(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】オゾン溶解水の製造装置及びこれを用いたオゾン溶解水の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01F 21/00 20220101AFI20220405BHJP
B01F 23/20 20220101ALI20220405BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220405BHJP
C01B 13/10 20060101ALI20220405BHJP
C01B 13/00 20060101ALI20220405BHJP
C02F 1/78 20060101ALI20220405BHJP
B01D 53/66 20060101ALI20220405BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B01F1/00 A
B01F3/04 Z
B01F5/06
C01B13/10 D
C01B13/00
C02F1/78
B01D53/66
B01D53/86
(21)【出願番号】P 2018037173
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】床嶋 裕人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友野
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-053049(JP,A)
【文献】特開2000-079323(JP,A)
【文献】特開平10-085556(JP,A)
【文献】特開平02-245225(JP,A)
【文献】特開2002-233878(JP,A)
【文献】特表2011-520609(JP,A)
【文献】特開2002-018456(JP,A)
【文献】特開平08-196879(JP,A)
【文献】実開平2-108720(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-35/95
C01B 13/10
C02F 1/00-1/78
B01D 53/66、53/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス溶解膜により気相室と液相室とが区画形成されたガス溶解膜モジュールと、
前記気相室に連通し、オゾン含有ガスを供給可能な気体供給ラインと、
前記気相室に連通し、処理後の余剰ガスを排出可能な気体排出ラインと、
前記液相室に連通し、被処理水を供給可能な液体供給ラインと、
前記液相室に連通し、処理後のオゾン溶解水を排出可能な液体排出ラインと、
前記液体排出ラインに接続され、前記液相室の出口圧力を測定する第一圧力計と、
前記気体排出ラインに接続され、前記気相室の出口圧力を測定する第二圧力計と、
前記気体排出ラインの前記第二圧力計の下流側に設けられ、前記第一圧力計の測定値と前記第二圧力計の測定値とに基づき前記気相室内の気体の圧力を制御する圧力制御機構と、
前記気体排出ラインの前記圧力制御機構の上流側に設けられ、前記余剰ガスに含まれる水分を除去する水分除去機構とを備え
、
前記水分除去機構が触媒燃焼式のガス分解手段を有し、
前記水分除去機構が前記第二圧力計の下流側に設けられる
オゾン溶解水の製造装置。
【請求項2】
前記触媒燃焼式のガス分解手段は、前記余剰ガスを酸素ガスに分解する過程において生じる分解熱によって、前記余剰ガスに含まれる水分を消失させる請求項1に記載のオゾン溶解水の製造装置。
【請求項3】
ガス溶解膜により気相室と液相室とが区画形成されたガス溶解膜モジュールを備えるオゾン溶解水の製造装置を用いたオゾン溶解水の製造方法であって、
前記気相室にオゾン含有ガスを供給する気体供給工程と、
前記液相室に被処理水を供給する液体供給工程と、
前記ガス溶解膜を介して前記オゾン含有ガスを前記被処理水に溶解させるガス溶解工程と、
前記液相室の出口圧力を測定する第一圧力測定工程と、
前記気相室の出口圧力を測定する第二圧力測定工程と、
前記気相室から排出される余剰ガスに含まれる水分を除去する水分除去工程と、
前記第一圧力測定工程による測定値と前記第二圧力測定工程による測定値とに基づき前記気相室内の気体の圧力を制御する圧力制御工程とを備え、
前記水分除去工程が、触媒燃焼式のガス分解手段を有する水分除去機構により行われ、
前記水分除去工程の後に前記圧力制御工程を行う
オゾン溶解水の製造方法。
【請求項4】
前記水分除去工程において、前記触媒燃焼式のガス分解手段は、前記余剰ガスを酸素ガスに分解する過程において生じる分解熱によって、前記余剰ガスに含まれる水分を消失させる請求項3に記載のオゾン溶解水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン濃度が高く、かつ気泡を含まないオゾン溶解水を製造することができるオゾン溶解水の製造装置及びこれを用いたオゾン溶解水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶、有機EL等の電子部品の製造工程においては、半導体基板の材料となるシリコンウエハやフラットパネルディスプレイ用のガラス基板等に付着したパーティクルや有機物等を除去するための洗浄が極めて重要である。シリコンウエハ等の洗浄方法としては、従来、過酸化水素水と硫酸との混合液、過酸化水素水と塩酸と水との混合液、過酸化水素水とアンモニア水と水との混合液等、過酸化水素水をベースとする高濃度の薬液による洗浄方法、いわゆるRCA洗浄法が一般的である。しかし、RCA洗浄法は、大量の薬液や大量のリンス用の超純水等を使用するため、洗浄工程におけるコストの増大や環境への負担の増大が懸念されており、近年では、洗浄工程におけるコストの低減や環境への負荷の低減を目的とした様々な洗浄方法が発案され、成果を挙げている。その代表となる洗浄方法が、オゾンガスや水素等の特定のガスを超純水等の液体に溶解させたガス溶解水を用いてシリコンウエハ等を洗浄する方法である。
【0003】
上述のような洗浄方法において使用されるガス溶解水の中でも、オゾンガスを溶解させたオゾン溶解水は、その酸化力により高い洗浄効果が得られることから、特に、基板表面の有機物の除去や基板表面の改質(基板表面の親水化)に用いられている。
【0004】
オゾン溶解水は、通常、超純水に高純度のオゾンガスを溶解することにより製造する。オゾンガスを超純水に溶解する方法としては、直接オゾンガスをバブリングにより超純水に吹き込むことで溶解する方法や、ガス溶解膜により気相室と液相室とが区画形成されたガス溶解膜モジュールを用い、液相室に超純水を供給するとともに液相室にオゾン含有ガスを供給することで、ガス溶解膜の細孔を通して気液接触させることにより溶解する方法等が実用化されている。中でも、ガス溶解膜モジュールを用いたオゾンガスの溶解方法は、溶存オゾン濃度が比較的安定することから、オゾン溶解水の製造に好適に用いられている。
【0005】
ここで、オゾン溶解水の酸化力は、オゾン濃度が高いほど発現される。したがって、ガス溶解膜モジュールを用いた方法によりオゾン濃度の高いオゾン溶解水を製造するためには、オゾンガスの溶解効率を向上させる必要がある。なお、溶解効率とは、供給したオゾンガス中に含まれるオゾン量に対する液体に溶解したオゾン量の割合を示す値である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オゾンガスの溶解効率を向上させるための手法の一つとして、ガス溶解膜モジュールの気相室内の圧力を、可能な限り液相室内の圧力に近づけるという手法がある。一般的に気体の液体への溶解はヘンリーの法則に従うので、気体の圧力が大きいほど液体への溶解度は大きくなる。しかしながら、一方で、オゾンガスの溶解効率を上げるために気相室内の圧力を上げ過ぎて、気相室内の圧力が液相室内の圧力以上になると、気相室内のオゾンガスがガス溶解膜の細孔を通過して、液相室内の液体中で気泡を生成するので(以下、「バブリング現象」ともいう。)製造されたオゾン溶解水が気泡を含んでしまう。気泡を含んだオゾン溶解水は、ユースポイントとしての洗浄装置における洗浄不良や洗浄に使用するノズルの損傷を引き起こすおそれがあり好ましくない。
【0007】
そこで、最近では、上述のようなガス溶解膜モジュールを用いたオゾン溶解水の製造装置において、気相室内の圧力を液相室内の圧力に応じて制御するために、つまり、バブリング現象の発生を防ぐために、ガス溶解膜モジュールの余剰ガスの排出側にマスフローコントローラー(以下、「MFC」ともいう。)等のガス用の精密制御機構を設けて、オゾンガスの流量を制御する試みが行われている。しかしながら、MFCのような従来のガス用の精密制御機構は、一般的に水分に対して脆弱性を有するものであるところ、ガス溶解膜モジュールから排出される余剰ガスは水分をも含むため、MFCのようなガス用の精密制御機構をそのまま用いると、余剰ガスに含まれる水分によって流路が閉塞してしまう等の不具合が生じ、ガス溶解膜モジュール内の気相室内の圧力を精密に制御することが難しいという問題がある。
【0008】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、ガス溶解膜モジュールを用いてオゾン溶解水を製造するに当たり、気相室内の圧力を液相室内の圧力に応じて精密に制御することにより、オゾン濃度が高く、かつ気泡を含まないオゾン溶解水を製造することができるオゾン溶解水の製造装置及びこれを用いたオゾン溶解水の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、ガス溶解膜により気相室と液相室とが区画形成されたガス溶解膜モジュールと、前記気相室に連通し、オゾン含有ガスを供給可能な気体供給ラインと、前記気相室に連通し、処理後の余剰ガスを排出可能な気体排出ラインと、前記液相室に連通し、被処理水を供給可能な液体供給ラインと、前記液相室に連通し、処理後のオゾン溶解水を排出可能な液体排出ラインと、前記液体排出ラインに接続され、前記液相室の出口圧力を測定する第一圧力計と、前記気体排出ラインに接続され、前記気相室の出口圧力を測定する第二圧力計と、前記気体排出ラインの前記第二圧力計の下流側に設けられ、前記第一圧力計の測定値と前記第二圧力計の測定値とに基づき前記気相室内の気体の圧力を制御する圧力制御機構と、前記気体排出ラインの前記圧力制御機構の上流側に設けられ、前記余剰ガスに含まれる水分を除去する水分除去機構とを備えるオゾン溶解水の製造装置を提供する(発明1)。
【0010】
かかる発明(発明1)によれば、気体排出ラインに設けられる圧力制御機構によって、第一圧力計の測定値と第二圧力計の測定値とに基づき、気相室内の圧力を液相室内の圧力に応じて制御することで、バブリング現象の発生を防ぐことができるとともに、圧力制御機構の上流側に設けられる水分除去機構によって、圧力制御機構に流入する余剰ガスに含まれる水分を予め除去することができるので、圧力制御機構によってガス溶解膜モジュールの気相室内の圧力を精密に制御することが可能となり、もってオゾン濃度が高く、かつ気泡を含まないオゾン溶解水を製造することができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記水分除去機構が前記第二圧力計の下流側に設けられることが好ましい(発明2)。
【0012】
かかる発明(発明2)によれば、水分除去機構の圧力損失が無視できる程度に十分小さいものでなくとも、第二圧力計によって気相室内の圧力を正確に計測することができるので、圧力制御機構によってガス溶解膜モジュールの気相室内の圧力をより精密に制御することが可能となる。
【0013】
上記発明(発明1,2)においては、前記水分除去機構がガス分解手段を有することが好ましい(発明3)。
【0014】
ガス分解手段が、余剰のオゾンガスを酸素ガスに分解する過程においては、下記式(1)に従い分解熱が生じる。そして、この分解熱により周囲温度が上昇することにより、余剰ガスに含まれる水分が水蒸気となり消失する。
2O3 → 3O2 (1)
したがって、かかる発明(発明3)によれば、余剰ガスに含まれる水分の除去だけではなく、余剰ガスの無害化をも行うことができる。
【0015】
上記発明(発明3)においては、前記ガス分解手段がガス分解触媒であることが好ましい(発明4)。
【0016】
かかる発明(発明4)によれば、ガス分解手段として、余剰ガスとの接触効率が高いガス分解触媒を用いることにより、余剰ガスの酸素への分解が促進されるので、余剰ガスに含まれる水分の除去を効率的に行うこと可能となる。
【0017】
第二に本発明は、ガス溶解膜により気相室と液相室とが区画形成されたガス溶解膜モジュールを備えるオゾン溶解水の製造装置を用いたオゾン溶解水の製造方法であって、前記気相室にオゾン含有ガスを供給する気体供給工程と、前記液相室に被処理水を供給する液体供給工程と、前記ガス溶解膜を介して前記オゾン含有ガスを前記被処理水に溶解させるガス溶解工程と、前記液相室の出口圧力を測定する第一圧力測定工程と、前記気相室の出口圧力を測定する第二圧力測定工程と、前記気相室から排出される余剰ガスに含まれる水分を除去する水分除去工程と、前記第一圧力測定工程による測定値と前記第二圧力測定工程による測定値とに基づき前記気相室内の気体の圧力を制御する圧力制御工程とを備え、前記水分除去工程の後に前記圧力制御工程を行うオゾン溶解水の製造方法を提供する(発明5)。
【0018】
かかる発明(発明5)によれば、圧力制御工程において、第一圧力測定工程による測定値と第二圧力測定工程による測定値とに基づき、気相室内の圧力を液相室内の圧力に応じて制御することで、バブリング現象の発生を防ぐことができるとともに、圧力制御工程の前に行われる水分除去工程において、余剰ガスに含まれる水分を予め除去することができるので、圧力制御工程においてガス溶解膜モジュールの気相室内の圧力を精密に制御することが可能となり、もってオゾン濃度が高く、かつ気泡を含まないオゾン溶解水を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のオゾン溶解水の製造装置及びこれを用いたオゾン溶解水の製造方法によれば、気体排出ラインに設けられる圧力制御機構によって、第一圧力計の測定値と第二圧力計の測定値とに基づき、気相室内の圧力を液相室内の圧力に応じて制御することで、バブリング現象の発生を防ぐことができるとともに、圧力制御機構の上流側に設けられる水分除去機構によって、圧力制御機構に流入する余剰ガスに含まれる水分を予め除去することができるので、圧力制御機構によってガス溶解膜モジュールの気相室内の圧力を精密に制御することが可能となり、もってオゾン濃度が高く、かつ気泡を含まないオゾン溶解水を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるオゾン溶解水の製造装置を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のオゾン溶解水の製造装置及びこれを用いたオゾン溶解水の製造方法の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
【0022】
〔オゾン溶解水の製造装置〕
図1は、本発明の一実施形態に係るオゾン溶解水の製造装置10を示す模式的説明図である。
図1に示すオゾン溶解水の製造装置10は、ガス溶解膜モジュール1と、第一圧力計2と、第二圧力計3と、水分除去機構4と、圧力制御機構5と、気体供給ラインL1と、気体排出ラインL2と、液体供給ラインL3と、液体排出ラインL4とを主に備える。
【0023】
ガス溶解膜モジュール1は、ガス溶解膜11により気相室12と液相室13とが区画形成されている。気体供給ラインL1は、オゾン含有ガスGを供給可能であるように気相室12に連通している。気体排出ラインL2は、処理後の余剰ガスGRを排出可能であるように気相室12に連通している。液体供給ラインL3は、被処理水Wを供給可能であるように液相室13に連通している。液体排出ラインL4は、処理後のオゾン溶解水WOを排出可能であるように液相室13に連通している。第一圧力計2は、液相室13の出口圧力を測定するものであって、液体排出ラインL4に接続している。第二圧力計3は、気相室12の出口圧力を測定するものであって、気体排出ラインL2に接続している。圧力制御機構5は、第一圧力計2の測定値と第二圧力計3の測定値とに基づき気相室12内の気体の圧力を制御するものであって、気体排出ラインL2の第二圧力計3の下流側に設けられている。水分除去機構4は、気体排出ラインL2の圧力制御機構5の上流側に設けられている。
【0024】
また、本実施形態において、気体供給ラインL1には、上流側から下流側に向かって、ガス流量調整機構6とオゾナイザ7とがこの順に設けられている。液体供給ラインL3には、上流側から下流側に向かって、被処理水流量調整機構8と流量計9とがこの順に設けられている。なお、以下では、第一圧力計2の測定値をP1、第二圧力計3の測定値をP2ということがある。
【0025】
(オゾン含有ガス)
オゾン含有ガスGとは、オゾンガスと酸素ガスとの混合ガスを意味する。オゾン含有ガスGとしては、例えば水の電気分解や、空気又は酸素ガス中での無声放電等を利用したオゾナイザによって発生させた混合ガスを用いることができるが、これに限られない。本実施形態においては、酸素ガスをオゾナイザ7へ供給することによってオゾン含有ガスGを発生させている。発生したオゾン含有ガスGのオゾンガス濃度は、200g/Nm3程度であることが好ましい。このようなオゾン含有ガスGは、多くの場合、10-20重量%のオゾンガスと、80-90重量%の酸素ガスを含有する。
【0026】
(被処理水)
被処理水Wとしては、洗浄に適する水質であることに加えて、製造されるオゾン溶解水WOのオゾンガス濃度を維持するために、pHが中性以下であって、また、過酸化水素濃度が十分に低く(好ましくは10ppb以下)であるものが好ましく、例えば不純物を極限まで除去した超純水又は純水が好適に用いられる。本実施形態においては、被処理水Wとして超純水を使用しているがこれに限られず、例えば超純水に炭酸ガスを溶解した炭酸水等を使用してもよい。
【0027】
[ガス溶解膜モジュール]
ガス溶解膜モジュール1は、ガス溶解膜11により気相室12と液相室13とが区画形成されている。ガス溶解膜モジュール1の気相室12に供給されたオゾン含有ガスGと液相室13に供給された被処理水Wとがガス溶解膜11を介して気液接触することによって、オゾン含有ガスGが被処理水Wに溶解し、オゾン溶解水WOが製造される。なお、ガス溶解膜モジュール1で溶解しなかった未溶解のオゾン含有ガスG、つまり余剰ガスGRは、水分除去機構4によって水分を除去された後、気体排出ラインL2を経て、最終的に外部へ排出される。
【0028】
ガス溶解膜モジュール1を構成するガス溶解膜11の材質としては、疎水性で耐オゾン性に優れたポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂膜を好適に使用することができる。また、ガス溶解膜11の形状には特に制限はなく、
図1に示すような平膜状の他に、例えば中空糸膜状やスパイラル巻状等を使用することができる。なお、ガス溶解膜モジュール1の材質としても、耐オゾン性が要求されることから、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂素材を使用することが好ましい。
【0029】
[第一圧力計]
第一圧力計2は、液相室13の出口圧力、つまりオゾン溶解水W
Oの水圧を測定するものである。第一圧力計2は、耐オゾン性があり、オゾン溶解水W
Oの水圧を測定することができれば、その構成は特に制限されるものではなく、例えば市販の液体圧力計を使用することができる。また、後述する圧力制御機構5が、第一圧力計2の測定値と第二圧力計3の測定値とに基づき気相室12内の気体の圧力を制御することから、第一圧力計2は、
図1に示すように、測定値をデータとして圧力制御機構5へ出力する第一伝送出力手段T1を有することが好ましい。第一圧力計2が第一伝送出力手段T1を有することにより、オゾン溶解水W
OのユースポイントPでの使用状況に起因して液相室13の出口圧力に変動が生じた場合でも、圧力制御機構5によって、容易に追従制御することができる。
【0030】
[第二圧力計]
第二圧力計3は、気相室12の出口圧力、つまり余剰ガスG
Rの圧力を測定するものである。第二圧力計3は、耐オゾン性があり、余剰ガスG
Rの圧力を測定することができれば、その構成は特に制限されるものではなく、例えば市販の気体圧力計を使用することができる。また、後述する圧力制御機構5が、第一圧力計2の測定値と第二圧力計3の測定値とに基づき気相室12内の気体の圧力を制御することから、第二圧力計3は、
図1に示すように、測定値をデータとして圧力制御機構5へ出力する第二伝送出力手段T2を有することが好ましい。第二圧力計3が第二伝送出力手段T2を有することにより、オゾン溶解水W
OのユースポイントPでの使用状況に起因して液相室13の出口圧力に変動が生じた場合でも、圧力制御機構5によって、容易に追従制御することができる。
【0031】
[水分除去機構]
水分除去機構4は、圧力制御機構5に流入する余剰ガスGRに含まれる水分を予め除去するものである。水分除去機構4としては、余剰ガスGRに含まれる水分を除去することができれば、その構成は特に制限されるものではなく、例えばガス分解手段や水分を吸着除去可能な吸湿剤等を有するものを使用することができるが、余剰ガスGRに含まれる水分の除去だけではなく、余剰ガスGRの無害化をも行うことができる点で、燃焼式や触媒燃焼式のガス分解手段を有するものが好ましい。
【0032】
なお、燃焼式や触媒燃焼式のガス分解手段が、余剰のオゾンガスを酸素ガスに分解する過程においては、下記式(1)に従い分解熱が生じる。そして、この分解熱により周囲温度が上昇することにより、余剰ガスに含まれる水分が水蒸気となり消失する。
2O3 → 3O2 (1)
【0033】
また、上述のようなガス分解手段としては、コンパクトでランニングコストが有利な点で、特に触媒燃焼式のものが好適に用いられる。本実施形態においては、水分除去機構4はガス分解手段としてガス分解触媒を有している。余剰ガスGRとの接触効率が高いガス分解触媒を用いることにより、余剰ガスGRの酸素ガスへの分解が促進されるので、余剰ガスGRに含まれる水分の除去を効率的に行うことが可能となる。
【0034】
次に、水分除去機構4を設置する位置は、水分除去機構4の上記作用効果を考慮すると、後述する圧力制御機構5の上流側でさえあれば、第二圧力計3の上流側であってもよく、また下流側であってもよいが、水分除去機構4自体に圧力損失がある場合でも気相室12の出口圧力を正確に計測するためには、
図1に示すように、圧力制御機構5の上流側であって、かつ第二圧力計3の下流側であることが好ましい。このように、水分除去機構4を第二圧力計3と圧力制御機構5との間に設けることにより、水分除去機構4の圧力損失が無視できる程度に十分に小さいものでなくとも、第二圧力計3によって気相室12の出口圧力を正確に計測することが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態においては、第二圧力計3と水分除去機構4とを別個の装置として設置しているが、水分除去機構4の圧力損失が無視できる程度に十分小さい触媒装置等を用いることで、第二圧力計3と水分除去機構4とを一体的な装置として設置してもよい。
【0036】
[圧力制御機構]
圧力制御機構5は、第一圧力計2の測定値と第二圧力計3の測定値とに基づき、余剰ガスGRの流量を制御することで、気相室12内の気体の圧力を制御するものである。具体的には、圧力制御機構5は、第一圧力計2の測定値P1と第二圧力計3の測定値P2との差分が下記式(2)を満たすよう、制御するものであることが好ましく、測定値P2が測定値P1より0.02MPa小さくなるように制御するものであることがより好ましい。
P1>P2 (2)
圧力制御機構5により、気相室12内の圧力を液相室13内の圧力に応じて精密に制御することにより、バブリング現象の発生を防ぐことができる。
【0037】
圧力制御機構5は、第一圧力計2の測定値と第二圧力計3の測定値とに基づき、気相室12内の気体の圧力を制御することができれば、その構成に特に制限はないが、本実施形態において圧力制御機構5は、第一伝送出力手段T1の伝送指示及び第二伝送出力手段T2の伝送指示を受けて、余剰ガスGRの流量を制御することで、気相室12内の気体の圧力を制御している。また、圧力制御機構5には上流側に設けられた水分除去機構4によって余剰ガスGRが分解された後の酸素ガスが流入することから、酸素用のものが好適に用いられる。このような圧力制御機構5としては、例えばモーターバルブやMFC等を好適に使用することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、上述のように、第一伝送出力手段T1の伝送指示及び第二伝送出力手段T2の伝送指示を受けた圧力制御機構5自体が、余剰ガスGRの流量を制御することで、気相室12内の気体の圧力を制御しているが、第一伝送出力手段T1の伝送指示及び第二伝送出力手段T2の伝送指示を受けた圧力制御機構5が、気体供給ラインL1に設けられたガス流量調整機構6又はオゾナイザ7の下流側に別途設けたガス流量調整機構に伝送指示を送り、この伝送指示を受けたガス流量調整機構が、ガスの流量を制御することで、気相室12内の気体の圧力を制御するものであってもよい。
【0039】
[気体供給ライン,気体排出ライン]
気体供給ラインL1は、オゾン含有ガスGを気相室12に供給可能であるように気相室12に連通しており、気体排出ラインL2は、処理後の余剰ガスGRを排出可能であるように気相室12に連通している。気体供給ラインL1及び気体排出ラインL2の材質としては、パーフルオロアルコキシアルカンやポリテトラフルオロエチレン等の耐オゾン性を有するフッ素樹脂素材を使用することが好ましい。
【0040】
本実施形態において、気体供給ラインL1の一端側であってガス溶解膜モジュール1の上流側には、原料ガスとしての酸素ガスを供給するための気体供給口が設けられており、気体供給ラインL1の他端側は、ガス溶解膜モジュール1の気相室12に連通している。また、気体供給ラインL1には、上流側から下流側に向かって、ガス流量調整機構6とオゾナイザ7とがこの順に設けられている。本実施形態において、気体排出ラインL2の一端側であってガス溶解膜モジュール1の下流側には、最終的な余剰ガスとしての酸素ガスを排出するための気体排出口が設けられており、気体排出ラインL2の他端側は、ガス溶解膜モジュール1の気相室12に連通している。また、気体排出ラインL2には、上流側から下流側に向かって、第二圧力計3と水分除去機構4と圧力制御機構5とがこの順に設けられている。
【0041】
ガス流量調整機構6は、気体供給ラインL1の気体供給口から供給された酸素ガスの流量を調整するものである。流量が調整された酸素ガスは、オゾナイザ7へ供給される。オゾナイザ7は、供給された酸素ガスからオゾンガスと酸素との混合ガスであるオゾン含有ガスGを発生させるものである。オゾナイザ7は、オゾン含有ガスGを発生することができれば、その構成に特に制限はなく、例えばUV照射式や放電式のものを用いることができるが、高濃度のガスが得やすいことから放電式のものが好適に用いられる。発生したオゾン含有ガスGは、ガス溶解膜モジュール1の気相室12へ供給される。
【0042】
[液体供給ライン,液体排出ライン]
液体供給ラインL3は、被処理水Wを液相室13に供給可能であるように液相室13に連通しており、液体排出ラインL4は、処理後のオゾン溶解水WOを排出可能であるように液相室13に連通している。液体供給ラインL3の材質としては、接触する液体によって腐食されない材質であれば特に制限はなく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂系の配管材料が好適であるが、低濃度域であれば塩化ビニル(PVC)等も使用することができる。また、液体排出ラインL4の材質としては、パーフルオロアルコキシアルカンやポリテトラフルオロエチレン等の耐オゾン性を有するフッ素樹脂素材が好適に使用される。
【0043】
本実施形態において、液体供給ラインL3の一端側であってガス溶解膜モジュール1の上流側には、超純水等の被処理水Wを供給するための液体供給口が設けられており、液体供給ラインL3の他端側は、ガス溶解膜モジュール1の液相室13に連通している。また、液体供給ラインL3には、上流側から下流側に向かって、被処理水流量調整機構8と流量計9とがこの順に設けられている。本実施形態において、液体排出ラインL4の一端側であってガス溶解膜モジュール1の下流側には、製造されたオゾン溶解水WOをユースポイントPに供給するための液体排出口が設けられており、液体排出ラインL4の他端側は、ガス溶解膜モジュール1の液相室13に連通している。また、液体排出ラインL4には、第一圧力計2が設けられている。
【0044】
被処理水流量調整機構8は、液体供給ラインL3の液体供給口から供給された被処理水Wの流量を調整するものである。流量が調整された被処理水Wは、流量計9により流量を測定された後、ガス溶解膜モジュール1の液相室13へ供給される。
【0045】
〔オゾン溶解水の製造方法〕
次に、上述したような本実施形態のオゾン溶解水の製造装置10を用いたオゾン溶解水の製造方法について
図1を参照しつつ詳説する。
【0046】
オゾン溶解水の製造装置10を用いたオゾン溶解水の製造方法は、ガス溶解膜モジュール1の気相室12にオゾン含有ガスGを供給する気体供給工程、ガス溶解膜モジュール1の液相室13に被処理水Wを供給する液体供給工程、ガス溶解膜モジュール1においてガス溶解膜11を介してオゾン含有ガスGを被処理水Wに溶解させるオゾンガス溶解工程、ガス溶解膜モジュール1の液相室13の出口圧力、つまりオゾン溶解水WOの水圧を測定する第一圧力測定工程、ガス溶解膜モジュール1の気相室12の出口圧力、つまり余剰ガスGRの圧力を測定する第二圧力測定工程、気相室12から排出される余剰ガスGRに含まれる水分を除去する水分除去工程、第一圧力測定工程による測定値と第二圧力測定工程による測定値とに基づき気相室12内の気体の圧力を制御する圧力制御工程を主に備える。圧力制御工程は水分除去工程の後に行われる。
【0047】
[気体供給工程]
気体供給工程においては、オゾン含有ガスGがガス溶解膜モジュール1の気相室12に供給される。なお、本実施形態においては、気体供給工程の前に、気体供給ラインL1の気体供給口から供給された酸素ガスの流量をガス流量調整機構6により調製するガス流量調整工程と、ガス流量調整工程により流量が調整された酸素ガスをオゾナイザ7に供給してオゾン含有ガスGを発生させるオゾン含有ガス生成工程とをこの順に行っている。ガス流量調整工程を備えることにより、気体供給ラインL1に供給された酸素ガスの圧力を調整することができるので、好適な圧力でもってオゾナイザ7でのオゾン含有ガス生成工程を行うことが可能となる。
【0048】
[液体供給工程]
液体供給工程においては、被処理水Wをガス溶解膜モジュール1の液相室13に供給する。なお、本実施形態においては、液体供給工程の前に、液体供給ラインL3の液体供給口から供給された被処理水Wの流量を被処理水流量調整機構8により調製する被処理水流量調整工程と、被処理水流量調整工程により流量が調整された被処理水Wの流量を流量計9により測定する被処理水流量測定工程とをこの順に行っている。被処理水流量調整工程を備えることにより、液体供給ラインL3に供給された被処理水Wの圧力を調整することができるので、好適な圧力でもってガス溶解膜モジュール1でのガス溶解工程を行うことが可能となる。
【0049】
[オゾンガス溶解工程]
オゾンガス溶解工程においては、ガス溶解膜モジュール1の気相室12に供給されたオゾン含有ガスGと液相室13に供給された被処理水Wとがガス溶解膜11を介して気液接触することによって、オゾン含有ガスGが被処理水Wに溶解し、オゾン溶解水W
Oが製造される。なお、本実施形態においては、ガス溶解膜11として、
図1に示すような平膜状のものを使用しているが、これに制限されず、例えば中空糸膜状やスパイラル巻状等のものを使用することができる。
【0050】
[第一圧力測定工程]
第一圧力測定工程においては、ガス溶解膜モジュール1の液相室13の出口圧力が第一圧力計2により測定される。なお、後述する圧力制御工程においては、第一圧力測定工程による測定値と第二圧力測定工程による測定値とに基づき、圧力制御機構5によって気相室12内の気体の圧力を制御することから、第一圧力測定工程は、得られた測定値をデータとして圧力制御機構5へ出力する第一伝送出力工程を有することが好ましい。第一圧力測定工程が第一伝送出力工程を有することにより、オゾン溶解水WOのユースポイントPでの使用状況に起因して液相室13の出口圧力に変動が生じた場合でも、圧力制御工程において、容易に追従制御することができる。
【0051】
[第二圧力測定工程]
第二圧力測定工程においては、ガス溶解膜モジュール1の気相室12の出口圧力が第二圧力計3により測定される。なお、後述する圧力制御工程においては、第一圧力測定工程による測定値と第二圧力測定工程による測定値とに基づき、圧力制御機構5によって気相室12内の気体の圧力を制御することから、第二圧力測定工程は、得られた測定値をデータとし圧力制御機構5へ出力する第二伝送出力工程を有することが好ましい。第二圧力測定工程が第二伝送出力工程を有することにより、オゾン溶解水WOのユースポイントPでの使用状況に起因して液相室13の出口圧力に変動が生じた場合でも、圧力制御工程において、容易に追従制御することができる。
【0052】
[水分除去工程]
水分除去工程においては、第二圧力測定工程の後の余剰ガスGRに含まれる水分を水分除去機構4により除去する。水分除去工程は、水分除去機構4により、余剰ガスGRに含まれる水分を除去することができれば、その構成は特に制限されるものではないが、余剰ガスGRに含まれる水分の除去だけではなく、余剰ガスGRの無害化をも行うことができる点で、燃焼式や触媒燃焼式のガス分解手段を有する水分除去機構4により行うことが好ましい。
【0053】
燃焼式や触媒燃焼式のガス分解手段が、余剰のオゾンガスを酸素ガスに分解する過程においては、下記式(1)に従い分解熱が生じる。そして、この分解熱により周囲温度が上昇することにより、余剰ガスに含まれる水分が水蒸気となり消失する。
2O3 → 3O2 (1)
【0054】
また、水分除去工程において使用される上述のようなガス分解手段としては、コンパクトでランニングコストが有利な点で、特に触媒燃焼式のものが好適に用いられる。本実施形態においては、水分除去工程において使用される水分除去機構4は、ガス分解手段としてガス分解触媒を有している。余剰ガスGRとの接触効率が高いガス分解触媒を用いることにより、余剰ガスGRの酸素ガスへの分解が促進されるので、余剰ガスGRに含まれる水分の除去を効率的に行うことが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態においては、第二圧力測定工程の後に水分除去工程を行っているが、水分除去機構4の圧力損失が無視できる程度に十分小さい場合には、水分除去機構4を第二圧力計3の上流側に設けることにより、第二圧力測定工程の後に水分除去工程を行ってもよいし、第二圧力計3と水分除去機構4とを一体的な装置として設けることにより、第二圧力測定工程と水分除去工程とを同時行ってもよい。
【0056】
[圧力制御工程]
圧力制御工程は水分除去工程の後に行われる。圧力制御工程においては、第一圧力測定工程で得られた第一圧力計2の測定値と第二圧力測定工程で得られた第二圧力計3の測定値とに基づき、圧力制御機構5によって、気相室12内の気体の圧力を制御する。本実施形態において圧力制御工程は、第一圧力測定工程による伝送指示及び第二圧力測定工程による伝送指示を受けた圧力制御機構5が、余剰ガスGRの流量を制御することで、気相室12内の気体の圧力を制御している。
【0057】
なお、本実施形態において圧力制御工程とは、上述のように、第一圧力測定工程による伝送指示及び第二圧力測定工程による伝送指示を受けた圧力制御機構5が、余剰ガスGRの流量を制御することで、気相室12内の気体の圧力を制御するものであるが、第一圧力測定工程による伝送指示及び第二圧力測定工程による伝送指示を受けた圧力制御機構5が、気体供給ラインL1に設けたガス流量調整機構6又はオゾナイザ7の下流側に別途設けたガス流量調整機構に伝送指示を送り、この伝送指示を受けたガス流量調整機構が、ガスの流量を制御することで、気相室12内の気体の圧力を制御するものであってもよい。
【0058】
以上のように、本発明のオゾン溶解水の製造装置及びこれを用いたオゾン溶解水の製造方法によれば、気体排出ラインに設けられる圧力制御機構によって、第一圧力計の測定値と第二圧力計の測定値とに基づき、気相室内の圧力を液相室内の圧力に応じて制御することで、バブリング現象の発生を防ぐことができるとともに、圧力制御機構の上流側に設けられる水分除去機構によって、圧力制御機構に流入する余剰ガスに含まれる水分を予め分解除去することができるので、圧力制御機構によってガス溶解膜モジュールの気相室内の圧力を精密に制御することが可能となり、もってオゾン濃度が高く、かつ気泡を含まないオゾン溶解水を製造することができる。
【0059】
以上、本発明について図面を参照にして説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、
図1では、ガス溶解膜モジュール1の気相室12を流通する気体の流通方向と、ガス溶解膜モジュール1の液相室13を流通する液体の流通方向とが同一方向であるが、気体の流通方向と液体の流通方向とが逆方向であってもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳説するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
〔実施例1〕
図1に示すオゾン溶解水の製造装置10を用いて、オゾン溶解水の製造を行った。条件は以下の通りである。
ガス溶解膜:GNH-01R(ジャパンゴアテックス社製)
オゾナイザ:GR-RB(住友精密工業社製)
水分除去機構:オゾン分解触媒 KMS-200(ワコーシステムコントロール社製)
圧力制御機構:MFC MC-3000L(リンテック社製)
【0062】
供給する被処理水としては、水温が25℃の純水を用いた。純水は、供給流量が20L/minとなるように調整した後、ガス溶解膜モジュールの液相室に供給した。供給する気体としては、原料ガスとして酸素ガスを用いた。酸素ガスは、オゾナイザへの供給流量が4L/minとなるように調整した後、オゾナイザへ供給した。オゾナイザにてオゾンと酸素との混合ガスを生成し、このオゾン含有ガスをガス溶解膜モジュールの気相室に供給した。オゾン含有ガスのオゾンガス濃度は、200g/Nm3であった。
【0063】
〔実施例〕
圧力制御機構によって、気相室の出口圧力が液相室の出口圧力より0.02MPa低くなるように、余剰ガスの流量を制御するとともに、液相室の出口圧力に変動が生じた際には、その差分を追従制御した。
【0064】
〔比較例〕
液相室の出口圧力、つまりオゾン溶解水の水圧は、オゾン溶解水のユースポイントでの使用状況、例えば洗浄装置における使用状況によって変動する。本実施例においては、ユースポイントに接続された複数の洗浄装置の使用タイミングが重なると、オゾン溶解水の水圧が0.2MPaから0.15MPa以下まで瞬間的に又はある一定時間に低下することがあった。そのため、比較例においては、安全策をとって気相室の出口圧力、つまり余剰ガスの圧力が0.12MPa程度となるように制御した。
【0065】
〔結果〕
実施例においては、ガス溶解膜モジュールの液相室内でバブリング現象が発生せず、30ppm程度の気泡を含まないオゾン溶解水を安定的に製造することができた。一方、比較例においては、実施例と比較して溶存オゾン濃度が平均して1~2ppm程度が低く、また、ユースポイントに接続された洗浄装置でオゾン溶解水の使用量が増加することによりオゾン溶解水の水圧が低下すると、ごく稀に瞬間的にオゾン溶解水中に気泡が生じることがあった。このように、比較例では、変則的にオゾン溶解水の水圧が0.12MPaより低下することがあったことから、余剰ガスの圧力を0.12MPaから更に下げる必要があった。
【0066】
以上説明したように、本発明のオゾン溶解水の製造装置及びこれを用いたオゾン溶解水の製造方法によれば、気体排出ラインに設けられる圧力制御機構によって、第一圧力計の測定値と第二圧力計の測定値とに基づき、気相室内の圧力を液相室内の圧力に応じて制御することで、バブリング現象の発生を防ぐことができるとともに、圧力制御機構の上流側に設けられる水分除去機構によって、圧力制御機構に流入する余剰ガスに含まれる水分を予め除去することができるので、圧力制御機構によってガス溶解膜モジュールの気相室内の圧力を精密に制御することが可能となり、もってオゾン濃度が高く、かつ気泡を含まないオゾン溶解水を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、半導体、液晶、有機EL等の電子部品の製造工程において、半導体基板の材料となるシリコンウエハやフラットパネルディスプレイ用のガラス基板等に付着したパーティクルや有機物等を除去するための洗浄用のオゾン溶解水の製造装置及びこれを用いたオゾン溶解水の製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0068】
10 オゾン溶解水の製造装置
1 ガス溶解膜モジュール
11 ガス溶解膜
12 気相室
13 液相室
2 第一圧力計
3 第二圧力計
4 水分除去機構
5 圧力制御機構
6 ガス流量調整機構
7 オゾナイザ
8 被処理水流量調整機構
9 流量計
L1 気体供給ライン
L2 気体排出ライン
L3 液体供給ライン
L4 液体排出ライン
T1 第一伝送出力手段
T2 第二伝送出力手段
P ユースポイント
G オゾン含有ガス
GR 余剰ガス
W 被処理水
WO オゾン溶解水