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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤および粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20220405BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20220405BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220405BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J167/00
C09J7/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017566872
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2017045860
(87)【国際公開番号】W WO2018117205
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2016248836
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】川添 雄太
(72)【発明者】
【氏名】酒井 潤一郎
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/145414(WO,A1)
【文献】特開平11-100555(JP,A)
【文献】特開2015-138117(JP,A)
【文献】特開2016-048746(JP,A)
【文献】特開2009-256609(JP,A)
【文献】特開平05-320607(JP,A)
【文献】特開2008-231366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)、およびガラス転移温度が50℃以下であり、かつ数平均分子量が10,000~50,000のポリエステル系樹脂(B)を含有することを特徴とする粘着剤組成物(但し、エマルジョン型・水分散型の粘着剤組成物を除く)
【請求項2】
アクリル系樹脂(A)と、ガラス転移温度が50℃以下であり、かつ数平均分子量が10,000~50,000のポリエステル系樹脂(B)と、有機溶媒とを含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項3】
上記アクリル系樹脂(A)の上記ポリエステル系樹脂(B)に対する含有割合(A/B)が、重量比で99/1~70/30であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
さらに、架橋剤(C)を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の粘着剤組成物が硬化されていることを特徴とする粘着剤。
【請求項6】
請求項記載の粘着剤からなる粘着剤層を含有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項7】
粘着剤層(I)、基材、粘着剤層(II)の順に配置された層構成を有し、上記粘着剤層(I)および上記粘着剤層(II)の少なくとも一方が、請求項記載の粘着剤からなる粘着剤層であることを特徴とする粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系樹脂とポリエステル系樹脂とを含有する粘着剤組成物に関するものであり、さらに詳しくは、粘着性能に優れ、とりわけ塩化ビニル等の可塑剤等の内容物が経時で移行して粘着性能を低下させる被着体や基材に対しても粘着性能の低下もなく、また、高温・高湿条件下においても良好な粘着性能を有する粘着剤組成物、およびそれを用いた粘着剤、粘着テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より粘着剤組成物としては、アクリル系の粘着剤組成物が多く用いられている。
これらアクリル系粘着剤組成物は、被着体として、金属や可塑剤等が含有されていないものへの粘着には良好であるものの、例えば、可塑剤が多く含有されている塩化ビニル樹脂等、内容物が多く含有されているプラスチックシートに対しては、経時で可塑剤等の含有物が移行してしまうことがあり、その粘着性能は低下してしまうものであった。即ち、被着体や基材として、塩化ビニル樹脂を用いるものについては、経時で粘着性能が低下してしまい、さらに、高温・高湿条件下に晒される場合においては、より粘着性能を保持するのが困難となっている。
【0003】
このような問題に対して、被着体として、塩化ビニル樹脂を高温下に用いた場合であっても、良好な接着性を示す感圧性接着剤が提案されている。例えば、特許文献1には、特定の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、並びに、窒素原子およびビニル基を有するモノマー、をモノマー単位として有する粘着性ポリマーと、疎水性シリカ微粒子と、を含有する感圧性接着剤が、幅広い環境における様々な外力に対して良好な接着性を示すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2016-164229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、塩化ビニル樹脂の被着体に対しさらなる接着性の改善が望まれ、さらに高温・高湿下での接着力低下についても改善が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明ではこのような背景下において、可塑剤等の配合剤を含有するプラスチックシート、とりわけ塩化ビニル樹脂シートへの粘着性能に優れ、さらに耐湿熱性にも優れた粘着剤組成物、粘着剤および粘着テープを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂に、ガラス転移温度の低く、特定の数平均分子量の範囲のポリエステル系樹脂を含有させることにより、粘着性能に優れ、とりわけ可塑剤を含有する塩化ビニル樹脂への粘着性能に優れ、さらに耐湿熱性にも優れたものとなることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、アクリル系樹脂(A)、およびガラス転移温度が50℃以下であり、かつ数平均分子量が10,000~50,000のポリエステル系樹脂(B)を含有する粘着剤組成物を第1の要旨とする。
【0009】
さらに本発明においては、上記粘着剤組成物が硬化されている粘着剤を第2の要旨とし、また、上記粘着剤からなる粘着剤層を含有する粘着テープを第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、およびガラス転移温度が50℃以下であり、かつ数平均分子量が10,000~50,000のポリエステル系樹脂(B)を含有することから、得られる粘着剤は粘着性能に優れ、とりわけ塩化ビニル樹脂への粘着性能に優れ、さらに耐湿熱性にも優れるものである。
【0011】
また、上記アクリル系樹脂(A)の上記ポリエステル系樹脂(B)に対する含有割合(A/B)が、重量比で99/1~70/30であると、得られる粘着剤はより粘着性能に優れるようになる。
【0012】
上記粘着剤組成物が、さらに架橋剤(C)を含有するものであると、得られる粘着剤は耐剪断力に優れるようになる。
【0013】
そして、上記粘着剤組成物が硬化されている粘着剤であると、耐湿熱性に優れるようになる。
【0014】
また、上記粘着剤からなる粘着剤層を含有する粘着テープであると、粘着性能に優れ、とりわけ塩化ビニル樹脂への粘着性能に優れ、さらに耐湿熱性にも優れる粘着テープが得られる。
【0015】
さらに、粘着剤層(I)、基材、粘着剤層(II)の順に配置された層構成を有し、上記粘着剤層(I)および上記粘着剤層(II)の少なくとも一方が、上記粘着剤からなる粘着剤層である粘着テープであると、より柔軟な設計に対応できる粘着テープが得られるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートを、それぞれ意味するものである。
【0018】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、およびガラス転移温度が50℃以下であり、かつ数平均分子量が10,000~50,000のポリエステル系樹脂(B)を含有する。ここで、本発明の粘着剤組成物の構成成分について説明する。
【0019】
<アクリル系樹脂(A)>
上記アクリル系樹脂(A)は、通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を主成分として重合してなるものであり、必要に応じて官能基含有モノマー(a2)、その他の共重合性モノマー(a3)を共重合成分として共重合してなるものである。
ここで主成分とは、そのアクリル系樹脂(A)の特性に大きな影響を与える成分の意味であり、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。
【0020】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)としては、アルキル基の炭素数が、通常1~20であり、特に好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8、殊に好ましくは4~8である。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ステアリルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0021】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の中でも、共重合性、粘着性能、取り扱いやすさおよび原料入手のしやすさの点で、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の共重合成分中における含有量としては、少なくとも10重量%以上であり、好ましくは10~100重量%、特に好ましくは50~95重量%、さらに好ましくは70~95重量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の含有量が少なすぎると、粘着剤として使用した場合の粘着力が低下する傾向にある。
【0023】
官能基含有モノマー(a2)としては、上記(a1)成分以外の官能基を含有するモノマーであればよく、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられ、これらの中でも、効率的に架橋反応ができる点で水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。
【0024】
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有モノマー;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマー等を挙げることができる。
これらの中でも、架橋剤との反応性に優れる点で2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを使用することが特に好ましい。
【0025】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN-グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられ、なかでも(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0026】
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0028】
上記イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0029】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
これら官能基含有モノマー(a2)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0030】
官能基含有モノマー(a2)の共重合成分中における含有量としては、好ましくは0.01~30重量%、特に好ましくは0.05~10重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%、殊に好ましくは2~5重量%である。官能基含有モノマー(a2)の含有量が少なすぎると、凝集力が低下することにより、耐久性能が低下する傾向があり、多すぎると粘度が高くなったり、樹脂の安定性が低下したりする傾向がある。
【0031】
その他の共重合性モノマー(a3)としては、上記(a1)および(a2)成分以外の共重合性モノマーであればよく、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環構造含有(メタ)アクリレート系化合物;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、α―メチルスチレン等の1つの芳香環を含有するモノマー;ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはオキシアルキレン基を含有するモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、低極性被着体に対する粘着力が優れる点で脂環構造含有(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
【0033】
その他の共重合性モノマー(a3)の共重合成分中における含有量としては、好ましくは0~40重量%、特に好ましくは0~30重量%、さらに好ましくは0~25重量%である。その他の共重合性モノマー(a3)が多すぎると所望の粘着性能が得られにくい傾向がある。
【0034】
かくして、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)、好ましくは官能基含有モノマー(a2)、必要に応じてその他の共重合性モノマー(a3)を共重合成分として重合することによりアクリル系樹脂(A)を製造するのであるが、かかる重合にあたっては、溶液重合で製造することが、安全に、安定的に、任意のモノマー組成でアクリル系樹脂(A)を製造できる点で好ましい。
かかる溶液重合では、例えば、有機溶媒中に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)、官能基含有モノマー(a2)、その他の共重合性モノマー(a3)等のモノマー成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50~98℃で0.1~20時間重合すればよい。
【0035】
かかる重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が具体例として挙げられる。
【0036】
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量については、通常10万~500万であり、好ましくは30万~150万、特に好ましくは50万~90万である。重量平均分子量が小さすぎると、耐久性能が低下する傾向があり、大きすぎると製造が難しくなる傾向がある。
【0037】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特には15以下が好ましく、さらには10以下が好ましく、殊には7以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると粘着剤層の耐久性能が低下し、発泡等が発生しやすくなる傾向にある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常1.1である。
【0038】
さらに、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、-80~10℃であることが好ましく、特に好ましくは-70~-10℃、さらに好ましくは-65~-20℃である。ガラス転移温度が高すぎるとタックが不足する傾向があり、低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。
【0039】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法を用いることができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。またガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
【0040】
【数1】
【0041】
Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
なお、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものである。
【0042】
<ガラス転移温度が50℃以下であり、かつ数平均分子量が10,000~50,000のポリエステル系樹脂(B)>
本発明の粘着剤組成物は、上記のアクリル系樹脂(A)に加え、ガラス転移温度が50℃以下であり、かつ数平均分子量が10,000~50,000のポリエステル系樹脂(B)(以下、「ポリエステル系樹脂(B)」と略すことがある)を含有する。
【0043】
かかるポリエステル系樹脂(B)は、多価カルボン酸成分(B1)およびポリオール成分(B2)を含む重合成分をエステル化反応および重縮合することにより得られる飽和ポリエステル系樹脂である。
なお、本発明において、「カルボン酸」との用語は、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等を含むものである。
【0044】
〔多価カルボン酸成分(B1)〕
本発明で用いることができる多価カルボン酸成分(B1)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、ジフェン酸、4,4'-オキシジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸、等の芳香族ジカルボン酸;マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;等の2価カルボン酸が挙げられる。
これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0045】
これらの中でも、多価カルボン酸成分(B1)としては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物を用いることが好ましく、上記芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸であることが好ましく、上記脂肪族ジカルボン酸としては、セバシン酸、アゼライン酸であることが好ましい。
【0046】
その成分割合は、芳香族ジカルボン酸に対する脂肪族ジカルボン酸の比(脂肪族ジカルボン酸/芳香族ジカルボン酸)が、凝集力を付与する目的から重量比で0.5~20であることが好ましく、特に好ましくは1~10、さらに好ましくは1.25~5である。
【0047】
かかる芳香族ジカルボン酸の含有割合としては、多価カルボン酸成分(B1)全体に対して、50モル%以下であることが好ましく、特に好ましくは5~40モル%、さらに好ましくは10~30モル%である。かかる含有割合が多すぎるとガラス転移温度が高くなり、充分な粘着性能が得られなくなる傾向がある。
【0048】
なお、ポリエステル系樹脂(B)中に分岐点を増やす目的で、3価以上の多価カルボン酸を用いることもでき、かかる3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、アダマンタントリカルボン酸、トリメシン酸等が挙げられる。
【0049】
かかる3価以上の多価カルボン酸の含有割合としては、粘着剤の凝集力を高めることができる点で、多価カルボン酸成分(B1)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%である。かかる含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(B)の製造時にゲル化が生じやすい傾向がある。
【0050】
〔ポリオール成分(B2)〕
本発明で用いられるポリオール成分(B2)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;4,4'-チオジフェノール、4,4'-メチレンジフェノール、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-およびp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオールおよびそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール;等の2価アルコールが挙げられる。
これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0051】
これらの中でも、反応性に優れる点で、脂肪族ジオール、脂環族ジオール等のジオールが好ましく、特に、脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましく、脂環族ジオールとしては1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0052】
また、ポリエステル系樹脂(B)中に分岐点を増やす目的で3価以上の多価アルコールを用いることもでき、3価以上の多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等が挙げられる。
【0053】
かかる3価以上の多価アルコールの含有割合としては、ポリオール成分(B2)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%である。かかる含有割合が多すぎるとポリエステル系樹脂(B)の製造が困難となる傾向がある。
【0054】
多価カルボン酸成分(B1)とポリオール成分(B2)の配合割合としては、多価カルボン酸成分(B1)1当量あたり、ポリオール成分(B2)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~1.7当量である。ポリオール成分(B2)の割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
【0055】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(B)は、上記多価カルボン酸成分(B1)とポリオール成分(B2)を任意の割合で配合し、公知の方法によりエステル化反応および重縮合反応させることにより得られることが好ましい。エステル化反応や重縮合反応の際には必要に応じて触媒を用いることも好ましく、特に重縮合反応の際には触媒存在下で行うことが好ましい。かかる触媒を用いる場合、エステル化反応時に配合したり、重縮合反応時に配合したりすることができる。また、エステル化反応時に添加した触媒を引き続いて重縮合反応時の触媒として用いることとして新たな触媒の配合を行わなくてもよいし、前記触媒をさらに配合してもよい。
【0056】
エステル化反応の反応温度については、160~280℃が好ましく、特に好ましくは180~260℃、さらに好ましくは200~250℃である。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進みにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。また、反応時の圧力は通常、常圧(1気圧)下で実施される。
【0057】
上記エステル化反応が行われた後、減圧下で重縮合反応が行われる。重縮合反応の反応条件としては、触媒を用いることが好ましく、反応温度を好ましくは220~280℃、より好ましくは230~270℃にして、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進行しにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。
【0058】
上記の触媒としては、具体的には、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系、三酸化アンチモン等のアンチモン系、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系等の触媒や酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート等を挙げることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらの中でも、触媒活性の高さと色相のバランスから、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウムジブチル錫ジラウレートが好ましく、特にジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0059】
該触媒の配合量は、全重合成分に対して1~10,000ppmであることが好ましく、特に好ましくは10~5,000ppm、さらに好ましくは10~3,000ppmである。かかる配合量が少なすぎると、重縮合反応が充分に進行しにくい傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく副反応が起こりやすい傾向がある。
【0060】
また、本発明においては、ポリエステル系樹脂(B)として、側鎖に炭化水素基を含有しないものであることが、高温・高湿条件下で放置後の粘着力に優れる点で好ましい。
なお、側鎖に炭化水素基を含有しないポリエステル系樹脂(B)とするためには、多価カルボン酸成分(B1)として、側鎖に炭化水素基を含有しない多価カルボン酸成分を用い、かつポリオール成分(B2)として、側鎖に炭化水素基を含有しないポリオールを用いればよい。さらに、3官能以上のポリオール成分や多価カルボン酸成分を使用する場合には、これら成分も側鎖に炭化水素基を含有しないものを用いればよい。
【0061】
上記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度は50℃以下であり、-80~30℃であることが好ましく、特に好ましくは-70~15℃、さらに好ましくは-60~0℃である。かかるガラス転移温度が高すぎると柔軟性が失われ、初期粘着性が低下し、指圧程度の圧力で充分な粘着力が発揮できなくなる。また、アクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し、相分離が起こり粘着力が低下する可能性がある。なお、かかるガラス転移温度が低すぎると、機械的強度、耐熱性が低下する傾向がある。
【0062】
上記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計「DSC Q20」を用いて測定される値である。
【0063】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(B)の数平均分子量は、10,000~50,000であり、好ましくは15,000~40,000、特に好ましくは20,000~35,000である。
かかる数平均分子量が小さすぎると粘着剤として充分な凝集力が得られず、耐熱性や機械的強度が低下しやすい傾向があり、数平均分子量が大きすぎると、柔軟性が失われ、初期粘着性が低下し、指圧程度の圧力で充分な粘着力を発揮しにくい傾向がある。
【0064】
上記数平均分子量については、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限界分子量:2×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)の2本直列を用いることにより測定されるものである。また、モノマーの選択・組合せや、重合条件を適宜選択することにより上記所望のガラス転移温度および数平均分子量を得ることができる。
【0065】
ポリエステル系樹脂(B)は、結晶化しないことがより好ましいが、結晶化する場合においても、ポリエステル系樹脂(B)の結晶化エネルギーができるだけ低いことがより好ましく、通常35J/g以下、好ましくは20J/g以下であり、特に好ましくは15J/g以下である。
【0066】
また、本発明の粘着剤組成物において、アクリル系樹脂(A)の上記ポリエステル系樹脂(B)に対する含有割合(A/B)が、重量比で99/1~70/30であることがより粘着性能の点から好ましく、さらに、95/5~75/25であることがより好ましい。
【0067】
本発明の粘着剤組成物における、ポリエステル系樹脂(B)の含有割合としては、1~30重量%であることが好ましく、特に好ましくは3~25重量%、さらに好ましくは5~20重量%である。かかるポリエステル系樹脂(B)の含有割合が低すぎると、粘着力が低下する傾向があり、高すぎると、耐熱性が低下する傾向がみられる。
【0068】
前記アクリル系樹脂(A)および上記ポリエステル系樹脂(B)は、さらに架橋剤(C)により架橋され硬化することが好ましい。
【0069】
<架橋剤(C)>
かかる架橋剤(C)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属塩系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、非アミノ樹脂系アミノ系架橋剤、尿素系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤が挙げられ、これらの中でも好ましくは、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。
【0070】
かかる架橋剤(C)の使用量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01~5重量部である。かかる含有量が少なすぎると、凝集力が低下して剪断に対して弱くなる傾向があり、多すぎると架橋反応が過剰となり、粘着力が低下する傾向がある。
【0071】
また架橋剤(C)がイソシアネート系架橋剤である場合には、その使用量はアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.2~5重量部であり、架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤である場合には、その使用量はアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~1重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01~0.5重量部である。
【0072】
本発明の粘着剤組成物には、上記アクリル系樹脂(A)およびポリエステル系樹脂(B)のベース樹脂に加え、上記架橋剤(C)、および、タッキファイヤー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、顔料、安定化剤、充填剤等を含有するものであってもよい。
【0073】
かかるタッキファイヤーとしては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、クマロン系樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。ベース樹脂がアクリル系樹脂である場合には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、キシレン系樹脂が好ましく、ベース樹脂がゴム系樹脂の場合には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂が好ましい。
【0074】
このようにして得られる粘着剤組成物を硬化することにより、本発明の粘着剤が得られる。また、この粘着剤は、本発明の粘着テープの粘着剤層として用いることも有用である。
【0075】
<粘着テープ>
本発明の粘着テープは、上記粘着剤組成物を硬化することにより得られた粘着剤を、粘着剤層として含有するものである。
【0076】
上記粘着剤層の厚みとしては、5~200μmであることが好ましく、特に好ましくは10~150μm、さらに好ましくは15~130μmである。
かかる厚みが厚すぎるとテープ重量が増加する傾向があり、薄すぎると充分な粘着力が得られない傾向がある。
【0077】
上記粘着剤層のゲル分率は、90重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは1~90重量%である。
かかるゲル分率が好ましい範囲より高すぎると粘着力が低下する傾向があり、好ましい範囲より低すぎると凝集力が低下し、所望の粘着力が得られにくい傾向がある。
【0078】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成された粘着テープ(リリースライナーを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×48時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0079】
上記粘着剤層の粘着力としては、少なくとも片面が、例えば被着体として175℃で1時間の熱乾燥処理を施したSUS-BA板(光輝焼鈍処理ステンレス鋼板)の試験板を使用した場合は、3~200N/25mmであることが好ましく、特に好ましくは5~150N/25mm、さらに好ましくは8~120N/25mmである。また、例えば被着体として軟質塩化ビニル樹脂シート(タキロン社製、タキストロンQA-983)を使用した場合は、1~100N/25mmであることが好ましく、特に好ましくは2~75N/25mm、さらに好ましくは2.5~50N/25mmである。
なお、粘着力は被着体の組成(材質)や表面状態(表面粗さ)、処理(洗浄)条件等で変わるため、上記の粘着力範囲に限定されるものではない。
かかる粘着力を上記範囲より高くすると粘着剤層の厚みを厚くすることとなりテープ重量が重くなる傾向があり、低すぎると充分な粘着力が得られず固定している部材が脱落しやすくなる傾向がある。
【0080】
かかる粘着力の測定は、JIS Z0237に準じて測定する値である。具体的には、後記実施例に記載の方法で測定することができる。
なお、本試験片は両面粘着テープであることから、後記実施例と同様に、試験しない粘着面はJIS C 2318に規定される呼び厚さ25番のポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラー S10(東レ社製)」で覆って測定することができる。
【0081】
本発明の粘着テープにおいては、少なくとも1層の粘着剤層を有するものであるが、好ましくは、少なくとも2層の粘着剤層を有するものであり、また、粘着テープは基材を用いてもよいし、リリースライナー等を活用することにより基材を用いない基材レスの粘着テープであってもよい。より好ましくは、粘着剤層(I)、基材、粘着剤層(II)の順に配置された層構成を有する、基材付き両面粘着テープであり、上記粘着剤層(I)および上記粘着剤層(II)の少なくとも一方が、本発明の粘着剤からなる粘着剤層であることがより一層好ましい。
【0082】
また、両面粘着テープの粘着剤層は、ともに同一の粘着剤層であってもよいし、異なる種類、組成の粘着剤層であってもよいが、より好ましくは、両面の粘着力に差があり、異なる組成の粘着剤層である。これは、一方の面を強粘着とし他方の面を弱粘着として再剥離を容易とする設計、可塑剤の影響を受ける側の粘着剤層を厚くして粘着剤の低下を防ぐ設計等、柔軟な設計が可能だからである。
【0083】
本発明の粘着テープには、上記粘着剤層を、基材に設けることがハンドリング等の点から好ましい。基材としては、従来公知の基材であれば特に限定されることないが、例えば、レーヨン布、綿布、ポリエステル布、レーヨンとポリエステルの混紡糸からなる布、不織布、フラットヤーンクロス、フラットヤーンクロスにプラスチックフィルムがラミネートされた積層フィルム等が挙げられ、これらの中でも長手方向の引張強度が高い点から、フラットヤーンクロスを含有するものが好ましい。
【0084】
フラットヤーンクロスとは、フラットヤーンと呼ばれるポリエチレンやポリプロピレンのフィルムを、短冊状にカットし延伸することにより強度を持たせた平らな糸を織って織布としたもので、この織布の縦と横に交差するフラットヤーンの交差部を熱融着により固定して目ずれしないようにしたものが用いられる。
【0085】
フラットヤーンクロスの様に織り込まれたものでない繊維で強化された基材では、織り込まれたクロスと比べて引張強度が非常に低く、それを補うために二軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、接着剤を用いてラミネートすることにより引張強度は向上するが、幅方向へ引き裂き難くなる。また、縦糸と横糸を接着するために接着剤が必要で基材の重量が大きくなる傾向がある。
【0086】
本発明の粘着テープは、基材と粘着剤層との合計の単位面積当たりの重量が、300g/m2以下であることが好ましく、特に好ましくは250g/m2以下、さらに好ましくは225g/m2以下、殊に好ましくは200g/m2以下である。
なお、上記重量の下限としては通常50g/m2である。
【0087】
また、フラットヤーンクロスを含有する基材の中でも、フラットヤーンクロスとプラスチックフィルムがラミネートされた基材を使用することが、安定した粘着力、剥離性が得られる点で好ましい。
【0088】
これは、プラスチックフィルムの一方の面の粘着剤が基材を抜けて他方の面の粘着剤と混合することを防いだり、一方の面の粘着剤層の添加剤、例えば、架橋剤(C)、難燃剤、可塑剤等が、他方の面の粘着剤層に移行することを抑制したりするためと考えられる。また、フラットヤーンクロスとプラスチックフィルムをラミネートすることで、破断点がスムーズに伝播されるためか、手切れ性も向上し、破断面の直線性が向上する。
【0089】
フラットヤーンクロスとプラスチックフィルムがラミネートされた基材は軽量であることが好ましく、そのためプラスチックフィルムは薄膜であることが好ましく、具体的にはプラスチックフィルムの厚みが10~80μmであることが好ましい。
【0090】
プラスチックフィルムはフラットヤーンクロスの片面のみラミネートされてもよいし、両面にラミネートされてもよい。フラットヤーンクロスへのフィルムのラミネート方法については、接着剤を使わず、軽量化できる点で押出ラミネートが好ましい。
【0091】
フラットヤーンクロスを含有する基材の厚みとしては、好ましくは10~200μm、特に好ましくは50~170μm、さらに好ましくは60~140μmである。
かかる厚みが薄すぎると両面粘着テープの手切れ性は向上するものの、両面粘着テープ製造時にシワが混入する等の不良が増加する傾向があり、厚すぎると両面粘着テープ製造時の不良は低減するものの、切断により大きな力が必要となり手切れ性が低下する傾向がある。
【0092】
本発明の粘着テープの厚みとしては、15~320μmであることが好ましく、特に好ましくは30~300μm、さらに好ましくは40~280μmである。
かかる厚みが厚すぎると不必要に重量が増加してしまう傾向があり、薄すぎると充分な粘着性が得られなくなる傾向がある。
【0093】
また粘着テープの粘着剤層厚みの合計の、基材の厚みに対する比率(粘着剤層/基材)は、0.1~50が好ましく、特に好ましくは0.2~25、さらに好ましくは0.5~15である。
かかる比率が小さすぎると基材に対して粘着剤層が薄すぎるため、充分な粘着力を得ることができない傾向があり、大きすぎると基材に対して粘着剤層が厚すぎるため、粘着剤層に発泡が生じる等製造が困難になったり、コストが高くなったりする傾向がある。また、両面の粘着層を異なる厚みとすることで、粘着力に差を付けることができる。
【0094】
かかる粘着テープの製造方法については、公知一般の粘着テープの製造方法を用いればよく、例えば、基材の一方の面に粘着剤を塗布・乾燥し、形成された粘着剤層の表面にリリースライナーを重ねる方法、あるいはリリースライナーの一方の面に粘着剤を塗布・乾燥し、形成された粘着剤層の表面に手切れ性を有する基材を重ねる方法によって製造することができる。
【0095】
手切れ性を有する基材の上に粘着剤層を設けるにあたり、手切れ性を有する基材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理等の公知慣用の表面処理を適宜施してもよい。
【0096】
上記リリースライナーとしては、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、セロハン等のプラスチックからなるプラスチックフィルム;クラフト紙、和紙等の紙;天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート;ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム等を発泡させてなる発泡体シート;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体等が挙げられる。また、これらはその片面または両面にコロナ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0097】
また、上記リリースライナーとして、例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙にポリエチレン等のフィルムをラミネートした紙、ポリビニルアルコールやアクリル酸エステル共重合体等の樹脂を塗布した紙、ポリエステルやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム等に、剥離剤であるフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂等を塗布してなるものも挙げられる。
【0098】
これらの中でも、容易に手で引き裂けやすいという点で紙製のリリースライナーが好ましく、原紙の坪量が40~120g/m2(好ましくは50~80g/m2)である紙製リリースライナーが特に好ましい。さらに、かかるリリースライナーの厚みとしては、40~180μmであることが好ましく、特に好ましくは60~140μm、さらに好ましくは80~120μmである。かかる厚みが薄すぎると巻き取り時にシワが入る等、製造が困難になる傾向があり、厚すぎると手切れ性が低下する傾向がある。
【0099】
なお、両面粘着テープの粘着剤層上にリリースライナーを積層する場合においては、作業性の向上のために、両面に積層されるリリースライナーの剥離力が異なるようにそれぞれのリリースライナーを選択することが好ましい。例えば、両面粘着テープの、最初に貼着する面側のリリースライナーの剥離力は、次に貼着する面側のリリースライナーの剥離力より軽剥離であるリリースライナーを選択すると作業性が向上する。
【0100】
粘着剤を形成する組成物を種々のシート状基材に塗布する際に用いる塗布装置は、通常使用されている塗布装置を用いればよく、例えば、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング、ブレードコーター等が挙げられる。
【0101】
また、乾燥条件は、乾燥時に粘着剤中の溶剤や残留モノマーが乾燥し除去され、かつ、架橋剤(C)を使用する場合にはベース樹脂が有する官能基と架橋剤(C)とが反応し、架橋構造が形成され得る条件であればよい。乾燥条件として、例えば、60~120℃で、1~5分間程度が好ましい。乾燥後、シート状基材で粘着剤層を挟んだ状態で熟成し、さらに架橋反応を進行させることができる。
【0102】
本発明の粘着テープは、ロール状であってもよいし、枚葉状態であってもよいし、あるいはさらに種々の形状に加工されたものであってもよい。
そして、粘着テープが、両面粘着テープの場合、枚葉状態には、2つの粘着剤層の両方の表面にリリースライナーが設けられることが好ましく、ロール状態の場合には、2つの粘着剤層の一方の表面のみにリリースライナーが設けられることが好ましい。
【0103】
また、本発明の粘着テープは引張強度の大きいものが好ましく、床や壁に貼り付ける際、歪まない様に引っ張ったり、貼り直すために剥がしたり、使用後に、粘着テープを剥がそうと、引っ張った時に粘着テープが千切れない程度の強度が求められる。粘着テープの引張強度としては、20N/25mm以上であることが好ましく、特に好ましくは30N/25mm以上、さらに好ましくは50N/25mm以上である。なお、引張強度の上限としては、通常250N/25mmである。引張強度の大きい両面粘着テープとするには、基材フィルムの易カット性フィルム単体の引張強度が、目的とする粘着テープの引張強度と同等、もしくはそれ以上の引張強度をもつフィルムを用いることで達成することができる。
【0104】
本発明の粘着テープを用いる被着体としては、特に限定されるものではないが、例えば、カーペット、塩化ビニル樹脂シート(以下「塩化ビニルシート」と略すことがある)、床材、壁材等が挙げられる。なかでも、特に好適には、カーペット、塩化ビニルシート、または床材である。
【0105】
上記カーペットとしては、公知一般のカーペットが挙げられ、具体的には、ナイロン繊維やオレフィン繊維を用いたカーペットが挙げられる。
【0106】
上記塩化ビニルシートとしては、可塑剤(軟化剤)量が比較的少ない硬質塩化ビニルシートや、可塑剤(軟化剤)量が比較的多い軟質塩化ビニルシート等が挙げられる。
【0107】
上記床材としては、アルミニウム合金やチタン合金等の金属合金や、ガラス繊維で強化したエポキシ樹脂の複合材やガラス繊維で強化したフェノール樹脂の複合材等が挙げられる。
【0108】
また、テープを用いて貼り合わされる航空機部材の組み合わせとしては、床材とカーペットや、床材と塩化ビニルシート等の貼り合わせに好適に用いられる。
【0109】
上記床材とカーペットや、床材と塩化ビニルシートを貼り合わせ固定する用途に使用する際には、カーペットや塩化ビニルシートの交換時にカーペットや塩化ビニルシート側へ貼り付けた粘着剤面がカーペットや塩化ビニルシートから剥がれることなく、床側に貼り付けた粘着剤面が床から糊残りせずに剥がれることが好ましく、仮にカーペットや塩化ビニルシートの交換時にカーペットや塩化ビニルシート側へ貼り付けた粘着剤面がカーペットや塩化ビニルシートから剥がれ粘着テープが床面に残った場合でも、床側に貼り付けた粘着剤面が床から糊残りせずに剥がれ、また床面から粘着テープを剥がす際に、粘着テープが千切れることのない強度を有することが重要である。
【0110】
したがって、かかる用途に用いる場合の粘着テープは、カーペットや塩化ビニルシート側に貼る面の粘着剤の粘着力は非常に高く、かつ床側に貼り付ける面の粘着剤の粘着力は3~10N/25mm程度で適度に床面に貼り付き、カーペットや塩化ビニルシートを交換の際、糊残りせずに剥離できる両面粘着テープであることが好ましい。
【0111】
具体的には、粘着テープが、粘着剤層(I)、基材、粘着剤層(II)の順に配置された層構成(すなわち、粘着剤層(I)/基材/粘着剤層(II)の層構成)を有する両面粘着テープの場合、一方の粘着剤層(I)の粘着力をS、他方の粘着剤層(II)の粘着力をWとしたとき、粘着剤層(II)の粘着力Wが2~20N/25mmの弱い範囲でコントロールされ、粘着剤層(I)の粘着力Sの粘着剤層(II)の粘着力Wに対する比(S/W)が通常1.5以上、好ましくは2.5以上、特に好ましくは5.0以上である。
【0112】
粘着剤層(I)、基材、粘着剤層(II)の順に配置された層構成を有する両面粘着テープは、両面の粘着剤層に、異なる組成の粘着剤層とすることで粘着力に差をつけることが好ましい。両面の粘着力に差をつける方法としては、両面の粘着剤層の厚みに差を付けたり、両面の粘着層のゲル分率に差を付けたりする方法が挙げられる。ゲル分率に差を付けるには、具体的にはアクリル系樹脂(A)に構造や分子量の異なるものを用いたり、架橋剤(C)の種類や量が異なるものを用いたりすることができる。また、添加剤としてタッキファイヤーを添加したり、その種類や量を調整したりする方法等も挙げられる。
【0113】
粘着力を強くするには(粘着剤層(I)に相当)、粘着剤層の厚みを厚くすることが有効で、具体的には30~200μmが好ましく、特に好ましくは40~150μm、さらに好ましくは50~130μmである。また、架橋剤量を少なくしてゲル分率を低くすることも有効で、架橋剤(C)がイソシアネート系架橋剤である場合には、その使用量はアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.1~1重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.2~0.5重量部であり、架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤である場合には、その使用量はアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~0.1重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01~0.05重量部である。粘着力の強い粘着剤層(I)に使用する架橋剤(C)としてはエポキシ系架橋剤が、粘着剤層が柔軟でありながら、保持力を維持できる点で好ましく、柔軟な粘着剤層がカーペットの裏面の繊維に入り込みアンカー効果によって粘着力が向上する。粘着剤層のゲル分率に関しては、1~60重量%であることが好ましく、特に好ましくは2~50重量%、さらに好ましくは2.5~40重量%である。
【0114】
アクリル系樹脂(A)の分子量、構造、また添加するタッキファイヤーにより粘着力に影響を与えるが、ゲル分率や架橋剤量の影響より小さい。粘着力が強い粘着剤層(I)のアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量については、好ましくは30万~100万、特に好ましくは50万~80万である。また、これらの方法を組み合わせることが、他の物性とのバランスを崩すことなく粘着力を向上できる点で好ましい。
【0115】
逆に、粘着力を弱くするには(粘着剤層(II)に相当)、粘着剤層の厚みを薄くすることが有効で、具体的には5~50μmが好ましく、特に好ましくは10~45μm、さらに好ましくは15~40μmである。また、架橋剤量を多くしてゲル分率を高くすることも有効で、架橋剤(C)がイソシアネート系架橋剤である場合には、その使用量はアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、1~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは1.5~5重量部であり、架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤である場合には、その使用量はアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.1~1重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.2~0.5重量部である。粘着力の弱い粘着剤層(II)に使用する架橋剤(C)としてはイソシアネート系架橋剤が安定した剥離性が得られる点で好ましい。粘着剤層のゲル分率に関しては、50~90重量%であることが好ましく、特に好ましくは55~90重量%、さらに好ましくは60~85重量%である。
【0116】
粘着力の弱い粘着剤層(II)のアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量については、好ましくは50万~150万、特に好ましくは60万~100万であり、粘着力の強い粘着剤層(I)のアクリル系樹脂(A)に比べ、同等もしくは大きい重量平均分子量であることが好ましい。
【0117】
また、本発明においては、上記のような、片面の粘着力を高くし他面の粘着力を低くして再剥離性を持たせた両面粘着テープに適用することができるが、これに限らず、両面の粘着力をともに高くした両面粘着テープに適用することもできる。
【0118】
かくして本発明の粘着テープが得られるものであるが、本発明の粘着テープは、塩化ビニル等の可塑剤等の内容物が経時で粘着層側へ移行して粘着性能を低下させる被着体や基材に対しても粘着性能の低下もなく、また、高温・高湿条件下においても良好な粘着性能を有するものである。また、基材フィルムとして、手切れ性を有する基材を用いた場合には、テープの幅方向に対してテープカッター等を使用することなく任意の位置において手で容易に切断することができ、カーペットや塩化ビニルシートを床材に固定するための粘着テープとして特に有用なものである。
【実施例
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0120】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂およびポリエステル系樹脂を調製した。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度の測定、およびポリエステル系樹脂の数平均分子量、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
また、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0121】
[製造例1]
<アクリル系樹脂(A-1)の調製>
温度計、撹拌機および還流冷却機を備えた反応器内に、2-エチルヘキシルアクリレート32.6部、ブチルアクリレート54.4部、メチルアクリレート7部、アクリル酸6部、酢酸エチル70部および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.05部を仕込み、撹拌しながら昇温し、酢酸エチル還流温度にて5.5時間重合させた後、酢酸エチルで希釈してアクリル系樹脂(A-1)の45%溶液を得た。
得られたアクリル系樹脂(A-1)の重量平均分子量は64万、分散度5.2、粘度は10,000mPa・s/25℃、ガラス転移温度は-52℃であった。
【0122】
[製造例2]
<アクリル系樹脂(A-2)の調製>
温度計、撹拌機および還流冷却機を備えた反応器内に、2-エチルヘキシルアクリレート93.8部、酢酸ビニル3部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.2部、アクリル酸3部、酢酸エチル37部、アセトン14.6部および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.15部を仕込み、撹拌しながら昇温し、酢酸エチル還流温度にて7時間重合させた後、トルエンで希釈してアクリル系樹脂(A-2)の40%溶液を得た。
得られたアクリル系樹脂(A-2)の重量平均分子量は60万、分散度4.7、粘度は6,000mPa・s/25℃、ガラス転移温度は-65℃であった。
【0123】
[製造例3]
<ポリエステル系樹脂(B-1)の調製>
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(B1)としてイソフタル酸9.6部、セバシン酸23.3部、アゼライン酸21.7部、ポリオール成分(B2)としてエチレングリコール1.8部、シクロヘキサンジメタノール43.6部、触媒として二酸化ゲルマニウム0.04部仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温270℃まで上げ1.33hPaまで減圧し、4時間かけて重縮合反応を行い、ポリエステル系樹脂(B-1)を製造した。得られたポリエステル系樹脂(B-1)の数平均分子量は30,000、ガラス転移温度は-25℃であった。
上記で得られたポリエステル系樹脂(B-1)を酢酸エチルで希釈し、ポリエステル系樹脂(B-1)の45%酢酸エチル溶液を得た。
【0124】
[製造例4]
<ポリエステル系樹脂(B-2)の調製>
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(B1)としてイソフタル酸9.6部およびセバシン酸46.8部、ポリオール成分(B2)としてネオペンチルグリコール27.1部、1,4-ブタンジオール13部、1,6-ヘキサンジオール3部およびトリメチロールプロパン0.5部、触媒としてテトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒としてテトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行い、ポリエステル系樹脂(B-2)を製造した。得られたポリエステル系樹脂(B-2)の数平均分子量は25,000、ガラス転移温度は-50℃であった。
上記で得られたポリエステル系樹脂(B-2)を酢酸エチルで固形分濃度50%に希釈し、このポリエステル系樹脂(B-2)溶液100部(固形分)に対し、加水分解抑制剤(カルボジイミド基含有加水分解抑制剤(日清紡ケミカル社製、商品名「カルボジライトV-07」))2部を配合、撹拌、混合する事により、ポリエステル系樹脂(B-2)の50%酢酸エチル溶液を得た。
【0125】
[製造例5]
<ポリエステル系樹脂(B-3)の調製>
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(B1)としてテレフタル酸21部、イソフタル酸16.6部、およびアジピン酸23部、ポリオール成分(B2)としてエチレングリコール18.4部、ネオペンチルグリコール21部、触媒として二酸化ゲルマニウム0.02部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温270℃まで上げ1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行い、ポリエステル系樹脂(B-3)を製造した。得られたポリエステル系樹脂(B-3)の数平均分子量27,000、ガラス転移温度10℃であった。
上記で得られたポリエステル系樹脂(B-3)を酢酸エチルで希釈し、ポリエステル系樹脂(B-3)の50%酢酸エチル溶液を得た。
【0126】
[製造例6]
<ポリエステル系樹脂(B’-1)の調製>
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(B1)としてテレフタル酸276.2部、イソフタル酸59.2部、アジピン酸52.1部、ポリオール成分(B2)として1,4-ブタンジオール100.7部、1,6-ヘキサンジオール168.4部、シクロヘキサンジメタノール137部、触媒としてテトラブチルチタネート0.20部仕込み、内温240℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒としてテトラブチルチタネート0.20部仕込み、1hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂(α)を得た。
一方、温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(B1)としてテレフタル酸176.6部、イソフタル酸156.6部、ポリオール成分(B2)としてエチレングリコール97.1部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物361.3部、触媒としてテトラブチルチタネート0.2部仕込み、内温240℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒としてテトラブチルチタネート0.2部仕込み、1hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行い、さらに内温240℃まで下げ、イソフタル酸8.3部添加し、解重合を1時間行い、非晶性ポリエステル樹脂(β)を得た。
温度計、撹拌機、精留塔および窒素導入管の付いた反応缶に、上記で得た結晶性ポリエステル樹脂(α)180部、および非晶性ポリエステル樹脂(β)120部、トルエン560部、メチルエチルケトン140部を入れ、80℃で5時間かけて樹脂を溶解し、ポリエステル系樹脂(B’-1)の23%酢酸エチル溶液を得た。得られたポリエステル系樹脂(B’-1)のガラス転移温度は105℃であった。
【0127】
<ポリエステル系樹脂(B’-2)>
市販のガラス転移温度が40℃、数平均分子量が3,000のポリエステル系樹脂(B’-2)(日本合成化学工業社製、ニチゴーポリエスター TP-219)を入手した。
【0128】
<ポリエステル系樹脂(B’-3)>
市販のガラス転移温度が40℃、数平均分子量が7,000のポリエステル系樹脂(B’-3)(日本合成化学工業社製、ニチゴーポリエスター WR-961)を入手した。
【0129】
<ポリエステル系樹脂(B’-4)>
市販のガラス転移温度が-56℃、数平均分子量が3,000のポリエステル系樹脂(B’-4)(ADEKA社製、アデカサイザー PN-350)を入手した。
【0130】
〔実施例1〕
(基材付き両面粘着テープの作製)
製造例1で調製したアクリル系樹脂(A-1)の固形分90部、製造例3で調製したポリエステル系樹脂(B-1)の固形分10部(固形分合計100部)に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL-55E」)を1.5部および適量の酢酸エチル、メチルエチルケトンを添加して均一になるまで混合し、紙製リリースライナー(住化加工紙社製、商品名「SLB-50KWD」、原紙坪量53g/m2)の軽剥離面に塗工後の厚みが50μmになるようにアプリケーターを用いて塗工し、80℃で3分間乾燥し、粘着剤層(I)付き紙製リリースライナー(1-1)を製造した。
次に、製造例2で調製したアクリル系樹脂(A-2)の固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL-55E」)を2.0部および適量の酢酸エチルを添加して均一になるまで混合し、紙製リリースライナー(住化加工紙社製、商品名「SLB-50KWD」、原紙坪量53g/m2)の軽剥離面に塗工後の厚みが35μmになるようにアプリケーターを用いて塗工し、80℃で2分間乾燥し、粘着剤層(II)付き紙製リリースライナー(1-2)を製造した。
そして、上記粘着剤層(I)付き紙製リリースライナー(1-1)の粘着剤面を、フラットヤーンクロスを含む基材として、ポリエチレンフラットヤーンクロスの両面にポリエチレンフィルムをラミネートした基材(ダイヤテックス社製:重量47g/m2、厚み62μm)の片面(コロナ処理済)に貼り合わせた後、基材の反対の面(コロナ処理済)に粘着剤層(II)付き紙製リリースライナー(1-2)の粘着剤面を貼り合わせた。その後、40℃乾燥機中で3日間加熱エージング処理を行い、基材付き両面粘着テープを得た。
【0131】
(基材レス粘着テープの作製)
また、製造例1で調製したアクリル系樹脂(A-1)の固形分90部、製造例3で調製したポリエステル系樹脂(B-1)の固形分10部(固形分合計100部)に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL-55E」)を1.5部および適量の酢酸エチル、メチルエチルケトンを添加して均一になるまで混合し、紙製リリースライナー(住化加工紙社製、商品名「SLB-50KWD」、原紙坪量53g/m2)の軽剥離面に塗工後の厚みが50μmになるようにアプリケーターを用いて塗工し、80℃で3分間乾燥し、粘着剤層(I)付き紙製リリースライナー(1-1)を製造した。
さらに、上記粘着剤層(I)付き紙製リリースライナー(1-1)の粘着剤面を、フィルム製リリースライナー(三井化学東セロ社製、商品名「PET-03-BU」、中重剥離タイプのセパレーターSP-PET)のシリコーンコート面に貼り合わせた。その後、40℃乾燥機中で3日間加熱エージング処理を行い、転写(基材レス)粘着テープを得た。
【0132】
〔実施例2〕
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)に代えて、製造例4で調製したポリエステル系樹脂(B-2)に変更した以外は同様にして、基材付き両面粘着テープ、および、基材レス粘着テープを得た。
【0133】
〔実施例3〕
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)に代えて、製造例5で調製したポリエステル系樹脂(B-3)に変更した以外は同様にして、基材付き両面粘着テープ、および、基材レス粘着テープを得た。
【0134】
〔実施例4〕
実施例1において、アクリル系樹脂(A-1)の配合量を80部に変更し、ポリエステル系樹脂(B-1)の配合量を20部に変更した以外は同様にして、基材付き両面粘着テープ、および、基材レス粘着テープを得た。
【0135】
〔比較例1〕
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)に代えて、製造例6で調製したポリエステル系樹脂(B’-1)に変更した以外は同様にして、基材付き両面粘着テープ、および、基材レス粘着テープを得た。
【0136】
〔比較例2〕
実施例1において、アクリル系樹脂(A-1)の配合量を100部に変更し、ポリエステル系樹脂(B-1)を添加しなかった以外は同様にして、基材付き両面粘着テープ、および、基材レス粘着テープを得た。
【0137】
〔比較例3〕
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)の配合量を100部に変更し、アクリル系樹脂(A-1)を添加しなかった以外は同様にして、基材付き両面粘着テープ、および、基材レス粘着テープを得た。
【0138】
〔比較例4〕
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)に代えて、ポリエステル系樹脂(B’-2)に変更した以外は同様にして、基材付き両面粘着テープ、および、基材レス粘着テープを得た。
【0139】
〔比較例5〕
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)に代えて、ポリエステル系樹脂(B’-3)に変更した以外は同様にして、基材付き両面粘着テープ、および、基材レス粘着テープを得た。
【0140】
〔比較例6〕
実施例1において、ポリエステル系樹脂(B-1)に代えて、ポリエステル系樹脂(B’-4)に変更した以外は同様にして、基材付き両面粘着テープ、および、基材レス粘着テープを得た。
【0141】
このようにして得られた基材付き両面粘着テープまたは転写(基材レス)粘着テープについて、以下に記載する方法で対PVC(ポリ塩化ビニル)粘着力(I)、対PVC粘着力(II)、および、対SUS-BA板粘着力(III)、を測定し、評価した。
【0142】
<対PVC粘着力(I)>
上記基材付き両面粘着テープの粘着力を測定する粘着剤層(I)の裏面(粘着剤層(II))を、粘着剤層(II)に接したリリースライナーを剥して厚み25μmのポリエステルフィルム(東レ社製、「ルミラー S10」)で裏打ちを行い、幅25mm、長さ150mmにカットして試験片を作製した。次に幅25mm、長さ180mmにカットしたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、「ルミラー S10」、厚み38μm)のコロナ処理面を上記試験片の片端の粘着剤層に3cm程度重なるように貼り付け、重なり面をステープラーで固定した。
続いて、被着体として軟質塩化ビニルシート(タキロン社製、タキストロンQA-983)を使用し、23±2℃、50±5%RHに調整した恒温恒湿機内でこのシートの裏面(黒色面)に上記試験片のリリースライナーを剥した粘着剤層(I)を重さ2kgのローラーを圧着速さ10mm/sで二往復させて圧着・貼合させた。圧着・貼合後、23±2℃、50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で(1)5分間または(2)3日間放置し、試験片の遊び部分を90°折り返し、10mm剥がした後、引張試験機(島津製作所社製、AG-X+)の底部にシートを、上部のチャックに試験片の端をそれぞれ固定し、100mm/分の速度で90°方向に被着体から両面粘着テープを引き剥がし、粘着力を測定した。
また、上記と同様に圧着・貼合後、70±2℃、90±5%RHに調整した恒温恒湿機内に14日間(336時間)放置した試験片を取り出して23±2℃、50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で2時間以上放置し、上記と同様に被着体から両面粘着テープを引き剥がし、湿熱試験後の粘着力を測定した。
【0143】
(評価基準)
○・・・貼合5分後が9N/25mm以上かつ湿熱試験後が4N/25mm以上
×・・・貼合5分後が9N/25mm未満および湿熱試験後が4N/25mm未満の少なくとも一方
【0144】
<対PVC粘着力(II)>
上記転写(基材レス)粘着テープを幅25mm、長さ160mmにカットして試験片を作製した。
次に、被着体として軟質塩化ビニルシート(タキロン社製、タキストロンQA-983)を使用し、23±2℃、50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で幅25mm、長さ200mmにカットしたシートの裏面(黒色面)に上記試験片の紙製リリースライナーを剥して重さ2kgのローラーを圧着速さ10mm/sで二往復させて圧着・貼合させた。
続いて、上記試験片のフィルム製リリースライナーを剥し、上記と同様に幅25mm、長さ200mmにカットしたシートの裏面(黒色面)に重さ2kgのローラーを圧着速さ10mm/sで二往復させて圧着・貼合させた。
圧着・貼合後、23±2℃、50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で(1)5分間または(2)3日間放置し、シートの遊び部分(端部)を上下それぞれに90°折り返して180°方向に広げ、引張試験機(島津製作所社製、AG-X+)の下部のチャックに1枚のシートを、上部のチャックにもう1枚のシートの端をそれぞれ固定し、300mm/分の速度で2枚のシートを引き剥がし、粘着力を測定した。
また、上記と同様に圧着・貼合後、70±2℃、90±5%RHに調整した恒温恒湿機内に14日間(336時間)放置した試験片を取り出して23±2℃、50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で2時間以上放置し、上記と同様に2枚のシートを引き剥がし、湿熱試験後の粘着力を測定した。
【0145】
(評価基準)
○・・・貼合5分後が5N/25mm以上かつ湿熱試験後が2.5N/25mm以上
×・・・貼合5分後が5N/25mm未満および湿熱試験後が2.5N/25mm未満の少なくとも一方
【0146】
<対SUS-BA板粘着力(III)>
上記両面粘着テープの粘着力を測定する粘着剤層(I)の裏面(粘着剤層(II))を、粘着剤層(II)に接したリリースライナーを剥して厚み25μmのポリエステルフィルム(東レ社製、「ルミラー S10」)で裏打ちを行い、幅25mm、長さ150mmにカットして試験片を作製した。次に幅25mm、長さ180mmにカットしたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、「ルミラー S10」、厚み38μm)のコロナ処理面を上記試験片の片端の粘着剤層に3cm程度重なるように貼り付け、重なり面をステープラーで固定した。
続いて、被着体として175℃で1時間の熱乾燥処理を施したSUS-BA板(光輝焼鈍処理ステンレス鋼板)の試験板を使用し、23±2℃、50±5%RHに調整した恒温恒湿機内でこの試験板に上記試験片のリリースライナーを剥した粘着剤層(I)を重さ2kgのローラーを圧着速さ10mm/sで二往復させて圧着・貼合させた。圧着・貼合後、23±2℃、50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で(1)5分間または(2)3日間放置し、試験片の遊び部分を90°折り返し、10mm剥がした後、引張試験機(島津製作所社製、AG-X+)の底部に試験板を、上部のチャックに試験片の端をそれぞれ固定し、100mm/分の速度で90°方向に被着体から両面粘着テープを引き剥がし、粘着力を測定した。
また、上記と同様に圧着・貼合後、70±2℃、90±5%に調整した恒温恒湿機内に14日間(336時間)放置した試験片を取り出して23±2℃、50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で2時間以上放置し、上記と同様に被着体から両面粘着テープを引き剥がし、湿熱試験後の粘着力を測定した。
【0147】
(評価基準)
○・・・貼合5分後が9N/25mm以上かつ湿熱試験後が40N/25mm以上
×・・・貼合5分後が9N/25mm未満および湿熱試験後が40N/25mm未満の少なくとも一方
【0148】
実施例および比較例の評価結果を表1に示す。
【0149】
【表1】
【0150】
上記評価結果より、アクリル系樹脂(A)に、Tgが50℃以下であり、かつ数平均分子量が10,000~50,000のポリエステル系樹脂(B-1)~(B-3)をブレンドした粘着剤組成物を用いた実施例1~4は、対PVC粘着力(I)、対PVC粘着力(II)、対SUS-BA板粘着力(III)ともに、貼合5分後、貼合3日後、湿熱試験後の粘着性は良好であった。特にガラス転移温度が低いポリエステル系樹脂(B)をブレンドした粘着剤組成物を用いた場合に粘着力がより高くなる傾向が見られた。
【0151】
一方、アクリル系樹脂(A)単独の粘着剤組成物を用いた比較例2は、湿熱試験後の対PVC粘着力(I)が3.6N/25mm、対PVC粘着力(II)が2.3N/25mmである等、湿熱試験後の粘着性が低かった。
【0152】
また、アクリル系樹脂(A)に、Tgが50℃を超えるポリエステル系樹脂(B’-1)をブレンドした粘着剤組成物を用いた比較例1は、アクリル系樹脂(A)単独の粘着剤組成物を用いた比較例2よりも、対PVC粘着力(I)、対PVC粘着力(II)、対SUS-BA板粘着力(III)ともに、貼合5分後、貼合3日後、湿熱試験後の粘着性は同等以下となり、実施例1~4で見られた粘着性の向上効果は得られなかった。
【0153】
また、ポリエステル系樹脂(B)単独の粘着剤組成物を用いた比較例3は、湿熱試験後の対PVC粘着力が大きく低下した。
【0154】
また、アクリル系樹脂(A)に、Tgが50℃以下であり、かつ数平均分子量が10,000~50,000の範囲外であるポリエステル系樹脂(B’-2)~(B’-4)をブレンドした粘着剤組成物を用いた比較例4~6は、アクリル系樹脂(A)単独の粘着剤組成物を用いた比較例2よりも、湿熱試験後の対PVC粘着力(I)および湿熱試験後の対SUS-BA板粘着力(III)の少なくとも一方は同等以下となる等、対PVC粘着力(I)、対PVC粘着力(II)、および対SUS-BA板粘着力(III)の全ての評価項目を満足する良好な粘着性を示さず、実施例1~4で見られた粘着性の向上効果は得られなかった。
【0155】
以上の結果より、アクリル系樹脂(A)にTgが50℃以下であり、かつ数平均分子量が10,000~50,000のポリエステル系樹脂(B)をブレンドした粘着剤組成物を用いることで、アクリル系樹脂(A)単独の粘着剤組成物やポリエステル系樹脂(B)単独の粘着剤組成物よりも特に湿熱試験後の対PVC粘着力を向上させることができ、かつ対SUS-BA板粘着力や初期の対PVC粘着力も良好な、粘着性のバランスに優れた粘着剤組成物を提供できることがわかる。
【0156】
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の粘着剤組成物、およびそれを用いてなる粘着剤、粘着テープは、SUS-BA板のような極性の高い金属表面だけではなくPVCのような可塑剤を多量に含む表面に対しても貼り合わせ時に充分な粘着力を示し、かつ耐久試験後も充分な密着性を有するものであり、そのため、経時での粘着力低下による剥れが懸念される表面や部材を固定する用途、例えば、PVC製のシートやカーペットの貼り合わせ等において好適に使用できるものである。