(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】ドーナツ生地フォーマー
(51)【国際特許分類】
A21C 11/16 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
A21C11/16 D
(21)【出願番号】P 2018052491
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】本田 聡
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02262485(US,A)
【文献】特開2003-265091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に開口を有するホッパと、
下部に下方ピストンヘッドを有し、前記ホッパに対して上下方向に往復移動して前記下方ピストンヘッドを前記ホッパの前記開口の内外に移動させる第1ロッド部材と、
前記下方ピストンヘッドの上方において前記第1ロッド部材の一部を
相対回転可能に収容し、外周面の一部に雄ネジ部が形成された
スリーブ部材と、
前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が内周面に形成されたスカート部材と、
を備えたことを特徴とするドーナツ生地フォーマー。
【請求項2】
前記スリーブ部材と前記第1ロッド部材とを互いに対して相対回転させる相対回転機構が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のドーナツ生地フォーマー。
【請求項3】
前記相対回転機構は、
前記ホッパに対して上下方向に往復移動する第2ロッド部材と、
前記第2ロッド部材の上部に設けられ、前記第1ロッド部材に向かう方向に突出する第1突部と、
前記第1ロッド部材の外周面に設けられ、前記第1突部に対して摺動移動自在に係合する第1螺旋溝と、
前記第2ロッド部材の下部に設けられ、前記スリーブ部材に向かう方向に突出する第2突部と、
前記スリーブ部材の外周面に設けられ、前記第2突部に対して摺動移動自在に係合する第2螺旋溝と、
を有している
ことを特徴とする請求項2に記載のドーナツ生地フォーマー。
【請求項4】
前記第2ロッド部材の下部には、前記スリーブ部材に対して摺動移動自在の上方ピストンが設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載のドーナツ生地フォーマー。
【請求項5】
前記第1ロッド部材及び前記第2ロッド部材は、クランクカム機構によって、互いに同一の周期で、互いに独立の往復運動をするようになっている
ことを特徴とする請求項3または4に記載のドーナツ生地フォーマー。
【請求項6】
底部に開口を有するホッパと、
下部に下方ピストンヘッドを有し、前記ホッパの前記開口を貫通し、前記ホッパに対して上下方向に往復移動する第1ロッド部材と、
を備えたドーナツ生地フォーマーにおいて用いられるスカート部品であって、
前記下方ピストンヘッドの上方において前記第1ロッド部材の一部を
相対回転可能に収容可能であって、外周面の一部に雄ネジ部が形成された
スリーブ部材と、
前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が内周面に形成されたスカート部材と、
を備えたことを特徴とするスカート部品。
【請求項7】
前記スリーブ部材の外周面には、
第2螺旋溝が形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載のスカート部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーナツを製造する際において、ドーナツ生地を自動的に環状のパターンに成形することができるドーナツ生地フォーマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツを製造する際、従来より、ドーナツ生地フォーマーを用いてドーナツ生地が自動的に環状のパターンに成形されている。ドーナツ生地フォーマーの構成としては、長年に亘って、特許文献1に開示された構成が採用されている。
【0003】
図11乃至
図15は、特許文献1の
図1乃至
図5に対応する図である。
図11は、ドーナツ生地フォーマーの部分断面図であり、
図12は、ホッパの底部の開口近傍の部分断面図であり、
図13は、第1ロッド部材の下部周辺の斜視図であり、
図14は、スカート部品の斜視図であり、
図15は、下方ピストンヘッドの斜視図である。
【0004】
図11及び
図12に示すように、従来のドーナツ生地フォーマーは、鉛直方向に延びるフレーム10を備えており、当該フレーム10の上端には、第1ロッド部材41を軸支する軸受12が設けられており、当該フレーム10の下端には、ホッパ20の下端を保持する保持リング13が設けられている。
【0005】
図11及び
図12に示すように、ホッパ20の下端は、円筒状のシリンダ部21となって下方に延在し、その後再び拡径してスカート部22となっている。フレーム10の保持リング13は、シリンダ部21を保持している。
【0006】
図11に示すように、シリンダ部21の内部に、下方ピストンヘッド30が収容されている。下方ピストンヘッド30は、
図15に示すように、放射状に配置されたバッフル31と、略環状の第1段部32と、環状の第2段部34と、ロッド係合穴35と、を有している。
【0007】
図11に示すように、第1ロッド部材41の下端部が、下方ピストンヘッド30のロッド係合穴35に結合されている。すなわち、第1ロッド部材41は、下端部において下方ピストンヘッド30を有している。
【0008】
また、
図11に示すように、第1ロッド部材41を軸方向固定に支持する(と共に後述する第2ロッド部材60、61を軸方向移動可能(遊嵌状態)に支持する)中間ブロック45は、ピン48及び当該ピン48が摺動する回動レバー49のスロット孔を介して、回動レバー49の回動によって上下方向に移動可能となっている。具体的には、回動レバー49の途中に、カム66によって位置決めされるカムフォロワ50が設けられており、当該カム66の回転がクランク53及びシャフト52によって起動されるようになっている。従って、クランク53及びシャフト52並びにカム66の作用によって、第1ロッド部材41はホッパ20に対して上下方向に所望の往復運動をするようになっている。
【0009】
また、
図13に示すように、下方ピストンヘッド30の上方において、第1ロッド部材41の一部を収容するスカート部品90が設けられている。
図14は、スカート部品90の斜視図である。
【0010】
図14に示すように、スカート部品90は、第1ロッド部材41の一部を収容する筒状のスリーブ部38と、下向きに斜めに延びる複数のフィンガ部37が形成された大径のスカート部36と、スリーブ部38とスカート部36とを接続する4枚のバッフル板39と、を有している。
【0011】
従来のドーナツ生地フォーマーにおいては、スリーブ部38とバッフル板39とスカート部36とが、SUS等の金属から構成されて、互いに溶接によって結合されている。
【0012】
スリーブ部38は、第1ロッド部材41に対して相対回転可能であるように、第1ロッド部材41の外径より僅かに大きい内径を有している。また、スカート部36は、
図11及び
図12に示すように、ホッパ20のシリンダ部21(開口)の内径よりも僅かに小さい外径を有している。
【0013】
また、
図13に示すように、スリーブ部38(スカート部品90)の上方において、第1ロッド部材41は拡径された下方カラー部42を有している。これにより、スリーブ部38は、第1ロッド部材41に対して軸方向には移動不可能となっている。
【0014】
更に、
図13に示すように、下方カラー部42の上方に補助円板43が設けられ、当該補助円板43の上方に、上方カラー部44が設けられている。後述する第2ロッド部材60、61は、補助円板43に軸方向移動可能(遊嵌状態)に支持されている。
【0015】
また、
図11乃至
図13に示すように、第1ロッド部材41と平行な一対の第2ロッド部材60、61の上端を軸方向固定に支持する(と共に第1ロッド部材41を軸方向移動可能(遊嵌状態)に支持する)上部ブロック62が、ピン63及び当該ピン63が摺動する回動レバー64のスロット孔を介して、回動レバー64の回動によって上下方向に移動可能となっている。具体的には、回動レバー64の途中に、カム66によって位置決めされるカムフォロワ65が設けられており、前述の通り、当該カム66の回転はクランク53及びシャフト52によって起動されるようになっている。従って、クランク53及びシャフト52並びにカム66の作用によって、第2ロッド部材60、61もホッパ20に対して上下方向に所望の往復運動をするようになっている。
【0016】
第1ロッド部材41の往復運動と第2ロッド部材60、61の往復運動とは、カム66の設計に応じて互いに独立の軌跡を実現できるが、周期は共通である。
【0017】
そして、上部ブロック62において、第1ロッド部材41に向かう方向に突出する第1突部73が設けられており、一方、第1ロッド部材41の外周面には、当該第1突部73に対して摺動移動自在に係合する第1螺旋溝72が設けられている。これにより、上部ブロック62(すなわち第2ロッド部材60、61)が第1ロッド部材41に対して相対的に上下移動する時、上部ブロック62(すなわち第2ロッド部材60、61)に対して第1ロッド部材41が第1螺旋溝72の溝パターンに応じて回転するようになっている。
【0018】
一方、
図13に示すように、第2ロッド部材60、61の下端を軸方向固定に支持する(と共にスリーブ部38(第1ロッド部材41)を軸方向移動可能(遊嵌状態)に支持する)下部ブロック40は、上方ピストン40として機能するべく、ホッパ20のシリンダ部21の内径より僅かに小さい外径の円板状になっている。
【0019】
そして、下部ブロック40(上方ピストン40)において、スリーブ部38に向かう方向に突出する第2突部71が設けられており、一方、スリーブ部38の外周面には、当該第2突部71に対して摺動移動自在に係合する第2螺旋溝70が設けられている。これにより、下部ブロック40(すなわち第2ロッド部材60、61)がスリーブ部38(すなわち第1ロッド部材41)に対して相対的に上下移動する時、上部ブロック62(すなわち第2ロッド部材60、61)に対してスリーブ部38が第2螺旋溝70の溝パターンに応じて回転するようになっている。
【0020】
図11に示すように、第1螺旋溝72と第2螺旋溝70とは逆方向に形成されているため、第2ロッド部材60、61が第1ロッド部材41に対して相対的に上下移動する時、第1ロッド部材41(下方ピストンヘッド30)とスリーブ部38とは逆方向に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
以上に説明した通り、従来のドーナツ生地フォーマーにおいては、スリーブ部38とバッフル板39とスカート部36とが、互いに溶接によって結合されている。この溶接結合によって十分な結合強度が実現され、長い装置寿命が実現されている。
【0023】
しかしながら、本件発明者は、ドーナツ生地フォーマーの改良について種々の検討を重ねる中で、従来のドーナツ生地フォーマーにおけるスカート部品90について、洗浄が困難であることを知見した。
【0024】
従来より、同一のドーナツ生地フォーマーを用いて、異なる原材料で異なるドーナツを製造することがある。そのような場合、原材料が混ざることを避けるべく、原材料を切り替える際にドーナツ生地フォーマーを洗浄している。
【0025】
その洗浄の際、従来のスカート部品90は、形態が複雑であるため、付着したドーナツ生地の剥離が完了するまでに手間と時間を要してしまうのである。
【0026】
本件発明者は、スリーブ部とスカート部とを分離可能及び再結合可能な構成として、これらを分離して洗浄作業を行い、洗浄作業後に再結合することによって、結果的に洗浄作業の効率を向上させることができる(洗浄時間を短縮することができ、洗浄水の量も削減することができる)ことを確認した。特に、スリーブ部とスカート部とを螺合する構成を採用することが有効であることを確認した。
【0027】
スカート部品90は、ドーナツ生地を押し出す部品であり、更に前述した通り、第1ロッド部材41(下方ピストンヘッド30)に対して相対回転する部品である。従って、従来は、複数の要素部材を螺合によって組み付けてスカート部品90を構成することについて、次第に螺合が緩んで故障を引き起こす可能性が懸念されていたと考えられる。
【0028】
しかしながら、同一のドーナツ生地フォーマーを用いて異なる原材料で異なるドーナツを製造する場合には、ドーナツ生地フォーマーの洗浄作業が高い頻度で実施されるから、洗浄作業(螺合の解除と再結合を伴う)の度毎に適切な螺合状態を確認することで前記の懸念を払拭することができると考えられる。
【0029】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、洗浄作業を容易に実施することができるドーナツ生地フォーマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、底部に開口を有するホッパと、下部に下方ピストンヘッドを有し、前記ホッパに対して上下方向に往復移動して前記下方ピストンヘッドを前記ホッパの前記開口の内外に移動させる第1ロッド部材と、前記下方ピストンヘッドの上方において前記第1ロッド部材の一部を相対回転可能に収容し、外周面の一部に雄ネジ部が形成されたスリーブ部材と、前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が内周面に形成されたスカート部材と、を備えたことを特徴とするドーナツ生地フォーマーである。
【0031】
本発明によれば、スリーブ部材とスカート部材とを互いに螺合可能な別個の要素部材としたことにより、これらを分離して洗浄作業を行い、洗浄作業後に再結合することによって、結果的に洗浄作業の効率を向上させることができる。具体的には、洗浄時間を短縮することができ、洗浄水の量も削減することができることが確認された。
【0032】
本発明において、前記スリーブ部材と前記第1ロッド部材とを互いに対して相対回転させる相対回転機構が設けられていることが好ましい。
【0033】
このように、スリーブ部材と第1ロッド部材(下方ピストンヘッドを伴う)とを互いに対して相対回転させる場合、ドーナツ生地の押し出しをよりスムーズに実施することができる。
【0034】
また、この場合、前記相対回転機構は、前記ホッパに対して上下方向に往復移動する第2ロッド部材と、前記第2ロッド部材の上部に設けられ、前記第1ロッド部材に向かう方向に突出する第1突部と、前記第1ロッド部材の外周面に設けられ、前記第1突部に対して摺動移動自在に係合する第1螺旋溝と、前記第2ロッド部材の下部に設けられ、前記スリーブ部材に向かう方向に突出する第2突部と、前記スリーブ部材の外周面に設けられ、前記第2突部に対して摺動移動自在に係合する第2螺旋溝と、を有していることが好ましい。
【0035】
このような相対回転機構が採用される場合、スリーブ部材と第1ロッド部材(下方ピストンヘッドを伴う)との互いに対する相対回転動作を安定的に実施することができる。
【0036】
また、前記第2ロッド部材の下部には、前記スリーブ部材に対して摺動移動自在の上方ピストンが設けられていることが好ましい。
【0037】
このような上方ピストンが採用される場合、当該上方ピストンによってドーナツ生地の下方ピストンヘッド側への連続的な送り出しが促されるため、結果的にドーナツ生地の押し出しを安定的に実施することができる。
【0038】
また、前記第1ロッド部材及び前記第2ロッド部材は、クランクカム機構によって、互いに同一の周期で、互いに独立の往復運動をするようになっていることが好ましい。
【0039】
この場合、第1ロッド部材の往復運動と第2ロッド部材の往復運動とについて、互いに独立の運動軌跡を設計することが容易である。
【0040】
また、本発明は、底部に開口を有するホッパと、下部に下方ピストンヘッドを有し、前記ホッパの前記開口を貫通し、前記ホッパに対して上下方向に往復移動する第1ロッド部材と、を備えたドーナツ生地フォーマーにおいて用いられるスカート部品であって、前記下方ピストンヘッドの上方において前記第1ロッド部材の一部を相対回転可能に収容可能であって、外周面の一部に雄ネジ部が形成されたスリーブ部材と、前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が内周面に形成されたスカート部材と、を備えたことを特徴とするスカート部品である。
【0041】
本発明によれば、スリーブ部材とスカート部材とを互いに螺合可能な別個の要素部材としたことにより、これらを分離して洗浄作業を行い、洗浄作業後に再結合することによって、結果的に洗浄作業の効率を向上させることができる。具体的には、洗浄時間を短縮することができ、洗浄水の量も削減することができることが確認された。
【0042】
前記ドーナツ生地フォーマーが、前記ホッパに対して上下方向に往復移動する第2ロッド部材と、前記第2ロッド部材の上部に設けられ、前記第1ロッド部材に向かう方向に突出する第1突部と、前記第1ロッド部材の外周面に設けられ、前記第1突部に対して摺動移動自在に係合する第1螺旋溝と、前記第2ロッド部材の下部に設けられ、前記スリーブ部材に向かう方向に突出する第2突部と、を更に備えている場合には、前記スリーブ部材の外周面には、前記第2突部に対して摺動移動自在に係合する第2螺旋溝が形成されていることが好ましい。
【0043】
これによれば、同一のスカート部材に対してスリーブ部材を交換することで、第2螺旋溝の溝パターンを容易に変更することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、スリーブ部材とスカート部材とを互いに螺合可能な別個の要素部材としたことにより、これらを分離して洗浄作業を行い、洗浄作業後に再結合することによって、結果的に洗浄作業の効率を向上させることができる。具体的には、洗浄時間を短縮することができ、洗浄水の量も削減することができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の一実施形態に係るドーナツ生地フォーマーの部分断面図である。
【
図2】
図1のホッパの底部の開口近傍の部分断面図である。
【
図3】本実施形態の第1ロッド部材の下部周辺の斜視図である。
【
図4】本実施形態のスカート部品(スリーブ部材とスカート部材とを含む)の斜視図である。
【
図5】本実施形態の下方ピストンヘッドの斜視図である。
【
図8】スリーブ部材の第2螺旋溝の一例を示す概略図である。
【
図9】スリーブ部材の第2螺旋溝の他の一例を示す概略図である。
【
図10】スリーブ部材の第2螺旋溝の更に他の一例を示す概略図である。
【
図11】従来のドーナツ生地フォーマーの部分断面図である。
【
図12】
図11のホッパの底部の開口近傍の部分断面図である。
【
図13】従来の第1ロッド部材の下部周辺の斜視図である。
【
図15】従来の下方ピストンヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態に係るドーナツ生地フォーマーの部分断面図であり、
図2は、
図1のホッパの底部の開口近傍の部分断面図である。また、
図3は、本実施形態の第1ロッド部材の下部周辺の斜視図であり、
図4は、本実施形態のスカート部品(スリーブ部材とスカート部材とを含む)の斜視図であり、
図5は、本実施形態の下方ピストンヘッドの斜視図である。
【0048】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のドーナツ生地フォーマー100は、従来のドーナツ生地フォーマーと略同様に、鉛直方向に延びるフレーム110を備えており、当該フレーム110の上端には、第1ロッド141を軸支する軸受112が設けられており、当該フレーム110の下端には、ホッパ120の下端を保持する保持リング113が設けられている。
【0049】
図1及び
図2に示すように、ホッパ120の下端は、円筒状のシリンダ部121となって下方に延在し、その後再び拡径してスカート部122となっている。フレーム110の保持リング113は、シリンダ部121を保持している。
【0050】
図1に示すように、シリンダ部121の内部に、下方ピストンヘッド130が収容されている。下方ピストンヘッド130は、
図5に示すように、放射状に配置されたバッフル131と、略環状の第1段部132と、環状の第2段部134と、ロッド係合穴135と、を有している。
【0051】
図1に示すように、第1ロッド部材141の下端部が、下方ピストンヘッド130のロッド係合穴135に結合されている。すなわち、第1ロッド部材141は、下端部において下方ピストンヘッド130を有している。
【0052】
また、
図1に示すように、第1ロッド部材141を軸方向固定に支持する(と共に後述する第2ロッド部材160、161を軸方向移動可能(遊嵌状態)に支持する)中間ブロック145は、ピン148及び当該ピン148が摺動する回動レバー149のスロット孔を介して、回動レバー149の回動によって上下方向に移動可能となっている。具体的には、回動レバー149の途中に、カム166によって位置決めされるカムフォロワ150が設けられており、当該カム166の回転がクランク153及びシャフト152によって起動されるようになっている。従って、クランク153及びシャフト152並びにカム166の作用によって、第1ロッド部材141はホッパ120に対して上下方向に所望の往復運動をするようになっている。
【0053】
また、
図3に示すように、下方ピストンヘッド130の上方において、第1ロッド部材141の一部を収容するスカート部品190が設けられている。
図4は、スカート部品190の斜視図である。
【0054】
図4に示すように、スカート部品190は、第1ロッド部材141の一部を収容する筒状のスリーブ部材138を有している。当該スリーブ部材138の外周面の一部に、雄ネジ部138tが形成されている。一方、概ね平坦な環状の部材であるスカート部材136が、内周面において前記雄ネジ部138tに対応する雌ネジ部136tを有している。そして、雄ネジ部138tと雌ネジ部136tとが螺合することによって、スリーブ部材138とスカート部材136とが結合されている。
【0055】
スカート部材136には、下向きに斜めに延びる複数のフィンガ部137が形成されている。また、スカート部材136には、ドーナツ生地の通過を許容するための4つの貫通路139pが形成されている。
図6は、本実施形態のスカート部材136の平面図である。隣接する貫通路139pの間には、隔壁部139が残存している。
【0056】
本実施形態においては、スリーブ部材138もスカート部材136も、SUS等の金属から構成されている。
【0057】
スリーブ部材138は、第1ロッド部材141に対して相対回転可能であるように、第1ロッド部材141の外径より僅かに大きい内径を有している。また、スカート部材136は、
図1及び
図2に示すように、ホッパ120のシリンダ部121(開口)の内径よりも僅かに小さい外径を有している(例えばφ15/8インチ(φ47.5mm):1/8刻みで設計され、最大はφ18/8インチ=φ9/4インチ)。
【0058】
また、
図3に示すように、スリーブ部材138(スカート部品190)の上方において、第1ロッド部材141は拡径された下方カラー部142を有している。これにより、スリーブ部材138(スカート部品190)は、第1ロッド部材141に対して軸方向には移動不可能となっている。
【0059】
更に、
図3に示すように、下方カラー部142の上方に補助円板143が設けられ、当該補助円板143の上方に、上方カラー部144が設けられている。後述する第2ロッド部材160、161は、補助円板143に軸方向移動可能(遊嵌状態)に支持されている。もっとも、補助円板143は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0060】
また、
図1乃至
図3に示すように、第1ロッド部材141と平行な一対の第2ロッド部材160、161の上端を軸方向固定に支持する(と共に第1ロッド部材141を軸方向移動可能(遊嵌状態)に支持する)上部ブロック162が、ピン163及び当該ピン163が摺動する回動レバー164のスロット孔を介して、回動レバー164の回動によって上下方向に移動可能となっている。具体的には、回動レバー164の途中に、カム166によって位置決めされるカムフォロワ165が設けられており、前述の通り、当該カム166の回転はクランク153及びシャフト152によって起動されるようになっている。従って、クランク153及びシャフト152並びにカム166の作用によって、第2ロッド部材160、161もホッパ120に対して上下方向に所望の往復運動をするようになっている。
【0061】
第1ロッド部材141の往復運動と第2ロッド部材160、161の往復運動とは、カム166の設計に応じて互いに独立の軌跡を実現できるが、周期は共通である。
【0062】
そして、上部ブロック162において、第1ロッド部材141に向かう方向に突出する第1突部173が設けられており、一方、第1ロッド部材141の外周面には、当該第1突部173に対して摺動移動自在に係合する第1螺旋溝172が設けられている。これにより、上部ブロック162(すなわち第2ロッド部材160、161)が第1ロッド部材141に対して相対的に上下移動する時、上部ブロック162(すなわち第2ロッド部材160、161)に対して第1ロッド部材141が第1螺旋溝172の溝パターンに応じて回転するようになっている。
【0063】
一方、
図3に示すように、第2ロッド部材160、161の下端を軸方向固定に支持する(と共にスリーブ部材138(第1ロッド部材141)を軸方向移動可能(遊嵌状態)に支持する)下部ブロック140は、上方ピストン140として機能するべく、ホッパ120のシリンダ部121の内径より僅かに小さい外径の円板状になっている。
【0064】
そして、下部ブロック140(上方ピストン140)において、スリーブ部材138に向かう方向に突出する第2突部171が設けられており、一方、スリーブ部材138の外周面には、当該第2突部171に対して摺動移動自在に係合する第2螺旋溝170が設けられている。これにより、下部ブロック140(すなわち第2ロッド部材160、161)がスリーブ部材138(すなわち第1ロッド部材141)に対して相対的に上下移動する時、上部ブロック162(すなわち第2ロッド部材160、161)に対してスリーブ部材138が第2螺旋溝170の溝パターンに応じて回転するようになっている。
【0065】
図1に示すように、第1螺旋溝172と第2螺旋溝170とは逆方向に形成されているため、第2ロッド部材160、161が第1ロッド部材141に対して相対的に上下移動する時、第1ロッド部材141(下方ピストンヘッド130)とスリーブ部材138とは逆方向に回転するようになっている。
【0066】
次に、以上のように構成された本実施形態のドーナツ生地フォーマー100の作用について説明する。
【0067】
初期状態においては、下方ピストンヘッド130がホッパ120のシリンダ部121内に位置するように、第1ロッド部材141が位置決めされている。
図1は、この状態を図示している。この状態で、ホッパ120の内部に、ドーナツ生地が投入される。ホッパ120のシリンダ部121(開口)と下方ピストンヘッド130との間の隙間は小さいので、この状態でドーナツ生地が下方に流れ出ることはない。
【0068】
そして、クランク153及びシャフト152並びにカム166の作用によって、第1ロッド部材141がホッパ120に対して下方に移動する。これに伴って、下方ピストンヘッド130がホッパ120の開口よりも下方へと移動する。また、これに伴ってスカート部材138も下方へと移動し、フィンガ部137の付け根がホッパ120のシリンダ部121よりも所定距離だけ下方の位置に至る。
図2は、この状態を図示している。
【0069】
図2に示すように、この下降工程の際、第2ロッド部材160、161の下端を支持する下部ブロック140が上方ピストンとして機能して、当該下部ブロック140の下方にあったドーナツ生地を下方ピストンヘッド130に向けて送り出す。これにより、ドーナツ生地は、フィンガ部137と下方ピストンヘッド130との間の隙間、及び、隣接するフィンガ部137同士の隙間から、径方向外方へと押し出される。
【0070】
一方、本実施形態では、第1ロッド部材141が下降する際、第2ロッド部材160、161に対しても相対移動して、第1突部173と第1螺旋溝172との係合のために第1ロッド部材141(下方ピストンヘッド130(のバッフル131)を伴う)が一方向に回転し、第2突部171と第2螺旋溝170との係合のためにスリーブ部材138(スカート部材136(のフィンガ部137)を伴う)が逆方向に回転する。これらの回転動作により、前記隙間から押し出されるドーナツ生地に、捩り模様が付される。
【0071】
次に、クランク153及びシャフト152並びにカム166の作用によって、第1ロッド部材141がホッパ120に対して上方に戻る(
図1参照)。これに伴って、下方ピストンヘッド130及びスカート部材138もホッパ120の開口内に戻る。これに伴って、前記隙間から径方向外方へと押し出されていたドーナツ生地がシリンダ部121の下端によって切断され、環状に分離されてホッパ120の下方に落下する。(ホッパ120の下方には、例えばドーナツ生地を揚げるための油槽が設置されている。)この時、下方ピストンヘッド130の2つの段部132、134が、ドーナツ生地の円滑な成形及び切断に寄与する。
【0072】
また、下部ブロック140は、ホッパ120のシリンダ部121の上方まで上昇する。これにより、ホッパ120内のドーナツ生地が下部ブロック140の下方へと補充される。
【0073】
その後、再び第1ロッド部材141が下降して、ドーナツの成形及び切断が連続的に繰り返される。
【0074】
なお、第1ロッド部材141の上下移動(往復移動)の際、補助円板143も上下移動(往復移動)して、ホッパ120内のドーナツ生地の移動(下方ピストンヘッド130側への補充)を促す。
【0075】
本実施形態のスカート部品190は、互いに分離可能なスリーブ部材138とスカート部材136とによって構成されている。しかしながら、それらは堅固に螺合されているため、ドーナツの成形及び切断のための前述の各工程において、何ら支障がない。
【0076】
一方、異なる原材料で異なるドーナツを製造する際には、原材料が混ざることを避けるべく、ドーナツ生地フォーマー100が洗浄される。本実施形態のスカート部品190は、洗浄作業を実施する際、スリーブ部材138とスカート部材136とに分離され得る。そして、スリーブ部材は、概ねシンプルな筒状部材であり、スカート部材も、概ね平坦な環状部材であるから、それぞれの洗浄作業が極めて容易である。
【0077】
本件発明者の検証によれば、スリーブ部材138とスカート部材136とを分離して洗浄作業を行い、洗浄作業後に再結合することによって、洗浄時間を短縮することができ、洗浄水の量も削減することができた。
【0078】
また、スリーブ部材138とスカート部材136との分離及び再結合の作業についても、スリーブ部材138の外周面の雄ネジ部138tとスカート部材136の内周面の雌ネジ部136tとの螺合が採用されているため、工具を要することなく、手作業で極めて容易に実施することができる。
【0079】
その他、本実施形態のドーナツ生地フォーマー100によれば、ホッパ120に対して上下方向に往復移動する第2ロッド部材160、161と、第2ロッド部材160、161の上部を支持する上部ブロック162に設けられ第1ロッド部材141に向かう方向に突出する第1突部173と、第1ロッド部材141の外周面に設けられ第1突部173に対して摺動移動自在に係合する第1螺旋溝172と、第2ロッド部材160、161の下部を支持する下部ブロック140に設けられスリーブ部材138に向かう方向に突出する第2突部171と、スリーブ部材138の外周面に設けられ第2突部171に対して摺動移動自在に係合する第2螺旋溝170と、を有していることにより、スリーブ部材138と第1ロッド部材141(下方ピストンヘッド130を伴う)との互いに対する相対回転動作を安定的に実施することができる。
【0080】
また、本実施形態のドーナツ生地フォーマー100によれば、第2ロッド部材160、161の下部に、スリーブ部材138に対して摺動移動自在の上方ピストン140が設けられていることにより、当該上方ピストン140によってドーナツ生地の下方ピストンヘッド130側への連続的な送り出しが促される。これにより、結果的にドーナツ生地の押し出しを安定的に実施することができる。
【0081】
また、本実施形態のドーナツ生地フォーマー100によれば、第1ロッド部材141及び第2ロッド部材160、161は、クランク153及びカム166を含むクランクカム機構によって、互いに同一の周期で、互いに独立の往復運動をするようになっているため、第1ロッド部材141の往復運動と第2ロッド部材160、161の往復運動とについて、互いに独立の運動軌跡を設計することが容易である。
【0082】
なお、以上に説明した本実施形態のドーナツ生地フォーマー100は、スカート部材136及びスリーブ部材138の各々を独立に交換することができる。
【0083】
例えば、フィンガ部137のパターンを変更して、ドーナツに付する模様を変更することも容易である。更に、貫通路139pのパターンについても変更可能である。
図7は、貫通路139pを8個の円形孔(例えばφ11)で形成した場合のスカート部材の平面図である。
【0084】
一方、スリーブ部材138を交換することで、第2螺旋溝170のパターンを変更することができ、スリーブ部材138の回転の程度を変更することができる。
図8乃至
図10は、スリーブ部材138の第2螺旋溝170の例を図示している。
図8の第2螺旋溝170aは、153.6ピッチに対応しており、
図9の第2螺旋溝170bは、307.2ピッチ(
図8の第2螺旋溝170aのピッチの2倍)に対応しており、
図10の第2螺旋溝170cは、460.8ピッチ(
図8の第2螺旋溝170aのピッチの3倍)に対応している。
【符号の説明】
【0085】
10 フレーム
12 軸受
13 保持リング
20 ホッパ
21 シリンダ部
22 スカート部
30 下方ピストンヘッド
31 バッフル板
32 第1段部
34 第2段部
35 ロッド係合穴
36 スカート部
37 フィンガ部
38 スリーブ部
39 バッフル板
40 下部ブロック(上方ピストン)
41 第1ロッド部材
42 下方カラー部
43 補助円板
44 上方カラー部
48 ピン
49 回動レバー
50 カムフォロワ
52 シャフト
53 クランク
60 第2ロッド部材
61 第2ロッド部材
62 上部ブロック
63 ピン
64 回動レバー
65 カムフォロワ
66 カム
70 第2螺旋溝
71 第2突部
72 第1螺旋溝
73 第1突部
90 スカート部品(スリーブ部とスカート部とバッフル板とが溶接されている)
100 ドーナツ生地フォーマー
110 フレーム
112 軸受
113 保持リング
120 ホッパ
121 シリンダ部
122 スカート部
130 下方ピストンヘッド
131 バッフル板
132 第1段部
134 第2段部
135 ロッド係合穴
136 スカート部材
137 フィンガ部
138 スリーブ部材
139 隔壁部
139p 貫通路
140 下部ブロック(上方ピストン)
141 第1ロッド部材
142 下方カラー部
143 補助円板
144 上方カラー部
148 ピン
149 回動レバー
150 カムフォロワ
152 シャフト
153 クランク
160 第2ロッド部材
161 第2ロッド部材
162 上部ブロック
163 ピン
164 回動レバー
165 カムフォロワ
166 カム
170 第2螺旋溝
171 第2突部
172 第1螺旋溝
173 第1突部
190 スカート部品(スリーブ部材とスカート部材が螺合されている)