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特許7053477感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220405BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220405BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20220405BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/039 601
C08F220/12
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018543767
(86)(22)【出願日】2017-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2017030173
(87)【国際公開番号】W WO2018066247
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2019-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2016196521
(32)【優先日】2016-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】丸茂 和博
(72)【発明者】
【氏名】丹呉 直紘
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-048067(JP,A)
【文献】特開2012-002358(JP,A)
【文献】特開2012-159690(JP,A)
【文献】特開2011-118318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂Aと、
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物Bと、
表面エネルギーが25mJ/m超であり、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有し、かつ、極性変換基を有する樹脂Cと、
表面エネルギーが25mJ/m以下であり、かつ、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位を含む樹脂Dと、を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記樹脂Dが、極性変換基を有する繰り返し単位、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位、スチレン誘導体由来の繰り返し単位、又は、フッ素原子及び珪素原子のいずれも有さず、酸に対して安定であり、かつ、アルカリ現像液に対して難溶又は不溶である繰り返し単位を更に含み、
前記樹脂Dの含有量が、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、1.1質量%以上である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂Aと、
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物Bと、
表面エネルギーが25mJ/m超であり、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有し、かつ、極性変換基を有する樹脂Cと、
表面エネルギーが25mJ/m以下であり、かつ、珪素原子を有する繰り返し単位を含む樹脂Dと、を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記樹脂Dの含有量が、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、1.1質量%以上である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
更に、2種以上の溶剤を含み、
前記溶剤のうち少なくとも1種の溶剤の沸点が140℃以上である、請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
沸点が140℃以上の第一溶剤と、前記第一溶剤よりも沸点が高い第二溶剤とを含む、請求項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂Cに対する、前記樹脂Dの質量比が0.1以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する、レジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜に活性光線又は放射線を照射する、露光工程と、
前記活性光線又は放射線が照射された前記レジスト膜を、アルカリ現像液を用いて現像する、現像工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項8】
請求項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子デバイスの構造の微細化に伴い、より微細なレジストパターン(以後、単に「パターン」とも称する)を形成するために液浸露光が用いられている。液浸露光において、液浸液としては純水が用いられることが多い。
液浸露光においてスキャン式の液浸露光機を用いて露光する場合には、液浸露光機のレンズの高速移動に追随して、液浸液も高速移動することが求められる。
特許文献1においては、液浸液の高速移動が可能なレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物膜)を形成し得る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-044358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、近年、液浸露光において、さらなる高速スキャン化が求められている。
本発明者らは、特許文献1に記載された感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて液浸露光(液浸液:水)を行ったところ、形成したレジスト膜の撥水性に改善の余地があることを知見した。
また、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてパターンを形成する際には、露光処理後にアルカリ現像液を用いた現像処理及びリンス液を用いたリンス処理が実施される場合が多い。そのため、レジスト膜上において、アルカリ現像液又はリンス液等の親水性溶液が濡れ広がることが求められている。つまり、アルカリ現像液とレジスト膜とが接触した後において、レジスト膜の親水性が高いことが求められている。
更に、形成されるパターンの線幅の均一性も求められている。言い換えれば、良好なラインウィズスラフネス(Line Width Roughness:LWR)を有するパターンが形成可能であることも求められている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、優れた撥水性を有しつつ、アルカリ現像液と接触した後に親水性が向上するレジスト膜を形成でき、かつ、LWRに優れたパターンを形成できる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、レジスト膜、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定の樹脂を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0007】
(1) 酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂Aと、
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物Bと、
表面エネルギーが25mJ/m超であり、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有し、かつ、極性変換基を有する樹脂Cと、
表面エネルギーが25mJ/m以下である樹脂Dと、を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
樹脂Dの含有量が、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、1.1質量%以上である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(2) 更に、2種以上の溶剤を含み、
溶剤のうち少なくとも1種の溶剤の沸点が140℃以上である、(1)に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(3) 沸点が140℃以上の第一溶剤と、第一溶剤よりも沸点が高い第二溶剤とを含む、(2)に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(4) 樹脂Cに対する、樹脂Dの質量比が0.1以上である、(1)~(3)のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(5) (1)~(4)のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
(6) (1)~(4)のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する、レジスト膜形成工程と、
レジスト膜に活性光線又は放射線を照射する、露光工程と、
活性光線又は放射線が照射されたレジスト膜を、アルカリ現像液を用いて現像する、現像工程と、を含むパターン形成方法。
(7) (6)に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた撥水性を有しつつ、アルカリ現像液と接触した後に親水性が向上するレジスト膜を形成でき、かつ、LWRに優れたパターンを形成できる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供できる。
また、本発明によれば、レジスト膜、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル及びエキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extremeultravioletlithography光)、X線、並びに、電子線等を意味する。また本明細書において光とは、活性光線及び放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル及びエキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、並びに、EUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も包含する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタアクリレートを表す。
【0010】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以後、単に「本発明の組成物」とも称する)の特徴点としては、極性変換基を有する樹脂Cと所定の表面エネルギーを示す樹脂Dとを併用しつつ、樹脂Dが所定量以上含まれる点が挙げられる。樹脂Dが所定量以上用いられることにより、レジスト膜の撥水性及びパターンのLWRが優れる。また、樹脂Cが用いられることにより、アルカリ現像液と接触後のレジスト膜の親水性が向上する。
【0011】
以下では、まず、本発明の組成物に含まれる各成分について説明した後、パターン形成方法について説明する。
なお、以下では、本発明の特徴点である樹脂C及び樹脂Dから説明する。
【0012】
<表面エネルギーが25mJ/m超であり、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有し、かつ、極性変換基を有する樹脂C>
樹脂Cは、表面エネルギーが25mJ/m超であり、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有し、かつ、極性変換基を有する樹脂である。
【0013】
樹脂Cは、表面エネルギーが25mJ/m超である樹脂である。
樹脂Cの表面エネルギーは25mJ/m超であり、レジスト膜中での樹脂Cの偏在性制御の観点で、28mJ/m以上が好ましく、32mJ/m以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、40mJ/m以下の場合が多い。
樹脂Cの表面エネルギーの測定方法としては、後述する実施例において詳述するが、樹脂Cの単独膜を作製し、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、純水及びジヨードメタンの静止接触角(°)を測定する。得られた水の静止接触角及びジヨードメタンの静止接触角を用いてOwens-Wendt法により単独膜の表面エネルギーを算出し、樹脂Cの表面エネルギーとする。
なお、後述する樹脂Dの表面エネルギーも同様の方法により算出する。
【0014】
極性変換基とは、アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基であることが好ましい。極性変換基としては、例えば、ラクトン基、カルボン酸エステル基(-COO-)、酸無水物基(-C(O)OC(O)-)、酸イミド基(-NHCONH-)、カルボン酸チオエステル基(-COS-)、炭酸エステル基(-OC(O)O-)、硫酸エステル基(-OSOO-)、及び、スルホン酸エステル基(-SOO-)等が挙げられる。
このような基であれば、レジスト膜とアルカリ現像液とが接触すると、レジスト膜表面においてアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基が生じ、レジスト膜表面において親水性が向上し、アルカリ現像液の濡れ性が向上する。
なお、アクリレート基におけるような、繰り返し単位の主鎖に直結のエステル基は、「アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解性が増大する機能」が劣るため、本発明における極性変換基には含まれない。
【0015】
(極性変換基を有する繰り返し単位)
樹脂Cは、極性変換基を有する繰り返し単位(c)を含むことが好ましい。
繰り返し単位(c)として、例えば、一般式(K0)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
式中、Rk1は、極性変換基を含む基、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。
k2は、極性変換基を含む基、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。
但し、Rk1及びRk2の少なくとも一方は、極性変換基を含む基を表す。
なお、一般式(K0)で表される繰り返し単位の主鎖に直結しているエステル基は、前述したように、本発明における極性変換基には含まれない。
【0018】
極性変換基としては、一般式(KA-1)又は一般式(KB-1)で表される部分構造におけるXで表される基が好ましい。
【0019】
【化2】
【0020】
一般式(KA-1)又は一般式(KB-1)におけるXは、カルボン酸エステル基(-COO-)、酸無水物基(-C(O)OC(O)-)、酸イミド基(-NHCONH-)、カルボン酸チオエステル基(-COS-)、炭酸エステル基(-OC(O)O-)、硫酸エステル基(-OSOO-)、又は、スルホン酸エステル基(-SOO-)を表す。
及びYは、それぞれ同一でも異なってもよく、電子求引性基を表す。
なお、繰り返し単位(c)は、一般式(KA-1)又は一般式(KB-1)で表される部分構造を有する基を有することが好ましい。なお、一般式(KA-1)で表される部分構造、並びに、Y及びYが1価である場合の一般式(KB-1)で表される部分構造の場合のように、部分構造が結合手を有しない場合は、上記一般式(KA-1)又は一般式(KB-1)で表される部分構造を有する基とは、一般式(KA-1)又は一般式(KB-1)で表される部分構造における任意の水素原子を少なくとも1つ除いた1価以上の基を有する基である。
一般式(KA-1)又は一般式(KB-1)で表される部分構造は、任意の位置で置換基を介して樹脂Cの主鎖に連結してもよい。
【0021】
一般式(KA-1)で表される部分構造は、Xとしての基とともに環構造を形成する構造である。
Xとしては、カルボン酸エステル基(即ち、一般式(KA-1)としてラクトン環構造を形成する場合)、酸無水物基、又は、炭酸エステル基が好ましく、カルボン酸エステル基がより好ましい。
一般式(KA-1)で表される環構造は、置換基を有していてもよく、例えば、置換基Zka1をnka個有していてもよい。
ka1は、複数ある場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、エーテル基、水酸基、アミド基、アリール基、ラクトン環基、又は、電子求引性基を表す。
ka1同士が連結して環を形成してもよい。Zka1同士が連結して形成する環としては、例えば、シクロアルキル環、及び、ヘテロ環(環状エーテル環、ラクトン環等)が挙げられる。
nkaは0~10の整数を表し、8以下の整数が好ましく、5以下の整数がより好ましく、4以下の整数が更に好ましく、3以下の整数が特に好ましい。下限に関しては、1以上であってもよい。
ka1で表される電子求引性基としては、後述のY及びYで表される電子求引性基と同様である。
なお、上記電子求引性基は、別の電子求引性基で置換されていてもよい。
【0022】
一般式(KA-1)としては、Xがカルボン酸エステル基であり一般式(KA-1)が示す部分構造がラクトン環であることが好ましく、5~7員環ラクトン環であることがより好ましい。5~7員環ラクトン構造に、ビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環していてもよい。
【0023】
一般式(KA-1)が示すラクトン環構造を含む構造として、下記一般式(KA-1-1)~一般式(KA-1-17)のいずれかで表される構造が好ましい。なお、ラクトン環構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としては、一般式(KA-1-1)、一般式(KA-1-4)、一般式(KA-1-5)、一般式(KA-1-6)、一般式(KA-1-13)、一般式(KA-1-14)、又は、一般式(KA-1-17)で表される構造である。
【0024】
【化3】
【0025】
上記ラクトン環構造を含む構造は、置換基を有していてもよい。
【0026】
一般式(KB-1)のXとしては、カルボン酸エステル基(-COO-)が好ましい。
一般式(KB-1)におけるY及びYは、各々独立に、電子求引性基を表す。
電子求引性基としては、例えば、下記一般式(EW)で表される基が挙げられる。一般式(EW)における*は、一般式(KA-1)に直結している結合手、又は、一般式(KB-1)中のXに直結している結合手を表す。
【0027】
【化4】
【0028】
一般式(EW)中、
ewは-C(Rew1)(Rew2)-で表される連結基の繰り返し数であり、0又は1の整数を表す。newが0の場合は単結合を表し、直接Yew1が結合していることを表す。
ew1としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基、-C(Rf1)(Rf2)-Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基、ハロアリール基、オキシ基、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、及び、これらの組み合わせが挙げられる。なお、「ハロ(シクロ)アルキル基」とは、少なくとも一部がハロゲン化した、アルキル基及びシクロアルキル基を表す。
【0029】
電子求引性基は、例えば、以下で例示される基であってもよい。
ew3及びRew4は、各々独立して、任意の基を表す。Rew3及びRew4はどのような基でも一般式(EW)で表される基は電子求引性を有する。なかでも、Rew3及びRew4は、アルキル基、シクロアルキル基、又は、フッ化アルキル基であることが好ましい。
【0030】
【化5】
【0031】
ew1が2価以上の基である場合、残る結合手は、任意の原子又は置換基との結合を形成するものである。Yew1、Rew1、及び、Rew2の少なくともいずれかの基が更なる置換基を介して樹脂Cの主鎖に連結していてもよい。
ew1としては、ハロゲン原子、又は、-C(Rf1)(Rf2)-Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基が好ましい。
ew1及びRew2、各々独立して、任意の置換基を表し、例えば、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。
ew1、Rew2及びYew1の少なくとも2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
【0032】
f1は、ハロゲン原子、パーハロアルキル基、パーハロシクロアルキル基、又はパーハロアリール基を表し、フッ素原子、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基が好ましく、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がより好ましい。
f2及びRf3は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は有機基を表し、Rf2とRf3とが連結して環を形成してもよい。有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、パーハロアルキル基、パーハロシクロアルキル基、及び、パーハロアリール基を表す。なかでも、有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルキル基、又は、パーフルオロシクロアルキル基が好ましい。
f2は、Rf1と同様の基を表すか、又は、Rf3と連結して環を形成していることがより好ましい。
f1~Rf3とは連結して環を形成してもよく、形成する環としては、(ハロ)シクロアルキル環、及び、(ハロ)アリール環等が挙げられる。
【0033】
ew1、Rew2及びYew1の少なくとも2つが互いに連結して形成してもよい環としては、シクロアルキル基又はヘテロ環基が好ましく、ヘテロ環基としてはラクトン環基が好ましい。ラクトン環としては、例えば、上記一般式(KA-1-1)~一般式(KA-1-17)で表される構造が挙げられる。
【0034】
なお、繰り返し単位(c)は、一般式(KA-1)で表される部分構造を複数、又は、一般式(KB-1)で表される部分構造を複数有していてもよい。
また、繰り返し単位(c)は、一般式(KA-1)の部分構造と一般式(KB-1)との両方を有していてもよい。
【0035】
繰り返し単位(c)は、1つの側鎖上に、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方と極性変換基とを有する繰り返し単位(c’)であっても、極性変換基を有し、かつ、フッ素原子及び珪素原子を有さない繰り返し単位(c*)であっても、1つの側鎖上に極性変換基を有し、かつ、同一繰り返し単位内の上記側鎖と異なる側鎖上に、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位(c”)であってもよい。
なかでも、樹脂Cは、繰り返し単位(c)として繰り返し単位(c’)を有することがより好ましい。
【0036】
樹脂Cが繰り返し単位(c*)を有する場合、樹脂Cは、繰り返し単位(c*)と、後述する「フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位」とのコポリマーであることが好ましい。
また、繰り返し単位(c”)における、「極性変換基を有する側鎖」と「フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する側鎖」とは、主鎖中の同一の炭素原子に結合している、すなわち下記一般式(4)のような位置関係にあることが好ましい。式中、B1は極性変換基を有する基を表し、B2はフッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する基を表す。
【0037】
【化6】
【0038】
また、繰り返し単位(c*)及び繰り返し単位(c”)においては、極性変換基が、一般式(KA-1)で示す構造においてXが-COO-で表される部分構造であることがより好ましい。
【0039】
一般式(KA-1)で表される部分構造としては、下記一般式(KY-2)で表される部分構造が好ましい。
つまり、樹脂Cは、一般式(KY-2)で表される部分構造における任意の水素原子を少なくとも1つ除いた1価以上の基を有することが好ましい。
【0040】
【化7】
【0041】
一般式(KY-2)中、Rky6~Rky10は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、エーテル基、水酸基、シアノ基、アミド基、又は、アリール基を表す。
ky6~Rky10は、2つ以上が互いに連結して単環又は多環構造を形成してもよい。
ky5は電子求引性基を表す。電子求引性基は上記一般式(KB-1)におけるY及びYで表される電子求引性基と同様のものが挙げられ、ハロゲン原子、又は、-C(Rf1)(Rf2)-Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基が好ましい。
一般式(KY-2)で表される部分構造は、下記一般式(KY-3)で表される基であることが好ましい。*は結合位置を表す。
【0042】
【化8】
【0043】
一般式(KY-3)中、
ka1及びnkaは、各々一般式(KA-1)中のZka1及びnkaと同義である。Rky5は、一般式(KY-2)中のRky5と同義である。
kyは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。Lkyのアルキレン基としては、メチレン基及びエチレン基が挙げられる。Lkyは酸素原子又はメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。
【0044】
繰り返し単位(c)は、付加重合、縮合重合、及び、付加縮合等、重合により得られる繰り返し単位であることが好ましく、炭素-炭素2重結合の付加重合により得られる繰り返し単位であることがより好ましい。例えば、(メタ)アクリレート系繰り返し単位(α位、β位に置換基を有する系統も含む)、スチレン系繰り返し単位(α位、β位に置換基を有する系統も含む)、ビニルエーテル系繰り返し単位、ノルボルネン系繰り返し単位、及び、マレイン酸誘導体(マレイン酸無水物やその誘導体、マレイミド等)の繰り返し単位等が挙げられ、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、ビニルエーテル系繰り返し単位、又は、ノルボルネン系繰り返し単位が好ましく、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、ビニルエーテル系繰り返し単位、又は、ノルボルネン系繰り返し単位がより好ましく、(メタ)アクリレート系繰り返し単位が更に好ましい。
【0045】
樹脂Cは、一般式(2)で表される基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0046】
【化9】
【0047】
一般式(2)中、
は、鎖状又は環状アルキレン基を表し、複数個ある場合は、同じでも異なっていてもよい。
は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基を示す。
は、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、R-C(=O)-、又は、R-C(=O)O-で表される基(Rは、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。)を表す。Rが複数個ある場合は、同じでも異なっていてもよく、また、2つ以上のRが結合し、環を形成していてもよい。
【0048】
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数ある場合は、同じでも異なっていてもよい。
*は、結合位置を表す。
nは、繰り返し数を表し、0~5の整数を表す。
mは、置換基数であって、0~7の整数を表す。
-R-Z-の構造としては、-(CH-COO-で表される構造が好ましい(lは1~5の整数を表す)。
極性変換基を有する繰り返し単位(c)の具体例としては、例えば、特開2015-143881号公報の段落0315~0316に記載の繰り返し単位が挙げられ、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0049】
繰り返し単位(c)の含有量は、樹脂C中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、20~100モル%がより好ましく、30~100モル%が更に好ましく、40~100モル%が特に好ましい。
繰り返し単位(c’)の含有量は、樹脂C中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、20~100モル%がより好ましく、30~100モル%が更に好ましく、40~100モル%が特に好ましい。
繰り返し単位(c*)の含有量は、樹脂C中の全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、15~85モル%がより好ましく、20~80モル%が更に好ましく、25~75モル%が特に好ましい。
繰り返し単位(c*)と共に用いられる、後述する「フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位」の含有量は、樹脂C中の全繰り返し単位に対し、10~90モル%が好ましく、15~85モル%がより好ましく、20~80モル%が更に好ましく、25~75モル%が特に好ましい。
繰り返し単位(c”)の含有量は、樹脂C中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、20~100モル%がより好ましく、30~100モル%が更に好ましく、40~100モル%が特に好ましい。
【0050】
(フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位)
樹脂Cは、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位を含んでいてもよい。なお、この繰り返し単位には、極性変換基は含まれない。
フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位としては、フッ素原子を有する繰り返し単位、珪素原子を有する繰り返し単位、及び、フッ素原子と珪素原子との両方を有する繰り返し単位が挙げられ、フッ素原子を有する繰り返し単位が好ましい。
【0051】
フッ素原子を有する繰り返し単位は、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有することが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、更に他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更に他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基及びナフチル基等のアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更に他の置換基を有していてもよい。
【0052】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基としては、下記一般式(F2)~(F4)のいずれかで表される基が好ましい。
【0053】
【化10】
【0054】
一般式(F2)~(F4)中、
57~R68は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状)を表す。但し、R57~R61の少なくとも1つ、R62~R64の少なくとも1つ及びR65~R68の少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1~4)を表す。
57~R61及びR65~R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R62、R63及びR68は、フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1~4)が好ましく、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0055】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p-フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、及び、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2-メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ-t-ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、及び、パーフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、-C(CFOH、-C(COH、-C(CF)(CH)OH、及び、-CH(CF)OH等が挙げられる。
【0056】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基は、直接樹脂Cの主鎖に結合してもよい。
また、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基は、アルキレン基、フェニレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、及び、ウレイレン基からなる群から選択される単独又は2つ以上の基の組み合わせを介して結合してもよい。
フッ素原子を有する繰り返し単位としては、以下に示すものが好適に挙げられる。
【0057】
【化11】
【0058】
式中、R10及びR11は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基(好ましくは炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、置換基を有するアルキル基としてはフッ素化アルキル基が挙げられる。)を表す。
~Wは、各々独立に、少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む有機基を表す。具体的には上記一般式(F2)~(F4)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0059】
珪素原子を有する繰り返し単位は、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、又は、環状シロキサン構造を有する基を有することが好ましい。
アルキルシリル構造、又は、環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS-1)~(CS-3)で表される基等が挙げられる。
【0060】
【化12】
【0061】
一般式(CS-1)~(CS-3)において、
12~R26は、各々独立に、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(好ましくは炭素数1~20)又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)を表す。
~Lは、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、及び、ウレイレン基からなる群から選択される単独又は2つ以上の基の組み合わせを挙げられる。
nは、1~5の整数を表す。
【0062】
なお、フッ素原子及び珪素原子の両方を有する繰り返し単位としては、例えば、上述した一般式(F2)~(F4)のいずれかで表される基と、一般式(CS-1)~(CS-3)のいずれかで表される基とを有する繰り返し単位が挙げられる。
【0063】
(スチレン誘導体由来の繰り返し単位)
樹脂Cは、スチレン誘導体由来の繰り返し単位を含んでいてもよい。
スチレン誘導体由来の繰り返し単位としては、一般式(ST)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0064】
【化13】
【0065】
一般式(ST)中、Rc6はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシカルボニル基、又は、アルキルカルボニルオキシ基を表す。Rc6としては、t-ブチル基が好ましい。
上記アルキル基は、炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
上記シクロアルキル基は、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましい。
上記アルケニル基は、炭素数3~20のアルケニル基が好ましい。
上記シクロアルケニル基は、炭素数3~20のシクロアルケニル基が好ましい。
上記アルコキシカルボニル基は、炭素数2~20のアルコキシカルボニル基が好ましい。
上記アルキルカルボニルオキシ基は、炭素数2~20のアルキルカルボニルオキシ基が好ましい。
Racは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、シアノ基又は-CH-O-Rac基を表す。式中、Racは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Racは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、又は、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、又は、メチル基がより好ましい。
nは0~5の整数を表す。nが2以上の場合、複数のRc6は同一でも異なっていてもよい。
c6としては、無置換のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基又はt-ブチル基がより好ましい。
【0066】
スチレン誘導体由来の繰り返し単位の含有量は、樹脂Cの全繰り返し単位に対して、0~30モル%が好ましく、3~20モル%がより好ましく、5~15モル%が更に好ましい。
【0067】
(アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位)
樹脂Cは、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含んでいてもよい。
アルカリ可溶性基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
【0068】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸若しくはメタクリル酸由来の繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、又は、連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位等が挙げられる。また、アルカリ可溶性基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端にアルカリ可溶性基を導入することもできる。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂C中の全繰り返し単位に対して、1~50モル%が好ましく、3~35モル%がより好ましく、5~30モル%が更に好ましい。
【0069】
(他の繰り返し単位)
樹脂Cは、フッ素原子及び珪素原子のいずれも有さず、酸に対して安定であり、かつ、アルカリ現像液に対して難溶又は不溶である繰り返し単位(以後、「繰り返し単位X」とも称する)を含んでいてもよい。
上記繰り返し単位Xとしては、下記一般式(CIII)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0070】
【化14】
【0071】
一般式(CIII)において、
c31は、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、シアノ基又は-CH-O-Rac基を表す。式中、Racは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Rc31は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、又は、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、又は、メチル基がより好ましい。
c32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、又は、シクロアルケニル基を表す。
c3は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0072】
c32で表されるアルキル基は、炭素数3~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
c32で表されるシクロアルキル基は、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましい。
c32で表されるアルケニル基は、炭素数3~20のアルケニル基が好ましい。
c32で表されるシクロアルケニル基は、炭素数3~20のシクロアルケニル基が好ましい。
c3で表される2価の連結基は、エステル基、アミド基、アルキレン基(好ましくは炭素数1~5)、又は、オキシ基が好ましい。
【0073】
上記繰り返し単位Xの含有量は、樹脂C中の全繰り返し単位に対して、1~40モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましい。
【0074】
樹脂Cの重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法によるポリスチレン換算値として、1,000~100,000が好ましく、1,000~50,000がより好ましく、2,000~15,000が更に好ましい。
樹脂Cの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、1.0~2.5が好ましく、1.0~2.0がより好ましい。
【0075】
本発明の組成物中における上記樹脂Cの含有量は特に制限されないが、レジスト膜の撥水性及びアルカリ現像液と接触後の親水性のバランスの点で、組成物中の全固形分に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
また、樹脂Cは、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
なお、上記全固形分とは、レジスト膜を構成する成分の合計を意図し、溶剤は固形分には含まれない。
【0076】
<表面エネルギーが25mJ/m以下である樹脂D>
樹脂Dは、表面エネルギーが25mJ/m以下である樹脂である。
樹脂Dの表面エネルギーは25mJ/m以下であり、レジスト膜中での樹脂Dの偏在性制御の観点で、23mJ/m以下が好ましく、20mJ/m以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、15mJ/m以上の場合が多い。
なお、レジスト膜中での樹脂Cと樹脂Dの偏在性制御の点で、樹脂Cの表面エネルギーと樹脂Dの表面エネルギーとの差{(樹脂Cの表面エネルギー)-(樹脂Dの表面エネルギー)}は、上記の点で、5mJ/m以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、20mJ/m以下の場合が多い。
樹脂Dの表面エネルギーの測定方法としては、上述した樹脂Cの表面エネルギーの測定方法と同じである。
【0077】
樹脂Dに含まれる繰り返し単位の種類は特に制限されないが、樹脂Dには、上述した樹脂Cに含まれてもよいフッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位が含まれることが好ましく、フッ素原子を有する繰り返し単位が含まれることがより好ましい。
樹脂D中におけるフッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位の含有量は、レジスト膜の撥水性がより優れる点で、樹脂D中の全繰り返し単位に対して、1~100モル%が好ましく、1~99モル%がより好ましく、5~96モル%が更に好ましい。
フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0078】
樹脂Dには、上述した樹脂Cに含まれる極性変換基を有する繰り返し単位が含まれていてもよい。
樹脂Dに極性変換基を有する繰り返し単位が含まれる場合、樹脂D中における極性変換基を有する繰り返し単位の含有量は、レジスト膜の撥水性がより優れる点で、樹脂D中の全繰り返し単位に対して、0.1~20モル%が好ましく、1~10モル%がより好ましい。
【0079】
樹脂Dには、上述した樹脂Cに含まれてもよいアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位が含まれていてもよい。
樹脂Dにアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位が含まれる場合、樹脂D中におけるアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、レジスト膜の撥水性がより優れる点で、樹脂D中の全繰り返し単位に対して、0.1~5モル%が好ましく、0.5~3モル%がより好ましい。
【0080】
樹脂Dには、上述した樹脂Cに含まれてもよいスチレン誘導体由来の繰り返し単位が含まれていてもよい。
樹脂Dにスチレン誘導体由来の繰り返し単位が含まれる場合、樹脂D中におけるスチレン誘導体由来の繰り返し単位の含有量は、レジスト膜の撥水性がより優れる点で、樹脂D中の全繰り返し単位に対して、0.1~40モル%が好ましく、0.5~20モル%がより好ましい。
【0081】
樹脂Dには、上述した樹脂Cに含まれてもよい繰り返し単位Xが含まれていてもよい。
樹脂Dに繰り返し単位Xが含まれる場合、樹脂D中における繰り返し単位Xの含有量は、レジスト膜の撥水性がより優れる点で、樹脂D中の全繰り返し単位に対して、0.1~20モル%が好ましく、1~10モル%がより好ましい。
【0082】
樹脂Dの重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として、1,000~100,000が好ましく、1,000~50,000がより好ましい。
樹脂Dの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、1.0~2.0が好ましく、1.0~1.7がより好ましい。
【0083】
本発明の組成物中における樹脂Dの含有量は、組成物中の全固形分に対して、1.1質量%以上であり、レジスト膜の撥水性、及び、アルカリ現像液と接触した後のレジスト膜の親水性のバランスがより優れる点で、1.1~10質量%が好ましく、1.1~5質量%がより好ましい。
また、樹脂Dは、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0084】
なお、樹脂Cに対する、樹脂Dの質量比(樹脂Dの質量/樹脂Cの質量)は特に制限されないが、レジスト膜の撥水性、及び、アルカリ現像液と接触した後のレジスト膜の親水性のバランスがより優れる点で、0.1以上であることが好ましく、0.3~5であることがより好ましい。
【0085】
<酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂A>
樹脂Aは、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂であり、樹脂の主鎖若しくは側鎖、又は、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂である。つまり、酸分解性基としては、アルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基が好ましい。
アルカリ可溶性基としては、樹脂Cで説明したアルカリ可溶性基が挙げられる。
【0086】
酸で脱離する基としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、及び、-C(R01)(R02)(OR39)が挙げられる。
式中、R36~R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、アルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0087】
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、アルケニル基を表す。
酸分解性基としては、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、又は、第三級のアルキルエステル基が好ましい。
【0088】
樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。酸分解性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0089】
【化15】
【0090】
一般式(AI)において、
Xaは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、各々独立に、アルキル基(直鎖状又は分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。
Rx~Rxの少なくとも2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環)を形成してもよい。
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
【0091】
Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している様態、及び/又は、Rx~Rxの少なくとも1つが上述のシクロアルキル基である態様が好ましい。
一般式(AI)における酸分解性基である-C(Rx)(Rx)(Rx)基は、置換基として少なくとも一つの-(L)n1-Pで表される基を有していてもよい。ここで、Lは2価の連結基、nは0又は1、Pは極性基を表す。
【0092】
Lの2価の連結基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び、シクロアルキレン基が挙げられる。上記2価の連結基の原子数は、20以下が好ましく、15以下がより好ましい。上記の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び、シクロアルキレン基は、炭素数8以下が好ましい。直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び、シクロアルキレン基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。
【0093】
Pの極性基としては、例えば、水酸基、ケトン基、シアノ基、アミド基、アルキルアミド基、スルホンアミド基、低級エステル基、及び、低級スルホナート基、のようなヘテロ原子を含む基が挙げられる。ここで低級とは炭素数2~3個の基が好ましい。極性基としては、水酸基、シアノ基、又は、アミド基が好ましく、水酸基がより好ましい。
【0094】
-(L)n1-Pで表される基は、n1=1の場合として、例えば、水酸基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミド基、酸アミド基、又は、スルホンアミド基を有する、直鎖状又は分岐状のアルキル基(好ましくは炭素数1~10)又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数3~15)が挙げられ、好ましくは、水酸基を有するアルキル基(好ましくは炭素数1~5であり、より好ましくは炭素数1~3)が挙げられる。
【0095】
なかでも、Pが水酸基であり、n1が0又は1であり、Lが直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(好ましくは炭素数1~5)であることが好ましい。
一般式(AI)における-C(Rx)(Rx)(Rx)で表される基は、-(L)n1-Pで表される基を1~3個有することが好ましく、1又は2個有することがより好ましく、1個有することが更に好ましい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位としては、以下の一般式(1-1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0096】
【化16】
【0097】
一般式(1-1)中、
は、一般式(AI)におけるXa1と同様のものである。
及びRは、一般式(AI)におけるRx及びRxと同様のものである。
-(L)n1-Pで表される基は、一般式(AI)についての-(L)n1-Pで表される基と同様である。
pは1~3の整数を表し、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0098】
一般式(AI)で表される繰り返し単位に対応するモノマーは、例えば、特開2006-16379号公報に記載の方法により合成することができる。
酸分解性基の好適態様としては、特開2010-44358号公報(以下、「文献A」という。)の0049~0054段落に記載された繰り返し単位が挙げられ、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0099】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、20~50モル%が好ましく、25~45モル%がより好ましい。
【0100】
樹脂Aは、更に、ラクトン基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基からなる群から選択される少なくとも1種の基を有する繰り返し単位を含むことが好ましく、ラクトン基(ラクトン構造)を有する繰り返し単位を含むことがより好ましい。
【0101】
樹脂Aが含み得るラクトン構造を有する繰り返し単位について説明する。
ラクトン構造としては、いずれでも用いることができるが、5~7員環ラクトン構造が好ましい。また、5~7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものも好ましい。
樹脂Aは、下記一般式(LC1-1)~一般式(LC1-17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-6)、一般式(LC1-13)、一般式(LC1-14)、又は、一般式(LC1-17)で表されるラクトン構造が挙げられる。
【0102】
【化17】
【0103】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb)を有していてもよい。置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基(アルキル基は、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。)、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、又は、酸分解性基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、又は、酸分解性基がより好ましい。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上の場合、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0104】
一般式(LC1-1)~一般式(LC1-17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0105】
【化18】
【0106】
一般式(AII)中、
Abは、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表す。Rbのアルキル基が有していてもよい。好ましい置換基としては、水酸基及びハロゲン原子が挙げられる。Abのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、沃素原子が挙げられる。Abとしては、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、又は、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
Aは、-COO-基又は-CONH-基を表す。
【0107】
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又は、これらを組み合わせた2価の連結基を表す。なかでも、単結合、又は、-Ab-CO-で表される2価の連結基が好ましい。
Abは、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキレン基を表し、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、又は、ノルボルニレン基が好ましい。
nは、1~5の整数を表す。nは1又は2が好ましく、1がより好ましい。
Vは、一般式(LC1-1)~一般式(LC1-17)のいずれかで表される構造を有する基を表す。
【0108】
ラクトン構造を含む繰り返し単位の具体例としては、例えば、文献Aの0064~0067段落に記載された繰り返し単位が挙げられ、上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0109】
樹脂Aは、下記一般式(3)で表されるラクトン構造を含む繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0110】
【化19】
【0111】
一般式(3)中、
Aは、エステル結合(-COO-)又はアミド結合(-CONH-)を表す。
は、複数個ある場合には各々独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、複数個ある場合には各々独立に、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、ウレタン結合、又はウレア結合を表す。
は、ラクトン構造を有する1価の有機基を表す。
nは、1~5の整数を表す。nは1又は2が好ましく、1がより好ましい。
は、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。
【0112】
で表されるアルキレン基又は環状アルキレン基は置換基を有してよい。
Zは、エーテル結合又はエステル結合が好ましく、エステル結合がより好ましい。
【0113】
上記一般式(3)で表されるラクトン構造を含む繰り返し単位としては、文献Aの段落0079に記載の繰り返し単位が挙げられ、上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0114】
ラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(3-1)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0115】
【化20】
【0116】
一般式(3-1)において、
、A、R、Z、及びnは、上記一般式(3)と同義である。
は、複数個ある場合には各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、水酸基又はアルコキシ基を表し、複数個ある場合には2つのRが結合し、環を形成していてもよい。
【0117】
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
mは、0~5の整数を表す。mは0又は1が好ましい。m=1である場合、Rはラクトンのカルボニル基のα位又はβ位に置換することが好ましく、α位に置換することがより好ましい。
のアルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、及び、t-ブトキシカルボニル基が挙げられる。Rとしては、メチル基、シアノ基、又は、アルコキシカルボニル基が好ましく、シアノ基がより好ましい。
Xのアルキレン基としては、メチレン基及びエチレン基が挙げられる。Xとしては、酸素原子又はメチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0118】
一般式(3-1)で表されるラクトン構造を含む繰り返し単位の具体例としては、文献Aの段落0083~0084に記載の繰り返し単位が挙げられ、上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0119】
ラクトン基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂A中の全繰り返し単位に対し、15~60モル%が好ましく、20~50モル%がより好ましく、30~50モル%が更に好ましい。
【0120】
樹脂Aは一般式(AI)及び一般(AII)に包含されない、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を含んでいてもよい。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位としては、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位が好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造における、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、又は、ノルボルナン基が好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)~(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0121】
【化21】
【0122】
一般式(VIIa)~(VIIc)において、
2c~R4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。但し、R2c~R4cのうちの少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、R2c~R4cのうちの1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)において、より好ましくは、R2c~R4cのうちの2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0123】
一般式(VIIa)~(VIId)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、文献Aの段落0090~0091に記載された繰り返し単位が挙げられ、上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0124】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、10~25モル%が更に好ましい。
【0125】
樹脂Aは、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含んでいてもよい。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、樹脂Cに含まれていてもよいアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位が挙げられる。
【0126】
樹脂Aは、更に、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、一般式(I)で表される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0127】
【化22】
【0128】
一般式(I)中、Rは少なくとも一つの環状構造を有し、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない炭化水素基を表す。
Raは、水素原子、アルキル基又は-CH-O-Ra基を表す。Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raとして、例えば、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基が挙げられる。
【0129】
また、樹脂(A)は、フッ素原子及び珪素原子のいずれも含まないことが好ましい。
【0130】
樹脂Aは、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1~10時間かけて滴下して加える滴下重合法等が挙げられ、滴下重合法が好ましい。
【0131】
樹脂Aの重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として、1,000~200,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましく、3,000~15,000が更に好ましく、5,000~13,000が特に好ましい。
樹脂Aの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、1.0~2.0が好ましく、1.0~1.7がより好ましい。
【0132】
本発明の組成物中における樹脂Aの含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、50~99質量%が好ましく、70~98質量%がより好ましい。
また、樹脂Aは、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0133】
<活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物B>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を含む。
【0134】
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又は、マイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物が挙げられる。
例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、及び、o-ニトロベンジルスルホネートが挙げられる。
【0135】
更に米国特許第3,779,778号明細書、欧州特許第126,712号明細書等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
酸発生剤としては、下記一般式(ZI)、(ZII)、又は、(ZIII)で表される化合物が好ましい。
【0136】
【化23】
【0137】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30であり、1~20が好ましい。
また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又は、カルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)が挙げられる。
【0138】
は、非求核性アニオンを表す。
としての非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオンが挙げられる。
非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。
【0139】
一般式(ZI)で表される化合物としては、以下に説明する化合物(ZI-1)、化合物(ZI-2)、又は、化合物(ZI-3)が好ましい。
化合物(ZI-1)は、上記一般式(ZI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0140】
次に、化合物(ZI-2)について説明する。
化合物(ZI-2)は、一般式(ZI)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含するものである。
【0141】
化合物(ZI-3)とは、以下の一般式(ZI-3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を含む化合物である。
【0142】
【化24】
【0143】
一般式(ZI-3)において、
1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
【0144】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、又は、アミド結合を含んでいてもよい。R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基及びペンチレン基が挙げられる。
Zcは、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)におけるZと同様の非求核性アニオンが挙げられる。
【0145】
一般式(ZII)、(ZIII)中、
204~R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204~R207のアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204~R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は、硫黄原子等を含む複素環構造を含むアリール基であってもよい。複素環構造を含むアリール基としては、例えば、ピロール残基(ピロールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、フラン残基(フランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、チオフェン残基(チオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)、インドール残基(インドールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、ベンゾフラン残基(ベンゾフランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、及び、ベンゾチオフェン残基(ベンゾチオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)等が挙げられる。
【0146】
Zcは、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZの非求核性アニオンと同様のものが挙げられる。
酸発生剤として、更に、下記一般式(ZIV)、一般式(ZV)、又は、一般式(ZVI)で表される化合物が挙げられる。
【0147】
【化25】
【0148】
一般式(ZIV)~(ZVI)中、
Ar及びArは、各々独立に、アリール基を表す。
208、R209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0149】
酸発生剤としては、一般式(ZI)~(ZIII)で表される化合物が好ましい。
また、酸発生剤としては、スルホン酸基又はイミド基を1つ含む酸を発生する化合物が好ましく、1価のパーフルオロアルカンスルホン酸を発生する化合物、1価のフッ素原子若しくはフッ素原子を含む基で置換された芳香族スルホン酸を発生する化合物、又は、1価のフッ素原子若しくはフッ素原子を含む基で置換されたイミド酸を発生する化合物がより好ましい。
酸発生剤のなかで、好ましい例を以下に挙げる。
【0150】
【化26】
【0151】
【化27】
【0152】
【化28】
【0153】
【化29】
【0154】
【化30】
【0155】
本発明の組成物中における酸発生剤の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
また、酸発生剤は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0156】
<任意成分>
上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は上記以外の成分を含んでいてもよい。上記以外の成分としては、例えば、溶剤、及び、塩基性化合物が挙げられる。
【0157】
(溶剤)
本発明の組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
上記各成分を溶解させて感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、有機溶剤が挙げられ、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、モノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキルが挙げられる。
【0158】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、環状ラクトン、モノケトン化合物、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキルの具体例としては、それぞれ、文献Aの段落0227、段落0228、段落0229、段落0230、段落0231、段落0232、及び、段落0233に記載されており、上記内容は本明細書に組み込まれる。また、好ましい溶剤としては、文献Aの段落0234に記載された溶剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0159】
上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
なかでも、レジスト膜の撥水性がより優れる点で、組成物が2種以上の溶剤を含み、上記2種以上の溶剤のうち少なくとも1種の溶剤の沸点が140℃以上である態様が好ましい。更に、沸点が140℃以上の第一溶剤と、第一溶剤よりも沸点が高い第二溶剤とを含む組成物がより好ましい。
なお、上記第一溶剤の沸点は140℃以上であり、145℃以上が好ましい。第一溶剤の沸点の上限は特に制限されないが、170℃以下の場合が多い。
第二溶剤の沸点は第一溶剤の沸点よりも高ければ特に制限されないが、第一溶剤の沸点よりも5℃以上高いことが好ましい。第二溶剤の沸点の上限は特に制限されないが、(第一溶剤の沸点+100℃)以下の場合が多い。
第一溶剤の質量に対する、第二溶剤の質量の比(第二溶剤/第一溶剤)は特に制限されないが、レジスト膜の撥水性がより優れる点で、0.01~1が好ましく、0.02~0.5がより好ましい。
なお、上記沸点は、1気圧下における沸点を意図する。
【0160】
本発明の組成物の全固形分濃度は、1~10質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましく、1~6質量%が更に好ましい。
【0161】
(塩基性化合物)
本発明の組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物を含んでいてもよい。なお、塩基性化合物の態様としては、文献Aの段落0238~段落0250に記載されており、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0162】
塩基性化合物として、好ましい化合物を以下に具体的に示すが、塩基性化合物はこれらに制限されるものではない。
【0163】
【化31】
【0164】
【化32】
【0165】
【化33】
【0166】
【化34】
【0167】
本発明の組成物中における塩基性化合物の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、0.001~10質量%が好ましく、0.01~7質量%がより好ましい。
また、塩基性化合物は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0168】
(界面活性剤)
本発明の組成物は、更に界面活性剤を含んでいてもよく、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、又は、2種以上を含むことが好ましい。
【0169】
本発明の組成物が上記界面活性剤を含むことにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないパターンを与えることが可能となる。
界面活性剤の具体的な態様としては、文献Aの段落0257~0262に記載されており、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0170】
本発明の組成物中における界面活性剤の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.001~1質量%がより好ましい。
また、界面活性剤は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0171】
(カルボン酸オニウム塩)
本発明の組成物は、カルボン酸オニウム塩を含んでいてもよい。
カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、及び、カルボン酸アンモニウム塩が挙げられる。特に、カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩が好ましい。更に、カルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が、芳香族基又は炭素-炭素2重結合を含まないことが好ましい。アニオン部としては、炭素数1~30の直鎖状、分岐鎖状、単環又は多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。
【0172】
(酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物)
本発明の組成物は、酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物(以下、「溶解阻止化合物」ともいう)を含んでいてもよい。溶解阻止化合物としては、220nm以下の透過性を低下させないため、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体のような、酸分解性基を含む脂環族化合物又は脂肪族化合物が好ましい。
なお、溶解阻止化合物の具体例としては文献Aの段落0270に記載された化合物が挙げられ、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0173】
(その他の添加剤)
本発明の組成物は、必要に応じて、更に染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び、現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)を含んでいてもよい。
【0174】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、以下の(A)~(C)の工程を含む。
(A)レジスト膜形成工程:感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上に、レジスト膜(感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物膜)を形成する工程。
(B)露光工程:レジスト膜に活性光線又は放射線を照射する工程。
(C)現像工程:活性光線又は放射線が照射されたレジスト膜を、アルカリ現像液を用いて現像する工程。
上記パターン形成方法は、上記工程以外の他の工程を含んでいてもよい。以下、各工程に態様を説明する。
【0175】
(レジスト膜形成工程)
レジスト膜形成工程は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上に、レジスト膜(感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物膜)を形成する工程である。
【0176】
基板上にレジスト膜を形成する方法としては、例えば、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布する方法が挙げられる。塗布方法は特に制限されず、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、及び、浸漬法が挙げられ、スピンコート法が好ましい。
【0177】
レジスト膜を形成後、必要に応じて基板を加熱(プリベーク(Prebake;PB))してもよい。これにより、不要な残留溶剤の除去された膜を形成することができる。レジスト膜形成後のプリベークの温度は特に制限されないが、50~160℃が好ましく、60~140℃がより好ましい。
【0178】
基板の種類は特に制限されるものではなく、シリコン、SiN、及びSiO等の無機基板;SOG(Spin on Glass)等の塗布系無機基板;IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶及びサーマルヘッド等の回路基板の製造工程、ならびにその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板;が挙げられる。
【0179】
レジスト膜の膜厚は特に制限されないが、100nm以下が好ましい。
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を配置してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、及び、アモルファスシリコン等の無機膜型;吸光剤とポリマー材料とからなる有機膜型;のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズ、DUV-40シリーズ、シプレー社製のAR-2、AR-3、AR-5、及び、日産化学社製のARC29A等のARCシリーズ等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0180】
(露光工程)
露光工程は、レジスト膜に活性光線又は放射線を照射する工程である。露光は、公知の方法により行うことができ、例えば、レジスト膜に対して、所定のマスクを通して、活性光線又は放射線を照射する。このとき、好ましくは、活性光線又は放射線を、液浸液を介して照射するが、これに制限されるものではない。露光量は適宜設定できるが、10~60mJ/cmが好ましい。
【0181】
露光装置に用いられる光源の波長は特に制限されないが、250nm以下の波長の光が好ましく、その例としては、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fエキシマレーザー光(157nm)、EUV光(13.5nm)、及び、電子線等が挙げられる。なかでも、ArFエキシマレーザー光(193nm)がより好ましい。
【0182】
液浸露光を行う場合、露光の前に、及び/又は、露光の後かつ加熱を行う前に、レジスト膜の表面を、水系の薬液で洗浄してもよい。
【0183】
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ、レジスト膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましい。特に、入手の容易さ、及び、取り扱いのし易さの点から、水が好ましい。
【0184】
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤(液体)を僅かな割合で水に添加してもよい。この添加剤は基板上のレジスト膜を溶解させず、かつ、レンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。これにより、不純物の混入による、レジスト膜上に投影される光学像の歪みを抑制できる。
【0185】
また、更に屈折率が向上できるという点で、屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
【0186】
本発明においては、レジスト膜に対してスキャン速度700mm/sec以上で液浸露光を行うことが可能である。なかでも、スキャン速度800mm/sec以上で液浸露光を行うことが好ましい。
【0187】
上記パターン形成方法は、露光工程を複数回実施していてもよい。その場合の、複数回の露光は同じ光源を用いても、異なる光源を用いてもよいが、1回目の露光には、ArFエキシマレーザー光(波長;193nm)を用いることが好ましい。
【0188】
露光の後、好ましくは、加熱(ベーク)を行い、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。ベークの温度は、良好なパターンが得られる限り特に制限されず、通常、40~160℃である。ベークの回数は、1回でも複数回であってもよい。
【0189】
(現像工程)
現像工程は、上記活性光線又は放射線が照射されたレジスト膜を、アルカリ現像液を用いて現像する工程である。
アルカリ現像液には、通常、溶剤として水が含まれる。
また、アルカリ現像液には、アルカリ成分が含まれる。アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、及び、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、及び、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、及び、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、及び、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、及び、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、及び、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、並びに、ピロール、及び、ピペリジン等の環状アミン類等のいずれかを含むアルカリ水溶液が挙げられる。
更に、上記アルカリ現像液に、アルコール類、及び/又は、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0190】
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常、0.1~20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常、10.0~15.0である。
【0191】
上記アルカリ現像液を用いた現像処理の後、必要に応じて、リンス液を用いたリンス処理を実施してもよい。
リンス液としては、例えば、純水が挙げられる。また、リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0192】
また、現像処理、又は、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0193】
上記パターン形成方法は、電子デバイスの製造方法に適用することができる。本明細書において、電子デバイスとは、半導体デバイス、液晶デバイス、及び、電気電子機器(家電、メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)を意図する。
【実施例
【0194】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により制限的に解釈されるべきものではない。
【0195】
(樹脂A(酸分解性樹脂))
実施例で用いた樹脂Aの構造を以下に示す。また、表1に、各樹脂における繰り返し単位のモル比率(構造式における左から順)、重量平均分子量(Mw)、及び、分子量分布(Pd=Mw/Mn)を示す。
【0196】
【化35】
【0197】
【表1】
【0198】
(酸発生剤B)
実施例で用いた酸発生剤Bを以下に示す。
【0199】
【化36】
【0200】
(樹脂C)
実施例で用いた樹脂Cの構造を以下に示す。また、表2に、各樹脂における繰り返し単位のモル比率(構造式における左から順)、重量平均分子量(Mw)、及び、分子量分布(Pd=Mw/Mn)を示す。
【0201】
【化37】
【0202】
【表2】
【0203】
(樹脂D)
実施例で用いた樹脂Dの構造を以下に示す。また、表3に、各樹脂における繰り返し単位のモル比率(構造式における左から順)、重量平均分子量(Mw)、及び、分子量分布(Pd=Mw/Mn)を示す。
【0204】
【化38】
【0205】
【化39】
【0206】
【表3】
【0207】
(塩基性化合物)
実施例で用いた塩基性化合物を以下に示す。
【0208】
【化40】
【0209】
(溶剤)
実施例で用いた溶剤を以下に示す。
SL-1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(沸点:146℃)
SL-2: γ-ブチロラクトン(沸点:204℃)
SL-3: シクロヘキサノン(沸点:155℃)
SL-4: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)(沸点:120℃)
SL-5: n-デカン(沸点:174℃)
【0210】
(感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製)
下記表4に示す成分を溶剤に溶解させ固形分濃度4.2質量%の溶液を調製し、これを0.03ミクロンのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)を調製した。
なお、表4中の溶剤欄の「質量比」は、使用された2種の溶剤間の質量比を意図する。
【0211】
【表4】
【0212】
シリコンウエハー上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚86nmの反射防止膜を形成した。
形成した反射防止膜上に調製した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布し、130℃で60秒間にわたって塗膜のベークを行い、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜付きウエハーをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製 PAS5500/1100、NA0.75)を用い、幅75nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては超純水を使用した。その後、露光処理が施されたレジスト膜を95℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してパターンを得た。
【0213】
(LWR評価)
上記手順にて75nmに仕上がっているラインパターンについて走査型顕微鏡(日立社製S9260)で観察し、ラインパターンの長手方向のエッジ2μmの範囲について、エッジがあるべき基準線からの距離を50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0214】
(動的後退接触角評価)
シリコンウエハー上に調製した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物をスピン塗布した後、ホットプレートにて塗膜のベークを行い、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
続いて上記ウエハーを接触角計のウエハーステージへ設置した。シリンジより純水の液滴を吐出し保持した状態で、レジスト膜へ液滴を接触させた。次いで、シリンジを固定したままウエハーステージを250mm/secの速さで移動させた。ステージ移動中の液滴の後退角を測定し、接触角が安定した値を動的後退角とした。
なお、上記接触角の測定は、室温23±3℃にて実施した。
【0215】
(現像後接触角評価)
シリコンウエハー上に調製した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物をスピン塗布した後、ホットプレートにて塗膜のベークを行い、90nmのレジスト膜を形成した。
続いてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥した。
その後、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、得られたレジスト膜表面での水滴の静止接触角(°)を測定した。室温23±3℃、湿度45±5%において液滴サイズ35μLで測定し、接触角が安定した値を現像後接触角とした。値が大きいほどアルカリ現像液と接触した後のレジスト膜の親水性が高く、アルカリ現像液の濡れ広がり性が良好であることを示す。
【0216】
(表面エネルギー評価)
表2に示す各樹脂Cをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、固形分濃度4.0質量%の溶液を調製した。
シリコンウエハー上に調製した溶液をスピン塗布した後、ホットプレートにて塗膜のベークを行い、膜厚90nmの膜を形成した。その後、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、純水及びジヨードメタンの静止接触角(°)を測定した。具体的には、室温23±3℃、湿度45±5%において液滴サイズ35μLで測定し、接触角が安定した値を静止接触角とした。得られた水の静止接触角及びジヨードメタンの静止接触角を用いてOwens-Wendt法により膜の表面エネルギーを算出し、各樹脂Cの表面エネルギーとした。
なお、上記樹脂Cの代わりに、表3に示す樹脂Dを用いて、同様の手順に従って、各樹脂Dの表面エネルギーを算出した。
【0217】
【表5】
【0218】
表5に示すように、本発明の組成物を用いることにより、所望の効果が得られることが確認された。
一方で、樹脂Dを用いていない比較例1、樹脂Dの含有量が1.1質量%未満である比較例2、及び、樹脂Dの表面エネルギーが25mJ/m超である比較例3においては、所望の効果が得られなかった。