(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】ひずみ計測装置及びひずみ計測方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/00 20060101AFI20220406BHJP
G01L 1/24 20060101ALI20220406BHJP
G01N 21/70 20060101ALI20220406BHJP
G01N 21/63 20060101ALI20220406BHJP
G01B 11/16 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
G01L1/00 B
G01L1/00 E
G01L1/00 G
G01L1/24 Z
G01N21/70
G01N21/63 Z
G01B11/16 H
(21)【出願番号】P 2021524855
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021757
(87)【国際公開番号】W WO2020246461
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2019106378
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 超男
(72)【発明者】
【氏名】津田 智哉
(72)【発明者】
【氏名】篠山 智生
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6654159(JP,B2)
【文献】特許第6594366(JP,B2)
【文献】特許第6470863(JP,B1)
【文献】特許第6470864(JP,B1)
【文献】特許第6499363(JP,B1)
【文献】特許第6938335(JP,B2)
【文献】特許第3314083(JP,B1)
【文献】特許第5007971(JP,B2)
【文献】特許第5234546(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00
G01L 1/24
G01B 11/16
G01N 21/63
G01N 21/70
本件特許出願に対応する国際特許出願PCT/JP2020/021757の調査結果が利用された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力発光体の発光現象に基づいて前記応力発光体のひずみを計測するひずみ計測装置であって、
前記応力発光体が発する光を検知するように構成された検知装置と、
前記応力発光体に力が加えられたときの前記応力発光体の発光パターンに基づいて、前記応力発光体に力が加えられたときの前記応力発光体のひずみを算出するように構成された処理装置と、
前記検知装置により検知された前記応力発光体の発光の分布を示す発光画像と、前記処理装置により算出された前記応力発光体のひずみの分布を示すひずみ画像とを並列して表示するように構成された表示装置とを備える、ひずみ計測装置。
【請求項2】
前記表示装置は、前記発光画像と前記ひずみ画像とを同期して並列表示するように構成される、請求項1に記載のひずみ計測装置。
【請求項3】
前記表示装置は、前記ひずみ画像が積算された積算ひずみ画像を前記発光画像と並列して表示するように構成される、請求項1又は請求項2に記載のひずみ計測装置。
【請求項4】
前記表示装置は、前記発光画像が積算された積算発光画像を前記ひずみ画像と並列して表示するように構成される、請求項1又は請求項2に記載のひずみ計測装置。
【請求項5】
前記表示装置は、
前記発光画像及び前記ひずみ画像の少なくとも一方において、表示対象の拡大、縮小及び移動の少なくともいずれかの操作を入力可能に構成され、
前記発光画像及び前記ひずみ画像の双方において、前記操作に応じた表示を連動して行なう、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のひずみ計測装置。
【請求項6】
前記処理装置は、前記ひずみから前記応力発光体の応力をさらに算出するように構成され、
前記表示装置は、前記ひずみ画像に代えて、前記応力発光体の応力の分布を示す応力画像を前記発光画像と並列して表示するように構成される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のひずみ計測装置。
【請求項7】
応力発光体の発光現象に基づいて前記応力発光体のひずみを計測するひずみ計測方法であって、
前記応力発光体に力が加えられたときの前記応力発光体の発光パターンを取得するステップと、
取得された前記発光パターンに基づいて、前記応力発光体に力が加えられたときの前記応力発光体のひずみを算出するステップと、
前記応力発光体の発光の分布を示す発光画像と、算出された前記応力発光体のひずみの分布を示すひずみ画像とを、表示装置において並列して表示するステップとを含む、ひずみ計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、応力発光体の発光現象に基づいて応力発光体のひずみを計測するひずみ計測装置及びひずみ計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
応力発光体の発光現象に基づいて応力発光体のひずみを計測することにより、応力発光体が塗布或いは混入された試料や構造物等のひずみを解析する技術が知られている。応力発光体は、エネルギー状態が高められるとエネルギーを放出して発光する部材であり、外部から機械的な力が与えられると、内部に生じる応力に応じて発光する。応力発光体の発光強度(輝度)とひずみ量とに相関があることから、カメラ等の撮像装置で応力発光体を撮像し、応力発光体の輝度から応力発光体のひずみを計測することができる。
【0003】
特開2010-190865号公報(特許文献1)は、このような応力発光体の発光現象に基づいて応力発光体のひずみパターン(ひずみ量及びひずみ速度)を精度よく解析可能な応力発光解析装置を開示する。この応力発光解析装置では、応力発光体に力が加えられたときに、応力発光体が発する光(応力発光)がカメラ等の検知装置によって検知される。そして、応力発光の発光パターンが特定され、特定された発光パターンから応力発光体のひずみパターンが算出される。算出されたひずみパターンは、表示装置へ出力されて表示される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
応力発光体に生じるひずみは、応力発光体に力が加えられたときに応力発光体が発する光(応力発光)の大きさに依存するとともに、応力発光の時間変化率にも依存する。たとえば、応力発光の時間変化率が大きいほど(応力発光体に与えられる力の時間変化率が大きいほど)、応力発光体のひずみは小さくなり得る。このため、応力発光体のひずみを表示装置に表示するだけでは、ひずみの発生状況等、ひずみを十分に解析できない可能性がある。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、応力発光体のひずみを十分に解析するための情報を利用者に提示可能なひずみ計測装置及びひずみ計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示におけるひずみ計測装置は、応力発光体の発光現象に基づいて応力発光体のひずみを計測するひずみ計測装置であって、検知装置と、処理装置と、表示装置とを備える。検知装置は、応力発光体が発する光を検知するように構成される。処理装置は、応力発光体に力が加えられたときの応力発光体の発光パターンに基づいて、応力発光体に力が加えられたときの応力発光体のひずみを算出するように構成される。表示装置は、検知装置により検知された応力発光体の発光の分布を示す発光画像と、処理装置により算出された応力発光体のひずみの分布を示すひずみ画像とを並列して表示するように構成される。
【0008】
また、本開示におけるひずみ計測方法は、応力発光体の発光現象に基づいて応力発光体のひずみを計測するひずみ計測方法であって、応力発光体に力が加えられたときの応力発光体の発光パターンを取得するステップと、取得された発光パターンに基づいて、応力発光体に力が加えられたときの応力発光体のひずみを算出するステップと、応力発光体の発光の分布を示す発光画像と、算出された応力発光体のひずみの分布を示すひずみ画像とを、表示装置において並列して表示するステップとを含む。
【0009】
応力発光体のひずみは、応力発光体が発する光(応力発光)の大きさとともに、応力発光の時間変化率にも依存するので、応力発光体への力の加え方によっては、ひずみが想定と異なる場合もある。このひずみ計測装置及びひずみ計測方法においては、応力発光体の発光画像とひずみ画像とが並列して表示されるので、ひずみ画像に示されるひずみが想定と異なるような場合に、発光画像により発光状態を参照しつつひずみを解析することが可能となる。このように、このひずみ計測装置及びひずみ計測方法によれば、応力発光体のひずみを十分に解析するための情報を利用者に提示することができる。
【0010】
表示装置は、発光画像とひずみ画像とを同期して並列表示するように構成されてもよい。
【0011】
これにより、ひずみ画像と同期する発光画像を参照しながらひずみを解析することが可能となる。
【0012】
表示装置は、ひずみ画像が積算された積算ひずみ画像を発光画像と並列して表示するように構成されてもよい。
【0013】
積算ひずみ画像は、過去のひずみの情報を含むため、ひずみを解析するうえで有用な情報となり得る一方で、ひずみが生じたタイミングは把握しづらい。このひずみ計測装置によれば、積算ひずみ画像に発光画像が並列して表示されるので、発光画像により時々刻々の発光状態を確認しつつ、積算ひずみ画像によりひずみの履歴を確認することができる。
【0014】
また、表示装置は、発光画像が積算された積算発光画像をひずみ画像と並列して表示するように構成されてもよい。
【0015】
これにより、応力発光体の発光状態を強調して表示することができる。
表示装置は、発光画像及びひずみ画像の少なくとも一方において、表示対象の拡大、縮小及び移動の少なくともいずれかの操作を入力可能に構成され、発光画像及びひずみ画像の双方において、上記操作に応じた表示を連動して行なうようにしてもよい。
【0016】
このような構成により、利用者は、表示対象の拡大、縮小、又は移動の操作を行なう場合に、発光画像及びひずみ画像の一方で上記操作を行なうことにより両画像において操作に対応した表示が行なわれるので、上記操作の入力の利便性が向上する。
【0017】
処理装置は、ひずみから応力発光体の応力をさらに算出するように構成され、表示装置は、ひずみ画像に代えて、応力発光体の応力の分布を示す応力画像を発光画像と並列して表示するように構成されてもよい。
【0018】
これにより、利用者は、発光画像により応力発光体の発光状態を参照しながら、応力発光体の応力の分布を確認することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示におけるひずみ計測装置及びひずみ計測方法によれば、応力発光体のひずみを十分に解析するための情報を利用者に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の実施の形態1に従うひずみ計測装置の全体構成を示す図である。
【
図2】試料に塗布された応力発光体の一例を示す図である。
【
図3】撮像装置により撮像された応力発光体の輝度の推移例を示す図である。
【
図4】応力発光体の応力発光量の推移を示す図である。
【
図5】応力発光量の大きさと応力発光体のひずみとの関係を定性的に示す図である。
【
図6】応力発光量の時間変化率と応力発光体のひずみとの関係を定性的に示す図である。
【
図7】処理装置の構成を機能的に示すブロック図である。
【
図9】処理装置により実行される応力発光画像とひずみ画像との同期表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】応力発光体のひずみを算出するひずみ算出処理の詳細を説明するフローチャートである。
【
図11】
図10のステップS110において実行される残光データ取得処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図10のステップS120において実行される応力発光データ取得処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図10のステップS130において実行されるひずみ量算出処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】応力発光体のひずみを算出するためのひずみ算出モデルの導出方法を説明するフローチャートである。
【
図15】実施の形態2における処理装置の構成を機能的に示すブロック図である。
【
図16】実施の形態2におけるひずみ画像DBのデータ構成を示す図である。
【
図17】実施の形態2における表示装置の表示構成の一例を示す図である。
【
図18】表示装置に積算ひずみ画像を表示するための積算画像表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
[実施の形態1]
図1は、本開示の実施の形態1に従うひずみ計測装置の全体構成を示す図である。このひずみ計測装置は、応力発光体の発光現象に基づいて応力発光体のひずみを計測する。応力発光体は、外部からエネルギーが与えられると発光する物体であり、代表的には、ユウロピウム添加アルミン酸ストロンチウムや、マンガン添加硫化亜鉛等を添加した粉末状のセラミック微粒子である。この粉末状の微粒子をたとえば塗料に含ませて対象物に塗布することにより、応力が生じた箇所の微粒子が発光し、その発光強度(輝度)からひずみが計測される。
【0023】
図1を参照して、ひずみ計測装置10は、光源20と、撮像装置30と、処理装置40と、記憶装置50と、表示装置60とを備える。
【0024】
光源20は、応力発光体を励起するための励起光を発生する。応力発光体は、励起光が照射されることにより所定状態に励起される。ひずみが生じた応力発光体を撮像装置30で撮像可能な程度に発光させるためには、応力発光体に励起光を照射してエネルギー状態を高めておくことが有効であり、応力発光体に外力を加える前に光源20により応力発光体に励起光が照射される。応力発光体の励起状態によって、応力発光体に外力を付与したときの発光強度が異なるため、光源20による励起光の照射エネルギー及び照射時間は一定とされる。これにより、応力発光体は一定状態に励起される。光源20には、たとえばLED(Light Emitting Diode)を用いることができる。
【0025】
撮像装置30は、応力発光体が発する光を撮像するための装置である。撮像装置30は、応力発光体の発光強度を検知し、発光強度に応じた輝度を処理装置40へ出力する。この撮像装置30は、応力発光体が発する光を検知する「検知装置」に相当する。なお、検知された発光強度の輝度への変換は、処理装置40において行なってもよい。撮像装置30には、たとえばCCD(Charge Coupled Device)カメラを用いることができる。
【0026】
処理装置40は、CPU(Central Processing Unit)42と、メモリ44と、各種信号を入出力するための入出力バッファ46とを含んで構成される。CPU42は、ハードディスクやソリッドステートディスク等の外部記憶装置(記憶装置50でもよい。)に格納されているプログラムをメモリ44に展開して実行する。外部記憶装置に格納されるプログラムは、処理装置40の処理手順が記されたプログラムである。処理装置40は、これらのプログラムに従って、ひずみ計測装置10における各種制御を実行する。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。処理装置40によって実行される主要な処理については、後ほど詳しく説明する。
【0027】
記憶装置50は、撮像装置30によって撮像された画像(応力発光体の発光画像)のデータや、処理装置40により算出される応力発光体のひずみの分布を示す画像(ひずみ画像)のデータを記憶する。また、記憶装置50は、応力発光体のひずみ量を算出するためのひずみ算出モデルを記憶する。画像データを記憶する記憶装置と、ひずみ算出モデルを記憶する記憶装置とは、個別に設けてもよい。記憶装置50には、たとえばハードディスクやソリッドステートディスク等を用いることができる。
【0028】
表示装置60は、応力発光体の発光画像及びひずみ画像等を表示するディスプレイである。表示装置60は、ユーザの指示に従って、発光画像やひずみ画像のデータを記憶装置50から受けて表示する。表示装置60は、たとえば、ユーザが操作可能なタッチパネルを備えるディスプレイによって構成される。この実施の形態1に従うひずみ計測装置10では、応力発光体の発光画像とひずみ画像とが表示装置60において同期して並列表示される。この点については、後ほど詳しく説明する。
【0029】
図2は、試料に塗布された応力発光体の一例を示す図である。
図2を参照して、応力発光体100は、たとえば、塗料の状態にしてエアブラシや刷毛等により試料110に塗布される。中央の丸部は、試料110及び応力発光体100に形成された孔である。なお、応力発光体100は、樹脂等に混入させて試料110に貼り付ける等してもよい。
【0030】
以下では、応力発光体100は、
図2に示されるように塗料の状態にして試料110に塗布されるものとし、試料110に引張力を付与した場合の応力発光体100のひずみ(ひいては試料110のひずみ)が計測されるものとする。
【0031】
図3は、撮像装置30により撮像された応力発光体100の輝度の推移例を示す図である。輝度は、応力発光体100の発光強度に比例するため、この図は、応力発光体100の発光強度の推移を表わす。また、この図では、撮像装置30のある1画素に対応する輝度が示されている。すなわち、この図は、撮像装置30のある1画素に対応する部位の発光強度(輝度)の推移を表わしている。
【0032】
図3を参照して、時刻t0において、光源20による励起光の照射が終了したものとする。励起光の照射が終了すると、応力発光体100は発光することでエネルギーを放出し、時間の経過とともに輝度は低下する。
【0033】
時刻t1において、
図2に示したような引張力が試料110に付与されることにより、応力発光体100に外力(機械的エネルギー)が付与される。なお、試料110に付与する力は、試料110を塑性変形させるものではなく、試料110は弾性変形をするものとする。すなわち、引張力が付与されてひずみが生じた試料110は、力が除去されると、力を付与する前の状態に復帰する。
【0034】
外力が付与されると、応力発光体100の発光強度が増加し、輝度が高くなる(実線k1)。なお、以下では、外力を受けて応力が生じたことによる発光を「応力発光」と称し、応力発光による輝度の増分を「応力発光量(輝度)」と称する場合がある。
【0035】
そして、時刻t2において外力が除去されると、輝度は、再び時間の経過とともに低下する。なお、点線k2は、試料110に引張力が付与されない場合、すなわち、応力発光体100に外力が付与されない場合の輝度の推移を示す。この点線k2は、応力発光体100の残光量(輝度)を示すものである。
【0036】
図4は、応力発光体100の応力発光量の推移を示す図である。応力発光量は、応力発光体100に外力を付与したときの全発光量(輝度)から残光量(輝度)を差引くことによって得られ、
図3に示した点線k2をベースとした場合の実線k1の推移に相当する。
【0037】
図4を参照して、時刻t1において外力が付与されると、応力発光量が増加し、時刻t2において外力が除去された後は、応力発光量は時間の経過とともに減少する。
【0038】
図5は、応力発光量の大きさと応力発光体100のひずみとの関係を定性的に示す図である。
図5において、横軸は、応力発光量(輝度)を示し、縦軸は、応力発光体100のひずみを示す。
【0039】
図5を参照して、励起光によって応力発光体100が一定状態に励起され、応力発光量の時間変化率(輝度変化率)が一定であるとの条件下では、応力発光量が大きいほど応力発光体100のひずみも大きい。
【0040】
図6は、応力発光量の時間変化率と応力発光体100のひずみとの関係を定性的に示す図である。
図6において、横軸は、応力発光量の時間変化率である輝度変化率を示し、縦軸は、応力発光体100のひずみを示す。
【0041】
図6を参照して、励起光によって応力発光体100が一定状態に励起され、応力発光量の大きさが一定であるとの条件下では、輝度変化率が大きいほど応力発光体100のひずみは小さい。
【0042】
図5,
図6に示されるように、応力発光体100のひずみは、応力発光量の大きさに依存するとともに、応力発光量の時間変化率にも依存する。そこで、たとえば、応力発光体が塗布された標準試料を用いて、種々の条件で標準試料に力を加えたときの発光パターン(応力発光量の大きさ及び時間変化率)とひずみとの関係を予め求めておき、その関係を用いて、応力発光体100に力が加えられたときの発光パターンから応力発光体100のひずみを算出することが可能である。
【0043】
上記のように、応力発光体100のひずみは、応力発光量の大きさだけでなく応力発光量の時間変化率にも依存し、たとえば、時間変化率が大きいほど(応力発光体100に与えられる力の時間変化率が大きいほど)、ひずみは小さくなり得る。このため、応力発光体100への力の加え方によっては、ひずみが想定と異なる場合もある。したがって、ひずみを表示装置に表示するだけでは、ひずみの発生状況等、ひずみを十分に解析できない可能性がある。
【0044】
そこで、この実施の形態1に従うひずみ計測装置10では、表示装置60において、応力発光体100の発光画像とひずみ画像とが同期して並列表示される。これにより、たとえば、ひずみ画像に示されるひずみが想定と異なるような場合に、発光画像により応力発光の状態を参照しながらひずみを解析することが可能となる。以下、表示装置60における発光画像とひずみ画像との表示について、詳しく説明する。
【0045】
図7は、処理装置40の構成を機能的に示すブロック図である。なお、この
図7では、光源20については図示していない。
図7を参照して、処理装置40は、ひずみ算出部122と、表示制御部124とを含む。
【0046】
ひずみ算出部122は、撮像装置30によって時々刻々と撮像される応力発光体100の発光画像を撮像装置30から取得する。そして、ひずみ算出部122は、取得された発光画像のうち、応力発光の前後所定期間(たとえば、
図3の時刻t1の少し手前から応力発光が消滅するまで)の画像を応力発光画像として記憶装置50へ出力する。記憶装置50へ出力された応力発光画像は、時系列順にナンバリングされて記憶装置50の応力発光画像DB52に格納される。
【0047】
また、ひずみ算出部122は、応力発光画像DB52に格納された応力発光画像を用いて、画素毎に応力発光の発光パターン(応力発光量の大きさ及び時間変化率)を算出し、算出された発光パターンに基づいて応力発光体100のひずみを算出する。具体的には、ひずみ算出部122は、応力発光体の塗布量(厚み)が均一に構成された標準試料を用いて、種々の発光パターンとひずみとの関係を予め求めて記憶装置50(
図1)に記憶しておき、その関係を用いて、応力発光体100に力が加えられたときの発光パターンから応力発光体100のひずみを算出する。
【0048】
そして、ひずみ算出部122は、画素毎に算出されたひずみの分布を示すひずみ画像を記憶装置50へ出力する。記憶装置50へ出力されたひずみ画像は、応力発光画像と同様に時系列順にナンバリングされて記憶装置50のひずみ画像DB54に格納される。
【0049】
表示制御部124は、応力発光画像DB52に格納されている応力発光画像と、ひずみ画像DB54に格納されているひずみ画像とを同期させて表示装置60へ出力する。具体的には、後述のように、ひずみ画像DB54に格納されている時系列の一連のひずみ画像のうちのどの画像を表示させるかを表示装置60においてユーザが指示可能であり、表示制御部124は、表示装置60において指示されたひずみ画像をひずみ画像DB54から読出して表示装置60へ出力するとともに、そのひずみ画像と同期する応力発光画像を応力発光画像DB52から読出して表示装置60へ出力する。
【0050】
図8は、表示装置60の表示構成の一例を示す図である。
図8を参照して、表示装置60は、発光画像表示部62と、ひずみ画像表示部66と、表示バー70とを含む。発光画像表示部62は、処理装置40から受ける応力発光画像を表示する。ひずみ画像表示部66は、処理装置40から受けるひずみ画像を表示する。発光画像表示部62とひずみ画像表示部66とは、並列して配置されている。
【0051】
表示バー70は、記憶装置50のひずみ画像DB54に格納された時系列の一連のひずみ画像のうち、ひずみ画像表示部66に表示させるひずみ画像を利用者が選択するための操作部である。表示バー70は、ポインタ72を利用者が操作可能に構成されており、表示装置60は、表示バー70上のポインタ72の位置に応じた信号を処理装置40へ出力する。
【0052】
上記の信号を表示装置60から受けた処理装置40は、その信号に応じたひずみ画像及びそのひずみ画像に同期する応力発光画像をそれぞれ記憶装置50のひずみ画像DB54及び応力発光画像DB52から読出し、読出されたひずみ画像及び応力発光画像を表示装置60へ出力する。これにより、表示バー70上のポインタ72の位置に応じたひずみ画像及び応力発光画像が、ひずみ画像表示部66及び発光画像表示部62にそれぞれ表示される。
【0053】
図9は、処理装置40により実行される応力発光画像とひずみ画像との同期表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0054】
図9を参照して、処理装置40は、表示バー70が操作されたか否かを判定する(ステップS10)。表示バー70の操作の有無は、表示装置60からの信号に基づいて判定される。表示バー70が操作されていない場合には(ステップS10においてNO)、処理装置40は、以降の一連の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。この場合、表示装置60に画像が表示されていれば、その表示が維持される。
【0055】
ステップS10において表示バー70が操作されたと判定されると(ステップS10においてYES)、処理装置40は、表示バー70上のポインタ72の位置に対応する表示画像Noを取得する(ステップS20)。この表示画像Noは、表示バー70上のポインタ72の位置に応じて予め対応付けられている。
【0056】
次いで、処理装置40は、表示画像Noに対応するひずみ画像を記憶装置50のひずみ画像DB54から取得する(ステップS30)。上述のように、ひずみ画像DB54に格納されているひずみ画像には、時系列順にナンバリングされており、表示画像Noに対応するデータNoを有するひずみ画像がひずみ画像DB54から読出される。
【0057】
続いて、処理装置40は、取得されたひずみ画像に同期する応力発光画像を応力発光画像DB52から取得する(ステップS40)。応力発光画像DB52に格納されている応力発光画像と、ひずみ画像DB54に格納されているひずみ画像とは、時系列順に対応付けされており、処理装置40は、ステップS30において取得されるひずみ画像に対応する応力発光画像を応力発光画像DB52から取得する。
【0058】
そして、処理装置40は、ステップS30において取得されたひずみ画像と、ステップS40において取得された応力発光画像とを表示装置60へ出力する(ステップS50)。これにより、表示バー70によって指示されたひずみ画像と、そのひずみ画像に同期する応力発光画像とが、表示装置60において並列して表示される。
【0059】
以下では、
図10から
図14を用いて、応力発光体100のひずみを算出する処理の詳細について説明する。
【0060】
図10は、応力発光体100のひずみを算出するひずみ算出処理の詳細を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理は、撮像装置30の画素毎に実行される。
【0061】
図10を参照して、処理装置40は、まず、応力発光体100の残光量のデータを取得する残光データ取得処理を実行する(ステップS110)。残光データ取得処理の詳細については、後ほど
図11を用いて説明する。
【0062】
次いで、処理装置40は、試料110に引張力を付与することにより応力発光体100に力が加えられたときの発光量のデータ(応力発光データ)を取得する応力発光データ取得処理を実行する(ステップS120)。応力発光データ取得処理の詳細については、後ほど
図12を用いて説明する。
【0063】
そして、処理装置40は、ステップS110において取得された残光量のデータと、ステップS120において取得された応力発光データとから、応力発光体100のひずみ量を算出するひずみ量算出処理を実行する(ステップS130)。
【0064】
図11は、
図10のステップS110において実行される残光データ取得処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、上述のように
図10のひずみ算出処理は撮像装置30の画素毎に実行されるので、このフローチャートに示される処理も、撮像装置30の画素毎に実行される。
【0065】
図11を参照して、処理装置40は、光源20から応力発光体100へ励起光を照射するように光源20を制御する(ステップS210)。そして、処理装置40は、励起光の照射開始から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS220)。この所定時間は、励起光によって応力発光体100が所定のエネルギー状態まで高められるのに必要な時間であり、たとえば、光源20から出力される励起光の強度及び応力発光体100の種類によって決定される。
【0066】
ステップS220において所定時間が経過したものと判定されると(ステップS220においてYES)、処理装置40は、光源20から応力発光体100への励起光の照射を終了するように光源20を制御する(ステップS230)。
【0067】
励起光の照射が終了すると、残光データの取得が開始される。具体的には、撮像装置30の露光時間(たとえば100ミリ秒)毎に、撮像装置30によって応力発光体100の発光強度が検知され、発光強度に応じた輝度が処理装置40へ出力される。
【0068】
そして、処理装置40は、励起光の照射終了から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS240)。この所定時間は、応力発光体100からの残光量が規定レベルまで低下するのに必要な時間であり、たとえば、励起光による応力発光体100の励起状態及び応力発光体100の種類によって決定される。
【0069】
ステップS240において所定時間が経過したものと判定されると(ステップS240においてYES)、処理装置40は、励起光の照射終了からの輝度データ(残光データ)を照射終了からの経過時間とともに時系列に記憶装置50に保存する(ステップS250)。上述のように、この
図11に示される一連の処理は撮像装置30の画素毎に実行されるので、残光データも画素毎に取得されて記憶装置50に保存される。
【0070】
図12は、
図10のステップS120において実行される応力発光データ取得処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理も、
図11に示した残光データ取得処理と同様に撮像装置30の画素毎に実行される。
【0071】
図12を参照して、ステップS310~S330の処理は、それぞれ
図11に示したステップS210~S230の処理と同じである。
【0072】
ステップS330において励起光の照射が終了すると、応力発光データの取得が開始される。具体的には、撮像装置30の露光時間(たとえば100ミリ秒)毎に、撮像装置30によって応力発光体100の発光強度が検知され、発光強度に応じた輝度が時系列に処理装置40へ出力される。
【0073】
この応力発光データ取得処理では、ステップS330において励起光の照射が終了すると、処理装置40は、励起光の照射終了から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS340)。この所定時間は、応力発光体100に外力を付与するタイミングを規定するものであり、
図3に示される時刻t0~t1の時間に相当する。
【0074】
ステップS340において所定時間が経過したものと判定されると(ステップS340においてYES)、処理装置40は、試料110に力(たとえば引張力)を加えることによって応力発光体100に外力を付与するための処理を実行する(ステップS350)。外力の付与は、
図3に示される時刻t1~t2に相当する時間Δtの間行なわれる。
【0075】
そして、処理装置40は、外力の付与が行なわれてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS360)。この所定時間は、応力発光体100の輝度が規定レベルまで低下するのに必要な時間である。
【0076】
ステップS360において所定時間が経過したものと判定されると(ステップS360においてYES)、処理装置40は、励起光の照射終了からの輝度データ(応力発光データ)を照射終了からの経過時間とともに時系列に記憶装置50に保存する(ステップS370)。上述のように、この
図12に示される一連の処理は撮像装置30の画素毎に実行されるので、応力発光データも画素毎に取得されて記憶装置50に保存される。
【0077】
図13は、
図10のステップS130において実行されるひずみ量算出処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理も、上述の残光データ取得処理(
図11)及び応力発光データ取得処理(
図12)と同様に撮像装置30の画素毎に実行される。
【0078】
図13を参照して、処理装置40は、応力発光データ取得処理(
図12)により取得された応力発光データ(輝度)と、残光データ取得処理(
図11)により取得された残光データ(輝度)とを記憶装置50から時系列順に読出すためのカウンタiを1とする(ステップS410)。
【0079】
次いで、処理装置40は、応力発光データ取得処理により取得されたi番目の応力発光データ(輝度)と、残光データ取得処理により取得されたi番目の残光データ(輝度)とを記憶装置50から読出し、応力発光データと残光データとの差分(すなわち応力発光量)を算出する(ステップS420)。
【0080】
次いで、処理装置40は、ステップS420において算出された応力発光量の変化率(前回値との差分)を算出する(ステップS430)。なお、i=1のときは、変化率は0とする。
【0081】
次いで、処理装置40は、取得された発光パターン(ステップS420において算出された応力発光量の大きさ、及びステップS430において算出された輝度変化率)に基づいて、記憶装置50に記憶されたひずみ算出モデルを用いてひずみ量を算出する(ステップS440)。
【0082】
ひずみ算出モデルは、応力発光体の発光パターンとひずみとの関係を規定するものである。ひずみ算出モデルは、この応力発光体100のひずみ計測に先立って、標準試料を用いて予め求められ、記憶装置50に記憶されている。ひずみ算出モデルの導出方法については、後ほど
図14を用いて説明する。
【0083】
ステップS440においてひずみ量が算出されると、処理装置40は、算出されたひずみ量を記憶装置50に保存する(ステップS450)。その後、処理装置40は、応力発光データ及び残光データが終了したか否かを判定し、未演算のデータがまだ残っていれば(ステップS460においてNO)、カウンタiをカウントアップして(ステップS470)、ステップS420へ処理を戻す。なお、未演算のデータが残っていなければ(ステップS460においてYES)、エンドへと処理が移行される。
【0084】
図14は、応力発光体100のひずみを算出するためのひずみ算出モデルの導出方法を説明するフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、
図10に示したひずみ算出処理が実行される前に予め実行され、導出されたひずみ算出モデルは、
図13のステップS440において用いられる。
【0085】
図14を参照して、応力発光体が塗布された標準試料が準備される(ステップS510)。この標準試料は、応力発光体の塗布量(厚み)が均一に構成されているものである。
【0086】
次いで、ステップS520において、標準試料の残光量を示す残光データが取得される。残光データの取得は、
図10のステップS110における残光データ取得処理と同じ手順によって行なわれる。
【0087】
続いて、ステップS530~S550において、標準試料にたとえば引張力を付与することによって応力発光体に外力が付与された場合に、応力発光体に実際に生じるひずみが測定される。このステップS530~S550の処理は、力を付与する速度(標準試料の引張速度)を変えて複数パターン実施される。
【0088】
具体的には、ステップS530において、標準試料をある引張力で引っ張ることにより応力発光体に外力が付与され、応力発光体の発光量を示す応力発光データが取得される。この応力発光データの取得は、
図12に示した応力発光データ取得処理と同じ手順によって行なわれる。なお、この応力発光データも、残光データと同様に撮像装置30の画素毎に取得する必要はなく、全画素の平均値であってもよいし、ある画素に基づく応力発光データを代表値としてもよい。
【0089】
次いで、ステップS540において、ステップS530において取得された応力発光データと、ステップS520において取得された残光データとを用いて発光パターン(応力発光量及び輝度変化率)が算出される。この発光パターンの算出は、
図13に示したひずみ量算出処理のステップS420,S430と同じ手順によって行なわれる。
【0090】
さらに、ステップS550において、ひずみゲージ(図示せず)の測定値が取得される。すなわち、標準試料については、実際のひずみ量を測定するためのひずみゲージが設けられており、ステップS530において外力が付与されたときの実際のひずみ量がひずみゲージによって測定される。
【0091】
外力の付与速度を変えてステップS530~S550の処理が複数パターン実施されることにより、発光パターンとひずみ(測定値)との関係が多数得られる。
【0092】
そして、ステップS560において、ステップS530~S550の処理によって得られた多数のデータを用いて、発光パターン(応力発光量及び輝度変化率)とひずみとの関係を示すひずみ算出モデルが導出される。なお、このひずみ算出モデルは、回帰分析に基づく回帰式であってもよいし、得られたデータに基づくマップやテーブル等であってもよい。そして、導出されたひずみ算出モデルは、記憶装置50に記憶される。
【0093】
なお、上記では、応力発光体は、塗料の状態にして試料に塗布されるものとしたが、応力発光体が混入された樹脂等の試料についても、同様の手法でひずみを算出することができる。すなわち、応力発光体の混入量(濃度)によっても、応力発光体の発光量及び残光量(輝度)が異なるところ、標準試料を用いて、種々の発光パターンとひずみとの関係を予め求めて記憶装置50に記憶しておき、その関係を用いて、計測対象である応力発光体100に力が加えられたときの発光パターンから、応力発光体100のひずみを算出することができる。
【0094】
以上のように、この実施の形態1においては、応力発光体100の発光画像とひずみ画像とが同期して並列表示されるので、利用者は、ひずみ画像と同期する発光画像を参照しながらひずみの解析を行なうことが可能となる。このように、この実施の形態1によれば、応力発光体100のひずみを十分に解析するための情報を利用者に提示することができる。
【0095】
[実施の形態2]
この実施の形態2では、表示装置において、ひずみ画像を積算した画像(以下「積算ひずみ画像」とも称する。)をひずみ画像表示部に表示可能に構成される。積算ひずみ画像は、過去のひずみの情報を含むため、ひずみを解析するうえで有用な情報となり得るが、ひずみが生じたタイミングの把握が難しい。この実施の形態2では、積算ひずみ画像が表示される場合に、積算ひずみ画像に応力発光画像が並列して表示されるので、応力発光画像により時々刻々の発光状態を確認しつつ、積算ひずみ画像によりひずみの履歴を確認することができる。
【0096】
実施の形態2に従うひずみ計測装置の全体構成は、
図1に示したひずみ計測装置10と同じである。
【0097】
図15は、実施の形態2における処理装置の構成を機能的に示すブロック図である。
図15を参照して、処理装置40Aは、
図7に示した実施の形態1における処理装置40において、積算処理部126をさらに含む。
【0098】
積算処理部126は、積算ひずみ画像を生成する処理を実行する。具体的には、積算処理部126は、記憶装置50のひずみ画像DB54に格納された時系列のひずみ画像の各々に対して、当該ひずみ画像が生成されるまでのひずみ画像を積算した積算ひずみ画像を生成し、生成された積算ひずみ画像を当該ひずみ画像と対応付けてひずみ画像DB54に格納する。
【0099】
図16は、実施の形態2におけるひずみ画像DB54のデータ構成を示す図である。
図16を参照して、ひずみデータは、ひずみ算出部122により生成されたひずみ画像のデータであり、図示しない応力発光画像のデータと対応付けを行なうためのデータNoが時系列順に割り当てられている。
【0100】
積算ひずみデータは、積算処理部126によって生成された積算ひずみ画像のデータであり、ひずみデータと対応付けられている。たとえば、データNoが2の積算ひずみデータIS2.jpgは、ひずみデータS1.jpg~S2.jpgの画像を積算して得られる画像のデータであり、データNoが3の積算ひずみデータIS3.jpgは、ひずみデータS1.jpg~S3.jpgの画像を積算して得られる画像のデータである。
【0101】
再び
図15を参照して、積算処理部126によるひずみ画像の積算処理は、表示装置60Aにおいて積算ひずみ画像の表示が要求され、かつ、ひずみ画像DB54内に積算ひずみデータがまだ生成されていない場合に、表示制御部124からの指示に従って実行される。
【0102】
図17は、実施の形態2における表示装置60Aの表示構成の一例を示す図である。
図17を参照して、表示装置60Aは、
図8に示した実施の形態1における表示装置60において、選択タブ67,68をさらに含む。
【0103】
選択タブ67,68は、ひずみ画像表示部66にひずみ画像及び積算ひずみ画像のいずれを表示させるかを利用者が選択するための操作部である。選択タブ67,68は、利用者が操作可能に構成されており、選択タブ67が操作されると、ひずみ画像表示部66にひずみ画像が表示され、選択タブ68が操作されると、ひずみ画像表示部66に積算ひずみ画像が表示される。表示装置60Aは、選択タブ67,68の選択状態に応じた信号を処理装置40Aへ出力する。
【0104】
処理装置40Aは、選択タブ67が選択されたことを示す信号を表示装置60Aから受けると、表示バー70上のポインタ72の位置に応じたひずみ画像を記憶装置50のひずみ画像DB54から読出して表示装置60Aへ出力する。
【0105】
一方、処理装置40Aは、選択タブ68が選択されたことを示す信号を表示装置60Aから受けると、積算ひずみ画像がまだ生成されていない場合には、ひずみ画像DB54内のひずみ画像に基づいて積算ひずみ画像を生成する。そして、処理装置40Aは、生成された積算ひずみ画像をひずみ画像DB54に格納するとともに、表示バー70上のポインタ72の位置に応じた積算ひずみ画像を表示装置60Aへ出力する。
【0106】
図18は、表示装置60Aに積算ひずみ画像を表示するための積算画像表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0107】
図18を参照して、処理装置40Aは、積算ひずみ画像を表示装置60Aに表示するための選択タブ68が表示装置60Aにおいて操作されたか否かを判定する(ステップS610)。選択タブ68は操作されていないと判定されると(ステップS610においてNO)、処理装置40Aは、以降の一連の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。
【0108】
ステップS610において選択タブ68が操作されたと判定されると(ステップS610においてYES)、処理装置40Aは、記憶装置50のひずみ画像DB54を確認し、積算ひずみ画像を生成済みであるか否かを判定する(ステップS620)。積算ひずみ画像がまだ生成されていない場合は(ステップS620においてNO)、処理装置40Aは、ひずみ画像DB54に格納されたひずみ画像から積算ひずみ画像を生成し、ひずみ画像と対応付けてひずみ画像DB54に格納する(ステップS630)。
【0109】
ステップS620において積算ひずみ画像は生成済みであると判定された場合(ステップS620においてYES)、又はステップS630において積算ひずみ画像が生成されると、処理装置40Aは、表示バー70上のポインタ72の位置に対応する表示画像Noを取得する(ステップS640)。
【0110】
次いで、処理装置40Aは、表示画像Noに対応する積算ひずみ画像を記憶装置50のひずみ画像DB54から取得する(ステップS650)。そして、処理装置40Aは、ステップS650において取得された積算ひずみ画像を表示装置60Aへ出力する(ステップS660)。これにより、表示バー70によって指示された積算ひずみ画像と応力発光画像とが、表示装置60Aにおいて並列して表示される。
【0111】
なお、上記では、表示装置60Aの選択タブ68が操作されることによって積算ひずみ画像の表示が要求された場合に、ひずみ画像DB54に格納されたひずみ画像に基づいて積算ひずみ画像が生成されるものとしたが、ひずみ算出部122によるひずみ画像の生成とともに、リアルタイムに積算ひずみ画像を生成してひずみ画像DB54に格納するようにしてもよい。
【0112】
以上のように、この実施の形態2によれば、表示装置60Aに積算ひずみ画像が表示される場合に、積算ひずみ画像に応力発光画像が並列して表示されるので、応力発光画像により時々刻々の発光状態を確認しつつ、積算ひずみ画像によりひずみの履歴を確認することができる。
【0113】
[その他の実施の形態]
上記の実施の形態2では、ひずみ画像を積算した積算ひずみ画像を表示装置60Aに表示可能としたが、応力発光画像を積算した画像である積算応力発光画像を表示可能としてもよい。これにより、応力発光体100の発光状況を強調して表示することができる。なお、積算応力発光画像を表示装置に表示可能とするための構成は、実施の形態2において「ひずみ画像」及び「積算ひずみ画像」をそれぞれ「応力発光画像」及び「積算応力発光画像」と読み替えることで実現可能である。
【0114】
また、表示装置60(60A)は、発光画像表示部62及びひずみ画像表示部66の少なくとも一方において、公知の手法を用いて、表示中の画像の拡大、縮小及び移動の少なくともいずれかの操作を入力可能に構成されてもよい。そして、発光画像表示部62及びひずみ画像表示部66の一方において上記操作が行なわれた場合に、発光画像表示部62及びひずみ画像表示部66の双方において、上記操作に応じた表示が連動して行なわれるようにしてもよい。これにより、上記操作の入力の利便性が向上する。
【0115】
また、上記の実施の形態1では、応力発光画像とひずみ画像とを同期して並列表示するものとしたが、ひずみ画像に代えて、応力を示す応力画像を表示するようにしてもよい。なお、応力は、ひずみにヤング率をかけることで算出されるので、応力画像は、ひずみ画像から容易に生成することができる。また、この場合に、実施の形態2と同様に、応力画像を積算した画像(積算応力画像)を表示装置に表示可能としてもよい。
【0116】
また、上記の各実施の形態では、
図10のステップS120において、応力発光データを時系列順に取得して全データを記憶装置50に一旦保存し、その後、ステップS130において、時系列順にひずみ量を纏めて算出するものとしたが、時々刻々と応力発光データが取得されるタイミングでひずみ量を算出してもよい。すなわち、ステップS120において、時々刻々と応力発光データが取得される毎に、
図13のステップS420~S450の処理を実行するようにしてもよい。
【0117】
また、上記の各実施の形態では、
図10のフローチャートに示される処理は、撮像装置30の画素毎に実行されるものとしたが、ステップS110において取得される残光データ、及びステップS120において取得される応力発光データは、所定の面積を有する領域における複数の画素の平均値であってもよい。そして、それらを用いて、ステップS130においてひずみ量を算出してもよい。
【0118】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
10 計測装置、20 光源、30 撮像装置、40,40A 処理装置、42 CPU、44 メモリ、46 入出力バッファ、50 記憶装置、60,60A 表示装置、100 応力発光体、110 試料、122 ひずみ算出部、124 表示制御部、126 積算処理部。