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特許7052927積層体、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、電磁波シールド及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】積層体、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、電磁波シールド及び成形品
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/02 20060101AFI20220405BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220405BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20220405BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B32B15/02
B32B15/08 J
B32B15/08 N
H05K3/38 B
H05K1/09 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021546763
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2020044970
(87)【国際公開番号】W WO2021131565
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019232789
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】冨士川 亘
(72)【発明者】
【氏名】深澤 憲正
(72)【発明者】
【氏名】白髪 潤
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112704(JP,A)
【文献】特開2007-231125(JP,A)
【文献】特開2019-014188(JP,A)
【文献】特開2007-254527(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156844(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/186025(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J1/00-5/10
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(A)の上に、プライマー層(B)及び金属粒子層(C)、さらに金属めっき層(D)が順次積層された積層体であって、前記プライマー層(B)がプライマー樹脂(b1)及び、エポキシシランまたはメタクリルシランから選ばれるシランカップリング剤で処理されたシリカ粒子(b2)を含有する層であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記プライマー層(B)中の前記シリカ粒子(b2)の含有量が、前記プライマー樹脂(b1)100質量部に対して、1~400質量部の範囲である請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記シリカ粒子(b2)の平均粒子径が0.001~0.5μmである請求項1又は2記載の積層体。
【請求項4】
前記プライマー樹脂(b1)が、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂を含有するものである請求項1~3のいずれか1項記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の積層体を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
前記支持体(A)がフィルムである請求項1~4のいずれか1項記載の積層体を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項記載の積層体を有することを特徴とする電磁波シールド。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項記載の積層体を有することを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、電磁波シールド及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高速化により、プリント配線基板の高密度化、高性能化が要求されており、この要求に応えるため、表面が平滑で充分薄い導電層(金属層)を有するプリント配線板が求められている。また、このプリント配線基板を構成するものとしてフレキシブル銅張積層板(以下、「FCCL」と略記する。)が知られている。FCCLは、主に耐熱性高分子フィルムと銅箔とを積層する方法で製造されている。
【0003】
しかし、この銅箔を用いたFCCLでは、ロール状に巻かれた銅箔を引き出しながら絶縁性高分子フィルムと張り合わせる、あるいは絶縁性高分子の溶液を塗工することから、取り扱い上、銅箔は充分に薄くすることができない。さらに、高分子フィルムとの密着性を高めるため、銅箔表面を粗化する必要があるので、プリント配線板の高密度化、高性能化を図るために必要な高周波数(GHz帯域)、高伝送速度(数十Gbps)領域で伝送損失を生じる問題があった。
【0004】
ここで、FCCLの銅層を薄膜化する方法として、ポリイミドフィルムの表面に金属薄膜を蒸着法又はスパッタ法により形成した後、その金属薄膜上に電解めっき法、無電解めっき法もしくは両者を組み合わせた方法で銅を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では、金属薄膜を形成するために、蒸着法又はスパッタ法を用いるため、大がかりな真空設備が必要となり、設備上、基材サイズが限定されるなどの問題があった。
【0005】
そこで、銅箔等の金属層の表面を粗化することなく、高分子フィルム等の支持体と充分な密着性を有し、またその金属層の形成に際して、大がかりな真空設備を必要とせず、簡便な方法で製造できる積層体が求められていた。
【0006】
また従来、プラスチック成形品への装飾めっきとしては、携帯電話、パソコン、鏡、容器、各種スイッチ、シャワーヘッド等に用いられてきた。これらの用途の支持体は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(以下、「ABS」と略記する。)やABSとポリカーボネートとのポリマーアロイ(以下、「ABS-PC」と略記する。)にのみ限定されてきた。この理由として、基材とめっき膜の密着性を確保するため基材表面を粗化する必要があり、例えばABSであれば、ポリブタジエン成分を六価クロム酸、過マンガン酸塩等の強力な酸化剤でエッチングし、除去することで表面粗化が可能である。しかしながら、六価クロム酸などは、環境負荷物質であるため、使用しないことが好ましく、代替方法が開発されてきた(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
このように、プラスチック成形品への装飾などを目的としためっきでは、基材がABS又はABS-PCに限定されることなく、他の種類のプラスチックでも密着性に優れるめっき膜が得られ、また環境負荷物質の使用量を低減することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-118044号公報
【文献】特許第5830807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、支持体表面を粗化することなく、簡便な方法で製造でき、さらに、長期耐熱性試験後にも、支持体と金属層(金属めっき層)との間の密着性に優れた積層体、並びにそれを用いたプリント配線板、フレキシブルプリント配線板及び成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、支持体上に、プライマー層として、プライマー樹脂及びシリカ粒子を含有する層を設け、その上に金属粒子により形成した金属層と、金属めっき層とを順次積層した積層体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、支持体(A)の上に、プライマー層(B)及び金属粒子層(C)が順次積層された積層体であって、前記プライマー層(B)がプライマー樹脂(b1)及びシリカ粒子(b2)を含有する層であることを特徴とする積層体、それを用いたプリント配線板、フレキシブルプリント配線板及び成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層体は、支持体表面を粗化しなくても、支持体と金属層(金属めっき層)との間の密着性に優れたものである。また、その金属層の薄膜化に際して、大がかりな真空設備を用いなくても、表面が平滑で充分薄い金属層を有する積層体である。さらに、耐熱性試験後にも、優れた密着力を有する積層体である。
【0013】
また、本発明の積層体は、金属層をパターニングすることにより、例えば、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、タッチパネル向け導電性フィルム、タッチパネル用メタルメッシュ、有機太陽電池、有機EL素子、有機トランジスタ、非接触ICカード等のRFID、電磁波シールド、LED照明基材、デジタルサイネージなどの電子部材として好適に用いることができる。特に、FCCL等のフレキシブルプリント配線板用途に最適である。
【0014】
また、成形品へ適用することにより、光通信等の配線を接続するコネクター、電装部材、電気モーター周辺部材、電池部材などの電子部材;自動車用装飾部品、ランプリフレクター、携帯電話、パソコン、鏡、容器、家電、各種スイッチ、水栓部品、シャワーヘッド、などの装飾に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の積層体は、支持体(A)の上に、プライマー層(B)、金属粒子層(C)及び金属めっき層(D)が順次積層された積層体であって、前記プライマー層(B)が、プライマー樹脂(b1)及びシリカ粒子(b2)を含有する層であるものである。
【0016】
本発明の積層体は、前記支持体(A)の片面に、プライマー層(B)等を順次積層した積層体であってもよく、前記支持体(A)の両面にプライマー層(B)等を順次積層した積層体であってもよい。
【0017】
前記支持体(A)としては、例えば、ポリイミド、透明ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ABSとポリカーボネートとのポリマーアロイ、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレンー六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレンーエチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレンーエチレン共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロジオキシソール共重合体、フッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、エポキシ樹脂、セルロースナノファイバー、シリコン、セラミックス、ガラス等からなる支持体、それらからなる多孔質の支持体、鋼板、銅等の金属からなる支持体、それらの表面をシリコンカーバイド、ダイヤモンドライクカーボン、アルミニウム、銅、チタン等を蒸着処理した支持体などが挙げられる。
【0018】
また、本発明の積層体をプリント配線板等に用いる場合は、前記支持体(A)として、ポリイミド、透明ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレンーエチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ガラス、セルロースナノファイバーなどからなる支持体を用いることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の積層体をフレキシブルプリント配線板等に用いる場合は、前記支持体(A)として、折り曲げ可能な柔軟性を有するフィルム状又はシート状の支持体が好ましい。
【0020】
前記支持体(A)の形状がフィルム状又はシート状の場合、その厚さは、通常、1~5,000μmの範囲が好ましく、1~300μmの範囲がより好ましく、1~200μmの範囲がさらに好ましい。
【0021】
また、前記支持体(A)と後述するプライマー層(B)との密着性をより向上できることから、必要に応じて、前記支持体(A)の表面に、平滑性を失わない程度の微細な凹凸を形成したり、その表面に付着した汚れを洗浄したり、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基の導入のために表面処理したりしてもよい。具体的には、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液又は有機溶剤等を用いる湿式処理等の方法が挙げられる。
【0022】
前記プライマー層(B)は、プライマー樹脂(b1)及びシリカ粒子(b2)を含有する層である。
【0023】
前記プライマー樹脂(b1)としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネートポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。なお、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂は、例えば、ウレタン樹脂存在下でアクリル単量体を重合することにより得られる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0024】
上記のプライマー層(B)を形成する樹脂の中でも、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)を含有するものを用いることが好ましい。
【0025】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)は、アミノトリアジン環構造とフェノール構造とがメチレン基を介して結合したノボラック樹脂である。前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)は、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物と、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、ビスフェノールA、フェニルフェノール、ナフトール、レゾルシン等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとをアルキルアミン等の弱アルカリ性触媒の存在下又は無触媒で、中性付近で共縮合反応させるか、メチルエーテル化メラミン等のアミノトリアジン化合物のアルキルエーテル化物と、前記フェノール化合物とを反応させることにより得られる。
【0026】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)は、メチロール基を実質的に有していないものが好ましい。また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)には、その製造時に副生成物として生じるアミノトリアジン構造のみがメチレン結合した分子、フェノール構造のみがメチレン結合した分子等が含まれていても構わない。さらに、若干量の未反応原料が含まれていてもよい。
【0027】
前記フェノール構造としては、例えば、フェノール残基、クレゾール残基、ブチルフェノール残基、ビスフェノールA残基、フェニルフェノール残基、ナフトール残基、レゾルシン残基等が挙げられる。また、ここでの残基とは、芳香環の炭素に結合している水素原子が少なくとも1つが抜けた構造を意味する。例えば、フェノールの場合は、ヒドロキシフェニル基を意味する。
【0028】
前記トリアジン構造としては、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物由来の構造が挙げられる。
【0029】
前記フェノール構造及び前記トリアジン構造は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、密着性をより向上できることから、前記フェノール構造としてはフェノール残基が好ましく、前記トリアジン構造としてはメラミン由来の構造が好ましい。
【0030】
また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)の水酸基価は、密着性をより向上できることから、50~200mgKOH/gの範囲が好ましく、80~180mgKOH/gの範囲がより好ましく、100~150mgKOH/gの範囲がさらに好ましい。
【0031】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0032】
また、前記アミノトリアジン環を有する化合物(b1)として、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)を用いる場合、エポキシ樹脂(b1-2)を併用することが好ましい。
【0033】
前記エポキシ樹脂(b1-2)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド誘導体由来の構造を有する含リンエポキシ化合物、ジシクロペンタジエン誘導体由来の構造を有するエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油等の油脂のエポキシ化物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0034】
前記エポキシ樹脂(b1-2)の中でも、密着性をより向上できることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0035】
また、前記エポキシ樹脂(b1-2)のエポキシ当量は、密着性をより向上できることから、100~300g/当量の範囲が好ましく、120~250g/当量の範囲がより好ましく、150~200g/当量の範囲がさらに好ましい。
【0036】
前記プライマー層(B)が、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)及びエポキシ樹脂(b1-2)を含有する層とする場合、密着性をより向上できることから、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)中のフェノール性水酸基(x)と前記エポキシ樹脂(b1-2)中のエポキシ基(y)とのモル比[(x)/(y)]は、0.1~5の範囲以下が好ましく、0.2~3の範囲以下がより好ましく、0.3~2の範囲がさらに好ましい。
【0037】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(b1-1)とエポキシ樹脂(b1-2)との反応を促進するため、硬化促進剤を併用してもよい。前記硬化促進剤としては、例えば、一級、二級又は三級のアミノ基を有するアミン化合物が挙げられる。また、前記アミン化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれのものも用いることができる。また、前記硬化促進剤として、メルカプタン、酸無水物、酸フッ化ホウ素、ホウ酸エステル、有機酸ヒドラジット、ルイス酸、有機金属化合物、オニウム塩、カチオン性化合物等も用いることができる。
【0038】
前記シリカ粒子(b2)としては、天然原料から製造された天然シリカ粒子、化学合成により製造された合成シリカ粒子のいずれも用いることができる。また、前記シリカ粒子(b2)は、水や有機溶剤に分散させたものを用いてもよく、予めシリカ粒子を分散させたスラリーやコロイド溶液として用いることもできる。
【0039】
前記シリカ粒子(b2)は、エレクトロニクス用途で用いる際には、不純物の少ないものを用いることが好ましい。例えば、不純物としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、塩化物イオン等が挙げられる。
【0040】
前記シリカ粒子(b2)としては、特に限定されるものではないが、用いることのできる市販品としては、例えば、デンカ株式会社製の合成法で製造したSFPシリーズやUFPシリーズ(UFP-30、UFP-40、SFP-20M、SFP―30M、SFP-130MC、SFP-120MC、SFP-120MC、SFP-30MHE、UFP-30HH)、天然法で製造したFBシリーズ(FB-5D、FB-8S、FB-15D、FB-20D、FB-40R);日産化学株式会社製の水を分散媒としたコロイド溶液であるスノーテックスシリーズ(ST-XS、ST-OXS、ST-NXS、ST-CXS、ST-S、ST-OS、ST-NS、ST-30、ST-O、ST-N、ST-C、ST-AK、ST-50-T、ST-O-40、ST-CM、ST-30L、ST-OL、ST-AK-L、ST-YL、ST-OYL、ST-AK-YL、ST-ZL、MP-1040、MP-2040、MP-4540M、ST-UP、ST-OUP、ST-PS-S、ST-PS-SO、ST-PS-M、ST-PS-MO)、有機溶剤を分散媒としたコロイド溶液であるオルガノシリカゾルシリーズ(メタノールシリカゾル、MA-ST-M、MA-ST-L、IPA-ST、IPA-ST-L、IPAST-ZL、IPA-ST-UP、EG-ST、NPC-ST-30、PGM-ST、DMAC-ST、MEK-ST-40、MEK-ST-L、MEK-ST-ZL、MEK-ST-UP、MIBK-ST-L、CHO-ST-M、EAC-ST、PMA-ST、TOL-ST、MEK-AC-2140Z,MEK-AC-4130Y、MEK-AC5140Z、PMG-AC2140Y、PGM-AC-4130Y、MIBK-AC-2140Z、MIBK-SD-L、MEK-EC-2130Y、EP-M2130Y);株式会社アドマテックス製のSO-Cタイプ(SO-C1、SO-C2、SO-C4、SO-C5、SO-C6)、SO-Eタイプ(SO-E1、SO-E2、SO-E3、SO-E4、SO-E5、SO-E6)等が挙げられる。
【0041】
また、本発明においては、前記シリカ粒子(b2)に溶媒や前記プライマー樹脂(b1)との分散性や親和性、前記支持体や前記金属粒子層(C)との間の高い密着性を付与する目的で、前記シリカ粒子(b2)の表面をシランカップリング剤で処理する。前記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン等が挙げられる。また、前記シリカ粒子(b2)の表面をシランカップリング剤で処理した後、さらに前記プライマー樹脂(b1)との分散性や親和性を向上する目的で、シランカップリング剤で処理された前記シリカ粒子(b2)の表面に樹脂を付着させてもよい。この付着させる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられるが、前記プライマー樹脂(b1)と同種の樹脂を用いることが好ましい。
【0042】
前記エポキシシランとしては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、主鎖が有機鎖でアルコキシシリル基とエポキシ基を複数有する多官能基型シランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「X-12-981S」、「X-12-984S」等)、主鎖がシロキサン鎖でエポキシ基を複数有する多官能基型ランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「KR-516」、「KR-517」等)などが挙げられる。これらのシランカップリング剤の中でも、脂環構造を有するものが好ましく、具体的には、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましい。
【0043】
前記アミノシランとしては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、アミノ基保護型シランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「KBE-9103P」(ケチミンタイプ)、「X-12-1172ES」(アルジミンタイプ)等)、主鎖が有機鎖でアルコキシシリル基とアミノ基を複数有する多官能基型シランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「X-12-972F」等)などが挙げられる。
【0044】
前記ビニルシランは、本発明においては二重結合を有するシラン化合物をいう。例えばビニル基を有するシランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、7-オクテニルトリメトキシシラン、主鎖がシロキサン鎖でビニル基とフェニル基を複数有する多官能基型シランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「KR-511」等)などが挙げられる。また、二重結合を有するシラン化合物としては、例えば、アクリルシラン、メタクリルシラン、スチリルシラン等も挙げられる。
【0045】
前記アクリルシランとしては、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、主鎖が有機鎖でアルコキシシリル基とアクリル基を複数有する多官能基型シランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「X-12-1048」、「X-12-1050」等)、主鎖がシロキサン鎖でアクリル基とメチル基を複数有する多官能基型ランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「KR-513」等)などが挙げられる。
【0046】
前記メタクリルシランとしては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、主鎖がシロキサン鎖でメタクリル基とメチル基を複数有する多官能基型ランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「KR-503」等)などが挙げられる。
【0047】
前記スチリルシランは、例えば、P-スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
前記メルカプトシランとしては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、主鎖が有機鎖でアルコキシシリル基とメルカプトキ基を複数有する多官能基型シランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「X-12-1154」、「X-12-1156」等)、主鎖がシロキサン鎖でメルカプト基を複数有する多官能基型ランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「KR-518」、「KR-519」等)、メルカプト基保護型シランカップリング剤(信越化学製「X-12-1056ES」等)などが挙げられる。
【0049】
その他シランカップリング剤としては、例えば、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、主鎖が有機鎖でアルコキシシリル基とイソシアネート基を複数有する多官能基型シランカップリング剤(例えば、信越化学工業株式会社製「X-12-1159L」等)などが挙げられる。
【0050】
前記シランカップリング剤の中でも、エポキシシラン、アミノシラン、メタクリルシランが好ましく、エポキシシランがより好ましい。
【0051】
密着性をより向上できることから、前記プライマー層(B)中の前記シリカ粒子(b2)の含有量は、前記プライマー樹脂(b1)100質量部に対して、1~400質量部の範囲が好ましい。また、耐熱試験後の耐熱密着性をより向上できることから、前記プライマー層(B)中の前記シリカ粒子(b2)の含有量は、前記プライマー樹脂(b1)100質量部に対して、5~200質量部の範囲が好ましく、8~100質量部の範囲がより好ましく、10~80質量部の範囲がさらに好ましい。
【0052】
また、前記シリカ粒子(b2)の平均粒子径としては、密着性をより向上できることから、0.001~0.5μmの範囲が好ましく、0.01~0.1μmの範囲がより好ましく、0.01~0.05μmの範囲がさらに好ましい。なお、本発明における平均粒子径は、前記シリカ粒子(b2)を分散良溶媒で希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。
【0053】
前記プライマー層(B)の形成には、プライマー組成物(b)を用いる。前記プライマー組成物(b)は、前記プライマー樹脂(b1)やシリカ粒子(b2)を含有するものであるが、必要に応じて、さらに架橋剤(b3)を含有してもよい。前記架橋剤(b3)としては、多価カルボン酸が好ましい。前記多価カルボン酸としては、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、コハク酸等が挙げられる。これらの架橋剤(b3)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの架橋剤(b3)の中でも、密着性をより向上できることから、無水トリメリット酸が好ましい。
【0054】
さらに、前記プライマー層(B)の形成に用いるプライマー組成物(b)には、必要に応じて、上記の成分(b1)~(b3)以外の成分として、その他の樹脂(b4)を配合してもよい。前記その他の樹脂(b4)としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。これらのその他の樹脂(b4)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0055】
また、前記プライマー組成物(b)には、前記支持体(A)へ塗工する際に、塗工しやすい粘度とするため、有機溶剤を配合することが好ましい。前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロピルアルコール、ダイアセトンアルコール、エチレングリコール、トルエン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0056】
前記有機溶剤の使用量は、後述する前記支持体(A)へ塗工する際に用いる塗工方法、前記プライマー層(B)の所望とする膜厚により、適宜調整することが好ましい。
【0057】
また、前記プライマー組成物(b)には、必要に応じて、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜添加してもよい。
【0058】
前記プライマー層(B)は、前記支持体(A)の表面の一部又は全部に前記プライマー組成物(b)を塗工し、前記プライマー組成物(b)中に含まれる有機溶剤を除去することによって形成できる。
【0059】
前記プライマー組成物(b)を前記支持体(A)の表面に塗工する方法としては、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式、キャピラリー方式等の方法が挙げられる。
【0060】
前記プライマー組成物(b)を前記支持体(A)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる有機溶剤を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、有機溶剤を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、用いた有機溶剤を揮発させることが可能で、かつ前記支持体(A)に熱変形等の悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0061】
前記プライマー組成物(b)を用いて形成するプライマー層(B)の膜厚は、本発明の積層体を用いる用途によって異なるが、前記支持体(A)と後述する金属粒子層(C)との密着性をより向上する範囲が好ましく、前記プライマー層の膜厚は、10nm~30μmの範囲が好ましく、10nm~1μmの範囲がより好ましく、10nm~500nmの範囲がさらに好ましい。
【0062】
前記プライマー層(B)の表面は、前記金属粒子層(C)との密着性をより向上できることから、必要に応じて、コロナ放電処理法等のプラズマ放電処理法、紫外線処理法等の乾式処理法、水や酸性又はアルカリ性薬液、有機溶剤等を用いた湿式処理法によって、表面処理してもよい。
【0063】
前記金属粒子層(C)は、前記プライマー層(B)上に形成されたものであり、前記金属粒子層(C)を構成する金属としては、遷移金属又はその化合物が挙げられ、中でもイオン性の遷移金属が好ましい。このイオン性の遷移金属としては、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等が挙げられる。これらの中でも、前記金属めっき層(D)を形成しやすいことから銀が好ましい。
【0064】
また、前記金属めっき層(D)を構成する金属としては、銅、金、銀、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等が挙げられる。これらの中でも、電気抵抗が低く、腐食に強いプリント配線板に用いることができる積層体が得られることから銅が好ましい。
【0065】
本発明の積層体の製造方法としては、まず、支持体(A)の上に、プライマー層(B)を形成し、その後、金属粒子(c)を含有する流動体を塗工し、流動体中に含まれる有機溶剤等を乾燥により除去することによって、金属粒子層(C)を形成した後、電解めっきもしくは無電解めっき、又はその両方により前記金属めっき層(D)を形成する方法が挙げられる。
【0066】
前記金属粒子層(C)の形成に用いる前記金属粒子(c)の形状は、粒子状又繊維状のものが好ましい。また、前記金属粒子(c)の大きさは、ナノサイズのものが好ましい。具体的には、前記金属粒子(c)の形状が粒子状の場合は、微細な導電性パターンを形成でき、抵抗値をより低減できることから、平均粒子径が1~100nmの範囲が好ましく、1~50nmの範囲がより好ましい。この平均粒子径は前記シリカ粒子(b2)での記載と同じものを意味するが、測定には、マイクロトラック社製「ナノトラックUPA-150」を用いることができる。
【0067】
一方、前記金属粒子(c)の形状が繊維状の場合も、微細な導電性パターンを形成でき、抵抗値をより低減できることから、繊維の直径が5~100nmの範囲以下が好ましく、5~50nmの範囲以下がより好ましい。また、繊維の長さは、0.1~100μmの範囲以下が好ましく、0.1~30μmの範囲がより好ましい。
【0068】
前記流動体中の前記金属粒子(c)の含有率は、1~90質量%の範囲が好ましく、1~60質量%の範囲がより好ましく、1~10質量%の範囲がさらに好ましい。
【0069】
前記流動体に配合してもよい成分としては、前記金属粒子(c)を溶媒中に分散させるための分散剤や溶媒、また必要に応じて、後述する界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0070】
前記金属粒子(c)を溶媒中に分散させるため、分散剤を用いることが好ましい。前記分散剤としては、例えば、ドデカンチオール、1-オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、ドデシルアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン;ミリスチン酸、オクタン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;コール酸、グリシルリジン酸、アビエチン酸等のカルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物などが挙げられる。これらの中でも、前記金属粒子層(C)を多孔質状とすることで前記金属粒子層(C)と後述する金属めっき層(D)との密着性を向上できることから、高分子分散剤が好ましく、この高分子分散剤としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン、前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、前記ウレタン樹脂や前記アクリル樹脂にリン酸基を含有する化合物等が挙げられる。
【0071】
上記のように、前記分散剤に高分子分散剤を用いることで、低分子分散剤と比較して、前記金属粒子層(C)中の分散剤を除去して多孔質状とし、その空隙サイズを大きくすることができ、ナノオーダーからサブミクロンオーダーの大きさの空隙を形成することができる。この空隙に後述する金属めっき層(D)を構成する金属が充填されやすくなり、充填された金属がアンカーとなり、前記金属粒子層(C)と後述する金属めっき層(D)との密着性を大幅に向上することができる。
【0072】
前記金属粒子(c)を分散させるために用いる前記分散剤の使用量は、前記金属粒子(c)100質量部に対し、0.01~50質量部の範囲が好ましく、0.01~10質量部の範囲がより好ましい。
【0073】
また、前記金属粒子層(C)と後述する金属めっき層(D)との密着性をより向上する目的で、焼成により分散剤を除去して多孔質状の前記金属層(C)を形成する場合は、前記金属粒子(c)100質量部の範囲に対し、0.1~10質量部の範囲が好ましく、0.1~5質量部の範囲がより好ましい。
【0074】
前記流動体に用いる溶媒としては、水性媒体や有機溶剤を用いることができる。前記水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。また、前記有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0075】
前記アルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0076】
また、前記流動体には、前記金属粒子(c)、溶媒の他に、必要に応じてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、イソプレングリコール等を用いることができる。
【0077】
前記界面活性剤としては、一般的な界面活性剤を用いることができ、例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
【0078】
前記レベリング剤としては、一般的なレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0079】
前記粘度調整剤としては、一般的な増粘剤を用いることができ、例えば、アルカリ性に調整することによって増粘可能なアクリル重合体や合成ゴムラテックス、分子が会合することによって増粘可能なウレタン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、水添加ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン、金属石鹸、ジベンジリデンソルビトールなどが挙げられる。
【0080】
前記成膜助剤としては、一般的な成膜助剤を用いることができ、例えば、アニオン系界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩など)、疎水性ノニオン系界面活性剤(ソルビタンモノオレエートなど)、ポリエーテル変性シロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0081】
前記消泡剤としては、一般的な消泡剤を用いることができ、例えば、シリコーン系消泡剤、ノニオン系界面活性剤、ポリエーテル,高級アルコール、ポリマー系界面活性剤等が挙げられる。
【0082】
前記防腐剤としては、一般的な防腐剤を用いることができ、例えば、イソチアゾリン系防腐剤、トリアジン系防腐剤、イミダゾール系防腐剤、ピリジン系防腐剤、アゾール系防腐剤、ピリチオン系防腐剤等が挙げられる。
【0083】
前記流動体の粘度(25℃でB型粘度計を用いて測定した値)は、0.1~500,000mPa・sの範囲が好ましく、0.2~10,000mPa・sの範囲がより好ましい。また、前記流動体を、後述するインクジェット印刷法、凸版反転印刷等の方法によって塗工(印刷)する場合には、その粘度は5~20mPa・sの範囲が好ましい。
【0084】
前記プライマー層(B)の上に前記流動体を塗工や印刷する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、パッド印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、ロータリーコート法、キャピラリーコート法等が挙げられる。
【0085】
前記金属粒子層(C)の単位面積当たりの質量は、1~30,000mg/mの範囲が好ましく、1~5,000mg/mの範囲が好ましい。前記金属粒子層(C)の厚さは、前記金属めっき層(D)の形成する際のめっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整できる。
【0086】
本発明の積層体を構成する金属めっき層(D)は、例えば、前記積層体をプリント配線板等に用いる場合に、長期間にわたり断線等を生じることなく、良好な通電性を維持可能な信頼性の高い配線パターンを形成することを目的として設けられる層である。
【0087】
前記金属めっき層(D)は、前記金属粒子層(C)の上に形成される層であるが、その形成方法としては、めっき処理によって形成する方法が好ましい。このめっき処理としては、簡便に前記金属めっき層(D)を形成できる電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法が挙げられる。また、これらのめっき法を2つ以上組み合わせてもよい。例えば、無電解めっきを施した後、電解めっきを施して、前記金属めっき層(D)を形成してもよい。
【0088】
上記の無電解めっき法は、例えば、前記金属粒子層(C)を構成する金属に、無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる銅等の金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(皮膜)を形成する方法である。
【0089】
前記無電解めっき液としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものが挙げられる。
【0090】
前記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノボラン、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、フェノール等が挙げられる。
【0091】
また、前記無電解めっき液としては、必要に応じて、酢酸、蟻酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸等のジカルボン酸化合物;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸化合物;イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸化合物などの有機酸、又はこれらの有機酸の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物等の錯化剤を含有するものを用いることができる。
【0092】
前記電解めっき法は、例えば、前記金属粒子層(C)を構成する金属、又は、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に、電解めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電解めっき液中に含まれる銅等の金属を、カソードに設置した前記金属粒子層(C)を構成する金属粒子(c)又は前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に析出させ、電解めっき層(金属皮膜)を形成する方法である。
【0093】
前記電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属の硫化物と、硫酸と、水性媒体とを含有するもの等が挙げられる。具体的には、硫酸銅と硫酸と水性媒体とを含有するものが挙げられる。
【0094】
前記無電解めっき液及び前記電解めっき液は、20~98℃の範囲で用いることが好ましい。
【0095】
前記金属めっき層(D)の形成方法としては、前記金属めっき層(D)の膜厚を、薄膜から厚膜まで所望とする膜厚に制御しやすいことから、無電解めっきを施した後、電解めっきを施す方法が好ましい。
【0096】
前記金属めっき層(D)の膜厚は、1μm以上50μm以下が好ましい。前記金属めっき層(D)の膜厚は、前記金属めっき層(D)の形成する際のめっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【0097】
前記金属めっき層(D)のパターニング方法としては、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等のフォトリソ-エッチング法、前記金属粒子層(C)の印刷パターン上にめっきする方法等が挙げられる。
【0098】
前記サブトラクティブ法は、予め製造した本発明の積層体を構成する前記金属めっき層(D)の上に、所望のパターン形状に対応した形状のエッチングレジスト層を形成し、その後の現像処理によって、前記レジストの除去された部分の前記金属めっき層(D)及び前記金属粒子層(C)を薬液で溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。前記薬液としては、塩化銅、塩化鉄等を含有する薬液を使用することができる。
【0099】
前記セミアディティブ法は、前記支持体(A)の上に、前記プライマー層(B)及び前記金属粒子層(C)を形成し、必要に応じて表面処理を行った後、その表面に、所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次いで、無電解めっき法、電解めっき法、又はそれらの組み合わせによって前記金属めっき層(D)を形成した後、前記めっきレジスト層とそれに接触した前記金属粒子層(C)とを薬液等に溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。
【0100】
また、前記金属粒子層(C)の印刷パターン上にめっきする方法は、前記支持体(A)の上に形成した前記プライマー層(B)の上に、インクジェット法、反転印刷法等で前記金属粒子層(C)のパターンを印刷し、必要に応じてプラズマ放電処理等により表面処理を行った後、形成した前記金属粒子層(C)の表面に、無電解めっき法、電解めっき法、又はそれらの組み合わせによって前記金属めっき層(D)を形成することによって、所望のパターンを形成する方法である。
【0101】
上記のようにして得られる本発明の積層体は、金属層をパターニングすることにより、例えば、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、タッチパネル向け導電性フィルム、タッチパネル用メタルメッシュ、有機太陽電池、有機EL素子、有機トランジスタ、非接触ICカード等のRFID、電磁波シールド、LED照明基材、デジタルサイネージなどの電子部材として好適に用いることができる。特に、FCCL等のフレキシブルプリント配線板用途に最適である。
【実施例
【0102】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によりなんら制限されるものではない。
【0103】
(製造例1:プライマー樹脂(1)の製造/メラミン樹脂)
還流冷却器、温度計、撹拌機を備えた反応フラスコに、37質量%のホルムアルデヒドと7質量%のメタノールとを含むホルマリン600質量部(ホルムアルデヒド含量:222質量部(7.4mol)、メタノール含量:42質量部(1.31mol))に、水200質量部及びメタノール350質量部(10.92mol)を加えて均一にした溶液を仕込んだ。次いで、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH10に調整した後、メラミン310質量部(2.46mol)を加え、液温を85℃まで上げ、メチロール化反応を行った(反応時間:1時間)。
【0104】
その後、ギ酸を加えてpH7に調整した後、60℃まで冷却し、エーテル化反応させた。白濁温度40℃で25質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整し、エーテル化反応を止めた(反応時間:1時間)。温度50℃の減圧下で残存するメタノールを除去(脱メタノール時間:4時間)した。その後、メチルエチルケトンを加えて、不揮発分2質量%のメラミン樹脂溶液を得た。
【0105】
(製造例2:プライマー樹脂(2)の製造/ウレタン-アクリル複合樹脂)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール(1,4-シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール)を100質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸17.6質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール21.7質量部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート106.2質量部を、メチルエチルケトン178質量部の中で反応させることによって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0106】
次いで、前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液にトリエチルアミンを13.3質量部加えることで、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水380質量部を加え十分に攪拌することにより、ウレタン樹脂の水性分散液を得た。
【0107】
次いで、前記水性分散液に、25質量%のエチレンジアミン水溶液を8.8質量部加え、攪拌することによって、粒子状のポリウレタン樹脂を鎖伸長させ、次いでエージング・脱溶剤することによって、不揮発分30質量%のウレタン樹脂の水性分散液を得た。前記ウレタン樹脂の重量平均分子量は53,000であった。
【0108】
次に、攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗、重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水140質量部、前記で得たウレタン樹脂の水分散体100質量部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。
【0109】
80℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、メタクリル酸メチル60質量部、アクリル酸n-ブチル30質量部及びN-n-ブトキシメチルアクリルアミド10質量部からなる単量体混合物と、過硫酸アンモニウム水溶液(濃度:0.5質量%)20質量部とを別々の滴下漏斗から、反応容器内温度を80±2℃に保ちながら120分間かけて滴下し重合した。
【0110】
滴下終了後、同温度にて60分間攪拌することによって、前記ウレタン樹脂のシェル層と、アクリル樹脂のコア層とによって構成されるウレタン-アクリル複合樹脂を得た。
【0111】
次いで、前記反応容器内の温度を40℃に冷却した後、不揮発分2質量%になるように脱イオン水を加えて、200メッシュ濾布で濾過することによって、ウレタン-アクリル複合樹脂の水分散液を得た。
【0112】
(製造例3:プライマー樹脂(3)の製造/アミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂の混合樹脂)
温度計、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコに、フェノール750質量部、メラミン75質量部、41.5質量%ホルマリン346質量部、及びトリエチルアミン1.5質量部を加え、発熱に注意しながら100℃まで昇温した。還流下100℃にて2時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら180℃まで2時間かけて昇温した。次いで、減圧下で未反応のフェノールを除去し、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂を得た。水酸基当量は120g/当量であった。
【0113】
次いで、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂に65質量部、及びエポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ基当量188g/当量)35質量部を混合後、メチルエチルケトンで不揮発分2質量%となるように希釈し、均一に混合することで、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂の混合樹脂溶液を得た。
【0114】
(製造例4:プライマー樹脂(4)の製造/ブロックポリイソシアネート)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された反応容器中で、2,2-ジメチロールプロピオン酸6.3質量部と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのヌレート体71.1質量部とを、メチルエチルケトン中で反応させることによってイソシアネート化合物を調製した後、前記反応容器にブロック剤としてフェノール17.8質量部を供給し反応させることによって、ブロックポリイソシアネートの溶剤溶液を調製した。
【0115】
次に、前記ブロックポリイソシアネートの溶剤溶液にトリエチルアミンを4.8質量部加えることで、前記ブロックポリイソシアネートが有するカルボキシル基を中和した。その後、メチルエチルケトンを加えて、不揮発分2質量%のブロックポリイソシアネート溶液を得た。
【0116】
(製造例5:シランカップリング剤で処理したシリカ粒子(1)の製造)
温度計、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコに、シリカ粒子分散体(日産化学株式会社製「スノーテックス-OL」;平均粒子径45nm、不揮発分20質量%)を500質量部仕込み、50℃まで昇温した。その後、エポキシ基を含有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM-402」、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、不揮発分100質量%)を20質量部添加した。発熱を確認した後、50℃で24時間攪拌した。その後、30℃まで冷却し、イソプロピルアルコールで不揮発分が2質量%になるよう希釈し、均一に混合することで、シリカ粒子(1)の分散液を得た。
【0117】
(製造例6:シランカップリング剤で処理したシリカ粒子(2)の製造)
製造例5で用いたシランカップリング剤を、エポキシ基を含有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM-303」、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、不揮発分100質量%)に変更した以外は同じ方法で不揮発分が2質量%のシリカ粒子(2)の分散液を得た。
【0118】
(製造例7:シランカップリング剤で処理したシリカ粒子(3)の製造)
製造例5で用いたシランカップリング剤を、アミノ基を含有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM-573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、不揮発分100質量%)に変更した以外は同じ方法で、不揮発分が2質量%のシリカ粒子(3)の分散液を得た。
【0119】
(製造例8:シランカップリング剤で処理したシリカ粒子(4)の製造)
製造例5で用いたシランカップリング剤を、メタクリル基を含有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBE-502」、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、不揮発分100質量%)に変更した以外は同じ方法で、不揮発分が2質量%のシリカ粒子(4)の分散液を得た。
【0120】
(調製例1:プライマー組成物(1)の調製)
製造例1で得られた不揮発分2質量%のメラミン樹脂溶液100質量部に、製造例5で得られたシリカ粒子(1)の分散液を1質量部添加し、30分間混合してプライマー組成物(1)を得た。
【0121】
(調製例2:プライマー組成物(2)の調製)
製造例2で得られた不揮発分2質量%のウレタン-アクリル複合樹脂の水分散液100質量部に、製造例5で得られたシリカ粒子(1)の分散液を5質量部添加し、30分間混合してプライマー組成物(2)を得た。
【0122】
(調製例3:プライマー組成物(3)の調製)
製造例3で得られた不揮発分2質量%のアミノトリアジン変性ノボラック及びエポキシ樹脂の混合物溶液100質量部に、製造例5で得られたシリカ粒子(1)の分散液を10質量部添加し、30分間混合してプライマー組成物(3)を得た。
【0123】
(調製例4:プライマー組成物(4)の調製)
製造例3で得られた不揮発分2質量%のアミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂の混合樹脂溶液100質量部に、製造例6で得られたシリカ粒子(2)の分散液を25質量部添加し、30分間混合してプライマー組成物(4)を得た。
【0124】
(調製例5:プライマー組成物(5)の調製)
製造例3で得られた不揮発分2質量%のアミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂の混合樹脂溶液100質量部に、製造例6で得られたシリカ粒子(2)の分散液75質量部を添加し、30分間混合してプライマー組成物(5)を得た。
【0125】
(調製例6:プライマー組成物(6)の調製)
製造例4で得られた不揮発分2質量%のブロックポリイソシアネート溶液100質量部に、製造例7で得られたシリカ粒子(3)の分散液を150質量部添加し、30分間混合してプライマー組成物(6)を得た。
【0126】
(調製例7:プライマー組成物(7)の調製)
製造例1で得られた不揮発分2質量%のメラミン樹脂溶液100質量部に、製造例8で得られたシリカ粒子(4)の分散液を400質量部添加し、30分間混合してプライマー組成物(7)を得た。
【0127】
(調製例8:プライマー組成物(R1)の調製)
製造例3で得られた不揮発分2質量%のアミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂の混合樹脂溶液を、シリカ粒子分散液を添加せずにプライマー組成物(R1)として用いた。
【0128】
(調製例9:プライマー組成物(R2)の調製)
シリカ粒子分散体(日産化学株式会社製「スノーテックス-OL」;平均粒子径45nm、不揮発分20質量%)を不揮発分2質量%になるようにイソプロピルアルコールで希釈し、シランカップリング剤で処理していないシリカ粒子を75質量部作製した。このシリカ粒子を、製造例3で得られた不揮発分2質量%のアミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂の混合樹脂溶液100質量部へ添加し、30分間混合してプライマー組成物(R2)として用いた。
【0129】
(調製例10:流動体(1)の調製)
特許第4573138号公報記載の実施例1にしたがって、銀ナノ粒子とカチオン性基(アミノ基)を有する有機化合物の複合体である灰緑色の金属光沢があるフレーク状の塊からなるカチオン性銀ナノ粒子を得た。その後、この銀ナノ粒子の粉末を、エチレングリコール45質量部と、イオン交換水55質量部との混合溶媒に分散させて、カチオン性銀ナノ粒子が5質量%の流動体(1)を調製した。
【0130】
(実施例1)
ポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製「カプトン50EN-C」;厚さ12.5μm)の表面に、調製例1で得られたプライマー組成物(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて、その乾燥後の厚さが100nmとなるように塗工した。次いで、熱風乾燥機を用いて150℃で5分間乾燥することによって、ポリイミドフィルムの表面にプライマー層を形成した。
【0131】
上記で形成したプライマー層の表面に、上記で得られた流動体(1)を、バーコーターを用いて塗工した。次いで、200℃で5分間乾燥することによって、前記金属粒子層(C)に相当する銀層(膜厚100nm)を形成した。
【0132】
上記で得られた銀層をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2.5A/dmで30分間電解めっきを行うことによって、無電解銅めっきによる銅めっき層の表面に、電解銅めっきによる銅めっき層(膜厚15μm)を形成した。前記電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(奥野製薬工業(株)製「トップルチナSF-M」)5ml/Lを用いた。なお、無電解銅めっきによる銅めっき層及びその上に形成した電解銅めっきによる銅めっき層を合わせたものが、前記金属めっき層(D)に相当する。
【0133】
以上の方法によって、支持体(A)、プライマー層(B)、金属粒子層(C)、及び金属めっき層(D)が順次積層された積層体(1)を得た。
【0134】
(実施例2~7、比較例1及び2)
実施例1で用いたプライマー組成物(1)を、プライマー組成物(2)~(7)、(R1)又は(R2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、積層体(2)~(7)、(R1)及び(R2)を得た。
【0135】
上記の実施例1~7及び比較例1~2で得られた積層体(1)~(7)、(R1)及び(R2)について、以下の測定及び評価を行った。
【0136】
[加熱前の剥離強度の測定]
上記で得られた各積層体について、株式会社島津製作所製「オートグラフAGS-X 500N」を用いて剥離強度を測定した。なお、測定に用いるリード幅は5mm、そのピールの角度は90°とした。また、ピール強度は、金属めっき層の厚さが厚くなるほど高い値を示す傾向にあるが、本発明でのピール強度の測定は、金属めっき層の厚さ15μmにおける測定値を基準として実施した。
【0137】
[密着性の評価]
上記で測定した加熱前の剥離強度の値から、下記の基準にしたがって密着性を評価した。
A:剥離強度の値が650N/m以上である。
B:剥離強度の値が450N/m以上、650N/m未満である。
C:剥離強度の値が250N/m以上、450N/m未満である。
D:剥離強度の値が250N/m未満である。
【0138】
[加熱後の剥離強度の測定]
上記で得られた各積層体について、それぞれ150℃に設定した乾燥機内に300時間保管して加熱した。加熱後、上記と同様の方法でピール強度を測定した。
【0139】
[耐熱性の評価]
上記で測定した加熱前後のピール強度値を用いて、加熱前後での保持率を算出し、下記の基準にしたがって耐熱性を評価した。
A:保持率が85%以上である。
B:保持率が70%以上85%未満である。
C:保持率が55%以上70%未満である。
D:保持率が55%未満である。
【0140】
実施例1~7、比較例1及び2で用いたプライマー組成物の組成、加熱前後の剥離強度の測定結果、密着性及び耐熱性の評価結果を表1に示す。なお、プライマー組成物の組成は、不揮発分のみを示す。
【0141】
【表1】
【0142】
本発明の積層体である実施例1~7で得られた積層体(1)~(7)は、初期(加熱前)の剥離強度は高く密着性に優れていることが確認できた。また、150℃で300時間の耐熱試験後の剥離強度の低下もわずかで耐熱密着性にも優れていることを確認できた。
【0143】
一方、比較例1で得られた積層体(R1)は、シリカ粒子を含有しないプライマー層を用いた例であるが、初期(加熱前)の剥離強度は比較的高いが、150℃で300時間の耐熱性試験後の剥離強度が大幅に低下し、耐熱密着性に劣っていることを確認できた。
【0144】
また、比較例2で得られた積層体(R2)は、シランカップリング剤で処理していないシリカ粒子を含有するプライマー層を用いた例であるが、初期(加熱前)の剥離強度が低くなり、150℃で300時間の耐熱試験後の剥離強度の保持率は高い結果となった。