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特許7055419偏光子保護フィルム、これを含む偏光板、前記偏光板を含む液晶ディスプレイ装置、及び偏光子保護フィルム用コーティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】偏光子保護フィルム、これを含む偏光板、前記偏光板を含む液晶ディスプレイ装置、及び偏光子保護フィルム用コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220411BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220411BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/22
G02F1/1335 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019513425
(86)(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 KR2017015483
(87)【国際公開番号】W WO2018124699
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-03-08
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2016-0179504
(32)【優先日】2016-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ナ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・レ・チャン
【合議体】
【審判長】榎本 吉孝
【審判官】下村 一石
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/056891(WO,A1)
【文献】特表2016-526174(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0025672(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材及び前記基材の少なくとも一面に備えられる光硬化性樹脂層を含み、
前記光硬化性樹脂層は、光硬化性バインダーの硬化物及び染料を含み、
前記染料は、シアニン(cyanine)誘導体化合物、ボロン-ジピロメテン(boron-dipyrromethene、BODIPY)誘導体化合物、及びローダミン(rhodamine)誘導体化合物からなる群より選択された1種以上を含み、
最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmであるか、または最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmであり、
520nm~540nmまたは610nm~660nmの波長領域における平均光透過率が85%未満であり、
400nm~500nmの波長領域における平均光透過率が90%以上である、偏光子保護フィルム。
【請求項2】
500g荷重でHB以上の鉛筆硬度を示す、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項3】
摩擦試験機にスチールウール(steel wool)#0を装着した後200gの荷重で10回往復する場合にスクラッチが発生しない、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項4】
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate、EVA)、環状オレフィン重合体(cyclic olefin polymer、COP)、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリイミド(polyimide、PI)、MMA(methyl methacrylate)、フッ素系樹脂、及びトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項5】
下記式1で測定される相対輝度値が1.5以上である、請求項1に記載の偏光子保護フィルム:
[式1] 相対輝度=B/A
前記式1において、
Aは、前記染料を含まない偏光子保護フィルムをバックライト面に置いて、法線の60゜方向で535nmまたは635nmレーザを照射した時に測定される輝度値であり、
Bは、前記染料を含む偏光子保護フィルムをバックライト面に置いて、法線の60゜方向で535nmまたは635nmレーザを照射した時に測定される輝度値である。
【請求項6】
偏光子と、
前記偏光子の少なくとも一面上に請求項1に記載の偏光子保護フィルムとを含む、偏光板。
【請求項7】
請求項6に記載の偏光板を含む、液晶ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2016年12月26日付韓国特許出願第10-2016-0179504号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、偏光子保護フィルム、これを含む偏光板、前記偏光板を含む液晶ディスプレイ装置、及び偏光子保護フィルム用コーティング組成物に関する。より詳しくは、特定の波長範囲の光を吸収し、特定の波長範囲の光を放出し、特にレーザポインタに対する視認性を高めながらも、優れた物理的、光学的特性を示す偏光子保護フィルムを製造できるコーティング組成物、これを用いて製造される偏光子保護フィルム、前記偏光子保護フィルムを含む偏光板、及び前記偏光板を含む液晶ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ装置(liquid crystal displayay、LCD)は、現在最も幅広く使用されている平板ディスプレイのうち一つである。一般に液晶ディスプレイ装置は、TFT(Thin Film Transistor)アレイ基板とカラーフィルタ(color filter)基板の間に液晶層が封入された構造を取る。前記アレイ基板とカラーフィルタ基板に存在する電極に電場を認可すると、その間に封入された液晶層の液晶分子の配列が変わり、これを用いて映像を表示する。
【0004】
一方、講義や会議、発表などにおいてプレゼンテーションを行う場合、このような液晶ディスプレイ装置で資料画像を再生し、プレゼンテーション画像の上にレーザポインタを用いてスクリーンなどを指しながらプレゼンテーションを行うことが一般的である。
【0005】
しかし、ディスプレイ装置は、発光特性を有するために、レーザポインタによるレーザ光投射がよく見えない問題が発生する。また、防眩性層や反射防止層などによってディスプレイ装置あるいは、ディスプレイ保護パネルなどの表面に機能性が付与される場合、レーザポインタ投射光の反射も抑制されるため、レーザポインタの視認性が低下する問題が発生できる。
【0006】
したがって、過度な追加工程なしに液晶ディスプレイ装置においてレーザポインタの視認性を改善する方法に対する開発が依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、バックライトやカラーフィルタを変更せず、液晶ディスプレイ装置(LCD)に含まれる素子のうち下部偏光板の保護フィルムを改善して低コストでレーザポインタに対する視認性を向上させながらも、優れた物理的、光学的特性を示す偏光子保護フィルム用コーティング組成物、これを用いて製造される偏光子保護フィルム、前記偏光子保護フィルムを含む偏光板及び前記偏光板を含む液晶ディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
基材及び前記基材の少なくとも一面に備えられる光硬化性樹脂層を含み、
前記光硬化性樹脂層は、光硬化性バインダーの硬化物及び染料を含み、
最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmであるか、または最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmである偏光子保護フィルムを提供する。
また、本発明は、
偏光子と、
前記偏光子の少なくとも一面上に前記偏光子保護フィルムとを含む偏光板を提供する。
また、本発明は、
前記偏光板を含む液晶ディスプレイ装置を提供する。
また、本発明は、
光硬化性官能基を含むバインダーと、
最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmである化合物、及び最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmである化合物からなる群より選ばれた1種以上である染料と、
光重合開始剤と、
溶媒とを含む偏光子保護フィルム用コーティング組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の偏光子保護フィルム、これを含む偏光板、液晶ディスプレイ装置、及び偏光子保護フィルム用コーティング組成物によれば、LCDでバックライトによって低下したレーザポインタの視認性を顕著に向上させることができる。
【0010】
また、このような効果は、このようなカラーフィルタやLCDの積層構造などに対する変更なしにLCDの下部偏光板に対して本発明を適用することによって得られるので、過度な工程の変更やコスト増加を必要とせず、生産コストを節減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の偏光子保護フィルムは、基材及び前記基材の少なくとも一面に備えられる光硬化性樹脂層を含み、前記光硬化性樹脂層は、光硬化性バインダーの硬化物及び染料を含み、最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmであるか、または最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmである。
【0012】
また、本発明の偏光板は、偏光子と、前記偏光子の少なくとも一面上に前記偏光子保護フィルムとを含む。
また、本発明の液晶ディスプレイ装置は、前記偏光板を含む。
【0013】
また、本発明の偏光子保護フィルム用コーティング組成物は、光硬化性官能基を含むバインダーと、最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmである化合物、及び最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmである化合物からなる群より選ばれた1種以上である染料と、光重合開始剤と、溶媒とを含む。
【0014】
本明細書において、「上面」という用語は、偏光板が液晶ディスプレイのようなデバイスに装着された時に視聴者の方に向かうように配置された面を意味する。そして、「上部」は、偏光板がデバイスに装着された時、視聴者の方に向かう方向を意味する。逆に、「下面」または「下部」は、偏光板がデバイスに装着された時、視聴者の反対側に向かうように配置された面または方向を意味する。
【0015】
本明細書において、最大励起波長とは、染料の吸収スペクトルにおいて最大吸収が起る波長を意味し、最大蛍光波長とは、染料が励起状態(浮いている状態)から再び基底状態に戻りながらエネルギを放出する発光スペクトルにおいて最大放出が起る波長を意味する。
【0016】
以下、偏光子保護フィルム、これを含む偏光板及び液晶ディスプレイ装置、及び偏光子保護フィルム用コーティング組成物についてより詳しく説明する。
【0017】
本発明の一実施例によれば、光硬化性官能基を含むバインダーと、最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmである化合物、及び最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmである化合物からなる群より選ばれた1種以上である染料と、光重合開始剤と、溶媒とを含む、偏光子保護フィルム用コーティング組成物を提供する。
【0018】
偏光子は、多様な方向に振動しながら入射される光から一方向に振動する光のみを抽出できる特性を示し、本発明の偏光子保護フィルム用コーティング組成物は、前記偏光子を外部から保護する用途に用いられ、前記偏光子の少なくとも一面に、好ましくは前記偏光子の下部保護フィルムとして用いられる偏光子保護フィルムを製造するためのものである。
【0019】
一般に用いられる偏光子保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)のようなポリエステル(polyester)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate、EVA)のようなポリエチレン(polyethylene)、環状オレフィン重合体(cyclic olefin polymer、COP)、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリイミド(polyimide、PI)、MMA(methyl methacrylate)、フッ素系樹脂またはトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)などからなる基材が挙げられる。
【0020】
前記基材の中でも特にトリアセチルセルロース(TAC)フィルムは、光学的特性に優れて多く用いられている。
【0021】
本発明は、バックライト、カラーフィルタまたはLCDの基本構造を変更せずLCDに含まれる構成要素のうち偏光板、特に上部偏光板を改善して低コストでレーザポインタの視認性を向上させながらも、既存の物理的、光学的特性を維持するためのものである。
【0022】
これに、本発明の一実施例によれば、基材上にコーティング及び紫外線硬化して光硬化性樹脂層を形成し、偏光子の一面に積層して偏光子保護フィルムとして用いることができるコーティング組成物を提供する。本発明のコーティング組成物を用いて形成された偏光子保護フィルムは、波長領域によって特徴的な光吸収及び発光特性を示すため、レーザポインタの視認性の向上に寄与することができる。
【0023】
また、一般に染料を含む組成物の場合、紫外線による硬化工程において染料の光特性が変形されて結果的に光硬化性樹脂層及びこれを含むフィルムの光学物性が低下する問題があるが、本発明によれば、紫外線硬化前後に透過率の変化が殆どないか、少ないためUV硬化型コーティング層の形成に有利である。
【0024】
また、耐スクラッチ性、高硬度など優れた物理的特性を示し、下部偏光板を効果的に保護し、薄形化、大型化が進むディスプレイ用偏光板に有用に適用することができる。
【0025】
本発明の偏光子保護フィルム用コーティング組成物は、光硬化性官能基を含むバインダーと、最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmである化合物、及び最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmである化合物からなる群より選ばれた1種以上である染料と、光重合開始剤と、溶媒とを含む。
【0026】
前記光硬化性官能基を含むバインダーは、紫外線によって重合反応を起こす不飽和官能基を含む化合物であれば、特に制限されないが、光硬化性官能基としては(メタ)アクリレート基、アリル基、アクリロイル基、またはビニル基を含む化合物であり得る。本発明の一実施例によれば、前記光硬化性官能基を含むバインダーは、多官能アクリレート系モノマー、多官能アクリレート系オリゴマー、及び多官能アクリレート系弾性高分子からなる群より選ばれる1種以上であり得る。
【0027】
本発明の明細書においてアクリレート系とは、アクリレートだけでなく、メタクリレート、またはアクリレートやメタクリレートに置換基が導入された誘導体の全てを意味する。
前記多官能アクリレート系モノマーは、アクリレート系官能基を2個以上で含み、重量平均分子量が1,000g/mol未満であることを意味する。より具体的には、例えば、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、エチレングリコールジアクリレート(EGDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールトリ(テトラ)アクリレート(PETA)、またはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられるが、本発明のコーティング組成物はこれに制限されない。前記多官能アクリレート系モノマーは、互いに架橋されたり、後述する多官能アクリレート系オリゴマー及び多官能アクリレート系弾性高分子と架橋されて保護フィルムに一定の鉛筆強度と耐摩耗性を付与する役割を果たす。
【0028】
前記多官能アクリレート系モノマーは、単独または互いに異なる種類を組み合わせて使用し得る。
【0029】
前記多官能アクリレート系オリゴマーは、アクリレート官能基を2個以上で含むオリゴマーであって、重量平均分子量が約1,000~約10,000g/mol、または約1,000~約5,000g/mol、または約1,000~約3,000g/molの範囲を有し得る。
【0030】
本発明の一実施例によれば、前記多官能アクリレート系オリゴマーは、ASTM D638によって測定した時、約5~約200%、または約5~約100%、または約10~約50%の伸び率を有し得る。前記アクリレート系オリゴマーの伸び率が前記範囲を有する時、機械的物性の低下なしにより優れた柔軟性と弾性を示し得る。このような伸び率の範囲を満す多官能アクリレート系オリゴマーは、柔軟性と弾性に優れて前記多官能アクリレート系モノマー及び後述する多官能アクリレート系弾性高分子と硬化樹脂を形成し、これを含む保護フィルムに十分な可撓性、カール特性などを付与し得る。
【0031】
また、本発明の一実施例によれば、前記多官能アクリレート系オリゴマーは、ウレタン(urethane)、エチレンオキシド(ethylene oxide)、プロピレンオキシド(propylene oxide)、またはカプロラクトン(caprolactone)の中の1種以上に変性されたアクリレート系オリゴマーであり得る。前記変性された多官能アクリレート系オリゴマーを用いる場合、変性によって前記多官能アクリレート系オリゴマーに柔軟性がさらに付与されて保護フィルムのカール特性及び可撓性が増加し得る。
【0032】
前記多官能アクリレート系オリゴマーは、単独または互いに異なる種類を組み合わせて使用し得る。
【0033】
前記多官能アクリレート系弾性高分子は、柔軟性と弾性に優れ、アクリレート官能基を2個以上含む高分子であり、重量平均分子量が約100,000~約800,000g/mol、または約150,000~約700,000g/mol、または約180,000~約650,000g/molの範囲を有し得る。
【0034】
前記多官能アクリレート系弾性高分子を含むコーティング組成物を用いて形成した保護フィルムは、機械的物性を確保しながらも高い弾性または柔軟性を確保でき、カール(curl)またはクラック(crack)の発生も最少化することができる。
【0035】
本発明の一実施例によれば、前記多官能アクリレート系弾性高分子は、ASTM D638によって測定した時、約5~約200%、または約5~約100%、または約10~約50%の伸び率を有し得る。前記多官能アクリレート系弾性高分子の伸び率が前記範囲を有する時、機械的物性の低下なしに優れた柔軟性と弾性を示し得る。
前記多官能アクリレート系弾性高分子の一例としてポリロタキサンが挙げられる。
【0036】
一般にポリロタキサン(Polyrotaxane)は、ダンベル形状の分子(dumbbell shaped molecule)と環状化合物(macrocycle)が構造的にはめ込まれている化合物を意味し、前記ダンベル形状の分子は、一定の線状分子及びこのような線状分子の両末端に配置された封鎖基を含み、前記線状分子が前記環状化合物の内部を貫通し、前記環状化合物が前記線状分子に沿って移動し得、前記封鎖基によって離脱が防止される。
【0037】
本発明の一実施例によれば、前記ポリロタキサンは、末端にアクリレート系化合物が導入されたラクトン系化合物が結合された環状化合物と、前記環状化合物を貫く線状分子と、前記線状分子の両末端に配置されて前記環状化合物の離脱を防止する封鎖基とを含むロタキサンの化合物を含み得る。
【0038】
前記環状化合物は、前記線状分子を貫通または囲むことができる程度の大きさを有するものであれば、格別な制限なしに使用し得、他の重合体や化合物と反応できる水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基またはアルデヒド基などの官能基を含むこともできる。このような環状化合物の具体的な例としてα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
また、前記線状分子としては、一定の以上の分子量を有すれば直鎖形態を有する化合物は大きい制限なしに使用し得るが、ポリアルキレン系化合物またはポリカプロラクトン基を使用し得る。具体的に、炭素数1~8のオキシアルキレン繰り返し単位を含むポリオキシアルキレン系化合物または炭素数3~10のラクトン系繰り返し単位を有するポリカプロラクトン基を使用し得る。
【0040】
そして、このような線状分子は、約1,000~約50,000g/molの重量平均分子量を有し得る。前記線状分子の重量平均分子量が過度に小さいと、これを使用して製造される保護フィルムの機械的物性または自己治癒能力が十分でない場合もあり、前記重量平均分子量が過度に大きいと、製造される保護フィルムの常用性が低下するか、外観特性や材料の均一性が大きく低下し得る。
【0041】
一方、前記封鎖基は、製造されるポリロタキサンの特性によって適切に調節し得、例えば、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイン基及びピレン基からなる群より選ばれた1種または2種以上を使用し得る。
【0042】
前記多官能アクリレート系弾性高分子のまた他の例としては、ウレタン系アクリレート高分子が挙げられる。前記ウレタン系アクリレート高分子は、アクリルポリマーの主鎖にウレタン系アクリレートオリゴマーが側鎖として連結されている形態を有する。
【0043】
次に、本発明の偏光子保護フィルム用コーティング組成物に含まれる染料は、具体的に最大励起波長が約520nm~約540nmであり、最大蛍光波長が約540nm~約600nmである染料、好ましくは最大励起波長が約530nm~約540nmであり、最大蛍光波長が約550nm~約570nmである染料;または最大励起波長が約610nm~660nmであり、最大蛍光波長が約640nm~約680nm、好ましくは最大励起波長が約620nm~約640nmであり、最大蛍光波長が約640nm~約660nmの染料であることを特徴とする。
【0044】
上述した条件を満す染料は、LCDのCCFL、LEDなどのバックライトから入射される光のうち特に緑色レーザポインタあるいは赤色レーザポインタと混色の問題を起こし、レーザポインタの視認性を低下させるスペクトル領域帯の不要な光を吸収するので、これを含むコーティング組成物を用いて製造された偏光子用保護フィルム及び偏光板を備えるディスプレイは、その表面にレーザポインタを照射した時視認性が顕著に高くなる。これについては後述する偏光子用保護フィルム及び偏光板に関する説明の際により詳しく説明する。
【0045】
このような条件を満す染料のより具体的な例として、シアニン(cyanine)誘導体化合物、ボロン-ジピロメテン(boron-dipyrromethene、BODIPY)誘導体化合物、及びローダミン(rhodamine)誘導体化合物、またはこれらの混合物などが挙げられるが、本発明はこれに制限されない。
【0046】
本発明の一実施例によれば、前記光硬化性官能基を含むバインダーの総重量を100重量部とする時、前記染料を約0.1~約5重量部で、好ましくは約0.1~約3重量部で含み得る。前記染料が過度に少なく含まれると、光吸収効果が微々たり、レーザポインタの視認性向上効果が十分でない場合もあり、過度に多く含まれる場合、ディスプレイ装置の色再現性及び輝度が低下し、コーティング組成物の他の物性が低下するので、このような観点から前記範囲で含まれることが好ましい。
【0047】
本発明のコーティング組成物に含まれる前記光重合開始剤としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、2-ベンゾイル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノンジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられるが、これに制限されない。また現在市販されている商品にはIrgacure 184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur 1173、Darocur MBF、Irgacure 819、Darocur TPO、Irgacure 907、Esacure KIP 100Fなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独または互いに異なる2種以上を混合して使用し得る。
【0048】
本発明の一実施例によれば、前記光重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、全体コーティング組成物の物性を阻害せず、かつ効果的な光重合を達成するために前記光硬化性官能基を含むバインダーの総重量を100重量部とする時、前記光重合開始剤を約0.1~約10重量部で、好ましくは約0.1~約5重量部で含み得る。
【0049】
本発明のコーティング組成物に含まれる前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒などを単独または混合して使用し得る。
本発明の一実施例によれば、前記有機溶媒の含有量は、コーティング組成物の物性を低下しない範囲内で多様に調節できるので、特に制限しないが、前記光硬化性官能基を含むバインダー100重量部に対して約50~約200重量部で、好ましくは約100~約200重量部で含み得る。前記有機溶媒が前記範囲にある時適切な流動性及び塗布性を有し得る。
【0050】
一方、本発明の一実施例によれば、前記コーティング組成物は、有機または無機微粒子をさらに含み眩しさ防止特性を示し得る。前記コーティング組成物が有機または無機微粒子を含む時、これを用いて硬化した光硬化性樹脂層は、光を散乱させる特徴を有するため、眩しさ防止特性を示し得る。
【0051】
前記有機または無機微粒子の粒径は、光の散乱効果を最適化する側面から約1μm以上であり得、ヘイズ及びコーティング厚さを適切にするための側面から10μm以下、より具体的に前記有機または無機微粒子は、粒径が約1~約10μm、好ましくは約1~約5μm、より好ましくは約1~約3μmの粒子であり得る。前記有機または無機微粒子の粒径が1μm未満の場合、光の散乱による眩しさ防止効果が微々たり、粒径が10μmを超える場合、適正水準のヘイズに合わせるためにコーティング厚さを上げる必要があるが、コーティング厚さが高まるとクラックが発生する恐れがある。
【0052】
また、前記有機または無機微粒子の体積平均粒径は、約2~約10μm、好ましくは約2~約5μm、より好ましくは約2~約3μmであり得る。
【0053】
前記有機または無機微粒子は、眩しさ防止フィルムの形成のために使用される種類であれば、その構成の限定なしに使用し得る。
【0054】
例えば、前記有機微粒子は、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂及びナイロン樹脂からなる有機微粒子から選ばれる1種以上を使用し得る。
【0055】
より具体的に前記有機微粒子は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、スチレンスルホン酸、p-t-ブトキシスチレン、m-t-ブトキシスチレン、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルエーテル、アリルブチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、不飽和カルボキシ酸、アルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる一つ以上であり得るが、本発明はこれに限定されない。
【0056】
また、前記有機微粒子は、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリレート-co-スチレン、ポリメチルアクリレート-co-スチレン、ポリメチルメタクリレート-co-スチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、エポキシレジン、フェノールレジン、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアミン、ポリジビニルベンゼン、ポリジビニルベンゼン-co-スチレン、ポリジビニルベンゼン-co-アクリレート、ポリフタル酸ジアリル及びトリアリルイソシアヌレートポリマーの中から選ばれた一つの以上またはこれらの2以上のコポリマー(copolymer)を使用し得るが、本発明はこれに限定されない。
【0057】
また、前記無機微粒子は、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム及び酸化亜鉛からなる無機微粒子群より選ばれる1種以上を使用し得るが、本発明はこれに限定されない。
【0058】
前記有機及び無機微粒子の総含有量は、前記光硬化性官能基を含む100重量部に対して、約1~約20重量部、好ましくは約5~約15重量部、より好ましくは約6~約10重量部の範囲であり得る。前記有機及び無機微粒子の総含有量が前記光硬化性官能基を含むバインダー100重量部に対して1重量部未満で含まれる場合、内部散乱によるヘイズ値が十分に具現されなく、20重量部を超える場合、コーティング組成物の粘度が高くなり、コーティング性が不良になり、内部散乱によるヘイズ値が過度に大きくなって明暗コントラスト比(contrast ratio)が低下し得る。
【0059】
本発明の一実施例によれば、前記有機または無機微粒子は、前記光硬化性官能基を含むバインダーの硬化樹脂との屈折率の差が約0.005~約0.1、好ましくは約0.01~約0.07、より好ましくは約0.015~約0.05であり得る。前記屈折率の差が0.005未満であれば、眩しさ防止に求められる適切なヘイズ値が得られにくい場合もある。また、前記屈折率の差が0.1を超えれば、内部散乱が増加してヘイズ値が増加する反面、明暗コントラスト比が低下し得る。
【0060】
一方、本発明のコーティング組成物は、上述した成分のほかにも、界面活性剤、酸化防止剤、UV安定剤、レベリング剤、防汚剤など本発明が属する技術分野において通常使用される添加剤をさらに含み得る。また、その含有量は、本発明のコーティング組成物の物性を低下しない範囲内で多様に調節できるので、特に制限しないが、例えば全体コーティング組成物100重量部に対して、約0.1~約10重量部で含まれ得る。
【0061】
本発明の一実施例によれば、前記コーティング組成物を用いて形成した光硬化性樹脂層は、乾燥及び硬化後に約1μm以上であり、例えば、約1~約20μm、または約2~約10μm、または約2~約5μmの厚さを有し得、このような厚さ範囲内で適切な光学物性及び物理的特性を示し得る。
【0062】
本発明の他の一実施例によれば、基材と、前記基材の少なくとも一面に備えられ、上述した偏光子保護フィルム用コーティング組成物によって形成される光硬化性樹脂層とを含み、最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmであるか、または最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmである、偏光子保護フィルムを提供する。
【0063】
このような本発明の偏光子保護フィルムは、透明プラスチック基材光硬化性官能基を含むバインダー、最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmである化合物、及び最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmである化合物のうちいずれか一つ以上である染料、光重合開始剤、及び溶媒と、選択的に有機または無機微粒子を含む、偏光子保護フィルム用コーティング組成物を塗布し、光硬化させて形成し得る。
【0064】
前記コーティング組成物に対する詳細な説明及びこれに含まれる光硬化性官能基を含むバインダー、最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmである化合物、及び最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmである化合物のうちいずれか一つ以上である染料、光重合開始剤、溶媒、有機または無機微粒子、及びその他に含まれ得る他の成分に対する詳細な説明及び具体的な例示は上述したとおりである。
【0065】
前記コーティング組成物を塗布する方法は、本技術が属する技術分野において用いられる方法であれば、特に制限されず、例えばバーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式、またはソリューションキャスティング方式などを用い得る。
【0066】
次に、塗布されたコーティング組成物に紫外線を照射して光硬化反応を行うことによって保護フィルムを形成し得る。前記紫外線を照射する前、コーティング組成物の塗布面を平坦化し、コーティング組成物に含まれている溶媒を揮発させるための乾燥過程をさらに行い得る。
【0067】
前記紫外線の照射量は、例えば、約20~約600mJ/cmであり得る。紫外線照射の光源は、本技術が属する技術分野で用いられるものであれば、特に制限されず、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライト(black light)蛍光ランプなどを用い得る。
【0068】
前記本発明の偏光子保護フィルムは、上述したように最大励起波長が520nm~540nmであり、最大蛍光波長が540nm~600nmである化合物、及び最大励起波長が610nm~660nmであり、最大蛍光波長が640nm~680nmである化合物のうちいずれか一つ以上である染料を含むことによって、波長領域帯に応じて異なる光透過率を示す。
【0069】
例えば、本発明の偏光子保護フィルムは、上述した最大励起波長が示される領域、つまり、520nm~540nmまたは610nm~660nmの領域における平均光透過率が、約85%未満、好ましくは約81%未満であり、これを除いた残りの領域において、例えば、400nm~500nmの領域における平均透過率は、約90%以上であり、前記最大励起波長が示される領域と、これを除いた残りの領域において平均透過率の差が10%ポイント以上であり得る。
【0070】
このような波長領域帯に応じた光透過率の差及び最大励起波長特性によって、液晶ディスプレイにおいてバックライトから入射される光のうちレーザポインタと重なる一部の波長帯の光を吸収して強さを減少させるので、レーザポインタの視認性を高めながらも、色再現性の高い偏光板及びLCDを提供し得る。
【0071】
また、本発明の一実施例によれば、前記本発明の偏光子保護フィルムは、下記式1で測定される相対輝度値が、約1.5以上、好ましくは、約1.6以上であり得、その上限の大きな意味はなく、約1.5~約2.5、または約1.6~約2.1であり得る。
[式1] B/A
【0072】
前記式1において、
Aは、前記染料を含まない偏光子保護フィルムをバックライト面に置いて、法線の60゜方向で535nmまたは650nmレーザを照射した時に測定される輝度値であり、
Bは、前記染料を含む偏光子保護フィルムをバックライト面に置いて、法線の60゜方向で535nmまたは650nmレーザを照射した時に測定される輝度値である。
【0073】
前記のように本発明の光硬化性樹脂層及びこれを含む偏光子保護フィルムは、一般的なUV硬化型コーティング層を使用する場合と比較した時、バックライトから発光する光のうち、一般にレーザポインタなどに使用される特定の波長領域の光を吸収し、これに該当する波長領域のレーザを表面に照射した時、照射前輝度に対し、輝度が約50%以上、好ましくは約60%以上上昇する効果を実現でき、したがって、レーザポインタの視認性を顕著に向上させることができる。
【0074】
本発明の偏光子保護フィルムにおいて、前記光硬化性樹脂層が形成される基材は、通常偏光子保護フィルムとして使用される透明性プラスチック樹脂を使用し得る。より具体的に本発明の一実施例によれば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)のようなポリエステル(polyester)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate、EVA)のようなポリエチレン(polyethylene)、環状オレフィン重合体(cyclic olefin polymer、COP)、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリイミド(polyimide、PI)、MMA(methyl methacrylate)、フッ素系樹脂またはトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)などが挙げられる。
【0075】
好ましくは、前記基材は、トリアセチルセルロース(TAC)を含むフィルムであり得る。
【0076】
前記基材の厚さは、特に制限されないが、偏光板の硬度及び他の物性を満たす範囲として、約20~約100μm、または約20~約60μmの厚さを有する基材を使用し得る。
【0077】
本発明の偏光子保護フィルムは、500g荷重での鉛筆硬度がHB以上、または1H以上、または2H以上であり得る。
【0078】
また、摩擦試験機にスチールウール(steel wool)#0を装着した後、200gの荷重、または300g荷重、または400g荷重で10回往復する場合にスクラッチが発生しない耐摩耗性を示し得る。
【0079】
本発明の他の一実施例によれば、偏光子、及び前記偏光子の少なくとも一面に備えられる前記偏光子保護フィルムを含む偏光板を提供する。
【0080】
偏光子は、多様な方向に振動しながら入射される光から一方向に振動する光のみを抽出できる特性を示す。このような特性は、ヨウ素を吸収したPVA(poly vinyl alcohol)を強い張力で延伸して達成し得る。例えば、より具体的には、PVAフィルムを水溶液に浸漬して膨潤(swelling)させる膨潤段階、前記膨潤されたPVAフィルムに偏光性を付与した二色性物質で染色する段階、前記染色されたPVAフィルムを延伸(stretch)して前記二色性染料物質を延伸方向に並んで配列させる延伸段階、及び前記延伸段階を経たPVAフィルムの色を補正する補色段階を経て偏光子を形成し得る。しかし、本発明の偏光板はこれに制限されない。
【0081】
本発明の一実施例によれば、前記保護フィルムは、偏光子の両面の全てに付着し得る。
【0082】
本発明の他の一実施例によれば、前記偏光子の一面にのみ前記偏光子保護フィルムが備えられ、他の一面にはTACのように偏光子保護用に通常用いられる汎用保護フィルムが備えられる。
【0083】
この時、本発明の偏光板は、LCDの上部偏光板として用いられ得、LCD内の積層構造において、前記光硬化性樹脂層を含む本発明の偏光子保護フィルムが最上部に位置するようにし得る。
【0084】
上述したように本発明の偏光板は、偏光子保護フィルムの波長に応じた透過率特性によって、LCDにおいてバックライトのスペクトル特性により引き起こされるレーザポインタの視認性低下現象を緩和することができる。
【0085】
前記偏光子と偏光子保護フィルムは、接着剤などを使用してラミネーションすることによって接着させ得る。使用可能な接着剤としては当該技術分野に知られているものであれば、特に制限されない。例えば、水系接着剤、一液型または二液型のポリビニルアルコール(PVA)系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、スチレンブタジエンゴム系(SBR系)接着剤、またはホットメルト型接着剤などがあるが、本発明はこれら例に限定されない。
【0086】
本発明の偏光子保護フィルムを偏光子に積層して接着する時、前記光硬化性樹脂層が形成されない基材面が偏光子に付着するようにし、前記光硬化性樹脂層は、偏光板の外側に位置するように積層することが好ましい。
【0087】
このような本発明の保護フィルムを備える偏光板は、LCDに適用する場合を例に挙げて説明したが、これに制限されず、多様な分野で活用できる。例えば、移動通信端末器、スマートフォン、その他のモバイル機器、ディスプレイ機器、電子黒板、屋外電光板、各種表示部の用途に用いられる。本発明の一実施例によれば、前記偏光板は、TN(Twisted Nematic)、STN(Super Twisted Nematic)液晶用偏光板であり得、IPS(In-Plane Switching)、Super-IPS、FFS(Fringe Field Switching)などの水平配向モード用偏光板であり得る。
【0088】
本発明の他の一実施例によれば、前記偏光板を含む液晶ディスプレイ装置を提供する。
【0089】
前記液晶ディスプレイ装置は、例えば、バックライトユニットと、前記バックライトユニット上に備えられるプリズムシートと、前記プリズムシート上に備えられる偏光板とを含む形態であり得、具体的に、本発明の具現例による偏光板が液晶ディスプレイ装置の上部偏光板として用いられ、偏光板において光硬化性樹脂層が最上面に位置し、視聴者と直接対面する構造になることが好ましい。
【0090】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用及び効果をより詳く説明する。ただし、このような実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、発明の権利範囲はこれによって定められない。
【0091】
<実施例>
偏光子保護フィルム用コーティング組成物及び偏光子保護フィルムの製造
実施例1
ペンタエリスリトールトリ(テトラ)アクリレート(PETA)50g、6官能ウレタンアクリレート(商品名:UA-306I)50g、最大励起波長が532nmである蛍光染料0.25g、光重合開始剤(商品名:Irgacure 184)5g、溶媒MEK 100gを混合して組成物を製造し、60μm厚さのTACフィルムにコートした。
これを60℃で2分間乾燥した後、水銀ランプで200mj/cmのUVを照射して平均乾燥厚さが5μmである光硬化性樹脂層を形成して偏光子保護フィルムを製造した。
【0092】
実施例2
ペンタエリスリトールトリ(テトラ)アクリレート(PETA)50g、6官能ウレタンアクリレート(商品名:UA-306I)50g、最大励起波長が532nmである蛍光染料0.25g、沈降型シリカ(OK-607、製造:Evonik)2g、光重合開始剤(商品名:Irgacure 184)5g、溶媒MEK 100gを混合して組成物を製造し、60μm厚さのTACフィルムにコートした。
これを60℃で2分間乾燥した後、水銀ランプで200mj/cmのUVを照射して平均乾燥厚さが5μmである光硬化性樹脂層を形成して偏光子保護フィルムを製造した。
【0093】
実施例3
前記実施例1において最大励起波長が532nmである染料の代わりに、最大励起波長が633nmである蛍光染料0.25gを使用したことを除いては、実施例1と同様の方法によって偏光子保護フィルムを製造した。
【0094】
実施例4
前記とは別に、ペンタエリスリトールトリ(テトラ)アクリレート(PETA)50g、6官能ウレタンアクリレート(商品名:UA-306I)50g、光重合開始剤(商品名:Irgacure 184)5g、及び溶媒MEK 100gを混合してハードコーティング用組成物を製造した。
【0095】
前記実施例1で製造された偏光子保護フィルムにおいて、光硬化性樹脂層上に前記ハードコーティング用組成物を塗布し、これを60℃で2分間乾燥した後、水銀ランプで200mj/cmのUVを照射して平均乾燥厚さが5μmであるハードコーティング層を形成して偏光子保護フィルムを製造した。
【0096】
比較例1及び2
蛍光染料を使用しないことを除いては、それぞれ実施例1及び2と同様の方法によって偏光子保護フィルムを製造した。
【0097】
比較例5
前記実施例1において最大励起波長が532nmである染料の代わりに、最大励起波長が497nmである蛍光染料0.25gを使用したことを除いては、実施例1と同様の方法によって偏光子保護フィルムを製造した。
【0098】
偏光板の製造
前記実施例及び比較例で製造したフィルムを水系接着剤を用いて接着層の厚さが概ね100nmになるようにPVAフィルムとラミネーションして接着し、PVAの他の一面には60μm厚さのTACを同様の方法で接着させることによって偏光板を製造した。
【0099】
<実験例>
<測定方法>
前記実施例及び比較例の偏光子保護フィルム及び偏光板に対して下記方法によって物性を測定した。
1)光透過率及び最大励起波長
UV-VIS-NIRスペクトロメーター(Solidspec-3700、SHIMADZU社)で300~800nmの波長における光透過率を積分球タイプで測定した。
【0100】
2)耐スクラッチ性
フィルムの樹脂層表面に対して、Steel wool #0に一定の荷重をかけて往復して10回擦った後、キズの生じない最大荷重を確認した。
【0101】
3)鉛筆硬度
鉛筆硬度計(精度試験機、製造会社:Chungbuk Tech)を用いて500g荷重で鉛筆硬度を測定した。ASTM 3363-74により標準鉛筆(Mitsubishi)を6B~9Hに変化させながら45度の角度を維持して樹脂層表面にスクラッチを加えて表面の変化を観察した。それぞれの実験値は5回測定後の平均値を記載した。
【0102】
4)相対輝度
前記染料を含まない比較例の偏光子保護フィルムを液晶モニタの上面に置いて、法線の60゜方向で535nmまたは650nmレーザを照射して輝度値を測定し、(A)
前記染料を含む実施例の偏光子保護フィルムを液晶モニタの上面に置いて、法線の60゜方向で535nmまたは650nmレーザを照射して輝度値を測定した後、(B)
各実施例及び比較例のA及びB値をマッチして相対輝度値を計算した。
【0103】
5)視認性
前記実施例及び比較例の偏光子保護フィルムを液晶モニタの上面に置いて、法線の60゜方向で535nmまたは650nmレーザを用いるレーザポインタを照射し、5人の評価団によって視認性を官能評価した。5人全員が視認性に対して良好であると評価した場合は◎、3人または4人が視認性に対して良好であると評価した場合は○、2人以下の人が視認性に対して良好であると評価した場合はXで評価した。
前記物性測定結果を下記表1に整理した。
【0104】
【表1】
【0105】
前記表1のように本発明の実施例による偏光子保護フィルムは、含有する染料の種類によって520nm~540nmまたは610nm~660nmの領域における平均光透過率が、約85%未満、好ましくは約81%未満であり、これを除いた残りの領域、例えば、400nm~500nmの領域における平均透過率は、約90%以上であり、前記最大励起波長が示される領域と、これを除いた残りの領域において平均透過率の差が10%ポイント以上であった。
【0106】
そして、相対輝度値はいずれも約1.6以上であり、一般にレーザポインタに用いられる波長領域において、比較例に対して輝度が約60%以上、好ましくは約100%ほど上昇する効果を実現できることが明らかに確認でき、したがって、レーザポインタの視認性が顕著に向上したことが確認できる。
【0107】
また、本発明の実施例による偏光子保護フィルムは、400g以上の耐スクラッチ性及び2H以上の鉛筆硬度を示し、液晶ディスプレイ用偏光板に適した物性を示すことが確認できた。