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特許7052301多孔質電極基材及び、ガス拡散層、及びガス拡散電極とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】多孔質電極基材及び、ガス拡散層、及びガス拡散電極とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/96 20060101AFI20220405BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220405BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20220405BHJP
   D04H 1/4242 20120101ALI20220405BHJP
   D04H 1/58 20120101ALI20220405BHJP
【FI】
H01M4/96 H
H01M4/96 M
H01M8/10 101
H01M4/88 C
D04H1/4242
D04H1/58
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017215292
(22)【出願日】2017-11-08
(65)【公開番号】P2018085333
(43)【公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2016220309
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太田 究
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152851(WO,A1)
【文献】特開2012-204142(JP,A)
【文献】特開2007-273466(JP,A)
【文献】特開2010-102909(JP,A)
【文献】特開2016-143468(JP,A)
【文献】特開2010-070433(JP,A)
【文献】特開2008-034295(JP,A)
【文献】特開平01-130472(JP,A)
【文献】国際公開第2011/065327(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/96
H01M 8/10
H01M 4/88
D04H 1/4242
D04H 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子形燃料電池用ガス拡散層の製造方法であって、前記固体高分子形燃料電池用ガス拡散層が、多孔質電極基材の少なくとも一方の面にカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層を有するものであり、前記多孔質電極基材は炭素繊維が炭素により結着された炭素繊維シートからなり、前記シート表面の炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚みが5μm以内であり、前記多孔質電極基材の厚みが80~300μm、嵩密度が、0.18~0.42g/cm 、貫通抵抗が、3.0~7.0mΩ・cm 、厚み方向の透気度が、0.2~7.1L/(m ・Pa・s)であり、以下の工程[1]~[6]を含む、固体高分子形燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
工程[1]:多孔質電極基材をシート流れ方向に沿って直径40~150mmのロールに2~180°の角度で抱かせ、10~100N/mのシート張力にて走行せしめることで多孔質電極基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させる工程。
工程[2]:上記工程[1]で得られた多孔質電極基材上の炭素粉および炭素繊維結着部分の余剰バインダーを線径0.05mm~0.3mmの回転ブラシによって連続的に除せしめる工程。
工程[3]:上記工程[2]で得られた多孔質電極基材上の炭素粉を除去せしめる工程。
工程[4]:上記工程[3]で得られた多孔質電極基材上に導電剤と撥水剤と界面活性剤および水からなるコーティング液を塗布することでコーティング層を形成する工程。
工程[5]:上記工程[4]にて多孔質電極基材上に形成したコーティング層を50~150℃に加熱し、乾燥する工程。
工程[6]:上記工程[5]にてコーティング層を形成した多孔質電極基材を200~400℃に加熱して撥水剤を焼結し、ガス拡散層を得る工程。
【請求項2】
請求項1に記載の固体高分子形燃焼電池用ガス拡散層のコーティング層上に電極触媒層を設ける固体高分子形燃料電池用ガス拡散電極の製造方法
【請求項3】
前記工程[1]に代えて下記工程[1’]を含む、請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
工程[1’]:多孔質電極基材を、JIS‐Aゴム硬度A60~A100のゴムロールとハードクロムメッキの施された金属ロールとで1~10kNの荷重にてプレスすることで、多孔質電極基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させる工程。
【請求項4】
前記工程[1]の代わりに、多孔質電極基材を、JIS‐Aゴム硬度A60~A100のゴムロールとハードクロムメッキの施された金属ロールとで1~10kNの荷重にてプレスすることで、多孔質電極基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させる工程を含む、請求項2に記載の固体高分子形ガス拡散電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質電極基材及び、ガス拡散層、及びガス拡散電極とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池のガス拡散層や、レドックスフロー電池の電極には、炭素繊維紙、炭素繊維クロス、炭素繊維フェルト等の炭素繊維を用いた基材が一般的に用いられる。これらの基材は炭素繊維によって高い導電性を示すだけでなく、多孔質材料であるため、燃料ガスおよび生成水、電解液などの液体の透過性が高いためガス拡散層に好適な材料である。
【0003】
しかしながら、固体高分子形燃料電池のガス拡散層や、レドックスフロー電池の電極として用いられる基材は、電池を製造する際の電解質膜の接合工程やスタックの締結工程において生じる摩擦や圧縮などにより炭素繊維の毛羽立ちや脱落・折損が生じるおそれがある。これらの脱落・折損した炭素繊維や樹脂炭化物は電解質膜に比べ剛直であるため、電解質膜に突き刺さることがある。
【0004】
電解質膜に突き刺さることにより、アノード極とカソード極との間がショートするといった不具合、電解液及び/又はアノード極側の水素ガス及び/又はカソード極側の酸素ガスがクロスリークするといった不具合を生じ、燃料電池及びレドックスフロー電池の起電力や耐久性が著しく損なわれる傾向にあった。
【0005】
ところで電解質膜への炭素繊維の突き刺さりによるダメージを低減する方法として、例えば特許文献1には電解質膜や触媒層との接合工程やスタック締結工程においてガス拡散層に掛かる面圧を、あらかじめガス拡散層に付与し、生じる結着の弱い炭素繊維および炭化物の脱落や破損したものをあらかじめ取り除く方法が開示されている。また、特許文献2には、カーボンペーパーを、一対の弾性ロール間に圧入することにより、前記カーボンペーパーの表面の毛羽を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-190951号公報
【文献】特開2016-143468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法ではプレスにより後工程で生じる炭素粉を、予め除去することはできるが、プレス時に付与する圧力やプレス後の除去処理が不十分であるため、発生した炭素粉が十分に除去されておらず、燃料電池に用いた際に短絡電流が生じてしまうおそれがあった。
【0008】
特許文献2に記載の方法では、弾性ロールの変形量に対し、カーボンペーパーの厚み方向の変形量が追従できず、連続運転の際にはカーボンペーパーの破断が生じやすいという問題がある。
本発明は、前記のような問題点を克服し、燃料電池及びレドックスフロー電池に用いた際に短絡や反応ガス、電解液のクロスリークが生じにくい、多孔質電極基材表面における炭素繊維の結着部分における余剰バインダーが十分に除去された多孔質電極基材及び、ガス拡散層、及びガス拡散電極とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明の要旨は、以下の(1)~(7)に存する。
(1) 炭素繊維が炭素により結着された炭素繊維シートであって、シート表面の炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚みが5μm以内である多孔質電極基材。
(2) 上記(1)に記載の多孔質電極基材の厚みが80~300μm、嵩密度が、0.18~0.42g/cm、貫通抵抗が、3.0~7.0mΩ・cm、厚み方向の透気度が、0.2~7.1L/(m・Pa・s)であり、少なくとも一方の面にカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層を有する固体高分子形燃料電池用ガス拡散層。
(3) 上記(2)に記載の固体高分子形燃焼電池用ガス拡散層のコーティング層上に電極触媒層を有する固体高分子形ガス拡散電極。
(4) 上記(1)に記載の多孔質電極基材、上記(2)に記載の固体高分子形燃料電池用ガス拡散層、または上記(3)に記載の固体高分子形ガス拡散電極を用いた固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
(5) 以下の工程[1]~[6]を含む、上記(2)に記載の固体高分子形燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
工程[1]:多孔質電極基材をシート流れ方向に沿って直径40~150mmのロールに2~180°の角度で抱かせ、10~100N/mのシート張力にて走行せしめることで多孔質電極基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させる工程。
工程[2]:上記工程[1]で得られた多孔質電極基材上の炭素粉および炭素繊維結着部分の余剰バインダーを線径0.05mm~0.3mmの回転ブラシによって連続的に除去せしめる工程。
工程[3]:上記工程[2]で得られた多孔質電極基材上の炭素粉を除去せしめる工程。
工程[4]:上記工程[3]で得られた多孔質電極基材上に導電剤と撥水剤と界面活性剤および水からなるコーティング液を塗布することでコーティング層を形成する工程。
工程[5]:上記工程[4]にて多孔質電極基材上に形成したコーティング層を50~150℃に加熱し、乾燥する工程。
工程[6]:上記工程[5]にてコーティング層を形成した多孔質電極基材を200~400℃に加熱して撥水剤を焼結し、ガス拡散層を得る工程。
【0010】
(6) 前記工程[1]に代えて下記工程[1’]を含む、上記(5)に記載の固体高分子形燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
工程[1’]:多孔質電極基材を、JIS‐Aゴム硬度A60~A100のゴムロールとハードクロムメッキの施された金属ロールとで1~10kNの荷重にてプレスすることで、多孔質電極基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させる工程。
【0011】
(7) 前記(5)および(6)の工程[6]の後に、以下の工程[7]を含む、前記(3)に記載の固体高分子形ガス拡散電極の製造方法。
工程[7]:コーティング層を形成したガス拡散層に電極触媒層を形成させる工程。
【発明の効果】
【0012】
燃料電池やレドックスフロー電池に用いた際に短絡や反応ガスおよび電解液のクロスリークが生じにくい、基材表面における炭素繊維の結着部分における余剰バインダーが十分に除去された多孔質電極基材及び、ガス拡散層、及びガス拡散電極を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に示す。
本発明の多孔質電極基材、ガス拡散層、ガス拡散電極は、例えば以下の(1)~(6)の工程により製造することができる。
(1)炭素繊維が炭素等により結着された多孔質電極基材を製造する工程。
(2)前記多孔質電極基材をシート流れ方向に沿って直径40~150mmのロールに2~180°の角度で抱かせ、10~100N/mのシート張力にて走行せしめることでガス拡散層基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させる工程。
(3)多孔質電極基材を、JIS‐Aゴム硬度A60~A100のゴムロールとハードクロムメッキの施された金属ロールとで1~10kNの荷重にてプレスすることで、多孔質電極基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させる工程
(4)次いで、多孔質電極基材に付着した炭素粉を連続的に除去する工程。
(5)前記(4)で得られた多孔質電極基材にコーティング層を形成したガス拡散層を得る工程。
(6)前記(5)で得られたガス拡散層のコーティング層上に電極触媒層を形成しガス拡散電極を得る工程。
【0014】
<(1)炭素繊維が炭素等により結着された多孔質電極基材を製造する工程>
まず、第一の工程において、炭素繊維が炭素等により結着された多孔質電極基材を製造する。ここで、多孔質電極基材は、例えば炭素繊維を抄紙して炭素繊維紙を得る抄紙工程、該炭素繊維紙に樹脂を含浸させる樹脂含浸工程、該樹脂が含浸した炭素繊維紙を加熱し、該樹脂を炭化させる炭化工程を経ることによって製造される。製造される多孔質電極基材は、表面平滑性が高く、電気的接触が良好で、かつ機械的強度が高い複数本の炭素繊維が集合してなる抄紙体が好ましい。炭素繊維同士を決着させるバインダーとして導電性成分を選択することによって、上記の炭化工程を省き低コストに多孔質電極基材を製造することも可能である。
【0015】
炭素繊維としては、その原料によらず用いることができるが、ポリアクリロニトリル(以後PANと略す。)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維から選ばれる1つ以上の炭素繊維を含むことが好ましく、PAN系炭素繊維あるいはピッチ系炭素繊維を含むことがより好ましい。
【0016】
炭素繊維の平均直径は、3~30μm程度が好ましく、4~20μmがより好ましく、4~14μmがさらに好ましい。この範囲内であると多孔質電極基材としての表面平滑性と導電性がよい。
炭素繊維の平均長は、2~16mmが好ましく、3~9mmがさらに好ましい。この範囲内であると抄紙時の分散性と多孔質電極基材としての機械的強度が高くなる。
【0017】
炭素繊維を互いに結着させるための炭素材としては、樹脂を加熱によって炭素化して得られる炭素材を用いることができる。このために用いる樹脂としては、炭素化した段階で多孔質電極基材の炭素繊維を結着することのできる公知の樹脂から適宜選んで用いることができる。炭素化後に導電性物質として残存しやすいという観点から、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ピッチ等が好ましく、加熱による炭素化の際の炭化率の高いフェノール樹脂が特に好ましい。炭素化を経ない場合は、上記樹脂に加え撥水性を担保できるポリテトラフルオロエチレンに加え、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等を添加することで炭素化を経ずとも導電性の高い多孔質電極基材を得ることができる。
【0018】
炭素材の炭素化は、不活性ガス中において1500~2200℃で焼成することで行うことができる。
炭素化を行う前に、熱成型・酸化処理を行うことでより残炭率が高く、表面平滑性が高く、厚みばらつきの小さい多孔質電極基材を製造することができる。
【0019】
多孔質電極基材の厚みは、通常50~500μmが好ましく、50~300μmがより好ましい。この範囲内にあれば、ロール状に巻き取りやすい上に高いシート強度を保持できる。
第2の工程において、上述のごとく得られた多孔質電極基材をシート流れ方向に沿って直径40~150mmのロールに2~180°の角度で抱かせ、10~100N/mのシート張力にて走行せしめることで多孔質電極基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させる。
【0020】
<(2)前記多孔質電極基材をシート流れ方向に沿って直径40~150mmのロールに2~180°の角度で抱かせ、10~100N/mのシート張力にて走行せしめることで多孔質電極基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させる工程>
【0021】
多孔質電極基材は、通常、高分子電解質膜や触媒層と接着させる際や、電池に組み込む際に加圧される。この際に、多孔質電極基材表面に付着した炭素繊維片や炭素粉が高分子電解質膜へのダメージの原因となる。したがって、第2の工程を経ることで、加圧によって多孔質電極基材から脱落する炭素繊維や炭素粉を事前に取り除くことができ、高分子電解質膜へのダメージを低減することができる。
膜-電極接合体や固体高分子形燃料電池において、このような本発明に係る多孔質電極基材を配置することで、膜-電極接合体の組み立て時、固体高分子形燃料電池セルやレドックスフロー電池セルの作製時または発電時の加圧において、炭素繊維および炭素粉が高分子電解質膜へ与えるダメージを低減することができる。
【0022】
ここで「シート流れ方向」とは、多孔質電極基材を搬送する方向のことを指す。多孔質電極基材を抱かせるロールとしては直径40~150mmが好適である。直径40mm以上であれば多孔質電極基材に割れが生じることなく安定して搬送が可能であり、150mm以内であれば十分に多孔質電極基材に付着した炭素繊維や炭素粉を脱離させることが可能である。ロールの表面性状としては、多孔質電極基材の表面を傷つけない材質であれば良く、ゴム、各種金属、カーボン等が使用できる。ロールを汚染しにくいという観点から、ハードクロムメッキを施したロールを用いることが好ましい。多孔質電極基材を抱かせる角度としては、ロール中心に対し、2~180度とすることが好ましい。角度が小さいと抱かせることによる炭素繊維および炭素粉の脱離が困難となる。
【0023】
<(3)多孔質電極基材を、JIS‐Aゴム硬度A60~A100のゴムロールとハードクロムメッキの施された金属ロールとで1~10kNの荷重にてプレスすることで、多孔質電極基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させる工程>
工程2の代わりに工程3によって、多孔質電極基材を、プレスすることで多孔質電極基材中に含まれる結合の弱い炭素粉を脱離させることもできる。プレスには一対のロールを用いるが、一方にはゴムロールを用い、もう一方には金属ロールを用いる。ゴムロールの硬度としてはJISK6523にて規定されるゴム硬度A60~A100が好ましい。上記範囲のゴム硬度とすることで、立ち上がった炭素繊維を折損処理するだけでなく、多孔質電極基材中の炭素繊維結着部における弱い部分を破壊することができる。また、多孔質電極基材の変形に対して追従することが可能であるため、ワレ等が発生せず安定して処理することが可能である。またもう一方のロールにはハードクロムメッキの施された金属ロールを用いることで、多孔質電極基材よりも剛直であることから所定の荷重で均一にプレスすることが可能となる。プレスの際に与える荷重としては1~10kNの荷重が好ましい1kN以上であれば立ち上がった炭素繊維を折損するのに十分であり、かつ結着の弱い部分を破壊することができる。10kN未満であれば多孔質電極基材の主要部分を破壊することなく、均一に処理することが可能である。
【0024】
<(4)次いで、多孔質電極基材に付着した炭素粉を連続的に除去する工程>
工程4において上流工程にて発生した炭素繊維を含む炭素粉を除去する。除去には非接触方式、接触方式のいずれかまたは両方を適用できる。非接触方式では多孔質電極基材にダメージを与える損傷はないといった利点が挙げられるが、サイズの小さい炭素粉はエアーで巻き上げることが困難であるため、除去できない。サイズの小さい炭素粉に対しては接触方式のクリーニングが有効である。接触方式としては回転ブラシを適用できる。回転ブラシに用いるブラシの材質としては多孔質電極基材を損傷しないものであればよく、各種プラスチックたとえばナイロン、ポリプロピレン、帯電によるブラシおよび多孔質電極基材の汚染を防ぐため、導電性繊維を一部用いることが好ましい。
【0025】
ブラシの繊維径は多孔質電極基材の細孔内への侵入および炭素繊維結着部の余剰バインダーの除去を行う観点から、0.02mm~0.5mmが好ましく、0.05~0.3mmがさらに好ましい。繊維径を細くし過ぎるとブラシの腰がなくなり、掻き取る力がそがれてしまう。一方繊維径を太くし過ぎると、ブラシの腰が強いため、必要以上にガス拡散層表面を削り取ってしまうため好ましくない。また、細い繊維径のブラシを使用する場合は、ブラシ同士が絡みやすくなってしまうため、繊維にクリンプを入れることで繊維同士が絡まらず、ブラシ先端が独立した状態となるよう処理しておくことが好ましい。回転ブラシの回転数はライン速度に応じて変更することができる。好適な範囲は60~1200rpmであり、さらに好適な範囲は60~400rpmである。回転方向は多孔質電極基材の流れに対して、正方向、逆方向の両方に回転させることで、平面にランダムに配置した炭素繊維の破片を均一に除去することが可能となる。回転ブラシの押し込み量は、多孔質電極基材とブラシの先端が接触する位置を基準に、0.2~5.0mm押し込むことが好ましい。
【0026】
<(5)(4)で得られた多孔質電極基材にコーティング層を形成したガス拡散層を得る工程。>
工程5において、工程4までで得られた多孔質電極基材にコーティング層を形成し、ガス拡散層を得る。ここで言う「コーティング層」とは、多孔質電極基材の少なくとも一方の面に配されるものであって、導電剤と撥水剤からなる層のことを指す。コーティング層に用いる導電剤としてはカーボン粉等を用いることができる。カーボン粉は、たとえば、黒鉛粉やカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどを用いることができる。中でも製造コストの観点からカーボンブラックを用いることが好ましい。例えばファーネスブラック(例えばCABOT社製のバルカンXC72)、アセチレンブラック(例えば電気化学工業(株)製のデンカブラック)、ケッチェンブラック(例えばライオン(株)製のKetjen Black EC)などを用いることができる。カーボン粉を用いる割合としては、カーボン粉を溶媒に分散させた際の濃度が、5~30%となるように用いることが好ましい。撥水剤としてはフッ素樹脂やシリコーン樹脂などが挙げられ、これらを水などの溶媒に分散させて用いることが出来る。撥水性の高さから特に好ましくはフッ素樹脂である。フッ素樹脂としては例えばテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体などがあげられ、特にPTFEが好ましい。撥水剤を用いる割合としては、撥水剤を溶媒に分散させた際の濃度が、5~60%となるように用いることが好ましい。本発明においては撥水剤を繊維化させるため、乳化重合により製造されるPTFEが好ましく、中でもディスパージョンタイプの使用が好ましい。
【0027】
カーボン粉および撥水剤を分散させる溶媒としては、水や有機溶媒を用いることが出来る。有機溶媒の危険性、コスト及び環境負荷の観点から、水を使用することが好ましい。ただし、カーボン粉は疎水性が高くそのままでは水に分散しないため、界面活性剤等を用いることで、水に分散させることができる。有機溶媒を使用する際には、水と混合可能な溶媒である低級アルコールやアセトンなどの使用が好ましい。これら有機溶媒を用いる割合としては、水10に対して0.5~2の比率で用いることが好ましい。
【0028】
カーボン粉と撥水剤からなるコーティング層とは、カーボン粉がバインダーである撥水剤によって結合されたものである。言い換えれば、撥水剤によって形成されるネットワーク中にカーボン粉が取り込まれ、微細な網目構造を有する。コーティング層を形成させる際に、組成物の一部が多孔質電極基材へと染み込むため、コーティング層と多孔質電極基材との明確な境界線の定義は困難であるが、本発明においてはコーティング層組成物の多孔質電極基材へのしみこみが生じていない部分、すなわちカーボン粉と撥水剤のみから構成される層のみをコーティング層と定義する。形本発明のガス拡散層は、多孔質電極基材の面のいずれか一方の面上にカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層を有している。両面に当該コーティング層を有していてもよいが、プロセスが増加による生産性の低下および両面にコーティング層を有することでガス拡散性と排水性が低下する可能性があることから片面塗布が好ましい。コーティング層を形成させる表面はどちらでも良いが、強固なコーティング層を形成させるためにはある程度の表面粗さを有する面であることが好ましい。ただし、多孔質電極基材の一方の面にガス流路を形成したものなどはこの限りではなく、もう一方の平滑な面に形成することが好ましい。
【0029】
<(6)(5)で得られたガス拡散層のコーティング層上に電極触媒層を形成しガス拡散電極を得る工程>
ここで言う電極触媒層とは、触媒として白金担持カーボンおよびバインダーとしてイオン交換能を有する高分子からなる層であって、水素の酸化反応および酸素の還元反応が起こる反応場である。触媒としては白金を使用しない例えば、他の金属やカーボンアロイ触媒などを適用してもよい。また、バインダーとしてはフッ素系イオン交換樹脂だけでなく、炭化水素系のイオン交換樹脂を適用することも出来る。触媒層の厚みは2~30μmとすることで効率よく発電可能である。触媒層を形成する方法としては各種の塗工方法を適用することができる。例えばバーコート法、ブレード法、スクリーン印刷法、スプレー法、カーテンコーティング法およびロールコート法などがあげられる。これらの方法により、ガス拡散層のコーティング層上に均一な触媒層膜を形成することができる。形成した触媒層の塗工膜は一般的な方法で乾燥され触媒層を形成したガス拡散電極を製造することができる。
本発明の多孔質電極基材は、炭素繊維が炭素により結着された炭素繊維シートであって、シート表面の炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚みが5μm以内である多孔質電極基材である。バインダーの最大厚みが厚すぎると、燃料電池やレドックスフロー電池に用いた際に短絡や反応ガスおよび電解液のクロスリークが生じやすくなってしまう。
上記の多孔質電極基材は、その厚みが80~300μm、嵩密度が、0.18~0.42g/cm、貫通抵抗が、3.0~7.0mΩ・cm、厚み方向の透気度が、0.2~7.1L/(m・Pa・s)であることが性能面で好ましい。
上記の多孔質電極基材の少なくとも一方の面にカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層を形成すると、固体高分子形燃料電池用ガス拡散層として用いることができる。
また、上記の固体高分子形燃焼電池用ガス拡散層のコーティング層上に電極触媒層を設けると、固体高分子形燃料電池用ガス拡散電極として用いることができる。
【実施例
【0030】
以下、実施例において本発明をより具体的に説明する。
<嵩密度の算出>
製造した多孔質電極基材から、3×3cm角の試験片を20点、ランダムに取り出し、それぞれの厚みをマイクロメーター(ミツトヨ社製)により各サンプルに対して5点ずつ測定して平均厚みを算出し、重量を電子天秤により秤量した。下式に従って多孔質炭素電極の嵩密度を算出した。20点測定した嵩密度の平均値を其のサンプルの代表値として採用した。
【0031】
(嵩密度)=試験片重量(g)/試験片厚み(cm)/試験片面積(cm
<貫通抵抗の測定>
多孔質電極基材の厚み方向の電気抵抗(貫通抵抗)は、金メッキした銅板に多孔質電極基材を挟み、銅板の上下から1.0MPaで加圧し、10mA/cmの電流密度で電流を流したときの抵抗値を測定し、次式より求めた。なお多孔質電極基材の試料サイズは直径=25mmである。
【0032】
貫通抵抗(mΩ・cm)=測定抵抗値(mΩ)×試料面積(cm
<厚み方向透気度の測定>
JIS規格P-8117に準拠し、ガーレーデンソメーターを使用して200mLの空気が透過するのにかかった時間を測定し、10点の平均値より透気度(L/(m・Pa・s))を算出した。
<炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚みの測定方法>
多孔質電極基材表面の炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚みは、走査形電子顕微鏡(SEM)により決定される。任意に切り出した多孔質電極基材の断面における表面近傍を倍率1000倍にて観察し、炭素繊維同士が結着した点を50点抽出する。上記結着点において炭素繊維上に存在するバインダーの厚みをイメージプロプラス(日本ローパー社製)にて計測し、20点中の最大高さにより、バインダー厚みを決定した。
【0033】
(実施例1)
<多孔質電極基材の作製>
炭素繊維として、長さ3mmにカットした平均直径7μmのPAN系炭素繊維100質量部と、長さ3mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(商品名:VBP105-1、クラレ株式会社製)を20量部、ポリエチレンパルプ(三井化学株式会社製SWP 濾水度450ml、JIS P8121のパルプ濾水度試験法(1)カナダ標準型で測定)20質量部を水中で分散し、連続的に金網上に抄造した後、乾燥して炭素繊維紙を得た。
【0034】
この炭素繊維紙100質量部に、フェノール樹脂(商品名:フェノライトJ-325、DIC株式会社製)のメタノール溶液を含浸させ、加熱炉でメタノールを十分に乾燥させ、フェノール樹脂の不揮発分を100質量部付着させたフェノール樹脂含浸炭素繊維紙を得た。
【0035】
このフェノール樹脂含浸炭素繊維紙を、250℃の温度で8×10N/mの線力のロールプレスを行い、フェノール樹脂を硬化させた。その後、不活性ガス(窒素)雰囲気中、1900℃で連続的に炭素化して、厚みが190μm、嵩密度が、0.29g/cm、貫通抵抗が、4.0mΩ・cm、厚み方向の透気度が、3.4L/(m・Pa・s)である多孔質電極基材を得た。
【0036】
この多孔質電極基材を直径40mmのローラーに対し、5°の抱き角となるように直径200mmのガイドロールの位置を調整し、上記抱き角にて10m/分の速度で走行せしめ、巻き取った。多孔質電極基材の両面が処理されるよう、ローラーに抱かせる面を変更し、再度直径40mmのローラーを通過する処理を行い巻き取った。抱き角調整要に用いたロールの直径は200mmである。次いで多孔質電極基材を巻出し、両面から回転ブラシ(線径0.3mm、回転数200rpm、正逆転方向処理となるよう両面に2ロールずつ配置)による処理を実施後、多孔質電極基材を巻き取った。得られた多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚みを測定したところ、表1の通り良好な結果となった。
【0037】
<多孔質電極基材の撥水処理>
多孔質電極基材用の撥水処理液の作成には、PTFEディスパージョン(31-JR、三井デュポンフロロケミカル製)と界面活性剤(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)および蒸留水を用いた。撥水処理液における固形分濃度が、PTFEは1wt%、界面活性剤は2wt%となるように調整した後、蒸留水を添加して、ディスパーを用いて1000rpm、10分間撹拌することによって撥水処理液を作成した。
多孔質電極基材を上記の撥水処理液に浸漬することによって含浸させた。含浸後の多孔質電極基材を2対のニップロールを通過させることで余分な撥水処理液を取り除いたのち、乾燥炉にて乾燥処理することで撥水処理が施された多孔質電極基材を得た。
【0038】
<ガス拡散層の作製>
デンカブラック(電気化学工業株式会社製)、イオン交換水、界面活性剤をそれぞれ8:100:0.8の割合で混合し、ホモミクサーMARK-II(プライミクス株式会社製)を用いて、冷却しながら15000rpmで30分間撹拌を行って、コーティング液1を得た。
【0039】
コーティング液1に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョンをカーボンブラック1に対し、0.3の割合で添加しディスパーによって5000rpmで15分間の撹拌を行い、コーティング液2を得た。
【0040】
コーティング液2をスロットダイによって吐出し、シート搬送速度1m/minにて塗工し、すぐさま100℃に設定した熱風乾燥炉を用いて20分間乾燥させた。さらに、乾燥後焼結炉にて360℃10間焼結処理をおこなってコーティング層を形成したガス拡散層を得た。
【0041】
<ガス拡散電極の作製と発電試験>
触媒担持カーボン(触媒:Pt、触媒担持量:50質量%)及び撥水剤、アイオノマーからなる触媒インクをガス拡散層のコーティング層が形成された面上に塗布、乾燥することで触媒層を形成したガス拡散電極を得た。得られたガス拡散電極で高分子電解質膜ナフィオンNR211を挟み込みホットプレスを実施し、膜電極接合体を作製後、発電試験を実施したところいずれの試験条件でも良好な結果が得られた。結果を表1にまとめた。
【0042】
(実施例2)
抱き角を30度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚み、ガス拡散電極の発電試験の結果は表1の通り良好な結果が得られた。
【0043】
(実施例3)
抱き角を180度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚み、ガス拡散電極の発電試験の結果は表1の通り良好な結果が得られた。
【0044】
(実施例4)
抱かせるローラーの直径を150mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚み、ガス拡散電極の発電試験の結果は表1の通り良好な結果が得られた。
【0045】
(実施例5)
抱かせるローラーの直径を150mmに変更したこと以外は実施例2と同様にして多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚み、ガス拡散電極の発電試験の結果は表1の通り良好な結果が得られた。
【0046】
(実施例6)
抱かせるローラーの直径を150mmに変更したこと以外は実施例3と同様にして多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚み、ガス拡散電極の発電試験の結果は表1の通り良好な結果が得られた。
【0047】
(実施例7)
多孔質電極基材に炭素化を経ない基材を用いたこと以外は実施例1と同様にして多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚み、ガス拡散電極の発電試験の結果は表1の通り良好な結果が得られた。
【0048】
(実施例8)
炭素繊維紙の目付およびフェノール樹脂の目付を半分とし、厚みが95μm、嵩密度が、0.22g/cm、貫通抵抗が、3.8mΩ・cm、厚み方向の透気度が、3.4L/(m・Pa・s)である多孔質電極基材としたこと以外は実施例1と同様にして多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚み、ガス拡散電極の発電試験の結果は表1の通り良好な結果が得られた。
【0049】
(実施例9)
炭素繊維紙の目付およびフェノール樹脂の目付を1.5倍とし、多孔質電極基材の厚みを270μm、嵩密度を、0.36g/cm、貫通抵抗が、4.9mΩ・cm、厚み方向の透気度が、0.57L/(m・Pa・s)である多孔質電極基材としたこと以外は実施例1と同様にして多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚み、ガス拡散電極の発電試験の結果は表1の通り良好な結果が得られた。
【0050】
(実施例10)
ローラーに抱かせる処理の代わりに、硬度A60のゴムロールとハードクロムメッキされた金属ロールにて荷重2kNで処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚み、ガス拡散電極の発電試験の結果は表1の通り良好な結果が得られた。
【0051】
(実施例11)
ローラーに抱かせる処理の代わりに、硬度A90のゴムロールとハードクロムメッキされた金属ロールにて荷重2kNで処理を行ったこと以外は実施例2と同様にして多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚み、ガス拡散電極の発電試験の結果は表1の通り良好な結果が得られた。
【0052】
(比較例1)
ローラーに抱かせる処理およびクリーニング処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。得られた多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚みは大きく、それに伴い、発電試験における初期電圧の低下が確認された。
【0053】
(比較例2)
ローラーに抱かせる処理およびクリーニング処理を施さなかったこと以外は実施例8と同様にして多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。得られた多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚みは大きく、それに伴い、発電試験における初期電圧の低下が確認された。
【0054】
(比較例3)
ローラーに抱かせる処理およびクリーニング処理を施さなかったこと以外は実施例9と同様にして多孔質電極基材およびガス拡散層、ガス拡散電極を得た。得られた多孔質電極基材の表面における炭素繊維結着部分に付着したバインダーの最大厚みは大きく、それに伴い、発電試験における初期電圧の低下が確認された。
【0055】
【表1】