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特許7053109異種素材接合体の製造方法および異種素材接合体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】異種素材接合体の製造方法および異種素材接合体
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/16 20060101AFI20220405BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20220405BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220405BHJP
   B29C 65/44 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B29C65/16
B32B3/30
B32B15/08 P
B29C65/44
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020570864
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 KR2019012048
(87)【国際公開番号】W WO2020067672
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115903
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ジン ミ
(72)【発明者】
【氏名】ミン、イン キ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ユ ジン
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0036574(KR,A)
【文献】特開2005-041073(JP,A)
【文献】特開2014-046599(JP,A)
【文献】特開2005-088355(JP,A)
【文献】特開2014-065288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面上に2以上のエッチング溝と、前記エッチング溝に隣接して備えられた突出部とを含む金属基材を用意するステップと、
前記金属基材の一面上に第1樹脂層および第2樹脂層を順次に積層して、積層体を製造するステップと、
前記第2樹脂層の表面上にレーザを照射するステップと、を含み、
800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、20%以上70%以下であり、
800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、前記第2樹脂層の光透過率より小さく、
前記第1樹脂層と第2樹脂層とが融着して接合され、前記第1樹脂層が溶融して前記金属基材と前記第1樹脂層とが接合し、
800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記金属基材の一面の光反射率は、50%以下である、異種素材接合体の製造方法。
【請求項2】
800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光吸収率は、20%以上50%以下である、請求項1に記載の異種素材接合体の製造方法。
【請求項3】
800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第2樹脂層の光透過率は、50%以上80%以下である、請求項1または2に記載の異種素材接合体の製造方法。
【請求項4】
前記第1樹脂層の厚さは、0.1mm以上5mm以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の異種素材接合体の製造方法。
【請求項5】
前記レーザは、50W以上2,000W以下の出力のダイオードレーザである、請求項1からのいずれか一項に記載の異種素材接合体の製造方法。
【請求項6】
前記レーザは、100μm以上5,000μm以下のスポットサイズ、10mm/s以上1,000mm/s以下の照射速度、および3回以下の照射回数で照射される、請求項1からのいずれか一項に記載の異種素材接合体の製造方法。
【請求項7】
一面上に2以上のエッチング溝と、前記エッチング溝に隣接して備えられた突出部とを含む金属基材と、
前記金属基材の一面上に順次に積層される第1樹脂層および第2樹脂層と、を含み、
800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、20%以上70%以下であり、
800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、前記第2樹脂層の光透過率より小さく、
前記第1樹脂層と第2樹脂層とが融着して接合され、前記第1樹脂層が溶融して前記金属基材と前記第1樹脂層とが接合し、
800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記金属基材の一面の光反射率は、50%以下である、異種素材接合体。
【請求項8】
前記第1樹脂層は、前記エッチング溝の内部、前記金属基材の表面と突出部との間に満たされて前記金属基材に接合された、請求項に記載の異種素材接合体。
【請求項9】
前記第1樹脂層の厚さは、0.1mm以上5mm以下である、請求項またはに記載の異種素材接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2018年9月28日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0115903号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、異種素材接合体の製造方法および異種素材接合体に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、金属と樹脂のような異種素材間の接合は、各素材固有の物理的、化学的特性と表面状態が異なるため、容易でない場合がほとんどである。このような異種素材間の接合のために試みられる技術は、接着剤を用いた結合、機械的締付、溶接(welding)、インサート射出などに分類できる。なかでも、接着剤を用いる方法は、使用方法が簡単であるという利点があるので、電子製品における異種素材間の接合時に用いられる代表的かつ古典的な方式で最も多く使用されている。
【0004】
接着剤を用いるか、機械的締付を用いる工程は、比較的易しい方式で異種素材の接合を可能にするが、接合部が外観にそのまま現れてしまう問題点が発生していた。
【0005】
また、最近は、樹脂-樹脂-金属からなる異種接合素材の開発が進められ、このような異種接合素材の場合、樹脂間の接合、樹脂と金属との間の接合がそれぞれ行われなければならないので、製造工程が複雑で製造費用が増加する問題があった。
【0006】
そこで、比較的簡単な工程を用いながらも、多層樹脂間の接合と樹脂と金属との間の接合を容易に実現できる技術が必要なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国登録特許公報:KR10-1499665号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、多層樹脂間の接合と樹脂と金属との間の接合を容易に実現できる異種素材接合体の製造方法および異種素材接合体を提供する。
【0009】
ただし、本発明が解決しようとする課題は、上述した課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施態様は、一面上に2以上のエッチング溝と、前記エッチング溝に隣接して備えられた突出部とを含む金属基材を用意するステップと、前記金属基材の一面上に第1樹脂層および第2樹脂層を順次に積層して、積層体を製造するステップと、前記第2樹脂層の表面上にレーザを照射するステップと、を含み、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、20%以上70%以下であり、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、前記第2樹脂層の光透過率より小さい異種素材接合体の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明の一実施態様は、一面上に2以上のエッチング溝と、前記エッチング溝に隣接して備えられた突出部とを含む金属基材と、前記金属基材の一面上に順次に積層される第1樹脂層および第2樹脂層と、を含み、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、20%以上70%以下であり、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、前記第2樹脂層の光透過率より小さい異種素材接合体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の製造方法は、樹脂層間の接合、および樹脂層と金属基材との間の接合を簡単な方法により同時に形成できるという利点がある。
【0013】
本発明の一実施態様に係る前記異種素材接合体は、金属基材と第1樹脂層との間の接合力、および第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合力に優れることができる。
【0014】
本発明の効果は上述した効果に限定されるものではなく、述べていない効果は本願明細書および添付した図面から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施態様によりエッチングされた金属基材の表面の平面図(A)および前記金属基材を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した様子(B)である。
図2】本発明の一実施態様に係る金属基材の側断面図である。
図3】本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の製造方法を概略的に示す図である。
図4A】本発明の実施例1で製造された異種素材接合体を撮影した写真である。
図4B】本発明の実施例2で製造された異種素材接合体を撮影した写真である。
図5A】比較例1で製造された異種素材接合体を撮影した写真である。
図5B】比較例2で製造された異種素材接合体を撮影した写真である。
図5C】比較例3で製造された異種素材接合体を撮影した写真である。
図5D】比較例4で製造された異種素材接合体を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0017】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0018】
本明細書において、ある構成要素がある部分に「備え」られるとする時、これは、特別であるか制限された方法により形成されたものではなく、ある部分の上に位置するか設けられることを意味することができる。
【0019】
本明細書において、使われる程度の用語「~(する)ステップ」または「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味しない。
【0020】
本明細書において、当該部材の厚さは、当該部材の側面の走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope S-4800、HITACHI社)イメージにおいて対応する縮尺と比較して測定されるか、厚さゲージ(gauge)を用いて測定されるものであり得る。
【0021】
本明細書において、部材の「光透過率」は、部材に入射する光量に対する、部材を透過した光量の比率を意味することができ、「光反射率」は、部材に入射する光量に対する、部材で反射した光量の比率を意味することができ、「光吸収率」は、部材に入射する光量に対する、部材を吸収した光量の比率を意味することができ、部材の光透過率は、部材の光吸収率(%)および光反射率(%)を100%から引いた値を意味することができる。また、部材の光透過率、光反射率、および光吸収率は、Shimadzu社のSpolid3700装置を用いて測定された特定波長における値であり得る。
【0022】
以下、本明細書についてより詳しく説明する。
【0023】
本発明の一実施態様は、一面上に2以上のエッチング溝と、前記エッチング溝に隣接して備えられた突出部とを含む金属基材を用意するステップと、前記金属基材の一面上に第1樹脂層および第2樹脂層を順次に積層して、積層体を製造するステップと、前記第2樹脂層の表面上にレーザを照射するステップと、を含み、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、20%以上70%以下であり、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、前記第2樹脂層の光透過率より小さい異種素材接合体の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の製造方法は、樹脂層間の接合、および樹脂層と金属基材との間の接合を簡単な方法により同時に形成できるという利点がある。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、前記金属基材として通常のものを特別な制限なく使用できるが、レーザ照射によるパターン形成が容易であり、適切な光吸収率を有するものを使用することが好ましい。例えば、前記金属基材として、アルミニウム(Al)およびチタン(Ti)などの純金属、ステンレススチール(STS)のような合金(alloy)などを使用することができる。
【0026】
本発明の一実施態様によれば、前記金属基材の形態は、レーザ照射によるエッチングが可能であり、樹脂との接合が円滑に行われる形態であれば特別な制限なく適用可能である。例えば、前記金属基材は、平面、曲面を含む円筒形および多面体などの形態を有することができる。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、前記金属基材の一面上にレーザ(以下、第1レーザ)を照射して、2以上のエッチング溝と、前記エッチング溝に隣接して備えられた突出部とを含む金属基材を用意することができる。
【0028】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザは、波長が1064nmのパルスレーザであってもよい。また、前記第1レーザの出力は、20W以上200W以下であってもよく、具体的には、20W以上100W以下、20W以上50W以下、または20W以上40W以下であってもよい。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザの繰り返し数は、30kHz以上600kHz以下であってもよく、具体的には、30kHz以上200kHz、40kHz以上600kHz以下、または40kHz以上200kHz以下であってもよい。
【0030】
本明細書において、前記第1レーザの繰り返し数は、パルスレーザの秒あたりの振動数を意味することができる。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザの走査速度は、100mm/s以上1,000mm/s以下であってもよく、具体的には、100mm/s以上400mm/s以下、200mm/s以上1,000mm/s以下、200mm/s以上400mm/s以下、200mm/s以上450mm/s以下、300mm/s以上400mm/s以下、または300mm/s以上450mm/s以下であってもよい。
【0032】
本明細書において、パルスレーザの走査速度は、照射されるレーザの一地点から他地点まで移動する速度を意味することができる。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザの照射回数は、1回以上10回以下であってもよく、具体的には、1回以上8回以下、1回以上4回以下、2回以上10回以下、2回以上8回以下、2回以上4回以下、または4回以上8回以下であってもよい。また、前記第1レーザのパルス幅は、15ns以上220ns以下であってもよい。
【0034】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザのスポットサイズは、15μm以上50μm以下であってもよく、具体的には、25μm以上50μm以下、30μm以上50μm以下、または35μm以上50μm以下であってもよい。
【0035】
本明細書において、スポットサイズ(spot size、またはbeam size)は、前記パルスレーザの焦点の一側末端から他側末端までの最大距離を意味することができる。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザのピーク出力は、1.5kW以上6kW以下であってもよく、具体的には、1.5kW以上3.4kW以下、1.9kW以上6kW以下、または1.9kW以上3.4kW以下であってもよい。また、前記第1レーザのパルスエネルギーは、0.1mJ以上2mJ以下であってもよく、具体的には、0.1mJ以上1mJ以下、0.5mJ以上2mJ以下、または0.5mJ以上1mJ以下であってもよい。
【0037】
前記第1レーザの照射条件を前述のように調節することにより、前記エッチング溝の深さ、前記エッチング溝の入口幅、前記エッチング溝の中間幅、前記突出部の長さ、前記突出部の高さ、および前記突出部と前記金属基材の表面とのなす角度範囲を後述のように制御することができる。これによって、前記金属基材と前記第1樹脂層との接合力を増大させることができる。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザのエネルギー条件は、エッチング溝の壁とエッチング溝の入口で蒸発した材料の再凝縮が可能であり、前記金属基材から突出する突出部を相対的に粗く形成させることができる。これによって、前記金属基材と前記第1樹脂層との接合が可能な面積およびアンカリング構造(anchoring structure)が容易に形成できる。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザは、前記エッチング溝の深さ方向に照射され、前記第1レーザの照射により、前記金属基材の一部は、前記金属基材の表面から前記エッチング溝の中心軸から遠くなる方向に溶融して前記突出部を備えることができる。また、前記第1レーザの照射により突出部を備えた部分を除いた前記金属基材の残りの一部は、前記エッチング溝が形成された前記金属基材の内部から前記エッチング溝の中心軸に向かって溶融できる。これによって、相対的に狭い入口幅を有するエッチング溝を形成することができる。
【0040】
具体的には、前記第1レーザの照射により前記金属基材の溶融が速やかに進行し、その後、前記第1レーザの焦点が移動しながら前記溶融した金属基材が冷却され、前記溶融した金属基材がエッチング溝に隣接した部分から冷却されることにより、中間幅に比べて相対的に狭い入口幅を有するエッチング溝を形成することができる。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザが前記金属基材の一面に照射される過程で、前記第1レーザの進行方向に沿って前記金属基材の一面上にエッチング溝が形成される。すなわち、第1レーザの進行方向と前記エッチング溝の進行方向とが一致できる。
【0042】
また、前記金属基材の一面上に2以上の第1レーザが照射されてもよいし、前記2以上の第1レーザの進行方向は交差することができる。具体的には、前記1つの第1レーザの進行方向と、前記他の1つの第1レーザの進行方向とは交差することができる。前記1つの第1レーザおよび前記他の1つの第1レーザの照射により、前記金属基材の一面を格子構造にエッチングする場合、前記エッチングされた金属基材の表面から突き出る突出部(burr)がエッチング溝に隣接して前記金属基材の一面上に、前記エッチング溝から遠くなるように突出して形成される。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザの照射により、前記金属基材の一面にマイクロメートル(μm)サイズのエッチング溝が形成されると同時に、突出部が前記エッチング溝に隣接して、前記エッチング溝から遠くなる方向に形成される。また、前記エッチング溝は、前記第1レーザの進行方向に沿って形成可能なため、前記1つの第1レーザの進行方向に沿って形成されたエッチング溝および前記他の1つの第1レーザの進行方向に沿って形成されたエッチング溝それぞれに隣接する突出部が連続的につながって向かい合う形態をして、最終的には、4つの面からなり、その内部に空間が備えられた垣根形態が形成される。具体的には、前記1つのエッチング溝に隣接する突出部の1つと、他の1つのエッチング溝に隣接した突出部の1つとが連続的につながって向かい合う形態をし、他の第1レーザの進行方向に沿って形成され、向かい合う一対の突出部が他の突出部とそれぞれ連結されて、内部に空間が備えられた垣根形態が形成される。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、1つのエッチング溝の進行方向と、他の1つのエッチング溝の進行方向とは平行であってよい。また、前記1つのエッチング溝の進行方向と、他の1つのエッチング溝の進行方向とは直角または非直角に交差することができる。
【0045】
図1は、本発明の一実施態様によりエッチングされた金属基材の表面の平面図(A)および前記金属基材を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した様子(B)である。
【0046】
図1を参照すれば、前記1つのエッチング溝10の進行方向Xと、他の1つのエッチング溝10の進行方向Yとが直角に交差する場合、前記エッチング溝から遠くなる方向に備えられる前記突出部20が前記エッチング溝10の進行方向XおよびYに沿って連続的にまたは不連続的に備えられることを確認することができ、前記突出部20によって取り囲まれる表面領域30が正方または長方形状に備えられる。
【0047】
また、図1を参照すれば、前記金属基材の表面は、格子構造の形態を示すことができる。具体的には、前記格子構造は、図1に示されるように、1つのエッチング溝10の進行方向Xと、他の1つのエッチング溝10の進行方向Yとが交差(具体的には、直交)することにより、前記エッチング溝10によって形成された構造であってもよい。
【0048】
このように、前記1つのエッチング溝および他の1つのエッチング溝によって金属基材の一面上に格子構造でパターンが形成されることにより、前記金属基材の一面の光反射率を適切な水準に調節可能である。これによって、前記金属基材の一面と前記第1樹脂層との間の接合がより容易に形成可能であり、その接合力に優れることができる。
【0049】
図2は、本発明の一実施態様に係る金属基材の側断面図である。
【0050】
図2を参照すれば、前記金属基材の表面にマイクロメートル(μm)単位のエッチング溝10が備えられると同時に、突出部20a、20bが前記エッチング溝に隣接して、前記エッチング溝から遠くなる方向に備えられる。また、図2を参照すれば、前記金属基材の表面に、前記突出部が前記金属基材の表面から突き出る形態で備えられ、前記突出部は、前記エッチング溝から遠くなるように突出する形態で備えられる。
【0051】
また、図1および図2によれば、前記1つのエッチング溝10に隣接して前記金属基材の表面に備えられた突出部20bと、前記他の1つのエッチング溝に隣接して前記金属基材の表面に備えられた突出部20cとが連続的にまたは不連続的につながって向かい合う形態をして、最終的には、4つの面からなり、その内部に空間30が形成された垣根形態が備えられる。
【0052】
さらに、図2によれば、本発明の一実施態様に係る金属基材に備えられた1つのエッチング溝10に隣接した突出部の1つ20bと、他の1つのエッチング溝に隣接した突出部の1つ20cとが連続的にまたは不連続的につながって向かい合う形態をし、他のエッチング溝の進行方向に沿って備えられ、向かい合う一対の突出部(図示せず)が20bおよび20cで表示される突出部とそれぞれ連結されて、内部に表面領域30が形成された垣根形態が備えられる。
【0053】
また、1つのエッチング溝の進行方向および他の1つのエッチング溝の進行方向が直交する場合、前記1つのエッチング溝の進行方向の断面形状と、前記他のエッチング溝の進行方向の断面形状とは非常に類似してもよいが、前記1つのエッチング溝の進行方向および前記他の1つのエッチング溝の進行方向が非直交交差する場合には、前記1つのエッチング溝の進行方向の断面形状と、前記他のエッチング溝の進行方向の断面形状とは異なっていてもよい。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記突出部は、前記金属基材の一面に対して鋭角をなして備えられる。具体的には、前記エッチング溝から遠くなる方向に備えられた前記突出部と前記金属基材の一面とのなす角度が鋭角であってもよい。
【0055】
本発明の一実施態様によれば、前記突出部が前記金属基材の一面に対してなす角度は、30゜以上80゜以下、30゜以上70゜以下、35゜以上80゜以下、35゜以上70゜以下、35゜以上60゜以下、40゜以上70゜以下、または40゜以上60゜以下であってもよい。前記突出部が前記金属基材の一面に対してなす角度を前述した範囲に調節することにより、前記金属基材の一面の光反射率を効果的に低下させることができ、これによって、前記金属基材の一面と前記第1樹脂層との接合をより容易に行うことができる。
【0056】
本明細書において、前記突出部と前記金属基材の一面とのなす角度は、前記エッチング溝から遠くなる方向に備えられた前記突出部と前記金属基材の一面とのなす角度を意味することができる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、前記エッチング溝の入口幅に対する、前記エッチング溝の深さの比は、1:3~1:14、または1:3~1:13であってもよい。前記範囲で前記第1樹脂層が前記エッチング溝の内部に十分に満たされるようになって、前記金属基材と前記第1樹脂層との接合力が向上できる。
【0058】
本明細書において、前記エッチング溝の入口幅は、前記エッチング溝が形成された前記金属基材の表面の延長線上の前記エッチング溝の幅を意味するものであってもよい。
【0059】
本明細書において、前記エッチング溝の深さは、前記1つのエッチング溝の最低地点から、前記金属基材の延長線と前記1つのエッチング溝の中心軸との交点までの最大距離を意味することができる。
【0060】
本発明の一実施態様によれば、前記エッチング溝の入口幅は、10μm以上25μm以下、または10μm以上20μm以下であってもよい。また、前記エッチング溝の深さは、50μm以上250μm以下、50μm以上240μm以下、60μm以上250μm以下、または60μm以上240μm以下であってもよい。
【0061】
さらに、本発明の一実施態様によれば、前記エッチング溝の中間幅は、15μm以上30μm以下、または20μm以上30μm以下であってもよく、前記エッチング溝の入口幅に対する、前記エッチング溝の中間幅の比は、1:1.3~1:3であってもよい。前記範囲で前記樹脂層が前記エッチング溝に十分に満たされ、これによって、前記金属基材と前記第1樹脂層との接合力が向上できる。
【0062】
本明細書において、前記エッチング溝の中間幅は、前記エッチング溝の深さの半分になる地点の、前記エッチング溝間の最大距離を意味することができる。
【0063】
本発明の一実施態様によれば、前記エッチング溝の入口幅、中間幅、および深さを前述した範囲に調節することにより、前記金属基材と前記第1樹脂層との接合力を効果的に向上させることができるように、前記金属基材の一面の光反射率を適切な範囲に制御することができる。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、前記突出部の一側末端から他側末端までの長さは、25μm以上80μm以下、25μm以上70μm以下、30μm以上80μm以下、30μm以上70μm以下、30μm以上50μm以下、35μm以上70μm以下、または35μm以上50μm以下であってもよい。
【0065】
また、本発明の一実施態様によれば、前記突出部の高さは、30μm以上100μm以下、30μm以上90μm以下、40μm以上100μm以下、40μm以上90μm以下、40μm以上80μm以下、50μm以上90μm以下、または50μm以上80μm以下であってもよい。
【0066】
前記突出部の長さと前記突出部の高さの範囲で、前記第1樹脂層が十分に供給されて前記金属基材に十分な接合力で固定できる。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、前記エッチング溝の中心軸間の距離は、50μm以上1,000μm以下、50μm以上800μm以下、80μm以上1,000μm以下、80μm以上800μm以下、80μm以上500μm以下、100μm以上500μm以下、80μm以上250μm以下、または100μm以上250μm以下であってもよい。
【0068】
前記範囲で向い合う突出部が併合される現象を防止することにより、前記樹脂層が供給されない空き空間構造の形成を防止することができ、前記エッチング溝および突出部によって形成される構造物と前記樹脂層との間の接合面積が相対的に増加して、十分な結合力を形成することができる。
【0069】
本明細書において、前記エッチング溝の中心軸間の距離は、前記エッチング溝の深さが最大になる1つのエッチング溝の末端から他の1つのエッチング溝の末端までの距離を意味することができる。
【0070】
本発明の一実施態様によれば、前記金属基材と前記第1樹脂層との間の接合力は、前記突出部の高さが高いほど、エッチング溝間の間隔が狭いほど強くなる。
【0071】
本発明の一実施態様によれば、前記金属基材の一面上に第1レーザを照射し、エッチング溝および突出部を形成して金属基材の一面を改質させる方法以外に、前記金属基材の一面をサンドブラスト(sandblast)処理、および/または化学的腐食処理などの方法を利用して、前記金属基材の一面を改質させることができる。前記金属基材の一面を改質させて、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対する、前記金属基材の一面の光反射率を10%以上30%以下に調節することができる。これによって、より容易に前記異種素材接合体を製造することができる。
【0072】
本発明の一実施態様によれば、前記金属基材の一面上に第1樹脂層および第2樹脂層を順次に積層して積層体を製造し、前記第2樹脂層の表面上にレーザ(以下、第2レーザ)を照射することにより、第1樹脂層と金属基材とが接合され、第1樹脂層と第2樹脂層とが接合された異種素材接合体を製造することができる。
【0073】
図3は、本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の製造方法を概略的に示す図である。この時、図3には、金属基材の一面上に備えられたエッチング溝と突出部を省略図示した。
【0074】
図3を参照すれば、金属基材100の一面上に第1樹脂層210が備えられ、前記第1樹脂層210の一面上に第2樹脂層220が備えられた積層体に対して、前記第2レーザ(Laser)を第2樹脂層220から金属基材100の方向に照射して、異種素材接合体を製造することができる。
【0075】
本発明の一実施態様によれば、前記第2樹脂層から金属基材の方向に第2レーザを照射する場合、前記第2レーザは、第2樹脂層および第1樹脂層を透過して、前記金属基材の一面上に到達することができる。前記第2レーザが第2樹脂層から金属基材の一面に到達する過程で、第2樹脂層と第1樹脂層が前記第2レーザから吸収した熱エネルギー、前記金属基材の一面から反射して第1樹脂層が再吸収した熱エネルギー、および金属基材の一面から伝達された熱エネルギーによって、前記第1樹脂層と第2樹脂層とが融着して接合できる。また、第1樹脂層が溶融して金属基材の一面上に形成されたエッチング溝の内部を満たし、金属基材と第1樹脂層とが接合できる。具体的には、第1樹脂層が溶融するにつれ、前記金属基材の表面、前記エッチング溝および前記垣根形態の突出部の内部空間に供給されることにより、金属基材と第1樹脂層との間、すなわち異種素材間の接合が形成される。
【0076】
本発明の一実施態様によれば、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、20%以上70%以下であり、前記第1樹脂層の光透過率は、前記第2樹脂層の光透過率より小さい。これによって、前記第2レーザは、前記第1樹脂層および第2樹脂層を透過して金属基材の一面上に効果的に到達することができ、前記第2レーザが金属基材の一面上に到達する過程で発生する熱エネルギーによって、金属基材と第1樹脂層との間の接合、および第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合が同時に容易に行われる。
【0077】
本発明の一実施態様によれば、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、20%以上70%以下であってもよい。具体的には、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、25%以上65%以下、30%以上60%以下、または35%以上65%以下であってもよい。より具体的には、前記第1樹脂層の光透過率は、915nmの波長を有する光に対するものであってもよい。
【0078】
前記第1樹脂層の光透過率を前述した範囲に調節することにより、前記第2レーザは、前記金属基材の一面上に容易に到達することができ、前記金属基材の一面上に第2レーザが到達する過程で、前記第1樹脂層は、熱エネルギーを効果的に吸収することができる。これによって、前記第1樹脂層と第2樹脂層との間、および第1樹脂層と金属基材との間の接合が同時に効果的に行われる。
【0079】
本発明の一実施態様によれば、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光吸収率は、20%以上50%以下であってもよい。具体的には、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光吸収率は、25%以上45%以下、または30%以上40%以下であってもよい。より具体的には、前記第1樹脂層の光吸収率は、915nmの波長を有する光に対するものであってもよい。
【0080】
前記第1樹脂層の光吸収率を前述した範囲に調節することにより、前記金属基材の一面上に第2レーザが到達する過程で、前記第1樹脂層は、前記第2レーザからエネルギーを効果的に吸収することができ、前記金属基材の一面から反射するエネルギーを効果的に吸収することができる。これによって、前記第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合および前記第1樹脂層と金属基材の一面との間の接合が効果的に形成される。
【0081】
すなわち、前記第1樹脂層は、光透過材および光吸収材の役割を同時に果たすことができる。
【0082】
本発明の一実施態様によれば、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記金属基材の一面の光反射率は、50%以下であってもよい。具体的には、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記金属基材の一面の光反射率は、10%以上50%以下、15%以上45%以下、20%以上35%以下、12.5%以上27.5%以下、15%以上25%以下、または17%以上23%以下であってもよい。より具体的には、前記金属基材の一面の光反射率は、915nmの波長を有する光に対するものであってもよい。
【0083】
前記金属基材の一面の光反射率が前述した範囲内の場合、前記金属基材の一面に到達した第2レーザを適切な程度に前記第1樹脂層に反射させて第1樹脂層に熱エネルギーを伝達すると同時に、第2レーザのエネルギーが前記金属基材の一面に吸収されて転換された熱(heat)によって界面(前記金属基材の一面と第1樹脂層とが当接している面)の第1樹脂層を効果的に溶融させることができる。これによって、金属基材の一面との界面に位置した第1樹脂層部分が効果的に溶融することができ、溶融した樹脂が前記金属基材の表面、前記エッチング溝および前記垣根形態の突出部の内部空間に容易に供給できる。
【0084】
本発明の一実施態様によれば、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第2樹脂層の光透過率は、50%以上80%以下であってもよい。具体的には、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第2樹脂層の光透過率は、55%以上75%以下、65%以上78%以下、67.5%以上75%以下、または70%以上73%以下であってもよい。より具体的には、前記第2樹脂層の光透過率は、915nmの波長を有する光に対するものであってもよい。
【0085】
前記第2樹脂層の光透過率が前述した範囲内の場合、前記第2レーザに由来するエネルギーが前記第2樹脂層に集中して、第1樹脂層および金属基材にエネルギーが十分に伝達されないことを効果的に防止することができる。
【0086】
本発明の一実施態様によれば、前記第1樹脂層の厚さは、0.1mm以上5mm以下であってもよい。具体的には、前記第1樹脂層の厚さは、0.5mm以上4.5mm以下、1.0mm以上4.0mm以下、1.5mm以上4.5mm以下、2mm以上4mm以下、または3mm以上3.5mm以下であってもよい。前記第1樹脂層の厚さを前述した範囲に調節することにより、前記第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合および第1樹脂層と金属基材の一面との接合効率を向上させることができる。また、前記第1樹脂層の厚さが前述した範囲内の場合、前記第1樹脂層自体は、前記異種素材接合体の構造体として活用可能である。
【0087】
本発明の一実施態様によれば、前記第1樹脂層は、前述した光透過率、光吸収率を満たすものであれば、当業界で用いられる樹脂層を制限なく採用可能である。また、前記第2樹脂層は、前述した光透過率を満たすものであれば、当業界で用いられる樹脂層を制限なく採用可能である。例えば、前記第1樹脂層および第2樹脂層それぞれは、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、および補強材含有樹脂のうちの少なくとも1つを含むことができるが、その種類が限定されるものではない。
【0088】
また、前記補強材は、ガラス繊維(glass fiber)、タルク(talc)、および炭素繊維(carbon fiber)のうちの少なくとも1つを含むことができるが、前記補強材の種類を限定しない。
【0089】
本発明の一実施態様によれば、前記レーザ(第2レーザ)は、50W以上2,000W以下の出力のダイオードレーザであってもよい。前記ダイオードレーザは、順方向の半導体接合を能動媒質として用いて発生するレーザを意味することができる。
【0090】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザの波長は、近赤外線領域の波長であってもよい。具体的には、前記第2レーザの波長は、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長であってもよく、具体的には、915nmであってもよい。
【0091】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザの出力は、50W以上2,000W以下であってもよいし、レーザのスポットサイズ、第1樹脂層および第2樹脂層の素材によって適切に調節可能である。
【0092】
本発明の一実施態様によれば、前記レーザ(第2レーザ)は、100μm以上5,000μm以下のスポットサイズ、10mm/s以上1,000mm/s以下の照射速度、および3回以下の照射回数で照射される。
【0093】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザのスポットサイズは、200μm以上4,500μm以下、500μm以上3,500μm以下、750μm以上2,000μm以下、または1,000μm以上1,500μm以下であってもよいし、第1樹脂層および第2樹脂層の素材によって適切に調節可能である。また、前記第2レーザの走査速度は、50mm/s以上800mm/s以下、70mm/s以上500mm/s以下、または100mm/s以上250mm/s以下であってもよいし、第1樹脂層および第2樹脂層の素材によって適切に調節可能である。
【0094】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザの照射回数は、3回以下、具体的には、2回以下であってもよい。すなわち、本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の製造方法は、少ない数の第2レーザの照射回数でも金属基材と第1樹脂層、第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合を容易に形成することができる。
【0095】
また、本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の製造方法は、既存の異種素材の接合方法とは異なり、化学有害物質による環境汚染や量産工程の管理が難しいなどの問題点が発生する恐れがない。さらに、工程ステップを最小化して異種素材接合体の製造効率を向上させることができ、製造費用を効果的に節減させることができる。
【0096】
また、本発明の一実施態様は、一面上に2以上のエッチング溝と、前記エッチング溝に隣接して備えられた突出部とを含む金属基材と、前記金属基材の一面上に順次に積層される第1樹脂層および第2樹脂層と、を含み、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、20%以上70%以下であり、800nm以上1100nm以下のいずれか1つの波長に対して、前記第1樹脂層の光透過率は、前記第2樹脂層の光透過率より小さい異種素材接合体を提供する。
【0097】
本発明の一実施態様に係る前記異種素材接合体は、金属基材と第1樹脂層との間の接合力、および第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合力に優れることができる。
【0098】
本発明の一実施態様に係る異種素材接合体は、前記異種素材接合体の製造方法により製造されたものであってもよい。また、本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の金属基材、第1樹脂層および第2樹脂層それぞれは、前述した異種素材接合体の製造方法における金属基材、第1樹脂層および第2樹脂層と同一であってもよい。
【0099】
本発明の一実施態様によれば、前記第1樹脂層は、前記エッチング溝の内部、前記金属基材の表面と突出部との間に満たされて前記金属基材に接合できる。具体的には、金属基材の一面と接している第1樹脂層の溶融した部分が前記金属基材の表面、前記エッチング溝および前記垣根形態の突出部の内部空間に供給されて満たされることにより、前記第1樹脂層と前記金属基材の一面とが接合できる。
【0100】
本発明の一実施態様によれば、前記第1樹脂層と第2樹脂層とは、融着して接合されたものであってもよい。具体的には、前記第1樹脂層に発生した熱エネルギーによって、前記第1樹脂層と第2樹脂層との間の界面が溶融し融着することにより接合が行われる。
【0101】
本発明の一実施態様によれば、前記第1樹脂層の厚さは、0.1mm以上5mm以下であってもよい。従来の異種素材接合体の場合、樹脂層と金属基材とを接合するために、粘着剤や接着剤などを使用した。この時、前記粘着剤や接着剤は、ナノメートルの厚さからマイクロメートルの厚さを有するものであって、樹脂層と金属基材とを接合する役割を果たすだけで、異種素材接合体の構造をなすものではなかった。これに対し、本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の第1樹脂層は、前述した厚さを有することにより、第2樹脂層と金属基材とを接合する役割を果たすと同時に、異種素材接合体の構造をなすことができる。
【0102】
本発明の一実施態様によれば、前記金属基材の厚さは、0.1mm以上であってもよい。また、前記第2樹脂層の厚さは、0.1mm以上5mm以下であってもよい。
【実施例
【0103】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0104】
実施例1
金属基材の用意
下記表1のような条件の2種類のパルスレーザを1.5mmの厚さのスチール(steel)基板の表面に互いに直交するように二重照射して格子構造となるようにエッチングした。レーザ照射により、エッチング溝と、エッチング時に発生する突出部とが前記エッチング溝の周辺部に沿って互いに連結されて、内部に空間を作る垣根の形態に形成された。
【表1】
【0105】
このように形成されたエッチング溝の深さ、エッチング溝の入口幅、およびエッチング溝の中間幅を測定し、その結果を下記表2に示した。具体的には、前記エッチング溝の深さ、入口幅、中間幅、突出部の深さおよび突出部の高さを測定するために、エッチングされたアルミニウム基板を界面部の垂直方向に切断し、これを研磨(polishing)して試験片を製造した。また、各試験片あたり10個~20個の溝における各形状(エッチング溝の深さ、エッチング溝の入口幅、エッチング溝の中間幅、突出部の長さおよび突出部の高さ)の測定値の平均値を計算して、下記表2に示した。
【表2】
【0106】
この時、前記用意されたエッチング溝および突出部が備えられたスチール基板の表面は、915nmの波長における光反射率が約21%であった。
【0107】
異種素材接合体の製造
第1樹脂層として、915nmの波長における光透過率が約59%、光吸収率が約30%であり、厚さが約1.6mmであり、ガラス繊維(glass fiber)が約30重量%添加されたホモポリプロピレン樹脂層を用意した。また、第2樹脂層として、915nmの波長における光透過率が約72%、厚さが約3.2mmであるエチレン-プロピレンブロック共重合体樹脂(CB5230)基材を用意した。
【0108】
その後、用意されたスチール基板と第1樹脂層、第2樹脂層をそれぞれ横20mm、縦60mmの大きさに裁断した後、前記エッチングされたスチール基板の表面上に第1樹脂層と第2樹脂層とが1cmの長さに重なるように固定した。これによって、スチール基板、第1樹脂層、第2樹脂層が順次に備えられた積層体を用意した。その後、第2樹脂層からスチール基板の方向に、915nmの波長、スパットサイズ3mm、出力450Wのダイオードレーザを40mm/sの照射速度で2回繰り返し照射(積層体の幅方向)して異種素材接合体を製造した。
【0109】
実施例2
第1樹脂層として、915nmの波長における光透過率が約35%、光吸収率が約50%であり、厚さが約3.2mmであり、ガラス繊維(glass fiber)が約30重量%添加されたホモポリプロピレン樹脂層を用意したことを除き、前記実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0110】
比較例1
レーザ照射によりエッチング溝および突出部が備えられていないスチール基板(915nmの波長における光反射率が約52%)を用意し、第1樹脂層として、915nmの波長における光透過率が約35%、光吸収率が約50%であり、厚さが約1.6mmであり、ガラス繊維(glass fiber)が約30重量%添加されたホモポリプロピレン樹脂層を用意したことを除き、前記実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0111】
比較例2
スチール基板の代わりに、915nmの波長における光反射率が約5%であるレーザ吸収用樹脂を用意したことを除き、前記比較例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0112】
比較例3
第1樹脂層として、915nmの波長における光透過率が約72%、光吸収率が約15%であり、厚さが約1.6mmであるホモポリプロピレン樹脂層を用意し、第2樹脂層として、915nmの波長における光透過率が約35%、厚さが約3.2mmであり、ガラス繊維(glass fiber)が約30重量%添加されたホモポリプロピレン樹脂層を用意したことを除き、前記実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0113】
比較例4
第1樹脂層として、915nmの波長における光透過率が約80%、光吸収率が約10%であり、厚さが約3.2mmであるホモポリプロピレン樹脂層を用意し、第2樹脂層として、915nmの波長における光透過率が約72%、厚さが約1.6mmであるホモポリプロピレン基材を用意したことを除き、前記実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0114】
図4Aは、本発明の実施例1で製造された異種素材接合体を撮影した写真であり、図4Bは、本発明の実施例2で製造された異種素材接合体を撮影した写真である。具体的には、図4Aの(1)は、実施例1で製造された異種素材接合体の側面を撮影した写真であり、(2)は、実施例1で製造された異種素材接合体の上面を撮影した写真である。
【0115】
図4Aおよび図4Bを参照すれば、本発明の実施例1および実施例2による異種素材接合体の製造方法は、金属基材と第1樹脂層との間の接合、第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合を同時に効果的に接合できることを確認した。また、図4Aの(2)を参照すれば、レーザが照射された第2樹脂層の表面が損傷しないことを確認した。
【0116】
図5Aは、比較例1で製造された異種素材接合体を撮影した写真であり、図5Bは、比較例2で製造された異種素材接合体を撮影した写真であり、図5Cは、比較例3で製造された異種素材接合体を撮影した写真であり、図5Dは、比較例4で製造された異種素材接合体を撮影した写真である。具体的には、図5Cの(1)は、比較例3で製造された異種素材接合体の側面を撮影した写真であり、(2)は、比較例3で製造された異種素材接合体の上面を撮影した写真である。
【0117】
図5Aを参照すれば、金属基材の表面にアンカー溝および突出部を形成しない場合、比較例1の場合、第1樹脂層と第2樹脂層との接合はなされるものの、金属基材と第1樹脂層との間の接合が形成されないことを確認した。また、図5Bを参照すれば、表面の光反射率が約5%であるレーザ吸収用樹脂を基材として用いた比較例2の場合、金属基材と第1樹脂層との間の接合はなされたものの、基材から第1樹脂層に反射で伝達されるエネルギーが十分ではなく、第1樹脂層と第2樹脂層との接合が形成されないことを確認した。
【0118】
また、図5Cの(1)を参照すれば、第1樹脂層の光透過率と光吸収率、第2樹脂層の光透過率が本発明における範囲から逸脱し、第2樹脂層の光透過率が第1樹脂層の光透過率より低い比較例3の場合、照射されるレーザの大部分のエネルギーが第2樹脂層に集中し、第2樹脂層を透過して第1樹脂層および金属基材に十分に伝達されず、金属基材と第1樹脂層との間の接合、および第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合が形成されないことを確認した。さらに、図5Cの(2)を参照すれば、レーザの大部分のエネルギーが第2樹脂層に集中して、第2樹脂層の表面が損傷することを確認した。
【0119】
また、図5Dを参照すれば、第1樹脂層の光透過率が70%を超え、第2樹脂層の光透過率が72%である比較例4の場合、金属基材にレーザが十分に到達して金属基材と第1樹脂層との間の接合は形成されるものの、第1樹脂層の光透過率が高くてエネルギーを十分に吸収できず、第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合が形成されないことを確認した。
【0120】
実験例1
前記実施例1および実施例2と比較例1~4で製造された異種素材接合体の両末端を(Zwick社、モデル:Z020)機器に固定し、これを用いて50mm/minの速度で剪断引張力を測定して接合強度を測定した。
【0121】
前記実験例1により、剪断引張力により接合強度を測定した結果、実施例1は、23MPaの接合強度を有し、実施例2は、22MPaの接合強度を有することを確認した。さらに、実施例1および実施例2の剪断引張力を測定する過程で金属とプラスチックの界面が破断し、第1樹脂層と第2樹脂層との間の分離は起こらなかった。
【0122】
これに対し、比較例1および比較例3は、異種素材接合体の製造過程でスチール基板と第1樹脂層との間の接合が形成されず、比較例2は、吸収用樹脂と第1樹脂層との間の接合が発生したものの、第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合は発生しなかった。また、比較例4は、スチール基板と第1樹脂層とのみ接合がなされ、第1樹脂層と第2樹脂層との間の接合は起こらず、前記比較例1~比較例4の異種素材接合体の接合強度を測定することができなかった。
【符号の説明】
【0123】
10:エッチング溝
20、20a、20b、20c、20d:突出部
30:表面領域
100:金属基材
210:第1樹脂層
220:第2樹脂層
300:レーザ吸収用樹脂
図1(A)】
図1(B)】
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D