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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】有機電子素子の封止方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20220411BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220411BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220411BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20220411BHJP
   H01L 51/48 20060101ALI20220411BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20220411BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/04
H05B33/14 A
H01L31/04 120
H01L31/04 182Z
C09D11/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020517975
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2018011618
(87)【国際公開番号】W WO2019066605
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0127801
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】クク・ヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ミ・イム・ユ
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-131497(JP,A)
【文献】特開2008-059945(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040211(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/017524(WO,A1)
【文献】特開2013-050672(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0062856(KR,A)
【文献】特開2003-139934(JP,A)
【文献】特開2004-327272(JP,A)
【文献】特開2004-064007(JP,A)
【文献】特開平01-059924(JP,A)
【文献】特開平03-165869(JP,A)
【文献】特開2004-103496(JP,A)
【文献】特開2003-260389(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0086362(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H05B 33/04
H01L 51/50
H01L 51/44
H01L 51/48
C09D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電子素子が形成された基板上にインク組成物を塗布する段階と、前記塗布されたインク組成物に0.5~150KHzの範囲の一定の強度で振動を加える段階と、を含み、
インク組成物を塗布する段階は、一方向に延長する印刷パターンを2以上形成することを含み、
振動を加える段階は、0.001~300秒の範囲内で行われ
インク組成物は、エポキシ化合物および前記エポキシ化合物100重量部に対して45重量部~145重量部で含まれるオキセタン基を有する化合物を含む、有機電子素子の封止方法。
【請求項2】
インク組成物を塗布する段階は、50dpi~1000dpiの範囲内で行われる、請求項1に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項3】
塗布されたインク組成物は、2~15μmの厚さを有する、請求項1または2に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項4】
印刷パターンは、2以上のインク組成物ドットで形成され、前記ドットのピッチは、10~250μmの範囲内である、請求項1から3の何れか一項に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項5】
塗布する段階後であって振動を加える段階前に、一方向に延長する印刷パターンの間に10~250μmの間隔が一つ以上存在する、請求項1から3の何れか一項に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項6】
塗布されたインク組成物を硬化する段階をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項7】
硬化する段階は、光を照射することを含む、請求項6に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項8】
塗布されたインク組成物に熱を加える段階をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項9】
熱を加える段階は、塗布されたインク組成物の硬化前および/または後に行われる、請求項8に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項10】
熱を加える段階は、20℃~230℃の範囲内で行われる、請求項8または9に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項11】
熱を加える段階は、1分~40分間のうちいずれかの時間で行われる、請求項8から10のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項12】
インク組成物は、無溶剤タイプの光硬化性組成物である、請求項1から11のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止方法。
【請求項13】
インク組成物は、フッ素系界面活性剤を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2017年9月29日付けの韓国特許出願第10-2017-0127801号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、有機電子素子の封止方法および有機電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
有機電子装置(OED;organic electronic device)は、正孔および電子を利用して電荷の交流を発生する有機材料層を含む装置を意味し、その例としては、光電池装置(photovoltaic device)、整流器(rectifier)、トランスミッター(transmitter)および有機発光ダイオード(OLED;organic light emitting diode)等が挙げられる。
【0004】
前記有機電子装置のうち有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Didoe)は、既存の光源に比べて、電力消費量が少なく、応答速度が速く、表示装置または照明の薄型化に有利である。また、OLEDは、空間活用性に優れているので、各種携帯用機器、モニター、ノートパソコンおよびテレビにわたる多様な分野において適用されるものと期待されている。
【0005】
OLEDの商用化および用途拡大において、最も主要な問題点は、耐久性の問題である。OLEDに含まれた有機材料および金属電極等は、水分等の外部的要因により非常に酸化しやすい。したがって、OLEDを含む製品は、環境的要因に非常に敏感である。これに伴い、OLED等のような有機電子装置に対する外部からの酸素または水分等の浸透を効果的に遮断するために、多様な方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、有機電子素子の封止方法に関し、外部から有機電子装置に流入する水分または酸素を効果的に遮断することができ、封止膜の平坦度に優れているので、耐久信頼性に優れており、封止工程の効率性が増大する有機電子素子の封止方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、有機電子素子の封止方法に関する。前記封止方法は、有機電子素子上に封止膜を形成することを含む。前記封止膜は、後述する有機層と同じ意味であってもよく、基板上に形成された有機電子素子の前面を全部カバーするようにカプセル化することができる。
【0008】
例示的な封止方法は、有機電子素子が形成された基板上にインク組成物を塗布する段階と、前記塗布されたインク組成物に振動を加える段階とを含むことができる。前記インク組成物により前述した封止膜が形成され得る。前記振動は、0.5~150KHz、0.8~145KHz、1~140KHz、7~136KHz、18~128KHz、22~115KHz、28~108KHzまたは37~100KHzの振動強度を有し得る。
【0009】
本出願は、前記素子上に塗布されたインク組成物に振動を加えることによって、インク組成物により印刷されるパターンとパターンの間に空き空間なしに平坦性が優秀に封止膜を形成することができる。一般的なインクジェッティング工程の場合、インクノズルの抜け(または目詰まり)なしに行われることが最も好ましいが、現実的に多数のノズルのうち一つ以上に目詰まりが発生し得るリスクがあり、このようなノズルの目詰まりは、最終印刷パターンの不良を引き起こす。これに伴い、本出願は、前記ノズルの抜けまたは目詰まりが発生しても、優れた信頼性を具現することができる方法を提供する。また、本出願は、インク組成物の塗布時に塗布ノズルの目詰まりによるライン欠けのムラを防止し、インク組成物内の微細気泡を除去することができる。また、本出願は、前記効果によって、有機電子素子で発生し得るダークスポット(dark spot)を防止することができ、ムラによるディスプレイ不良を防止することができる。
【0010】
一例として、前記振動を加える段階は、0.001~300秒、0.005~290秒、0.01~280秒、1~270秒、30~260秒、50秒~250秒または150~245秒の範囲内で行われ得る。本出願は、前記範囲内で、塗布されたインク組成物の平坦性を優秀に維持し、工程の時間および費用を低減させて、効率性を増大させることができる。
【0011】
本出願の具体例において、インク組成物を塗布する段階は、50dpi~1000dpiの範囲内で行われ得る。すなわち、本出願のインク組成物がインクジェット印刷のインクとして使用されて、インチ当たり50dot~1000dotが印刷され得る。本出願は、前記数値を調節することによって、精密にインク組成物を基板上に印刷することができる。
【0012】
一例として、塗布されたインク組成物は、2~15μmまたは5~13μmの厚さを有し得る。前記厚さは、素子上に形成される封止膜が水分を十分に遮断しながらも、平坦化過程で封止膜の平坦性を優秀に具現させることができる厚さ範囲である。また、前述した振動強度および/または振動時間で最適に平坦性が具現される厚さであってもよい。
【0013】
前記で、インク組成物を塗布する段階は、一方向に延長する印刷パターンを2以上形成することを含むことができる。前記インク組成物は、インクジェット印刷で2以上の印刷パターンを形成することができ、前記印刷パターンは、図1に示されたように、1次印刷パターン1および2次印刷パターン1を含むことができる。図1は、図面に別途表示していないが、印刷パターンが7個形成された例示的な図面を示す。
【0014】
一例として、前記印刷パターンは、2以上のインク組成物ドットで形成され得、前記ドットのピッチは、10~250μm、12~230μm、15~180μm、18~140μm、22~110μmまたは35~90μmの範囲内であってもよい。すなわち、前記印刷パターン1は、2以上のドットが集まって形成され得、前記ドットとドットの間のピッチは、前記範囲であってもよい。また、前記一方向に延長する印刷パターンの間に10~250μm、50~230μm、80~210μm、110~190μmまたは130~185μmの間隔Iが存在し得る。前記間隔は、塗布する段階後に、振動を加える段階前に存在する間隔であってもよい。本出願は、インクジェット印刷の特性上、一方向に延長する印刷パターンが2以上形成され、前記一つの印刷パターンの形成時に要求されるドットピッチが存在し得る。ただし、インクジェット工程上、塗布ノズルの抜け現象によって間隔が一つ以上存在することができ、本出願は、このような特性を総合的に考慮して、前記印刷パターンとパターンとの間に空き空間(間隔)が発生しないように、前述した振動強度を調節して、耐久信頼性に優れた封止膜を製造する。
【0015】
本出願の具体例において、前記封止方法は、塗布されたインク組成物を硬化する段階をさらに含むことができる。前記硬化段階は、光を照射することを含むことができる。一例として、前記硬化は、250nm~450nm、300nm~450nm、320nm~425nm、355nm~400nmまたは380nm~398nmの範囲のうちいずれか一つの波長の光で0.3~6J/cmの光量または0.5~5J/cmの光量で光を照射することを含むことができる。本出願は、前記条件で硬化が行われるにつれて、有機電子素子上に適用されたインク組成物を硬化するに際して、素子が光により損傷するのを防止することができる。
【0016】
本出願の具体例において、前記封止方法は、塗布されたインク組成物に熱を加える段階をさらに含むことができる。前記熱を加える段階は、塗布されたインク組成物の硬化前および/または後に行われ得る。すなわち、前記熱を加える段階は、塗布されたインク組成物が硬化する前に行うか、硬化した後に行われ得、硬化前および後に2回以上行うことができる。また、一例として、前記熱を加える段階は、塗布されたインク組成物に振動を加える段階と同時に行われるか、別に行われ得る。本出願は、有機電子素子のカプセル化のために塗布されたインク組成物を硬化する前または後に加熱させる段階を含むことによって、有機電子素子上に形成された封止膜の平坦度を優秀にしながらも、インク組成物から発生するアウトガスを最小化することができる。本出願は、前記アウトガスを最小化することによって、有機電子素子上に直接適用されたインク組成物から起因する素子の物理的、化学的損傷を防止することができる。
【0017】
前記熱を加える段階は、20℃~230℃、23℃~200℃または24℃~164℃の範囲内で行われ得る。また、熱を加える段階は、1分~40分間または3分~29分間のうちいずれかの時間で行われ得る。本出願は、前記温度または時間を調節することによって、素子上に塗布されたインク組成物が封止膜を形成するとき、平坦度を優秀に具現しながらも、アウトガス量を減少させることができ、前記加熱段階により素子が損傷するのを防止することができる。
【0018】
本出願の具体例において、熱を加える段階は、インク組成物の硬化前にのみ1回行われるか、硬化前後に2回以上行われ得る。前者の場合、熱を加える段階は、80℃~150℃、88℃~142℃、92℃~137℃または96℃~123℃の範囲内で1分~40分間または2分~35分間のうちいずれかの時間で行われ得る。後者の場合、熱を加える段階は、インク組成物の硬化前に20℃~110℃、22℃~98℃、23℃~68℃、24℃~58℃または28℃~37℃の範囲内で1分~40分間、2分~35分間または6分~15分間のうちいずれかの時間で行われ得る。一例として、前記硬化前に加熱温度が多少高い場合、インク組成の一部の硬化が行われるか、副反応が発生して、目的とする物性の封止膜形成が困難になり得る。前記段階後にインク組成物の硬化が行われ得、前記硬化段階後に、50℃~230℃、55℃~180℃、58℃~178℃、60℃~172℃、62℃~167℃または75℃~156℃の範囲内で1分~40分間、2分~35分間または2分~20分間のうちいずれかの時間で行われ得る。一例として、硬化前に熱を加える温度T1に対する硬化後熱を加える温度T2の比T2/T1が1.15~8、1.3~7.8、1.8~7.2、2.1~6.8、2.8~6.3または3.6~5.8であってもよい。本出願は、上記のように熱を加える時点によって加熱温度および/または時間を調節することによって、素子上に塗布されたインク組成物が封止膜を形成するとき、平坦度を優秀に具現しながらも、アウトガス量を減少させることができ、前記加熱段階により素子が損傷するのを防止し、塗布された組成物の一部硬化または副反応を防止することができる。
【0019】
一例として、本出願で前記封止方法は、前述した塗布段階および振動段階の以前に、基板として、例えば、ガラスまたは高分子フィルムのような基板上に真空蒸着またはスパッタリング等の方法で反射電極または透明電極を形成し、前記反射電極上に有機材料層を形成して有機電子素子を形成することを含むことができる。前記有機材料層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層および/または電子輸送層を含むことができる。次に、前記有機材料層上に第2電極をさらに形成する。第2電極は、透明電極または反射電極であってもよい。
【0020】
本出願の製造方法は、前記基板上に形成された第1電極、有機材料層および第2電極上に、無機層を形成する段階をさらに含むことができる。その後、前述したように、前記基板上に前記有機電子素子を前面カバーするようにインク組成物を適用して封止膜(有機層)を形成する。この際、前記有機層を形成する段階は、特に限定されず、前記基板の前面に前述したインク組成物をインクジェット印刷(Inkjet)、グラビアコーティング(Gravure)、スピンコーティング、スクリーンプリンティングまたはリバースオフセットコーティング(Reverse Offset)等の工程を利用することができる。
【0021】
本出願の具体例において、インク組成物を塗布する段階は、インクジェット装置を利用してインク組成物を吐出することを含むことができる。前述したように、前記インクジェット工程は、例えば、OLED等のような有機電子装置を封止またはカプセル化することに適用され得る。
【0022】
本明細書で、用語「有機電子装置」は、互いに対向する一対の電極の間に正孔および電子を利用して電荷の交流を発生する有機材料層を含む構造を有する物品または装置を意味し、その例としては、光電池装置、整流器、トランスミッターおよび有機発光ダイオード(OLED)等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。本出願の一例として、前記有機電子装置は、OLEDであってもよい。
【0023】
本出願の具体例において、前記インク組成物は、無溶剤タイプであってもよい。また、前記インク組成物は、光硬化性組成物であってもよい。本出願は、前記インク組成物を使用することによって、有機溶媒を使用することによって含有するようになる揮発性有機化合物またはイオン性物質の含有量を最小化して、封止工程でのアウトガス量を最小化し、これに伴い、有機電子装置の信頼性を確保することができる。
【0024】
本出願で前記封止方法に適用されるインク組成物の素材は、特に制限されないが、本出願の平坦度特性、アウトガス特性、インクの広がり性および印刷パターンの信頼性を考慮したとき、後述する特定の組成を有し得、前記の特定の組成は、前述した封止方法で耐久信頼性に優れた封止膜を形成することができる。
【0025】
例示的なインク組成物は、エポキシ化合物およびオキセタン基を有する化合物を含むことができる。前記エポキシ化合物は、光硬化性または熱硬化性化合物であってもよい。前記オキセタン基を有する化合物は、前記エポキシ化合物100重量部に対して45重量部~145重量部、48重量部~143重量部または63重量部~132重量部の範囲内に含まれ得る。本出願は、前記の特定の組成およびその含量の範囲を制御することによって、有機電子素子にインクジェット方式で有機層を形成することができ、塗布されたインク組成物は、短時間内に優れた広がり性を有し、硬化した後に優れた硬化感度を有する有機層を提供することができる。また、前記インク組成物は、光開始剤を含むことができる。前記インク組成物は、前述したエポキシ化合物およびオキセタン基含有化合物と共にインク組成物として工程性と共に優れた接着強度および硬化感度を具現することができる。
【0026】
一例として、前記エポキシ化合物は、少なくとも二官能以上であってもよい。すなわち、エポキシ官能基が前記化合物に2以上存在し得る。前記エポキシ化合物は、密封材に適切な架橋度を具現して、高温高湿での優れた耐熱耐久性を具現する。
【0027】
本出願の具体例において、エポキシ化合物は、分子構造内に環形構造を有する化合物および/または直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物を含むことができる。すなわち、本出願のインク組成物は、エポキシ化合物として分子構造内に環形構造を有する化合物および直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物のうち少なくとも一つを含むことができ、共に含むこともできる。一例として、前記分子構造内に環形構造を有する化合物は、分子構造内に環構成原子が3~10、4~8または5~7の範囲内であってもよく、前記化合物内に環形構造が2以上、10以下で存在し得る。前記環形構造を有する化合物および直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物が共に含まれる場合、前記直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物は、環形構造を有する化合物100重量部に対して、20重量部以上、205重量部未満、23重量部~204重量部、30重量部~203重量部、34重量部~202重量部、40重量部~201重量部、60重量部~200重量部または100重量部~173重量部の範囲内にインク組成物に含まれ得る。本出願は、前記含量範囲を制御することによって、インク組成物が有機電子素子の前面をインクジェッティングして密封するに際して、適合した物性を有するようにし、硬化後に優れた硬化感度を有するようにし、また、優れた水分遮断性を共に具現することができるようにする。
【0028】
一例として、前記直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物は、エポキシ当量が120g/eq~375g/eqまたは120g/eq~250g/eqの範囲内であってもよい。本出願は、脂肪族化合物のエポキシ当量を前記範囲に制御することによって、密封材の硬化後に硬化完了度を向上させると共に、組成物の粘度が過度に高くなって、インクジェット工程が不可能にするのを防止することができる。
【0029】
一例として、エポキシ化合物は、50~350g/eq、73~332g/eq、94~318g/eqまたは123~298g/eqの範囲のエポキシ当量を有し得る。また、オキセタン基を有する化合物またはエポキシ化合物は、重量平均分子量が150~1,000g/mol、173~980g/mol、188~860g/mol、210~823g/mol、330~780g/molまたは350~500g/molの範囲内にありえる。本出願は、前記エポキシ化合物のエポキシ当量を低く制御したり、前記オキセタン基を有する化合物の重量平均分子量を低く調節することによって、インクジェット印刷への適用時に、優れた印刷性を具現すると同時に、水分遮断性および優れた硬化感度を提供することができる。本明細書で重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。また、本明細書でエポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含有する樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法により測定され得る。
【0030】
また、オキセタン基を有する化合物は、沸点が90~300℃、98~270℃、110~258℃または138~237℃の範囲内にありえる。本出願は、前記化合物の沸点を前記範囲に制御することによって、インクジェット工程で高温でも優れた印刷性を具現しつつ、外部からの水分遮断性に優れており、アウトガスが抑制されて、素子に加えられる損傷を防止できる密封材の提供が可能である。本明細書で沸点は、特に別途規定しない限り、1気圧で測定したものであってもよい。
【0031】
一例として、分子構造内に環形構造を有する化合物は、脂環族エポキシ化合物を例示することができる。例えば、前記化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(EEC)および誘導体、ジシクロペタジエンジオキシドおよび誘導体、ビニルシクロヘキセンジオキシドおよび誘導体、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)および誘導体を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
一例として、前記オキセタン基を含む化合物は、前記オキセタン官能基を有する限り、その構造は、制限されず、例えば、TOAGOSEI社のOXT-221、CHOX、OX-SC、OXT101、OXT121、OXT221またはOXT212、またはETERNACOLL社のEHO、OXBP、OXTPまたはOXMAを例示することができる。また、直鎖または分岐鎖の脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族グリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルまたはネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを含むことができるが、これらに制限されない。
【0033】
本出願の具体例において、インク組成物は、光開始剤をさらに含むことができる。前記光開始剤は、カチオン光重合開始剤であってもよい。また、前記光開始剤は、200nm~400nmの範囲の波長を吸収する化合物であってもよい。
【0034】
カチオン光重合開始剤の場合、当業界における公知の素材を使用することができ、例えば、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウムまたは芳香族アンモニウムを含むカチオン部とAsF 、SbF 、PF 、またはテトラキス(ペンタフルオルフェニル)ボレートを含むアニオン部を有する化合物を含むことができる。また、カチオン光重合開始剤としては、オニウム塩(onium salt)または有機金属塩(organometallic salt)系のイオン化カチオン開始剤または有機シランまたは潜在性スルホン酸(latent sulfonic acid)系や非イオン化カチオン光重合開始剤を使用することができる。オニウム塩系の開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩(diaryliodonium salt)、トリアリールスルホニウム塩(triarylsulfonium salt)またはアリールジアゾニウム塩(aryldiazonium salt)等を例示することができ、有機金属塩系の開始剤としては、鉄アレン(iron arene)等を例示することができ、有機シラン系の開始剤としては、o-ニトリルベンジルトリアリールシリルエーテル(o-nitrobenzyl triaryl silyl ether)、トリアリールシリルペルオキシド(triaryl silyl peroxide)またはアシルシラン(acyl silane)等を例示することができ、潜在性スルホン酸系の開始剤としては、α-スルホニルオキシケトンまたはα-ヒドロキシメチルベンゾインスルホネート等を例示することができるが、これらに制限されるものではない。
【0035】
一例として、本出願の密封材組成物は、インクジェット方式で有機電子素子を密封する用途に適合するように、前述した特定の組成に光開始剤としてヨードニウム塩またはスルホニウム塩を含む光開始剤を含むことができる。前記組成による密封材組成物は、有機電子素子上に直接密封されるにもかかわらず、アウトガスの発生量が少ないため、素子に化学的損傷が加えられるのを防止することができる。また、前記光開始剤は、溶解度に優れているので、インクジェット工程に適合するように適用され得る。
【0036】
本出願の具体例において、前記光開始剤は、エポキシ化合物100重量部に対して1~15重量部、2~13重量部、または3~11重量部で含まれ得る。
【0037】
本出願の具体例において、前記インク組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。前記インク組成物は、界面活性剤を含むことによって、広がり性が向上した液状インクとして提供され得る。一例として、前記界面活性剤は、極性官能基を含むことができる。前記極性官能基は、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、リン酸塩、アンモニウム塩、カルボキシレート基、硫酸塩またはスルホン酸塩を含むことができる。また、本出願の具体例において、前記界面活性剤は、非シリコン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤であってもよい。前記非シリコン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤は、前述したエポキシ化合物およびオキセタン基を有する化合物と共に適用されて、有機電子素子上に優れたコーティング性を提供する。一方、極性反応基を含む界面活性剤の場合、インク組成物の他の成分との親和性が高いので、硬化反応に参加可能であり、これに伴い、付着力の側面から優れた効果を具現することができる。本出願の具体例において、基材に対するコーティング性を向上させるために、親水性(hydrophilic)フッ素系界面活性剤または非シリコン系界面活性剤を使用することができる。
【0038】
具体的に、前記界面活性剤は、高分子型またはオリゴマー型フッ素系界面活性剤であってもよい。前記界面活性剤は、市販品を使用することができ、例えばTEGO社のGlide 100、Glide110、Glide 130、Glide 460、Glide 440、Glide450またはRAD2500、DIC(DaiNippon Ink & Chemicals)社のMegaface F-251、F-281、F-552、F554、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-570およびF-571または旭硝子社のSurflon S-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141およびS-145または住友スリーエム社のFluorad FC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430およびFC-4430またはデュポン社のZonyl FS-300、FSN、FSN-100およびFSOおよびBYK社のBYK-350、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358N、BYK-359、BYK-361N、BYK-381、BYK-388、BYK-392、BYK-394、BYK-399、BYK-3440、BYK-3441、BYKETOL-AQ、BYK-DYNWET 800等よりなる群から選ばれるものを使用することができる。
【0039】
前記界面活性剤は、エポキシ化合物100重量部に対して0.1重量部~10重量部、0.05重量部~10重量部、0.1重量部~10重量部、0.5重量部~8重量部または1重量部~4重量部で含まれ得る。前記含量の範囲内で、本出願は、インク組成物がインクジェット方式に適用されて、薄膜の有機層を形成することができるようにする。
【0040】
本出願の具体例において、前記インク組成物は、300nm以上の長波長の活性エネルギー線での硬化性を補完するために、光増減剤をさらに含むことができる。前記光増減剤は、200nm~400nmの範囲の波長を吸収する化合物であってもよい。
【0041】
前記光増減剤は、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン等のアントラセン系化合物;ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルアミノベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾアート、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、3,3,4,4-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;アセトフェノン;ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアラトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、プロパノン等のケトン系化合物;ペリレン;9-フルオレノン、2-クロロ-9-フルオレノン、2-メチル-9-フルオレノン等のフルオレノン系化合物;チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルオキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン(ITX)、ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;キサントン、2-メチルキサントン等のキサントン系化合物;アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、2,6-ジクロロ-9,10-アントラキノン等のアントラキノン系化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス(9-アクリジニルペンタン)、1,3-ビス(9-アクリジニル)プロパン等のアクリジン系化合物;ベンジル、1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジオン、9,10-フェナントレンキノン等のジカルボニル化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド系化合物;メチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾアート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾアート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾアート等のベンゾアート系化合物;2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)-4-メチル-シクロペンタノン等のアミノシナジスト;3,3-カルボニルビニル-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-ベンゾイル-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシ-クマリン、10,10-カルボニルビス[1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H、5H、11H-C1]-ベンゾピラノ[6,7,8-ij]-キノリジン-11-オン等のクマリン系化合物;4-ジエチルアミノカルコン、4-アジドベンザルアセトフェノン等のカルコン化合物;2-ベンゾイルメチレン;および3-メチル-b-ナフトチアゾリンよりなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0042】
前記光増減剤は、後述する光開始剤100重量部に対して、28重量部~40重量部、31重量部~38重量部または32重量部~36重量部の範囲内に含まれ得る。本出願は、前記光増減剤の含量を調節することによって、所望の波長での硬化感度の上昇作用を具現しながらも、光増減剤が溶解しなくて、付着力を低下させるのを防止することができる。
【0043】
本出願のインク組成物は、カップリング剤をさらに含むことができる。本出願は、インク組成物の硬化物の被着体との密着性や硬化物の耐透湿性を向上させることができる。前記カップリング剤は、例えば、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シランカップリング剤を含むことができる。
【0044】
本出願の具体例において、前記シランカップリング剤としては、具体的には、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよび11-メルカプトウンデシルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等が挙げられる。
【0045】
本出願において、カップリング剤は、エポキシ化合物100重量部に対して、0.1重量部~10重量部または0.5重量部~5重量部で含まれ得る。本出願は、前記範囲内で、カップリング剤の添加による密着性の改善効果を具現することができる。
【0046】
本出願のインク組成物は、必要に応じて、水分吸着剤を含むことができる。用語「水分吸着剤」は、物理的または化学的反応等を通じて、外部から流入する水分または湿気を吸着または除去できる成分を総称する意味として使用することができる。すなわち、水分反応性吸着剤または物理的吸着剤を意味し、その混合物も使用可能である。
【0047】
本出願で使用できる水分吸着剤の具体的な種類は、特に制限されず、例えば、水分反応性吸着剤の場合、金属酸化物、金属塩または五酸化リン(P)等の一種または二種以上の混合物が挙げられ、物理的吸着剤の場合、ゼオライト、ジルコニアまたはモンモリロナイト等が挙げられる。
【0048】
本出願のインク組成物は、水分吸着剤を、エポキシ化合物100重量部に対して、5重量部~100重量部、5~80重量部、5重量部~70重量部または10~30重量部の量で含むことができる。本出願のインク組成物は、好ましくは水分吸着剤の含量を5重量部以上に制御することによって、インク組成物またはその硬化物が優れた水分および湿気遮断性を示すようにすることができる。また、本出願は、水分吸着剤の含量を100重量部以下に制御して、薄膜の封止構造を提供することができる。
【0049】
一例として、インク組成物は、必要に応じて、無機フィラーをさらに含むことができる。本出願で使用できるフィラーの具体的な種類は、特に制限されず、例えば、クレー、タルク、アルミナ、炭酸カルシウムまたはシリカ等の一種または二種以上の混合を使用することができる。
【0050】
本出願のインク組成物は、エポキシ化合物100重量部に対して0重量部~50重量部、1重量部~40重量部、1重量部~20重量部、または1~10重量部の無機フィラーを含むことができる。本出願は、無機フィラーを好ましくは1重量部以上に制御して、優れた水分または湿気遮断性および機械的物性を有する封止構造を提供することができる。また、本発明は、無機フィラーの含量を50重量部以下に制御することによって、薄膜に形成された場合にも、優れた水分遮断特性を示す硬化物を提供することができる。
【0051】
本出願によるインク組成物には、前述した構成の他にも、前述した発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、多様な添加剤が含まれ得る。例えば、インク組成物は、消泡剤、粘着付与剤、紫外線安定剤または酸化防止剤等を目的とする物性によって適正範囲の含量で含むことができる。
【0052】
一例として、前記インク組成物は、常温、例えば、15℃~35℃または約25℃で液状であってもよい。本出願の具体例において、インク組成物は、無溶剤タイプの液状であってもよい。前記インク組成物は、有機電子素子を封止することに適用され得、具体的に、前記インク組成物は、有機電子素子の前面を封止することに適用され得るインク組成物であってもよい。本出願は、インク組成物が常温で液状の形態を有することによって、有機電子素子の側面に組成物をインクジェット方式で素子を封止することができる。
【0053】
また、本出願の具体例において、インク組成物は、25℃の温度、90%のトルクおよび100rpmのせん断速度で、ブルックフィールド社のDV-3で測定した粘度が50cPs以下、1~46 cPs、3~44 cPs、4~38cPs、5~33cPsまたは14~24cPsの範囲内であってもよい。本出願は、組成物の粘度を前記範囲に制御することによって、有機電子素子に適用される時点でのコーティング性を優秀にして、薄膜の封止材を提供することができる。
【0054】
また、本出願の具体例において、前記インク組成物は、硬化後に可視光線の領域での光透過度が90%以上、92%以上または95%以上であってもよい。前記範囲内で本出願は、インク組成物を前面発光型有機電子装置に適用して、高解像度、低消費電力および長寿名の有機電子装置を提供する。前記光学特性を考慮するとき、前記インク組成物は、前述した水分吸着剤または無機フィラーを含まなくてもよい。
【0055】
一例として、本出願のインク組成物は、ガラスに対する接触角が30°以下、25°以下、20°以下または12°以下であってもよい。下限は、特に制限されないが、1°または3°以上であってもよい。本出願は、前記接触角を30°以下に調節することによって、インクジェットコーティングでの短時間内に広がり性を確保することができ、これに伴い、薄膜の有機層を形成することができる。本出願で前記接触角は、Sessile Drop測定方法(液滴法)を使用して、ガラス上に前記インク組成物を1滴塗布して測定したものであってもよく、5回塗布後に平均値を測定したものであってもよい。
【0056】
また、本出願は、有機電子装置に関する。例示的な有機電子装置3は、図3に示されたように、基板31と;前記基板31上に形成された有機電子素子32と;前記有機電子素子32の前面を密封する有機層33とを含むことができる。前記有機電子装置は、前述した封止方法で製造されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
図2は、図1を拡大した断面図である。本出願の具体例において、前記有機電子装置は、図2に示されたように、有機電子素子が形成された基板上に、一方向に延長した1次パターン1と、一方向に延長し、前記1次パターンと隣接して形成された2次パターン1とを含む有機層の形態でインク組成物が硬化した状態で、前記有機層厚さHに対する前記1次パターンと前記2次パターンとの間の溝部の高さhの比率h/H×100が30%未満、29%未満、または28%以下であってもよい。前記比率の下限は、特に限定されず、0%、1%または5%であってもよい。本明細書で隣接して形成されるというのは、一方向に延長する1次パターンで一方向に延長する方向と垂直する方向に接するように位置していることを意味する。したがって、1次パターンと2次パターンの一方向は、同じ方向であってもよい。本出願は、前記比率を制御することによって、インク組成物で形成される封止膜の優れた平坦度を具現することができ、このような封止膜は、上部に付着される後述する無機物層との付着力も優秀に具現することができる。
【0058】
前記1次および2次パターンは、前記インク組成物が1滴ずつ印刷されて、2以上のドットがラインを形成することができ、より具体的に、1滴ずつ印刷されたインク組成物ドットが広がって一直線または一方向に延長した矩形の形態でパターンを形成することができ、前記パターンの形状は、特に限定されない。本出願は、前記の1次および2次パターンを同時に形成したり、それぞれ別に形成することができる。本明細書で、前記1次パターンおよび2次パターンは、パターンとパターンを区別するために任意に指定した名称であり、順序やパターン数を意味しない。
【0059】
一例として、1次パターンの形成地点と2次パターンの形成地点の間隔は、10μm~500μm、20μm~430μm、30μm~390μmまたは60μm~250μmの範囲内であってもよい。前記で印刷パターンの形成地点は、インクジェット印刷でインク組成物ドットが塗布される地点を意味する。前記形成地点は、前記多数のドットが広がって一方向に延長する印刷パターンを形成することを考慮して、前記1次印刷パターンの中央および2次印刷パターンの中央を意味し、前記中央は、前述した一方向に延長する方向と垂直する方向での中間を意味する。本明細書で用語「中央」は、実質的な中央を意味し、±10μm、±5μmまたは±1μmの誤差を有し得る。また、用語「垂直」は、実質的な垂直を意味し、同様に、±10°、±5°または±1°の誤差を有し得る。
【0060】
本出願の具体例において、有機電子素子は、第1電極層、前記第1電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機層および前記有機層上に形成される第2電極層を含むことができる。前記第1電極層は、透明電極層または反射電極層であっもてよく、第2電極層も、透明電極層または反射電極層であってもよい。より具体的に、前記有機電子素子は、基板上に形成された反射電極層、前記反射電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機層および前記有機層上に形成される透明電極層を含むことができる。
【0061】
本出願において有機電子素子は、有機発光ダイオードであってもよい。
【0062】
一例として、本出願による有機電子装置は、前面発光(top emission)型であってもよいが、これに限定されるものではなく、背面発光(bottom emission)型に適用され得る。
【0063】
前記有機電子装置は、有機電子素子の電極および発光層を保護する無機層をさらに含むことができる。前記無機層は、無機保護膜であってもよい。前記無機層35は、有機電子素子32と前述した有機層33との間に存在し得る。前記無機層は、化学気相蒸着(CVD;chemical vapor deposition)による保護層であってもよく、その素材は、公知の無機物素材を使用することができる。
【0064】
本出願の具体例において、有機電子装置は、前記有機層33上に形成された無機層34をさらに含むことができる。一例として、無機層は、Al、Zr、Ti、Hf、Ta、In、Sn、ZnおよびSiよりなる群から選ばれた一つ以上の金属酸化物、窒化物または酸窒化物であってもよい。前記無機層の厚さは、0.01μm~50μmまたは0.1μm~20μmまたは1μm~10μmであってもよい。一例として、本出願の無機層は、ドーパントが含まれていない無機物であるか、またはドーパントが含まれた無機物であってもよい。ドーピングされ得る前記ドーパントは、Ga、Si、Ge、Al、Sn、Ge、B、In、Tl、Sc、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiよりなる群から選はれた1種以上の元素または前記元素の酸化物であってもよいが、これらに限定されない。
【0065】
一例として、前記有機層の厚さは、2μm~20μm、2.5μm~15μm、2.8μm~9μmの範囲内であってもよい。本出願は、有機層の厚さを薄く提供して、薄膜の有機電子装置を提供することができる。
【0066】
本出願の有機電子装置は、前述した有機層33および無機層34、35を含む封止構造36を含むことができ、前記封止構造は、少なくとも一つ以上の有機層および少なくとも一つ以上の無機層を含み、有機層および無機層が繰り返して積層され得る。例えば、前記有機電子装置は、基板/有機電子素子/無機層/(有機層/無機層)nの構造を有し得、前記nは、1~100の範囲内の数であってもよい。
【0067】
一例として、本出願の有機電子装置は、前記有機層上に存在するカバー基板をさらに含むことができる。前記基板および/またはカバー基板の素材は、特に制限されず、当業界における公知の素材を使用することができる。例えば、前記基板またはカバー基板は、ガラス、金属基材または高分子フィルムであってもよい。高分子フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオルエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-ビニルアセテートフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルムまたはポリイミドフィルム等を使用することができる。
【0068】
また、本出願の有機電子装置3は、図4に示されたように、前記カバー基板38と前記有機電子素子32が形成された基板31との間に存在する封止フィルム37をさらに含むことができる。前記封止フィルム37は、有機電子素子32が形成された基板31と前記カバー基板38を付着する用途に適用され得、例えば、常温で固状の粘着フィルムまたは接着フィルムであってもよいが、これに限定されるものではない。前記封止フィルム37は、有機電子素子32上に積層された前述した有機層および無機層の封止構造36の前面を密封することができる。また、前記カバー基板は、ガラス、高分子樹脂フィルムまたは金属層であってもよい。
【発明の効果】
【0069】
本出願は、インク組成物を利用した有機電子素子の封止方法に関し、外部から有機電子装置に流入する水分または酸素を効果的に遮断することができ、インク組成物で形成された封止膜の平坦度に優れているので、耐久信頼性に優れており、インク組成物の塗布時に塗布ノズルの目詰まりによるライン欠けのムラを防止し、組成物内の微細気泡を除去することができ、これに伴い、封止工程の効率性が増大する有機電子素子の封止方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明の一例による印刷パターンを示す平面図である。
図2】本発明の一例による印刷パターンを示す断面図である。
図3】本発明の一例による有機電子装置を示す断面図である。
図4】本発明の一例による有機電子装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明による実施例および本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例により制限されるものではない。
【0072】
インク組成物の製造
常温でエポキシ化合物として脂環族エポキシ化合物(Daicel社Celloxide 2021P)および脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE200)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)、ヨードニウム塩を含む光開始剤(Tetrachem社のTTA-UV694、以下、UV694という)およびフッ素系界面活性剤(DIC社のF552)をそれぞれ23.8:28.7:41.5:5.0:1.0(Celloxide2021P:DE200:OXT-221:UV694:F552)の重量比率で混合容器に投入した。
【0073】
前記混合容器をプラネタリーミキサー(クラボウ、KK-250s)を利用して均一なインク組成物インクを製造した。
【0074】
実施例1
前記製造されたインク組成物をUnijet UJ-200(Inkjet head-Dimatix 10Pl 256)を使用して有機電子素子が形成された基板上にインクジェッティングして印刷パターンを形成した。前記インク組成物のドットの平均ピッチを40μmとして、印刷パターンを形成し、前記印刷パターン間の平均間隔を180μmとして有機層パターンを形成した。基板上に塗布された印刷パターンに対して振動装置を利用して40KHzの強度で0.01秒間振動を加えた。
【0075】
前記塗布された印刷パターンに対して100℃で3分間熱処理を行った。前記インク組成物に対して5%の相対湿度の条件で1000mW/cmの強度で1J/cmのUVを照射して硬化させて有機電子装置を製造した。
【0076】
実施例2
塗布された印刷パターンに対して振動を10秒間加えたことを除いて、実施例1と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0077】
実施例3
塗布された印刷パターンに対して振動を40秒間加えたことを除いて、実施例1と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0078】
実施例4
塗布された印刷パターンに対して振動を240秒間加えたことを除いて、実施例1と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0079】
実施例5
振動強度を100KHzに変更したことを除いて、実施例1と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0080】
実施例6
振動強度を100KHzに変更したことを除いて、実施例2と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0081】
実施例7
振動強度を100KHzに変更したことを除いて、実施例3と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0082】
実施例8
振動強度を100KHzに変更したことを除いて、実施例4と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0083】
実施例9
常温でエポキシ化合物として脂環族エポキシ化合物(Daicel社Celloxide 2021P)および脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE200)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)、ヨードニウム塩を含む光開始剤(Tetrachem社のTTA-UV694、以下、UV694という)およびフッ素系界面活性剤(DIC社のF552)をそれぞれ43.8:28.7:17.5:5.0:1.0(Celloxide2021P:DE200:OXT-221:UV694:F552)の重量比率で混合容器に投入した。
【0084】
前記混合容器をプラネタリーミキサー(クラボウ、KK-250s)を利用して均一なインク組成物インクを製造した。
【0085】
前記製造されたインクを用いて、実施例4と同じ方法でインクジェッティングして、有機電子素子を封止し、有機電子装置を製造した。
【0086】
実施例10
常温でエポキシ化合物として脂環族エポキシ化合物(Daicel社Celloxide 2021P)および脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE200)、オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)、ヨードニウム塩を含む光開始剤(Tetrachem社のTTA-UV694、以下、UV694という)およびシリコン系界面活性剤(BYK-3455)をそれぞれ23.8:28.7:41.5:5.0:1.0(Celloxide2021P:DE200:OXT-221:UV694:BYK-3455)の重量比率で混合容器に投入した。
【0087】
前記混合容器をプラネタリーミキサー(クラボウ、KK-250s)を利用して均一なインク組成物インクを製造した。
【0088】
前記製造されたインクを用いて、実施例4と同じ方法でインクジェッティングして、有機電子素子を封止し、有機電子装置を製造した。
【0089】
比較例1
振動を加えることなく、印刷パターンの形成後に0.01秒の待機時間後にUVを照射したことを除いて、実施例1と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0090】
比較例2
振動を加えることなく、印刷パターンの形成後に10秒の待機時間後にUVを照射したことを除いて、実施例1と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0091】
比較例3
振動を加えることなく、印刷パターンの形成後に40秒の待機時間後にUVを照射したことを除いて、実施例1と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0092】
比較例4
振動を加えることなく、印刷パターンの形成後に240秒の待機時間後にUVを照射したことを除いて、実施例1と同じ方法で有機電子装置を製造した。
【0093】
実施例および比較例での物性は、下記の方式で評価した。
【0094】
1.平坦度の測定
実施例および比較例で製造された硬化した有機層に対して、図2のように、有機層の厚さHに対する1次パターンと2次パターンとの間の溝部の高さhの比率h/H×100を測定して計算した。前記有機層の厚さは、平均厚さを測定した。前記測定は、Alpha step(KLA-Tencor)を使用して厚さHおよび溝部の高さhを測定した。
【0095】
【表1】
【符号の説明】
【0096】
1 印刷パターン
I 間隔
H 有機層厚さ
h 溝部の高さ
3 有機電子装置
31 基板
32 有機電子素子
33 有機層
34 無機層
35 無機層(無機保護膜)
36 封止構造
37 封止フィルム
38 カバー基板
図1
図2
図3
図4