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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】漏洩検査装置及び漏洩検査システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20220406BHJP
   G01M 3/38 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
H01M10/48 A
G01M3/38 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018202612
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020071903
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-08-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成30年度経済産業省「革新的なエネルギー技術の国際共同研究開発事業(過酷温度環境作動リチウムイオン二次電池の開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】細野 英司
(72)【発明者】
【氏名】北浦 弘和
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松田 弘文
(72)【発明者】
【氏名】曽根 理嗣
(72)【発明者】
【氏名】オマール サミュエル メンドーサ エルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】梅田 実
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-083837(JP,A)
【文献】特開2002-117901(JP,A)
【文献】特開2009-026569(JP,A)
【文献】特開2005-201762(JP,A)
【文献】特開2002-246072(JP,A)
【文献】特開昭63-273031(JP,A)
【文献】特開2015-021778(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103335798(CN,A)
【文献】特開2007-179818(JP,A)
【文献】特開2004-200012(JP,A)
【文献】特開平04-289424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
G01M 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液又は固体電解質の漏洩があり得る電池又はキャパシタを含む閉空間を形成する閉空間形成部と、
前記閉空間形成部に設けられる雰囲気排出口であって、前記電池又は前記キャパシタから電解液又は固体電解質の漏洩がある場合に、当該漏洩を促進するため又は漏洩箇所を明確にするために、前記閉空間の内部の雰囲気を減圧するための雰囲気排出口と、
前記閉空間形成部に設けられる光学窓であって、前記電池又は前記キャパシタから発生するガスの測定に用いられる光学窓と、を備え、
前記漏洩がある場合に、当該漏洩を促進し又は漏洩箇所を明確にした状態において、前記光学窓に検査用の光を透過させる、漏洩検査装置。
【請求項2】
前記光学窓は、検査用の入射光を入射する入射光用窓と、検査用の放出光を放出させる放出光用窓と、を有し、
前記漏洩がある場合に、当該漏洩を促進し又は漏洩箇所を明確にした状態において、検査用の入射光を前記入射光用窓から前記閉空間の内部に入射させ、検査用の放出光を前記放出光用窓から前記閉空間の外部へ放出させる、請求項1に記載の漏洩検査装置。
【請求項3】
前記閉空間の内部にガスを導入するためのガス導入口を更に備える、請求項1又は2に記載の漏洩検査装置。
【請求項4】
前記閉空間の内部の雰囲気を加熱する加熱装置、及び/又は、前記閉空間の内部の雰囲気を冷却する冷却装置を更に備える、請求項1~3のいずれかに記載の漏洩検査装置。
【請求項5】
前記閉空間の内部の雰囲気を減圧する減圧部、又は、前記閉空間の内部においてガスの流動を発生させる流動発生部を更に備える、請求項1~4のいずれかに記載の漏洩検査装置。
【請求項6】
電解液又は固体電解質の漏洩があり得る電池、又は、キャパシタを含む閉空間を形成する閉空間形成部と、
前記閉空間の内部の雰囲気を減圧する減圧部又は前記閉空間の内部においてガスの流動を発生させる流動発生部と、
検査用の光を出射する光出射部と、
前記電池又は前記キャパシタの電解液又は固体電解質から発生するガスによって吸収される光を検出可能な光検出部と、
前記光検出部が検出した前記光に基づいて、前記ガスの検出画像を形成する画像形成部と、
を備える漏洩検査装置。
【請求項7】
前記光は、X線、紫外光、可視光、赤外光のうちの一つ以上であり、
前記画像形成部は、前記光検出部が検出した前記光のエネルギー、温度、波長及び屈折率のうちのいずれか一つ以上に基づいて、前記ガスの検出画像を形成し、
前記検出画像は、濃淡画像である、
請求項6に記載の漏洩検査装置。
【請求項8】
前記光は、可視光であり、
前記画像形成部によって形成された前記ガスの検出画像についてガスによる屈折率の変化による空間の揺らぎを認識する画像認識部を更に備える、
請求項6に記載の漏洩検査装置。
【請求項9】
電解液又は固体電解質の漏洩があり得る電池又はキャパシタを含む閉空間を形成する閉空間形成部と、
前記閉空間の内部のガスを前記閉空間形成部の複数の箇所から個別に排出する複数のガス排出部と、
前記閉空間の内部の雰囲気を減圧する減圧部と、
前記電池又は前記キャパシタの電解液又は固体電解質から発生して前記複数のガス排出部の各々から排出されたガスの組成を検出可能な組成検出部と、
前記組成検出部が検出した前記ガスの組成に基づいて、前記ガスの検出画像を形成する画像形成部と、
を備える漏洩検査装置。
【請求項10】
前記組成検出部が検出したガスの量が増加した前記ガス排出部に対応する前記電池又は前記キャパシタの箇所を、前記電解液が漏れた箇所又は固体電解質からガスが発生する箇所と特定する箇所特定部を更に備える、
請求項9に記載の漏洩検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池又はキャパシタからの電解液又は固体電解質の漏洩を検査する漏洩検査装置、及びこの漏洩検査装置を備える漏洩検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度の電力貯蔵デバイスとして、航空・宇宙用から、車載用、家庭用、再生可能エネルギー発電所の電力平準化まで幅広く利用されている。このようなリチウムイオン電池の安全性を検査するために、特許文献1には、検査している電池に赤外光を照射して得られる濃淡画像の測定画像と、電解液がリークしていない電池に赤外光を照射して得られる濃淡画像の標準画像とを比較し、両画像に相違がある場合に、検査している電池の表面から電解液が漏れていると判定する検査装置が開示されている。
この検査装置によれば、赤外線センサにより計測されるレベルでリチウムイオン電池から電解液が漏れた場合に、測定画像及び標準画像の2つの画像を利用して電解液の漏れを検査することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-135363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される検査装置による測定画像と標準画像とを比較した分析では、リチウムイオン電池から少量の電解液が漏れている場合に、電解液から発生する微量のガスは検出され難い。あるいは、特許文献1に記載される検査装置による測定画像と標準画像とを比較した分析では、全固体電池の固体電解質から微量のガスしか発生していない場合には、固体電解質から発生するガスは検出され難い。
このような問題点は、電解液又は固体電解質の漏洩があり得る各種の電池又はキャパシタにおいて、存在する。
【0005】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、電池又はキャパシタの電解液又は固体電解質から発生するガスを効率良く検出することにより電池又はキャパシタからの電解液又は固体電解質の漏洩の検査の精度を向上させることができる漏洩検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、電解液又は固体電解質の漏洩があり得る電池(例えば、後述の電池50)又はキャパシタを含む閉空間を形成する閉空間形成部(例えば、後述の筐体11)と、前記閉空間形成部に設けられる雰囲気排出口(例えば、後述の雰囲気排出口115)であって、前記電池又は前記キャパシタから電解液又は固体電解質の漏洩がある場合に、当該漏洩を促進するため又は漏洩箇所を明確にするために、前記閉空間の内部の雰囲気を減圧するための雰囲気排出口と、前記閉空間形成部に設けられる光学窓(例えば、後述の入射光用窓113,放出光用窓114)であって、前記電池又は前記キャパシタから発生するガスの測定に用いられる光学窓と、を備え、前記漏洩がある場合に、当該漏洩を促進し又は漏洩箇所を明確にした状態において、前記光学窓に検査用の光を透過させる、漏洩検査装置(例えば、後述の漏洩検査装置100)に関する。
【0007】
(2) (1)の漏洩検査装置において、前記光学窓は、検査用の入射光を入射する入射光用窓(例えば、後述の入射光用窓113)と、検査用の放出光を放出させる放出光用窓(例えば、後述の放出光用窓114)と、を有し、前記漏洩がある場合に、当該漏洩を促進し又は漏洩箇所を明確にした状態において、検査用の入射光を前記入射光用窓から前記閉空間の内部に入射させ、検査用の放出光を前記放出光用窓から前記閉空間の外部へ放出させてもよい。
【0008】
(3) (1)又は(2)の漏洩検査装置において、前記閉空間の内部にガスを導入するためのガス導入口(例えば、後述のガス導入口152)を更に備えてもよい。
【0009】
(4) (1)~(3)のいずれかの漏洩検査装置において、前記閉空間の内部の雰囲気を加熱する加熱装置(例えば、後述の加熱装置116)、及び/又は、前記閉空間の内部の雰囲気を冷却する冷却装置(例えば、後述の冷却装置117)を更に備えてもよい。
【0010】
(5) (1)~(4)のいずれかの漏洩検査装置において、前記閉空間の内部の雰囲気を減圧する減圧部(例えば、後述の減圧部15)、又は、前記閉空間の内部においてガスの流動を発生させる流動発生部(例えば、後述の流動発生部19)を更に備えてもよい。
【0011】
(6) 本発明は、電解液又は固体電解質の漏洩があり得る電池又はキャパシタを含む閉空間を形成する閉空間形成部と、前記閉空間の内部の雰囲気を減圧する減圧部、又は、前記閉空間の内部においてガスの流動を発生させる流動発生部と、検査用の光を出射する光出射部(例えば、後述の光出射部10、光発振器41)と、前記電池又は前記キャパシタの電解液又は固体電解質から発生するガスによって吸収される光を検出可能な光検出部(例えば、後述の赤外線検出部16、可視光線検出部161)と、前記光検出部が検出した前記光に基づいて、前記ガスの検出画像を形成する画像形成部(例えば、後述の画像形成部171)と、を備える漏洩検査装置に関する。
【0012】
(7) (6)の漏洩検査装置において、前記光は、X線、紫外光、可視光、赤外光のうちの一つ以上であり、前記画像形成部は、前記光検出部が検出した前記光のエネルギー、温度、波長及び屈折率のうちのいずれか一つ以上に基づいて、前記ガスの検出画像を形成し、前記検出画像は、濃淡画像であってもよい。
【0013】
(8) (6)の漏洩検査装置において、前記光は、可視光であり、前記画像形成部によって形成された前記ガスの検出画像についてガスによる屈折率の変化による空間の揺らぎを認識する画像認識部(例えば、後述の画像認識部173)を更に備えていてもよい。
【0014】
(9)本発明は、電解液又は固体電解質の漏洩があり得る電池又はキャパシタを含む閉空間を形成する閉空間形成部と、前記閉空間の内部のガスを前記閉空間形成部の複数の箇所から個別に排出する複数のガス排出部(例えば、後述のガス排出部51~59)と、前記閉空間の内部の雰囲気を減圧する減圧部と、前記電池又は前記キャパシタの電解液又は固体電解質から発生して前記複数のガス排出部の各々から排出されたガスの組成を検出可能な組成検出部(例えば、後述の組成検出部160)と、前記組成検出部が検出した前記ガスの組成に基づいて、前記ガスの検出画像を形成する画像形成部と、を備える漏洩検査装置に関する。
【0015】
(10) (9)に記載の漏洩検査装置において、前記組成検出部が検出したガスの量が増加した前記ガス排出部に対応する前記電池又は前記キャパシタの箇所を、前記電解液が漏れた箇所又は固体電解質からガスが発生する箇所と特定する箇所特定部(例えば、後述の箇所特定部172)を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電池又はキャパシタの電解液又は固体電解質から発生するガスを効率良く検出することにより電池又はキャパシタからの電解液又は固体電解質の漏洩の検査の精度を向上させることができる漏洩検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。
図2】本発明の第2実施形態としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。
図3】本発明の第3実施形態としての漏洩検査システムを示す概略斜視図である。
図4】本発明の第4実施形態としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。
図5】本発明の第5実施形態としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。
図6】本発明の第6実施形態としての漏洩検査システムを示す概略斜視図である。
図7】本発明の第7実施形態としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。
図8】本発明の変形例5としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。
図9】本発明の変形例6としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。
図10A】本発明の変形例7としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。
図10B】本発明の変形例7としての漏洩検査装置を示す概略側面図である。
図11】本発明の変形例8としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は異なる態様で実施することができ、以下に例示する実施の形態に限定して解釈されない。また、本明細書と図面において、前に説明した構成と同一の構成を後に説明する場合には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略する場合がある。
【0019】
〔第1実施形態〕
〔漏洩検査装置の全体構成〕
本発明の第1実施形態の漏洩検査装置について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。漏洩検査装置100は、光出射部10と、載置台111と、閉空間形成部としての筐体11と、ガス排出部14と、減圧部15と、光検出部16と、制御部17と、モニタ18と、を備える。
【0020】
〔光出射部〕
光出射部10は、光を出射する。出射された光は、筐体11の入射光用窓113(後述)を介して、検査対象物としての電池50に照射される。光の種類は、光検出部16の検出性能などに応じて、X線、紫外光、可視光、赤外光のうちの一つ以上である。なお、図3以降の図面において、光出射部10の図示を省略している。
【0021】
〔載置台〕
載置台111は、検査対象物としての電池50を載置するための台である。本発明の漏洩検査装置によって検査される検査対象物は、電解液又は固体電解質の漏洩があり得る電池又はキャパシタであって、本発明が適用可能なものであれば、制限されない。電池50は例示である。検査対象物は、例えば、化学電池のうち一次電池又は二次電池、キャパシタ(コンデンサ)のうち、電解キャパシタ又は電気二重層キャパシタである。
【0022】
例えば、一次電池としては、リチウムイオン電池(有機系電解液を含む)、マンガン乾電池(水系電解液を含む)、アルカリ乾電池(水系電解液を含む)が挙げられる。二次電池として、鉛蓄電池(水系電解液を含む)、ニッケルカドニウム電池(水系電解液を含む)、ニッケル水素電池(水系電解液を含む)、ナトリウムイオン電池(有機系電解液、又は固体電解質を含む)、リチウムイオン電池(水系電解液、有機系電解液、又は固体電解質を含む)、カリウムイオン電池(有機系電解液、又は固体電解質を含む)が挙げられる。
【0023】
電解キャパシタとしては、アルミ電解キャパシタ、タンタル電解キャパシタ、ニオブキャパシタ、酸化ニオブキャパシタが挙げられる。電気二重層キャパシタとしては、炭素キャパシタが挙げられ、電気二重層に加えて、酸化還元容量を有するレドックスキャパシタ、疑似キャパシタ、疑似二重層キャパシタなども挙げられ、有機系電解液を用いるものも含む。
【0024】
〔筐体〕
筐体11は、電池50をその周りに閉空間が形成されるように包囲する部材である。筐体11は、内部(内側)が空洞になっており、天板と側板を有し、底板を有しない。つまり、筐体11の底側は、開口している。筐体11は、電池50の上部と側部を覆うように載置台111上に載置される。これにより、筐体11の内部は密閉され、電池50を含む閉空間が形成される。
【0025】
筐体11は、検査用の入射光を入射する入射光用窓113(光学窓)と、検査用の放出光を放出させる放出光用窓114(光学窓)と、閉空間の内部の雰囲気を減圧するための雰囲気排出口115と、閉空間の内部にガスを導入するためのガス導入口152と、閉空間の内部の雰囲気を加熱する加熱装置116と、閉空間の内部の雰囲気を冷却する冷却装置117と、を備える。
【0026】
〔ガス排出管・減圧部〕
ガス排出部14は、筐体11に連結され、雰囲気排出口115を介して筐体11の内部のガス(雰囲気)を排出する部位である。ガス排出部14は、管で構成されている。
減圧部15は、ガス排出部14に連結され、ガス排出部14及び雰囲気排出口115を介して筐体11の内側の空間を減圧する部位である。減圧部15は、内部に空間を有する筐体である。減圧部15にはファン151が配置されている。減圧部15のファン151が動作することにより、減圧部15の内部が減圧され、更にガス排出部14の内部が減圧され、最終的に筐体11の内部が減圧される。筐体11の内部が減圧されることにより、筐体11の閉空間の空気(酸素及び窒素等)が減少し、閉空間の空気の濃度が低下する(閉空間の内部が脱気される)。
ガス排出部14、雰囲気排出口115及び減圧部15は、電池50から電解液又は固体電解質の漏洩がある場合に、当該漏洩を促進するため又は漏洩箇所を明確にするために、閉空間の内部の雰囲気を減圧するための部位である。
【0027】
例えば、電池50としてリチウムイオン電池が用いられた場合に、空気(酸素、窒素等)が減圧部15によって除去され、空気の濃度が低下した状態で、電池50から漏洩した電解液から発生するガスの組成が測定される。そのため、測定時の空気の影響が低減され、電解液から発生したガスが簡易、高感度、高精度に測定される。
または、例えば、電池50として全固体電池が用いられた場合に、空気(酸素、窒素等)が減圧部15によって除去され、空気の濃度が低下した状態で、電池50の固体電解質から発生するガスの組成が測定される。そのため、測定時の空気の影響が低減され、固体電解質から発生したガスが簡易、高感度、高精度に測定される。
また、漏洩個所がある場合、減圧によってガスの漏洩が促進され、感度および精度が向上することに加え、減圧の度合いによっては、電池の密閉性の度合いも評価できる。
【0028】
ガス導入口152は、減圧部15のファン151が動作することにより、筐体11の外部のガスがガス導入口152を介して筐体11の内部に流入する。外部からのガスは、アルゴンや窒素等の不活性化ガスが好ましい。
【0029】
〔赤外線検出部〕
本実施形態においては、光検出部は、赤外線検出部16から構成される。赤外線検出部16は、リチウムイオン電池等の電池50の電解液から発生するガスによって吸収される赤外線、又は、全固体電池等の電池50の固体電解質から発生するガスによって吸収される赤外線を、放出光用窓114を介して検出可能な部位である。赤外線検出部16としては、例えば赤外線カメラが用いられる。赤外線カメラのレンズは、放出光用窓114を挟んで電池50と対向する位置に配置される。
なお、光検出部は、赤外線検出部16に限定されず、X線、紫外光、可視光(後述の第2実施形態参照)、赤外光のうちの一つ以上の光を検出可能な検出部であってもよい。
【0030】
加熱装置116は、閉空間の内部の雰囲気を加熱する。冷却装置117は、閉空間の内部の雰囲気を冷却する。加熱装置116及び冷却装置117の構成は、制限されない。なお、図2以降の図面において、加熱装置116及び冷却装置117の図示を省略している。加熱装置116及び冷却装置117は、必須ではなく、一方又は両方が設けられていなくてもよい。
【0031】
〔赤外線検出部が電解液から発生するガスを検出する場合〕
電池50がリチウムイオン電池である場合には、赤外線検出部16は、電池50の電解液から揮発するガスによって吸収される赤外線を検出可能である。
電解液から揮発するガスとして、例えば環状炭酸エステル系(Propylene Carbonate,Ethylene Carbonate, Vinylene Carbonate, Vinyl Ethylene Carbonate, Fluoroethylenecarbonate)や鎖状炭酸エステル系(Dimethyl Carbonate, DiethylCarbonate, Ethyl Methyl Carbonate)の(電解質の)溶媒が挙げられ、また、水溶液系電解液の場合、水が挙げられる。
【0032】
〔赤外線検出部が固体電解質から発生するガスを検出する場合〕
電池50が全固体電池である場合には、赤外線検出部16は、電池50の固体電解質から揮発するガスによって吸収される赤外線を検出可能である。
硫化物系固体電解質の成分としては、例えば、リチウム、リン、硫黄が挙げられる。硫化物系固体電解質から揮発するガスとしては、例えば、硫化水素が挙げられる。
赤外線検出部16は、赤外線のエネルギーが強い部分と赤外線のエネルギーが弱い部分とを検出する。
【0033】
〔制御部〕
制御部17は、漏洩検査装置の全体を制御するものであり、具体的構成として画像形成部171を有する。なお、図面において、制御部17に接続される信号線については、一点鎖線で示している。
画像形成部171は、赤外線検出部16が検出した赤外線に基づいて、ガスの検出画像を形成する。例えば、画像形成部171は、赤外線検出部16が検出した赤外線のエネルギー、温度、波長及び屈折率のいずれか一つ以上に基づいて、ガスの検出画像を形成する。
【0034】
詳細には、画像形成部171は、電池50の周囲の電解液又は固体電解質から発生するガス及びその更に周囲のガスによって吸収される赤外線のエネルギーの強弱に基づいて、ガスの検出画像としての濃淡画像を形成する。エネルギーが強い場所が淡い(典型的には、白っぽい)画像となり、エネルギーが弱い場所が濃い(典型的には、黒っぽい)画像となる。このように画像処理することにより、ガスは可視化される。
前述した赤外線検出部16及び画像形成部171により赤外線サーモグラフィが形成される。サーモグラフィは、一般的に、赤外線を検出して画像処理によって温度分布を可視化したものである。
【0035】
リチウムイオン電池の場合には、画像形成部171は、赤外線検出部16が検出したガスの赤外線に基づいて、環状炭酸エステル系(Propylene Carbonate,Ethylene Carbonate, Vinylene Carbonate, Vinyl Ethylene Carbonate, Fluoroethylenecarbonate)や鎖状炭酸エステル系(Dimethyl Carbonate, DiethylCarbonate, Ethyl Methyl Carbonate)の(電解質の)溶媒の濃淡画像を形成し、また、水溶液系電解液の場合、水の濃淡画像を形成する。全固体電池の場合には、画像形成部171は、赤外線検出部16が検出したガスの赤外線に基づいて、硫化水素の濃淡画像を形成する。
【0036】
なお、赤外線のエネルギーと、温度、波長、屈折率との関係を以下に説明する。
電磁波のエネルギーの式は、E=hν=hc/λ[J]となる。ただし、Eは赤外線のエネルギー、hはプランク定数、cは真空中の光速、λは真空中の電磁波の波長である。この関係式により、赤外線のエネルギーが大きい場合には波長が短い、赤外線のエネルギーが小さい場合には波長が長い、といった関係が理解できる。また、波長が短い光は光の屈折率が小さく、波長が長い光は光の屈折率が大きい。さらに、ガスの赤外線のエネルギーが大きい場合にはガスの温度が高く、ガスの赤外線のエネルギーが小さい場合にはガスの温度が低い。
【0037】
〔モニタ〕
モニタ18は、画像形成部171が形成した画像を表示する。モニタ18は、制御部17に接続されている。作業者は、モニタ18から画像形成部171が処理した画像を確認し、電池50の周囲の淡い画像部分を電池50の電解液からガスが発生した部分と判断することができ、電池50のいずれの部位から電解液が漏洩しているのかを判断することができる。
【0038】
〔漏洩検査装置の動作の一例〕
漏洩検査装置100の動作の一例を説明する。図1に示されるように、作業者は、電池50を載置台111の上に載置し、電池50を覆うように筐体11を載置台111の上に配置する。
【0039】
制御部17は、減圧部15、ガス排出部14及び筐体11の内部の空気がファン151から外部に排出されるように、ファン151の動作を制御する。これにより、電池50から電解液又は固体電解質の漏洩がある場合に、当該漏洩が促進されるか又は漏洩箇所が明確にされる。この状態において、電池50がリチウムイオン電池であって電解液が漏れている場合には、電解液からガスが揮発する。また、電池50が全固体電池であって固体電解質が外部の空気と結合する場合には、固体電解質からガスが揮発する。揮発したガスによって、赤外線は吸収される。
制御部17は、ガスによって吸収される赤外線を検出するように、赤外線検出部16の動作を制御する。
【0040】
制御部17の画像形成部171は、検出される赤外線の強弱に基づいて濃淡画像を形成する。制御部17は、形成された濃淡画像がモニタ18に表示されるように、モニタ18の動作を制御する。作業者は、電池の周囲の淡い画像部分を電池50の電解液からガスが発生した部分と判断することができ、電池50のいずれの部位から電解液が漏れて揮発しているのかを判断することができる。
【0041】
本実施形態の漏洩検査装置100によれば、例えば、以下の効果が奏される。
本実施形態の漏洩検査装置100は、電解液又は固体電解質の漏洩があり得る電池50を含む閉空間を形成する閉空間形成部11と、閉空間形成部11に設けられる雰囲気排出口115であって、電池50から電解液又は固体電解質の漏洩がある場合に、当該漏洩を促進するため又は漏洩箇所を明確にするために、閉空間の内部の雰囲気を減圧するための雰囲気排出口115と、閉空間形成部11に設けられる光学窓(入射光用窓113、放出光用窓114)であって、電池50から発生するガスの測定に用いられる光学窓と、を備え、前記漏洩がある場合に、当該漏洩を促進し又は漏洩箇所を明確にした状態において、前記光学窓に検査用の光を透過させる。
【0042】
そのため、測定時の空気の影響が低減され、電池50の電解液又は固体電解質からガスが発生するガスを効率良く検出することにより電池50の検査の精度を向上させることができる。また、電池の不具合の箇所を速く特定することができる。電池の安全性が簡単に確認できる。電池の不具合に起因した発火事故を抑制できる。
【0043】
また、本実施形態の漏洩検査装置100は、前記閉空間の内部にガスを導入するためのガス導入口152を更に備える。そのため、前記閉空間の内部にガスが導入されることにより、閉空間の内部が過剰に(必要以上に)減圧されることを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態の漏洩検査装置100は、前記閉空間の内部の雰囲気を加熱する加熱装置116を更に備える。そのため、電解液又は固体電解質のガス化を促進して、ガスの検出効率を向上させることができる。また、高温雰囲気下(例えば、使用時)での電池50の耐久性を確認することができる。
【0045】
また、本実施形態の漏洩検査装置100は、前記閉空間の内部の雰囲気を冷却する冷却装置117を更に備える。そのため、低温雰囲気下(例えば、保管時、使用時)での電池の耐久性を確認することができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態の漏洩検査装置について、図面を参照して説明する。図2は、本発明の第2実施形態としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。第2実施形態の漏洩検査装置は、第1実施形態の漏洩検査装置と比較して、以下に説明する流動発生部、光出射部、可視光線検出部、制御部の構成について異なる。その他の構成に関しては、第2実施形態の漏洩検査装置は、第1実施形態の漏洩検査装置100と基本的に同じである。
【0047】
〔流動発生部〕
第2実施形態は、第1実施形態における減圧部15に代えて、流動発生部19を備える。流動発生部19は、ガス排出部14に連結され、ガス排出部14を介して筐体11の閉空間においてガスの流動を発生させる部位である。流動発生部19は、ファン191と、筐体11に設けられたガス導入口192とを備える。流動発生部19のファン191が動作することにより、筐体11の外部の空気がガス導入口192を介して筐体11の内部に流入し、ガス排出部14を介して、ファン191から排出される。これにより、筐体11の閉空間の内部のガスの流動が発生する。なお、外部から、空気の他にアルゴンや窒素等の不活性化ガスを導入してもよい。
【0048】
〔光出射部〕
第2実施形態における筐体11は、第1実施形態における入射光用窓113を備えていない。その代わりに、光出射部10は、筐体11の内部に配置されており、出射光を直接、検査対象物としての電池50に照射する。
【0049】
〔可視光線検出部〕
第2実施形態は、第1実施形態における赤外線検出部16に代えて、光検出部として、可視光線検出部161を備える。可視光線検出部161は、電池50の電解液から発生するガスによって吸収される可視光線、又は、電池50の固体電解質から発生するガスによって吸収される可視光線を検出可能な部位である。可視光線検出部161としては、例えば可視光線カメラが用いられる。可視光線カメラのレンズは、放出光用窓114を挟んで電池50と対向する位置に配置される。
【0050】
〔制御部〕
制御部17は、画像形成部171の他に更に画像認識部173を有する。画像認識部173は、画像形成部171によって形成されたガスの検出画像についてガスによる屈折率の変化による空間の揺らぎを認識する。この揺らぎの認識により、ガスを検出できる。
【0051】
本実施形態の漏洩検査装置によれば、可視光線検出部161によっても電解液又は固体電解質から発生するガスを検出することができる。
【0052】
〔第3実施形態〕
図3は、本発明の第3実施形態としての漏洩検査システム300を示す概略斜視図である。漏洩検査システム300は、漏洩検査装置100と、コンベア20と、を備える。漏洩検査装置100は、第1実施形態と比べて、支持アーム12と昇降ガイド13とを更に備える。
コンベア20は、筐体11と、筐体11に覆われた電池50とを搬送する。コンベア20としては、例えばベルトコンベアが用いられる。コンベア20は、ベルト21と、ベルト21を駆動させる複数のローラ22と、を有する。
【0053】
〔支持アーム〕
支持アーム12は、筐体11の側面に連結されており、側方に延びている。
〔昇降ガイド〕
昇降ガイド13は、支持アーム12の昇降を案内するガイドである。昇降ガイド13が支持アーム12の下方への移動を案内することにより、支持アーム12に固定された筐体11は、載置台111に上方から接触し、その筐体11の内部に電池50が収納される。昇降ガイド13が支持アーム12の上方への移動を案内することにより、支持アーム12に固定された筐体11は、載置台111から上方へ離間し、その筐体11の内部から電池50が取り出し可能になる。
【0054】
制御部17は、ローラ22を回転させて、ベルト21の上の電池50を搬送させ、電池50が筐体11の下方に移動すると電池50の搬送を一時停止させるように、ローラ22の動作を制御する。制御部17は、昇降ガイド13に沿って支持アーム12が下降して、支持アーム12に固定された筐体11がベルト21の上の電池50を覆って密閉するように、支持アーム12の動作を制御する。制御部17は、減圧部15がガス排出部14を介して筐体11及びベルト21で囲まれた空間を減圧するように、ファン151の動作を制御する。これにより、筐体11及びベルト21で囲まれた空間の中の空気(酸素、窒素等)の濃度が減少する。制御部17は、ファン151の動作を停止させるようにファン151の動作を制御してから、赤外線検出部16のスイッチをオンにするように赤外線検出部16の動作を制御する。
【0055】
赤外線検出部16は、電池50がリチウムイオン電池である場合には、電解液から漏洩する有機成分から発生するガスによって吸収される赤外線を検出する。また、赤外線検出部16は、電池50が全固体電池である場合には、固体電解質が外部のガスを結合して発生するガスによって吸収される赤外線を検出する。
制御部17は、ガスの赤外線画像を形成すると共に、形成された画像を表示させるようにモニタ18の動作を制御する。
【0056】
本実施形態の漏洩検査システム300によれば、筐体11及び筐体11に覆われた電池50を搬送するコンベア20と、漏洩検査装置100と、を備える。そのため、流れ作業のように検査を行うことができ、複数の電池50が効率良く検査される。
【0057】
〔第4実施形態〕
図4は、本発明の第4実施形態としての漏洩検査装置400を示す概略斜視図である。漏洩検査装置400は、光出射部としての光発振器41と、発散部42と、電池支持機構43と、赤外線検出部16と、を備える。なお、本実施形態は、発散部を備えているが、発散部が無い構成であってもよい。
【0058】
光発振器41は、筐体11の内部に配置され、光としての赤外線や可視光を出射する機器である。本実施形態では、光発振器41として、赤外線レーザー光を発振する赤外線発振器や、可視光レーザー光を発振する可視光レーザー発振器が用いられる。例えば、赤外線発振器41は、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等や硫黄化合物の分子が吸収可能な波長を多く発振可能な赤外線レーザーの発振器である。
【0059】
発散部42は、赤外線発振器41が出射した赤外線を発散させる。詳細には、発散部42は、赤外線レーザーを進行方向に対して数度~20度程度の広がりで散乱させる散乱板である。
【0060】
電池支持機構43は、赤外線発振器41が発振した光もしくは発散部42が発散した光を多方向から受けるように、電池50を支持しながらその向きを変える多軸回転可能な機構であり、多軸コントロールモーメントジャイロとも呼ばれるものである。電池支持機構43は、Z軸部430と、第1環状部431と、第2環状部432と、第3環状部433と、を有する。
Z軸部430は、Z軸(不図示)に沿う方向に延びる。第1環状部431は、Z軸部430に連結されており、Z軸部430がZ軸回りに回転することにより、Z軸部430と共にZ軸回りに回転する。第2環状部432は、第1環状部431と回転軸46で連結されており、回転軸46がX軸回りに回転することにより、回転軸46と共にX軸回りに回転する。第3環状部433は、第2環状部432と回転軸47で連結されており、回転軸47がY軸回りに回転することにより、回転軸47と共にY軸回りに回転する。
【0061】
光検出部16は、リチウムイオン電池等の電池50から漏れた電解液から発生するガスによって吸収される赤外線を検出可能な部位であり、また、全固体電池等の電池50の固体電解質から発生するガスによって吸収される赤外線を検出可能な部位である。
【0062】
制御部17は、画像形成部171を有する。画像形成部171は、赤外線の強弱に基づいて、ガスの濃淡画像を形成する部位である。
可視光レーザーの場合には、ガスによる屈折率の変化による空間の揺らぎを認識する画像認識部(画像認識部173)を更に備えていてもよい。
【0063】
本実施形態の漏洩検査装置400の構成によれば、光を出射する光発振器41と、電池50が光を多方向から受けるように、電池50を支持しながらその向きを変える電池支持機構43と、を更に備える。
そのため、電池50を多角的に光検出部16によって検出可能であり、また、強い強度の光によって分析をすることができ、高精度に電池50の不具合箇所を特定することができる。
なお、本実施形態の構成において、可視光線カメラも加えて構成することにより、明確な電解液又はガスの発生場所を表示するようにしてもよい。
【0064】
〔第5実施形態〕
図5は、本発明の第5実施形態としての漏洩検査装置を示す概略斜視図である。漏洩検査装置500は、閉空間形成部としての筐体11と、複数のガス排出部51~59と、複数の減圧部15と、複数の組成検出部160と、を備える。
【0065】
〔筐体〕
筐体11は、電池50をその周りに閉空間が形成されるように包囲し、電池50を含む閉空間を形成する。
〔複数のガス排出部〕
複数のガス排出部51~59は、その一端が筐体11に連結されて、筐体11の内側のガスを筐体11の複数の箇所から個別に排出し、その他端が減圧部15に連結されて筐体11の内側のガスを減圧部15に排出する部位である。ガス排出部51~59は管である。複数のガス排出部51~59の各々は、ガスの流通を制御するバルブ61~69を有する。なお、図5図7において、ガス排出部51~59と減圧部15との接続の図示を省略している。
【0066】
〔減圧部〕
減圧部15は、ガス排出部51~59と連結され、筐体11の内側の空間の雰囲気を減圧する部位である。
〔組成検出部〕
組成検出部160は、電池50から漏れた電解液から発生して複数のガス排出部51~59の各々から排出されたガスの組成を検出する部位である。また、組成検出部160は、電池50の固体電解質から発生して複数のガス排出部51~59の各々から排出されたガスの組成を検出する部位でもある。
〔画像形成部〕
画像形成部171は、組成検出部160が検出したガスに基づいて、ガスの検出画像を形成する。
【0067】
本実施形態の漏洩検査装置500によれば、例えば、以下の効果が奏される。
本実施形態の漏洩検査装置500は、電池50を含む閉空間を形成する筐体11と、閉空間の内部のガスを筐体11の複数の箇所から個別に排出する複数のガス排出部51~59と、筐体11の内側の空間の内部の雰囲気を減圧する減圧部15と、電池50の電解液又は固体電解質から発生して複数のガス排出部51~59の各々から排出されたガスを検出する組成検出部160と、を備える。
【0068】
そのため、複数のガス排出部51~59毎にガスの組成を検出し、いずれのガス排出部51~59からガスを検出したかにより、ガスの漏洩箇所を判断することができる。
【0069】
〔第6実施形態〕
図6は、本発明の第6実施形態としての漏洩検査システム600を示す概略斜視図である。漏洩検査システム600は、漏洩検査装置500と、コンベア20と、を備える。なお、図6に示す形態は、支持アーム12と昇降ガイド13とを備えているが、図6には、支持アーム12及び昇降ガイド13の図示を省略している。
コンベア20は、筐体11と、筐体11に覆われた電池50とを搬送する。コンベア20としては、例えばベルトコンベアが用いられる。
【0070】
制御部17は、ローラ22を回転させて、ベルト21の上の電池50を搬送させ、電池50が筐体11の下方に移動すると電池50の搬送を一時停止させるように、ローラ22の動作を制御する。制御部17は、支持アーム12が下降して筐体11がベルト21上の電池50を覆って密閉するように、支持アーム12の動作を制御する。制御部17は、減圧部15がガス排出部51~59を介して筐体11及びベルト21で囲まれる閉空間を減圧するように、ファン151の動作を制御する。これにより、筐体11及びベルト21で囲まれる閉空間の空気(酸素、窒素等)の濃度が減少する。制御部17は、ファン151の動作を停止させるようにファン151の動作を制御してから、組成検出部160のスイッチをオンにするように組成検出部160の動作を制御する。
【0071】
組成検出部160は、電池50がリチウムイオン電池である場合には、電解液から漏洩する有機成分から発生するガスによって吸収される赤外線を検出する。また、組成検出部160は、電池50が全固体電池である場合には、固体電解質が外部のガスを結合して揮発するガスによって吸収される赤外線を検出する。制御部17は、ガスの赤外線画像を形成すると共に、形成された画像を表示させるようにモニタ18の動作を制御する。
【0072】
本実施形態の漏洩検査システム600によれば、筐体11及び筐体11に覆われた電池50を搬送するコンベア20と、漏洩検査装置500と、を備える。そのため、流れ作業のように検査を行うことができ、複数の電池50が効率良く検査される。
【0073】
〔第7実施形態〕
図7は、本発明の第7実施形態としての漏洩検査装置700を示す概略斜視図である。第7実施形態の漏洩検査装置700は、第5実施形態の漏洩検査装置500と比較すると、光検出部としての赤外線検出部16と、画像形成部171の別の制御と、が付加されている点で異なる。
【0074】
赤外線検出部16は、電池50の電解液又は固体電解質から発生するガスによって吸収される光を検出可能な部位である。画像形成部171は、赤外線検出部16が検出した赤外線に基づいて、ガスの検出画像を更に別に形成する。
【0075】
本実施形態の漏洩検査装置によれば、赤外線検出部16は、電池50の電解液又は固体電解質から発生するガスによって吸収される光を検出可能であり、画像形成部171は、赤外線検出部16が検出した赤外線に基づいてガスの検出画像を形成する。組成検出部160は、電池50から電解液から発生して複数のガス排出部51~59の各々から排出されたガスの組成を検出可能であり、画像形成部171は、組成検出部160が検出したガスの組成に基づいて、ガスの検出画像を形成する。
【0076】
従って、ガスによって吸収される赤外線に基づいて電池から発生するガスの検出画像を形成する制御と、ガスの組成に基づいて電池から発生するガスの検出画像を形成する制御と、の2つのガスの分析方法があり、一方の分析方法が他方の分析方法のバックアップ的に用いられ、ガスの発生を再確認することができる。
【0077】
例えば、バルブ61~69が開いている間においては、組成検出部160がガスを検出すると共に画像形成部171が検出画像を形成し、一方、バルブ61~69が閉じている間においては、赤外線検出部16がガスを検出すると共に画像形成部171が検出画像を形成する、というように、制御部17は、組成検出部160、赤外線検出部16及び画像形成部171を制御する。
【0078】
〔変形例1〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に制限されない。例えば、第3実施形態の漏洩検査システム300,第6実施形態の漏洩検査システム600では、コンベアとしてベルトコンベアが用いられていたが、上記実施形態に限定されることなく、ローラコンベア、チェーンコンベアが用いられてもよい。
【0079】
〔変形例2〕
第1、第3~第7実施形態では、画像形成部171が濃淡画像を形成していたが、上記実施形態に限定されることなく、濃淡の範囲内で色を指定して、複数の色により画像を形成してもよい。
【0080】
〔変形例3〕
第1~第7実施形態の漏洩検査装置では、閉空間形成部としての箱状の筐体が用いられていたが、上記実施形態に限定されることなく、閉空間形成部としての袋などの非箱状のものが用いられてもよい。
【0081】
〔変形例4〕
第1~第7実施形態の漏洩検査装置では、筐体11の内部を減圧しているが、上記実施形態に限定されることなく、筐体11の内部を真空にしてもよい。
【0082】
〔変形例5〕
第1実施形態の漏洩検査装置100では、制御部17が電池50の不具合箇所を特定する構成ではなかったが、上記実施形態に限定されない。すなわち、図8に示される電池の漏洩検査装置801のように、制御部17が箇所特定部172を有する構成であってもよい。
例えば、箇所特定部172が、ガスの検出画像が変化する箇所から、電池50の電解液が漏れた箇所又は固体電解質からガスが発生する箇所であると特定し、作業者に警告するために印で示すように構成される。すなわち、箇所特定部172は、ガスの画像が電池50から遠ざかっていく箇所から、電解液又は固体電解質からガスが発生している箇所であると特定し、作業者に警告するために〇印で囲むように構成される。
【0083】
なお、このような変形例は、図5を参照して前述した第5実施形態の漏洩検査装置500の構成において、制御部17が箇所特定部172を含むように構成してもよい。この場合には、箇所特定部172が、組成検出部160がガスの組成を検出したガス排出部14に対応する電池50の箇所を、電解液が漏れた箇所又は固体電解質からガスが発生する箇所として特定するように構成されてもよい。
【0084】
〔変形例6〕
第1実施形態の漏洩検査装置100では、赤外線検出部16が1つであったが、上記実施形態に限定されない。すなわち、図9に示される漏洩検査装置802のように、筐体11の天板に4つの赤外線検出部16が取り付けられ、筐体11の側板に2つの赤外線検出部16が取り付けられた構成であってもよい。
【0085】
〔変形例7〕
第1実施形態の漏洩検査装置100では、載置台111に対して筐体11が上下方向に移動する構成であったが、上記実施形態に限定されない。すなわち、図10A及び図10Bに示される漏洩検査装置803のように、載置台111に対して筐体11がヒンジ112の回りに回転する構成であってもよい。この構成によれば、筐体11の内部への電池の出し入れが容易である。また、漏洩検査装置803の可搬性に優れる。
【0086】
〔変形例8〕
第1実施形態の漏洩検査装置100では、電池50が筐体11よりも小さい構成であったが、上記実施形態に限定されなくてもよい。すなわち、図11に示される漏洩検査装置804のように、電池50が筐体11よりも大きい構成であってもよい。
この構成によれば、自動車の車載用電池のような大型の電池を検査試験場の大型の検査装置によって検査するのみではなく、持ち運び可能な(可搬性を有する)小型の検査装置で検査することができる。
【0087】
第4実施形態の漏洩検査装置400は、コンベア20と組み合わせて構成されていないが、上記実施形態に限定されない。すなわち、漏洩検査装置400とコンベア200とを組み合わせた構成であってもよい。
例えば、コンベア20のベルト21の上に電池50を支持した電池支持機構43を載置し、このコンベア20を回転させる。この一方で、筐体11の内側に、光発振器41と、発散部42と、光検出部16と、を取り付ける。そして、制御部17は、筐体11の下方に電池50を支持した電池支持機構43が搬送されてくると、筐体11を下降させて電池50を覆うように筐体11の動作を制御する。
【0088】
〔その他の変形例〕
前述の各実施形態の構成は、適宜組み合わせることができる。
前記実施形態において電池50についてした説明は、本発明を適用可能な各種電池又はキャパシタに援用される。
減圧部15は、ファン151の代わりに、ポンプを備えて構成されてもよい。
【0089】
入射光用窓113が筐体11(閉空間形成部)に設けられている場合には、光出射部10は、筐体11(閉空間形成部)の外部に離れて配置されていてもよい。放出光用窓114が筐体11(閉空間形成部)に設けられている場合には、光検出部16は、筐体11(閉空間形成部)の外部に離れて配置されていてもよい。光検出部16は、放出光用窓114を有しない筐体11(閉空間形成部)の内部に配置されていてもよい。光出射部10及び光検出部16は、筐体11(閉空間形成部)の外面又は内面に対して着脱自在に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 光出射部
11 筐体(閉空間形成部)
14 ガス排出部
15 減圧部
16 赤外線検出部(光検出部)
17 制御部
18 モニタ
19 流動発生部
20 コンベア
21 ベルト
22 ローラ
41 赤外線発振器(光発振器)
43 電池支持機構
50 電池(電解液又は固体電解質の漏洩があり得る電池又はキャパシタ)
51~59 ガス排出部
100,400,500,700,801,802,803,804 漏洩検査装置
111 載置台
113 入射光用窓(光学窓)
114 放出光用窓(光学窓)
115 雰囲気排出口
116 加熱装置
117 冷却装置
151 ファン
152 ガス導入口
160 組成検出部
161 可視光線検出部(光検出部)
171 画像形成部
172 箇所特定部
173 画像認識部
300,600 漏洩検査システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11