(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】シート積載装置、画像形成装置および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 31/18 20060101AFI20220405BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B65H31/18
G03G15/00 440
(21)【出願番号】P 2018041093
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】大場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】中田 真人
(72)【発明者】
【氏名】入江 昭吉
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030950(JP,A)
【文献】特開平06-247606(JP,A)
【文献】特開2014-055069(JP,A)
【文献】特開平05-043104(JP,A)
【文献】特開2011-057313(JP,A)
【文献】特開2017-077953(JP,A)
【文献】特開2006-293067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00-31/40
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを排出するシート排出手段と、
排出された前記シートを
積載して形成されたシート束の高さ位置を調整する高さ調整機構を備えるシート積載手段と、
前記シート排出手段から排出され、前記シート
束の最上位に積載される途中のシートに風を当てる送風手段と、
前記シート排出手段
における前記シートの排出動作と
、前記シート束の高さ位置を変更するための前記シート積載手段
の昇降動作と
、前記送風手段
による送風タイミング及び送風量と、を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記シートが前記シート積載手段に向けて排出されるタイミングにおいて、
当該シートに係るシート種別に基づいて前記送風手段の動作
の要否
を判断し、
前記送風手段の動作が必要と判断されたとき、次にシート排出手段から排出されてくる次シートのシート種別に基づいて前記シート積載手段
を動作させて前記シート束の高さ位置を
下降させてから当該次シートが前記シート束の最上位に接触すると予測されるタイミングに基づき前記シート束の高さ位置を上昇させ、かつ、当該シート束の高さ位置の上昇タイミング、前記シート種別に対応する前記送風手段の動作量及び動作タイミングに基づいて当該送風手段の送風タイミングと送風量を変更する、ことを特徴とするシート積載装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記
次シートのシート種別に基づいて、
当該次シートが排出されるタイミングにおける前記シート積載手段を下降させる下降量を決定し、
前記下降量に基づいて前記シート束の高さ位置を変更するように前記シート積載手段の動作の制御をする、請求項1記載のシート積載装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記
次シートのシート種別に基づいて、
当該次シートに送風するときの送風量を調整するように制御をする、請求項1
又は2に記載のシート積載装置。
【請求項4】
前記シートに画像を形成する画像形成部と、
画像が形成されたシートを積載する積載トレイを含む積載機構と、を備え、
前記積載機構に、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のシート積載装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
画像形成装置と、
当該画像形成装置と連係して動作するシート積載装置と、を備える画像形成システムであって、
前記シート積載装置は、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のシート積載装置であることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート積載装置、画像形成装置および画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の記録媒体に画像形成を施して排出する画像形成装置と、排出された記録媒体を積載してシート束を形成するシート積載装置と、を備える画像形成システムが知られている。当該シート積載装置は、すでに積載されているシート束に向けて次の記録媒体が排出されてくると、シート束の最上部にある記録媒体が次の記録媒体によって積載位置から押し出される現象や、次の記録媒体がシート束に積載される前およびシート束の最上部に接触した後において座屈する現象など、が起きることがある。これらが起きると、シート束の揃え精度が低下する。そこで、従来のシート積載装置では、新たに排出される記録媒体がシート束に積載されるまでの間に、当該記録媒体に対して風を送ることで姿勢を整える送風機能を備えるものがある。
【0003】
従来のシート積載装置は、排出される記録媒体に送風するものであるが、その風は、すでに積載されている記録媒体(例えば、シート束の最上部にある記録媒体)にも間接的に当たることになる。シート束が高くなると、送風の影響で最上部の記録媒体がずれてしまい、送風によってシート束の揃え精度が低下する要因になる。そこで、すでに積載されている記録媒体(シート束)の高さに応じて、排出される記録媒体への送風量を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術は、記録媒体の種類等によらずシート束が高くなるにつれて送風量を少なくする制御を行うものであって、送風の有無を考慮しない。送風によって姿勢が整えられる効果は、記録媒体の種類やサイズなどの条件によって異なるので、シート束の揃え精度を高めるには、記録媒体に応じた送風と送風に基づく記録媒体の受け入れ状態の制御が求められる。
【0005】
本発明は、排出される記録媒体に対応して当該記録媒体のシート束への受け入れ位置を制御するシート積載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、シート積載装置に関するものであって、その一態様は、シートを排出するシート排出手段と、排出された前記シートを積載して形成されたシート束の高さ位置を調整する高さ調整機構を備えるシート積載手段と、前記シート排出手段から排出され、前記シート束の最上位に積載される途中のシートに風を当てる送風手段と、前記シート排出手段における前記シートの排出動作と、前記シート束の高さ位置を変更するための前記シート積載手段の昇降動作と、前記送風手段による送風タイミング及び送風量と、を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記シートが前記シート積載手段に向けて排出されるタイミングにおいて、当該シートに係るシート種別に基づいて前記送風手段の動作の要否を判断し、前記送風手段の動作が必要と判断されたとき、次にシート排出手段から排出されてくる次シートのシート種別に基づいて前記シート積載手段を動作させて前記シート束の高さ位置を下降させてから当該次シートが前記シート束の最上位に接触すると予測されるタイミングに基づき前記シート束の高さ位置を上昇させ、かつ、当該シート束の高さ位置の上昇タイミング、前記シート種別に対応する前記送風手段の動作量及び動作タイミングに基づいて当該送風手段の送風タイミングと送風量を変更する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排出される記録媒体に対応して当該記録媒体のシート束への受け入れ位置を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のシート積載装置の実施形態であるスタッカーの構成を示すシステム構成図。
【
図2】
図1に示したスタッカーの内部構造の一部であるシフト搬送機構部の構成を示す斜視図。
【
図3】
図1に示したスタッカーの内部構造の一部である先端揃え機構の構成を示す斜視図。
【
図4】
図1に示したスタッカーの内部構造の一部であるメインジョガー機構部の構成を示す側面図。
【
図5】
図1に示したスタッカーの内部構造の一部であるメインジョガー機構部の構成を示す斜視図。
【
図6】
図5に示したメインジョガー機構部の一部であるジョガーの構成を示す斜視図。
【
図7】本実施形態に係るスタッカーに排出されるシートが積載される様子を示す側面図。
【
図8】本実施形態に係るスタッカーが備えるファンの配置例を説明する図。
【
図9】本実施形態に係るスタッカーに積載されるシートの様子を示す側面図。
【
図10】本実施形態に係るスタッカーが備える制御部のハードウェア構成図。
【
図11】本実施形態に係るスタッカーが備える制御部の機能ブロック図。
【
図12】本実施形態に係るスタッカーの動作の流れを示すフローチャート。
【
図13】本実施形態に係るスタッカーのシート排出前の状態を示す側面図。
【
図14】本実施形態に係るスタッカーの動作状態を示し、(a)トレイ下降時、(b)シート積載時、の様子を示す側面図。
【
図15】本実施形態に係るスタッカーの動作状態を示し、(a)シート積載、(b)トレイ上昇時の様子を示す側面図。
【
図16】本発明に係る画像形成システムの実施形態を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るシート積載装置は、シート状の記録媒体を積載したシート束を形成するにあたり、当該記録媒体がシート束の揃え精度を乱さないようにするための当該記録媒体への送風の有無により、シート束の最上位にある記録媒体の面(積載面)の高さ位置を変更することを、要旨の一つとする。すなわちシート束が形成されるトレイの位置を、記録媒体への送風の有無によって変更する。これによって、記録媒体がシート束に着地する位置を制御することができ、シート束の揃え精度を新たに積載される記録媒体が乱すことを防ぐことができる。
【0010】
なお、記録媒体がシート束の揃え精度を乱す度合いは、当該記録媒体のサイズや性質、種類などに応じて異なる。したがって、本発明に係るシート積載装置は、記録媒体の種類等に基づいて排出される記録媒体への送付の有無を変更することも、本発明の要旨の一つである。
【0011】
すなわち、本発明に係るシート積載装置は、排出される記録媒体に対する送風の有無と、当該記録媒体をシート束に積載させる位置を連動させることで、シート束の揃え精度を向上させるものである。なお、本明細書では、記録媒体のサイズや性質、種類など、排出されて積載される記録媒体がシート束に着地するまでの状態に影響を与えうる条件に関する情報「シート条件」とする。本発明によれば、多様な記録媒体における積載性を高めることができる。
【0012】
より詳しくは、シート束の最上部にある記録媒体に対して、次に積載される記録媒体が接触するときの位置を、最上部の記録媒体の高さを制御する変化させ、記録媒体同士の接触状態を調整する。これによって、シート束の最上部の記録媒体の押し出しや、積載される記録媒体の座屈を防ぐ。
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な実施形態であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されている。したがって、本発明の範囲は、以下の説明によって不当に限定されるものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てを本発明の必須の構成要件とするわけではなく、適宜選択されるものである。
【0014】
まず、本発明に係る画像形成システム1000について
図16を用いて説明する。画像形成システム1000は、本発明に係る画像形成装置の実施形態としてのプリンタ500と、本実施形態に係るシート積載装置の実施形態としてのスタッカー100と、を含む。
【0015】
プリンタ500は、例えば、4色フルカラーの画像を記録媒体に形成する。プリンタ500は、例えば、多数枚の記録媒体を連続的に搬送して高速で印刷を行うプロダクション用途に適した画像形成装置である。また、プリンタ500は、電子写真方式により記録媒体であるシートSに画像を形成する。
【0016】
スタッカー100は、プリンタ500において画像形成が施されたシートSを積載用のトレイ(積載トレイ)に積載させて保持する積載機構を構成する。
【0017】
プリンタ500には、制御部550が設けられていて、この制御部550がプリンタ500の動作を統括的に制御する。また、スタッカー100には、制御部150が設けられていて、この制御部150がスタッカー100の動作を統括的に制御する制御手段を構成する。
【0018】
図1は、本発明に係るシート積載装置の実施形態の一例であるスタッカー100の基本構成を示す図である。スタッカー100は、プリンタ500から排出されたシートSを
図1中の矢印Aの方向から装置内部に搬入する構成を備える。本実施形態におけるシートSは記録媒体の一例であって、例えば、印刷に用いられる用紙である。なお、シートSは、画像形成部を備えるプリンタ500において画像形成が施され、その後段に配置されるスタッカー100に搬入されて、積載されて保持されるものであれば、用紙に限定はされない。
【0019】
スタッカー100は、搬入されたシートSを所定の経路により搬送して排出する動作を基本とするが、複数の搬送先を切り換えることができる複数の動作モードを備える。例えば、スタッカー100は、プルーフ排出モード、ストレート排出モード、およびシフト排出モードなど、それぞれ排出先が異なる複数の動作モードの中から選択された動作モードで動作する。
【0020】
プルーフ排出モードは、シート搬送路L1を用いて、シートSをプルーフトレイ101に排出し、プルーフトレイ101にシートSを積載させる動作モードである。ストレート排出モードは、シート搬送路L2を用いて、シートSをスタッカー100の後段に設けられる別の装置に向けて排出する動作モードである。シフト排出モードは、シート搬送路L3を用いて、シートSをシフトトレイ102に排出し、シフトトレイ102にシートSを積載させる動作モードである。シフト排出モードでは、シフトトレイ102の異なるシフト位置にシートSを積載の上面における異なる位置にシフトさせてシートSを積載させる。
【0021】
シフトトレイ102は、昇降可能な構造を有する支持部材103(103a、103b)に載置されている。シフトトレイ102は、支持部材103の昇降に応じて上下方向の位置が変化する。支持部材103の四隅は、計4本のタイミングベルト104によって吊られている。それぞれのタイミングベルト104は、対応する計4つのタイミングプーリ105に巻き付けられている。タイミングプーリ105は、ウォームギヤ106と複数のギヤから構成されるギヤ列107によって連係されている。ウォームギヤ106は、トレイ昇降モータ108の駆動力によって回転する。したがって、トレイ昇降モータ108が動作してウォームギヤ106を回転させると、この回転に同期してギヤ列107が回転し、タイミングプーリ105も回転する。
【0022】
タイミングプーリ105がトレイ昇降モータ108の回転に基づいて回転すると、支持部材103が昇降する。支持部材103の昇降によって、シフトトレイ102も昇降するが、トレイ昇降モータ108からの動力を伝達する動力伝達系統においてウォームギヤ106を介するため、シフトトレイ102を一定位置に保つことができる。支持部材103が最下位置まで下降したときは、シフトトレイ102を台車109に載せることができる。台車109もシフトトレイ102を載せた状態で台車109を搬出することで、シフトトレイ102に積載されたシートSを搬出することができる。
【0023】
シート搬送路L3の途中には、排出ローラ111に連動して回転するパドル110が配置されている。パドル110は、シフトトレイ102に排出されるシートSの排出方向後端部を叩いて下方に押し付ける動作をする。
【0024】
シフトトレイ102に積載されたシートSは、その厚みによってフィラー112を押し上げるように作用する。フィラー112の動きに基づいて、光学式の紙面センサS3がシフトトレイ102におけるシートSのスタック高さ(シート積載量)を検出できるように構成されている。これによって、紙面センサS3がONとなっているときは、トレイ昇降モータ108を動作させてシフトトレイ102を下降させ、紙面センサS3がOFFのときは、トレイ昇降モータ108を停止して、シフトトレイ102を下降させないように制御する。したがって、スタッカー100は、シフトトレイ102に一定量のシートSが積載されることによって、シフトトレイ102を所定の量だけ下降させる構成を備えている。
【0025】
スタッカー100へのシートの搬入口には、シートSの通過を検出するためのシート搬入センサS1が備わっている。シートSの搬入口には、入口ローラ114が備わっている。入口ローラ114の駆動により、外部の装置(例えば複写機等)から矢印A方向に排出されてくるシートSがスタッカー100に搬入される。
【0026】
シート搬送路L3の途中には、搬入されたシートSの通過を検出するためのシート搬送パスセンサS2が配置されている。シート搬送パスセンサS2の後段(シートSの搬送方向における下流側)に排出ローラ111と従動ローラ113が配置されている。排出ローラ111には、バネによって付勢された従動ローラ113が圧接されている。これらの排出ローラ111と従動ローラ113の間に、シートSがニップされる。この排出ローラ111がシート排出手段を構成する。
【0027】
シフトトレイ102に排出されたシートSは、ジョガー210とサブジョガー220により、シートSのシート幅方向を整合される。また、先端ストッパ230によりシートSのシート搬送方向が整合される。したがって、ジョガー210とサブジョガー220は、シートSの積載位置を整合させる整合機構を構成する。
【0028】
また、スタッカー100の筐体の上部外面には、操作部250が配置されている。操作部250は、スタッカー100のユーザインターフェースである。操作部250は、スタッカー100の処理状態を表示する動作表示部として機能する。また、操作部250は、画像処理後のユーザによるトレイ(例えば、シフトトレイ102)の動作(例えば下降動作)の指示を行う動作指示部としても機能する。
【0029】
次に、スタッカー100が備えるシフト搬送機構部50について
図2を用いて説明する。シフト搬送機構部50は、シフトトレイ102に対するシートSの排出位置をシフトさせる機能を備える。シフト搬送機構部50は、排出ローラ111と従動ローラ113を所定の方向に所定量の移動をさせることによって、シートSの排出位置をシフトさせる排出ローラ111と従動ローラ113の移動方向は、
図2中の矢印G1と矢印G2にて示す二方向である。矢印G1の方向は、
図1におけるスタッカー100の手前方向である。矢印G2の方向は、
図1におけるスタッカー100の奥方向である。すなわち、シフト搬送機構部50は、シフトトレイ102に排出されるシートSの位置を手前側または奥側にシフトさせる。シフト搬送機構部50によるシートSのシフト方向は、シートSの面と平行かつシートSの搬送方向に直交する方向である。
【0030】
排出ローラ111と従動ローラ113は、矢印G1方向と矢印G2方向に移動する一対のホルダ51およびホルダ52、これらを連結する2つの軸53および軸54に連結されている。
【0031】
排出ローラ111は、ステッピングモータ55により回転する。排出ローラ111に取り付けられた従動ギヤ56は、ギヤ57とギヤ58とベルト59とを介して、ステッピングモータ55により回転する駆動ギヤ60に対して噛合する。従動ギヤ56と駆動ギヤ60は、排出ローラ111の移動位置(シフト方向)に関係せずに噛合する。したがって、排出ローラ111はシフト方向の位置に関係無く、シートSを排出するように回転する。ホルダ51にはラックギヤ61が設けられている。このラックギヤ61は、ピニオンギヤ62を介してパルスモータ63に連結されている。
【0032】
なお、
図2は、シフト搬送機構部50をスタッカー100の右左斜め上方から見た図あって、排出ローラ111がシフト移動する前の状態で中心位置にある場合を例示している。シフト搬送機構部50は、
図2の状態から、シートSを受け入れてシフト移動するまでは、排出ローラ111と従動ローラ113が
図2に例示した中心位置にある。排出ローラ111と従動ローラ113のシフト移動量は、矢印G1方向および矢印G2方向のいずれにおいても、中心位置から所定量(10mm)ずつとする。また、排出ローラ111と従動ローラ113のホームポジションは、中心位置に設定されており、排出ローラ111と従動ローラ113が中心位置にあることを検知するための光学式のホームポジションセンサS4が設けられている。そのホームポジションを基準としてパルスモータ63に所定量の回転駆動を行わせて、排出ローラ111と従動ローラ113を所定のシフト位置に移動させる。
【0033】
図3は、スタッカー100を左斜め上方かつ前方から先端揃え機構70を見た状態を示す図である。先端揃え機構70は、シフトトレイ102に排出されるシートSの先端部(搬送方向の端部)を揃えるための機構であって、スタッカー100が備える先端ストッパ230を構成する。先端揃え機構70は、
図3における矢印H1方向と矢印H2方向の二方向における位置を調整できるストッパ71を備えている。
【0034】
ストッパ71は、スライダ72に取り付けられており、スライダ72は、
図3のように、矢印H1の方向に延在するシャフト73にスライド可能にガイドされている。スライダ72は、プーリ74およびプーリ75の間に掛け渡されたベルト76に連結されている。モータ77によってベルト76が移動することにより、スライダ72がストッパ71と共に矢印H1の方向に移動して、その位置が調整される。
【0035】
スライダ72には遮蔽板78が備えられており、ストッパ71がホームポジションに移動したときに、その遮蔽板78が光学式のホームポジションセンサS5によって検出される。
【0036】
次に、メインジョガー機構部200について
図4から
図6を用いて説明する。なお、
図4は、メインジョガー機構部200を
図1におけるジョガー210の部分を左方向から見た図である。
図4における右側がスタッカー100の前方(手前)側であり、左側が後方(奧)側である。
図5は、メインジョガー機構部200を
図1におけるジョガー210の部分を右斜め上方かつ後方から見た図である。
図5における右側がスタッカー100の後方(奧)側であり、左側が前方(手前)側である。
図6は、メインジョガー機構部200の一部を
図1における左斜め上方かつ後方から見た図であって、
図1に示したジョガー210の一部を詳細に示す図である。
図4から
図6において符号の末尾に”R”が付されている構成は、スタッカー100の後方(奧)側に配置されるものを示し、”F”が付されている構成は、スタッカー100の前方(手前)側に配置されるものを示す。
【0037】
メインジョガー機構部200は、ジョガー210の幅方向への移動を制御するステッピングモータ201とステッピングモータ202を有する。なお、「幅方向」とは、シートSの排出方向と直交する方向であってシートSの面と平行する方向をいう。また、メインジョガー機構部200は、ジョガー210の上下方向への移動を制御するステッピングモータ203と、を有する。なお、「上下方向」とは、幅方向と直交する方向であってシートSの面と直交する方向をいう。
【0038】
また、メインジョガー機構部200は、ステッピングモータ203のギヤに噛合するギヤ204と、ギヤ204が取り付けられる回転軸205と、回転軸205に平行な駆動軸206と、駆動軸206に連結されたスライダ207Fおよびスライダ207Rと、を有する。
【0039】
また、メインジョガー機構部200は、
図5に示す様に、スライダ207Fを検出するセンサS6Fと、スライダ207Rを検出するセンサS6Rと、回転軸205の回転状態を示すギヤ204に備えられたフィラー208と、フィラー208を検出するセンサS7と、を有する。スライダ207Fとスライダ207Rの間隔が広がったり狭まったりすることで、メインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rの対向する間隔が変化する。また、メインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rは、上下方向にも動かされる。センサS7にてフィラー208が検出される状態がメインジョガー機構部200の上下方向のホームポジションであり、このときのメインジョガー210Fとメインジョガー210Rの位置は、下がっている。
【0040】
次に、ジョガー210の形状等について詳細に説明する。
図6に示すように、メインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rは、それぞれ板状体からなる。シートSの幅方向の整合を行う際にシートSの端部に接触する揃え部211Fおよび揃え部211Rは、メインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rのそれぞれにおける最下部に位置し、互いの対向面は前記シフト方向Gと直交する平坦面からなる。
【0041】
揃え部211Fおよび揃え部211Rをシフト方向Gに移動させると、シフト方向Gと直交する平坦面がシートSの幅方向の端面を挟み込むようにできる。これによって、シートSの幅方向の端面を整合させることができる。
【0042】
排出ローラ111(
図1参照)から排出されたシートSをメインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rの対向間隔の間に導く際に、メインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rと排出されるシートSとの干渉を避ける必要がある。そのために、揃え部211Fおよび揃え部211Rの上方部分には、これら揃え部211Fおよび揃え部211Rの対向間隔よりも広い間隔になっている段状部(逃げ部212Fと逃げ部212R)が設けられている。
【0043】
図5に戻る。メインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rは、スライダ207Fおよびスライダ207Rにより根元を挟み込み押さえ付けるように構成されている。スライダ207Fおよびスライダ207Rの位置によってメインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rが所定状態以上には垂れ下がらないようになっている。なお、メインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rは、上方向への稼動は自由になるように、スライダ207Fおよびスライダ207Rによって保持されている。
【0044】
メインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rは、排出ローラ111から排出されるシートSを受け入れるタイミングでは、所定の対向間隔をあけた受け入れ位置で待機している。シートSが排出ローラ111より排出され、シフトトレイ102に積載される毎に受け入れ位置から対向間隔を狭める動作をして、シートSの端面位置まで移動したのち、対向間隔を広げる動作をして、前記受け入れ位置に復帰する。この一連の揃え動作を行うことによりシートSの幅方向の端面を揃えることができる。
【0045】
排出ローラ111はシートSごとに矢印G1方向へのシフト動作(10mmシフト)を繰り返しながら先のシート束を構成する所定枚数の排出を終了した後、矢印G2方向に10mmシフト動作をして次のシート束を積載していく。シフト方向を切り換える際、メインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rが退避回転位置に移動する。この移動により揃え部材退避状態となり、この退避状態のもとでメインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rはシフト動作を行う。
【0046】
例えば、排出ローラ111がメインジョガー210F側にシフトする場合、メインジョガー210Rはシフトトレイ102に積載された排出シート奥側面かつ前の「部」(シート束)の上に当接する位置に配置されることとなる。他方のメインジョガー210Fはシフトトレイ102に積載されているシート手前側面に位置し、上下位置としてはホームポジションをとっている。
【0047】
排出ローラ111のシフト動作が逆方向になる毎に回転軸205を、回転軸205に取り付けられたアーム209Fおよびアーム209Rがメインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rの根元を下に押し付ける方向に回転させることにより退避位置へ移動させる。
【0048】
シフト動作が発生する毎に反対側の揃え部材を前の「部」のシート束上に当接させる(乗せる)ようにし、排出されたシート束を揃えていく。このとき、メインジョガー210Fおよびメインジョガー210RによってシートSがずれない摩擦係数に設定することで、シートSを安定して揃えることが可能となる。
【0049】
メインジョガー210Fおよびメインジョガー210Rの退避量については、センサS6にてフィラー208を検出するホームポジションからの退避量となる。そのため上昇量としては常に一定の量となる。ホームポジションから排出束最上位面+αの位置に移動(上昇)をさせないと、シフト動作してくる積載されたシート束と干渉(接触)して、揃え束が崩れてしまうこととなる。ここで、「+α」は最上位位置までの間の或る地点であるが、α値が大きければ排出されたシートSのカールや折りによる膨らみに対する余裕度が増える。その代わりに紙間が詰まった場合には、次シートを受け入れるに際しての復帰時間がかかることになる。
【0050】
次に、スタッカー100が備える送風機構について
図7および
図8を用いて説明する。
図7および
図8に示すファン300はスタッカー100が備える送風機構を構成する。
図7に示すようにファン300は、排出ローラ111の下方に配置されているパドル110のさらに下方に配置されていて、排出されるシートSに対して下方向から送風する。シートSは、排出ローラ111によってファン300が送風する下からの風を受けながらシフトトレイ102に排出されて積載される。
【0051】
また、ファン300は、
図8に示すように、シートSの幅方向において複数配置されている。シートSの幅方向の略中央付近にフィラー112が配置されている。ファン300は、フィラー112を中心として幅方向の一方(手前側)と、他方(奥側)に同じ数が並べられている。複数のファン300は、シートSの搬送方向の整合面をなるエンドフェンス301よりも、シフトトレイ102の外側に配置される。ファン300の配置間隔は、シートSに向けて風を吹き出す口が等間隔になる配置であればよい。なお、ファン300の配置間隔はこれに限るものではない。
【0052】
次に、ファン300を備えるスタッカー100の構成について、さらに説明する。まず、スタッカー100においてシフトトレイ102にシートSを積載するときに生じうる現象について、
図9を用いて説明する。以下、本実施形態の説明においては、シフトトレイ102にすでに積載されているシートSのシート束の最上位にあるシートSを「最上部シートS’」と表記する。また、これからシフトトレイ102に排出されるシートS(次に排出されるシートS)を「次シートSn」と表記する。
【0053】
図9は、次シートSnが排出ローラ111によってシフトトレイ102に向かって排出され、その後、最上部シートS’に次シートSnの排出方向の先端部が接触した状態を例示している。
図9に示すように、シフトトレイ102にすでにシート束があって、そこに次シートSnが新たに積載される「シート受け入れ時」において、次シートSnの排出方向の先端部が最上部シートS’に接触すると、最上部シートS’には
図9の矢印で示す「力F」が加わる。この力Fは、次シートSnと最上部シートS’との摩擦力等によって生ずる力である。この力Fは、最上部シートS’をシフトトレイ102から押し出す方向に生ずる。したがって、シート受け入れ時において、最上部シートS’がシフトトレイ102に積載されている状態から押し出される「押し出し現象」が起こりうる。押し出し現象が起きると、シート束の揃え精度が低下する要因になる。
【0054】
シート束の揃え精度の低下を防止する策として、次シートSnから排出ローラ111を通過して排出口から最上部シートS’に至るまでの間、ファン300を動作させて、次シートSnに送風する方法がある。風を受けた次シートSnの先端部は、最上部シートS’に接触する位置が風のない場合に比べて、エンドフェンス301から遠い位置になる。これによって、力Fが最上部シートS’に加わる時間を短くすることができる。力Fが加わる時間が短ければ、最上部シートS’をシート束から押し出そうとする状態も短い時間でしか生じないことになる。その結果、最上部シートS’の押し出しによるシート束の揃え精度の低下を防止することができる。
【0055】
本発明に係るシート積載装置の実施形態であるスタッカー100であれば、次シートSnに対する送風があっても、シート束の揃え精度を低下させる事態が起きるときであっても、積載されるまでの次シートSnの姿勢の乱れを効果的に防止する機能を備える。
【0056】
ここで、本実施形態に係るスタッカー100が備える制御部150の構成について
図10を用いて説明する。スタッカー100の制御部150は、ハードウェア構成としてCPUやRAMおよびROMなどの半導体素子により構成されるコントローラ10と、コントローラ10からの制御によってトレイ昇降モータ108、ファン300、排出ローラ111等を動作させるドライバ20と、を備える。
【0057】
トレイ昇降モータ108は、シフトトレイ102を上下に移動させるための駆動力を与えるモータであって、シート積載手段を構成するシフトトレイ102の高さ位置を調整するための高さ調整機構を構成する。
【0058】
コントローラ10は、シート搬入センサS1,シート搬送パスセンサS2、パドル110、からの入力を受け付けて、ROMなどの不揮発性記憶媒体に格納されている制御プログラムによる所定の処理を実行する。また、コントローラ10は、操作部250(
図1)からの設定情報等の入力を受け付けて、制御プログラムが用いることができるように記憶する。
【0059】
操作部250からは、例えば、送風手段であるファン300の動作の有無の設定情報を入力する。当該設定情報は、プリンタ500のオペレーションパネル上で設定された記録媒体の種別あるいは記録媒体の供給部が備えるセンサ等により判別された記録媒体の種類に対応して、当該種類の記録媒体が排出されたときの制御内容を設定する情報である。設定情報には、シート条件に応じた送風の有無を示す情報、トレイ昇降モータ108の動作量を示す情報、シフトトレイ102の動作方向を示す情報、などが含まれる。 すなわち、設定情報は、シート条件に基づいて、ファン300の動作、シフトトレイ102の動作を決定する情報である。
【0060】
送風の有無について説明すると、例えば、コート紙では送風をおこない、普通紙では送風をおこなわない、などの制御を行うようにする情報を含む。この情報は、操作部250から入力され、これをコントローラ10は記憶される。したがって、以下で説明する処理は、コントローラ10に記憶されている設定情報に基づいて、送風の有無を判断した後にシフトトレイ102の動作内容を決定し実行されるものである。
【0061】
なお、記録媒体の種類が「コート紙」の場合は、記録媒体同士が貼りつきやすい性質を有する。この場合は、送風を行いながらシフトトレイ102への排出を行う方が、シート束の揃え精度を高めることになる。
【0062】
また、記録媒体の種類が「普通紙」の場合は、シフトトレイ102をコート紙の場合よりも高くした状態で、送風をおこなわずに排出を行ってもよい。これにより、シフトトレイ102に早めに記録媒体を着地させることができ、落下中の姿勢が乱れ(先端から丸まるなどの座屈)を防止することができる。
【0063】
なお、送風の有無は用紙種類だけでなく他の条件により変えてもよい。また、ユーザがプリンタ500のオペレーションパネル上で送風の有無を切り換えられるようにしてもよい。
【0064】
次に、スタッカー100が備える制御部150の機能ブロックについて
図11を用いて説明する。
図11に示す様に制御部150は、シート検知部11と、排出ローラ制御部12と、設定情報読出部13と、設定情報記憶部14と、動作条件判定部15と、シフトモータ制御部16と、ファン動作制御部17と、を少なくとも有する。
【0065】
シート検知部11は、シート搬入センサS1とシート搬送パスセンサS2が検知した結果を受け取り、これによってシートSがスタッカー100に搬入されてくることを検知する。また、シート検知部11は、排出ローラ111の回転動作を開始させるトリガーを与える。
【0066】
排出ローラ制御部12は、シート検知部11からのトリガーにより、排出ローラ111を回動させる。これによって、次シートSnが排出ローラ111によって排出される状態を開始する。
【0067】
設定情報読出部13は、予め操作部250から入力された設定情報であって設定情報記憶部14に記憶されている設定情報を読み出して、その内容を動作条件判定部15に渡す。
【0068】
設定情報記憶部14は、操作部250を介して設定される設定情報(シートSのサイズ、種類などを示すデータであるシート条件に対応して送風の有無などを設定した情報)を記憶する。なお、シート条件は操作部250を介して入力されてもよいし、プリンタ500から通知されてもよい。
【0069】
動作条件判定部15は、シート検知部11からのトリガーを受けて、次シートSnに係るシート条件を特定し、このシート条件に基づく設定情報を読み出すように、設定情報読出部13に対して指示をする。また、動作条件判定部15は、読み出された設定条件に基づいて、トレイ昇降モータ108とファン300の動作を制御するための制御内容を判定する。判定した制御内容は、シフトモータ制御部16とファン動作制御部17に通知される。
【0070】
シフトモータ制御部16は、動作条件判定部15から通知された制御内容に基づいて、トレイ昇降モータ108の動作を制御する。
【0071】
ファン動作制御部17は、動作条件判定部15から通知された制御内容に基づいて、ファン300の動作を制御する。
【0072】
次に、本実施形態に係るスタッカー100における処理動作の流れについて、
図12のフローチャートと、各処理段階の状態を示す
図13~
図15を用いて説明する。なお、
図13~
図15は、スタッカー100が備えるシフトトレイ102を側面から見た図である。
【0073】
図12に示すように、まず、シート搬送パスセンサS2がシートSを検知すると、その検知信号はシート検知部11において処理されて、動作条件判定部15が排出ローラ制御部12に対して排出ローラ111の動作開始のトリガーとする(S1201/YES)。この場合、予め操作部250を介して、シートSの排出先はシフトトレイ102が設定されているものとする。このときのシフトトレイ102は、
図13に示すように、すでに積載されているシート束の高さに応じてフィラー112によって制限される高さ位置にあるものとする。
【0074】
図12に戻る。S1201において、シート搬送パスセンサS2がシートSを検知しなければ、処理はS1201においてループする。シート検知部11からのトリガーに基づいて、排出ローラ制御部12が排出ローラ111の回転動作を開始する(S1202)。排出ローラ111の回転動作は、当該シートSの排出が終了するまで継続し、シートSの排出が終了すれば停止するように制御される。
【0075】
続いて、動作条件判定部15が、設定情報読出部13に指示をして、設定情報記憶部14から読み出した設定情報に基づいて、当該シートSに対して送風する設定がなされているか否かを判定する(S1203)。シートSのシート条件は、予めプリンタ500から通知されるか、スタッカー100において設定されているものとする。排出されようとしているシートSに対応するシート条件に基づいて設定情報を参照し、「送風無し」が設定されていれば(S1203/NO)、以下の処理は行わない。
【0076】
排出されてようとしているシートSに対応するシート条件に基づいて設定情報を参照すると「送風有り」であれば(S1203/YES)、動作条件判定部15が、シフトモータ制御部16に対して、シフトトレイ102を下降させる制御を指示する(S1204)。このときの下降量は、予め設定されている設定値である。
【0077】
続いて、動作条件判定部15が、シート検知部11からのトリガーに基づいて、プリンタ500から通知されているシート条件に基づいて、設定情報読出部13に対して設定情報の読出しを指示する。設定情報読出部13は、設定情報記憶部14から設定条件を読み出して、動作条件判定部15に渡す(S1205)。
【0078】
続いて、動作条件判定部15は、S1205において渡された設定条件に基づいて、予め通知されているシート条件に基づく動作制御の内容を特定するための判定処理を実行する(S1206)。例えば、シート条件に含まれるシート種別が第一シート種別である「コート紙」であるか否かを判定する。ここで、コート紙であれば(S1206/YES)、動作条件判定部15は、コート紙に対応する動作制御を行う(S1207)。シート種別が「コート紙」でなく第二シート種別である「普通紙」であれば(S1206/NO)、動作条件判定部15は、普通紙に対応する動作制御を行う(S1208)。
【0079】
S1207および1208は、動作条件判定部15がシート種別に応じて変更するトレイ昇降モータ108の動作量および動作タイミング、ファン300の動作量および動作タイミングに基づく処理である。動作条件判定部15が変更内容に基づいて、シフトモータ制御部16に対する動作内容を通知し、シフトモータ制御部16は通知された制御内容に基づいてトレイ昇降モータ108を動作させる。また、動作条件判定部15が変更内容に基づいて、ファン動作制御部17に対する動作内容を通知し、ファン動作制御部17は通知された制御内容に基づいてファン300を動作させて送風量を制御する。
【0080】
以下、上記の処理の流れに沿って、シフトトレイ102の動作制御について図面を参照しながら説明する。
【0081】
S1202において排出ローラ111が動作する瞬間は
図13に例示した状態であるが、S1203において「送風有り」と判定された後の状態を
図14に例示する。排出ローラ111が動作することで、
図14(a)のように、次シートSnが排出と共にトレイ昇降モータ108の動作によってシフトトレイ102が下降する。このときのシフトトレイ102は、シート束を積載したままで予め記載された規定値に対応する位置まで下降する。これのように、次シートSnの排出時に最上部シートS’の高さ位置が変化させると、次シートSnの着地位置が変化する。
【0082】
規定量の下降をしたシフトトレイ102に対して、次シートSnの先端部が最上部シートS’に接触すると
図14(b)のようになる。
図14(b)に示すように、接触位置は、排出ローラ111やエンドフェンス301から離れた位置であって、例えば、シフトトレイ102の先端部近傍に相当する。すなわち、次シートSnの接触によって最上部シートS’に力Fを加える時間を短くすることができる。このとき、ファン動作制御部17の制御に基づいて、ファン300が動作している。
【0083】
送風されながら排出された次シートSnが
図14(b)のように、最上部シートS’の先端部近傍で接触し始めて、シート束に新たに積載される。すなわち、次シートSnが排出されているときにシフトトレイ102を所定量だけ下降させて、次シートSnが最上部シートS’に接触する位置を調整するように制御する。これによって、次シートSnの排出によって最上部シートS’が積載状態から滑り落ちてシート束の揃え精度を乱すことを防止することができる。なお、S1204におけるシフトトレイ102の下降量は、予め規定する初期値とするが、この初期値は、操作部250を介して、予め設定される排出シート種別(シートSの種別)に基づいて、異なる初期値が選択されてもよい。すなわち、積載するシートSの種別を予め設定しておくことで、これらが積載されたときに、シート束の揃え精度を乱すことを防止するのに最適なシフトトレイ102の位置を選択的に設定するものでもよい。
【0084】
したがって、
図14(a)および
図14(b)のように次シートSnが排出されるときは、シフトトレイ102が下降して、次シートSnの落下量が多くなっても、次シートSnの姿勢が乱れないように保たれながら着地することができる。
【0085】
以上のように、本実施形態に係るスタッカー100は、次シートSnが排出されるときに、シフトトレイ102の下降量(または、その後の上昇量)を決定し、それに基づいてシフトトレイ102が下降(上昇)するように、トレイ昇降モータ108の動作を制御する。これによって、シート束に対して加わる押し出し力(力F)による、シート束の揃え精度の低下を防止することができる。
【0086】
なお、排出されるシートSの種別などを特定するシート条件は、プリンタ500から通知されてもよいし、操作部250において入力されるものでもよい。この場合、シート搬入センサS1において次シートSnが検知されたときに、同時にプリンタ500から、この次シートSnに関するシート条件が通知されるようにしてもよい。通知されたシート条件に基づいて、動作条件判定部15が初期値を選択し、シフトモータ制御部16を介してトレイ昇降モータ108を動作させて、シフトトレイ102を下降させてもよい。
【0087】
また、
図12に示したフローチャートのS1207、S1208にて説明したように、シート種別に応じて動作制御内容を変更する場合、例えば、シート条件において示されたシートSが「コート紙」であった場合は、S1207において、ファン300の動作を継続し、シート種別が「普通紙」であった場合には、ファン300の動作量を弱めるように制御してもよい。
【0088】
シフトトレイ102に積載されているシートSも、次シートSnも普通紙の場合は、次シートSnの先端部が最上部シートS’に接触する位置において生ずる力Fはコート紙に比べてば小さい。したがって、普通紙の場合は送風により次シートSnの先端部を排出口から遠くしなくても問題が無い場合もある。したがって、普通紙の場合はコート紙とは異なり、次シートSnが排出されるときに送風を弱めるように制御してもよいし、送風を止めても、積載されているシートSの揃え具合を乱すことは避けられる。
【0089】
また、普通紙の場合はコート紙の場合よりも、シフトトレイ102の下降量は少なくするように制御してもよい。この場合、次シートSnが最上部シートS’に接触する位置は規定値まで下降させたときに比べると、排出口から遠い位置にならないが、着地において生ずる力Fも小さいので、シート束の揃え精度を悪化させる可能性は低くなる。
【0090】
したがって、普通紙の場合は、送風を弱める、または停止し、かつ、シフトトレイ102に積載されているシート束に対して早めに着地させように、シフトトレイ102の位置を調整してもよい。これによって、積載されるシートSの落下中(積載途中)に先端部から丸まって座屈することを防ぐことができる。
【0091】
また、次シートSnも最上部シートS’もコート紙の場合は、上記と異なる制御を必要とする。すなわち、コート紙は普通紙に比べて互いに貼り付きやすい性質があるので、この場合は、力Fが普通紙よりも大きく生ずる。そこで、コート紙の場合は、送風を確実に行い、かつ、シフトトレイ102の下降量も普通紙の場合よりも大きくなるようにトレイ昇降モータ108の動作を制御する。シート種別がコート紙の場合は、初期値として設定されているシフトトレイ102の下降量よりさらに多く下降するように、動作条件判定部15がシフトモータ制御部16に対してトレイ昇降モータ108の駆動量を調整する処理を実行する。
【0092】
これによって、コート紙に適した次シートSnが最上部シートS’に接触する状態を作り出すことができ、最上部シートS’に力Fが加わる時間を短くすることができ、シート束の揃え精度を悪化させる状況の発生を防止することができる。
【0093】
なお、ファン300の動作の制御(送付の有無の制御)は、上記のようにシート条件のみに限定するものではない。たとえば、スタッカー100を使用するユーザが、操作部250を操作して送風の有無を切り換えられるようにしてもよい。
【0094】
次に、本実施形態に係るスタッカー100における、シートSの排出制御に関する別の実施形態について
図15を用いて説明する。シート条件において示されるシートSの種別が、コシが弱く厚みの無いシート種別を示す情報であるとき、
図14(a)のようにシートSを排出すると、その先端が垂れ下がる。この場合、次シートSnを受け入れるシフトトレイ102の位置が下降した位置のままでは、先端の垂れ下がりが大きくなり、次シートSnの先端部が最上部シートS’に着地したときに、接触角度が急角度になる。その結果、次シートSnが座屈したり、先端部が丸まって正常に積載されなかったり、排出および積載が正常にできなくなる。
【0095】
そこで
図15(a)に示すように、シフトトレイ102を下降させて、次シートSnが最上部シートS’に接触するタイミングを予測して、
図15(b)に示すように、シフトトレイ102をある程度上昇させるように制御すればよい。これによって、コシの弱いシートSが排出されるときでも、その先端部がシート束に接触する角度が急角度になる前に、次シートSnを最上部シートS’に接触させることができる。これによって、座屈などを防止することができる。
【0096】
なお、シフトトレイ102を上昇させるタイミングは、シート搬送パスセンサS2において次シートSnの後端を検知したタイミングにしてもよい。このように制御することによって、次シートSnの先端が、最上部シートS’に接触する位置をできる限り排出ローラ111から離れた位置にできる。
【0097】
また、S1206およびS1207において、シフトトレイ102の位置を制御するときに、次シートSnの後端がすでに検知されていれば、シフトトレイ102を上昇させて、シフトトレイ102に積載済みのシート束後端をパドル110が抑える位置に移動させてもよい。
【0098】
以上のようにシフトトレイ102の下降と上昇のタイミングおよび量を制御することで、次シートSnの先端を可能な限り排出ローラ111から離れた位置で、シート束上面にある最上部シートS’に接触させつつ、シート束の後端をパドル110で抑えることができる。これによって、シートSでの押し出しを最小限にとどめることができる。
【0099】
また、シフトトレイ102を上昇させるタイミングで、ファン300を停止させるよう
に動作条件判定部15がファン動作制御部17に対して制御内容を通知し、ファン動作制
御部17は、それに基づいてファン300を停止してもよい。これによって、ファン30
0からの送風がシフトトレイ102上のシートの束後端に影響を与えて、揃え精度を乱す
ことを防止できる。
【0100】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0101】
10 :コントローラ
11 :シート検知部
12 :排出ローラ制御部
13 :シート条件読出部
14 :シート条件記憶部
15 :動作条件判定部
16 :シフトモータ制御部
17 :ファン動作制御部
100 :スタッカー
102 :シフトトレイ
108 :トレイ昇降モータ
111 :排出ローラ
112 :フィラー
150 :制御部
208 :フィラー
250 :操作部
300 :ファン
301 :エンドフェンス
500 :プリンタ
550 :制御部
1000 :画像形成システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】