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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂不織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/007 20120101AFI20220405BHJP
   D01F 6/16 20060101ALI20220405BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
D04H3/007
D01F6/16
A61F13/15 329
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020502348
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 KR2018012843
(87)【国際公開番号】W WO2019088597
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0142612
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャンチュン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ウンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、チャン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チェ-フン
(72)【発明者】
【氏名】アン、テピン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チャン-フン
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-018125(JP,A)
【文献】特表2017-517600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0306528(US,A1)
【文献】特開平10-005583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
A61F 13/15-13/84
D01F 1/00- 6/96
D01D 1/00-13/02
C08F 220/04
C08J 3/00- 3/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸水性樹脂繊維を含み、
前記高吸水性樹脂繊維を構成する重合体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体とガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の共単量体が共重合した重合体が、ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の架橋剤で架橋された重合体であり、
前記アクリル酸系単量体は、下記化学式1で表される化合物であり、
[化学式1]
1 -COOM 1
前記化学式1において、
1 は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキルグループであり、
1 は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩であり、
前記ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の共単量体は、炭素数1~10のビニルアルキルエーテル(vinyl alkyl ether)、炭素数1~10のアルキルアクリレート(alkyl acrylate)、メトキシエチルアクリレート(methoxyethyl acrylate)、炭素数1~10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(hydroxyalkyl (meth)acrylates)、エチレングリコール数1~20のポリエチレングリコール(メチルエーテル)アクリレート(Polyethylene glycol (methyl ether)acrylate)、エチレングリコール数1~20のポリエチレングリコール(メチルエーテル)メタクリレート(Polyethylene glycol (methyl ether)methacrylate)および2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート(2-ethylhexyl (meth)acrylate)からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の架橋剤は、エチレングリコール(ethyleneglycol)、グリセロール(glycerol)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリ(4-ヒドロキシブチルアクリレート)(poly(4-hydroxybutyl acrylate))、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート)(poly(2-hydroxyethyl acrylate))、およびポリ(2-ヒドロキシプロピルアクリレート)(poly(2-hydroxypropyl acrylate))からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記高吸水性樹脂繊維は、直径が10μm超200μm以下であり、長さが1~1000mであり
前記高吸水性樹脂繊維は、EDANA法WSP241.2の方法により測定した遠心分離保持容量(CRC)が5~50g/gであり、
前記高吸水性樹脂繊維は、生理食塩水の流れ誘導性(SFC)値が5×10-7~120×10-7cm3・sec/gであり、
前記高吸水性樹脂繊維を曲げたとき折れない最小曲率半径の逆数(1/r)で示される限界曲率(critical curvature)が0.5mm-1以上である、高吸水性樹脂不織布。
【請求項2】
前記高吸水性樹脂繊維は、EDANA法WSP242.2の方法により測定した0.9psiの加圧吸収能(AUL)が4~45g/gである、請求項1に記載の高吸水性樹脂不織布。
【請求項3】
前記高吸水性樹脂不織布100重量部に対して前記高吸水性樹脂繊維を50重量部以上含む、請求項1または2のいずれかに記載の高吸水性樹脂不織布。
【請求項4】
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の共単量体、および重合開始剤を含む単量体水溶液を重合して含水ゲル重合体を含む第1重合体水溶液を製造する段階;
前記第1重合体水溶液にガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の架橋剤を混合して第2重合体水溶液を製造する段階;
前記第2重合体水溶液を溶液噴射(solution blown)工程によって紡糸する段階;および
前記紡糸された第2重合体水溶液を乾燥して高吸水性樹脂繊維を含む高吸水性樹脂不織布を製造する段階;
を含み、
前記アクリル酸系単量体は、下記化学式1で表される化合物であり、
[化学式1]
1 -COOM 1
前記化学式1において、
1 は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキルグループであり、
1 は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩であり、
前記ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の共単量体は、炭素数1~10のビニルアルキルエーテル(vinyl alkyl ether)、炭素数1~10のアルキルアクリレート(alkyl acrylate)、メトキシエチルアクリレート(methoxyethyl acrylate)、炭素数1~10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(hydroxyalkyl (meth)acrylates)、エチレングリコール数1~20のポリエチレングリコール(メチルエーテル)アクリレート(Polyethylene glycol (methyl ether)acrylate)、エチレングリコール数1~20のポリエチレングリコール(メチルエーテル)メタクリレート(Polyethylene glycol (methyl ether)methacrylate)および2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート(2-ethylhexyl (meth)acrylate)からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の架橋剤は、エチレングリコール(ethyleneglycol)、グリセロール(glycerol)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリ(4-ヒドロキシブチルアクリレート)(poly(4-hydroxybutyl acrylate))、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート)(poly(2-hydroxyethyl acrylate))、およびポリ(2-ヒドロキシプロピルアクリレート)(poly(2-hydroxypropyl acrylate))からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記高吸水性樹脂繊維は、直径が10μm超200μm以下であり、かつ長さが1~1000mであり、
前記高吸水性樹脂繊維は、EDANA法WSP241.2の方法により測定した遠心分離保持容量(CRC)が5~50g/gであり、
前記高吸水性樹脂繊維は、生理食塩水の流れ誘導性(SFC)値が5×10-7~120×10-7cm3・sec/gである、高吸水性樹脂不織布の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の共単量体は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.1~30重量部含まれる、請求項4に記載の高吸水性樹脂不織布の製造方法。
【請求項6】
前記ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の架橋剤は、前記単量体水溶液に含まれた単量体100重量部に対して0.1~30重量部で含まれる、請求項4または5に記載の高吸水性樹脂不織布の製造方法。
【請求項7】
前記紡糸された第2重合体水溶液を乾燥する段階において、前記含水ゲル重合体と前記ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の架橋剤との架橋反応が行われる、請求項4~のいずれかに記載の高吸水性樹脂不織布の製造方法。
【請求項8】
前記第2重合体水溶液を溶液噴射(solution blown)工程によって紡糸する段階は、前記第2重合体水溶液の周囲に気体を流しながらマイクロチャネルを介してコンベヤーベルトに連続して紡糸して行われる、請求項4~のいずれかに記載の高吸水性樹脂不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2017年10月30日付韓国特許出願第10-2017-0142612号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれている。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂不織布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer,SAP)とは自体重量の5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であり、生理用品として実用化され始め、現在は子供用紙おむつなど衛生用品の他に園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤、および湿布用などの材料として広く使われている。したがって、従来の吸収材料と比較するとき、卓越した吸収能力を有すると知られている高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer,SAP)はその活用範囲がますます広くなっており市場価値が高いと言える。
【0004】
現在の高吸水性樹脂の多くは粉末形態で製造されて使われている。このような粉末形態の高吸水性樹脂は、衛生材を製造するときや実際の使用時には飛散または漏出する部分があり、特定形態の気質(substrate)と共に使用しなければならないため使用範囲の制限がある実情である。
【0005】
そこで最近では高吸水性樹脂を繊維(fiber)形態で製造する方法が提案されている。例えば韓国公開特許第2017-0028836号には水酸化ナトリウム水溶液に水溶性エチレン系不飽和単量体を溶解させて中和溶液を製造し、前記中和溶液に架橋剤を添加して攪拌させて紡糸溶液を製造した後、前記紡糸溶液を紡糸口金に入れて遠心紡糸した後乾燥して高吸水性樹脂繊維を製造する方法が開示されている。しかし、前記韓国公開特許に開示された方法は、遠心紡糸の特性上繊維の直径を10μm以上に製造することができないため生産性の低下、透過能(permeability)の低下などの短所がある。
【0006】
米国登録特許第6692825号にはアミド架橋結合を含む高吸水性樹脂で、0.1~10μmの直径を有する高吸水性樹脂繊維からなる不織布ウェブ(nonewoven web)の製造方法が開示されている。しかし、前記米国登録特許に開示された方法は、アミド架橋結合に用いられるアミン系モノマーは悪臭、皮膚副作用などの問題を引き起こし得る。また、製造された繊維の直径が10μm以下で遠心紡糸のような短所がある。
【0007】
日本登録特許第3548651号にはモノマー組成物に柔軟化成分を添加し、ノズルから落下させながら落下途中に紫外線を照射、重合して柔軟性を有する吸水性繊維積層体を収得する方法が開示されている。しかし、前記日本登録特許に開示された方法は、落下する時間のあいだ紫外線によって重合することであり、非常に短い重合時間のため残留モノマーが増加し、これによって高吸水性樹脂の透過能および吸収速度が低下する短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第2017-0028836号公報
【文献】米国登録特許第6692825号明細書
【文献】日本登録特許第3548651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のような従来技術の問題を解決するために、本発明は、長繊維形態で製造することができ、高い可撓性およびはやい吸収速度を示す高吸水性樹脂不織布およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明の一側面は、
直径が10μm超であり、長さが0.1m以上である高吸水性樹脂繊維を含み、
限界曲率(critical curvature)が0.5mm-1以上である高吸水性樹脂不織布を提供する。
【0011】
また、本発明の他の一側面は、
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の共単量体、および重合開始剤を含む単量体水溶液を重合して含水ゲル重合体を含む第1重合体水溶液を製造する段階;
前記第1重合体水溶液にガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の架橋剤を混合して第2重合体水溶液を製造する段階;
前記第2重合体水溶液を溶液噴射(solution blown)工程によって紡糸する段階;および
前記紡糸された第2重合体水溶液を乾燥して高吸水性樹脂繊維を含む高吸水性樹脂不織布を製造する段階;
を含む高吸水性樹脂不織布の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による高吸水性樹脂不織布は、粉末状態の通常の高吸水性樹脂とは異なり、不織布形態でそのまま製品への適用が可能であり、飛散または漏出の恐れがなく、柔軟性を示すことができる。
【0013】
また、不織布をなすそれぞれの繊維が長繊維で構成されているので、高い可撓性を示すことができる。
【0014】
このように、柔軟性と可撓性を有しながら高吸水性樹脂本来の物性によりはやい吸収速度を示すため、可撓性および高い吸水性を必要とする多様な製品への適用が可能である。例えば本発明による高吸水性樹脂不織布は、従来の高吸水性樹脂粉末が使われるすべての製品に適用することが可能であるだけでなく、おむつ、生理用ナプキンなどの衛生材に高吸水性樹脂粒子のコア(core)を囲む透過性封止材、壁、屋根、ケーブルなどに適用される防水材、水分除去用オイルフィルタ、傷および潰瘍管理ドレッシング剤、水分浸出防止食品パッケージング材、防火服の汗吸収材など多様な分野で応用することができる。
【0015】
また、本発明の製造方法によれば、前記のような高吸水性樹脂不織布を高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例による高吸水性樹脂不織布の製造工程を示す模式図である。
図2】本発明の実施例による高吸水性樹脂繊維の走査電子顕微鏡写真である。
図3】本発明の比較例による高吸水性樹脂繊維の走査電子顕微鏡写真である。
図4】高吸水性樹脂不織布の柔軟性テスト方法に対する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は多様な変更を加えることができ、多様な形態を有し得るため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術的範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0018】
以下、本発明の一実施形態による高吸水性樹脂不織布およびその製造方法について説明する。
【0019】
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂不織布は、
直径が10μm超であり、長さが0.1m以上である高吸水性樹脂繊維を含み、限界曲率(critical curvature)が0.5mm-1以上である。
【0020】
本発明の高吸水性樹脂不織布は、高吸水性樹脂繊維を含み、前記高吸水性樹脂繊維は柔軟性を有する長繊維形態であり得る。
【0021】
好ましくは本発明の高吸水性樹脂不織布は、前記高吸水性樹脂繊維を主成分として含み得る。しかし、これは本発明の高吸水性樹脂不織布を高吸水性樹脂粉末(powder)、粒子(particle)、または第3の形態の高吸水性樹脂などと混合して使用できないことを意味するものではなく、前記羅列した物質およびその他成分、添加剤などといくらでも混合して使用することができる。
【0022】
また、高吸水性樹脂繊維を主成分として含むとは、全体高吸水性樹脂不織布100重量部に対して約50重量部以上、または約60重量部以上、または約70重量部以上および約100重量部以下、または約99.9重量部以下、または約99重量部以下が前記直径が10μm超であり、長さが0.1m以上である高吸水性樹脂繊維が占める状態であることを意味する。残りの残量は、水分、長さが0.1m未満の短繊維形態の高吸水性樹脂繊維、粒子、その他添加剤などが占める。
【0023】
前記高吸水性樹脂繊維は、長さが約0.1m以上、または約1m以上、または約2m以上であり得、約1000m以下、または約100m以下、または約10m以下であり得る。本発明の高吸水性樹脂不織布は、上記のように長さが0.1m以上の長繊維からなることによりよく折れない柔軟な特性を有することができる。
【0024】
また、前記高吸水性樹脂繊維は、直径が約10μm超であり、または約15μm以上、または約20μm以上であり、かつ約200μm以下、または約150μm以下、または約80μm以下であり得る。本発明の高吸水性樹脂不織布は、上記のように直径が10μmを超える繊維からなることにより単位面積当たり高吸水性樹脂の含有量を高めることができ、高吸水性樹脂本来の物性である吸収能と透過性を高く維持することができる。
【0025】
また、前記高吸水性樹脂繊維を含む不織布は、限界曲率(critical curvature)が約0.5mm-1以上または約1mm-1以上、または約2mm-1以上であり得る。前記限界曲率は、繊維を曲げたとき折れない最小曲率半径(r、単位:mm)の逆数(1/r)を意味する。これにより、本発明の高吸水性樹脂不織布は、曲率半径が2mm以下で曲げたりたたんでもよく折れない柔軟な特性を有することができる。
【0026】
上記のように本発明の高吸水性樹脂不織布を構成する高吸水性樹脂繊維は、柔軟性を有する長繊維であるため、それからなるまたはそれを含む高吸水性樹脂不織布もまた柔軟性が高く、曲げても簡単にもろくなるか(brittle)折れることなく、柔軟でかつよく曲がる性質を有することができる。
【0027】
また、前記高吸水性樹脂繊維は、優れた吸収能および吸収速度を示すことができる。
【0028】
例えば、前記高吸水性樹脂繊維は、EDANA法WSP241.2の方法により測定した遠心分離保持容量(CRC)が約5g/g以上、または約10g/g以上であり、かつ約50g/g以下、または約40g/g以下、または約30g/g以下の範囲を有することができる。
【0029】
また、前記高吸水性樹脂繊維は、EDANA法WSP242.2の方法により測定した0.9psiの加圧吸収能(AUL)が約4g/g以上、または約7g/g以上、または約10g/g以上であり、約45g/g以下、または約35g/g以下、または約30g/g以下の範囲を有することができる。
【0030】
また、前記高吸水性樹脂繊維は、生理食塩水の流れ誘導性(SFC)値が約5×10-7cm・sec/g以上、または約10×10-7cm・sec/g以上、または約30×10-7cm・sec/g以上であり、かつ約120×10-7cm・sec/g以下、または約110×10-7cm・sec/g以下、または約100×10-7cm・sec/g以下の範囲を有することができる。
【0031】
本発明の一実施例によれば、前記高吸水性樹脂不織布の比表面積は、約0.5m/g以上、または約1m/g以上、または約2m/g以上であり、かつ約100m/g以下、または約70m/g以下、または約50m/g以下であり得る。
【0032】
本発明による高吸水性樹脂不織布は、単独または高吸水性を有する他の樹脂、粒子、粉末、またはその他成分などと制限なしに混合して衛生材をはじめとして吸湿性が求められる各種物品の用途などに適して使用されることができる。
【0033】
このような本発明による高吸水性樹脂不織布の用途は、特に限定されず、衛生用品、透過性封止材、防水材、水分除去用フィルタ、ドレッシング剤、水分浸出防止食品パッケージング材、汗吸収材など医学、化学、化工、食料品または化粧品などの多様な分野で使われる物品をすべて包括することができる。
【0034】
上述した本発明の高吸水性樹脂不織布は、下記のような製造方法で製造されることができる。
【0035】
本発明の他の一実施形態による高吸水性樹脂不織布の製造方法は、
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の共単量体、および重合開始剤を含む単量体水溶液を重合して含水ゲル重合体を含む第1重合体水溶液を製造する段階;前記第1重合体水溶液にガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の架橋剤を混合して第2重合体水溶液を製造する段階;前記第2重合体水溶液を溶液噴射(solution blown)工程によって紡糸する段階;および前記紡糸された第2重合体水溶液を乾燥して高吸水性樹脂繊維を含む高吸水性樹脂不織布を製造する段階を含む。
【0036】
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂不織布の製造方法において先に酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の共単量体、および重合開始剤を含む単量体水溶液を重合して含水ゲル重合体を含む第1重合体水溶液を製造する。
【0037】
前記単量体水溶液においてアクリル酸系単量体は、下記化学式1で表される化合物である:
[化学式1]
-COOM
前記化学式1において、
は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキルグループであり、
は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0038】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機塩からなる群より選ばれる1種以上を含み得る。
【0039】
ここで、前記アクリル酸系単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは前記アクリル酸系単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのようなアルキルリ物質で部分的に中和させたものが使用され得る。この時、前記アクリル酸系単量体の中和度は、約40~約95モル%、または約40~約80モル%、または約45~約75モル%であり得る。前記中和度の範囲は、最終物性に応じて調整することができる。しかし、前記中和度が過度に高いと中和した単量体が析出され、円滑な重合が行われることが難しく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大きく劣るだけでなく取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を現わす。
【0040】
一方、本発明による高吸水性樹脂不織布の製造方法において、前記アクリル酸系単量体の濃度は、反応時間および反応条件などを考慮して適切に選択して使用できるが、好ましくは単量体水溶液の総重量に対してアクリル酸系単量体の含有量を10~50重量%にすることができる。アクリル酸系単量体の濃度が10重量%未満の場合、経済性の面から不利であり、50重量%を超える場合、粘度が高まって繊維状を形成できなくなる。
【0041】
本発明による高吸水性樹脂繊維の製造方法において、前記単量体水溶液はガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下の共単量体を含む。
【0042】
前記共単量体は、重合過程でアクリル酸系単量体とともに共重合されて柔軟性を有する長繊維形態の高吸水性樹脂の重合を可能にする。
【0043】
ガラス転移温度(Tg)が常温を超える共単量体を含んで重合するか、アクリル酸単量体だけで重合して含水ゲル重合体を形成する場合、それから生成される高吸水性樹脂繊維の柔軟性と可撓性が劣り折れやすい。
【0044】
前記共単量体は、アクリル酸系単量体と重合反応が可能な官能基を有しながらガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下であることを特徴として、例えば炭素数1~10のビニルアルキルエーテル(vinyl alkyl ether)、炭素数1~10のアルキルアクリレート(alkyl acrylate)、メトキシエチルアクリレート(methoxyethyl acrylate)、炭素数1~10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(hydroxyalkyl (mneth)acrylates)、エチレングリコール数1~20のポリエチレングリコール(メチルエーテル)アクリレート(Polyethylene glycol (methyl ether)acrylate)、エチレングリコール数1~20のポリエチレングリコール(メチルエーテル)メタクリレート(Polyethylene glycol (methyl ether)methacrylate)または2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート(2-ethylhexyl (meth)acrylate)などが挙げられ、好ましくはポリエチレングリコール(メチルエーテル)アクリレート(Polyethylene glycol (methyl ether)acrylate)を使用することができる。
【0045】
前記共単量体の含有量は、アクリル酸系単量体の100重量部に対して0.1~30重量部、好ましくは0.5~25重量部、さらに好ましくは1~20重量部を使用することができる。前記共単量体の含有量が過度に少ないと、柔軟性改善の効果がなく、過度に多く含まれる場合、吸収速度および吸収能の低下が生じ得るため、このような観点から前記含有量の範囲が好ましい。
【0046】
前記重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造に一般的に使われる重合開始剤を使用することができる。前記重合開始剤としては重合方法によって熱重合開始剤または光重合開始剤またはレドックス重合開始剤などが使用され得る。ただし、熱重合開始剤または光重合開始剤を単独で使用することより二種を混用して使用することが重合効率の側面からより好ましい。これは光重合方法によっても、紫外線照射などによって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するので、熱重合開始剤を含む場合、熱重合が同時に起きるからである。
【0047】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)、およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選ばれた一つ以上の化合物が使用されることができる。そのうちアシルホスフィンの具体的な例として、商用のlucirin TPO、すなわち、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)が使用されることができる。より多様な光重合開始剤については、Reinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」の115ページに開示されており、これを参照することができる。
【0048】
また、前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸からなる群より選ばれた一つ以上の化合物が使用されることができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)等を例に挙げることができる。また、アゾ(Azo)系開始剤としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))等を例に挙げることができる。より多様な熱重合開始剤についてはOdianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981年)」の203ページに開示されており、これを参照することができる。
【0049】
レドックス重合には重合開始剤と重合還元剤が同時に使用される。前記レドックス重合開始剤としてはパーオキサイド系成分を有する化合物(すなわち、パーオキサイド系化合物)を含む。例えば、パーオキサイド系化合物、例えばt-ブチル過酸化水素およびクメンヒドロパーオキサイドのような過酸化水素;パーオキサイド類、例えばベンゾイルパーオキサイド、カプリリルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、エチル3,3’-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、エチル3,3’-ジ(t-アミルパーオキシ)ブチレート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、またはt-ブチルパーオキシピバレート;パーエステル、例えばt-ブチルパーアセテート、t-ブチルパーフタレート、またはt-ブチルパーベンゾエート;パーカボネート、例えばジ(1-シアノ-1-メチルエチル)パーオキシジカボネート;およびパーホスフェートなどがある。前記レドックス重合還元剤はアスコルビン酸またはイソ-アスコルビン酸のようなアスコルビック化合物などを例に挙げることができる。
【0050】
前記重合開始剤は、前記単量体水溶液に対して約0.001~1重量%の濃度で添加され得る。すなわち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存単量体が多量抽出されるので好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が過度に高い場合、ネットワークをなす高分子チェーンが短くなって水可溶成分の含有量が高くなり、加圧吸収能が低くなるなど樹脂の物性が低下し得るので好ましくない。
【0051】
本発明の製造方法において、前記単量体水溶液は必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含み得る。
【0052】
上述したアクリル酸系単量体、ガラス転移温度(Tg)が常温以下の共単量体、重合開始剤、および添加剤のような原料物質は、水に溶解した水溶液の形態で準備される。前記水は、単量体水溶液の総含有量に対して上述した成分を除いた残量で含まれ得る。
【0053】
次に、前記単量体水溶液を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成し、これにより、前記含水ゲル重合体を含む第1重合体水溶液を製造する。
【0054】
一方、このような単量体水溶液を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する方法は、高吸水性樹脂製造技術分野における通常使われる重合方法であれば、特に構成の限定はない。
【0055】
具体的に、重合方法は重合エネルギー源によって大きく熱重合および光重合に分けられる。通常熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)のような攪拌軸を有する反応器で行われることができる。反面、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行われるが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0056】
この時、このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常含水率は、約40~約80重量%であり得る。一方、本明細書全体において「含水率」は、全体含水ゲル重合体の重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体のうち水分蒸発による重量減少分を測定して計算した値で定義する。この時、乾燥条件は、常温で約180℃まで温度を上昇させた後180℃に維持する方式であり、総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで20分に設定し、含水率を測定する。
【0057】
上記のように含水ゲル重合体を含む第1重合体水溶液に架橋剤を混合して第2重合体水溶液を製造する。
【0058】
本発明による高吸水性樹脂不織布の製造方法において、前記架橋剤は、重合体が有する官能基と反応可能な化合物であり、かつガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以下であることを特徴とし、後述する乾燥段階で前記重合体と架橋反応をすることで柔軟性を有する長繊維形態の高吸水性樹脂を製造することができる。
【0059】
前記のような条件を満足する架橋剤としては、エチレングリコール(ethyleneglycol)、グリセロール(glycerol)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリ(4-ヒドロキシブチルアクリレート)(poly(4-hydroxybutyl acrylate))、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート)(poly(2-hydroxyethyl acrylate))、およびポリ(2-ヒドロキシプロピルアクリレート)(poly(2-hydroxypropyl acrylate))からなる群より選ばれる1種以上を使用することができ、好ましくはエチレングリコールを使用することができる。
【0060】
前記架橋剤の含有量は、前記単量体水溶液に含まれた単量体100重量部に対して0.1~30重量部、好ましくは0.5~25重量部、さらに好ましくは1~20重量部を使用することができる。前記架橋剤の含有量が過度に少ないと、架橋反応がほとんど起きなく、過度に多く含まれる場合、過度な架橋反応によりむしろ高吸水性樹脂繊維の物性が低下し得る。
【0061】
次に、製造した第2重合体水溶液を溶液噴射(solution blown)工程によって紡糸する。
【0062】
高分子を繊維または不織布形態で製造する方法としてメルトブローン(melt-blown spinning)、ジェット(jet)紡糸、遠心紡糸、エレクトロスピニング(electro-spinning)等の方法が知られている。
【0063】
この中で遠心紡糸は、溶融または溶液状態の高分子を多数の穴がある紡糸口金に入れて高速で回転させて、この時作用する遠心力を用いて固化されていない高分子を引張させることによって細化し、固化した繊維をコレクタに積層させて不織布を製造する方法である。遠心紡糸の長所は、装備構成が簡単で、エネルギー消耗が少なく、使用できる高分子の制限が少なく、不織布形態で製造されるので工程を簡素化することができる。
【0064】
しかし、遠心紡糸は、大量生産が難しいため生産性が落ち、直径が10μmを超える長繊維の製造には適するものではないため、吸収速度が低い問題があり、これを改善する方法として本発明は溶液噴射工程によって高吸水性樹脂繊維を形成する。
【0065】
本発明の製造方法において溶液噴射工程は、含水ゲル重合体を含む第2重合体水溶液をマイクロチャネルを介して細いストリーム形態で紡糸し、紡糸された第2重合体水溶液に対して乾燥および架橋工程を同時に行って、柔軟性を有する高吸水性樹脂繊維からなる不織布を連続して生産できる工程である。
【0066】
図1は本発明の一実施例による製造工程を示す模式図である。
【0067】
図1を参照すると、準備した第2重合体水溶液を移動可能なコンベヤーベルトなどに紡糸するが、この時、幅が1000μm以下のマイクロチャネル(channel)またはノズル(nozzle)を介して連続して紡糸することができる。また、紡糸される重合体水溶液ストリーム(stream)を囲む周囲に空気(air)または不活性気体(inert gas)のような気体を流しながらより均一なストリームを形成するようにすることができる。
【0068】
次に、前記紡糸された第2重合体水溶液を乾燥して高吸水性樹脂繊維を製造する。本発明の一実施例によれば、乾燥工程を行うあいだより効果的な乾燥のために第2重合体水溶液の重合時に発生する水分を継続して吸入(suction)する。
【0069】
一方、前記乾燥段階で上昇した温度によって前記第2重合体水溶液に含まれた含水ゲル重合体と架橋剤が架橋反応を行いより柔軟な高吸水性樹脂繊維が製造されることができる。
【0070】
前記乾燥段階は、100~250℃の温度で行われ得る。乾燥温度が100℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなって最終形成される高吸水性樹脂繊維の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に繊維表面のみ乾燥され、最終形成される高吸水性樹脂繊維の物性が低下する恐れがある。好ましくは前記重合および乾燥は、100℃~250℃の温度で、さらに好ましくは150℃~200℃の温度で行われる。
【0071】
また、乾燥時間はその構成の限定はないが、工程効率などを考慮して10分~120分、さらに好ましくは20分~90分間行うことができる。
【0072】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル重合体の乾燥工程として通常用いられるものであれば、その構成の限定なしに選択して用いることができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。
【0073】
一方、粉末形態の通常の高吸水性樹脂の製造では、単量体水溶液の重合によって通常含水率約40~約80重量%である含水ゲル状重合体が得られ、このような含水ゲル状重合体を乾燥および粉砕して粉末形態の高吸水性樹脂を得る。
【0074】
しかし、本発明の一実施形態によれば、紡糸された重合体水溶液に対して架橋および乾燥工程を同時に行い、これによって高吸水性樹脂が繊維形態で存在し、その集合体である高吸水性樹脂不織布が得られる。
【0075】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、下記に開示する本発明の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に示し、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内におけるすべての変更を含む。
【0076】
<実施例>
(実施例1)
アクリル酸(acryl acid)30重量部、ポリエチレングリコール(メチルエーテル)アクリレート(Polyethylene glycol (methyl ether)acrylate)0.9重量部、3-メルカプトプロピオン酸(3-mercaptopropionic acid)0.45重量部、水酸化ナトリウム(NaOH)10.8重量部、水57.75重量部を混合して65℃で攪拌して1時間窒素気体(N)でパージ(purge)した後0.1重量部の過硫酸ナトリウム(SPS)を投入して10時間重合反応を行って含水ゲル状重合体が含まれた第1重合体水溶液を製造した。ここにエチレングリコール(ethylene glycol)0.5重量部を混合して第2重合体水溶液を準備した。
【0077】
準備した重合体水溶液を図1に示すような溶液噴射工程で紡糸し、180℃で100分間架橋および乾燥して高吸水性樹脂繊維の集合体である不織布を収得した。
【0078】
前記高吸水性樹脂繊維からなる不織布の走査電子顕微鏡写真を図2に示した。
【0079】
高吸水性樹脂繊維を拡大観察した結果、収得された高吸水性樹脂繊維の直径は、約25~約37μmであり、長さは約1~約2mで測定された。また、前記高吸水性樹脂不織布の限界曲率(1/r)は、0.7mm-1であった。
【0080】
(実施例2)
ポリエチレングリコール(メチルエーテル)アクリレートを0.3重量部で用い、水を58.35重量部、架橋剤としてエチレングリコールの代わりに平均分子量が200g/molであるポリエチレングリコール1.3重量部を用いたことを除いては実施例1と同様の方法により高吸水性樹脂繊維からなる不織布を製造した。
【0081】
前記高吸水性樹脂繊維を拡大観察した結果、収得された高吸水性樹脂繊維の直径は、約22~約34μmであり、長さは約1~約2mで測定された。また、前記高吸水性樹脂不織布の限界曲率(1/r)は、1.1mm-1であった。
【0082】
(比較例1)
ポリエチレングリコール(メチルエーテル)アクリレートを含まず、水を58.65重量部用いたことを除いては実施例1と同様の方法により高吸水性樹脂繊維からなる不織布を製造した。
【0083】
(比較例2)
実施例1と同じ組成の第1および第2重合体水溶液を準備して遠心紡糸を用いて不織布を製造した後180℃で100分間架橋および乾燥して高吸水性樹脂繊維の集合体である不織布を収得した。
【0084】
前記高吸水性樹脂繊維からなる不織布の走査電子顕微鏡写真を図3に示した。
【0085】
高吸水性樹脂繊維を拡大観察した結果、収得された高吸水性樹脂繊維の直径は、約4~約6μmであり、長さは約1~約2mで測定された。また、前記高吸水性樹脂不織布の限界曲率(1/r)は、2mm-1であった。
【0086】
(比較例3)
ポリエチレングリコール(メチルエーテル)アクリレートの代わりにガラス転移温度(Tg)が34℃であるビニルアセテート(vinyl acetate)を0.9重量部用いたことを除いては実施例1と同様の方法により高吸水性樹脂繊維からなる不織布を製造した。
【0087】
前記高吸水性樹脂繊維を拡大観察した結果、収得された高吸水性樹脂繊維の直径は、約24~約33μmであり、長さは約1~約2mで測定された。また、前記高吸水性樹脂不織布の限界曲率(1/r)は、0.1mm-1であった。
【0088】
(比較例4)
エチレングリコール架橋剤を用いないことを除いては実施例1と同様の方法により高吸水性樹脂繊維からなる不織布を製造した。しかし、製造された不織布は架橋度が低いため水に溶けたので、遠心分離保持容量などの吸収特性を評価することができなかった。
【0089】
(比較例5)
日本登録特許第3548651号の実施例1と同様の方法により下記のように高吸水性樹脂繊維を製造した。
【0090】
具体的には、73%が水酸化ナトリウムによって中和した部分中和アクリル酸の水溶液(モノマー濃度45重量%)100重量部にポリエチレングリコール(PEG200)ジアクリレート0.05重量部、ポリエチレンオキシド0.2重量部、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン2重量部を溶解した。このモノマー水溶液を内径0.97mmのノズルで曳糸落下させながら、落下途中の側面から高圧水銀ランプ(80W/cm2)により紫外線を2秒間照射して重合反応させた。前記高吸水性樹脂繊維を拡大観察した結果、収得された高吸水性樹脂繊維の直径は約24~約33μmであり、長さは約1~約2mで測定された。また、前記高吸水性樹脂不織布の限界曲率(1/r)は、0.1mm-1であった。
【0091】
<実験例>
(1)遠心分離保持容量(CRC,Centrifuge Retention Capacity)
実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂繊維に対する遠心分離保持容量(CRC)は、測定サンプルとして粒子形態の高吸水性樹脂の代わりに繊維形態の高吸水性樹脂をそのまま用いたことを除いてはEDANA法WSP241.2の方法により測定した。
具体的には、高吸水性樹脂繊維W(g、約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した。そして、常温で0.9重量%の生理食塩水に前記封筒を浸水させた。30分後に封筒を遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に封筒の重量W(g)を測定した。一方、高吸水性樹脂を入れていない空の封筒を用いて同じ操作を行った後その時の重量W(g)を測定した。
【0092】
このように得られた各重量を用いて次の計算式1によって遠心分離保持容量を確認した。
【0093】
[計算式1]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
前記計算式1において、
(g)は、高吸水性樹脂繊維の初期重量(g)であり、
(g)は、高吸水性樹脂繊維を用いず、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した装置重量であり、
(g)は、常温で0.9重量%の生理食塩水に高吸水性樹脂繊維を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に、高吸水性樹脂繊維を含んで測定した装置重量である。
【0094】
(2)加圧吸収能(AUL,Absorbency under Load)
実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂繊維に対する0.9psiの加圧吸収能(AUL)は、測定サンプルとして粒子形態の高吸水性樹脂の代わりに繊維形態の高吸水性樹脂をそのまま用いたことを除いてはEDANA法WSP242.2の方法により測定された。
【0095】
具体的には、内径が25mmであるプラスチック円筒の下端にステンレス製400meshスクリーンを装着した。そして、常温および50%の湿度下で前記スクリーンに加圧吸収能を測定しようとする高吸水性樹脂繊維W0(g、約0.16g)を均一に散布した。次いで、前記高吸水性樹脂の上に0.9psiの荷重を均一に付与できるピストンを付加した。この時、ピストンは外径が25mmより若干小さいため円筒の内壁との隙間がなく、上下に自由に動けるように製作されたものを用いた。そして、このように準備した装置の重量W(g)を測定した。
【0096】
次いで、直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mm、厚さ5mmのガラスフィルタを入れて、前記ペトリ皿に0.9重量%の生理食塩水を注いだ。この時、生理食塩水の水面がガラスフィルタの上面と水平になるまで生理食塩水を注いだ。そして、ガラスフィルタ上に直径90mmの濾過紙1枚を置いた。
【0097】
次いで、濾過紙の上に準備した装置を載せて装置内の高吸水性樹脂が荷重下で生理食塩水によって膨潤するようにした。1時間後、膨潤した高吸水性樹脂が入った装置の重量W(g)を測定した。
【0098】
このように測定した重量を用いて次の計算式2により加圧吸収能を算出した。
【0099】
[計算式2]
AUL(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
前記計算式2において、
(g)は、高吸水性樹脂繊維の初期重量(g)であり、
(g)は、高吸水性樹脂繊維の重量および前記高吸水性樹脂繊維に荷重を付与できる装置重量の総和であり、
(g)は、荷重(0.9psi)下に1時間のあいだ前記高吸水性樹脂繊維に生理食塩水を吸収させた後に、高吸水性樹脂繊維の重量および前記高吸水性樹脂繊維に荷重を付与できる装置重量の総和である。
【0100】
(3)生理食塩水の流れ誘導性(SFC;saline flow conductivity)
米国特許登録番号第5562646号のコラム54~コラム59に開示された方法に従い測定および算出した。
【0101】
(4)0.3psi AUL@5s、@15s、@30s、@60s
実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂繊維に対する0.3psiの加圧吸収能(AUL)は、測定サンプルとして粒子形態の高吸水性樹脂の代わりに繊維形態の高吸水性樹脂をそのまま用い、膨潤時間を1時間の代わりにそれぞれ5秒、15秒、30秒、60秒にしてEDANA法WSP242.2の方法により測定した。
【0102】
具体的には、内径が25mmであるプラスチック円筒の下端にステンレス製400meshスクリーンを装着した。そして、常温および50%の湿度下で前記スクリーンに加圧吸収能を測定しようとする高吸水性樹脂繊維W(g、約0.16g)を均一に散布した。次いで、前記高吸水性樹脂の上に0.3psiの荷重を均一に付与できるピストンを付加した。この時、ピストンは外径が25mmより若干小さいため円筒の内壁との隙間がなく、上下に自由に動けるように製作したものを用いた。そして、このように準備した装置の重量W(g)を測定した。
【0103】
次いで、直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mm、厚さ5mmのガラスフィルタを入れ、前記ペトリ皿に0.9重量%の生理食塩水を注いだ。この時、生理食塩水の水面がガラスフィルタの上面と水平になるまで生理食塩水を注いだ。そして、ガラスフィルタ上に直径90mmの濾過紙1枚を置いた。
【0104】
次いで、濾過紙の上に準備した装置を載せて装置内の高吸水性樹脂が荷重下で生理食塩水によって膨潤するようにした。5秒後、膨潤した高吸水性樹脂が入った装置の重量W(g)を測定した。
【0105】
このように測定した重量を用いて次の計算式2により加圧吸収能(0.3psi AUL@5s)を算出した。
【0106】
[計算式2]
AUL(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
前記計算式2において、
(g)は、高吸水性樹脂繊維の初期重量(g)であり、
(g)は、高吸水性樹脂繊維の重量および前記高吸水性樹脂繊維に荷重を付与できる装置重量の総和であり、
(g)は、荷重(0.3psi)下に5秒間前記高吸水性樹脂繊維に生理食塩水を吸収させた後に、高吸水性樹脂繊維の重量および前記高吸水性樹脂繊維に荷重を付与できる装置重量の総和である。
【0107】
前記と同様の方法により測定するが、生理食塩水の吸収(膨潤)時間をそれぞれ15秒(0.3psi AUL@15s)、30秒(0.3psi AUL@30s)、60秒(0.3psi AUL@60s)で異なるようにして加圧吸収能を測定した。
【0108】
(5)柔軟性
実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂不織布の柔軟性をテストする方法に対する概略的な模式図を図4に示した。
【0109】
幅20mm、長さ60mm、単位面積当たり重量35g/mである高吸水性樹脂繊維からなる不織布を準備し、下端には高吸水性樹脂不織布を囲むPP不織布を同じ大きさで接着した。
【0110】
1mmの直径を有するSUS棒を前記不織布の中間に乗せ、SUS棒の縁に沿って不織布を円形に曲げながら不織布が折れるかどうか肉眼および光学顕微鏡で観察し、折れない場合O、不織布の繊維が折れる場合、Xで評価した。
【0111】
前記のような方法で実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂繊維の特性を評価して下記表1に示した。比較例4は架橋度が低いため水に溶けて遠心分離保持容量などの吸収特性を評価することができなかった。
【0112】
【表1】
【0113】
表1を参照すると、本発明の実施例により製造された高吸水性樹脂不織布は、長繊維からなっており、0.5mm-1以上の限界曲率で柔軟性と可撓性を示し、満足できるほどの保水能、加圧吸水能および吸収速度を示した。
【0114】
しかし、比較例1および3は、本発明の不織布より可撓性が劣り、遠心紡糸で製造した比較例2は、吸収速度が低いため製品に適用するには適しないことが分かった。比較例5は、生理食塩水の流れ誘導性および吸収速度が非常に低いためこれもまた製品に適用するには適合しない物性を示した。
図1
図2
図3
図4