(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】ろ過装置、精製装置、薬液の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/18 20060101AFI20220408BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20220408BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20220408BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20220408BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20220408BHJP
B01D 71/28 20060101ALI20220408BHJP
B01D 71/32 20060101ALI20220408BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20220408BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20220408BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20220408BHJP
B01D 71/82 20060101ALI20220408BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20220408BHJP
B01D 65/06 20060101ALI20220408BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
B01D61/18
B01D61/14 500
B01D61/58
B01D69/02
B01D71/26
B01D71/28
B01D71/32
B01D71/36
B01D71/56
B01D71/68
B01D71/82 500
B01D69/12
B01D65/06
B01D69/10
(21)【出願番号】P 2020508204
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2019009500
(87)【国際公開番号】W WO2019181580
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2018054993
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大松 禎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智美
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043697(WO,A1)
【文献】特開2016-073922(JP,A)
【文献】特開2013-218308(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188209(WO,A1)
【文献】特開2017-029975(JP,A)
【文献】特開2017-039117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C02F 1/44
C08J 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入部と、
流出部と、
フィルタAと、
前記フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、を有し、
前記フィルタA及び前記フィルタBは、前記流入部及び前記流出部の間に直列に配置され、前記流入部から前記流出部にいたる流通路を有する、被精製液を精製して、薬液を得るためのろ過装置であって、
前記フィルタAは、
ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材と、前記多孔質基材を覆うように形成されたペルフルオロスルホン酸ポリマーを含有する非架橋コーティングとを有する第1多孔質膜、及び、
ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンを含有する第2多孔質膜、
からなる群より選択される少なくとも1種を含
み、
前記フィルタBは、前記流通路上において前記フィルタAの上流側に配置されたフィルタBUを少なくとも1つ含み、
前記フィルタBUが、陰イオン交換基を有する樹脂を含有する、ろ過装置。
【請求項2】
流入部と、
流出部と、
フィルタAと、
前記フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、を有し、
前記フィルタA及び前記フィルタBは、前記流入部及び前記流出部の間に直列に配置され、前記流入部から前記流出部にいたる流通路を有する、被精製液を精製して、薬液を得るためのろ過装置であって、
前記被精製液のpHが0~9であり、
前記フィルタAは、
ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材と、前記多孔質基材を覆うように形成されたペルフルオロスルホン酸ポリマーを含有する非架橋コーティングとを有する第1多孔質膜、及び、
ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンを含有する第2多孔質膜、
からなる群より選択される少なくとも1種を含む、ろ過装置。
【請求項3】
前記フィルタBは、前記流通路上において、前記フィルタAの下流側に配置されたフィルタBDを少なくとも1つを含む、請求項1
又は2に記載のろ過装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記フィルタBDは、20nm以下の孔径を有する、請求項
3に記載のろ過装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記フィルタBDがポリオレフィン、ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、ポリスルホン、及び、ポリエーテルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項
3又は
4に記載のろ過装置。
【請求項6】
前記流通路上において、最も下流側に配置された前記フィルタBDが、10nm以下の孔径を有し、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、及び、ナイロンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項
3~
5のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項7】
少なくとも1つの前記フィルタBDのうち、いずれかのフィルタBDからなる基準フィルタの下流側から、前記基準フィルタの上流側へと、前記被精製液を返送可能な返送流通路を有する、請求項
3~
6のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項8】
前記フィルタBは、前記流通路上において前記フィルタAの上流側に配置されたフィルタBUを少なくとも1つ含む、請求項
2に記載のろ過装置。
【請求項9】
少なくとも1つの前記フィルタBUは、10nm以上の孔径を有する、請求項
1又は8に記載のろ過装置。
【請求項10】
少なくとも1つの前記フィルタBUは、20nm以上の孔径を有する、請求項
1、8又は
9に記載のろ過装置。
【請求項11】
前記フィルタBUが、イオン交換基を有する樹脂を含有する、請求項
8に記載のろ過装置。
【請求項12】
前記イオン交換基が、陰イオン交換基を含む、請求項
11に記載のろ過装置。
【請求項13】
前記流通路上に、前記フィルタAと直列に配置されたタンクを更に有する請求項1~
12のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項14】
前記タンクに対して前記流通路の上流側に、
前記タンクと直列に配置された、孔径10nm以上のフィルタCを更に有する請求項
13に記載のろ過装置。
【請求項15】
前記タンクに対して前記流通路の上流側に、
前記タンクと直列に配置された、孔径20nm以上のフィルタCを更に有する請求項
13に記載のろ過装置。
【請求項16】
前記流通路上における、前記フィルタAの下流側から、前記フィルタAの上流側へと、
前記被精製液を返送可能な返送流通路を有する、請求項1~
15のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項17】
前記被精製液のpHが0~9である、請求項
1に記載のろ過装置。
【請求項18】
前記薬液が、洗浄液、エッチング液、リンス液、前処理液、及び、レジスト液からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~
17のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項19】
前記フィルタAの臨界湿潤表面張力が27×10
-5N/cm以上である、請求項1~
18のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項20】
前記フィルタAの臨界湿潤表面張力が30×10
-5N/cm以上である、請求項1~
19のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項21】
被精製液を精製して、半導体基板製造用の薬液を製造するためのろ過装置であって、
流入部と、流出部と、
フィルタAと、前記フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、を有し、
前記フィルタA及び前記フィルタBは、前記流入部及び前記流出部の間に直列に配置され、前記流入部から前記流出部にいたる流通路を有するろ過装置であって、
前記フィルタAは、
ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一部を覆うように形成されたペルフルオロスルホン酸ポリマーを含有する非架橋コーティングとを有する第1多孔質膜、及び、
ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンを含有する第2多孔質膜、からなる群より選択される少なくとも1種を含
み、
前記フィルタBは、前記流通路上において前記フィルタAの上流側に配置されたフィルタBUを少なくとも1つ含み、
前記フィルタBUが、陰イオン交換基を有する樹脂を含有する、ろ過装置。
【請求項22】
被精製液を精製して、半導体基板製造用の薬液を製造するためのろ過装置であって、
流入部と、流出部と、
フィルタAと、前記フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、を有し、
前記フィルタA及び前記フィルタBは、前記流入部及び前記流出部の間に直列に配置され、前記流入部から前記流出部にいたる流通路を有するろ過装置であって、
前記被精製液のpHが0~9であり、
前記フィルタAは、
ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一部を覆うように形成されたペルフルオロスルホン酸ポリマーを含有する非架橋コーティングとを有する第1多孔質膜、及び、
ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンを含有する第2多孔質膜、からなる群より選択される少なくとも1種を含む、ろ過装置。
【請求項23】
請求項1~
22のいずれか一項に記載のろ過装置と、
前記ろ過装置の前記流入部に接続された少なくとも1つの蒸留器と、
を有する精製装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つの蒸留器は、直列に接続された複数の蒸留器を含む、
請求項
23に記載の精製装置。
【請求項25】
被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、請求項1~
22のいずれか一項に記載のろ過装置を用いて、被精製液を精製して薬液を得る、ろ過工程を有する、薬液の製造方法。
【請求項26】
前記ろ過工程の前に、前記フィルタA、及び、前記フィルタBを洗浄するフィルタ洗浄工程を更に有する、請求項
25に記載の薬液の製造方法。
【請求項27】
前記ろ過工程の前に、前記ろ過装置の接液部を洗浄する装置洗浄工程を更に有する、請求項
25又は
26に記載の薬液の製造方法。
【請求項28】
被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、
前記被精製液のpHが0~9であり、
前記被精製液を、
ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一部を覆うように形成されたペルフルオロスルホン酸ポリマーを含有する非架橋コーティングとを有する第1多孔質膜、及び、ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンを含有する第2多孔質膜、からなる群より選択される少なくとも1種を含むフィルタA、及び、
前記フィルタAとは異なるフィルタB、を用いてろ過して薬液を得る工程を有する、薬液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置、精製装置、及び、薬液の製造方法に関する。
【0002】
フォトリソグラフィを含む配線形成工程による半導体デバイスの製造の際、プリウェット液、レジスト液(レジスト組成物)、現像液、リンス液、剥離液、化学機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)スラリー、及び、CMP後の洗浄液等として、又は、それらの希釈液として、水及び/又は有機溶剤を含有する薬液が用いられている。
近年、フォトリソグラフィ技術の進歩によりパターンの微細化が進んでいる。
このような配線形成工程に用いられる薬液には、更なる欠陥抑制性能の向上を求められている。このような薬液は、一般に、薬液に求められる成分を主成分として含有する被精製液をフィルタ等を用いて精製して不純物等を除くことにより得られると考えられている。
【0003】
このような薬液の精製に使用できるとされるフィルタとして、特許文献1には、「ペルフルオロスルホン酸ポリマーを含む非架橋コーティングを有する多孔質ポリテトラフルオロエチレンPTFE基材を含む多孔質PTFE膜」が記載され、特許文献2には、「ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレン(多孔質膜)」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開第2017-29975号公報
【文献】特開第2017-39117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記フィルタを用いて被精製液を精製して薬液を得て、上記薬液に係る欠陥抑制性能を評価したところ、十分な欠陥抑制性能が得られないことがあることを知見した。そこで、本発明は、優れた欠陥抑制性能を有する薬液を製造可能なろ過装置の提供を課題とする。また、本発明は、精製装置、及び、薬液の製造方法の提供も課題とする。
【0006】
なお、本明細書において、薬液の「欠陥抑制性能」は、実施例に記載した方法により評価される薬液の性能を意味する。半導体基板の製造に用いられる薬液には、薬液の種類及び役割に応じたそれぞれの「欠陥抑制性能」が求められる。
本明細書においては、後述する有機溶剤系被精製液を精製して得られる薬液のうち、実質的に樹脂を含有しない薬液(典型的には、プリウェット液、現像液、及び、リンス液等のレジスト膜の形成の際に用いられる薬液)については、後述する実施例における[試験例1]に記載した残渣欠陥抑制性能を「欠陥抑制性能」とする。また、樹脂を含有し、レジスト膜の形成に用いられるレジスト樹脂組成物については、後述する実施例における[試験例3]に記載したスカム欠陥抑制性能を「欠陥抑制性能」とする。また、後述する水系被精製液を精製して得られる薬液(典型的には、エッチング液、レジスト剥離液、及び、現像液等として用いられる薬液)については、後述する実施例における[試験例2]に記載した、残渣欠陥数に対するメタル残渣欠陥数の比率(メタル欠陥比率)が所定の範囲内にあることとする。
以下、単に「欠陥抑制性能」という場合、薬液の種類に応じたそれぞれの欠陥抑制性能(残渣欠陥抑制性能、スカム欠陥抑制性能、又は、メタル欠陥比率)を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が達成されるのを見出した。
【0008】
[1] 流入部と、流出部と、フィルタAと、フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、を有し、フィルタA及びフィルタBは、流入部及び流出部の間に直列に配置され、流入部から流出部にいたる流通路を有する、被精製液を精製して、薬液を得るためのろ過装置であって、フィルタAは、ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材と、多孔質基材を覆うように形成されたペルフルオロスルホン酸ポリマーを含有する非架橋コーティングとを有する第1多孔質膜、及び、ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンを含有する第2多孔質膜、からなる群より選択される少なくとも1種を含む、ろ過装置。
[2] フィルタBは、流通路上において、フィルタAの下流側に配置されたフィルタBDを少なくとも1つを含む、[1]に記載のろ過装置。
[3] 少なくとも1つのフィルタBDは、20nm以下の孔径を有する、[2]に記載のろ過装置。
[4] 少なくとも1つのフィルタBDがポリオレフィン、ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、ポリスルホン、及び、ポリエーテルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[2]又は[3]に記載のろ過装置。
[5] 流通路上において、最も下流側に配置されたフィルタBDが、10nm以下の孔径を有し、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、及び、ナイロンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[2]~[4]のいずれかに記載のろ過装置。
[6] 少なくとも1つのフィルタBDのうち、いずれかのフィルタBDからなる基準フィルタの下流側から、基準フィルタの上流側へと、被精製液を返送可能な返送流通路を有する、[2]~[5]のいずれかに記載のろ過装置。
[7] フィルタBは、流通路上においてフィルタAの上流側に配置されたフィルタBUを少なくとも1つ含む、[1]~[6]のいずれかに記載のろ過装置。
[8] 少なくとも1つのフィルタBUは、10nm以上の孔径を有する、[7]に記載のろ過装置。
[9] 少なくとも1つのフィルタBUは、20nm以上の孔径を有する、[7]又は[8]に記載のろ過装置。
[10] フィルタBUが、イオン交換基を有する樹脂を含有する、[7]~[9]のいずれかに記載のろ過装置。
[11] イオン交換基が、陰イオン交換基を含む、[10]記載のろ過装置。
[12] 流通路上に、フィルタAと直列に配置されたタンクを更に有する[1]~[11]のいずれかに記載のろ過装置。
[13] タンクに対して流通路の上流側に、タンクと直列に配置された、孔径10nm以上のフィルタCを更に有する[12]に記載のろ過装置。
[14] タンクに対して流通路の上流側に、タンクと直列に配置された、孔径20nm以上のフィルタCを更に有する[12]に記載のろ過装置。
[15] 流通路上における、フィルタAの下流側から、フィルタAの上流側へと、被精製液を返送可能な返送流通路を有する、[1]に記載のろ過装置。
[16] 被精製液のpHが0~9である、[1]~[15]のいずれかに記載のろ過装置。
[17] 薬液が、洗浄液、エッチング液、リンス液、前処理液、及び、レジスト液からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[16]のいずれかに記載のろ過装置。
[18] フィルタAの臨界湿潤表面張力が27×10-5N/cm以上である、[1]~[17]のいずれかに記載のろ過装置。
[19] フィルタAの臨界湿潤表面張力が30×10-5N/cm以上である、[1]~[18]のいずれかに記載のろ過装置。
[20] 被精製液を精製して、半導体基板製造用の薬液を製造するためのろ過装置であって、流入部と、流出部と、フィルタAと、フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、を有し、フィルタA及びフィルタBは、流入部及び流出部の間に直列に配置され、流入部から流出部にいたる流通路を有するろ過装置であって、フィルタAは、ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材と、基材の少なくとも一部を覆うように形成されたペルフルオロスルホン酸ポリマーを含有する非架橋コーティングとを有する第1多孔質膜、及び、ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンを含有する第2多孔質膜、からなる群より選択される少なくとも1種を含む、ろ過装置。
[21] [1]~[20]のいずれかに記載のろ過装置と、ろ過装置の流入部に接続された少なくとも1つの蒸留器と、を有する精製装置。
[22] 少なくとも1つの蒸留器は、直列に接続された複数の蒸留器を含む、[21]に記載の精製装置。
[23] 被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、[1]~[20]のいずれかに記載のろ過装置を用いて、被精製液を精製して薬液を得る、ろ過工程を有する、薬液の製造方法。
[24] ろ過工程の前に、フィルタA、及び、フィルタBを洗浄するフィルタ洗浄工程を更に有する、[23]に記載の薬液の製造方法。
[25] ろ過工程の前に、ろ過装置の接液部を洗浄する装置洗浄工程を更に有する、[23]又は[24]に記載の薬液の製造方法。
[26] 被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、被精製液を、ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材と、基材の少なくとも一部を覆うように形成されたペルフルオロスルホン酸ポリマーを含有する非架橋コーティングとを有する第1多孔質膜、及び、ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンを含有する第2多孔質膜、からなる群より選択される少なくとも1種を含むフィルタA、及び、フィルタAとは異なるフィルタB、を用いてろ過して薬液を得る工程を有する、薬液の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた欠陥抑制性能を有する薬液を製造可能なろ過装置を提供できる。また、本発明は、精製装置、及び、薬液の製造方法も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
【
図4】本発明の第三実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図5】本発明の第三実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
【
図6】本発明の第四実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図7】本発明の第五実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図8】本発明の第五実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
【
図9】本発明の第六実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図10】本発明の第六実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
【
図11】同一の製造場内に蒸留装置とろ過装置が配置されている場合の予備精製工程の手順を表す模式図である。
【
図12】本発明の第一実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図13】本発明の第二実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図19】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図20】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図21】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図22】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図23】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図24】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図25】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図26】従来技術に係る精製装置を表す模式図である。
【
図27】本発明の実施形態に係る精製装置を表す模式図である。
【
図28】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図29】従来技術に係るろ過装置を表す模式図である。
【
図30】本発明の実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[ろ過装置]
本発明の実施形態に係るろ過装置は、流入部と、流出部と、フィルタAと、フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBと、を有し、フィルタA及びフィルタBは、流入部及び流出部の間に直列に配置され、流入部から流出部にいたる流通路(被精製液の流れる経路)を有するろ過装置であって、(言い換えれば、流入部と流出部との間に、フィルタAと上記フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBとが直列に配置され、流入部から流出部にいたる流通路を有するろ過装置であって、)フィルタAは、後述する第1多孔質膜、及び、第2多孔質膜からなる群より選択される少なくとも1種である、ろ過装置である。ろ過装置は、流入部から流出部にいたる流通路を有し、流入部と流出部との間にフィルタAと上記フィルタAとは異なる少なくとも1つのフィルタBとが直列に配置されている。本発明の実施形態に係るろ過装置はフィルタAとフィルタBとが流通路上に直列に配置されているため、被精製液は、フィルタA及びフィルタB(又は、フィルタB及びフィルタA)によって順次ろ過される。以下、本発明の実施形態に係るろ過装置について説明するが、以下の説明では、フィルタに導入した被精製液の全量をフィルタでろ過する、全量ろ過方式(デッドエンド方式)のろ過装置を例示するが、本発明の実施形態に係るろ過装置としては上記に制限されず、導入した被精製液を精製済み被精製液と濃縮液とに分離する(更に濃縮液を再度被精製液としてフィルタに導入する場合もある)クロスフロー方式のろ過装置であってもよく、これらを組み合わせた方式であってもよい。以下では、上記ろ過装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
ろ過装置100は、流入部101と流出部102の間に、フィルタAであるフィルタ103と、上記フィルタ103とは異なるフィルタ104(フィルタBD)とが配管105を介して直列に配置されたろ過装置である。
流入部101、フィルタ103、配管105、フィルタ104、及び、流出部102は、それぞれの内部に被精製液を流通できるよう構成されており、上記部材が連結されて、流通路S1(被精製液が流れる経路)が形成されている。
【0014】
流入部101、及び、流出部102としては、ろ過装置に被精製液を導入し、及び、排出できればその形態としては特に制限されないが、典型的には、流入口と流出口とを有する中空円筒状の配管(流入管、及び、流出管)等が挙げられる。以下流出部と流入部とがそれぞれ配管である形態を例に説明する。
流入部101、配管105、及び、流出部102の形態としては特に制限されないが、典型的には、内部に被精製液を流通可能に形成された中空円筒状の形態が挙げられる。これらの材料成分としては特に制限されないが、接液部(被精製液をろ過するに際して、被精製液が接触する可能性のある部分)は、後述する耐腐食材料で形成されていることが好ましい。
【0015】
ろ過装置100の流入部101から導入された被精製液は、流通路S1に沿ってろ過装置100内を流通し、その間にフィルタ103(フィルタA)、及び、フィルタ104(フィルタBD)によって順次ろ過されて、流出部102からろ過装置100外へと排出される。なお被精製液の形態については後述する。
なお、ろ過装置100は、被精製液を流通させる目的で、流通路S1上に(例えば、流入部101、配管105、及び、流出部102等)に、図示しないポンプ、ダンパ、及び、弁等を有していてもよい。
【0016】
フィルタ103(フィルタA)及びフィルタ104(フィルタB)の形態としては特に制限されない。フィルタA及びフィルタBの形態としては、例えば、平面状、プリーツ状、らせん状、及び、中空円筒状等が挙げられる。なかでも取り扱い性により優れる点で、典型的には、被精製液が透過可能な材料で形成された、及び/又は、被精製液が透過可能な構造である、芯材と、上記心材に巻き回される形で芯材上に配置されたフィルタとを有するカートリッジフィルタの形態が好ましい。この場合、芯材の材料としては特に制限されないが、後述する耐腐食材料から形成されることが好ましい。
【0017】
フィルタの配置の方法としては特に制限されないが、典型的には、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を含み、入口と出口との間に少なくとも1つの流通路が形成された、図示しないハウジング内に配置されることが好ましい。その場合、フィルタはハウジングの内の流通路を横切るように配置される。ハウジング内に形成された流通路は、流通路S1の一部をなし、被精製液は流通路S1を流通する際に、流通路S1を横切るように配置されたフィルタによってろ過される。
【0018】
ハウジングの材料としては特に制限されないが、被精製液と適合できるあらゆる不浸透性の熱可塑性材料を含めて任意の適切な硬い不浸透性の材料が挙げられる。例えば、ハウジングはステンレス鋼などの金属、又はポリマーから製作できる。ある実施形態において、ハウジングはポリアクリレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、又はポリカーボネート等のポリマーである。
また、より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、ハウジングの接液部の少なくとも一部、好ましくは接液部の表面積に対して90%、より好ましくは接液部の表面積に対して99%は、後述する耐腐食材料からなることが好ましい。なお、本明細書において接液部とは、被精製液が接触する可能性のある部分(但し、フィルタ自体を除く)を意味し、ハウジング等のユニットの内壁等を意味する。
【0019】
<フィルタA>
フィルタAは後述する第1多孔質膜、及び、第2多孔質膜からなる群より選択される少なくとも1種の膜を有する。
【0020】
(第1多孔質膜)
第1多孔質膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の多孔質基材と、多孔質基材を覆うように形成されたペルフルオロスルホン(PFSA)酸ポリマーを含有する非架橋コーティングとを有する。なお、第1多孔質膜が有する多孔質基材は、非架橋コーティングにより覆われていない領域があってもよいが、その表面(多孔質膜の最表面から連通する孔の表面も含む)の全体が非架橋コーティングで覆われていることが好ましい。
【0021】
ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材としては特に制限されず、PTFE製の多孔質基材として市販されているもの等を適宜使用できる。
第1多孔質膜の製造方法としては特に制限されないが、典型的には、PTFE製の多孔質基材上にペルフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマーを含有するポリマー分散液を塗布して非架橋コーティング(層)を形成する方法が好ましい。
【0022】
上記コーティング(層)を形成するためのPFSAポリマー分散液としては特に制限されないがSolvay Specialty Polymers(Borger、Texas)からアクイヴィオン(AQUIVION)(登録商標)PFSA(例えば、アクイヴィオンPFSA D83-24B、アクイヴィオンPFSA D83-06A、及びアクイヴィオンPFSA D79-20BS)として入手可能であり、これはテトラフルオロエチレンとスルホニルフルオリドビニルエーテル(SFVE)F2C=CF-O-CF2-CF2-SO2Fの短い側鎖(SSC)のコポリマーをベースとしている。アイオノマー分散液はそのスルホン酸形態を含有している。PFSAポリマー分散液としては、デュポン(DuPont)(登録商標)ナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSAポリマー分散液も好ましい。
【0023】
コーティングを形成する際、コーティング溶液中のPFSAの含有量は適宜調整可能である。一般に、含有量はコーティング溶液の全質量に対して0.1~3質量%の範囲が好ましく、0.12~2.2質量%の範囲がより好ましい。
【0024】
基材上にコーティングを形成する方法としては特に制限されないが、基材を上記コーティング液に浸漬する方法、及び、基材に上記コーティング液を噴霧する方法等が挙げられる。
【0025】
第1多孔質膜の孔径として特に制限されないが、一般に1~200nmが好ましく、10~20nmがより好ましい。
なお、本明細書において、孔径とは、イソプロパノール(IPA)又は、HFE-7200(「ノベック7200」、3M社製、ハイドロフロオロエーテル、C4F9OC2H5)のバブルポイントによって決定される孔径を意味する。
【0026】
コーティング(層)の厚みとしては特に制限されないが、一般に、5~127μmが好ましく、13~25μmがより好ましい。
【0027】
第1多孔質膜(フィルタA)の臨界湿潤表面張力(例えば米国特許第4,925,572号に定義されているCWST;critical wetting surface tension)としては特に制限されない。CWSTは一定の組成の一組の溶液を用いて測定することができる。各々の溶液は特定の表面張力を有する。溶液の表面張力は小さい不等価な増分で25×10-5~92×10-5N/cmの範囲である。第1多孔質膜の表面張力を測定するために、第1多孔質膜を白色光テーブルの上に置き、一定の表面張力の一滴の溶液を膜の表面に付け、その液滴が第1多孔質膜を貫通して透過し、光が膜を通り抜けたことを示す明るい白色になるのにかかった時間を記録する。液滴が膜を透過するのにかかる時間が10秒以下であるとき、瞬時の湿潤と考えられる。この時間が10秒より大きい場合、その溶液は第1多孔質膜を部分的に湿潤すると考えられる。CWSTは、当技術分野で公知のように、更に例えば米国特許第5,152,905号、同第5,443,743号、同第5,472,621号、及び同第6,074,869号に開示されているように選択することができる。
【0028】
一般に、第1多孔質膜の臨界湿潤表面張力としては、27×10-5N/cm以上が好ましい。本発明者らは、得られる薬液の欠陥抑制性能が、被精製液の物性と、第1多孔質膜の臨界湿潤表面張力との相互関係に影響を受ける場合があることを鋭意の検討の結果つきとめた。言い換えれば、第1多孔質膜(フィルタA)の臨界湿潤表面張力を被精製液の種類によって制御することにより、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られることを知見している。
【0029】
具体的には、臨界湿潤表面張力が27×10-5N/cm以上であると、被精製液に含有される金属不純物等をより効率的に除去することができ、結果としてより優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。この点において、臨界湿潤表面張力は、30×10-5N/cm以上がより好ましく、33×10-5N/cm以上が更に好ましい。
一方で、被精製液の表面張力との関係では、第1多孔質膜の臨界湿潤表面張力と、被精製液の表面張力との差の絶対値がより小さい方が、第1多孔質膜が被精製液で濡れやすく、結果として優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
例えば、イソプロピルアルコールの表面張力が、20.8(25℃)×10-5N/cmであるように、一般に、有機溶剤の表面張力は、15×10-5~35×10-5N/cm程度であることが多く、被精製液が有機溶剤を含有する場合(後述する有機溶剤系被精製液等である場合)、被精製液の表面張力との差をより小さくする観点からは、第1多孔質膜の臨界湿潤表面張力は、一般に、40×10-5N/cm以下が好ましい。
【0030】
他の実施形態としては、被精製液の表面張力がより大きい場合(例えば、被精製液が水を含有する場合、後述する「水系被精製液」等)には、第1多孔質膜の臨界湿潤表面張力は40×10-5N/cmを超える形態も好ましい。
なお、第1多孔質膜の臨界湿潤表面張力は、ペルフルオロスルホン酸ポリマーを含有する非架橋コーティングにおけるペルフルオロスルホン酸ポリマーの含有量により調整可能である。具体的には、非架橋コーティング中におけるペルフルオロスルホン酸ポリマーの含有量を多くすれば、より高い臨界湿潤表面張力を有する第1多孔質膜が得られやすく、非架橋コーティング中におけるペルフルオロスルホン酸ポリマーの含有量を少なくすれば、より低い臨界湿潤表面張力を有す第1多孔質膜が得られやすい。
【0031】
(第2多孔質膜)
第2多孔質膜は、ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンを含有する多孔質膜である。
PTFEとしては特に制限されず、公知のPTFEを使用できる。
PTFEとブレンドするPFSAとしては特に制限されないが、例えば、Solvay Specialty Polymers(Borger、Texas)からアクイヴィオン(Aquivion)(登録商標)PFSA(例えば、アクイヴィオンPFSA D83-24B、アクイヴィオンPFSA D83-06A、及びアクイヴィオンPFSA D79-20BS)として入手可能であり、これはテトラフルオロエチレンとスルホニルフルオリドビニルエーテル(SFVE)F2C=CF-O-CF2-CF2-SO2Fの短い側鎖(SSC)のコポリマーをベースとしている。アイオノマー分散液はそのスルホン酸形態を含有する。適切なPFSA添加剤の別の例はデュポン(DuPont)(登録商標)ナフィオン(Nafion)(登録商標)PFSAポリマー分散液である。
【0032】
ブレンドを製造する際、PFSAの含有量は特に制限されない。PFSAの含有量は、典型的には、ブレンドの全質量に対して1~20質量%が好ましく、1~4質量%がより好ましい。
【0033】
第2多孔質膜の製造方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。PFSAをPTFEとブレンドするに際しては、潤滑剤を添加するのが好ましい。潤滑剤としては特に制限されず、公知の潤滑剤が使用でき、この際の潤滑剤の含有量としては特に制限されず、公知の範囲の含有量を採用できる。また、組み合わせる際、潤滑剤との物理的混合の前に、PFSAをPTFE樹脂に噴霧することができる(例えば、分布を改良するため)。
【0034】
PFSAとPTFEとをブレンドする方法としては、例えば、必要とされる量のPTFE粉末を、適切な溶媒、例えばメタノール、エタノール、又はイソプロパノールなどのアルコール溶媒中のPFSAの溶液と混合してブレンドを得て、次にこのブレンドを無臭のミネラルスピリット、例えばアイソパー(Isopar)Gなどの潤滑剤と混合し、得られたペーストを、例えば双ローラーでせん断に供し、少なくとも2回、2MPa又はそれ以上の圧力下で、各々約55秒間、ビレットに成形する。得られたビレットを室温で約12時間又はそれ以上平衡化させる。次いで、このビレットを所望の形状に押し出す。例えば、26mmのダイギャップサイズ、最大圧力、及び55℃の一定温度で押出を実施して、チューブ形状のPTFEテープを得る。次に、チューブ形状のテープを中心軸に沿って切り開き、ピペットの周りに再度巻き付けて、新しいビレット(非圧縮)を得る。この新しいビレットを、最初の押出プロセスで使用したのと同じ条件で再度押し出す。このステップは、有利な交差方向の機械的性質をPTFEテープに付与するために加えられる。カレンダー加工は、200~250μmのテープ厚さを目標として30℃で実施される。得られたテープを次に125℃で1時間乾燥することにより、押し出されたテープから潤滑剤を除去する。
【0035】
次いで、テープを、例えば以下の条件で延伸する:300%/秒の延伸率で、縦方向(MD)及び横方向(TD)の延伸比は3である。延伸オーブン内の温度は150℃に設定する。
【0036】
次いで、延伸したテープをアニールする。アニーリングはアニーリングオーブンで行い、その後テープを冷却する。上記延伸により生成した多孔性は、冷却の際、保持される。
【0037】
いかなる特定の理論にも縛られることなく、膜をイソプロピルアルコール(IPA)に浸漬すると、より多くの表面が処理される流体との接触のために曝露され、金属捕捉能が改良されると考えられる。
【0038】
第2多孔質膜の孔径としては特に制限されないが、1~200nmが好ましく、10~20nmがより好ましい。
【0039】
第2多孔質膜の厚みとしては特に制限されないが、一般に、5~127μmが好ましく、0.5~1.0μmがより好ましい。
【0040】
一般に、第2多孔質膜(フィルタA)の臨界湿潤表面張力としては、27×10-5N/cm以上が好ましい。本発明者らは、得られる薬液の欠陥抑制性能が被精製液の物性と、第2多孔質膜の臨界湿潤表面張力との相互関係に影響を受ける場合があることを鋭意の検討の結果つきとめた。
臨界湿潤表面張力が27×10-5N/cm以上であると、被精製液に含有される金属不純物等をより効率的に除去することができ、結果としてより優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。この点において、臨界湿潤表面張力は、30×10-5N/cm以上がより好ましく、33×10-5N/cm以上が更に好ましい。
一方で、被精製液の表面張力との関係では、第2多孔質膜の臨界湿潤表面張力と、被精製液の表面張力との差の絶対値がより小さい方が、第2多孔質膜が被精製液で濡れやすく、結果として優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
被精製液が有機溶剤を含有する場合(後述する「有機溶剤系被精製液」等である場合)、被精製液の表面張力との差をより小さくする観点からは、第2多孔質膜の臨界湿潤表面張力は40×10-5N/cm以下が好ましい。
【0041】
他の実施形態としては、被精製液の表面張力がより大きい場合(例えば、被精製液が水等を含有する場合、後述する「水系被精製液」等である場合)には、第2多孔質膜の臨界湿潤表面張力は40×10-5N/cmを超えることも好ましい。
なお、第2多孔質膜の臨界湿潤表面張力は、ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンにおける、ペルフルオロスルホン酸ポリマーの含有量によって調整可能である。具体的には、ペルフルオロスルホン酸ポリマーの含有量を多くすれば、より高い臨界湿潤表面張力を有する第2多孔質膜が得られ、ペルフルオロスルホン酸ポリマーの含有量を少なくすれば、より低い臨界湿潤表面張力を有する第2多孔質膜が得られやすい。
【0042】
<フィルタBD>
フィルタBDは、フィルタAとは異なるフィルタであって、流通路上においてフィルタAの下流側に、フィルタAと直列に配置されたフィルタである。本明細書において、フィルタ同士が異なるとは、孔径、材料、及び、細孔構造からなる群より選択される少なくとも1種が異なることを意味する。なかでもより優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、フィルタAとフィルタBDとは、少なくとも孔径が異なることが好ましく、孔径と材料とが異なることが好ましい。なお、材料が異なるとは、典型的には構成する成分(材料成分)が異なる形態が挙げられる。
【0043】
フィルタBDの孔径としては特に制限されず、被精製液のろ過用として通常使用される孔径のフィルタが使用できる。なかでも、フィルタの孔径は、200nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましく、7nm以下が特に好ましく、5nm以下が最も好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に1nm以上が、生産性の観点から好ましい。
本発明者らの検討によれば、フィルタAを用いて被精製液をろ過すると、フィルタAに起因する微粒子が発生し、被精製液に混入することを知見している。本実施形態に係るろ過装置は、流通路上においてフィルタAの下流側にフィルタBDを有しているため、フィルタAに起因する微粒子を被精製液からろ別することができ、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
【0044】
なお、
図1のろ過装置はフィルタBDを1つ有しているが、本実施形態に係るろ過装置としては複数のフィルタBDを有していてもよい。その場合、複数あるフィルタBDの孔径の関係としては特に制限されないが、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい点で、流通路上において最も下流側に配置されたフィルタBDの孔径が複数のフィルタBDのなかで最小となることが好ましい。最も下流側に配置されたフィルタBDとは、流通路に配置される全てのフィルタの中で、最も下流側に配置されたフィルタBDを意味する。
この場合、最も下流側に配置されたフィルタBDは材料成分として、ポリエチレン(特に超高分子量ポリエチレン;UPE)、ポリテトラフルオロエチレン、及び、ナイロンからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、ポリエチレン、又は、ポリテトラフルオロエチレンを含有することより好ましく、ポリテトラフルオロエチレンを含有することが更に好ましい。
【0045】
フィルタBDは、典型的には、上流側に配置されたフィルタA等により被精製物をろ過した際に、意図せず被精製液中に混入する可能性がある不純物をろ別する目的で配置される。
このとき、フィルタBDが含有する材料成分によって、除去対象となる不純物は異なることが多い。例えば、ナイロンを含有するフィルタBDは、被精製液中において、膜上に形成されると推測される親水性の層によってゲル状の不純物が吸着除去されやすいと推測され、超高分子量ポリエチレンを含有するフィルタBDは、ふるい効果によって粒子状の不純物を除去しやすいものと推測される。
【0046】
被精製液が後述する有機溶剤系被精製液である場合は、上記被精製液を、ナイロンを含有するフィルタBD、又は、超高分子量ポリエチレンを含有するフィルタBDに通液すると、上記フィルタBDの材料に起因して、被精製液中に、意図しない不純物が混入することがあることを本発明者らは知見している。このような場合、流通路上において最も下流側に配置されるフィルタBDとして、ポリテトラフルオロエチレンを含有する(好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンからなる)フィルタを配置すると、それらの不純物等もあわせて除去可能であり、好ましい。
【0047】
このとき、フィルタBDの孔径としては特に制限されないが、1~20nmが好ましく、1~10nmがより好ましく、1~7nmが更に好ましい。
【0048】
フィルタAの孔径とフィルタBDの孔径との関係としては特に制限されないが、フィルタAの孔径よりフィルタBDの孔径がより小さいことが好ましい。既に説明したとおり、本発明者らの検討によれば、フィルタAに被精製液を通液するとフィルタAに起因して被精製液中に微粒子が混入することを知見しており、フィルタBDの孔径がフィルタAの孔径より小さい場合、この混入した微粒子を被精製液からより効率よく除去可能である。
【0049】
フィルタBDの材料としては特に制限されず、フィルタAと同様であってもよいし、異なってもよい。なかでも、より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、フィルタAの材料とは異なることが好ましい。
フィルタBDは材料成分として、6-ナイロン、及び、6,6-ナイロン等のポリアミド;ポリエチレン、及び、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリ(メタ)アクリレート;ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及び、ポリフッ化ビニル等のポリフルオロカーボン;ポリビニルアルコール;ポリエステル;セルロース;セルロースアセテート等を含有することが好ましい。なかでも、より優れた耐溶剤性を有し、得られる薬液がより優れた欠陥抑制性能を有する点で、ナイロン(なかでも、6,6-ナイロンが好ましい)、ポリオレフィン(なかでも、ポリエチレンが好ましい)、ポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリフルオロカーボン(なかでも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)が好ましい。)からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの重合体は単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
また、樹脂以外にも、ケイソウ土、及び、ガラス等であってもよい。
【0050】
また、フィルタは表面処理されたものであってもよい。表面処理の方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。表面処理の方法としては、例えば、化学修飾処理、プラズマ処理、疎水処理、コーティング、ガス処理、及び、焼結等が挙げられる。
【0051】
プラズマ処理は、フィルタの表面が親水化されるために好ましい。プラズマ処理して親水化されたろ過材の表面における水接触角としては特に制限されないが、接触角計で測定した25℃における静的接触角が、60°以下が好ましく、50°以下がより好ましく、30°以下が更に好ましい。
【0052】
化学修飾処理としては、基材にイオン交換基を導入する方法が好ましい。
すなわち、フィルタとしては、上記で挙げた各材料を基材として、上記基材にイオン交換基を導入したものが好ましい。典型的には、上記基材の表面にイオン交換基を有する基材を含む層を含むフィルタが好ましい。表面修飾された基材としては特に制限されず、製造がより容易な点で、上記重合体にイオン交換基を導入したものが好ましい。
【0053】
イオン交換基としては、カチオン交換基として、スルホン酸基、カルボキシ基、及び、リン酸基等が挙げられ、アニオン交換基として、4級アンモニウム基等が挙げられる。イオン交換基を重合体に導入する方法としては特に制限されないが、イオン交換基と重合性基とを有する化合物を重合体と反応させ典型的にはグラフト化する方法が挙げられる。
【0054】
イオン交換基の導入方法としては特に制限されないが、上記の樹脂の繊維に電離放射線(α線、β線、γ線、X線、及び、電子線等)を照射して樹脂中に活性部分(ラジカル)を生成させる。この照射後の樹脂をモノマー含有溶液に浸漬してモノマーを基材にグラフト重合させる。その結果、このモノマーがポリオレフィン繊維にグラフト重合側鎖として結合したものが生成する。この生成されたポリマーを側鎖として有する樹脂をアニオン交換基又はカチオン交換基を有する化合物と接触反応させることにより、グラフト重合された側鎖のポリマーにイオン交換基が導入されて最終生成物が得られる。
【0055】
また、フィルタは、放射線グラフト重合法によりイオン交換基を形成した織布、又は、不織布と、従来のガラスウール、織布、又は、不織布のろ過材とを組み合わせた構成でもよい。
【0056】
なかでも、より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、フィルタBDは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、ポリスルホン、及び、ポリエーテルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、フィルタBDはポリオレフィン、ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、ポリスルホン、及び、ポリエーテルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種の材料成分からなることがより好ましい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、及び、ポリプロピレン等が挙げられ、中でも、超高分子量ポリエチレンが好ましい。ポリアミドとしては、6-ナイロン、及び、6,6-ナイロン等が挙げられる。ポリフルオロカーボンとしてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及び、ポリフッ化ビニル等が挙げられ、なかでも、PTFEが好ましい。
【0057】
フィルタBDの細孔構造としては特に制限されず、被精製液の成分に応じて適宜選択すればよい。本明細書において、フィルタBDの細孔構造とは、細孔径分布、フィルタ中の細孔の位置的な分布、及び、細孔の形状等を意味し、典型的には、フィルタの製造方法により制御可能である。
例えば、樹脂等の粉末を焼結して形成すれば多孔質膜が得られ、及び、エレクトロスピニング、エレクトロブローイング、及び、メルトブローイング等の方法により形成すれば繊維膜が得られる。これらは、それぞれ細孔構造が異なる。
【0058】
「多孔質膜」とは、ゲル、粒子、コロイド、細胞、及び、ポリオリゴマー等の被精製液中の成分を保持するが、細孔よりも実質的に小さい成分は、細孔を通過する膜を意味する。多孔質膜による被精製液中の成分の保持は、動作条件、例えば、面速度、界面活性剤の使用、pH、及び、これらの組み合わせに依存することがあり、かつ、多孔質膜の孔径、構造、及び、除去されるべき粒子のサイズ、及び、構造(硬質粒子か、又は、ゲルか等)に依存し得る。
【0059】
UPE(超高分子量ポリエチレン)フィルタは、典型的には、ふるい膜である。ふるい膜は、主にふるい保持機構を介して粒子を捕捉する膜、又は、ふるい保持機構を介して粒子を捕捉するために最適化された膜を意味する。
ふるい膜の典型的な例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜とUPE膜が含まれるが、これらに制限されない。
なお、「ふるい保持機構」とは、除去対象粒子が多孔質膜の細孔径よりも大きいことによる結果の保持を指す。ふるい保持力は、フィルタケーキ(膜の表面での除去対象となる粒子の凝集)を形成することによって向上させることができる。フィルタケーキは、2次フィルタの機能を効果的に果たす。
【0060】
多孔質膜(例えば、UPE、及び、PTFE等を含む多孔質膜)の細孔構造としては特に制限されないが、細孔の形状としては例えば、レース状、ストリング状、及び、ノード状等が挙げられる。
多孔質膜における細孔の大きさの分布とその膜中における位置の分布は、特に制限されない。大きさの分布がより小さく、かつ、その膜中における分布位置が対称であってもよい。また、大きさの分布がより大きく、かつ、その膜中における分布位置が非対称であってもよい(上記の膜を「非対称多孔質膜」ともいう。)。非対称多孔質膜では、孔の大きさは膜中で変化し、典型的には、膜一方の表面から膜の他方の表面に向かって孔径が大きくなる。このとき、孔径の大きい細孔が多い側の表面を「オープン側」といい、孔径が小さい細孔が多い側の表面を「タイト側」ともいう。
また、非対称多孔質膜としては、例えば、細孔の大きさが膜の厚さ内のある位置においてで最小となるもの(これを「砂時計形状」ともいう。)が挙げられる。
【0061】
非対称多孔質膜を用いて、一次側をより大きいサイズの孔とすると、言い換えれば、一次側をオープン側とすると、前ろ過効果を生じさせることができる。
【0062】
多孔質膜は、PESU(ポリエーテルスルホン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシアルカンとの共重合体)、ポリアミド、及び、ポリオレフィン等の熱可塑性ポリマーを含んでもよいし、ポリテトラフルオロエチレン等を含んでもよい。
なかでも、多孔質膜は、超高分子量ポリエチレンを材料成分として含有することが好ましい。超高分子量ポリエチレンは、極めて長い鎖を有する熱可塑性ポリエチレンを意味し、分子量が百万以上、典型的には、200~600万が好ましい。
【0063】
例えば、被精製液に有機化合物を含有する粒子が不純物として含有されている場合、このような粒子は負に帯電している場合が多く、そのような粒子の除去には、ポリアミド製のフィルタが非ふるい膜の機能を果たす。典型的な非ふるい膜には、ナイロン-6膜及びナイロン-6,6膜等のナイロン膜が含まれるが、これらに制限されない。
なお、本明細書で使用される「非ふるい」による保持機構は、フィルタの圧力降下、又は、細孔径に関連しない、妨害、拡散及び吸着などの機構によって生じる保持を指す。
【0064】
非ふるい保持は、フィルタの圧力降下又はフィルタの細孔径に関係なく、被精製液中の除去対象粒子を除去する、妨害、拡散及び吸着等の保持機構を含む。フィルタ表面への粒子の吸着は、例えば、分子間のファンデルワールス力及び静電力等によって媒介され得る。蛇行状のパスを有する非ふるい膜層中を移動する粒子が、非ふるい膜と接触しないように十分に速く方向を変えることができない場合に、妨害効果が生じる。拡散による粒子輸送は、粒子がろ過材と衝突する一定の確率を作り出す、主に、小さな粒子のランダム運動またはブラウン運動から生じる。粒子とフィルタの間に反発力が存在しない場合、非ふるい保持機構は活発になり得る。
【0065】
繊維膜の材質は、繊維膜を形成可能なポリマーであれば特に制限されない。ポリマーとしては、例えば、ポリアミド等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、及び、ナイロン6,6等が挙げられる。繊維膜を形成するポリマーとしては、ポリ(エーテルスルホン)であってもよい。繊維膜が多孔質膜の一次側にある場合、繊維膜の表面エネルギは、二次側にある多孔質膜の材質であるポリマーより高いことが好ましい。そのような組合せとしては、例えば、繊維膜の材料がナイロンで、多孔質膜がポリエチレン(UPE)である場合が挙げられる。
【0066】
繊維膜の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。繊維膜の製造方法としては、例えば、エレクトロスピニング、エレクトロブローイング、及び、メルトブローイング等が挙げられる。
【0067】
〔第二実施形態〕
図2は、本発明の第二実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
ろ過装置200は、流入部101及び流出部102の間に、フィルタAであるフィルタ103及び上記フィルタ103とは異なるフィルタ201(フィルタBU)が配管202を介して直列に配置されたろ過装置である。
流入部101、フィルタ201、配管202、フィルタ103、及び、流出部102は、それぞれの内部に被精製液を流通できるよう構成されており、上記部材が連結されて、流通路S2(被精製液が流れる経路)が形成されている。
【0068】
なお、ろ過装置200において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0069】
<フィルタBU>
フィルタBUは、フィルタAとは異なるフィルタであって、流通路上においてフィルタAの上流側に、フィルタAと直列に配置されたフィルタである。流通路上において、流入部が上流側であり、流出部が下流側である。より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、フィルタAとフィルタBUとは、少なくとも材料が異なることが好ましく、孔径と材料とが異なることが好ましい。
【0070】
フィルタBUの孔径としては特に制限されず、被精製液のろ過用として通常使用される孔径のフィルタが使用できる。なかでも、フィルタの孔径は、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、10nm以上が更に好ましい。上限としては特に制限されないが、1.0μm以下が好ましく、後述するフィルタCとして使用する形態以外では、200nm未満がより好ましく、100nm未満が更に好ましく、50nm以下が特に好ましい。なお、ろ過装置が複数のフィルタBUを有する場合、少なくとも1つのフィルタBUの孔径が上記範囲内であることが好ましく、流通路上において、最も上流側に配置されたフィルタBUの孔径が上記範囲内であることがより好ましい。
【0071】
本発明者らの検討によれば、流通路S2に上においてフィルタAの上流側に、孔径が20nm以上のフィルタBUを配置したろ過装置を用いた場合、フィルタAがより目詰まりしにくく、フィルタAの寿命をより長くすることができることを知見している。その結果として、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液を安定して提供できるろ過装置が得られる。
【0072】
フィルタAの孔径とフィルタBUの孔径との関係としては特に制限されないが、フィルタAの孔径よりフィルタBUの孔径がより大きいことが好ましい。
【0073】
図2のろ過装置はフィルタBUを1つ有しているが、本実施形態に係るろ過装置としては複数のフィルタBUを有していてもよい。その場合、複数あるフィルタBUの孔径の関係としては特に制限されないが、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい点で、流通路上において最も上流に配置されたフィルタBUの孔径が最大となることが好ましい。このようにすることで、最上流のフィルタBUの下流に配置されたフィルタ(フィルタAを含む)の寿命をより長くすることができ、結果として、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液を安定して提供できるろ過装置が得られる。
【0074】
フィルタBUの材料としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、イオン交換基を有する樹脂を材料成分として含有することが好ましい。イオン交換基としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有するろ過装置が得られる点で、酸基、塩基基、アミド基、及び、イミド基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
フィルタBUとしては、ポリフルオロカーボン、及び、ポリオレフィン等の基材に、イオン交換基を導入した材料がより好ましい。
【0075】
イオン交換基を有する樹脂としては特に制限されず、第一実施形態において説明した非ふるい効果によりイオン(例えば、金属イオン等)を除去可能な材料成分を含むフィルタ等が使用できる。
なかでもイオン交換基としては、陰イオン交換基が好ましく、陰イオン交換基としては例えば、4級アンモニウム基等が挙げられる。フィルタBUが陰イオン交換基を有する樹脂を材料成分として含有する場合、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
フィルタBUの材料成分としては、ポリフルオロカーボン、及び、ポリオレフィン等の基材に、陰イオン交換基を導入した物がより好ましい。
【0076】
(第二実施形態に係るろ過装置の変形例)
図3は、本発明の第二実施形態に係るろ過装置の変形例を表すろ過装置の模式図である。ろ過装置300は、流入部101と流出部102との間に、フィルタAであるフィルタ103と、フィルタBUであるフィルタ201と、フィルタBDであるフィルタ104とを有し、フィルタ201と、フィルタ103と、フィルタ104とが配管301、及び、配管302を介して直列に配置されたろ過装置である。
【0077】
なお、ろ過装置300において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0078】
流入部101、フィルタ201、配管301、フィルタ103、配管302、及び、フィルタ104はそれぞれの内部に被精製液を流通できるよう構成されており、上記部材が連結されて流通路S3(被精製液が流れる経路)が形成されている。配管、及び、各フィルタの構成としては既に説明したとおりである。
ろ過装置300は、流通路上においてフィルタAの上流側にフィルタBUを有するため、フィルタAはより長寿命となり、流通路上においてフィルタAの下流側にフィルタBDを有するため、フィルタAに起因して被精製液に混入する微粒子が効率よく除去でき、結果として更に優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
【0079】
〔第三実施形態〕
図4は本発明の第三実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
ろ過装置400は、流入部101と流出部102との間であって、流通路S4上においてフィルタ103(フィルタA)の上流側に、フィルタAと直列に配置されたタンク401を更に有するろ過装置である。タンク401と、フィルタ103(フィルタA)と、フィルタ104(フィルタBD)とは、配管402及び配管105を介して直列に配置されている。タンク401は上記のフィルタ及び配管等とともに、流通路S4を構成している。
【0080】
なお、ろ過装置400において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0081】
本実施形態に係るろ過装置は、フィルタ103の上流側にタンクを有しているため、フィルタ103に流通させるための被精製液を滞留させ、均質化することができ、結果としてより優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。特に、後述する循環ろ過を行う場合、流通路S4に対してフィルタ103(フィルタA)の下流から、流通路S4に対してフィルタ103の上流へと被精製液を返送する際に、返送された被精製液を受入れるのにタンク401が使用できる。このようにすると、返送された被精製液を滞留させ、均質化してから、再度フィルタ103に通液できるため、更に優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。
なお、タンク401の材料は特に制限されないが、既に説明したハウジングの材料と同様の材料が使用でき、その接液部の少なくとも一部(好ましくは接液部の表面積の90%以上、より好ましくは99%以上)は後述する耐腐食材料からなることが好ましい。
【0082】
(第三実施形態に係るろ過装置の変形例)
図5は本発明の第三実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
ろ過装置500は、流入部101と流出部102との間であって、流通路S5上においてフィルタ103(フィルタA)の下流側に、フィルタAと直列に配置されたタンク401を更に有するろ過装置である。フィルタ103(フィルタA)と、タンク401と、フィルタ104(フィルタBD)とは、配管501及び配管502を介して直列に配置されている。タンク401は上記のフィルタ及び配管等とともに、流通路S5を構成している。
【0083】
なお、ろ過装置500において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0084】
本実施形態に係るろ過装置は、フィルタAの下流側にタンクを有しているため、フィルタAによってろ過された被精製液を滞留させることができる。特に、後述する循環ろ過を行う場合、流通路S4に対してフィルタ103(フィルタA)の下流側から、流通路S4に対してフィルタ103の上流側へと被精製液を返送する際に、返送する被精製液を滞留させるためにタンク401が使用できる。このようにすると、返送する被精製液を滞留させ、均質化してから、再度フィルタ103に通液できるため、更に優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。
【0085】
なお、本実施形態に係るろ過装置500では、タンク401は、流通路S5上においてフィルタ104(フィルタBD)の上流側に配置されているが、本実施形態に係るろ過装置としては、流通路S5上においてフィルタ104の下流側に配置されていてもよい。
【0086】
既に説明したとおり、タンク401は、循環ろ過の際、返送する被精製液を滞留させるのに使用できる。言い換えれば、循環ろ過の基点にすることができ、その場合、流通路S5上において、タンク401の上流側のフィルタ(ろ過装置500では、フィルタ103)、又は、タンク401の下流側のフィルタ(ろ過装置500ではフィルタ104)が、基準フィルタとして循環ろ過の対象となることが多い。なお、循環ろ過の基点とは、上記タンクが返送流通路を構成している場合、及び、上記タンクの下流側の配管が返送流通路を構成している場合のいずれをも含む。
【0087】
ろ過装置500では、タンク401はフィルタ104(フィルタBD)の上流側に配置されている。タンク401をフィルタ104(フィルタBD)の上流側に配置すると、循環ろ過の際、流通路S5のうち、タンク401の上流側、又は、下流側を循環ろ過の対象とすることができる。例えば、タンク401の上流側を循環ろ過の対象とすれば、フィルタAにより十分ろ過された被精製液に対して、最後に、フィルタAに被精製液を通液したことに起因して、意図せず被精製液に混入した微粒子等をフィルタ104で除去するフローが採用でき、結果としてフィルタBDの寿命がより長くなり、優れた欠陥抑制性能を有する薬液をより安定して長期にわたり製造可能である。
【0088】
なお、本実施形態に係るろ過装置としては、フィルタBUとフィルタAがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態)、及び、フィルタBU、フィルタA、及び、フィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態の変形例)において、フィルタAの上流側にタンク401を更に有する形態であってもよい。
【0089】
〔第四実施形態〕
図6は本発明の第四実施形態に係るろ過装置を表す模式図である。
ろ過装置600は、流入部101と流出部102の間に、フィルタCであるフィルタ601と、タンク401と、フィルタAであるフィルタ103と、フィルタBDであるフィルタ104とが配管602、配管402、及び、配管105を介して直列に配置されたろ過装置である。
ろ過装置600では、流入部101、フィルタ601、配管602、タンク401、配管402、フィルタ103、配管105、フィルタ104、及び、流出部102が、流通路S6を形成している。
【0090】
なお、ろ過装置600において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0091】
フィルタ601(フィルタC)は、流通路S6においてタンク401の上流側に配置された、孔径10nm以上のフィルタである。本実施形態に係るろ過装置は、流通路S6においてタンク401の上流側に所定の孔径を有するフィルタを配置しているので、流入部101から流入した被精製液に含有される不純物等を、予めフィルタ601を用いて取り除くことができるため、配管602以降の流通路に混入する不純物の量をより少なくすることができる。このため、後段のフィルタA、及び、フィルタBD(また、フィルタBUが配置されていればフィルタBU)の寿命をより長くすることができる。その結果、上記ろ過装置によれば、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液を安定的に製造できる。
【0092】
フィルタCの形態としては特に制限されず、既に説明したフィルタAと同一のフィルタであってもよいし、異なるフィルタ(フィルタB)であってもよい。なかでも、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい点で、フィルタAとは異なるフィルタ(フィルタB)であることが好ましい。なかでも、材料及び細孔構造としてはフィルタBDの材料及び細孔構造として説明したものが好ましい。また、孔径は特に制限されず、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、50nmを超えることが更に好ましく、100nm以上が特に好ましい。上限としては特に制限されないが、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、250nm以下が更に好ましい。
なお、本実施形態に係るろ過装置としては、流通路上にフィルタAとフィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態)、及び、流通路上にフィルタBU、フィルタA,及び、フィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態の変形例)において、フィルタAの下流側にタンクを更に有し、上記タンクの上流側にフィルタCを有する形態であってもよい。
【0093】
〔第五実施形態〕
図7は本発明の第五実施形態に係るろ過装置の模式図である。ろ過装置700は、流入部101と、流出部102と、フィルタAであるフィルタ103と、フィルタBDであるフィルタ104とを有し、フィルタ103とフィルタ104とが、流入部101と流出部102との間に直列に配置され、流入部101から流出部102にいたる流通路S7が形成されたろ過装置である。
ろ過装置700では、流入部101と、フィルタ103と、配管105と、フィルタ104と、流出部102とが、流通路S7を形成している。
【0094】
なお、ろ過装置700において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0095】
ろ過装置700は、流通路S7において、フィルタ104(基準フィルタ)の下流側から、流通路S7においてフィルタ103の上流側(かつ、基準フィルタの上流側)へと被精製液を返送可能な返送流通路R1が形成されている。具体的には、ろ過装置700は、返送用の配管701を有し、この配管701によって、返送流通路R1が形成されている。配管701は、一端がフィルタ104(及びフィルタ103)の下流側で流通路S7と接続し、他端がフィルタ103の上流側で流通路S7と接続している。なお、返送流通路R1上には、図示しないポンプ、ダンパ、及び、弁等が配置されていてもよい。特に、
図7に示した接続部J1及びJ2には弁を配置し、被精製液が意図せず返送流通路を流通しないよう制御することが好ましい。
【0096】
返送流通路R1を流通して、フィルタ103の(流通路S7における)上流側に返送された被精製液は、再度流通路S7を流通する過程でフィルタ103、及び、フィルタ104によってろ過される。これを循環ろ過といい、ろ過装置700は循環ろ過が実施でき、結果として、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
【0097】
なお、
図7では、流通路S7上において、フィルタ104(フィルタBD、基準フィルタ)の下流側からフィルタAの上流側(かつフィルタBD;基準フィルタの上流側)へと被精製液を返送できるよう配管701が配置されているが、本実施形態に係るろ過装置としては、流通路上において、フィルタAを基準フィルタとして、フィルタAの下流側からフィルタAの上流側に被精製液を返送できるように構成されていてもよい。この場合、配管105と、流入部101とを連結する配管により返送流通路を形成してもよい。
【0098】
また、流通路上においてフィルタAの上流側にフィルタBUが配置されている場合に、フィルタAを基準フィルタとして、基準フィルタの下流側から、フィルタBUの上流側(かつ、基準フィルタの上流側)へと被精製液を返送可能な返送流通経路が形成されていてもよい。
また、
図7では、返送流通路R1が配管のみから形成されているが、既に説明した1つ又は複数のタンク及び配管から形成されていてもよい。
【0099】
図8は、本発明の第五実施形態に係るろ過装置の変形例を表す模式図である。
ろ過装置800は、流入部101と、タンク401(a)、401(b)、流出部102とフィルタAであるフィルタ103と、フィルタBDであるフィルタ104とを有し、タンク401(a)、フィルタ103、フィルタ104、及び、401(b)とが、流入部101と流出部102との間に直列に配置され、流入部101と、タンク401(a)、配管802、フィルタ103、配管803、フィルタ104、配管804、タンク401(b)、及び、流出部102とが、流通路S8を形成している。
【0100】
なお、ろ過装置800において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0101】
ろ過装置800は、流通路S8上においてフィルタ104の下流側に配置されたタンク401(b)の下流側から、流通路S8上においてフィルタ103の上流側に配置されたタンク401(a)の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路R2が形成されている。配管801は、一端がタンク401(b)の下流側で流通路S8と接続し、他端がタンク401(a)の上流側で流通路S8と接続している。なお、返送流通路R2には、図示しないポンプ、ダンパ、及び、弁等が配置されていてもよい。
【0102】
なお、本実施形態に係るろ過装置は、返送流通路R2の基点が、流通路上においてタンク401(b)の下流側に配置され、終点が、流通路上においてタンク401(a)の上流側に配置されている。このようにすることで、循環ろ過の際に、被精製液を滞留させてから返送し、また、滞留させてから再度流通させることができ、結果としてより優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。なお、本実施形態に係るろ過装置としては、タンク401(b)と配管801とが直接接続する形態であってもよく、タンク401(a)と配管801とが直接接続する形態であってもよく、その両方を備える形態であってもよい。
【0103】
〔第六実施形態〕
図9は本発明の第五実施形態に係るろ過装置の模式図である。ろ過装置900は、流入部101と、流出部102と、フィルタAであるフィルタ103と、フィルタBDであるフィルタ104とを有し、フィルタ103とフィルタ104とが、流入部101と流出部102との間に直列に配置され、流入部101から流出部102にいたる流通路S9が形成されたろ過装置である。
ろ過装置900では、流入部101と、フィルタ103と、配管105と、フィルタ104と、流出部102とが、流通路S9を形成している。
【0104】
なお、ろ過装置900において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0105】
ろ過装置900は、流通路S9上においてフィルタ104の下流側から、流通路S9上においてフィルタ103の下流側であってフィルタ104の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路R3が形成されている。具体的には、ろ過装置900は、返送用の配管901を有し、この配管901によって、返送流通路R3が形成されている。配管901は、一端がフィルタ104の下流側で流通路S9と接続し、他端がフィルタ104の上流側かつフィルタ103の下流側で流通路S9と接続している。なお、返送流通路R3上には図示しないポンプ、ダンパ、及び、弁等が配置されていてもよい。
【0106】
返送流通路R2を流通して、フィルタ103の下流側であって、フィルタ104の上流側に返送された被精製液は、再度流通路S9を流通する過程でフィルタ104によってろ過される。ろ過装置900は循環ろ過が実施でき、結果として、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
【0107】
なお、
図9では、流通路S9上においてフィルタ104(フィルタBD)の下流側から、流通路S9上においてフィルタAの下流側であって、かつ、フィルタBDの上流側へと被精製液を返送できるよう配管901が配置されているが、本実施形態に係るろ過装置としては、流通路上においてフィルタBの下流側からフィルタAの下流側であって、かつ、フィルタBの上流側に被精製液を返送できるように構成されていればよい。
【0108】
図10は、本実施形態に係るろ過装置の変形例を示した模式図である。ろ過装置1000は、流入部101と、流出部102と、フィルタAであるフィルタ103と、フィルタBDであるフィルタ104-1(基準フィルタ)と、フィルタ104-2とを有し、フィルタ103、フィルタ104-1、及び、フィルタ104-2が、流入部101と流出部102との間に直列に配置され、流入部101から流出部102にいたる流通路S10を有するろ過装置である。
ろ過装置1000では、流入部101と、フィルタ103と、配管105と、フィルタ104-1と、配管1001と、フィルタ104-2と、流出部102とが、流通路S10を形成している。
【0109】
なお、ろ過装置1000において、各フィルタ、及び、配管の形態等としては既に説明した第一実施形態に係るろ過装置と同様であり、以下の説明は、第一実施形態と異なる部分のみに限って行う。従って、以下に説明のない事項は、第一実施形態に係るろ過装置と同様である。
【0110】
ろ過装置1000は、流通路S10上においてフィルタ104-1(基準フィルタ)の下流側から、流通路S10に対してフィルタ103の下流側であってフィルタ104-1(基準フィルタ)の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路R4が形成されている。具体的には、ろ過装置1000は、返送用の配管1002を有し、この配管1002によって、返送流通路R4が形成されている。配管1002は、一端がフィルタ103の下流側かつフィルタ104-1の上流側で流通路S10と接続し、他端がフィルタ104-1の下流側かつフィルタ104-2の上流側で流通路S10と接続している。なお、返送流通路R4には、図示しないポンプ、ダンパ、及び、弁等が配置されていてもよい。
【0111】
返送流通路R4によって、流通路S10上におけるフィルタ103の下流側であって、フィルタ104-1の上流側に返送された被精製液は、再度流通路S10を流通する過程でフィルタ104-1によってろ過される。ろ過装置1000によれば、循環ろ過が実施でき、結果として、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい。
【0112】
なお、
図10のろ過装置では、流通路S10上におけるフィルタ104-1の下流側、すなわち、フィルタ104-2の上流側から、フィルタ104-1の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路R4が形成されているが、本実施形態に係るろ過装置としては上記に制限されず、フィルタ104-2の下流側から、フィルタ104-2の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路が形成されているろ過装置、フィルタ104-2の下流側から、フィルタAの下流側であってフィルタ104-1の上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路が形成されているろ過装置、フィルタ104-1又はフィルタ104-2の下流側から、フィルタ103の上流側へと返送可能な返送流通路が形成されているろ過装置であってもよい。
【0113】
[薬液の製造方法(第一実施形態)]
本発明の実施形態に係る薬液の製造方法は、被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、既に説明したろ過装置を用いて被精製液をろ過して、薬液を得るろ過工程を有する。
【0114】
〔被精製液〕
本発明の実施形態に係る薬液の製造方法が適用できる被精製液としては特に制限されないが、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては有機溶剤、及び、水等が挙げられ、有機溶剤を含有することが好ましい。以下では、被精製液中に含有される溶剤の全質量に対して、有機溶剤の含有量(複数の有機溶剤を含有する場合にはその合計含有量)が50質量%を超える有機溶剤系と、被精製液中に含有される溶剤の全質量に対して、水の含有量が50質量%を超える水系とに分けて説明する。
【0115】
<有機溶剤系>
(有機溶剤)
有機溶剤系の被精製液は、溶剤を含有し、被精製液に含有される溶剤の全質量に対して有機溶剤の含有量が50質量%以上である。
被精製液は、有機溶剤を含有する。被精製液中における有機溶剤の含有量としては特に制限されないが、一般に被精製液の全質量に対して、99.0質量%以上が好ましい。上限値としては特に制限されないが、一般に、99.99999質量%以下が好ましい。
有機溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の有機溶剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0116】
なお、本明細書において、有機溶剤とは、上記被精製液の全質量に対して、1成分あたり10000質量ppmを超えた含有量で含有される液状の有機化合物を意図する。つまり、本明細書においては、上記被精製液の全質量に対して10000質量ppmを超えて含有される液状の有機化合物は、有機溶剤に該当するものとする。
なお、本明細書において液状とは、25℃、大気圧下において、液体であることを意味する。
【0117】
上記有機溶剤の種類としては特に制限されず、公知の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等が挙げられる。
また、有機溶剤としては、例えば、特開2016-57614号公報、特開2014-219664号公報、特開2016-138219号公報、及び、特開2015-135379号公報に記載のものを用いてもよい。
【0118】
有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMM)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGMP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル(EL)、メトキシプロピオン酸メチル(MPM)、シクロペンタノン(CyPn)、シクロヘキサノン(CyHe)、γ-ブチロラクトン(γBL)、ジイソアミルエーテル(DIAE)、酢酸ブチル(nBA)、酢酸イソアミル(iAA)、イソプロパノール(IPA)、4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジエチレングリコール(DEG)、エチレングリコール(EG)、ジプロピレングリコール(DPG)、プロピレングリコール(PG)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、スルホラン、シクロヘプタノン、及び、2-ヘプタノン(MAK)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0119】
なお、被精製液中における有機溶剤の種類及び含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。
【0120】
(その他の成分)
被精製液は、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、無機物(金属イオン、金属粒子、及び、金属酸化物粒子等)、樹脂、樹脂以外の有機物、及び、水等が挙げられる。
【0121】
・無機物
被精製液は、無機物を含有してもよい。無機物としては特に制限されず、金属イオン、及び、金属含有粒子等が挙げられる。
【0122】
金属含有粒子は金属原子を含有していればよく、その形態は特に制限されない。例えば、金属原子の単体か、金属原子を含有する化合物(以下「金属化合物」ともいう。)、並びに、これらの複合体等が挙げられる。また、金属含有粒子は複数の金属原子を含有してもよい。
【0123】
複合体としては特に制限されないが、金属原子の単体と、上記金属原子の単体の少なくとも一部を覆う金属化合物と、を有するいわゆるコア-シェル型の粒子、金属原子と他の原子とを含む固溶体粒子、金属原子と他の原子とを含む共晶体粒子、金属原子の単体と金属化合物との凝集体粒子、種類の異なる金属化合物の凝集体粒子、及び、粒子表面から中心に向かって連続的又は断続的に組成が変化する金属化合物等が挙げられる。
【0124】
金属化合物が含有する金属原子以外の原子としては特に制限されないが、例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、水素原子、硫黄原子、及び、燐原子等が挙げられる。
【0125】
金属原子としては特に制限されないが、Fe原子、Al原子、Cr原子、Ni原子、Pb原子、Zn原子、及び、Ti原子等が挙げられる。なお、金属含有粒子は、上記金属原子を1種を単独で含有しても、2種以上を併せて含有してもよい。
【0126】
無機物は、被精製液に添加されてもよいし、製造工程において意図せず被精製液に混合されてもよい。薬液の製造工程において意図せずに混合される場合としては例えば、無機物が、薬液の製造に用いる原料(例えば、有機溶剤)に含有されている場合、及び、薬液の製造工程で混合する(例えば、コンタミネーション)等が挙げられるが、上記に制限されない。
【0127】
(樹脂)
被精製液は樹脂を含有してもよい。
上記薬液は更に樹脂を含有してもよい。樹脂としては、酸の作用により分解して極性基を生じる基を有する樹脂Pがより好ましい。上記樹脂としては、酸の作用により有機溶剤を主成分とする現像液に対する溶解性が減少する樹脂である、後述する式(AI)で表される繰り返し単位を有する樹脂がより好ましい。後述する式(AI)で表される繰り返し単位を有する樹脂は、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する。
極性基としては、アルカリ可溶性基が挙げられる。アルカリ可溶性基としては、例えば、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、フェノール性水酸基、及びスルホ基が挙げられる。
【0128】
酸分解性基において極性基は酸で脱離する基(酸脱離性基)によって保護されている。酸脱離性基としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、及び、-C(R01)(R02)(OR39)等が挙げられる。
【0129】
式中、R36~R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0130】
R01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0131】
以下、酸の作用により有機溶剤を主成分とする現像液に対する溶解性が減少する樹脂Pについて詳述する。
【0132】
(式(AI):酸分解性基を有する繰り返し単位)
樹脂Pは、式(AI)で表される繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0133】
【0134】
式(AI)に於いて、
Xa1は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Ra1~Ra3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状又は分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環又は多環)を表す。
Ra1~Ra3の2つが結合して、シクロアルキル基(単環又は多環)を形成してもよい。
【0135】
Xa1により表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、及び-CH2-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基、又は1価の有機基を表す。
Xa1は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基が好ましい。
【0136】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH2-基、-(CH2)2-基、又は、-(CH2)3-基がより好ましい。
【0137】
Ra1~Ra3のアルキル基としては、炭素数1~4のものが好ましい。
【0138】
Ra1~Ra3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくはシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくはアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Ra1~Ra3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくはシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくはアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
【0139】
Ra1~Ra3の2つが結合して形成される上記シクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
【0140】
式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Ra1がメチル基又はエチル基であり、Ra2とRa3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0141】
上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシ基、及びアルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
【0142】
式(AI)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、20~90モル%が好ましく、25~85モル%がより好ましく、30~80モル%が更に好ましい。
【0143】
(ラクトン構造を有する繰り返し単位)
また、樹脂Pは、ラクトン構造を有する繰り返し単位Qを含有することが好ましい。
【0144】
ラクトン構造を有する繰り返し単位Qは、ラクトン構造を側鎖に有していることが好ましく、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーに由来する繰り返し単位であることがより好ましい。
ラクトン構造を有する繰り返し単位Qは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用していてもよいが、1種単独で用いることが好ましい。
ラクトン構造を有する繰り返し単位Qの含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、3~80モル%が好ましく、3~60モル%がより好ましい。
【0145】
ラクトン構造としては、5~7員環のラクトン構造が好ましく、5~7員環のラクトン構造にビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環している構造がより好ましい。
ラクトン構造としては、下記式(LC1-1)~(LC1-17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することが好ましい。ラクトン構造としては式(LC1-1)、式(LC1-4)、式(LC1-5)、又は式(LC1-8)で表されるラクトン構造が好ましく、式(LC1-4)で表されるラクトン構造がより好ましい。
【0146】
【0147】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び酸分解性基等が挙げられる。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上のとき、複数存在する置換基(Rb2)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0148】
(フェノール性水酸基を有する繰り返し単位)
また、樹脂Pは、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(I)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0149】
【0150】
式中、
R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はAr4と結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
【0151】
X4は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
L4は、単結合又はアルキレン基を表す。
Ar4は、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
【0152】
一般式(I)におけるR41、R42及びR43のアルキル基としては、置換基を有していてもよい、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
【0153】
一般式(I)におけるR41、R42及びR43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。シクロアルキル基としては、置換基を有していてもよい、シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基などの炭素数3~8で単環型のシクロアルキル基が好ましい。
【0154】
一般式(I)におけるR41、R42及びR43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0155】
一般式(I)におけるR41、R42及びR43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42及びR43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0156】
上記各基における置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、及び、ニトロ基等が挙げられ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0157】
Ar4は、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基及びアントラセニレン基などの炭素数6~18のアリーレン基、並びに、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール及びチアゾール等のヘテロ環を含む芳香環基が挙げられる。
【0158】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0159】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基及び(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42及びR43で挙げたアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基及びブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0160】
X4により表わされる-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、置換基を有していてもよい、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基がより好ましい。
【0161】
X4としては、単結合、-COO-又は-CONH-が好ましく、単結合又は-COO-がより好ましい。
【0162】
L4におけるアルキレン基としては、置換基を有していてもよい、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基及びオクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
【0163】
Ar4としては、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基又はビフェニレン環基がより好ましい。
【0164】
一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Ar4は、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0165】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、0~50モル%が好ましく、0~45モル%がより好ましく、0~40モル%が更に好ましい。
【0166】
(極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位)
樹脂Pは、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位、特に、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位を更に含有していてもよい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。
極性基で置換された脂環炭化水素構造の脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基又はノルボルナン基が好ましい。極性基としては、水酸基又はシアノ基が好ましい。
【0167】
樹脂Pが、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位を含有する場合、その含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、1~50モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましく、5~25モル%が更に好ましく、5~20モル%が特に好ましい。
【0168】
(一般式(VI)で表される繰り返し単位)
樹脂Pは、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位を含有していてもよい。
【0169】
【0170】
一般式(VI)中、
R61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R62はAr6と結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は単結合又はアルキレン基を表す。
X6は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表す。R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
L6は、単結合又はアルキレン基を表す。
Ar6は、(n+1)価の芳香環基を表し、R62と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
Y2は、n≧2の場合には各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Y2の少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1~4の整数を表す。
【0171】
酸の作用により脱離する基Y2としては、下記一般式(VI-A)で表される構造が好ましい。
【0172】
【0173】
L1及びL2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルキレン基とアリール基とを組み合わせた基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。
Q、M、L1の少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成してもよい。
【0174】
上記一般式(VI)で表される繰り返し単位は、下記一般式(3)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0175】
【0176】
一般式(3)において、
Ar3は、芳香環基を表す。
R3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基又はヘテロ環基を表す。
M3は、単結合又は2価の連結基を表す。
Q3は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。
Q3、M3及びR3の少なくとも二つが結合して環を形成してもよい。
【0177】
Ar3が表す芳香環基は、上記一般式(VI)におけるnが1である場合の、上記一般式(VI)におけるAr6と同様であり、フェニレン基又はナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0178】
(側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位)
樹脂Pは、更に、側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位を含有していてもよい。側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位としては、例えば、珪素原子を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、及び、珪素原子を有するビニル系繰り返し単位などが挙げられる。側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位は、典型的には、側鎖に珪素原子を有する基を有する繰り返し単位であり、珪素原子を有する基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリストリメチルシロキシシリル基、トリストリメチルシリルシリル基、メチルビストリメチルシリルシリル基、メチルビストリメチルシロキシシリル基、ジメチルトリメチルシリルシリル基、ジメチルトリメチルシロキシシリル基、及び、下記のような環状もしくは直鎖状ポリシロキサン、又はカゴ型あるいははしご型もしくはランダム型シルセスキオキサン構造などが挙げられる。式中、R、及び、R1は各々独立に、1価の置換基を表す。*は、結合手を表す。
【0179】
【0180】
上記の基を有する繰り返し単位としては、例えば、上記の基を有するアクリレート化合物又はメタクリレート化合物に由来する繰り返し単位、又は、上記の基とビニル基とを有する化合物に由来する繰り返し単位が好ましい。
【0181】
樹脂Pが、上記側鎖に珪素原子を有する繰り返し単位を有する場合、その含有量は、樹脂P中の全繰り返し単位に対して、1~30モル%が好ましく、5~25モル%がより好ましくは、5~20モル%が更に好ましい。
【0182】
樹脂Pの重量平均分子量は、GPC(Gel permeation chromatography)法によりポリスチレン換算値として、1,000~200,000が好ましく、3,000~20,000がより好ましく、5,000~15,000が更に好ましい。重量平均分子量を、1,000~200,000とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化したりすることを防ぐことができる。
【0183】
分散度(分子量分布)は、通常1~5であり、1~3が好ましく、1.2~3.0がより好ましく、1.2~2.0が更に好ましい。
【0184】
薬液中に含まれるその他の成分(例えば酸発生剤、塩基性化合物、クエンチャー、疎水性樹脂、界面活性剤、及び溶剤等)についてはいずれも公知のものを使用できる。
【0185】
<水系>
水系の被精製液は、被精製液が含有する溶剤の全質量に対して、水を50質量%超含有し、50~95質量%が好ましい。
上記水は、特に限定されないが、半導体製造に使用される超純水を用いることが好ましく、その超純水を更に精製し、無機陰イオン及び金属イオン等を低減させた水を用いることがより好ましい。精製方法は特に限定されないが、ろ過膜又はイオン交換膜を用いた精製、並びに、蒸留による精製が好ましい。また、例えば、特開2007―254168号公報に記載されている方法により精製を行うことが好ましい。
【0186】
(酸化剤)
水系の被精製液は、酸化剤を含有してもよい、酸化剤としては特に制限されず、公知の酸化剤が使用できる。酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化物、硝酸、硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、オゾン水、銀(II)塩、及び鉄(III)塩等が挙げられる。
【0187】
酸化剤の含有量としては特に制限されないが、研磨液全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、99.0質量%以下が好ましい。なお、酸化剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の酸化剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0188】
(無機酸)
水系被精製液は無機酸を含有してもよい。無機酸としては特に制限されず、公知の無機酸を用いることができる。無機酸としては例えば、硫酸、リン酸、及び、塩酸等が挙げられる。なお、無機酸は上述した酸化剤には含まれない。
被精製液中の無機酸の含有量としては特に制限されないが、被精製液の全質量に対して0.1質量%以上が好ましく、99.0質量%以下が更に好ましい。
無機酸は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の無機酸を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0189】
(防食剤)
水系被精製液は、防食剤を含有してもよい。防食剤としては特に制限されず、公知の防食剤が使用できる。防食剤としては例えば、1,2,4-トリアゾール(TAZ)、5-アミノテトラゾール(ATA)、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、3-アミノ-1H-1,2,4トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、トリルトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,3-トリアゾール、1-アミノ-5-メチル-1,2,3-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、ナフトトリアゾール、1H-テトラゾール-5-酢酸、2-メルカプトベンゾチアゾール(2-MBT)、1-フェニル-2-テトラゾリン-5-チオン、2-メルカプトベンゾイミダゾール(2-MBI)、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-メルカプトチアゾリン、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、チアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアジン、メチルテトラゾール、ビスムチオールI、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、ジアミノメチルトリアジン、イミダゾリンチオン、4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、ベンゾチアゾール、リン酸トリトリル、インダゾール、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ホスフェート阻害剤、アミン類、ピラゾール類、プロパンチオール、シラン類、第2級アミン類、ベンゾヒドロキサム酸類、複素環式窒素阻害剤、アスコルビン酸、チオ尿素、1,1,3,3-テトラメチル尿素、尿素、尿素誘導体類、尿酸、エチルキサントゲン酸カリウム、グリシン、ドデシルホスホン酸、イミノ二酢酸、ホウ酸、マロン酸、コハク酸、ニトリロ三酢酸、スルホラン、2,3,5-トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、キノキサリン、アセチルピロール、ピリダジン、ヒスタジン(histadine)、ピラジン、グルタチオン(還元型)、システイン、シスチン、チオフェン、メルカプトピリジンN-オキシド、チアミンHCl、テトラエチルチウラムジスルフィド、2,5-ジメルカプト-1,3-チアジアゾールアスコルビン酸、カテコール、t-ブチルカテコール、フェノール、及びピロガロールが挙げられる。
【0190】
上記防食剤としては、ドデカン酸、パルミチン酸、2-エチルヘキサン酸、及びシクロヘキサン酸等の脂肪族カルボン酸;クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸、マレイン酸、グリコール酸、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、サリチル酸、スルフォサリチル酸、アントラニル酸、N-メチルアントラニル酸、3-アミノ-2-ナフトエ酸、1-アミノ-2-ナフトエ酸、2-アミノ-1-ナフトエ酸、1-アミノアントラキノン-2-カルボン酸、タンニン酸、及び没食子酸等のキレート能を有するカルボン酸;等を用いることもできる。
【0191】
また、上記防食剤としては、やし脂肪酸塩、ヒマシ硫酸化油塩、ラウリルサルフェート塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、イソプロピルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート塩等のアニオン界面活性剤;オレイルアミン酢酸塩、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ヤシアルキルジメチルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アミドベタイン型活性剤、アラニン型活性剤、ラウリルイミノジプロピオン酸等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル等、ポリオキシアルキレン一級アルキルエーテル又はポリオキシアルキレン二級アルキルエーテルのノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、ソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド等のその他のポリオキアルキレン系のノニオン界面活性剤;オクチルステアレート、トリメチロールプロパントリデカノエート等の脂肪酸アルキルエステル;ポリオキシアルキレンブチルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル等のポリエーテルポリオールを用いることもできる。
上記の市販品としては、例えばニューカルゲンFS-3PG(竹本油脂社製)、及びホステンHLP-1(日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0192】
また、防食剤としては、親水性ポリマーを用いることもできる。
親水性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール等のポリグリコール類、ポリグリコール類のアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸等の多糖類、ポリメタクリル酸、及びポリアクリル酸等のカルボン酸含有ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、及びポリエチレンイミン等が挙げられる。そのような親水性ポリマーの具体例としては、特開2009-88243号公報0042~0044段落、特開2007-194261号公報0026段落に記載されている水溶性ポリマーが挙げられる。
【0193】
また、防食剤としては、セリウム塩を用いることもできる。
セリウム塩としては特に制限されず、公知のセリウム塩を用いることができる。
セリウム塩としては、例えば、3価のセリウム塩として、酢酸セリウム、硝酸セリウム、塩化セリウム、炭酸セリウム、シュウ酸セリウム、及び硫酸セリウム等が挙げられる。また、4価のセリウム塩として、硫酸セリウム、硫酸セリウムアンモニウム、硝酸セリウムアンモニウム、硝酸二アンモニウムセリウム、及び水酸化セリウム等が挙げられる。
【0194】
防食剤は、置換、又は無置換のベンゾトリアゾールを含んでもよい。好適な置換型ベンゾトリアゾールには、これらに限定されないが、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、又は水酸基で置換されたベンゾトリアゾールが含まれる。置換型ベンゾトリアゾールには、1以上のアリール(例えば、フェニル)又はヘテロアリール基で融合されたものも含まれる。
【0195】
被精製液中の防食剤の含有量は、薬液の全質量に対して、0.01~5質量%となるよう、調整されることが好ましく、0.05~5質量%となるよう調整されることがより好ましく、0.1~3質量%となるよう調整されることが更に好ましい。
防食剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の防食剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0196】
(有機溶剤)
水系被精製液は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては特に制限されないが、有機溶剤系被精製液が含有する被精製液として既に説明したとおりである。有機溶剤を含有する場合、被精製液が含有する溶剤の全質量に対して、有機溶剤の含有量は5~35質量%が好ましい。
【0197】
〔被精製液の物性:pH〕
被精製液のpHとしては特に制限されないが、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる点で、0~9が好ましく、0~7がより好ましい。なお、本明細書において、被精製液のpHとは、25℃に調整した被精製液を用いて、ガラス電極法により測定した値を意味する。
【0198】
〔ろ過工程〕
本実施形態に係る薬液の製造方法は、既に説明したろ過装置を用いて、上記被精製液をろ過して、薬液を得るろ過工程を有する。
上記ろ過装置は、フィルタAとフィルタBとが直列に配置されて形成された流通路を有する。各フィルタに対する被精製液の供給圧力としては特に制限されないが、一般に、0.00010~1.0MPaが好ましい。
なかでも、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる点で、供給圧力P2は、0.00050~0.090MPaが好ましく、0.0010~0.050MPaがより好ましく、0.0050~0.040MPaが更に好ましい。
また、ろ過圧力はろ過精度に影響を与えることから、ろ過時における圧力の脈動は可能な限り少ない方が好ましい。
【0199】
ろ過速度は特に限定されないが、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られやすい点で、1.0L/分/m2以上が好ましく、0.75L/分/m2以上がより好ましく、0.6L/分/m2以上が更に好ましい。
フィルタにはフィルタ性能(フィルタが壊れない)を保障する耐差圧が設定されており、この値が大きい場合にはろ過圧力を高めることでろ過速度を高めることができる。つまり、上記ろ過速度上限は、通常、フィルタの耐差圧に依存するが、通常、10.0L/分/m2以下が好ましい。
【0200】
被精製液をフィルタに通す際の温度としては特に制限されないが、一般に、室温未満が好ましい。
【0201】
なお、ろ過工程は、クリーンな環境下で実施するのが好ましい。具体的には米国連邦規格(Fed.Std.209E)のClass1000(ISO14644-1:2015では、Class6)を満たすクリーンルームで実施するのが好ましく、Class100(ISO14644-1:2015では、Class5)を満たすクリーンルームがより好ましく、Class10(ISO14644-1:2015では、Class4)を満たすクリーンルームが更に好ましく、Class1(ISO14644-1:2015では、Class3)又はそれ以上の清浄度(クラス2、又は、クラス1)を有するクリーンルームが特に好ましい。
なお、後述する各工程も、上記クリーン環境下にて実施することが好ましい。
【0202】
また、ろ過装置が返送流通路を有している場合、ろ過工程は循環ろ過工程であってもよい。循環ろ過工程とは、被精製液を少なくともフィルタAでろ過し、フィルタAでろ過した後の被精製液を流通路に対してフィルタAの上流に返送し、再度フィルタAでろ過する工程である。
循環ろ過の回数としては特に制限されないが、一般に1~10回が好ましい。なお、循環ろ過はフィルタAによるろ過を繰り返すよう、被精製液をフィルタAの上流に返送すればよいが、この際、フィルタAに加えて少なくとも1のフィルタBによるろ過も合わせ繰り返すよう、返送流通路を調整してもよい。
【0203】
〔その他の工程〕
本実施形態に係る薬液の製造方法は、上記以外の工程を有していてもよい。上記以外の工程としては、例えば、フィルタ洗浄工程、装置洗浄工程、除電工程、及び、被精製液準備工程等が挙げられる。以下では、各工程について詳述する。
【0204】
<フィルタ洗浄工程>
フィルタ洗浄工程は、ろ過工程の前にフィルタA及びフィルタBを洗浄する工程である。フィルタを洗浄する方法としては特に制限されないが、例えば、フィルタを浸漬液に浸漬する方法、フィルタに洗浄液を通液して洗浄する方法、及び、これらの組合せ等が挙げられる。
【0205】
(フィルタを浸漬液に浸漬する方法)
フィルタを浸漬液に浸漬する方法としては、例えば、浸漬用容器を浸漬液で満たし、上記浸漬液にフィルタを浸漬する方法が挙げられる。
【0206】
・浸漬液
浸漬液としては特に制限されず、公知の浸漬液を使用できる。なかでもより優れた本発明の効果が得られる点で、浸漬液としては、水又は有機溶剤を主成分として含有することが好ましく、有機溶剤を主成分として含有することがより好ましい。本明細書において主成分とは、浸漬液の全質量に対して99.9質量%以上含有される成分を意味し、99.99質量%以上含有することがより好ましい。
【0207】
上記有機溶剤としては特に制限されず、被精製液が含有する有機溶剤として既に説明した有機溶剤が使用できる。なかでもより優れた本発明の効果が得られる点で、洗浄液としてはエステル系溶剤、及び、ケトン系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有することが好ましい。またこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0208】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、及び、乳酸ブチル等が挙げられるが上記に制限されない。
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、2-ヘプタノン(MAK)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、及び、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等が挙げられるが上記に制限されない。
【0209】
浸漬液にフィルタを浸漬する時間としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果が得られる点で、7日~1年が好ましい。
浸漬液の温度としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果が得られる点で、20℃以上が好ましい。
【0210】
フィルタを浸漬液に浸漬液に浸漬する方法としては、浸漬用容器に浸漬液を満たし、上記浸漬液にフィルタを浸漬する方法が挙げられる。
浸漬用容器としては、既に説明したろ過装置において、フィルタユニットが有するハウジングも使用できる。すなわち、ろ過装置が有するハウジングにフィルタ(典型的にはフィルタカートリッジ)を収納した状態で、ハウジング内に浸漬液を満たし、その状態で静置する方法が挙げられる。
また、上記以外にも、浸漬用容器を精製装置が有するハウジングとは別途準備し(すなわち、精製装置外において浸漬用容器を準備し)、別途準備した浸漬用容器に浸漬液を満たし、フィルタを浸漬する方法も挙げられる。
なかでも、フィルタから溶出した不純物がろ過装置内に混入しない点で、ろ過装置外に準備した浸漬用容器に浸漬液を満たし、上記浸漬液にフィルタを浸漬する方法が好ましい。
【0211】
浸漬用容器の形状及び大きさ等は、浸漬するフィルタの数及び大きさ等によって適宜選択でき特に制限されない。
浸漬用容器の材料としては、特に制限されないが、少なくとも接液部が、既に説明した耐腐食材料で形成されていることが好ましい。
また、浸漬用容器の材料としては、ポリフルオロカーボン(PTFE、PFA:パーフルオロアルコキシアルカン、及び、PCTFE:ポリクロロトリフルオロエチレン等)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、POM(ポリオキシメチレン)、並びに、ポリオレフィン(PP、及び、PE等)からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、ポリフルオロカーボン、PPS、及び、POMからなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましく、ポリフルオロカーボンを含有することが更に好ましく、PTFE、PFA、及び、PCTFEからなる群から選択される少なくとも1種を含有することが特に好ましく、PTFEを含有することが最も好ましい。
また、浸漬用容器は、使用前に洗浄することが好ましく、洗浄の際には浸漬液を使用して洗浄(いわゆる共洗い)することが好ましい。
【0212】
(フィルタに洗浄液を通液して洗浄する方法)
フィルタに洗浄液を通液して洗浄する方法としては特に制限されないが、例えば、既に説明したろ過装置のフィルタユニットのフィルタハウジングに、フィルタ(典型的にはフィルタカートリッジ)を収納し、上記フィルタハウジングに洗浄液を導入することで、フィルタに洗浄液を通液する方法が挙げられる。
【0213】
洗浄の際、フィルタに付着した不純物は、洗浄液に移行(典型的には、溶解)し、洗浄液中の不純物含有量が増加していく。従って、1度フィルタに通液させた洗浄液は、再度洗浄には使用せず、ろ過装置外に排出することが好ましい。言い換えれば循環洗浄しないことが好ましい。
【0214】
フィルタに洗浄液を通液して洗浄する方法の他の形態として、洗浄装置を用いてフィルタを洗浄する方法が挙げられる。本明細書において、洗浄装置とは、ろ過装置外に設けられたろ過装置とは異なる装置を意味する。洗浄装置の形態としては特に制限されないが、ろ過装置と同様の構成の装置が使用できる。
【0215】
・洗浄液
フィルタに洗浄液を通液して洗浄する場合における洗浄液としては特に制限されず、公知の洗浄液が使用できる。なかでも、より優れた本発明の効果が得られる点で、洗浄液の形態としては、既に説明した浸漬液と同様であることが好ましい。
【0216】
<装置洗浄工程>
装置洗浄工程は、ろ過工程の前に、ろ過装置の接液部を洗浄する工程である。ろ過工程の前にろ過装置の接液部を洗浄する方法としては特に制限されないが、以下では、フィルタがカートリッジフィルタであり、上記カートリッジフィルタが、流通路上に配置されたハウジング内に収納されるろ過装置を例として説明する。
【0217】
装置洗浄工程は、ハウジングからカートリッジフィルタが取り除かれた状態で洗浄液を用いてろ過装置の接液部を洗浄する工程A、及び、工程Aの後に、カートリッジフィルタをハウジングに収納し、更に洗浄液を用いてろ過装置の接液部を洗浄する工程Bを有することが好ましい。
【0218】
・工程A
工程Aは、ハウジングからカートリッジフィルタが取り除かれた状態で、洗浄液を用いてろ過装置の接液部を洗浄する工程である。ハウジングからフィルタが取り除かれた状態で、とは、ハウジングからフィルタカートリッジを取り除くか、ハウジングにフィルタカートリッジを収納する前に、洗浄液を用いてろ過装置の接液部を洗浄することを意味する。
ハウジングからフィルタが取り除かれた状態における(以下「フィルタ未収納の」ともいう。)ろ過装置の接液部を、洗浄液を用いて洗浄する方法としては特に制限されない。流入部から洗浄液を導入し、流出部から回収する方法が挙げられる。
【0219】
なかでも、より優れた本発明の効果が得られる点で、洗浄液を用いてフィルタ未収納のろ過装置の接液部を洗浄する方法としては、フィルタ未収納のろ過装置の内部を洗浄液で満たす方法が挙げられる。フィルタ未収納のろ過装置の内部を洗浄液で満たすことにより、フィルタ未収納のろ過装置の接液部が洗浄液と接触する。これにより、ろ過装置の接液部に付着している不純物が洗浄液へと移行(典型的には溶出)する。そして、洗浄後の洗浄液はろ過装置外に排出すればよい(典型的には流出部から排出すればよい)。
【0220】
・洗浄液
洗浄液としては特に制限されず、公知の洗浄液を使用できる。なかでもより優れた本発明の効果が得られる点で、洗浄液としては、水又は有機溶剤を主成分として含有することが好ましく、有機溶剤を主成分として含有することがより好ましい。本明細書において主成分とは、洗浄液の全質量に対して99.9質量%以上含有される成分を意味し、99.99質量%以上含有することがより好ましい。
【0221】
上記有機溶剤としては特に制限されず、薬液が含有する有機溶剤として既に説明した水、有機溶剤が使用できる。有機溶剤としては、より優れた本発明の効果が得られる点で、PGMEA、シクロヘキサノン、乳酸エチル、酢酸ブチル、MIBC、MMP(3-メチルメトキシプロピオネート)、MAK、酢酸n-ペンチル、エチレングリコール、酢酸イソペンチル、PGME、MEK(メチルエチルケトン)、1-ヘキサノール、及び、デカンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0222】
・工程B
工程Bは、ハウジングにフィルタが収納された状態で、洗浄液を用いてろ過装置を洗浄する方法である。
洗浄液を用いてろ過装置を洗浄する方法としては、既に説明した工程Aにおける洗浄方法のほか、ろ過装置に洗浄液を通液する方法も使用できる。ろ過装置に洗浄液を通液する方法としては特に制限されないが、流入部から洗浄液を導入し、流出部から排出すればよい。なお、本工程で使用できる洗浄液としては特に制限されず、工程Aで説明した洗浄液を使用できる。
【0223】
<除電工程>
除電工程は、被精製液を除電することで、被精製液の帯電電位を低減させる工程である。除電方法としては特に制限されず、公知の除電方法を用いることができる。除電方法としては、例えば、被精製液を導電性材料に接触させる方法が挙げられる。
被精製液を導電性材料に接触させる接触時間は、0.001~60秒が好ましく、0.001~1秒がより好ましく、0.01~0.1秒が更に好ましい。導電性材料としては、ステンレス鋼、金、白金、ダイヤモンド、及びグラッシーカーボン等が挙げられる。
被精製液を導電性材料に接触させる方法としては、例えば、導電性材料からなる接地されたメッシュを、流通路を横切るように配置し、ここに被精製液を流通させる方法等が挙げられる。
【0224】
<被精製液準備工程>
被精製液準備工程は、ろ過装置の流入部から流入させる被精製液を準備する工程である。被精製液を準備する方法としては特に制限されない。典型的には、市販品(例えば、「高純度グレード品」と呼ばれるもの等)を購入する方法、1種又は2種以上の原料を反応させて得る方法、及び、各成分を溶剤に溶解する方法等が挙げられる。
【0225】
原料を反応させて被精製液(典型的には、有機溶剤を含有する被精製液)を得る方法として特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、触媒の存在下において、1つ又は2つ以上の原料を反応させて、有機溶剤を含有する被精製液を得る方法が挙げられる。
より具体的には、例えば、酢酸とn-ブタノールとを硫酸の存在下で反応させ、酢酸ブチルを得る方法;エチレン、酸素、及び、水をAl(C2H5)3の存在下で反応させ、1-ヘキサノールを得る方法;シス-4-メチル-2-ペンテンをIpc2BH(Diisopinocampheylborane)の存在下で反応させ、4-メチル-2-ペンタノールを得る方法;プロピレンオキシド、メタノール、及び、酢酸を硫酸の存在下で反応させ、PGMEA(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート)を得る方法;アセトン、及び、水素を酸化銅-酸化亜鉛-酸化アルミニウムの存在下で反応させて、IPA(isopropyl alcohol)を得る方法;乳酸、及び、エタノールを反応させて、乳酸エチルを得る方法;等が挙げられる。
【0226】
また、本工程は、被精製液をろ過装置に流入させる前に、予め精製する予備精製工程を有していてもよい。予備精製工程としては特に制限されないが、蒸留装置を用いて、被精製液を精製する方法が挙げられる。
【0227】
予備精製工程において、蒸留装置を用いて被精製液を精製する方法としては特に制限されず、例えば、ろ過装置と別に準備した蒸留装置を用いて予め被精製液を精製して蒸留済み被精製液を得て、これを可搬型タンクに貯留して、ろ過装置まで運搬して導入する方法、及び、後述する精製装置を用いる方法が挙げられる。
【0228】
まず、
図11を用いて、ろ過装置と別に準備した蒸留装置を用いて予め被精製液を精製する方法(予備精製工程)について説明する。
図11は蒸留器で予め精製された蒸留済み被精製液を使用して薬液を製造する場合の各装置の関係を表す模式図である。
図11において、ろ過装置400の形態は、既に説明した本発明の第三実施形態に係るろ過装置と同様のため説明は省略する。
【0229】
薬液の製造場1100には、ろ過装置400と蒸留装置1101が配置されている。蒸留装置1101は、タンク401(a)と、蒸留器1102と、可搬型タンク1103とを有し、それぞれが配管1104、及び、配管1105で接続され、タンク401(a)配管1104、蒸留器1102、配管1105、可搬型タンク1103により、流通路S11が形成されている。
タンク401(a)及び各配管の形態は特に制限されず、本発明の実施形態に係るろ過装置が有するタンク及び配管として説明したのと同様の形態のタンク及び配管が使用できる。蒸留器1102の形態は、本発明の実施形態に係る精製装置が有する蒸留器と同様の蒸留器を使用でき、その形態は後述する。
【0230】
蒸留装置1101において、タンク401(a)に導入された被精製液は、蒸留器1102で蒸留され、得られた蒸留済み被精製液は、可搬型タンク1103に貯留される。可搬型タンクの形態としては特に制限されないが、接液部の少なくとも一部(好ましくは接液部の表面積の90%以上、より好ましくは接液部の表面積の99%以上)が後述する耐腐食材料からなることが好ましい。
【0231】
可搬型タンク1103に一旦貯留された蒸留済み被精製液は、運搬手段1106によって運搬され(
図11中のF1のフロー)、その後、蒸留済み被精製液は、ろ過装置の流入部101から、ろ過装置400へと導入される。
【0232】
なお、
図11では、同一の製造場内に蒸留装置とろ過装置が配置されている形態を説明したが、蒸留装置とろ過装置は別の製造場に配置されていてもよい。
【0233】
次に、蒸留器とろ過装置とを有する精製装置を用いる予備精製工程について説明する。まずは、本工程で使用する精製装置について説明する。
(精製装置)
本工程で使用する精製装置は、既に説明したろ過装置を有する精製装置である。本発明の実施形態に係る精製装置は、既に説明したろ過装置と、第2の流入部と、第2の流出部と、第2の流入部と第2の流出部との間に配置された少なくとも1つの蒸留器と、を有し、上記第2の流出部と既に説明したろ過装置が有する流入部とが接続され、上記第2の流入部から、上記ろ過装置が有する流出部にいたる流通路が形成された精製装置である。以下では、上記精製装置について、図面を示しながら説明する。
なお、下記の説明において、ろ過装置の構成に関する内容は、既に説明した内容と同様であり説明を省略する。
【0234】
・精製装置の第一実施形態
図12は本発明の精製装置の第一実施形態を表す模式図である。精製装置1200は、第2の流入部1201と、第2の流出部1202と、第2の流入部1201と第2の流出部1202との間に配置された蒸留器1203と、を有し、第2の流出部1202が、ろ過装置が有する流入部101と接続されている。これにより精製装置1200においては、第2の流入部1201、蒸留器1203、第2の流出部1202、流入部101、フィルタ103(フィルタA)、配管105、フィルタ104(フィルタBD)、及び、流出部102により流通路S12が形成されている。
すなわち、蒸留器1203が、ろ過装置100の流入部101に接続されている。
【0235】
第2の流入部1201から精製装置1200内に流入した被精製液は、蒸留器1203において蒸留された後、第2の流出部1202を経て、流入部101から、ろ過装置100へと導入される。本精製装置を用いて予備精製工程を行うと、蒸留済み被精製液を装置外に出さずに次の工程(ろ過工程)が実施できるため、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる。
【0236】
なお、蒸留器1203の形態は特に制限されず、公知の蒸留器(例えば蒸留塔)を使用できる。なお、蒸留器1203の材料としてはすでに説明したハウジングと同様の材料を使用でき、特に、蒸留器1203の接液部の少なくとも一部が、後述する耐腐食材料からなることが好ましく、接液部の面積の90%以上が耐腐食材料からなることが好ましく、接液部の面積の99%が耐腐食材料からなることがより好ましい。
【0237】
蒸留器としては特に制限されず、公知の蒸留器が使用できる。蒸留器としては、回分式であっても連続式であってもよいが、連続式が好ましい。また、蒸留器は内部に充填物を有していてもよい。充填物の形態としては特に制限されないが、接液部の少なくとも一部が、後述する耐腐食材料からなることが好ましく、接液部の面積の90%以上が耐腐食材料からなることが好ましく、接液部の面積の99%が耐腐食材料からなることがより好ましい。
【0238】
なお、
図12において、精製装置1200として、流入部と流出部の間に、フィルタAと、フィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えばろ過装置の第一実施形態)のろ過装置を有しているが、これに代えて、流入部と流出部の間にフィルタBUとフィルタAがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態)のろ過装置、及び、流入部と流出部の間にフィルタBU、フィルタA,及び、フィルタBDがこの順に直列に配置された形態(例えば第二実施形態の変形例)のろ過装置を有していてもよい。
【0239】
また、精製装置は、第2の流入部1201、蒸留器1203、第2の流出部1202、流入部101、フィルタ103、配管105、フィルタ104、流出部102で形成される流通路S12上において、フィルタ103(フィルタA)の下流側から、流通路S120上においてフィルタ103(フィルタA)の上流へと、被精製液を返送可能な返送流通路が形成されていてもよい。なお、返送流通路の形態としては特に制限されないが、ろ過装置の第五実施形態において説明したのと同様である。また、返送流通路の形態としては、ろ過装置の第六実施形態において説明したのと同様であってもよい。
【0240】
また、本実施形態に係る精製装置は、流通路S12上におけるフィルタ103の上流側、及び/又は、下流側にタンクを有していてもよい。タンクの形態としては特に制限されず、既に説明したのと同様のタンクが使用できる。
【0241】
・精製装置の第二実施形態
図13は精製装置の第二実施形態を表す模式図である。精製装置1300は、第2の流入部1301と、第2の流出部1302と、第2の流入部1301と第2の流出部1302との間に直列に配置された蒸留器1303及び蒸留器1304と、を有し、第2の流出部1302が、ろ過装置が有する流入部101と接続されている。これにより精製装置1300においては、第2の流入部1301、蒸留器1303、配管1305、蒸留器1304、第2の流出部1302、流入部101、フィルタ103(フィルタA)、配管105、フィルタ104(フィルタBD)、及び、流出部102により流通路S13が形成されている。
すなわち、本実施形態に係る精製装置は、直列に接続された複数の蒸留器を含む。なお、直列に接続された蒸留器を3つ以上含む場合は、最後段の蒸留器がろ過装置と接続される。
【0242】
精製装置1300においては、第2の流入部1301から流入した被精製液は蒸留器1303で蒸留され、配管1305を流通して蒸留器1304に導入される。なお、
図13では、蒸留器1303と蒸留器1304とが配管1305によって接続された形態を表わしているが、本実施形態に係る精製装置としては上記に制限されず、蒸留器1304の凝縮液を再度、蒸留器1303に返送可能な配管を別途有していてもよい。
【0243】
本実施形態に係る精製装置は、蒸留器を2つ有するため、2つの蒸留器の運転条件等を適宜制御することにより、被精製液が沸点の異なる2種以上の化合物を含有している場合であっても、目的の化合物(薬液)をより高純度に精製可能である。
【0244】
〔耐腐食材料〕
次に、耐腐食材料について説明する。これまで説明した本発明の実施形態に係るろ過装置、及び、精製装置は、その接液部の少なくとも一部が耐腐食材料で形成されていることが好ましく、接液部の90%以上が耐腐食材料で形成されていることがより好ましく、接液部の99%以上が耐腐食材料で形成されていることが更に好ましい。
【0245】
接液部が耐腐食材料で形成されている状態としては特に制限されないが、典型的には各部材(例えば、これまで説明したタンク等)が耐腐食材料で形成されているもの、及び、各部材が、基材と、基材上に配置された被覆層とを有し、上記被覆層が耐腐食材料で形成されているもの等が挙げられる。
【0246】
耐腐食材料は、非金属材料、及び、電解研磨された金属材料である。上記非金属材料としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン-エチレン共重合樹脂、三フッ化塩化エチレン-エチレン共重合樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂、及び、フッ化ビニル樹脂等が挙げられるが、これに制限されない。
【0247】
上記金属材料としては、特に制限されないが、例えば、Cr及びNiの含有量の合計が金属材料全質量に対して25質量%超である金属材料が挙げられ、なかでも、30質量%以上がより好ましい。金属材料におけるCr及びNiの含有量の合計の上限値としては特に制限されないが、一般に90質量%以下が好ましい。
金属材料としては例えば、ステンレス鋼、及びNi-Cr合金等が挙げられる。
【0248】
ステンレス鋼としては、特に制限されず、公知のステンレス鋼が使用できる。なかでも、Niを8質量%以上含有する合金が好ましく、Niを8質量%以上含有するオーステナイト系ステンレス鋼がより好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えばSUS(Steel Use Stainless)304(Ni含有量8質量%、Cr含有量18質量%)、SUS304L(Ni含有量9質量%、Cr含有量18質量%)、SUS316(Ni含有量10質量%、Cr含有量16質量%)、及びSUS316L(Ni含有量12質量%、Cr含有量16質量%)等が挙げられる。
【0249】
Ni-Cr合金としては、特に制限されず、公知のNi-Cr合金が使用できる。なかでも、Ni含有量が40~75質量%、Cr含有量が1~30質量%のNiCr合金が好ましい。
Ni-Cr合金としては、例えば、ハステロイ(商品名、以下同じ。)、モネル(商品名、以下同じ)、及びインコネル(商品名、以下同じ)等が挙げられる。より具体的には、ハステロイC-276(Ni含有量63質量%、Cr含有量16質量%)、ハステロイ-C(Ni含有量60質量%、Cr含有量17質量%)、ハステロイC-22(Ni含有量61質量%、Cr含有量22質量%)等が挙げられる。
また、Ni-Cr合金は、必要に応じて、上記した合金の他に、更に、B、Si、W、Mo、Cu、及び、Co等を含有していてもよい。
【0250】
金属材料を電解研磨する方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、特開2015-227501号公報の0011~0014段落、及び、特開2008-264929号公報の0036~0042段落等に記載された方法が使用できる。
【0251】
金属材料は、電解研磨されることにより表面の不動態層におけるCrの含有量が、母相のCrの含有量よりも多くなっているものと推測される。そのため、接液部が電解研磨された金属材料から形成された精製装置を用いると、被精製液中に金属原子を含有する金属不純物が流出しにくいものと推測される。
なお、金属材料はバフ研磨されていてもよい。バフ研磨の方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。バフ研磨の仕上げに用いられる研磨砥粒のサイズは特に制限されないが、金属材料の表面の凹凸がより小さくなりやすい点で、#400以下が好ましい。なお、バフ研磨は、電解研磨の前に行われることが好ましい。
【0252】
[薬液の製造方法(第二実施形態)]
本発明の第二の実施形態に係る薬液の製造方法は、被精製液を精製して薬液を得る、薬液の製造方法であって、被精製液を、ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質基材と、基材の少なくとも一部を覆うように形成されたペルフルオロスルホン酸ポリマーを含有する非架橋コーティングとを有する第1多孔質膜、及び、ペルフルオロスルホン酸ポリマーとブレンドされたポリテトラフルオロエチレンを含有する第2多孔質膜、からなる群より選択される少なくとも1種を含むフィルタA、並びに、フィルタAとは異なるフィルタB、を用いてろ過して薬液を得る工程を有する、薬液の製造方法である。
【0253】
以下では第二実施形態に係る薬液の製造方法について説明するが、以下に説明のない材料、方法、及び、条件等については、第一実施形態に係る薬液の製造方法と同様である。
本実施形態に係る薬液の製造方法は、被精製液をフィルタA及びフィルタAとは異なるフィルタBを用いてろ過する。被精製液をろ過する際、フィルタA、フィルタBの順に通液してもよいし、フィルタB、フィルタAの順に通液してもよい。
なお、本実施形態に係る薬液の製造方法としては、フィルタA及びフィルタBを用いていれば特に制限されず、複数のフィルタA、及び/又は、複数のフィルタBを順番に用いて被精製液をろ過してもよい。
【0254】
フィルタB、フィルタAの順に用いる場合、フィルタBの形態としては特に制限されないが、フィルタBUとして説明したフィルタを用いることが好ましい。また、フィルタA、フィルタBの順に用いる場合、フィルタBの形態としては特に制限されないが、フィルタBDとして説明したフィルタを用いることが好ましい。
【0255】
[薬液]
上記ろ過装置を用いて製造される薬液は半導体基板の製造に用いられることが好ましい。特に、ノード10nm以下の微細パターンを形成するため(例えば、EUVを用いたパターン形成を含む工程)に用いられることがより好ましい。
言い換えれば、上記ろ過装置は、半導体基板の製造用の薬液の製造に用いられることが好ましく、具体的には、リソグラフィー工程、エッチング工程、イオン注入工程、及び、剥離工程等を含有する半導体デバイスの製造工程において、各工程の終了後、又は、次の工程に移る前に、無機物、及び/又は、有機物を処理するために使用され、具体的には洗浄液、エッチング液、リンス液、前処理液、レジスト液、プリウェット液、及び、現像液等の製造に用いられることがより好ましく、洗浄液、エッチング液、リンス液、前処理液、及び、レジスト液からなる群より選択される少なくとも1種の製造に用いられることが好ましい。
【0256】
また、上記ろ過装置は、レジスト塗布前後の半導体基板のエッジラインのリンスに用いられる薬液の製造にも使用ができる。
また、上記ろ過装置は、レジスト液に含有される樹脂の希釈液、レジスト液に含有される溶剤の製造にも使用できる。
【0257】
また、上記ろ過装置は、半導体基板の製造用以外の、他の用途に用いられる薬液の製造にも用いることができ、ポリイミド、センサー用レジスト、レンズ用レジスト等の現像液、及び、リンス液等の製造用としても使用できる。
また、上記ろ過装置は、医療用途又は洗浄用途の溶媒の製造にも使用できる。特に、容器、配管、及び、基板(例えば、ウェハ、及び、ガラス等)等の洗浄に用いる薬液の製造に使用できる。
なかでも、上記ろ過装置は、EUV(極紫外線)を用いたパターン形成における、プリウェット液、現像液、及び、リンス液からなる群より選択される少なくとも1種の製造に使用するのが好ましい。
【0258】
[薬液収容体]
上記ろ過装置により製造された薬液は、容器に収容されて使用時まで保管されてもよい。このような容器と、容器に収容された薬液とをあわせて薬液収容体という。保管された薬液収容体からは、薬液が取り出され使用される。
【0259】
上記薬液を保管する容器としては、半導体基板製造用に、容器内のクリーン度が高く、薬液を保管中に、薬液に対して不純物の溶出しにくいものが好ましい。
使用可能な容器としては、特に制限されないが、例えば、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、及び、コダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0260】
容器としては、薬液への不純物混入(コンタミ)防止を目的として、容器内壁を6種の樹脂による6層構造とした多層ボトル、又は、6種の樹脂による7層構造とした多層ボトルを使用することも好ましい。これらの容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0261】
この容器の接液部の少なくとも一部は、既に説明した耐腐食材料からなることが好ましい。より優れた本発明の効果が得られる点で、接液部の面積の90%以上が上記材料からなることが好ましい。
【実施例】
【0262】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料成分、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0263】
また、実施例及び比較例の薬液の調製にあたって、容器の取り扱い、薬液の調製、充填、保管及び分析測定は、全てISOクラス2又は1を満たすレベルのクリーンルームで行った。測定精度向上のため、有機不純物の含有量の測定、及び、金属原子の含有量の測定においては、通常の測定で検出限界以下のものの測定を行う際には、薬液を体積換算で100分の1に濃縮して測定を行い、濃縮前の溶液の濃度に換算して含有量を算出した。なお、精製に仕様した装置やフィルタ、容器などの器具は、薬液接液面を、同様の手法で精製しておいた薬液で十分に洗浄してから用いた。
【0264】
[試験例1:有機溶剤系被精製液の精製、及び、薬液の性能評価]
【0265】
〔薬液1の製造〕
図14に記載した精製装置を使用して、薬液1を製造した。
図14の精製装置は、流入部と流出部の間に、フィルタBU-1、タンクT-1、フィルタBU-2、フィルタF-A、タンクT-2、フィルタBD-1、及び、フィルタBD-2が、直列に接続されたろ過装置と、上記ろ過装置の前段に接続された蒸留器(D1及びD2の2連の蒸留器、表1中では「2連式」と記載した。)とを有する。各ユニットは配管と共に流通路S-14を形成するとともに、流通路S-14においてフィルタF-A(フィルタF-Aは既に説明したフィルタAに該当する)の下流側からタンクT-1へと、被精製液を返送可能な返送流通路R-14-1が形成され、流通路S-14において、フィルタBD-2の下流側からタンクT-2へと、被精製液を返送可能な返送流通路R-14-2が形成されている。
なお、薬液1の製造に用いた各フィルタが含有する材料成分、及び、孔径は表1に示した。
【0266】
表1のフィルタの材料成分に関する略号は以下のとおりである。
・PFSA/PTFE:
市販品のEntegris, inc., 製Fluoroguard AT(孔径20nm、又は、200nm)を、0.25%のPFSA溶液(アクイヴィオンPFSA 24:D83-24B Solvay Plastics)をメタノール水溶媒中で調製したポリマー液へ十分濡れるまで浸漬した後、水切りし、その後乾燥させて、超純水を用いて24時間洗浄して得たもの。なお、フィルタの臨界湿潤表面張力は、PFSA溶液中におけるPFSAの含有量を制御して調整した。
・PP:ポリプロピレン
・IEX:ポリエチレン製の基材に、陽イオン交換基を導入して得られたフィルタ
・Nylon:ナイロン
・UPE:超高分子量ポリエチレン
・PTFE:ポリテトラフルオロエチレン
・PFSA/PTFEブレンド
PFSA添加剤(アクイヴィオンPFSA 24:D83-24B SolvayPlastics)を適量のPTFE樹脂と混合し、平衡化させた後、加圧してビレットを作成し、押し出し成型でシート状PTFEを作成し、所定の孔径となるように延伸して得たもの。なお、フィルタの臨界湿潤表面張力は、PFSA添加剤の量を制御して調整した。
【0267】
表1の被精製液に関する略号は以下のとおりである。
・CHN:シクロヘキサノン
・PGMEA/PGME(7:3):PGMEAとPGMEの7:3(体積基準)の混合物
・nBA:酢酸ブチル
・PC/PGMEA(1:9):PCとPGMEAの1:9(体積基準)の混合物
・EL:乳酸エチル
・MIBC:4-メチル-2-ペンタノール
・IPA:イソプロパノール
【0268】
被精製液には、市販の高純度グレードの「シクロヘキサノン」を購入し、上記精製装置を用いて精製した。精製の際には、返送流通路R-14-1、及び、R-14-2を用いて、各返送流通路につき、3回循環ろ過して薬液1を得た。
【0269】
〔薬液2~48の製造〕
表1に記載した精製装置(又はろ過装置)を用いて、表1に記載した各被精製物を精製して薬液を得た。なお、各精製装置(又はろ過装置)は、
図15~
図27に示した。フィルタF-A、フィルタBU-1~BU-3、フィルタBD-1~BD-2の材料成分及び孔径は表1に示したとおりである。なお、被精製液の精製に際して、使用したろ過装置にR-(数字)で示した返送流通路が形成されているものは、それぞれの返送流通路について3回循環ろ過した。
また、表1には、フィルタF-Aの臨界湿潤表面張力(CWST)も合わせて記載した。なお、表中、「-」はそのフィルタを使用しなかったことを意味し、本願明細書における他の表についても同様である。
【0270】
〔評価1:薬液の残渣欠陥抑制性能、及び、シミ状欠陥抑制性能の評価〕
直径約300mmのシリコンウェハ(Bare-Si)上に、薬液1をスピン塗布し、薬液塗布済みウェハを得た。使用した装置は、Lithius ProZであり、塗布の条件は以下のとおりだった。
【0271】
・塗布に使用した薬液の量:各2ml
・塗布の際のシリコンウェハの回転数:2,200rpm、60sec
【0272】
次に、KLA-Tencor社製のウェハ検査装置「SP-5」とアプライドマテリアル社の全自動欠陥レビュー分類装置「SEMVision G6」を用いて、ウェハの全面に存在する19nm以上のサイズの欠陥のうち、薬液塗布前後での増加数、及び、その組成を調べた。
SP-5にて計測された全欠陥の増加数を残渣欠陥数として計上し、G6にて形状観測を行い、粒子状ではないもの(シミ状)の欠陥をシミ状欠陥として計上した。結果は以下の基準により評価し、表1に示した。
なお、ウェハ上に存在する欠陥の数が少ないほど、薬液はより優れた欠陥抑制性能を有する。なお、以下の評価において、「欠陥数」とは、それぞれ残渣欠陥数、及び、シミ状欠陥数を表す。上記と同様の方法により薬液2~48についても評価した。結果を表1に示した。
【0273】
AA 欠陥数が30個/ウェハ以下だった。
A 欠陥数が30個/ウェハを超え、50個/ウェハ以下だった。
B 欠陥数が50個/ウェハを超え、100個/ウェハ以下だった。
C 欠陥数が100個/ウェハを超え、200個/ウェハ以下だった。
D 欠陥数が200個/ウェハを超え、500個/ウェハ以下だった。
E 欠陥数が500個/ウェハを超えた。
【0274】
〔評価2:ブリッジ欠陥抑制性能〕
薬液1をプリウェット液として用いて、薬液のブリッジ欠陥抑制性能を評価した。まず、使用したレジスト組成物について説明する。
【0275】
・レジスト樹脂組成物
レジスト樹脂組成物は、以下の各成分を混合して得た。
【0276】
酸分解性樹脂(下記式で表される樹脂(重量平均分子量(Mw)7500):各繰り返し単位に記載される数値はモル%を意味する。):100質量部
【0277】
【0278】
下記に示す光酸発生剤:8質量部
【0279】
【0280】
下記に示すクエンチャー:5質量部(質量比は、左から順に、0.1:0.3:0.3:0.2とした。)。なお、下記のクエンチャーのうち、ポリマータイプのものは、重量平均分子量(Mw)が5000である。また、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0281】
【0282】
下記に示す疎水性樹脂:4質量部(質量比は、(1):(2)=0.5:0.5とした。)なお、下記の疎水性樹脂のうち、(1)式の疎水性樹脂は、重量平均分子量(Mw)は7000であり、(2)式の疎水性樹脂の重量平均分子量(Mw)は8000である。なお、各疎水性樹脂において、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0283】
【0284】
溶剤:
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):3質量部
シクロヘキサノン:600質量部
γ-BL(γ-ブチロラクトン):100質量部
【0285】
・試験方法
次に試験方法について説明する。まず、約300mmのシリコンウェハを薬液1でプリウェットし、次に、上記レジスト樹脂組成物を上記プリウェット済みシリコンウェハに回転塗布した。その後、ホットプレート上で150℃にて90秒間加熱乾燥を行い、9μmの厚みのレジスト膜を形成した。
このレジスト膜に対し、縮小投影露光及び現像後に形成されるパターンのライン幅が30nm、スペース幅が30nmとなるような、ラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して、ArFエキシマレーザースキャナー(ASML製、PAS5500/850C波長248nm)を用いて、NA=0.60、σ=0.75の露光条件でパターン露光した。照射後に120℃にて60秒間ベークして、その後、現像、及び、リンスし、110℃にて60秒ベークして、ライン幅が30nm、スペース幅が30nmのレジストパターンを形成した。
【0286】
上記レジストパターンについて、測長SEM(CG4600、Hitach-HighTech)にて、パターンを100ショット分取得し、パターン同士の架橋様の欠陥(ブリッジ欠陥)の数を計測し、単位面積当たりの欠陥数を求めた。結果は以下の基準により評価し、表1に示した。なお、パターン同士の架橋様の欠陥数が少ないほど、薬液は、より優れたブリッジ欠陥抑制性能を有することを表す。なお、上記と同様の方法により薬液2~48のブリッジ欠陥抑制性能を評価した。結果を表1に示した。
【0287】
AA ブリッジ欠陥数が1個/cm2未満だった。
A ブリッジ欠陥数が1個/cm2以上、2個/cm2未満だった。
B ブリッジ欠陥数が2個/cm2以上、5個/cm2未満だった。
C ブリッジ欠陥数が5個/cm2以上、10個/cm2未満だった。
D ブリッジ欠陥数が10個/cm2以上、15個/cm2未満だった。
E ブリッジ欠陥数が15個/cm2以上だった。
【0288】
〔評価3:パターン幅の均一性能〕
上記レジストパターンについて、測長SEM(CG4600, Hitach-HighTech)にて、パターンを100ショット分取得し、LWR(Line Width Roughness)の平均値と最大(又は最小)線幅との差を求めた。結果は以下の基準により評価し、表1に示した。なお、上記「差」が小さいほど、薬液は、より優れたパターン幅の均一性能を有する。なお、「LWRの平均値と最大(又は最小)線幅との差」は、LWRの平均値と最大線幅と、LWRの平均値と最小線幅の差のうち、絶対値が大きい値を採用した。
【0289】
AA 線幅の平均値と最大(最小)との差が、平均値に対して±2%未満だった。
A 線幅の平均値と最大(最小)との差が、平均値に対して±5%未満だった。
B 線幅の平均値と最大(最小)との差が、平均値に対して±10%未満だった。
C 線幅の平均値と最大(最小)との差が、平均値に対して±20%未満だった。
D 線幅の平均値と最大(最小)との差が、平均値に対して±20%以上だった。
E 線幅の測定ができないショットが含まれていた。
【0290】
〔評価4:フィルタの寿命の評価〕
表1に記載した各精製装置(又はろ過装置)を用いて被精製液を連続して精製した。被精製液を通液して精製装置(又はろ過装置)の状態が安定した後、すぐに得られた薬液を試験用(初期サンプル)として回収し、その後、通液量10000kgごとに精製後に得られた薬液を試験用(経時サンプル)として回収した。試験用に回収した薬液は、「評価1」で説明した薬液の残渣欠陥抑制性能の評価法により評価し、単位面積当たりの欠陥数を初期サンプルと比較して、経時サンプルの欠陥数が2倍となったときの通液量をフィルタの「寿命」とした。
図26に記載したろ過装置を使用した場合の寿命を1とし、各装置のフィルタの寿命を比で評価した。結果は以下の基準により評価し、表1に示した。なお、
図26の装置については評価結果に「基準」と表記した。
【0291】
AA 寿命が10倍以上だった。
A 寿命が5倍以上、10倍未満だった。
B 寿命が2倍以上、5倍未満だった。
C 寿命が1倍以上、2倍未満だった。
D 寿命が1倍未満だった。
【0292】
〔評価5:生産性コストの評価〕
表1に記載した各精製装置(又はろ過装置)を用いて被精製液を連続して精製した。被精製液を通液して精製装置(又はろ過装置)の状態が安定した後、単位時間当たりの被精製液の流量(フローレート)を一定とし、各精製装置(又はろ過装置)が有するフィルタのうち、少なくとも1つのフィルタにかかる差圧が初期値の1.1倍を超えたときを、フィルタの交換時期とした。
通算5,000tonの薬液を製造するために必要とした全フィルタの交換回数を以下の基準により評価し、表1の「生産性コスト」欄に記載した。なお、交換回数がより少ないほど生産性コストはより低く、好ましい。言い換えれば、交換回数がより少ないほど、ろ過装置はより優れた生産性を有する。
【0293】
A:交換回数が2回以下だった。
B:交換回数が3回以上、6回以下だった。
C:交換回数が7回以上だった。
【0294】
[試験例2:水系被精製液の精製、及び、薬液の性能評価]
【0295】
〔薬液50、51、及び、54の製造〕
被精製液として、SPM(Sulfuric acid-Hydrogen Peroxide Mixture)、リン酸水溶液(リン酸含有量85質量%)、及び、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(表2中、「TMAH」と記載した。)を購入して準備した。
次に、
図28に記載したろ過装置を使用して、薬液50、51を製造した。
図28のろ過装置は、流入部と流出部の間に、フィルタBU-1、フィルタBU-2、フィルタF-A、フィルタBD-1、及び、フィルタBD-2が、直列に接続され、流通路S-28が形成されたろ過装置である。なお、
図28のろ過装置における各フィルタが含有する材料成分、及び、孔径は表2に示した。
なお、表2中におけるフィルタの材料成分に係る略号は、表1と同様であり、説明を省略する。
【0296】
〔薬液52、53の製造〕
図28に記載したろ過装置に代えて、
図29に記載したろ過装置(フィルタF-Aを有し、流通路S-29が形成されている)を用いたこと以外は、薬液50及び薬液51と同様にして、薬液52及び薬液53を製造した。フィルタF-Aの材料成分等については、表2に示した。
【0297】
〔評価1:薬液の欠陥抑制性能の評価〕
直径約300mmのベアシリコンウェハを準備し、各薬液を用いて3分間処理して、処理済みウェハを得た。次に、KLA-Tencor社製のウェハ検査装置「SP-5」とアプライドマテリアル社の全自動欠陥レビュー分類装置「SEMVision G6」を用いて、薬液塗布済みウェハの全面に存在する30nm以上のサイズの欠陥の数、及び、その組成を調べた。
計測された欠陥のうち、金属原子が検出された欠陥をメタル残渣欠陥として計上し、残渣欠陥数全体に対するメタル欠陥数の個数比を求めた。結果は、以下の基準により評価し、結果を欠陥数と共に表2に示した。
【0298】
A メタル欠陥数/残渣欠陥数が、1.5%以下だった。
B メタル欠陥数/残渣欠陥数が、1.5%を超え、2.0%以下だった。
C メタル欠陥数/残渣欠陥数が、2.0%を超え、3.0%以下だった。
D メタル欠陥数/残渣欠陥数が、3.0%を超え、4.0%以下だった。
E メタル欠陥数/残渣欠陥数が、4.0%を超えた。
【0299】
[試験例3:レジスト樹脂組成物である薬液の製造、及び、薬液の性能評価]
【0300】
〔薬液60の製造〕
被精製液として、以下の成分を含有するレジスト樹脂組成物2を準備した。
【0301】
<レジスト樹脂組成物2>
レジスト樹脂組成物2は、以下の各成分をそれぞれ混合したものである。
【0302】
・下記の方法により合成した樹脂:0.77g
【0303】
下記合成スキームの通り、11.9gのモノマー(1)と、8.0gのモノマー(1-2)と、15.1gのモノマー(1-3)と、1.12gの重合開始剤V-601(和光純薬工業(株)製)とを、129.0gのシクロヘキサノンに溶解させて混合液を得た。
次に、反応容器中に69.5gのシクロヘキサノンを入れ、窒素ガス雰囲気下、85℃に保持した反応容器中のシクロヘキサノンに混合液を4時間かけて滴下して、反応液を得た。反応液を2時間に亘って加熱しながら撹拌した後、反応液を室温まで放冷した。次に、反応液に、メタノール49.6gと4.9gのトリエチルアミンとを加え、50℃で18時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで放冷した。次に、反応液に酢酸エチル200gと水200gとを加え、分液操作し、有機層を回収した。有機層を水で3回洗浄した後、溶媒を減圧留去した。残った固体をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)200gに溶解し、溶媒を減圧留去することで共沸脱水した後、シクロヘキサノン198.5gを加え、溶液を得た。次に、溶液を、2336gの、n-ヘプタン及び酢酸エチルの混合溶液(n-ヘプタン/酢酸エチル=9/1(質量比))中に滴下し、固体を沈殿させ、ろ過した。次に、701gの、n-ヘプタン及び酢酸エチルの混合溶液(n-ヘプタン/酢酸エチル=9/1(質量比))を用いて、ろ過した固体のかけ洗いを行なった。その後、洗浄後の固体を減圧乾燥して、23.8gの樹脂(A-1)を得た。1H-NMR及び13C-NMRより、樹脂中の組成比は、繰り返し単位(a)/繰り返し単位(c)/繰り返し単位(b)=30/20/50(モル比)と算出された。なお、スキームには、樹脂の合成方法を簡略化して表した。
【0304】
【0305】
下記に示す酸発生剤:0.23g
【0306】
【0307】
下記に示す酸拡散制御剤:0.03g
【0308】
【0309】
溶剤:
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):60g
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル):15g
【0310】
図30に記載したろ過装置を使用して、薬液60を製造した。
図30のろ過装置は、流入部と流出部の間に、フィルタBU-1、フィルタBU-2、フィルタBU-3、フィルタF-A、及び、フィルタBD-2が、直列に接続されている。各ユニットは配管と共に流通路S-30を形成している。なお、薬液60の精製に使用した各フィルタが含有する材料成分、及び、孔径は表3に示した。
【0311】
〔薬液61、62の製造〕
表3に記載した各フィルタを使用したことを除いては、薬液60と同様にして、薬液61、薬液62を製造した。
【0312】
〔薬液63の製造〕
図30に記載したろ過装置に代えて、
図29に記載したろ過装置を用いたこと以外は薬液60と同様にして、薬液63を製造した。なお、ろ過に使用したフィルタは表3に記載したとおりである。
【0313】
〔薬液の欠陥抑制性能の評価1:スカム欠陥抑制性能の評価〕
得られた薬液について、Agilent社製ICP-MS 8900を用いて金属成分の含有量を測定した。結果を表3に示した。なお、表3中には、特定の金属成分の薬液の全質量に対する含有量(質量ppb)と金属成分の総合計量(質量ppb)をあわせて記載した。なお、表3中、「<0.01」とは、結果が検出限界値未満たったことを表わしている。
【0314】
次に、以下の方法により、スカム欠陥抑制性能について評価した。まず、約300mmのシリコンウェハに上記レジスト樹脂組成物を回転塗布した。その後、ホットプレート上で120℃にて60秒間加熱して乾燥させ、40nmの厚みのレジスト膜を形成した。
次に、EUV露光装置(Exitech社製 Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupole、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用いて、露光マスク(ライン/スペース=1/1を有するスペース幅(光透過部の幅)=10nmマスク)を使用して、レジスト膜を備えるシリコンウェハをパターン露光した。パターン露光後、加熱したホットプレート上に、露光後のレジスト膜を備えるシリコンウェハを、シリコンウェハ面を下にして載置し、90℃で60秒間ベークした。ベーク後のレジスト膜を、現像液で30秒間パドル現像して、その後、リンスした。次いで、2000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させて、1:1ラインアンドスペースパターンを得た。
【0315】
次に、上記レジストパターンについて、測長SEM(CG4600, Hitach-HighTech)にて、パターンを100ショット分取得し、スカム様の欠陥の数を測定し、単位面積当たりの欠陥数を求めた。結果は以下の基準により評価し、表3に示した。なお、スカム様の欠陥数が少ないほど、薬液は、より優れたスカム欠陥抑制性能を有することを表す。
【0316】
AA スカム欠陥数が1個/cm2未満だった。
A スカム欠陥数が1個/cm2以上、2個/cm2未満だった。
B スカム欠陥数が2個/cm2以上、5個/cm2未満だった。
C スカム欠陥数が5個/cm2以上、10個/cm2未満だった。
D スカム欠陥数が10個/cm2以上、20個/cm2未満だった。
E スカム欠陥数が20個/cm2以上だった。
【0317】
【0318】
【0319】
【0320】
【0321】
【0322】
【0323】
【0324】
【0325】
表1は第1グループ:表1(1-1)~表1(1-4)及び、第2グループ:表1(2-1)~表1(2-4)に分割されている。
表1には、各グループの4つの分割表の対応する行にわたって、各薬液の精製に用いたろ過装置(又は精製装置)が有するフィルタ、及び、得られた薬液の評価結果が記載されている。
例えば、表1の第1グループ:表1(1-1)~表1(1-4)のそれぞれの1行目には、薬液1について記載されている。
これは、薬液1が、
図14に記載した精製装置により製造されたことを示し、薬液1の製造に用いた被精製液は、CHN(シクロヘキサノン)を含有することを示している。また、薬液1の製造に用いた精製装置のフィルタは、「PGMEA 1day浸漬」の条件で事前に洗浄されたことを示している。また、精製装置は、2連式の蒸留器と、BU-1(流通路の最も上流側に配置されたPPを含有する孔径200nmのフィルタ)、BU-2(BU-1の下流側に配置された孔径15nmのIEXフィルタ)、とを有し、フィルタA(F-A)の上流側にタンクTU-1を有し、F-A(フィルタA)としては、孔径20nmのPFSA/PTFEフィルタを有し、そのCWSTは35×10
-5N/cmであり、フィルタF-Aの下流側には、BD-1(ナイロンを含有する孔径10nmのフィルタ)、BD-2(UPEを含有する孔径3nmフィルタ)を有し、更に、フィルタF-Aの下流側には、タンクTD-1を有することを示している。
更に薬液1は残渣欠陥抑制性能がAA、シミ状欠陥抑制性能がAA、ブリッジ欠陥抑制性能がAA、パターン幅の均一性能がAA、そして、精製装置のフィルタの寿命がAAで、生産性コストはAであったことを示している。
薬液2~30については、同様に第1グループの各表に結果が記載され、薬液31~48については、第2グループの各表に結果が記載されている。
【0326】
【0327】
【0328】
【0329】
表2は、表2(1-1)~表2(1-3)に分割されている。表2には各分割表の対応する行にわたって、各薬液の精製に用いたろ過装置及び、得られた薬液の評価結果が記載されている。
例えば、各分割表のそれぞれの1行目には、薬液50について記載されている。
これは、薬液50が
図28に記載されたろ過装置により製造されたことを示し、薬液50の製造に用いた被精製液は、SPM(4:1)であることを示している。また、SPM(4:1)のpHは1.0以下だったことを示している。また、薬液50の製造に用いたろ過装置のフィルタは「PGMEA 1day浸漬」の条件で事前に洗浄されたことを示している。また、ろ過装置は、BU-1(PTFEを含有する孔径200nmのフィルタ)、BU-2(PTFEを含有する孔径20nmのフィルタ)を有し、F-A(フィルタA)としては、孔径20nmのPFSA/PTFEフィルタ(CWST:35×10
-5N/cm)を有し、その下流側には、BD-1(PTFEを含有する孔径10nmのフィルタ)、BD-2(PTFEを含有する孔径10nmのフィルタ)を有することを示している。
薬液50の評価は、残渣欠陥数が2932個/ウェハであり、そのうち、メタル残渣欠陥数が36個/ウェハであり、比率が1.2%、評価がAだったことを示している。
薬液51~薬液54についても同様に表2の各表に結果が記載されている。
【0330】
【0331】
【0332】
【0333】
表3は、表3(1-1)~表3(1-3)に分割されている。表3には各分割表の対応する行にわたって、各薬液の精製に用いたろ過装置、及び、得られた薬液の評価結果が記載されている。
例えば、各分割表のそれぞれの1行目には、薬液60について記載されている。
これは、薬液60が
図30に記載されたろ過装置により製造されたことを示し、薬60の製造に用いた被精製液は、レジスト樹脂組成物2であることを示している。また、薬液60の製造に用いたろ過装置のフィルタは「PGMEA 1day浸漬」の条件で事前に洗浄されたことを示している。また、ろ過装置は、BU-1(PTFEを含有する孔径20nmのフィルタ)、BU-2(UPEを含有する孔径2nmのフィルタ)、BU-3(Nylonを含有する孔径10nmのフィルタ)を有し、F-A(フィルタA)としては、孔径20nmのPFSA/PTFE(CWST:35×10
-5N/cm)フィルタを有し、その下流側には、BD-1(UPEを含有する孔径2nmのフィルタ)を有することを示している。
薬液60は、薬液の全質量に対してMgを0.09質量ppb含有し、Caを0.37質量ppb含有し、Crの含有量は検出限界値未満であり、Feを0.15質量ppb含有し、Niの含有量は検出限界値未満であり、金属成分の合計含有量としては薬液の全質量に対して0.61質量ppbであったことを示している。
また、薬液60のスカム欠陥抑制性能はAAだったことを示している。
【0334】
表1~表3に記載した結果から、本発明の実施形態に係るろ過装置(又は精製装置)を用いて製造された薬液1~37、薬液39~48、薬液50~51、薬液54、薬液60~62は各薬液の種類に応じて(プリウェット液、現像液、リンス液、剥離液、レジスト樹脂組成物等)要求される優れた欠陥抑制性能を有していた。一方、従来技術に係るろ過装置(又は精製装置)を用いて製造された薬液38、薬液52~53、薬液104、薬液63は所望の欠陥抑制性能を有していなかった。
【0335】
また、フィルタBがフィルタAの下流側に配置されたフィルタBDを含むろ過装置(を含む精製装置)を用いて製造された薬液1は、薬液3と比較してより優れた残渣欠陥抑制性能、より優れたブリッジ欠陥抑制性能、及び、より優れたパターン幅の均一性能を有していた。
また、フィルタBDが20nm以下の孔径を有するフィルタを含むろ過装置(を含む精製装置)を用いて製造された薬液45は、薬液44と比較して、より優れた残渣欠陥抑制性能、及び、より優れたブリッジ欠陥抑制性能を有していた。
また、最も下流側に配置されたフィルタBDが10nm以下の孔径を有するろ過装置(を含む精製装置)を用いて製造された薬液1は、薬液7と比較して、より優れた欠陥抑制性能、より優れたブリッジ欠陥抑制性能、及び、より優れたパターン幅の均一性能を有していた。また、同じく薬液1は、薬液46と比較して、より優れた残渣欠陥抑制性能、より優れたシミ状欠陥抑制性能、より優れたブリッジ欠陥抑制性能、及び、より優れたパターン幅の均一性能を有していた。
また、少なくとも1つのBDフィルタのうちのいずれかのフィルタBDからなる基準フィルタの下流側から、上記基準フィルタの上流側へと被精製液を返送可能な返送流通路を有するろ過装置(を含む精製装置)を用いて製造された薬液1は、薬液14と比較して、より優れた残渣欠陥抑制性能、より優れたブリッジ欠陥抑制性能、及び、より優れたパターンパ場の均一性能を有していた。
また、フィルタBが、流通路上においてフィルタAの上流側に配置されたフィルタBUを含むろ過装置(を含む精製装置)を用いて製造された薬液1は、薬液47と比較して、より優れた残渣欠陥抑制性能、より優れたシミ状欠陥抑制性能、より優れたブリッジ欠陥抑制性能、より優れたパターン幅の均一性能を有していた。
また、フィルタBUの少なくとも1つが10nm以上の孔径を有する、ろ過装置(を含む精製装置)を用いて製造された薬液1は、薬液48と比較して、より優れた残渣欠陥抑制性能を有していた。また、薬液1の製造に用いたろ過装置(を含む精製装置)は、薬液48の製造装置の製造に用いたろ過装置(を含む精製装置)と比較して生産性コストがより低かった(より優れた生産性を有していた)。
また、少なくとも1つのフィルタBUの孔径が20nm以上である、薬液1の製造に用いたろ過装置(を含む精製装置)は、薬液2及び薬液6の製造に用いたろ過装置と比較して、生産性コストがより低かった(より優れた生産性を有していた)。
また、フィルタBUがイオン交換基を有する樹脂を含有するろ過装置(を含む精製装置)を用いて製造された、薬液1は、薬液12と比較して、より優れた残渣欠陥抑制性能、より優れたブリッジ欠陥抑制性能、より優れたパターン幅の均一性能を有していた。また、薬液1の製造に用いたろ過装置(を含む精製装置)は、薬液12の製造に用いたろ過装置(を含む精製装置)と比較してフィルタの寿命がより長く、また、生産性コストがより低かった(より優れた生産性を有していた)。
また、タンクに対して流通路の上流側にタンクと直列に配置された孔径10nm以上のフィルタを有するろ過装置(を含む精製装置)を用いて製造された薬液1は、薬液48と比較して、より優れた残渣欠陥抑制性能を有していた。また、薬液1の製造に用いたろ過装置(を含む精製装置)は、薬液48の製造に用いたろ過装置(を含む精製装置)と比較して、生産性コストがより低かった(より優れた生産性を有していた)。
また、pHが0~9の範囲内である被精製液を精製して得られた薬液50は、薬液54と比較してより優れた欠陥抑制性能を有していた。これは、本発明の実施形態に係るろ過装置が、pHが0~9の範囲内である被精製液の精製用としてより優れた効果を有することを示している。
【符号の説明】
【0336】
100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000 ろ過装置
101 流入部
102 流出部
103、104、201、601、104-1、104-2 フィルタ
105、202、301、302、402、501、502、602、701、801、802、803、804,901、1001、1002、1104、1105、1305 配管
401、401(a)、401(b) タンク
1100 製造場
1101 蒸留装置
1102、1203、1303、1304 蒸留器
1103 可搬型タンク
1106 運搬手段
1200、1300 精製装置
1201、1301 第2の流入部
1202、1302 第2の流出部