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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体、及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220406BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220406BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220406BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220406BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220406BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20220406BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220406BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220406BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220406BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220406BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220406BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/10
C07K14/725
C07K16/30
A61P35/00
A61K35/17 A
A61K35/17 Z
A61P35/02
C12N5/0783
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018517017
(86)(22)【出願日】2017-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2017017456
(87)【国際公開番号】W WO2017195749
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2016095125
(32)【優先日】2016-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598086844
【氏名又は名称】株式会社メディネット
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 晋作
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直貴
(72)【発明者】
【氏名】神垣 隆
(72)【発明者】
【氏名】笹渡 繁巳
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-506419(JP,A)
【文献】中沢洋三,キメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法,信州医誌,2013年,Vol.61, No.4,pp.197-203,ISSN: 1884-6580, 全文
【文献】KANAGAWA, N. et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications,2010年,Vol.394,pp.54-58,ISSN: 0006-291X, 特にAbstract, p.55左欄l.46-右欄l.14
【文献】YOSHIKAWA, M. et al.,BLOOD,2013年,Vol.121, No.14,pp.2804-2813,ISSN: 1528-0020, 特にAbstract, Figure 2, 4-5, Table.1
【文献】INOO, K. et al.,Molecular Therapy - Oncolytics,2016年11月,Vol.3,#16024,ISSN: 2372-7705, 特にp.10右欄l.1-17
【文献】KANAGAWA, N. et al.,Cancer Gene Therapy,2013年,Vol.20,pp.57-64,ISSN: 0929-1903, 特にAbstract, Figure 1, p.58左欄第2段落
【文献】CHINNASAMY, D. et al.,The Journal of Clinical Investigation,2010年,Vol.120, No.11,pp.3953-3968,ISSN: 1558-8238, 特にAbstract, p.3954左欄l.13-26, p.3958左欄l.17-右欄l.12, Figure 3-5
【文献】Sunao Imai,Biol. Pharm. Bull.,2006年,29(7),1325-1330
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61K 35/00-35/768
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号2のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号3のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
を含む軽鎖可変領域、並びに
配列番号5のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号6のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号7のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
を含む重鎖可変領域、
を含む、VEGFR2に特異的に結合するキメラ抗原受容体。
【請求項2】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体を有するキメラ抗原受容体T細胞又はキメラ抗原受容体NK細胞。
【請求項3】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項2に記載のキメラ抗原受容体T細胞若しくはキメラ抗原受容体NK細胞を含む医薬組成物。
【請求項5】
癌の治療又は予防用である、請求項4に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
キメラ抗原受容体、キメラ抗原受容体T細胞、及び抗体に関する技術が開示される。
【背景技術】
【0002】
免疫学の発展に伴って、がんに対する様々な免疫療法の開発が進められている。なかでも、がん細胞を正常細胞と識別して殺傷する能力を有するT細胞を患者に移入する養子免疫療法は、がんの転移・再発に対応しうる副作用の小さい治療戦略として期待されている。しかし、治療効果を発揮するのに十分な質および量のT細胞をがん患者から得ることは困難を伴い、これが本治療法の臨床応用を阻む原因のひとつである。この問題を克服するアプローチとして、近年、キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子の導入によってがん細胞を攻撃できるT細胞を大量に調製し、このCAR発現T(CAR-T)細胞を細胞医薬として利用する養子免疫療法が注目されている。
【0003】
現在研究が進められているCAR-T細胞療法の標的疾患は造血系がんが多く、特にB細胞リンパ腫に対するCD19を標的としたCAR-T細胞療法は、臨床試験において従来の養子免疫療法では得られなかった著効を示したことが報告された。しかしながら、固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法の有効性を示した臨床研究報告は少ない。これは、移入したCAR-T細胞が造血系腫瘍ではがん細胞と接触しやすいのに対して、固形腫瘍のがん細胞と直接接蝕するには血管外に浸潤し、さらに間質組織を通過する必要があるためと考えられる。血液がんの罹患率は全てのがん患者の5%未満であり、固形腫瘍はその他の癌種の多くを占める。よって、固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Kanagawa, N. et al., Cancer Gene Ther., 20(1): 57-64 (2013)
【文献】N Engl J Med. 2014 Oct 16;371(16):1507-17.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような現状の下、癌等の疾患の治療に有効な新たなCAR及びCAR-T細胞等を提供することを1つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のCDR配列を有するCAR及びCAR-T細胞を見出すに至った。斯かる知見に改良と検討を重ね、下記に代表される発明が提供される。
項1.
下記のいずれかのキメラ抗原受容体A~Fから成る群より選択されるキメラ抗原受容体:配列番号1のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号2のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号3のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
を含む重鎖可変領域、並びに/或いは
配列番号5のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号6のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号7のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
を含む軽鎖可変領域、
を含む、キメラ抗原受容体A;
配列番号21のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号22のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号23のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
を含む重鎖可変領域、並びに/或いは
配列番号25のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号26のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号27のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
を含む軽鎖可変領域、
を含む、キメラ抗原受容体B;
配列番号41のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号42のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号43のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
を含む重鎖可変領域、並びに/或いは
配列番号45のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号46のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号47のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
を含む軽鎖可変領域、
を含む、キメラ抗原受容体C;
配列番号61のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号62のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号63のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
を含む重鎖可変領域、並びに/或いは
配列番号65のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号66のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号67のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
を含む軽鎖可変領域、
を含む、キメラ抗原受容体D;
配列番号81のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号82のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号83のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
を含む重鎖可変領域、並びに/或いは
配列番号85のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号86のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号87のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
を含む軽鎖可変領域、
を含む、キメラ抗原受容体E;又は
配列番号101のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号102のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号103のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
を含む重鎖可変領域、並びに/或いは
配列番号105のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号106のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
配列番号107のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
を含む軽鎖可変領域、
を含む、キメラ抗原受容体F。
項2.
項1に記載のキメラ抗原受容体A。
項3.
項1又は2に記載のキメラ抗原受容体を有するキメラ抗原受容体T細胞又はキメラ抗原受容体NK細胞。
項4.
項1又は2に記載のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド。
項5.
項3に記載のキメラ抗原受容体T細胞若しくはキメラ抗原受容体NK細胞を含む医薬組成物。
項6.
癌の治療又は予防用である、項5に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0007】
癌(好ましくは、固形癌)の治療に有効な手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】キメラ抗原受容体Aが有するscFVのアミノ酸配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図2】キメラ抗原受容体Bが有するscFVのアミノ酸配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図3】キメラ抗原受容体Cが有するscFVのアミノ酸配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図4】キメラ抗原受容体Dが有するscFVのアミノ酸配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図5】キメラ抗原受容体Eが有するscFVのアミノ酸配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図6】キメラ抗原受容体Fが有するscFVのアミノ酸配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図7】キメラ抗原受容体Aが有するscFVのアミノ酸配列をコードする塩基配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図8】キメラ抗原受容体Bが有するscFVのアミノ酸配列をコードする塩基配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図9】キメラ抗原受容体Cが有するscFVのアミノ酸配列をコードする塩基配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図10】キメラ抗原受容体Dが有するscFVのアミノ酸配列をコードする塩基配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図11】キメラ抗原受容体Eが有するscFVのアミノ酸配列をコードする塩基配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図12】キメラ抗原受容体Fが有するscFVのアミノ酸配列をコードする塩基配列が示される。実線の下線で示される領域は、軽鎖可変領域である。破線の下線で示される領域は重鎖可変領域である。下線のない領域はリンカーである。太字の大きなフォントで示される領域は、その下に示される通り、軽鎖及び重鎖のCDR1~3である。
図13】pMXs-IG/CAR[mV-(h28)-h28-h3Z]の構築工程を示す。
図14】pMXs-IG/CAR[hV-(h28)-h28-h3Z]の構築工程を示す。
図15】pMXs-IG/CAR[mV-(h8α)-h137-h3Z]の構築工程を示す。
図16】pMXs-IG/CAR[hV-(h8α)-h137-h3Z] の構築工程を示す。
図17】各CARをコードするpMXs-IGベクターの構造を示す。
図18】CAR-T細胞によるin-vivo抗腫瘍効果を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体(CAR)とは、モノクローナル抗体可変領域の軽鎖(VL)と重鎖(VH)を直列に結合させた単鎖抗体(scFv)をN末端側に、T細胞受容体(TCR)ζ鎖をC末端側に持つキメラ蛋白である。CARを発現させたT細胞は、CAR-T細胞と呼ばれる。
【0010】
キメラ抗原受容体A~Fが有するscFV領域のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列に付与した配列番号は下記表1に示す通りである。表内の数字は配列番号を意味する。AAはアミノ酸配列を意味する。Vは、可変領域を意味する。scFVとはscFV領域全体を意味する。
【0011】
【表1】
【0012】
キメラ抗原受容体Aは、配列番号1のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、配列番号3のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、配列番号5のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3から成る群から選択される少なくとも一種のCDRを有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全てのCDRを有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Aは、配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域及び/又は配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Aは、配列番号10で示されるアミノ酸配列を有するscFV構造を有することが好ましい。
【0013】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Aの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号4のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Aの重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号8のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Aは、配列番号10のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Aが有するリンカーのアミノ酸配列は、キメラ抗原受容体としての機能が維持される限り任意である。
【0014】
キメラ抗原受容体Bは、配列番号21のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号22のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、配列番号23のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、配列番号25のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号27のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3から成る群から選択される少なくとも一種のCDRを有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全てのCDRを有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Bは、配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域及び/又は配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Bは、配列番号30で示されるアミノ酸配列を有するscFV構造を有することが好ましい。
【0015】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Bの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号24のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Bの重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号28のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Bは、配列番号30のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Bが有するリンカーのアミノ酸配列は、キメラ抗原受容体としての機能が維持される限り任意である。
【0016】
キメラ抗原受容体Cは、配列番号41のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号42のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、配列番号43のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、配列番号45のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号46のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号47のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3から成る群から選択される少なくとも一種のCDRを有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全てのCDRを有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Cは、配列番号44のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域及び/又は配列番号48のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Cは、配列番号50で示されるアミノ酸配列を有するscFV構造を有することが好ましい。
【0017】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Cの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号44のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Cの重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号48のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Cは、配列番号50のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Cが有するリンカーのアミノ酸配列は、キメラ抗原受容体としての機能が維持される限り任意である。
【0018】
キメラ抗原受容体Dは、配列番号61のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号62のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、配列番号63のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、配列番号65のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号66のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3から成る群から選択される少なくとも一種のCDRを有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全てのCDRを有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Dは、配列番号64のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域及び/又は配列番号68のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Dは、配列番号70で示されるアミノ酸配列を有するscFV構造を有することが好ましい。
【0019】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Dの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号64のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Dの重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号68のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Dは、配列番号70のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Dが有するリンカーのアミノ酸配列は、キメラ抗原受容体としての機能が維持される限り任意である。
【0020】
キメラ抗原受容体Eは、配列番号81のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号82のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、配列番号83のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、配列番号85のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号86のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号87のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3から成る群から選択される少なくとも一種のCDRを有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全てのCDRを有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Eは、配列番号84のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域及び/又は配列番号88のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Eは、配列番号90で示されるアミノ酸配列を有するscFV構造を有することが好ましい。
【0021】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Eの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号84のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Eの重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号88のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Eは、配列番号90のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Eが有するリンカーのアミノ酸配列は、キメラ抗原受容体としての機能が維持される限り任意である。
【0022】
キメラ抗原受容体Fは、配列番号101のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号102のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、配列番号103のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、配列番号105のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号106のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号107のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3から成る群から選択される少なくとも一種のCDRを有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全てのCDRを有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Fは、配列番号104のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域及び/又は配列番号108のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Fは、配列番号110で示されるアミノ酸配列を有するscFV構造を有することが好ましい。
【0023】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Fの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号104のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Fの重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号108のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Fは、配列番号110のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する。一実施形態において、キメラ抗原受容体Fが有するリンカーのアミノ酸配列は、キメラ抗原受容体としての機能が維持される限り任意である。
【0024】
アミノ酸の同一性は、市販の又はインターネットを通じて利用可能な解析ツール(例えば、FASTA、BLAST、PSI-BLAST、SSEARCH等のソフトウェア)を用いて計算することができる。例えば、BLAST検索に一般的に用いられる主な初期条件は、以下の通りである。即ち、Advanced BLAST 2.1において、プログラムにblastpを用い、Expect値を10、Filterは全てOFFにして、MatrixにBLOSUM62を用い、Gap existence cost、Per residue gap cost、及びLambda ratioをそれぞれ 11、1、0.85(デフォルト値)にして、他の各種パラメータもデフォルト値に設定して検索を行うことにより、アミノ酸配列の同一性の値(%)を算出することができる。
【0025】
キメラ抗原受容体A~Cが有するscFV(配列番号10、30、及び50のアミノ酸配列)は、各々血管内皮増殖因子受容体(VEGFR2)を特異的に認識するモノクローナル抗体に由来する。VEGFR2は、腫瘍新生血管で高発現している。キメラ抗原受容体D~Fが有するscFV(配列番号70、90、及び110のアミノ酸配列)は、各々血管内皮細胞特異的レセプター(Robo4)を特異的に認識するモノクローナル抗体に由来する。Robo4は腫瘍血管特異的マーカーとしても知られている。よって、キメラ抗原受容体A~Fは、癌組織(腫瘍組織)を特異的に認識することができる。
【0026】
キメラ抗原受容体A~Fは、そのN末端から順に、scFv領域、スペーサー配列、膜貫通ドメイン、共刺激因子の細胞内ドメイン、並びにTCRの細胞内ドメインが配置された構造を有することが好ましい。scFv領域と膜貫通ドメインとの間に設けられるスペーサー配列の長さ及びそれを構成するアミノ酸残基の種類は、キメラ抗原受容体の機能を阻害しない限り制限されない。例えば、スペーサー配列は、10個~25個程度のアミノ酸残基となるように設計することができる。
【0027】
膜貫通ドメインの種類は、キメラ抗原受容体の機能を阻害しない限り制限されない。例えば、T細胞等で発現するCD28、CD3ζ、CD4、CD8α等を用いることができる。これらの膜貫通ドメインは、キメラ抗原受容体の機能を阻害しない限り、適宜変異が導入されていてもよい。
【0028】
共刺激因子の細胞内ドメインは、T細胞などが有する共刺激因子に由来する細胞内ドメインであればよく特に限定はされない。例えば、OX40、4-1BB、CD27、CD278及びCD28等から成る群から選択される1種以上を適宜選択して使用することができる。これらの共刺激因子の細胞内ドメインは、キメラ抗原受容体の機能を阻害しない限り、適宜変異が導入されていてもよい。
【0029】
TCRの細胞内ドメインは、例えば、TCRζ鎖とも呼ばれるCD3などに由来する細胞内ドメインであり得る。CD3は、キメラ抗原受容体の機能を阻害しない限り、適宜変異が導入されていてもよい。CD3に変異を導入する場合は、ITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)が含まれるよう行うことが好ましい。
【0030】
特定のscFVを利用したキメラ抗原受容体及びそれを発現するCAR-T細胞を製造する技術は公知である。例えば、非特許文献1及び2に開示される方法を利用してキメラ抗原受容体A~Fを製造することができる。
【0031】
2.キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド
キメラ抗原受容体Aをコードするポリヌクレオチドは、上述するキメラ抗原受容体Aをコードする限り特に制限されない。一実施形態において、キメラ抗原受容体Aをコードするポリヌクレオチドは、配列番号11の塩基配列を有する軽鎖CDR1をコードする領域、配列番号12の塩基配列を有する軽鎖CDR2をコードする領域、配列番号13の塩基配列を有する軽鎖CDR3をコードする領域、配列番号15の塩基配列を有する重鎖CDR1をコードする領域、配列番号16の塩基配列を有する重鎖CDR2をコードする領域、及び配列番号17の塩基配列を有する重鎖CDR3をコードする領域から成る群から選択される少なくとも一種の領域を有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全ての領域を有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Aをコードするポリヌクレオチドは、配列番号14の塩基配列を有する軽鎖可変領域をコードする領域及び/又は配列番号18の塩基配列を有する重鎖可変領域をコードする領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Aをコードするポリヌクレオチドは、配列番号20の塩基配列を有することが好ましい。
【0032】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Aをコードするポリヌクレオチドは、配列番号11~20の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を有する。
【0033】
キメラ抗原受容体Bをコードするポリヌクレオチドは、上述するキメラ抗原受容体Bをコードする限り特に制限されない。一実施形態において、キメラ抗原受容体Bをコードするポリヌクレオチドは、配列番号31の塩基配列を有する軽鎖CDR1をコードする領域、配列番号32の塩基配列を有する軽鎖CDR2をコードする領域、配列番号33の塩基配列を有する軽鎖CDR3をコードする領域、配列番号35の塩基配列を有する重鎖CDR1をコードする領域、配列番号36の塩基配列を有する重鎖CDR2をコードする領域、及び配列番号37の塩基配列を有する重鎖CDR3をコードする領域から成る群から選択される少なくとも一種の領域を有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全ての領域を有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Bをコードするポリヌクレオチドは、配列番号34の塩基配列を有する軽鎖可変領域をコードする領域及び/又は配列番号38の塩基配列を有する重鎖可変領域をコードする領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Bをコードするポリヌクレオチドは、配列番号40の塩基配列を有することが好ましい。
【0034】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Bをコードするポリヌクレオチドは、配列番号31~40の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を有する。
【0035】
キメラ抗原受容体Cをコードするポリヌクレオチドは、上述するキメラ抗原受容体Cをコードする限り特に制限されない。一実施形態において、キメラ抗原受容体Cをコードするポリヌクレオチドは、配列番号51の塩基配列を有する軽鎖CDR1をコードする領域、配列番号52の塩基配列を有する軽鎖CDR2をコードする領域、配列番号53の塩基配列を有する軽鎖CDR3をコードする領域、配列番号55の塩基配列を有する重鎖CDR1をコードする領域、配列番号56の塩基配列を有する重鎖CDR2をコードする領域、及び配列番号57の塩基配列を有する重鎖CDR3をコードする領域から成る群から選択される少なくとも一種の領域を有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全ての領域を有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Cをコードするポリヌクレオチドは、配列番号54の塩基配列を有する軽鎖可変領域をコードする領域及び/又は配列番号58の塩基配列を有する重鎖可変領域をコードする領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Cをコードするポリヌクレオチドは、配列番号60の塩基配列を有することが好ましい。
【0036】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Cをコードするポリヌクレオチドは、配列番号51~60の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を有する。
【0037】
キメラ抗原受容体Dをコードするポリヌクレオチドは、上述するキメラ抗原受容体Dをコードする限り特に制限されない。一実施形態において、キメラ抗原受容体Dをコードするポリヌクレオチドは、配列番号71の塩基配列を有する軽鎖CDR1をコードする領域、配列番号72の塩基配列を有する軽鎖CDR2をコードする領域、配列番号73の塩基配列を有する軽鎖CDR3をコードする領域、配列番号75の塩基配列を有する重鎖CDR1をコードする領域、配列番号76の塩基配列を有する重鎖CDR2をコードする領域、及び配列番号77の塩基配列を有する重鎖CDR3をコードする領域から成る群から選択される少なくとも一種の領域を有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全ての領域を有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Dをコードするポリヌクレオチドは、配列番号74の塩基配列を有する軽鎖可変領域をコードする領域及び/又は配列番号78の塩基配列を有する重鎖可変領域をコードする領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Dをコードするポリヌクレオチドは、配列番号80の塩基配列を有することが好ましい。
【0038】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Dをコードするポリヌクレオチドは、配列番号71~80の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を有する。
【0039】
キメラ抗原受容体Eをコードするポリヌクレオチドは、上述するキメラ抗原受容体Eをコードする限り特に制限されない。一実施形態において、キメラ抗原受容体Eをコードするポリヌクレオチドは、配列番号91の塩基配列を有する軽鎖CDR1をコードする領域、配列番号92の塩基配列を有する軽鎖CDR2をコードする領域、配列番号93の塩基配列を有する軽鎖CDR3をコードする領域、配列番号95の塩基配列を有する重鎖CDR1をコードする領域、配列番号96の塩基配列を有する重鎖CDR2をコードする領域、及び配列番号97の塩基配列を有する重鎖CDR3をコードする領域から成る群から選択される少なくとも一種の領域を有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全ての領域を有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Eをコードするポリヌクレオチドは、配列番号94の塩基配列を有する軽鎖可変領域をコードする領域及び/又は配列番号98の塩基配列を有する重鎖可変領域をコードする領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Eをコードするポリヌクレオチドは、配列番号100の塩基配列を有することが好ましい。
【0040】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Eをコードするポリヌクレオチドは、配列番号91~100の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を有する。
【0041】
キメラ抗原受容体Fをコードするポリヌクレオチドは、上述するキメラ抗原受容体Fをコードする限り特に制限されない。一実施形態において、キメラ抗原受容体Fをコードするポリヌクレオチドは、配列番号111の塩基配列を有する軽鎖CDR1をコードする領域、配列番号112の塩基配列を有する軽鎖CDR2をコードする領域、配列番号113の塩基配列を有する軽鎖CDR3をコードする領域、配列番号115の塩基配列を有する重鎖CDR1をコードする領域、配列番号116の塩基配列を有する重鎖CDR2をコードする領域、及び配列番号117の塩基配列を有する重鎖CDR3をコードする領域から成る群から選択される少なくとも一種の領域を有することが好ましく、より好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、より好ましくは全ての領域を有する。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Fをコードするポリヌクレオチドは、配列番号114の塩基配列を有する軽鎖可変領域をコードする領域及び/又は配列番号118の塩基配列を有する重鎖可変領域をコードする領域を有することが好ましい。好適な一実施形態において、キメラ抗原受容体Fをコードするポリヌクレオチドは、配列番号120の塩基配列を有することが好ましい。
【0042】
一実施形態において、キメラ抗原受容体Fをコードするポリヌクレオチドは、配列番号111~120の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を有する。
【0043】
塩基配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。例えば、具体的には、Advanced BLAST 2.1において、プログラムにblastnを用い、各種パラメータはデフォルト値に設定して検索を行うことにより、ヌクレオチド配列の相同性の値(%)を算出することができる。ポリヌクレオチドは、それを発現させるベクター又は細胞の種類に応じてコドン使用頻度が最適化されていてもよい。
【0044】
ポリヌクレオチドの状態は特に限定されず、例えば、単離されたものであっても、ベクター内に組み込まれたものであってもよい。ベクターの種類及び用途は特に限定されない。例えば、ベクターは、プラスミドベクター、又はウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、又はレトロウイルス)であり得る。また、ベクターは、例えば、クローニング用ベクター又は発現用ベクターであり得る。発現用ベクターとしては、大腸菌、又は放線菌等の原核細胞用のベクター、或いは、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳類細胞等の真核細胞用のベクターを挙げることができる。ポリヌクレオチドは、任意の修飾が施されていてもよく、例えば、5'末端側に適宜シグナルペプチドをコードする塩基配列が付加されていてもよい。
【0045】
ポリヌクレオチドは宿主細胞に取り込まれた状態であってもよい。宿主細胞がポリヌクレオチドを含む態様は特に限定されない。例えば、宿主細胞は、ベクターの形態でポリヌクレオチドを有してもよく、宿主細胞内のゲノムDNAにインテグレイトされた形態でポリヌクレオチドを有してもよい。宿主細胞の種類は、任意であり特に制限されない。例えば、宿主細胞は、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳類細胞などの真核細胞、並びに大腸菌、及び放線菌等の原核細胞であり得る。一実施形態において、宿主細胞は真核細胞(例えば、哺乳類、ヒト)であることが好ましく、例えば、T細胞、又はNK細胞等が好ましい。ポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、例えば、任意の宿主細胞に該ポリヌクレオチド(例えば、ベクターの形態で)を導入して得ることができる。
【0046】
宿主細胞は、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを発現していても良く、発現していない状態であってもよい。宿主細胞内でキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドが発現している場合、キメラ抗原受容体を構成するscFv領域は細胞の外側に露呈し、膜貫通ドメイン、共刺激因子、及びTCRの細胞内ドメインは細胞膜または細胞内に存在することが好ましい。
【0047】
3.CAR-T細胞
上述のキメラ抗原受容体A~Fのいずれかを発現するT細胞(CAR-T細胞)が提供される。キメラ抗原受容体を発現するT細胞等はscFv領域で抗原を認識した後、その認識シグナルをζ鎖を通じてT細胞等の内部に伝達する。scFv領域がそのエピトープを認識すると、膜貫通ドメイン、及び共刺激因子を介して細胞内にて細胞傷害活性を惹起させるシグナルを作動させ、これに連動して該細胞が同エピトープを発現する他の細胞または組織に対して攻撃または細胞傷害活性を発揮する。
【0048】
このような機能を発揮する細胞がCTLである場合、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)と呼ばれる。NK細胞などの細胞傷害活性を発揮する可能性を有する細胞もキメラ抗原受容体T細胞と同様に、scFv領域がそのエピトープと結合することにより、細胞傷害活性を発揮できる。従って、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞(特に、細胞傷害活性を有する宿主細胞)は、医薬組成物の有効成分として有用である。キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞(例えば、CAR-T細胞)は、非特許文献1及び2等に記載される公知の方法を参考にして製造することができる。
【0049】
このようなCAR-T細胞等は、癌組織(腫瘍組織)を特異的に認識するため、腫瘍等の治療又は予防に有用である。腫瘍の種類は特に制限されず、固形癌及び血液癌を含む。固形癌としては、例えば、肺癌、大腸癌、卵巣癌、乳癌、脳腫瘍、胃癌、肝癌、舌癌、甲状腺癌、腎臓癌、前立腺癌、子宮癌、骨肉腫、軟骨肉腫、及び横紋筋肉腫を挙げることができる。
【0050】
4.医薬組成物
上記CAR-T細胞等を含む医薬組成物及びそれを利用した疾患の治療又は予防方法が提供される。医薬組成物中の上記CAR-T細胞の含有量は、対象とする疾患(例えば、固形癌)の種類、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、患者の年齢、及び患者の体重等を考慮して適宜設定することができる。例えば、医薬組成物中の抗体の含量は、医薬組成物全体を100重量部として0.001重量部~10重量部程度をすることができる。医薬組成物中の細胞の含有量は、例えば、1細胞/mL~10細胞/mL程度とすることができる。
【0051】
医薬組成物の投与形態は、所望の効果が得られる限り特に制限されず、経口投与、及び非経口投与(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、局所投与)のいずれかの投与経路でヒトを含む哺乳類に投与することができる。有効成分は細胞であるため、好ましい投与形態は非経口投与であり、より好ましくは静脈注射である。経口投与および非経口投与のための剤形およびその製造方法は当業者に周知であり、本発明による抗体又は細胞を、薬学的に許容される坦体等と混合等することにより、常法に従って製造することができる。
【0052】
非経口投与のための剤型は、注射用製剤(例えば、点滴注射剤、静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤)、外用剤(例えば、軟膏剤、パップ剤、ローション剤)、坐剤吸入剤、眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、リポソーム剤等が挙げられる。例えば、注射用製剤は、抗体又は細胞を注射用蒸留水に溶解又は懸濁して調製し、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、及び安定化剤等を添加することができる。医薬組成物は、用時調製用の凍結乾燥製剤とすることもできる。
【0053】
医薬組成物は、疾患の治療又は予防に有効な他の薬剤を更に含有していてもよい。また、医薬組成物は、必要に応じて殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、及びアミノ酸等の成分を配合することもできる。
【0054】
医薬組成物の製剤化に用いる担体には、当該技術分野において通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、無痛化剤等を用いることができる。
【0055】
医薬組成物を用いて治療又は予防する疾患の種類は、その治療又は予防が達成できる限り特に限定されない。具体的な対象疾患として、例えば、腫瘍が挙げられる。腫瘍の種類は特に制限されず、固形癌及び血液癌を含む。固形癌としては、例えば、肺癌、大腸癌、卵巣癌、乳癌、脳腫瘍、胃癌、肝癌、舌癌、甲状腺癌、腎臓癌、前立腺癌、子宮癌、骨肉腫、軟骨肉腫、及び横紋筋肉腫を挙げることができる。
【0056】
医薬組成物の投与対象(被験体)は、例えば、上記疾患に罹患した動物または罹患する可能性がある動物である。「罹患する可能性がある」とは、例えば、後述する診断方法にて決定することができる。動物とは、例えば、哺乳類動物であり、好ましくはヒトである。
【0057】
医薬組成物の投与量は、例えば、投与経路、疾患の種類、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、疾患の重篤度、薬物動態および毒物学的特徴等の薬理学的知見、薬物送達系の利用の有無、並びに他の薬物の組合せの一部として投与されるか、など様々な因子を元に、臨床医師により決定することができる。医薬組成物の投与量は、例えば、有効成分が抗体である場合、一日当たりで、1μg/kg(体重)~10g/kg(体重)程度とすることができる。また、有効成分が細胞(VI)の場合、104細胞/kg(体重)~109細胞/kg(体重)程度とすることができる。医薬組成物の投与スケジュールも、その投与量と同様の要因を勘案して決定することができる。例えば、上記の1日当たりの投与量で、1日~1月に1回投与することできる。
【実施例
【0058】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0059】
1.pMXs-IG/CAR[hV-(h28)-h28-h3Z]の構築
Human CD3zeta chain cDNA及びHuman CD28 cDNAをOpen Biosystems社より購入し、hCD3zeta STD及びhCD28 HD-hCD28 TMD-hCD28 STDの遺伝子は表2に示すPrimerセット及びKOD Plus (TOYOBO, Inc) を用いて、hCD3zeta STDの5’末端とhCD28 HD-hCD28 TMD-hCD28 STDの3’末端が相同な塩基配列を持つように、それぞれをコードした遺伝子断片を作製した。次に、これらの遺伝子断片とKOD Plusを用いてassembly PCRを行い、上流にSac II、下流にNot Iの制限酵素サイトを有するhCD28 HD-hCD28 TMD-hCD28 STD とCD3zeta STDの遺伝子を連結させた遺伝子断片 (Insert 1) を作製した (図13)。anti-mVEGFR2 scFvを持ちplatelet-derived growth factor receptor (PDGFR) を膜貫通ドメインとするpMXs-IG/anti-mVEGFR2 scFvを、制限酵素Sac IIとNot Iにより切断し、DNA Ligation kit Ver. 2.1 (TAKARA BIO, Inc) を用いたライゲーション反応によりInsert 1を組み込むことでpMXs-IG/CAR[mV-(h28)-h28-h3Z]を構築した。
【0060】
【表2】
【0061】
anti-hVEGFR2 scFvの遺伝子配列(配列番号20)を有するpET15b-mouse anti-hVEGFR2-scFv (aV2-95h) に対して、表2に示すPrimerセット及びKOD Plusを用いてPCRを行い、上流にSfi I及び下流にSac IIの制限酵素サイトを持つ遺伝子断片 (Insert 2) を得た (図14) 。pMXs-IG/CAR[mV-(h28)-h28-h3Z]を、制限酵素Sfi IとSac IIにより切断し、DNA Ligation kit Ver. 2.1を用いたライゲーション反応によりInsert 2を組み込むことでpMXs-IG/CAR[hV-(h28)-h28-h3Z]を構築した。
【0062】
2.pMXs-IG/CAR[hV-(h8α)-h137-h3Z]の構築
hCD8αHD及びTMDの遺伝子とCD137 STDの遺伝子を連結させた配列を有するプラスミド pCR4-TOPO/hCD8αHD-TMD-hCD137-hCD3zetaと表2に示すPrimerセット及びKOD Plusを用いてPCRを行い、上流にSac II及び下流にNot Iの制限酵素サイトを持ち、hCD8αHD及びTMDとCD137 STDをコードした遺伝子断片 (Insert 3) を作製した (図15)。pMXs-IG/CAR[mV-(h28)-h28-h3Z]を制限酵素Sac IIとNot Iにより切断し、DNA Ligation kit Ver. 2.1を用いたライゲーション反応によりInsert 3を組み込むことでpMXs-IG/CAR[mV-(h8α)-h137-h3Z]を構築した。
【0063】
pMXs-IG/CAR[hV-(h28)-h28-h3Z]を制限酵素EcoR IとSac IIにより切断し、anti-hVEGFR2 scFvの遺伝子配列(配列番号20)を有する遺伝子断片 (Insert 4) を得た (図16) 。pMXs-IG/CAR[mV-(h8α)-h137-h3Z]を制限酵素EcoR IとSac IIにより切断し、DNA Ligation kit Ver. 2.1を用いたライゲーション反応によりInsert 4を組み込むことでpMXs-IG/CAR[hV-(h8α)-h137-h3Z]を構築した。
【0064】
図17に示すCAR[mV-(m28)-m28-m3Z]、CAR[mV-(h28)-h28-h3Z]、CAR[hV-(h28)-h28-h3Z]、CAR[mV-(h8α)-h137-h3Z]、CAR[hV-(h8α)-h137-h3Z]の遺伝子をコードしたプラスミドから表2に示すプライマー及びDNAポリメラーゼKOD plus (Toyobo, Inc) を用いてPCRを行い、T7 promoter sequence及びCAR遺伝子を含むDNA鋳型を作製し、mMESSAGE mMACHINE(R) T7 ULTRA Transcription Kit (Ambion, Inc) を用いて常法に従いmRNAを精製し、Nuclease Free Water (Ambion, Inc) で懸濁後、-20℃で保管した。このようにしてCAR-mRNAを得た。
【0065】
3.CAR-mRNAの導入
CD8+ T細胞をOpti-MEM(Life Technology, Inc)により懸濁、遠心、上清除去の操作を3回行い、血清に含有される蛋白等を完全に除去し、Opti-MEMを用いて5.7×106-5.7×107 cells/mLに懸濁した。また、80 pg-4μg/μLのCAR-mRNAを含んだNuclease Free Water 25μLと細胞懸濁液175μLを混合させ、エレクトロポレーションを行う直前に4 mmキュベット(BEX, Inc)へ200μLを気泡が入らないように充填した。キュベット電極用チャンバー(CU500; Nepagene, Inc) へキュベットを差し込み、エレクトロポレーター(CUY21Pro-Vitro; Nepagene, Inc) を用いて電気抵抗を測定し異常がない事を確認した後、EPを行い、3時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、72時間後にFCMによってCAR発現強度を測定し、トリパンブルー色素排除法によって細胞生存率を測定した。
【0066】
4.in vivo 抗腫瘍効果
メラノーマB16BL6細胞 3×105 個をC57BL/6マウスの腹部皮内に移植し、腫瘍接種から7日後に腫瘍の長径が5.0~6.0 mm程度に達した時点で、CAR[mV-(m28)-m28-m3Z]を発現したマウスCAR-T細胞を5×106 cells/500 μL/mouseで単回投与、または2日おきに計2回の追加投与を行い、その後の経時的な腫瘍の長径及び短径を測定し、以下に示す式に従って腫瘍体積を算出した。また、無処置群とCAR-mRNAを導入していないCD8+ T細胞を投与する群を作製し、コントロールとした。マウスCAR-T細胞はRPMI1640に懸濁し投与した。腫瘍体積 (mm3) = (腫瘍長径; mm) × (腫瘍短径; mm)2× 0.5236
【0067】
試験結果を図18に示す。CAR-T細胞を単回投与された担癌マウスでは、コントロール群と比較して有意に腫瘍の増殖が抑制され、さらに2回の追加投与を行うとより強い抗腫瘍効果が得られた。したがって、我々が作製したCAR-T細胞はCARの発現が一過性であるものの、単回投与するだけで有効性を発揮し、さらに複数回投与すれば十分に効果を示す細胞医薬になり得る可能性が示唆された。
図1
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【配列表】
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