(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C08F 290/12 20060101AFI20220405BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20220405BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20220405BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C08F290/12
C09D133/04
C09D4/02
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2017103090
(22)【出願日】2017-05-24
【審査請求日】2019-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉秀
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/047949(WO,A1)
【文献】特開2015-075499(JP,A)
【文献】特開2017-105916(JP,A)
【文献】特開2016-062804(JP,A)
【文献】特開2013-073042(JP,A)
【文献】特開2010-156983(JP,A)
【文献】特開2000-256428(JP,A)
【文献】特開2009-109879(JP,A)
【文献】特開2001-323032(JP,A)
【文献】特開2010-060790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/12
C09D 133/04
C09D 4/02
B32B 27/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び成分(B)を含む、硬化性組成物。
成分(A):不飽和二重結合及びビフェニル構造を有し、重量平均分子量(Mw)が3,000~150,000である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(ただし、該成分(A)は、アルカリ可溶性ポリマーである(メタ)アクリル酸エステル系重合体を除く。)成分(B):多官能(メタ)アクリレート
(ただし、該成分(B)は、前記成分(A)に該当する多官能(メタ)アクリレートを除く。)
【請求項2】
前記成分(A)及び前記成分(B)の合計量に対して、前記成分(A)を40~90重量%含む、請求項1に硬化性組成物。
【請求項3】
前記成分(A)における不飽和二重結合が(メタ)アクリロイル基である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
有機溶媒を含み、硬化性組成物中の固形分濃度が5~95重量%である、請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒が、飽和炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項
4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
重合開始剤を含み、かつその含有量が、成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対して0.01~20重量部である、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなる硬化物。
【請求項8】
基材とハードコート層とを有する積層体であり、該ハードコート層が請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなる積層体。
【請求項9】
前記基材がプラスチック基材である、請求項
8に記載の積層体。
【請求項10】
前記プラスチック基材が、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項
9に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いて得られる硬化物及び積層体に関する。より詳しくは、本発明は、得られる硬化物の透明性が良好でヘイズも低く、水蒸気バリア性が良好であり、硬度、耐傷付き性に優れた硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いて得られる硬化物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー線硬化性組成物は、一般的に無溶剤で加工ができる為、作業性に優れる。また、硬化速度が早く、エネルギー必要量が低いことからエネルギー線硬化性組成物に関する技術はディスプレイ周辺材料を始め、種々の産業において重要な技術である。近年、ディスプレイはフラットパネルディスプレイ(FPD)と称される薄型のディスプレイ、特にプラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)が市場投入され広く普及している。また、次世代の自発光型薄膜ディスプレイとして有機ELディスプレイ(OLED)が期待されており、一部製商品では既に実用化されている。有機ELディスプレイの有機EL素子は、TFT等の駆動回路が形成されたガラス等の基板上に、陰極および陽極によって挟持された発光層を含む薄膜積層体からなる素子部本体が形成された構造を有している。素子部の発光層または電極といった層は、水分または酸素により劣化し易く、劣化によって輝度やライフの低下、変色が発生する。その為、有機EL素子は、外部からの水分または不純物の浸入を遮断するように封止されている。高品質で高信頼性の有機EL素子の実現に向けて、より高性能な封止材料が望まれており、従来から種々封止技術が検討されている。
【0003】
有機EL素子の代表的な封止方法として、予め乾燥剤を挿入した金属製またはガラス製の封止キャップを、封止用接着剤を用いて有機EL素子の基板に固定する方法が検討されている。この方法は、有機EL素子の基板外周部に接着剤を塗布し、その上に封止キャップを設置、次いで接着剤を固化させることによって、基板と封止キャップとを固定し、有機EL素子を密閉している。このような方法では、ガラス製の封止キャップによる封止が主流となっている。しかし、ガラス製の封止キャップは、平坦なガラス基板に乾燥剤を挿入するための掘り込みを加工することによって作製されるため、高コストとなる傾向がある。また、封止キャップによる封止は、封止キャップの内側に乾燥剤が挿入されることになるため、封止キャップ側から光を取り出すことはできない。即ち、光源から放たれた光は素子の基板側から取り出されることになり、ボトムエミッション型の素子に制限される。ボトムエミッション型の素子の場合、基板に形成された駆動回路部による開口率の低下、および駆動回路部によって光が一部遮られることによる取り出し効率の低下の問題がある。
そこで、特許文献1では、有機EL素子の封止材に適した樹脂組成物と、硬化性に優れ、可視光透過率、硬化収縮率、水蒸気透過度の低い硬化物を得るために、2つの芳香環構造を有する化合物を硬化性組成物に含有させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている技術について本発明者等が更に検討を行った結果、この文献に開示されている硬化性樹脂組成物では得られる硬化物が透明性、ヘイズ値、水蒸
気バリア性、硬度、耐傷付き性の観点から工業的な実用化には更なる改良が必要であることを見出した。
【0006】
本発明は、上記特許文献1が有している課題を解決することを目的とするものであり、得られる硬化物の透明性が良好でヘイズも低く、水蒸気バリア性が良好であり、硬度、耐傷付き性に優れた硬化物を提供できる硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いて得られる硬化物及び基材との積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、下記成分(A)及び成分(B)を含む、硬化性組成物が上記課題を解決し得ることを見出した。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。(1)下記成分(A)及び成分(B)を含む、硬化性組成物。
成分(A):不飽和二重結合及び多環構造を有し、重量平均分子量(Mw)が3,000~150,000である(メタ)アクリル酸エステル系重合体
成分(B):多官能(メタ)アクリレート
(2)前記成分(A)及び前記成分(B)の合計量に対して、前記成分(A)を40~90重量%含む、(1)に記載の硬化性組成物。
(3)前記成分(A)における不飽和二重結合が、(メタ)アクリロイル基である、(1)又は(2)に記載の硬化性組成物。
(4)前記成分(A)における多環構造が、芳香族炭化水素構造及び脂環族炭化水素構造からなる群から選択される少なくとも1つの炭化水素構造を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(5)前記成分(A)における多環構造が、ビフェニル構造、ナフタレン構造、トリシクロデカン構造及びアダマンチル構造からなる群から選択される少なくとも1つを含む、(1)~(4)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(6)前記成分(A)が、前記(メタ)アクリル化合物及び前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体のブロック共重合体またはグラフト共重合体である、(1)~(5)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(7)前記成分(A)として、多環構造を有する(メタ)アクリル化合物の重合体を側鎖に有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含む、(6)に記載の硬化性組成物。
(8)有機溶媒を含み、硬化性組成物中の固形分濃度が5~95重量%である、(1)~(7)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(9)前記有機溶媒が、飽和炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含む、(8)に記載の硬化性組成物。
(10)重合開始剤を含み、かつその含有量が、成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対して0.01~20重量部である、(1)~(9)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(11)(1)~(10)のいずれかに記載の硬化性組成物からなる硬化物。
(12)基材とハードコート層とを有する積層体であり、該ハードコート層が(1)~(10)のいずれかに記載の硬化性組成物からなる積層体。
(13)前記基材がプラスチック基材である、(12)に記載の積層体。
(14)前記プラスチック基材が、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、(13)に記載の積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、得られる硬化物の透明性が良好でヘイズも低く、水蒸気バリア性が良好であり、硬度、耐傷付き性に優れた硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いて得られる硬化物及び積層体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本発明において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。また、本発明において、「(メタ)アクリル」という表現を用いる場合、「アクリル」及び「メタクリル」の一方又は両方を意味するものとし、「(メタ)アクリロイル」についても同様の意味をもつものとする。
【0010】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、下記成分(A)及び成分(B)を含むものである。
成分(A):不飽和二重結合及び多環構造を有し、重量平均分子量(Mw)が3,000~150,000である(メタ)アクリル酸エステル系重合体
成分(B):多官能(メタ)アクリレート
【0011】
本発明の硬化性組成物は、得られる硬化物の透明性が良好でヘイズも低く、水蒸気バリア性が良好であり、硬度、耐傷付き性に優れるという効果を奏する。
【0012】
[成分(A)]
本発明の硬化性組成物は、下記成分(A)を含む硬化性組成物である。
成分(A):不飽和二重結合及び多環構造を有し、重量平均分子量(Mw)が3,000~150,000である(メタ)アクリル酸エステル系重合体
【0013】
成分(A)は、不飽和二重結合及び多環構造を有している。
ここで、不飽和二重結合としては、特に限定されないが、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。これらのなかでも、紫外線硬化時の反応率に優れるビニルエーテル基、(メタ)アクリロイル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0014】
多環構造としては、縮合型多環式構造であってもよく、非縮合型多環式構造であってもよく、特に限定されないが、多環芳香族炭化水素構造、脂環族炭化水素構造、複素芳香族炭化水素構造、が挙げられる。
これらのなかでも、ヘテロ原子を含まず低極性となりやすい、芳香族炭化水素構造及び脂環族炭化水素構造のうちの少なくとも一方であることが特に好ましい。より具体的には、多環構造がビフェニル構造、ナフタレン構造、トリシクロデカン構造及びアダマンチル構造から選ばれる少なくとも1種であることが入手容易であるため、最も好ましい。
【0015】
より具体的には、成分(A)は、以下のような成分(a)を原料とし、その構造に由来する構造を分子骨格に有することが好ましい。
成分(a)の具体例としては、ナフチルアクリレート、4-アクリロイルオキシエチル
ジフェニルエーテル(例えば、共栄社化学株式会社製、製品名:POB-A)、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名:A-BPEF)、エトキシ化オルトフェニルフェノールアクリレート(例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名:A-LEN-10T)、アダマンチルアクリ
レート、トリシクロデシルアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製、製品名:DCP-A)が挙げられる。これらのなかでも
、4-アクリロイルオキシエチルジフェニルエーテル、トリシクロデシルアクリレート、
エトキシ化オルトフェニルフェノールアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートが特に好ましい。
【0016】
成分(A)は、(メタ)アクリル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体のブロック共重合体またはグラフト共重合体であることが、密着性と透湿防止性の両立が容易であるため、好ましい。より具体的には、多環構造を有する(メタ)アクリル化合物の重合体を(メタ)アクリル酸エステル系重合体の側鎖にグラフトすることが、製造上簡便であるため、特に好ましい。
また、成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3,000以上であり、より好ましくは5,000以上であり、特に好ましくは7,000以上であり、最も好ましくは7,500以上である。一方、好ましくは150,000以下であり、より好ましくは100,000以下であり、特に好ましくは80,000以下であり、最も好ましくは40,000以下である。上記範囲において、成分(A)の重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であれば、透湿防止性と他成分との相溶性が良好であるため好ましい。
【0017】
成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、GPC法により次の条件により測定した値である。
機器 :東ソー株式会社製「HLC-8120GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel Super H3000+H4000+H6000」
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)
溶媒 :テトラヒドロフラン
温度 :40℃
流速 :0.5ml/分
注入量:10μL
濃度 :0.2重量%
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン換算
【0018】
成分(A)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体は不飽和二重結合を有するものであるが、この不飽和二重結合の導入方法としては例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を重合し、これに不飽和二重結合及びカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法(方法〔1〕)、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を重合し、これに不飽和二重結合及びエポキシ基を有する化合物を反応させる方法(方法〔2〕)、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を重合し、これに不飽和二重結合及びカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法(方法〔3〕)、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を重合し、これに不飽和二重結合及び水酸基を有する化合物を反応させる方法(方法〔4〕)、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を重合し、これに不飽和二重結合及び水酸基を有する化合物を反応させる方法(方法〔5〕)、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を重合し、これに不飽和二重結合及びイソシアネート基を有する化合物を反応させる方法(方法〔6〕)等が挙げられる。また、以上に挙げた方法は組み合わせて用いてもよい。なお、以下において、炭素間不飽和二重結合(C=C)を有するラジカル重合性モノマーを「ビニルモノマー」と称することがある。
【0019】
成分(A)の製造方法は、特に限定されないが、一例としては、以下のとおり製造することができる。
反応器に、上記の成分(a)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート、必要に応じてその他の成分、溶媒を仕込み、撹拌開始後に系内を窒素置換し、昇温し、ここへラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を添加した後、系内をさらに昇温し、撹拌した後、更にラジカル重合開始剤を添加して数時間撹拌する。さらに、系内を昇温し、撹拌した後、溶媒を加え、再度系内を昇温する。ここへ、触媒等を添加した後、不飽和二重結合を有する化合物等を加え、さらに昇温して数時間撹拌する。
【0020】
エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。エポキシ基を有する(メタ)アクリレートは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
成分(a)とエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとを共重合させる際には更にその他のモノマーを共重合させてもよい。その他のモノマーは炭素原子間二重結合を有し、成分(a)及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートと共重合させることができるものであれば特に制限されないが、例えば、これら以外の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0022】
その他のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート等の(メタ)アクリレート;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-エチルメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメトキシ(メタ)アクリルアミド、N-エトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエトキシ(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN,N-エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。その他のモノマーとしては、炭素数4~22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0023】
成分(a)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられるその他のモノマーを共重合させてアクリル系共重合体を製造する際の、各モノマーの使用量には特に制限はないが、好ましくは成分(a)5~95重量%、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート5~95重量%、及び必要に応じて用いられるその他のモノマー0~80重量%(ただし、成分(a)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられるその他のモノマーの合計で100重量%とする。より好ましくは成分(a)30~90重量%、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート10~70重量%、及び必要に応じて用いられるその他のモノマー5~60重量%、特に好ましくは成分(a)60~85重量%、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート15~40重量%、及び必要に応じて用いられるその他のモノマー10~40重量%の割合で用いるのが紫外線硬化性
と透湿防止性が良好であることから好ましい。
【0024】
成分(a)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられるその他のモノマーを共重合させる反応は、通常、ラジカル重合反応であり、具体的には、有機溶媒中でラジカル重合開始剤の存在下で行うことができる。この反応の反応時間は通常、1~50時間であり、好ましくは3~12時間である。ここで用いることのできる有機溶媒、ラジカル重合開始剤は次の通りである。
【0025】
有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、用いることができる溶媒の具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-エトキシエチルアセタート等のエステル系溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ラジカル重合開始剤としては、例えば一般にラジカル重合に用いられる公知の開始剤を用いることができ、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ラジカル重合開始剤は原料のビニルモノマーの合計100重量部に対し、通常0.01~5重量部の範囲で用いられる。
【0027】
成分(A)を製造する際には、連鎖移動剤を用いることが、重量平均分子量の制御が容易となるために好ましい。連鎖移動剤としては、公知のものを使用することが可能であり、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルエステル、チオグリコール酸2-エチルへキシル、ブチル-3-メルカプトプロピオネート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2,2-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4-メチルベンゼンチオール、オクタン酸2-メルカプトエチルエステル、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルフィド、2,3-ジメチルカプト-1-プロパノ-ル、メルカプトエタノール、チオサリチル酸、チオグリセロール、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプト酢酸、メルカプト琥珀酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、以上で例示した連鎖移動剤の中には成分(B)のチオール化合物が含まれるが、通常、連鎖移動剤は重合が進行した際には消費されるものと考えることができる。
【0028】
連鎖移動剤の使用量は、原料として用いるビニルモノマーの合計100重量部に対し、好ましくは0.1~25重量部であり、より好ましくは0.5~20重量部であり、更に好ましくは1.0~15重量部である。
【0029】
ラジカル重合反応の反応時間は、通常1~20時間であり、好ましくは3~12時間である。また、反応温度は、通常40~120℃であり、好ましくは50~100℃である
。
【0030】
成分(A)の重量平均分子量が前記範囲となるようにするためには、例えば重合反応の温度、重合開始剤の使用量、連鎖移動剤の使用量等の重合条件を適宜、以上で説明した範囲で制御すればよい。
【0031】
重合反応により得られたメタアクリル酸エステル系重合体に不飽和二重結合を有する化合物等を反応させる際には、上記のようにして得られた原料(メタ)アクリル酸エステル系重合体に、不飽和二重結合を有する化合物等を添加して、トリフェニルホスフィン、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミン等の触媒の1種又は2種以上存在下に通常、90~140℃、好ましくは100~120℃で通常、3~9時間程度反応されればよい。ここで、触媒は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体と不飽和二重結合等の化合物との合計100重量部に対して0.5~3重量部程度の割合で用いることが好ましい。この反応は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重合反応後、引き続き行ってもよく、反応系から一旦(メタ)アクリル酸エステル系重合体を分取した後、不飽和二重結合を有する化合物等を添加して行ってもよい。
【0032】
本発明の硬化性組成物において、以上において説明した成分(A)の(メタ)アクリル酸エステル系重合体は1種のみを含むものであっても、異なるものを2種以上含むものであってもよい。
【0033】
成分(A)の硬化性組成物中の含有量は、特に限定されないが、成分(A)及び成分(B)の合計量に対し、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは45重量%以上であり、特に好ましくは50重量%以上である。一方、好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは85重量%以下であり、特に好ましくは80重量%以下である。上記範囲において、成分(A)の含有量が上記範囲内であれば、透湿防止性と紫外線硬化性が良好であるため好ましい。
【0034】
<成分(B)>
本発明の硬化性組成物は、成分(A)に加え、成分(B)として多官能(メタ)アクリレートを含む。
【0035】
成分(B)の多官能(メタ)アクリレートは、成分(A)及び後述する成分(C)に該当せず、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものであれば特に制限されないが、(メタ)アクリロイル基の数は、好ましくは3以上である。
【0036】
成分(B)の分子量(重量平均分子量(Mw))は、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上であり、また、通常8,000以下であり、好ましくは6,000以下、より好ましくは4,000以下である。上記範囲内であると、架橋点間距離を適度な範囲とし、硬化させた際に十分な硬度を有する硬化膜とすることができる。
【0037】
多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ナノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。なお、多官能(メタ)アクリレートは、エチレンオキシド(EO)構造を含まないものが好ましい。このような多官能(
メタ)アクリレートであると、形成するハードコート層等の硬度を確保し易くなる。また、本発明の硬化性組成物に含むことのできる多官能(メタ)アクリレートは、1種類に限られず、2種類以上が含まれていてもよい。
【0038】
<成分(C)>
本発明の硬化性組成物は、硬化性を向上させるために、成分(C)として、ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
【0039】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、光重合開始剤が好ましく、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの重合開始剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明の硬化性組成物において、ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性を高める観点から、成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.05重量部以上であり、更に好ましくは0.1重量部以上である。また、ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の安定性の観点から、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、更に好ましくは5重量部以下であり、特に好ましくは3重量部以下である。
【0041】
[有機溶媒]
本発明の硬化性組成物は、有機溶媒を含むことが好ましい。また、本発明の硬化性組成物が有機溶媒を含む場合、固形分濃度が5~95重量%であることが好ましい。固形分濃度が5重量%以上であることが、各成分の分散性を良好なものとし、透明性を良好なものとする観点から好ましく、また、硬化性組成物の意図しない硬化反応(ゲル化等)を防ぐためにも好ましい。また、固形分濃度が95重量%以下であることが塗工性、保存安定性の観点から好ましい。これらの観点から固形分濃度は、より好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは15重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上であり、最も好ましくは25重量%以上であり、また、より好ましくは90重量%以下であり、更に好ましくは80重量%以下であり、特に好ましくは70重量%以下、最も好ましくは60重量%以下である。なお、本発明において、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味するものであり、固体の成分のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。
【0042】
有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、成分(A)~(C)の種類やハードコート層を形成する際に用いる基材の種類、基材への塗布方法等を考慮して適宜選択することができる。有機溶媒の具体例としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-デカン、n-ドデカン、2,3-ジメチルヘキサン、2-メチルヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イ
ソプロピル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。
【0043】
これらの有機溶媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、飽和炭化水素系溶剤、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0044】
[その他の成分]
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で成分(A)、成分(B)、成分(C)以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤(無機粒子に該当するものを除く。)、反応性希釈剤(ただし、成分(A)、成分(B)、成分(C)のいずれかに該当するものを除く。)、帯電防止剤、有機顔料、スリップ剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤、酸化防止剤、熱可塑性樹脂(ただし、成分(A)、成分(B)、成分(C)のいずれかに該当するものを除く。)等が挙げられる。
【0045】
[硬化性組成物の製造方法]
本発明の硬化性組成物の製造方法は特に制限されないが、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び必要により適宜、有機溶媒、その他の成分等を混合することにより得ることができる。各成分の混合に際しては、ディスパーザー、撹拌機等で均一に混合することが好ましい。
【0046】
[硬化物及び積層体]
本発明の硬化性組成物に活性エネルギー線を照射する等して硬化させることにより、本発明の硬化性組成物が硬化した硬化物(「本発明の硬化物」と称することがある。)を得ることができる。また、本発明の硬化性組成物を基材の上に塗布し、これに活性エネルギー線を照射してハードコート層を形成することにより、基材上に本発明の硬化物が形成されている積層体を得ることができる。特に、本発明の硬化性組成物を基材の上等に塗布し、フィルム状に硬化させることで、ハードコートフィルムを得ることができる。なお、本発明において、「塗布」とは一般的に「塗工」と呼ばれるものも含む概念として用いることとする。
【0047】
上記の積層体に用いる基材としては、プラスチック基材等の有機材料;金属基材、ガラス基材等の無機材料が挙げられる。プラスチック基材としては、各種合成樹脂、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリオレフィン(PO)樹脂等が挙げられる。金属基材としては、特に限定はないが、例えば、熱延板、冷延板等の鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、ブリキ、ティンフリースチール、その他各種のめっき、又は合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等の金属板が挙げられる。更にはこれらをリン酸塩処理、クロメート処理、有機リン酸塩処理、有機クロメート処理、ニッケル等の重金属置換処理等、各種の表面処理を施したものであってもよい。ガラス基材としては、通常のガラスの他、各種の化学処理を施したガラス(例えば、コーニング社のゴリラガラス(登録商標)や旭硝子社のドラゴントレイル(登録商標)等)や多成分系のガラスを用いてもよい。本発明の硬化性組成物はプラスチック基
材、ガラス基材に好適であり、特にプラスチック基材に適しており、プラスチック基材の中でもトリアセチルセルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂に特に好適である。なお、以上に挙げた基材は1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明の硬化性組成物を基材上に塗布(塗工)する方法としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法等が挙げられる。また、本発明の硬化物の形態は特に制限されないが、通常、基材上で活性エネルギー線を照射して硬化させて得られた硬化物の場合、基材の少なくとも片面の一部に硬化被膜(硬化膜)の状態として得ることができる。
【0049】
本発明の硬化性組成物を基材上に塗布(塗工)する際の湿度は特に制限されず、通常、相対湿度1~100%であり、好ましくは相対湿度5~95%である。また、本発明の硬化物を得る際、活性エネルギー線を照射する前に予め乾燥させることが好ましく、このときの乾燥温度は通常、40~160℃であり、好ましくは45~150℃である。
【0050】
本発明の硬化性組成物を硬化させる際に用いることのできる活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化防止の観点から好ましいのは紫外線及び電子線である。
【0051】
本発明の硬化性組成物を紫外線照射により硬化させる場合には、種々の紫外線照射装置を用いることができ、その光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED-UVランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常10~10,000mJ/cm2であり、本発明の硬化性組成物の硬化性、硬化物(硬化膜)の可撓性等の観点から好ましくは30~5,000mJ/cm2であり、より好ましくは50~3,000mJ/cm2である。また、紫外線照度は通常、50~1,000mW/cm2であり、好ましくは70~800mW/cm2である。
【0052】
また、本発明の硬化性組成物を電子線照射で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置を使用することができる。電子線の照射量(Mrad)は、通常、0.5~20Mradであり、本発明の硬化性組成物の硬化性、硬化物の可撓性、基材の損傷防止等の観点から好ましくは1~15Mradである。
【0053】
[用途]
本発明の硬化性組成物は、紫外線硬化性が良好であるため生産性が良好である。加えて、耐傷付性と透明性、水蒸気バリア性に優れるため、これらの性能が要求される用途においていずれの用途においても好適に用いることが可能である。具体的には、液晶表示装置(液晶ディスプレイ)、発光ダイオードディスプレイ(LED)、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD)、蛍光ディスプレイ(VFD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のパネルディスプレイ、;銀行ATM、自動販売機、携帯情報端末(スマートホン、タブレット端末、PDA)、複写機、ファクシミリ、ゲーム機、博物館、デパート等の施設に設置される案内表示装置;カーナビゲーション、マルチメディアステーション(コンビニエンスストアに設置される多機能端末機)、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等のモニタ装置として広く好適にも用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した
上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0055】
[評価方法]
以下の実施例、比較例においては以下の方法により各種評価を行った。
【0056】
[全光線透過率(Tt)及びヘイズ(H)]
ハードコートフィルムの全光線透過率(Tt(%))は、ハードコートフィルムに対する入射光強度(T0)とハードコートフィルムを透過した全透過光強度(T1)とを測定し、下記式により算出した。
なお、全光線透過率の測定は、濁度計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
全光線透過率は85.0%以上であることが好ましい。
Tt(%)=(T1/T0)×100
【0057】
ハードコートフィルムのヘイズはJIS K-7136(2000年)に準拠して下記式より算出した。
なお、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所)を用いて測定した。
ヘイズ値が低いほど好ましく、5.0%以下であることが好ましい。
H(%)=(Td/Tt)×100
H:ヘイズ(曇価)(%)
Td:拡散透光率(%)
Tt:全光線透過率(%)
【0058】
[透湿度]
ハードコートフィルムの透湿度はJIS Z-2808(1976年)に準拠して下記式より算出した。
透湿度[g/m2・24h]= 240× m / (t × s)
ここに、
s:透湿面積 (cm2)
t:試験を行った最後の二つのひょう量間隔の時間の合計 (h)
m:試験を行った最後の二つのひょう量間隔の増加質量の合計 (mg)
なお、本発明で使用した透湿カップの透湿面積は28cm2、透湿度の測定環境は、40℃、相対湿度90%、測定時間は24時間である。
よって、
透湿度[g/m2・24h]= 0.36× m となる。
また、各カップに塩化カルシウム(無水)を10g入れて透湿度の測定を実施した。
さらに、上記で算出した透湿度を以下の基準で評価した。
◎:透湿度が 300g/m2・24h未満
○:透湿度が 300g/m2・24h以上 500g/m2・24h未満
×:透湿度が 500g/m2・24h以上
【0059】
[鉛筆硬度]
ハードコートフィルムの鉛筆硬度は、JIS K-5600(2014年)に準拠し、荷重750gで引っ掻き試験を実施した。
【0060】
[耐擦傷性]
ハードコートフィルムの耐擦傷性は、ボンスター製スチールウール(#0000)を125g/cm2の荷重をかけながら、塗膜に対して20回往復摩擦した後の塗膜の傷付性
を目視で評価した。
◎:塗膜は無傷である
○:塗膜に10本未満の傷付きが見える
△:塗膜に10本以上、100本未満の傷付きが見える
×:塗膜に無数の傷が入り、傷により塗膜が白化する
【0061】
[原料]
硬化性組成物の原料として用いた成分(a-1)、成分(a-2)、成分(A)~(C)は以下の通りである。
【0062】
<成分(a-1)および成分(a-2)>
a-1:エトキシ化オルトフェニルフェノールアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:A-LEN-10T)
a-2:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:DCP-A)
【0063】
<成分(A)>
A-1:
撹拌機、還流冷却管及び温度計を取り付けた反応器に、成分(a-1) 80g、グリ
シジルメタクリレート20g、メチルイソブチルケトン(MIBK)103.25gを仕込み、撹拌開始後に系内を窒素置換し、55℃まで昇温し、ここへ2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V-65」)1.0g、1-ドデカンチオール(和光純薬社製)2.0gを添加した後、系内を65℃まで昇温し、3時間撹拌した後、更にV-65を0.25g添加して65℃で3時間撹拌した。系内を100℃まで昇温し、30分間撹拌した後、MIBK37.27gを加え、再度系内を100℃まで昇温した。ここへ、p-メトキシフェノール0.28gとトリフェニルホスフィン1.12gを添加した後、アクリル酸10.34gを加え、110℃まで昇温して6時間撹拌した。重量平均分子量7,100の共重合体(A-1)のMIBK溶液を得た。なお、共重合体(A-1)のMIBK溶液の組成は[共重合体(A-1)の重量]/[MIBKの重量]=45/55(固形分45重量%)となるようにした。
【0064】
A-2:
撹拌機、還流冷却管及び温度計を取り付けた反応器に、成分(a-1) 60g、グリ
シジルメタクリレート40g、メチルイソブチルケトン(MIBK)103.25gを仕込み、撹拌開始後に系内を窒素置換し、55℃まで昇温し、ここへ2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V-65」)1.0g、1-ドデカンチオール(和光純薬社製)2.0gを添加した後、系内を65℃まで昇温し、3時間撹拌した後、更にV-65を0.25g添加して65℃で3時間撹拌した。系内を100℃まで昇温し、30分間撹拌した後、MIBK50.06gを加え、再度系内を100℃まで昇温した。ここへ、p-メトキシフェノール0.26gとトリフェニルホスフィン1.23gを添加した後、アクリル酸20.68gを加え、110℃まで昇温して6時間撹拌した。重量平均分子量8,400の共重合体(A-2)のMIBK溶液を得た。なお、共重合体(A-2)のMIBK溶液の組成は[共重合体(A-2)の重量]/[MIBKの重量]=45/55(固形分45重量%)となるようにした。
【0065】
<成分(B)>
B-1:ジペンタエリスリトールテトラアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(日本化薬社製、商品名:カヤラッドDPHA)
【0066】
<成分(C)>
C-1:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製、商品名:Irgacure184)
【0067】
上記A-1,A-2の重量平均分子量はGPC法により次の条件により測定した値であ
る。
機器 :東ソー株式会社製「HLC-8120GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel Super H3000+H4000+H6000」
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)
溶媒 :テトラヒドロフラン
温度 :40℃
流速 :0.5ml/分
注入量:10μL
濃度 :0.2重量%
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン換算
【0068】
[実施例・比較例]
原料として、「A-1」、「A-2」、「a-1」、「a-2」、「B-1」、「C-1」のそれぞれを用い、表1の組成となるように配合した。さらにメチルエチルケトン(MEK)の混合溶媒で固形分濃度が30重量%となるように希釈し、硬化性組成物を得た。
【0069】
得られた硬化性組成物を、バーコーターにて乾燥後の膜厚が12μmとなるようにTAC(富士フィルム社製、製品名:TG40UL、40μm)に塗工し、80℃にて1分間乾燥させた。乾燥後、紫外線(UV)照射(条件:500mJ/cm2、450mW/cm2)によって硬化させ、ハードコート層を形成して積層体(ハードコートフィルム)を得た。この積層体について、前記の方法により、全光線透過率、ヘイズ、透湿度、鉛筆硬度、耐擦傷性の評価を行った。
また、バーコーターにて乾燥後の膜厚が3μmとなるようにTAC(富士フィルム社製、製品名:TG40UL、40μm)に塗工し、80℃にて1分間乾燥させた。乾燥後、紫外線(UV)照射(条件:500mJ/cm2、450mW/cm2)によって硬化させ、ハードコート層を形成して積層体(ハードコートフィルム)を得た。この積層体について、前記の方法により、全光線透過率、ヘイズ、透湿度の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
[評価結果]
表1より、本発明の構成を充足する実施例の硬化性組成物は、基材の上等に塗布し、フ
ィルム状に硬化させることで、ハードコートフィルムとした場合に、透明性が良好でヘイズも低く、水蒸気バリア性が良好であり、硬度、耐傷付き性に優れることが分かる。一方、単に多官能アクリレートを含んでいるのみの硬化性組成物である比較例1は、水蒸気バリア性が不合格となっている。また、単に不飽和二重結合及び多環構造を有するモノマーである成分aを用いた硬化性組成物である比較例2~4は、ヘイズも高く、耐傷付き性も
改善の余地があり、水蒸気バリア性も不十分であった。
【0072】
[本発明が効果を奏する理由]
本発明が効果を奏する理由は未だ明らかでないが、以下のとおり推察される。
つまり、本発明の硬化性組成物では、成分(A)が多環構造を有していることで、芳香環が効率よくスタッキングされるものと推察する。そのため、硬化性組成物が低極性であり、さらに芳香環のスタッキングが水分子の透過を阻害する結果となり、フィルム状に硬化させることで、ハードコートフィルムとした場合に、高温での水蒸気バリア性を向上できる。さらに、成分(A)が特定の重量平均分子量をもっていることで、水蒸気バリア性や耐傷付き性が向上している。そのため、本発明の効果を奏するものとなった。