(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル酸エステルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 69/54 20060101AFI20220405BHJP
C07C 67/14 20060101ALI20220405BHJP
C07C 29/40 20060101ALN20220405BHJP
C07C 35/06 20060101ALN20220405BHJP
C07C 29/36 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
C07C69/54 B CSP
C07C67/14
C07C29/40
C07C35/06
C07C29/36
(21)【出願番号】P 2018134474
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2018060880
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】大野 芙美
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 諭
(72)【発明者】
【氏名】野上 弘之
(72)【発明者】
【氏名】向井 一晃
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-169838(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136538(WO,A1)
【文献】特開2014-178671(JP,A)
【文献】特開2014-026265(JP,A)
【文献】特開2010-185987(JP,A)
【文献】特開2005-054142(JP,A)
【文献】特開2001-158808(JP,A)
【文献】特開2000-319226(JP,A)
【文献】特開2015-141353(JP,A)
【文献】国際公開第2012/074025(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/141504(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/54
C07C 67/14
C07C 29/40
C07C 35/06
C07C 29/36
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル。
【化1】
[式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
3は直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、R
21、R
22、R
23はそれぞれ独立に
、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基であ
り、Z
1は、炭素数1~20の、置換もしくは無置換の2価の鎖式炭化水素基、炭素数1~20の、置換もしくは無置換の、ヘテロ原子を有していてもよい2価の環式炭化水素基、または単結合、Z
2は、炭素数1~12の2価の鎖式炭化水素基、Z
3は、(R
21R
22R
23)C-が結合している炭素原子とともに炭素数3~10の
、ヘテロ原子を有していてもよい
単環の環式炭化水素基を形成する原子団、nは0~3の整数、mは1~18の整数である。]
【請求項2】
下記式(2)で表されるケトン化合物に、下記式(3)で表されるアルキル金属化合物を反応させて、下記式(4)で表されるヒドロキシ化合物を得て、
前記ヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸塩化物とを反応させて、下記式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステルを得る、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【化2】
[式中、R
3は直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、Z
3は、酸素原子が結合している炭素原子とともに炭素数3~10の
、ヘテロ原子を有していてもよい
単環の環式炭化水素基を形成する原子団、mは1~18の整数である。]
【化3】
[式中、R
21、R
22、R
23はそれぞれ独立に
、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基であ
り、M
1はLiまたはMgX(Xはハロゲン原子)である。]
【化4】
[式中、R
3、Z
3、mは式(2)と同じであり、R
21、R
22、R
23は式(3)と同じである。]
【化5】
[式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
3、Z
3、mは式(2)と同じであり、R
21、R
22、R
23は式(3)と同じである。]
【請求項3】
下記式(6)で表されるエステル化合物に、下記式(7)で表される化合物を反応させて、下記式(4)で表されるヒドロキシ化合物を得て、
前記ヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸塩化物とを反応させて、下記式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステルを得る、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【化6】
[式中、R
21、R
22、R
23はそれぞれ独立に
、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基であ
り、R
11は直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基である。]
【化7】
[式中、R
3は直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、Y
1は炭素数2~9の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、またはシクロアルキレン基、M
2、M
3はそれぞれ独立にMgX(Xはハロゲン原子)、mは1~18の整数である。]
【化8】
[式中、R
21、R
22、R
23は式(6)と同じであり、R
3、mは式(7)と同じであり、Z
3は、(R
21R
22R
23)C-が結合している炭素原子とともに炭素数3~10の
、ヘテロ原子を有していてもよい
単環の環式炭化水素基を形成する原子団である。]
【化9】
[式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
21、R
22、R
23は式(6)と同じであり、R
3、mは式(7)と同じであり、Z
3は式(4)と同じである。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性に優れる新規(メタ)アクリル酸エステルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に(メタ)アクリル酸エステルは、プラスチック、塗料、粘着剤、紙加工処理剤、繊維油剤、潤滑油添加剤、建築用シーラント、インキなどの多岐にわたる用途において有用である。また、ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられるレジスト用重合体として、波長193nmの光に対して透明なアクリル系重合体が注目されている。近年、照射光の短波長化およびパターンの微細化に好適に対応できるレジスト組成物として、酸の作用により酸脱離性基が脱離してアルカリ可溶性となる重合体と、光酸発生剤とを含有する、いわゆる化学増幅型レジスト組成物が提唱され、その開発および改良が進められている。酸脱離性基を有する単量体として有用である第三級(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロアルキル(メタ)アクリレートが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-141353号公報
【文献】特開2006-104169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、リソグラフィーによるパターン形成の微細化が急速に進んでおり、パターン形成性およびラインウィドゥスラフネス(LWR)等の種々のリソグラフィー特性をこれまで以上に改善できるレジスト材料の開発が切望されている。レジスト材料の疎水性を高めることで、リソグラフィーによるレジストパターンの形成時におけるパターン形成性やLWRを改善でき、そのためには、より疎水性の大きな単量体が有用である。
本発明は、疎水性に優れる(メタ)アクリル酸エステルおよびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル。
【0006】
【0007】
[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基、R3は直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、R21、R22、R23はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基であり、少なくとも2つは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはシクロアルキル基であり、Z1は、炭素数1~20の、置換もしくは無置換の2価の鎖式炭化水素基、炭素数1~20の、置換もしくは無置換の、ヘテロ原子を有していてもよい2価の環式炭化水素基、または単結合、Z2は、炭素数1~12の2価の鎖式炭化水素基、Z3は、(R21R22R23)C-が結合している炭素原子とともに炭素数3~10のヘテロ原子を有していてもよい環式炭化水素基を形成する原子団、nは0~3の整数、mは1~18の整数である。]
[2]下記式(2)で表されるケトン化合物に、下記式(3)で表されるアルキル金属化合物を反応させて、下記式(4)で表されるヒドロキシ化合物を得て、
前記ヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸塩化物とを反応させて、下記式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステルを得る、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
式(2)中、R3は直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、Z3は、酸素原子が結合している炭素原子とともに炭素数3~10のヘテロ原子を有していてもよい環式炭化水素基を形成する原子団、mは1~18の整数である。
式(3)中、R21、R22、R23はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基であり、少なくとも2つは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはシクロアルキル基であり、M1はLiまたはMgX(Xはハロゲン原子)である。
式(4)中、R3、Z3、mは式(2)と同じであり、R21、R22、R23は式(3)と同じである。
式(5)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R3、Z3、mは式(2)と同じであり、R21、R22、R23は式(3)と同じである。
[3]下記式(6)で表されるエステル化合物に、下記式(7)で表される化合物を反応させて、下記式(4)で表されるヒドロキシ化合物を得て、
前記ヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸塩化物とを反応させて、下記式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステルを得る、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
式(6)中、R21、R22、R23はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基であり、少なくとも2つは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはシクロアルキル基であり、R11は直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基である。
式(7)中、R3は直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、Y1は炭素数2~9の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、またはシクロアルキレン基、M2、M3はそれぞれ独立にMgX(Xはハロゲン原子)、mは1~18の整数である。
式(4)中、R21、R22、R23は式(6)と同じであり、R3、mは式(7)と同じであり、Z3は、(R21R22R23)C-が結合している炭素原子とともに炭素数3~10のヘテロ原子を有していてもよい環式炭化水素基を形成する原子団である。
式(5)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R21、R22、R23は式(6)と同じであり、R3、mは式(7)と同じであり、Z3は式(4)と同じである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、疎水性に優れる(メタ)アクリル酸エステルが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
本明細書において、式(1)で表される化合物を、化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
【0020】
<(メタ)アクリル酸エステル>
本発明の(メタ)アクリル酸エステルは下記式(1)で表される化合物(1)である。化合物(1)は、酸脱離性基を有する単量体として有用である。
【0021】
【0022】
式(1)において、R1は、水素原子またはメチル基である。
R3は、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基である。mは1~18の整数である。
R3はZ3を構成する炭素原子と結合している置換基であり、mはZ3に結合している置換基(R3)の数である。mが2以上である場合、Z3に結合している複数のR3は互いに同一でもよく、異なってもよい。2個のR3が同一の炭素原子に結合していてもよい。
R3としての直鎖状もしくは分岐状のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。シクロアルキル基は、シクロペンチル基、シクロへキシル基などが挙げられる。アリール基は、フェニル基、4-メチルフェニル基などのアルキルフェニル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アラルキル基は、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。これらの中でも合成容易性の観点から、R3はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
mは、合成容易性の観点から1~10が好ましく、1~4がより好ましい。
【0023】
R21、R22、R23はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基であり、少なくとも2つは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはシクロアルキル基である。
直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としてはシクロペンチル基、シクロへキシル基などが挙げられる。
これらの中でも、合成容易性の観点からR21、R22、R23のうちの1つが水素原子で残りの2つがメチル基、またはR21、R22、R23の全部がメチル基であることが好ましい。
【0024】
Z1は、炭素数1~20の、置換もしくは無置換の、2価の鎖式炭化水素基、炭素数1~20の、置換もしくは無置換の、ヘテロ原子を有していてもよい2価の環式炭化水素基、または単結合である。
Z1が2価の鎖式炭化水素基であるとき、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。2価の鎖式炭化水素基としてはアルキレン基が好ましい。置換基としては-O-、-S-、-NH-、-PH-が挙げられる。炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
Z1が2価の環式炭化水素基であるとき、単環式でもよく、多環式でもよい。環式炭化水素基としては環式の飽和炭化水素基が好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が挙げられる。環を構成する炭素原子に置換基が結合していてもよい。置換基としては、炭素数1~10の、直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
Z1は、レジスト溶媒に用いられる有機溶剤への良好な溶解性を確保しつつ疎水性を高める点で単結合が好ましい。
【0025】
Z2は、炭素数1~12の2価の鎖式炭化水素基である。直鎖状でもよく、分岐状でもよい。鎖式炭化水素基としてはアルキレン基が好ましい。炭素数は1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
nは0~3の整数であり、0~2が好ましく、0または1がより好ましい。
【0026】
Z3は、(R21R22R23)C-が結合している炭素原子とともに炭素数3~10のヘテロ原子を有していてもよい環式炭化水素基を形成している原子団である。環式炭化水素基は単環式でもよく、多環式でもよい。環式炭化水素基は、炭化水素からなる(ヘテロ原子を有さない)環式炭化水素基が好ましい。
環式炭化水素基の炭素数には(R21R22R23)C-が結合している炭素原子も含まれる。
炭素数3~10の単環の炭化水素からなる環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクタジエニル基等が挙げられる。これらの中でも入手容易性の観点からシクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
炭素数3~10の多環の炭化水素からなる環式炭化水素基としては、例えばビシクロ[4.3.0]ノナニル基、ナフタレニル基、デカヒドロナフタレニル基、ボルニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ノルアダマンチル基等が挙げられる。これらの中でも入手容易性の観点からノルボルニル基、アダマンチル基が好ましい。
【0027】
化合物(1)の好ましい態様として以下が挙げられる。
R1は水素原子またはメチル基であり、Z3は(R21R22R23)C-が結合している炭素原子とともに、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基またはアダマンチル基を形成する原子団であり、R3はメチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基からなる群から選ばれる1種以上であり、mは1~4の整数であり、R21、R22、R23のうちの1つが水素原子で残りの2つがメチル基、またはR21、R22、R23の全部がメチル基であり、Z1が単結合であり、n=0である化合物。
【0028】
<(メタ)アクリル酸エステルの製造方法>
[第1の態様]
下記式(2)で表されるケトン化合物(2)に、下記式(3)で表されるアルキル金属化合物(3)を反応させて、下記式(4)で表されるヒドロキシ化合物(4)を得て、ヒドロキシ化合物(4)と(メタ)アクリル酸塩化物とを反応させて、下記式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステル(5)を得る、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
式(2)~(5)において、R1、R3、R21、R22、R23、Z3、mは、好ましい態様も含めて式(1)におけるR1、R3、R21、R22、R23、Z3、mと同じである。
式(2)、(4)において、酸素原子と結合している炭素原子は、式(1)において、(R21R22R23)C-が結合している炭素原子に相当する。
式(3)において、M1はLiまたはMgX(Xはハロゲン原子)である。
式(5)は式(1)において、Z1が単結合であり、n=0である化合物に相当する。
【0034】
化合物(2)と化合物(3)との反応において、化合物(3)の使用量は、特に限定されないが、化合物(4)を収率よく得る点から、化合物(2)の1モル当たり0.5モル以上が好ましく、0.8モル以上がより好ましく、1.0モル以上がさらに好ましい。また、副反応や反応後の処理工程への負荷を抑制する点から、化合物(2)の1モル当たり2モル以下が好ましく、1.8モル以下がより好ましく、1.5モル以下がさらに好ましい。
【0035】
化合物(2)と化合物(3)との反応において、化合物(4)を収率よく得る点から、無機化合物を添加してもよい。無機化合物の例としては、塩化リチウム、塩化亜鉛、塩化セリウム、塩化鉄、ランタントリクロリドビスリチウムクロリド錯体等が挙げられる。
無機化合物の使用量としては、反応収率の点から、ケトン化合物(2)の1モル当たり、0.01モル以上が好ましく、0.1モル以上がより好ましい。また反応後の処理工程への負荷を抑制する点から、2.0モル以下が好ましく、1.5モル以下がより好ましい。
【0036】
化合物(2)と化合物(3)との反応において、溶媒を用いることが好ましい。溶媒は化合物(3)と反応しない溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒:ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量は適宜設定できる。
化合物(2)と化合物(3)との反応温度は、アルキル金属化合物を用いる通常の反応における反応温度でよい。反応時間を短縮する点から、-100℃以上が好ましく、-80℃以上がより好ましい。副反応等の問題を抑制する点から、65℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。
反応時間は、反応温度等によって異なるため適宜決めればよい。例えば、0.5~20時間程度が好ましい。
【0037】
化合物(2)と化合物(3)との反応で得た化合物(4)を精製してもよい。化合物(4)の精製方法は、生成物の物性、原料、アルキル金属化合物(3)および無機化合物の種類及び量、溶剤の種類等を考慮して、アルカリ水洗、水洗、蒸留、晶析、濾過等の公知の精製方法を、適宜組み合わせることができる。
【0038】
化合物(4)と、(メタ)アクリル酸塩化物とを反応させて化合物(5)が得られる。
(メタ)アクリル酸塩化物は、市販品でも別途合成したものを使用してもよい。(メタ)アクリル酸塩化物の使用量は、特に限定されないが、化合物(5)を収率よく得る点から、化合物(4)の1モル当たり0.5モル以上が好ましく、0.7モル以上がより好ましく、0.9モル以上がさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸塩化物由来の重合を防止する点では、化合物(4)の1モル当たり3モル以下が好ましく、2.5モル以下がより好ましく、2モル以下がさらに好ましい。
【0039】
化合物(4)と、(メタ)アクリル酸塩化物との反応において、化合物(5)を収率よく得る点から、塩基を添加してもよい。塩基の例としては、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、t-ブチルマグネシウムクロリド、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等が挙げられる。
塩基の使用量としては、反応収率の点から、化合物(4)の1モル当たり0.1モル以上が好ましく、0.5モル以上がより好ましい。また反応後の処理工程への負荷を抑制する点から、化合物(4)の1モル当たり3モル以下が好ましく、2モル以下がより好ましい。
【0040】
化合物(4)と、(メタ)アクリル酸塩化物との反応において、溶媒を用いてもよい。溶媒は、(メタ)アクリル酸塩化物と反応しない溶媒であれば特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒:ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量は適宜設定できる。
【0041】
化合物(4)と、(メタ)アクリル酸塩化物との反応において、重合を抑制するため、反応系内に重合禁止剤を存在させてもよい。重合禁止剤としては、特に限定されないが、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、フェノチアジン、銅塩等が挙げられる。これらは1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
化合物(4)と、(メタ)アクリル酸塩化物とを反応させる工程における反応温度は、通常のエステル化で用いられる温度であればよい。反応時間を短縮する点で、-100℃以上が好ましく、-80℃以上がより好ましい。また副反応や重合等の問題を抑制する点で、65℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。
反応時間は、反応温度等によって異なるため適宜決めればよい。例えば、0.5~20時間程度が好ましい。
【0043】
化合物(4)と、(メタ)アクリル酸塩化物との反応で得られた化合物(5)を精製することが好ましい。化合物(5)の精製方法は、生成物の物性、原料、塩基の種類及び量、溶剤の種類等を考慮して、アルカリ水洗、水洗、蒸留、晶析、濾過等の公知の精製方法を、適宜組み合わせることができる。
【0044】
[第2の態様]
下記式(6)で表されるエステル化合物(6)に、下記式(7)で表される化合物(7)を反応させて、前記式(4)で表されるヒドロキシ化合物(4)を得て、ヒドロキシ化合物(4)と(メタ)アクリル酸塩化物とを反応させて、前記式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステル(5)を得る、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【0045】
【0046】
【0047】
式(6)、(7)において、R3、R21、R22、R23、mは、好ましい態様も含めて式(1)におけるR3、R21、R22、R23、mと同じである。
式(6)において、R11は直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。これらの中でも入手容易性の点からメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0048】
式(7)において、Y1は炭素数2~9の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、またはシクロアルキレン基であり、M2、M3はそれぞれ独立にMgX(Xはハロゲン原子)である。
Y1のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロヘキシレン基等が挙げられる。これらの中でも入手容易性の点からブチレン基、ペンチレン基が好ましい。
【0049】
化合物(6)と化合物(7)との反応において、化合物(7)の使用量は、特に限定されないが、化合物(4)を収率よく得る点から、化合物(6)の1モル当たり0.5モル以上が好ましく、0.8モル以上がより好ましく、1.0モル以上がさらに好ましい。また、副反応や反応後の処理工程への負荷を抑制する点から、化合物(6)の1モル当たり5モル以下が好ましく、4モル以下がより好ましく、3モル以下がさらに好ましい。
【0050】
化合物(6)と化合物(7)との反応において、溶媒を用いてもよい。溶媒は、化合物(7)と反応しない溶媒であれば特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒:ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量は適宜設定できる。
【0051】
化合物(6)と化合物(7)との反応温度は、化合物(7)を用いる通常の環化反応における温度でよい。反応時間を短縮する点で、-100℃以上が好ましく、-80℃以上がより好ましい。また副反応等の問題を抑制する点で、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
反応時間は、反応温度等によって異なるため適宜決めればよい。例えば0.5~30時間程度が好ましい。
【0052】
化合物(6)と化合物(7)との反応で得た化合物(4)を精製してもよい。
精製方法は、生成物の物性、原料の種類及び量、溶剤の種類等を考慮して、アルカリ水洗、水洗、蒸留、晶析、濾過等の公知の精製方法を、適宜組み合わせることができる。
化合物(4)と(メタ)アクリル酸塩化物とを反応させて、化合物(5)を得る工程は第1の態様と同様に行うことができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。反応追跡はガスクロマトグラフィーにより実施した。
【0054】
<合成例1:化合物(4)の合成>
本例では、化合物(3)としてt-ブチルマグネシウムクロリドを用い、化合物(2)と反応させて化合物(4)を合成した。
ガラス製のフラスコに、塩化セリウム5.4684g(22mmol)とテトラヒドロフラン12.2mLを加え、窒素フロー下、室温にて1.8時間撹拌した。0℃に冷却し、t-ブチルマグネシウムクロリド12.2mL(23質量%テトラヒドロフラン溶液、24mmol)を加え、1時間撹拌した。続いて-40℃に冷却し、2-メチルシクロペンタノン2.1815g(22mmol)を滴下し、2.5時間撹拌した後、-25℃で21時間撹拌した。反応収率は48%であった。飽和塩化アンモニウム水溶液20mL、酢酸エチル20mLを加え分液した後、水層を酢酸エチル20mLで2回抽出した。有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mL、続いて飽和食塩水10mLを加え洗浄した。硫酸マグネシウムを用いて乾燥させたのち、溶媒を留去した。得られた粗生成物を蒸留し、2-メチル-t-ブチルシクロペンタノール399.3mgを得た。
【0055】
<合成例2:化合物(4)の合成>
本例では、化合物(3)としてt-ブチルリチウムを用い、化合物(2)と反応させて化合物(4)を合成した。
ガラス製のフラスコに、t-ブチルリチウム8.0mL(18質量%ペンタン溶液、15mmmol)、テトラヒドロフラン5mLを加え、窒素フロー下、-50℃に冷却した。続いてテトラヒドロフラン2.5mLに溶解させた2-メチルシクロペンタノン504.2mg(5.1mmol)を滴下し、1時間撹拌した。2-メチル-t-ブチルシクロペンタノールの収率は30%であった。
【0056】
<合成例3:化合物(4)の合成>
本例では、化合物(6)と化合物(7)を反応させて化合物(4)を合成した。
ガラス製のフラスコに、削り状マグネシウム6.0290g(248mmol)、テトラヒドロフラン100mLを加え、室温にて、テトラヒドロフラン100mLに溶解させた1,4-ジブロモペンタン12.5mL(92mmol)を1.2時間で滴下した。その後、2.8時間撹拌した。-5℃に冷却し、テトラヒドロフラン84mLに溶解させたピバル酸メチル10.9mL(82mmol)を1時間で滴下した。続いて0℃に昇温し、0.6時間撹拌した後、室温にて終夜撹拌した。2-メチル-t-ブチルシクロペンタノールの収率は72%であった。
【0057】
<合成例4:化合物(4)の合成>
合成例1において、2-メチルシクロペンタノンの代わりに3-メチルシクロペンタノンを用いた以外は合成例1と同様に実施し、3-メチル-t-ブチルシクロペンタノールを得た。
【0058】
<合成例5:1,4-ジブロモ-2-メチルブタンの合成>
2-メチル-1,4-ブタンジオールは特開2011-111399号公報の段落0032~0033に記載の方法で合成した。
ガラス製のフラスコに、メチルコハク酸101.2g(766mmol)を加え、塩化アセチル400mLを滴下した。2時間撹拌した後、濃縮後減圧蒸留にて精製し、メチルコハク酸無水物83.6gを得た。
ガラス製のフラスコに、水素化リチウムアルミニウム26.3g(705mmol)、テトラヒドロフラン800mLを加え、テトラヒドロフラン200mLに溶解させたメチルコハク酸無水物41.0g(359mmol)を1時間かけて滴下した。2日間撹拌した後、テトラヒドロフラン100mLと水100mLの混合物を滴下し、得られたスラリーにテトラヒドロフラン500mLを加えた。硫酸ナトリウムを用いて乾燥させたのち、溶媒を留去した。得られた粗生成物を蒸留し、2-メチル-1,4-ブタンジオール28.5gを得た。
ガラス製のフラスコに、2-メチル-1,4-ブタンジオール5.5698g(53.5mmol)、48%臭化水素酸72.18g(428mmol)を加え、90℃で5時間撹拌した。トルエン100mLを加え分液した後、水層をトルエン100mLで1回抽出した。有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mL、続いて飽和食塩水25mLを加え洗浄した。硫酸マグネシウムを用いて乾燥させたのち、溶媒を留去し、1,4-ジブロモ-2-メチルブタン8.2690gを得た。
【0059】
<合成例6:化合物(4)の合成>
合成例3において、1,4-ジブロモペンタンの代わりに1,4-ジブロモ-2-メチルブタンを用いた以外は合成例3と同様に実施し、3-メチル-t-ブチルシクロペンタノールを得た。
【0060】
<合成例7:化合物(4)の合成>
合成例3において、ピバル酸メチルの代わりにイソ酪酸メチルを用いた以外は合成例3と同様に実施し、2-メチル-イソプロピルシクロペンタノールを得た。
【0061】
<実施例1:化合物(5)の製造>
本例では、化合物(4)とメタクリル酸塩化物とを反応させて化合物(5)を製造した。
ガラス製のフラスコに、合成例3で得た2-メチル-t-ブチルシクロペンタノール199.3mg(1.3mmol)、テトラヒドロフラン2.6mLを加え、窒素フロー下、-40℃に冷却した。n-ブチルリチウム1.12mL(15質量%ヘキサン溶液、1.8mmol)を滴下し、0℃で1時間撹拌した。再び-40℃に冷却し、メタクリル酸クロライド225μL(2.3mmol)を滴下した後、0℃で2時間撹拌した。10質量%水酸化リチウム水溶液1.1gを加え50℃で1時間撹拌した後、分液した。水層を酢酸エチル5mLで2回抽出し、有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液5mL、続いて飽和食塩水5mLを加え洗浄した。硫酸マグネシウムを用いて乾燥させたのち、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の化合物234.0mgを得た。
1H-NMR分析により得られた化合物が2-メチル-t-ブチルシクロペンチルメタクリレート(表1に構造式を示す。)であることを確認した。
1H NMR(270MHz、CDCl3)(cis+trans):δ6.05ppm(m、1H)、5.48ppm(m、1H)、1.94ppm(s、3H)、2.68-1.30ppm(m、7H)、1.01ppm(s、9H)、0.98ppm(d、3H)。
【0062】
<実施例2:化合物(5)の製造>
実施例1において、2-メチル-t-ブチルシクロペンタノールの代わりに、合成例4で得た3-メチル-t-ブチルシクロペンタノールを用いた以外は実施例1と同様に実施し、目的の化合物を得た。
1H-NMR分析により得られた化合物が3-メチル-t-ブチルシクロペンチルメタクリレート(表1に構造式を示す。)であることを確認した。
1H NMR(270MHz、CDCl3)(cis+trans):δ6.02ppm(m、1H)、5.47ppm(m、1H)、1.92ppm(s、3H)、2.78-1.41ppm(m、7H)、0.99ppm(s、9H)、1.06、0.98ppm(d、3H)。
【0063】
<実施例3:化合物(5)の製造>
実施例3は参考例である。
実施例1において、2-メチル-t-ブチルシクロペンタノールの代わりに、合成例7で得た2-メチル-イソプロピルシクロペンタノールを用いた以外は実施例1と同様に実施し、目的の化合物を得た。
1H-NMR分析により得られた化合物が2-メチル-イソプロピルシクロペンチルメタクリレート(表1に構造式を示す。)であることを確認した。
1H NMR(270MHz、CDCl3)(cis+trans):δ5.60ppm(m、1H)、5.45ppm(m、1H)、1.90ppm(s、3H)、2.57-1.23ppm(m、8H)、1.03ppm(d、3H)、0.98(d、3H)、0.95ppm(d、3H)。
【0064】
<比較例1>
特開2015-141353号公報の段落0405~0409に記載の方法で、t-ブチルシクロペンチルメタクリレート(表1に構造式を示す。)を合成した。
三口フラスコにシクロペンタノン(8.4g)、テトラヒドロフラン(200mL)を加え0℃に冷却した。ランタントリクロリドビスリチウムクロリド錯体(0.6mol/Lテトラヒドロフラン溶液)166mLを0℃で滴下し、30分時間攪拌した。次いでt-ブチルマグネシウムブロミド(1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液)100mLを0℃で滴下し2時間攪拌した。続いて、飽和塩化アンモニウム水溶液100mLを添加し、水相を酢酸エチル200mLで2回抽出し、有機相をまとめ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、1-t-ブチルシクロペンタノール12.6g得た(収率88%)。
1-t-ブチルシクロペンタノール(12.6g)をテトラヒドロフラン200mLに加え、-40℃に冷却した。ノルマルブチルリチウム(1.6mol/Lヘキサン溶液)55mLを-40℃で滴下し、0℃で1時間攪拌した。反応液を再び-40℃に冷却した後、メタクリル酸クロライド8.4gを滴下し、室温まで昇温した。1時間攪拌後、0℃まで冷却し、水100mLを添加した。水相を酢酸エチル200mLで2回抽出し、有機相をまとめ、水、飽和食塩水で洗浄した後、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、t-ブチルシクロペンチルメタクリレート(13.2g)を得た(収率86%)。
【0065】
<比較例2>
比較例1において、t-ブチルマグネシウムブロミドの代わりに、イソプロピルマグネシウムブロミドを用いた以外は比較例1と同様に実施し、イソプロピルシクロペンチルメタクリレート(表1に構造式を示す。)を得た。
【0066】
【0067】
<試験例:疎水性の評価>
上記実施例および比較例で得たメタクリル酸エステルを試料とし、炭素数18の炭化水素基で表面処理したシリカゲルをカラム充填材として用いて、逆相液体クロマトグラフィー測定を、下記の条件で行った。
[測定条件]
装置:ウォーターズ社製、液体クロマトグラフィーシステム ACQUITY UPLC H-Class(製品名)。
カラム:ウォーターズ社製、ACQUITY UPLC BEH C18(製品名)、1.7μm(粒径)。
移動層:アセトニトリル/水=3/1。
流量:0.5mL/min。
UV検出波長:220nm。
【0068】
OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Section 1(Test No.117)によると、長鎖炭化水素基(例えばC8、C18)で表面処理したシリカゲルを充填材として用いる逆相液体クロマトグラフィーでは、試料は移動相の溶媒によって炭化水素シリカゲル(固定相)上を移動する。試料は固定相(炭化水素基)と移動相(水)との分配係数によって固定相上に保持される。したがって、親水性化合物ほど早く溶出し、疎水性化合物ほど遅く溶出する。すなわち、保持時間がより長い試料の方が疎水性に優れると判定できる。
保持時間の測定結果を表2に示す。
【0069】
【0070】
表2に示すように、実施例1で得られた2-メチル-t-ブチルシクロペンチルメタクリレートを試料とする液体クロマトグラフィーでは、2つの異性体(表には(i)(ii)と記載する)が分離し、保持時間はそれぞれ1.79分、1.93分であった。
実施例1、2で得た2-メチル-t-ブチルシクロペンチルメタクリレート、3-メチル-t-ブチルシクロペンチルメタクリレートは、比較例1で得たt-ブチルシクロペンチルメタクリレートより保持時間が長く、疎水性に優れることが認められた。
同様に、実施例3で得た2-メチル-イソプロピルシクロペンチルメタクリレートは、比較例2で得たイソプロピルシクロペンチルメタクリレートより保持時間が長く、疎水性に優れることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明にて提供される(メタ)アクリル酸エステルは疎水性に優れ、プラスチック、塗料等多岐に渡る用途に有用である。また、半導体レジスト用の原料としてリソグラフィー特性の改善に有用である。