(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】半導体コンプレッション成型用離型シート及びこれを用いて成型される半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20220405BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220405BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220405BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20220405BHJP
【FI】
H01L21/56 Z
B32B27/00 L
B32B27/36
B32B7/06
(21)【出願番号】P 2021000143
(22)【出願日】2021-01-04
(62)【分割の表示】P 2019085306の分割
【原出願日】2014-11-06
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】池谷 卓二
(72)【発明者】
【氏名】田村 遼
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-063971(JP,A)
【文献】特開2004-200467(JP,A)
【文献】特開2014-014980(JP,A)
【文献】特開2014-086633(JP,A)
【文献】国際公開第2014/106879(WO,A1)
【文献】特開2004-079567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B32B 27/00
B32B 27/36
B32B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子を含む離型層と、
基材層と、
を含み、
前記離型層中の前記樹脂粒子の含有率が5体積%~65体積%である半導体コンプレッション成型用離型シート。
【請求項2】
前記樹脂粒子の平均粒子径が1μm~55μmである請求項1に記載の半導体コンプレッション成型用離型シート。
【請求項3】
前記樹脂粒子が、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1又は請求項2に記載の半導体コンプレッション成型用離型シート。
【請求項4】
前記基材層が、ポリエステルフィルムである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の半導体コンプレッション成型用離型シート。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の半導体コンプレッション成型用離型シートを
、コンプレッション成型装置の金型の形状に追従させる工程、並びに
封止材を前記金型に入れて加熱及び圧縮により前記封止材を硬化する工程、
を含む半導体パッケージ
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体コンプレッション成型用離型シート及びこれを用いて成型される半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは通常、外気からの遮断及び保護のため樹脂で封止され、パッケージと呼ばれる成形品として基板上に実装される。従来、成形品は封止樹脂の流路であるランナーを介して連結した1チップ毎のパッケージ成形品として成形されている。この場合、金型の構造、封止樹脂への離型剤の添加等により、成形品の金型からの離型性を得ている。
一方、パッケージの小型化、多ピン化等の要請から、Ball Grid Array(BGA)方式、Quad Flat Non-leaded(QFN)方式、ウエハレベルChip Size Package(WL-CSP)方式等のパッケージが増加している。QFN方式では、スタンドオフの確保及び端子部への封止材バリ発生を防止するため、またBGA方式及びWL-CSP方式では、金型からのパッケージの離型性向上のため、樹脂製離型フィルムが用いられる(例えば、特許文献1参照)。このように離型フィルムを使用する成型方法を、「フィルムアシスト成型」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の離型フィルムを使用すると、半導体パッケージを樹脂成型する際に、半導体パッケージの封止材と金型とを容易に離型することは可能である。しかし、成型したパッケージ表面外観が不均一で封止材のフロー跡が見られたり、離型フィルムから成型した半導体パッケージ表面への汚染が起きたりする可能性がある。
また、BGA方式及びWL-CSP方式で、従来のトランスファーモールド方式からコンプレッションモールド方式へと成形方法が変更されるに従い、1ショットの大サイズ化が進み、成形したパッケージ表面外観の均一性、封止材のフロー跡等の要求レベルが高くなってきている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、半導体パッケージをコンプレッションモールド方式により樹脂成型する際に、半導体パッケージにダメージを与えることなく封止材と金型とを容易に離型することが可能であり、成型した半導体パッケージ表面外観の均一性に優れ、且つ成型した半導体パッケージ表面への離型シートからの汚染を低減可能な半導体コンプレッション成型用離型シートを提供することを課題とする。また、本発明は、この半導体コンプレッション成型用離型シートを用いて成型される半導体パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、下記の態様を含む。
<1> 樹脂粒子を含む離型層と、
基材層と、
を含み、
前記離型層中の前記樹脂粒子の含有率が5体積%~65体積%である半導体コンプレッション成型用離型シート。
<2> 前記樹脂粒子の平均粒子径が1μm~55μmである<1>に記載の半導体コンプレッション成型用離型シート。
<3> 前記樹脂粒子が、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>又は<2>に記載の半導体コンプレッション成型用離型シート。
<4> 前記基材層が、ポリエステルフィルムである<1>~<3>のいずれか1つに記載の半導体コンプレッション成型用離型シート。
<5> <1>~<4>のいずれか1つに記載の半導体コンプレッション成型用離型シートを用いて成型される半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体パッケージをコンプレッション成型により成型する際に、半導体パッケージにダメージを与えることなく封止材と金型とを容易に離型することが可能であり、成型した半導体パッケージ表面外観の均一性に優れ、且つ成型した半導体パッケージ表面への離型シートからの汚染を低減可能な半導体コンプレッション成型用離型シートが提供される。また、本発明によれば、この半導体コンプレッション成型用離型シートを用いて成型される半導体パッケージが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「層」及び「膜」とは、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」の少なくとも一方を意味する。
【0009】
本発明において、層又は膜の平均厚み(厚みの平均値ともいう)は、対象となる層又は膜の5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。
層又は膜の厚みは、マイクロメーター等を用いて測定することができる。本発明において、層又は膜の厚みを直接測定可能な場合には、マイクロメーターを用いて測定する。一方、1つの層の厚み又は複数の層の総厚みを測定する場合には、電子顕微鏡を用いて、離型シートの断面を観察することで測定してもよい。
【0010】
本発明において「平均粒子径」は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積累積の粒度分布曲線において、小粒子径側からの累積が50%となる粒子径(50%D)として求められる。例えば、レーザー光散乱法を利用した粒子径分布測定装置(例えば、(株)島津製作所、「SALD-3000」)を用いて測定することができる。
【0011】
<半導体コンプレッション成型用離型シート>
本発明の半導体コンプレッション成型用離型シート(以下、「本発明の離型シート」とも称する)は、樹脂粒子を含む離型層と、基材層と、を含み、離型層中の樹脂粒子の含有率が5体積%~65体積%である半導体コンプレッション成型用離型シートである。
より詳細には、本発明の離型シートは、半導体パッケージの樹脂成型において使用される金型と接触させる基材層の片面に、成型される半導体パッケージと接触する離型層を備える2層構造を有する。
【0012】
本発明の離型シートは、上記構成を採ることにより、半導体パッケージをコンプレッション成型により成型する際に、半導体パッケージにダメージを与えることなく封止材と金型とを容易に離型することを可能とし、成型した半導体パッケージ表面外観の均一性を向上し、且つ成型した半導体パッケージ表面への離型シートからの汚染を低減可能とする。
この理由は明らかではないが、以下のように推察される。
半導体パッケージを成型する際に従来の離型シートを使用する場合、成型される半導体パッケージにシワ等の形状不具合が発生することを抑制する観点から、離型シートは成型用金型の形状に充分合うような追従性を有することが求められる。更に、成型用金型から半導体パッケージを取り出す際に過剰な力を入れると半導体パッケージが破損しやすいため、離型シートは半導体パッケージに対して充分な離型性を有することも求められる。
本発明の離型シートは、半導体パッケージ用の封止樹脂(例えばエポキシ樹脂)に対する離型性に優れる離型層及び成型用金型に対する追従性に優れる基材層という、異なる機能を有する2種の層を有することにより、成型用金型に対する追従性を維持しつつ、成型される半導体パッケージからの離型性を向上することができると推察される。
更に、本発明の離型シートでは、離型層が特定の含有率で樹脂粒子を含むことにより、離型層の外表面(半導体パッケージに対向する面)が粗くなり、成型される半導体パッケージの表面が粗くなることで、封止材のフロー跡が低減され、パッケージ表面外観の均一性を向上することができると推察される。また、樹脂粒子の粒子径、形状等を容易に選択でき、離型層の外表面の粗さのバラつきの程度を調整することが容易になる。更に、樹脂粒子は離型層に含まれるその他の成分との密着性に優れるため、離型層から脱落し難く、半導体パッケージの汚染を抑制することができると推察される。
【0013】
[樹脂粒子を含む離型層]
本発明の離型シートは、樹脂粒子を含む離型層(以下、「特定離型層」とも称する)を含み、特定離型層中の樹脂粒子の含有率は5体積%~65体積%である。
【0014】
(樹脂粒子)
本発明における樹脂粒子は、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。半導体パッケージに対する離型性の観点からは、樹脂粒子は、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリアクリロニトリル樹脂から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
パッケージ表面外観の均一性の観点から、樹脂粒子は、離型層形成用組成物の調製に使用され得る有機溶媒(例えば、トルエン、メチルエチルケトン、及び酢酸エチル)に不溶性又は難溶性であることが好ましい。ここで、有機溶媒に不溶性又は難溶性とは、JIS K6769(2013)に準拠するゲル分率試験において、トルエン等の有機溶媒中に樹脂粒子を分散して50℃で24時間保持した後のゲル分率が97%以上であることをいう。
【0015】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル単量体の(共)重合体が挙げられ、(メタ)アクリル酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂(例えば、アルキル(メタ)アクリレート樹脂、及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート樹脂)等が挙げられる。
(メタ)アクリル単量体としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸テトラデシル、メタクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸エイコシル、メタクリル酸エイコシル、アクリル酸ドコシル、メタクリル酸ドコシル、アクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロヘプチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸2-クロロエチル、メタクリル酸2-クロロエチル、アクリル酸2-フルオロエチル、メタクリル酸2-フルオロエチル、スチレン、α-メチルスチレン、シクロヘキシルマレイミド、アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
ポリオレフィン樹脂としては、オレフィン単量体又はアルケン単量体の(共)重合体であれば特に限定されない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
ポリスチレン樹脂としては、スチレン又はスチレン誘導体の(共)重合体が挙げられる。スチレン誘導体としては、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等のアルキル鎖を持つアルキル置換スチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン、4-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。
ポリアクリロニトリル樹脂としては、アクリロニトリル単量体の(共)重合体が挙げられる。
有機溶媒に対する樹脂粒子の溶解性を抑制する観点からは、樹脂粒子に含まれる樹脂は架橋樹脂であることが好ましい。
【0016】
樹脂粒子の平均粒子径が1μm~55μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、特定離型層の表面に充分に凹凸を形成することが可能であり、成型した半導体パッケージ表面外観の均一性が向上し封止材のフロー跡が抑制される傾向にある。また、樹脂粒子の平均粒子径が55μm以下であると、特定離型層中に樹脂粒子を固定するために特定離型層の厚みを過度に大きくする必要がなくコストの観点で好ましい。
樹脂粒子の平均粒子径の上限は、半導体パッケージ表面外観の観点から、55μmであることが好ましく、50μmであることがより好ましい。樹脂粒子の平均粒子径の下限は、コストの観点から、3μmであることがより好ましく、10μmであることが更に好ましい。
【0017】
特定離型層に含まれる樹脂粒子の形状は、特に限定はされず、球形、楕円形、不定形等のいずれであってもよい。
【0018】
樹脂粒子の具体例としては、アクリル樹脂粒子であるタフチックFH-S010(東洋紡(株))等のタフチックシリーズが挙げられる。
【0019】
特定離型層に含まれる樹脂粒子の含有率は、5体積%~65体積%である。
含有率が5体積%以上であると、特定離型層表面に充分に凹凸を形成することが可能であり、成型した半導体パッケージ表面外観の均一性が向上して封止材のフロー跡を抑制する効果が充分得られる傾向にある。この観点から、樹脂粒子の含有率の下限は10体積%であることが好ましく、20体積%であることがより好ましい。
また、含有率が65体積%以下であると、特定離型層中の後述する樹脂成分により樹脂粒子が固定されやすくなり、樹脂粒子の脱落の可能性が低下し、成型した半導体パッケージ表面への汚染を抑制でき、且つ経済的にも好ましい傾向にある。この観点から、樹脂粒子の含有率の上限は60体積%であることが好ましく、50体積%であることがより好ましい。
【0020】
樹脂粒子の含有率は、例えば、離型シートの特定離型層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、単位体積当たりの樹脂粒子の割合として算出することができる。詳細には、以下の方法により算出することができる。
まず、特定離型層の断面をSEMで観察し、この断面における任意の面積(以下、「特定面積」とも称する)に含まれる樹脂粒子の数及び粒子径を測定する。更に、上記特定面積に基づいて任意の体積(以下、「特定体積」とも称する)を設定し、この特定体積中に含まれる樹脂粒子の数を算出する。更に、樹脂粒子の粒子径に基づいて、樹脂粒子1つ当たりの体積を算出する。そして、算出された樹脂粒子の数及び樹脂粒子1つ当たりの体積から、特定体積中に含まれる樹脂粒子の総体積を算出し、この樹脂粒子の層体積を特定体積で除することにより、特定離型層中に含まれる樹脂粒子の体積含有率を算出することができる。
【0021】
別の方法としては、25℃における特定離型層の質量(Wc)を測定し、その特定離型層をトルエン等の有機溶媒で溶解して、残存した樹脂粒子の25℃における質量(Wf)を測定する。次いで、電子比重計又は比重瓶を用いて、25℃における樹脂粒子の比重(df)を求める。次いで、同様の方法で25℃における特定離型層の比重(dc)を測定する。次いで、特定離型層の体積(Vc)及び残存した樹脂粒子の体積(Vf)を求め、(式1)に示すように残存した樹脂粒子の体積を特定離型層の体積で除すことで、樹脂粒子の体積比率(Vr)として求める。
(式1)
Vc=Wc/dc
Vf=Wf/df
Vr=Vf/Vc
【0022】
Vc:離型層の体積(cm3)
Wc:離型層の質量(g)
dc:離型層の比重(g/cm3)
Vf:樹脂粒子の体積(cm3)
Wf:樹脂粒子の質量(g)
df:樹脂粒子の比重(g/cm3)
Vr:樹脂粒子の体積比率
尚、この測定方法における特定離型層は、離型シートから剥離したものであってもよく、この測定方法用に別途作製したものであってもよい。
【0023】
(特定離型層の樹脂成分)
本発明にかかる特定離型層は更に樹脂成分を含んでいてよい。樹脂成分を含むことにより、樹脂粒子が特定離型層内に固定される。
本発明にかかる特定離型層の樹脂成分は特に限定されない。樹脂成分は、半導体パッケージとの離型性、耐熱性等の観点から、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂であることが好ましく、架橋型アクリル樹脂(以下、「架橋型アクリル共重合体」とも称する)であることがより好ましい。
【0024】
アクリル樹脂は、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、2-エチルヘキシルアクリレート等の低ガラス転移温度(Tg)モノマーを主モノマーとし、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル等の官能基モノマーと共重合することで得られるアクリル共重合体であることが好ましい。また、架橋型アクリル共重合体は、上記モノマーを架橋剤を使用して架橋することにより製造することができる。
架橋型アクリル共重合体の製造に使用される架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の公知の架橋剤が挙げられる。また、アクリル樹脂中に緩やかに広がった網目状構造を形成するために、架橋剤は3官能、4官能等の多官能架橋剤であることがより好ましい。
【0025】
上記のような架橋剤を使用して製造される架橋型アクリル共重合体は緩やかに広がった網目状構造を有するので、この架橋型アクリル重合体を特定離型層の樹脂成分として使用すると、特定離型層の延伸性が向上し、基材層の延伸性を阻害することが抑制されるため、コンプレッション成型時の離型シートの金型に対する追従性を向上することができる。
この観点から、架橋型アクリル共重合体の製造において使用される架橋剤の量は、アクリル共重合体100質量部に対して、3質量部~100質量部であることが好ましく、5質量部~70質量部であることがより好ましい。架橋剤の量が3質量部以上であると樹脂成分の強度が確保されるため汚染を防ぐことができ、100質量部以下であると架橋型アクリル共重合体の柔軟性が向上し、離型層の延伸性が向上する。
【0026】
(その他の成分)
本発明における特定離型層は、本発明の効果が阻害されない限り、必要に応じて、溶媒、アンカリング向上剤、架橋促進剤、帯電防止剤、着色剤等を更に含んでいてもよい。
【0027】
(特定離型層の厚み)
特定離型層の厚みは特に限定されず、使用する樹脂粒子の平均粒子径との関係を考慮して適宜設定される。特定離型層の厚みは、0.1μm~100μmであることが好ましく、1μm~50μmであることがより好ましい。
特定離型層の厚みが使用する樹脂粒子の平均粒子径より極端に薄い場合、特定離型層中に樹脂粒子を固定することが困難になり、樹脂粒子が脱落する可能性が高くなり、成型した半導体パッケージ表面への汚染の原因となる可能性がある。また、特定離型層の厚みが使用する樹脂粒子の平均粒子径より極端に厚い場合、特定離型層表面に充分に凹凸を形成することが困難となり、成型した半導体パッケージ表面外観の均一性を向上する効果、封止材のフロー跡を抑制する効果等が充分得られない可能性がある。また、経済的にも不利益である。
尚、本明細書における特定離型層の厚みとは乾燥厚みを意味し、離型シートの特定離型層を上記の層の厚みの測定方法で測定することができる。
【0028】
(特定離型層の表面粗さ)
特定離型層の外表面(基材層と対向する面とは反対側の面)は凹凸を有することが好ましい。特定離型層の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)又は十点平均粗さ(Rz)により評価することができる。
算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)は、例えば、表面粗さ測定装置(例えば、(株)小坂研究所、型番SE-3500)を用いて、触針先端径2μm、送り速さ0.5mm/s及び走査距離8mmの条件で測定した結果を、JIS B0601(2013)又はISO 4287(1997)により解析して得た値でもよい。パッケージ表面外観の均一性の観点から、特定離型層の算術平均粗さ(Ra)は0.5μm~5μmであることが好ましく、十点平均粗さ(Rz)は5μm~50μmであることが好ましい。
樹脂粒子の平均粒子径と特定離型層の厚みとを調整することにより、特定離型層の表面粗さを上記範囲内に調整することができる。
【0029】
[基材層]
本発明の離型シートは基材層を有する。基材層としては特に限定されず、当該技術分野で使用されている樹脂含有基材層から適宜選択することができる。金型の形状に対する追従性を向上する観点からは、延伸性に優れる樹脂含有基材層を使用することが好ましい。
本発明の基材層は、封止材の成形が高温(100℃~200℃程度)で行われることを考慮すると、この温度以上の耐熱性を有することが望ましい。また、離型シートを金型に装着する際及び成形中の樹脂が流動する際に封止樹脂のシワ、離型シートの破れ等の発生を抑制するためには、高温時の弾性率、伸び等を考慮して選択することが重要である。
【0030】
基材層の材料は、耐熱性及び高温時の弾性率の観点から、ポリエステル樹脂であることが好ましい。ポリエステル樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂並びにこれらの共重合体及び変性樹脂が挙げられる。
基材層としては、ポリエステル樹脂をシート状に成型したものが好ましく、基材層がポリエステルフィルムであることがより好ましく、金型への追従性の観点からは、2軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましい。
基材層の厚みは特に限定されず、5μm~100μmであることが好ましく、10μm~70μmであることがより好ましい。厚みが5μm以上であると、取扱い性に優れ、シワが生じ難い傾向にある。厚みが100μm以下であると、成型時の金型への追従性に優れるため、成型された半導体パッケージのシワ等の発生が抑制される傾向にある。
【0031】
[その他の構成]
基材層は金型表面に接触する層であり、用いる材料によっては離型シートを金型から剥離するためにより大きな剥離力が必要となることがある。この様に金型から剥離しにくい材料を基材層に使用する場合には、金型から離型シートを剥離しやすくするように調整することが好ましい。例えば、基材層の特定離型層と接する反対の面、つまり基材層の金型側の面に、金型からの離型性を向上させるために梨地加工等の表面加工をしたり、新たに別の離型層(第2離型層)を設けてもよい。第2離型層の材料としては、耐熱性、金型からの剥離性等を満たす材料であれば特に限定せず、特定離型層と同じ材料を使用してもよい。第2離型層の厚みは、特に限定されないが、0.1μm~100μmであることが好ましい。
【0032】
更に、必要に応じて、特定離型層と基材層との間、基材層と第2離型層との間等に、特定離型層又は第2離型層のアンカリング向上層、帯電防止層、着色層等の層を設けてもよい。
【0033】
<本発明の離型シートの製造方法>
本発明の離型シートは、公知の方法により製造することができる。例えば、総固形分に対して5体積%~65体積%の樹脂粒子を含む離型層形成用組成物を基材層の片面に付与し、乾燥することにより、本発明の離型シートを製造することができる。離型層形成用組成物は、樹脂成分及び所望により添加されるその他の成分を含んでいてもよい。
【0034】
[離型層形成用組成物の調製]
離型層形成用組成物の調整方法は特に制限されず、例えば、樹脂粒子を溶媒に分散する方法が挙げられ、公知の組成物調整方法を使用することができる。
離型層形成用組成物の調製に使用する溶媒は特に限定されず、樹脂粒子を分散可能であり、樹脂成分を溶解可能である有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0035】
[付与及び乾燥]
離型層形成用組成物を基材層の片面に付与する方法は特に限定されず、ロールコート法、バーコート、キスコート等の公知の塗布方法を使用することができる。尚、離型層形成用組成物を付与する際には、乾燥後の組成物層(離型層)の厚みが0.1μm~100μmとなるように付与する。
付与された離型層形成用組成物を乾燥する方法は特に限定されず、公知の乾燥方法を使用することができる。例えば、50℃~150℃で0.1分~60分乾燥させる方法でもよい。
【0036】
<半導体パッケージの成型>
本発明のコンプレッション成型用離型シートは、半導体パッケージの成型に使用することができ、特にコンプレッション成型に好適に使用することができる。
通常、半導体パッケージのコンプレッション成型では、コンプレッション成型装置の金型に離型シートを配置し、真空吸着等により離型シートを金型の形状に追従させる。その後、半導体パッケージの封止材(例えば、エポキシ樹脂等)を金型に入れ、半導体チップをその上に配置し、加熱しながら金型を圧縮することにより封止材を硬化させて、半導体パッケージを成型する。その後、金型を開けて、成型された半導体パッケージを取り出す。
【0037】
このように、コンプレッション成型では離型シートを金型に吸着させるので、離型シートは金型の形状に対する追従性に優れることが求められる。本発明の離型シートでは、基材層として延伸性に優れる樹脂を使用することにより、金型への追従性をより向上することができる。
【0038】
本発明のコンプレッション成型用離型シートは、半導体をコンプレッション成型により成型する際に、特定離型層面が半導体パッケージ(成型品)に接するように装着することにより、成型後の剥離過程において半導体パッケージからの離型シートの剥離が容易になり、半導体パッケージにダメージを与えることなく封止材と金型とを容易に離型することが可能であり、成型したパッケージ表面外観の均一性に優れ封止材のフロー跡も抑制され、成型したパッケージ表面へのフィルムからの汚染も抑制することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0040】
<実施例1>
アクリル樹脂(帝国化学産業(株):WS-023)100質量部に対し、架橋剤としてのコロネートL(日本ポリウレタン工業(株)、商品名)を10質量部と、樹脂粒子(C)としてタフチックFH-S010(東洋紡(株)、商品名、アクリル粒子、平均粒子径10μm)を10質量部と、をトルエンに添加して固形分15質量%のトルエン溶液とし、離型層形成用組成物を調製した。
基材層としての、厚みが25μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ(株):S-25)をコロナ処理した。その後、上記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ロールコータを用いて、乾燥後の平均厚みが10μmになるように離型層形成用組成物を塗布及び乾燥して離型層を形成し、離型シートを得た。
得られた離型シートの離型層中の粒子(C)の含有率をSEMによる断面観察により測定したところ、10体積%であった。
【0041】
[離型シートの特性評価]
この離型シートを、下型に半導体ベアチップをセットしたコンプレッション成型金型の上型に装着し、真空で固定した後、型締めし、封止材(日立化成(株):商品名「CEL-9750ZHF10」)を成型(コンプレッション成型)して半導体パッケージを得た。金型温度は180℃、成形圧力は6.86MPa(70kgf/cm2)、成形時間は180秒とした。
離型シートの成型後の封止材との離型性、成型した半導体パッケージ表面の外観の均一性(封止材のフロー跡の有無)及び成型した半導体パッケージ表面への粒子(C)の脱落の有無(汚染の有無)を下記の方法で評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0042】
(成型後の封止材との離型性の評価)
成型後の離型シートの封止材との離型性の指標として、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離試験を行なったときの剥離力を測定し、下記の基準で評価した。
A:0.5N/50mm未満
B:0.5N/50mm以上5.0N/50mm未満
C:5.0N/50mm以上
【0043】
(半導体パッケージ表面の外観の評価)
半導体パッケージ表面の封止材のフロー跡の有無を、目視及び光学顕微鏡(100倍)で観察し、下記の基準で評価した。
A:目視及び顕微鏡観察のいずれでもフロー跡が観察されない。
B:目視ではフロー跡が観察されず、顕微鏡観察ではわずかに観察される。
C:目視及び顕微鏡観察のいずれでもフロー跡が観察される。
【0044】
(半導体パッケージ表面への粒子(C)の脱落の有無)
半導体パッケージ表面への粒子(C)の脱落の有無を、目視及び光学顕微鏡(100倍)で観察し、下記の基準で評価した。
A:目視及び顕微鏡観察のいずれでも粒子(C)の脱落が観察されない。
B:目視では粒子(C)の脱落が観察されず、顕微鏡観察ではわずかに観察される。
C:目視及び顕微鏡観察のいずれでも粒子(C)の脱落が観察される。
【0045】
<実施例2~8及び比較例1~4>
A層の乾燥後の厚み、離型層の有無、粒子(C)の種類又は含有率を下記表1及び表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8及び比較例1~4の離型シートを作製し評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0046】
表1及び表2に示す粒子(C)は下記の通りである。
・タフチックFH-S015(東洋紡(株)、商品名)
・タフチックFH-S020(東洋紡(株)、商品名)
・タフチックFH-S050(東洋紡(株)、商品名)
・SX-500H(綜研化学(株)、商品名)
・タフチックASF-7(東洋紡(株)、商品名)
・E606(東レ・ダウコーニング(株)、商品名)
・BM30X-12(積水化成品工業(株)、商品名)
・HPS-3500(東亞合成(株)、商品名)
尚、表1及び表2中の「PMMA」はポリメタクリル酸メチルを意味し、「PMBA」はポリメタクリル酸ブチルを意味する。
【0047】
【0048】
【0049】
表1及び表2に示されるように、実施例1~8の離型シートは、成型後の封止材との離型性が良好であり、成型したパッケージ表面外観の均一性に優れ、成型したパッケージ表面への粒子(C)の脱落も抑制されていた。
尚、表1及び表2には示していないが、粒子(C)の含有率を1体積%とした以外は実施例1と同様にして離型シートを製造し評価したところ、目視及び顕微鏡観察のいずれでもフロー跡が観察され、表面外観の均一性が充分得られなかった。
【0050】
一方、離型層が無い比較例1では、成型後に封止材と離型シートとを剥離することができなかった。樹脂粒子を含まない離型層を使用した比較例2では、成型したパッケージ表面外観が不均一であり、封止材のフロー跡が見られた。樹脂粒子の代わりに無機粒子を含む離型層を使用した比較例3では、成型後の封止材と離型シートを容易には剥離することができず、また、離型層のシリカ粒子の脱落も観察された。更に、目視及び顕微鏡観察のいずれでもシリカ粒子の脱落が観察された。樹脂粒子の含有率が65体積%を超えていた比較例4では、樹脂粒子の脱落が観察された。
【0051】
上記に示すように、本発明の離型シートを使用すると、半導体パッケージを樹脂成型する際に、半導体パッケージにダメージを与えることなく封止材と金型とを容易に離型することが可能であり、成型したパッケージ表面外観の均一性に優れ、成型したパッケージ表面へのフィルムからの汚染も抑制された離型フィルムを提供することが可能となる。