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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】可塑剤組成物及びこれを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220404BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20220404BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/12
C08K5/103
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020518683
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 KR2018015245
(87)【国際公開番号】W WO2019112292
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2017-0165273
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン-キュ
(72)【発明者】
【氏名】ムン、チョン-チュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ユン-キ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チュ-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ソク-ホ
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520185(JP,A)
【文献】特開昭58-032647(JP,A)
【文献】特開2017-052825(JP,A)
【文献】特開2010-100681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジブチルテレフタレート、ブチル(2-エチルヘキシル)テレフタレート及びジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートを含むテレフタレート系物質;及び
下記化学式1で表される化合物を1以上含むグリセリド系物質;を含む可塑剤組成物。
【化5】

前記化学式1中、
Rは、炭素数8から20の直鎖状または分枝状アルキル基である。
【請求項2】
前記テレフタレート系物質及びグリセリド系物質は、重量比が90:10から10:90である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項3】
前記テレフタレート系物質及びグリセリド系物質は、重量比が90:10から30:70である、請求項1または2に記載の可塑剤組成物。
【請求項4】
前記テレフタレート系物質は、
ジブチルテレフタレートを0.5から30重量%;
ブチル(2-エチルヘキシル)テレフタレートを10から50重量%;及び
ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートを40から89重量%含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の可塑剤組成物。
【請求項5】
樹脂を100重量部;及び、
請求項1~4のいずれか一項に記載の可塑剤組成物を5から150重量部;
含む樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂は、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリケトン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1つ以上である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、電線、床材、自動車内装材、フィルム、シート、壁紙及びチューブからなる群から選択される1つ以上の製品の材料である、請求項5または6に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年12月4日付韓国特許出願第10-2017-0165273号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、可塑剤組成物及びこれを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、可塑剤は、アルコールがフタル酸及びアジピン酸のようなポリカルボン酸と反応し、これに相応するエステルを形成する。また、人体に有害なフタレート系可塑剤の国内外の規制を考慮し、テレフタレート系、アジペート系、その他高分子系等のフタレート系可塑剤を代替し得る可塑剤組成物に対する研究が続いている。
【0004】
一般に、可塑剤は、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂と充填剤、安定剤、顔料、防曇剤等の様々な添加剤を適宜添加して多様な加工物性を付与し、圧出成形、射出成形、カレンダリング等の加工法により、電線、パイプ、床材、壁紙、シート、人造皮革、ターポリン、テープ及び食品包装材の業種の製品に至るまで、多様な製品の素材として用いられる。
【0005】
現在、可塑剤市場の状況は、フタレート可塑剤に対する環境問題によって、環境に優しい可塑剤の開発が業界において競争的に進められており、その方向としては、テレフタレート系、イソフタレート系、アジペート系及び植物性オイルを原料とする植物性バイオ製品を含む可塑剤組成物に対する製品開発がなされている。よって、可塑剤市場で通常用いられている製品より優れた製品、あるいは1種以上を含んだ新規組成物の製品を開発することにより、塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤として最適に適用可能な技術に対する研究が引続き必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、樹脂組成物に適用される可塑剤として、引張強度、伸び率及びモジュラスのような機械的物性を改善することができ、透過率と透明性及び移行損失の特性に優れたテレフタレート系物質の特性を維持することができる可塑剤組成物、及びこれを含む樹脂組成物の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の一実施形態によれば、ジブチルテレフタレート、ブチル(2-エチルヘキシル)テレフタレート及びジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートを含むテレフタレート系物質;及び、下記化学式1で表される化合物を1以上含むグリセリド系物質;を含む可塑剤組成物が提供される。
【0008】
【化1】
【0009】
前記化学式1中、Rは、炭素数8から20の直鎖状または分枝状アルキル基である。
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の一実施形態によれば、樹脂100重量部;及び前述の可塑剤組成物5から150重量部;を含む樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、樹脂組成物に用いる場合、引張強度、伸び率及びモジュラスのような機械的物性を改善することができ、透過率と透明性及び移行損失の特性に優れたテレフタレート系物質の特性を維持することができる可塑剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に対する理解を深めるために本発明をより詳細に説明する。
【0013】
本発明の説明及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法によって説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0014】
本明細書において、「ブチル」というのは、一般に称されるn-ブチルを意味してよく、また「イソブチル」を意味してもよいので、以下で、ブチルという用語はn-ブチルに限定されるものではなく、n-ブチルとイソブチルをいずれも称する用語として用いられてよい。
【0015】
[可塑剤組成物]
本発明の一実施形態によれば、3種のテレフタレート系物質とグリセリド系物質を含む混合可塑剤組成物が提供され、具体的に、前記テレフタレート系物質は、ジブチルテレフタレート、ブチル(2-エチルヘキシル)テレフタレート及びジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートを含むことを特徴とし、前記グリセリド系物質は、下記化学式1で表される化合物を1以上含むことを特徴とする。
【0016】
前記3種のテレフタレート系物質は、透過性や透明性に優れ、移行損失の特性に優れるので、食品と接触する製品や人体と接触する製品への適用が有利であるが、相対的に機械的物性が良くないという短所があり、フィルム状の製品に適用するとき、フィルムの巻き戻し性などに対する改善が求められてきた。
【0017】
一方、グリセリド系物質の場合、代表的な環境に優しい物質として可塑化効率に優れているが、透明性や透過性が多少良くなく、これもまた機械的物性が劣悪なので、商用化の過程で致命的な短所として作用し得る。
【0018】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、前記問題点を解決することができる可塑剤組成物であって、環境問題がない物質を混合して使用することにより、機械的物性を改善しながらも、透過性及び透明性、そして移行損失の特性と可塑化効率には優れた物質の特性を維持することができる。
【0019】
前記可塑剤組成物に含まれるテレフタレート系物質とグリセリド系物質の重量比は、90:10から10:90であってよく、上限が90:10、85:15、80:20、70:30または60:40であってよく、下限が10:90、15:85、20:80、30:70または40:60であってよい。好ましくは90:10から20:80、より好ましくは90:10から30:70、最も好ましくは90:10から50:50であってよい。
【0020】
このような重量比を満たす場合には、前述のとおり、特定の物性は各化合物が有する優れた特性の水準に維持させることができ、特定の物性はさらに改善させることができる。
【0021】
前記テレフタレート系物質は、ベンゼン環のパラ位置にジエステル基が結合された物質であって、ジエステル基には2-エチルヘキシル基とブチル基が結合されたものであり、それぞれ2個のブチル基、2-エチルヘキシル基及びブチル基、そして2個の2-エチルヘキシル基が結合された化合物が混合されたものである。
【0022】
前記三つの化合物の組成は、好ましくはジブチルテレフタレート0.5から50重量%;ブチル(2-エチルヘキシル)テレフタレート3.0から70重量%;及びジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート0.5から85重量%であってよく、前記重量比は、反応時の原料の繰り出し量の調節を介して制御してよい。さらに、より好ましくは0.5重量%から50重量%、10重量%から50重量%、及び35重量%から80重量%の量に形成されてよい。
【0023】
また、グリセリド系物質は、下記化学式1で表される化合物が1以上含まれたものであってよい。
【0024】
【化2】
【0025】
前記化学式1中、Rは、炭素数8から20の直鎖状または分枝状アルキル基である。
【0026】
前記グリセリド系物質は、Rの炭素数が8から20であるもののうち、好ましくは偶数個の炭素を有するアルキル基が選択されてよく、直鎖状であるものが好ましい。また、前記グリセリド系物質は、前記化学式1の化合物が1以上含まれたものであってよく、この場合、各化合物のRの炭素数は互いに異なっていてよく、主には炭素数が12個であるものと、14個であるもの、そして18個であるものが含まれてよい。
【0027】
一般に、二つの物質を混合する場合に表れる物性は、各物質の混合比によってそれぞれの物質の有する物性が線形的な変化を示し得る。しかし、本発明による可塑剤組成物のように、テレフタレート系物質とグリセリド系物質を混合する場合には、各物質が有する優れた特性は確保しながらも、特に機械的特性に対しては、二つの物質が有する機械的特性に比べて向上させることができる。
【0028】
本発明のまた他の一実施形態による可塑剤組成物は、ジブチルテレフタレート、ブチル(2-エチルヘキシル)テレフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート、及び下記化学式2で表されるテレフタレートを含むテレフタレート系物質;及び、前記化学式1で表される化合物を1以上含むグリセリド系物質;を含み、前記ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート、及び下記化学式2で表されるテレフタレートの混合重量100重量部に対してジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートは99.0重量部以上であり、下記化学式2で表されるテレフタレートは1.0重量部未満であることを特徴とする。
【0029】
【化3】
【0030】
前記化学式2中、前記R1は、炭素数1から13の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基であり、ただし、2-エチルヘキシル基ではない。
【0031】
前記ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート、及び下記化学式2で表されるテレフタレートの混合重量100重量部に対してジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートは99.0重量部以上であり、下記化学式2で表されるテレフタレートは1.0重量部未満であってよく、好ましくはそれぞれ99.2重量部以上及び0.8重量部未満、より好ましくはそれぞれ99.5重量部以上及び0.5重量部未満、最適には99.9重量部以上及び0.1重量部未満、または99.95重量部以上及び0.05重量部未満であってよい。
【0032】
[製造方法]
本発明で、前記可塑剤組成物を製造する方式は、ブレンド方式を適用できるものであって、テレフタレート系物質、グリセリド系物質をそれぞれ製造した後に混合する過程を介して可塑剤組成物を製造することができる。
【0033】
前記テレフタレート系物質は、テレフタル酸と2種アルコールの直接エステル化反応で製造されてよく、または、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートとブチルアルコールのトランスエステル化反応で製造されてよい。
【0034】
前記直接エステル化反応で、前記アルコールは、2-エチルヘキシルアルコールとブタノールであってよく、これらの混合アルコールが直接エステル化反応に適用され得る。
【0035】
前記直接エステル化反応は、アルコールにテレフタル酸を投入した後、触媒を添加して窒素雰囲気下で反応させるステップ;未反応アルコールを除去し、未反応酸を中和させるステップ;及び減圧蒸溜によって脱水及び濾過するステップ;で準備されてよい。
【0036】
また、前記アルコールは、テレフタル酸100モル%を基準に150から500モル%、200から400モル%、200から350モル%、250から400モル%、あるいは270から330モル%の範囲内に用いられてよい。
【0037】
一方、前記エステル化反応の触媒は、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、アルキル硫酸等の酸触媒、乳酸アルミニウム、フッ化リチウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化カルシウム、塩化鉄、リン酸アルミニウム等の金属塩、ヘテロポリ酸等の金属酸化物、天然/合成ゼオライト、陽イオン及び陰イオン交換樹脂、テトラアルキルチタネート(tetra alkyl titanate)及びそのポリマー等の有機金属の中から選択される1種以上であってよい。具体的な例として、前記触媒はテトラアルキルチタネートを用いてよい。
【0038】
触媒の使用量は種類によって異なってよく、例えば、均一触媒の場合には、反応物の合計100重量%に対して0.01から5重量%、0.01から3重量%、1から5重量%あるいは2から4重量%の範囲内、そして不均一触媒の場合には、反応物総量の5から200重量%、5から100重量%、20から200重量%、あるいは20から150重量%の範囲内であってよい。
【0039】
このとき、前記反応温度は180から280℃、200から250℃、あるいは210から230℃の範囲内であってよい。
【0040】
また、トランスエステル化反応が行われ、前記テレフタレート系物質が製造されるものであってよい。トランスエステル化反応の場合には、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレートとブチルアルコールが反応するものであってよい。
【0041】
一方、本発明で用いられる「トランスエステル化反応」は、下記反応式1のようにアルコールとエステルが反応し、下記反応式1で表されるところのように、エステルのR''がアルコールのR’と互いに相互交換される反応を意味する:
【0042】
【化4】
【0043】
本発明の一実施形態によれば、前記トランスエステル化反応が行われれば、アルコールのアルコキシドがエステル系化合物に存在する二つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合と、エステル系化合物に存在する一つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合と、反応が行われていない未反応の場合と、のように、三つの場合の数によって3種のエステル組成物が生成されてよい。
【0044】
また、前記トランスエステル化反応は、酸-アルコール間のエステル化反応に比べて廃水の問題を起こさないという長所があり、無触媒下で進められ得るため、酸触媒の使用時の問題点を解決できる。
【0045】
前記のようなトランスエステル化反応を介して製造されるテレフタレート系物質の組成比は前述の通りであり、この組成比は、アルコールの添加量によって前記混合物の組成比を制御できる。
【0046】
前記アルコールの添加量は、テレフタレート化合物100重量部に対して、0.1から89.9重量部、具体的には3から50重量部、より具体的には5から40重量部であってよい。
【0047】
前記テレフタレートは、アルコールの添加量が多いほど、トランスエステル化反応に参加するテレフタレート化合物のモル分率(mole fraction)が大きくなるはずなので、前記混合物において生成物である二つのテレフタレート化合物の含量が増加することがあり、これに相応して未反応で存在するテレフタレート化合物の含量は減少する傾向が見られる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、反応物であるテレフタレートとアルコールのモル比は、例えば、1:0.005から5.0、1:0.05から2.5、あるいは1:0.1から1.0であり、この範囲内で工程効率が高くて加工性改善の効果に優れたエステル系可塑剤組成物を収得するという効果がある。
【0049】
前記組成比は、エステル化反応で生成される混合組成比であってよく、特定の化合物を付加的にさらに混合して意図された組成比であってよく、所望の物性に合うように混合組成比を適宜調節してよい。ただし、前記3種のテレフタレート系物質の混合物の組成比が前記範囲に制限されるものではなく、3種のテレフタレートのいずれか一つをさらに投入することでその組成比を変更してよく、可能な混合組成比は前述の通りである。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、前記トランスエステル化反応は、120から190℃、好ましくは135から180℃、より好ましくは141から179℃の反応温度下で10分から10時間、好ましくは30分から8時間、より好ましくは1から6時間で行われてよい。前記温度及び時間の範囲内で所望の組成比のテレフタレート系物質である混合物が効果的に得られる。この際、前記反応時間は、反応物を昇温した後、反応温度に到達した時点から計算されてよい。
【0051】
前記トランスエステル化反応は酸触媒又は金属触媒下で実施されてよく、この場合、反応時間が短縮されるという効果がある。
【0052】
前記酸触媒は、例えば、硫酸、メタンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸等であってよく、前記金属触媒は、例えば、有機金属触媒、金属酸化物触媒、金属塩触媒又は金属自体であってよい。
【0053】
前記金属成分は、例えば、錫、チタン及びジルコニウムからなる群より選択されるいずれか一つ、又はこれらのうち2種以上の混合物であってよい。
【0054】
前記直接エステル化反応とトランスエステル化反応は、前述のグリセリド系物質を製造することにも用いられてよい。すなわち、具体的な反応条件やモル比等の条件は類似し得る。
【0055】
前記グリセリド系物質は、一般に、植物性オイルを原料として製造されてよく、グリセリン、酢酸(または無水酢酸)及びトリアセチンなどの物質が副原料として共に用いられてよい。
【0056】
例えば、第1の方法として、前記化学式1で表される化合物は、触媒の存在下にグリセリンと酢酸が反応してトリアセチンを生成する直接エステル化ステップ;及び植物性オイルと前記トリアセチンが触媒の存在下に反応するトランスエステル化ステップ;を介して製造されてもよい。すなわち、グリセリンを先ずアセチル化し、グリセリンがアセチル化されたトリアセチンと植物性オイルをトランスエステル化反応して製造することであってよい。
【0057】
また、第2の方法として、植物性オイルとグリセリンがトランスエステル化反応するステップ;及び前記トランスエステル化反応の生成物と酢酸を反応させるステップを介して製造されることであってよい。第2の方法の場合には、第1の方法と異なってエステル化反応とアセチル化が逆の順に進められることであってよい。
【0058】
前記植物性オイルは、例えば、アーモンド油(almond oil)、アボカド油(avocado oil)、ヒマシ油(castor oil)、コーン油(corn oil)、綿油(cottonseed oil)、オリーブ油(olive oil)、ラッカセイ油(peanut oil)、こめ油(rice bran oil)、サフラワー油(safflower oil)、ごま油(sesame oil)、大豆油(soybean oil)、ひまわり油(sunflower oil)、精製パーム油(refined palm oil)、パーム核油(Palm kernel oil)、ココナッツ油(coconut oil)またはキャノーラ油(canola oil)等が適用されてよい。
【0059】
具体的なエステル化反応条件と触媒の種類等は、前述のところと大きく変わらなくてよく、酸の場合、酸無水物で代替されてもよく、反応が完了した後には、精製等の一般的な製品化の過程を行ってよい。
【0060】
このように製造されたテレフタレート系物質とグリセリド系物質は、一般的な方法を介してブレンドされてよく、ブレンド方法においては特に制限されることはない。
【0061】
[樹脂組成物]
本発明の他の一実施形態によれば、前記可塑剤組成物は、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリケトン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、または熱可塑性エラストマー、またはこれらの混合物などの樹脂100重量部に対し、5から150重量部、10から100重量部、あるいは30から60重量部の範囲内に含んでよく、適用される用途に応じて70から130重量部が適用されてよい。
【0062】
前記樹脂組成物は、プラスチゾル加工、圧出または射出加工、カレンダー加工等の多様な方法を介して加工されてよく、電線、自動車内装材、フィルム、シート、チューブ、壁紙、玩具、床材、ワイヤまたは光ファイバの被覆材等に適用されてよい。
【0063】
また、前記樹脂組成物には、医療または食品産業で用いるために設計されたものを含んでよく、例えば、血液バッグ、静脈注射バッグ、食塩水バッグ、注射器、静脈注射管、胃管、カテーテル管、排液管、診療用手袋、酸素マスク、補正維持装置、人工皮膚及び食品包装材(例えば、多様な飲み物、肉類及び冷凍野菜のための包装材)などがあり得る。
【0064】
好ましくは、環境に優しい食品包装材用樹脂または医療用樹脂に適用されてよく、これに適するように透明度と色相等の官能性評価で優れた評価を受けることができ、接着性に優れ、引張強度と伸び率、そして可塑化効率及び加熱減量のような基本的な機械的物性も既存の可塑剤と同等水準以上の物性を示すことができる。
【0065】
前記樹脂組成物は、安定剤や防曇剤等を追加で添加してよく、これ以外のその他の添加剤も追加で添加してよい。
【0066】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、色々と異なる形態に変形されてよく、本発明の範囲が以下で詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0067】
[製造例1:テレフタレート系物質の製造]
撹拌器、コンデンサー及びデカンターが設けられた反応器に、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート((株)LG化学製)2000g及びn-ブタノール340g(DEHTP 100重量部を基準に17重量部)を投入した後、窒素雰囲気下160℃の反応温度で2時間トランスエステル化反応させ、ジブチルテレフタレート(DBTP)、ブチル(2-エチルヘキシル)テレフタレート(BEHTP)及びジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)をそれぞれ4.0重量%、35.0重量%及び61.0重量%の範囲で含む組成物を得た。
【0068】
前記反応生成物を混合蒸溜し、ブタノール及び2-エチルヘキシルアルコールを除去し、最終的に混合組成物を製造した。
【0069】
[製造例2:グリセリド系物質の製造]
前記製造例1と同じ装置に、ココナッツオイル1000g及びグリセリン300gを投入した後、100℃の反応温度で4時間トランスエステル反応させ、精製してモノグリセリドを得た。その後、無水酢酸を過量用いて120℃でアセチル化反応を実施した後、抽出、精製の工程を経て最終の製品1510gを得た。
【0070】
前記製造例1及び2で製造した物質を混合して実施例の可塑剤組成物を製造し、これに対して下記表1にまとめて示した。この可塑剤組成物の物性評価は下記の試験項目によって行った。
【0071】
【表1】
【0072】
<試験項目>
硬度(hardness)の測定
ASTM D2240を用いて、25℃でのショア(shore A及びD)硬度、3T 10sを測定しており、低いほど優れるものとして評価される項目である。
【0073】
引張強度(tensile strength)の測定
ASTM D638方法によって、テスト機器であるU.T.M(製造社;Instron、モデル;4466)を用いて100mm/min(0.25T)のクロスヘッドスピード(cross head speed)で引っ張った後、試片が切断されるポイントを測定した。引張強度は、TD方向とMD方向に対して測定して次のように計算しており、高いほど優れるものとして評価される項目である。
【0074】
【数1】
【0075】
伸び率(elongation rate)の測定
ASTM D638方法により、前記U.T.Mを用いて100mm/min(0.25T)のクロスヘッドスピード(cross head speed)で引っ張った後、試片が切断されるポイントを測定し、この際、TD方向とMD方向に対して測定した後、伸び率を次のように計算しており、高いほど優れるものとして評価される項目である。
【0076】
【数2】
【0077】
移行損失(migration loss)の測定
KSM-3156によって厚さ2mm以上の試片(1T)を得て、試片の両面にPSプレートを付着した後、1kgf/cm2の荷重を加えた。試片を熱風循環式オーブン(80℃)で72時間放置した後、取り出して常温で4時間冷却させた。その後、試片の両面に付着されたPSを除去した後、オーブンに放置する前と後の重量を測定し、移行損失量を以下のような式によって計算しており、低いほど優れるものとして評価される項目である。
【0078】
【数3】
【0079】
加熱減量(volatile loss)の測定
作製された試片を80℃で72時間作業した後、試片の重量を測定し、下記のように計算しており、低いほど優れるものとして評価される項目である。
【0080】
【数4】
【0081】
100%モジュラスの測定
ASTM D638の方法により、前記U.T.Mを用いて100mm/min(0.25T)のクロスヘッドスピード(cross head speed)で引っ張った後、TD方向とMD方向に対して100%伸張時の引張応力(100%モジュラス)を測定しており、低いほど優れるものとして評価される。
【0082】
ヘイズ(Haze)及び透明度
NDH 7000ヘイズメーター(Haze Meter)を用いてヘイズ及び透明度を測定しており、ヘイズは低いほど優れ、透明度は高いほど優れるものとして評価される。
【0083】
[実験例1:樹脂試片の物性の評価]
前記表1に記載された実施例及び比較例の混合可塑剤組成物を用いて、試片を作製した。
【0084】
前記試片の作成は、ASTM D638を参照し、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC(LS100))100重量部に対し、前記実施例及び比較例で製造された可塑剤組成物を40重量部、エポキシ化大豆油(ESO)10重量部、安定剤としてLTX-630P 1.5重量部、防曇剤Almax-9280 2重量部を配合して700rpmで98℃で混合した。ロールミル(Roll mill)を用いて160℃で4分間作業し、プレス(press)を用いて180℃で2.5分(低圧)及び2分(高圧)間作業して試片を作製した。
【0085】
前記試片に対して前記試験項目をそれぞれ評価し、その結果を下記表2に示した。
【0086】
【表2】
【0087】
前記表2に示されている通り、実施例1から4の場合、硬度値に優れた比較例2のグリセリド系物質と同等な水準に評価され、可塑化効率に優れた方の特性を取ったことが分かり、機械的特性である引張強度、伸び率及びモジュラス値の場合、比較例1及び2のいずれと比べてみても、その数値が優れた値を有する物質と同等な水準で表れていることを確認できる。また、移行損失と加熱減量の場合にも、さらに低い数値を有する比較例1と同等なので、優れた物性を取ったことを確認でき、ヘイズ値と透過率も優れた方の数値と同等な水準であることを確認できる。
【0088】
特に、伸び率特性の場合には、テレフタレート系物質とグリセリド系物質がTD方向の伸び率は類似するが、MD方向の伸び率は比較例2のグリセリド系物質が優れるところ、二つの物質を混合した場合にはTD方向及びMD方向のいずれも優れた値を有し、特に、MD方向の伸び率はさらに改善された数値を有するということが分かる。
【0089】
これを介し、テレフタレート系物質とグリセリド系物質を混合する場合には、各物質が有する優れた物性は同等以上の水準に維持するとともに、機械的物性の場合にはより向上した値を示し得るということが分かるので、本発明による可塑剤組成物は、可塑化効率に優れながらも機械的物性が向上し、加熱減量、移行損失、ヘイズ及び透過率がいずれも優れた水準に維持され得る樹脂を提供できることが分かる。
【0090】
すなわち、二つの物質の混合で予測される効果として、各物性が線形変化を示すのではなく、各物質が有する優れた物性は、その水準が同等以上に維持され、一部物性の場合にはより向上する結果を示したといえる。