(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】拡散障壁層及び浸食防止層を有する多層コーティング
(51)【国際特許分類】
C23C 16/30 20060101AFI20220405BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20220405BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20220405BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20220405BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C23C16/30
C23C16/34
C23C16/40
C23C14/06 A
C23C14/06 G
C23C14/08
(21)【出願番号】P 2018503240
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(86)【国際出願番号】 US2017042110
(87)【国際公開番号】W WO2018013909
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-09
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】フェンウィック デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ウー シャオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】サン ジェニファー ワイ
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0079370(US,A1)
【文献】特表2011-527382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
C23C 14/00-14/58
C23C 4/00-6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層コーティングを形成するための方法であって、
物品の表面に拡散障壁層を堆積させる工程であって、
拡散障壁層は、原子層堆積(ALD)、及び化学蒸着(CVD)からなる群から選択される第1の堆積プロセスを使用して堆積され、
拡散障壁層はTaNxであり、
拡散障壁層は、
ペンタキス(ジメチルアミド)タンタル(V)、
塩化タンタル(V)、
タンタル(V)エトキシド、及び
トリス(ジエチルアミノ)(tert-ブチルイミド)タンタル(V)からなる群から選択される少なくとも1つのTa前駆体から堆積される工程と、
浸食防止層を拡散障壁層上に堆積させる工程であって、
浸食防止層は、ALD、物理蒸着(PVD)、及びCVDからなる群から選択される第2の堆積プロセスを用いて堆積され、
浸食防止層は、YF
3、Y
2O
3、Er
2O
3、Al
2O
3、ZrO
2、ErAl
xO
y、YO
xF
y、YAl
xO
y、YZr
xO
y及びYZr
xAl
yO
zからなる群から選択される工程を含む方法。
【請求項2】
第1の堆積プロセス及び第2の堆積プロセスは、両方ともALD、又は両方ともCVDである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多層コーティングを形成するための方法であって、
物品の表面に拡散障壁層を堆積させる工程であって、
拡散障壁層は、原子層堆積(ALD)、及び化学蒸着(CVD)からなる群から選択される第1の堆積プロセスを使用して堆積され、
拡散障壁層はTiZr
xN
yであり、
拡散障壁層は、少なくとも1つのTi前駆体から、及び少なくとも1つのZr前駆体から堆積され、
少なくとも1つのTi前駆体は、
ビス(ジエチルアミド)ビス(ジメチルアミド)チタン(IV)、
テトラキス(ジエチルアミド)チタン(IV)、
テトラキス(ジメチルアミド)チタン(IV)、
テトラキス(エチルメチルアミド)チタン(IV)、
臭化チタン(IV)、
塩化チタン(IV)、及び
チタン(IV)tert-ブトキシドからなる群から選択され、
少なくとも1つのZr前駆体は、
臭化ジルコニウム(IV)、
塩化ジルコニウム(IV)、
ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、
テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、
テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、及び
テトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(IV)からなる群から選択される工程と、
浸食防止層を拡散障壁層上に堆積させる工程であって、
浸食防止層は、ALD、物理蒸着(PVD)、及びCVDからなる群から選択される第2の堆積プロセスを用いて堆積され、
浸食防止層は、YF
3、Y
2O
3、Er
2O
3、Al
2O
3、ZrO
2、ErAl
xO
y、YO
xF
y、YAl
xO
y、YZr
xO
y及びYZr
xAl
yO
zからなる群から選択される工程を含む方法。
【請求項4】
多層コーティングを形成するための方法であって、
物品の表面に拡散障壁層を堆積させる工程であって、
拡散障壁層は、原子層堆積(ALD)、物理蒸着(PVD)、及び化学蒸着(CVD)からなる群から選択される第1の堆積プロセスを使用して堆積され、
拡散障壁層は、TiN
x、TaN
x、Zr
3N
4、及びTiZr
xN
yからなる群から選択される工程と、
浸食防止層を拡散障壁層上に堆積させる工程であって、
浸食防止層は、ALD、及びCVDからなる群から選択される第2の堆積プロセスを用いて堆積され、
浸食防止層はErAl
xO
yであり、
浸食防止層は、少なくとも1つのEr前駆体、及び少なくとも1つのAl前駆体から堆積され、
少なくとも1つのEr前駆体は、
トリス-メチルシクロペンタジエニルエルビウム(III)(Er(MeCp)
3)、
エルビウムボランアミド(Er(BA)
3)、
Er(TMHD)
3、
エルビウム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、及び
トリス(ブチルシクロペンタジエニル)エルビウム(III)からなる群から選択され、
少なくとも1つのAl前駆体は、
ジエチルアルミニウムエトキシド、
トリス(エチルメチルアミド)アルミニウム、
アルミニウムsec-ブトキシド、
三臭化アルミニウム、
三塩化アルミニウム、
トリエチルアルミニウム、
トリイソブチルアルミニウム、
トリメチルアルミニウム、及び
トリス(ジエチルアミド)アルミニウムからなる群から選択される方法。
【請求項5】
多層コーティングを形成するための方法であって、
物品の表面に拡散障壁層を堆積させる工程であって、
拡散障壁層は、原子層堆積(ALD)、物理蒸着(PVD)、及び化学蒸着(CVD)からなる群から選択される第1の堆積プロセスを使用して堆積され、
拡散障壁層は、TiN
x、TaN
x、Zr
3N
4、及びTiZr
xN
yからなる群から選択される工程と、
浸食防止層を拡散障壁層上に堆積させる工程であって、
浸食防止層は、ALD、及びCVDからなる群から選択される第2の堆積プロセスを用いて堆積され、
浸食防止層はYAl
xO
yであり、
浸食防止層は、少なくとも1つのY前駆体、及び少なくとも1つのAl前駆体から堆積され、
少なくとも1つのY前駆体は、
トリス(N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド)イットリウム(III)、
イットリウム(III)ブトキシド、
トリス(シクロペンタジエニル)イットリウム(III)、及び
Y(thd)3(thd=2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)からなる群から選択され、
少なくとも1つのAl前駆体は、
ジエチルアルミニウムエトキシド、
トリス(エチルメチルアミド)アルミニウム、
アルミニウムsec-ブトキシド、
三臭化アルミニウム、
三塩化アルミニウム、
トリエチルアルミニウム、
トリイソブチルアルミニウム、
トリメチルアルミニウム、及び
トリス(ジエチルアミド)アルミニウムからなる群から選択される方法。
【請求項6】
多層コーティングを形成するための方法であって、
物品の表面に拡散障壁層を堆積させる工程であって、
拡散障壁層は、原子層堆積(ALD)、物理蒸着(PVD)、及び化学蒸着(CVD)からなる群から選択される第1の堆積プロセスを使用して堆積され、
拡散障壁層は、TiN
x、TaN
x、Zr
3N
4、及びTiZr
xN
yからなる群から選択される工程と、
浸食防止層を拡散障壁層上に堆積させる工程であって、
浸食防止層は、ALD、及びCVDからなる群から選択される第2の堆積プロセスを用いて堆積され、
浸食防止層はYO
xF
yであり、
浸食防止層は、
トリス(N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド)イットリウム(III)、
イットリウム(III)ブトキシド、
トリス(シクロペンタジエニル)イットリウム(III)、及び
Y(thd)3(thd=2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)からなる群から選択される少なくとも1つのY前駆体から堆積される方法。
【請求項7】
多層コーティングを形成するための方法であって、
物品の表面に拡散障壁層を堆積させる工程であって、
拡散障壁層は、原子層堆積(ALD)、物理蒸着(PVD)、及び化学蒸着(CVD)からなる群から選択される第1の堆積プロセスを使用して堆積され、
拡散障壁層は、TiN
x、TaN
x、Zr
3N
4、及びTiZr
xN
yからなる群から選択される工程と、
浸食防止層を拡散障壁層上に堆積させる工程であって、
浸食防止層は、ALD、及びCVDからなる群から選択される第2の堆積プロセスを用いて堆積され、
浸食防止層はYZr
xAl
yO
zであり、
浸食防止層は、少なくとも1つのY前駆体から、少なくとも1つのZr前駆体から、及び少なくとも1つのAl前駆体から堆積され、
少なくとも1つのY前駆体は、
トリス(N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド)イットリウム(III)、
イットリウム(III)ブトキシド、
トリス(シクロペンタジエニル)イットリウム(III)、及び
Y(thd)3(thd=2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)からなる群から選択され、
少なくとも1つのZr前駆体は、
臭化ジルコニウム(IV)、
塩化ジルコニウム(IV)、
ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、
テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、
テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、及び
テトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(IV)からなる群から選択され、
少なくとも1つのAl前駆体は、
ジエチルアルミニウムエトキシド、
トリス(エチルメチルアミド)アルミニウム、
アルミニウムsec-ブトキシド、
三臭化アルミニウム、
三塩化アルミニウム、
トリエチルアルミニウム、
トリイソブチルアルミニウム、
トリメチルアルミニウム、及び
トリス(ジエチルアミド)アルミニウムからなる群から選択される方法。
【請求項8】
拡散障壁層は、10nm~100nmの範囲の厚さを有し、
浸食防止層は最大で1マイクロメートルまでの厚さを有している、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
多層コーティングは、亀裂を生じることなく20℃~450℃の温度サイクルに耐え得る、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
拡散障壁層を堆積させる工程は、複数の前駆体を使用して複数の無傷の層を堆積させる工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
複数の無傷の層をアニーリングして相互拡散された拡散障壁層を形成する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
浸食防止層を堆積させる工程は、複数の前駆体を使用して複数の無傷の層を堆積させる工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
複数の無傷の層をアニーリングして相互拡散された浸食防止層を形成する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、拡散障壁及び耐浸食性コーティングとして機能する多層コーティング、多層コーティングを形成するための方法、及び多層コーティングでコーティングされたプロセスチャンバコンポーネントに関する。
【背景】
【0002】
様々な製造プロセスは、高温、高エネルギープラズマ、腐食性ガスの混合物、高ストレス、及びそれらの組み合わせに半導体プロセスチャンバコンポーネントを曝露させる。これらの極端な条件は、チャンバコンポーネントを腐食させ、チャンバコンポーネントを浸食させ、チャンバコンポーネント材料の基板への拡散を引き起こし、及び、チャンバコンポーネントの欠陥に対する感受性を増加させる可能性がある。このような極端な環境において、これらの欠陥を低減し、コンポーネントの耐腐食性、耐浸食性、及び、耐拡散性を改善することが望ましい。保護コーティングを有する半導体プロセスチャンバコンポーネントをコーティングすることは、欠陥を低減し、耐久性を延ばすのに有効な方法である。
【概要】
【0003】
本発明のいくつかの実施形態は、多層コーティングを網羅する。多層コーティングは、TiNx、TaNx、Zr3N4、及びTiZrxNyからなる群から選択される拡散障壁層を含むことができる。多層コーティングは、YF3、Y2O3、Er2O3、Al2O3、ZrO2、ErAlxOy、YOxFy、YAlxOy、YZrxOy、及びYZrxAlyOzからなる群から選択される浸食防止層を更に含むことができる。浸食防止層は、拡散障壁層を覆うことができる。
【0004】
いくつかの実施形態では、多層コーティングを形成する方法が本明細書に開示される。本方法は、物品の表面上に拡散障壁層を堆積させるステップを含む。拡散障壁層は、原子層堆積、物理蒸着、及び化学蒸着からなる群から選択される第1の堆積プロセスを使用して堆積させることができる。拡散障壁層は、TiNx、TaNx、Zr3N4、及びTiZrxNyからなる群から選択することができる。本方法は、浸食防止層を拡散障壁層上に堆積させるステップを更に含む。浸食防止層は、原子層堆積、物理蒸着、及び化学蒸着からなる群から選択される第2の堆積プロセスを用いて堆積させることができる。浸食防止層は、YF3、Y2O3、Er2O3、Al2O3、ZrO2、ErAlxOy、YOxFy、YAlxOy、YZrxOy、及びYZrxAlyOzからなる群から選択することができる。
【0005】
いくつかの実施形態では、本発明は、コーティングされたプロセスチャンバコンポーネントを網羅する。コーティングされたプロセスチャンバコンポーネントは、表面を有するプロセスチャンバコンポーネントと、その表面上にコーティングされた多層コーティングとを含むことができる。特定の実施形態では、多層コーティングは、TiNx、TaNx、Zr3N4、及びTiZrxNyからなる群から選択された拡散障壁層を含むことができる。特定の実施形態では、多層コーティングは、YF3、Y2O3、Er2O3、Al2O3、ZrO2、ErAlxOy、YOxFy、YAlxOy、YZrxOy、及びYZrxAlyOzからなる群から選択される浸食防止層を更に含むことができる。浸食防止層は、拡散障壁層を覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示は、同じ参照符号が同様の要素を示す添付図面の図において、限定としてではなく例として示されている。本開示における「1つの」又は「一」実施形態への異なる参照は、必ずしも同じ実施形態への参照ではなく、そのような参照は少なくとも1つを意味することが留意されるべきである。
【
図2】本発明の実施形態に係る、様々な原子層堆積(ALD)技術に適用可能な堆積機構を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る、様々な化学蒸着(CVD)技術に適用可能な堆積メカニズムを示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る、様々な物理蒸着(PVD)技術に適用可能な堆積メカニズムを示す。
【
図5】一実施形態に係る、物品上に多層コーティングを形成する方法を示す。
【
図6A】本発明の実施形態に係る、無傷のコンポーネント層を有する拡散障壁層と、無傷のコンポーネント層を有する浸食防止層とを有するコーティングされたチャンバコンポーネントを示す。
【
図6B】本発明の実施形態に係る、無傷のコンポーネント層を有する拡散障壁層と、相互拡散された浸食防止層とを有するコーティングされたチャンバコンポーネントを示す。
【
図6C】本発明の実施形態に係る、相互拡散された拡散障壁層と、無傷のコンポーネント層を有する浸食防止層とを有するコーティングされたチャンバコンポーネントを示す。
【
図6D】本発明の実施形態に係る、相互拡散された拡散障壁層と、相互拡散された浸食防止層とを有するコーティングされたチャンバコンポーネントを示す。
【実施形態の詳細な説明】
【0007】
本明細書では、拡散障壁層として作用する窒化物層と、腐食及び/又は浸食防止層として作用する希土類酸化物又はフッ化物層とを含む多層コーティングを参照して、実施形態を説明する。これらの層は、薄膜堆積技術(例えば、ALD、CVD、及びPVD)を介して堆積させることができる。窒化物層は、TiN、TaN、及びZr3N4などの構成物質から形成することができる。拡散障壁層は、基板処理中にチャンバコンポーネント内の要素が基板の表面に拡散することを防止することができる。いくつかの実施形態では、拡散障壁層は、基板処理中にチャンバコンポーネント内の金属(例えば、銅)が基板表面に拡散するのを防止することができる。拡散障壁層は、チャンバコンポーネントの化学成分が基板を汚染するのを防止するのを助ける。浸食又は腐食防止層は、Al2O3、Y2O3、ZrO2、YF3及びEr2O3などの構成物質から形成された多成分層とすることができる。腐食及び/又は浸食防止層を拡散障壁層の上に堆積させて、処理チャンバ内に存在する腐食性ガス又はプラズマ環境中の拡散障壁層及び下にあるチャンバコンポーネントの浸食又は腐食を防止することができる。薄膜堆積技術は、単純な、ならびに(穴及び大きなアスペクト比を有する)複雑な幾何学的形状を有するチャンバコンポーネントの実質的に均一な厚さのコンフォーマルなコーティングを得るのを助ける。底部薄膜拡散障壁層及び上部薄膜浸食又は腐食防止層を有する多層スタックは、処理されたウェハの拡散に基づく汚染ならびに処理されたウェハの脱落した粒子に基づく汚染の両方を最小限に抑えることができる。拡散障壁層は、コーティングされた下にある物品を汚染物(例えば、金属汚染物(例えば、銅))の拡散からシールすることができ、一方、浸食又は腐食防止層は、物品及び拡散層の両方を処理ガス及び/又はプラズマ環境による浸食及び/腐食から保護することができる。
【0008】
図1は、本発明の実施形態に係る多層コーティングでコーティングされた1以上のチャンバコンポーネントを有する半導体処理チャンバ100の断面図である。処理チャンバ100は、プラズマ処理条件を有する腐食性プラズマ環境が提供される処理に対して使用することができる。例えば、処理チャンバ100は、プラズマエッチング装置又はプラズマエッチングリアクタ、プラズマ洗浄装置などのためのチャンバとすることができる。多層コーティングを含むことができるチャンバコンポーネントの例には、複雑な形状及び高アスペクト比を有する穴を有するチャンバコンポーネントが含まれる。いくつかの例示的なチャンバコンポーネントは、基板支持アセンブリ148、静電チャック(ESC)150、リング(例えば、プロセスキットリング又は単一リング)、チャンバ壁、ベース、ガス分配プレート、シャワーヘッド、ガスライン、ノズル、蓋、ライナー、ライナーキット、シールド、プラズマスクリーン、フローイコライザー、冷却ベース、チャンバビューポート、チャンバ蓋などを含む。以下でより詳細に説明される多層コーティングは、ALDプロセス、CVDプロセス、PVDプロセス、又はそれらの組み合わせを用いて施される。
図2~
図4を参照してより詳細に説明されるALD、CVD、及びPVDは、複雑な形状及び高アスペクト比の穴を有するコンポーネントを含む全てのタイプのコンポーネントに比較的均一な厚さのコンフォーマルな薄膜コーティングを施すことができる。
【0009】
図示のように、基板支持アセンブリ148は、一実施形態に係る多層コーティング136を有する。しかしながら、他のチャンバコンポーネント(例えば、シャワーヘッド、ガスライン、静電チャック、ノズル、その他)のいずれも、多層コーティングでコーティングされてもよいことが理解されるべきである。
【0010】
一実施形態では、処理チャンバ100は、チャンバ本体102と、内部容積106を囲むシャワーヘッド130とを含む。シャワーヘッド130は、シャワーヘッドベース及びシャワーヘッドガス分配プレートを含むことができる。あるいはまた、シャワーヘッド130は、いくつかの実施形態では、蓋及びノズルによって置き換えてもよい。チャンバ本体102は、アルミニウム、ステンレス鋼、又は他の適切な材料から製造することができる。チャンバ本体102は、一般的に、側壁108及び底部110を含む。シャワーヘッド130(又は蓋及び/又はノズル)、側壁108、及び/又は底部110のいずれも、多層コーティングを含むことができる。
【0011】
外側ライナー116は、側壁108に隣接して配置され、チャンバ本体102を保護することができる。外側ライナー116は、多層コーティングで製造及び/又はコーティングすることができる。
【0012】
排気ポート126は、チャンバ本体102内に画定されることができ、内部容積106をポンプシステム128に結合することができる。ポンプシステム128は、排気して処理チャンバ100の内部容積106の圧力を調節するために使用される1以上のポンプ及びスロットルバルブを含むことができる。
【0013】
シャワーヘッド130は、チャンバ本体102の側壁108上に支持することができる。シャワーヘッド130(又は蓋)は、処理チャンバ100の内部容積106へのアクセスを可能にするように開放することができ、閉じている間は、処理チャンバ100に対してシールを提供することができる。ガスパネル158は、処理チャンバ100に結合されて、処理ガス及び/又は洗浄ガスを、シャワーヘッド130又は蓋及びノズルを介して内部容積106に提供することができる。シャワーヘッド130は、誘電体エッチング(誘電体材料のエッチング)に使用される処理チャンバ用に使用することができる。シャワーヘッド130は、ガス分配プレート(GDP)133を含み、GDP133は、GDP133の全域にわたって複数のガス供給穴132を有する。シャワーヘッド130は、アルミニウムベース又は陽極酸化アルミニウムベースに接合されたGDP133を含むことができる。GDP133は、Si又はSiCから製造することができる、又はセラミックス(例えば、Y2O3、Al2O3、YAGなど)とすることができる。
【0014】
導体エッチング(導電性材料のエッチング)用に使用される処理チャンバでは、シャワーヘッドではなく蓋を使用することができる。蓋は、蓋の中心穴に嵌合する中心ノズルを含むことができる。蓋は、セラミックス(例えば、Al2O3、Y2O3、YAG)、又はY4Al2O9とY2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス化合物とすることができる。ノズルもまた、セラミックス(例えば、Y2O3、YAG)、又はY4Al2O9とY2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス化合物とすることができる。蓋、シャワーヘッドベース104、GDP133、及び/又はノズルは、一実施形態に係る多層コーティングですべてコーティングされてもよい。
【0015】
処理チャンバ100内で基板を処理するために使用することができる処理ガスの例は、ハロゲン含有ガス(例えば、とりわけ、C2F6、SF6、SiCl4、HBr、NF3、CF4、CHF3、CH2F3、F、NF3、Cl2、CCl4、BCl3、及びSiF4)、及び他のガス(例えば、O2又はN2O)を含む。キャリアガスの例は、N2、He、Ar、及び処理ガスに対して不活性な他のガス(例えば、非反応性ガス)を含む。基板支持アセンブリ148は、シャワーヘッド130又は蓋の下方の処理チャンバ100の内部容積106内に配置される。基板支持アセンブリ148は、処理中に基板144を保持する。リング146(例えば、単一のリング)は、静電チャック150の一部を覆うことができ、覆われた部分が処理中にプラズマに曝露されないように保護することができる。一実施形態では、リング146はシリコン又は石英であってもよい。
【0016】
内側ライナー118は、基板支持アセンブリ148の周囲を覆うことができる。内側ライナー118は、ハロゲン含有ガス耐性材料(例えば、外側ライナー116を参照して論じられたもの)とすることができる。一実施形態では、内側ライナー118は、外側ライナー116と同じ材料から製造されてもよい。更に、内側ライナー118はまた、多層コーティングでコーティングされてもよい。
【0017】
一実施形態では、基板支持アセンブリ148は、台座152を支持する取り付けプレート162と、静電チャック150とを含む。静電チャック150は、熱伝導ベース164と、熱伝導ベースに接合剤138によって接合された静電パック166とを更に含み、接合剤138は、一実施形態では、シリコーン接合剤とすることができる。静電パック166の上面は、図示の実施形態では、多層コーティング136によって覆うことができる。多層コーティング136は、熱伝導性ベース164及び静電パック166の外側及び側部周縁部を含む静電チャック150の露出面全体、ならびに静電チャック内でアスペクト比の大きい他の幾何学的に複雑な部品又は穴に配置することができる。取り付け板162は、チャンバ本体102の底部110に結合され、ユーティリティ(例えば、流体、電力線、センサリードなど)を熱伝導ベース164及び静電パック166に経路付ける(ルーティングする)ための通路を含む。
【0018】
熱伝導ベース164及び/又は静電パック166は、1以上のオプションの埋設された加熱素子176、埋設された熱アイソレータ174、及び/又は導管168、170を含み、基板支持アセンブリ148の横方向の温度プロファイルを制御することができる。導管168、170は、導管168、170を介して温度調節流体を循環させる流体源172に流体的に結合することができる。一実施形態では、埋設されたアイソレータ174は、導管168、170の間に配置することができる。ヒータ176は、ヒータ電源178によって調整される。導管168、170及びヒータ176を使用して、熱伝導ベース164の温度を制御することができる。導管及びヒータは、静電パック166及び処理される基板(例えば、ウェハ)144を加熱及び/又は冷却する。静電パック166及び熱伝導ベース164の温度は、コントローラ195を使用して監視することができる複数の温度センサ190、192を使用して監視することができる。
【0019】
静電パック166は、複数のガス通路(例えば、溝、メサ、及びパック166の上面に形成することができる他の表面構造)を更に含むことができる。これらの表面構造は、すべて、一実施形態に係る多層コーティングでコーティングすることができる。ガス通路は、静電パック166内に穿孔された穴を介して、熱伝達(又は裏面)ガス(例えば、He)の供給源に流体結合させることができる。動作中、裏面ガスは、制御された圧力でガス通路に供給され、静電パック166と基板144との間の熱伝達を促進することができる。
【0020】
静電パック166は、チャッキング電源182によって制御される少なくとも1つのクランプ電極180を含む。電極180(又はパック166又はベース164内に配置された他の電極)は、処理チャンバ100内の処理ガス及び/又は他のガスから形成されたプラズマを維持するための整合回路188を介して1以上のRF電源184、186に更に結合することができる。電源184、186は、一般的に、約50kHz~約3GHzの周波数と、最大約10000ワットの電力を有するRF信号を生成することができる。
【0021】
図2は、様々なALD技術に係る堆積プロセスを示す。様々なタイプのALDプロセスが存在し、特定のタイプは、いくつかの要因(例えば、コーティングされる表面、コーティング材料、表面とコーティング材料との間の化学的相互作用など)に基づいて選択することができる。ALDプロセスの一般的原理は、自己限定的に一度に1つずつ表面と化学的に反応するガス状化学前駆体の連続した交互パルスにコーティンされる表面を繰り返し曝露させることによって、薄膜層を成長又は堆積させるステップを含む。
【0022】
図2は、表面205を有する物品210を示す。前駆体と表面との間の各々の個々の化学反応は、「半反応」として知られている。各半反応の間、前駆体は、前駆体が表面と完全に反応することを可能にするのに十分な時間間隔の間、表面上にパルスされる。この反応は、前駆体が表面上の有限数の利用可能な反応部位と反応し、表面上に均一な連続吸着層を形成するので、自己限定的である。前駆体とすでに反応している任意の部位は、反応した部位が均一な連続コーティング上に新たな反応部位を形成する処理を受けない限り、及び/又はそれを受けるまで、同一の前駆体との更なる反応に利用できなくなる。例示的な処理は、プラズマ処理、均一な連続吸着層をラジカルに曝露する処理、又は表面に吸着された直近の均一な連続膜層と反応することができる異なる前駆体の導入とすることができる。
【0023】
図2では、表面205を有する物品210は、吸着層214を形成することによって第1の前駆体260と表面205との第1の半反応が部分的に膜層215を形成するまで、第1の時間にわたって第1の前駆体260に導入することができる。その後、物品210は、吸着層214と反応して層215を完全に形成する第2の前駆体265(反応物質とも呼ばれる)に導入することができる。第1の前駆体260は、例えば、イットリウム又は他の金属のための前駆体とすることができる。第2の前駆体265は、層215が酸化物であれば酸素前駆体、層215がフッ化物であればフッ素前駆体、又はこの層が窒化物であれば窒素前駆体とすることができる。物品210は、第1の前駆体260及び第2の前駆体265に最高n回交互に曝露して、層215の目標厚さを達成することができる。Nは、例えば1~100の整数とすることができる。膜層215は、均一で、連続していて、コンフォーマルとすることができる。膜層215はまた、実施形態では1%未満、いくつかの実施形態では0.1%未満、又は更なる実施形態では約0%の非常に低い空孔率を有することができる。続いて、表面205及び膜層215を有する物品210は、層215と反応する第3の前駆体270に導入され、第2の吸着層218を形成することによって、第2の膜層220を部分的に形成することができる。続いて、物品210は、第2の半反応につながる吸着層218と反応して完全に層220を形成する別の前駆体275(反応物質とも呼ばれる)に導入することができる。物品210は、第3の前駆体270及び第4の前駆体275に最高m回交互に曝露して、層220の目標厚さを達成することができる。Mは、例えば1~100の整数とすることができる。第2の膜層220は、均一で、連続しており、コンフォーマルとすることができる。第2の膜層220はまた、いくつかの実施形態では1%未満、いくつかの実施形態では0.1%未満、又は更なる実施形態では約0%の非常に低い空孔率を有することができる。その後、物品210を前駆体260及び265にn回導入し、次いで前駆体270及び275にm回導入するシーケンスを繰り返してx回行うことができる。xは、例えば、1~100の整数とすることができる。シーケンスの結果は、追加の層225、230、235、及び245を成長させるためのものとすることができる。様々な層の数及び厚さは、目標とするコーティングの厚さ及び特性に基づいて独立して選択することができる。種々の層は無傷のまま(すなわち、別々のまま)とすることができるか、又はいくつかの実施形態では、相互拡散させることができる。
【0024】
表面反応(例えば、半反応)は、連続して実行される。新しい前駆体を導入する前に、内部でALDプロセスが行われるチャンバは、不活性キャリアガス(例えば、窒素又は空気)でパージされ、未反応前駆体及び/又は表面前駆体反応副生成物を除去することができる。少なくとも2つの前駆体が使用される。いくつかの実施形態では、3以上の前駆体を使用して、同じ組成を有する膜層を成長させることができる(例えば、互いの上にY2O3の多層を成長させる)。他の実施形態では、異なる前駆体を使用して、異なる組成を有する異なる膜層を成長させることができる。
【0025】
ALDプロセスは、様々な温度で行うことができる。特定のALDプロセスに対する最適な温度範囲は、「ALD温度ウィンドウ」と呼ばれる。ALD温度ウィンドウを下回る温度は、不良な成長速度と非ALDタイプの堆積をもたらす可能性がある。ALD温度ウィンドウを超える温度は、物品の熱分解又は前駆体の急速な脱離をもたらす可能性がある。ALD温度ウィンドウは、約200℃~約400℃の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、ALD温度ウィンドウは、約150℃~約350℃の間である。
【0026】
ALDプロセスは、複雑な幾何学的形状、高アスペクト比の穴、及び三次元構造を有する物品及び表面上に均一な膜厚を有するコンフォーマルな膜層を可能にする。前駆体の表面への十分な曝露時間は、前駆体が分散し、その三次元の複雑な構造の全てを含む表面全体と完全に反応することを可能にする。高アスペクト比の構造においてコンフォーマルALDを得るために利用される曝露時間は、アスペクト比の2乗に比例し、モデリング技術を使用して予測することができる。また、ALD技術は、原材料(例えば、粉末原料及び焼結されたターゲット)の長期かつ困難な製造を必要とせずに、特定の組成物又は配合物のインサイチューでオンデマンドの材料合成を可能にするので、他の通常使用されるコーティング技術よりも有利である。いくつかの実施形態では、第1の組の層215、220、225、及び230は、TiNx、TaNx、Zr3N4及びTiZrxNyからなる群から選択される拡散障壁層を共に形成することができる。拡散障壁層は、例えば、TiN膜、TaN膜及びZr3N4膜を形成するために使用される1対のALD前駆体又は交互対のALD前駆体から堆積させることができる。いくつかの実施形態では、交互の前駆体から形成された膜は、無傷の層として残すことができる。他の実施形態では、交互の前駆体から形成された膜をアニーリングして相互拡散された拡散障壁層を形成することができる。いくつかの実施形態では、層215、220、225、及び230のそれぞれは、一緒になって単一のより厚い拡散障壁層を形成する同じ材料(例えば、TiNx、TaNx又はZr3N4)のナノ層である。
【0027】
いくつかの実施形態では、第2の組の層235及び245は、一緒になって、YF3、Y2O3、Er2O3、Al2O3、ZrO2、ErAlxOy、YOxFy、YAlxOy、YZrxOy、及びYZrxAlyOzからなる群から選択される浸食防止層を形成することができる。浸食防止層は、例えば、Al2O3膜、Y2O3膜、ZrO2膜、YF3膜、及び/又はEr2O3膜を形成するために使用される1対のALD前駆体又は交互対ALD前駆体から堆積することができる。いくつかの実施形態では、交互の前駆体から形成された膜は、無傷の層として残すことができる。他の実施形態では、交互の前駆体から形成された膜をアニーリングして、相互拡散された浸食防止層を形成することができる。いくつかの実施形態では、層235及び245のそれぞれは、一緒になって単一のより厚い浸食防止層を形成する同じ材料(例えば、Al2O3、Y2O3、ZrO2、YF3、又はEr2O3)のナノ層である。
【0028】
いくつかの実施形態では、多層コーティングは、CVDを介して物品の表面上に堆積させることができる。例示的なCVDシステムが
図3に示されている。システムは、化学蒸気前駆体供給システム305及びCVDリアクタ310を備える。蒸気前駆体供給システム305の役割は、固体、液体、又は気体の形態であり得る出発材料315から蒸気前駆体320を生成することである。次に、蒸気はCVDリアクタ310に輸送され、物品ホルダ335上に配置された物品330上に薄膜325として堆積される。
【0029】
CVDリアクタ310は、ヒータ340を用いて物品330を堆積温度まで加熱する。いくつかの実施形態では、ヒータは、CVDリアクタの壁を加熱することができ(「ホットウォールリアクタ」としても知られている)、リアクタの壁は物品に熱を伝達することができる。他の実施形態では、CVDリアクタの壁を冷たく維持しながら(「コールドウォールリアクタ」としても知られている)、物品のみを加熱することができる。CVDシステム構成は限定的であると解釈されるべきではないことを理解すべきである。様々な装置をCVDシステムのために利用することができ、装置は、均一な厚さ、表面形態、構造、及び組成を有するコーティングを与えることができる最適な処理条件を得るように選択される。
【0030】
様々なCVDプロセスは、以下のプロセスを含む。(1)出発物質から活性ガス状反応種(「前駆体」としても知られている)を生成する。(2)前駆体を反応チャンバ(「リアクタ」とも呼ばれる)に輸送する。(3)前駆体を加熱された物品上に吸収させる。(4)気体-固体界面での前駆体と物品との間の化学反応に関与して、堆積物及びガス状副生成物を形成する。(5)ガス状副生成物及び未反応ガス状前駆体を反応チャンバから除去する。
【0031】
適切なCVD前駆体は、室温で安定とすることができ、低い気化温度を有することができ、低温で安定な蒸気を生成することができ、適切な堆積速度(薄膜コーティングに対して低い堆積速度及び厚膜コーティングに対して高い堆積速度)を有し、比較的低い毒性を有し、費用効果があり、比較的純度が高い。いくつかのCVD反応(例えば、熱分解反応(「熱分解」としても知られている)又は不均化反応)では、化学前駆体だけで堆積を完了させることができる。他のCVD反応に対しては、化学前駆体に加えて(下記の表1に掲載される)他の薬剤を用いて堆積を完了させることができる。
【表1】
【0032】
CVDは、高密度で純度の高いコーティングを堆積させる能力、及び適度に高い堆積速度で良好な再生産性及び接着性を有する均一な膜を生成する能力を含む多くの利点を有する。実施形態におけるCVDを用いて堆積された層は、1%未満の空孔率、及び0.1%未満の空孔率(例えば、約0%)を有することができる。したがって、それを使用して、複雑な形状のコンポーネントを均一にコーティングし、良好なコンフォーマルな被覆を有する(例えば、実質的に均一な厚さを有する)コンフォーマルな膜を堆積させることができる。CVDを使用して、(例えば、複数の化学前駆体を所定の比率で混合チャンバに供給し、次いでこの混合物をCVDリアクタシステムに供給することによって)複数の成分からなる膜を堆積することもできる。
【0033】
CVDリアクタ310は、実施形態において、プラズマ環境による浸食及び/又は腐食に対して耐性のある拡散障壁層及び/又は浸食防止層を形成するために使用することができる。層325は、実施形態において、TiNx、TaNx、Zr3N4、及びTiZrxNyからなる群から選択される拡散障壁層を形成することができる。拡散障壁層325を覆う層345は、いくつかの実施形態では、YF3、Y2O3、Er2O3、Al2O3、ZrO2、ErAlxOy、YOxFy、YAlxOy、YZrxOy、及びYZrxAlyOzからなる群から選択される浸食防止層とすることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、多層コーティングは、PVDを介して物品の表面上に堆積させることができる。PVDプロセスを使用して、数ナノメートルから数マイクロメートルの範囲の厚さの薄膜を堆積させることができる。様々なPVDプロセスは、共通して3つの基本的な構成:(1)高温又はガス状プラズマの助けを借りて固体源から材料を蒸発させること、(2)気化された材料を真空中で物品の表面に輸送すること、(3)蒸発した材料を物品上に凝縮させて薄膜層を生成することを共有する。例示的なPVDリアクタを
図4に示し、以下により詳細に説明する。
【0035】
図4は、様々なPVD技術及びリアクタに適用可能な堆積機構を示す。PVDリアクタチャンバ400は、物品420に隣接するプレート410と、ターゲット430に隣接するプレート415とを含むことができる。空気をリアクタチャンバ400から除去して、真空を生成することができる。次に、アルゴンガスをリアクタチャンバに導入することができ、電圧をプレートに印加することができ、電子及び正のアルゴンイオン440を含むプラズマを生成することができる。正のアルゴンイオン440は、負のプレート415に引き付けられることができ、そこでターゲット430に当たってターゲットから原子435を放出させることができる。放出された原子435は、輸送され、薄膜425として物品420上に堆積させることができる。
【0036】
実施形態において、PVDリアクタチャンバ400を使用して、拡散障壁層及び/又は浸食防止層を形成してもよい。層425は、実施形態において、TiNx、TaNx、Zr3N4、及びTiZrxNyからなる群から選択される拡散障壁層を形成することができる。拡散障壁層425を覆う層445は、いくつかの実施形態では、YF3、Y2O3、Er2O3、Al2O3、ZrO2、ErAlxOy、YOxFy、YAlxOy、YZrxOy、及びYZrxAlyOzからなる群から選択される浸食防止層とすることができる。
【0037】
図2の物品210、
図3の物品330、及び
図4の物品420は、基板支持アセンブリ、静電チャック(ESC)、リング(例えば、プロセスキットリング又は単一リング)、チャンバ壁、ベース、ガス分配プレート、ガスライン、シャワーヘッド、ノズル、蓋、ライナー、ライナーキット、シールド、プラズマスクリーン、フローイコライザー、冷却ベース、チャンバビューポート、チャンバ蓋などを含むがこれらに限定されない様々な半導体プロセスチャンバコンポーネントを表すことができる。物品及びそれらの表面は、金属(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼)、セラミックス、金属セラミック複合材料、ポリマー、ポリマーセラミックス複合材料、又は他の適切な材料から製造することができ、AlN、Si、SiC、Al
2O
3、SiO
2等の材料を更に含むことができる。
【0038】
ALD、CVD、及びPVD技術によって、拡散障壁膜(例えば、TiNx、TaNx、Zr3N4、及びTiZrxNy)及び浸食防止膜(例えば、YF3、Y2O3、Er2O3、Al2O3、ZrO2、ErAlxOy、YOxFy、YAlxOy、YZrxOy、及びYZrxAlyOz)を形成することができる。いくつかの実施形態では、拡散障壁層及び浸食防止層は、両方とも同じ技術を用いて堆積させることができる(すなわち、両方ともALDを介して堆積させることができる、両方ともCVDを介して堆積させることができる、又は両方ともPVDを介して堆積させることができる)。他の実施形態では、拡散障壁層は、1つの技術によって堆積されてもよく、浸食防止層は、別の技術によって堆積されてもよい。例えば、両方の層がALDを介して堆積される場合、より詳細に以下で説明するように、拡散障壁層は、TiN、TaN、及びZr3N4を吸着して堆積させるために使用される前駆体の適切なシーケンシングによって吸着され、堆積されることができ、浸食防止膜は、Y2O3、Al2O3、YF3、ZrO2、及びEr2O3を吸着して堆積させるために使用される前駆体の適切なシーケンシングによって吸着され、堆積されることができる。
【0039】
図5は、一実施形態に係る物品上に多層コーティングを形成する方法500を示す。本方法は、オプションとして、多層コーティング(
図5には図示せず)に対する組成を選択することによって開始することができる。組成の選択及び形成方法は、同じエンティティによって、又は複数のエンティティによって実行されてもよい。ブロック505に従って、本方法は、ALD、CVD、及びPVDからなる群から選択される第1の堆積プロセスを使用して、物品の表面上に拡散障壁層を堆積させるステップを含む。拡散障壁層は、複数の無傷の層を含むことができる。複数の無傷の層は、複数の前駆体から作製され、拡散障壁層を形成することができる。拡散障壁層は、約10nm~約100nmの範囲の厚さを有することができ、TiN
x、TaN
x、Zr
3N
4、及びTiZr
xN
yからなる群から選択することができる。
【0040】
ブロック510に従って、本方法は、オプションとして、拡散障壁層をアニーリングするステップを更に含む。いくつかの実施形態では、アニーリングは、複数の無傷の層に存在する複数の成分の相互拡散された固体状態の相を含む拡散障壁層をもたらすことができる。アニーリングは、約800℃~約1800℃、約800℃~約1500℃、又は約800℃~約1000℃の範囲の温度で行うことができる。アニーリング温度は、物品、表面、及び膜層の構成材料に基づいて選択され、これによってそれらの完全性を維持し、これらの成分の一部又は全部を変形、分解、又は溶融させないようにすることができる。
【0041】
ブロック515に従って、本方法は、ALD、CVD、及びPVDからなる群から選択される第2の堆積プロセスを使用して、拡散障壁層上に浸食防止層を堆積させるステップを更に含む。浸食防止層は、複数の無傷の層を含むことができる。複数の無傷の層は、複数の前駆体から作製され、浸食防止層を形成することができる。浸食防止層は、最大約1マイクロメートル(例えば、約20nm~約1マイクロメートル)の厚さを有することができ、YF3、Y2O3、Er2O3、Al2O3、ZrO2、ErAlxOy、YOxFy、YAlxOy、YZrxOy及びYZrxAlyOzからなる群から選択することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、本方法は、ブロック520に従って、オプションとして、浸食防止層をアニーリングするステップを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、アニーリングは、複数の無傷の層に存在する複数の成分の相互拡散された固体状態の相を含む浸食防止層をもたらすことができる。アニーリング温度は、上記の拡散障壁層のアニーリング温度と同様であってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、障壁層及び浸食防止層の両方をアニーリングし、相互拡散させることができる(
図6D)。いくつかの実施形態では、浸食防止層の堆積後に単一のアニーリングプロセスが実行され、拡散防止層のナノ層及び浸食防止層のナノ層をアニーリング及び相互拡散させる。いくつかの実施形態では、障壁層及び浸食防止層の一方がアニーリングされ相互拡散されるが、他の層はアニーリングされない(
図6B及び
図6C参照)。他の実施形態では、障壁層又は浸食防止層のいずれもアニーリングされないか、又は相互拡散されない(
図6A)。様々な実施形態を
図6A~
図6Dに示し、以下で更に詳細に説明する。
【0044】
いくつかの実施形態では、拡散障壁層の第1の堆積プロセス及び浸食防止層の第2の堆積プロセスは同一であってもよく、例えば、両方のプロセスはALDであってもよく、両方のプロセスはCVDであってもよく、又は両方のプロセスはPVDであってもよい。他の実施形態では、拡散障壁層の第1の堆積プロセス及び浸食防止層の第2の堆積プロセスは、変わってもよい。堆積方法にかかわらず、最終多層コーティングは、亀裂を生じることなく約20℃~約450℃の温度サイクルに耐えることができる可能性がある。
【0045】
第1又は第2の堆積プロセスがALD又はCVDである場合、適切な前駆体又は複数の前駆体を選択して、最終的に拡散障壁層、浸食防止層、及び多層コーティングを形成することができる。
【0046】
例えば、TiNx拡散障壁層は、ビス(ジエチルアミド)ビス(ジメチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(ジエチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(エチルメチルアミド)チタン(IV)、臭化チタン(IV)、塩化チタン(IV)、及びチタン(IV)tert-ブトキシドからなる群から選択された少なくとも1つのTi含有前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。
【0047】
TaNx拡散障壁層は、ペンタキス(ジメチルアミド)タンタル(V)、塩化タンタル(V)、タンタル(V)エトキシド、及びトリス(ジエチルアミノ)(tert-ブチルイミド)タンタル(V)からなる群から選択される少なくとも1つのTa前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。
【0048】
TiZrxNy拡散障壁層は、少なくとも1つのTi前駆体及び少なくとも1つのZr前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。Ti前駆体は、ビス(ジエチルアミド)ビス(ジメチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(ジエチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(エチルメチルアミド)チタン(IV)、臭化チタン(IV)、塩化チタン(IV)、及びチタン(IV)tert-ブトキシドからなる群から選択することができる。Zr前駆体は、臭化ジルコニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、及びテトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(IV)からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、様々な成分の化学量論比は、Ti0.2Zr0.2N0.6拡散障壁層を形成することができる。
【0049】
Zr3N4浸食防止層は、臭化ジルコニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、及びテトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(IV)からなる群から選択される少なくとも1つのZr前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。
【0050】
ErAlxOy浸食防止層は、少なくとも1つのEr前駆体及び少なくとも1つのAl前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。Er前駆体は、トリス-メチルシクロペンタジエニルエルビウム(III)(Er(MeCp)3)、エルビウムボランアミド(Er(BA)3)、Er(TMHD)3、エルビウム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、及びトリス(ブチルシクロペンタジエニル)エルビウム(III)からなる群から選択することができる。Al前駆体は、ジエチルアルミニウムエトキシド、トリス(エチルメチルアミド)アルミニウム、アルミニウムsec-ブトキシド、三臭化アルミニウム、三塩化アルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、及びトリス(ジエチルアミド)アルミニウムからなる群から選択することができる。
【0051】
YAlxOy浸食防止層は、少なくとも1つのY前駆体及び少なくとも1つのAl前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。Y前駆体は、トリス(N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド)イットリウム(III)、イットリウム(III)ブトキシド、トリス(シクロペンタジエニル)イットリウム(III)、及びY(thd)3(thd=2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)からなる群から選択することができる。
【0052】
YOxFy浸食防止層は、トリス(N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド)イットリウム(III)、イットリウム(III)ブトキシド、トリス(シクロペンタジエニル)イットリウム(III)、及びY(thd)3(thd=2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)からなる群から選択される少なくとも1つのY前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。
【0053】
YZrxOy浸食防止層は、少なくとも1つのY前駆体及び少なくとも1つのZr前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。Zr前駆体は、臭化ジルコニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、及びテトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(IV)からなる群から選択することができる。
【0054】
YZrxAlyOz浸食防止層は、少なくとも1つのY前駆体、少なくとも1つのZr前駆体、及び少なくとも1つのAl前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。
【0055】
Er2O3浸食防止層は、トリス-メチルシクロペンタジエニルエルビウム(III)(Er(MeCp)3)、エルビウムボランアミド(Er(BA)3)、Er(TMHD)3、エルビウム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、及びトリス(ブチルシクロペンタジエニル)エルビウム(III)からなる群から選択される少なくとも1つのEr前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。
【0056】
Al2O3浸食防止層は、ジエチルアルミニウムエトキシド、トリス(エチルメチルアミド)アルミニウム、アルミニウムsec-ブトキシド、三臭化アルミニウム、三塩化アルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、及びトリス(ジエチルアミド)アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つのAl前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。
【0057】
Y2O3浸食防止層は、トリス(N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド)イットリウム(III)、イットリウム(III)ブトキシド、トリス(シクロペンタジエニル)イットリウム(III)、及びY(thd)3(thd=2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)からなる群から選択される少なくとも1つのY前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。
【0058】
YF3浸食防止層は、少なくとも1つのY前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。
【0059】
ZrO2浸食防止層は、臭化ジルコニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、及びテトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(IV)からなる群から選択される少なくとも1つのZr前駆体からALD又はCVDを介して堆積させることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、酸素源を提供する前駆体ガス(例えば、オゾン、水蒸気、及びプラズマからの酸素ラジカル)を、本明細書の上記に列挙した前駆体のいずれかと組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、窒素源を提供する前駆体ガス(例えば、アンモニア、窒素、及び窒素プラズマからのラジカル)を、本明細書の上記に列挙した前駆体のいずれかと組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、フッ素源を提供する前駆体ガス(例えば、フッ素プラズマからのフッ素、HF、及びフッ素ラジカル)を、本明細書の上記に列挙した前駆体のいずれかと組み合わせて使用することができる。本明細書の上記に列挙した前駆体は単なる例示であり、限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。
【0061】
図6A~
図6Dは、異なる実施形態に係る多層コーティングの変形を示す。
図6Aは、表面605を有する物品610に対する多層コーティングを示す。例えば、物品610は、基板支持アセンブリ、静電チャック(ESC)、リング(例えば、プロセスキットリング又は単一リング)、チャンバ壁、ベース、ガス分配プレート、ガスライン、シャワーヘッド、ノズル、蓋、ライナー、ライナーキット、シールド、プラズマスクリーン、フローイコライザー、冷却ベース、チャンバビューポート、チャンバ蓋などを含むが、これらに限定されない様々な半導体プロセスチャンバコンポーネントを含むことができる。半導体プロセスチャンバコンポーネントは、金属(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼)、セラミックス、金属セラミックス複合材料、ポリマー、ポリマーセラミックス複合材料、又は他の適切な材料から製造することができ、AlN、Si、SiC、Al
2O
3、SiO
2等の材料を更に含むことができる。
【0062】
図6A~
図6Dにおいて、表面605上に堆積された多層コーティングは、TiN
x、TaN
x、Zr
3N
4、及びTiZr
xN
yからなる群から選択される拡散障壁層615又は645と、YF
3、Y
2O
3、Er
2O
3、Al
2O
3、ZrO
2、ErAl
xO
y、YO
xF
y、YAl
xO
y、YZr
xO
y、及びYZr
xAl
yO
zからなる群から選択される浸食防止層625又は635とを含む。浸食防止層は、拡散障壁層を覆う。
【0063】
図6Aにおいて、拡散障壁層615と浸食防止層625の両方は、それぞれ複数の無傷の層650及び630をそれぞれ含む。
図6Bにおいて、拡散障壁層615は、複数の無傷の層650を含み、浸食防止層635は、浸食防止層を構成する複数の成分の相互拡散された固体状態の相にあることができる。
図6Cにおいて、拡散障壁層645は、拡散障壁層を構成する複数の成分の相互拡散された固相状態の相にあることができるが、浸食防止層625は、複数の無傷の層を含むことができる。
図6Dにおいて、拡散障壁層645と浸食防止層635の両方は、層のそれぞれを構成する複数の成分の相互拡散された固体状態の相にあることができる。あるいはまた、拡散障壁層645の成分は、相互拡散して複数の異なる相を形成してもよく、及び/又は浸食防止層635の成分は、相互拡散して複数の異なる相を形成してもよい。
【0064】
図6A~
図6Dに示す拡散障壁層及び浸食防止層は、同様の厚さを有するように見えるかもしれないが、これらの図は、限定として解釈されるべきではない。いくつかの実施形態では、拡散障壁層は、浸食防止層よりも薄い厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、拡散障壁層は、浸食防止層よりも大きな厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、拡散障壁層及び浸食防止層の厚さは同じであってもよい。拡散障壁層は、約10nm~約100nmの範囲の厚さを有することができる。浸食防止層は、最大約1マイクロメートル(例えば、約20nm~約1マイクロメートル)の厚さを有することができる。
【0065】
多層コーティングの表面粗さは、半導体プロセスチャンバコンポーネントの粗さと同様とすることができる。いくつかの実施形態では、多層コーティングの表面粗さは、約20~約45マイクロインチの範囲とすることができる。
【0066】
ALDによって堆積された酸化アルミニウム浸食防止層は、以下の特性を有することができる:約1マイクロメートルの厚さで約360ボルトの絶縁破壊電圧、約1マイクロメートルの厚さで140mNの、約10ミクロンのダイヤモンドスタイラスの引っかき接着試験に基づく引っかき接着破壊力、約12.9~13.5GPaのビッカース硬さ、及びバブル試験に基づく厚さ1ミクロンの膜に対して約1~28時間の破損までの時間。ALDによって堆積された酸化イットリウム浸食防止層は、以下の特性を有することができる:約1マイクロメートルの厚さで約475ボルトの絶縁破壊電圧、約100nmの厚さで34mNの、約10マイクロメートルのダイヤモンドスタイラスの引っかき接着試験に基づく引っかき接着破壊力、約11.5~12.9GPaのビッカース硬さ、及びバブル試験に基づく1マイクロメートルの膜に対して約14分の破損までの時間。
【0067】
前述の説明は、本発明のいくつかの実施形態の良好な理解を提供するために、具体的なシステム、コンポーネント、方法等の例などの多数の具体的な詳細を説明している。しかしながら、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施することができることが当業者には明らかであろう。他の例において、周知のコンポーネント又は方法は、本発明を不必要に不明瞭にしないために、詳細には説明しないか、単純なブロック図形式で提示されている。従って、説明された具体的な詳細は、単なる例示である。特定の実装では、これらの例示的な詳細とは異なる場合があるが、依然として本発明の範囲内にあることが理解される。
【0068】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」への参照は、その実施形態に関連して記載された特定の構成、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。従って、本明細書を通じて様々な場所における「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指すものではない。また、用語「又は」は、排他的な「又は」ではなく包含的な「又は」を意味することを意図している。「約」又は「ほぼ」という用語が本明細書で使用される場合、これは提示される公称値が±10%以内で正確であることを意味することを意図している。
【0069】
本明細書において「空孔率」という用語が使用される場合、それはコーティング内の空隙の量を表すことを意図している。例えば、5%の空孔率は、コーティングの全体積の5%が実際に空隙であることを意味する。
【0070】
本明細書において「表面粗さ」という用語が使用される場合、それはプロフィロメーター(表面を横切って引かれる針)を用いて表面の粗さの尺度を記述する。
【0071】
本明細書において「絶縁破壊電圧」又は「BDV」という用語が使用される場合、それは、電圧を用いたコーティングの評価を指す。BDV値は、コーティングが破壊的にアーク放電するときに到達する電圧である。
【0072】
本明細書において「接着」という用語が使用される場合、それは、下にある物品又は下にあるコーティングに接着するためのコーティングの強度を指す。
【0073】
本明細書において「硬度」という用語が使用される場合、それは、膜が損傷することなく耐えることができる圧縮の量を指す。
【0074】
本明細書において「バブルテスト」という用語が使用される場合、それは、コーティングされた物品を塩酸溶液中に配置し、液体上に気泡が形成されるまでの時間を測定する試験を指す。気泡の形成は、物品自体が反応し、コーティングに浸透したことを示す。
【0075】
温度サイクルに耐える能力は、多層コーティングが亀裂を経験することなく温度サイクルを通して処理することができることを意味する。
【0076】
本明細書内の本方法の操作は、特定の順序で図示され説明されているが、特定の操作を逆の順序で行うように、又は特定の操作を少なくとも部分的に他の操作と同時に実行するように、各方法の操作の順序を変更することができる。別の一実施形態では、異なる操作の命令又は副操作は、断続的及び/又は交互の方法とすることができる。
【0077】
なお、上記の説明は例示であり、限定的ではないことを意図していることが理解されるべきである。上記の説明を読み理解することにより、多くの他の実施形態が当業者にとって明らかとなるであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を、そのような特許請求の範囲が権利を与える均等物の全範囲と共に参照して決定されるべきである。