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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】表面形状測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20220407BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20220407BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20220407BHJP
   G01B 5/20 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
G01B21/00 L
G01B5/00 L
G01B21/20 C
G01B5/20 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018051479
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019164000
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】上村 裕明
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-214009(JP,A)
【文献】特開昭62-198710(JP,A)
【文献】特開2006-194909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00-21/32
G01B 5/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面の形状に応じた信号を出力する検出器と、
前記被測定物と前記検出器とを相対移動させるリニアモータと、
前記リニアモータの推力によって移動する移動体を前記リニアモータの直動方向と平行な第1方向に摺動案内する第1ガイド機構と、
前記第1ガイド機構及び前記移動体よりも重力方向の下方に配置され、前記移動体を支持すると共に前記移動体を前記リニアモータの前記直動方向と平行な前記第1方向に案内する第2ガイド機構と、
前記第2ガイド機構と前記移動体の間に配置され、前記移動体に重力方向と逆方向に作用する力を与える付勢手段と、
を備える表面形状測定装置。
【請求項2】
前記第1ガイド機構は、
前記リニアモータの前記直動方向と平行に配置されたガイド用ベースと、
前記ガイド用ベースに摺動自在に支持されたスライダと、
を含む請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項3】
前記第2ガイド機構は、リニアガイドである請求項1又は2に記載の表面形状測定装置。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記第1ガイド機構に対する前記移動体の重量負荷を打ち消す力を前記移動体に付与する請求項1から3のいずれか一項に記載の表面形状測定装置。
【請求項5】
前記付勢手段は、重力方向に弾性変形する弾性部材を含んで構成される請求項1から4のいずれか一項に記載の表面形状測定装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、圧縮バネである請求項5に記載の表面形状測定装置。
【請求項7】
前記移動体の重量を支える前記弾性部材が3箇所に配置されており、
前記移動体の重心が、平面視において、前記3箇所の3点によって囲まれる領域の内部に入る請求項5又は6に記載の表面形状測定装置。
【請求項8】
前記移動体と前記第2ガイド機構はピアノ線を用いて接続されており、
前記ピアノ線は、前記直動方向に沿って配置される請求項1から7のいずれか一項に記載の表面形状測定装置。
【請求項9】
ベースと、
前記ベースの上部に立設されたコラムと、
をさらに備え、
前記検出器は前記コラムに支持され、
前記リニアモータは、前記コラムの長手方向に直交する前記第1方向に沿って前記コラムを前記ベースに対して相対移動させ、
前記第1ガイド機構は、前記第1方向に沿って延設され、前記コラム及び前記検出器を含む前記移動体を摺動案内する、請求項1から8のいずれか一項に記載の表面形状測定装置。
【請求項10】
前記検出器を前記リニアモータの前記直動方向と直交する第2方向に移動させる駆動部をさらに備える請求項9に記載の表面形状測定装置。
【請求項11】
ベースと、
前記被測定物が載置される重量計と、
前記第1ガイド機構よりも重力方向の下方に配置される昇降機構と、
前記重量計の測定結果に応じて前記昇降機構の昇降動作を制御する制御手段と、
をさらに備え、
前記リニアモータは、前記重量計を前記ベースに対して相対移動させ、
前記第1ガイド機構は、前記第1方向に沿って延設され、前記重量計及び前記被測定物を含む前記移動体を摺動案内するものであり、
前記制御手段は、前記被測定物の重量分の荷重を前記付勢手段の伸縮によって打ち消すように前記昇降機構を動作させる請求項1から8のいずれか一項に記載の表面形状測定装置。
【請求項12】
前記昇降機構は、前記第2ガイド機構の重力方向の下方に配置される請求項11に記載の表面形状測定装置。
【請求項13】
前記昇降機構は、前記第2ガイド機構と前記付勢手段の間に配置される請求項11に記載の表面形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の表面粗さや輪郭形状などの表面形状の測定を行う表面形状測定装置に係り、特に、リニアモータを用いた表面形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面粗さ測定装置や輪郭形状測定装置に代表される表面形状測定装置の多くは、触針(プローブ)を被測定物の表面に接触させながら、触針と被測定物を相対移動させ、触針の変位を検出することにより、被測定物の表面形状を測定する(特許文献1参照)。
【0003】
表面形状測定装置の場合、触針と被測定物の相対移動は、測定軸に沿って直線運動となるのが一般的であり、触針と被測定物とを相対移動させる駆動機構にリニアモータを用いる構成も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-300823号公報
【文献】特開2004-125699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リニアモータを用いた表面形状測定装置には、以下のような問題点[1]~[7]がある。
【0006】
[1]回転式のモータを用いる駆動方式と異なり、リニアモータ駆動方式の場合、減速機などによって力を増幅させられないため、リニアモータの推力は、概ねその大きさに比例してしまう。つまり、大きな駆動力を得るには、大きなリニアモータを採用しなければならない。
【0007】
[2]表面形状測定装置のスライダの案内に、低摩擦のガイド機構であるリニアガイドを用いた場合、ボールの出入りに起因した小さなうねり(振動)が問題になる。このため、精度の高い測定を実現するためには、スライダの案内に摺動方式を用いる必要がある。
【0008】
[3]また、リニアガイドをスライダの案内に用いた場合、リニアガイドを取り付けるベース以上の真直度は望めない。
【0009】
[4]スライダの案内に摺動方式を用いた場合、スライダと一体に移動する移動体(スライダ部)の重量が案内における摩擦抵抗となる。
【0010】
[5]スライダ部が高重量の場合、摩擦抵抗を補うため、高推力のリニアモータを用いる必要がある。
【0011】
[6]また、ワーク移動方式の表面形状測定装置のような場合、スライダ部にワーク(被測定物)の重量が加わるため、スライダ部の重量が可変となる。その場合、ワーク保持台に載せられるワーク重量の範囲を確保するために、リニアモータに余剰な推力を確保しなければならず、装置が大型化すると共に消費電力も増大する。
【0012】
[7]表面形状測定装置において、高い真直度を得るためには、摺動案内に用いるガイド用ベースは補正の観点から変形がないことが求められる。特に、スライダ部が高重量となる場合や、ワークによる重量が変化する場合など、たわみの影響を受けないように高剛性なガイド用ベースが必要となる。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、上述した複数の課題のうち少なくとも一つの課題を解決し得る表面形状測定装置を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は、摺動案内の摺接面に作用する重量負荷を軽減して、摩擦抵抗を軽減することができる表面形状測定装置を提供することを目的の一つとする。
【0015】
本発明の他の目的の一つは、リニアモータの直動方向に沿って配置されるガイド用ベースに対する重量負荷を軽減して、ガイド用ベースのたわみを抑制し、剛性が比較的小さいガイド用ベースであっても高い真直度精度を実現することができる表面形状測定装置を提供することを含む。
【0016】
本開示の他の目的の一つは、被測定物の重量に応じて、重量負荷を打ち消す方向に作用する力の大きさをアクティブに調節することで、リニアモータの余剰な推力の確保を不要とし、リニアモータの過剰スペック化を回避し得る表面形状測定装置を提供することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、以下の発明を提供する。
【0018】
本発明の第1態様に係る表面形状測定装置は、被測定物の表面の形状に応じた信号を出力する検出器と、被測定物と検出器とを相対移動させるリニアモータと、リニアモータの推力によって移動する移動体をリニアモータの直動方向と平行な第1方向に摺動案内する第1ガイド機構と、第1ガイド機構及び移動体よりも重力方向の下方に配置され、移動体を支持すると共に移動体をリニアモータの直動方向と平行な第1方向に案内する第2ガイド機構と、第2ガイド機構と移動体の間に配置され、移動体に重力方向と逆方向に作用する力を与える付勢手段と、を備える。
【0019】
第1態様によれば、第1ガイド機構に摺動案内される移動体には、付勢手段によって重力方向と逆方向の力(つまり上向きの力)が作用し、この力によって移動体が押し上げられることで移動体の重量による第1ガイド機構への荷重の負荷(重量負荷)が軽減される。移動体の重量は、付勢手段を介して第2ガイド機構に支えられる。第1態様によれば、第1ガイド機構の摩擦抵抗を軽減することができる。また、第1態様によれば、第1ガイド機構のたわみを抑制することができる。これにより、高い真直度精度を実現できる。
【0020】
本発明の第2態様に係る表面形状測定装置は、第1態様において、第1ガイド機構は、リニアモータの直動方向と平行に配置されたガイド用ベースと、ガイド用ベースに摺動自在に支持されたスライダと、を含む。
【0021】
本発明の第3態様に係る表面形状測定装置は、第1態様又は第2態様において、第2ガイド機構は、リニアガイドである。
【0022】
本発明の第4態様に係る表面形状測定装置は、第1態様から第3態様のいずれか一態様において、付勢手段は、第1ガイド機構に対する移動体の重量負荷を打ち消す力を移動体に付与する。
【0023】
付勢手段が移動体の重量と釣り合う大きさの逆向きの力を移動体に与えることで、第1ガイド機構に作用する重量負荷をキャンセルすることができる。
【0024】
本発明の第5態様に係る表面形状測定装置は、第1態様から第4態様のいずれか一態様において、付勢手段は、重力方向に弾性変形する弾性部材を含んで構成される。
【0025】
本発明の第6態様に係る表面形状測定装置は、第5態様において、弾性部材は、圧縮バネである。
【0026】
本発明の第7態様に係る表面形状測定装置は、第5態様又は第6態様において、移動体の重量を支える弾性部材が3箇所に配置されており、移動体の重心が、平面視において、3箇所の3点によって囲まれる領域の内部に入る。
【0027】
本発明の第8態様に係る表面形状測定装置は、第1態様から第7態様のいずれか一態様において、移動体と第2ガイド機構はピアノ線を用いて接続されており、ピアノ線は、直動方向に沿って配置される。
【0028】
本発明の第9態様に係る表面形状測定装置は、第1態様から第8態様のいずれか一態様において、ベースと、ベースの上部に立設されたコラムと、をさらに備え、検出器はコラムに支持され、リニアモータは、コラムの長手方向に直交する第1方向に沿ってコラムをベースに対して相対移動させ、第1ガイド機構は、第1方向に沿って延設され、コラム及び検出器を含む移動体を摺動案内する。
【0029】
本発明の第10態様に係る表面形状測定装置は、第9態様において、検出器をリニアモータの直動方向と直交する第2方向に移動させる駆動部をさらに備える。
【0030】
本発明の第11態様に係る表面形状測定装置は、第1態様から第8態様のいずれか一態様において、ベースと、被測定物が載置される重量計と、第1ガイド機構よりも重力方向の下方に配置される昇降機構と、重量計の測定結果に応じて昇降機構の昇降動作を制御する制御手段と、をさらに備え、リニアモータは、重量計をベースに対して相対移動させ、第1ガイド機構は、第1方向に沿って延設され、重量計及び被測定物を含む移動体を摺動案内するものであり、制御手段は、被測定物の重量分の荷重を付勢手段の伸縮によって打ち消すように昇降機構を制御する。
【0031】
第10態様によれば、被測定物の重量に応じて、その重量負荷を打ち消す方向に作用する力の大きさが能動的に調節される。これにより、リニアモータの余剰な推力の確保をすることが不要となり、リニアモータの過剰スペック化を回避し得る。
【0032】
本発明の第12態様に係る表面形状測定装置は、第11態様において、昇降機構は、第2ガイド機構の重力方向の下方に配置される。
【0033】
本発明の第13態様に係る表面形状測定装置は、第11態様において、昇降機構は、第2ガイド機構と付勢手段の間に配置される。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、摺動案内の摺接面に作用する重量負荷を軽減することができ、摺動案内の摩擦抵抗を軽減することができる。また、本発明によれば、高い真直度精度を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1実施形態に係る表面形状測定装置の構成を示す正面図である。
図2図1に示した表面形状測定装置の左側面図である。
図3図1の3-3線断面図である。
図4】第1実施形態に係る表面形状測定装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る表面形状測定装置の要部を示す正面図である。
図6図5に示した表面形状測定装置の左側面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る表面形状測定装置の要部を示す正面図である。
図8図7に示した表面形状測定装置の左側面図である。
図9図7の9-9線断面図である。
図10】第3実施形態に係る表面形状測定装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図11】本発明の第4実施形態に係る表面形状測定装置の要部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に従って本発明の実施の形態について詳説する。
【0037】
《第1実施形態》
図1は、本発明の第1実施形態に係る表面形状測定装置10の構成を示す正面図である。図1に示す表面形状測定装置10は、接触式の表面粗さ測定機であり、ベース12と、ベース12の上部に立設されたコラム14と、コラム14に支持された検出器16と、コラム14をベース12に対して相対移動させるリニアモータ20とを備える。
【0038】
リニアモータ20は、コラム14の長手方向と直交する方向にコラム14を移動させる動力源である。図1において、リニアモータ20の直動方向と平行な方向をX軸方向とし、コラム14の長手方向をZ軸方向とする。リニアモータ20は、シャフト22と可動子24とを含むシャフトモータである。
【0039】
検出器16は、先端に触針30を有する測定子32と、触針30の変位量を電気信号に変換する図示せぬトランスデューサと、を含む。触針30は図示せぬ被測定物の表面に接触し、被測定物の表面の形状に追従して変位する。トランデューサは、例えば、差動変圧器を用いた構成であってよい。検出器16は、コラム14の可動部34に取り付けられている。
【0040】
コラム14は、検出器16を図1の上下方向(Z軸方向)に移動させる昇降機構である。コラム14は、可動部34を上下動させるボールねじ36と、昇降用モータ38とを含む。昇降用モータ38の回転軸はボールネジ36と連結されている。昇降用モータ38の動力によってボールネジ36が回転することにより、可動部34が図1の上下方向に移動する。可動部34に取り付けられた検出器16は、可動部34と共に図1の上下方向に移動する。コラム14は検出器16と共にリニアモータ20の推力によってX軸方向に移動される。
【0041】
表面形状測定装置10は、リニアモータ20の推力によって移動するコラム14をX軸方向に摺動案内するガイド用ベース40と、スライダ42と、を備える。ガイド用ベース40は、X軸方向に沿って延設され、リニアモータ20のシャフト22と平行に配置される。この場合のX軸方向は「第1方向」に相当する。表面形状測定装置10のベース12には、リニアモータ20とガイド用ベース40を支持する2本の支柱部材44が立設されている。ガイド用ベース40の両端とリニアモータ20のシャフト22の両端は、支柱部材44に支持される。
【0042】
スライダ42は、ガイド用ベース40に摺動自在に支持されている。スライダ42はコラム14と連結されている。ガイド用ベース40とスライダ42は「第1ガイド機構」の一例である。
【0043】
表面形状測定装置10は、さらに、コラム14の下方に配置されるリニアガイド50と、コラム14とリニアガイド50を弾性連結する連結構造部60と、を備える。リニアガイド50は、ガイドレール52とキャリッジ54とを含む。ガイドレール52は、X軸方向に沿って配置され、ベース12の上面に固定される。すなわち、リニアガイド50は、ガイド用ベース40よりも重力方向の下方に配置されており、ガイドレール52と、ガイド用ベース40と、リニアモータ20のシャフト22の各々は、互いに平行に配置される。リニアガイド50は「第2ガイド機構」の一例である。
【0044】
連結構造部60は、コラム14とリニアガイド50の間に配置される。コラム14は、連結構造部60を介してリニアガイド50のキャリッジ54と接続される。連結構造部60は、第1プレート61と、第2プレート62との間にバネ64が配置された構造を有する。バネ64は、Z軸方向に弾性変形する圧縮バネである。第1プレート61は、キャリッジ54の上面に固定される。第2プレート62は、バネ64を介して第1プレート61に対向して配置される。コラム14は第2プレート62の上に載せられ、コラム14の下端は、第2プレート62に固定される。バネ64を含む連結構造部60は「付勢手段」の一例である。バネ64は「弾性部材」の一例である。バネ以外の他の弾性部材を用いてもよい。
【0045】
図2は、図1に示した表面形状測定装置10の左側面図である。図3は、図1の3-3線断面図である。なお、図2及び図3において、支柱部材44の図示は省略されている。
【0046】
図2に示すように、スライダ42は、リニアモータ20の可動子24と連結される。
【0047】
コラム14と検出器16とスライダ42は、リニアモータ20の推力によって一体的に移動する移動体となり得る。
【0048】
コラム14は、リニアガイド50のキャリッジ54の上に、バネ64を介して配置される。バネ64は、第1プレート61を介してリニアガイド50のキャリッジ54に取り付けられている。キャリッジ54に搭載されたバネ64は、スライダ42とコラム14と検出器16とを含む移動体の重量を支え、移動体の重量分の荷重を重力方向と逆方向の力に変えて、移動体に作用させる役割を果たす。すなわち、バネ64は、本来、ガイド用ベース40とスライダ42との摺動部にかかるはずであった移動体の重量負荷をリニアガイド50に負担させることで、摺動部の摩擦抵抗を軽減する機能を果たす。また、バネ64は、リニアガイド50のボールの出入りによるうねりや振動を吸収する機能を果たす。
【0049】
リニアガイド50はコラム14を含む移動体を支持するとともに、移動体をX軸方向に案内する。リニアガイド50のキャリッジ54とコラム14は、ピアノ線66を用いて接続されている。ピアノ線66の一方の端部は、第1固定部61Aを介して第1プレート61に固定される。ピアノ線66の他方の端部は、第2固定部62Aを介して第2プレート62に固定される。キャリッジ54は、ピアノ線66を介して、スライダ42及びコラム14などの移動体に牽引される。
【0050】
ピアノ線66は、スライダ42及びコラム14などの移動体の移動方向と平行に接続されている。これにより、ピアノ線66が重力方向に振動やうねりを伝達し難い構成となっている。また、バネ64は、リニアガイド50のボールの出入り等に起因するうねりや振動を吸収する機能を果たす。
【0051】
バネ64は、複数個配置されることが好ましく、特に、図3に示すように、3個のバネ64を用いて、移動体の重量をバランスよく支える形態が好ましい。本実施形態では、移動体の重量を支えるバネ64が3箇所に配置されており、移動体の重心が、平面視において、3箇所の3点によって囲まれる領域の内部に入るようになっている。このように、移動体の重心が、バネ64で形成する3点座の内部に入るように、3本のバネ64を配置することにより、移動体の姿勢が安定する。
【0052】
図4は、第1実施形態に係る表面形状測定装置10の制御系の構成例を示すブロック図である。
【0053】
表面形状測定装置10は、制御装置70と、ドライバ回路71、72と、データ処理装置80と、を備える。ドライバ回路71は、リニアモータ20を駆動するための電力を供給するアンプを含む。リニアモータ20は、ドライバ回路71と接続される。ドライバ回路72は、昇降用モータ38を駆動するための電力を供給するアンプを含む。昇降用モータ38は、ドライバ回路72と接続される。
【0054】
制御装置70は、表面形状測定装置10の動作を統括制御する。制御装置70は、例えば、CPU(central processing unit)を含む各種演算処理回路とメモリ等の記憶装置とを含んで構成される。制御装置70は、予め記憶された所定のプログラムを実行することにより、制御部として機能する。制御装置70の機能は、1つ又は複数のプロセッサを用いて実現することができる。プロセッサには、CPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)など各種の回路形態があり得る。
【0055】
制御装置70は、ドライバ回路71、72と接続される。制御装置70は、ドライバ回路71、72の各々に制御信号を出力し得る。ドライバ回路71は、制御装置70からの指令に従い、リニアモータ20に電力を供給する。ドライバ回路72は、制御装置70からの指令に従い、昇降用モータ38に電力を供給する。なお、ドライバ回路71、72は、制御装置70に含まれてもよい。
【0056】
また、制御装置70は、検出器16及びデータ処理装置80と接続される。検出器16は、データ処理装置80と接続される。検出器16から出力された信号は、データ処理装置80に入力される。
【0057】
データ処理装置80は、検出器16から得られたデータを処理して各種の演算を行うプロセッサと、測定データなど各種情報を記憶するメモリ等の記憶装置を含む。
【0058】
データ処理装置80は、検出器16から得られる検出信号に基づき、被測定物の表面形状の解析を行う。データ処理装置80は、コンピュータを用いて構成されてよい。
【0059】
データ処理装置80は、入力装置82及び表示装置84と接続される。入力装置82及び表示装置84は、ユーザインターフェースとして機能する。入力装置82は、例えば、操作ボタン、ジョイスティック、キーボード、マウス、若しくは、タッチパネル、又はこれらの適宜の組み合わせであってよい。ユーザは、入力装置82を操作することにより、測定条件及び解析条件など各種の指示を入力することができる。
【0060】
表示装置84は、例えば、液晶ディスプレイ、若しくは、有機EL(organic electro-luminescence:OEL)ディスプレイなどであってよい。表示装置84には、測定結果の情報など、各種の情報が表示され得る。また、データ処理装置80には、図示せぬプリンタが接続されてもよい。また、制御装置70は、データ処理装置80の機能を含んでいてもよい。例えば、制御装置70とデータ処理装置80の各機能を1台のコンピュータで実現してもよい。
【0061】
上記のように構成された表面形状測定装置10によれば、スライダ42は、ガイド用ベース40に沿った摺動案内となり、コラム14とリニアガイド50の間に配置されたバネ64の作用により、リニアガイド50に起因するうねりや振動が除去される。
【0062】
また、このとき、ガイド用ベース40は、スライダ42を含む移動体の重量による力がバネ64の力によってキャンセルされているため、摩擦抵抗が軽減され、かつ、撓みが発生し難い。バネ64を用いた連結構造部60は、移動体の重量負荷を軽減させるように、移動体の重量負荷を打ち消す力を移動体に付与する荷重軽減ユニットとして機能する。
【0063】
第1実施形態によれば、剛性の小さいガイド用ベース40を用いることが可能であり、また、剛性の小さいガイド用ベース40であっても高い真直度精度を実現できる。
【0064】
《第2実施形態》
図5は、本発明の第2実施形態に係る表面形状測定装置の要部を示す正面図である。また、図6は、図5に示す表面形状測定装置の左側面図である。
【0065】
図5及び図6において、図1図4で説明した第1実施形態の構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第1実施形態との相違点を説明する。
【0066】
図5及び図6に示す第2実施形態に係る表面形状測定装置100は、コラム14に、検出器16をX軸方向に駆動する駆動部102が取り付けられており、検出器16及び駆動部102が搭載されたコラム14をリニアモータ20によって、Y軸方向に移動させる構造となっている。Y軸方向は、X軸方向及びZ軸方向と直交する方向である。第2実施形態の場合、Y軸方向が「第1方向」に相当し、X軸方向が「第2方向」に相当する。
【0067】
リニアモータ20のシャフト22とガイド用ベース40とリニアガイド50は、Y軸方向に沿って配置される。なお、図5において、リニアモータ20のシャフト22とガイド用ベース40の両端を支持する支柱部材の図示は省略されている。
【0068】
検出器16は、駆動部102に取り付けられている。駆動部102は、検出器16をX軸方向に沿って移動自在に支持する図示せぬ支持機構と、図示せぬモータと、を含む。モータは、回転型のモータであってもよいし、リニアモータであってもよい。駆動部102は、コラム14の可動部34に固定される。また、駆動部102は、図示せぬドライバ回路を介して制御装置70(図4参照)と接続され、制御装置70からの指令に従って駆動される。
【0069】
検出器16と駆動部102とコラム14とスライダ42は、リニアモータ20の推力によってY軸方向に沿って一体的に移動する移動体となる。
【0070】
バネ64を含んだ連結構造部60は、ガイド用ベース40に沿って移動する移動体の重量を支え、バネ64の力によって、移動体を重力方向と逆方向に付勢して、ガイド用ベース40に対する重量負荷を打ち消す。
【0071】
第2実施形態に係る表面形状測定装置110よれば、第1実施形態と同様の効果が得られることに加え、高精度な測定軸をX軸とY軸の両軸で実現できる。
【0072】
《第3実施形態》
図7は、本発明の第3実施形態に係る表面形状測定装置の要部を示す正面図である。図7に示す表面形状測定装置110は、ワーク移動型の表面形状測定装置である。図7において、ベース12の部分は破線によって概略的に示されている。図8は、図7に示す表面形状測定装置110の左側面図である。図8において、リニアモータ20のシャフト22とガイド用ベース40の両端を支持する支柱部材の図示は省略されている。また、図8においてベースの図示は省略されている。図9は、図7の9-9線断面図である。
【0073】
図7図9に示す表面形状測定装置110において、図1図4に示した構成と同一又は類似する要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0074】
図7図9に示す表面形状測定装置110は、被測定物であるワークWの重量を測定する重量計112と、連結構造部60のバネ64の伸縮量を調節するための昇降機構114と、昇降機構114を駆動するための昇降用モータ115と、を備える。
【0075】
図8に示すように、ガイド用ベース40はリニアモータ20の上部を囲むように配置され、スライダ42は、リニアモータ20の可動子24と連結される。
【0076】
重量計112は、スライダ42に固定されている。ワークWは、重量計112の上に直接載置されてもよいし、図示せぬワークホルダを介して重量計112の上にセットされてもよい。
【0077】
ワークWと重量計112とスライダ42は、リニアモータ20の推力によってX軸方向に沿って一体的に移動する移動体となる。ワークWの重量によって移動体の重量が変化し得る。
【0078】
検出器16は、図示せぬコラムに取り付けられている。なお、第3実施形態においてコラムは、ベース12に対して移動不能に固定されていてよい。
【0079】
昇降機構114は、リニアガイド50の下部に配置される。すなわち、リニアガイド50のガイドレール52は、昇降機構114の上に載せられている。
【0080】
昇降機構114は、くさび形のスライドブロック116の斜面を利用して、昇降ブロック117を上下方向に移動させる構造を有する。昇降用モータ115によってネジ棒118を回転させることにより、スライドブロック116が移動し、昇降ブロック117を上下動させる。なお、昇降機構114の構造の一例であり、図示の例に限らず、電動制御可能な様々な形態の昇降装置を採用し得る。
【0081】
ガイド用ベース40とリニアモータ20は、ベース12の上表面12Aよりも下方に配置されてよい。例えば、ベース12は、ガイド用ベース40、リニアモータ20、リニアガイド50及び昇降機構114等を収容する凹部12Bを有する。ガイド用ベース40とリニアモータ20の両端部は、凹部12Bに設けられた図示せぬ支柱部材によってZ方向に移動自在に支持される。
【0082】
重量計112の一部又は全部は、ベース12の上表面12Aよりも上側に露出して配置されてよい。ガイド用ベース40の上側は図示せぬ蛇腹によって覆われる。
【0083】
重量計112の上にワークWが載せられ、重量計112によってワークWの重量が測定される。重量計112によって測定された重量に応じて、昇降機構114を昇降させる。
【0084】
ワークWを載せていない状態におけるスライダ42及び重量計112の重量分の初期負荷は、予めバネ64で重力方向と反対方向にスライダ42を押し上げる力をかけて相殺(キャンセル)しておく。そして、重量計112の上にワークWが置かれた際に、重量計112でワークWの重量を測定し、ワークWの重量に応じて昇降機構114を動作させることによって、バネ64の伸縮量を調節し、ワークWの重量分の荷重をキャンセルする。なお、図示せぬワークホルダを用いる場合のワークホルダの重量は、ワークWの重量に含めてもよいし、初期負荷の重量に含めてもよい。
【0085】
このようなワーク移動型の表面形状測定装置110の場合、ワークWの形態によってスライダ42を含む移動体の重心が変化するが、平面視において、その重心を内側に収める3点に配置した3個のバネ64でスライダ42を押し上げるため、スライダ42の姿勢が安定する。
【0086】
図10は、第3実施形態に係る表面形状測定装置の制御系の構成を示すブロック図である。図10において、図4に示した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0087】
図10に示すように、重量計112はデータ処理装置80と接続される。重量計112から得られたワーク重量の情報は、データ処理装置80に送られる。
【0088】
表面形状測定装置110は、昇降用モータ115に電力を供給するドライバ回路73を備える。制御装置70はドライバ回路73と接続される。
【0089】
データ処理装置80は、重量計112によって測定されたワークWの重量の情報を基に、昇降機構114の移動量を算出する。制御装置70は、昇降機構114の移動に必要な昇降用モータ115の回転量を算出して、モータ駆動用の制御信号をドライバ回路73に送信する。データ処理装置80及び制御装置70の組み合わせは、昇降機構114の昇降動作を制御する「制御手段」の一例である。
【0090】
第3実施形態に係る表面形状測定装置120によれば、ワークWの重量に合わせて、その重量分の荷重をキャンセルするように昇降機構114が自動的に制御される。このような構成により、リニアモータ20に余剰な推力を確保しておく必要性がなくなり、リニアモータ20の過剰なスペック化を回避できる。
【0091】
《第4実施形態》
図11は、本発明の第4実施形態に係る表面形状測定装置の要部を示す正面図である。図11において、図8図9に示した構成と同一又は類似する要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第3実施形態との相違点を説明する。
【0092】
図11に示す表面形状測定装置120は、バネ64の伸縮量を調節する昇降機構124がリニアガイド50のキャリッジ54の上、かつ、スライダ42の下部に配置される。
【0093】
リニアガイド50のガイドレール52は、ベース12に固定されている。昇降機構124は、キャリッジ54の上に固定されている。連結構造部60の第1プレート61は、昇降機構124の昇降ブロック117に固定される。
【0094】
第4実施形態に係る表面形状測定装置120の制御系の構成は、図9で説明した第3実施形態と同様である。図10に示す第4実施形態に係る表面形状測定装置120によれば、第3実施形態と同様の効果が得られることに加え、第3実施形態よりも小型の昇降機構を採用し得る。
【0095】
《変形例1》
上述した各実施形態におけるリニアガイド50に代えて、クロスローラガイド、リニアブッシュ、ローラガイドなど、一般に摩擦を軽減するガイド機構を採用することができる。
【0096】
《変形例2》
上述した各実施形態におけるバネ64に代えて、エアシリンダやエアベアリングシリンダなどを採用してもよい。バネ64の代わりに、エアシリンダやエアベアリングシリンダを用いることにより、振動に対する絶縁性の更なる向上も図れる。
【0097】
《変形例3》
上述した各実施形態では、接触式の検出器16を例示したが、接触式の検出器16に代えて、非接触式の検出器を採用する形態も可能である。非接触式の検出器は、例えば、非測定物の表面にレーザ光を照射して、その反射光を受光することにより、表面形状を検出する構成であってよい。
【0098】
《変形例4》
第3実施形態及び第4実施形態で説明したワーク移動型の構成において、検出器16は駆動部102(図5参照)に取り付けられていてもよい。例えば、駆動部102による検出器16の移動方向をX軸方向とし、リニアモータ20によるワークWの移動方向をY軸方向とする構成を採用することにより、X軸方向及びY軸方向の両軸方向の測定を高精度に実現することができる。
【0099】
《変形例5》
図10に示した昇降機構124と連結構造部60の上下の位置関係は、逆にしてもよい。すなわち、キャリッジ54の上に連結構造部60を固定し、連結構造部60の第2プレート62とスライダ42の間に昇降機構124を配置してもよい。
【0100】
《他の応用例》
本発明は、表面粗さ測定装置に限らず、輪郭形状測定装置、真円度測定装置、及び三次元座標測定装置など、各種の表面形状測定装置に適用可能である。本明細書において「表面形状測定装置」という用語は、表面粗さ測定装置、輪郭形状測定装置、真円度測定装置、及び三次元座標測定装置など、各種装置の概念を含む。また、表面粗さ測定装置或いは輪郭形状測定装置という用語は、表面粗さと輪郭形状を同時に測定可能な表面粗さ及び輪郭形状統合測定装置、並びに、表面粗さ又は輪郭形状を選択的に測定可能な表面粗さ/輪郭形状複合測定装置の概念を含む。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0102】
10、100、110、120・・・表面形状測定装置
12・・・ベース
14・・・コラム
16・・・検出器
20・・・リニアモータ
22・・・シャフト
24・・・可動子
30・・・触針
32・・・測定子
40・・・ガイド用ベース
42・・・スライダ
50・・・リニアガイド
52・・・ガイドレール
54・・・キャリッジ
64・・・バネ
66・・・ピアノ線
70・・・制御装置
71、72、73・・・ドライバ回路
80・・・データ処理装置
102・・・駆動部
112・・・重量計
114、124・・・昇降機構
115・・・昇降用モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11