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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018047715
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019159176
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】山口嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】藤本一平
(72)【発明者】
【氏名】島田浩幸
(72)【発明者】
【氏名】関貴之
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸隆
(72)【発明者】
【氏名】福田善行
(72)【発明者】
【氏名】吉永洋
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-092569(JP,A)
【文献】特開2016-028264(JP,A)
【文献】特開2017-125922(JP,A)
【文献】特開2015-081946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する無端状の定着部材と、
前記定着部材を加熱する熱源と、
前記定着部材に対向する加圧部材と、
前記定着部材と前記加圧部材との間にニップを形成するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、を有する定着装置において、
前記支持部材と当接する前記ニップ形成部材の裏面が長手方向において非直線形状を有し、
前記非直線形状は、前記支持部材側に凸の形状であり、一方の端部から中央部へ向かう直線と、当該中央部から他方の端部に向かう直線とで形成される凸形状を有し、前記中央部に1つの形状変化点を有しており、当該凸形状の部分全面で前記支持部材に接触する、ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
可撓性を有する無端状の定着部材と、
前記定着部材を加熱する熱源と、
前記定着部材に対向する加圧部材と、
前記定着部材と前記加圧部材との間にニップを形成するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を直接又は他の部材を介して支持する支持部材と、を有する定着装置において、
前記ニップ形成部材を支える前記支持部材の支持面が長手方向において非直線形状を有し、
前記非直線形状は、前記加圧部材側に凸の形状であり、一方の端部から中央部へ向かう直線と、当該中央部から他方の端部に向かう直線とで形成される凸形状を有し、前記中央部に1つの形状変化点を有しており、当該凸形状の部分全面で前記ニップ形成部材又は前記他の部材に接触する、ことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記定着部材の軸方向の温度を平均化する均熱部材が、前記ニップ形成部材と前記定着部材の間に設置され、
前記定着部材に接する前記均熱部材の表面には摺動剤がコーティングされている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着部材に接する前記ニップ形成部材の表面には摺動剤がコーティングされている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着ベルト内にハロゲンヒータの熱源を有し、定着ベルト内に固定され表面に摺動部材が配置されたニップ形成部材に加圧ローラを押圧してニップを形成する電子写真方式の定着装置においては、加圧ローラから荷重を受けるステーが撓むため、ニップの中央部が狭くなってしまう。これを回避するためにニップ形成部材又はステーに凸形状を設ける必要があるが、従来構成では摺動部材がシートであるために、シートを固定する固定部材が必要となり、この固定部材のためにスペースが占有されて、ハロゲンヒータの照射範囲が狭められ、また凸形状の形にも制約があった。
【0003】
特許文献1の定着装置では、低摩擦材料からなり潤滑剤が含浸されたシート状部材が、ニップ部の位置で固定部材と定着ベルトとの間に幅方向にわたって介在されるように固定部材の周方向に沿って覆設されている。シート状部材は、貼着手段に加えて、ねじによって固定部材に固定されている。
【0004】
しかし、ねじがステーに接触しないように、固定部材には突起部が形成されており、突起部の分だけ定着ベルト内のスペースが占有されてしまう。そのため、ハロゲンヒータの照射範囲が狭められ、熱効率が低下してしまう。
【0005】
一方で、定着装置において形成されるニップは軸方向において均一な幅を有する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、熱源の照射範囲を従来よりも広げてウォームアップ時間の短縮化と省エネルギー化を実現するとともに、簡単な構成で支持部材の撓みをキャンセルして均一なニップを形成できる定着装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、可撓性を有する無端状の定着部材と、前記定着部材を加熱する熱源と、前記定着部材に対向する加圧部材と、前記定着部材と前記加圧部材との間にニップを形成するニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、を有する定着装置において、前記支持部材と当接する前記ニップ形成部材の裏面が長手方向において非直線形状を有し、前記非直線形状は、前記支持部材側に凸の形状であり、一方の端部から中央部へ向かう直線と、当該中央部から他方の端部に向かう直線とで形成される凸形状を有し、前記中央部に1つの形状変化点を有しており、当該凸形状の部分全面で前記支持部材に接触する、ことを特徴とする定着装置により解決される。
【発明の効果】
【0008】
熱源の照射範囲を従来よりも広げてウォームアップ時間の短縮化と省エネルギー化を実現できる。また、簡単な構成で支持部材の撓みをキャンセルして均一なニップを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る定着装置を適用する画像形成装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】記録材搬送方向に見たときのニップ形成部材の概略形状を示す図である。
図4】従来の定着装置の概略構成図である。
図5】同定着装置におけるニップ形成部材を記録材搬送方向から見たときの概略図である。
図6】「非直線形状」を示す説明図である。
図7】第2実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図8】記録材搬送方向に見たときのステーの支持面(切断面)の概略形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
先ず、図1を用いて実施形態に係る定着装置を適用する画像形成装置の構成を説明する。
図1に示した画像形成装置は、複数の色画像を形成する画像形成部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式を用いるカラープリンタあるが、本発明はこの方式に限られず、プリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
画像形成装置100では、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
【0011】
図示の構成の画像形成装置100では、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、1次転写行程の実行により、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対峙しながら矢印A1方向に移動可能な無端ベルトが用いられる中間転写体(以下、転写ベルトという)11に対して重畳転写され、その後、中間転写体上の画像は記録シートなどが用いられる記録媒体Sに対して2次転写行程の実行により一括転写されるようになっている。
【0012】
各感光体ドラムの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されている。ブラック画像形成を行う感光体ドラム20Bkを例として説明すると、感光体ドラム20Bkの回転方向に沿って、画像形成処理を行う帯電装置30Bk、現像装置40Bk、1次転写ローラ12Bk及びクリーニング装置50Bkが配置されている。感光体ドラムの帯電後に行われる書き込みには、光書込装置8が用いられる。
【0013】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるように、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対向して配設された1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0014】
各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
【0015】
画像形成装置100は、色毎の画像形成処理を行う4つの画像ステーションと、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの上方に対向して配設され、転写ベルト11及び1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkを備えた転写ベルトユニット10と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11に従動し、連れ回りする転写部材としての転写ローラである2次転写ローラ5と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11上をクリーニングするクリーニング装置13と、これら4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置としての光書込装置8とを有している。
【0016】
光書込装置8は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラー及び偏向手段としての回転多面鏡などを装備しており、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lb(図1では便宜上、ブラック画像の画像ステーションのみを対象として符号が付けてあるが、その他の画像ステーションも同様である)を出射して感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに静電潜像を形成するように構成されている。
【0017】
画像形成装置100には、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間に向けて搬送される記録媒体Sを積載した給紙カセットとしてのシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた記録媒体Sを、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対4と、記録媒体Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知するセンサとが設けられている。
【0018】
また、画像形成装置100には、トナー像が転写された記録媒体Sにトナー像を定着させるためのローラ定着方式の定着装置200と、トナー像の定着済みの記録媒体Sを画像形成装置100の本体外部に排出する排紙ローラ7と、画像形成装置100の本体上部に配設されて排紙ローラ7により画像形成装置100の本体外部に排出された記録媒体Sを積載する排紙トレイ17と、排紙トレイ17の下側に位置し、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9C、9M、9Bkとが備えられている。
【0019】
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkの他に、転写ベルト11が掛け回されている駆動ローラ72及び従動ローラ73を有している。
【0020】
従動ローラ73は、転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このために、従動ローラ73にはスプリングなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット10と、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkと、2次転写ローラ5と、クリーニング装置13とで、転写装置71が構成されている。
【0021】
シート給送装置61は、画像形成装置100の本体下部に配設されており、最上位の記録媒体Sの上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が反時計回りに回転駆動されることにより、最上位の記録媒体Sをレジストローラ対4に向けて給送するようになっている。
【0022】
転写装置71に装備されているクリーニング装置13は、詳細な図示を省略するが、転写ベルト11に対向、当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有しており、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
【0023】
クリーニング装置13はまた、転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための排出手段を有している。
【0024】
図2は、本発明の第1実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
定着装置200内には、加圧部材としての加圧ローラ203と、可撓性を有し回転可能な無端状の定着部材としての定着ベルト201が対向配置されている。定着ベルト内部には、定着ベルトを介した加圧ローラ203の押圧により定着ベルト201と加圧ローラ203との間にニップを形成するニップ形成部材206、ニップ形成部材を支持する支持部材としてのステー207、ニップ形成部材の外側に摺接しながら回転可能な定着ベルト201を加熱する熱源としてのハロゲンヒータ202、輻射熱を反射する反射部材209及びそれら部材を保持する保持部材としてのフランジ208が配置されている。
【0025】
ニップ形成部材206は、図2に示すように複数の樹脂部品及び金属部品から構成されるアッセンブリ体である。加圧ローラ203寄りのニップ面に配置された均熱部材217は軸方向の温度を平均化するために配置されている。また均熱部材217の一部にはハロゲンヒータ202の熱を吸収できる吸熱部が設けられており、吸熱部で受け取った熱をニップまで輸送することができるようになっている。吸熱部はハロゲンヒータ202からの熱を効率よく吸収するために黒色の塗装が施されている。また均熱部材217は、素早く熱を輸送し且つ温度分布を平均化させるために、金、銀、銅、グラファイト等の熱伝導率の高い材料で構成されることが好ましい。本構成ではコスト、加工性、強度を考慮して純銅を用いている。均熱部材217はニップ面に近いため、熱容量と均熱性を考慮する必要があり、その観点から厚さ0.4mm~1mm程度の純銅板金を用いることが好ましい。このようにして、ニップ形成部材206は、均熱部材217を介してベルト内面と間接的に摺動するようになっている。
【0026】
加圧ローラ203は、金属ローラとその周りのシリコーンゴム層を有し、離型性を得るために表面には離型層(PFA又はPTFE層)が設けてある。加圧ローラ203は、画像形成装置100に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。また、加圧ローラ203は、スプリングなどにより定着ベルト201側に押し付けられており、ゴム層が押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を有している。加圧ローラ203は中実のローラでも中空のローラでも良いが、中空のほうが熱容量は少なくて良い。また、加圧ローラ203がハロゲンヒータなどの加熱源を有していても良い。シリコーンゴム層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ203内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト201の熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0027】
ベルトはニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端ベルト(又はフィルム)で構成される。ベルトの表層はPFA又はPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。ベルトの基材とPFA又はPTFE層の間にはシリコーンゴム層などからなる弾性層があってもよい。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押し潰して定着するときにベルト表面の微妙な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の跡が残るという不具合が生じ得る。これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微妙な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0028】
また、定着ベルト201の内部には、ニップを支持するための支持部材であるステー207を設け、加圧ローラ203により圧力を受けるニップ形成部材206の撓みを防止し、軸方向(紙面垂直方向)で均一なニップ幅を得られるようにしている。ステー207は剛性を確保するためにアルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属材料でできている。このステー207は軸方向両端部で側板に保持固定され、位置決めされている。
【0029】
ニップ形成部材206の樹脂部分は、耐熱樹脂の射出成形品であることが望ましく、耐熱樹脂の種類としてはLCP(耐熱温度330℃程度)、PEK(耐熱温度350℃程度)などが望ましい。
【0030】
また、ハロゲンヒータ202とステー207の間に反射部材209を備え、これがハロゲンヒータ202からの輻射熱などを反射することで、輻射熱などによりステー207が加熱されてしまうことによるエネルギー浪費を抑制している。ここで、反射部材209を備える代わりに、ステー207の表面に断熱処理若しくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることができる。熱源としては図示したハロゲンヒータでも良いが、IHコイル、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であっても良い。
【0031】
定着ベルト201は外部のローラにより連れ回り回転する。この際、加圧ローラ203が駆動源により回転し、ニップで定着ベルト201に駆動力が伝達されることにより定着ベルト201が回転する。
【0032】
さらに、本実施形態の定着装置200では、ハロゲンヒータ202と定着ベルト201の間に、ハロゲンヒータ202の熱を遮断する遮蔽部材を有してもよい。この遮蔽部材は非常に高い耐熱性を要するためアルミニウム、鉄、ステンレス鋼などで構成されることが望ましい。
【0033】
遮蔽部材は、厚さ0.1mm~1.0mmの金属板を、定着ベルト201の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成される。また、遮蔽部材は、必要に応じて定着ベルト201の周方向に移動可能に構成される。
【0034】
上記のような構成により安価で、ウォームアップが早い定着装置200を実現することができる。
【0035】
次に、図4図5を用いて従来の定着装置について説明する。図4は、従来の定着装置の概略構成図、図5は、同定着装置におけるニップ形成部材を記録材搬送方向から見たときの概略図である。
図4に示すように、摺動シートを用いた従来型の定着装置200においては、一般的に、ニップ部の摺動抵抗を低減するために、PTFE製の糸から形成された摺動シート211にシリコーンオイル等の潤滑剤を含浸させたものを樹脂性のニップ形成部材206に固定していた。この構成におけるニップ形成部材206の一つの役割は摺動シート211を保持することである。摺動シート211はニップ形成部材206に巻きつけられ、ニップ形成部材206の裏側(ニップ面とは反対側)でねじにより固定される(例えば特許文献1参照)。このとき、ねじがステー207に突き当たるとニップ位置精度が低下するので、ねじ頭が当たらないようにニップ形成部材206の裏側には複数の突起部215が設けられており、突起部215がステー207に当接するようになっている。
【0036】
ここで図5において各突起部215の頂部を結ぶ仮想稜線Xで示すように、各突起部215の頂部を結ぶ稜線は緩やかな曲線形状になっている。具体的には、稜線は、ニップ形成部材206の一方の端部から中央部、中央部から他方の端部に向かって凸形状を有しており、言い換えれば、両端部での突起部215の高さは低く、中央部での突起部215の高さは高い。これにより、加圧ローラ203による押圧時のステー207の撓み(ステーの長手方向中央部の凹み)をキャンセルして平坦なニップを形成することができる。なお図5では、一方の端部から中央部までのニップ形成部材206が示されている。
【0037】
しかしながら、ねじ頭がステー207に当たらないように突起部215の高さを確保する必要があるため、突起部215の分だけステー207は加圧ローラ203側に寄ることができず、その分ハロゲンヒータ202の照射範囲も狭まってしまう。また、このような凸形状を有するニップ形成部材206は高精度の加工を要するため難加工部品である。
【0038】
そこで、図2図3に示す第1実施形態に係る定着装置200では、ニップ形成部材206は、突起部を有しない平坦な樹脂材料から成るが、ステー207と当接するニップ形成部材206の裏面216が長手方向において非直線形状を有している。ここで、「非直線形状」とは、最大通紙幅内で形状変化点が存在する形状を意味する。例えば、図6に示すように、R形状(他の曲線形状であってもよい)(図6(a))や山型(V字形)(図6(b))などが「非直線形状」に含まれる。R形状(他の曲線形状であってもよい)は、連続的な形状変化点の集合とみなすことができる(図6(a))。山型(V字形)は、一方の端部から中央部へ向かう直線と、中央部から他方の端部に向かう直線とで形成される凸形状を有しており、中央部に1つの形状変化点Yを有している(図6(b))。図6は、記録材搬送方向に見たときのニップ形成部材206の概略形状を示す図である。
【0039】
図3を参照して、より具体的には、ニップ形成部材206は記録材搬送方向から見て、その長手方向中央部がステー207側に凸形状を有し、加圧ローラ203側では平坦な形状を有するように構成されている。言い換えれば、ニップ形成部材206の裏面216は凸形状(より具体的にはR形状)を有し、ニップを形成するおもて面214は平坦な形状を有する。よって、ニップ形成部材206の非直線形状はステー207側に凸の形状であることを意味する。これにより、簡単な構成で、加圧ローラ203による押圧時にステー207の撓み(ステーの長手方向中央部の凹み)をキャンセルして均一なニップを形成することができる。なお、ニップ形成部材206がステー207側に凸の形状を有している理由は、ステー207の長手方向中央部の凹みをキャンセルために、ステー207側に指向していてステー207に接するニップ形成部材206の裏面216が凸形状を有することが効果的だからである。また、ニップ形成部材206の裏面216は分断されていない一繋ぎのR形状を有し、当該R形状の部分全面でステー207に接触する。これにより、均一なニップ幅とニップ圧を得ることができる。
【0040】
また、図4図5に示す従来型のニップ形成部材とは異なり、図2図3に示すニップ形成部材206には突起部215や、摺動シート211や、摺動シートを固定するためのねじが設けられておらず、よって、ステー207はニップ形成部材206の裏面216の全体に当接している。これにより、図2に示す本実施形態に係る定着装置200では、図4に示す従来型の定着装置に比べて、ステー207を加圧ローラ203側により近づけることができ、ステー207を移動させた分だけハロゲンヒータ202の照射範囲を拡大することができる。したがって、定着ベルト201のウォームアップ時間の短縮化と省エネルギー化を実現できる。またニップ形成部材206は突起部を有しないため、その加工が容易となる。
【0041】
また、本実施形態に係る定着装置200では、摺動シート211に代えて、定着ベルト201の軸方向の温度を平均化する均熱部材217が、ニップ形成部材206と定着ベルト201の間に設置されている。均熱部材217は長手方向に直線形状を有する。さらに、定着ベルト201と接する均熱部材217の表面には摺動剤としてフッ素樹脂がコーティングされている。これにより、定着ベルト201と均熱部材217の間に作用する摩擦力を低減し、定着ベルト201の内周面の摩耗を軽減することができる。さらに、摺動シート211を用いずにフッ素樹脂コーティングを用いたことで、突起部215(図4)やねじを排除でき、その分省スペース化が実現され、ステー207を加圧ローラ203側により近づけることができるため、ハロゲンヒータ202の照射範囲を拡大することができる。
【0042】
なお本実施形態では、ニップ形成部材206のおもて面214には摺動剤をコーティングされた均熱部材217が設置されているが、均熱部材217を用いずに、ニップ形成部材206のおもて面214に摺動剤を直接コーティングしてもよい。これにより、均熱部材217を用いた場合よりも均熱性は劣るが、優れた摺動性と均熱部材217を排除した分のコストダウンを図ることができる。
【0043】
また、樹脂材料から成るニップ形成部材206のもう一つの役割は断熱効果である。図4に示すように、ステー207の表面に摺動シート211を直接配置してニップを形成した場合は、定着ベルト201の熱がステー207に吸収されてウォームアップ時間やTEC値が増加してしまう。しかしながら、ニップ形成部材206は断熱効果が高い反面、連続通紙時には端部温度上昇が生じやすい。この問題を解決するためには、図2に示すように、ニップ形成部材206の表面に熱伝導性の良い銅などから成る均熱部材217を配置するのが好ましい。さらに、均熱効果を高めるために摺動性能に優れたコーティングを施した均熱部材217を用いることで従来よりもさらに熱効率と低コスト化に優れた定着装置が実現される。コーティングされた均熱部材217はそれ自体が摺動部材であるために、摺動シートのように他の部材にねじ留めする必要がない。
【0044】
図7は、本発明の第2実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
定着装置200内には、加圧部材としての加圧ローラ203と、可撓性を有し回転可能な無端状の定着部材としての定着ベルト201が対向配置されている。定着ベルト内部には、定着ベルトを介した加圧ローラ203の押圧により定着ベルト201と加圧ローラ203との間にニップを形成するニップ形成部材としての均熱部材217、均熱部材217を直接又は他の部材を介して支持する支持部材としてのステー207、均熱部材の外側に摺接しながら回転可能な定着ベルト201を加熱する熱源としてのハロゲンヒータ202、輻射熱を反射する反射部材209及びそれら部材を保持する保持部材としてのフランジ208が配置されている。
【0045】
本実施形態では、加圧ローラ203からの荷重を受ける均熱部材217を支えるステー207の支持面219が長手方向において非直線形状を有する。より具体的には、同形状を有する2つのステー207が記録材搬送方向の上流側及び下流側に設けられており、両方のステー207の2つの支持面219が長手方向において非直線形状を有する。
【0046】
図8は、記録材搬送方向に見たときのステーの支持面(切断面)の概略形状を示す図である。図8に示すように、ステー207は記録材搬送方向から見て、その長手方向中央部が加圧ローラ203側に凸形状を有している。すなわち、ステー207の支持面219の非直線形状は加圧ローラ203側に凸の形状であることを意味する。これにより、加圧ローラ203による押圧時のステー207の撓み(ステーの長手方向中央部の凹み)をキャンセルして平坦なニップを形成することができる。なお、本実施形態の凸の形状の向きが図2図3に示す第1実施形態とは異なる理由は、ステー207の長手方向中央部の凹みをキャンセルするための滑らかな凸形状を金属製の均熱部材217に付与する加工が困難であり、加圧ローラ203側に指向したステー207の支持面219自体が凸形状を有する必要があるからである。また、ステー207の支持面219は分断されていない一繋ぎのR形状を有し、当該R形状の部分全面で均熱部材217又は他の部材に接触する。これにより、均一なニップ幅とニップ圧を得ることができる。
【0047】
支持面219は、ステー207の加工時に作成されたステー207の切断面であり、このようなR形状は、ステー207の加工時に切断加工によって簡単に付与される。均熱部材217をステー207の切断面で支えることにより、均熱部材217とステー207が線接触となるため、ハロゲンヒータ202の熱がステー207に流れにくくなる。
また、ステー207と均熱部材217の間に介在する他の部材としては、樹脂などの断熱部材から成る断熱シートが好ましい。
【0048】
また、図4図5に示す従来型の定着装置200とは異なり、図7図8に示す定着装置200には、樹脂材料から成るニップ形成部材206や、摺動シート211や、摺動シートを固定するためのねじが設けられていない。これにより、図7に示す本実施形態に係る定着装置200では、図4に示す従来型の定着装置に比べて、ステー207を加圧ローラ203側により近づけることができ、ステー207を移動させた分だけハロゲンヒータ202の照射範囲を拡大することができる。したがって、定着ベルト201のウォームアップ時間の短縮化と省エネルギー化を実現できる。
【0049】
図2図3に示す第1実施形態ではニップ形成部材206自体に凸形状を持たせていたが、本実施形態ではニップ形成部材206を削除するとともにステー207の支持面219(切断面)に凸形状を設けている。これにより、荷重がかかったときにステー207の長手方向中央部に生じる凹みによって凸形状が相殺されて平坦になるため、樹脂材料のニップ形成部材206を用いずに均熱部材217をステー207で直接支持することで、長手方向中央部におけるニップの減少を防止できる。
【0050】
以上のように、本実施形態では均熱部材217とステー207に機能配分することで、従来の樹脂材料のニップ形成部材が不要になる。樹脂材料のニップ形成部材を用いると、摺動シートを保持するねじ頭がステー207に接しないようにする厚さが必要なため、定着ベルト201内のレイアウトスペースが占有されてしまう。しかし、樹脂材料のニップ形成部材を削除することで出来た余剰スペース分、ステー207をニップ面に近づけることで、ハロゲンヒータ202の露出範囲が増え、定着ベルト201への熱効率が上がるため、ウォームアップ時間やTEC値を向上させることができる。
【0051】
また、ニップ形成部材として機能する均熱部材217の表面に直接コーティングを施すことで、従来の摺動シートの固定に要するスペースが不要になり、そのスペースにステーを移動させてハロゲンヒータの照射角度を拡大すれば熱効率を上げることができる。よって、部品点数の削減によるコストダウンと定着装置の低熱容量化が実現される。また従来の構成では、分割された複数の突起部によって凸形状を構成しているため、ニップ形成部材自体にある程度剛性がないと、突起部間で圧抜けが生じていた。加えて、複数に分割された突起部の稜線で凸形状を作るために、ニップ形成部材は難加工部品だった。これに対して、本実施形態では、ステー207の切断面に凸形状を連続した形状で付与する。これによりステー207の加工が容易となり、且つ突起部間での圧抜けを防止できる。
【0052】
また本発明によれば、低コスト・低熱容量であり且つ均一なニップを得られる定着装置200を備えた画像形成装置100が実現される。
【符号の説明】
【0053】
200 定着装置
201 定着ベルト(定着部材)
202 ハロゲンヒータ(熱源)
203 加圧ローラ(加圧部材)
206 ニップ形成部材
207 ステー(支持部材)
216 裏面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【文献】特許5943231号公報
【文献】特開2017-125889号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8