(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】切断装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/26 20060101AFI20220405BHJP
B26D 1/14 20060101ALI20220405BHJP
B26D 1/18 20060101ALI20220405BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20220405BHJP
B26D 1/24 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
B26D7/26
B26D1/14 A
B26D1/18
B41J11/70
B26D1/24 J
(21)【出願番号】P 2018049047
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉平
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216053(JP,A)
【文献】特開2012-025577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/26
B26D 1/14
B26D 1/18
B41J 11/70
B26D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に設けられた、被記録媒体を切断する刃部を有する切断部材
及び前記切断部材を駆動する駆動手段と、
前記被記録媒体の搬送方向の変化に応じて、前記刃部が前記被記録媒体に対して適切な切断位置を取るように前記被記録媒体に対する前記切断部材の相対位置を調整する位置調整手段とを
備え、
前記位置調整手段は前記ケーシングを揺動可能に支持する支軸である切断装置。
【請求項2】
請求項1記載の切断装置において、
前記ケーシングの内部に、前記刃部に向けて前記被記録媒体を案内する
、前記支軸と一体的に設けられた案内部材を有することを特徴とする切断装置。
【請求項3】
請求項2記載の切断装置において、
前記ケーシングの外部に設けられ、前記被記録媒体に対して前記案内部材を接触させる
べく前記ケーシングを前記被記録媒体に向けて付勢する付勢手段を有することを特徴とする切断装置。
【請求項4】
画像を形成する画像形成部と、請求項1ないし3の何れか一つに記載の切断装置とを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙等の長尺な被記録媒体に画像を形成する画像形成装置が知られている。このような画像形成装置の一つに、被記録媒体を画像形成部に向けて送り出し、画像形成部において画像を形成した後、画像が形成された被記録媒体をさらに下流側へと搬送し、被記録媒体の幅方向である主走査方向に移動可能な切断部材を備えた切断装置によって被記録媒体を切断する技術が知られている。
しかし今までの切断装置では、被記録媒体のロール径や巻方向によって被記録媒体の搬送量が変化するため、切断部材に対する被記録媒体の姿勢が変化して安定した切断動作を行うことが難しいという問題点があった。
【0003】
また、帯状鋼板を切削加工する際に、鋼板の板厚に関係なく切削工具の摩耗が均等となるようにするため、板厚の変動に対して切削工具を常に適正な姿勢に維持する技術があるが、この技術では切削加工面が頻繁に傾斜してしまい適正な加工が行えないという問題点があった。
そこで、鋼板上面に載るサポートローラをカッタフレームと共に上下動させ、鋼板と切削工具との相対位置を保つ技術が開示されている(例えば「特許文献1」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長尺状の被記録媒体を切断する際に、上述した「特許文献1」記載の技術を適用して被記録媒体と切断部材との相対位置を保つことが考えられるが、「特許文献1」に開示された技術では被記録媒体の搬送方向が変化する場合についての記載は見られず、被記録媒体の搬送方向が変化した場合には切断部材に対する被記録媒体の姿勢が変化して安定した切断性能を得ることができないという問題点がある。
本発明は上述の問題点を解決し、被記録媒体の搬送量及び搬送方向が変化した場合であっても安定した切断性能を得ることが可能な切断装置及びこれを用いた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ケーシングと、前記ケーシング内に設けられた、被記録媒体を切断する刃部を有する切断部材及び前記切断部材を駆動する駆動手段と、前記被記録媒体の搬送方向の変化に応じて、前記刃部が前記被記録媒体に対して適切な切断位置を取るように前記被記録媒体に対する前記切断部材の相対位置を調整する位置調整手段とを備え、前記位置調整手段は前記ケーシングを揺動可能に支持する支軸であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被記録媒体の搬送量及び搬送方向が変化した場合であっても、被記録媒体に対して各刃部が適切な位置で接触することが可能となるので、常時良好な切断性能を有する切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置の概略斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置の概略正面図である。
【
図4】従来の切断装置の問題点を説明する概略図である。
【
図5】従来の切断装置の問題点を説明する概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態に用いられる切断装置の概略図である。
【
図7】本発明の一実施形態に用いられる切断装置のシート搬送方向が変化した場合における構成を説明する概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態に用いられる切断装置のシート搬送方向が変化した場合における構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本発明の切断装置を適用可能な従来の画像形成装置であるインクジェット記録装置の概略図を、
図2は同正面図をそれぞれ示している。
同図においてインクジェット記録装置1はシリアル型画像形成装置であり、装置本体2と、装置本体2の下方に配設された給紙装置3及び巻き取り装置4とを備えている。給紙装置3及び巻き取り装置4は、本実施形態では装置本体2と一体的に設けられているが、それぞれ別体または何れか一方が別体で設けられていてもよい。装置本体2の内部には、画像形成を行う画像形成部5が配設されている。
【0009】
画像形成部5は、図示しない両側板に掛け渡されたガイドロッド6及びガイドステー7を有しており、これらによってキャリッジ8が図中矢印Aで示す主走査方向に移動可能に支持されている。画像形成部5の主走査方向一方側には、キャリッジ8を往復移動させる駆動源である主走査モータ9が配設されており、その出力軸には駆動プーリ10が接続されている。駆動プーリ10と対向する位置には従動プーリ11が配設されており、各プーリ10,11間にはタイミングベルト12が掛け渡されている。タイミングベルト12にはキャリッジ8の図示しないベルト保持部が接続されており、この構成より主走査モータ9の駆動によりキャリッジ8が主走査方向に往復移動される。
【0010】
キャリッジ8には、共に図示しないインク吐出ヘッド及びこのインク吐出ヘッドにインクを供給するインクタンクを一体とした、図示しない複数の記録ヘッドが搭載されている。各記録ヘッドは、インクを吐出する複数のノズルを有するノズル列を主走査方向とは直交する図中に矢印Bで示す副走査方向に配列し、インク吐出方向が下方となるように搭載されている。各記録ヘッドには、それぞれ異なる色のインクが供給される。
【0011】
タイミングベルト12の近傍には、キャリッジ8の移動方向に沿ってエンコーダシート13が配設されており、キャリッジ8にはエンコーダシート13を読み取る図示しないエンコーダセンサが設けられている。エンコーダシート13及び図示しないエンコーダセンサによってリニアエンコーダが構成され、このリニアエンコーダの出力からキャリッジ8の速度及び位置を検出する。
キャリッジ8の主走査領域のうち記録領域では給紙装置3から被記録媒体が給送され、搬送された被記録媒体は搬送手段14によって副走査方向に向けて間欠的に搬送される。
【0012】
キャリッジ8に搭載された図示しない記録ヘッドのインクタンクには、装置本体2に交換可能に装着されるインクカートリッジ15から供給チューブを介して各色のインクがそれぞれ供給される。キャリッジ8の下方と対応する位置には搬送される被記録媒体を案内する搬送ガイド部材16が配設されており、キャリッジ8の主走査方向一方側には記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構17が配設されている。
【0013】
搬送手段14は、給紙装置3から給送される被記録媒体を搬送する搬送ローラ18及び搬送ローラ18に対向配置された加圧ローラ19を有している。搬送手段14の被記録媒体搬送方向下流側には上述した搬送ガイド部材16が配設されている。搬送ガイド部材16には、被記録媒体が通過するガイド面に複数の穴が穿設されており、その下方に配設された吸引ファン20の吸引力によりガイド面に対して被記録媒体を吸引する。
【0014】
給紙装置3はその中心部に芯部材である紙管等の中空軸部21を有しており、中空軸部21には被記録媒体である長尺状のシート22がロール状に巻成されている。シート22は、その後端を中空軸部21に対して固定していても固定していなくてもよく、固定の場合には糊や接着剤、テープ等によって固定される。
巻き取り装置4もその中心部に中空軸部23を有しており、中空軸部23にはシート22の先端が固定されている。中空軸部23が図示しない駆動モータによって回転駆動されることによりシート22が巻き取られる。
また、装置本体2には、給紙装置3から供給されるシート22及び巻き取り装置4によって巻き取られるシート22をガイドするガイド部材24,25がそれぞれ配置されており、ガイド部材25のシート搬送方向下流側にはシート22を切断する切断装置26が配設されている。
【0015】
このようなインクジェット記録装置1において、画像形成時にはキャリッジ8を主走査方向へと移動させ、給紙装置3に貯容されたシート22を搬送手段14によって間欠的に画像形成部5へと送る。そして、画像情報に応じて各記録ヘッドを駆動させて各ノズルから各色のインクを吐出することにより、シート22上に所望の画像が形成される。画像が形成されたシート22は、ガイド部材25に案内されて巻き取り装置4の中空軸部23に巻き取られる。そして所望の位置において切断装置26が作動し、シート22が切断される。
【0016】
次に、上述した従来の切断装置26の構成及び問題点について説明する。
図3に示すように、切断装置26は切断部材である一対の回転刃27を有している。各回転刃27は円板状を呈しており、その周面には全周にわたって刃部27aが形成されている。各回転刃27は、
図3では互いに離間して示されているが、実際には各刃部27aが互いに所定量ラップするように構成されている。各回転刃27は図示しない駆動手段としてのモータによって
図3において紙面方向に往復移動自在に構成されており、この往復移動に伴いそれぞれ回転するように構成されている。
【0017】
図3はデフォルト時(巻き取り装置4が所定量のシート22を巻き取った状態)を示しており、この場合には各回転刃27がそれぞれの刃部27aをシート22に対してほぼ垂直となるように接触させるため、切断装置26の作動時にシート22を良好に切断することができる。
しかし、
図4に示すように巻き取り装置4におけるシート22の巻き取り量が少ない場合や、
図5に示すように巻き取り装置4におけるシート22の巻き取り方向が逆向きの場合のようにシート22の搬送方向が変化する場合には、シート22に対して各刃部27aを垂直に接触させることができず、良好な切断を行うことができないという問題点があった。
【0018】
上述の問題点を解決する本発明の構成を以下に説明する。
図6は、本発明の一実施形態を適用した切断装置を示している。同図において切断装置28は、切断装置26と同様の切断部材である一対の回転刃27を有している。各回転刃27は、駆動手段としてのモータ33によって
図6において紙面方向に往復移動自在に構成されており、この往復移動に伴いそれぞれ回転するように構成されている。
【0019】
また切断装置28は、そのケーシング28aを位置調整手段としての支軸29によって装置本体2に対して揺動自在に支持されている。支軸29には、ケーシング28a内に引き込まれたシート22に接触して、シート22の姿勢が各刃部27aに対して垂直となるように案内する案内部材30が一体的に設けられている。また、ケーシング28aの外側には、支軸29を中心としてケーシング28aに対して
図6において時計回り方向の付勢力を付与する付勢手段としての圧縮コイルばね31が配設されている。また、ガイド部材25に代えて、板部材からなるガイド板32が配設されている。
【0020】
上述した構成の切断装置28によれば、
図7に示すように巻き取り装置4におけるシート22の巻き取り量が少ない場合や、
図8に示すように巻き取り装置4におけるシート22の巻き取り方向が逆向きの場合のようにシート22の搬送方向が変化する場合であっても、シート22の搬送方向の変化に応じて支軸29を中心としてケーシング28aが揺動し、結果としてシート22に対して各刃部27aがほぼ垂直に接触することが可能となるので、常時良好な切断性能を有する切断装置28を提供することができる。
【0021】
また、切断装置28がシート22を案内する案内部材30を有するので、各刃部27aに対するシート22の姿勢を安定させることができ、切断性能をさらに向上することができる。
また、圧縮コイルばね31によって案内部材30をシート22に対して確実に接触させることができるので、案内部材30によるシート22における姿勢の安定化を向上することができ、安定した切断性能を提供することができる。
【0022】
上記実施形態及び各変形例では、画像形成装置としてカラープリンタを用いた例を示したが、画像形成装置としてはこれに限られず、プリンタ、ファクシミリ、複合機等にも本発明は適用可能である。また本実施形態及び変形例では、画像が形成される被記録媒体としてシート22を用いる構成を示したが、このシート22とは記録紙には限定されず、厚紙、ハガキ、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、OHPフィルム、樹脂フィルム等も含まれ、シート状を呈し画像形成可能な物質であればどのようなものを用いてもよい。
【0023】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0024】
1 画像形成装置(インクジェット記録装置)
22 被記録媒体(シート)
27 切断部材(回転刃)
27a 刃部
28 切断装置
29 位置調整手段(支軸)
30 案内部材
31 付勢手段(圧縮コイルばね)
33 駆動手段(モータ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】