、式(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造を少なくとも1つ含んでなるものであってよい。
【化12】
式中、記号Ar、Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、上記、特に式(A)、(I)、(II)または(III)、に記載の意味を有し、好ましくは、式(Ih)および/または(IIIh)の構造である。
【0034】
上記に詳述された式(Ie)~(IIIh)の構造を含んでなる化合物のうち、好ましいものは、式(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造を含むこれらの化合物であり、特に好ましくは、式(Ig)、(IIg)および/または(IIIg)の構造を有する化合物である。
【0035】
さらに、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)のうちの1つの構造の置換基R(これらは、記号Wによって表されるCR基の部分ではない)がそれぞれの環構造の環原子とともに、縮合芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成しないケースであってよく、好ましくはいかなる縮合環形を形成しない。これは、Rラジカルに結合されていてもよい、可能なR、R置換基と縮合環系を形成することを含む。好ましくは、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)のうちの1つの構造の置換基R(これらは、記号Wによって表されるCR基の部分ではない)がそれぞれの環構造の環原子とともにいかなる環系も形成しないケースであってよい。これは、Rラジカルに結合されていてもよい、可能なR、R置換基と縮合環系を形成することを含む。
【0036】
それぞれのケースにおいて、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造において、添え字nの合計が、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下であるケースであってもよい。
【0037】
式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造において、2つの隣接するW基がそれぞれCRであり、かつともに式(W-1)の基を形成することも可能である。
【化13】
式中、
は、N(Ar)、O、SまたはC(R、好ましくはC(R、であり、
Xは、出現毎に同一であるかまたは異なり、NまたはCR、好ましくはCR、であり、ただし、1つの環中でX基のうちの2以下がNであり、ここで、ArおよびRは上記、特に式(A)、に記載の意味を有し;かつ
点線は、隣接する原子への結合を示す。好ましくは、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造を含んでなる化合物は、好ましくは、構造あたり、1以下の式(W-1)の基を有する
【0038】
好ましくは、さらに、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)中の、2以下のW基がNであり、好ましくは1以下のW基がNであり、好ましくは全てのWがCRであることを特徴とする化合物であり、ここで、Wが示す、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下のCR基がCH基ではない。
【0039】
式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)中のW基のRラジカルが、環構造の環原子とともに、縮合芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成しないケースであってもよく、好ましくはいかなる縮合環系も形成しない。これは、Rラジカルに結合されていてもよい、可能なR、R置換基と縮合環系を形成することを含む。好ましくは、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)中のW基のRラジカルが、環構造の環原子とともに、いかなる縮合環系も形成しないケースであってもよい。これは、Rラジカルに結合されていてもよい、可能なR、R置換基と縮合環系を形成することを含む。
【0040】
式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造を含んでなる、本発明による化合物の好ましい形態において、記号YがC(R)であり、かつRがそれぞれのケースにおいて同一であるかまたは異なり、5~40の芳香族環原子を有し、かつそれぞれのケースにおいて2以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系である。
【0041】
さらに、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)において、記号Yが式(Y-1)の基であるケースであってもよい。
【化14】
式中、点線は隣接する原子への結合を示し、Rは、上記、特に式(A)、に記載の意味を有し、かつmは0、1、2、3または4であり、好ましくは0、1または2である。
【0042】
式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)において、記号Yが式(Y-2)であるケースであってもよい。
【化15】
式中、点線は隣接する原子への結合を示し、Rは、上記、特に式(A)、に記載の意味を有し、かつmは0、1、2、3または4であり、好ましくは0、1または2である。
【0043】
それぞれのケースにおいて、式(Y-1)および/または(Y-2)の構造において、添え字mの合計が、3以下、好ましくは2以下、特に好ましくは1以下であるケースであってもよい。
【0044】
式(Y-1)および/または(Y-2)の構造中のRラジカルが環構造の環原子とともにいかなる縮合芳香族またはヘテロ芳香族環系、好ましくはいかなる縮合環系、を形成しないケースであってもよい。これは、Rラジカルに結合されていてもよい、可能なR、R置換基と縮合環系を形成することを含む。好ましくは、式(Y-1)および/または(Y-2)の構造中にRラジカルが環構造の環原子とともにいかなる環系も形成しないケースであってもよい。これは、Rラジカルに結合されていてもよい、可能なR、R置換基と環系を形成することを含む。
【0045】
さらに好ましい構造において、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造において、記号YはOまたはSであってよく、かつ記号YがN(Ar)であってよい。
【0046】
好ましくは、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造において、Ar、Arおよび/またはAr基のうちの1つが、5以下のヘテロ原子、好ましくは3以下のヘテロ原子、より好ましくは1以下のヘテロ原子を有し、ここで、これは、これらの基に結合されていてもよい、R、RおよびR置換基を含む。特に好ましくは、Ar、Arおよび/またはAr基はいかなるヘテロ原子を有さないものであり、ここで、これは、これらの基に結合されていてもよい、R、RおよびR置換基を含む。
【0047】
式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造中のAr、Arおよび/またはAr基は、合計5以下、好ましくは3以下、より好ましくは1以下のヘテロ原子を有するケースであってもよく、ここで、これは、これらの基に結合されていてもよい、R、RおよびR置換基を含む。
【0048】
さらに、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)構造中のAr、Arおよび/またはAr基は、合計50以下、好ましくは40以下、より好ましくは22以下の芳香族環原子を有するケースであってもよく、ここで、これは、これらの基に結合されていてもよい、R、RおよびR置換基を含む。
【0049】
さらに、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造中のArラジカルが、いかなるカルバゾール基も含まないケースであってもよく、ここで、Arラジカルに結合されていてもよい、R、RおよびR置換基を含む。
【0050】
好ましくは、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造中のArラジカルが、いかなるカルバゾール基も含まないケースであってもよく、ここで、Arラジカルに結合されていてもよい、R、RおよびR置換基を含む。
【0051】
さらなる好ましい構造において、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造中のAr基が式(Ar-1)の基であってもよい。
【化16】
式中、Lは、結合、または5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルで置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり、記号Rは、上記、特に式(A)、に記載の意味を有し、mは0、1、2、3または4、好ましくは0、1または2であり、かつ点線は、ジアザジベンゾフランまたはジアザジベンゾチオフェン基への結合を示す。
【0052】
好ましくは、とりわけ、式(IV)および/または(V)の構造を含んでなる化合物である。
【化17】
式中、Lは、結合、または5~30の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルで置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり、記号Ar、Y、L、Y、R、nおよびWは、上記、特に式(A)、に記載の意味を有し、mは0、1、2、3または4、好ましくは0、1または2であり、かつ点線は、結合を示す。
【0053】
好ましくは、それぞれのケースにおいて、式(Ar-1)、(IV)および/または(V)の構造中の添え字mの合計が、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下のケースであってよい。
【0054】
式(Ar-1)、(IV)および/または(V)の構造中のRラジカルが、Rラジカルが結合した環構造の環原子とともに、縮合芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成しないケースであってもよく、好ましくはいかなる縮合環系を形成しない。これは、Rラジカルに結合されていてもよい、可能なR、R置換基とともに縮合環系を形成することを含む。好ましくは、式(Ar-1)、(IV)および/または(V)の構造中のRラジカルが、環構造の環原子とともに、環系を形成しないケースであってもよい。これは、Rラジカルに結合されていてもよい、可能なR、R置換基とともに縮合環系を形成することを含む。
【0055】
式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)の構造において、YがC(Rまたは-RC=CR-であり、Arラジカルが同様に式(Ar-1)の基であってもよい。
【0056】
Ar、Arおよび/またはArラジカルが、フェニル、オルト-、メタ-またはパラ-ビフェニル、テルフェニル、特に分岐テルフェニル、クオーターフェニル、特に分岐クオーターフェニル、1-、2-、3-または4-フルオレニル、1-、2-、3-または4-スピロビフルオレニル、ピリジル、ピリミジニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾフラニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾチエニル、および1-、2-、3-または4-カルバゾリル、スピロビフルオレニル、フルオレニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、アントラセニル、フェナントレニルおよび/またはトリフェニレニル(これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である)からなる群から選択されるケースであってもよく、特に好ましくは、スピロビフルオレン、フルオレン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン基である。
【0057】
さらなる形態において、上記の化合物のArもArも、カルバゾール基、ジベンゾフラン基、またはジベンゾチオフェン基を含まない。特に好ましくは、上記の化合物のArもArも縮合ヘテロ芳香族基を含まない場合である。さらに特に好ましくは、上記の化合物のArもArもヘテロ芳香族基を含まない場合である。
【0058】
好ましい構成において、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)の構造を含んでなる化合物は、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)の構造によって表されうる。好ましくは、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)、(VII)および/または(VIII)の構造を含んでなる化合物は、5000g/モル以下、好ましくは4000g/モル以下、特に好ましくは3000g/モル以下、特別に好ましくは2000g/モル以下、そして最も好ましくは1200g/モル以下の分子量を有する。
【0059】
さらに、本発明の好ましい化合物の特徴は、それらが昇華性であることである。これらの化合物は一般に、約1200g/モル未満のモル質量を有する。
【0060】
XがCRであるか、芳香族および/またはヘテロ芳香族基がR置換基によって置換されている場合、これらのR置換基は、好ましくはH、D、F、CN、N(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、1~10の炭素原子を有する、直鎖の、アルキルもしくはアルコキシ基、3~10の炭素原子を有する、分岐もしくは環状の、アルキルもしくはアルコキシ基、または2~10の炭素原子を有するアルケニル基(ここで、これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよく、ここで、1以上の隣接しないCH基がOによって置き換えられていてもよく、かつ、ここで1以上の水素原子がDもしくはFによって置き換えられていてもよい)、5~24の芳香族環原子を有し、かつそれぞれのケースにおいて1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが好ましくは非置換である、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または5~25の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アラルキルもしくはヘテロアラルキル基からなる群から選択され;同時に、同一の炭素原子または隣接する炭素原子に結合された2つのR置換基が、単環状もしくは多環状の、1以上のRラジカルで置換されていてもよい、脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環系を形成することは所望により可能である。ここで、Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、6~40の炭素原子を有し、かつそれぞれのケースにおいて1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、5~60の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アリールオキシ基、または5~60の芳香族環原子を有し、かつそれぞれのケースにおいて1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アラルキル基を示し、ここで、2以上の隣接するR置換基が、1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、単環状または多環状の、脂肪族環系を所望により形成していてもよく、ここで記号Rは、上記、特に式(A)、に記載の意味を有する。好ましくは、Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~24、好ましくは5~12の芳香族環原子を有し、それぞれのケースにおいて1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である、アリールまたはヘテロアリール基である。
【0061】
好適なAr基の例は、フェニル、オルト-、メタ-またはパラ-ビフェニル、テルフェニル、特に分岐テルフェニル、クオーターフェニル、特に分岐クオーターフェニル、1-、2-、3-または4-フルオレニル、1-、2-、3-または4-スピロビフルオレニル、ピリジル、ピリミジニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾフラニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾチエニル、および1-、2-、3-または4-カルバゾリルからなる群から選択され、これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0062】
より好ましくは、これらのR置換基は、H、D、F、CN、N(Ar、1~8の炭素原子を有する、好ましくは1、2、3もしくは4の炭素原子を有する、直鎖のアルキル基、または3~8の炭素原子を有する、好ましくは3もしくは4の炭素原子を有する、分枝状もしくは環状の、アルキル基、または2~8の炭素原子を有する、好ましくは2、3もしくは4の炭素原子を有するアルケニル基(これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である)、6~24の芳香族環原子を有する、好ましくは6~18の芳香族環原子を有する、さらに好ましくは6~13の芳香族環原子を有する、芳香族もしくはヘテロ芳香環系(これらのそれぞれは1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である)からなる群から選択され;同時に、場合によっては、2つのR置換基が、同じ炭素原子もしくは隣接する炭素原子に結合して、1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である、単環式もしくは多環式の、脂肪族環系を形成していてもよく、ここでAr基は、上記に記載の意味を有する。
【0063】
最も好ましくは、R置換基は、Hおよび6~18の芳香族環原子を有する、好ましくは6~13の芳香族環原子を有する、芳香族もしくはヘテロ芳香環系(これらのそれぞれは1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である)からなる群から選択される。適切なR置換基の例は、フェニル、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、ターフェニル、特に分枝状のターフェニル、クウォーターフェニル、特に分枝状のクウォーターフェニル、1-、2-、3-もしくは4-フルオレニル、1-、2-、3-もしくは4-スピロビフルオレニル、ピリジル、ピリミジニル、1-、2-、3-もしくは4-ジベンゾフラニル、1-、2-、3-もしくは4-ジベンゾチエニル、1-、2-、3-もしくは4-カルバゾリルからなる群から選択され、これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0064】
さらに、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)の構造において、少なくとも1つのR、Ar、Ar、ArまたはArラジカルが、式(R-1)~(R-87)から選択される基であるケースであってもよい:
【化18-1】
【化18-2】
【化18-3】
【化18-4】
【化18-5】
【化18-6】
式中、使用される記号は以下のとおりである:
Yは、O、SまたはNR、好ましくはOまたはSであり;
kは、出現毎に独立に、0または1であり、
iは、出現毎に独立に、0、1、または2、好ましくは0または1であり;
jは、出現毎に独立に、0、1、2または3、好ましくは0、1または2、より好ましくは0または1であり;
hは、出現毎に独立に、0、1、2、3または4、好ましくは0、1または2であり;
gは、出現毎に独立に、0、1、2、3、4または5、好ましくは0、1または2であり;
は、出現毎に独立に、上記、特に式(A)、に記載の意味を有していてもよく、かつ
点線は、結合位置を示す。
【0065】
好ましくは、それぞれのケースにおいて、式(R-1)~(R-87)の構造において、添え字k、i、j、hおよびgの合計は、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下である。
【0066】
好ましくは、式(R-1)~(R-87)中のRラジカルは、Rラジカルが結合された、アリール基またはヘテロアリール基の環原子とともに、縮合芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成せず、好ましくはいかなる縮合環系も形成しない。これは、Rラジカルが結合されていてもよい可能なR置換基と縮合環系を形成することを含む。
【0067】
より好ましくは、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)中のArおよび/またはArラジカルは、式(R-1)~(R-48)および(R-73)~(R-87)、特に好ましくは(R-1)、(R-38)~(R-48)および(R-73)~(R-81)の基から選択される。この文脈において、添え字の合計およびこれらの基に結合されたRラジカルに関して、式(R-1)~(R-87)の基の上記に詳述された好ましいものが適用可能である。
【0068】
より好ましくは,式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)中のArおよび/またはArラジカルが、式(R-1)~(R-54)、特に好ましくは(R-1)~(R-51)、特別に好ましくは(R-1)~(R-37)の基から選択され、さらに特に好ましくは(R-1)によるラジカルである。この文脈において、添え字の合計およびこれらの基に結合されたRラジカルに関して、式(R-1)~(R-87)の基の上記に詳述された好ましいものが適用可能である。
【0069】
好ましくは、LまたはL基は、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)、(Ar-1)、(IV)および/または(V)のLまたはL基が結合された2つのアリールまたはヘテロアリール基とともに、直接共役(through-conjugation)を形成していてもよい。芳香族またはヘテロ芳香族系の直接共役は、隣接する芳香族またはヘテロ芳香族環の間で直接結合が形成されるとすぐに、形成される。上述の共役基の間の、例えば、硫黄、窒素もしくは酸素原子またはカルボニル基を介するさらなる結合は、共役を損なうものではない。フルオレン系の場合、2つの芳香族環が直接結合しており、そこでは、9位のsp-混成炭素原子がこれらの環の縮合を妨げるが、共役は可能である。これはこの9位のsp-混成炭素原子が必ずしも2つのアリールまたはヘテロアリール基の間に位置するとは限らないからである。対照的に、2つめのスピロビフルオレン構造の場合は、2つのアリールまたはヘテロアリール基の間の結合が、スピロビフルオレン構造中の同一のフェニル基を介しているか、またはスピロビフルオレン構造中の互いに直接結合し、かつ同一平面にある、(複数の)フェニル基を介している場合に、直接共役が形成されうる。2つのアリールまたはヘテロアリール基の間の結合が、2つ目のスピロビフルオレン構造の、9位のsp-混成炭素原子を介して結合している、異なる(複数の)フェニル基を介している場合には、共役が妨げられる。
【0070】
本発明のさらなる形態において、Lおよび/またはLは結合である。
【0071】
本発明のさらなる形態において、Lおよび/またはLは、5~14の芳香族もしくはヘテロ芳香族環原子を有する、芳香族またはヘテロ芳香族環系、好ましくは6~12の炭素原子を有する芳香族環系であり、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換であり、ここで、Rが上記、特に式(A)、に記載の意味を有していてもよい。より好ましくは、Lおよび/またはLは、6~10の芳香族環原子を有する芳香族環系、または6~13のヘテロ芳香族環原子を有するヘテロ芳香族環系であり、これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換であり、ここで、Rは、上記、式(A)、に記載の意味を有していてもよい。
【0072】
さらに好ましくは、とりわけ、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)、(Ar-1)、(IV)および/または(V)の構造中に詳述された記号Lおよび/またはLは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~24の環原子、好ましくは6~13の環原子、より好ましくは6~10の環原子を有する、アリールまたはヘテロアリールラジカルであり、芳香族またはヘテロ芳香族環系の芳香族もしくはヘテロ芳香族基が、さらなる基のそれぞれの原子に、直接的に、つまり芳香族またはヘテロ芳香族基の原子を介して、結合される。
【0073】
さらに、とりわけ、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)、(Ar-1)、(IV)および/または(V)の構造中に詳述された記号Lおよび/またはLは、2以下の縮合芳香族および/またはヘテロ芳香族環を有する芳香族環系を含んでなるケースであってよく、好ましくは縮合芳香族またはヘテロ芳香族系を全く含まない。したがって、ナフチル構造はアントラセン構造よりも好ましい。さらに、フルオレニル、スピロビフルオレニル、ジベンゾフラニルおよび/またはジベンゾチエニル構造がナフチル構造よりも好ましい。
【0074】
特に好ましくは、縮合を有さない構造、例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニルおよび/またはクオーターフェニル構造である。
【0075】
好適な芳香族またはヘテロ芳香族環系Lおよび/またはLの例は、オルト-、メタ-またはパラ-フェニレン、オルト-、メタ-またはパラ-ビフェニレン、テルフェニレン、特に分岐ターフェニレン、クオーターフェニレン、特に分岐クオーターフェニレン、フルオレニレン、スピロビフルオレニレン、ジベンゾフラニレン、ジベンゾチエニレン、およびカルバゾリレン(これらのそれぞれは、1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である)からなる群から選択される。
【0076】
とりわけ、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)(Ar-1)、(IV)および/または(V)の構造中に詳述された記号Lおよび/またはLは、1以下の窒素原子、好ましくは1以下のヘテロ原子、特に好ましくは1以下のヘテロ原子を有し、より好ましくはヘテロ原子を含まないケースであってもよい。
【0077】
好ましくは、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)の構造を含んでなる化合物であり、ここで、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)および/または(IIIh)、(Ar-1)、(IV)および/または(V)のLおよび/またはL基は式(L-1)~(L-108)から選択される基である。
【化19-1】
【化19-2】
【化19-3】
【化19-4】
【化19-5】
【化19-6】
【化19-7】
式中、それぞれのケースにおいて、点線は結合位置を示し、添え字kは0または1であり、添え字lは0、1または2であり、添え字jは出現毎に独立に0、1、2または3であり;添え字hは出現毎に独立に0、1、2、3または4であり、添え字gは0、1、2、3、4または5であり;記号YはO、SまたはNRであり、好ましくはOまたはSであり;かつ、記号Rは上記、特に式(A)、に記載の意味を有する。
【0078】
好ましくは式(L-1)~(L-108)の構造中の添え字k、l、g、hおよびjの合計が、それぞれのケースにおいて、最大3、好ましくは最大2、より好ましくは最大1のケースであってよい。
【0079】
式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)の構造中のLおよび/またはL基のうちの1つが、5以下のヘテロ原子、好ましくは3以下のヘテロ原子、より好ましくは1以下のヘテロ原子を有しているケースであってもよく、ここで、これはこれらの基に結合されていてもよいR、RおよびR置換基を含む。
【0080】
さらに、式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)構造中のLおよび/またはL基全体が、5以下のヘテロ原子、好ましくは3以下のヘテロ原子、より好ましくは1以下のヘテロ原子を有するケースであってもよく、ここで、これは、これらの基に結合されていてもよい、R、RおよびR置換基を含む。
【0081】
本発明による好ましい化合物は、式(L-1)~(L-78)および/または(L-92)~(L-108)、好ましくは式(L-1)~(L-54)および/または(L-92)~(L-108)、特別に好ましくは式(L-1)~(L-29)および/または(L-92)~(L-103)、のうちの1つから選択されるL基を含んでなる。有利であるのは、式(L-1)~(L-78)および/または(L-92)~(L-108)、好ましくは式(L-1)~(L-54)および/または(L-92)~(L-108)、特別に好ましくは式(L-1)~(L-29)および/または(L-92)~(L-103)、の構造中の添え字k、l、g、hおよびjの合計が、それぞれのケースにおいて、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下である。
【0082】
好ましくは、式(L-1)~(L-108)中のRラジカルが、Rラジカルが結合された、アリール基またはヘテロアリール基の環原子とともに、縮合芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成しない。これは、Rラジカルが結合されていてもよい、可能なR置換基とともに、縮合環系を形成することを含む。
【0083】
本発明のさらなる形態において、R(例えば、式(A)の構造、およびこの構造またはこれらの式に関する構造のこのましい形態において)は、出現毎に同一であるかまたは異なりH、D、好ましくは1、2、3または4の炭素原子を有する、脂肪族ヒドロカルビルラジカル、または5~30の芳香族環原子、好ましくは5~24の芳香族環原子、より好ましくは5~13の芳香族環原子を有し、1~4の炭素原子を有する1以上のアルキル基によって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系からなる群から選択される。
【0084】
本発明のさらなる形態において、R(例えば、式(A)の構造、およびこの構造またはこれらの式に関する構造のこのましい形態において)は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、CN、1~10の炭素原子、好ましくは1、2、3または4の炭素原子を有する、脂肪族ヒドロカルビルラジカル、または5~30の芳香族環原子、好ましくは5~24の芳香族環原子、より好ましくは5~13の芳香族環原子を有し、かつ1~4の炭素原子を有する1以上のアルキル基によって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である、芳香族またはヘテロ芳香族環系からなる群から選択される。
【0085】
本発明の化合物が、芳香族またはヘテロ芳香族RまたはR基によって置換されている場合、これらは、互いに直接縮合された2以上の芳香族6員環を有する、アリールまたはヘテロアリール基を有さないことが好ましい。より好ましくは、置換基は、直接互いに縮合された6員環を有するアリールまたはヘテロアリール基を全く含まない。これが好ましい理由は、それらの構造の三重項エネルギーが低いからである。互いに直接縮合された2以上の芳香族6員環を有する縮合アリール基であるにもかかわらず、フェナントレンおよびトリフェニレンは本発明において適している。これらは、高い三重項準位を有するからである。
【0086】
特に好ましくは、以下の特性を有する本発明の化合物である:
【化20】
【0087】
特に好ましくは、式(W-1)の構造を有する化合物(ここで、Yは、式C(Rの基である)であり、化合物は以下の特性を有する:
【化21】
【0088】
さらに、特に好ましくは、Yが式N(Ar)の基であり、かつ化合物が以下の特性を有する化合物である:
【化22】
【0089】
上記の表において、式R-1中の添え字gは、好ましくは0、1、2または3、より好ましくは0または1、特別に好ましくは0であり;上記の表において、式L-1またはL-94中の添え字hは、好ましくは0、1、2または3、より好ましくは0または1、特別に好ましくは0である。
【0090】
上記の表において、ArおよびArがR-1~R-87であることは、Ar基およびAr基の両方が、上記の式R-1~R-87、好ましくはR-1のラジカルから選択されることを意味する。Lが結合またはL-1であることは、上記の式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)におけるL基が、それぞれのケースにおいて、結合または上記の式L-1、好ましくはL-94のラジカルであることを意味する。Yを有するフェニル環上の位置Lが好ましくは式(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)に対応することは、式(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)に示されるように、L基が好ましくはY基に対してパラまたはメタ位であることを意味する。Yを有するフェニル環上の位置Lが好ましくは式(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)に対応することは、式(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)に示されるように、L基が好ましくはY基に対してパラまたはメタ位であることを意味する。Rの添え字nが0、1、2であることは、上記の式(A)、(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(Ic)、(IIc)、(IIIc)、(Id)、(IId)、(IIId)、(Ie)、(IIe)、(IIIe)、(If)、(IIf)、(IIIf)、(Ig)、(IIg)、(IIIg)、(Ih)、(IIh)、(IIIh)、(IV)および/または(V)中で、添え字nがそれぞれのケースにおいて0、1または2、好ましくは0または1、特別に好ましくは0であることを意味する。
【0091】
本発明の好適な化合物の例は、以下に示される式1~217の構造である:
【化23-1】
【化23-2】
【化23-3】
【化23-4】
【化23-5】
【化23-6】
【化23-7】
【化23-8】
【化23-9】
【化23-10】
【化23-11】
【化23-12】
【化23-13】
【化23-14】
【化23-15】
【0092】
本発明の化合物の好ましい形態は、詳細に、具体的に実施例において説明され、これらの化合物は、本発明の全ての目的のために単独またはさらなる化合物と組み合わせて使用することができる。
【0093】
請求項1で特定された条件がまとめられるのであれば、上記の好ましい形態は、所望により、互いに組み合わせることができる。本発明の特に好ましい形態において、上記の好ましい形態は、同時に適用される。
【0094】
本発明の化合物は、原則的として、種々の方法により製造することができる。しかし、これ以下に記載する方法が特に適切であることが見出されている。
【0095】
従って、本発明はさらに、カップリング反応で、少なくとも1つのジアザジベンゾフランまたはジアザジベンゾチオフェン基を含んでなる化合物を、少なくとも1つのカルバゾール、フルオレン、フェナントレン、ベンゾフランおよび/またはベンゾチオフェンラジカルを含んでなる化合物と結合された、式(A)の構造を含んでなる化合物の製造方法を提供する。
【0096】
ジアザジベンゾフランまたはジアザジベンゾチオフェン基を有する適切な化合物は、多くの場合、商業的に入手することができ、その際、実施例で詳記された出発化合物は、そこで参照されているように、公知の方法によって得ることができる。
【0097】
これらの化合物は、公知のカップリング反応でさらなるアリール化合物と反応させることができ、この目的のために必要な条件は当業者に周知であり、また実施例における詳細な説明は、当業者がこれらの反応を実行することを支援する。
【0098】
C-C結合形成および/またはC-N結合形成をもたらす、特に適切でかつ好ましい、全てのカップリング反応は、ブッフバルト、スズキ、ヤマモト、スティレ、ヘック、ネギシ、ソノガシラおよびヒヤモによるものである。これらの反応はよく知られており、また実施例は、当業者にさらなる指針を提供する。
【0099】
以下の全ての合成スキームにおいて、構造を簡略化するため、化合物は少数の置換基と共に示されている。これは、方法において所望のさらなる置換基の存在を排除するものではない。
【0100】
例示的な形態は、これらが制限を設けることを全く意図せずに、次のスキームで示される。個々のスキームの構成工程は、所望により互いに組み合わせることができる。
合成スキーム1
【化24】
合成スキーム2
【化25】
合成スキーム3
【化26】
合成スキーム4
【化27】
【0101】
本発明の化合物の合成に対して示される方法は、例示として解されるべきである。当業者は、当該技術分野における当業者の共通の知識の範囲内で代替合成経路を開発することができる。
【0102】
上で詳述した製造方法の基本は、原則的に類似の化合物に対する文献から知られており、当業者によって容易に本発明の化合物の製造に適用することができる。さらなる情報は、実施例に見出すことができる。
【0103】
これらの方法により、必要に応じて、精製、例えば再結晶または昇華を伴って、式(A)の構造を含んでなる本発明の化合物を、高純度で、好ましくは99%より高く(H-NMRおよび/またはHPLCにより測定)で得ることができる。
【0104】
本発明の化合物はまた、化合物を溶液で処理することを可能にするため、室温で、充分な濃度で、標準的な有機溶媒、例えば、トルエンもしくはキシレン中での溶解性をもたらすような適当な置換基、例えば、比較的長いアルキル基(約4~20の炭素原子)、特に分枝状のアルキル基、または場合によって置換されたアリール基、例えば、キシリル、メシチルもしくは分枝状のテルフェニルもしくはクウォーターフェニル基を有することができる。これらの可溶性化合物は、例えば、印刷法による、溶液での処理に特に適している。さらに、式(A)の構造の少なくとも1つを含んでなる本発明の化合物は、既にこれらの溶媒中で溶解度を増加させていることが強調されなければならない。
【0105】
本発明の化合物はまた、ポリマーと混合することができる。同様に、これらの化合物をポリマーに共有結合的に組み込むことも可能である。これは特に、臭素、ヨウ素、塩素、ボロン酸もしくはボロン酸エステルなどの反応性脱離基により、またはオレフィンもしくはオキセタンなどの反応性の重合性基により置換された化合物について可能である。これらは、対応するオリゴマー、デンドリマーもしくはポリマーを製造するためのモノマーとしての使用が見出される。オリゴマー化もしくは重合は、好ましくはハロゲン官能基もしくはボロン酸官能基を介して、または重合性基を介して行われる。このような基を介して、さらにポリマーを架橋することが可能である。本発明の化合物およびポリマーは、架橋した、もしくは架橋していない層の形で使用できる。
【0106】
本発明は、さらに、上で詳述した式(A)または本発明の化合物の構造を1以上含む、ポリマー、オリゴマー、またはデンドリマーであって、本発明の化合物への、または式(A)の構造への、オリゴマー、ポリマー、またはデンドリマーへの1以上の結合が存在するものを提供する。式(A)の構造の、または化合物の連結により、これらは、従って、ポリマーもしくはオリゴマーの側鎖を形成しているか、または主鎖内で結合されている。ポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマーは、共役している、部分的に共役している、または共役していなくてもよい。オリゴマーもしくはポリマーは、直鎖状、分岐状もしくは樹枝状であってもよい。オリゴマー、デンドリマーおよびポリマー中の、本発明の化合物の繰返し単位については、同じ好ましい形態が上述したように適用される。
【0107】
オリゴマーまたはポリマーを製造するにあたり、本発明のモノマーは、ホモ重合またはさらなるモノマーと共重合される。式(A)の単位、または、上記および後記されている、好ましい形態の単位が、0.01~99.9モル%、好ましくは5~90モル%、より好ましくは20~80モル%の範囲に存在することが好ましい。適切でかつ好ましい、ポリマー基本骨格を形成するコモノマーは、フルオレン類(例えば、EP842208またはWO2000/022026による)、スピロビフルオレン類(例えば、EP707020、EP894107またはWO2006/061181による)、パラフェニレン類(例えば、WO92/18552による)、カルバゾール類(例えば、WO2004/070772またはWO2004/113468による)、チオフェン類(例えば、EP1028136による)、ジヒドロフェナントレン類(例えば、WO2005/014689)、シス-およびトランス-インデノフルオレン類(例えば、WO2004/041901またはWO2004/113412による)、ケトン類(例えば、WO2005/040302による)、フェナントレン類(例えば、WO2005/104264またはWO2007/017066による)、またはこれらの単位の複数から選択される。ポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーはまた、さらなる単位、例えば、正孔輸送単位、特にトリアリールアミンを基本とするもの、および/または電子輸送単位を含んでいてもよい。
【0108】
さらに、特に興味深いのは、高いガラス転移温度によって特徴付けられる本発明の化合物である。これに関連して、好ましいのは、少なくとも70℃、より好ましくは少なくとも110℃、さらにより好ましくは少なくとも125℃、そして特別に好ましくは150℃のガラス転移温度(DIN51005(2005-08版)により測定)を有する、式(A)の、または、上記および後記されている好ましい形態の構造を含んでなる本発明の化合物である。
【0109】
液相での本発明の化合物を、例えば、スピンコーティングもしくは印刷法によって、処理するためには、本発明の化合物の配合物が必要とされる。これらの配合物は、例えば、溶液、分散液またはエマルジョンであってもよい。この目的のために、2以上の溶媒の混合物を使用することが好ましい。適当で好ましい溶媒は、例えば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、ベラトロール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特に3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、安息香酸ブチル、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、安息香酸エチル、インダン、安息香酸メチル、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、ヘキサメチルインダン、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0110】
従って、本発明はさらに、本発明の化合物および少なくとも1つのさらなる化合物を含んでなる配合物に関する。さらなる化合物は、例えば、溶媒であり、特に上記の溶媒の1つか、またはこれらの溶媒の混合物である。あるいは、さらなる化合物は、電子素子に同様に使用される、有機もしくは無機化合物、例えば、発光化合物、特に燐光ドーパント、および/またはさらなるマトリックス材料であってもよい。このさらなる化合物は、また、ポリマーであってもよい。
【0111】
従って、本発明はさらに、本発明の化合物および少なくとも1つのさらなる有機機能材料を含んでなる組成物を提供する。機能材料は、一般に、アノードとカソードとの間に導入された、有機もしくは無機材料である。好ましくは、有機機能材料は、蛍光発光体、燐光発光体、ホスト材料、マトリックス材料、電子輸送材料、電子注入材料、正孔伝導材料、正孔注入材料、電子ブロック材料、正孔ブロック材料、ワイドバンドギャップ材料、およびn-ドーパントからなる群から選択される。
【0112】
従って、本発明はまた、少なくとも1つの、式(A)、または上記および後記の好ましい形態、上記および後記されている、好ましい形態の構造を含んでなる少なくとも1つの化合物、および少なくとも1つのさらなるマトリックス材料を含んでなる組成物に関する。本発明の特別な態様において、さらなるマトリックス材料は、正孔輸送特性を有する。
【0113】
本発明はさらに、少なくとも1つの、式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を含んでなる、少なくとも1つの化合物、および少なくとも1つのワイドバンドギャップ材料を含んでなる組成物を提供する。ここで、ワイドバンドギャップ材料は、US7,294,849で開示される材料を意味するものと解される。これらの系は、エレクトロルミネッセンス素子において特に有利な性能データを示す。
【0114】
好ましくは、追加の化合物は、2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上、非常に好ましくは3.5eV以上のバンドギャップを有する。バンドギャップを計算する1つの方法は、最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位を用いる。
【0115】
分子軌道、特に最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)、それらのエネルギー準位および材料の、最低三重項状態Tのエネルギーもしくは最低励起一重項状態Sのエネルギーは、量子化学計算を用いて決定される。金属を含まない有機物質を計算するために、まず「基底状態/半経験的/初期スピン/AM1/チャージ0/スピン一重項」法を用いて、構造最適化が行われる。続いて、最適化された構造に基づきエネルギー計算が行われる。ここで、「TD-SCF/DFT/初期スピン/B3PW91」法が「6-31G(d)」基底集合(チャージ0、スピン一重項)とともに用いられる。金属含有化合物に対しては、「基底状態/ハートリーフォック(Hartree-Fock)/初期スピン/LanL2MB/チャージ0/スピン一重項」法を用い、構造が最適化される。エネルギー計算は、金属に対して「LanL2DZ」基底集合が用いられ、配位子に対して「6-31G(d)」が用いられるという相違点を除いては、上述の有機物質に対する方法と同様に計算される。HOMOエネルギー準位HEhまたはLUMOエネルギー準位LEhは、エネルギー計算からハートリー単位で得られる。これは、電子ボルトにおけるHOMOおよびLUMOエネルギー準位を、以下のようにサイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)測定により較正することにより決定するのに使用される。
HOMO(eV)=((HEh*27.212)-0.9899)/1.1206
LUMO(eV)=((LEh*27.212)-2.0041)/1.385
【0116】
本発明の意味において、これらの値は、材料の、HOMOおよびLUMOエネルギー準位とみなされる。
【0117】
最低三重項状態Tは、記載された量子化学計算から明らかな、最低エネルギーを有する三重項状態のエネルギーと定義される。
【0118】
最低励起一重項状態Sは、記載された量子化学計算から明らかな、最低エネルギーを有する励起一重項状態のエネルギーと定義される。
【0119】
ここで記述される方法は、使用されるソフトウェアパッケージから独立しており、常に同じ結果を与えるものである。この目的で頻繁に使用されるプログラムの例として、「Gaussian09W」(ガウシアン社(Gaussian))およびQ-Chem4.1(キュー-ケム社(Q-Chem))が挙げられる。
【0120】
本発明はさらに、少なくとも1つの、式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を含んでなる、少なくとも1つの化合物、および少なくとも1つの燐光発光体ーを含んでなる組成物を提供する。ここで、用語「燐光発光体」はまた、燐光ドーパントを意味するものと解される。
【0121】
マトリックス材料およびドーパントを含んでなる系において、ドーパントは、混合物中でより小さい割合を有する成分を意味するものと解される。相応して、マトリックス材料およびドーパントを含む系において、マトリックス材料は、混合物中でより大きい割合を有する成分を意味するものと解される。
【0122】
マトリックス系での、好ましくは混合マトリックス系での使用に好ましい燐光ドーパントは、以下で特記する、好ましい燐光ドーパントである。
【0123】
用語「燐光ドーパント」は、典型的には、スピン禁制遷移、例えば、励起三重項状態、もしくはより高いスピン量子数を有する状態、例えば、五重項状態からの遷移により発光が起こる化合物を包含する。
【0124】
好適な燐光化合物(=三重項発光体)は、特に、好ましくは可視領域において、適切に励起された時、発光し、かつ、さらに、原子番号が20より大きい、好ましくは、38より大きくかつ84未満の、より好ましくは、56より大きくかつ80未満の原子を、特にこの原子番号を有する金属を、少なくとも1つ含む化合物である。用いられる燐光発光体は、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユーロピウムを含む化合物であり、特に、イリジウムまたは白金を含む化合物である。本発明文脈において、上記金属を含むすべての発光化合物は、燐光化合物とみなされる。
【0125】
上記の発光体の例は、WO00/70655、WO2001/41512、WO2002/02714、WO2002/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614、WO05/033244、WO05/019373、US2005/0258742、WO2009/146770、WO2010/015307、WO2010/031485、WO2010/054731、WO2010/054728、WO2010/086089、WO2010/099852、WO2010/102709、WO2011/032626、WO2011/066898、WO2011/157339、WO2012/007086、WO2014/008982、WO2014/023377、WO2014/094961、WO2014/094960の出願、ならびにEP13004411.8、EP14000345.0、EP14000417.7およびEP14002623.8の未公開出願に見出すことができる。一般に、燐光発光OLEDに対して従来技術で使用されているような、さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子の分野で当業者に知られているような、燐光錯体のすべては、適切であり、そして当業者は、発明的工夫をなすことなく、さらなる燐光性錯体を使用することができる。
【0126】
燐光ドーパントの明示的な例を以下の表に挙げる:
【化28-1】
【化28-2】
【化28-3】
【化28-4】
【化28-5】
【化28-6】
【化28-7】
【化28-8】
【0127】
式(A)、または、上で詳記した好ましい形態の構造を含んでなる上述の化合物は、好ましくは、電子素子中の活性成分として用いることができる。電子素子は、アノード、カソード、およびアノードとカソードの間にある、少なくとも1つの層を含んでなり、前記層は有機もしくは有機金属化合物を少なくとも1つ含んでなる素子であると解される。従って、本発明の電子素子は、アノード、カソード、および式(A)の構造を含んでなる、少なくとも1つの化合物を含む間の層を含んでなる。好ましい電子素子は、ここでは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED、PLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光検出器、有機感光体、有機電場消光素子(O-FQD)、有機電気センサ、発光電気化学セル(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)、および有機プラズモン発光素子(D.M.Koller et al.,Nature Photonics 2008,1-4)、好ましくは、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED、PLED)、特に、式(A)の構造を含んでなる化合物を少なくとも1つ含有する燐光発光OLED、からなる群から選択される。特に好ましいのは、有機エレクトロルミネッセンス素子である。活性成分は、一般に、アノードとカソードとの間に導入される、有機もしくは無機材料であり、例えば、電荷注入、電荷輸送もしくは電荷ブロック材料であるが、特に発光材料およびマトリックス材料である。
【0128】
本発明の好ましい形態は、有機エレクトロルミネッセンス素子である。有機エレクトロルミネッセンス素子は、アノード、カソードおよび少なくとも1つの発光層を具備してなる。有機エレクトロルミネッセンス素子は、これらの層の他に、さらなる層、例えば、それぞれの場合において、1以上の、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電子ブロック層、電荷発生層および/または有機もしくは無機の、p/n接合を具備していてもよい。その際、1以上の正孔輸送層が、例えば、MoOもしくはWOのような金属酸化物で、または電子の不足した(過)フッ素化芳香族系で、p-ドープされるか、および/または1以上の電子輸送層が、n-ドープされていることができる。同様に、例えば、励起子ブロック機能を有する、および/または有機エレクトロルミネッセンス素子中の電荷バランスを制御する中間層が2つの発光層の間に導入されていてもよい。しかしながら、これらの層のそれぞれは、必ずしも存在していなくてもよいということに留意すべきである。
【0129】
ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、1つの発光層を具備してなる、または複数の発光層を具備していてもよい。複数の発光層が存在する場合、これらは、好ましくは、全体で白色光を生じるように、380nm~750nm全体で複数の発光極大を有する、すなわち、蛍光もしくは燐光を発することができる様々な発光化合物が発光層中に使用される。特に好ましいのは、3層が、青、緑およびオレンジもしくは赤の発光を呈する3層系(基本構造については、例えば、WO2005/011013を参照)、または3以上の発光層を有する系である。その系は、1以上の層が蛍光を発し、かつ、1以上の他の層が燐光を発するハイブリッド構造であってもよい。
【0130】
本発明の好ましい形態において、有機エレクトロルミネッセンス素子は、式(A)の、または、上で詳記した好ましい形態の構造を含んでなる本発明の化合物を、マトリックス材料として、好ましくは電子伝導マトリックス材料として、1以上の発光層中に、好ましくは、さらなるマトリックス材料、好ましくは正孔伝導のマトリックス材料と組み合せて含む。本発明のさらに好ましい形態では、さらなるマトリックス材料は、電子輸送化合物である。なお、さらに好ましい形態では、さらなるマトリックス材料は、層中で正孔および電子輸送に関与していないか重要な程度には関与していない、大きなバンドギャップを有する化合物である。発光層は、少なくとも1つの発光化合物を含んでなる。
【0131】
式(A)の、または好ましい形態に従う化合物と組み合せて使用することのできる、適切なマトリックス材料は、芳香族ケトン類;芳香族ホスフィンオキシド類;または芳香族スルホキシド類もしくはスルホン類(例えば、WO2004/013080、WO2004/093207、WO2006/005627もしくはWO2010/006680による);トリアリールアミン類、特にモノアミン類(例えば、WO2014/015935による);カルバゾール誘導体類(例えば、CBP(N、N-ビスカルバゾリルビフェニル)、またはWO2005/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527、もしくはWO2008/086851に開示されるカルバゾール誘導体類);インドロカルバゾール誘導体類(例えば、WO2007/063754もしくはWO2008/056746による);インデノカルバゾール誘導体類(例えば、WO2010/136109およびWO2011/000455による);アザカルバゾール誘導体類(例えば、EP1617710、EP1617711、EP1731584、JP2005/347160による);双極性マトリックス材料(例えば、WO2007/137725による);シラン類(例えば、WO2005/111172による);アザボロール類もしくはボロン酸エステル類(例えば、WO2006/117052よる);トリアジン誘導体類(例えば、WO2010/015306、WO2007/063754もしくはWO2008/056746による);亜鉛錯体類(例えば、EP652273もしくはWO2009/062578による);ジアザシロールもしくはテトラアザシロール誘導体類(例えば、WO2010/054729による);ジアザホスホール誘導体類(例えば、WO2010/054730による);架橋カルバゾール誘導体類(例えば、US2009/0136779、WO2010/050778、WO2011/042107、WO2011/088877もしくはWO2012/143080による);トリフェニレン誘導体(例えば、WO2012/048781による);ラクタム類(例えば、WO2011/116865、WO2011/137951もしくはWO2013/064206による);または、4-スピロカルバゾール誘導体類(例えば、WO2014/094963または未公開出願EP14002104.9による)である。同様に、実際の発光体よりも短い波長で発光するさらなる燐光発光体が、混合物中に共ホスト(co-host)として存在することも可能である。
【0132】
好ましい共ホスト材料は、トリアリールアミン誘導体類、特にモノアミン類、インデノカルバゾール誘導体類、4-スピロカルバゾール誘導体類、ラクタム類、およびカルバゾール誘導体類である。
【0133】
本発明の化合物と一緒に、共ホスト材料として使用される、好ましいトリアリールアミン誘導体類は、以下の式(TA-1)の化合物から選択される:
【化29】
式中、Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~60の芳香族環原子を有し、かつそれぞれのケースにおいて1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族またはヘテロ芳香族環系、5~60の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アリールオキシ基、または5~60の芳香族環原子を有し、かつ1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アラルキル基であり、ここで2以上の隣接するR置換基が所望により1以上のRラジカルによって置換されていてもよい、単環状または多環状の、脂肪族環系を形成していてもよく、ここで、記号Rは、上記、特に式(A)、に記載の意味を有する。好ましくは、Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~24、好ましくは5~12の芳香族環原子を有し、かつそれぞれのケースにおいて1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である、アリールまたはヘテロアリール基である。
【0134】
好適なAr基の例は、フェニル、オルト-、メタ-またはパラ-ビフェニル、テルフェニル、特に分岐テルフェニル、クオーターフェニル、特に分岐クオーターフェニル、1-、2-、3-または4-フルオレニル、1-、2-、3-または4-スピロビフルオレニル、ピリジル、ピリミジニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾフラニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾチエニル、および1-、2-、3-または4-カルバゾリル(これらのそれぞれは1以上のRラジカルによって置換されていてもよいが、好ましくは非置換である)からなる群から選択される。
【0135】
好ましくは、Ar基は、出現毎に同一であるかまたは異なり、上記の基(R-1)~(R-87)、好ましくは(R-1)~(R-54)、特に好ましくは(R-1)~(R-51)、特別に好ましくは(R-1)~(R-37)から選択され、さらに特に好ましくは(R-1)によるラジカルである。この文脈において、添え字の合計およびこれらの基に結合されたRラジカルに関して、式(R-1)~(R-87)の基の上記に詳述された好ましいものが適用可能である。
【0136】
式(TA-1)の化合物の好ましい形態において、少なくとも1つのAr基は、ビフェニル基から選択され、それは、オルト-、メタ-またはパラ-ビフェニル基であってもよい。式(TA-1)の化合物のさらに好ましい形態において、少なくとも1つのAr基は、フルオレン基もしくはスピロビフルオレン基から選択され、ここで、これらの基はそれぞれ、1-、2-、3-もしくは4-位で、窒素原子に結合していてもよい。式(TA-1)の化合物の、なお、さらに好ましい形態において、少なくとも1つの基Arは、フェニレンもしくはビフェニル基から選択され、ここで、それらの基は、オルト-、メタ-もしくはパラ結合されている基であり、ジベンゾフラン基、ベンゾチオフェン基もしくはカルバゾール基、特にジベンゾフラン基により置換されており、ここで、ジベンゾフランもしくはベンゾチオフェン基が1-、2-、3-もしくは4-位を介して、フェニレンもしくはビフェニル基に結合しており、かつ、ここで、カルバゾール基が、1-、2-、3-もしくは4-位を介して、または窒素原子を介して、フェニレンもしくはビフェニル基に結合している。
【0137】
式(TA-1)の化合物の特に好ましい形態において、1つのAr基は、フルオレンもしくはスピロビフルオレン基から、特に4-フルオレンもしくは4-スピロビフルオレン基から選択され、そして、1つのAr基は、ビフェニル基、特に、パラ-ビフェニル基から、またはフルオレン基、特に2-フルオレン基から選択され、また、第三のAr基は、ジベンゾフラン基、特に4-ジベンゾフラン基で、またはカルバゾール基、特にN-カルバゾール基もしくは3-カルバゾール基で、置換された、パラ-フェニレン基もしくはパラ-ビフェニル基から選択される。
【0138】
本発明の化合物とともに、共ホスト材料として使用されるインデノカルバゾール誘導体は、以下の式(TA-2)の化合物から選択される:
【化30】
式中、ArおよびRは、上記(特に式(A)および/または(TA-1))に示された意味を有する。Ar基の好ましい形態は、上述した構造R-1~R-87、より好ましくは、R-1~R-51である。
【0139】
式(TA-2)の化合物の好ましい形態は、以下の式(TA-2a)の化合物である:
【化31】
式中、ArおよびRは、上記、特に式(A)および/または(TA-1)、に記載の意味を有する。ここで、インデノ炭素原子に結合された2つのR基は、好ましくは、同一であるかまたは異なり、1~4の炭素原子を有するアルキル基、特にメチル基、または6~12の炭素原子を有する芳香族環系、特にフェニル基である。より好ましくは、インデノ炭素原子に結合された、この2つのR基はメチル基である。さらに好ましくは、式(TA-2a)中のインデノカルバゾール基本骨格に結合したR置換基は、H、または、1-、2-、3-もしくは4-位を介して、または窒素原子を介して、特に3位を介してインデノカルバゾール基本骨格に結合することのできるカルバゾール基である。
【0140】
本発明の化合物とともに、共ホスト材料として使用される、好ましい4-スピロカルバゾール誘導体は、以下の式(TA-3)の化合物から選択される:
【化32】
式中、ArおよびRは、上記、特に式(A)および/または(TA-1)、に記載の意味を有する。Ar基の好ましい形態は、上述した構造R-1~R-87、より好ましくは、R-1~R-51である。
【0141】
式(TA-3)の化合物の好ましい形態は、以下の式(TA-3a)の化合物である:
【化33】
式中、ArおよびRは、上記、特に式(A)、に記載の意味を有する。Ar基の好ましい形態は、上述した構造R-1~R-87、より好ましくは、R-1~R-51である。
【0142】
本発明の化合物とともに、共ホスト材料として使用される好ましいラクタムは、以下の式(LAC-1)の化合物から選択される:
【化34】
式中、Rは、上記、特に式(A)、に記載の意味を有する。
【0143】
式(LAC-1)の化合物の好ましい形態は、以下の式(LAC-1a)の化合物である:
【化35】
式中、Rは、上記、特に式(A)、に記載の意味を有する。Rは、好ましくは、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、または、5~40の芳香族環原子を有し、1つの以上のラジカルRで置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり、ここで、Rは、上記、特に式(A)、に記載の意味を有することができる。最も好ましくは、R置換基は、H、および、6~18の芳香族環原子を有し、好ましくは6~13の芳香族環原子を有し、そのそれぞれが1つの以上の非芳香族系のラジカルRで置換されていてもよいが、好ましくは非置換である、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系からなる群から選択される。適当なR置換基の例は、フェニル、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、ターフェニル、特に分枝状のターフェニル、クウォーターフェニル、特に分枝状のクウォーターフェニル、1-、2-、3-もしくは4-フルオレニル、1-、2-、3-もしくは4-スピロビフルオレニル、ピリジル、ピリミジニル、1-、2-、3-もしくは4-ジベンゾフラニル、1-、2-、3-もしくは4-ジベンゾチエニル、1-、2-、3-もしくは4-カルバゾリル(これらのそれぞれは、1つの以上のRラジカルで置換されていてもよいが、好ましくは非置換である)からなる群から選択される。適当な構造Rは、R-1~R-79、より好ましくはR-1~R-51に対して示された構造と同じである。
【0144】
また、異なるマトリックス材料の複数を混合物として、特に、少なくとも1つの電子伝導マトリックス材料と少なくとも1つの正孔伝導マトリックス材料を使用することが好ましい。同様に、電荷輸送マトリックス材料と、例えば、WO2010/108579に記載されているような、電荷輸送に、あるとしても重要な程度には関与していない、電気的に不活性なマトリックス材料との混合物の使用も好ましい。
【0145】
さらに、2以上の三重項発光体とマトリックスとの混合物の使用が好ましい。ここで、より短い波長の発光スペクトルを持つ三重項発光体は、より長い波長の発光スペクトルを持つ三重項発光体に対する共マトリックスとして働く。
【0146】
より好ましくは、式(A)の構造を、好ましい形態で含んでなる本発明の化合物を、有機電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子、例えば、OLEDまたはOLECの中の発光層におけるマトリックス材料として使用することができる。この場合、式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を含んでなるマトリックス材料は、1以上のドーパント、好ましくは燐光ドーパントと組み合わせて電子素子中に存在する。
【0147】
この場合、発光層中のマトリックス材料の割合は、蛍光発光層に対しては、50.0~99.9体積%、好ましくは80.0~99.5体積%、そして、より好ましくは92.0~99.5体積%であり、また、燐光発光層に対しては、85.0~97.0体積%である。
これに対応して、ドーパントの割合は、蛍光発光層に対しては、0.1~50.0体積%、好ましくは0.5~20.0体積%、そして、より好ましくは0.5~8.0体積%であり、また、燐光発光層に対しては、3.0~15.0体積%である。
【0148】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層はまた、複数のマトリックス材料(混合マトリックス系)および/または複数のドーパントを含む系であってもよい。この場合も、ドーパントは一般に、その系中で、より小さい割合を有する材料であり、また、マトリックス材料は、その系中で、より大きい割合を有する材料である。しかしながら、個々のケースでは、その系における単一のマトリックス材料の割合は、単一のドーパントの割合よりも小さくてもよい。
【0149】
本発明のさらに好ましい形態において、式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を含んでなる化合物は、混合マトリックス系の1つの成分として使用される。混合マトリックス系は好ましくは、2つもしくは3つの異なるマトリックス材料、より好ましくは、2つの異なるマトリックス材料を含む。この場合、2つの材料の一方が正孔輸送特性を有する材料であり、かつ、他方の材料が電子輸送特性を有する材料であることが好ましい。しかしながら、混合マトリックス成分の、所望の電子輸送および正孔輸送特性はまた、主としてまたは完全に、単一の混合マトリックス成分に組み込まれていてもよく、その場合、さらなる混合マトリックス成分(単数もしくは複数)が他の機能を満たす。2つの異なるマトリックス材料は、1:50~1:1、好ましくは1:20~1:1、より好ましくは1:10~1:1、そして最も好ましくは1:4~1:1の割合で存在することができる。混合マトリックス系を燐光発光の有機エレクトロルミネッセンス素子で使用することが好ましい。混合マトリックス系のより詳細な情報は、特に、出願WO2010/108579に示されている。
【0150】
本発明は、1以上の電子伝導層に電子伝導性の化合物として、本発明に係る化合物の1以上および/または本発明に係る、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーの少なくとも1つを含んでなる、電子素子、好ましくは有機エレクトロルミネッセンス素子をさらに提供する。
【0151】
カソードは、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、金属合金、または、例えば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族の金属もしくはランタノイド(例えば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)のような様々な金属で構成される多層構造体である。また、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属と、銀とで構成される合金、例えば、マグネシウムと銀とで構成される合金、が適切である。多層構造体の場合には、前記金属に加えて、例えば、Agのような比較的高い仕事関数を有するさらなる金属もまた用いることもでき、この場合、例えば、Mg/Ag、Ca/AgもしくはBa/Agのような金属の組合せが、一般に用いられる。また、好ましくは、高い誘電率を有する材料からなる薄い中間層を、金属カソードと有機半導体の間に導入することもできる。この目的のために適切な材料の例は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のフッ化物であり、また、対応する、酸化物もしくは炭酸塩(例えば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF、CsF、CsCO等)である。同様に、この目的のために有用なのは、有機アルカリ金属錯体、例えば、Liq(キノリン酸リチウム)である。この層の層厚は、好ましくは、0.5~5nmである。
【0152】
アノードは、好ましくは、高い仕事関数を有する材料である。アノードは、好ましくは、真空に対して4.5eVよりも大きい仕事関数を有する。第一に、高い酸化還元電位を有する金属、例えば、Ag、PtもしくはAu、がこの目的に適している。第二に、金属/金属酸化物の電極(例えば、Al/Ni/NiOx、Al/P~x)もまた好ましい。いくつかの用途に対して、有機材料(O-SC)の照射、または光の発光(OLED/PLED、O-laser)のいずれかを可能にするために、少なくとも1つの電極が透明もしくは部分的に透明でなければならない。ここで、好ましいアノード材料は、伝導性の混合金属酸化物である。特に好ましいのは、酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)である。さらに、好ましいのは、ドーピングされた、伝導性の有機材料、特に、ドーピングされた、伝導性のポリマー、例えば、PEDOT、PANIもしくはこれらのポリマーの誘導体である。p型にドープされた正孔輸送材料が正孔注入層としてアノードに適用される時がさらに好ましく、この場合、好適なp-ドーパントは、金属酸化物、例えばMoOもしくはWO、または電子の不足した(過)フッ素化された芳香族系である。さらに好適なp-ドーパントは、HAT-CN(ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン)またはノバレッド社(Novaled)製の化合物NPD9である。そのような層は、低いHOMOを、すなわち、大きさでは大きいHOMOを有する材料中への正孔注入を簡単にする。
【0153】
さらなる層において、その層に先行技術で使用される任意の材料を一般的に用いることができ、そして当業者は、発明的工夫なしに、電子素子において、これらの材料の任意のものを本発明に係る材料と組み合わせることができる。
【0154】
このような素子の寿命は、水および/または空気の存在により著しく短縮されるので、素子は、(用途に応じて)それ相応に構造化され、接点が備えられ、さらに最後に密閉される。
【0155】
さらに好ましいのは、1以上の層が、昇華法により塗布されていることを特徴とする、電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子である。この場合、その材料を、10-5ミリバール未満、好ましくは10-6ミリバール未満の初期圧力で、真空昇華系の中で真空蒸着により塗布する。初期圧力は、さらに低いまたはさらに高いこと、例えば10-7ミリバール未満も可能である。
【0156】
同様に好ましいのは、1以上の層が、OVPD(有機気相蒸着)法により、またはキャリヤガスの昇華を用いて塗布されていることを特徴とする、電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子である。この場合、その材料を、10-5ミリバール~1バールの圧力で塗布する。この方法の特別な場合は、OVJP(有機蒸気ジェット印刷)法であり、この方法では、この材料は、ノズルを通して直接塗布され、さらに構造化される(例えば、M.S.Arnold et al.,Appl.Phys.Lett.2008,92,053301)。
【0157】
さらに好ましいのは、1以上の層が、例えば、スピンコーティングにより、または、例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、もしくはノズル印刷、しかしより好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、もしくはインクジェット印刷のような任意の印刷法により溶液から製造されていることを特徴とする、電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子である。この目的のためには、可溶性の化合物が必要であり、これは、例えば、適当な置換により得られる。
【0158】
電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、ハイブリッド系として、1以上の層を溶液から塗布し、さらに1以上の他の層を真空蒸着で塗布することにより製造することもできる。例えば、式(A)の化合物とマトリックス材料を含んでなる発光層を溶液から塗布し、そして、それに正孔ブロック層および/または電子輸送層を減圧下、真空蒸着により塗布することができる。
【0159】
これらの方法は、当業者に一般的に知られており、そして、式(A)、または上記で詳述した好ましい形態の化合物を含んでなる、電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子に容易に適用することができる。
【0160】
本発明の電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の、従来技術に優る下記の驚くべき利点により注目に値する:
1.式(A)、または、上記および後記されている好ましい形態の構造を有する、化合物、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーを、特に電子伝導材料としておよび/またはマトリックス材料として含んでなる、電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子は、非常に良い寿命を有する。
2.式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を有する、化合物、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーを、電子伝導材料、電子注入材料および/またはマトリックス材料として含んでなる、電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子は、優れた効率を有する。より具体的には、式(A)の構造単位を含まない類似の化合物に比較して、効率がより一層高い。
3.式(A)、または、上記でおよび後記されている、好ましい形態の構造を有する、本発明の、化合物、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーは、非常に高い安定性を示し、かつ、非常に長い寿命を有する化合物をもたらす。
4.式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を有する、化合物、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーを用いることで、電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子における光損失チャネルの形成を回避することができる。この結果、これらの素子は、高いPL効率およびそれによる発光体の高いEL効率、ならびにマトリックスからドーパントへの優れたエネルギー伝導を特徴とする。
5.式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を有する、化合物、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーの、電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子の層内での使用は、電子伝導性構造の高移動度をもたらす。
6.式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を有する、化合物、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーは、優れた熱安定性を特徴とし、また、約1200g/モル未満の分子量を有する化合物は、良好な昇華性を有する。
7.式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を有する、化合物、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーは、優れたガラス膜形成性を有する。
8.式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を有する、化合物、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーは、溶液から非常に良好な膜を形成する。
9.式(A)、または、上記および後記されている、好ましい形態の構造を含んでなる、化合物、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーは、驚くほど高い三重項準位Tを有し、これは特に、電子伝導性の材料として使用される化合物に言えることである。
【0161】
これらの上記した利点は、他の電子的特性の劣化を伴うものではない。
【0162】
本発明の化合物および混合物は、電子素子での使用に適している。電子素子は、有機化合物を少なくとも1つ含む層を少なくとも1つ含む素子を意味するものと解される。素子はまた、無機材料を含むか、または全部無機材料から形成された層を含んでいてもよい。
【0163】
本発明は、従って、電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子における、本発明の化合物または混合物の使用を提供する。
【0164】
本発明は、さらに、本発明の化合物、および/または本発明の、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーの、電子素子における、ホスト材料、マトリックス材料、電子輸送材料、電子注入材料および/または正孔ブロック材料としての使用を提供する。
【0165】
本発明は、さらに、本発明の上記の化合物の少なくとも一つまたは混合物を含んでなる電子素子に関するものである。このケースにおいて、化合物について上記した好ましいものは、電子素子にも適用される。より好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED、PLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光検出器、有機感光体、有機電場消光素子(O-FQD)、有機電気センサ、発光電気化学セル(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)、および有機プラズモン発光素子(D.M.Koller et al.,Nature Photonics 2008、1-4)、好ましくは、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED、PLED)からなる群から選択される。
【0166】
本発明のさらなる形態において、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、個々の、正孔注入層および/または正孔輸送層および/または正孔ブロック層および/または電子輸送層を含まないが、このことは、例えば、WO2005/053051に記載されるように、発光層が正孔注入層もしくはアノードに直接隣接する、および/または発光層が電子輸送層もしくは電子注入層もしくはカソードに直接隣接することを意味する。さらに、例えば、WO2009/030981に記載されるように、発光層中の金属錯体と、同一もしくは類似の金属錯体を、発光層に直接隣接する、正孔輸送もしくは正孔注入材料として使用することもできる。
【0167】
また、本発明の化合物を、正孔ブロックもしくは電子輸送層中に使用することができる。これは、カルバゾール構造を有していない本発明の化合物について特に言えることである。これらはまた、好ましくは、1以上のさらなる電子輸送基、例えば、ベンズイミダゾールで置換されていてもよい。
【0168】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子のさらなる層において、従来技術に従って通常使用されるような任意の材料を使用することができる。従って、当業者は、発明的工夫をなすことなく、有機エレクトロルミネッセンス素子に対して知られた任意の材料を、式(A)、または、好ましい形態に従う、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる。
【0169】
発明の化合物は一般的に、有機エレクトロルミネッセンス素子に使用される場合、非常に良好な特性を有している。特に、本発明の化合物を有機エレクトロルミネッセンス素子に使用する場合、従来技術による類似した化合物と比較して寿命が著しく良好である。同時に、有機エレクトロルミネッセンス素子の他の特性、特に、効率と電圧は同様に、より良いか、少なくとも同等である。
【0170】
本発明に記載の形態のバリエーションは、本発明の範囲内に包含されることに留意すべきである。本発明に開示された各特徴は、これが明示的に除外されない限り、同じ目的を、または同等もしくは類似の目的を満たす、代替的な特徴と交換され得る。それ故、本発明に開示された各特徴は、特に明記しない限り、一般的なシリーズの例、または同等もしくは類似の特徴であるとみなされるべきである。
【0171】
本発明の全ての特徴は、特別な特徴および/または手順が相互に排他的でない限り、互いに任意の方法で組み合わせることができる。これは、本発明の好ましい特徴に特に言えることである。同様に、本質的でない組み合わせの特徴は、分離して(そして、組み合わせずに)用いることができる。
【0172】
多くの特徴、および特に本発明の好ましい形態の特徴は、それ自体で、発明的であり、本発明の形態の一部であるとのみ考えられるべきではないことに留意すべきである。これらの特徴については、現在特許請求の範囲に記載されている発明に加えて、もしくは替えて、独立した保護を求めることができる。
【0173】
本発明と共に開示された技術的教示は、抽象化され、そして他の実施例と組み合わせることができる。
【0174】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明するが、それにより本発明を制限するものではない。
【0175】
当業者は、以下の詳述を用いて、発明的な工夫なしで、さらに本発明の電子素子を製造し、それにより特許請求の範囲全体に亘り、本発明を実施することができる。
【0176】
実施例
以下の合成は、特に明記しない限り、保護ガス雰囲気下、乾燥溶媒中で行われる。本発明による化合物は、従来技術で当業者に知られた合成方法によって調製されうる。
【0177】
合成例
a)2,4-ジフェニルベンゾ[4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン
【化36】
13g(110.0mmol)のフェニルボロン酸、13g(55mmol)の2,4-ジクロロベンゾ[4,5]フロ[3,2-d]ピリミジンおよび21g(210.0mmol)の炭酸ナトリウムが、500mlのエチレングリコールジアミンエーテルおよび500mlの水が懸濁される。913mg(3.0mmol)のトリ-o-トリルホスフィンおよびそして112mg(0.5mmol)の酢酸パラジウム(II)がこの懸濁液に加えられ、反応混合物が還流下で16時間加熱される。冷却後、有機相が除去され、シリカゲルを通してろ過され、そして濃縮乾燥される。残留物は、トルエンから、およびジクロロメタン/ヘプタンから再結晶化される。収量:15g(47mmol)、理論の87%。
【0178】
以下の化合物は、同様の方法で調製される:
【化37-1】
【化37-2】
【化37-3】
【0179】
生成物9aおよび13aは、トルエン/ヘプタン(1:2)を用いてシリカゲル上でカラムクロマトグラフィを介して精製され、最終的に、高真空下で昇華される(p=5x10-7mbar)(99.9%純度)。
【0180】
b)8-ブロモ-2,4-ジフェニルベンゾ[4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン
【化38】
61g(190.0mmol)の2,4-ジフェニルベンゾ[4,5]フロ[3,2-d]ピリミジンが、2000mlの酢酸(100%)および2000mlの硫酸(95-98%)中で懸濁される。34g(190mmol)のNBSが分割して加えられ、混合物は暗中で2時間撹拌される。その後、水/氷が加えられ、固体が除去され、エタノールで洗浄される。残留物は、トルエン中で再結晶化される。収量は65g(163mmol)であり、理論の86%に対応する。
【0181】
以下の化合物は、同様の方法で調製される:
【化39-1】
【化39-2】
【化39-3】
【0182】
c)2,4-ジフェニル-8-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-ベンゾ[4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン
【化40】
62g(156mmol)の8-ブロモ-2,4-ジフェニルベンゾ[4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン、50g(172mmol)のN-フェニルカルバゾール-3-ボロン酸および36g(340mmol)の炭酸ナトリウムが、1000mlのエチレングリコールジアミンエーテルおよび280mlの水に懸濁される。この懸濁液に、1.8g(1.5mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が加えられ、そして混合物は還流下で16時間加熱される。冷却後、有機相が除去され、シリカゲル床を通してろ過され、濃縮乾燥される。生成物は、トルエン/へプタン(1:2)を用いて、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィを介して精製され、最終的に高真空下で昇華される(p=5x10-7mbar)(純度99.9%)。収量は60g(106mmol)であり、理論の69%に対応する。
【0183】
同様の方法で、以下の化合物が調製される:
【化41-1】
【化41-2】
【化41-3】
【化41-4】
【0184】
同様の方法で、11c-17cおよび12c-18cも22c-24cも、以下の化合物を調製するために使用される:
【化42-1】
【化42-2】
【化42-3】
【0185】
d)2,4-ビス(カルバゾール-9-イル)-8-[2-エト-(Z)-イリデン-3,3-ジメチル-1-プロパ-2-エン-(Z)-イリデンインダン-4-イル]ベンゾ[4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン
【化43】
600mlのトルエン中の53g(147mmol)の2,4-ジクロロ-8-(9、9-ジメチル-9H-フルオレン-1-イル)ベンゾ[4,5]フロ[3,2-d]ピリミジンおよび24g(147mmol)の9H-カルバゾールの脱気溶液が、Nで1時間飽和される。その後、まず2.09ml(8.6mmol)のP(tBu)、次に1.38g(6.1mmol)の酢酸パラジウム(II)が溶液に加えられ、そして、17.7g(185mmol)のNaOtBuが固体状態で加えられる。反応混合物は還流下で1時間加熱される。室温に冷却後、500mlの水が慎重に加えられる。水相は、3x50mlのトルエンで洗浄され、MgSOで乾燥され、溶媒は減圧下で除去される。その後、粗生成物はヘプタン/酢酸エチル(20/1)を用いてシリカゲルでクロマトグラフィによって精製される。残留物はトルエンから再結晶化され、最終的に高真空下で昇華される(p=5x10-6mbar)。収量は67g(95mmol)であり、理論の78%に対応する。
【0186】
同様の方法で、以下の化合物を得ることができる:
【化44】
【0187】
e)4-フェニル-2,8-ビス-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]-ピリミジン(1e):
【化45】
2,4-ジクロロベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジンは方法bと同様に臭素化され、方法cと同様にスズキを介してフェニルカルバゾールボロン酸と反応され、そして再度、方法cと同様に、まずフェニルボロン酸、最後にフェニルカルバゾールボロン酸と反応される。
【0188】
f)4-(6-ジベンゾフラン-4-イル-ピリジン-2-イル)-2,8-ジ(ピリジン-2-イル)-ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン(1f)
【化46】
調製は、e)のもとで上記に記載の方法によって行われる。
【0189】
g)2,2’-ビス(カルバゾール-9-イル-4,4’-ジフェニル-[8,8’]ビ[ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジニル])
【化47】
2,4-ジクロロベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジンは方法bと同様に臭素化され、そしてBuLiおよびホウ酸トリエチルを用いて対応するボロン酸に転換される。そして、カップリングは方法cと同様に行われ、対応する二量体を生成し、そして次に方法cと同様にフェニルボロン酸とまず反応し、最終的にNaHおよびカルバゾールと、求核置換を介して反応することによって、目的の分子に転換される。
【0190】
j)2-カルバゾール-9-イル-8-ジベンゾチオフェン-2-イル-4-フェニルベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン
【化48】
調製は、g)のもとで上記に記載の方法によって行われる。
【0191】
OLEDの製造
以下の例C1~I13(表1および2を参照)に、種々のOLEDのデータを示す。
【0192】
実施例C1-I13の前処理:膜厚50nmの構造化ITO(酸化インジウムスズ)で被覆されたガラス基板が、と踏まえに酸素プラズマを用いて処理され、つづいてアルゴンプラズマで処理される。これらのプラズマ処理されたガラス基板は、OLEDが適用される基板を形成する。
【0193】
OLEDは、基本的に以下の層構造を有する:基板/正孔注入層(HIL)/正孔輸送層(HTL)/電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/任意の正孔ブロック層(HBL)/電子輸送層(ETL)/任意の電子注入層(EIL)および最後にカソード。カソードは、厚さ100nmのアルミニウム層で形成される。OLEDの正確な構造は、表1に見出すことができる。OLEDの製造に必要とされる材料を表3に示す。
【0194】
全ての材料を真空チャンバ内での熱蒸着により塗布する。ここで、発光層は、常に、少なくとも1つのマトリックス材料(ホスト材料)と、同時蒸着によりマトリックス材料(単数もしくは複数)に特定の体積割合で混合される発光ドーパント(発光体)とからなる。IC5:IC3:TEG2(55%:35%:10%)のような形で示される詳細は、ここでは、材料IC5が当該層中に55%の体積割合で存在し、IC3が当該層中に35%の割合で存在し、さらにTEG2が当該層中に10%の割合で存在していることを意味する。同様に、電子輸送層も2つの材料の混合物からなっていてもよい。
【0195】
OLEDは、標準的な方法によって特徴づけられる。この目的のために、エレクトロルミネッセンススペクトル、電流効率(cd/Aで測定)、電力効率(lm/Wで測定)およびランベルト発光特性を仮定して、電流/電圧/光束密度特性線(IUL特性線)から計算した、光束密度の関数としての外部量子効率(EQE、パーセントで測定)並びに寿命が測定される。エレクトロルミネッセンススペクトルは、光束密度1000cd/mで測定され、CIE1931xおよびy色座標はそれから計算される。表2での表現U1000は、光束密度1000cd/mに対して必要とされる電圧を示す。最後に、EQE1000は、駆動光束密度1000cd/mでの外部量子効率を示す。寿命LTは、定電流での駆動時に光束密度が初期光束密度から一定の割合L1に低下するまでの時間として定義される。表2のL0;j0=4000cd/m、およびL1=70%の数値は、LT欄に報告される寿命が、初期光束密度が4000cd/mから2800cd/mに低下する時間に対応することを意味する。同様に、L0;j0=20mA/cm、およびL1=80%は、20mA/cmで作動時に、光束密度が、時間LTの経過後に、初期値の80%に低下することを意味する。
【0196】
種々のOLEDのデータを表2にまとめる。例C1~C4は、従来技術による比較例であり、従来技術の材料を含むOLEDを示す。例I1~I13は、本発明による材料を含んでなるOLEDのデータを示す。
【0197】
本発明のOLEDの利点を説明するために、例のいくつかを以下に詳細に記載する。
【0198】
燐光OLEDにおける本発明の材料の使用
OLEDの発光層(EML)に使用された場合の本発明の材料は、特に、寿命に関して、従来技術に対して顕著な改善を示す。本発明の化合物3d,1e,1fおよび15aの使用を通して、燐光赤色発光体TER5との組み合わせで、従来技術と比較して(例I1とC1との比較;例I2とC2との比較;例I3とC3との比較;例I4とC4との比較)、約20~30%の電圧の減少を達成することが可能である。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】