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特許7053256二次電池用負極合剤、二次電池用負極及び二次電池
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  • 特許-二次電池用負極合剤、二次電池用負極及び二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】二次電池用負極合剤、二次電池用負極及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20220405BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220405BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220405BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/62 Z
H01M4/587
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017254327
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019121483
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】江口 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】福地 巌
(72)【発明者】
【氏名】小泉 公
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 賢一
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-141677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマーバインダ、重合体粒子バインダ、及び負極活物質を含む二次電池用負極合剤であって、
前記水溶性ポリマーバインダ、前記重合体粒子バインダ、及び前記負極活物質の質量比は、これらの質量比の合計を100として、0.5~2.5:0.5~2.5:95~99であり、
前記水溶性ポリマーバインダは、カルボキシル基含有アクリルモノマーと、水溶性アクリル酸誘導体モノマーとの共重合体を含み、
前記水溶性アクリル酸誘導体モノマーの前記共重合体の総質量に対する質量%が10~40質量%であり、且つ前記共重合体1.0質量%水溶液の25℃におけるせん断粘度が、せん断速度1.0(1/s)において1.0(Pa・s)以上25(Pa・s)以下であって、
前記負極活物質は、XRDにより測定される六角網面面間隔d002が0.3354nm以上0.3362nm以下である黒鉛質粒子を含むことを特徴とする、二次電池用負極合剤。
【請求項2】
前記負極活物質は、前記黒鉛質粒子を前記負極活物質の総質量に対して15質量%以上100質量%以下含むことを特徴とする、請求項1記載の二次電池用負極合剤。
【請求項3】
前記黒鉛質粒子のラマン(Raman)分光のR値が0.01以上、0.2未満であり、
前記R値は、以下の数式(1)で示される
R=ID/IG (1)
R:前記R値
ID:1360cm-1付近で検出されるピーク強度ID
IG:1580cm-1付近で検出されるピーク強度IG
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項4】
前記黒鉛質粒子の平均粒子径D50が1μm以上、30μm未満であることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項5】
前記黒鉛質粒子は、水銀ポロシメータによる細孔径が3μm以上、10μm以下に相当する細孔を、0.7cc/g以下の容積比で含むことを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の負極合剤を含むことを特徴とする、二次電池用負極。
【請求項7】
密度1.6g/cmにプレスした場合の配向度が15以下であり、
前記配向度は、以下の数式(2)で示される
S=I(004)/I(110) (2)
S:前記配向度
I(110):XRDにより測定されるピーク強度I(110)
I(004):XRDにより測定されるピーク強度I(004)
であることを特徴とする、請求項6記載の二次電池用負極。
【請求項8】
請求項6または7に記載の二次電池用負極を含むことを特徴とする、二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用負極合剤、二次電池用負極及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているリチウムイオン(lithium ion)二次電池をはじめとする非水電解質二次電池は、ノート型パソコン(note PC)や携帯電話などのポータブル(portable)機器の電源として広く用いられている。近年では、これらの用途に加え、電気自動車やハイブリッド(hybrid)自動車等のxEV向けの需要も近年活発に伸びてきており、更なる需要拡大に大きな期待が寄せられている。
【0003】
xEV向けのリチウムイオン二次電池は、従来のガソリンエンジン(gasoline engine)車と同等の性能を確保するための高容量化や、長期の寿命特性が求められる。また更には、高いレベル(lebel)での安全性やガソリンエンジン車の給油時間と同等の時間内に充電を完了するための急速充電特性も強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-52940号公報
【文献】特開2012-018841号公報
【文献】特開2014-089834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
急速充放電特性について詳細に説明すると、リチウムイオン二次電池を急速充電した場合、高容量化および寿命特性が損なわれる可能性がある。具体的には、リチウムイオン二次電池の充電時には、正極活物質から放出されたリチウムイオンが負極活物質内へ挿入される。しかし、電池の能力以上の高い電流値で充電を行うと、負極活物質内へのリチウムイオンの挿入が間に合わず、金属リチウムとして析出してしまう場合がある。析出した金属リチウムは、一部が電解液と不可逆反応を起こしてリチウム化合物となり、その後充放電に関与しなくなる。その結果、電池の容量が低下し、規格の充電電流の範囲内で利用する場合よりも早く電池の容量が低下することとなる。すなわち、急速充電を行うと、充電にかかる時間を短く出来る反面、電池へダメージ(damage)が与えられ、二次電池としての寿命特性が損なわれることになる。このため、高い急速充放電特性を高めることが強く求められている。
【0006】
ところで、二次電池を高容量化するための技術として、負極活物質を構成する黒鉛質粒子の黒鉛化度を高めることが提案されている。黒鉛質粒子の黒鉛化度を高めることによって、負極の放電容量および負極密度を高めることができるので、二次電池の高容量化(具体的には、体積容量向上)に有効である。しかし、黒鉛化度を高めるほど負極活物質層内のイオン伝導性が低下し、急速充放電特性が低下するという問題があった。
【0007】
急速充放電特性を改善するための技術として、負極活物質層内のバインダ量を低減させることが提案されている。しかしながら、バインダ量を単に減らしただけでは、負極の剥離強度低下を招き、ひいては、寿命特性が低下するという問題が生じる。
【0008】
なお、特許文献3には、ケイ素含有単量体単位を含む水溶性重合体、粒子状バインダ、水およびケイ素含有化合物を含む活物質からなる二次電池負極用スラリー組成物が開示されている。しかしながら、特許文献3に開示された技術は、ケイ素含有化合物からなる活物質の分散を主目的とした水溶性重合体を規定したものであって、該重合体のイオン伝導性が不足し、急速充電性能は不十分なものであった。
【0009】
このように、黒鉛化度が高い黒鉛質粒子を使用した場合に、急速充放電特性及び寿命特性を向上することができる技術は提案されていなかった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、黒鉛化度が高い黒鉛質粒子を使用した場合であっても、急速充放電特性及び寿命特性を向上することが可能な、新規かつ改良された二次電池用負極合剤、二次電池用負極及び二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、水溶性ポリマーバインダ、重合体粒子バインダ、及び負極活物質を含む二次電池用負極合剤であって、水溶性ポリマーバインダ、重合体粒子バインダ、及び負極活物質の質量比は、これらの質量比の合計を100として、0.5~2.5:0.5~2.5:95~99であり、水溶性ポリマーバインダは、カルボキシル基含有アクリルモノマーと、水溶性アクリル酸誘導体モノマーとの共重合体を含み、水溶性アクリル酸誘導体モノマーの共重合体の総質量に対する質量%が10~40質量%であり、且つ共重合体1.0質量%水溶液の25℃におけるせん断粘度が、せん断速度1.0(1/s)において1.0(Pa・s)以上25(Pa・s)以下であって、負極活物質は、XRDにより測定される六角網面面間隔d002が0.3354nm以上0.3362nm以下である黒鉛質粒子を含むことを特徴とする、二次電池用負極合剤が提供される。
【0012】
本観点によれば、黒鉛化度が高い黒鉛質粒子を使用した場合であっても、急速充放電特性及び寿命特性を向上することが可能となる。
【0013】
ここで、負極活物質は、黒鉛質粒子を負極活物質の総質量に対して15質量%以上100質量%以下含んでいてもよい。
【0014】
この観点によれば、二次電池の特性がより向上する。
【0015】
ここで、黒鉛質粒子のラマン(Raman)分光のR値が0.01以上、0.2未満であってもよく、R値は、以下の数式(1)で示される。
R=ID/IG (1)
R:R値
ID:1360cm-1付近で検出されるピーク強度ID
IG:1580cm-1付近で検出されるピーク強度IG
【0016】
この観点によれば、二次電池の特性がより向上する。
【0017】
また、黒鉛質粒子の平均粒子径D50が1μm以上、30μm未満であってもよい。
【0018】
この観点によれば、二次電池の特性がより向上する。
【0019】
また、黒鉛質粒子は、水銀ポロシメータによる細孔径が3μm以上、10μm以下に相当する細孔を、0.7cc/g以下の容積比で含んでいてもよい。
【0020】
この観点によれば、二次電池の特性がより向上する。
【0021】
本発明の他の観点によれば、上記の負極合剤を含む二次電池用負極が提供される。
【0022】
本観点によれば、黒鉛化度が高い黒鉛質粒子を使用した場合であっても、急速充放電特性及び寿命特性を向上することが可能となる。
【0023】
ここで、密度1.6g/cmにプレスした場合の配向度が15以下であってもよく、配向度は、以下の数式(2)で示される。
S=I(004)/I(110) (2)
S:配向度
I(110):XRDにより測定されるピーク強度I(110)
I(004):XRDにより測定されるピーク強度I(004)
【0024】
この観点によれば、二次電池の特性がより向上する。
【0025】
本発明の他の観点によれば、上記の二次電池用負極を含むことを特徴とする、二次電池が提供される。
【0026】
本観点によれば、黒鉛化度が高い黒鉛質粒子を使用した場合であっても、急速充放電特性及び寿命特性を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明によれば、本観点によれば、黒鉛化度が高い黒鉛質粒子を使用した場合であっても、急速充放電特性及び寿命特性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】リチウムイオン二次電池の構成を概略的に示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
<1.リチウムイオン二次電池の構成>
まず、図1に基づいて、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10の構成について説明する。
【0031】
リチウムイオン二次電池10は、正極20と、負極30と、セパレータ40と、非水電解液とを備える。リチウムイオン二次電池10の充電到達電圧(酸化還元電位)は、例えば4.0V(vs.Li/Li)以上5.0V以下、特に4.2V以上5.0V以下となる。リチウムイオン二次電池10の形態は、特に限定されない。即ち、リチウムイオン二次電池10は、円筒形、角形、ラミネート(laminate)形、ボタン(button)形等のいずれであってもよい。
【0032】
(1-1.正極20)
正極20は、集電体21と、正極活物質層22とを備える。集電体21は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、アルミニウム(aluminium)、ステンレス(stainless)鋼、及びニッケルメッキ(nickel coated)鋼等で構成される。
【0033】
正極活物質層22は、少なくとも正極活物質を含み、導電剤と、正極用バインダとをさらに含んでいてもよい。正極活物質は、例えばリチウムを含む固溶体酸化物であるが、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出することができる物質であれば特に制限されない。固溶体酸化物は、例えば、LiMnCoNi(1.150≦a≦1.430、0.45≦x≦0.6、0.10≦y≦0.15、0.20≦z≦0.28)、LiMnCoNi(0.3≦x≦0.85、0.10≦y≦0.3、0.10≦z≦0.3)、LiMn1.5Ni0.5となる。
【0034】
導電剤は、例えばケッチェンブラック(Ketjenblack)、アセチレンブラック(acetylene black)等のカーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛等であるが、正極の導電性を高めるためのものであれば特に制限されない。
【0035】
正極用バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、エチレンプロピレンジエン(ethylene-propylene-diene)三元共重合体、スチレンブタジエンゴム(Styrene-butadiene rubber)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitrile-butadiene rubber)、フッ素ゴム(fluororubber)、ポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチレン(polyethylene)、ニトロセルロース(cellulose nitrate)等であるが、正極活物質及び導電剤を集電体21上に結着させることができるものであれば、特に制限されない。後述する負極用バインダを正極用バインダとしても良い。
【0036】
正極活物質層22は、例えば、以下の製法により作製される。すなわち、まず、正極活物質、導電剤、及び正極用バインダを乾式混合することで正極合剤を作製する。ついで、正極合剤を適当な有機溶媒に分散させることで正極合剤スラリー(slurry)を作製し、この正極合剤スラリーを集電体21上に塗工し、乾燥、圧延することで正極活物質層が作製される。
【0037】
(1-2.負極30)
負極30は、集電体31と、負極活物質層32とを含む。集電体31は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、及びニッケルメッキ鋼等で構成される。負極活物質層32は、少なくとも負極活物質(C)および負極用バインダを含む。
【0038】
負極活物質は、少なくとも黒鉛質粒子を含む。黒鉛質粒子は、粒子表面の少なくとも一部が黒鉛質であるものを指す。黒鉛質粒子としては、石炭系、石油系の生コークス、カルサインコークス、ニードルコークス(Coke, Car Sign coke, Needle coke)などのコークス類、メソフェーズ(Mesophase)小球体、バルクメソフェーズ(Bulk mesophase)などのメソフェーズカーボン類などの黒鉛前駆体を1500℃以上、好ましくは2800℃~3200℃で黒鉛化処理した人造黒鉛、鱗片状、塊状の天然黒鉛、鱗片状天然黒鉛を球形化粉砕、造粒球形化した球状天然黒鉛が例示される。これらは、化学的あるいは物理的な処理を施したものであってもよく、処理法として、粉砕、分級、造粒、積層、圧縮、複合、混合、被覆、酸化、蒸着、メカノケミカル(Mechano Chemical)処理、角取り、球形化、湾曲化、熱処理などが例示される。人造黒鉛の場合は黒鉛化処理前後のいずれにおいてもこれらの処理を組み合わせて行うことができる。本実施形態では、上記で説明された黒鉛質粒子のうち、以下の特性を有する黒鉛質粒子が使用される。負極活物質は、このような黒鉛質粒子を負極活物質の総質量に対して15質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましい。黒鉛質粒子の質量%が15質量%未満となる場合、後述する負極の配向度を15以下に抑えることや、負極の密度を1.6g/cm以上に高めることが難しくなる場合がある。質量%の上限値は特に制限されず、100質量%以下であってもよい。
【0039】
(1-3.黒鉛質粒子の黒鉛化度)
本実施形態に係る黒鉛質粒子は、XRDにより測定される六角網面面間隔d002が0.3362nm以下であるという特性を有する。
【0040】
ここで、六角網面面間隔d002は、黒鉛質粒子の黒鉛化度を示す指標であり、XRD(具体的には、粉末X線回折法)を用いた学振法により測定される。より具体的には、Si粉末による内部標準法により測定される。六角網面面間隔d002が小さいほど結晶が発達し(つまり、黒鉛化度が高く)、充放電容量が高く、軟質であると言える。六角網面面間隔d002が0.3362nm超の場合には、充放電容量が不足する、黒鉛質粒子が硬質のために負極活物質層32の密度を高めることができないなどの欠点を有する場合がある。
【0041】
六角網面面間隔d002は、0.3360nm以下であることが好ましい。六角網面面間隔d002の下限値は特に制限されず、黒鉛の理論値である0.3354nm以上であればよいが、0.3355nm以上であることが好ましい。
【0042】
(1-4.黒鉛質粒子の表面黒鉛化度)
黒鉛質粒子のラマン(Raman)分光のR値は、0.01以上、0.2未満であることが好ましい。ここで、R値は、1360cm-1付近で検出されるピーク強度IDと1580cm-1付近で検出されるピーク強度IGとの比(ID/IG)である。つまり、R値は、以下の数式(1)で示される。
R=ID/IG (1)
R:R値
ID:1360cm-1付近で検出されるピーク強度ID
IG:1580cm-1付近で検出されるピーク強度IG
【0043】
R値は、黒鉛質粒子の表面の結晶の発達状態(すなわち、表面の黒鉛化度)を示す指標である。R値が大きいほど、黒鉛質粒子表面の結晶が未発達であることを表す。R値が0.2以上の場合は、黒鉛質粒子が硬質となるために、負極活物質層32の密度を高めることができない、不可逆容量が大きいなどの欠点を有する場合がある。黒鉛質粒子の表面が炭素質材料で被覆されている場合には、R値が高くなり、一般に0.2以上1未満を示す。したがって、本実施形態に係る黒鉛質粒子は、炭素質材料で被覆されていないことが好ましい。もちろん、後述する実施例に示す通り、黒鉛質粒子は炭素質材料で被覆されていても良いが、二次電池の特性が低下する傾向がある。R値の上限値は、0.15未満であることが好ましく、下限値は0.03以上であることが好ましい。
【0044】
なお、R値は、例えば以下の方法で測定される。後述する実施例のR値は、この方法で測定された値である。すなわち、日本分光製レーザラマン分光測定装置(NRS-4100)を用いて、励起波長532nm、光出力20mW、ビーム径0.332mm、ビーム広がり角2.10mrad、露光時間10秒、積算回数10回の条件で、黒鉛質粒子1種につき10個の測定を行う。測定されたスペクトルから1360cm-1付近のピークの強度ID(非晶質成分由来)と1580cm-1付近のピークの強度IG(黒鉛成分由来)の比(ID/IG)を算出し、各測定値の算術平均値を求める。それをR値とする。
【0045】
(1-5.黒鉛質粒子の平均粒子径)
黒鉛質粒子の平均粒子径(D50)は、1μm以上、30μm未満であることが好ましい。平均粒子径D50は、例えばレーザ回折式粒度分布測定器により測定される。平均粒子径が1μm未満となる場合、黒鉛質粒子の外表面積が大きくなり、負極活物質層32の接着を保持するために過剰なバインダ量を必要とし、急速充電性能の低下を招くことがある。平均粒子径が30μm超となる場合には、黒鉛質粒子の反応面積が小さすぎ、急速充電性能の低下を招くことがある。黒鉛質粒子の平均粒子径の上限値は25μm以下であることが好ましく、下限値は3μm以上であることが好ましい。
【0046】
なお、平均粒子径は、例えば以下の方法で測定される。後述する実施例の平均粒子径は、この方法で測定された値である。すなわち、黒鉛質粒子を極小型スパーテル2杯分、及び非イオン性界面活性剤(トリトン-X;Roche Applied Science 製)2滴を水50mlに添加し、3分間超音波分散させる。この分散液をMicrotrac製レーザ回折式粒度分布測定器(MT3000)に投入し、体積基準累積50%の平均粒子径D50を測定する。
【0047】
(1-6.細孔容積)
黒鉛質粒子は、水銀ポロシメータ(Porosimeter)による細孔径が3μm以上、10μm以下に相当する細孔を、0.7cc/g以下の容積比で含むことが好ましい。容積比が0.7cc/gを超える場合、負極用バインダの黒鉛質粒子細孔内への吸収量が増え、負極の剥離強度の低下を生じることがある。容積比は、0.4cc/g以下であることがさらに好ましい。
【0048】
なお、容積比は、例えば以下の方法で測定される。後述する実施例の容積比は、この方法で測定された値である。すなわち、Quanta Chrome Co.製 Pore Master 60-GTを用い、10mmφ×30mmの0.5ccステム容器に黒鉛質粒子を充填し、細孔径400μm~0.0036μmに相当する圧力範囲にて細孔容積分布を求め、細孔径3μm以上、10μm以下の範囲における細孔容積を算出する。この細孔容積に基づいて、容積比を算出する。
【0049】
(1-6.他の成分)
負極活物質は、黒鉛質粒子とともに、本実施形態の効果を損なわない限り、他の活物質を含むものであってもよい。他の活物質としては、例えば、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素またはケイ素化合物、Li吸蔵能力を有する金属類、これらの複合物、混合物が例示される。
【0050】
(1-7.水溶性ポリマーバインダ(A))
負極用バインダは、水溶性ポリマーバインダ及び重合体粒子バインダを含む。水溶性ポリマーバインダは、カルボキシル基(carboxyl group)含有アクリルモノマー(acrylic monomer)と、水溶性アクリル酸(acrylic acid)誘導体モノマーとの共重合体を含む。ここで、水溶性アクリル酸誘導体モノマーの共重合体の総質量に対する質量%は、10~40質量%となる。さらに、共重合体1.0質量%水溶液の25℃におけるせん断粘度が、せん断速度1.0(1/s)において1.0(Pa・s)以上25(Pa・s)以下となる。
【0051】
水溶性ポリマーバインダは、上記のような特徴を有するので、高いイオン伝導性を有する。このため、リチウムイオン二次電池10の内部抵抗、具体的には負極抵抗が低減される。さらに、水溶性ポリマーバインダは、少量であっても十分に良好な密着性を有する。したがって、少量であっても負極作製用のスラリーを調整することができ、負極活物質層32内の構成要素同士を安定して結着することができる。この点でも、リチウムイオン二次電池10の内部抵抗、具体的には負極抵抗が低減される。さらに、電極の剥離や構造破壊による電子伝導性の低下が抑制されるので、リチウムイオン二次電池10の寿命が向上する。
【0052】
更には、低せん断速度域での粘度が高いため、負極合剤スラリーの分散安定性が良好となる。具体的には、負極合剤スラリーの粘性を適度に高めることができ、負極合剤スラリーを集電体31上に容易かつ安定して塗布することができる。さらに、負極合剤スラリー内での負極活物質の沈降を抑制することができる。せん断粘度が1.0(Pa・s)未満となる場合、負極合剤スラリーの粘度が低すぎて、集電体31上に十分な量の負極合剤スラリーを保持することが難しくなる。せん断粘度が25(Pa・s)を超える場合、共重合体の粘度が高すぎて、負極合剤スラリーを撹拌することが困難になる。つまり、負極活物質等が均等に分散した負極合剤スラリーを作製することができない。せん断粘度の好ましい上限値は10(Pa・s)以下である。
【0053】
ここで、共重合体1.0質量%水溶液の25℃におけるせん断粘度が、せん断速度1.0(1/s)において1.0(Pa・s)以上25(Pa・s)以下となるには、カルボキシル基含有アクリルモノマーと水溶性アクリル酸誘導体モノマーとを上記質量比で混合し、カルボキシル基含有アクリルモノマーのカルボキシル基を中和せずにこれらのモノマーを共重合させる必要がある。これにより、反応液粘度の過度な上昇を防ぎながら、高分子量の共重合体を合成することができる。具体的には、共重合体の高分子量化(すなわち、共重合反応の進行)に伴って徐々に共重合体が反応液から析出し、白色スラリー状となるため、反応液の粘度が過度に上昇することが無く、反応完了まで撹拌を継続できる。そして、このような共重合体によって、上記のせん断粘度を実現することができる。一方で、一部もしくは全部のカルボキシル基含有アクリルモノマーを中和した状態で上記モノマーを共重合させた場合、共重合体1.0質量%水溶液の25℃におけるせん断粘度が、低下する傾向にあり、せん断速度1.0(1/s)において1.0(Pa・s)未満となってしまう場合がある。
【0054】
ここで、カルボキシル基含有アクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、モノメチルマレイン酸、2-カルボキシエチルアクリレート、及び2-カルボキシエチルメタクリレート(Acrylic acid, methacrylic acid, maleic acid, monomethyl maleic acid, 2-carboxyethyl acrylate, and 2-carboxyethyl methacrylate)からなる群のうち、いずれか1種以上であることが好ましい。この場合、リチウムイオン二次電池10の特性がさらに向上する。
【0055】
水溶性アクリル酸誘導体モノマーは、エチレングリコール(Ethylene glycol)鎖含有アクリルモノマー(acrylic monomer)、及び水酸基含有アクリルモノマーからなる群より選ばれる少なくともいずれか一種であることが好ましい。この場合、リチウムイオン二次電池10の特性がさらに向上する。
【0056】
エチレングリコール鎖含有アクリルモノマーは、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチルアクリレート、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチルメタクリレート、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチルメタクリレート、及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(2-methoxyethyl acrylate,2-ethoxyethyl acrylate,2-(2-methoxyethoxy) ethyl acrylate,2-(2-ethoxyethoxy) ethyl acrylate, 2-(2-(2-methoxyethoxy) ethoxy) ethyl acrylate,2-(2-(2-methoxyethoxy) ethoxy) ethyl acrylate,methoxypolyethylene glycol acrylate,2-methoxyethyl methacrylate, 2-ethoxyethyl methacrylate, 2-(2-methoxyethoxy) ethyl methacrylate, 2-(2-ethoxyethoxy) ethyl methacrylate,2-(2-(2-methoxyethoxy) ethoxy) ethyl methacrylate,2-(2-(2-methoxyethoxy) ethoxy) ethyl methacrylate,and methoxypolyethylene glycol methacrylate)からなる群のうち、いずれか1種以上であることが好ましい。この場合、リチウムイオン二次電池10の特性がさらに向上する。
【0057】
水酸基含有アクリルモノマーは、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート(2-hydroxyethyl acrylate,2-hydroxypropyl acrylate,3-hydroxypropyl acrylate,2-hydroxybutyl acrylate,4-hydroxybutyl acrylate,2-hydroxyethyl methacrylate,2-hydroxypropyl methacrylate,3-hydroxypropyl methacrylate,2-hydroxybutyl methacrylate,4-hydroxybutyl methacrylate)からなる群のうち、いずれか1種以上であることが好ましい。この場合、リチウムイオン二次電池10の特性がさらに向上する。
【0058】
カルボキシル基含有アクリルモノマーの少なくとも一部が、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩であることが好ましい。この場合、リチウムイオン二次電池10の特性がさらに向上する。
【0059】
(1-8.重合体粒子バインダ(B))
重合体粒子バインダは、負極合剤スラリー(すなわち、負極合剤)において水中に粒子状となって分散し、また、負極活物質層32において負極活物質同士及び負極活物質と集電体31とを結着しうる成分である。重合体粒子バインダは粒子状なので、水溶性ポリマーバインダのイオン伝導性を阻害しにくい。
【0060】
重合体粒子バインダとしては、様々な重合体が使用できる。重合体粒子バインダの例としては、非水溶性の重合体が挙げられる。このような重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などが挙げられる。
【0061】
さらに、以下に例示する軟質重合体の粒子を、重合体粒子バインダとして使用してもよい。
【0062】
(i)ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体(Polybutyl acrylate, polybutyl methacrylate, polyhydroxyethyl methacrylate, polyacrylamide, polyacrylonitrile, butyl acrylate ・ styrene copolymer, butyl acrylate ・ acrylonitrile copolymer, butyl acrylate ・ acrylonitrile ・ glycidyl methacrylate copolymer)などの、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体である、アクリル系軟質重合体(ACL)
【0063】
(ii)ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体(Polyisobutylene, isobutylene ・ isoprene rubber, isobutylene ・ styrene copolymer)などのイソブチレン系軟質重合体
【0064】
(iii)ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・メタクリル酸共重合体、スチレン・ブタジエン・イタコン酸・2-ヒドロキシエチルアクリレート共重合体(polybutadiene, polyisoprene, a butadiene-styrene random copolymer, isoprene-styrene random copolymer, acrylonitrile-butadiene copolymer, acrylonitrile-butadiene-styrene copolymer, butadiene-styrene block copolymer, styrene-butadiene Styrene ・ block copolymer, isoprene ・ styrene ・ block copolymer, styrene ・ isoprene ・ styrene ・ block copolymer, styrene ・ butadiene ・ methacrylic acid copolymer, styrene ・ butadiene ・ itaconic acid ・ 2-hydroxyethyl acrylate Polymer)、などジエン系軟質重合体
【0065】
(iv)ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン(Dimethyl polysiloxane, diphenyl polysiloxane, dihydroxypolysiloxane)などのケイ素含有軟質重合体
【0066】
(v)液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(liquid polyethylene, polypropylene, poly-1-butene, ethylene ・ α-olefin copolymer, propylene ・ α-olefin copolymer, ethylene ・ propylene ・ diene copolymer (EPDM), ethylene ・ propylene ・ styrene copolymer)などのオレフィン系軟質重合体
【0067】
(vi)ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体(Polyvinyl alcohol, polyvinyl acetate, vinyl polystearate, vinyl acetate-styrene copolymer)などビニル系軟質重合体
【0068】
(vii)ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴム(Polyethylene oxide, polypropylene oxide, epichlorohydrin rubber)などのエポキシ系軟質重合体
【0069】
(viii)フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン-プロピレンゴム(Vinylidene fluoride rubber, tetrafluoroethylene-propylene rubber)などのフッ素含有軟質重合体
【0070】
(ix)天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(Natural rubber, polypeptide, protein, polyester thermoplastic elastomer, vinyl chloride thermoplastic elastomer, polyamide thermoplastic elastomer)などのその他の軟質重合体;などが挙げられる。これらの中でも、ジエン系軟質重合体及びアクリル系軟質重合体が好ましい。また、これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、変性により官能基を導入したものであってもよい。
【0071】
さらに、重合体粒子バインダは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0072】
重合体粒子からなるバインダの製造方法は特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの、いずれの方法を用いてもよい。中でも、水中で重合をすることができ、そのまま負極合剤スラリーの材料として使用できるので、乳化重合法および懸濁重合法が好ましい。また、重合体粒子バインダを製造する際、その反応系には分散剤を含ませることが好ましい。
【0073】
(1-9.質量比)
水溶性ポリマーバインダ、重合体粒子バインダ、及び負極活物質の質量比(固形分の質量比)は、これらの質量比の合計を100として、0.5~2.5:0.5~2.5:95~99である。水溶性ポリマーバインダ及び重合体粒子バインダの質量比がこの範囲より少ない場合には、負極30の剥離強度が不足し、負極30を裁断、巻き取る際に剥がれを生じることがあるほか、サイクル寿命の低下を引き起こすことがある。水溶性ポリマーバインダ及び重合体粒子バインダの質量比がこの範囲よりも多い場合には、イオン伝導性や電子伝導性が低下し、急速充電性能の低下を引き起こすことがある。
【0074】
(1-10.負極の密度)
負極30の密度は特に制限されないが、上述したように、負極活物質は黒鉛化度が高い黒鉛質粒子を含む。このため、負極30を高密度化、高容量化することができる。負極30の密度(固形分の密度)は、1.6g/cm以上であることが好ましい。
【0075】
(1-11.配向度)
負極30は、固形分の密度1.6g/cmにプレスした場合の配向度が15以下となることが好ましい。ここで、配向度は、X線回折装置(XRD)により測定されるピーク強度I(110)と、ピーク強度I(004)との比である。つまり、配向度は、以下の数式(2)で示される。
S=I(004)/I(110) (2)
S:配向度
I(110):XRDにより測定されるピーク強度I(110)
I(004):XRDにより測定されるピーク強度I(004)
【0076】
配向度が15超の場合には、負極活物質層32内において電解液の流動性の低下、充放電に伴う黒鉛質粒子の膨張収縮の増大などが顕著になり、急速充電性能やサイクル寿命の劣化を生じることがある。配向度は、10以下であることが好ましい。下限値は特に制限されない。
【0077】
なお、配向度は、例えば以下の方法で測定される。後述する実施例の配向度は、この方法により測定された値である。すなわち、負極合剤スラリー(負極合剤)を集電体である銅箔に塗装、乾燥後、これをプレスして負極活物質層32の密度を1.6g/cmに調整する。ついで、負極30を16mmφに打ち抜いてガラス板に貼りつけ、上記と同様のX回折測定による黒鉛結晶の(110)面に由来するピーク強度I(110)と、(004)面に由来するピーク強度I(004)との比I(004)/I(110)を算出する。ここでピーク強度I(110)は黒鉛結晶のab軸方向に由来し、ピーク強度I(004)はc軸方向に由来するものである。
【0078】
(1-12.セパレータ)
セパレータ40は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用されるものであれば、どのようなものであってもよい。セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する樹脂としては、例えばポリエチレン(polyethylene),ポリプロピレン(polypropylene)等に代表されるポリオレフィン(polyolefin)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate),ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)等に代表されるポリエステル(Polyester)系樹脂、PVDF、フッ化ビニリデン(VDF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロビニルエーテル(par fluorovinyl ether)共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン(trifluoroethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-フルオロエチレン(fluoroethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロアセトン(hexafluoroacetone)共重合体、フッ化ビニリデン-エチレン(ethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-プロピレン(propylene)共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロプロピレン(trifluoro propylene)共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)-ヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)共重合体、フッ化ビニリデン-エチレン(ethylene)-テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)共重合体等を挙げることができる。
【0079】
(1-13.非水電解液)
非水電解液は、従来からリチウム二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。非水電解液は、非水溶媒に電解質塩を含有させた組成を有する。非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(propylene carbonate)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、ブチレンカーボネート(ethylene carbonate)、クロロエチレンカーボネート(chloroethylene carbonate)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate)等の環状炭酸エステル(ester)類;γ-ブチロラクトン(butyrolactone)、γ-バレロラクトン(valerolactone)等の環状エステル類;ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate)等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル(methyl formate)、酢酸メチル(methyl acetate)、酪酸メチル(butyric acid methyl)等の鎖状エステル類;テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)またはその誘導体;1,3-ジオキサン(dioxane)、1,4-ジオキサン(dioxane)、1,2-ジメトキシエタン(dimethoxyethane)、1,4-ジブトキシエタン(dibutoxyethane)、メチルジグライム(methyl diglyme)等のエーテル(ether)類;アセトニトリル(acetonitrile)、ベンゾニトリル(benzonitrile)等のニトリル(nitrile)類;ジオキソラン(Dioxolane)またはその誘導体;エチレンスルフィド(ethylene sulfide)、スルホラン(sulfolane)、スルトン(sultone)またはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
また、電解質塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF,LiPF6-x(C2n+1[但し、1<x<6,n=1or2],LiSCN,LiBr,LiI,LiSO,Li10Cl10,NaClO,NaI,NaSCN,NaBr,KClO,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiN(CFSO)(CSO),LiC(CFSO,LiC(CSO,(CHNBF,(CHNBr,(CNClO,(CNI,(CNBr,(n-CNClO,(n-CNI,(CN-maleate,(CN-benzoate,(CN-phtalate、ステアリルスルホン酸リチウム(stearyl sulfonic acid lithium)、オクチルスルホン酸リチウム(octyl sulfonic acid)、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム(dodecyl benzene sulphonic acid)等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。なお、電解質塩の濃度は、従来のリチウム二次電池で使用される非水電解液と同様でよく、特に制限はない。本実施形態では、適当なリチウム化合物(電解質塩)を0.8~1.5mol/L程度の濃度で含有させた非水電解液を使用することができる。
【0081】
なお、非水電解液には、各種の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、負極作用添加剤、正極作用添加剤、エステル系の添加剤、炭酸エステル系の添加剤、硫酸エステル系の添加剤、リン酸エステル系の添加剤、ホウ酸エステル系の添加剤、酸無水物系の添加剤、及び電解質系の添加剤等が挙げられる。これらのうちいずれか1種を非水電解液に添加しても良いし、複数種類の添加剤を非水電解液に添加してもよい。
【0082】
<2.リチウムイオン二次電池の製造方法>
次に、リチウムイオン二次電池10の製造方法について説明する。正極20は、以下のように作製される。まず、正極活物質、導電剤、及び正極用バインダを上記の割合で混合したものを、溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン)に分散させることでスラリーを形成する。次いで、スラリーを集電体21上に塗布し、乾燥させることで、正極活物質層22を形成する。なお、塗布の方法は、特に限定されない。塗布の方法としては、例えば、ナイフコーター(knife coater)法、グラビアコーター(gravure coater)法等が考えられる。以下の各塗布工程も同様の方法により行われる。次いで、プレス(press)機により正極活物質層22を上記の範囲内の密度となるようにプレスする。これにより、正極20が作製される。
【0083】
負極30も、正極20と同様に作製される。まず、負極活物質、及び負極用バインダを混合したものを、溶媒(例えば水)に分散させることでスラリー(負極合剤スラリー)を形成する。なお、本実施形態では、負極合剤スラリーは、負極合剤(負極の材料(固形分)の混合物)が溶媒に分散したものである。次いで、スラリーを集電体31上に塗布し、乾燥させることで、負極活物質層32を形成する。乾燥時の温度は150℃以上が好ましい。次いで、プレス機により負極活物質層32を上記の範囲内の密度となるようにプレスする。これにより、負極30が作製される。
【0084】
次いで、セパレータ40を正極20及び負極30で挟むことで、電極構造体を作製する。次いで、電極構造体を所望の形態(例えば、円筒形、角形、ラミネート形、ボタン形等)に加工し、当該形態の容器に挿入する。次いで、当該容器内に非水電解液を注入することで、セパレータ40内の各気孔に電解液を含浸させる。これにより、リチウムイオン二次電池が作製される。
【0085】
以上により、本実施形態によれば、負極活物質は、黒鉛化度が高い黒鉛質粒子を使用するので、高容量化が期待できる。ただし、このような黒鉛質粒子を使用した場合、急速充放電特性及び寿命特性が低下する可能性がある。そこで、本実施形態では、上述した特徴を有する水溶性ポリマーバインダ及び重合体粒子バインダを使用する。水溶性ポリマーバインダは、少量であっても良好な密着性を有する。したがって、負極活物質層内のバインダ量を低減させることができるので、内部抵抗が低下し、急速充放電特性が向上する。さらに、水溶性ポリマーバインダ自身も高いイオン伝導性を有しているので、この点でも内部抵抗が低下し、ひいては急速充放電特性が向上する。水溶性ポリマーバインダは少量であっても高い密着性を有するので、剥離強度を高い値に維持することができ、寿命特性も向上する。
【実施例
【0086】
<1.水溶性ポリマーバインダ(A)の合成>
次に、本実施形態の実施例について説明する。まず、水溶性ポリマーバインダの合成例について説明する。なお、以下で記載するモノマーの配合比は、特に断らない限り質量比(質量%)を表すものとする。
【0087】
以下の工程により、ポリアクリル酸リチウム/ポリアクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル(2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート)=90/10を合成した。
【0088】
メカニカルスターラー、撹拌棒、温度計、冷却管を装着した2000mlの5つ口セパラブルフラスコ内に、蒸留水1150g、アクリル酸(90g,1.249mol)、アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル(10g,0.053mol)を加え、300rpmで撹拌を開始したのち、ダイヤフラムポンプで内圧を10mmHgに減圧し、窒素で内圧を常圧に戻す操作を3回繰り返した。加熱を開始し、反応液の温度が65℃になった時点で、開始剤の過硫酸アンモニウム(0.297g,0.00130mol)を蒸留水0.3mlに溶解し加えた。加熱温度を80℃に設定し2時間、更に温度を90℃に昇温し、2時間反応させたところ、白色スラリー状の固形物として重合体組成物が得られた。
【0089】
室温に冷却後、重合体組成物を10Lの容器に移し、希釈用蒸留水4077mlを加えた。メカニカルスターラーで撹拌しながら、水酸化リチウム1水和物(47.17g,アクリル酸に対して0.9当量)を加え、重合体組成物が完全に溶解し、均一になるまで撹拌した。
【0090】
反応液を5ml程度取り、不揮発分(NV)を測定したところ2.0%(理論値2.0%)であった。
【0091】
また、反応液を更に希釈し、不揮発分(NV)1%とした溶液の25℃におけるせん断粘度を測定したところ、せん断速度1.0(1/s)において7.6(Pa・s)であった。
【0092】
<2.負極活物質(C)の作製>
以下の工程により各実施例、比較例に係る負極活物質を作製した。
【0093】
(2-1.実施例1、2および比較例1~3)
コールタールピッチを窒素流通下に500℃で10時間焼成し、黒鉛前駆体を得た。これを粗粉砕したのち、ボールミルで角取り処理しながら粉砕し、平均粒子径D50を16μmに調整した。次いで、アルゴン雰囲気下、3000℃で5時間黒鉛化を行い、微粉を分級除去し、目開き53μmの篩にて篩処理を行った。
【0094】
得られた黒鉛質粒子は塊状であり、平均粒子径D50が15μm、D0が1.5μm、X線回折によるd002が0.3359nm、ラマン分光によるR値が0.05、細孔径3μm以上、10μm以下の細孔の容積比が0.06cc/gであった。
【0095】
(2-2.実施例3および比較例4)
石油系ニードルコークスをジェットミルで微粉砕し、平均粒子径D50を5μmに調整した。当該コークス微粉と同一質量のコールタールピッチ(残炭率60%)を加熱二軸ニーダーに投入し、200℃で1時間混練後、窒素流通下に480℃で10時間焼成し、黒鉛前駆体を得た。これを粗粉砕したのち、ボールミルで角取り処理しながら粉砕し、平均粒子径D50を18μmに調整した。次いで、アルゴン雰囲気下、3000℃で5時間黒鉛化を行い、微粉を分級除去し、目開き53μmの篩にて篩処理を行った。
【0096】
得られた黒鉛質粒子は板状の一次粒子が凝集した造粒型の塊状であり、平均粒子径D50が17μm、D0が1.5μm、X線回折によるd002が0.3358nm、ラマン分光によるR値が0.06、水銀ポロシメータによる細孔径3μm以上、10μm以下の容積比が0.65cc/gであった。
【0097】
(2-3.実施例4および比較例5)
平均粒子径22μmのメソフェーズ小球体焼成品をアルゴン雰囲気下、3000℃で5時間黒鉛化を行い、目開き53μmの篩にて篩処理を行った。
【0098】
得られた黒鉛質粒子は球状であり、平均粒子径D50が20μm、D0が4.5μm、X線回折によるd002が0.3361nm、ラマン分光によるR値が0.17、水銀ポロシメータによる細孔径3μm以上、10μm以下の容積比が0.03cc/gであった。
【0099】
(2-4.実施例2、3および比較例4)
平均粒子径52μmの鱗片状天然黒鉛を循環転動機構付きのピンミルで粉砕すると同時に折り曲げ、球状化処理を行い、平均粒子径D50が15μmの球状天然黒鉛を得た。当該球状天然黒鉛100質量部に、ノボラック型フェノール樹脂のエタノール溶液を残炭換算で1質量部加え、撹拌したのち、窒素雰囲気下、1000℃で3時間焼成を行い、目開き53μmの篩にて篩処理を行った。
【0100】
炭素質材料で被覆された球状の天然黒鉛が得られ、平均粒子径D50が15μm、D0が7μm、X線回折によるd002が0.3356nm、ラマン分光によるR値が0.32であった。
【0101】
(2-5.実施例5)
平均粒子径52μmの鱗片状天然黒鉛を循環転動機構付きのピンミルで粉砕すると同時に折り曲げ、球状化処理を行い、平均粒子径D50が15μmの球状天然黒鉛を得た。当該球状天然黒鉛100質量部に、平均粒子径D50が3μmのコールタールピッチ微粉を残炭換算で5質量部加え、混合したのち、窒素雰囲気下、1000℃で3時間焼成を行い、目開き53μmにて篩処理を行った。
【0102】
炭素質材料で被覆された球状の天然黒鉛が得られ、平均粒子径D50が15μm、D0が7μm、X線回折によるd002が0.3361nm、ラマン分光によるR値が0.28であった。
【0103】
<3.負極作製>
負極活物質、水溶性ポリマーバインダおよびスチレンブタジエン共重合体(SBR)(B)を表1に示す処方で混合し、水系負極合剤スラリーを作製した。なお、負極合剤スラリー中の不揮発分はスラリー総質量に対して50質量%であった。
【0104】
次いで、乾燥後の合剤塗工量(面密度)が11.5mg/cmになるようにバーコータのギャップを調整し、このバーコータにより負極合剤スラリーを銅箔(集電体、厚さ10μm)へ均一に塗工した。次いで、負極合剤スラリーを80℃に設定した送風型乾燥機で15分乾燥した。ついで、乾燥後の負極合剤をロールプレス機により、後述する真空乾燥後の合剤密度が1.6g/cmとなるようにプレスした。ついで、負極合剤を150℃で6時間真空乾燥することで、負極を作製した。
【0105】
<4.正極作製>
(正極合剤スラリーの作製)
固溶体酸化物Li1.20Mn0.55Co0.10Ni0.15 97.4質量%、ケッチェンブラック1.3質量%、ポリフッ化ビニリデン1.3質量%をN-メチル-2-ピロリドンに分散させることで、正極合剤スラリーを形成した。なお、正極合剤スラリー中の不揮発分はスラリー総質量に対して50質量%であった。
【0106】
次いで、乾燥後の合剤塗工量(面密度)が21.6mg/cmになるようにバーコータのギャップを調整し、このバーコータにより正極合剤スラリーを集電体であるアルミニウム集電箔上に塗工した。ついで、正極合剤スラリーを80℃に設定した送風型乾燥機で15分乾燥した。ついで、乾燥後の正極合剤をロールプレス機により合剤密度が3.7g/cmとなるようにプレスした。ついで、正極合剤を80℃で6時間真空乾燥することで、正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を作製した。
【0107】
<5.二次電池の作製>
負極を直径1.55cmの円形に、正極作製例で示した正極を直径1.3cmの円形に各々切断した。ついで、セパレータ(厚み25ミクロンのポリエチレン製微多孔膜)を直径1.8cmの円形に切断した。直径2.0cmのステンレス製コイン外装容器内で、直径1.3cmの円形に切断した正極、直径1.8cmの円形に切断したセパレータ、直径1.55cmの円形に切断した負極、さらにスペーサーとして直径1.5cmの円形に切断した厚さ200μmの銅箔をこの順番に重ね合わせた。ついで、容器に電解液(1.4MのLiPF エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/フルオロエチレンカーボネート=10/70/20混合溶液(体積比))を150μL加えた。ついで、ポリプロピレン製のパッキンを介して、ステンレス製のキャップを容器に被せ、コイン電池作製用のかしめ器で容器を密封した。これにより、リチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0108】
<6.急速充電性能およびサイクル寿命の評価>
各実施例及び比較例に係るリチウムイオン二次電池を25℃で、初回充放電のみ、4.2Vまで0.5CでCC充電し、cut-off 0.02CまでCV充電、次いで、2.8Vまで0.5CでCC放電した。
【0109】
その後、サイクル試験として、4.2Vまで3CでCC充電し、cut-off 0.02CまでCV充電、次いで、2.8Vまで0.5CでCC放電した。これを50回繰り返した。同様の測定をn=3で行った。
【0110】
比較例1の二次電池におけるサイクル試験初回の3C-CC充電容量の算術平均値を100とし、各実施例、比較例の同充電容量を相対値で示した(急速充放電特性)。また、比較例1の50回サイクル後の放電容量を100とし、各実施例、比較例の同サイクル回数の放電容量を相対値で示した(寿命特性)。
【0111】
<7.密着性の評価>
作製した負極を幅25mm、長さ100mmの短冊状に切り出した。ついで、両面テープを用いてステンレス板に活物質面を被着面として貼り合わせ、ピール強度試験用サンプルとした。剥離試験機((株)島津製作所社製SHIMAZU EZ-S)にピール強度試験用サンプルを装着し、180度ピール強度を測定した。以上の評価結果を表1にまとめて示す。
【0112】
【表1】
【0113】
表1から明らかな通り、実施例1~5では、高い密着性、急速充放電特性、寿命特性を得ることができた。また、黒鉛化度が高い黒鉛質粒子を使用しているので、高容量化も期待できる。
【0114】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0115】
10 リチウムイオン二次電池
20 正極
30 負極
40 セパレータ

図1