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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】粘着シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20220405BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J201/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018554923
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2017042202
(87)【国際公開番号】W WO2018105413
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2016237357
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 記央
(72)【発明者】
【氏名】稲永 誠
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-288425(JP,A)
【文献】特開平11-116905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/00
CAplus(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートの表裏一側又は両側に離型フィルムを積層してなる離型フィルム付粘着シートを、ロール状に捲回した離型フィルム付粘着シート捲回体であって、
前記粘着シートは、光硬化性を有し、かつ、短手方向両側シート端縁からシート中央に向かって幅w[mm]の領域(「端縁幅領域」と称する)と、当該端縁幅領域よりシート中央の領域(「中央領域」と称する)とが、以下の条件(1)及び(2)を満たし、
更に、端縁幅領域におけるゲル分率の標準偏差が3%以下であることを特徴とする、離型フィルム付粘着シート捲回体。
(1)端縁幅領域における粘着シートのゲル分率が、中央領域における粘着シートのゲル分率より大きい。
(2)粘着シートの厚さをd[mm]とした時、30d<w<100dを満たす。
【請求項2】
前記端縁幅領域のゲル分率が15%以上100%以下であることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム付粘着シート捲回体。
【請求項3】
前記中央領域のゲル分率が0%以上15%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の離型フィルム付粘着シート捲回体。
【請求項4】
前記粘着シートの厚さdが0.05mm~1mmであることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の離型フィルム付粘着シート捲回体。
【請求項5】
請求項1~の何れかに記載の離型フィルム付粘着シート捲回体の製造方法であって、
光硬化性を有する粘着シートの表裏一側又は両側に離型フィルムを積層してなる離型フィルム付粘着シートの端縁幅領域に光を照射することで、端縁幅領域における粘着シートのゲル分率を、中央領域の粘着シートのゲル分率よりも大きくすることを特徴とする、離型フィルム付粘着シート捲回体の製造方法。
【請求項6】
光を照射した後、離型フィルム付粘着シートをロール状に巻き取ることを特徴とする、請求項に記載の離型フィルム付粘着シート捲回体の製造方法。
【請求項7】
前記離型フィルム付粘着シートのシート上面に対して上方から、又は、そのシート下面に対して下方から、又は、シート上下両面に対してそれぞれ上下両方から、光を照射することを特徴とする、請求項又はに記載の離型フィルム付粘着シート捲回体の製造方法。
【請求項8】
光を照射する光源の光拡散角度が50°以下であることを特徴とする、請求項の何れかに記載の離型フィルム付粘着シート捲回体の製造方法。
【請求項9】
光を照射する光源としてLEDを使用することを特徴とする、請求項の何れかに記載の離型フィルム付粘着シート捲回体の製造方法。
【請求項10】
光を照射する際、少なくとも200nm~450nmの波長の光を照射することを特徴とする、請求項の何れかに記載の離型フィルム付粘着シート捲回体の製造方法。
【請求項11】
単位面積当たり1000mJ/cm~10000mJ/cmの積算光線量の光を照射することを特徴とする、請求項10の何れかに記載の離型フィルム付粘着シート捲回体の製造方法。
【請求項12】
光硬化性を有する粘着シートであって、シート端縁からシート中央に向かって幅w[mm]の領域(「端縁幅領域」と称する)と、当該端縁幅領域よりシート中央の領域(「中央領域」と称する)とが、以下の条件(1)及び(2)を満たし、更に、端縁幅領域におけるゲル分率の標準偏差が3%以下であることを特徴とする粘着シート。
(1)端縁幅領域における粘着シートのゲル分率が、中央領域における粘着シートのゲル分率より大きい。
(2)粘着シートの厚さをd[mm]とした時、30d<w<100dを満たす。
【請求項13】
長尺な粘着シートであることを特徴とする請求項12に記載の粘着シート。
【請求項14】
前記端縁幅領域のゲル分率が15~100%であることを特徴とする請求項13に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパーソナルコンピュータ、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビゲーションシステム、タッチパネル、ペンタブレットなどのような画像表示装置を形成する際に好適に用いることができる粘着シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、モバイル端末(PDA)、タッチパネルなどの画像表示装置の視認性を向上させるために、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示パネルと、その前面側(視認側)に配置する保護パネルやタッチパネル部材との間の空隙を、粘着剤で充填する際、粘着シートを用いる方法が知られている。
【0003】
この種の粘着シートに関しては、例えば特許文献1(特開2014-094976号公報)には、粘着層と基材層とを積層させた積層体の側面側から波長360nm以下の光を照射する画像表示装置用粘着シート及びその製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2(特許第4971529号公報)には、紫外線によって1次架橋した粘着シートを画像表示装置構成部材に貼合後、画像表示装置構成部材を介して粘着シートに紫外線照射し2次硬化させる方法が開示されている。
【0005】
上述のような画像表示装置構成部材は、被着面に印刷部が形成されているなど、被着面に凹凸部を有していることが多く、視認性を高めるためには、そのような凹凸部にも粘着剤が充填されることが好ましい。そのため、通常状態、すなわち、室温状態では、剥離可能な程度の接着性(“タック性”と称する)を備えることができると共に、ホットメルト可能な温度に加熱すると、流動性を持つようになり、貼合面の凹凸に追従して隅々まで充填することができ、最終的には被着物同士を強固に接着させることができる粘着剤組成物や粘着シートが開発されている。
【0006】
例えば特許文献3(特開2015-105296号公報)には、アクリル系共重合体(A)100質量部と、架橋剤(b)0.5~20質量部と、光重合開始剤(C)0.1~5質量部とを含有する粘着剤樹脂組成物であって、アクリル系共重合体(A)は、重量平均分子量が5.0×10~5.0×10であるグラフト共重合体であり、当該グラフト共重合体の幹成分として(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含有し、当該グラフト共重合体の枝成分として数平均分子量5.0×10以上6.0×10未満のマクロモノマー由来の繰り返し単位を含有し、且つ、当該マクロモノマー由来の繰り返し単位をアクリル系共重合体(A)中に0.1~3mol%の割合で含有することを特徴とする粘着剤樹脂組成物が開示されている。
【0007】
この種の粘着シートは、ハンドリング性の確保や粘着面への異物の付着防止の観点から、粘着面に剥離可能な保護フィルム(「離型フィルム」とも称する)を積層して粘着シート積層体として流通させるのが一般的である。中でも、タッチディスプレイのタッチパネルや液晶パネル、表面保護パネル等の画像表示装置構成部材を貼り合せるために用いられる透明両面粘着シートに関しては、光学特性や柔軟性を担保する観点から、透明粘着シート自体を薄く柔軟なものとするのが好ましいため、粘着シートに離型フィルムを積層してなる粘着シート積層体として多くが用いられてきた。
【0008】
この種の粘着シート積層体に関しては、例えば特許文献4(特開2009-102467号公報)において、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなるABA型トリブロック共重合体と、水酸基を有する樹脂とをポリマーブレンドしてなるアクリル系透明粘着剤組成物を、離型シートの間に挟んでホットメルト成形してなる粘着シートが開示されている。
【0009】
特許文献5(特開2010-185037号公報)には、剥離フィルムの少なくとも一方の面に粘着層を備え、該粘着層を架橋してなる粘着シートであって、前記架橋後の粘着層は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定した時に、25℃~120℃の温度範囲におけるいずれにおいても5万Pa以上100万Pa以下の範囲にあることを特徴とする粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-094976号公報
【文献】特許第4971529号公報
【文献】特開2015-105296号公報
【文献】特開2009-102467号公報
【文献】特開2010-185037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
光硬化可能な性質(「光硬化性」と称する)を有する粘着シートは、光硬化する前は粘着シートのゲル分率が低いため、粘着シートの表裏両側に離型フィルムを積層した状態で常温状態で保管していると、粘着剤が積層端面から食み出して、埃が付着したりするなどの課題があった。中でも、長尺な粘着シートをロール状に捲回して粘着シート捲回体の状態で保管した場合、粘着シートに巻圧がかかった状態で保管されるため、粘着剤がロール端面から特に食み出し易いという課題を抱えていた。ロール端面から粘着剤が食み出すと、食み出した粘着剤が端面で融合するため、ロールから粘着シートを繰り出すことが困難となったり、粘着シートを切削する際に装置を汚染する等の支障が生じたりすることとなる。そのため、粘着シート捲回体を低温状態で保管するなど、余分なコストが必要になっていた。
【0012】
本発明は、光硬化性を有する粘着シートに関し、常温状態で保管した場合であっても、粘着剤が端面から食み出すのを効果的に抑制することができる、新たな粘着シート及びその製造方法を提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、光硬化性を有する粘着シートであって、シート端縁からシート中央に向かって幅w[mm]の領域(「端縁幅領域」と称する)と、当該端縁幅領域よりシート中央の領域(「中央領域」と称する)とが、以下の条件(1)及び(2)を満たし、更に、端縁幅領域におけるゲル分率の標準偏差が3%以下であることを特徴とする粘着シートを提案する。
(1)端縁幅領域における粘着シートのゲル分率が、中央領域における粘着シートのゲル分率より大きい。
(2)粘着シートの厚さをd[mm]とした時、30d<w<100dを満たす。
【0014】
本発明は、粘着シートの表裏一側又は両側に離型フィルムを積層してなる離型フィルム付粘着シートを、ロール状に捲回した離型フィルム付粘着シート捲回体であって、
前記粘着シートは、光硬化性を有し、かつ、短手方向両側シート端縁からシート中央に向かって幅w[mm]の領域(「端縁幅領域」と称する)と、当該端縁幅領域よりシート中央の領域(「中央領域」と称する)とが、以下の条件(1)及び(2)を満たし、
更に、端縁幅領域におけるゲル分率の標準偏差が3%以下であることを特徴とする、離型フィルム付粘着シート捲回体を提案する。
(1)端縁幅領域における粘着シートのゲル分率が、中央領域における粘着シートのゲル分率より大きい。
(2)粘着シートの厚さをd[mm]とした時、30d<w<100dを満たす。
【0015】
本発明はまた、上記の粘着シートの製造方法として、光硬化性を有する粘着シートの表裏一側又は両側に離型フィルムを積層してなる離型フィルム付粘着シートを作製し、当該離型フィルム付粘着シートの端縁幅領域に光を照射することで、端縁幅領域における粘着シートのゲル分率を、中央領域の粘着シートのゲル分率よりも大きくすることを特徴とする粘着シートの製造方法を提案する。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提案する粘着シート、離型フィルム付粘着シート捲回体及びその製造方法によれば、常温状態で保管した場合であっても、粘着剤が端面から食み出すのを効果的に抑制することができる。例えば粘着シートをロール状に巻き取った状態で保管乃至運搬した場合であっても、粘着剤がロール端面から食み出すのを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の一例に係る製造方法の一例を示した斜視図である。
図2】本発明の実施形態の一例に係る製造方法の一例を示した上面図である。
図3】離型フィルム付粘着シートのシート幅方向(TD方向)両端部分に光を照射する方法の例を示した概略図であり、(A)はシート面に対して垂直方向から光を照射する方法、(B)はシート面の延長方向から光を照射する方法を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
[本粘着シート]
本発明の実施形態の一例に係る粘着シート(「本粘着シート」と称する)は、光硬化性を有する粘着シートであって、シート端縁からシート中央に向かって幅w[mm]の領域、言い換えれば、シート面におけるシート端縁に沿った幅w[mm]の領域(「端縁幅領域」と称する)における粘着シートのゲル分率が、当該端縁幅領域よりシート中央の領域(「中央領域」と称する)における粘着シートのゲル分率より大きいという特徴を有する粘着シートである。
【0020】
<本粘着シートの形態>
本粘着シートは、矩形状の粘着シートであっても、長尺な粘着シートであっても、ロール状に捲回された粘着シート捲回体であっても、その他の形態であってもよい。
また、本粘着シートは、表裏一側又は両側に離型フィルムが積層された状態で存在してもよい。
この際、「長尺」とは、長さ寸法が幅寸法よりも大きいことを意味する。具体的には、前記長さ寸法が、5m以上、好ましくは10mm以上を意味する。上限値は限定するものではない。あえて規定するならば、当該上限値は500m以下であるのが好ましい。
【0021】
中でも、本粘着シートの好適な一例として、本粘着シートの表裏一側又は両側に離型フィルムを積層してなる離型フィルム付粘着シートを、ロール状に捲回した離型フィルム付粘着シート捲回体(「本捲回体」とも称する。)を挙げることができる。
また、通常の粘着シート捲回体においては、ロール幅が広いほど、粘着剤の食み出しが顕著なる。これに対し、本捲回体であれば、広幅のロールであっても粘着剤の食み出しを効果的に抑制することができる。したがって、本捲回体における前記ロール幅は20mm~2000mmであることが好ましく、中でも50mm以上或いは1500mm以下であることがより好ましい。
【0022】
<本粘着シートのゲル分率>
本発明者らの検討によれば、ロール端面から粘着剤が食み出す現象は、離型フィルムに挟まれた粘着シートの厚さによって挙動が異なることが見出された。すなわち、本粘着シートにおいて、端縁幅領域すなわちゲル分率が高い部分の幅w[mm]が粘着シートの厚さdに対して小さいと、端縁幅領域のゲル分率を高めたとしても、例えば粘着シートをロール状に巻き取った粘着シート捲回体として保管すると、巻圧によって次第に粘着剤がロール端面から食み出してくることが確認されている。
また、粘着剤の食み出しの挙動は、端縁幅領域の幅と粘着シートの厚さとの間に一定の関係性があることが見出された。すなわち、ゲル分率が高い部分の幅w[mm]を粘着シートの厚さd[mm]に対して、30d<wの比率で設定すれば、通常の粘着シートの場合はもちろん、粘着シート捲回体として保管した場合であっても、端縁幅領域のゲル分率を適宜高めることにより、粘着剤がロール端面から食み出すのを効果的に抑制することができる。
かかる観点から、端縁幅領域すなわちゲル分率が高い部分の幅w[mm]と粘着シートの厚さd[mm]との関係は、30d<wであるのが好ましく、中でも35d<w、その中でも40d<w、その中でも45d<wであるのがさらに好ましい。
【0023】
他方、本粘着シートを粘着シートとして使用する際には、通常、端縁幅領域を切除して使用するため、端縁幅領域の幅が大き過ぎると、粘着シートとして使用しない部分が多くなるためコスト高になってしまう。
かかる観点から、w<100dであるのが好ましく、中でもw<80d、その中でもw<70d、その中でもw<60dであるのがさらに好ましい。
【0024】
以上を総合すると、上記幅wは、30d<w<100d、30d<w<80d、30d<w<70d又は30d<w<60dのいずれかであることが好ましく、35d<w<100d、35d<w<80d、35d<w<70d又は35d<w<60dのいずれかであることがよりに好ましく、40d<w<100d、40d<w<80d、40d<w<70d又は40d<w<60dのいずれかであることがさらに好ましく、45d<w<100d、45d<w<80d、45d<w<70d又は45d<w<60dのいずれかであることが最も好ましい。
【0025】
例えば本粘着シートの厚さdが0.1mmである場合、ゲル分率が高い部分である端縁幅領域の幅w[mm]は3mm~10mmであるのが好ましく、中でも3.5mm以上或いは8.0mm以下、その中でも4.0mm以上或いは7.0mm以下、その中でも特に4.5mm以上或いは6.0mm以下であるのがさらに好ましい。
【0026】
本粘着シートが長尺な粘着シートである場合は、短手方向両側シート端縁からシート中央に向かって幅w[mm]の領域が前記端縁幅領域であればよい。
【0027】
端縁幅領域における粘着シートのゲル分率は、中央領域における粘着シートのゲル分率より1%以上大きいことが好ましく、中でも5%以上、その中でも10%以上、さらにその中でも15%以上或いは99%以下だけ大きいのが好ましい。
【0028】
具体的には、端縁幅領域のゲル分率は15%以上100%未満であるのが好ましく、中でも20%以上、その中でも25%以上、さらにその中でも30%以上或いは99%以下であるのがさらに好ましい。
以上を総合すると、端縁幅領域のゲル分率は、15%以上100%未満又は15%以上99%以下であることが好ましく、20%以上100%未満又は20%以上99%以下であることがより好ましく、25%以上100%未満、又は、25%以上99%以下であることがさらに好ましく、30%以上100%未満、又は、30%以上99%以下であることが最も好ましい。
【0029】
また、端縁幅領域においては、ゲル分率の標準偏差が3%以下、中でも2.5%以下、その中でも2%以下であるのが好ましい。
なお、中央領域においても、ゲル分率の標準偏差が3%以下、中でも2.5%以下、その中でも2%以下であるのが好ましい。
上述のように、端縁幅領域におけるゲル分率の標準偏差が3%以下であるということは、端縁幅領域におけるゲル分率が均一であることを意味しており、このように端縁幅領域のゲル分率が均一に高いことにより、粘着剤が端面から食み出すのをより一層確実に防ぐことができる。
なお、上述のように、端縁幅領域におけるゲル分率の標準偏差は小さいほど均一性が良いことから、その下限値は、例えば0%以上又は1%以上であるのが好ましい。但し、当該下限値に特に限定されるものではない。
【0030】
本粘着シート、中でも本捲回体の好ましい形態として、ゲル分率が15~100%である端縁幅領域と、該端縁幅領域よりもゲル分率が小さい中央領域とを有する、光硬化性を有する粘着シートであって、当該端縁幅領域の幅w[mm]と粘着シートの厚さd[mm]とが30d<w<100dを満たすことを特徴とする粘着シートを挙げることができる。詳細については上述のとおりである。
【0031】
本捲回体のさらに好ましい形態として、ゲル分率が15~100%である端縁幅領域と、ゲル分率が0%以上15%未満である中央領域と、を有する、光硬化性を有する粘着シートであって、当該端縁幅領域の幅w[mm]と粘着シートの厚さd[mm]とが30d<w<100dを満たすことを特徴とする粘着シートを挙げることができる。詳細については上述のとおりである。
【0032】
なお、ゲル分率は、次のようにして求めることができる。
端縁幅領域及び中央領域から約0.05gの粘着剤を採取し、予め質量(X)を測定したステンレスメッシュ(#200)で袋状に包み、袋の口を折って閉じて、この包みの質量(Y)を測定した後、100mlの酢酸エチルに浸漬させ、23℃で24時間暗所保管する。次に、包みを取り出して、70℃で4.5時間加熱し、付着している酢酸エチルを蒸発させ、乾燥した包みの質量(Z)を測定し、求めた質量を下記式に代入して求めることができる。
ゲル分率[%]=[(Z-X)/(Y-X)]×100
【0033】
本粘着シートは光硬化性を有する。特に、最終硬化時のゲル分率、例えば被着体の間に本粘着シートを介在させて光照射して光硬化させた後の粘着シートのゲル分率(「最終硬化時ゲル分率」と称する)は20%~100%、中でも25%以上或いは95%以下、その中でも30%以上或いは90%以下であるのがさらに好ましい。ここで、「最終硬化時のゲル分率」とは、本粘着シートを完全に硬化させた際のゲル分率の意味でもあるし、また、完全には硬化させずに使用する際のゲル分率の意味でもある。
【0034】
なお、使用されている粘着シートが本粘着シートに該当するか否かは、端縁幅領域からシート中央に向かって一定幅、好ましくは0.1mm~1.0mm幅毎に測定サンプルを採取し、各測定サンプルのゲル分率を測定し、(1)端縁幅領域における粘着シートのゲル分率が、中央領域における粘着シートのゲル分率より大きいか否か、さらには(2)中央領域よりもゲル分率の大きな端縁幅領域の幅d[mm]が、30d<w<100dを満たすか否かを調べればよい。
この際、中央領域のゲル分率は上述したように0%以上15%未満であるのが好ましく、端縁幅領域におけるゲル分率は15%以上100%未満であるのが好ましい。
【0035】
また、本発明において、粘着シートの端縁から中央領域までのゲル分率が連続的に変化して両者の境界が不明瞭な場合においては、ゲル分率15%をもって境界とする。すなわち、ゲル分率15%以上の領域を端縁幅領域とする。このように粘着シートの端縁から中央領域までのゲル分率が連続的に変化している場合については、端縁幅領域、中央領域におけるゲル分率の値は、各々の領域の平均値とする。
【0036】
本粘着シートの厚さdは、0.05mm~1mmであるのが好ましい。この範囲であれば、例えば厚さ0.05mmのような薄い粘着シートであれば、印刷段差追従性に優れた粘着シートが提供できる。また、厚さ1mmのような厚い粘着材層では印刷段差相当分が予め賦形されていることにより、貼合時の粘着材のオーバーフローを抑制することも可能になる。
したがって、本粘着シートの厚さdは0.05mm~1mmであるのが好ましく、中でも0.075mm以上或いは0.8mm以下、その中でも0.1mm以上或いは0.5mm以下であるのがさらに好ましい。
【0037】
以上を総合すると、本粘着シートの厚さdは、0.05mm~1mm、0.05mm~0.8mm又は0.05mm~0.5mm以下のいずれかであるのが好ましく、0.075mm~1mm、0.075mm~0.8mm又は0.075mm~0.5mm以下のいずれかであるのがより好ましく、0.1mm~1mm、0.1mm~0.8mm又は0.1mm~0.5mm以下のいずれかであるのが最も好ましい。
なお、本粘着シートの厚さdには、離型フィルムの厚さは含まない。
【0038】
<本粘着シートの構成>
本粘着シートは、粘着剤組成物からなる粘着材層の単層であってもよいし、二層、三層などの複数層の粘着剤層を備えたものでもよい。
また、本粘着シートは、芯層として基材層(粘着性を有さない層)を有し、該基材層の両側に、粘着材からなる層が積層してなる構成であってもよい。このような構成の場合、芯層としての基材層は粘着シート積層体が加熱成形可能となるような材質や特性を有することが好ましい。
【0039】
また、粘着剤組成物から形成される粘着材層が柔らかい性質を有するほど粘着剤の食み出しが顕著になることから、本粘着シートは、弾性よりも粘性の寄与の大きい状態にあるほど、本発明の効果が特に顕著に表れる。
具体的には、周波数1Hz、温度80℃において、本粘着シートの損失正接(Tanδ=損失せん断弾性率G'’/貯蔵せん断弾性率G’)の値が1を超えるような場合、本発明の効果が特に顕著に表れる。すなわち、前記条件下で、粘着シートのTanδが1を超えるということは、弾性よりも粘性の寄与が大きいことを意味し、粘着剤がより流れやすい傾向にある。よって、Tanδが1を超える粘着シートに本発明の技術を用いれば、粘着剤の食み出し防止効果が特に顕著に表れることになる。
以上から、本粘着シートのTanδは1を超えることが好ましい。なお、上限値は必ずしも設定する必要はない。あえて当該上限値を設定するとすれば、10以下である。
【0040】
本粘着シートにおいて、Tanδの値を調整するには、粘着剤組成物の構成成分により調整すればよい。例えば、ベース樹脂を構成するモノマーの種類及び組成比率や、架橋剤及び開始剤の種類並びに量の他、ベース樹脂の分子量や架橋条件等により調整が可能である。
【0041】
上記Tanδの値は、粘弾性測定装置ダイナミックアナライザー(例えば、レオメトリックス社製「RDAII」)を用いて、以下の条件で貯蔵せん断弾性率(G’)及び損失せん断弾性率(G’’)を測定することにより、求めればよい。
<条件>
・治具:Φ20mmパラレルプレート
・温度:-50~200℃(昇温速度3℃/minで測定)
・周波数:1Hz
・歪角:0.1%
【0042】
<本粘着シートを構成する粘着剤層の材料組成>
本粘着シートの粘着剤層は、光硬化性を有していれば、従来公知の粘着材料から形成することができる。
ここで、上記光硬化性としては、電子線以外の波長、具体的には、波長200nm~780nmの波長領域の光で硬化可能な硬化性を有するのが好ましい。
【0043】
本粘着シートの粘着剤層は、例えば、1)(メタ)アクリル酸エステル系重合体(共重合体を含む意で、以下「アクリル酸エステル系(共)重合体」と称する。)をベース樹脂として用い、これに架橋モノマー、必要に応じて架橋開始剤や反応触媒などを配合してなる粘着剤組成物や、
2)ブタジエン又はイソプレン系(共)重合体をベース樹脂として用い、これに架橋モノマー、必要に応じて架橋開始剤や反応触媒などを配合してなる粘着剤組成物や、
3)シリコーン系重合体をベース樹脂と用い、これに架橋モノマー、必要に応じて架橋開始剤や反応触媒などを配合してなる粘着剤組成物や、
4)ポリウレタン系重合体をベース樹脂として用いたポリウレタン系粘着剤組成物などを挙げることができる。
【0044】
中でも、上記粘着剤層を構成する好適な粘着剤組成物の一例として、ベース樹脂としての(メタ)アクリル系(共)重合体(a)と、架橋剤(b)と、光重合開始剤(c)とを含有する樹脂組成物を挙げることができる。
【0045】
((メタ)アクリル系(共)重合体(a))
(メタ)アクリル系(共)重合体(a)は、これを重合するために用いられるアクリルモノマーやメタクリルモノマーの種類、組成比率、さらには重合条件等によって、ガラス転移温度(Tg)等の特性を適宜調整することが可能である。
アクリル酸エステル(共)重合体の中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系(共)重合体が特に好ましい。
アクリル酸エステル共重合体の重合形態は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0046】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体を構成するモノマー成分としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0047】
また、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体を構成するモノマー成分としては、上記で挙げたものの他に、親水基や有機官能基などをもつヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するモノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー等を用いることもできる。
さらにまた、前記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルビニルモノマー等の各種ビニルモノマーも適宜用いることができる。
【0048】
中でも、好ましいベースポリマーの一例として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル系共重合体(a1)を挙げることができる。
【0049】
前記アクリル系共重合体(a1)をベース樹脂として粘着材層を構成すれば、粘着材層は、室温状態でシート状を保持しつつ自着性を示すことができ、未架橋状態において加熱すると溶融乃至流動するホットメルト性を有し、さらには光硬化させることができ、光硬化後は優れた凝集力を発揮させて接着させることができる。
よって、ベースポリマーとしてアクリル系共重合体(a1)を使用すれば、未架橋状態であっても、室温(20℃)において粘着性を示し、且つ、50~100℃、より好ましくは60℃以上或いは90℃以下の温度に加熱すると軟化乃至流動化する性質を備えることができる。
【0050】
前記アクリル系共重合体(a1)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度は、室温状態での粘着材層の柔軟性や、被着体への粘着材層の濡れ性、すなわち接着性に影響するため、本粘着シートが室温状態で適度な接着性(タック性)を得るためには、当該ガラス転移温度は、-70℃~0℃であるのが好ましく、中でも-65℃以上或いは-5℃以下、その中でも-60℃以上或いは-10℃以下であるのが特に好ましい。
但し、当該共重合体成分のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば共重合体成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
【0051】
前記アクリル系共重合体(a1)の幹成分が含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、上記に列挙した各種モノマー成分を挙げることができる。
【0052】
アクリル系共重合体(a1)は、グラフト共重合体の枝成分として、マクロモノマーを導入し、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含有することが好ましい。
マクロモノマーとは、末端の重合性官能基と高分子量骨格成分とを有する高分子単量体である。
【0053】
マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、前記アクリル系共重合体(a1)を構成する共重合体成分のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
具体的には、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、本粘着シートの加熱溶融温度(ホットメルト温度)に影響するため、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は30℃~120℃であるのが好ましく、中でも40℃以上或いは110℃以下、その中でも50℃以上或いは100℃以下であるのがさらに好ましい。
このようなガラス転移温度(Tg)であれば、分子量を調整することにより、優れた加工性や保管安定性を保持できると共に、80℃付近でホットメルトするように調整することができる。
マクロモノマーのガラス転移温度とは、当該マクロモノマー自体のガラス転移温度をさし、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
【0054】
また、室温状態では、枝成分同士が引き寄せ合って粘着剤組成物として物理的架橋をしたような状態を維持することができ、しかも、適度な温度に加熱することで前記物理的架橋が解れて流動性を得ることができるようにするためには、マクロモノマーの分子量や含有量を調整することも好ましいことである。
かかる観点から、マクロモノマーは、アクリル系共重合体(a1)中に5質量%~30質量%の割合で含有することが好ましく、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも8質量%以上或いは20質量%以下であるのが好ましい。
また、マクロモノマーの数平均分子量は500以上8000未満であることが好ましく、中でも800以上或いは7500未満、その中でも1000以上或いは7000未満であるのが好ましい。
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
【0055】
マクロモノマーの高分子量骨格成分は、アクリル系重合体またはビニル系重合体から構成されるのが好ましい。
前記マクロモノマーの末端重合性官能基としては、例えばメタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基などを挙げることができる。
【0056】
(架橋剤(b))
架橋剤(b)は、アクリル酸エステル重合体を架橋する際に用いる架橋モノマーを使用することができる。例えば(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、前記架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
【0057】
中でも、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート、イソシアネート基、エポキシ基、メラミン基、グリコール基、シロキサン基、アミノ基などの有機官能基を2個以上有する多官能有機官能基樹脂、亜鉛、アルミ、ナトリウム、ジルコニウム、カルシウムなどの金属錯体を有する有機金属化合物を好ましく用いることができる。
【0058】
架橋剤(b)の含有量は、本粘着シートの柔軟性と凝集力をバランスさせる観点から、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1~20質量部の割合で含有するのが好ましく、中でも0.5質量部以上或いは15質量部以下、その中でも1質量部以上或いは13質量部以下の割合であるのが特に好ましい。
【0059】
(光重合開始剤(c))
アクリル酸エステル重合体を架橋する際には、架橋開始剤(過酸化開始剤、光重合開始剤)や反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜添加すると効果的である。
【0060】
紫外線照射架橋の場合には、光重合開始剤(c)を配合するのが好ましい。
光重合開始剤(c)は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合性開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
これらのうちの開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなる。このため、可視光線域に吸収波長をもつ光重合開始剤として該分子内開裂型を用いると、水素引抜型を用いる場合に比べて、光線照射によって粘着シートを架橋した後、光線反応性の光重合性開始剤が本粘着剤組成物中に未反応残渣として残り、粘着シートの予期せぬ経時変化や架橋の促進を招く可能性が低いため好ましい。また、光重合性開始剤特有の着色についても、反応分解物となることで、可視光線域の吸収がなくなり、消色するものを適宜選択することができるため好ましい。
他方、水素引抜型の光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる。
【0061】
光重合開始剤(c)の含有量は、特に制限されるものではない。例えば(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1~10質量部、中でも0.2質量部以上或いは5質量部以下、その中でも0.5質量部以上或いは3質量部以下の割合で含入するのが特に好ましい。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
光重合開始剤(c)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
(その他の成分)
本粘着シートは、上記以外の成分として、通常の粘着組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、防錆剤、老化防止剤、吸湿剤、加水分解防止剤、増感剤、帯電防止剤、消泡剤、無機粒子などの各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
また、必要に応じて反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を、必要に応じて適宜含有してもよい。
【0063】
[本粘着シートの製造方法]
本粘着シートは、光硬化性を有する粘着シートの表裏一側又は両側に離型フィルムを積層してなる離型フィルム付粘着シートを作製し、当該離型フィルム付粘着シートの端縁幅領域に光を照射することで、端縁幅領域における粘着シートのゲル分率を高めることにより製造することができる。
なお、この際、当該粘着シートのゲル分率は0~10%であることが好ましく、中でも0~5%、その中でも0~3%であれば、より一層本発明の効果を享受することができる。
【0064】
<粘着シート捲回体の製造方法>
次に、本粘着シートの一例としての、長尺な粘着シートをロール状に巻き上げてなる粘着シート捲回体すなわちロール状粘着シートの製造方法について詳述する。
【0065】
ロール状粘着シート2の製造方法としては、例えば光硬化性を有する長尺の粘着シート10の表裏一側又は両側に、長尺な離型フィルム11,12を積層してなる離型フィルム付粘着シート1を一定方向(MD方向)に搬送する工程において、図1及び図2に示すように、前記離型フィルム付粘着シート1のシート幅方向(TD方向)両端部分における、シート端縁からシート中央に向かって幅w[mm]の端縁幅領域1A、1Aに、光をそれぞれ照射して、粘着シート10のうちの端縁幅領域1A、1Aを硬化させた後、前記離型フィルム付粘着シート1をロール状に巻き取ってロール状粘着シート2を得ることを特徴とする製造方法を挙げることができる。
【0066】
(光照射前の離型フィルム付粘着シート1)
光照射前の離型フィルム付粘着シート1は、粘着シート10の表裏両側に離型フィルム11、12を積層してなる長尺な積層シートであり、その粘着シート10は、光硬化性を有し、且つ、粘着シート10の何れの部分においてもゲル分率が0~15%の範囲内であるのが好ましく、中でも12%以下、その中でも10%以下であるのがさらに好ましい。但し、本粘着シート10の表裏一側にのみ離型フィルムを積層してなる構成としてもよい。
【0067】
上記離型フィルム付粘着シート1の作製方法としては、例えば粘着剤組成物を2枚の離型フィルム11、12で挟み、ラミネータを用いて粘着材層を形成する方法を挙げることができる。また、その他の方法として、一方の離型フィルム11に粘着剤組成物を塗布して粘着材層を形成した後、他方の離型フィルム12を積層する方法を挙げることができる。但し、かかる製造方法に限定するものではない。
【0068】
粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えばリバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を挙げることができる。
【0069】
離型フィルム11、12としては、公知の離型フィルムを適宜用いることができる。例えばポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系のキャストフィルムや延伸フィルムに、シリコーン樹脂を塗布して離型処理したものや、離型紙などを適宜選択して用いることができる。
また、離型フィルム11、12には、前記した粘着剤組成物に配合することが可能な成分を、同様に配合することもできる。
なお、端縁幅領域を硬化する方法として、後述する通り、離型フィルム越しに光を照射する方法により行う場合は、離型フィルムは、当該照射光を吸収又は反射しない特性を有することが好ましい。
【0070】
本粘着シート10の両側に離型フィルム11、12を積層する場合、一方の離型フィルム11は、他方の離型フィルム12と同じ積層構成乃至材料のものであっても、異なる積層構成乃至材料のものであってもよい。
また、同じ厚さであっても、異なる厚さであってもよい。また、剥離力の異なる離型フィルムや厚さの異なる離型フィルムを本粘着シート10の両側に積層することができる。
【0071】
前記離型フィルム11、12の厚みは、50~200μmであることが好ましく、中でも75μm以上或いは150μm以下であることがより好ましい。かかる範囲の厚みにより、シート上方からの光照射を阻害することがなく、端縁幅領域と中央領域のゲル分率の調整がしやすい。
【0072】
(端縁幅領域1Aの光硬化方法)
端縁幅領域1Aに光を照射して硬化させる方法としては、図1に示すように、離型フィルム付粘着シート1のシート上面に対して上方から、又は、そのシート下面に対して下方から、又は、シート上下両面に対してそれぞれ上下両方から、光を照射するのが好ましい。
中でも、離型フィルム付粘着シート1のシート上面に対して上方から光を照射する際には、離型フィルム付粘着シート1における短手方向(TD方向)両側の端縁幅領域1A、1Aの上方に光源3を設置し、シート上面に対して垂直上方向、又は斜め60~90°上方、中でも70~90°上方、その中でも80~90°上方から光を照射するのが好ましい。このような角度で照射を行うことにより、端縁幅領域と中央領域とのゲル分率の差(境界)が明確となるため、より効率的に粘着剤の食み出しを抑制することができる。
離型フィルム付粘着シート1のシート下面に対して下方から光を照射する際には、上記と同様の理由により、離型フィルム付粘着シート1における短手方向(TD方向)両側の端縁幅領域1A、1Aの下方に光源を設置し、シート下面に対して垂直下方向、又は斜め60~90°下方、中でも70~90°下方、その中でも80~90°下方から光を照射するのが好ましい。
【0073】
ここで、離型フィルム付粘着シート1を一定方向(MD方向)に搬送しながら、離型フィルム付粘着シート1のシート幅方向(TD方向)両端部分に光を照射する方法としては、例えば図3(A)に示すように、離型フィルム付粘着シート1のシート面に対して垂直方向から光を照射する。具体的には、上面の上方又は下面の下方に光源3を設置し、離型フィルム付粘着シート1の上面に対して上方から、又は、その下面に対して下方から、又は、その両面に対して上下両方から、光を照射する方法を挙げることができる。
また、図3(B)に示すように、離型フィルム付粘着シート1のシート面延長方向(図の水平方向横側)に光源3を設置し、離型フィルム付粘着シート1のシート幅方向(TD方向)両端面に対して水平方向横から光を照射する方法を挙げることができる。
これらの方法を比較すると、離型フィルム付粘着シート1のシート幅方向(TD方向)両端面に対してシート面の延長方向から、すなわち図3(B)のように水平方向横側から光を照射する方法では、シート幅方向両端面の表面部分しか硬化することができないため、ロール状態で掛かる巻圧によって次第に粘着剤が食み出してくることが判明した。これに対し、離型フィルム付粘着シート1に対して上方向又は下方向又は上下両方向から光を照射する方法によれば、光を照射する幅を調整することにより、ロール状態で掛かる巻圧によって粘着剤が次第に食み出してくるのを効果的に防ぐことができることが確認されている。
本離型フィルム付粘着シート捲回体を製造する手段としては、図3(B)のように水平方向横側から光を照射する方法を排除するものではない。但し、この方法に比べて、図3(A)に示すような垂直方向から光を照射する方法の方が極めて効率的に製造することが可能である。
【0074】
また、上記のように、上方向又は下方向又は上下両方向から光を照射する方法によれば、上述したように端縁幅領域におけるゲル分率の標準偏差を3%以下とすることもできる。このように、かかる方法によれば、端縁幅領域における硬化を均一化することができ、粘着剤が次第に食み出してくるのを効果的に防ぐことができる。
【0075】
粘着シート10の端縁幅領域1Aのゲル分率を所定範囲に調整するには、例えば単位時間当たりの積算光線量や、粘着シートにおける架橋剤及び架橋開始剤の種類や含有量などにより、調整することができる。但し、これらに限定するものではない。
【0076】
光を照射する光源3は、光の指向性が高いという観点からLEDを使用するのが好ましい。光源3は各メーカーより様々な発光波長を有するものが開示されているが、特に一般的に用いられる開始剤が吸収する波長域に発光することが好ましい。具体的には200nm~450nm、中でも220nm以上或いは400nm以下であるのが好ましい。
また、光を照射する光源3は、光の指向性が高いという観点から、光拡散角度が50°以下、中でも40°以下、その中でも30°以下である光源を使用するのが好ましい。このような光拡散角度の光源を使用することにより、端縁幅領域と中央領域とのゲル分率の差(境界)が明確となるため、より効率的に粘着剤の食み出しを抑制することができる。
【0077】
光を照射する際、開始剤の吸収波長の観点から、少なくとも200nm~450nmの波長の光を照射するのが好ましい。
さらに、光を照射する際、粘着剤の食み出しを抑制するのに十分なゲル分率が得られる観点から、単位面積当たり1000mJ/cm~10000mJ/cm、中でも1500mJ/cm以上或いは9000mJ/cm以下、その中でも2000mJ/cm以上或いは8000mJ/cm以下の積算光線量の光を、端縁幅領域のそれぞれの側に照射するのが好ましい。
なお、単位時間当たりの積算光線量は、光源の出力、光源と離型フィルム付粘着シートとの距離、離型フィルム付粘着シートの搬送速度などにより調整することができる。一例として、好ましい条件を以下に挙げる。
【0078】
また、光源3の出力は、設備のコンパクト化に寄与する観点から、0.5W/cm~50W/cmであるのが好ましく、中でも1.0W/cm以上或いは40W/cm以下、その中でも2.0W/cm以上或いは30W/cm以下であるのがさらに好ましい。
【0079】
また、光源3のMD方向長さ3L、言い換えれば光を照射するMD方向の長さは、製造設備のコンパクト化の観点から、30mm~2000mmであるのが好ましく、中でも50mm以上或いは1000mm以下、その中でも100mm以上或いは500mm以下であるのがさらに好ましい。
【0080】
離型フィルム付粘着シート1を一定方向(MD)に搬送する際の搬送速度は、生産性と十分なゲル分率の上昇を付与する観点から、1m/min~30m/minであるのが好ましく、中でも3m/min以上或いは25m/min以下、その中でも5m/min以上或いは20m/min以下であるのがさらに好ましい。
【0081】
例えば、光源3として、出力7W/cm、照射波長365nm、光拡散角度30°、MD長さ(表の光源長)44mmのLEDを使用して、光源3とロール状粘着シート2の距離(表の光源距離)を10mmとし、約3.8s間UV照射させると積算光線量が約3200mJとなる。
【0082】
(巻き取り)
端縁幅領域1A、1Aを光硬化させた離型フィルム付粘着シート1をロール状に巻き取る際、フィルム幅1m当たりの巻き取り張力すなわち巻張力は20~200N/m巾であるのが好ましい。
巻き取り張力が20~200N/m巾であれば、巻きずれ、巻き膨れ、さらには巻きじわを生じさせることがなく、張力に伴うフィルムの配向による位相差増大を低減できるため、好ましい。
かかる観点から、巻張力は30~150N/m巾であるのが好ましく、中でも50N/m巾以上或いは100N/m巾以下であるのがさらに好ましい。
【0083】
光照射前の離型フィルム付粘着シートの各材料、積層構成及び作成方法は、上記離型フィルム付粘着シート1と同様であればよい。
また、端縁幅領域の光硬化方法も、上記離型フィルム付粘着シート1と同様であればよい。
【0084】
なお、光硬化方法は、必ずしも上述のように離型フィルム付粘着シート1の状態で行う必要は無い。例えば、離型フィルムを貼着する前の状態で粘着シートの端縁幅領域を硬化させ、その後に離型フィルムを貼着することもできる。このような方法を採ることにより、例えば紫外線吸収剤や着色剤など光透過を抑制する物質を含有させた離型フィルムを用いるような場合においても、良好に粘着シートの端縁幅領域を硬化させることができる。
また、本粘着シートは、それ自体が光硬化性を有していれば足り、必ずしも端縁幅領域の硬化を光照射によって施す必要は無い。具体的には、端縁幅領域の硬化を熱によって行ってもよい。
【0085】
<本粘着シートの使用方法>
本粘着シートは、ゲル分率の高い端縁幅領域を切除した後、粘着シートとして使用することができる。
【0086】
例えば上記ロール状粘着シート2の場合であれば、巻き戻して適宜の大きさに切断すると共に、ゲル分率の高い端縁幅領域1A、1Aを切除した上で、離型フィルム11,12を剥がして粘着シートとして使用することができる。そして例えば、例えば2つの画像表示装置構成部材で本粘着シート10を挟むように積層した後、少なくとも一方の画像表示装置構成部材側から光、例えば紫外線を照射し、この部材を介して、本粘着シート10を光架橋させて光硬化させることによって、2つの画像表示装置構成部材を貼り合わせることができる。なお、本粘着シート10を使用する際の硬化方法は、光照射による硬化に限定されるものではなく、例えば加熱により硬化させる方法など、他の硬化方法を用いることもできる。
ここで、被着体としての画像表示装置構成部材としては、例えば表面保護パネル、タッチパネル、画像表示パネルなどを挙げることができる。
【0087】
<語句の説明など>
本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートをそれぞれ包括する意味である。
【0088】
一般的にシートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シートおよびフィルムを包含するものである。
【0089】
本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例
【0090】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
【0091】
<測定及び評価方法>
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。
【0092】
(ゲル分率の測定)
後述する実施例1~4及び比較例1及び4では、光硬化させた端縁幅領域の幅w[mm]が分かっているため、実施例で得た粘着シートにおいて、短手方向両側シート端縁からシート中央に向かって幅w[mm]の領域の中から任意に約0.05g分採取して、これを端縁幅領域の測定サンプルとする一方、光硬化させていない中央領域から任意に約0.05g分採取して、これを中央領域の測定サンプルとした。
他方、比較例2及び3では、短手方向両側シート端縁からシート中央に向かって幅w[mm]=0.5mm毎に順に切出し、各領域の中から任意に約0.05g分採取して、これを端縁幅領域の測定サンプルとする一方、光硬化させていない中央領域から任意に約0.05g分採取して、これを中央領域の測定サンプルとした。
なお、比較例2及び3については、短手方向両側シート端縁からシート中央に向かって幅w[mm]=1~1.5mmの領域のゲル分率も測定したところ、いずれも0%であったので、前記幅w[mm]=1mmを端縁幅領域とした。
【0093】
そして、これらの測定サンプルそれぞれについて、予め質量(X)を測定したステンレス製メッシュ(#200)で袋状に包み、袋の口を折って閉じて、この包みの質量(Y)を測定した後、100mlの酢酸エチルに浸漬させ23℃で24時間暗所保管した後、包みを取り出して70℃で4.5時間加熱し付着している酢酸エチルを蒸発させ、乾燥した包みの質量(Z)を測定し、求めた質量を下記式に代入して求めた。
ゲル分率[%]=[(Z-X)/(Y-X)]×100
【0094】
同様のゲル分率測定を任意の6点について行い、得られた値からゲル分率の標準偏差を求めた。標準偏差の求め方に関して言えば、まず6点のゲル分率の平均値を求めた。次に得られた平均値との差を6点それぞれについて計算し偏差を求めた。続いて得られた偏差の2乗平均を計算し分散を求めた。最後に分散の正の平方根を計算して、端縁幅領域におけるゲル分率の標準偏差を求めた。
【0095】
(粘着剤のはみ出しの評価)
実施例及び比較例で作製したロール状粘着シートを30℃×90%(RH)の恒温高湿環境下で100時間晒した後、その試験片の端面を顕微鏡で観察した。
端面状態が変化しなかったものを「○(good)」、粘着剤が食み出して端面が変形したものを「×(poor)」と評価した。
【0096】
(積算照射量)
実施例及び比較例で照射したUVの積算照射量は、積算光量計として紫外線積算光量計「UIT-250」(ウシオ電機社製)を用い、365nm波長の受光部を取り付け、2回計測してその平均値を有効数字2ケタで求め、それぞれの積算照射量とした。
【0097】
<実施例1>
(メタ)アクリル系共重合体(a)として、数平均分子量2400のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(Tg:105℃)15質量部(18mol%)とブチルアクリレート(Tg:-55℃)81質量部(75mol%)とアクリル酸(Tg:106℃)4質量部(7mol%)とがランダム共重合してなるアクリル系共重合体(a-1)(重量平均分子量23万)1kgと、架橋剤(b)として、グリセリンジメタクリレート(日油社製、製品名:GMR)(b-1)90gと、光重合開始剤(c)として、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンの混合物(Lanberti社製、製品名:エザキュアTZT)(c-1)15gを均一混合し、粘着材層に用いる樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物のガラス転移温度は-5℃であった。
【0098】
得られた樹脂組成物を、離形処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる離型フィルム11(三菱ケミカル社製、製品名:ダイアホイルMRV-V06、厚さ:100μm)と、同じく離形処理したPETフィルムからなる離型フィルム12(厚さ75μmの二軸延伸イソフタル酸共重合PETフィルムの片面にシリコーン系化合物からなる厚さ2μmの離型層を積層してなるフィルム)との2枚で挟み、ラミネータを用いて粘着シート10の厚さが150μmとなるように、長尺シート状に賦形し、長尺な離型フィルム付粘着シート1を作製した。
【0099】
図1及び図2に示すように、離型フィルム付粘着シート1を一定方向(MD方向)に搬送速度(ラインスピード)20m/minで搬送すると共に、離型フィルム付粘着シート1のシート幅方向(TD方向)両端部分における、シート端縁からシート中央に向かって幅w(表の硬化幅)=5[mm]の端縁幅領域1A、1Aの上面に、紫外線(UV)をそれぞれ上方から照射して、粘着シート10のうちの端縁幅領域1A、1Aを硬化させた後、前記離型フィルム付粘着シート1を、フィルム幅1m当たりの巻き取り張力(巻張力)70N/m巾でロール状に巻き取って、全長100m、ロール幅1000mmの長尺のロール状粘着シート2を得た。
離型フィルム付粘着シート1における粘着シート10、すなわち硬化前の粘着シート10のゲル分率は0%であった。
【0100】
この際、図1及び図2に示すように、離型フィルム付粘着シート1の幅方向(短手方向)両側端縁の垂直上方向にそれぞれ光源3を配置し、粘着シート積層体1のシート上面に対して垂直上方から紫外線を照射した。
光源3には、出力7W/cm、照射波長365nm、光拡散角度30°、MD方向長さ(表の光源長)44mmのLEDを使用した。また、光源3とロール状粘着シート2の距離(表の光源距離)を10mmとし、単位時間当たりの積算光線量が1600mJとなるように光照射した。
【0101】
<実施例2>
搬送速度(ラインスピード)及び単位時間当たりの積算光線量を表に示すように変更した以外、実施例1と同様に、ロール状粘着シート2を得た。
【0102】
<実施例3>
硬化幅を変更した以外、実施例2と同様に、ロール状粘着シート2を得た。
【0103】
<比較例1>
硬化幅を変更した以外、実施例2と同様に、ロール状粘着シート2を得た。
【0104】
<比較例2>
光を照射する方向を、図3(B)に示すように、離型フィルム付粘着シート1のシート面延長方向すなわち側面方向に変更し、硬化幅を変更した以外、実施例2と同様に、ロール状粘着シート2を得た。
【0105】
<比較例3>
光を照射する方向を、図3(B)に示すように、離型フィルム付粘着シート1のシート面延長方向すなわち側面方向に変更すると共に、光源の種類を変更し、搬送速度(ラインスピード)、単位時間当たりの積算光線量及びその他の条件を表に示すように変更した以外、実施例2と同様に、ロール状粘着シート2を得た。
【0106】
<実施例4>
粘着シートの厚さを100μmに変更し、硬化幅を35dに変更した以外、実施例2と同様に、ロール状粘着シート2を得た。
【0107】
<比較例4>
硬化幅を25dに変更した以外、実施例4と同様に、ロール状粘着シート2を得た。
【0108】
【表1】
【0109】
上記実施例及びこれまで発明者らが行ってきた試験結果から、粘着シートをロール状に巻き取った状態で、かつ常温で保管する場合、粘着剤がロール端面から食み出すのを効果的に抑制するためには、少なくとも、硬化領域すなわち端縁幅領域のゲル分率が、中央領域における粘着シートのゲル分率より大きく、且つ、端縁幅領域の幅w[mm]が粘着シートの厚さd[mm]との関係で30d<wである必要があることが分かった。
図1
図2
図3