(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】プリント配線板用の硬化性絶縁性組成物、ドライフィルム、硬化物、プリント配線板およびプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20220405BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20220405BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220405BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220405BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20220405BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220405BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H05K1/03 610Q
H05K3/28 C
H05K3/28 F
C08L101/00
C08K3/013
C08K3/00
G03F7/004 501
G03F7/033
(21)【出願番号】P 2018548999
(86)(22)【出願日】2017-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2017039190
(87)【国際公開番号】W WO2018084121
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2016214706
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000035
【氏名又は名称】株式会社 東北テクノアーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】宇敷 滋
(72)【発明者】
【氏名】三輪 崇夫
(72)【発明者】
【氏名】有田 稔彦
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/137432(WO,A1)
【文献】特開2016-86000(JP,A)
【文献】特開2011-162718(JP,A)
【文献】国際公開第2005/113650(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/137430(WO,A1)
【文献】特開2013-95690(JP,A)
【文献】特開2016-80869(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0281070(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00―3/40
C08L101/00
G03F7/004―7/037
H05K1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理無機フィラーと硬化性樹脂を含有する組成物であって、
前記表面処理無機フィラーが、無機フィラー上にリビングラジカル重合で有機表面処理したものであ
り、
前記リビングラジカル重合に用いる重合性モノマーが、(メタ)アクリル酸化合物、スチレン、スチレン誘導体、ビニルエステル化合物のうちいずれか1種以上であることを特徴とするプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物
(ただし、無機物とこの無機物表面に化学結合されたカルボジイミド基含有有機層とを備える充填剤を含む硬化性絶縁性組成物を除く)。
【請求項2】
さらに、リビングラジカル重合で有機表面処理していない無機フィラーを含むことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物。
【請求項3】
前記表面処理無機フィラーは、少なくともリビングラジカル重合で疎水性の有機表面処理したものであることを特徴とする請求項1
または2に記載のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物。
【請求項4】
前記表面処理無機フィラーは、無機フィラー上にリビングラジカル重合で親水性の有機表面処理した後、リビングラジカル重合で疎水性の有機表面処理したものであることを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物。
【請求項5】
前記硬化性樹脂として、熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項1
~4のいずれか1項に記載のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物。
【請求項6】
前記硬化性樹脂として、光硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項1
~5のいずれか1項に記載のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物。
【請求項7】
前記硬化性樹脂が、アルカリ現像型であることを特徴とする請求項1
~6のいずれか1項に記載のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物。
【請求項8】
ソルダーレジスト組成物であることを特徴とする請求項1
~7のいずれか1項に記載のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物。
【請求項9】
層間絶縁材であることを特徴とする請求項1
~7のいずれか1項に記載のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物。
【請求項10】
請求項1
~9のいずれか1項に記載のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物をフィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物、または、請求項10に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項13】
リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラーを配合することを特徴とするプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物
(ただし、無機物とこの無機物表面に化学結合されたカルボジイミド基含有有機層とを備える充填剤を含む硬化性絶縁性組成物を除く)の製造方法
であって、
前記リビングラジカル重合に用いる重合性モノマーが、(メタ)アクリル酸化合物、スチレン、スチレン誘導体、ビニルエステル化合物のうちいずれか1種以上であることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物、ドライフィルム、硬化物、プリント配線板およびプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板用絶縁材料としては、プリント配線板の最外層に形成するソルダーレジストやビルドアップ基板で多層化する際に用いられる層間絶縁材等がある。特にソルダーレジストは薄膜で部品実装時の耐熱や表面処理時の耐薬品性、そして、外傷などの物理的なダメージからの回路保護等が要求されるため、物性向上の目的で無機フィラーを含むことが多い。また、ソルダーレジスト以外の層間絶縁材等も同様の理由で無機フィラーを含むことが増えてきた。
無機フィラーの分散は、ディゾルバーなどの撹拌だけでは充分ではなく、3本ロールミルやビーズミルなどのシェアが強くかかる分散機が一般的に使われている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、3本ロールミルやビーズミルでの無機フィラーの分散は、長時間に渡る工程であり消費電力も大きいことから製品のコストアップの原因となり、また、組成物の温度上昇も伴うため加熱による製品の品質劣化の要因ともなり得る。この問題を解決するために各種分散剤が使用されているが効果は限定的であり根本の解決には至っていない。また、最近ではプリント配線板の高精細化で無機フィラーの粒子が問題を起こすため、無機フィラーをさらに小さな粒子として分散させる必要がでてきた。しかしながら、無機フィラーを小さな粒子として分散させると粒子同士の凝集が起こりやすくなり、かえって大きな粒子の混入を招き得るという現状もあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、無機フィラーの分散性に優れ、かつ、無機フィラーの凝集が起こりにくいプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層を硬化させて得られる硬化物、該硬化物を有するプリント配線板および該組成物の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明者等は上記に鑑み鋭意検討した結果、リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラーを配合することによって、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物は、表面処理無機フィラーと硬化性樹脂を含有する組成物であって、前記表面処理無機フィラーが、無機フィラー上にリビングラジカル重合で有機表面処理したものであることを特徴とするものである。
ここで、前記表面処理無機フィラーを構成する前記無機フィラー上の有機分は、前記表面処理無機フィラー中に0.1~10質量%含まれることが好ましく、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.0であることが好ましい。
【0008】
本発明のプリント配線板用の硬化性樹脂組成物は、さらに、リビングラジカル重合で有機表面処理していない無機フィラーを含むことが好ましい。
【0009】
本発明のプリント配線板用の硬化性樹脂組成物は、前記表面処理無機フィラーは、少なくともリビングラジカル重合で疎水性の有機表面処理したものであることが好ましい。
【0010】
本発明のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物は、前記表面処理無機フィラーは、無機フィラー上にリビングラジカル重合で親水性の有機表面処理した後、リビングラジカル重合で疎水性の有機表面処理したものであることが好ましい。
【0011】
本発明のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物は、前記硬化性樹脂として、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0012】
本発明のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物は、前記硬化性樹脂として、光硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
本発明のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物は、前記硬化性樹脂が、アルカリ現像型であることが好ましい。
【0014】
本発明のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物は、ソルダーレジスト組成物であることが好ましい。
【0015】
本発明のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物は、層間絶縁材であることが好ましい。
【0016】
本発明のドライフィルムは、前記プリント配線板用の硬化性絶縁性組成物をフィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の硬化物は、前記プリント配線板用の硬化性絶縁性組成物、または、前記ドライフィルムの樹脂層を硬化させて得られることを特徴とするものである。
【0018】
本発明のプリント配線板は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。
【0019】
本発明のプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物の製造方法は、リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラーを配合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、無機フィラーの分散性に優れ、かつ、無機フィラーの凝集が起こりにくいプリント配線板用の硬化性絶縁性組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層を硬化させて得られる硬化物、該硬化物を有するプリント配線板および該組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施例におけるソルベントショックの評価×の一例を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のプリント配線板用の硬化性絶縁性樹脂組成物(以下、「本発明の硬化性絶縁性樹脂組成物」とも称する)は、表面処理無機フィラーと硬化性樹脂を含有する組成物であって、前記表面処理無機フィラーがリビングラジカル重合で有機表面処理したものである。表面処理無機フィラーの分散性に優れ、また、凝集が起こりにくいことから、長時間にわたる分散工程が必要ないため、多大な消費電力が必要なく、また、分散工程における過度な温度上昇もないため、製品のコストアップや加熱による品質劣化を抑えることができる。詳しいメカニズムは明らかではないが、リビングラジカル重合によって、分子量が揃ったポリマーが無機粒子に付加されたために、分散性が安定したと考えられる。詳しくは、まず、ラジカル重合とは、活性の高いラジカル種を成長種としてポリマー鎖が延びていく重合であるところ、ラジカル重合はラジカル重合開始剤などからラジカル種が発生すると、反応は連鎖的に進行したり、ラジカル同士で停止反応を起こすため制御ができない反応であるため、得られるポリマーは大きい分子量のものと小さい分子量のものが混在してしまう。このような反応で無機フィラーの表面処理を行なうと、分子量の分布で樹脂に相溶する部分と相溶しない部分が混在することになる。一方、リビングラジカル重合は、連鎖移動剤を用いた開始反応と成長反応からなるラジカル重合であり、連鎖反応と停止反応を伴わない重合である。このため、反応の制御が可能であり、表面処理で付加されるポリマーの分子量が揃うことによって、分散性が安定したと考えられる。
【0023】
また、無機フィラーをリビングラジカル重合で有機表面処理することによって、塗膜の強度および密着性が向上するため、信頼性の向上も期待できる。
【0024】
[表面処理無機フィラー]
前記表面処理無機フィラーの有機表面処理は、予め無機フィラー表面に直接モノマーをリビングラジカル重合で重合させながら行なうものである。組成物の配合前に事前に処理する点において、組成物の配合時に添加する分散剤による分散性の向上とは性質を異にするものである。表面処理無機フィラーを構成する無機フィラー上の有機分の含有量は、表面処理無機フィラー中に0.1~10質量%であることが好ましく、有機分の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~3.0であることが好ましい。
【0025】
リビングラジカル重合としては、特に限定されず、例えば、原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)、可逆的付加-開裂連鎖移動重合(Reversible Addition/Fragmentation Chain Transfer Polymerization:RAFT重合)、ニトロキシドを介した重合(Nitroxide-mediated Polymerization:NMP)が挙げられる。ATRPは、遷移金属錯体を触媒とし、有機ハロゲン化合物を重合開始剤とする重合法であり、リビングラジカル重合ではもっとも利用されている。触媒として安価な塩化銅錯体が使用できるのでコスト面でもメリットがある。RAFT重合は、チオカルボニル化合物などで速い平衡反応を起して不可逆的連鎖移動や停止反応を起しにくくする重合法であり、遷移金属を使用せず重合が可能である。NMPは、中間ラジカル種をトラップするニトロキシドラジカルを利用する重合であり、遷移金属を使用せず重合が可能である。これらの重合法は任意に選択して使用することができる。リビングラジカル重合で付加するポリマーは、1種でも2種以上の混合でもよい。
【0026】
リビングラジカル重合の中でも溶液を水のような極性溶媒から非極性溶媒まで幅広く使用でき、求める特性に応じたモノマーを幅広く選択でき、反応操作も簡便であるため、RAFT重合が好ましい。
【0027】
RAFT重合に使用される重合開始剤は、ビニル基を有するモノマーの重合を開始させることが可能な化合物であれば特に制限されない。例えば、クミルパーオキシネオデカノエートのようなパーエステル型開始剤;ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネートのようなジカーボネート型開始剤;イソブチリルパーオキサイドのようなジアシル型開始剤;2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)のようなアゾ型開始剤が挙げられる。なかでも、溶媒等からの水素引き抜き反応をはじめとする副反応が少なく、誘発分解しにくく、炭素ラジカルであるため、安定性に優れるという観点から、アゾ型開始剤が好ましく、2,2′-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビスイソブチロニトリルがより好ましい。重合開始剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
RAFT重合に使用される重合開始剤の量は、重合性モノマー(後述のように親水性の重合性モノマーと疎水性のモノマーを用いる場合は、親水性の重合性モノマー)のモル数の0.00001~1モル%とすることが好ましい。
【0029】
RAFT重合に使用される連鎖移動剤(RAFT剤)としては、例えば、ジチオエステル;ジチオカルバメート;ベンジルドデシルトリチオカルボナート、ベンジルオクタデシルトリチオカルボナート、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート(Cyanomethyl dodecyl trithiocarbonate)、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸[2-(Dodecylthiocarbonothioylthio)-2-methylpropionic acid]のようなトリチオカルボナート;キサンタートなどのチオカルボニルチオ化合物が挙げられる。なかでも、連鎖移動定数が大きいという観点から、トリチオカルボナート型のRAFT剤が好ましく、ベンジルドデシルトリチオカルボナート、ベンジルオクタデシルトリチオカルボナート、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸等がより好ましい。RAFT剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
RAFT剤の量は、重合性モノマー(後述のように親水性の重合性モノマーと疎水性のモノマーを用いる場合は、親水性の重合性モノマー)のモル数の0.0001~10モル%とすることが好ましい。
【0031】
リビングラジカル重合に用いる重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アントラセンメチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、p-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルネンラクトン(メタ)アクリレート、エチルアダマンチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(メタ)アクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイロキシエチルフタル酸、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロシクロペンタジエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、変性エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、アミン変性ビスフェノールAタイプエポキシ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス(4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、モノペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸化合物、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、プロポキシスチレン、ブトキシスチレン、エトキシエチルスチレン、アセトキシスチレンのようなスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルのようなビニルエステル化合物等を挙げることができる。
【0032】
重合性モノマーとしては、水酸基、アミノ基、アミド基およびカルボキシ基などの親水性官能基やポリエチレングリコ―ル構造、スルホン構造、アミド構造などの親水構造を有し、反応溶媒より親水性の重合性モノマーを少なくとも1種以上使用することで、効率よくフィラーに吸着させながら重合を進めることができる。このような重合性モノマーは、親水性官能基や親水構造によって無機フィラーの親水性の表面に吸着することができるため、リビングラジカル重合による有機表面処理に適している。
【0033】
また、重合性モノマーとしては、前記親水性の重合性モノマーに加えて、前記親水性の重合性モノマーおよび無機フィラーよりも疎水性の重合性モノマーを1種以上用いることが好ましい。また、表面処理の効率はよくないものの、親水性の重合性モノマーを用いずに、無機フィラーよりも疎水性の重合性モノマーのみを1種以上用いてもよい。そのような少なくともリビングラジカル重合で疎水性の有機表面処理した無機フィラーは、疎水性の重合性モノマーにより、表面処理した無機フィラーの疎水性を、組成物の樹脂成分に近づけることができる。そのような疎水性の重合性モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
前記疎水性の重合性モノマーは、水への溶解度が、60g/L以下であることが好ましく、30g/L以下であることがより好ましく、10g/L以下であることがさらに好ましく、5g/L以下であることが特に好ましい。
【0035】
前記親水性の重合性モノマーと前記疎水性の重合性モノマーの両方を用いる場合は、リビングラジカル重合を同時に行ってもよいし、2段階に分けて行ってもよい。リビングラジカル重合を2段階に分けて、1段階目に親水性の重合性モノマーを少なくとも1種以上使用して重合させ、2段階目に疎水性の重合性モノマーを使用することにより、さらに効果を上げることができる。
【0036】
リビングラジカル重合で有機表面処理を施す無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ベントナイト、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカ、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、カーボンブラック、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、ノイブルグ珪土、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバン等が挙げられる。これらの無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも硫酸バリウム、シリカ、ジルコン酸カルシウム、酸化チタン、アルミナが好ましい。また、シリカとして、微粉シリカを用いることもできる。無機フィラーの1次粒子の平均粒径は10μm以下が好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0037】
本発明において、無機フィラーは、密着性および硬化物の強度の点からは、硫酸バリウムであることが好ましい。
【0038】
また、密着性、硬化物の強度、耐酸性、クラック耐性の点からは、シリカであることが好ましい。
【0039】
無機フィラーがジルコン酸カルシウムの場合であっても、ソルベントショックが発生しにくく、スラリー状で添加しても安定であるため好ましい。
【0040】
また、通常は無機フィラーとして酸化チタンを大量に添加しても反射率の向上効果が飽和してしまうが、本発明においてはさらに向上効果が得られるため好ましい。また、長期使用での熱の影響や光の影響による変色を少ない点からも酸化チタンであることが好ましい。
【0041】
本発明においては無機フィラーとして微粉シリカを使用した場合、少量で流動性を調整でき、コストの高い微粉シリカの使用量を削減できるため好ましい。
【0042】
本発明おいて無機フィラーとしてアルミナを使用した場合、高充填が可能であり、それに伴い、アルミナを使用した場合では熱伝導率を向上できるため好ましい。
【0043】
リビングラジカル重合による有機表面処理は、無機フィラー:重合性モノマーの質量比が、200:1~5:1で行うことが好ましい。より好ましくは100:1~8:1、さらに好ましくは50:1~11:1である。
【0044】
また、上記のように、リビングラジカル重合による有機表面処理を、親水性の重合性モノマーと疎水性の重合性モノマーの両方を用いる場合は、無機フィラー:親水性の重合性モノマーの質量比は好ましくは500:1~15:1、より好ましくは400:1~20:1、さらに好ましくは300:1~22:1であり、また、無機フィラー:疎水性の重合性モノマーの好ましい質量比は340:1~5:1、より好ましくは140:1~8:1、さらに好ましくは60:1~22:1である。
【0045】
リビングラジカル重合による有機表面処理は、有機溶剤中で行うことが好ましい。有機溶剤としては後述するような有機溶剤が挙げられるが、中でもトルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ソルベントナフサが好ましい。
【0046】
リビングラジカル重合による有機表面処理の温度条件は、リビングラジカル重合方法にもよるが、例えばRAFT重合の場合は、好ましくは0~180℃、より好ましくは30~120℃、さらに好ましくは40~70℃である。
【0047】
リビングラジカル重合による有機表面処理の時間条件は、リビングラジカル重合方法にもよるが、例えばRAFT重合の場合は、好ましくは1~80時間、より好ましくは2~50時間、さらに好ましくは3~30時間である。上記のように、リビングラジカル重合による有機表面処理を、親水性の重合性モノマーと疎水性の重合性モノマーを用いて2段階で行う場合は、親水性の重合性モノマーによる1段階目の反応を好ましくは1~20時間、より好ましくは2~15時間、さらに好ましくは3~10時間で行う。疎水性の重合性モノマーによる2段階目の反応を好ましくは1~60時間、より好ましくは2~40時間、さらに好ましくは3~25時間で行う。
【0048】
また、リビングラジカル重合による有機表面処理で無機フィラーに付加するポリマーの重量平均分子量は2,000~150,000であることが好ましい。より好ましくは3,000~80,000、さらに好ましくは3,000~30,000である。RAFT重合の場合は、RAFT剤のモル数と重合したモノマーのモル数(付着量)より、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)での分子量の最頻度値の目安がつけられる。
【0049】
リビングラジカル重合による有機表面処理で無機フィラーに付加するポリマー(有機分とも言う)の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.0~3.0であることが好ましい。より好ましくは1.0~2.5、さらに好ましくは1.0~2.0である。また、ポリマー(有機分)の含有量は、表面処理無機フィラー中に0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~7質量%であることがより好ましく、0.3~5質量%であることがさらにより好ましい。
【0050】
前記表面処理無機フィラーの配合量は、組成物中に1~95質量部であることが好ましい。95質量部以下の場合、分散性がより良好となる。1質量部以上の場合、フィラーの添加による物性向上がより良好となる。
【0051】
また、本発明の絶縁性硬化性組成物は、リビングラジカル重合で有機表面処理していない無機フィラーを含有してもよい。リビングラジカル重合で有機表面処理していない無機フィラーの例としては、上記でリビングラジカル重合で有機表面処理を施す無機フィラーの例として挙げたものと同様のものが挙げられ、表面処理が施されていなくてもよく、また、リビングラジカル重合による有機表面処理以外の表面処理が施されていてもよい。リビングラジカル重合で有機表面処理していない無機フィラーとしては、微粉シリカ、ベントナイトが好ましい。微粉シリカおよびベントナイトを使用するとはんだ耐熱性が大きく向上する。
【0052】
微粉シリカとしては、平均粒径100nm以下で、BET法により測定した比表面積が10~1000m2/gのシリカであることが好ましく、燃焼法、アーク法、沈殿法、ゲル法などにより合成される。平均粒径は、レーザー回折法により測定されたD50の値である。レーザー回折法による測定装置としては、日機装社製のMicrotrac MT3300EXIIが挙げられる。微粉シリカの市販品としては、日本アエロジル社製 AEROSIL90、130、150、200、255,300、380、OX50、TT600、R972、R974,R106、R812、RY50、RY51、東ソー・シリカ社製E-150J、E-200A、E-220、E-200A、E-220A、E-1009、E-1030、L-250、L-300、SS-10、SS-30、SS-50、AZ-200、AZ-400、BY-200、CY-200、CX-200などが挙げられる。
【0053】
リビングラジカル重合で有機表面処理していない無機フィラーの配合量は、硬化性樹脂100質量部に対して0.05~15質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~10質量部であり、さらにより好ましくは0.2~8質量部である。
【0054】
[硬化性樹脂]
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂の何れを用いてもよく、これらの混合物であってもよい。
【0055】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、加熱により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、例えばエポキシ化合物、オキセタン化合物、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。特に、本発明においては、エポキシ化合物およびオキセタン化合物が好ましく用いられる。
【0056】
上記エポキシ化合物としては、1個以上のエポキシ基を有する公知慣用の化合物を使用することができ、中でも2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノエポキシ化合物などのモノエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。これらは、塗膜の特性向上の要求に合わせて、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0057】
オキセタン化合物の具体例としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT-101)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT-211)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT-212)、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製の商品名 OXT-121)、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製の商品名 OXT-221)などが挙げられる。さらに、フェノールノボラックタイプのオキセタン化合物なども挙げられる。上記オキセタン化合物は、前記エポキシ化合物と併用または単独で使用することができる。
【0058】
熱硬化性樹脂は、固形、半固形または液状のいずれであってもよいが、分散性や凝集の起こりにくさにより優れることから、半固形または液状であることが好ましい。本明細書において、熱硬化性樹脂について、固形とは40℃で固体状であることをいい、半固形とは20℃で固体状であり、40℃で液状であることをいい、液状とは20℃で液状であることをいう。液状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。例えば、特開2016-079384の段落23~25に記載の方法にて行なう。
【0059】
また、本発明の硬化性絶縁性組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合は、さらに、硬化剤および硬化触媒の少なくとも何れか1種を含有してもよい。
【0060】
前記硬化剤としては、多官能フェノール化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、脂肪族または芳香族の一級または二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などが挙げられる。これらの中で、多官能フェノール化合物、およびポリカルボン酸およびその酸無水物が、作業性、絶縁性の面から、好ましく用いられる。
【0061】
これらの硬化剤のうち、多官能フェノール化合物は、一分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であればよく、公知慣用のものが使用できる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのノボラック樹脂、ビニルフェノール共重合樹脂などが挙げられるが、特に、フェノールノボラック樹脂が、反応性が高く、耐熱性を上げる効果も高いため好ましい。 このような多官能フェノール化合物は、適切な硬化触媒の存在下、前記エポキシ化合物やオキセタン化合物とも付加反応する。
【0062】
前記ポリカルボン酸およびその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物およびその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物などが挙げられる。市販品としては、BASF社製のジョンクリル(商品群名)、サートマー社製のSMAレジン(商品群名)、新日本理化社製のポリアゼライン酸無水物などが挙げられる。
【0063】
これら硬化剤の配合量は、通常用いられる量的割合で充分であり、熱硬化性樹脂100質量部当たり、好ましくは1~200質量部、より好ましくは10~100質量部が適当である。
【0064】
前記硬化触媒は、エポキシ化合物やオキセタン化合物等と、上記硬化剤との反応において硬化触媒となり得る化合物、または硬化剤を使用しない場合に重合触媒となる化合物であり、例えば、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、およびホスホニウムイリドなどが挙げられ、これらの中から任意に、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
これらの硬化触媒の中で好ましいものとしては、商品名2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ等のイミダゾール類や、商品名2MZ-A、2E4MZ-A等のイミダゾールのAZINE化合物、商品名2MZ-OK、2PZ-OK等のイミダゾールのイソシアヌル酸塩、商品名2PHZ、2P4MHZ等のイミダゾールヒドロキシメチル体(前記商品名はいずれも四国化成工業社製)、ジシアンジアミドとその誘導体、メラミンとその誘導体、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノーアミン、ジアミノジフェニルメタン、有機酸ジヒドラジド等のアミン類、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(商品名DBU、サンアプロ社製)、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名ATU、味の素社製)、または、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物などが挙げられる。
【0066】
これら硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、熱硬化性樹脂100質量部当たり、好ましくは0.05~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部が適当である。
【0067】
(光硬化性樹脂)
光硬化性樹脂としては、活性エネルギー線照射により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、特に、本発明においては、分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく用いられる。
【0068】
エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマー、および光重合性ビニルモノマー等が用いられる。
前記光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
光重合性ビニルモノマーとしては、上述のリビングラジカル重合に用いる重合性モノマーとして挙げたモノマーと同一のものが挙げられる。
【0070】
また、本発明の硬化性絶縁性組成物において、アルカリ現像型の感光性組成物とする場合は、上記光硬化性樹脂として光硬化性樹脂にカルボキシル基を導入した化合物を用いたり、上記光硬化性樹脂に加えてエチレン性不飽和結合を有しないカルボキシル基含有樹脂を用いたりすることができる。さらに熱硬化性樹脂を加えることもできる。また、熱硬化性樹脂を用いた場合と同様の各種成分を添加することができる。
【0071】
光硬化性樹脂にカルボキシル基を導入した化合物としては、以下のものがあげられる。
【0072】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0073】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0074】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0075】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0076】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0077】
(6)2官能またはそれ以上の多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0078】
(7)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0079】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0080】
(9)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0081】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0082】
(11)前記(1)~(10)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0083】
前記のようなカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。また、前記カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40~200mgKOH/gの範囲が適当であり、より好ましくは45~120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g以上の場合、アルカリ現像が容易となり、一方、200mgKOH/g以下の場合、レジストパターンの描画が容易となる。
【0084】
また、前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000、さらには5,000~100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合、塗布乾燥後にもべたつきが残りにくく、露光後の塗膜の耐湿性が良好であり、現像時に膜減りが生じにくい。一方、重量平均分子量が150,000以下の場合、現像性および貯蔵安定性が良好となる。
【0085】
本発明の硬化性絶縁性組成物が光硬化性樹脂を含有する場合は、さらに、光重合開始剤を添加することが好ましい。この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエ-テル、ベンゾインエチルエ-テル、ベンゾインイソプロピルエ-テル、ベンゾインイソブチルエ-テル、ベンジルメチルケタ-ルなどのベンゾイン化合物とそのアルキルエ-テル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;チオキサントン、2、4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタ-ル、ベンジルジメチルケタ-ルなどのケタ-ル類;ベンゾフェノン、4,4-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類などが挙げられる。これらは単独または2種類以上を混合して使用することが可能であり、さらにトリエタノ-ルアミン、メチルジエタノ-ルアミン等の第3級アミン;2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体などの光重合開始助剤等と組み合わせて使用することができる。
【0086】
光重合開始剤の配合量は、通常用いられる量的割合で充分であり、例えば光硬化性樹脂100質量部当たり、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは1~15質量部、さらに好ましくは1~10質量部が適当である。
【0087】
(有機溶剤)
本発明の硬化性絶縁性組成物は、組成物の調製や粘度調整のために用いられる有機溶剤を含有し得る。有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などの有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
(その他の成分)
本発明の硬化性絶縁性組成物は、更に必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の重合禁止剤、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤やレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができ、また各種着色剤を配合することができる。
【0089】
本発明の硬化性絶縁性組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いてもよい。液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0090】
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、本発明の硬化性絶縁性組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。ドライフィルムを形成する際には、まず、本発明の硬化性絶縁性組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等により、キャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された組成物を、通常、40~130℃の温度で1~30分間乾燥することで、樹脂層を形成することができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、5~150μm、好ましくは15~60μmの範囲で適宜選択される。
【0091】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等を用いることができる。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。より好ましくは15~130μmの範囲である。
【0092】
キャリアフィルム上に本発明の硬化性絶縁性組成物からなる樹脂層を形成した後、膜の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、膜の表面に、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルムやポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。カバーフィルムとしては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0093】
なお、本発明においては、上記カバーフィルム上に本発明の硬化性絶縁性組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成して、その表面にキャリアフィルムを積層するものであってもよい。すなわち、本発明においてドライフィルムを製造する際に本発明の硬化性絶縁性組成物を塗布するフィルムとしては、キャリアフィルムおよびカバーフィルムのいずれを用いてもよい。
【0094】
また、本発明の硬化性絶縁性組成物を、例えば、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~130℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成することができる。また、上記組成物をキャリアフィルムまたはカバーフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったドライフィルムの場合、ラミネーター等により本発明の組成物の層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、樹脂層を形成できる。
【0095】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0096】
本発明の硬化性絶縁性組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0097】
本発明の硬化性絶縁性組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合は、前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、スクリーン印刷法等の方法により塗布する。塗布後、例えば140~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化塗膜を得ることができる。
【0098】
本発明の硬化性絶縁性組成物が光硬化性樹脂を含有する場合は、前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、スクリーン印刷法等の方法により塗布する。塗布後、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LED等で例えば500~3000mJ/cm2の積算光量で紫外線を照射することにより、硬化塗膜を得ることができる。
【0099】
本発明の硬化性絶縁性組成物がアルカリ現像型の感光性樹脂である場合は、前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、スクリーン印刷法等の方法により全面塗布して溶剤を乾燥させた後、目的とするパターンのネガフィルムを用いて紫外線露光し、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LED等で例えば50~3000mJ/cm2の積算光量で紫外線露光後、アルカリ水溶液で現像することによりパターニングされた硬化物を得ることができる。さらに熱硬化性樹脂を加えた場合は、パターニング後に例えば140~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化塗膜を得ることができる。
【0100】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm2、好ましくは20~800mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0101】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0102】
本発明の硬化性絶縁性組成物は、プリント配線板上に硬化皮膜を形成するために好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用され、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁層、カバーレイを形成するために使用される。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0104】
[有機表面処理した硫酸バリウムの製造]
(製造例1-1:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-1-1)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に硫酸バリウム(堺化学工業製、沈降性硫酸バリウム♯100)2600g、トルエン4400g、4-ヒドロキシブチルアクリレート20g、イソブチルアクリレート50gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、30時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量9000、数平均分子量6000、分子量分布1.5を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-1-1とした。熱重量測定による有機分は0.9%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-1-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0105】
(製造例1-2:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-1-2)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に硫酸バリウム(堺化学工業製、沈降性硫酸バリウム♯100)2600g、トルエン4400g、4-ヒドロキシブチルアクリレート20gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、10時間重合させた。次に、イソブチルアクリレート50gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量10000、数平均分子量9000、分子量分布1.1を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-1-2とした。熱重量測定による有機分は1.0%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-1-2を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0106】
(製造例1-3:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-1-3)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に硫酸バリウム(堺化学工業製、沈降性硫酸バリウム♯100)2600g、トルエン4400g、4-ヒドロキシブチルアクリレート40gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.2gとベンジルドデシルトリチオカーボネート2gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、10時間重合させた。次に、イソブチルアクリレート100gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量11000、数平均分子量8000、分子量分布1.4を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-1-3とした。熱重量測定による有機分は2.1%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-1-3を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0107】
(製造例1-4:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-1-4)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に硫酸バリウム(堺化学工業製、沈降性硫酸バリウム♯100)2600g、トルエン4400g、4-ヒドロキシブチルアクリレート20gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次にあらかじめ別容器にトルエン100gに4,4-ジノニル-2,2-ビピリジル1.6gと塩化銅(I)0.5gと塩化銅(II)0.33gを分散しておいた分散液と、2-ブロモイソ酪酸エチル0.5gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら70℃の温度にして、8時間重合させた。次に、イソブチルアクリレート50gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら80℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量10000、数平均分子量6000、分子量分布1.7を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-1-4とした。熱重量測定による有機分は0.9%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-1-4を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0108】
(製造例1-5:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-1-5)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に硫酸バリウム(堺化学工業製、沈降性硫酸バリウム♯100)2600g、トルエン4400g、イソブチルアクリレート50gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.03gとベンジルドデシルトリチオカーボネート0.2gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、90時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量10000、数平均分子量8000、分子量分布1.25を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-1-5とした。熱重量測定による有機分は0.2%であった。 性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-1-5を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0109】
(有機表面処理していない無機フィラー R-1-1)
有機表面処理していない硫酸バリウムとして、堺化学工業製沈降性硫酸バリウム♯100を無機フィラーR-1-1として用いた。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーR-1-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、下層(水)に粉体が集まり白濁した。
【0110】
(製造例1-6:リビングラジカル重合で有機表面していない無機フィラー分散液 α-1-1)
蓋にて密閉可能な容器に4級アンモニウム変性ベントナイト(ホージュン社製、エスベンNX)50gにジプロピレングリコールモノメチルエーテル100gを入れ、1時間攪拌後、蓋を閉めて常温で1週間放置して、さらに1時間攪拌してベントナイトの分散液を得た。この分散液をα-1-1とした。
【0111】
(製造例1-7:リビングラジカル重合で有機表面していない無機フィラー分散液 α-1-2)
蓋にて密閉可能な容器に4級アンモニウム変性ベントナイト(ホージュン社製、エスベンNX)50gにトリメチロールプロパントリアクリレート250gを入れ、1時間攪拌後、蓋を閉めて常温で1週間放置して、さらに1時間攪拌してベントナイトの分散液を得た。この分散液をα-1-2とした。
【0112】
(製造例1-8:リビングラジカル重合で有機表面していない無機フィラー分散液 α-2-1)
蓋にて密閉可能な容器に微粉シリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL200)50gにジプロピレングリコールモノメチルエーテル100gと分散剤(ビックケミー社製、BYK-111)0.5gを入れ、1時間攪拌後、蓋を閉めて常温で1週間放置して、さらに1時間攪拌してベントナイトの分散液を得た。この分散液をα-2-1とした。
【0113】
(製造例1-9:リビングラジカル重合で有機表面していない無機フィラー分散液 α-2-2)
蓋にて密閉可能な容器に微粉シリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL200)50gにトリメチロールプロパントリアクリレート250gと分散剤(ビックケミー社製、BYK-111)0.5gを入れ、1時間攪拌後、蓋を閉めて常温で1週間放置して、さらに1時間攪拌してベントナイトの分散液を得た。この分散液をα-2-2とした。
【0114】
[光硬化性樹脂にカルボキシル基を導入した化合物の合成]
(合成例1)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)600gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、テトラヒドロ無水フタル酸456.0g(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却後、固形分酸価89mgKOH/g、固形分65%のカルボキシル基含有感光性樹脂を得た。これを樹脂溶液B-1とした。
【0115】
(合成例2)
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキサイド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和電工社製、ショーノールCRG951、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキサイド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキサイドが平均1.08モル付加しているものであった。得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキサイド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させた。固形物の酸価88mgKOH/g、固形分71%のカルボキシル基含有感光性樹脂を得た。これを樹脂溶液B-2とした。
【0116】
<特性評価>
下記表1に示す熱硬化性組成物、下記表2に示す光硬化性組成物、および、下記表3に示すアルカリ現像型組成物の組成に従い各成分を500mlのディスポカップにて配合し、直径3cmの4枚羽ディゾルバーで5分間攪拌して熱硬化性組成物、光硬化性組成物およびアルカリ現像型組成物を得た。表中の配合量は質量部を表す。硫酸バリウムは主に塗膜と基材の密着性を向上させる目的で添加される。そこで、分散性と、塗膜を引きはがすときの力と、はんだ耐熱性と電気絶縁性といったプリント配線板用硬化性絶縁材料としての特性を評価した。
【0117】
[分散性および凝集のしにくさ]
上記で得た各組成物の撹拌後の分散の状態を0~50μmのグラインドゲージにて確認した。グラインドゲージ上に残されたスジ状の跡が始まった最大の値(μm)を評価した。スジ状の跡が出現しない、または、10μm未満のものは○、スジ状の跡が10μm以上25μm未満の範囲のものは△、25μm以上40μm未満の範囲のものは×、40μm以上のものは××とした。また、グラインドゲージを観察して粒子痕が見える最大の値(μm)を評価した。粒子痕が15μm未満のものは○、15μm以上35μm未満のものは△、35μm以上45μm未満のものは×、45μm以上のものは××とした。結果をそれぞれ表1~3に示す。
【0118】
[密着性および強度]
上記で得た各組成物を再度3本ロールにて分散した組成物を用いて、下記のように試験用基板をそれぞれ作製した。3本ロールにて再度分散した理由は、比較例の組成物の結果が分散不良で左右されないためである。
表1の熱硬化性組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、これを150℃で60分間加熱して硬化させて試験用基板を得た。
表2の光硬化性組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて365nmの波長で2J/cm2の積算光量を照射して硬化させて試験用基板を得た。
表3のアルカリ現像型組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにベタ印刷し、これを80℃で30分間加熱して乾燥させて、プリント配線板用のメタルハライドランプが光源の接触型露光機で、300mJ/cm2の積算光量でネガパターンのマスクを用いて露光し、1wt%Na2CO3水溶液によって現像を行い、150℃で60分間加熱して本硬化させて試験用基板を得た。
各試験用基板についてElcometer社製の106 Adhesion Tester-Scale1を用いて密着性の試験を行った。この試験は直径20mmのアルミニウム製の円筒をもつ試験用コマを接着剤にて直径20mmの円の面を接着してから、コマを垂直に引きはがす際の力を測定するものである。各試験片の表面をアセトンを含ませたウエス拭きにてクリーニングを行った後に、前記試験用コマをハンツマン社製接着剤Aralditeで貼り、60℃3時間加熱して接着した。その後Adhesion Testerを使用してコマを塗膜から引きはがし、その際に示される力の値を読み取った。単位はMPa(N/mm2)であり、コマの円筒の面積から換算された値である。また、はがれた塗膜を観察し、剥離面の状態についての評価を行った。銅箔に塗膜が残存していないものを○、銅箔に部分的に塗膜が残存しているものを△、塗膜内部で崩壊して銅箔の全面的に塗膜が残存しているものを×とした。結果をそれぞれ表1~3に示す。
【0119】
[はんだ耐熱性]
密着性の評価と同様の方法で、各組成物について試験用基板を作製した。各試験用基板にロジン系フラックスを塗布して260℃のはんだ槽に10秒間フローさせ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄し乾燥した後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれの有無を確認した。剥がれが見られないものを○、剥がれがあるものを×とした。さらに、ロジン系フラックスを塗布して260℃のはんだ槽に100秒間フローさせ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄し乾燥した後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれが全く確認されなかったものを●とした。そして、再度、同様の方法で100秒間フローさせて塗膜の剥がれが全く確認されなかったものを◎とした。結果をそれぞれ表1~3に示す。
【0120】
[電気絶縁性]
銅ベタのFR-4基板に替えてIPC規格Bパターンのくし型電極が形成されたFR-4基板を用い、密着性の評価と同様の方法で、測定用の端子部分には塗膜がかからないようにして各組成物について試験用基板を作製した。各試験用基板について電極間の絶縁抵抗値を印加電圧500Vにて測定した。単位はΩである。結果をそれぞれ表1~3に示す。
【0121】
【表1】
*1:エポキシ樹脂(エピコート828、三菱化学社製)
*2:エポキシ樹脂(エピコート807、三菱化学社製)
*3:2E4MZ-CN(四国化成工業社製)
*4:製造例1-1で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理した硫酸バリウム
*5:製造例1-2で製造したRAFTによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理した硫酸バリウム
*6:製造例1-3で製造したRAFTによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理した硫酸バリウム
*7:製造例1-4で製造したATRPによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理した硫酸バリウム
*8:製造例1-5で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理した硫酸バリウム
*9:沈降性硫酸バリウム♯100(堺化学工業製)
*10:製造例1-6で製造したリビングラジカル重合で有機表面していない無機フィラー分散液
*11:製造例1-8で製造したリビングラジカル重合で有機表面していない無機フィラー分散液
*12:KS-66(信越化学工業社製)
*13:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
【0122】
【表2】
*14:エポキシアクリレート(EBECRYL3603、ダイセルオルネクス社製)
*15:モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート)
*16:モノマー(カヤマーPM2、日本化薬社製)
*17:2-エチルアントラキノン
*18:製造例1-7で製造したリビングラジカル重合で有機表面していない無機フィラー分散液
*19:製造例1-9で製造したリビングラジカル重合で有機表面していない無機フィラー分散液
【0123】
【表3】
*20:合成例1で合成したカルボキシル基含有感光性樹脂の樹脂溶液(固形分65%)
*21:合成例2で合成したカルボキシル基含有感光性樹脂の樹脂溶液(固形分71%)
*22:2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン
*23:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
*24:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(半固形の熱硬化性樹脂、DEN431、ダウケミカル社製)
*25:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0124】
実施例1~22より、本発明のプリント配線板用硬化性絶縁性組成物は、分散性に優れ、凝集がしにくいことがわかる。さらに、無機フィラーの特性をより引き出して、密着性と、引きはがし時の破壊モードより硬化物の強度が向上していることがわかる。
【0125】
[有機表面処理したシリカの製造]
(製造例2-1:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-2-1)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にシリカ(電気化学社製、FB-3SDC)1300g、トルエン4400g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル10g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル10g、ベンジルアクリレート60gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、30時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量10000、数平均分子量5500、分子量分布1.8を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-2-1とした。熱重量測定による有機分は2.0%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-2-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0126】
(製造例2-2:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-2-2)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にシリカ(電気化学社製、FB-3SDC)1300g、トルエン4400g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル10g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル10gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、10時間重合させた。次に、ベンジルアクリレート60gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量11000、数平均分子量8000、分子量分布1.4を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-2-2とした。熱重量測定による有機分は2.1%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-2-2を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0127】
(製造例2-3:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-2-3)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にシリカ(電気化学社製、FB-3SDC)1300g、トルエン4400g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル20gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、10時間重合させた。次に、ベンジルアクリレート120gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量10000、数平均分子量6500、分子量分布1.5を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-2-3とした。熱重量測定による有機分は4.0%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-2-3を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0128】
(製造例2-4:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-2-4)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にシリカ(電気化学社製、FB-3SDC)1300g、トルエン4400g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル10g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル10gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次にあらかじめ別容器にトルエン100gに4,4-ジノニル-2,2-ビピリジル1.6gと塩化銅(I)0.5gと塩化銅(II)0.33gを分散しておいた分散液と、2-ブロモイソ酪酸エチル0.5gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら70℃の温度にして、8時間重合させた。次に、ベンジルアクリレート60gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら80℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量11000、数平均分子量6000、分子量分布1.8を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-2-4とした。熱重量測定による有機分は2.0%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-2-4を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0129】
(製造例2-5:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-2-5)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にシリカ(電気化学社製、FB-3SDC)1300g、トルエン4400g、ベンジルアクリレート60gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.03gとベンジルドデシルトリチオカーボネート0.2gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、90時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量7500、数平均分子量6000、分子量分布1.25を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-2-5とした。熱重量測定による有機分は0.3%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-2-5を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0130】
(有機表面処理していない無機フィラー R-2-1)
有機表面処理していないシリカとして、電気化学社製FB-3SDCを無機フィラーR-2-1として用いた。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーR-2-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、下層(水)に粉体が集まり白濁した。
【0131】
<特性評価>
下記表4に示す熱硬化性組成物、下記表5に示す光硬化性組成物、および、下記表6に示すアルカリ現像型組成物の組成に従い各成分を500mlのディスポカップにて配合し、直径3cmの4枚羽ディゾルバーで5分間攪拌して熱硬化性組成物、光硬化性組成物およびアルカリ現像型組成物を得た。表中の配合量は質量部を表す。シリカは主に硫酸バリウムと同様の効果を目的として添加されるが、硫酸バリウムと比較して比重が低いため、同重量を添加すると組成物中に占める体積は大きいものになり、フィラーの影響が大きく出る。そこで、分散性、塗膜を引きはがすときの力、耐酸性、クラック耐性、はんだ耐熱性および電気絶縁性といったプリント配線板用硬化性絶縁材料としての特性を評価した。
【0132】
[分散性および凝集のしにくさ]
上記で得た各組成物を、表1~3で評価した[分散性および凝集のしにくさ]と同様の方法で試験を行った。結果をそれぞれ表4~6に示す。
【0133】
[耐酸性]
上記で得た各組成物を再度3本ロールにて分散した組成物を用いて、下記のように試験用基板をそれぞれ作製した。
表4の熱硬化性組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、これを150℃で60分間加熱して硬化させて試験用基板を得た。
表5の光硬化性組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて365nmの波長で2J/cm2の積算光量を照射して硬化させて試験用基板を得た。
表6のアルカリ現像型組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにベタ印刷し、これを80℃で30分間加熱して乾燥させて、プリント配線板用のメタルハライドランプが光源の接触型露光機で、300mJ/cm2の積算光量でネガパターンのマスクを用いて露光し、1wt%Na2CO3水溶液によって現像を行い、150℃で60分間加熱して本硬化させて試験用基板を得た。
【0134】
各試験用基板について25℃の3.5重量%濃度の塩酸水溶液に20分間浸漬して、水洗、乾燥後にセロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれの有無を確認した。剥がれが見られないものを○、パターンの欠けがあるものを×、明らかなはがれがあるものを××とした。結果をそれぞれ表4~6に示す。
【0135】
[クラック耐性]
耐酸性と同様の方法で試験用基板を作製し、冷熱サイクル試験として-65℃から150℃で500サイクル行った。試験後に塗膜を観察し、クラックの有無を確認した。クラックが無いものを○、特定のパターン上にクラックが発生しているものを×、全面的にクラックが発生しているものを××とした。結果をそれぞれ表4~6に示す。
【0136】
[密着性および強度、はんだ耐熱性、電気絶縁性]
表1~3で評価した[密着性および強度]、[はんだ耐熱性]および[電気絶縁性]と同様の方法で試験を行った。結果をそれぞれ表4~6に示す。
【0137】
【表4】
*26:製造例2-1で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理したシリカ
*27:製造例2-2で製造したRAFTによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理したシリカ
*28:製造例2-3で製造したRAFTによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理したシリカ
*29:製造例2-4で製造したATRPによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理したシリカ
*30:製造例2-5で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理したシリカ
*31:シリカ、FB-3SDC(電気化学社製)
【0138】
【0139】
【0140】
実施例23~44より、本発明のプリント配線板用硬化性絶縁性組成物は、分散性に優れ、凝集がしにくいことがわかる。さらに、無機フィラーの特性をより引き出して、密着性と、硬化物の強度が向上しており、さらに耐酸性とクラック耐性が向上していることがわかる。
【0141】
[有機表面処理したジルコン酸カルシウムの製造]
(製造例3-1:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-3-1)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にジルコン酸カルシウム(堺化学工業社製、CZ-03)3000g、トルエン4400g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20g、アクリル酸ブチル50gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、30時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量9000、数平均分子量6500、分子量分布1.4を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-3-1とした。熱重量測定による有機分は0.8%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-3-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0142】
(製造例3-2:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-3-2)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にジルコン酸カルシウム(堺化学工業社製、CZ-03)3000g、トルエン4400g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20g、を入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、10時間重合させた。次に、アクリル酸ブチル50gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量10500、数平均分子量9500、分子量分布1.1を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-3-2とした。熱重量測定による有機分は0.9%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-3-2を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0143】
(製造例3-3:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-3-3)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にジルコン酸カルシウム(堺化学工業社製、CZ-03)3000g、トルエン4400g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル10g、を入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、5時間重合させた。次に、アクリル酸ブチル50gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、10時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量5000、数平均分子量4000、分子量分布1.3を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-3-3とした。熱重量測定による有機分は0.4%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-3-3を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0144】
(製造例3-4:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-3-4)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にジルコン酸カルシウム(堺化学工業社製、CZ-03)3000g、トルエン4400g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル40g、を入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.2gとベンジルドデシルトリチオカーボネート2gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、10時間重合させた。次に、アクリル酸ブチル100gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量10500、数平均分子量7500、分子量分布1.4を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-3-4とした。熱重量測定による有機分は1.8%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-3-4を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0145】
(製造例3-5:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-3-5)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にジルコン酸カルシウム(堺化学工業社製、CZ-03)3000g、トルエン4400g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次にあらかじめ別容器にトルエン100gに4,4-ジノニル-2,2-ビピリジル1.6gと塩化銅(I)0.5gと塩化銅(II)0.33gを分散しておいた分散液と、2-ブロモイソ酪酸エチル0.5gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら70℃の温度にして、8時間重合させた。次に、アクリル酸ブチル50gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら80℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量9000、数平均分子量6500、分子量分布1.4を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-3-5とした。熱重量測定による有機分は0.7%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-3-5を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0146】
(製造例3-6:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-3-6)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にジルコン酸カルシウム(堺化学工業社製、CZ-03)3000g、トルエン4400g、アクリル酸ブチル50gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.03gとベンジルドデシルトリチオカーボネート0.2gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、90時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量11250、数平均分子量8000、分子量分布1.4を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-3-6とした。熱重量測定による有機分は0.2%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-3-6を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0147】
(有機表面処理していない無機フィラー R-3-1)
有機表面処理していないジルコン酸カルシウムとして、堺化学工業社製CZ-03を無機フィラーR-3-1として用いた。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーR-3-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、下層(水)に粉体が集まり白濁した。
【0148】
<特性評価>
下記表7に示す熱硬化性組成物、下記表8に示す光硬化性組成物、および、下記表9に示すアルカリ現像型組成物の組成に従い各成分を500mlのディスポカップにて配合し、直径3cmの4枚羽ディゾルバーで5分間攪拌して熱硬化性組成物、光硬化性組成物およびアルカリ現像型組成物を得た。表中の配合量は質量部を表す。ジルコン酸カルシウムは、主に硬化物の誘電率を大きくする目的で添加され、部品内蔵基板のコンデンサー部や指紋センサー部に適用できる。そこで、分散性と、ソルベントショックと、スラリーによる組成物の添加の際の安定性と、はんだ耐熱性と電気絶縁性といったプリント配線板用硬化性絶縁材料としての特性を評価した。
【0149】
[分散性および凝集のしにくさ]
上記で得た各組成物を、表1~3で評価した[分散性および凝集のしにくさ]と同様の方法で試験を行った。結果をそれぞれ表7~9に示す。
【0150】
[ソルベントショック]
上記で得た各組成物を再度3本ロールにて分散した組成物30gにエタノールを150g添加して、ヘラにて混合した。エタノールの添加の前と後の粒度分布を、日機装社製マイクロトラックMT3300を用いて測定して評価を行った。エタノールの添加前後で粒度分布の変化がほとんどないものを◎、若干の変化はあるが最大粒径が変化しないものを○、粒度分布の変化が大きいものを×とした。結果を表7~9に示す。
図1は×の例であり、エタノールを添加することでソルベントショックが起こり、凝集が発生して粒度分布が大きく変化している。
【0151】
[はんだ耐熱性、電気絶縁性]
表1~3で評価した[はんだ耐熱性]および[電気絶縁性]と同様の方法で試験を行った。結果をそれぞれ表7~9に示す。
【0152】
【表7】
*32:製造例3-1で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理したジルコン酸カルシウム
*33:製造例3-2で製造したRAFTによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理したジルコン酸カルシウム
*34:製造例3-3で製造したRAFTによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理したジルコン酸カルシウム
*35:製造例3-4で製造したRAFTによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理したジルコン酸カルシウム
*36:製造例3-5で製造したATRPによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理したジルコン酸カルシウム
*37:製造例3-6で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理したジルコン酸カルシウム
*38:ジルコン酸カルシウム CZ-03(堺化学工業社製)
【0153】
【0154】
【0155】
[スラリーでの分散性]
無機フィラーA-3-1~A-3-5、およびR-3-1について、フィラー分が50%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、自転公転式撹拌機で30分間撹拌し、このスラリーをそれぞれスラリーPA-3-1~PA-3-5、PR-3-1とした。
【0156】
無機フィラーA-3-1~A-3-5、およびR-3-1について、フィラー分が70%になるようにジプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて、自転公転式撹拌機で30分間撹拌し、このスラリーをそれぞれスラリーDA-3-1~DA-3-5、DR-3-1とした。
【0157】
無機フィラーA-3-1~A-3-5、およびR-3-1について、フィラー分が50%になるように(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートを加えて、自転公転式撹拌機で30分間撹拌し、このスラリーをそれぞれスラリーMA-3-1~MA-3-5、MR-3-1とした。
【0158】
下記表10に示す熱硬化性組成物、下記表11に示す光硬化性組成物、および、下記表12に示すアルカリ現像型組成物の組成に従い各成分を500mlのディスポカップにて配合し、直径3cmの4枚羽ディゾルバーで5分間攪拌して熱硬化性組成物、光硬化性組成物およびアルカリ現像型組成物を得た。表中の配合量は質量部を表す。
各スラリーと各組成物の粒度分布を、日機装社製マイクロトラックMT3300を用いて測定して評価を行った。
【0159】
スラリーの粒度分布の評価基準は、頻度が最も多い粒径が1μm以下であり、最大粒径が10μm以下のものを◎、頻度が最も多い粒径は1μmよりも大きいが、最大粒径が10μm以下のものを○、最大粒径が10μmよりも大きいものを×とした。
【0160】
組成物の粒度分布の評価基準は、添加したスラリーの粒度分布と比較して変化がほとんどないものを◎、若干の変化はあるが最大粒径が変化しないものを○、変化は小さいが最大粒径が大きくなっているものを×、大きく変化が見られるものを××とした。それぞれの結果を表10~12に示す。
【0161】
[はんだ耐熱性、電気絶縁性]
上記[はんだ耐熱性]および[電気絶縁性]と同様の方法で試験を行った。結果をそれぞれ表10~12に示す。
【0162】
【表10】
*39:BYK-067A (BYK-Chemie社製)
【0163】
【0164】
【0165】
実施例45~85より、本発明のプリント配線板用硬化性絶縁性組成物は、分散性に優れ、凝集がしにくいことがわかる。さらに、溶剤希釈時ソルベントショックが発生しにくく、また、スラリー状で組成物に添加する工程をとった場合の安定性が向上していることがわかる。
【0166】
[有機表面処理した酸化チタンの製造]
(製造例4-1:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-4-1)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に酸化チタン(石原産業社製、CR-90)2400g、トルエン4400g、2-ヒドロキシプロピルアクリレート20g、t-ブチルアクリレート50gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、30時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量13000、数平均分子量10000、分子量分布1.3を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-4-1とした。熱重量測定による有機分は1.1%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-4-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0167】
(製造例4-2:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-4-2)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に酸化チタン(石原産業社製、CR-90)2400g、トルエン4400g、2-ヒドロキシプロピルアクリレート20gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、10時間重合させた。次に、t-ブチルアクリレート50gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量14000、数平均分子量12000、分子量分布1.2を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-4-2とした。熱重量測定による有機分は1.2%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-4-2を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0168】
(製造例4-3:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-4-3)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に酸化チタン(石原産業社製、CR-90)2400g、トルエン4400g、2-ヒドロキシプロピルアクリレート40gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、10時間重合させた。次に、t-ブチルアクリレート75gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、60時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量25000、数平均分子量13000、分子量分布1.9を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-4-3とした。熱重量測定による有機分は2.2%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-4-3を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0169】
(製造例4-4:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-4-4)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に酸化チタン(石原産業社製、CR-90)2400g、トルエン4400g、2-ヒドロキシプロピルアクリレート20gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次にあらかじめ別容器にトルエン100gに4,4-ジノニル-2,2-ビピリジル1.6gと塩化銅(I)0.5gと塩化銅(II)0.33gを分散しておいた分散液と、2-ブロモイソ酪酸エチル0.5gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら70℃の温度にして、8時間重合させた。次に、t-ブチルアクリレート50gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら80℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量13000、数平均分子量8500、分子量分布1.5を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-4-4とした。熱重量測定による有機分は1.0%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-4-4を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0170】
(製造例4-5:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-4-5)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に酸化チタン(石原産業社製、CR-90)2400g、トルエン4400g、t-ブチルアクリレート50gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.03gとベンジルドデシルトリチオカーボネート0.2gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、90時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量11800、数平均分子量10000、分子量分布1.2を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-4-5とした。熱重量測定による有機分は0.2%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-4-5を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0171】
(有機表面処理していない無機フィラー R-4-1)
有機表面処理していない酸化チタンとして、石原産業社製CR-90を無機フィラーR-4-1として用いた。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーR-4-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、下層(水)に粉体が集まり白濁した。
【0172】
<特性評価>
下記表13に示す熱硬化性組成物、下記表14に示す光硬化性組成物、および、下記表15に示すアルカリ現像型組成物の組成に従い各成分を500mlのディスポカップにて配合し、直径3cmの4枚羽ディゾルバーで5分間攪拌して熱硬化性組成物、光硬化性組成物およびアルカリ現像型組成物を得た。表中の配合量は質量部を表す。酸化チタンは主に組成物の硬化物を白色にし、LED等の発光素子の光を反射させる目的で添加し、反射率と長期使用による耐変色が求められる。そこで、分散性と、反射率と、変色と、はんだ耐熱性と電気絶縁性といったプリント配線板用硬化性絶縁材料としての特性を評価した。
【0173】
[分散性および凝集のしにくさ]
上記で得た各組成物を、上記[分散性および凝集のしにくさ]と同様の方法で試験を行った。結果をそれぞれ表13~15に示す。
【0174】
[反射率および劣化特性]
上記で得た各組成物を再度3本ロールにて分散した組成物を用いて、下記のように試験用基板をそれぞれ作製した。
表13の熱硬化性組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、これを150℃で60分間加熱して硬化させて試験用基板を得た。
表14の光硬化性組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて365nmの波長で2J/cm2の積算光量を照射して硬化させて試験用基板を得た。
表15のアルカリ現像型組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにベタ印刷し、これを80℃で30分間加熱して乾燥させて、プリント配線板用のメタルハライドランプが光源の接触型露光機で、300mJ/cm2の積算光量でネガパターンのマスクを用いて露光し、1wt%Na2CO3水溶液によって現像を行い、150℃で60分間加熱して本硬化させて試験用基板を得た。
各試験用基板を、コニカミノルタ社製色彩色差計CR-400を用いて、XYZ表色系のY値を記録した。値を表13~15に示す。Y値は緑の波長域に大きな応答度をもったセンサーにより測定され、値が大きければおおよそ高い反射率と言える。同時にL*a*b*表色系のデーターも初期値として測定した。
【0175】
耐光性の加速試験として、UVコンベア炉(出力150W/cm、メタルハライドランプ、コールドミラー)で300J/cm2の積算光量の光を照射して、L*a*b*表色系のデーターを測定し、ΔE*abを求めた。また、目視による評価も行った。変色が無いものを○、少し変色があるものを△、明らかな変色があるものを×とした。結果を表13~15に示す。
ΔE*abは以下の式で算出される。
ΔE*ab=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2
【0176】
耐熱性の加速試験として150℃の熱風循環式乾燥炉に100時間放置して、L*a*b*表色系のデーターを測定し、ΔE*abを求めた。また、目視による評価も行った。変色が無いものを○、少し変色があるものを△、明らかな変色があるものを×とした。結果を表13~15に示す。
【0177】
[はんだ耐熱性、電気絶縁性]
表1~3で評価した[はんだ耐熱性]および[電気絶縁性]と同様の方法で試験を行った。結果をそれぞれ表13~15に示す。
【0178】
【表13】
*40:製造例4-1で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理した酸化チタン
*41:製造例4-2で製造したRAFTによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理した酸化チタン
*42:製造例4-3で製造したRAFTによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理した酸化チタン
*43:製造例4-4で製造したATRPによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理した酸化チタン
*44:製造例4-5で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理した酸化チタン
*45:酸化チタン CR-90(石原産業社製)
【0179】
【0180】
【0181】
実施例86~110より、本発明のプリント配線板用硬化性絶縁性組成物は、分散性に優れ、凝集がしにくいことがわかる。酸化チタンを使用した場合では、反射率を上げる目的で大量に添加して効果が飽和してしまうときでも、さらに添加効果が得られることがわかる。また、長期使用での熱の影響や光の影響による変色を少なくできることがわかる。
【0182】
[有機表面処理した微粉シリカの製造]
(製造例5-1:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-5-1)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に微粉シリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL200)350g、トルエン5300g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル16g、アクリル酸2-エチルヘキシル16gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.05gとベンジルドデシルトリチオカーボネート0.5gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、30時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量12500、数平均分子量8000、分子量分布1.6を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-5-1とした。熱重量測定による有機分は4.6%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-5-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0183】
(製造例5-2:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-5-2)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に微粉シリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL200)350g、トルエン5300g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル16gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.05gとベンジルドデシルトリチオカーボネート0.5gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、10時間重合させた。次に、アクリル酸2-エチルヘキシル16gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量13500、数平均分子量9500、分子量分布1.4を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-5-2とした。熱重量測定による有機分は4.9%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-5-2を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0184】
(製造例5-3:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-5-3)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に微粉シリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL200)350g、トルエン5300g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル16gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次にあらかじめ別容器にトルエン100gに4,4-ジノニル-2,2-ビピリジル1.6gと塩化銅(I)0.5gと塩化銅(II)0.33gを分散しておいた分散液と、2-ブロモイソ酪酸エチル0.5gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら70℃の温度にして、8時間重合させた。次に、アクリル酸2-エチルヘキシル16gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら80℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量7000、数平均分子量4000、分子量分布1.8を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-5-3とした。熱重量測定による有機分は4.4%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-5-3を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0185】
(製造例5-4:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-5-4)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器に微粉シリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL200)350g、トルエン5300g、アクリル酸2-エチルヘキシル16gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.01gとベンジルドデシルトリチオカーボネート0.1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、90時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量12000、数平均分子量9500、分子量分布1.26を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-5-4とした。熱重量測定による有機分は0.9%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-5-4を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0186】
(有機表面処理していない無機フィラー R-5-1)
有機表面処理していない微粉シリカとして、日本アエロジル社製AEROSIL200を無機フィラーR-5-1として用いた。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーR-5-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、下層(水)に粉体が集まり白濁した。
【0187】
<特性評価>
下記表16に示す熱硬化性組成物、下記表17に示す光硬化性組成物、および、下記表18に示すアルカリ現像型組成物の組成に従い各成分を500mlのディスポカップにて配合し、直径3cmの4枚羽ディゾルバーで5分間攪拌して熱硬化性組成物、光硬化性組成物およびアルカリ現像型組成物を得た。表中の配合量は質量部を表す。微粉シリカは主に組成物の流動性を調整する目的で添加される。組成物は低粘度にすると塗布が容易になるが、塗布後に塗膜が動くことでムラやはじきが生じることがあるため、低粘度でも静置時には塗膜が動かないように流動性を調整することがある。そこで、分散性と、流動性の調整能力と、はんだ耐熱性と電気絶縁性といったプリント配線板用硬化性絶縁材料としての特性を評価した。
【0188】
[分散性および凝集のしにくさ]
上記で得た各組成物を、上記[分散性および凝集のしにくさ]と同様の方法で試験を行った。結果をそれぞれ表16~18に示す。
【0189】
[チキソ性]
上記で得た各組成物を再度3本ロールにて分散した組成物をジプロピレングリコールモノメチルエーテルにて希釈してコーンプレート型粘度計(25℃ 5rpm)で50dPa・sの値になるように粘度調整をした。その時の50rpmでの値を計測してTI値を求めた。結果を表16~18に示す。
TI値の算出方法は以下の通りである。
TI値=5rpmの粘度(50dPa・s)/50rpmの粘度
TI値は組成物の性状を示し、値が1に近いほど流動性があり、大きくなるとチキソ性がある性状となる。
【0190】
[はんだ耐熱性、電気絶縁性]
表1~3で評価した[はんだ耐熱性]および[電気絶縁性]と同様の方法で試験を行った。結果をそれぞれ表16~18に示す。
【0191】
【表16】
*46:製造例5-1で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理した微粉シリカ
*47:製造例5-2で製造したRAFTによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理した微粉シリカ
*48:製造例5-3で製造したATRPによるリビングラジカル重合(2段階)で有機表面処理した微粉シリカ
*49:製造例5-4で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理した微粉シリカ
*50:微粉シリカ AEROSIL200(日本アエロジル社製)
【0192】
【0193】
【0194】
実施例111~135より、本発明のプリント配線板用硬化性絶縁性組成物は、分散性に優れ、凝集がしにくいことがわかる。さらに、無機フィラーの特性をより引き出して、微粉シリカを使用した場合では、少量で流動性を調整することができ、コストの高い微粉シリカの使用量を削減することができることがわかる。
【0195】
[有機表面処理したアルミナの製造]
(製造例6-1:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-6-1)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にアルミナ(電気化学工業製、DAW-03)2200gとアルミナ(電気化学工業製、ASFP-20)200g、トルエン4400g、メトキシトリエチレングリコールアクリレート20gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.1gとベンジルドデシルトリチオカーボネート1gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、10時間重合させた。次に、イソボルニルアクリレート50gを反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら60℃の温度にして、20時間重合させた。ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量12000、数平均分子量11000、分子量分布1.1を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-6-1とした。熱重量測定による有機分は1.0%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-6-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0196】
(製造例6-2:リビングラジカル重合で有機表面処理した無機フィラー A-6-2)
密閉撹拌および外部より注入できる反応容器にアルミナ(電気化学工業製、DAW-03)2200gとアルミナ(電気化学工業製、ASFP-20)200g、トルエン4400g、イソボルニルアクリレート50gを入れて容器内を窒素置換しながら1時間撹拌した。次に重合開始剤(和光純薬製、アゾ重合開始剤V-70)0.03gとベンジルドデシルトリチオカーボネート0.2gを100gのトルエンに溶解して反応容器に入れて、窒素を導入しながら30分撹拌したのち、密閉して撹拌しながら45℃の温度にして、90時間重合させた。次に、ろ過にて固形分とろ液を分離し、ろ液は濃縮してGPCにてポリスチレン換算の分子量を測定し、ポリマーの重量平均分子量12000、数平均分子量10500、分子量分布1.14を求めた。この値はフィラーに吸着している有機分と同等であると認められる。固形分は乾燥させて粉体とした。この粉体を無機フィラーA-6-2とした。熱重量測定による有機分は0.2%であった。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーA-6-2を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、上層(有機溶剤)に粉体が集まり白濁した。
【0197】
(有機表面処理していない無機フィラー R-6-1)
有機表面処理していないアルミナとして、電気化学工業製DAW-03を無機フィラーR-6-1として用いた。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーR-6-1を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、下層(水)に粉体が集まり白濁した。
【0198】
(有機表面処理していない無機フィラー R-6-2)
有機表面処理していないアルミナとして、電気化学工業製ASFP-20を無機フィラーR-6-2として用いた。性状の確認として、透明ガラス製の20mlのねじ口瓶に無機フィラーR-6-2を0.1g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gを入れて撹拌した。次に水10gを入れて蓋を閉めて撹拌して、10分間静置すると2層に分かれ、下層(水)に粉体が集まり白濁した。
【0199】
<特性評価>
下記表19に示す熱硬化性組成物、下記表20に示す光硬化性組成物、および、下記表21に示すアルカリ現像型組成物の組成に従い各成分を500mlのディスポカップにて配合し、直径3cmの4枚羽ディゾルバーで5分間攪拌して熱硬化性組成物、光硬化性組成物およびアルカリ現像型組成物を得た。表中の配合量は質量部を表す。アルミナは主に組成物の熱伝導率を大きくして、放熱性を向上させる目的で添加する。より大きな熱伝導率を得るためには高充填させることが求められる。そこで、分散性と高充填と、熱伝導率について評価した。
【0200】
[分散性および凝集のしにくさ]
上記で得た各組成物を、表1~3で評価した[分散性および凝集のしにくさ]と同様の方法で試験を行った。また、撹拌してもフィラー量が多くペースト状にならなかったものも存在したので、状態の評価も行った。ペースト状になったものを○、フィラーを湿潤させることが出来なく、ペースト状にならなかったものを×とした。結果をそれぞれ表19~21に示す。
【0201】
[塗膜の状態]
上記で得た各組成物を再度3本ロールにて分散した組成物を用いて、下記のように試験用基板をそれぞれ作製した。
表19の熱硬化性組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、これを150℃で60分間加熱して硬化させて試験用基板を得た。
表20の光硬化性組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて365nmの波長で2J/cm2の積算光量を照射して硬化させて試験用基板を得た。
表21のアルカリ現像型組成物は、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにベタ印刷し、これを80℃で30分間加熱して乾燥させて、プリント配線板用のメタルハライドランプが光源の接触型露光機で、300mJ/cm2の積算光量でネガパターンのマスクを用いて露光し、1wt%Na2CO3水溶液によって現像を行い、150℃で60分間加熱して本硬化させて試験用基板を得た。
【0202】
各試験用基板をセロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の状態を評価した。塗膜に異常がないものを○、剥がしたセロハン粘着テープに塗膜から脱落したフィラーが見られたものを×とした。
【0203】
[はんだ耐熱性、電気絶縁性]
表1~3で評価した[はんだ耐熱性]および[電気絶縁性]と同様の方法で試験を行った。結果をそれぞれ表19~21に示す。
【0204】
[熱伝導率]
上記[塗膜の状態]と同様の方法で、基材に銅箔をFR-4基板に両面テープで張り付けたものを用いて、膜厚を仕上がりで40μmになるように作製した。次に銅箔付の塗膜を両面テープをはがすことで基板と分離し、さらに銅箔をはがすことで組成物の塗膜を得た。この塗膜をレーザーフラッシュ法で25~125℃での熱伝導率を測定した。結果をそれぞれ表19~21に示す。
【0205】
【表19】
*51:製造例6-1で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理したアルミナ
*52:製造例6-2で製造したRAFTによるリビングラジカル重合で有機表面処理したアルミナ
*53:アルミナ DAW-03(電気化学工業製)
*54:アルミナ ASFP-20(電気化学工業製)
*55:DISPERBYK-110(BYK-Chemie社製)
【0206】
【0207】
【0208】
実施例136~153より、本発明のプリント配線板用硬化性絶縁性組成物は、分散性に優れ、凝集がしにくいことがわかる。さらにフィラーの高充填が可能であり、それに伴い、アルミナを使用した場合では熱伝導率を向上できることがわかる。