(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】光電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
H01L31/04 262
(21)【出願番号】P 2017178369
(22)【出願日】2017-09-15
【審査請求日】2020-09-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発/CIS太陽電池モジュール高性能化技術の研究開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】米山 延孝
(72)【発明者】
【氏名】濱野 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】浅野 明彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】宮川 善秀
(72)【発明者】
【氏名】山浦 敏明
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-017277(JP,A)
【文献】特開平03-234066(JP,A)
【文献】特開2013-129867(JP,A)
【文献】国際公開第2005/081269(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0073536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層と、透明電極層である第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層との間の光電変換層と、を含む光電変換セルと、
前記光電変換セルにおいて第1方向に並んで前記第2電極
層側に設けられ、前記第1方向に交差する第2方向に延びるグリッド電極と、を有し、
前記グリッド電極は、複数の主グリッド電極と、互いに隣り合う前記主グリッド電極どうしの間に設けられたサブグリッド電極と、を含み、
前記第2方向に沿った前記サブグリッド電極の長さは、前記第2方向に沿った前記主グリッド電極の長さよりも短く、
前記主グリッド電極と前記サブグリッド電極は、前記第2電極
層に覆われている、光電変換モジュール。
【請求項2】
前記主グリッド電極と前記サブグリッド電極は、前記第1方向に所定パターンで繰り返し並んでいる、請求項1に記載の光電変換モジュール。
【請求項3】
前記透明電極層は、第1領域及び第2領域を含み、前記第1領域は、前記第2領域におけるシート抵抗よりも小さいシート抵抗、前記第2領域における膜厚よりも大きい膜厚、又は前記第2領域における透過率よりも小さい透過率を有し、前記第1領域において前記第1方向に互いに隣り合う前記主グリッド電極どうしの間に設けられた前記サブグリッド電極の数は、前記第2領域において前記第1方向に互いに隣り合う前記
主グリッド電極どうしの間に設けられた前記サブグリッド電極の数よりも小さい、請求項1に記載の光電変換モジュール。
【請求項4】
前記透明電極層は、第1領域及び第2領域を含み、前記第1領域は、前記第2領域におけるシート抵抗よりも小さいシート抵抗、前記第2領域における膜厚よりも大きい膜厚、又は前記第2領域における透過率よりも小さい透過率を有し、前記第1領域において前記第1方向に沿った前記サブグリッド電極の長さは、前記第2領域において前記第1方向に沿った前記サブグリッド電極の長さよりも短い、請求項1に記載の光電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッド電極を有する光電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光電変換セルを含む太陽電池モジュールのような光電変換モジュールが知られている(下記特許文献1)。特許文献1に記載されたような集積型薄膜光電変換モジュールでは、光電変換セルは、受光面に位置する透明電極層と、受光面とは反対側の面に位置する裏面電極層と、透明電極層と裏面電極層との間の光電変換層と、を有する。
【0003】
透明電極層の電気抵抗値は、一般に、金属からなる不透明の電極層の電気抵抗値よりも高い。したがって、光電変換によって生じた電流が透明電極層を流れる場合に、透明電極層の電気抵抗値に起因する電力のロスが発生する。この透明電極層での電力のロスを低減するため、透明電極層の上に細線状の金属からなるグリッド電極(集電電極)が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された光電変換モジュールでは、透明電極層に流れる電流がグリッド電極に集電されることで、透明電極層を流れる電流経路が短くなる。そのため、透明電極層の電気抵抗値に起因する電力のロスを低減できる。しかしながら、グリッド電極は、一般に非透明であるため、光電変換層へ入射する光を遮ることになる。したがって、光電変換層に到達する光の減少により、光電変換セルで発生する短絡電流(Isc)が小さくなる。
【0006】
よって、透明電極層の電気抵抗値に起因する電力のロスという課題と、グリッド電極による光の遮蔽に起因する短絡電流の低減という課題の両方のバランスをとることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る光電変換モジュールは、第1電極層と、透明電極層である第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層との間の光電変換層と、を含む光電変換セルと、前記光電変換セルにおいて第1方向に並んで前記第2電極層側に設けられ、前記第1方向に交差する第2方向に延びるグリッド電極と、を有し、前記グリッド電極は、複数の主グリッド電極と、前記第2方向に沿った前記主グリッド電極の長さよりも短い長さを有するサブグリッド電極と、を含み、前記サブグリッド電極は、互いに隣り合う前記主グリッド電極どうしの間に設けられ、前記主グリッド電極と前記サブグリッド電極は、前記第2電極層に覆われている。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、透明電極層の電気抵抗値に起因する電力のロスを抑制しつつ、グリッド電極による光の遮蔽に起因する短絡電流の低減を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る光電変換モジュールの模式的上面図である。
【
図2】
図1の領域2Rにおける光電変換モジュールの模式的上面図である。
【
図3】
図2の3A-3A線に沿った光電変換モジュールの模式的断面図である。
【
図4】
図2の領域4Rにおける光電変換モジュールの模式的斜視図である。
【
図5】
図1の5A-5A線に沿った光電変換モジュールの模式的断面図である。
【
図6】
図1の領域6Rにおける光電変換モジュールの模式的上面図である。
【
図7】第2実施形態に係る光電変換モジュールの模式的断面図である。
【
図8】第3実施形態に係る光電変換モジュールの模式的断面図である。
【
図9】第4実施形態に係る光電変換モジュールの模式的断面図である。
【
図10】第1変形例に係る第1グリッド電極と第2グリッド電極の連結部分の模式的上面図である。
【
図11】第2変形例に係る第1グリッド電極と第2グリッド電極の連結部分の模式的上面図である。
【
図12】第3変形例に係る第1グリッド電極と第2グリッド電極の連結部分の模式的上面図である。
【
図13】光電変換モジュールの製造方法におけるセル形成工程を示す模式的断面図である。
【
図14】第1グリッド電極を形成する第1グリッド形成工程を示す模式図である。
【
図15】第2グリッド電極を形成する第2グリッド形成工程を示す模式図である。
【
図16】配線を形成する工程の一ステップを示す模式図である。
【
図18】光電変換モジュールの一部を切除する工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光電変換モジュールの模式的上面図である。
図2は、
図1の領域2Rにおける光電変換モジュールの模式的上面図である。
図3は、
図2の3A-3A線に沿った光電変換モジュールの模式的断面図である。
図4は、
図2の領域4Rにおける光電変換モジュールの模式的斜視図である。
図5は、
図1の5A-5A線に沿った光電変換モジュールの模式的断面図である。
図6は、
図1の領域6Rにおける光電変換モジュールの模式的上面図である。
【0012】
なお、
図2及び
図6は、便宜上、後述する第2電極層24よりも下の層が透視的に描かれている。また、
図4は、光電変換セルの構造をわかり易くするため、便宜上、後述する第2電極層24は描かれていない。
【0013】
本実施形態に係る光電変換モジュール10は、基板20上に集積された複数の光電変換セル12を含む集積型の薄膜光電変換モジュールであってよい。好ましくは、光電変換モジュール10は、光エネルギーを電気的エネルギーに変換する太陽電池モジュールである。基板20は、例えばガラス、セラミックス、樹脂又は金属などによって構成されていてよい。
【0014】
光電変換セル12は、基板20の主面に直交する方向から見て、実質的に帯状の形状を有していてよい。各々の光電変換セル12は第1方向(図のY方向)に長く延びていてよい。また、複数の光電変換セル12は、第1方向に交差する第2方向(図のX方向)に並んでいる。互いに隣接する光電変換セル12は、第1方向に延びる分割部P1,P2,P3によって互いに分断されていてよい。
【0015】
各々の光電変換セル12は、少なくとも、第1電極層22と、第2電極層24と、光電変換層26と、を含んでいてよい。光電変換層26は、第1電極層22と第2電極層24との間に設けられる。第1電極層22は、光電変換層26と基板20との間に設けられている。第2電極層24は、光電変換層26に関して基板20とは反対側に位置する。
【0016】
本実施形態では、第2電極層24は透明電極層によって構成されていてよい。第2電極層24が透明電極層によって構成されている場合、光電変換層26へ入射、又は光電変換層26から出射する光は、第2電極層24を通過する。
【0017】
第2電極層24が透明電極層によって構成される場合、第1電極層22は、不透明電極層によって構成されていてもよく、透明電極層によって構成されていてもよい。CIS系の光電変換モジュールの一例では、VI族元素に対する耐腐食性の観点から、第1電極層22は、例えば、モリブデン、チタン又はクロムのような金属によって形成されることが好ましい。
【0018】
本実施形態では、好ましい一例として、第2電極層24は、n型半導体、より具体的には、n型の導電性を有し、禁制帯幅が広く、比較的低抵抗の材料によって形成される。第2電極層24は、例えば、III族元素を添加した酸化亜鉛(ZnO)や、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide: ITO)によって構成されていてよい。この場合、第2電極層24は、n型半導体と透明電極層の機能を兼ねることができる。
【0019】
光電変換層26は、例えば、p型の半導体を含んでいてよい。CIS系の光電変換モジュールの一例では、光電変換層26は、I族元素(Cu、Ag、Au等)、III族元素(Al、Ga、In等)及びVI族元素(O、S、Se、Te等)を含む化合物半導体で形成される。光電変換層26は、前述したものに限定されず、光電変換を起こす任意の材料によって構成されていてよい。
【0020】
光電変換セル12の構成は、上記態様に限定されず、様々な態様をとり得ることに留意されたい。例えば、光電変換セル12は、n型半導体とp型半導体の両方が第1電極層と第2電極層との間に挟まれた構成を有していてもよい。この場合、第2電極層はn型半導体によって構成されていなくてよい。また、光電変換セル12は、p-n結合型の構造に限らず、n型半導体とp型半導体との間に真性半導体層(i型半導体)を含むp-i-n結合型の構造を有していてもよい。
【0021】
互いに隣接する光電変換セル12の第1電極層22は、分割部P1によって互いに電気的に分断されている。同様に、互いに隣接する光電変換セル12の第2電極層24は、分割部P3によって互いに電気的に分断されている。互いに隣接する光電変換セル12の光電変換層26は、分割部P2,P3によって互いに分断されている。
【0022】
光電変換モジュール10は、互いに隣接する光電変換セル12どうしの間に電気接続部34を有していてよい。電気接続部34は、互いに隣接する光電変換セル12どうしを電気的に直列に接続する。
【0023】
電気接続部34は、第2分割部P2のところで光電変換モジュール10の厚み方向に延びることで、一方の光電変換セル12の第1電極層22と他方の光電変換セル12の第2電極層24とを互いに電気的に接続する。
【0024】
光電変換モジュール10は、各々の光電変換セル12において第1方向(図のY方向)に並んで設けられた複数の第1グリッド電極31を有する。各々の第1グリッド電極31は、第1方向に交差する第2方向(図のX方向)に延びている。第1グリッド電極31は、各々の光電変換セル12の光電変換層26と第2電極層24との間に設けられていてよい。第1グリッド電極31は、第2電極層24を構成する透明電極層よりも導電性の高い材料によって構成されていてよい。第1グリッド電極31は、この透明電極層に直接接していてよい。第2方向(図のY方向)における第1グリッド電極31の幅は、例えば5~100μmであってよい。第1グリッド電極31の厚みは、例えば0.1~20μmであってよい。
【0025】
必要に応じて、第1方向(図のY方向)に延びる第2グリッド電極32が、第2方向(図のX方向)における第1グリッド電極31の端部に設けられていてもよい。第2グリッド電極32は、第1グリッド電極31の一方の端部にて、第1グリッド電極31と連結されている。第1方向(図のX方向)における第2グリッド電極32の幅は、例えば5~200μmであってよい。第2グリッド電極32の厚みは、例えば0.1~20μmであってよい。
【0026】
第1グリッド電極31及び/又は第2グリッド電極32は、光電変換層26と第2電極層(透明電極層)24との間に設けられている。すなわち、第1グリッド電極31及び/又は第2グリッド電極32は、透明電極層によって覆われている。これにより、第1グリッド電極31及び/又は第2グリッド電極32の透明電極に対する接続不良を抑制することができる。したがって、第1グリッド電極31及び/又は第2グリッド電極32の集電能力の低下を抑制することができ、その結果、光電変換モジュールの変換効率の低下を抑制することができる。
【0027】
さらに、
図3に示すように、第1グリッド電極31及び/又は第2グリッド電極32は、厚み方向において光電変換層26から離れていることが好ましい。
図3に示す実施形態では、第1グリッド電極31及び/又は第2グリッド電極32は、厚み方向において透明電極層25を介して光電変換層26から離れている。すなわち、第1グリッド電極31及び/又は第2グリッド電極32は、厚み方向において、2つの透明電極層によって挟まれている。ここで、2つの透明電極層24,25は、同じ材料によって構成されていてよく、異なる材料によって構成されてもよい。本実施形態では、第1グリッド電極31及び/又は第2グリッド電極32が透明電極層に挟まれているため、第1グリッド電極31及び/又は第2グリッド電極32の透明電極に対する接続不良をより抑制することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、電気接続部34は、透明電極層25から連続する部分によって形成されている。この場合、電気接続部34は、透明電極層25と同じ材料から構成されていてよい。この代わりに、電気接続部34は、透明電極層25と異なる導電材料から構成されていてもよい。例えば、電気接続部34は、第1グリッド電極31又は第2グリッド電極32を構成する材料と同じ材料から構成されていてもよい。
【0029】
第1グリッド電極31と第2グリッド電極32(又は電気接続部34)との交点における第1グリッド電極31と第2グリッド電極32(又は電気接続部34)の少なくとも一方、好ましくは両方の厚みは、当該交点から離れた位置における第1グリッド電極31と第2グリッド電極32(又は電気接続部34)の厚みより厚いことが好ましい。例えば、第1グリッド電極31の厚みが、第1グリッド電極31と第2グリッド電極32(又は電気接続部34)との交点に向かうにつれて徐々に厚くなっていてよい。また、第2グリッド電極32(又は電気接続部34)の厚みが、第1グリッド電極31と第2グリッド電極32(又は電気接続部34)との交点に向かうにつれて徐々に厚くなっていてもよい。
【0030】
各々の光電変換セル12の光電変換層26に光が照射されると起電力が生じ、第1電極層22及び第2電極層24がそれぞれ正極及び負極となる。したがって、ある光電変換セル12で生じた自由電子の一部は、第2電極層24(及び透明電極層25)から電気接続部34を通って、隣接する光電変換セル12の第1電極層22に移動する。また、ある光電変換セル12で生じた自由電子の別の一部は、第2電極層24(及び透明電極層25)から第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32を介して電気接続部34を通り、隣接する光電変換セル12の第1電極層22に移動する。このように、光電変換セル12で生じた自由電子は、第2方向(図のX方向)に複数の光電変換セル12を通って流れることになる。
【0031】
光電変換モジュール10は、電力を光電変換モジュール10へ供給又は光電変換モジュール10から取り出すための配線50を有する。配線50は、第2方向(図のX方向)における光電変換モジュール10の端に位置する光電変換セル12に隣接して設けられていてよい。
【0032】
前述した複数の第1グリッド電極31は、主グリッド電極31aと、サブグリッド電極31bと、を含む。サブグリッド電極31bは、第1方向(Y方向)に互いに隣り合う主グリッド電極31aどうしの間に設けられている。サブグリッド電極31bは、第2方向(X方向)に沿った主グリッド電極31aの長さよりも短い長さを有する。主グリッド電極31aとサブグリッド電極31bは、第1方向(Y方向)に所定パターンにて並んでいてよい。また、主グリッド電極31aとサブグリッド電極31bのそれぞれは、第1方向に所定のピッチで並んでいてよい。
【0033】
第1方向(Y方向)において互いに隣り合う主グリッド電極31aどうしの間のサブグリッド電極31bの数は、特に制限されず、例えば1個であってもよく、複数個であってもよい。この場合、第1方向(Y方向)において互いに隣り合うサブグリッド電極31bの第2方向(X方向)に沿った長さは、互いに同じであってもよく(例えば
図2参照)、互いに異なっていてもよい(例えば
図6参照)。
【0034】
短いサブグリッド電極31bが長い主グリッド電極31aどうしの間に設けられることで、第1グリッド電極31の総数を減らすことなく、上面視で光電変換モジュール全体に占める第1グリッド電極31の面積比率(光電変換モジュールを平面視した場合の、単位面積あたりグリッド電極の面積密度)を下げることができる。これにより、透明電極層の電気抵抗値に起因する電力のロスという課題と、第1グリッド電極31による光の遮蔽に起因する短絡電流の低減という課題の両方のバランスをとることができる。
【0035】
本実施形態において、透明電極層24,25は、
図2に示すような領域2Rと、
図6に示すような領域6Rと、を含んでいてよい。本実施系形態では、領域2Rと領域6Rは、互いに異なる光電変換セル12内に配置されている。この代わりに、領域2Rと領域6Rは、同一の光電変換セル12内に配置されていてもよい。
【0036】
領域2Rにおいて第1方向(Y方向)に互いに隣り合う主グリッド電極31aどうしの間に設けられたサブグリッド電極31bの数は、領域6Rにおいて第1方向(Y方向)に互いに隣り合う第1グリッド電極31どうしの間に設けられたサブグリッド電極31bの数よりも小さい。ここで、透明電極層24,25の領域2Rは、領域6Rにおけるシート抵抗よりも小さいシート抵抗、領域6Rにおける膜厚よりも大きい膜厚、又は領域6Rにおける透過率よりも小さい透過率を有する。例えば、主グリッド電極31a間の間隔が一定の場合、シート抵抗が小さい領域ほど、主グリッド電極31a間に配置されるサブグリッド電極31bの数が小さい、言い換えれば、主グリッド電極31a間に配置されるサブグリッド電極31bの面積(光電変換モジュールを平面視した場合の面積)が小さくなってもよい。
【0037】
ここで、透明電極層24,25のシート抵抗、膜厚及び透過率は、それぞれ、第2電極層24を構成する透明電極層と透明電極層25とからなる積層体のシート抵抗、膜厚及び透過率によって規定される。ただし、後述するように、透明電極層25が存在しない場合には、上記の透明電極層24,25のシート抵抗、膜厚及び透過率は、それぞれ、第2電極層24を構成する透明電極層のみのシート抵抗、膜厚及び透過率によって読み替えることができる(以下同様)。
【0038】
透明電極層24,25のシート抵抗が小さい領域ほど、互いに隣り合う主グリッド電極31aどうしの間のサブグリッド電極31bの数を小さくする。これにより、透明電極層24,25のシート抵抗が小さい領域ほど、上面視で光電変換モジュール全体に占める第1グリッド電極31の面積比率(光電変換モジュールを平面視した場合の、単位面積あたりグリッド電極の面積密度)を下げることができる。したがって、透明電極層と第1グリッド電極31の両方を合わせた電気抵抗値の分布が均一に近づく。このように全体のシート抵抗を均一に近づけるとともに、不必要な領域において第1グリッド電極31の密度(光電変換モジュールを平面視した場合の、単位面積あたりグリッド電極の面積密度)を低くすることによって、透明電極層の電気抵抗値に起因する電力のロスという課題と、第1グリッド電極による光の遮蔽に起因する短絡電流の低減という課題の両方のバランスをとることができる。
【0039】
前述したサブグリッド電極31bの数に関する構成の代わりに、第1方向に隣り合う主グリッド電極31aどうしの間のサブグリッド電極31bの数が同一であってもよい。この場合、領域6Rにおいて第1方向(Y方向)に沿ったサブグリッド電極31bの長さは、領域2Rにおいて第1方向(Y方向)に沿ったサブグリッド電極31bの長さよりも長くてもよい。ここで、前述したように、領域2Rは、領域6Rにおけるシート抵抗よりも小さいシート抵抗、領域6Rにおける膜厚よりも大きい膜厚、又は領域6Rにおける透過率よりも小さい透過率を有することが好ましい。
【0040】
透明電極層24,25のシート抵抗が小さい領域ほどサブグリッド電極31bの長さを短くすることで、透明電極層24,25のシート抵抗が小さい領域ほど、上面視で光電変換モジュール全体に占める第1グリッド電極31の面積比率(光電変換モジュールを平面視した場合の、単位面積あたりグリッド電極の面積密度)を下げることができる。したがって、透明電極層と第1グリッド電極31の両方を合わせた電気抵抗値の分布が均一に近づく。このように全体のシート抵抗を均一に近づけるとともに、不必要な領域において第1グリッド電極31の密度(光電変換モジュールを平面視した場合の、単位面積あたりグリッド電極の面積密度)を低くすることによって、透明電極層の電気抵抗値に起因する電力のロスという課題と、第1グリッド電極による光の遮蔽に起因する短絡電流の低減という課題の両方のバランスをとることができる。
【0041】
また、一般には、透明電極層の膜厚が小さいほど、透明電極層のシート抵抗は高くなると考えられる。さらに、透明電極層の透過率が大きいほど、透明電極層のシート抵抗は高くなると考えられる。これは、透明電極層の透過率が大きい場合、一般には透明電極層の膜厚が小さい、又は透明電極層のキャリア濃度が低いためと考えられる。
【0042】
したがって、前述したように透明電極層の膜厚又は透過率に応じて、主グリッド電極31aどうしの間のサブグリッド電極31bの数、又は第2方向に沿ったサブグリッド電極31bの長さを変更することによっても、透明電極層と第1グリッド電極31の両方を合わせた電気抵抗値の分布が均一に近づけることができる。この場合であっても、全体のシート抵抗を均一に近づけるとともに、不必要な領域において第1グリッド電極31の密度を低くすることによって、透明電極層の電気抵抗値に起因する電力のロスという課題と、第1グリッド電極による光の遮蔽に起因する短絡電流の低減という課題の両方のバランスをとることができる。
【0043】
ここで、透明電極層の膜厚又は透過率は、製造ライン中において透明電極層のシート抵抗よりも容易に測定することができる。したがって、透明電極層の膜厚又は透過率に応じてサブグリッド電極31bの数又は長さを設定する場合、光電変換モジュール10の製造上のメリットが高い。
【0044】
上記の実施形態では、光電変換モジュール10が、主グリッド電極31aとサブグリッド電極31bのパターンが異なる複数の領域を有している。この代わりに、光電変換モジュール10の主グリッド電極31aとサブグリッド電極31bのパターンは、全領域において実質的に同一であってもよい。例えば透明電極層のシート抵抗が実質的にあまり変動しない場合には、同一の光電変換モジュール10内で主グリッド電極31aとサブグリッド電極31bのパターンを変える必要はない。
【0045】
図7は、第2実施形態に係る光電変換モジュールの模式的断面図である。以下、第1実施形態と同一の構成については、説明を省略することがある。第2実施形態に係る光電変換モジュールにおいて、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32は、第2電極層24上に設けられている。すなわち、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32は、第2電極層24によって覆われてはいない。
【0046】
図8は、第3実施形態に係る光電変換モジュールの模式的断面図である。以下、第1実施形態と同一の構成については、説明を省略することがある。第3実施形態に係る光電変換モジュールにおいて、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32は、第2電極層24に覆われている。さらに、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32は、厚み方向において光電変換層26から離れている。本実施形態では、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32は、厚み方向において第1バッファ層27aを介して光電変換層26から離れている。
【0047】
第1バッファ層27aは、第2電極層24と同じ導電型を有する半導体材料であってもよく、異なる導電型を有する半導体材料であってもよい。第1バッファ層27aは、第2電極層24よりも電気抵抗の高い材料によって構成されていればよい。CIS系の光電変換モジュールの一例では、第1バッファ層27aは、Zn系バッファ層、Cd系バッファ層又はIn系バッファ層であってよい。Zn系バッファ層は、例えばZnS、ZnO、Zn(OH)若しくはZnMgOや、これらの混晶又は積層体であってよい。Cd系バッファ層は、例えばCdS、CdO若しくはCd(OH)や、これらの混晶又は積層体であってよい。In系バッファ層は、例えばInS、InO若しくはIn(OH)や、これらの混晶又は積層体であってよい。
【0048】
図9は、第4実施形態に係る光電変換モジュールの模式的断面図である。第4実施形態に係る光電変換モジュールにおいて、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32は、第2電極層24に覆われている。第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32は、厚み方向において第1バッファ層27aを介して光電変換層26から離れている。さらに、光電変換セル12は、第2電極層24とグリッド電極31,32との間に第2バッファ層27bを有する。すなわち、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32は、厚み方向において第1バッファ層27aと第2バッファ層27bとの間に挟まれていてよい。
【0049】
第2バッファ層27bは、第2電極層24と同じ導電型を有する半導体材料であってもよく、異なる導電型を有する半導体材料であってもよい。CIS系の光電変換モジュールの一例では、第2バッファ層27bは、前述したようなZn系バッファ層、Cd系バッファ層又はIn系バッファ層であってよい。第2バッファ層27bを構成する材料は、第1バッファ層27aを構成する材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
図10は、第1変形例に係る第1グリッド電極31と第2グリッド電極32の連結部分の模式的上面図である。第1変形例において、第1方向(Y方向)における第1グリッド電極31の幅は、第2グリッド電極32に近づくにつれて広くなっている。具体的には、第1方向(Y方向)における第1グリッド電極31の幅は、第2グリッド電極32に近づくにつれて徐々に拡大している。
【0051】
これとは逆に、第2方向(X方向)における第2グリッド電極32の幅が、第1グリッド電極31に近づくにつれて徐々に拡大していてもよい。
【0052】
図11は、第2変形例に係る第1グリッド電極31と第2グリッド電極32の連結部分の模式的上面図である。第2変形例において、第1方向(Y方向)における第1グリッド電極31の幅は、第2グリッド電極32に近づくにつれて広くなっている。具体的には、第1方向(Y方向)における第1グリッド電極31の幅は、第2グリッド電極32に近づくにつれて段階的に拡大している。
【0053】
これとは逆に、第2方向(X方向)における第2グリッド電極32の幅が、第1グリッド電極31に近づくにつれて徐々に段階的に拡大していてもよい。
【0054】
第1変形例及び第2変形例では、第1グリッド電極31と第2グリッド電極32の連結部分の領域を大きくすることによって、第1グリッド電極31と第2グリッド電極32との連結部分における電気的な接続不良又は電気抵抗の増大を抑制することができる。
【0055】
図12は、第3変形例に係る第1グリッド電極31と第2グリッド電極32の連結部分の模式的上面図である。第3変形例において、第1グリッド電極31は、第2グリッド電極32に近づくとともに第1方向(Y方向)に曲がっている。このように第1グリッド電極31と第2グリッド電極32との連結箇所が曲がっていることにより、第1グリッド電極31に流れる電流が連結箇所で反射することを低減できる。
【0056】
また、他の変形例として、第1グリッド電極31は、第2グリッド電極32に近づくとともに厚みが大きくなってもよい。
【0057】
次に、
図13~
図18を参照し、一実施形態に係る光電変換モジュールを製造する方法について説明する。なお、
図13~
図18は、第1実施形態に係る光電変換モジュールを製造する方法を示している。以下の各ステップにおいて、各層は、スパッタ法や蒸着法などの成膜手段によって適宜形成することができる。
【0058】
まず、基板20上に、第1電極層22と、透明電極層25と、第1電極層22と透明電極層25との間の光電変換層26と、を含む帯状の光電変換セル12を形成する(セル形成工程)。具体的には、まず、基板20上に第1電極層22を構成する材料を形成する。第1電極層22を構成する材料は、複数の光電変換セル12にわたる領域に形成される。基板20及び第1電極層22の材料は、前述したとおりである。次に、第1電極層22を構成する材料の一部を細線状に除去することによって、第1電極層22を複数の帯状に成形するための第1分割部P1を形成する。第1電極層22を構成する材料の一部の除去は、レーザ又はニードルのような手段によって実施することができる。
【0059】
次に、第1電極層22上に光電変換層26を構成する材料を形成する。光電変換層26の材料は、前述したとおりである。この際、光電変換層26を構成する材料は、第1分割部P1内にも充填されてもよい。この代わりに、第1分割部P1内には、光電変換層26を構成する材料とは異なる、別の絶縁部材で充填されてもよい。次に、光電変換層26を構成する材料の一部を細線状に除去することによって、光電変換層26を複数の帯状に成形するための第2分割部P2を形成する。
【0060】
次に、光電変換層26上に透明電極層25を構成する材料を形成する。透明電極層25の材料は、前述したとおりである。透明電極層25を構成する材料は、第2分割部P2内にも充填されてもよい。第2分割部P2内にも充填された透明電極層25は、前述した電気接続部34を構成する。この代わりに、第2分割部P2内には、透明電極層25を構成する材料とは異なる、別の導電性材料で充填されてもよい。
【0061】
光電変換モジュールを製造する方法は、透明電極層24,25のシート抵抗、膜厚又は透過率を測定する工程を有していてよい。透明電極層24,25のシート抵抗は、例えば4端子法による抵抗測定器、又はホール効果を利用した抵抗測定器によって測定することができる。透明電極層24,25の膜厚は、例えば、分光光度計、光干渉式膜厚計、SEM(走査型電子顕微鏡)、段差計又はレーザ顕微鏡によって測定することができる。透明電極層の透過率は、例えば分光光度計によって測定することができる。
【0062】
ここで、透明電極層のシート抵抗、膜厚又は透過率の測定は、完成品として使用される光電変換モジュールに対して行われてもよく、完成品として使用されないダミーの光電変換モジュール、又はダミーのガラス基板に対して行われてもよい。光電変換モジュール10が大量生産される場合、同一の製造ライン(ロット)では、透明電極層のシート抵抗、膜厚又は透過率の分布は、製品間でほぼ同じになる。したがって、完成品として使用されない物、例えば基板20上に光電変換層26まで製膜された半製品、又は透明電極層が製膜されたダミーのガラス基板を取り出し、取り出された半製品、又はダミーのガラス基板に対して透明電極層のシート抵抗、膜厚又は透過率の測定を行ってもよい。これにより、同一の製造ライン(ロット)において製品として使用される光電変換モジュール10の透明電極層のシート抵抗、膜厚又は透過率を推定することができる。
【0063】
なお、本実施形態のように、完成品において透明電極層24,25が2層重なっている場合には、2層の透明電極層24,25全体のシート抵抗、膜厚又は透過率を測定又は推定すればよい。この代わりに、完成品において透明電極層としての第2電極層24が1層のみである場合には、1層の透明電極層24のシート抵抗、膜厚又は透過率を測定又は推定すればよい。
【0064】
光電変換モジュールを製造する方法は、セル形成工程の後に、グリッド電極31,32を形成するグリッド形成工程を有していてよい。グリッド形成工程は、第1グリッド形成工程と、第2グリッド形成工程と、を含んでいてよい。第1グリッド形成工程は、第2グリッド形成工程よりも前又は後のいずれのタイミングで実施されてもよい。また、第3分割部P3が形成される前に、グリッド形成工程を実施してもよい。
【0065】
第1グリッド形成工程では、光電変換セル12において第1方向(図のY方向)に並んで設けられ、第1方向に交差する第2方向(図のX方向)に延びる複数の第1グリッド電極31を形成する。第2グリッド形成工程では、前述したような第1方向(図のY方向)に延びる第2グリッド電極32を形成する。
【0066】
第1グリッド電極31及び/又は第2グリッド電極32は、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷又はフレキソ印刷によって形成することができる。以下では、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32が導電性インクの塗布、例えばインクジェット印刷により形成される場合における一例を
図14及び
図15を用いて説明する。
【0067】
導電性インク102は、銀や銅のような導電性粒子、有機溶剤、分散剤を含む導電性ペーストによって構成されていてよい。また、導電性インク102は、必要に応じてバインダを含んでいてもよい。導電性インク102は、ノズル100から吐出されることによって透明電極層25上に形成される。導電性インク102は、塗布された後に焼成されることが好ましい。導電性インク102の焼成により、有機溶剤や分散剤が気化し、導電性粒子が所定の塗布パターンで残存する。これにより、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32が形成される。
【0068】
本実施形態では、導電性インク102は透明電極層25上に配置された。この代わりに、前述した種々の実施形態に応じて、導電性インク102は、第1バッファ層27aの上に配置されてもよい。これらの例に限定されず、導電性インク102は、光電変換層26よりも上に配置されればよい。
【0069】
一例では、導電性インク102の焼成温度は、100℃~200℃の範囲であってよい。前述したCIS系の光電変換モジュールの場合、CIS系の光電変換モジュールを構成する光電変換セルの変質や破壊を抑制するため、導電性インク102の焼成温度は150℃以下であることが好ましい。導電性インク102の焼成は、大気(より好ましくはドライエア)又は窒素雰囲気下で行われることがより好ましい。焼成時間は、例えば5~60分の範囲であってよい。なお、導電性インクの焼成は、第2電極層24を形成するための加熱工程で行ってもよい。具体的には、第2電極層24をスパッタ法、MOCVD法、又はイオンプレーティング法で行う場合、加熱工程(予備加熱工程や製膜加熱工程)が存在する。この第2電極層24を形成する際の加熱工程は、100~200℃で行うため、この加熱工程において、導電性インクを焼成してもよい。
【0070】
好ましくは、第1グリッド形成工程において、1つの光電変換モジュール内で導電性インク102の塗布が開始される開始点S1は、光電変換モジュールの起電力に寄与しない非有効領域NERに位置する(
図14参照)。具体的には、
図14に示すように、インクジェットヘッドのノズル100を開始点S1から第2方向(X方向)に走査しつつ、ノズル100から導電性インク102を吐出することによって、第2方向に沿って導電性インク102が形成される。
【0071】
また、第2グリッド形成工程において、1つの光電変換モジュール内で導電性インク102の塗布が開始される開始点S2は、光電変換モジュールの起電力に寄与しない非有効領域NERに位置することが好ましい(
図15参照)。具体的には、
図15に示すように、インクジェットヘッドのノズル100を開始点S2から第1方向(Y方向)に走査しつつ、ノズル100から導電性インク102を吐出することによって、第2方向に沿って導電性インク102が形成される。
【0072】
ここで、前述した非有効領域NERは、製造の途中の段階、又は製品の完成後において、光電変換に寄与しない領域によって規定される。非有効領域NERは、例えば、少なくとも第2電極層24が切除された領域、光電変換に寄与する光電変換セル12から第1電極層22、光電変換層26及び第2電極層24の切除によって分離された光電変換に寄与しない領域、又は製造中の光電変換モジュール10から切除された領域であってよい。
【0073】
ここで、光電変換モジュールを大量生産する場合、開始点S1、S2にインクの塗布を開始する前に、導電性インク102の塗布をしない期間(リードタイム)が存在し得る。この期間に、導電性インク102が乾燥すると、開始点S1、S2に導電性インク102を正確に塗布できないことがある。本態様では、開始点S1、S2が非有効領域NERに位置するため、開始点S1、S2に導電性インク102が正確に塗布されなくても、光電変換モジュールの性能に影響を与えにくい。
【0074】
グリッド電極形成工程の後に、透明電極層25、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32上に、第2電極層24を構成する材料を形成する。第2電極層24の材料は、前述したとおりである。次に、第2電極層24、透明電極層25及び光電変換層26を構成する材料の一部を細線状に除去することによって、第2電極層24、透明電極層25及び光電変換層26を複数の帯状に成形するための第3分割部P3を形成する。
【0075】
具体的一例では、光電変換モジュールを製造する方法は、
図16に示すように、少なくとも第2電極層24及び透明電極層25、好ましくは第2電極層24、透明電極層25及び光電変換層26の一部を除去する工程を有していてよい。少なくとも第2電極層24及び透明電極層25が除去された領域は、非有効領域NERを構成する。導電性インク102の塗布が開始される開始点S1は、この非有効領域NERに位置していてよい。
【0076】
また、
図17に示すように、少なくとも第2電極層24及び透明電極層25が除去された領域に、前述した配線50を形成してもよい。この場合、少なくとも第2電極層24及び透明電極層25が除去された領域は、光電変換モジュール10の第2方向(X方向)の端部領域であってよい。
【0077】
具体的一例では、光電変換モジュールを製造する方法は、
図18に示すように、導電性インク102の塗布が開始される開始点S2を含む領域を切除する工程をさらに有していてよい。
【0078】
以上のようにして第1実施形態で説明した光電変換モジュール10が得られる。上記実施形態の
図16,17では、非有効領域NERに相当する箇所の少なくとも第2電極層24及び透明電極層25を除去した。本発明はこれに限らず、第2電極層24及び透明電極層25を除去せず、第2電極層24上に配線50を形成してもよい。この場合、配線50と、配線50に隣接する光電変換セル12との間に、非有効領域NERと光電変換に寄与する有効領域ERとを分割するための分割溝を形成すればよい。この分割溝は、例えば、第1電極層22、光電変換層26、透明電極層25及び第2電極層24を除去することによって形成できる。
【0079】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0080】
例えば、光電変換モジュール10は、不図示の透明の封止材によって封止されていてもよい。
【0081】
また、前述した実施形態では、第2電極層24が透明電極層によって構成されている。この代わりに、第1電極層22が透明電極層によって構成されていてもよい。この場合、第2電極層24は、透明電極層によって構成されていてもよく、不透明電極層によって構成されていてもよい。さらにこの場合、第1グリッド電極31及び第2グリッド電極32は、第1電極層22に隣接して設けられることが好ましい。この場合、基板20は透明基板によって構成されていてよい。
【0082】
また、本実施形態では、集積構造を有する(分割部P1~P3を有する)薄膜光電変換モジュールを例にとって説明したが、本発明はこれに限らず、集積構造を有さない、言い換えれば、分割部P1~P3を有さない光電変換モジュールにも適用可能である。
【0083】
また、本明細書における「第1」、「第2」、「第3」という用語は、本明細書内で各用語を区別するために使用されるものであり、明細書における「第1」、「第2」、「第3」という用語は、特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」という用語と必ずしも一致するわけではないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0084】
10 光電変換モジュール
12 光電変換セル
20 基板
22 第1電極層
24 第2電極層(n型半導体)
25 透明電極層
26 光電変換層(p型半導体)
31 第1グリッド電極
31a 主グリッド電極
31b サブグリッド電極
32 第2グリッド電極
50 配線