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特許7052355液晶表示素子、液晶光学素子及び液晶構造体安定化膜用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】液晶表示素子、液晶光学素子及び液晶構造体安定化膜用組成物
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20220405BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20220405BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
C08F20/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017558247
(86)(22)【出願日】2016-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2016088296
(87)【国際公開番号】W WO2017110977
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2015255053
(32)【優先日】2015-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】筒井 皇晶
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-504586(JP,A)
【文献】特表2008-515933(JP,A)
【文献】特開2014-063133(JP,A)
【文献】特開2014-206715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0011464(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/137
C08G 73/10
C08F 20/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステリック液晶をULH配向させるための膜を形成するための組成物であって、下記式(1)~(5):
【化61】

[式中、Z~Zはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、及びベンゼン環からなる群から選ばれる少なくとも1種を示し、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、及びt-ブチル基からなる群より選ばれる有機基を表す。]
で表されるいずれかの構造を主鎖中に有するポリイミド前駆体、又はポリイミドである少なくとも1種の重合体を含有する組成物。
【請求項2】
コレステリック液晶をULH配向させるための膜を形成するための組成物であって、下記式(6-1)、(6-2)、(7-1)、(8-1)、(8-2):
【化25】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素、又はメチル基である。)
で表されるいずれかの構造を主鎖中に有する、ポリイミド前駆体、又は感光性ポリイミドである少なくとも1種の重合体を含有する組成物。
【請求項3】
コレステリック液晶をULH配向させるための膜を形成するための組成物であって、下記一般式:
【化65】

(式中、破線は別の有機基への結合を示す。)
で表される構造(12)、又は(13)を側鎖の一部として有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリN置換マレイミド、ポリスチレン、ポリイタコナート、又はポリシロキサンである少なくとも1種の重合体を含有する組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物を製膜する工程、及び
得られた膜に偏光紫外線照射によって異方性を発現する工程、
を含む、コレステリック液晶をULH配向させるための膜の製造方法。
【請求項5】
前記偏光紫外線照射工程において、異方性が分解、異性化又は架橋によって発現する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記偏光紫外線照射工程において、異方性が偏光紫外線を膜面に対し垂直方向から照射することにより発現する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記偏光紫外線照射工程が、紫外線の照射波長が250nm~350nmの偏光紫外線を照射し、少なくとも照射エネルギーは5mJ以上照射し、更に照射後に100~300℃で5分以上加熱する工程を含む、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
[I] 下記式(1)~(5):
【化61】

[式中、Z ~Z はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、及びベンゼン環からなる群から選ばれる少なくとも1種を示し、R は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、及びt-ブチル基からなる群より選ばれる有機基を表す。]
で表されるいずれかの構造を主鎖中に有するポリイミド前駆体、又はポリイミドである、少なくとも1種の重合体を含有し、
コレステリック液晶をULH配向させる異方性を有する、
コレステリック液晶をULH配向させるための膜。
【請求項9】
下記式(6-1)、(6-2)、(7-1)、(8-1)、(8-2):
【化25】

(式中、R 、R 、R 、R はそれぞれ水素、又はメチル基である。)
で表されるいずれかの構造を主鎖中に有する、ポリイミド前駆体、又は感光性ポリイミドである、少なくとも1種の重合体を含有し、
コレステリック液晶をULH配向させる異方性を有する、
コレステリック液晶をULH配向させるための膜。
【請求項10】
下記一般式:
【化65】

(式中、破線は別の有機基への結合を示す。)
で表される構造(12)、又は(13)を側鎖の一部として有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリN置換マレイミド、ポリスチレン、ポリイタコナート、又はポリシロキサンである、少なくとも1種の重合体を含有し、
コレステリック液晶をULH配向させる異方性を有する、
コレステリック液晶をULH配向させるための膜。
【請求項11】
請求項8、9、又は10に記載の膜を有する、コレステリック液晶をULH配向させるための膜付き基板。
【請求項12】
それぞれのコレステリック液晶をULH配向させるための膜が対向するように配置された請求項11に記載のコレステリック液晶をULH配向させるための膜付き基板の間にコレステリック液晶を含む、液晶セル。
【請求項13】
前記コレステリック液晶が、下記一般式で表される液晶性化合物を含有して成るコレステリック液晶である請求項12に記載の液晶セル。
【化66】

(式中、X 、X はそれぞれ独立して単結合、エステル結合、エーテル結合から選ばれる連結基を表し、Lは6~20で表される整数であり、R は炭素数4~10のアルキル基である。)
【請求項14】
偏光板、及び請求項12又は13に記載の液晶セルを備えた液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応答速度が非常に早く、印加電圧に対し線形的に光学応答する液晶配向モードを応用した液晶表示素子、及びその製造のために必要な液晶セル、基板、液晶構造体を安定化するための膜、そのような膜を形成するための組成物等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在一般的に普及している液晶表示素子としては、TN(Twisted Nematic)モードやIPS(In Plane Switching)モード、VA(Vertical Alignment)モード等が挙げられるが、いずれの駆動方式においても液晶のOn/Offにかかる時間、すなわち応答速度が遅い課題や、見る角度によって見え方が変化する、すなわち視野角依存性などが課題として挙げられる。
【0003】
一方で、実用化には至っていないが、応答速度が非常に早く、視野角依存性が無い液晶駆動方式としてBlue PhaseやULH(Uniform Lying Helix)などが次世代の液晶駆動方式として注目されている。特にULHにおいては非常に早い応答速度に加え、駆動電圧が比較的低く、印加電圧に対し線形的な光学応答を示す特徴も有していることから様々な表示媒体への応用が期待されている。
【0004】
ULHは、コレステリック液晶を用いた液晶駆動方式の一種である。透明電極を具備した基板でコレステリック液晶を挟持し、物理的せん断応力や電気的な刺激などを与えることにより、基板平面に対して一様に螺旋を形成させることができる。この配向状態をULHと呼んでいるが、これに電界を与えることで螺旋の光学軸がIn Plane Switchingし、これにより線形的な光学応答を得ることができる。
【0005】
一方、ULH配向は均一な配向状態を得ることが非常に難しく、また電界下に置かれるとULHの配向状態が不可逆的に変化してしまうなどの技術的課題がある。その課題に対し、重合性液晶をコレステリック液晶に添加した液晶を用いて、ULH形成後のUV照射によりポリマーネットワークを形成させ、ULH配向の安定化を図る方法(特許文献1)、更に、断応力を掛けながら液晶注入ができる装置を使用してULHを形成する手法(非特許文献1)や、周期的な構造を有する配向層をフォトリソグラフィーによって形成し、ULHを配向させる手法(非特許文献2)などの取り組みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US 7,038,743 B2
【非特許文献】
【0007】
【文献】Liquid Crystals,24:3,329-334,1998
【文献】Mol.Cryst.Liq.Cryst.Vol.544:pp.37/[1025]-49/[1037],2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ULHの配向安定化や配向均一性の向上などにおいては種々取り組まれているが、実際液晶ディスプレイの作成工程においてせん断応力を加えながら液晶を注入し配向処理することは極めて困難であり、更に、重合性化合物による安定化においても均等なULH配向状態を得た状態で実施される必要があり、ULHの配向均一性の向上が技術的にも大きな課題となっている。そこで、本発明は、物理的な応力を掛けずに均等かつ良好なULHの配向が得られる液晶構造体安定化膜、及び、該液晶構造体安定化膜を具備するULH液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために鋭意研究を進めた結果、均等かつ良好なULH配向を得るためには、コレステリック液晶からなる螺旋状構造体に接し、それを安定に存在せしめる膜(以下、液晶構造体安定化膜とも称する)の存在が課題達成に有効であること、そして、液晶構造体安定化膜表面の凹凸が小さいこと及び液晶との相互作用が小さいことが必要であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、以下を包含する。
[1]
液晶構造体を安定化する膜を形成するための組成物(上記「液晶構造体安定化剤」と同義である)であって、
ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリN置換マレイミド、ポリスチレン、ポリイタコナート、及びポリオルガノシロキサンからなる群より選択され、偏光紫外線照射によって異方性を発現する少なくとも1種の重合体を含有する組成物。
[2]
前記少なくとも1種の重合体が、下記式(1)~(5):
【化1】

[式中、Z~Zはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、及びベンゼン環からなる群から選ばれる少なくとも1種を示し、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、及びt-ブチル基からなる群より選ばれる有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子、または下記式:
【化2】

(式中、Rは水素原子または炭素数1~18のアルキル鎖を表し、mは1~3の整数を表し、黒点は結合部位を表す。)に表される有機基を表し、黒点は別の有機基への結合を示す。]
で表されるいずれかの構造を主鎖中に有するポリイミド前駆体、又はポリイミドである、[1]に記載の組成物。
[3]
前記少なくとも1種の重合体が、下記式(6)~(10):
【化3】

(式中、X、Xはそれぞれ独立して炭素原子、又は窒素原子を表し、Y、Yはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子を表し、Xは酸素原子、又は硫黄原子を表し、Xは単結合、炭素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、フッ素原子、又は塩素原子を表し、pは1~4の整数を表し、qは1~3の整数を表し、破線は別の有機基への結合を示す。)
で表されるいずれかの構造を主鎖中に有する、ポリイミド前駆体、又はポリイミドである、[1]に記載の組成物。
[4]
前記少なくとも1種の重合体が、下記式(6)~(8)又は(11):
【化4】

(式中、X、Xはそれぞれ独立して炭素原子、又は窒素原子を表し、Y、Yはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子を表し、Xは酸素原子、又は硫黄原子を表し、Xは単結合、炭素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、フッ素原子、又は塩素原子を表し、Arは2、5-フラニレン、チオフェン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、フェニレン、1,4-または2,6-ナフチレン、2,5-もしくは2,6-ベンゾフラニレン、又は2,5-もしくは2,6-ベンゾチオフェニレンを表し、これらの芳香環に結合する水素原子の一部はメチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、フッ素原子、又は塩素原子に置き換わっても良く、pは1~4の整数を表し、黒点は水素原子または別の有機基への結合を示す。)
で表される構造を側鎖の一部として有する重合体である、[1]に記載の組成物。
[5]
前記少なくとも1種の重合体が、下記一般式:
【化5】

(式中、破線は別の有機基への結合を示す。)
で表される構造(12)、又は(13)と、前記一般式(6)~(11)の構造を側鎖の一部として有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリN置換マレイミド、ポリスチレン、ポリイタコナート、又はポリシロキサンである、[1]に記載の組成物。
[6]
コレステリック液晶をULH配向させるための膜を形成するための組成物である、[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物を製膜する工程、及び
得られた膜に偏光紫外線照射によって異方性を発現する工程、
を含む、液晶構造体を安定化するための膜(以下、「液晶構造体安定化膜」と称することがある)の製造方法。
[8]
前記偏光紫外線照射工程において、異方性が分解、異性化又は架橋によって発現する、[7]に記載の方法。
[9]
前記偏光紫外線照射工程において、異方性が偏光紫外線を膜面に対し垂直方向から照射することにより発現する、[7]又は[8]に記載の方法。
[10]
前記偏光紫外線照射工程が、紫外線の照射波長が250nm~400nmの偏光紫外線を照射し、少なくとも照射エネルギーは2mJ以上照射し、更に照射後80~300℃で5分以上加熱する工程を含む、[7]乃至[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]
ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリN置換マレイミド、ポリスチレン、ポリイタコナート、及びポリオルガノシロキサンからなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含有し、
コレステリック液晶をULH配向させる異方性を有する、
液晶構造体を安定化するための膜。
[12]
[11]に記載の膜を有する、液晶構造体安定化膜付き基板。
[13]
それぞれの液晶構造体安定化膜が対向するように配置された[12]に記載の液晶構造体安定化膜付き基板の間にコレステリック液晶を含む、液晶セル。
[14]
前記コレステリック液晶が、下記一般式で表される液晶性化合物を含有して成るコレステリック液晶である[13]に記載の液晶セル。
【化6】

(式中、X、Xはそれぞれ独立して単結合、エステル結合、エーテル結合から選ばれる連結基を表し、Lは6~20で表される整数であり、Rは炭素数4~10のアルキル基である。)
[15]
偏光板、及び[13]又は[14]に記載の液晶セルを備えた液晶表示素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、偏光紫外線照射によって異方性を発現する液晶構造体安定化膜を用いることにより、外部応力などを加えずとも良好なULH配向を得ることができる。
本発明により何故に上記の優れた特性を有する液晶表示素子が得られるメカニズムは、必ずしも明らかではないが、以下のような推測ができる。すなわち、従来技術で用いられている物理的せん断応力や電気的な刺激に代わり、コレステリック液晶からなる螺旋状構造体の方向性を決定し、それを安定に存在せしめる為には、液晶構造体安定化膜に一定の異方性を発生させる処理(以下、配向処理とも称する)の必要がある。この配向処理として、ネマティック液晶を用いた液晶表示素子の分野で一般的に行われているラビング法では、配向処理時に膜の削れや布由来の塵の付着などが発生したり、ローラーの振動や毛はねの影響等により膜の延伸のされ方が不均一になったりしやすい。ULH配向は非常にデリケートな配向状態であるため、下地の凹凸等が存在すると、きれいな配向が得られなくなることが考えられるが、光配向は非接触であるため、ラビング由来の削れや塵の付着が発生せず、また分子レベルで制御するため、非常に均一な配向状態を形成することができる。また、光による配向処理は一般的に、ラビングによる配向処理と比較して液晶の配向規制力(液晶との相互作用の強さとも言える)が小さい傾向にある。以上のことから、本発明の構成において、良好なULH液晶表示素子が得られるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】基板に形成した膜によるコレステリック液晶のULH配向性を評価するためのセルの模式図である。
図2】初期配向の評価の結果、ULH配向性が良好な場合を示す図である。
図3】初期配向の評価の結果、ULH配向性が不良の場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各構成要件について詳述する。
1.液晶構造体安定化膜
本発明の液晶表示素子は、偏光紫外線照射によって異方性を発現する液晶構造体安定化膜を具備する。
このような液晶構造体安定化膜は、感光性のポリマー材料を有機溶剤に溶解させた液晶構造体安定化剤を基板等に塗布して得られる膜に、紫外線などの放射線を照射することにより異方性を発現させた機能膜である。
本発明に使用される液晶構造体安定化膜において、偏光紫外線照射によって異方性を発現する機構としては、1)紫外線照射により一定方向のポリマーが分解し、異方性を発現するもの、2)偏光紫外線照射により一定方向のポリマー部位にて反応(異性化または二量化など)が生じ、異方性を発現するもの、3)角度をつけて紫外線を照射することにより、特定方向の側鎖にて反応(異性化または二量化など)が生じ異方性を生じるもの などが挙げられるが、その種類によらず良好なULH配向を得ることができる。
【0014】
2.液晶構造体安定化剤
本発明に係る偏光紫外線照射によって異方性を発現する液晶構造体安定化膜を形成するための組成物(液晶構造体安定化剤)は、紫外線等の放射線を照射することにより液晶配向性を得ることができる重合体を有機溶媒に溶解した形態で含有する。液晶構造体安定化剤には前記重合体が1~15質量%、より好ましくは2~10質量%、さらに好ましくは2~8質量%含有される。
これらの材料系としては、主にポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリN置換マレイミド、ポリスチレン、ポリイタコナート、ポリシロキサン等が挙げられるが、これらに限定しない。液晶ディスプレイへの応用においては使用環境が苛酷になってきており、表示素子の信頼性の観点においてはポリイミド前駆体やポリイミドなどの耐熱性樹脂が非常に好ましく、低温焼成による表示素子の製造の観点や、モノマー・ポリマーの合成のしやすさの観点においてはポリアクリレート系材料やポリメタクリレートなどが好ましい。
【0015】
2.1.重合体
2.1.1.重合体(I)ポリイミド前駆体、又はポリイミド
ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸およびポリアミック酸エステルが該当する。ポリアミック酸はジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得ることができ、ポリアミック酸エステルはテトラカルボン酸のジエステル体とジアミンとを縮合重合させることにより得ることができる。ポリイミドはこれらのポリイミド前駆体を加熱脱水反応、酸や塩基などの触媒を用いた脱水縮合を行うことにより得ることができる。
ポリイミド前駆体は、下記の式[A]で示される構造を有する。
【化7】

(式中、Rは4価の有機基を示す。Rは2価の有機基を示す。A及びAはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。A及びAはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を示す。nは正の整数を示す。)
【0016】
ポリイミド系重合体としては、下記式[B]で示されるテトラカルボン酸二無水物と下記式[C]で示されるジアミンとを原料とすることで、比較的簡便に得られるという理由から、下記式[D]で示される繰り返し単位の構造式から成るポリアミック酸又は該ポリアミック酸をイミド化させたポリイミドが好ましい。
【化8】

(式中、R及びRは、式[A]で定義したものと同意義である。)
【化9】

(式中、R及びRは、式[A]で定義したものと同意義である。)
【0017】
2.1.1.1.ジアミン
ジアミン成分としては、分子内に1級又は2級のアミノ基を2個有するジアミンであり、テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライドなどが挙げられ、テトラカルボン酸ジエステル体はテトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドが挙げられる。
本発明の液晶構造体安定化剤に含有されるポリイミド系重合体に用いられるジアミンは特に限定されず、得られるULH液晶表示素子の特性を損ねない範囲において、Rが下記の構造を持つジアミンを用いることが可能である。なお、式中の点は、アミノ基に直結する部分である。
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】
【0018】
本発明においてこれらのジアミン構造はラビング耐性向上において非常に重要な役割を担うため、積極的な導入が好ましく、特にY-82やY-94~Y-108が特に好ましい。
【0019】
2.1.1.2.テトラカルボン酸二無水物
テトラカルボン酸二無水物は下記一般式(TC)で表すことができる。
【化18】

Xは4価の有機基であり、その構造は特に限定されない。
本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物の種類は特に制限は無く、液晶構造体安定化膜にした際の電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上併用することができる。
【0020】
具体的なXの例を以下に示すが、これらの構造に限定はしない。
【化19】

【化20】

【化21】
【0021】
可溶性ポリイミドを調製する場合において、溶媒への溶解性が重要な物性となってくるため、溶解性の観点ではX-1~26に示すような脂環式のテトラカルボン酸無水物が好ましく、X-2、X-3、X-4、X-6、X-9、X-10、X-11、X-12、X-13、X-14、X-15、X-16、X-17、X-18、X-19、X-20、X-21、X-22、X-23、X-24、X-25、X-26が好ましい。一方で、配向性の観点ではX27~46のような芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、特にX-27、X-28、X-33、X-34、X-35、X-40、X-41、X-42、X-43、X-44、X-45、X-46が好ましい。
特に好ましくは、配向性と溶解性を程よく有するX-1、X-2、X-18~22、X-25、X-26である。
【0022】
2.1.1.3.好ましいポリイミド前駆体、又はポリイミド(1)
本発明で重要となる偏光紫外線照射によって異方性を発現する液晶構造体安定化膜を形成するための組成物(液晶構造体安定化剤)に含有されるポリイミド前駆体、又はポリイミドの種類の例としては、下記構造(1)~(5)を主鎖構造中に含有するものが挙げられる。
【化22】

(式中、Z~Zはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、及びベンゼン環からなる群から選ばれる少なくとも1種を示し、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、及びt-ブチル基からなる群より選ばれる有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子、または下記式に表される有機基を表す。黒点は別の有機基への結合を示す。)
【化23】

(式中、Rは水素原子または炭素数1~18のアルキル鎖を表し、mは1~3の整数を表す。黒点は結合部位を表す。)
【0023】
(1)、(4)の構造はポリイミド前駆体の構造を表しており、これらの構造を有した材料を高温で焼成することにより(5)の構造に誘導することができる。ポリイミド前駆体の一部は一部イミド化が進行したりするケースや、用途に応じて意図的にイミド化をさせ、溶媒溶解性のあるポリイミド(可溶性ポリイミドとも呼ばれる)に変換することがあり、その場合、(1)~(5)の構造が混在した形となる。
本発明においては(5)で表される構造が重要であり、ポリイミド前駆体を含有するワニスや可溶性ポリイミドを含有するワニス(総じて液晶構造体安定化剤)を基板に塗布し、加熱焼成することで(5)に誘導する。この時の焼成温度は200℃から250℃の間で行われることが多く、温度が低すぎるとイミド化に時間がかかり、温度が高すぎると分解反応も併発するため、好ましくは210℃~240℃である。
また、通常の合成手法で、上記で得られた式[D]の重合体に、式[A]で示されるA及びAの炭素数1~8のアルキル基、及び式[A]で示されるA及びAの炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を導入することもできる。
【0024】
使用される重合体[5]中のシクロブタン環が紫外線照射により分解することを利用し、重合体[5]を含む膜に偏光紫外線を照射し、膜表面に分解部と非分解部を作ることにより、リタデーションつまり一軸配向性を有した膜を形成することができる。
紫外線を照射した際、分解物が生じるが、この分解物は加熱処理や溶媒による洗浄などで除去することができ、これらの処理を行うことで更にポリマー鎖の再配向なども促すことができるため、液晶の配向品質を更に向上させることができる。加熱処理を行う場合、加熱温度は150℃から250℃の間で行うのが好ましいが、温度が低いと分解物の昇華や蒸発が十分に促進できず、高すぎるとポリマー鎖の分解も併発する可能性があるため、更に好ましくは200℃~230℃である。加熱時間は特に限定はしないが、短すぎると分解物が十分に除去できないため、好ましくは5~30分である。
【0025】
また、膜の洗浄を行う場合、分解物であるビスマレイミドが溶解する溶媒を用いるのが好ましい。ビスマレイミドが溶解する溶媒であれば特に限定しないが、有機溶媒単独ではポリマー自体も溶出してしまう可能性があり、それにより配向性を低下させてしまう場合もあるため、好ましくは水、又は水と有機溶媒との混合溶媒で接触処理せしめることが好ましい。
水と有機溶媒との混合溶媒としては、水と有機溶媒との質量比が、好ましくは20/80~80/20、より好ましくは40/60~60/40である。有機溶媒としては、2-プロパノール、メタノール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、乳酸エチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、又は3-エトキシプロピオン酸エチルが挙げられる。なかでも、2-プロパノール、メタノール、又はエタノールが好ましく、特に、2-プロパノールが好ましい。
上記接触処理の後に、使用した有機溶媒を除去する目的で、水、2-プロパノール、アセトンなどの低沸点溶媒によるすすぎ(リンス)や乾燥のいずれか、又は両方を行ってよい。
液晶構造体安定化膜の接触処理としては、浸漬処理、噴霧(スプレー)処理などの、膜と液とが十分に接触する処理が好ましい。接触処理としては、水、又は水と有機溶媒との混合溶媒からなる水性液に膜を、好ましくは10秒~1時間、より好ましくは1分~30分浸漬処理する方法が好ましい。接触処理は常温でも加温してもよいが、好ましくは10~80℃、より好ましくは20~50℃で実施される。また、必要に応じて超音波などの接触を高める手段を施すことができる。
【0026】
2.1.1.4.好ましいポリイミド前駆体、又はポリイミド(2)
一般式[A]において、Rに以下の(6)~(10)に示す構造を有するポリイミド前駆体やポリイミドも本発明の液晶構造体安定化剤に含めることができる。
【化24】

(式中、X、Xはそれぞれ独立して炭素原子、又は窒素原子を表し、Y、Yはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子を表し、Xは酸素原子、又は硫黄原子を表し、Xは単結合、炭素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、フッ素原子、又は塩素原子を表し、pは1~4の整数を表し、qは1~3の整数を表し、破線は別の有機基への結合を示す。)
【0027】
一般式(6)~(10)に示す構造は、紫外線照射などにより異性化や2量化、分解等が生じるため、これを利用し、これらの構造を含むポリイミド膜に偏光紫外線を照射することにより構造変化した部分としていない部分でリタデーションおよび一軸配向性を付与することができる。特に好ましくは以下の構造を有するポリイミド前駆体またはポリイミドである。
【化25】

これらの構造を含むポリイミド前駆体またはポリイミドを用いた液晶構造体安定化においては、高温で焼成しイミド化させたものや、可溶性ポリイミドのような状態で成膜し、偏光紫外線を照射し更に加熱する方法や、ポリアミック酸膜の状態で偏光紫外線を照射し、その後焼成させイミド化させることで更にポリマー鎖の再配向を促すことによりリタデーションを高くすることができる。焼成温度は180℃~250℃の間が好ましく、イミド化反応の観点や再配向の観点から、より好ましい温度は200℃~230℃である。
必要に応じて純水や溶媒などで洗浄を行っても良い。
【0028】
2.1.2.重合体(II)特定の側鎖を有する重合体(1)
使用される重合体が、下記式(6)~(8)又は(11)で表される構造を側鎖の一部として有する重合体を本発明の液晶構造体安定化剤に含めることもできる。
【化26】

(式中、X、Xはそれぞれ独立して炭素原子、又は窒素原子を表し、Y、Yはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子を表し、Xは酸素原子、又は硫黄原子を表し、Xは単結合、炭素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、フッ素原子、又は塩素原子を表し、Arは2、5-フラニレン、チオフェン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、フェニレン、1,4-または2,6-ナフチレン、2,5-もしくは2,6-ベンゾフラニレン、又は2,5-もしくは2,6-ベンゾチオフェニレンを表し、これらの芳香環に結合する水素原子の一部はメチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、フッ素原子、又は塩素原子に置き換わっても良い。pは1~4の整数を表し、黒点は水素原子または別の有機基への結合を示す。)
【0029】
一般式(6)~(8)および(11)は、前記同様光照射により異性化反応や二量化反応などを起こすことが知られており、これらを側鎖として有するポリマーに偏光紫外線を照射することにより構造変化した部分としていない部分でリタデーションおよび一軸配向性を付与することができる。更に具体的な構造を以下に示すがこれに限定する意味ではない。
【化27】

これらの側鎖構造を有するポリマーであれば特にポリマー主鎖構造は限定しないが、好ましくはポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリN置換マレイミド、ポリスチレン、ポリイタコナート、ポリシロキサンなどが挙げられる。
これらの重合体を本発明の液晶構造体安定化剤に含めて使用する場合、成膜後焼成し紫外線を照射したものでも良好な特性が得られるが、ポリマーが液晶性を有する場合、液晶相転移温度近傍で加熱することで更に再配向を促すことができ、液晶配向性を向上させることができる。再配向処理の好ましい温度はポリマーの構造によって異なるため限定は出来ないが、DSC(示差走査熱量分析)やPOM(加熱機構付偏光顕微鏡観察)などであらかじめ液晶相転移温度を調べ、その近傍での温度域を使用するのが好ましい。
【0030】
2.1.3.重合体(III)特定の側鎖を有する重合体(2)
下記一般式にて表される構造を側鎖の一部として有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリN置換マレイミド、ポリスチレン、ポリイタコナート、ポリシロキサンを光配向として用いることもできる。
【化28】

(式中、破線は別の有機基への結合を示す。)
式(12)および(13)の構造は自ら水素結合により会合し液晶性を示すことが知られており、これらを側鎖として有する前記の重合体は液晶性を示すものが多く、特に前記で述べた式(6)~(11)は紫外線照射により異性化や架橋反応が起こるため、式(6)~(11)および式(12)(13)を含有するポリマーは光反応性を有する液晶性ポリマーとなる。この水素結合性の液晶性ポリマーに偏光紫外線を照射し、加熱することにより自己組織化が起こり、リタデーションを得ることができ、結果として液晶構造体安定化膜として使用できる。光反応性側鎖の具体例を下記式(8-4)乃至(8-11)、(10-1)及び(11-1)に、液晶性発現側鎖の具体例を下記式(12-1)乃至(12-3)、(13-1)及び(13-2)に示すが、これらに限定する意味ではない。
【化29】

【化30】

式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;Yは、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR(式中、Rは水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO、-CN、-CH=C(CN)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;iは1~12の整数を表し、lは0~12の整数を表し、mは1~3の整数を表し、nは0~2の整数(ただしn=0のときBは単結合である)を表す。
これらのポリマーを光配向膜として使用する場合、成膜後偏光紫外線を照射し、液晶相転移温度近傍で加熱することで更に再配向を促すことができ、液晶配向性を向上させることができる。再配向処理の好ましい温度はポリマーの構造によって異なるため限定は出来ないが、DSC(示差走査熱量分析)やPOM(加熱機構付偏光顕微鏡観察)などであらかじめ液晶相転移温度を調べ、その液晶温度域を使用するのが好ましい。
【0031】
2.1.4.重合体(IV)その他の重合体
本発明の液晶構造体安定化剤について、上記で述べた偏光紫外線照射によって異方性を発現する液晶構造体安定化膜を形成するための重合体成分のみでも良く、当該特性を損なわない範囲であれば、他の特性の観点で上記以外の重合体成分を混合して用いても良い。
上記以外の重合体として好ましい材料例としてはポリアミック酸、可溶性ポリイミド、ポリアミック酸エステルなどが挙げられる。
例えば、液晶構造体安定化剤中において、非感光性ポリアミック酸、ポリイミドを、偏光紫外線照射によって異方性を発現する重合体100質量部に対して、好ましくは10~1000質量部、より好ましくは10~800質量部含有させることができる。
【0032】
2.2.添加剤
本発明の液晶構造体安定化剤は、上記の重合体成分以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶構造体安定化剤を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、液晶構造体安定化膜と基板との密着性を向上させる化合物などである。
【0033】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)の具体例としては次のものが挙げられる。
例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1-ヘキサノール、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどの低表面張力を有する溶媒などが挙げられる。
これらの貧溶媒は1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上記のような溶媒を用いる場合は、液晶構造体安定化剤に含まれる溶媒全体の5~80質量%であることが好ましく、より好ましくは20~60質量%である。
【0034】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。
より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製))、メガファックF171、F173、R-30(大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶構造体安定化剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.01~1質量部である。
【0035】
液晶構造体安定化膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物などが挙げられる。
例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0036】
更に、基板と膜の密着性向上に加え、バックライトによる電気特性低下などをさらに防ぐ目的で以下のようなフェノプラスト系の添加剤や、ブロックイソシアネート、ヒドロキシエチルアミド系架橋剤などを導入しても良い。具体的な添加剤を以下に示すが、この構造に限定されない。
【0037】
本発明の液晶表示素子に用いられる液晶構造体安定化剤には、ラビング耐性を向上させることのできる架橋性添加剤が含有されていることが好ましい。
架橋性添加剤の例としては、フェノプラスト系添加剤、アミノプラスト系添加剤、エポキシ系添加剤、アクリル系添加剤、シランカップリング剤、ブロックイソシアネート系添加剤、オキサゾリン系化合物、β-ヒドロキシアルキルアミド(プリミド)系架橋剤などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0038】
フェノプラスト系添加剤の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】
【0039】
アミノプラスト系添加剤
ヒドロキシル基又はアルコキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物としては、例えば、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するアミノ樹脂、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウリル-ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド-ホルムアルデヒド樹脂、エチレン尿素-ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
この架橋性化合物は、例えば、アミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコキシメチル基又はその両方で置換されたメラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体又はグリコールウリルを用いることができる。このメラミン誘導体及びベンゾグアナミン誘導体は二量体又は三量体として存在することも可能である。これらはトリアジン環1個当たり、メチロール基又はアルコキシメチル基を平均3個以上6個以下有するものが好ましい。
このようなメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体の例としては、市販品のトリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均3.7個置換されているMX-750、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均5.8個置換されているMW-30(以上、三和ケミカル製)や、サイメル300、301、303、350、370、771、325、327、703、712などのメトキシメチル化メラミン、サイメル235、236、238、212、253、254などのメトキシメチル化ブトキシメチル化メラミン、サイメル506、508などのブトキシメチル化メラミン、サイメル1141のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化イソブトキシメチル化メラミン、サイメル1123のようなメトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1123-10のようなメトキシメチル化ブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1128のようなブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1125-80のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン(以上、三井サイアナミド製)が挙げられる。また、グリコールウリルの例として、サイメル1170のようなブトキシメチル化グリコールウリル、サイメル1172のようなメチロール化グリコールウリル等、パウダーリンク1174のようなメトキシメチロール化グリコールウリル等が挙げられる。
【0040】
エポキシ系添加剤
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物としては、例えばビスフェノールアセトングリシジルエーテル、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルアミノジフェニレン、テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、テトラグリシジル-1,3-ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ビスフェノールヘキサフルオロアセトジグリシジルエーテル、1,3-ビス(1-(2,3-エポキシプロポキシ)-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロメチル)ベンゼン、4,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)オクタフルオロビフェニル、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、2-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル)-2-(4-(1,1-ビス(4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル)エチル)フェニル)プロパン、1,3-ビス(4-(1-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル)-1-(4-(1-(4-(2,3-エポキシプロポキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチル)フェノキシ)-2-プロパノール等が挙げられる。エポキシ基を2つ以上含有する化合物としては、具体的には、以下のような化合物が例示される。
【化37】

【化38】
【0041】
オキセタン
オキセタン基を有する架橋性化合物としては、下記の式[4]で示すオキセタン基を少なくとも2個有する架橋性化合物である。
【化39】

具体的には、下記の式[4a]~式[4k]で示される架橋性化合物である。
【化40】

【化41】

【化42】
【0042】
ブロックイソシアネート系添加剤
ブロックイソシアネート基を2つ以上含有する化合物としては、下記式(5)で表されるブロックイソシアネート基を有する化合物が例示される。
【化43】

Zはそれぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基、水酸基又は下記式(6)で表される有機基であり、Zの少なくとも1つは、下記式(6)で表される有機基である。
【化44】

具体的には、以下のような化合物が例示される。
【化45】

上記式(7)以外のブロックイソシアネート基を2つ以上含有する化合物は、以下のような化合物が例示される。
【化46】

【化47】
【0043】
オキサゾリン系化合物
オキサゾリン化合物としては、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,2,4-トリス-(2-オキサゾリニル-2)-ベンゼン、4-フラン-2-イルメチレン-2-フェニル-4H-オキサゾール-5-オン、1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン、2,3-ビス(4-イソプロペニル-2-オキサゾリン-2-イル)ブタン、2,2’-ビス-4-ベンジル-2-オキサゾリン、2,6-ビス(イソプロピル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジン、2,2’-イソプロピリデンビス(4-tert-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス(4-tert-ブチル-2-オキサゾリン)、及び2,2’-メチレンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)が挙げられる。これらの他、エポクロス(商品名、株式会社日本触媒製)のようなオキサゾリルを有するポリマーやオリゴマーも挙げることができる。
【0044】
プリミド系架橋剤
プリミド系架橋剤とは、ヒドロキシアルキルアミド基を有する化合物である。(B)成分は、ヒドロキシアルキルアミド基を有していれば、その他の構造は特に限定されないが、入手性等の点から、好ましい例として、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化48】

は炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基を含むn価の有機基である。nは2~6の整数である。
【0045】
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~4のアルケニル基、又は置換基を有してもよい炭素数2~4のアルキニル基である。また、R及びRのうち少なくとも1つは、ヒドロキシ基で置換された炭化水素基を表す。
中でも、式(2)のX中の、カルボニル基に直接結合する原子は、芳香環を形成していない炭素原子であることが液晶配向性の観点から好ましい。また、式(2)のXは、液晶配向性及び溶解性の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~10であることがより好ましい。
式(2)中、nは、溶解性の観点から、2~4が好ましい。
【0046】
式(2)中、R及びRのうち少なくとも1つは、下記式(3)で表される構造であることが、反応性の観点から好ましく、下記式(4)で表される構造であることがさらに好ましい。
【化49】

式(3)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、又はヒドロキシ基で置換された炭化水素基である。
【化50】
【0047】
(B)成分の好ましい具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化51】

これらの架橋性添加剤は、1種類が添加されていても良いが、本発明の特性を損ねない程度において、複数種添加されていても良い。
好ましい添加量は0.1重量%~30重量%であり、好ましくは0.5重量%~10重量%である。
【0048】
重合性不飽和結合を有する架橋性化合物
重合性不飽和結合を有する架橋性化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を分子内に3個有する架橋性化合物、さらに、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を分子内に2個有する架橋性化合物、加えて、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の重合性不飽和基を分子内に1個有する架橋性化合物が挙げられる。
加えて、下記の式[5]で示される化合物を用いることもできる。
【化52】

(式[5]中、Aは、シクロヘキシル環、ビシクロヘキシル環、ベンゼン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、又はフェナントレン環から選ばれる基であり、Aは、下記の式[5a]、又は式[5b]から選ばれる基であり、nは1~4の整数である)。
【化53】

上記化合物は架橋性化合物の一例であり、これらに限定されるものではない。また、本発明の液晶配向処理剤に含有される架橋性化合物は、1種類であってもよく、2種類以上組み合わせてもよい。
【0049】
チイラン化合物
チイラン化合物としては、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、3,3,3-トリフルオロメチルプロピレンオキシド、スチレンオキシド、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、N-グリシジルフタルイミド、(ノナフルオロ-N-ブチル)エポキシド、パーフルオロエチルグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、N,N-ジグリシジルアニリン、及び3-[2-(パーフルオロヘキシル)エトキシ]-1,2-エポキシプロパン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、及び3-(N,N-ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、及び3-(N-アリル-N-グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランにおけるグリシジル基の酸素を、例えばJ.Org.Chem.,28,229(1963)に記載されている方法に従って硫黄に置換し、前記グリシジル基をエチレンスルフィド基に変換したもの、が挙げられる。
【0050】
アジリジン化合物
アジリジン化合物としては、2,4,6-トリス(1’-アジリジニル)-1,3,5-トリアジン、ω-アジリジニルプロピオン酸-2,2-ジヒドロキシメチル-ブタノールトリエステル、2,4,6-トリス(2-メチル-1-アジリジニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-エチル-1-アジリジニル)-1,3,5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、ビス(2-エチル-1-アジリジニル)ベンゼン-1,3-ジカルボン酸アミド、トリス(2-エチル-1-アジリジニル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸アミド、ビス(2-エチル-1-アジリジニル)セバシン酸アミド、1,6-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ヘキサン、2,4-ジエチレンウレイドトルエン、1,1’-カルボニル-ビス-エチレンイミン、ポリメチレン-ビス-エチレンユリア(C2~C4)、及びN,N’-ビス(4,6-ジエチレンイミノ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。これらの他、アジリジニルを有するオリゴマーやポリマーも挙げることができる。
【0051】
シクロカーボネート
【化54】

【化55】

【化56】

【化57】
【0052】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、液晶構造体安定化剤に含有される重合体成分の100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶配向性が悪くなる場合がある。
【0053】
本発明の液晶構造体安定化剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶構造体安定化膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、さらには、液晶構造体安定化膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物を添加してもよい。
【0054】
2.3.有機溶媒と液晶構造安定化剤の調製
本発明の液晶構造体安定化剤において、各重合体を溶解するのに使用される有機溶媒としては、本発明の液晶構造体安定化剤に用いる有機溶媒(溶剤)は、重合体成分を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0055】
液晶構造体安定化剤に含有される有機溶媒は、好ましくは90~99質量%、より好ましくは93~98質量%であるのが良好である。
【0056】
3.液晶構造体安定化膜の形成
本発明の液晶構造体安定化剤は、光配向法により液晶表示素子に用いられる液晶構造体安定化膜を形成するために好適に使用することができる。
本発明の液晶構造体安定化剤を用いて液晶構造体安定化膜を形成するには、基板上に、本発明の液晶構造体安定化剤を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射する工程を経る方法によることができる。
本発明の液晶構造体安定化剤を、TN型またはECB型の液晶セルを有する液晶表示素子に適用する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶構造体安定化剤を塗布して塗膜を形成する。
いずれの場合も、上記の基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートの如きプラスチックからなる透明基板等を用いることができる。上記透明導電膜としては、例えばIn-SnOからなるITO膜、SnOからなるNESA(登録商標)膜等を用いることができる。上記金属膜としては、例えばクロム等の金属からなる膜を使用することができる。透明導電膜および金属膜のパターニングには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後にフォト・エッチング法、スパッタ法等によりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法等によることができる。
基板上への液晶構造体安定化剤の塗布に際して基板または導電膜ないし電極と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板および電極上に、予め官能性シラン化合物、チタネート等を塗布しておいてもよい。
基板上への液晶構造体安定化剤の塗布は、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法、インクジェット印刷法等の適宜の塗布方法により行うことができ、次いで、塗布面を予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40~120℃において0.1~5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120~300℃、より好ましくは150~250℃において、好ましくは5~200分、より好ましくは10~100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001~1μmであり、より好ましくは0.005~0.5μmである。
【0057】
このようにして形成された塗膜に、直線偏光もしくは部分偏光された放射線または無偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する。ここで、放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、250~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。用いる放射線が直線偏光または部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。無偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等を使用することができる。前記の好ましい波長領域の紫外線は、前記光源を、例えばフィルター、回折格子等と併用する手段等により得ることができる。
放射線の照射量としては、好ましくは1J/m以上10,000J/m未満であり、より好ましくは10~3,000J/mである。なお、従来知られている液晶構造体安定化剤から形成された塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する場合、10,000J/m以上の放射線照射量が必要であった。しかし本発明の液晶構造体安定化剤を用いると、光配向法の際の放射線照射量が3,000J/m以下、さらに1,000J/m以下であっても良好な液晶配向能を付与することができ、液晶表示素子の生産性向上と製造コストの削減に資する。
【0058】
4.液晶表示素子の製造方法
本発明の液晶構造体安定化剤を用いて形成される液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0059】
4.1.液晶セル
先ず、上記のようにして液晶構造体安定化膜が形成された一対の基板を準備し、この一対の基板間に液晶が狭持された構成の液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶構造体安定化膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶構造体安定化膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶構造体安定化膜面上に液晶を滴下した後、液晶構造体安定化膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
いずれの方法による場合でも、次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
セルギャップを得る方法としては、特に限定しないが、スペーサービーズ(酸化アルミニウム球)等を液晶構造体安定化膜を設けた基板上に均等に散布した後張り合わせる方法や、散布せずにシール剤中にスペーサービーズを分散させて塗布・張り合わせすることによりセルギャップを設ける方法、あらかじめフォトレジスト等を用いて特定のセルギャップになるように構造物を設けた基板を用いる等が挙げられる。ULHの配向は異物等の影響を強く受けるため、画素内にスペーサービーズが無いような状態が好ましい。よって好ましくはスペーサービーズをシール剤に分散させてセルギャップを確保する方法、あらかじめフォトレジスト等を用いて特定のセルギャップになるように構造物を設けた基板を用いるのが好ましい。
前記シール剤としては、例えば硬化剤を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。
【0060】
4.2.コレステリック液晶
ULH配向モードに使用される液晶はコレステリック液晶であるが、より安定なULH配向を得るには強いフレキソエレクトリック効果の得られる液晶を用いる必要がある。フレキソエレクトリック効果が得られる液晶としては以下のようなバイメソゲンタイプの液晶が挙げられ、これらの構造を含有するコレステリック液晶を使用することでULH配向を得ることができるが、これら構造に限定されない。
【化58】

(式中、X、Xはそれぞれ独立して単結合、エステル結合、エーテル結合から選ばれる連結基を表し、Lは6~20で表される整数である。)
【0061】
また、これらの構造を有する液晶を用いて短いねじれ周期のコレステリック液晶性を得るために、強いヘリカルツイストパワーのカイラル剤を1~5重量%添加されたものを用いるのが好ましく、コレステリック液晶性が得られれば特に構造は限定しないが、特に好ましいカイラル剤は以下の化合物等が挙げられる。
【化59】

(式中、X、Xはそれぞれ独立して単結合、エステル結合、エーテル結合から選ばれる連結基を表し、Rは3~10のアルキル基を表す。)
【0062】
4.3.配向処理
上記コレステリック液晶を、上記液晶構造体安定化膜を設けた液晶セル中に注入し、加熱処理とともに電界を印加することによりULH配向へ転移させることができる。例えば、用いた液晶の等方相になる温度に昇温させ、完全に等方相に変わったのを確認し、電圧を液晶セルに印加しながらゆっくり室温に戻すことでULH配向に誘導することができる。
セルギャップや用いる液晶の種類によって条件が変わるため、好ましい温度降下速度や印加電圧の種類や強度は限定することができないが、等方相になる温度からの温度降下速度は好ましくは毎分1~30℃、好ましくは1~10℃であり、印加する電圧は1~10V/μm、好ましくは2~8/μm程度の電界強度の矩形波交流が好ましく、周波数は1~1KHz、より好ましくは10~300Hzが好ましい。
【0063】
4.4.偏光板
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。ここで、液晶構造体安定化膜が形成された2枚の基板における、照射した直線偏光放射線の偏光方向のなす角度およびそれぞれの基板と偏光板との角度を適当に調整することにより、所望の液晶表示素子を得ることができる。
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板等を挙げることができる。
【実施例
【0064】
以下に実施例を挙げて、さらに、本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0065】
5.液晶構造体安定化剤の調製と評価
5.1.略号
実施例及び比較例で使用する化合物の略号は以下の通りである。
<有機溶媒>
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
GBL:γ-ブチロラクトン
BCS:ブチルセロソルブ
IPA:2-プロパノール
<テトラカルボン酸二無水物>
TC-1:1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
<ジアミン>
DA-1:p-フェニレンジアミン
DA-2:2-(N-tert-ブトキシカルボニルアミノメチル)-1,4-フェニレンジアミン
DA-3:1,2-ビス(4-アミノフェニキシ)エタン
DA-4:N-(tertブトキシカルボニル)-N-(4-アミノベンジル)-4-フェネチルアミン
DA-5:4-アミノフェニル-4-アミノシンナメート
<添加剤>
添加剤A:Primid XL552(エムスケミー社製)、下記式(Additive-1)で表される化合物
添加剤B:FHB N-α―(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-N-τ-t-ブトキシカルボニル-L-ヒスチジン
M-1:4-((6-メタクリロイルオキシ)ヘキシル)オキシ安息香酸
M-2:4-((6-メタクリロイルロキシ)ヘキシル)オキシ桂皮酸
M-3:E-4‘-((6-(メタクリロイルロキシ)ヘキシル)オキシ)-[1,1’ビフェニル]-4-イル 3-(4-メトキシフェニル)アクリレート
【0066】
なお、以下の化学式において、Meはメチル基、Buはn-ブチル基、Bocはt-ブトキシ基を表す。
【化60】
【0067】
5.2.液晶構造体安定化剤の評価方法
各特性の測定方法は、以下のとおりである。
[粘度]
ポリアミック酸エステル及びポリアミック酸溶液の粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL(ミリリットル)、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
[分子量]
ポリアミック酸エステル及びポリアミック酸の分子量は、GPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)換算値として、数平均分子量(以下、Mnとも言う)と重量平均分子量(以下、Mwとも言う)を算出した。
GPC装置:Shodex社製(GPC-101)
カラム:Shodex社製(KD803、及びKD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム-水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
【0068】
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量(Mw) 約900,000、150,000、100,000、及び30,000)及びポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)が、約12,000、4,000、及び1,000)を用いた。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、及び1,000の4種類を混合したサンプル、並びに150,000、30,000、及び4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルを別々に実施した。
【0069】
[イミド化率の測定]
ポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53mL)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500)(日本電子データム社製)にて、500MHzのプロトンNMRを測定した。
イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5~10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い、以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0070】
5.3.液晶構造体安定化剤の調製
実施例1
合成例1 ポリマーの重合および液晶構造体安定化剤AL-1の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備え付けた100mlの4口フラスコに、DA-1(1.94g:18.00mmol)とDA-2(0.47g:2.00mmol)をそれぞれ測り取り、NMPを85.1g加え、窒素雰囲気下で撹拌し、完全に溶解したのを確認した後、溶液を10℃以下に冷却し、TC-1(9.18g:19.60mmol)をゆっくり加え、再び室温に戻し、24時間反応させ、12質量%のポリアミック酸溶液(以下PAA-1)を得た。これによって得られたPAA-1の重量平均分子量は38600であった。
PAA-1を撹拌子を備えた三角フラスコに80g測り取り、NMPを112g、BCS、48.0g、FHBを1.15g(PAA固形分に対し12質量%)、Additive-1を0.96g(PAA固形分に対し10質量%)加え、室温で6時間撹拌し、本発明の液晶構造体安定化剤(以下AL-1)を得た。
【0071】
実施例2
合成例2 ポリマーの重合および液晶構造体安定化剤AL-2の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備え付けた200mlの4口フラスコにDA-3(2.44g:10.00mmol)、DA-4(3.41g:10.00mmol)をそれぞれ測り取り、NMPを67.23g加え、窒素雰囲気下で撹拌し、完全に溶解させた。溶液を10℃以下に冷却し、TC-1(8.90g:19.00mmol)をゆっくり加え、室温に戻し、24時間撹拌し、反応させた。反応終了後、撹拌子を備えた200mlのナス型フラスコに、前記で得られたポリアミック酸溶液を60.0g測り取り、NMPを30.0g、無水酢酸(6・53g:64.00mmol)、ピリジン(0.84g:10.67mmol)をそれぞれ加え、室温で30分撹拌した後、55℃で3時間反応させた。反応終了後、反応溶液を10℃以下に冷やした200mlのメタノールに撹拌しながらゆっくり注ぎこみ、暫く撹拌させることにより固体を析出させた。ろ過により個体を回収し、更に回収した固体を300mlのメタノールを用いてそれぞれ2回撹拌洗浄し、60℃で真空乾燥させることによりポリイミドパウダー(以下SPI-1:9.0g イミド化率:68%、重量平均分子量:32000)を得た。
得られたポリイミドパウダーを撹拌子を備えた100mlの三角フラスコに2.00g秤量し、NMPを18.00g加え、室温で24時間撹拌し、完全に溶解したのを確認した後、FHB(0.24g:ポリイミド固形分に対し12質量%)、Additive-1(0.20g:ポリイミド固形分に対し10質量%)、NMP(3.33g)、BCS(10.00g)を加え、室温で24時間撹拌し、本発明の液晶構造体安定化剤(以下AL-2)を得た。
【0072】
実施例3
合成例3
窒素導入管とメカニカルスターラーを備え付けた200mlの4口フラスコにDA-5(1.14g:4.50mmol)を測り取り、NMP(5.60g)を加え、窒素雰囲気下室温で撹拌して完全に溶解させたのち、TC-2(0.83g:4.20mmol)とNMP(5.6g)を加え、室温で10時間反応させ、ポリアミック酸溶液(以下PAA-3)を得た。PA-3の重量平均分子量は35500であった。
このポリアミック酸溶液(10g)にNMP(10.0g)およびBCS(5.0g)を加え、室温にて5時間攪拌することにより、本発明の液晶構造体安定化剤(以下AL-3)を得た。
【0073】
実施例4
合成例4 ポリマーの重合および液晶構造体安定化剤AL-4の調製
三方コックと撹拌子を備えた100ml枝付ナスフラスコに、M-1(2.99g:9.00mmol)とM-2(1.83g:6.00mmol)をそれぞれ測り取り、THF(44.57g)を加え溶解し、ダイアフラムポンプで脱気および窒素置換を数回行なった後、AIBNを(0.12g:0.5mmol)を加え再び脱気および窒素置換を行った。この後50℃で30時間反応させ、メタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をジエチルエーテル(500ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末を得た。このポリマーの重量平均分子量は42000であった。
得られた粉末2.0gにNMP18.0gを加え、室温で3時間攪拌した。固形分濃度が10.0重量%、のメタクリレートポリマー溶液(以下PM-1)を得た。攪拌終了時点でポリマーは完全に溶解していた。このPM-1にNMP(3.33g)、BCS(10.00g)を加え、更に室温で6時間撹拌し、本発明の液晶構造体安定化剤(以下AL-4)を得た。
【0074】
実施例5
合成例5 ポリマーの重合および液晶構造体安定化剤AL-5の調製
三方コックと撹拌子を備えた100ml枝付ナスフラスコに、M-3(10.29g、20.0mmol)をNMP(94.1g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気および窒素置換を数回行なった後、AIBN(0.164g、1.0mmol)を加え、再び脱気および窒素置換を行った。この後、50℃で24時間反応させ、メタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(1000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥し、メタクリレートポリマー粉末(以下PM-2)を得た。このポリマーの重量平均分子量は39000であった。
得られたPM-2(1.0g)にCHCl(99.0g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させ、液晶構造体安定化剤(AL-5)を得た。
【0075】
以下の表に上記合成例にて調製したポリマーの組成および液晶構造体安定化剤の組成を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
6.液晶構造体安定化膜の調製と評価
<ULH評価用セルの作製>
30mm×40mmにITO(Indium Tin Oxide)が10mm×40mmのパターニングで成膜された基板を用い、そこに実施例1~5にて調製した液晶構造体安定化剤を用いて、膜厚が100nmとなるようにポリマー膜を形成し、各工程を経て配向処理を行った。詳しい成膜条件および配向処理条件を以下実施例にて示す。
【0079】
実施例6
AL-1を用いたポリマー膜の光配向処理
スピンコート法を用いてITOガラス基板上にAL-1をスピンコートし、ホットプレートを用いて80℃にて1分間乾燥し、更にIR-オーブンを用いて230℃にて30分加熱焼成し、ポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜に偏光板を介して254nmの紫外線を600mJ/cm照射した後に、IRオーブンを用いて230℃で30分間加熱し、液晶構造体安定化膜付き基板を得た。
【0080】
実施例7
AL-2を用いたポリマー膜の光配向処理
スピンコート法を用いてITOガラス基板上にAL-2をスピンコートし、ホットプレートを用いて80℃にて1分間乾燥し、更にIR-オーブンを用いて230℃にて15分加熱焼成し、ポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜に偏光板を介して254nmの紫外線を300mJ/cm照射した後に、IPAと純水の混合溶媒を用いて5分間超音波洗浄し、エアガンで乾燥させた後、IRオーブンを用いて230℃で15分間加熱し、液晶構造体安定化膜付き基板を得た。
【0081】
実施例8
AL-3を用いたポリマー膜の光配向処理
スピンコート法を用いてITOガラス基板上にAL-3をスピンコートし、ホットプレートを用いて80℃にて1分間乾燥し、更にIRオーブンを用いて200℃にて30分加熱焼成し、ポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜をホットプレートで240℃に加熱し、偏光板を介して313nmの紫外線を20mJ/cm照射し、液晶構造体安定化膜付基板を得た。
【0082】
実施例9
AL-4を用いたポリマー膜の光配向処理
スピンコート法を用いてITOガラス基板上にAL-3をスピンコートし、ホットプレートを用いて80℃にて1分間乾燥し、偏光板を介して313nmの紫外線を10mJ/cm照射した後、ホットプレートを用いて140℃にて15分加熱し、液晶構造体安定化膜付基板を得た。
【0083】
実施例10
AL-5を用いたポリマー膜の光配向処理
スピンコート法を用いてITOガラス基板上にAL-4をスピンコートし、ホットプレートを用いて80℃にて1分間乾燥し、偏光板を介して313nmの紫外線を300mJ/cm照射した後、ホットプレートを用いて180℃にて15分加熱し、液晶構造体安定化膜付基板を得た。
【0084】
比較例1
AL-1を用いたラビング配向処理
スピンコート法を用いてITOガラス基板上にAL-1をスピンコートし、ホットプレートを用いて80℃にて1分間乾燥し、更にIR-オーブンを用いて230℃にて30分加熱焼成し、ポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜の膜面をレーヨン布(吉川化工製YA-20R)でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:700rpm、移動速度:50mm/sec、押し込み長:0.2mm)にてラビングし、配向処理を行い、液晶構造体安定化膜付基板を得た。
【0085】
比較例2
AL-2を用いたラビング配向処理
実施例1のAL-1をAL-2に置き換えて同様の操作で配向膜付基板を得た。
【0086】
<液晶セルの作成およびULH配向観察>
実施例5~8にて作成した液晶構造体安定化膜付基板を各2枚用意し、一方の基板の液晶構造体安定化膜上に6.0μmまたは4.0μmのビーズスペーサーを混合したシール剤(協立化学製XN-1500T)をディスペンサーを用いて塗布し、次いで、もう一方の基板を、液晶構造体安定化膜面が向き合い、配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を熱硬化させて空セルを作製した。
前記の様にして得た空セルを80℃に加熱したホットプレート上に載せ、メルク社製のULHモード用液晶を用い、キャピラリー注入にて液晶を注入し、液晶の注入口を封止してULH評価用のセルを作成した。その模式図を図1に示す。
【0087】
<ULH初期配向の観察>
加熱冷却可能なステージがついた偏光顕微鏡(POM)を用いて配向性の評価を行った。加熱冷却ステージに、前記の様にして得られた液晶セルを取り付け、液晶が等方相になる温度まで上昇させ、完全に等方相になったことを確認した後、ファンクションジェネレーターで14Vp-p(セルギャップ4.0μmの場合)または20Vp-p(セルギャップ6.0μmの場合)の矩形波交流電圧を印加しながら3℃/分の速度にて50℃まで温度を低下させ、ULHへ転移させた。ULHの状態になったら電圧印加をやめ、室温に戻し、偏光板をクロスニコルの状態にして液晶セルを回転させ、明状態と暗状態の確認を行うことにより初期配向の評価を行った。結果を表3、図2及び図3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
実施例5および6と比較例1および2を比べた場合、光配向とラビングでULHの配向性が大きく異なる。このことから、ULHの配向性は光配向の方が良好であることが判る。また材料系が大きく異なる実施例7および8においても良好なULH配向が得られており、液晶構造体安定化膜であれば種類によらず良好なULHの配向が得られることが推測される。これはラビング処理では配向ムラや膜削れ、ダストの付着等が起こりやすくなるが、光配向ではそれが起こらないため、良好なULHの配向が得られたと考えられる。実施例の場合には、図2に示すように明状態と暗状態がはっきり観測出来、ULH配向が良好であることを確認した。一方、比較例の場合には、図3に示すように液晶セルを回転させても明状態と暗状態が観測できず、ULH配向性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
かくして製造された本発明の液晶表示素子は、表示特性、電気特性等の諸性能に優れるものである。
図1
図2
図3