(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/66 20060101AFI20220407BHJP
B65H 3/46 20060101ALI20220407BHJP
B65H 3/52 20060101ALI20220407BHJP
B65H 1/12 20060101ALI20220407BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
B65H3/66
B65H3/46 A
B65H3/52 330C
B65H1/12 310C
G03G15/00 405
(21)【出願番号】P 2021063857
(22)【出願日】2021-04-05
(62)【分割の表示】P 2019143501の分割
【原出願日】2014-09-22
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2014042805
(32)【優先日】2014-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】青山 純平
(72)【発明者】
【氏名】野中 学
(72)【発明者】
【氏名】西田 一
(72)【発明者】
【氏名】飛永 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上地 純平
(72)【発明者】
【氏名】久野 悟志
(72)【発明者】
【氏名】小林 峻
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-060075(JP,A)
【文献】特開平08-002721(JP,A)
【文献】特開2004-010273(JP,A)
【文献】特開平09-286526(JP,A)
【文献】特開平11-236141(JP,A)
【文献】特開2010-202379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給送体及び分離体
とが当接
する分離ニップ
で前記給送体に直接接触してい
るシート
を、前記直接接触しているシート以外のシートから分離
して給送す
る画像形成装置において、
前記分離ニップ
よりシート搬送方向
上流側でシートの搬送方向と直交する幅方向の互いに異なる箇所でシートに
下方から接触する
複数の先端部を
形成する可撓性の
先端部形成部材
と、
前記分離ニップよりシート搬送方向上流側でシートに接触することで前記シートを前記分離ニップに向けて案内する分離ニップ案内部とを設け、
シートの幅方向において前記分離ニップより外側及び前記複数の先端部より外側で、かつ、シート搬送方向において前記先端部よりも下流側の位置に、シートに下方から先端が接触するシートの幅方向よりもシート搬送方向が長い凸部を設けたことを特徴とする画像形成装置
。
【請求項2】
請求
項1の画像形成装置において、
前記分離体として、回転可能な分離ローラを用い、
少なくとも1つの前記
先端部を前記分離ローラの円柱状のローラ部よりも回転軸線方向の一端側にずれた位置に設けるとともに、少なくとも他の1つの前記
先端部を前記ローラ部よりも回転軸線方向の他端側にずれた位置に設けたことを特徴とする画像形成装置
。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、
前記分離ニップ案内部より上方に前記先端部形成部材の前記先端部を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1の画像形成装置において、
前記先端部形成部材の前記先端部よりシートの搬送方向下流側に前記分離ニップ案内部のシートの搬送方向下流側の端部を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃
至4の何れかの画像形成装置において、
シート収容手段のシート載置面よりも突出するように配設され、前記シート収容手段内
のシートにおけるシート送り出し方向と直交する方向の中央部に接触することで
、シートのカールを矯正するカール矯正体を、前記シート収容手段に対して着脱可能に設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求
項5の画像形成装置において、
前記カール矯正体の前記シート載置面からの突出量を互いに異ならせるように前記シート収容手段にそれぞれ係合する複数の係合部を前記カール矯正体に設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃
至6の何れかの画像形成装置において、
前記給送体として、内輪、前記内輪を内包する外輪、前記内輪の外周から放射状に延びて前記外輪の内周に繋がる複数のリブ、及び前記外輪の外周上に被覆された弾性体からなる弾性層を具備する回転可能な給送回転体を用い、前記外輪の内側に配設された複数の前記リブの間の空間におもりを固定したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求
項7の画像形成装置であって、
前記おもりが、給送回転体回転方向における一端面と、他端面とにそれぞれ突起を有し、前記空間を挟む位置にある2つの前記リブに一方の2つの前記突起における一方を接触させ、他方の前記リブに他方の前記突起を接触させ、且つ、前記おもりの2つの前記突起とは異なる箇所を前記外輪の内周面に接触させる大きさ及び形状であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを、給送体及び分離体とが当接する分離ニップで1枚に分離する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置として、特許文献1に記載のものが知られている。
図29は、特許文献1に記載の画像形成装置における給紙カセットを示す構成図である。同図において、複数の記録シートSをシート束の状態で収容している給紙カセット970は、図示しない画像形成装置本体に対して同図の紙面に直交する方向に沿って出し入れされるものである。給紙カセット970の近傍には、画像形成装置本体に保持される給紙ローラ981が配設されている。給紙カセット970内に収容されるシート束の先端部は、給紙カセット970の可動底板971によって上方に向けて付勢されることで、給紙ローラ981に圧接せしめられている。その圧接領域の側方では、給紙ローラ981と分離ローラ982とが当接して分離ニップを形成している。給紙ローラ981が回転駆動すると、シート束の最上位の記録シートSが給紙カセット970内から分離ニップに向けて送り出される。このとき、最上位の記録シートSのみならず、その下の記録シートSが最上位の記録シートSに重なった状態で給紙トレイ970内から送り出される重送と呼ばれる現象が発生することがある。重送によって複数枚の記録シートSが重なった状態で分離ニップに挟み込まれた場合には、それらの記録シートSのうち、給紙ローラ981に直接接触している最上位の記録シートSが給紙ローラ981の表面移動に追従してシート送り方向に搬送される。一方、それ以外の記録シートは、分離ニップ内で給紙ローラ981とは逆方向に表面移動する分離ローラ982に追従して給紙カセット970に向けて送り返される。この送り返しにより、重送が発生しても、給紙ローラ981に直接接触している記録シートSだけが1枚に分離される。そして、図示しない作像装置に向けて送られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
給紙カセット内の記録シートを分離ニップに向けて送り出す手段としては、給紙ローラや分離ローラとは別に設けたピックアップローラによって行うことが一般的である。しかし、特許文献1に記載の画像形成装置では、ピックアップローラを設けずに、給紙ローラ981にその役割を担わせている。かかる構成(以下、ピックアップレス方式という)では、ピックアップローラの付設を省略して低コスト化を図ることができる。
【0004】
しかしながら、ピックアップレス方式では、記録シートとして薄紙などの腰の弱いものが用いられた場合に、分離ニップで記録シートに折り目を付け易くなるという不具合があった。具体的には、
図30に示されるように、給紙ローラ981の周面をシート束の先端部と分離ローラ982との両方に当接させるピックアップレス方式では、シート束の先端部と分離ニップとの距離が非常に近くなる。そして、給紙ローラ981の回転駆動に伴って給紙カセット内から送り出される記録シートSの先端部は、可動底板971と給紙ローラ981との間の圧接部を抜けると、給紙ローラ981の湾曲した表面にピッタリと密着せずに、僅かに浮いた状態で搬送される。すると、分離ニップに向けて真っ直ぐに進入せずに、分離ニップの手前で分離ローラ982の周面に先端を突き当てることが多くなる。腰の弱い記録シートSでは、先端を分離ローラ982の周面に突き当てると、
図31に示されるように、搬送方向と直交する方向で上下に波打つような波打ちを先端部に形成する。この波打ちがそのまま分離ニップに挟み込まれることで、記録シートSに折り目を付けてしまうのである。なお、給紙カセットから送り出された記録シートSの先端部を分離ニップに向けて案内する案内部材を設けても、腰の弱い記録シートでは同様の折り目を付けてしまう。腰の弱い記録シートがその先端部を案内部材に突き当てて波打ち部を形成してしまうからである。
【0005】
そこで、本発明者らは、次のような新規な画像形成装置を開発中である。即ち、この画像形成装置においては、
図32に示されるように、分離ニップの手前で記録シートSに撓みを付与するための撓み付与体985を設けている。撓み付与体985は、分離ニップに進入する直前の記録シートSに対して重力方向下方から接触するように配設されている。撓み付与体985が記録シートSの一部の領域に対して重力方向下方から接触することで、図示のように、腰の弱い記録シートSを部分的に撓ませてその記録シートSに搬送方向(図中矢印方向)に沿った皺を発生させる。このような撓みを形成することで、記録シートSにおいて、その撓みと直交する方向に撓みを発生させ難くして、
図31に示される記録シートSの波打ちを阻害する。これにより、分離ニップで腰の弱い記録シートSにおける折り目の発生を抑えることができる。なお、
図31に示される給紙ローラ981や分離ローラ982は何れも、
図32における2つの撓み付与体985によって記録シートSに形成された2本の皺の間の領域だけに当接する短いローラからなるものである。このため、それら2本の皺を分離ニップに挟み込んで折り目を付けてしまうことはない。
【0006】
本発明者らは、かかる構成の画像形成装置において、厚紙などの腰の強い記録シートSを用いた場合に、給紙カセットから送り出した記録シートSを分離ニップやその周辺で停滞させる不送りと呼ばれる現象を発生させ易くなることを実験によって見出した。その不送りは、次に説明する理由によって発生していた。即ち、
図33に示されるように、2つの撓み付与体985の一方は、給紙ローラ981や分離ローラ982のローラ部よりもローラ軸線方向の一端側にずれた位置に存在している。また、他方の撓み付与体985は、それらのローラ部よりもローラ軸線方向の他端側にずれた位置に存在している。そして、
図32に示されるような高さの比較的大きな皺を発生させるために、それぞれの先端部を
図31に矢印で示されている記録シートSの搬送経路よりも上方に大きく突き出している。このような2つの撓み付与体985により、分離ニップの手前において記録シートSの幅方向(搬送方向と直交する方向)の両端側をそれぞれ大きく持ち上げることで、記録シートSの幅方向の中央部を給紙ローラ981の周面における分離ニップ進入直前の領域に強く押し当てる。これにより、記録シートSに対して大きな搬送抵抗を付与して記録シートSを給紙ローラ981の表面上でスリップさせることで、記録シートSを搬送方向に送ることができなくなって不送りを発生させてしまうのである。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、腰の弱いシートの折り目の発生を抑えつつ、腰の強いシートの不送りの発生を抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、給送体及び分離体とが当接する分離ニップで前記給送体に直接接触しているシートを、前記直接接触しているシート以外のシートから分離して給送する画像形成装置において、前記分離ニップよりシート搬送方向上流側でシートの搬送方向と直交する幅方向の互いに異なる箇所でシートに下方から接触する複数の先端部を形成する可撓性の先端部形成部材と、前記分離ニップよりシート搬送方向上流側でシートに接触することで前記シートを前記分離ニップに向けて案内する分離ニップ案内部とを設け、シートの幅方向において前記分離ニップより外側及び前記複数の先端部より外側で、かつ、シート搬送方向において前記先端部よりも下流側の位置に、シートに下方から先端が接触するシートの幅方向よりもシート搬送方向が長い凸部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成装置において、腰の弱いシートの折り目の発生を抑えつつ、腰の強いシートの不送りの発生を抑えることができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】同プリンタにおける感光体とその周囲の構成とを拡大して示す拡大構成図。
【
図3】同プリンタの下部領域を部分的に拡大して示す部分拡大図。
【
図4】同プリンタの本体筐体内から引き出されている最中の給紙カセットを部分的に示す部分拡大図。
【
図5】同給紙カセットの取り外しによって内部に空間が生じた状態の本体筺体を部分的に示す斜視図。
【
図6】同給紙カセットをその後方から部分的に示す斜視図。
【
図7】同給紙カセットの前側を部分的に示す部分斜視図。
【
図8】同給紙カセットの分離ローラユニットを示す分解斜視図。
【
図9】同給紙カセットの前端部を部分的に示す部分斜視図。
【
図10】同本体筐体内に装着された同給紙カセットの分離ローラユニットと、同本体筐体内に固定された給送ローラとを部分的に示す部分斜視図。
【
図11】同給送ローラ及び同分離ローラユニットの縦断面を示す縦断面図。
【
図12】腰の強い記録シートを分離ニップに挟み込んだ状態の同縦断面を示す縦断面図。
【
図13】同プリンタの案内ユニット板を記録シートとともに示す斜視図。
【
図14】同案内ユニット板の撓み付与部を拡大して示す拡大斜視図。
【
図15】先端部を撓ませた状態の同撓み付与部を示す拡大斜視図。
【
図16】同プリンタの分離ニップとその周囲構成とを拡大して示す拡大構成図。
【
図17】機能に着目した符号が各部に付された同撓み付与部を拡大して示す分解斜視図。
【
図18】材料に着目した符号が各部に付された同撓み付与部を拡大して示す分解斜視図。
【
図20】給紙カセット内でカールしている記録シートを示す斜視図。
【
図21】同プリンタの給紙カセット及び給送ローラユニットケースを示す斜視図。
【
図22】同給紙カセットの一部を斜め上方から示す斜視図。
【
図23】カール矯正体が設けられていない給紙カセット内における記録シートの状態を説明するための説明図。
【
図24】カール矯正体が設けられている給紙カセット内における記録シートの状態を説明するための説明図。
【
図25】カール矯正体が着脱される同給紙カセットを示す斜視図。
【
図26】同給紙カセットの可動底板に保持されるカール矯正体のスライド移動を説明するための給紙カセット拡大斜視図。
【
図28】同カール矯正体の変形例を給紙カセットの可動底板とともに示す斜視図。
【
図29】特許文献1に記載の画像形成装置における給紙カセットを示す構成図。
【
図30】同給紙カセットから送り出され始めた記録シートの状態を説明するための説明図。
【
図31】腰の弱い記録シートが分離ニップ周辺で引き起こす波打ちを説明するための説明図。
【
図32】撓み付与体によって記録シートに付与される撓み及び皺を説明するための斜視図。
【
図33】開発中の画像形成装置における給紙ローラ、分離ローラ、及び撓み付与体を示す斜視図。
【
図34】同プリンタの給送ローラの要部を示す斜視図。
【
図35】本発明者らによって試作されたローラの要部を示す側面図。
【
図37】同給送ローラに固定されるおもりを拡大して示す拡大構成図。
【
図38】同給送ローラのリブ仕切り空間を部分的に拡大して示す部分側面図。
【
図39】変形例に係るプリンタの給送ローラを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式で画像を形成する電子写真プリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。なお、本発明は、電子写真方式で画像を形成する画像形成装置に限らず、インクジェット方式や、特開2002-307737号公報等に記載のトナープロジェクション方式など、他の方式で画像を形成する画像形成装置にも適用が可能である。
【0012】
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、本プリンタは、潜像担持体としての感光体1や、本体筐体50に対して着脱可能に構成されたシート収容手段としての給紙カセット100などを備えている。給紙カセット100の内部には、複数の記録シートSをシート束の状態で収容している。
【0013】
給紙カセット100内の記録シートSは、後述する給送ローラ35の回転駆動によってカセット内から送り出されて、後述する分離ニップを経た後に給紙路42内に至る。その後、第1搬送ローラ対41の搬送ニップに挟み込まれて、給紙路42内を搬送方向の上流側から下流側に向けて搬送される。給紙路42の末端付近には、レジストローラ対49が配設されている。記録シートSは、このレジストローラ対49のレジストニップに先端を突き当てた状態で搬送が一時中止される。その突き当ての際、記録シートSのスキューが補正される。
【0014】
レジストローラ対49は、記録シートSを後述する転写ニップで感光体1の表面のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで回転駆動を開始して、記録シートSを転写ニップに向けて送り出す。この際、第1搬送ローラ対41が同時に回転駆動を開始して、一時中止していた記録シートSの搬送を再開する。
【0015】
本プリンタの本体筺体は、手差しトレイ43、手差し給送ローラ44、分離パッド45などからなる手差し給紙部を保持している。この手差し給紙部の手差しトレイ43に手差しされた記録シートは、手差し給送ローラ44の回転駆動によって手差しトレイ43内から送り出される。そして、手差し給送ローラ44と分離パッド45との当接による分離ニップを経た後に、給紙路42におけるレジストローラ対49よりも上流側の領域に進入する。その後、給紙カセット100から送り出された記録シートSと同様にして、レジストローラ対49を経た後に、後述する転写ニップに送られる。
【0016】
図2は、本プリンタにおける感光体1とその周囲の構成とを拡大して示す拡大構成図である。図中反時計回り方向に回転駆動せしめられるドラム状の感光体1の周囲には、回収スクリュウ3、クリーニングブレード2、帯電ローラ4、潜像書込装置7、現像装置8、転写ローラ10などが配設されている。導電性ゴムローラ部を具備する帯電ローラ4は、感光体1に接触しながら回転して帯電ニップを形成している。この帯電ローラ4には、図示しない電源から出力される帯電バイアスが印加されている。これにより、帯電ニップにおいて、感光体1の表面と帯電ローラ4の表面との間で放電が発生することで、感光体1の表面が一様に帯電せしめられる。
【0017】
潜像書込装置7は、LEDアレイを具備しており、感光体1の一様帯電した表面に対してLED光による光走査を行う。感光体1の一様帯電した地肌部のうち、この光走査によって光照射を受けた領域は、電位を減衰させる。これにより、感光体1の表面に静電潜像が形成される。
【0018】
静電潜像は、感光体1の回転駆動に伴って、現像装置8に対向する現像領域を通過する。現像装置8は、循環搬送部や現像部を有しており、循環搬送部には、トナーと磁性キャリアとを含有する現像剤を収容している。循環搬送部は、後述する現像ローラ8aに供給するための現像剤を搬送する第1スクリュウ8bや、第1スクリュウ8bの直下に位置する独立した空間で現像剤を搬送する第2スクリュウ8cを有している。更には、第2スクリュウ8cから第1スクリュウ8bへの現像剤の受け渡しを行うための傾斜スクリュウ8dも有している。現像ローラ8a、第1スクリュウ8b、及び第2スクリュウ8cは、互いに平行な姿勢で配設されている。これに対し、傾斜スクリュウ8dは、それらから傾いた姿勢で配設されている。
【0019】
第1スクリュウ8bは、自らの回転駆動に伴って現像剤を同図の紙面に直交する方向における奥側から手前側に向けて搬送する。この際、自らに対向配設された現像ローラ8aに一部の現像剤を供給する。第1スクリュウ8bによって同図の紙面に直交する方向における手前側の端部付近まで搬送された現像剤は、第2スクリュウ8cの上に落とし込まれる。
【0020】
第2スクリュウ8cは、現像ローラ8aから使用済みの現像剤を受け取りながら、受け取った現像剤を自らの回転駆動に伴って同図の紙面に直交する方向における奥側から手前側に向けて搬送する。第2スクリュウ8cによって同図の紙面に直交する方向における手前側の端部付近まで搬送された現像剤は、傾斜スクリュウ8dに受け渡される。そして、傾斜スクリュウ8dの回転駆動に伴って、同図の紙面に直交する方向における手前側から奥側に向けて搬送された後、同方向における奥側の端部付近で、第1スクリュウ8bに受け渡される。
【0021】
現像ローラ8aは、筒状の非磁性部材からなる回転可能な現像スリーブと、現像スリーブに連れ回らないようにスリーブ内に固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ8bによって搬送されている現像剤の一部をマグネットローラの発する磁力によって現像スリーブの表面で汲み上げる。現像スリーブの表面に担持された現像剤は、現像スリーブの表面に連れ周りながら、スリーブとドクターグレードとの対向位置を通過する際に、その層厚が規制される。その後、感光体1に対向する現像領域で、感光体1の表面に摺擦しながら移動する。
【0022】
現像スリーブには、トナーや感光体1の地肌部電位と同極性の現像バイアスが印加されている。この現像バイアスの絶対値は、潜像電位の絶対値よりも大きく、且つ、地肌部電位の絶対値よりも小さくなっている。このため、現像領域においては、感光体1の静電潜像と現像スリーブとの間にトナーをスリーブ側から潜像側に静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。この一方で、感光体1の地肌部と現像スリーブとの間には、トナーを地肌部側からスリーブ側に静電移動させる地肌ポテンシャルが作用する。これにより、現像領域では、感光体1の静電潜像にトナーが選択的に付着して静電潜像が現像される。
【0023】
現像領域を通過した現像剤は、現像スリーブの回転に伴って、スリーブと第2スクリュウ8cとの対向領域に進入する。この対向領域では、マグネットローラに具備される複数の磁極のうち、互いに極性の異なる2つの磁極によって反発磁界が形成されている。対向領域に進入した現像剤は、反発磁界の作用によって現像スリーブ表面から離脱して、第2スクリュウ8c上に回収される。
【0024】
傾斜スクリュウ8dによって搬送される現像剤は、現像ローラ8aから回収された現像剤を含有しており、その現像剤は現像領域で現像に寄与していることからトナー濃度を低下させている。現像装置8は、傾斜スクリュウ8bによって搬送される現像剤のトナー濃度を検知する図示しないトナー濃度センサーを具備している。制御部51は、トナー濃度センサーによる検知結果に基づいて、必要に応じて、傾斜スクリュウ8bによって搬送される現像剤にトナーを補給するための補給動作信号を出力する。
【0025】
現像装置8の上方には、トナーカートリッジ9が配設されている。このトナーカートリッジ9は、内部に収容しているトナーを、回転軸部材9aに固定されたアジテータ9bによって撹拌している。そして、トナー補給部材9cが制御部51から出力される補給動作信号に応じて回転駆動されることで、回転駆動量に応じた量のトナーを現像装置8の傾斜スクリュウ8bに補給する。
【0026】
現像によって感光体1上に形成されたトナー像は、感光体1の回転に伴って、感光体1と、転写手段たる転写ローラ10とが当接する転写ニップに進入する。転写ローラ10には、感光体1の潜像電位とは逆極性の帯電バイアスが印加されており、これにより、転写ニップ内には転写電界が形成されている。
【0027】
上述したように、レジストローラ対49は、記録シートSを転写ニップ内で感光体1上のトナー像に重ね合わせうるタイミングで転写ニップに向けて送り出す。転写ニップでトナー像に密着せしめられた記録シートSには、転写電界やニップ圧の作用により、感光体1上のトナー像が転写される。
【0028】
転写ニップを通過した後の感光体1の表面には、記録シートSに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは感光体1に当接しているクリーニングブレード2によって感光体1の表面から掻き落とされた後、回収スクリュウ3により、ユニットケーシングの外に向けて送られる。ユニットケーシングから排出された転写残トナーは、図示しない搬送装置によって図示しない廃トナーボトルに送られる。
【0029】
クリーニングブレード2によってクリーニングされた感光体1の表面は、図示しない除電手段によって除電された後、帯電ローラ4によって再び一様に帯電せしめられる。感光体1の表面に当接している帯電ローラ4には、トナー添加剤や、クリーニングブレード2で除去し切れなかったトナーなどの異物が付着する。この異物は、帯電ローラ4に当接しているクリーニングローラ5に転移した後、クリーニングローラ5に当接しているスクレーパー6によってクリーニングローラ5の表面から掻き落とされる。掻き落とされた異物は、上述した回収スクリュウ3の上に落下する。
【0030】
図1において、感光体1と転写ローラ10とが当接する転写ニップを通過した記録シートSは、定着装置44に送られる。定着装置44は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ44aと、これに向けて押圧される加圧ローラ44bとの当接によって定着ニップを形成している。定着ニップに挟み込まれた記録シートSの表面には、加熱や加圧の作用によってトナー像が定着せしめられる。その後、定着装置44を通過した記録シートSは、排紙路45を経た後、排紙ローラ対46の排紙ニップに挟み込まれる。
【0031】
本プリンタは、記録シートSの片面だけに画像を形成する片面モードと、記録シートSの良縁に画像を形成する両面モードとを切り替えて実行することができる。片面モードの場合や、両面モードであって既に記録シートSの両面に画像を形成している場合には、排紙ローラ対46が正転駆動を続けることで、排紙路45内の記録シートSを機外に排出する。排出された記録シートSは、本体筺体50の上面に設けられたスタック部にスタックされる。
【0032】
一方、両面モードであって、且つ記録シートSの片面だけにしか画像を形成していない場合には、排紙ローラ対46の排紙ニップに記録シートSの端部が進入したタイミングで、排紙ローラ対46が逆転駆動される。このとき、排紙路45の末端付近に配設された切換爪47が作動して、排紙路45を塞ぐとともに、反転再送路48の入口を開く。排紙ローラ対46の逆転駆動によって逆戻りを開始した記録シートSは、反転再送路48内に送り込まれる。そして、反転再送路48内で上下を反転せしめられながら搬送された後、レジストローラ対49のレジストニップに再送される。その後、転写ニップでもう一方の面にもトナー像が転写された後、定着装置44と排紙路45と排紙ローラ対46とを経て機外に排出される。
【0033】
図3は、本プリンタの下部領域を部分的に拡大して示す部分拡大図である。給紙カセット100は、可動底板101の上に複数の記録シートSからなるシート束を載置している。可動底板101は、底板バネ103によって給送ローラ35に向けて付勢されている。可動底板101の先端部には弾性部材からなる底板バッド102が固定されている。シート束の先端部は、この底板パッド102と給送ローラ35との間に挟み込まれた状態で、底板バネ103の力によって給送ローラ35に向けて押圧されている。
【0034】
給送ローラ35が回転すると、シート束の一番上にある最上位の記録シートSが可動底板101から送り出される。そして、給送ローラ35と分離ローラ121との当接による分離ニップに進入する。このように、可動底板101、底板パッド102、底板バネ103などからなる押し当て手段によって記録シートSを給送ローラ35に向けて押し当てた状態で、給送ローラ35の駆動によってカセット内からの記録シートSの送り出しを行う。かかる構成では、給紙カセット100に対するピックアップローラの付設を省略して、低コスト化を図ることができる。つまり、本プリンタでは、ピックアップレス方式を採用していることで、低コスト化を実現している。
【0035】
分離ローラ121に対しては、必要に応じてその表面を給送ローラ35とは逆方向に移動させるための回転駆動力を付与するのが一般的であるが、本プリンタにおいては、回転駆動力を付与しないようになっている。分離ローラ121は、給送ローラ35や分離ニップ内の記録シートSに従動することによってのみ回転するようになっている。
【0036】
分離ローラ121の回転軸の一端側は、図示しないトルクリミッターによって回転自在に支持されている。分離ニップに記録シートSが進入していないときには、分離ローラ121が給送ローラ35に直接接触する。この状態で給送ローラ35が回転駆動すると、給送ローラ35から分離ローラ121に比較的強い駆動力が付与される。これにより、分離ローラ121の従動回転のトルクが所定の閾値を上回ることで、トルクリミッターが分離ローラ121の従動回転を許容する。つまり、分離ニップに記録シートSが進入していないときには、分離ローラ121が給送ローラ35に連れ回って従動回転する。
【0037】
また、分離ニップに記録シートSが1枚だけ進入したときには、分離ローラ121と給送ローラとの間に記録シートSが1枚だけ介在する。この状態で給送ローラ35が回転駆動すると、給送ローラ35から記録シートSに対して強い搬送力が付与されて記録シートSがシート送り方向に移動する。同時に、給送ローラ35から記録シートSを介して分離ローラ121に比較的強い駆動力が付与される。これにより、分離ローラ121の従動回転のトルクが所定の閾値を上回ることで、トルクリミッターが分離ローラ121の従動回転を許容する。つまり、分離ニップに記録シートSが1枚だけ進入しているときにも、分離ローラ121が従動回転する。
【0038】
一方、重送によって複数枚の記録シートSが重なり合った状態で分離ニップに進入したとする。この場合、分離ニップで給送ローラ35に直接接触する最上位の記録シートSに対しては、給送ローラ35によって比較的強い搬送力が付与されることから、最上位の記録シートSはシート送り方向に搬送される。また、最上位の記録シートSを除く残りの記録シートは、分離ニップで加圧されることで搬送抵抗を付与される。この搬送抵抗が、最上位の記録シートSと2番目の記録シートSとの摩擦抵抗を上回ることで、それらシート間でスリップが発生する。そして、このスリップにより、分離ローラ121の従動回転のトルクが所定の閾値以下になることで、トルクリミッターが分離ローラ121の従動回転を許容しなくなる。すると、2番目以降の記録シートSに対する搬送抵抗がより増加して、2番目以降の記録シートSの移動が停止する。このようにして、分離ローラ121は、複数の記録シートSに搬送抵抗を付与しながらそれら最上位の記録シートSから他の記録シートを分離する。
【0039】
かかる構成では、分離ローラ121に対してモータによる回転駆動力を付与することなく分離ニップで記録シートSを分離することで、分離ローラ121に駆動を伝達するための駆動伝達手段を省略して低コスト化を図ることができる。
【0040】
図4は、本体筐体内から引き出されている最中の給紙カセット100を部分的に示す部分拡大図である。図示のように、本プリンタにおいては、分離ローラ121を給紙カセット100に保持させて給紙カセット100とともに本体筺体50に対して着脱するようになっている。これにより、給紙カセット100をローラの回転軸線方向ではなく、同図の左右方向にスライドさせて本体筺体50に対して着脱することを可能にしている。分離ローラ121が給紙カセット100とともに移動することから、給紙カセット100を同図の左右方向に沿った矢印A方向にスライド移動させる際に分離ローラ121が邪魔にならないからである。
【0041】
分離ニップに記録シートSが挟まった状態でジャムが発生した場合、作業者は給紙カセット100を図中矢印A方向にスライド移動させて本体筺体50から引き出す。すると、分離ローラ121が給紙カセット100とともに取り出されて分離ニップが無くなるが、ジャムシートは、第1搬送ローラ対41の搬送ニップに挟まれていることから、本体筺体50内に残る。
【0042】
給紙カセット100を本体筺体50から引き出したことによって本体筺体50内に発生する空間は、カセット引き出し方向である図中矢印A方向に向けて大きく開口している。作業者は、この開口を通じて、ジャムシートをその面方向から容易に視認することができる。そして、その開口に挿入した両手により、ジャムシートのローラ回転軸線方向の両端部をそれぞれ把持しながら、ジャムシートを第1搬送ローラ対41による搬送ニップから引っ張り出すことができる。この際、ジャムシートの両端部にそれぞれ引っ張り力が付与されることで、ジャムシートの一端部だけが把持される場合に比べて、引っ張り力の集中が抑えられて、ジャムシートの破れが発生し難くなる。
【0043】
よって、本プリンタにおいては、ジャム処理の際におけるジャムシートの破けを抑えることができる。なお、本プリンタにおける給紙カセットの本体筺体50からの引き出し方向(図中矢印A方向)は、図示のように、給紙カセット100をシート収容部105側から分離ローラユニット120側に移動させる方向である。
【0044】
図5は、給紙カセット(100)の取り外しによって内部に空間が生じた状態の本体筺体50を部分的に示す斜視図である。図中矢印B方向は、図示しない給送ローラ(35)の回転軸線方向である。同図においては、本体筺体における同回転軸線方向の一端側だけを示している。
【0045】
本体筺体50内の底部における同回転軸線方向の一端側には、図示しない給紙カセットの着脱方向に延在するレール53が設けられている。また、同図には示されていないが、同回転軸線方向の他端側にも、同様のレールが設けられている。給紙カセットは、それらレールの上に置かれた状態でレールの延在方向に沿ってスライド移動させられることで、本体筺体50に対して着脱される。また、レールの上に載ることで、本体筺体50内において高さ方向の位置決めがなされる。
【0046】
同図に示される本体筺体50において、高さ方向に延在している部材は、本体筺体50の右側板である。同図には示されていないが、同回転軸線方向の他端側においても、同様に高さ方向に延在する左側板が設けられている。本体筺体50の右側板の内壁には、本体筺体50内において給紙カセットを着脱方向に位置決めするための位置決めストッパー51が設けられている。また、本体筺体50の図示しない左側板の内壁にも、同様の位置決めストッパーが設けられている。給紙カセットは、本体筺体50内において上述したレールに載せられて内部に押し込まれていく際に、自らに設けられた突き当て部を前述した位置決めストッパー(例えば51)に突き当てることで、着脱方向の位置決めがなされる。
【0047】
給紙カセットの突き当て部を単に位置決めストッパーに突き当てているだけでは、本体筺体50に何らかの衝撃が加えられた場合に、給紙カセットが取り出し方向に押し出されてしまうおそれがある。そこで、本体筺体50の右側板の内壁には、係止部材52が同回転軸線方向(矢印B方向)に移動可能に設けられている。この係止部材52は、図示しないバネによって付勢されることで、図示のように、本体筺体50の右側板の内面よりも筺体内部に突出する位置で拘束されている。この係止部材52には、図示のようにテーパーが設けられている。同図には示されていないが、本体筺体50の左側板の内壁にも、同様の係止部材52が設けられている。
【0048】
図6は、給紙カセット100をその後方から部分的に示す斜視図である。給紙カセット100の右側板の外面には、抜け止め突起106が突設されている。給紙カセット100の底壁外面に設けられた位置決め部107を、
図5に示される本体筺体50の下部に設けられたレール53の上に載せることで、給紙カセット100の高さ方向の位置決めが行われる。給紙カセット100がレール53上で本体筺体50内部に向けて押し込まれていくのに伴って、給紙カセット100の抜け止め突起106が本体筺体50の係止部材52のテーパーに摺擦する。この摺擦に伴って、係止部材52は側板の外側に向けて押されていき、側板内面からの突出量を減らしていく。そして、給紙カセット100が位置決め用の突き当て部105を本体筺体50の位置決めストッパー51に突き当てる位置まで移動して位置決めされる直前に、給紙カセット100の抜け止め突起106が本体筺体50の係止部材52から離間する。すると、それまで側板内面からの突出量を減らしていた係止部材52がバネの付勢力により、
図5に示される位置まで一気に突出する。そして、突出した部分を給紙カセット100の抜け止め突起106の背面に接触させることで、給紙カセット100の引き出し方向への移動を阻止して給紙カセット100を正規の位置に拘束する。これにより、本体筺体50に突発的な衝撃が加わっても、給紙カセット100を着脱方向において正規に位置に拘束し続けることができる。
【0049】
なお、係止部材52には、同図では裏側になって見えなくなっている面にも急角度のテーパーが設けられている。衝撃程度の力では、給紙カセット100の抜け止め突起106によって係止部材52を押し下げることができない。しかし、作業者がある程度の力で給紙カセット100を引き抜く際には、給紙カセット100の抜け止め突起106が係止部材52の裏側のテーパーに強く摺擦しながら係止部材52を押し下げていく。これにより、作業者は給紙カセット100を本体筺体50内から引き抜くことができる。
【0050】
以上のようにして、給紙カセット100の高さ方向の位置決めと着脱方向の位置決めとを行うことで、給紙カセット100に保持される分離ローラ(121)が本体筺体50内において正確に位置決めされる。
【0051】
なお、給紙カセット100を高さ方向により正確に位置決めするために、次のような構成を採用してもよい。即ち、本体筺体50の2つの側板にそれぞれ設けた位置決めストッパー(例えば51)に、レール部と、そのレール部の表面から僅かに突出する微小突起とを形成し、給紙カセット100に設けた微小位置決め部をその微小突起の上に乗り上げさせる。それと同時に、位置決めストッパーの被突き当て部に給紙カセット100の突き当て部(例えば105)を突き当てる。
【0052】
図7は、給紙カセット100の前側を部分的に示す部分斜視図である。なお、同図においては、便宜上、給紙カセット100の前カバー(引き出し用の把手が付いているカバー)の図示を省略している。図示のように、分離ローラ121は、他のいくつかの部品とともに分離ローラユニット120として構成されていて、給紙カセット100の被装着部に対して一体的に着脱されるようになっている。このように、分離ローラ121をユニット化することで、他機種との部品の共通化を図って低コスト化を実現している。具体的には、本プリンタとは仕様の異なる他機種のカセットにおいても、本プリンタの給紙カセット100と同様の構成を採用している。但し、本プリンタの給紙カセット100とは記録シートSの収容枚数が異なっていることから、カセットの厚みが異なっている。このような仕様の異なる給紙カセットではあるが、分離ローラユニット120については、全く同じ仕様のものを着脱するようになっている。このようにして部品の共通化を図っているのである。
【0053】
図8は、分離ローラユニット120を示す分解斜視図である。分離ローラ121の回転軸部材121aには、トルクリミッター122が連結されている。このトルクリミッター122の役割は、既に説明した通りである。トルクリミッター122及び分離ローラ121は、揺動ホルダー123によって保持されている。トルクリミッター122における回転軸部材121aとの連結部とは反対側は、揺動ホルダー123の右側板に固定されている。また、分離ローラ121の回転軸部材aにおける前記連結部とは反端側は、揺動ホルダー123の左側板に回転自在に支持されている。
【0054】
このようにしてトルクリミッター122及び分離ローラ121を保持する揺動ホルダー123は、上カバー126とベースカバー124とからなる収容部材に収容される。具体的には、揺動ホルダー123の右側板及び左側板には、それぞれ同軸線上に並ぶ揺動軸部123aが突設せしめられている。ベースカバー124内に収容された揺動ホルダー123は、それら揺動軸部をベースカバー124の軸穴124aや切り欠き124bに係合させる。これにより、揺動ホルダー123が揺動軸部123aを中心にして揺動するように、ベースカバー124に支持される。
【0055】
上カバー126は、ベースカバー124に対して上方から嵌合する。この状態では、上カバー126に設けられた開口126aを通じて、カバー内部の分離ローラ121の周面が外に露出する(
図7参照)。ベースカバー124には、付勢手段としてのコイルバネ125が固定されている。このコイルバネ125により、揺動ホルダー123が揺動軸部123aを中心にして、ベースカバー124側から上カバー126側に向かう方向に付勢されている。分離ローラユニット120を
図7に示されるように給紙カセット100に装着していない状態では、上カバー126の裏面に分離ローラ121の周面が突き当たっている。
【0056】
本プリンタにおいては、
図1に示される本体筺体50の図中右端の面が前面になっている。また、図中左端の面が背面になっている。また、本体筺体50の同図の紙面に直交する方向における奥端の面が右側面になっている。また、同方向における手前端の面が左側面になっている。つまり、本プリンタでは、本体筺体50内に装着されている給紙カセット100をプリンタの前方に向けて引き出すようになっている。また、給紙カセット100をプリンタの後方に向けて押し込んで本体筐体50内に装着するようになっている。以下、着脱方向に沿ってプリンタの後側から前側に向かう方向を単に前方という。また、その正反対の方向を単に後方という。
【0057】
図9に示されるように、分離ローラユニット120が給紙カセット100の被装着部に装着されると、給紙カセット100の可動底板101の先端に固定された底板バッド102が分離ローラ121の近傍に位置する。底板バッド102は、上述したように、給紙カセット100内に収容された記録シートを給送ローラ(35)に向けて押し当てるものである。
【0058】
図10は、本体筐体内に装着された給紙カセット100の分離ローラユニット120と、本体筐体内に固定された給送ローラ35とを部分的に示す部分斜視図である。給紙カセット100が本体筐体のレール上でスライド移動せしめられながら本体筐体に装着される過程で、本体筐体内に固定された給送ローラ35と、給紙カセット100に保持される分離ローラ121とが当接する。具体的には、給送ローラ35に当接する前の分離ローラ121は、分離ローラユニット120の上カバー126の開口(
図8の126a)を通じて、自らの周面の一部を上カバー126よりも外に突出させている。この状態で給紙カセット100とともに本体筐体内に押し込まれていく分離ローラ121は、やがて、本体筐体内に固定されている給送ローラ35の周面に突き当たる。給紙カセット100が更に本体筐体内に押し込まれていくと、分離ローラ121が給送ローラ35に押し返される。この押し返しの力により、揺動ホルダー123がコイルバネ125の付勢力に抗して、揺動軸部123aを中心にして上カバー126側からベースカバー124側に向けて公転し始める。これにより、分離ローラ121が揺動軸部123aを中心にして給送ローラ35側から分離ローラ121側に向けて徐々に公転していき、両ローラの当接部も給送ローラ35側から分離ローラ121側に向けて徐々に移動していく。給紙カセット100が正規の装着位置まで押し込まれると、分離ローラ121が上カバー126の裏面から完全に離間した状態になる。
【0059】
記録シートSとして、厚紙などの腰の強いものが用いられた場合、分離ニップに挟み込まれた記録シートSがその腰の強さによる復元力によって分離ローラ121を給送ローラ35から離れる方向に押し返すおそれがある。すると、この力に起因する記録シートSの不送りが発生してしまう。具体的には、前述の力により、コイルバネ125(
図8参照)によって給送ローラ35に向けて付勢されている揺動ホルダー123が揺動軸部123aを中心にして給送ローラ35から離れる方向に公転して、分離ローラ121を給送ローラ35から大きく離間させる。これにより、給送ローラ35の表面移動による搬送力が記録シートSに伝わらなくなって、記録シートSの不送りが発生する。以下、この不送りを「押し返しによる不送り」という。
【0060】
図11は、給送ローラ35及び分離ローラユニット120を示す縦断面図である。分離ローラユニット120の上カバー126における開口(126a)の周辺には、ローラ軸線方向に並ぶ2つの凸部126b、凸部126cが設けられている。同図において、Lnという符号が付された一点鎖線は、分離ニップの延長線である。また、Lsという符号が付された一点鎖線は、凸部126bや凸部126cの表面の延長線である。凸部126bは、分離ローラ121の円柱状のローラ部121bにおける回転軸線方向の一端面(図中右側端面)に対して回転軸線方向に沿ったより一端側の位置で並びつつ、本体筺体内で分離ニップよりも給送ローラ35側に突出している。また、凸部126cは、ローラ部121bにおける回転軸線方向の他端面(図中左側端面)に対して回転軸線方向に沿ったより他端側の位置で並びつつ、本体筺体内で分離ニップよりも給送ローラ35側に突出している。
【0061】
図12に示されるように、腰の強い記録シートSが分離ニップに挟み込まれると、記録シートSのローラ軸線方向における全域のうち、第1接触部126bに接触している箇所と、第2接触部126cに接触している箇所との間の領域が僅かに撓む。具体的には、それら接触部の表面よりも分離ローラ121側に位置している分離ニップに向けて撓む。同図に示される記録シートSは腰の強いシートなので、そのように撓むと、復元力によって撓みを解消しようとすることから、記録シートSによって分離ローラ121に対して給送ローラ35から離れる方向の力を付与してしまうことがなくなる。これにより、腰の強い記録シートSが分離ニップで分離ローラ121に前述の力を付与してしまうことに起因する「押し返しによる不送り」の発生を回避することができる。
【0062】
図11において、分離ローラ121の周面は、上カバー126に設けられた開口を通じて外部に出ており、上カバー126の表面よりも僅かに給送ローラ35側に突出している(以下、突出している周面箇所を突出周面という)。分離ニップに向けて搬送される腰の強い記録シートSが分離ニップよりも手前側で分離ローラ121の突出周面に突き当たると、次のようになってしまうおそれがある。即ち、揺動ホルダー123が揺動軸部123aを中心にして給送ローラ35から離れる方向に公転し、これによって分離ローラ121が給送ローラ35から大きく離間して記録シートSの不送りを発生させるおそれがある。以下、この不送りを「突き当たりによる不送り」という。特に、本プリンタのように、分離ローラ121にモータの駆動力を伝達しない構成では、記録シートSが分離ローラ121の突出周面に突き当たってローラの従動回転を停止させても、分離ローラ121に逆駆動がかからない。このため、分離ローラ121の突出周面に突き当たった記録シートSに対してカセットに向けて押し戻す力を付与することができないことから、「突き当たりによる不送り」が発生し易い。
【0063】
そこで、本プリンタにおいては、
図10に示されるように、案内ユニット板127を上カバー126に固定している。この案内ユニット板127は、分離ニップ案内部127aと、2つの撓み付与部127bとを具備している。分離ニップ案内部127aは、分離ローラ121のローラ部121bの前方に配設され、分離ニップに進入する前の記録シートSに接触する。そして、分離ニップに進入する前の記録シートSの分離ローラ121突出周面への突き当たりを阻止しながら、記録シートSを分離ニップに向けて案内する。記録シートSの分離ローラ突出周面への突き当たりを阻止することで、記録シートSの「突き当たりによる不送り」の発生を回避することができる。なお、案内ユニット板127における2つの撓み付与部127bの役割については、後述する。
【0064】
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
既に述べたように、本プリンタのようなピックアップレス方式の画像形成装置においては、記録シートSとして腰の弱いものを用いた場合に、分離ニップの手前側で
図31に示されるようなシート波打ちを発生させて、シートに折り目を付けてしまい易くなる。
【0065】
そこで、本プリンタにおいては、
図10に示されるように、2つの撓み付与部127bを案内ユニット板127に設けている。撓み付与部127bは、分離ニップに進入する直前の記録シートSに重力方向下方から接触する。これにより、
図13に示されるように、腰の弱い記録シートSを撓ませてその記録シートSに搬送方向(図中矢印方向)に沿った皺を発生させる。この撓みが形成されることで、記録シートSにおいて、その撓みと直交する方向の撓み(
図31)の発生が阻害される。これにより、記録シートSの折り目の発生を抑えることができる。
【0066】
図10において、分離ニップ案内部127aは、案内ユニット板127の本体を構成する板金の一部を曲げ加工することによって形成されたものである。また、2つの撓み付与部127bの根本部分も、案内ユニット板127の本体を構成する板金の一部を曲げ加工することによって形成されたものである。但し、撓み付与部材127bにおいて、記録シートSの裏面と接触する先端部は、本体の板金を曲げ加工したものではなく、板金とは別体で形成されている。
【0067】
本発明者らは、開発中の機種において、図示の撓み付与部127bとは異なり、その根本から先端に至るまでの全領域を板金の曲げ加工によって形成したものを用いていた。そして、この開発中の機種では、これまで説明してきた「押し返しによる不送り」や「突き当たりによる不送り」の他に、「スリップによる不送り」を引き起こし易かった。この「スリップによる不送り」は、次のようにして発生するものである。即ち、撓み付与部が記録シートSを給送ローラに向けて強く押し付けることで、記録シートSに対して大きな搬送抵抗を付与して、記録シートSを給送ローラの表面上でスリップさせる。このスリップにより、記録シートSを搬送方向に送ることができなくなって「スリップによる不送り」を発生させるのである。
【0068】
そこで、本プリンタにおいては、
図14に示されるように、撓み付与部127bの全域のうち、記録シートに接触する先端部127dを、板金からなる本体部127cとは別の材料で形成している。具体的には、かかる材料として、可撓性の部材である樹脂シートを用いている。この樹脂シートは、ある程度の力が加わることで、自在に撓むことができる。但し、記録シートSとして、薄紙などの腰の弱いものが用いられた場合には、記録シートSに接触した際には、自らの腰の強さが記録シートSの腰の強さよりも勝ることから、撓まずに真っ直ぐな姿勢を維持する。これにより、腰の弱い記録シートSを
図13のように撓ませてその波打ちを抑えることで、折り目の発生を抑えることができる。一方、記録シートSとして、厚紙などの腰の強いものが用いられた場合には、
図15に示されるように、記録シートSとの接触に伴って、自らがシート搬送方向下流側に向けて柔軟に撓む。このように撓むことで、分離ニップ内の記録シートを給送ローラ35に向けて押さえる力を低減して搬送抵抗を減らすことで、腰の強い記録シートSの給送ローラ35表面上におけるスリップの発生を抑える。これにより、腰の強い記録シートSの「スリップによる不送り」の発生を抑えることができる。
【0069】
図16は、分離ニップとその周囲構成とを拡大して示す拡大構成図である。同図において、矢印は、可動底板101の底板パッド102から分離ニップに至るまでの記録シートSの搬送経路を示している。図示しない記録シートはシート状の厚みの小さなものであるので、ほぼ矢印の位置を移動して分離ニップに進入する。案内ユニット板127の撓み付与部127bにおいて、板金からなる本体部127cは、矢印で示される搬送経路よりも下側(分離ローラ121側)に存在しているので、記録シートSが本体部127cに接触することは希である。これに対し、樹脂シートからなる先端部127aは、搬送経路よりも重力方向上方に大きく突出している(給送ローラ35側に大きく突出している)ことがわかる。このように、先端部127dが矢印で示される搬送経路よりも重力方向上方に大きく突出することで、記録シートSに確実に接触して記録シートSに撓みからなる皺を発生させることができる。これに対し、金属からなる本体部127cが搬送経路よりも重力方向下方に位置していることで、剛性の高い本体部127cによって記録シートSを給送ローラ121に向けて押してしまうことを防止することができる。なお、同図に示される撓み付与部127bは、ローラ軸線方向において、給送ローラ35のローラ部や、分離ローラ121のローラ部よりも図中の手前側に位置している。このため、ローラ軸線方向において、撓み付与部127bの位置では記録シートが撓み付与部127bによって搬送経路よりも上方に持ち上げられるが、分離ニップの位置では記録シートが搬送経路の位置で移動する。
【0070】
図17は、案内ユニット板127における撓み付与部127bを示す分解斜視図である。撓み付与部127bは、本体部127cを形成する本体形成部材たる板金と、先端部127dを形成する先端部形成部材たる樹脂シートとによって形成されている。先端部127dの材料として、本体部127cの板金とは異なる樹脂シート等を用いることで、先端部127dに対して所望の可撓性を設計通りに容易に発揮させることができる。
【0071】
図18に示されるように、撓み付与部127bの本体部127cを形成するための板金と、先端部12
7dを形成するための樹脂シートとには、それぞれ、立ち上がり部α、屈折部β、及び先端延在部γが設けられている。立ち上がり部αは、重力方向下方から上方に向けて立ち上がっている部分である。また、屈折部βは、立ち上がり部αの上端の位置でシート搬送方向における給紙カセット側から分離ニップ側に向けて屈折する部分である。また、先端延在部γは、屈折部βから記録シートSに接触する先端側に向けて延在する部分である。
【0072】
図19は、案内ユニット板127を示す側面図である。同図において、図中左側から
右側に向かう方向がシート搬送方向である。そして、案内ユニット板127よりも図中の右側の領域は、シート搬送方向における案内ユニット板127を境にした分離ローラ側の領域である。また、案内ユニット板127よりも図中の左側の領域は、シート搬送方向における案内ユニット板127を境にした給紙カセット側の領域である。本体形成部材たる板金の立ち上がり部αにおける分離ニップ側の面には、先端部形成部材たる樹脂シートの立ち上がり部αにおける給紙カセット側の面が両面テープ127eによって固定されている。また、樹脂シートの立ち上がり部αにおける分離ローラ側の面は、両面テープ127fによって分離ローラユニットの図示しない上カバー(
図8の126)に固定されている。それらの固定により、撓み付与部(127b)の樹脂シートからなる先端部(127d)が、板金からなる本体部(127c)にしっかりと固定されている。
【0073】
但し、樹脂シートの先端延在部γは板金やその他の部材に固定されていない。樹脂シートの先端延在部γは、板金の先端延在部γよりも重力方向の下方に位置した状態で、樹脂シートの屈折部βに方持ち支持されている。これにより、撓み付与部127bの先端部127dとして機能する樹脂シートの先端延在部γが、樹脂シートの屈折部βを軸にして自在に揺動(撓む)ことができる。そして、樹脂シートの先端延在部γを板金の先端延在部γの下面に貼り付ける場合に比べて、先端部127dを良好に撓ませることができる。また、樹脂シートの先端延在部γを板金の先端延在部γの下面に貼り付ける場合には、樹脂シートの屈折部βを境にして樹脂シートの先端延在部γと立ち上がり部αとをそれぞれ板金に貼り付けることになるが、この場合、作業効率が著しく悪化する。樹脂シートの貼り付け箇所を立ち上がり部αの1箇所にすることで、作業効率の悪化を回避することができる。
【0074】
図18において、撓み付与部(
図17の127b)の先端部127cを形成する、樹脂シートの先端延在部γは、角がカーブ状に面取りされている。この面取りにより、先端部127cの角を記録シートSに擦ることによる記録シートSの傷付きの発生を防止することができる。また、撓み付与部の本体部(
図17の127c)を形成する板金の先端延在部γも、角がカーブ状に面取りされている。これにより、腰の強い記録シートSが先端部127cを撓ませて本体部に接触した場合であっても、本体部の角で記録シートSを擦るようなことがなくなる。よって、腰の強い記録シートSを板金からなる本体部の角で擦ることによる同記録シートSの傷付きの発生も回避することができる。特に、腰の強い記録シートSのジャム処理時に、作業者が腰の強い記録シートSを強く引っ張って機外に取り出す際に、記録シートSを板金からなる本体部に擦っても、記録シートに板金の角を当てないので傷付きの発生を回避することができる。
【0075】
図13に示したように、本プリンタにおいては、案内ユニット板127に、記録シートSのシート搬送方向(図中矢印方向)と直交する方向(以下、搬送直交方向という)における互いに異なる箇所に接触する2つの撓み付与部127bを設けている。これにより、記録シートSに対して搬送直交方向に並ぶ2本の皺を発生させることで、記録シートSの波打ち形成をより強い力で阻害する。よって、記録シートSの折り目の発生をより確実に抑えることができる。
【0076】
ところで、撓み付与部127bによって付与した撓みによって記録シートSに発生させた皺を、分離ニップに進入させると、記録シートSに折り目を付けてしまうおそれがある。折り目の発生を回避するために設けた撓み付与部127bにより、折り目の発生を却って助長してしまうおそれが生ずるのである。そこで、本プリンタにおいては、次のような構成を採用している。即ち、
図10において、分離ローラ121は、その円柱状のローラ部だけが描かれている。2つの撓み付与部127bのうち、一方は、分離ローラ121のローラ部よりも回転軸線方向(矢印B方向)の一端側(図中右側)にずれた位置に設けられている。また、他方は、分離ローラ121のローラ部よりも回転軸線方向の他端側(図中左側)にずれた位置に設けられている。このように2つの撓み付与部127bが配設されることで、
図13において撓み付与部127bによってシートに発生する2本の皺は、何れも回転軸線方向において分離ニップよりも外側に位置する。これにより、撓み付与部127bによってシートに発生させた皺を分離ニップに進入させることによる折り目の発生を回避することができる。
【0077】
図16に示されるように、案内ユニット板127において、分離ニップ案内部127a先端部である案内部の延在方向と、撓み付与部127bの先端部127dの延在方向とは互いに異なっている。このように、互いに延在方向を異ならせることで、案内ユニット板127に対して次の2つの機能をそれぞれ良好に発揮させることができる。即ち、分離ニップ案内部材127aに対して記録シートSを分離ニップに案内する機能、及び、シート波打ちを阻止するためのシート皺を撓み付与部127bによって記録シートSに発生させる機能である。本プリンタにおいては、分離ニップ案内部127a先端部である案内部の延在方向を、撓み付与部127bの先端部127dの延在方向よりも水平方向に近づけて寝かせることで、それら2つの機能をそれぞれ独立させて良好に発揮させている。
【0078】
これまで、本プリンタにおいて発生する可能性のある不送りとして、「押し返しによる不送り」、「突き当たりによる不送り」、及び「スリップによる不送り」の3つを説明してきたが、もう1つ別の不送りも発生する可能性がある。「シートカールによる不送り」である。この「シートカールによる不送り」は、
図20に示されるように、給紙カセットの中で記録シートSが搬送方向(図中矢印方向)と直交する方向の両端部を中央部よりも鉛直方向の上方に突き出すようにカールすることによって発生するものである。このようにカールした記録シートSは、
図21に示されるように、給紙カセット100から送り出された直後に、上方に突き出している両端部を、給紙ローラユニットケース39に突き当てることで、分離ニップに向けて移動することが困難になる。これにより、「シートカールによる不送り」を引き起こしてしまうのである。
【0079】
そこで、本プリンタにおいては、
図22に示されるように、給紙カセット100の可動底板101にカール矯正体104を設けている。このカール矯正体104は、可動底板101のシート載置面よりも上方に突出するように配設され、給紙カセット100内の記録シートSにおけるシート送り出し方向(図中矢印方向)と直交する方向(以下、送り出し直交方向という)の中央部に接触する。この接触により、記録シートSの送り出し直交方向における中央部を上方に向けて押して記録シートSのカールを矯正する。
【0080】
カール矯正体104が設けられていない場合には、
図23に示されるように、給紙カセット100内の記録シートSの先端部の送り出し直交方向における両端部がシート載置面よりも上方に突き出している。そして、このように突き出している部分が、給送ローラユニットケースに突き当たってしまう。これに対し、本プリンタのように、カール矯正体104が設けられていると、
図24に示されるように、給紙カセット100内に収容されている記録シートSの先端部の送り出し直交方向における全領域がシート載置面に密着する。この状態で給紙カセット100から送り出されることで、給送ローラユニットケースに突き当たることなく、分離ローラ内に進入することができるようになる。
【0081】
カール矯正体104は、
図25に示されるように、可動底板101に対して着脱可能に構成されている。また、
図26に示されるように、可動底板101に係合した状態で、可動底板101に保持されながらシート送り出し方向(図中矢印A方向)やその逆方向に沿ってスライド移動するようになっている。また、
図27に示されるように、可動底板101に係合する係合部として、第1係合部104a、第2係合部104b、及び第3係合部104cの3つを有している。第1係合部104aは、3つの係合部のうち、可動底板101に係合した状態のカール矯正体104におけるシート載置面からの突出量を最も小さくするように、可動底板101に係合するものである。また、第2係合部104bは、3つの係合部のうち、可動底板101に係合した状態のカール矯正体104におけるシート載置面からの突出量を2番目に小さくするように、可動底板101に係合するものである。また、第3係合部104cは、3つの係合部のうち、可動底板101に係合した状態のカール矯正体104におけるシート載置面からの突出量を最も大きくするように、可動底板101に係合するものである。
【0082】
カール矯正体104が記録シートSの姿勢を矯正する度合いは、カール矯正体104の可動底板101上におけるシート送り出し方向の位置や、カール矯正体104のシート載置面からの突出量によって異なってくる。そして、先に
図24に示されたように、給紙カセット100内に収容されている記録シートSの先端部の送り出し直交方向における全領域をシート載置面に密着させれば、記録シートSの給送ローラユニットケースへの突き当たりを回避することが可能である。即ち、「突き当たりによる不送り」の発生を回避することができる。但し、記録シートSの姿勢を
図24に示される姿勢に矯正するためには、前記位置や前記突出量を記録シートSの腰の強さに応じた値に設定する必要がある。そこで、カール矯正体104を
図26に示されるようにスライド移動可能に可動底板101に係合させ、且つ、
図27に示されるように複数の係合部をカール矯正体104に設けているのである。これにより、前記位置や前記突出量をそれぞれ記録シートSの腰の強さに見合った値に微調整して、「突き当たりによる不送り」の発生を確実に回避することができる。
【0083】
図28は、カール矯正体104の変形例を可動底板101等とともに示す斜視図である。図示のように、回転可能なコロ104dをカール矯正体104に設け、それを記録シートSに重力方向下方から押し当てるようにしてもよい。最下位の記録シートSが給紙カセットから送り出される際に、コロ104dを記録シートSの移動に追従させて従動回転させることで、カール矯正体104と記録シートSとの摺擦を回避する。これにより、摺擦に起因するシート搬送抵抗の増加や傷付きの発生を回避することができる。
【0084】
図34は、給送ローラ35の要部を示す斜視図である。給送ローラ35は、樹脂製のハブ35aと、弾性層35eと、図示しない金属製の回転軸部材とを有している。そして、ハブ35aは、内輪35bと、これを内包する外輪35cと、内輪35bの外周面から放射状に延びて外輪35cの内周に繋がる6つのリブ35dとを具備している。弾性層35eは、ゴム等の弾性材料からなり、ハブ35aの外輪35cの外周面上に被覆されている。図示しない回転軸部材は、ハブ35aの内輪35bの内部空間に勘入された状態で、その長手方向の両端部がそれぞれ図示しない軸受けに回転可能に受けられている。
【0085】
図示のような中空のリブ構造で且つ樹脂製のハブ35aは、成型が容易であることから、低コストで製造することが可能である。しかしながら、軽量であるが故に、回転に伴って高い周波数で振動して騒音を発生させるという不具合がある。本発明者らは、その不具合を軽減するために、
図35に示されるローラ935を試作した。このローラ935のハブ935aは、内輪350bや外輪350cの他に、それらの間に配設された中輪350fを具備している。リブ350dは、内輪350bの外周面から延びて中輪350fの内周面に繋がっている。中輪350fと外輪350cとの間は、リブ350dを具備しないリング状の空間になっているが、その空間内には、金属製のおもり350gが圧入されている。このおもり350gによってローラ935の荷重を増やすことで、給送ローラ935の振動を抑えて、騒音の発生を低減することができる。なお、
図35は、ローラ935を回転軸線方向の一端側から示す側面図であり、ローラ935の断面を示すものではないが、見易くするために、おもり350gにハッチングを付している。後述する
図36も同様である。
【0086】
ところが、かかる構成では、次のような新たな課題が発生してしまった。即ち、ローラ935は、騒音の軽減を重視した仕様の機種ではおもり350gを嵌め込んで使用する一方で、軽量化を重視した仕様の機種ではおもり350gを嵌め込まないで使用するというように、汎用性に優れたものであることが望ましい。ところが、おもり350gを嵌め込まない場合には、変形し易くなってしまうことが解った。具体的には、おもり350gを嵌め込まない場合には、中輪935fと外輪935cとの間が中空の状態になる。この中空におもり350gを入れることを想定していることから、中輪935fと外輪935cとの間にはリブを設けることができない。このため、リブを設ける場合に比べて、外輪935cが放射方向に変形し易くなる。特に、他のローラを押し当ててニップを形成する場合には、ニップ圧によって外輪935cが徐々に回転中心に向けて倒れるように変形してしまうおそれがある。また、おもり350gを嵌め込む場合には、おもり350gの圧入によって外輪935cが外側に向けて膨らんで、ローラ935の外径を大きくしてしまうことも考えられる。
【0087】
そこで、実施形態に係るプリンタの給送ローラ35においては、ローラ935のような中輪935fを設けた構成を採用せず、次のような構成を採用している。
図36は、本プリンタの給送ローラ35の要部を回転軸線方向の一端側から示す側面図である。給送ローラ35においては、互いに隣り合う2つのリブ35dの間におもり35gを嵌め込んでいる。リブ35dで仕切られる空間(以下、リブ仕切り空間という)は全部で6つあるが、そのうちの3つのリブ仕切り空間の中にそれぞれおもり35gを入れている。重量の極端な偏りが生じないように、回転方向において、おもり35gを入れたリブ仕切り空間と、入れていないリブ仕切り空間とを交互に並べるようにしている。かかる構成では、外輪35cをリブ35dでしっかりと補強していることから、おもり35gを嵌め込まない場合であっても、外輪35cを変形させてしまうことがない。よって、給送ローラ35の汎用性を高めることができる。また、おもり35gを嵌め込んだ場合でも、リブ35dで補強している外輪35cを外側に向けて膨らますことがないことから、給送ローラ35の外径の拡大を回避することもできる。
【0088】
図37は、おもり35gを拡大して示す拡大構成図である。図中矢印A方向は、図示しない給送ローラの回転方向を示している。また、図中矢印B方向は回転軸線方向を示している。おもり35gは、回転方向の両端にそれぞれ突起zを具備している。この突起zは、おもり35gの回転軸線方向の全域に渡って延在している。
【0089】
図38は、給送ローラ35のリブ仕切り空間を部分的に拡大して示す部分側面図である。おもり35gについては、リブ仕切り空間内でがたつかせないようにしっかりと固定することが望ましい。リブ仕切り空間内のおもり35gには遠心力によって遠心方向に向かう力が働くことから、おもり35gを外輪35cの内周面から離間させた位置に固定していると、大きな遠心力によっておもり35gの固定を解いてしまうおそれがある。このため、おもり35gを外輪35cの内周面に密着させた状態で固定している。具体的には、同図において、Lbは、突起位置リブ間距離を示している。これは、リブ仕切り空間に入れられたおもり35gの2つの突起(z)における一方が、リブ仕切り空間を形成している2つのリブ35dにおける一方に接触する位置と、他方の突起が他方のリブ35dに接触する位置との距離である。また、同図において、Laは、一方の突起の先端と、他方の突起の先端との距離としての突起間距離を示している。図示のように、突起間距離Laは、突起位置リブ間距離Lbよりも大きくなっている。同図では、便宜上、突起をリブ35dの内部に食い込ませているような状態が描かれているが、実際には、このような食い込みよりも、リブ35dの撓みにより、突起位置リブ間距離Lbよりも大きな突起間距離Laのおもり35gがリブ仕切り空間内に収まることができている。これにより、おもり35gがガタツキなくリブ空間内にしっかりと嵌合している。なお、突起の数を1つだけにしても、その突起をリブ35dに確実に突き当て得る形状におもり35gを形成することで、おもり35gを仕切り空間内にしっかりと嵌合せしめることが可能である。
【0090】
突起については、リブ35dにおけるローラ半径方向の中央部に突き当てる位置に設けることが望ましい。こうすることで、突起の突き当てによってリブ35dを容易に撓ませて、おもり35gの固定操作性を向上させることができる。また、突起の突き当てによってリブ35dを比較的大きく撓ませることで、温度変化によるおもり35gの伸縮にかかわらず、おもり35gをリブ仕切り空間内にガタツキ無く固定することができる。
【0091】
おもり35gの突き当てによってリブ35dを撓ませる都合上、おもり35gを入れるリブ仕切り空間の隣りに配設されたリブ仕切り空間には、おもり35gを入れない空の空間にすることが望ましい。また、円方向の重量バランスをできるだけ均一にする狙いで、おもり35gを入れるリブ仕切り空間と、おもり35gを入れない仕切り空間とを交互に並べることが望ましい。そして、それらを同時に実現すべく、リブ仕切り空間の数については、偶数にすることが望ましい。
【0092】
図38において、樹脂製のハブは、モールド成形時に発生したゲート円部35hを具備している。このようなゲート円部35hが生じる場合であっても、図示のように、それを避けるような形状でおもり35gを形成することで、ゲート円部35hを切削等によって除去することなく、おもり35gをリブ仕切り空間にセットすることができる。なお、互いに隣り合うリブ35dの間を架橋するサブリブを設けて、リブ仕切り空間を半径方向の内側の空間と外側の空間とに仕切ってもよい。この場合、比較的小さなおもり35gで比較的大きな騒音低減効果を得る狙いで、外側の空間におもり35gを入れることが望ましい。
【0093】
おもり35gの突起については、
図37に示されるように、おもり35gの回転軸線方向における全域に渡って延在させることが望ましい。こうすることで、おもり35gをリブ仕切り空間内に挿入する際に、挿入の途中で突起をリブ35dに引っ掛けてしまうことがなくなることから、おもり35gの挿入性を向上させることができる。
【0094】
図39は、変形例に係るプリンタの給送ローラ35の要部を回転軸線方向の一端側から示す側面図である。この給送ローラ35では、おもり35gに突起が設けられておらず、外輪35cに密着させたおもり35gと、2つのリブ35dとの間に、それぞれ隙間が形成される。その隙間を接着剤35iで埋めることで、おもり35gをリブ35dに固定している。接着剤35iとしては、硬化後に弾性を有すことで、環境変化による金属体と樹脂材のハブとの収縮率差によるハガレを防止する性質のものが用いられている。
【0095】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、自らの内部に記録シート(例えば記録シートS)を収容するシート収容手段(例えば給紙カセット100)と、前記シート収容手段に収容される記録シートが押し当てられた給送体(例えば給送ローラ35)の表面移動によって前記シート収容手段内から送り出した記録シートを、前記給送体及び分離体(例えば分離ローラ121)の当接による分離ニップに挟み込みながら、前記分離ニップ内で複数枚に重なっている記録シートのうち、前記給送体に直接接触している記録シートだけを分離する分離給送手段(例えば給送ローラ35及び分離ローラユニット120の組み合わせ)と、前記分離給送手段によって1枚に分離された記録シートに画像を形成する記画像形成手段とを備える画像形成装置において、前記分離ニップに進入する前の記録シートを自らの接触によって撓ませてその記録シートに搬送方向に沿って延在する皺を発生させる撓み付与体(例えば撓み付与部127b)を設け、且つ、前記撓み付与体における記録シートに接触する先端部(例えば127d)を可撓性の部材(例えば樹脂シート)で構成したことを特徴とするものである。
【0096】
かかる構成では、ピックアップレス方式の画像形成装置において、撓み付与体が分離ニップに進入する前の記録シートに搬送方向に沿って延在する皺を発生させることで、その記録シートにおける搬送方向と直交する方向の撓みの発生を阻害する。
図31に示されるような記録シートの波打ちは、記録シートが搬送方向と直交する方向の撓みを複数箇所に渡って発生させたものであるので、その撓みの発生が阻害されることで波打ちの発生が阻害される。このように、分離ニップの周辺における記録シートの波打ちの発生を阻害することで、腰の弱い記録シートの折り目の発生を抑えることができる。
【0097】
また、態様Aにおいては、撓み付与体の可撓性の部材からなる先端部が分離ニップの手前で腰の強い記録シートに接触すると柔軟に撓むことで、分離ニップの手前における撓み付与体による記録シートの持ち上げ量を低減する。これにより、分離ニップよりも手前側で給送体の表面に記録シートを押し当ててしまう面積を低減して腰の強い記録シートの給送体表面上におけるスリップの発生を抑えることで、スリップによる記録シートの不送りの発生を抑えることができる。
【0098】
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記分離ニップに進入する前の記録シートに対して前記先端部を重力方向下方から接触させるように前記撓み付与体を配設し、且つ、前記撓み付与体の全域のうち、前記先端部だけを前記シート収容手段内から前記分離ニップに向けての記録シートの搬送経路よりも重力方向上方に突出させたことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、撓み付与体の先端部により、搬送方向に延在する皺を記録シートに確実に発生させて、「スリップによる不送り」の発生を確実に抑えることができる。
【0099】
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、少なくとも、本体を形成する本体形成部材(例えば板金)と、前記本体に固定された状態で前記先端部を形成する先端部形成部材(例えば樹脂シート)とによって前記撓み付与体を形成したことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、撓み付与体の先端部に対して所望の可撓性を設計通りに容易に発揮させることができる。
【0100】
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、重力方向下方から上方に向けて立ち上がる立ち上がり部(例えば立ち上がり部α)と、前記立ち上がり部の上端の位置でシート搬送方向における前記シート収容手段の側から前記分離ニップの側に向けて屈折する屈折部(例えば屈折部β)と、前記屈折部から先端側に向けて延在する先端延在部(例えば先端延在部γ)との組み合わせを、前記撓み付与体における前記本体形成部材及び前記先端部形成部材にそれぞれ設け、前記本体形成部材の前記立ち上がり部のシート搬送方向における分離ニップ側の面に、前記先端部形成部材の前記立ち上がり部のシート搬送方向におけるシート収容手段側の面を固定し、且つ、前記先端部形成部材の前記先端延在部を前記本体形成部材の前記先端延在部よりも重力方向の下方に位置させた状態で前記本体形成部の前記先端延在部に固定せずに前記先端部形成部材の前記屈折部に片持ち支持させたことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、先端部形成部材の先端延在部を本体形成部の先端延在部の下面に貼り付ける場合に比べて、撓み付与体の先端部を良好に撓ませることができる。これにより、「スリップによる不送り」の発生を良好に抑えることができる。
【0101】
[態様E]
態様Eは、態様A~Dの何れかにおいて、前記撓み付与体として、記録シートの搬送方向と直交する方向における互いに異なる箇所に接触する複数の前記撓み付与体を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、複数の撓み付与体により、記録シートに対して搬送直交方向に並ぶ複数の皺を発生させることで、記録シートの波打ち形成をより強い力で阻害するので、記録シートの折り目の発生をより確実に抑えることができる。
【0102】
[態様F]
態様Fは、態様Eにおいて、前記分離体として、回転可能な分離ローラを用い、少なくとも1つの前記撓み付与体を前記分離ローラの円柱状のローラ部よりも回転軸線方向の一端側にずれた位置に設けるとともに、少なくとも他の1つの前記撓み付与体を前記ローラ部よりも回転軸線方向の他端側にずれた位置に設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、撓む付与体によって発生させたシート皺に起因する記録シートの折り目の発生を抑えることができる。
【0103】
[態様G]
態様Gは、態様A~Fの何れかにおいて、前記分離ニップに進入する前の記録シートに接触することで、前記分離ニップに進入する前の記録シートの前記分離体への突き当たりを阻止しながら、前記記録シートを前記分離ニップに向けて案内する分離ニップ案内体(例えば分離ニップ案内部127a)を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、記録シートの分離体への突き当たりを分離ニップ案内体によって阻止することで、「突き当たりによる不送り」の発生を回避することができる。
【0104】
[態様H]
態様Hは、態様Gにおいて、前記分離ニップ案内体の案内部の延在方向と、前記撓み付与体の前記先端部の延在方向とを互いに異ならせたことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、次の2つの機能をそれぞれ独立させて良好に発揮することができる。即ち、分離ニップ案内体に対して記録シートを分離ニップに案内する機能、及び、シート波打ちを阻止するためのシート皺を撓み付与体によって記録シートに発生させる機能である。
【0105】
[態様I]
態様Iは、態様A~Hの何れかにおいて、前記シート収容手段のシート載置面よりも突出するように配設され、前記シート収容手段内の記録シートにおけるシート送り出し方向と直交する方向の中央部に接触することで、記録シートのカールを矯正するカール矯正体(例えばカール矯正体104)を、前記シート収容手段に対して着脱可能に設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、「シートカールによる不送り」の発生を抑えることができる。
【0106】
[態様J]
態様Jは、態様Iにおいて、前記カール矯正体の前記シート載置面からの突出量を互いに異ならせるように前記シート収容手段にそれぞれ係合する複数の係合部(例えば第1係合部104a、第2係合部104b、第3係合部104c)を前記カール矯正体に設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、カール矯正体のシート載置面からの突出量を記録シートの腰の強さに見合った値に微調整して、「突き当たりによる不送り」の発生を確実に回避することができる。
【0107】
[態様K]
態様Kは、態様A~Jの何れかにおいて、前記給送体として、内輪(例えば内輪35b)、前記内輪を内包する外輪(例えば外輪35c)、前記内輪の外周から放射状に延びて前記外輪の内周に繋がる複数のリブ(例えばリブ35d)、及び前記外輪の外周上に被覆された弾性体からなる弾性層(例えば弾性層35e)を具備する回転可能な給送回転体(例えば給送ローラ35)を用い、前記外輪の内側に配設された複数の前記リブの間の空間におもり(例えば35g)を固定したことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、給送回転体の汎用性を高めるとともに、おもりを入れることによる給送回転体の外径の拡大を回避することができる。
【0108】
[態様L]
態様Lは、態様Kであって、前記おもりが、給送回転体回転方向における一端面と、他端面とにそれぞれ突起を有し、前記空間を挟む位置にある2つの前記リブに一方の2つの前記突起における一方を接触させ、他方の前記リブに他方の前記突起を接触させ、且つ、前記おもりの2つの前記突起とは異なる箇所を前記外輪の内周面に接触させる大きさ及び形状であることを特徴とするものである。かかる構成では、空間内でのおもりのガタツキを回避することができる。
【0109】
[態様M]
態様Mは、態様Lにおいて、前記2のリブの一方における前記突起との接触位置と、他方の前記リブにおける前記突起との接触位置とを直線で結ぶ突起位置リブ間距離を、2つのリブにおける先端間の距離よりも小さくしたことを特徴とするものである。かかる構成では、おもりを空間内に圧入してしっかりと固定することができる。
【0110】
[態様N]
態様Nは、態様Mにおいて、前記突起を前記おもりにおける給送体回転軸線方向の全域に渡って延在させたことを特徴とするものである。かかる構成では、おもりをリブ間の空間内に挿入する際に、挿入の途中で突起をリブに引っ掛けてしまうことがなくなることから、おもりの挿入性を向上させることができる。
【0111】
[態様O]
態様Oは、態様Kにおいて、前記おもりを接着剤によって前記リブに固定したことを特徴とするものである。かかる構成では、リブをおもりの圧入によって変形させることなく、おもりをリブに固定することができる。
【0112】
[態様P]
態様Pは、態様K~Oの何れかにおいて、前記おもりを、前記内輪、前記外輪、及び前記リブを具備するハブの成形時に形成されるゲート部を避ける形状にしたことを特徴とするものである。かかる構成では、ゲート部を切削等によって除去することなくおもりを給送回転体の空間内に入れることで、製造コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0113】
1:感光体(画像形成手段の一部)
2:クリーニングブレード(画像形成手段の一部)
3:回収スクリュウ(画像形成手段の一部)
4:帯電ローラ(画像形成手段の一部)
7:潜像書込装置(画像形成手段の一部)
8:現像装置(画像形成手段の一部)
9:トナーカートリッジ(画像形成手段の一部)
10:転写ローラ(画像形成手段の一部)
35:給送ローラ(給送体、分離給送手段の一部)
100:給紙カセット(シート収容手段)
104:カール矯正体
104a:第1係合部
104b:第2係合部
104c:第3係合部
120:分離ローラユニット(分離給送手段の一部)
127:案内ユニット板
127a:分離ニップ案内部(分離ニップ案内体)
127b:撓み付与部(撓み付与体)
127c:本体部
127d:先端部
α:立ち上がり部
β:屈折部
γ:先端延在部
S:記録シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0114】