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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】静電チャック装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220405BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018568444
(86)(22)【出願日】2018-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2018033773
(87)【国際公開番号】W WO2019065233
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2017189720
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】小坂井 守
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 佳祐
【審査官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-119654(JP,A)
【文献】特開2013-9001(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0000745(KR,A)
【文献】特開2005-101108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置する試料載置面を有するとともに静電吸着用の第1の電極を有する静電チャック部と、
前記静電チャック部に対し前記試料載置面とは反対側に載置され前記静電チャック部を冷却する冷却ベース部と、
前記静電チャック部と前記冷却ベース部とを接着する接着層と、を備え、
前記冷却ベース部は、RF電極である第2の電極の機能を有しており、
前記静電チャック部と前記冷却ベース部との間に、RF電極もしくはLC調整用の第3の電極を有しており、前記第3の電極は、前記静電チャック部及び前記冷却ベース部と接着され、前記冷却ベース部とは絶縁されている、静電チャック装置。
【請求項2】
前記第3の電極は、有機系の絶縁材料で囲まれている、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項3】
前記第3の電極は前記試料載置面と前記冷却ベース部との間に設けられる、
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項4】
前記第3の電極は、有機材料で前記静電チャック部と接着されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項5】
前記第3の電極は、非磁性材料からなる、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項6】
前記第3の電極は、5μm以上500μm以下の厚さを有する金属箔である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項7】
前記静電チャック部と前記冷却ベース部との間に、RF電極もしくはLC調整用の第4の電極を有しており、前記第4の電極は、前記静電チャック部及び前記冷却ベース部と接着され、前記冷却ベース部とは絶縁されている、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項8】
前記第4の電極は、有機系の絶縁材料で囲まれている、
請求項7に記載の静電チャック装置。
【請求項9】
前記試料載置面の周囲であって前記試料載置面よりも凹んでいる凹部に、前記試料載置面の周囲を囲む円環状の構造物を設置する構造物設置面を有し、前記第4の電極は前記構造物設置面と前記冷却ベース部との間に設けられる、
請求項7または請求項8のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項10】
前記第4の電極は、有機材料で、前記静電チャック部と接着されている、
請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項11】
前記第4の電極は、非磁性材料からなる、
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項12】
前記第4の電極は、5μm以上500μm以下の厚さを有する金属箔である、
請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項13】
前記第3の電極と前記第4の電極数はそれぞれ1以上ある、
請求項7から請求項12のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項14】
前記第3の電極と前記第4の電極との間は、絶縁性の有機材料で絶縁されている、
請求項7から請求項13のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【請求項15】
前記第1の電極の面抵抗値が1.0Ω/□よりも大きく1.0×1010Ω/□よりも小さく、前記第1の電極の厚さが0.5μmよりも厚く50μmよりも薄い、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック装置に関する。
本願は、2017年9月29日に、日本に出願された特願2017-189720号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、密閉可能な処理チャンバー内にプラズマを発生させて、半導体ウエハ等の被処理基板の処理を行うプラズマエッチング装置が知られている。プラズマエッチング装置においては、ウエハの面内におけるエッチング速度の均一性及びエッチングの方向の均一性が求められる。しかし、プラズマエッチング装置において、エッチング速度及びエッチングの方向は、プラズマ内の電場の強さ及び電気力線の方向の影響を受け得る。そのため、プラズマエッチング装置のウエハの面内におけるエッチング速度及びエッチングの方向の均一性が低下してしまう場合がある。
3次元NANDフラッシュ・メモリのメモリーホール等においては、絶縁層及び電極層の多層膜の深孔のエッチングが必要とされ、ウエハの面内でのエッチング速度とホールの垂直性が特に重要となる。
【0003】
プラズマエッチング装置において、ウエハの面内におけるエッチング速度及びエッチングの方向の不均一性の問題を改善するための技術として、基板を載置する台に電極を設けウエハの面内に高周波の電力を印加することによりウエハの面内のエッチング速度及びエッチングの方向の均一性の向上を図るプラズマ処理装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-35266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のプラズマ処理装置においては、バイアス分布制御用電極に印加された高周波電圧により、部分的に加速電圧の調整をしても、静電チャック用電極内を高周波電流が移動し、静電チャック用電極で面内の電圧勾配が緩和され、充分な効果を発現できない問題点を有していた。
また、静電チャック部にウエハを静電吸着する電極と、バイアス分布制御用電極を設置する必要があり、結果として静電チャック部が厚くなり、静電チャック部の高周波透過性が低下する問題点も有していた。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ウエハの面内のエッチングが不均一になってしまうことを軽減することができる静電チャック装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、試料を載置する試料載置面を有するとともに静電吸着用の第1の電極を有する静電チャック部と、前記静電チャック部に対し前記試料載置面とは反対側に載置され前記静電チャック部を冷却する冷却ベース部と、前記静電チャック部と前記冷却ベース部とを接着する接着層と、を備え、前記冷却ベース部は、RF電極である第2の電極の機能を有しており、前記静電チャック部と前記冷却ベース部との間に、RF電極もしくはLC調整用の第3の電極を有しており、前記第3の電極は、前記静電チャック部及び前記冷却ベース部と接着され、前記冷却ベース部とは絶縁されている、静電チャック装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第3の電極は、有機系の絶縁材料で囲まれている。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第3の電極は前記試料載置面と前記冷却ベース部との間に設けられる。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第3の電極は、有機材料で前記静電チャック部と接着されている。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第3の電極は、非磁性材料からなる。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第3の電極は、5μm以上500μm以下の厚さを有する金属箔である。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記静電チャック部と前記冷却ベース部との間に、RF電極もしくはLC調整用の第4の電極を有しており、前記第4の電極は、前記静電チャック部及び前記冷却ベース部と接着され、前記冷却ベース部とは絶縁されている。
【0014】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第4の電極は、有機系の絶縁材料で囲まれている。
【0015】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記試料載置面の周囲であって前記試料載置面よりも凹んでいる凹部に、前記試料載置面の周囲を囲む円環状の構造物を設置する構造物設置面を有し、前記第4の電極は前記構造物設置面と前記冷却ベース部との間に設けられる。
【0016】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第4の電極は、有機材料で、前記静電チャック部と接着されている。
【0017】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第4の電極は、非磁性材料からなる。
【0018】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第4の電極は、5μm以上500μm以下の厚さを有する金属箔である。
【0019】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第3の電極と前記第4の電極の合計の数は1以上ある。
【0020】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第3の電極と前記第4の電極との間は、絶縁性の有機材料で絶縁されている。
【0021】
また、本発明の一態様は、上記に記載の静電チャック装置において、前記第1の電極の面抵抗値が1.0Ω/□よりも大きく1.0×1010Ω/□よりも小さく、前記第1の電極の厚さが0.5μmよりも厚く50μmよりも薄い。
ここで、面抵抗値の単位はΩ/□(オーム毎スクウェア)とし、以下においても同様である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ウエハの面内のエッチングが不均一になってしまうことを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態の静電チャック装置の一例を示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態の静電チャック装置の電極の一例を示す平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態の静電チャック装置の第1の変形例を示す断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態の静電チャック装置の一例を示す断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態の静電チャック装置の第1の変形例を示す断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態の静電チャック装置の第2の変形例を示す断面図である。
図7図1の絶縁接着層3の拡大図である。
図8図4の絶縁接着層213の拡大図である。
図9図3の絶縁接着層113の拡大図である。
図10図5の絶縁接着層313の拡大図である。
図11図6の絶縁接着層413の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る静電チャック装置1の一例を示す断面図である。図2は、本実施形態に係る静電チャック装置1の電極の一例を示す平面図である。静電チャック装置1は、静電チャック部2と、絶縁接着層3と、冷却ベース部4とを備える。ここで、静電チャック装置1に固定された座標系を、3次元直交座標系X、Y、Zとする。ここで、3次元直交座標系X、Y、ZのX軸は、水平方向に平行な向きであり、Z軸は、鉛直方向上向きである。上向きとはZ軸の正の向きである。
静電チャック部2と、絶縁接着層3と、冷却ベース部4とは、円柱状の形状である。静電チャック部2は、絶縁接着層3を挟んで冷却ベース部4の上に設置される。静電チャック部2と、絶縁接着層3と、冷却ベース部4とは、静電チャック装置1を上方から下にみたときに底面の円の中心が重なるように接着されている。
【0025】
(静電チャック部)
静電チャック部2は、静電チャック装置1を上方から下にみたときに、図2に示すように円板状である。静電チャック部2は、載置板22と、ウエハ静電吸着用電極23と、支持板24とを有する。載置板22と、支持板24とは一体化されている。
【0026】
載置板22は、円板状の上面である試料載置面21aを有している。
試料載置面21aは、上面に半導体ウエハ等の板状試料を載置する面である。試料載置面21aには、直径が板状試料の厚さより小さい突起部(不図示)が複数所定の間隔で形成され、これらの突起部が板状試料を支える。
支持板24は、下面において絶縁接着層3と接する。ここで下向きとはZ軸の負の向きである。
【0027】
静電チャック部2の厚さは、一例として0.7mm以上かつ5.0mm以下に形成されている。例えば、静電チャック部2の厚さが0.7mmを下回ると、静電チャック部2の機械的強度を確保することが難しくなる。静電チャック部2の厚さが5.0mmを上回ると、静電チャック部2の熱容量が大きくなり、載置される板状試料の熱応答性が劣化する。なお、ここで説明した各部の厚さは一例であって、前記した範囲に限るものではない。
【0028】
載置板22及び支持板24は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状のものであり、酸化アルミニウム-炭化ケイ素(Al-SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化イットリウム(Y)焼結体等の機械的な強度を有し、かつ腐食性ガス及びそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなる。
【0029】
ウエハ静電吸着用電極23は、静電チャック部2の円板の内周部において、載置板22と支持板24との間に設けられる。ウエハ静電吸着用電極23は、図2に示すように円板状の電極である。
【0030】
ウエハ静電吸着用電極23は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料を固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。ウエハ静電吸着用電極23は、ウエハ静電吸着用電極ピン25により支持される。ウエハ静電吸着用電極ピン25は、静電チャック部2の円板の外周部に備えられる。ウエハ静電吸着用電極23は、ウエハ静電吸着用電極ピン25を介して、後述する取出電極端子41と接続されている。図1では、ウエハ静電吸着用電極23が単数の単極構造である場合について説明したが、ウエハ静電吸着用電極23は複数の双極構造でもよい。ウエハ静電吸着用電極23が複数の双極構造である場合については、図3を参照し後述する。
【0031】
ウエハ静電吸着用電極23は、酸化アルミニウム-炭化タンタル(Al-Ta)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム-タングステン(Al-W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム-炭化ケイ素(Al-SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム-タングステン(AlN-W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム-タンタル(AlN-Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム-モリブデン(Y-Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成されることが好ましい。
ウエハ静電吸着用電極ピン25は、例えばウエハ静電吸着用電極23と同材の送電性セラミック等により形成される。
【0032】
プラズマエッチング装置において、エッチング速度及びエッチングの方向は、静電チャック部2の試料載置面21a上のプラズマにより励起エッチングガス密度、電場の強さ及び電気力線の方向に影響される。試料載置面21a上の電場の強さ及び電気力線の方向が面上において不均一である場合、エッチング速度及びエッチングの方向は不均一になり得る。
試料載置面21aにおいて、単位体積当たりの励起エッチングガス密度が、内周部分の方が外周部分に比べ少ない場合、試料載置面21aにおいて内周部分の方が外周部分よりもエッチング速度は遅くなる。
この場合、内周部のシース電圧を高くし、イオンの加速電圧を高くすることで、試料載置面21aの面内でのエッチング速度を均一にすることができる。
【0033】
ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値は、1.0Ω/□よりも大きく1.0×1010Ω/□よりも小さい。ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値が小さいと、ウエハ静電吸着用電極23内を横方向にRF電流が流れ、ウエハ静電吸着用電極23内は同電位となる。
ウエハ静電吸着用電極23内が同電位となる場合、後述するRF電極またはLC調整用の第3、第4の電極の効果は抑制されてしまう。
この第3、第4の電極は、静電チャック部2の試料載置面21a上のエッチング速度が不均一になってしまうことを軽減させるために設けられるが、ウエハ静電吸着用電極23をRF電流が横方向に流れるために、第3、第4の電極の効果が十分得られなくなる場合がある。
静電チャック装置1では、ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値を大きくすることにより、ウエハ静電吸着用電極23内を横方向に電流が流れることを抑止することができる。
また、ウエハ静電吸着用電極23のために後述のRF電極もしくはLC調整用の第3の電極(試料搭載面調整電極)51aの効果が低下する場合がある。静電チャック装置1では、ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値を大きくすることにより、RF電極もしくはLC調整用の第3の電極(試料搭載面調整電極)51aの効果が低下することを軽減することができる。
【0034】
ウエハ静電吸着用電極23の厚さは0.5μmよりも厚く50μmよりも薄い。このような厚さのウエハ静電吸着用電極23は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
ウエハ静電吸着用電極23の厚さが0.1μmを下回ると、充分な導電性を確保することが難しくなる。ウエハ静電吸着用電極23の厚さが100μmを越えると、ウエハ静電吸着用電極23と載置板22との間の熱膨張率差、及びウエハ静電吸着用電極23と支持板24との間の熱膨張率差に起因し、ウエハ静電吸着用電極23と載置板22との接合界面、及びウエハ静電吸着用電極23と支持板24との接合界面に剥離もしくはクラックが入り易くなる。
【0035】
(絶縁接着層)
絶縁接着層3は、冷却ベース部4を静電チャック部2の下面に貼り付ける。絶縁接着層3は、上方から順に、第1絶縁接着層31と、第2絶縁接着層32と、第3絶縁接着層33とからなる。
第1絶縁接着層31と、第2絶縁接着層32と、第3絶縁接着層33とは、有機系の絶縁材料により形成される。第1絶縁接着層31と、第2絶縁接着層32と、第3絶縁接着層33とは、単一の材料により形成されてもよいし、異なる材料により形成されてもよい。
【0036】
第1絶縁接着層31と、第2絶縁接着層32と、第3絶縁接着層33とは、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の耐熱性及び絶縁性を有する、ジェル状、またはシート状、またはフィルム状の接着性樹脂により形成されることが好ましい。
静電チャック部2と冷却ベース部4とが熱膨張差を有する場合、絶縁接着層3は、ゴム弾性を有する材料が好ましく、シリコーン樹脂であってもよい。シリコーン樹脂には、熱伝導性フイラが添加されてもよい。
第1絶縁接着層31と、第2絶縁接着層32と、第3絶縁接着層33とが異なる材料により形成される場合、第1絶縁接着層31と、第2絶縁接着層32と、第3絶縁接着層33とは、ゴム弾性を有する材料と、弾性率の高い材料とから形成されてもよい。
RF電極もしくはLC調整用の第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと冷却ベース部との間には、両者の絶縁性を高めるために、接着層以外にポリイミド等の耐電圧が高いシートが介在しても良い。
【0037】
第2絶縁接着層32は、RF電極もしくはLC調整用の第3の電極(試料搭載面調整電極)51aを、絶縁接着層3の円板の内周部分において有する。絶縁接着層3は、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aを内部に有する。つまり、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、有機系の絶縁材料である絶縁接着層3により囲まれている。また、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、有機系の絶縁材料である絶縁接着層3を接着剤として、静電チャック部2と接着されている。第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、有機系の絶縁材料である絶縁接着層3で冷却ベース部4と絶縁され接着されている。
【0038】
第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、第3絶縁接着層33により冷却ベース部4に接着された状態において接着硬化した後に、第2絶縁接着層32及び第1絶縁接着層31により静電チャック部2に接着されてよい。
その場合、第3絶縁接着層33は絶縁性のシート接着剤であるとし、第2絶縁接着層32及び第1絶縁接着層31は、第3絶縁接着層33よりも柔軟性の高い有機系接着剤であるとする。
第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、第1絶縁接着層31により静電チャック部2に接着された状態において接着硬化した後に、第2絶縁接着層32及び第3絶縁接着層33により冷却ベース部4に接着されてよい。
その場合、第1絶縁接着層31は絶縁性のシート接着剤であるとし、第2絶縁接着層32及び第3絶縁接着層33は、第1絶縁接着層31よりも柔軟性の高い有機系接着剤であるとする。
【0039】
本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aが、有機系の絶縁材料である絶縁接着層3で冷却ベース部4と絶縁され接着されているため、静電チャック部2の熱膨張係数と冷却ベース部4の熱膨張係数との差によって生じる耐久性の劣化を緩和することができる。
また、静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、有機系の絶縁材料である絶縁接着層3により囲まれているため、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aの側面からの放電を抑制することができる。
【0040】
第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、非磁性材料からなる円板状の電極である。第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、5μm以上500μm以下の厚さを有する金属箔である。第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、10μm以上200μm以下の厚さを有することが好ましい。
第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、非磁性の金属材料により形成されることが好ましい。第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、静電チャック部2と熱膨張率が近いチタン(Ti)やニオブ(Nb)等が好ましい。
第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと接続されている取出電極端子43とが接続されている部分の電流値が大きいため、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと取出電極端子43とは、溶接もしくは半田等により接続されていることが好ましい。溶接もしくは半田等による接続により接続部分の抵抗は低くなる。また、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと取出電極端子43とは、同じ材料により形成されることが好ましい。
本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは非磁性材料からなるため、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aにおいてRF電流の損失が少なく、第3の電極(試料搭載面調整電極)51a上の電位が不均一になってしまうことを緩和することができる。
また、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、5μm以上200μm以下の厚さを有する金属箔であることもまた、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aにおいてRFの損失及び発熱が少なく、第3の電極(試料搭載面調整電極)51a上の電位が不均一になってしまうことを緩和する効果を奏する。
【0041】
第1絶縁接着層31と、第2絶縁接着層32と、第3絶縁接着層33は、絶縁接着層3の円板の外周部分において第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと重ならないように導電性接着層34を有する。第1絶縁接着層31と、第2絶縁接着層32と、第3絶縁接着層33は、導電性接着層34の周囲を覆って形成される。導電性接着層34は、ウエハ静電吸着用電極ピン25を取出電極端子41に貼り付ける。導電性接着層34は、柔軟性と耐電性を有するシリコーン系の導電性接着剤により形成されることが好ましい。
また、第3絶縁接着層33は、絶縁接着層3の円板の内周部分において第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと重なるように取出電極端子43を有する。第3絶縁接着層33は、取出電極端子43の周囲を覆って形成される。
【0042】
(冷却ベース部)
冷却ベース部4は、静電チャック部2を所望の温度に調整するためのもので、厚さのある円板状のものである。冷却ベース部4としては、例えば、その内部に水を循環させる流路が形成された水冷ベース等が好ましい。
【0043】
冷却ベース部4は、コンデンサとコイルを含むマッチングボックスC9を介して高周波電源C10に接続される。高周波電源C10は、冷却ベース部4にバイアス電圧用のRF(Radio Frequency)電圧を印加する。
つまり、冷却ベース部4は、RF電極としての機能を有している。高周波電源C10は、アースC11により接地されている。
【0044】
冷却ベース部4を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)等が好適に用いられる。
冷却ベース部4の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0045】
冷却ベース部4は、取出電極端子41及び取出電極端子43を有する。冷却ベース部4は、取出電極端子41及び取出電極端子43の周囲を覆って形成される。取出電極端子41及び取出電極端子43は、絶縁性を有する絶縁碍子42及び絶縁碍子44により各々覆われている。取出電極端子41及び取出電極端子43は、冷却ベース部4をZ軸方向に貫通するように設けられている。
【0046】
取出電極端子41は、絶縁碍子42により、金属製の冷却ベース部4に対し絶縁されている。取出電極端子43は、絶縁碍子44により、金属製の冷却ベース部4に対し絶縁されている。
取出電極端子41及び取出電極端子43の材料としては、耐熱性に優れた、導電性を有する非磁性の材料であれば特に制限されるものではない。取出電極端子41の材料は、熱膨張係数がウエハ静電吸着用電極23及び支持板24の熱膨張係数に近似したものが好ましい。
取出電極端子43の材料は、熱膨張係数が第3の電極(試料搭載面調整電極)51a及び絶縁接着層3の熱膨張係数に近似したものが好ましい。取出電極端子41及び取出電極端子43は、例えば、チタン(Ti)等の金属材料からなる。
取出電極端子43は、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと接続されている取出電極端子43とが接続されている部分の電流値が大きいため、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと同じ材料により形成され、溶接等で接合されていることが好ましい。
【0047】
取出電極端子43は、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aにRF電圧を印加するために設けられた棒状のものである。取出電極端子43は、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aに直接接続されている。取出電極端子41は、不図示の高周波カットフィルタを介して可変型直流電源C1に接続されている。可変型直流電源C1はアースC2により接地されている。
取出電極端子43は、スイッチSW1の制御端子に接続されている。スイッチSW1が第1端子SW11に接続された場合、取出電極端子43は、LC共振回路LC1に接続される。取出電極端子43は、LC共振回路LC1を通じてアースC5により接地される。
LC共振回路LC1は、可変インダクタC3と、コンデンサC4とを備える。可変インダクタC3と、コンデンサC4とは直列に接続されている。スイッチSW1が第1端子SW11に接続された場合、取出電極端子43は可変インダクタC3に接続される。
スイッチSW1が第2端子SW12に接続された場合、取出電極端子43は、マッチングボックスC6を通じて、高周波電源C7に接続される。取出電極端子43は、マッチングボックスC6及び高周波電源C7を通じてアースC8により接地される。
不図示の制御回路は、スイッチSW1が第1端子SW11に接続されるか、第2端子SW12に接続されるかを切り替える。
【0048】
スイッチSW1が第1端子SW11に接続された場合、不図示の制御回路は、LC共振回路LC1のL成分を調整することにより第3の電極(試料搭載面調整電極)51aの電圧の大きさを可変に制御する。
冷却ベース部4に印加されたRF電圧は、可変インダクタC3及びコンデンサC4を介して流れるため、静電チャック装置1は、冷却ベース部4を上方から下に向かってみたときに第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと重なる試料載置面21aのシース電圧を下げることができる。
冷却ベース部4を上方から下に向かってみたときに第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと重なる部分のRF電圧が下がるため、試料載置面21aにおいて静電チャック部2を上方から下に向かってみたときに第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと重なる部分の試料載置面21aのシース電圧が下がり、試料載置面21a上のエッチング速度及びエッチングの方向が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
なお、ウエハ静電吸着用電極のために、試料載置面21a上のエッチング速度及びエッチングの方向が不均一になってしまうことを軽減させるという第3の電極(試料搭載面調整電極)51aの効果が低下する場合があるが、静電チャック装置1では、ウエハ静電吸着用電極23の面抵抗値を大きくすることにより、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aの効果が低下することを軽減することができる。
【0049】
スイッチSW1が第2端子SW12に接続された場合、不図示の制御回路は、高周波電源C7の電圧の大きさを可変に制御する。
静電チャック装置1では、制御回路が高周波電源C7の電圧の大きさ及び高周波電源C10との位相を可変に制御することにより、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aに重なる部分のRF電圧を調整することにより、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aに重なる部分の試料載置面21aのシース電圧を制御することができる。
【0050】
マッチングボックスC6は、コンデンサとコイルを含む。マッチングボックスC6は、インピーダンス整合器であり、入力側の高周波電源C7と、出力側の第3の電極(試料搭載面調整電極)51aとのインピーダンスを整合させる。
なお、本実施形態においては、高周波電源C7及びLC共振回路LC1が静電チャック装置1に備えられる場合について説明をしたが、静電チャック装置1はLC共振回路LC1を備えていなくてもよい。その場合、取出電極端子43は、スイッチSW1を介さずにマッチングボックスC6に接続される。
【0051】
静電チャック部2の内部に第3の電極(試料搭載面調整電極)を設ける場合、静電チャック部2の構造が複雑となり、静電チャック部2の厚みが厚くなり得る。静電チャック部2の厚みが厚くなると、RF電流の透過性が低下し、シース電圧も低下してしまうという問題がある。
本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、RF電極である冷却ベース部4と静電チャック部2の間の絶縁接着層3に備えられる。
静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aがRF電極である冷却ベース部4と静電チャック部2の間の絶縁接着層3に備えられることにより、第3の電極(試料搭載面調整電極)が静電チャック部2の内部に備えらえる場合に比べ、静電チャック部2の厚みを薄くすることができる。また、静電チャック装置1では、静電チャック部2の厚みを薄くすることができるため、冷却ベース部4に印加されたRF電圧の静電チャック部2の透過性が優れている。
また、静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aがRF電極である冷却ベース部4と静電チャック部2の間の絶縁接着層3に備えられることにより、第3の電極(試料搭載面調整電極)が静電チャック部2の内部に備えらえる場合に比べ、静電チャック部2の構造が簡易になり、静電チャック部2を従来の知られている静電チャック装置に容易に設置することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、一例として第3の電極(試料搭載面調整電極)51aが絶縁接着層3の内部に1つ備えられる場合について説明したが、第3の電極(試料搭載面調整電極)は、絶縁接着層3の内部に複数備えられてもよい。第3の電極(試料搭載面調整電極)が、絶縁接着層3の内部に複数備えられる場合、複数の第3の電極(試料搭載面調整電極)は、絶縁接着層3を上方から下に向かってみた場合に、複数の第3の電極(試料搭載面調整電極)が互いに重ならないように備えられる。複数の第3の電極(試料搭載面調整電極)の形状は、円板状またはリング状であり、円板状またはリング状を組み合わせてもよい。
【0053】
(まとめ)
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置1は、静電チャック部2と、冷却ベース部4と、接着層(絶縁接着層3)とを備える。
静電チャック部2では、試料を載置する試料載置面21aを有するとともに静電吸着用の第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)を有する。
冷却ベース部4は、静電チャック部2に対し試料載置面21aとは反対側に載置され静電チャック部2を冷却する。冷却ベース部4は、RF電極である第2の電極の機能を有している。
接着層(絶縁接着層3)は、静電チャック部2と冷却ベース部4とを接着する。
静電チャック装置1では、静電チャック部2と冷却ベース部4との間に、RF電極もしくはLC調整用の第3の電極(試料搭載面調整電極)51aを有し、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、静電チャック部2及び冷却ベース部4と接着され、冷却ベース部4と絶縁され接着されている。
【0054】
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、エッチング速度が速い部分のRF電圧を調整し、シース電圧を下げることができるため、静電チャック部2の試料載置面上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。本実施形態においてエッチングが不均一になってしまうこととは、エッチング速度の不均一性及びエッチング方向が不均一になってしまうことである。
また、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aがRF電極である冷却ベース部4と静電チャック部2の間の絶縁接着層3に備えられることにより、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aが静電チャック部2の内部に備えらえる場合に比べ、静電チャック部2の厚みを薄くすることができる。
また、静電チャック装置1では、静電チャック部2の厚みを薄くすることができるため、冷却ベース部4に印加されたRF電圧の静電チャック部2の透過性が改善される。
【0055】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、有機系の絶縁材料で囲まれている。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aの側面からの放電を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは試料載置面21aと冷却ベース部4との間に設けられる。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aが静電チャック部2の内部に備えらえる場合に比べ、静電チャック部2の構造が簡素になり、静電チャック部2を従来の知られている静電チャック装置に容易に設置することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、有機材料で、静電チャック部2と接着されている。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、静電チャック部2の熱膨張係数と冷却ベース部4の熱膨張係数との差によって生じる耐久性の劣化を緩和することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極51aは、非磁性材料からなる。この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aにおいてRF電流の損失を少なくすることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aは、5μm以上500μm以下の厚さを有する金属箔である。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aにおいてRF電流の損失が少なく、第3の電極(試料搭載面調整電極)51a上の電位が不均一になってしまうことを緩和することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の面抵抗値が1.0Ω/□よりも大きく1.0×1010Ω/□よりも小さく、第1の電極(ウエハ静電吸着用電極23)の厚さが0.5μmよりも厚く50μmよりも薄い。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、試料載置面21a上のエッチング速度及びエッチングの方向が不均一になってしまうことを軽減させるという第3の電極(試料搭載面調整電極)51aの効果が低下することを軽減することができる。また、静電チャック装置1では、充分な導電性を確保することができ、静電チャック部2の堅牢性を高めることができる。
【0061】
(第1の実施形態の変形例)
ここで、図3を参照し、ウエハ静電吸着用電極23が複数の双極構造である場合について説明する。図3は、本実施形態に係る静電チャック装置の第1の変形例を示す断面図である。静電チャック装置101は、静電チャック部112の内部においてウエハ静電吸着用第1電極123を備える。
ウエハ静電吸着用第1電極123は、静電チャック部112の内部において、静電チャック部112を上方から下にみたときに試料載置面21aと重なる部分の内周部に設けられる。ウエハ静電吸着用第2電極124は、静電チャック部112の内部において、静電チャック部112を上方から下にみたときに試料載置面21aと重なる部分の外周部に設けられる。
ウエハ静電吸着用第1電極123は、円板状の電極である。ウエハ静電吸着用第1電極123は、ウエハ静電吸着用電極ピンを介して取出電極端子143と接続されている。取出電極端子143及び絶縁碍子144は、取出電極端子43及び絶縁碍子44と重ならないように設けられる。
ウエハ静電吸着用第2電極124は、リング状の電極である。ウエハ静電吸着用第2電極124は、ウエハ静電吸着用電極ピンを介して取出電極端子141と接続されている。
【0062】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
上記第1の実施形態では、静電チャック装置が、静電チャック部と冷却ベース部との間に、RF電極もしくはLC調整用の第3の電極(試料搭載面調整電極)51aを有する場合について説明をした。本実施形態では、静電チャック装置が、構造物設置面と冷却ベース部との間に、静電吸着用の電極を有する場合について説明をする。
本実施形態に係る静電チャック装置を静電チャック装置201と示す。
【0063】
図4は、本実施形態に係る静電チャック装置201の一例を示す断面図である。静電チャック装置201は、静電チャック部212と、絶縁接着層213と、冷却ベース部214とを備える。
本実施形態に係る静電チャック装置201(図4)と第1の実施形態に係る静電チャック装置1(図1)とを比較すると、本実施形態に係る静電チャック装置201(図4)は、構造物設置面21bを有している。
また、本実施形態に係る静電チャック装置201(図4)は、RF電極もしくはLC調整用の第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bを、静電チャック部212内と冷却ベース部214との間の絶縁接着層213の中に備えても良い。この第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bは、構造物設置面21b上のシース電圧を調整する。
また、構造物の静電吸着用の電極を静電チャック部212内もしくは、静電チャック部212と冷却ベース部214との間の絶縁接着層213の中に備えても良い。なお、構造物の静電吸着用の電極が静電チャック部212内に備えられる場合、及び構造物の静電吸着用の電極が絶縁接着層213の中に備えられる場合については、図5及び図6を参照し後述する。
ここで、他の構成要素が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0064】
静電チャック部212は、上面において試料載置面21aと構造物設置面21bとを有数する。試料載置面21aは、静電チャック部212の円板の内周部分の上面である。
構造物設置面21bは、静電チャック部212の円板の外周部分の上面である。構造物設置面21bは、試料載置面21aよりも凹んでいる凹部に設けられている。構造物設置面21bは、フォーカスリングが載置される面である。つまり、静電チャック部212は、試料載置面21aの周囲であって試料載置面21aよりも凹んでいる凹部に、試料載置面21aの周囲を囲む円環状の構造物であるフォーカスリングを設置する構造物設置面21bを有する。
静電チャック部212は、構造物設置面21bを有する分、第1の実施形態に係る静電チャック装置1の静電チャック部2(図1)より構造物設置面21bの厚みだけ厚い。ウエハ静電吸着用電極ピン225は、第1の実施形態に係る静電チャック装置1のウエハ静電吸着用電極ピン25(図1)よりも長い。
【0065】
フォーカスリング(不図示)は、例えば、試料載置面21aに載置されるウエハと同等の電気伝導性を有する材料を形成材料としている。ウエハの周縁部にフォーカスリングを配置することにより、プラズマに対する電気的な環境を試料載置面21aと略一致させることができるため、静電チャック部212の試料載置面21a上のエッチング速度が中央部と周縁部とにおいて不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0066】
絶縁接着層213は、冷却ベース部214を静電チャック部212の下面に貼り付ける。絶縁接着層213は、第1絶縁接着層2131と、第2絶縁接着層2132と、第3絶縁接着層2133と、第4絶縁接着層2135とからなる。第2絶縁接着層2132と第4絶縁接着層2135とは、第3絶縁接着層2133の上に備えられる。第1絶縁接着層2131と、第2絶縁接着層2132と、第3絶縁接着層2133と、第4絶縁接着層2135とは、有機系の絶縁材料により形成される。第1絶縁接着層2131と、第2絶縁接着層2132と、第3絶縁接着層2133と、第4絶縁接着層2135とは、単一の材料により形成されてもよいし、異なる材料により形成されてもよい。
【0067】
静電チャック部212が構造物設置面21bを有する分、円柱状の絶縁接着層213の底面の円の直径は、第1の実施形態に係る静電チャック装置1の絶縁接着層3(図1)に比べ大きい。
絶縁接着層213は、RF電極もしくはLC調整用の第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bを、絶縁接着層213の円板の外周部分の内部において有する。RF電極もしくはLC調整用の第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと、第4絶縁接着層2135と、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bと、第2絶縁接着層2132とは、RF電極もしくはLC調整用の第3の電極(試料搭載面調整電極)51a、第4絶縁接着層2135、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61b、第2絶縁接着層2132の順に、絶縁接着層213の円板において内周部から外周部へと備えられる。
第2絶縁接着層2132と第4絶縁接着層2135とは、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bによって隔てられる。
絶縁接着層213は、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bを、静電チャック部212を上方から下にみたときに構造物設置面21bと重なる部分と、静電チャック部212を上方から下にみたときに試料載置面21aと重なりウエハ静電吸着用電極23とは重ならない部分とに跨って有する。
第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bは、ウエハ外周部及びフォーカスリング部のシース電圧を調整する電極で、後述する取出電極端子45と直接接続されている。
静電チャック装置201は、構造物設置面21bと冷却ベース部214との間に、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bを有する。
【0068】
冷却ベース部214は、取出電極端子41及び取出電極端子43に加えて、取出電極端子45を有する。冷却ベース部214は、取出電極端子45の周囲を覆って形成される。
取出電極端子45は、絶縁性を有する絶縁碍子46により覆われている。絶縁碍子46は、冷却ベース部214をZ軸方向に貫通するように設けられている。
【0069】
取出電極端子45は、絶縁碍子46により、金属製の冷却ベース部214に対し絶縁されている。
取出電極端子45の材料としては、耐熱性に優れた導電性材料であれば制限されない。
取出電極端子45の材料は、熱膨張係数が第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61b及び絶縁接着層213の熱膨張係数に近似したものが好ましい。取出電極端子45は、例えば、チタン(Ti)等の金属材料からなる。
【0070】
取出電極端子45は、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bにRF電圧を印加するために設けられた棒状のものである。取出電極端子45は、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bに直接接続されている。取出電極端子45は、スイッチSW2の制御端子に接続されている。
スイッチSW2が第1端子SW21に接続された場合、取出電極端子45は、LC共振回路LC2に接続される。取出電極端子45は、LC共振回路LC2を通じてアースC17により接地される。LC共振回路LC2は、可変インダクタC15と、コンデンサC16とを備える。可変インダクタC15と、コンデンサC16とは直列に接続されている。
スイッチSW2が第1端子SW21に接続された場合、取出電極端子45は可変インダクタC15に接続される。
スイッチSW2が第2端子SW22に接続された場合、取出電極端子45は、マッチングボックスC12を通じて、高周波電源C13に接続される。取出電極端子45は、マッチングボックスC12及び高周波電源C13を通じてアースC14により接地される。
不図示の制御回路は、スイッチSW2が第1端子SW21に接続されるか、第2端子SW22に接続されるかを切り替える。
【0071】
スイッチSW2が第1端子SW21に接続された場合、不図示の制御回路は、LC共振回路LC2のL成分を調整することにより第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bの電圧の大きさを可変に制御する。
冷却ベース部214を上方から下に向かってみたときに第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bと重なる部分のRF加速電圧が下がるため、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bにおいて静電チャック部212を上方から下に向かってみたときに第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bと重なる部分の上方のシース電圧が下がり、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61b上のエッチング速度及びエッチングの方向が不均一になってしまうことを軽減させることができる。
【0072】
スイッチSW2が第2端子SW22に接続された場合、不図示の制御回路は、高周波電源C13の電圧の大きさを可変に制御する。
静電チャック装置201では、制御回路が高周波電源C13の電圧の大きさを可変に制御することにより、高周波電源C10に接続された冷却ベース部4の加速電圧を制御する。
【0073】
マッチングボックスC12は、コンデンサとコイルを含む。マッチングボックスC12は、インピーダンス整合器であり、入力側の高周波電源C13と、出力側の第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bとのインピーダンスを整合させる。
なお、本実施形態においては、高周波電源C13及びLC共振回路LC2が静電チャック装置201に備えられる場合について説明をしたが、静電チャック装置201はLC共振回路LC2を備えていなくてもよい。その場合、取出電極端子45は、スイッチSW2を介さずにマッチングボックスC12に接続される。
【0074】
静電チャック装置201では、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bが備えられているため、静電チャック部212を上方から下向きにみた場合に、試料載置面21a及び構造物設置面21bが第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bと重なる部分のFR電圧を調整することができる。
静電チャック装置201では、静電チャック部212を上方から下向きにみた場合に、試料載置面21a及び構造物設置面21bが第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bと重なる部分の構造物設置面21bのシース電圧の強さ及びシース電圧の方向を調整することができる。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態に係る静電チャック装置201では、静電チャック部212と冷却ベース部214との間に、RF電極もしくはLC調整用の第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bを有しており、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bは、静電チャック部212及び前記冷却ベース部214と接着され、冷却ベース部214とは絶縁されている。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bと重なる部分の構造物設置面21bのシース電圧を調整することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bは、有機系の絶縁材料で囲まれている。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置1では、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bの側面からの放電を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る静電チャック装置201では、試料載置面21aの周囲であって試料載置面21aよりも凹んでいる凹部に、試料載置面21aの周囲を囲む円環状の構造物を設置する構造物設置面21bを有し、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bは構造物設置面21bと冷却ベース部214との間に設けられる。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置201では、静電チャック部212の外周部の構造物設置面21bのシース電圧の強さ及び方向を調整することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bは、有機材料で、静電チャック部212と接着されている。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置201では、静電チャック部212の熱膨張係数と冷却ベース部214の熱膨張係数との差によって生じる耐久性の劣化を緩和することができる。
【0079】
また、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bは、非磁性材料からなる。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bにおいてRF電流の損失を少なくすることができる。
【0080】
また、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bは、5μm以上500μm以下の厚さを有する金属箔である。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bにおいてRF電流の損失が少なく、第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61b上の電位が不均一になってしまうことを緩和することができる。
【0081】
また、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bの合計の数は1以上ある。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bとが1つの場合に比べ、エッチング速度が速い部分のシース電圧をより細かく調整し、静電チャック部212の試料載置面21a及び構造物設置面21b上のエッチングが不均一になってしまうことを軽減させることができる。
また、複数の第3のRF電極及び複数の第4の電極61bに加えられるRF電圧の位相を調整することにより、シース電圧の強さに加え方向も調整することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51aと第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bとの間は、絶縁性の有機材料で絶縁されている。
この構成により、本実施形態に係る静電チャック装置201では、第3の電極(試料搭載面調整電極)51a及び第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bの側面からの放電を抑制することができる。
【0083】
(第2の実施形態の変形例1)
ここで、図5を参照し、構造物の静電吸着用の電極が静電チャック部内に備えられる場合について説明する。図5は、本実施形態に係る静電チャック装置の第1の変形例を示す断面図である。静電チャック装置301は、静電チャック部312の内部においてFR静電吸着用電極323を備える。
FR静電吸着用電極323は、静電チャック部312の内部において、静電チャック部312を上方から下にみたときに構造物設置面21bと重なる部分に設けられる。FR静電吸着用電極323は、リング状の電極である。
FR静電吸着用電極323は、取出電極端子341を介して可変型直流電源C31に接続される。FR静電吸着用電極323は、構造物設置面21bに載置される不図示のフォーカスリングを吸着する。
【0084】
(第2の実施形態の変形例2)
ここで、図6を参照し、構造物の静電吸着用の電極が絶縁接着層の中に備えられる場合について説明する。図6は、本実施形態に係る静電チャック装置の第2の変形例を示す断面図である。
静電チャック装置401は、静電チャック部412と冷却ベース414とを接着する接着層413にFR静電吸着用電極423を備える。
FR静電吸着用電極423は、接着層413において、静電チャック部412を上方から下にみたときに構造物設置面21bと重なる部分に設けられる。FR静電吸着用電極423は、静電チャック部412を上方から下にみたときに第4の電極(FR部表面電位調整用電極)61bと重なる部分を有する。FR静電吸着用電極423は、リング状の電極である。
FR静電吸着用電極423(図6)は、FR静電吸着用電極323(図5)のように静電チャック部412の内部に備えられる場合に比べ、静電チャック部412の構造が簡素になり、静電チャック部412を従来の知られている静電チャック装置に容易に設置することができる。
【0085】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1、101、201…静電チャック装置、2、212…静電チャック部、3、213…絶縁接着層、31、2131…第1絶縁接着層、32、2132…第2絶縁接着層、33、2133…第3絶縁接着層、2135…第4絶縁接着層、4、214…冷却ベース部、21a…試料載置面、21b…構造物設置面、22…載置板、23…ウエハ静電吸着用電極、123…ウエハ静電吸着用第1電極、124…ウエハ静電吸着用第2電極、24…支持板、25、225…ウエハ静電吸着用電極ピン、34…導電性接着層、41、43、45…取出電極端子、42、44、46…絶縁碍子、51a…RF電極もしくはLC調整用の第3の電極(試料搭載面調整電極)、61b…RF電極もしくはLC調整用の第4の電極(FR部表面電位調整用電極)、C1…可変型直流電源、C2、C5、C8、C11…アース、C3…可変インダクタ、C4…コンデンサ、C6、C9、C12…マッチングボックス、C7、C10、C13…高周波電源、LC1…LC共振回路、SW1…スイッチ、SW11…第1端子、SW12…第2端子
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