(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】反射防止フィルムおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/11 20150101AFI20220411BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220411BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
G02B1/11
G02B1/14
G02F1/1335
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020029397
(22)【出願日】2020-02-25
(62)【分割の表示】P 2018518416の分割
【原出願日】2017-02-10
【審査請求日】2020-02-26
(31)【優先権主張番号】10-2016-0030396
(32)【優先日】2016-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0036378
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヒョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ブ・キョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・レ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ソク・フン・チャン
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/044398(WO,A1)
【文献】特開2009-288732(JP,A)
【文献】国際公開第2016/030738(WO,A1)
【文献】特開2009-204728(JP,A)
【文献】特開2009-276658(JP,A)
【文献】特開2003-034761(JP,A)
【文献】特表2014-511403(JP,A)
【文献】特開2010-254950(JP,A)
【文献】特開2006-047504(JP,A)
【文献】特開2010-201773(JP,A)
【文献】特開2015-156003(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0144724(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0036771(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0017040(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/11
G02B 1/14
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコーティング層;および前記ハードコーティング層に形成された低屈折層;を含み、
前記ハードコーティング層は、光重合性化合物の(共)重合体を含むバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した0.5~10μmの直径を有する有機または無機微粒子;および
表面に反応性作用基が置換されていない1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子;を含み、
前記低屈折層の表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満であり
、
前記低屈折層は、光重合性化合物;光反応性作用基を含むフッ素系化合物;および反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane);間の架橋重合体を含むバインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散した無機微細粒子を含
み、
前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は、ケイ素またはケイ素化合物を含み、
380nm~780nm波長領域での透光度が94%以上である、反射防止フィルム。
【請求項2】
前記反射防止フィルムの表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)は、非接触表面形状測定器(3D Optical Profiler)を利用して測定した結果である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記反射防止フィルムの380nm~780nm波長領域での平均反射率が5%未満である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記反射防止フィルムの内部ヘイズが0超過10%未満である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記反射防止フィルムの外部ヘイズが0超過0.5%未満である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記ハードコーティング層は、前記光重合性化合物の(共)重合体100重量部対比前記有機または無機微粒子1~20重量部を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記ハードコーティング層は、前記有機または無機微粒子および無機ナノ粒子の総重量を基準にして前記1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子3~10重量%を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記ハードコーティング層は、50nm超過120nm以下の直径を有する無機ナノ粒子をさらに含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
前記ポリシルセスキオキサンに置換される反応性作用基は、アルコール、アミン、カルボン酸、エポキシド、イミド、(メタ)アクリレート、ニトリル、ノルボルネン、オレフィン、ポリエチレングリコール、チオールおよびビニル基からなる群より選択された1種以上の作用基を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、炭素数1~30の直鎖または分枝鎖のアルキル基、炭素数6~30の シクロアルキル基および炭素数6~30のアリール基からなる群より選択された1種以上の非反応性作用基が1以上さらに置換される、請求項9に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、反応性作用基が1つ以上置換され、ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane)を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
前記ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサンのシリコンのうちの少なくとも1つ以上には反応性作用基が置換され、前記反応性作用基が置換されない残りのシリコンには非反応性作用基が置換される、請求項11に記載の反射防止フィルム。
【請求項13】
前記ポリシルセスキオキサンに置換された非作用性反応基対比反応性作用基のモル比(molar ratio)が0.20以上である、請求項12に記載の反射防止フィルム。
【請求項14】
前記光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーを含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項15】
前記フッ素系化合物に含まれる光反応性作用基は、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、ビニル(Vinyl)基およびチオール(Thiol)基からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項16】
前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は、1重量%~25重量%のフッ素含有量を有し、
i)一つ以上の光反応性作用基が置換され、少なくとも一つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物;ii)1以上の光反応性作用基で置換され、少なくとも一つの水素がフッ素で置換され、一つ以上の炭素がケイ素で置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物;iii)一つ以上の光反応性作用基が置換され、少なくとも一つのシリコンに1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子;およびiv)1以上の光反応性作用基で置換され、少なくとも一つの水素がフッ素で置換されたポリエーテル化合物;からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項17】
前記無機微細粒子は、10~100nmの数平均粒径を有する中空シリカ粒子である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項18】
前記低屈折層は、前記光重合性化合物100重量部に対して前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物1~75重量部、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)0.5~25重量部および前記無機微細粒子10~320重量部を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項19】
前記ハードコーティング層は5μm超過10μm未満の厚さを有し、
前記低屈折層は1nm~300nmの厚さを有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の反射防止フィルムを含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年3月14日付の韓国特許出願第10-2016-0030396号および2016年3月25日付の韓国特許出願第10-2016-0036378号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、反射防止フィルムおよびディスプレイ装置に関し、より詳しくは、高解像度ディスプレイに適用の際、スパークリング現象が少なく視認性に優れ、ディスプレイ製作時に作業性に優れた反射防止フィルムと優れた外部ブラック視感および明暗比などの光特性および高い画面の鮮明度を提供するディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、PDP、LCDなどの平板ディスプレイ装置には外部から入射される光の反射を最小化するための反射防止フィルムが装着される。
【0004】
光の反射を最小化するための方法としては、樹脂に無機微粒子などのフィラーを分散させて基材フィルム上にコーティングし凹凸を付与する方法(anti-glare:AGコーティング);基材フィルム上に屈折率が異なる複数の層を形成して光の干渉を利用する方法(anti-reflection:ARコーティング)、またはこれらを混用する方法などがある。
【0005】
そのうち、前記AGコーティングの場合反射される光の絶対量は一般的なハードコーティングと同等な水準であるが、凹凸を通した光の散乱を利用して目に入る光の量を減らすことによって、低反射効果を得ることができる。しかし、前記AGコーティングは表面凹凸によって画面の鮮明度が落ちるため、最近はARコーティングの多くの研究が行われている。
【0006】
前記ARコーティングを利用したフイルムとしては、基材フィルム上にハードコーティング層(高屈折率層)、低反射コーティング層などが積層された多層構造であるものが商用化されている。しかし、表面の凹凸のないクリア(clear)コーティングの場合、防眩の効果が十分でなくディスプレイ内部の不良点が容易に見える短所がある。
【0007】
そのために、イメージの鮮明性を維持しながら外部から入射される光の反射を最小化する多くの研究が行われているが、ディスプレイの解像度が上がるほどそれに伴う物性改善の程度が不十分であるのが実情である。最近、液晶ディスプレイ装置の液晶パネルとしてCOT(color filter on TFT)構造を使用する場合がある。
【0008】
このようなCOT構造の液晶パネルを使用する場合、電極などに含まれる金属によってパネル内部の反射度が高くなりながら、外部ブラック視感および明暗比などのディスプレイの光特性が低下する問題点があり、したがって、ディスプレイパネルの収率が高く、かつ優れた反射防止機能を有する表面コーティングフィルムの開発が必要なのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高解像度ディスプレイに適用の際、スパークリング現象が少なく視認性に優れて、ディスプレイ製作時に作業性に優れた反射防止フィルムを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、優れた外部ブラック視感および明暗比などの光特性および高い画面の鮮明度を提供するディスプレイ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、
ハードコーティング層および前記ハードコーティング層に形成された低屈折層を含む反射防止フイルムであって、表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満であり、380nm~780nm波長領域での透光度が94%以上である、反射防止フィルムが提供される。
【0012】
また、本明細書では、上述した反射防止フィルムを含むディスプレイ装置が提供され得る。
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態による反射防止フィルムおよびディスプレイ装置についてより詳細に説明する。
【0014】
本明細書で、光重合性化合物は、光が照射されれば、例えば、可視光線または紫外線が照射されれば重合反応を起こす化合物を通称する。
【0015】
また、フッ素系化合物は、化合物のうちの少なくとも1つ以上のフッ素元素が含まれている化合物を意味する。
【0016】
また、(メタ)アクリル[(Meth)acryl]は、アクリル(acryl)およびメタクリル(Methacryl)の双方を含む意味である。
【0017】
また、(共)重合体は、共重合体(co-polymer)および単独重合体(homo-polymer)の双方を含む意味である。
【0018】
また、中空シリカ粒子(silica hollow particles)とは、ケイ素化合物または有機ケイ素化合物から導出されるシリカ粒子であり、前記シリカ粒子の表面および/または内部に空の空間が存在する形態の粒子を意味する。
【0019】
発明の一実施形態によれば、ハードコーティング層および前記ハードコーティング層に形成された低屈折層を含む反射防止フイルムであって、380nm~780nm波長領域で94%以上の透光度を有し、前記反射防止フィルムの表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満である、反射防止フィルムが提供され得る。
【0020】
前記ハードコーティング層は、その一面に微細凹凸を有する、通常AGコーティング層と言われるコーティング層で構成される。具体的に、凹凸構造が形成されたフィルムは、外部から光が入ってきた時に乱反射を誘導できるので反射防止効果が優れているが、内部から出るイメージも表面で歪曲されるため、イメージの鮮明性や解像度が低下する問題をもたらす。また、UHD(ultrahigh definition)以上の高解像度ディスプレイでは、このようなイメージの歪みが激しいので、凹凸構造の制御が必要である。
【0021】
そこで本発明者らは、フィルムの外部表面での反射防止効果とイメージの鮮明性を同時に実現できる最適の表面凹凸構造を導き出すために、フィルムの表面凹凸構造に対して効果的に分析できるパラメータに関して研究を進行した結果、表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)の組み合わせを通して表面凹凸構造の把握が容易であることを実験を通して確認して本発明を完成した。
【0022】
特に、表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)の組み合わせは、基準長さでの最大ピーク(peak)5つと最大バレー(valley)5つの平均の和を示す平均粗さ(Rz)および評価長さでのピーク高さの最大値およびバレー深さの最大値の和を示す総高さ(Rt)に比べて、表面凹凸の高さが低い場合の表面凹凸の高さと模様に対する情報を示すことができる。
【0023】
具体的に、表面凹凸の高さが低くなるほどピークの高さおよびバレー深さの差が減少し、そのために、小さな凹凸の数が増加するようになるので、平均粗さ(Rz)および総高さ(Rt)のように最大値1つあるいは5つだけで表面凹凸の形状を代表すると見にくい。つまり、表面凹凸の高さが低くなって凹凸の個数が増加する場合は、単にいくつかの凹凸だけで測定された平均粗さ(Rz)が表面凹凸の高さを示すと見られないだろう。例えば、大きな凹凸が100個ある時、最大ピーク5個と最大バレー5個を利用して平均粗さ(Rz)を計算する場合、測定装置によって3%の比率でエラーが含まれると仮定すれば、100個の値の中で3個の値は間違った値となることがあり、このような間違った値が最大ピークあるいは最大バレーに含まれているとしても、残りの値は正常値を有するようになり、測定の正確度は70%になると見られる。反面、小さな凹凸が300個ある時、最大ピーク5個と最大バレー5個を利用して平均粗さ(Rz)を計算する場合、測定装置によって3%の比率でエラーが含まれると仮定すれば、300個の値の中で9個の値が間違った値になることができ、このような間違った値が最大ピークあるいは最大バレーに含まれていると、正常値は10%に過ぎないことになる。したがって、表面凹凸の高さにより平均粗さ(Rz)の正確度が影響を受けられる。
【0024】
これに反して、スウェディッシュ高さ(H)を利用して表面凹凸の高さを測定すれば、凹凸の個数に関係なく、凹凸の上限と下限の一定比率を除いて高さが測定されるため、凹凸高さの正確性をもっと確保できる。さらに、ここに凹凸の模様の特徴を示す粗さ尖度(Rku)のパラメータが共に組合わせることによって、凹凸の構造をより具体的かつ正確に分析できる。
【0025】
また、前記反射防止フィルムの表面の凹凸形状が、特定範囲の粗さ尖度およびスウェディッシュ高さを有する時、低屈折層による透光度を高め、外部反射を低くして優れた反射防止効果と視認性を示す反射防止フィルムが実現可能であることを確認した。
【0026】
具体的に、前記反射防止フィルムの表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)は3.5超過6未満、または4超過6未満、または5超過6未満でありうる。また、前記表面の凹凸形状のスウェディッシュ高さ(H)は20nm超過200nm未満、または20nm~180nm、または50nm~150nmでありうる。
【0027】
ここで、表面の凹凸形状を示す粗さ尖度(Roughness kurtosis;Rku)とは、ピークとバレーの相対的不均一度を計算するパラメータであって、ピークとバレーの尖りを示すパラメータであり、表面の凹凸形状の鋭さおよび高さ分布の不均一度の尺度である。この時、相対的不均一度は、ピークとバレーが占める断面積の相対的不均一度だけでなく、ピークとバレーの模様の不均一度も含む。例えば、Rkuが3の場合、表面の凹凸形状を計算するRku値が正規分布曲線に従うことを意味する。また、Rkuが3から離れるほど、表面の凹凸形状の非対称度が存在し、具体的に、バレーあるいはピーク側に非対称度が増加する。Rkuが3より増加する場合、ピーク側の凹凸は平坦かつバレーに比べて断面積の模様がもう少し規則的な形状に存在することを意味する。これに反して、Rkuが3より減少する場合、ピークが尖って尖鋭度が高くかつバレーに比べて断面積の高さがさらに不規則に存在することを意味する。
【0028】
具体的に、前記表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)は、下記一般式1によって求められる:
【0029】
【0030】
前記一般式1において、
Lは基準長さ(sampling length)であり、Y(i)は基準長さでのピークあるいはバレーの高さであり、Rqは基準長さでのY(i)の二乗平均平方根を意味し、下記一般式2によって求められる:
【0031】
【0032】
前記一般式2において、Nは基準長さ内のピークの個数である。
【0033】
この時、前記反射防止フィルムの表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であるので、表面の外部凹凸を最少化しながらも外部反射を低くすることができる。前記反射防止フィルムの表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5以下であれば、ピークの凹凸の尖鋭度が高くて防眩機能が低下でき、表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が6以上であれば、ピークの凹凸の頻度が高く、ピークの面積が大きくて凹凸によってフィルムの鮮明度が阻害する問題点がありうる。また、前記一般式1によれば、3を基準にしてピークとバレーの粗さ尖度(Rku)が異なるが、粗さ尖度(Rku)の値が3と3.5の間にある場合、肉眼で区別しにくいほどの対称性が存在するため、前記反射防止フィルムの表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)は3.5超過であるのが好ましい。
【0034】
一方、表面の凹凸形状のスウェディッシュ高さ(Swedish height;H)は、縦断面内の2個の基準線間の間隔を示すパラメータを意味する。具体的に、表面の凹凸形状のスウェディッシュ高さ(H)は、最高高さを有するピーク(あるいは最高深さを有するバレー)の5%が表出される位置の上部基準線(upper reference line)と最高高さを有するピーク(あるいは最高深さを有するバレー)の90%が表出される位置の下部基準線(lower reference line)との間の距離を示す。
【0035】
したがって、表面の凹凸形状のスウェディッシュ高さ(H)によるデータは、表面の凹凸形状で外れているデータを排除できるので、表面凹凸形状のピーク高さの最大値を示す最大ピーク高さ(Rp)、バレー深さの最大値を示す最大バレー深さ(Rv)および最大ピーク高さ(Rp)と最大バレー深さ(Rv)の和を意味する平均粗さ(Rt)に比べて、信頼度が高く安定的である。
【0036】
この時、前記反射防止フィルムの表面の凹凸形状のスウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満であるので、表面凹凸の突起不良を改善できる。前記反射防止フィルムの表面の凹凸形状のスウェディッシュ高さ(H)が20nm以下であれば、表面の凹凸が低くて防眩機能が低下でき、表面の凹凸形状のスウェディッシュ高さ(H)が200nm以上であれば、凹凸の高さが高くなってイメージの鮮明度が低くなることができる。
【0037】
したがって、表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であると同時に、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満である前記反射防止フィルムは、優れた反射防止機能と視認性を同時に示すことができる。
【0038】
このような、前記反射防止フィルム表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)は、非接触表面形状測定器(3D Optical Profiler)を利用して測定できる。例えば、前記反射防止フィルムは、前記ハードコーティング層と前記ハードコーティング層上に形成された低屈折層とを含むので、前記反射防止フィルムの表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)の値は、低屈折層の表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)の値を測定して求められる。
【0039】
また、前記反射防止フィルムは、前記ハードコーティング層上に形成された低屈折層を含むことによって、380nm~780nm波長領域で94%以上の透光度を有することができる。
【0040】
このような反射防止フィルムは、380nm~780nm波長領域で5%未満の平均反射率を有することができる。具体的に、前記反射防止フィルムは、380nm~780nm波長領域で4%以下、または3.5%以下の平均反射率を有することができる。例えば、前記反射防止フィルムは、380nm~780nm波長領域で2%以下、または1.5%以下、または1.3%以下の平均反射率を有することができる。
【0041】
さらに、前記反射防止フィルムは、優れた耐摩耗性、耐擦傷性、または耐スクラッチ性などの機械的物性を示すが、これは、ハードコーティング層および低屈折層のコーティングによる外部凹凸特性と前記低屈折層を形成する組成の特性によって具現できる。前記低屈折層の組成に対する具体的な内容については後述する。
【0042】
また、それとともに前記反射防止フィルムの視認性を維持しながらパネル不良の隠蔽力を改善するために、前記反射防止フィルムにヘイズを付与できる。前記反射防止フィルムの総ヘイズは、内部ヘイズと外部ヘイズとの和で定義され、前記総ヘイズは、前記反射防止フィルム自体に対してヘイズを測定して得られ、前記内部ヘイズは、ヘイズが0である粘着剤を表面に貼り付けて平坦化層を作ったり、あるいはアルカリ処理を行った表面に平坦化層をコーティングして測定することができ、前記総ヘイズおよび内部ヘイズ値が定義されることで、外部ヘイズ値が定義されることができる。
【0043】
具体的に、前記反射防止フィルムの内部ヘイズが0超過10%未満である場合、鮮明性を維持しながらパネル不良の隠蔽力を改善することができる。前記反射防止フィルムの内部ヘイズが0%である場合パネル隠蔽力が低下でき、前記反射防止フィルムの内部ヘイズが10%以上である場合は明暗比の低下など視認性の低下をもたらすことができる。
【0044】
また、前記反射防止フィルムの外部ヘイズが0超過0.5%未満、または0超過0.2%以下であれば、スパークリング現象が少なく、解像度が高い反射防止フィルムを製造することができる。前記反射防止フィルムの外部ヘイズが0%である場合、防眩効果を期待できず、前記反射防止フィルムの外部ヘイズが0.5%以上である場合、解像度の低下をもたらすことができる。上述した範囲の外部ヘイズは、20nm超過200nm未満のスウェディッシュ高さ(H)を有する表面凹凸によって具現できる。
【0045】
前述のように、前記反射防止フィルムは、表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満であり、内部ヘイズが0超過10%未満であり、外部ヘイズが0超過0.5%未満であり、380nm~780nm波長領域で94%以上の透光度および5%未満の反射率を示すことができる。これによって、前記反射防止フィルムは、低い外部ヘイズと低い反射率によって反射防止機能が極大化され、COTパネルなどで外部光による視認性低下を抑制することができる。
【0046】
前記反射防止フィルムの表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)、スウェディッシュ高さ(H)、透光度、反射率、内部ヘイズおよび外部ヘイズは、ハードコーティング層を形成する組成物の組成およびその形成方法により調整できるだけでなく、反射防止フィルムの表面に相当する低屈折層を形成する組成物の組成およびその形成方法によっても調整できる。これは、前記ハードコーティング層上には低屈折層が形成されているが、低屈折層の薄い厚さによってハードコーティング層の表面凹凸形状が反射防止フィルムの表面に影響を与えるためである。
【0047】
具体的に、前記表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満である反射防止フィルムは、ハードコーティング層を形成する組成物中の有機粒子および無機粒子それぞれの大きさおよび投入量、および有機粒子と無機粒子との間の比率、有機粒子とバインダーとの間の比率などを変更して、粒子の凝集を所望の水準に調整することによって具現できる。例えば、前記組成物中の有機粒子または無機粒子の含有量を減らすことによって、粒子の凝集を減少させて凹凸の高さを低くすることができる。また、粒子の凝集よりは分散性に優れた有機粒子を使用して、粒子の凝集が行われないようにして、凹凸形状の高さを低くすることもできる。この時、適切な含有量の無機粒子と共に添加する場合、無機粒子の表面処理剤と有機粒子の表面処理剤との間の極性差によって有機粒子の分散性が調整され、そのため、粒子の凝集の程度が異なって表面凹凸の大きさおよび形状が制御されることができる。
【0048】
また、前記表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)が3.5超過6未満であり、スウェディッシュ高さ(H)が20nm超過200nm未満である反射防止フィルムは、同じ組成の組成物を使っても、ハードコーティング層および/または低屈折層の厚さを調整することによって具現することができる。具体的に、前記ハードコーティング層および/または低屈折層の厚さが厚くなるほど、粒子による表面凹凸がコーティング層に埋められて表面凹凸の高さが低くなることができる。前記ハードコーティング層および/または低屈折層の厚さが厚くなれば、有機粒子あるいは無機粒子の大きさに比べてこれら層の厚さが厚くなるため、粒子が多く凝集された突起が生じても表面に凹凸として目立たなくて、低い高さを有する凹凸として現れる。
【0049】
このように、ハードコーティング層および/または低屈折層を形成する組成物の組成およびこれらを形成するための工程条件を調整して、反射防止フィルムの表面凹凸形状の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)、透光度、反射率、内部ヘイズおよび外部ヘイズを特定範囲以内で調整することができる。
【0050】
一方、前記ハードコーティング層は、光重合性化合物、光開始剤および有機微粒子または無機微粒子を含むハードコーティング組成物から形成されることができる。具体的に、前記ハードコーティング層は、光重合性化合物の(共)重合体を含むバインダー樹脂および前記バインダー樹脂に分散された有機または無機微粒子;を含むことができる。
【0051】
前記ハードコーティング層を形成するハードコーティング組成物に含まれる光重合性化合物は、紫外線などの光が照射されれば重合反応を起こすことができる光重合型/光硬化型化合物であって、当業界で通常的なものでありうる。
【0052】
具体的に、前記ハードコーティング層に含まれる光重合性化合物の(共)重合体は、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群;およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシ化グリセロトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびエチレングリコールジアクリレートからなる多官能性アクリレート単量体群より選択される1種以上から形成される(共)重合体でありうる。
【0053】
また、前記光重合性化合物の(共)重合体は、重量平均分子量10,000以上の高分子量(共)重合体をさらに含むことができる。この時、前記高分子量(共)重合体は、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、エポキシド系ポリマー、ナイロン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、およびポリオレフィン系ポリマーからなる群より選択される1種以上でありうる。
【0054】
前記ハードコーティング層は、前記光重合性化合物の(共)重合体と共に有機または無機微粒子を含んで表面凹凸と内部ヘイズを付与する。前記有機または無機微粒子は粒径が0.5~10μm、または0.5~5μm、好ましくは1~5μmの球形粒子でありうる。
【0055】
前記有機または無機微粒子の粒径は、表面凹凸と内部ヘイズを発現するために0.5μm以上になることができ、ヘイズまたはコーティング厚さの側面で10μm以下になることができる。例えば、微粒子粒径が10μmを超えて過度に大きくなる場合、微細表面凹凸を合わせるためにコーティングの厚さを上げなければならないし、そうすれば、フィルムの耐クラック性が低下し、フィルムが曲がる問題が発生することができる。
【0056】
前記有機または無機微粒子の具体的な例を限定するものではないが、例えば、前記有機または無機微粒子は(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシド樹脂およびナイロン樹脂からなる有機微粒子であるか、あるいは酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる無機微粒子でありうる。
【0057】
前記ハードコーティング層は、前記光重合性化合物の(共)重合体100重量部対比前記有機または無機微粒子0.1~20重量部、または1~15重量部、好ましくは1~10重量部を含むことができる。
【0058】
前記有機または無機微粒子が光重合性化合物の(共)重合体100重量部に対して、0.1重量部未満で含まれる場合、内部散乱によるヘイズ値が十分に具現されないことがある。また、前記有機または無機微粒子が光重合性化合物の(共)重合体100重量部に対して20重量部を超える場合、コーティング層のヘイズが高くて明暗比が低下でき、コーティング組成物の粘度が高くなってコーティング性が不良になる問題が発生することができる。
【0059】
また、前記有機または無機微粒子の屈折率は、マトリックスを形成する光硬化型樹脂の屈折率と差を有する。粒子の含有量により適正屈折率の差が決定され、屈折率差が0.01~0.5を有するのが好ましい。前記微粒子と光硬化性樹脂の屈折率差が0.01未満であれば、適正なヘイズ値を得にくいこともある。また、前記微粒子と光硬化性樹脂の屈折率差が0.5を超えれば、内部ヘイズによる映像の歪曲が深化されて明暗比が悪くなったり、極少量の粒子含有量を使用する場合もあり、所望水準の表面の凹凸形状を得られない。
【0060】
具体的に、前記有機または無機微粒子は(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、およびその共重合体樹脂からなる有機微粒子群;および酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム、および酸化亜鉛からなる無機微粒子群より選択される1種以上でありうる。
【0061】
より具体的に、前記有機微粒子はメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、スチレンスルホン酸、p-t-ブトキシスチレン、m-t-ブトキシスチレン、ビニルアセテート、ビニルプロピオン酸塩、ビニルブチレート、ビニルエーテル、アリルブチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、不飽和カルボキシ酸、アルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルおよび(メタ)アクリレートからなる群より選択される一つ以上でありうる。
【0062】
また、前記有機物微粒子は、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリレート-co-スチレン、ポリメチルアクリレート-co-スチレン、ポリメチルメタクリレート-co-スチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、エポキシレジン、フェノールレジン、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン、ポリジビニルベンゼン、ポリジビニルベンゼン-co-スチレン、ポリジビニルベンゼン-co-アクリレート、ポリフタル酸ジアリルおよびトリアリルイソシアヌレートポリマーの中から選択された一つの単一物またはこれらの2つ以上のコポリマー(copolymer)を使用することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0063】
一方、前記ハードコーティング層は、1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子をさらに含むことができる。前記無機ナノ粒子の表面には所定の作用基や化合物が結合される。前記無機ナノ粒子は、有機または無機微粒子の表面に存在するかあるいは単独で存在することがあり、ハードコーティング層の表面凹凸の形状をスムースに調整でき、コーティング層の機械的な特性も向上させることができる。前記無機ナノ粒子の具体的な種類としては、酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、チタニアなどを使用することができる。
【0064】
この時、前記ハードコーティング層は、50nm超過120nm以下の直径を有する無機ナノ粒子をさらに含むことができる。そのために、前記ハードコーティング層は無機ナノ粒子として、1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子だけを含んだり、あるいは1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子および50nm超過120nm以下の直径を有する無機ナノ粒子をいずれも含むことができる。例えば、前記無機ナノ粒子は、前記ハードコーティング層に前記光重合性化合物の(共)重合体100重量部当たり10重量部以下で含まれることができる。
【0065】
また、前記ハードコーティング層は、前記有機または無機微粒子および無機ナノ粒子の総重量を基準にして、前記1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子3~10重量%、または4~10重量%、または5~10重量%を含むことができる。
【0066】
前記ハードコーティング層内に前記1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子を前記範囲で調整する場合、内部散乱による十分なヘイズ値が具現され、かつ粒子の凝集程度が調整されて所望の高さおよび形状を有する凹凸を実現でき、これによって、反射防止フィルムの粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)を調整することができる。
【0067】
例えば、前記1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子の含有量が3重量%より低い場合、凝集体の大きさが制御されなくて、ディスプレイ適用時に不良画素が生じたり黒色明暗比が低下できる。また、前記1nm~50nmの直径を有する無機ナノ粒子の含有量が10重量%より高い場合、内部散乱効果が不均一に発現でき、粒子の凝集の大きさにばらつきがあり、ディスプレイ適用時に不良画素が生成されることができる。
【0068】
前記ハードコーティング層を形成するハードコーティング組成物は光開始剤を含むことができ、前記光開始剤としては、通常知られている光開始剤を特に制限なしに使用することができる。前記光開始剤の例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインブチルエーテルの中から選択された一つの単一物または2つ以上の混合物を使用することができるが、本発明は上述した例に限定されない。
【0069】
この時、前記光開始剤は、前記光重合性化合物100重量部に対して0.1~10重量部で添加され得る。前記光開始剤が前記光重合性化合物100重量部に対して0.1重量部未満で含まれる場合、紫外線照射による十分な光硬化が起きないこともあり、前記光重合性化合物100重量部に対して10重量部を超えて含まれる場合、最終形成される防眩フィルムの膜強度が低下することができ、前記ハードコーティング層上の低屈折層との密着が低下することができる。
【0070】
一方、前記ハードコーティング層を形成するハードコーティング組成物は、有機溶媒をさらに含むことができる。このような有機溶媒が添加される場合、その構成に限定はないが、コーティング組成物の適切な粘度確保および最終形成されるフィルムの膜強度などを考慮して、前記光硬化性樹脂100重量部に対して、好ましくは50~700重量部、より好ましくは100~500重量部、最も好ましくは150~450重量部を使用することができる。
【0071】
この時、使用可能な有機溶媒の種類はその構成に限定はないが、炭素数1~6の低級アルコール類、アセテート類、ケトン類、セロソルブ類、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される1種または1種以上の混合物を使用することができる。
【0072】
この時、前記低級アルコール類は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、またはジアセトンアルコールなどを例に挙げられるが、本発明は、上述した例に限定されない。そして、前記アセテート類は、メチルアセテート、酢酸エチル、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、またはセロソルブアセテートを使用することができ、前記ケトン類は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、またはアセトンを使用することができるが、上述した例に限定されない。
【0073】
一方、前記ハードコーティング層を形成するハードコーティング組成物は、レベリング剤、ウェッティング剤、消泡剤からなる添加剤群より選択される1種以上の添加剤をさらに含むことができる。この時、前記添加剤は、各々前記光重合性化合物100重量部に対して0.01~10重量部の範囲内で添加され得る。
【0074】
前記レベリング剤は、ハードコーティング組成物を使用して、コーティングしたコーティング膜の表面を均一にする役割を果たす。また、前記ウェッティング剤は、ハードコーティング組成物の表面エネルギーを低くする役割を果たすことによって、ハードコーティング組成物を透明基材層にコーティングする際に、均一な塗布が行われるように助ける。
【0075】
この時、前記消泡剤は、ハードコーティング組成物中の気泡を除去するために添加され得る。
【0076】
付加的に、前記レベリング剤、ウェッティング剤、消泡剤がハードコーティング組成物の微粒子あるいはナノ粒子の分散性と凹凸形成に影響を与えることができる。
【0077】
一方、前記低屈折層は、光重合性化合物;無機微細粒子;および反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane);光反応性作用基を含むフッ素系化合物;および光重合開始剤;を含む、低屈折層の製造のための光硬化性コーティング組成物から形成されることができる。具体的に、前記低屈折層は、光重合性化合物;光反応性作用基を含むフッ素系化合物;および反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane);間の架橋重合体を含むバインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散された無機微細粒子を含むことができる。
【0078】
この時、前記低屈折層は、前記光重合性化合物100重量部に対して、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)0.5~25重量部含むことができる。
【0079】
前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンを特定含有量で含む光硬化性コーティング組成物を用いると、低い反射率および高い透光率を実現でき、耐アルカリ性を向上させると同時に優れた耐摩耗性または耐スクラッチ性を確保できる低屈折層およびディスプレイ装置の画面の鮮明度を高めることができ、かつ優秀な機械的物性を示す反射防止フィルムを提供することができる。
【0080】
以前には、反射防止フィルムに含まれる低屈折層の耐スクラッチ性を向上させるために、ナノメートルサイズの多様な粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどの粒子)を添加する方法が試みられたが、このような方法によれば、耐スクラッチ性をある程度確保することはできるが、前記ナノメートルサイズの粒子が低い表面処理率を示すだけでなく、小さいサイズによって前処理液に露出する比表面積が増加して、耐アルカリ性が大きく低下する限界があった。
【0081】
これに反し、前記一実施形態の光硬化性コーティング組成物は、前記光重合性化合物100重量部対比前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン0.5~25重量部、または1.5~19重量部を含み、低い反射率および高い透光率を有し、かつ高い耐アルカリ性および耐スクラッチ性を同時に実現できる低屈折層を提供でき、さらに、最終製造される反射防止フィルムやこのような反射防止フィルムが適用されるディスプレイ装置の性能や品質を高めることができる。
【0082】
具体的に、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、表面に反応性作用基が存在して前記光硬化性コーティング組成物の光硬化時に形成される塗膜やバインダー樹脂の機械的物性、例えば、耐スクラッチ性を高めることができる。また、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、シロキサン結合(-Si-O-)が分子内部に位置して従来から知られているシリカ、アルミナ、ゼオライトなどの微細粒子を使用する場合と異なり、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化時に形成される塗膜やバインダー樹脂の耐アルカリ性を向上させることができる。
【0083】
前述のように、前記光硬化性コーティング組成物は、前記光重合性化合物100重量部対比前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン0.5~25重量部、または1.5~19重量部を含むことができる。そのため、前記バインダー樹脂中の光重合性化合物に由来する部分対比前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)に由来する部分の重量比率が0.005~0.25、または0.015~0.19でありうる。
【0084】
前記光硬化性コーティング組成物中の前記光重合性化合物対比前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンの含有量が小さすぎれば、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化時に形成される塗膜やバインダー樹脂の耐アルカリ性や耐スクラッチ性を十分に確保しにくいこともある。また、前記光硬化性コーティング組成物中の前記光重合性化合物対比前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンの含有量が大きすぎれば、前記光硬化性コーティング組成物から製造される低屈折層や反射防止フィルムの透明度が低下することがあり、スクラッチ性がむしろ低下することがある。
【0085】
前記ポリシルセスキオキサンに置換される反応性作用基は、アルコール、アミン、カルボン酸、エポキシド、イミド、(メタ)アクリレート、ニトリル、ノルボルネン、オレフィン[アリル(ally)、シクロアルケニル(cycloalkenyl)またはビニルジメチルシリルなど]、ポリエチレングリコール、チオールおよびビニル基からなる群より選択された1種以上の作用基を含むことができ、好ましくは、エポキシドまたは(メタ)アクリレートでありうる。
【0086】
前記反応性作用基のより具体的な例としては、(メタ)アクリレート、炭素数1~20のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数3~20のシクロアルキル(cycloalkyl)エポキシド、炭素数1~10のアルキルシクロアルカン(cycloalkane)エポキシドが挙げられる。前記アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレートと結合しない‘アルキル’の他の一部分が結合位置であり、前記シクロアルキルエポキシドは、エポキシドと結合しない‘シクロアルキル’の他の部分が結合位置であり、アルキルシクロアルカン(cycloalkane)エポキシドは、シクロアルカン(cycloalkane)エポキシドと結合しない‘アルキル’の他の部分が結合位置であることを意味する。
【0087】
一方、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、上述した反応性作用基以外に炭素数1~30の直鎖または分枝鎖のアルキル基、炭素数6~30の シクロアルキル基および炭素数6~30のアリール基からなる群より選択された1種以上の非反応性作用基を1つ以上さらに含むことができる。このように前記ポリシルセスキオキサンに反応性作用基と非反応性作用基が表面に置換されることによって、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンでシロキサン結合(-Si-O-)が分子内部に位置しながら外部に露出しないようになり、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化時に形成される塗膜やバインダー樹脂の耐アルカリ性をより高めることができる。特に、前記ポリシルセスキオキサンに反応性作用基と共に導入される非反応性作用基が炭素数6以上、または炭素数6~30の直鎖または分枝鎖のアルキル基または炭素数6~30のシクロアルキル基の場合、塗膜やバインダー樹脂の耐アルカリ性を向上させる効果がより高くなる。
【0088】
一方、前記ポリシルセスキオキサンは(RSiO1.5)nで表記され(ここで、nは4~30または8~20)、ランダム、はしご型、ケージ(cage)および部分ケージなどの多様な構造を有することができる。
【0089】
ただし、前記一実施形態の前記光硬化性コーティング組成物から製造される低屈折層および反射防止フィルムの物性および品質を高めるために、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンで反応性作用基が1つ以上置換され、ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane)を使用することができる。
【0090】
また、より好ましくは、前記作用基が1つ以上置換され、ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサンは、分子中にシリコン8~20個を含むことができる。
【0091】
前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンのシリコンのうちの少なくとも1つ以上または全体に上述した反応性作用基が置換されることができ、また、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンのシリコンのうちの少なくとも1つ以上には反応性作用基が置換されることができ、反応性作用基が置換されないシリコンには上述した非反応性作用基が置換されることもできる。
【0092】
前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンのシリコンのうちの少なくとも一つに反応性作用基が置換されることによって、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化時に形成される塗膜やバインダー樹脂の機械的物性を向上させることができ、同時に残りシリコンに非反応性作用基が置換されることによって分子構造的に立体障害(Steric hindrance)が現れて、シロキサン結合(-Si-O-)が外部に露出する頻度や確率を大きく低くして、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化時に形成される塗膜やバインダー樹脂の耐アルカリ性を向上させることができる。
【0093】
より具体的に、前記ポリシルセスキオキサンに反応性作用基および非反応性作用基が共に置換される場合、前記ポリシルセスキオキサンに置換された非作用性反応基対比反応性作用基のモル比(molar ratio)が0.20以上、または0.3以上であることができ、または0.20~6、または0.3~4、または0.4~3であることができる。前記ポリシルセスキオキサンに置換される反応性作用基および非反応性作用基の間の比率が前記範囲の場合、前記ポリシルセスキオキサン分子で立体障害が極大化され、そのため、シロキサン結合(-Si-O-)が外部に露出する頻度や確率をより大きく低くすることができ、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化時に形成される塗膜やバインダー樹脂の機械的物性や耐アルカリ性がより向上することができる。
【0094】
そして、前記ポリシルセスキオキサンに反応性作用基および非反応性作用基が共に置換される場合、前記ポリシルセスキオキサンに置換された非作用性反応基対比反応性作用基のモル比(molar ratio)を満足した状態で、前記反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンのシリコンの100mol%が反応性作用基および非作用性反応基で置換されることができる。
【0095】
一方、前記反応性作用基が1つ以上置換され、ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane、POSS)の例としては、TMP DiolIsobutyl POSS、Cyclohexanediol Isobutyl POSS、1,2-PropanediolIsobutyl POSS、Octa(3-hydroxy-3 methylbutyldimethylsiloxy)POSSなどアルコールが1つ以上置換されたPOSS;AminopropylIsobutyl POSS、AminopropylIsooctyl POSS、AminoethylaminopropylIsobutyl POSS、N-Phenylaminopropyl POSS、N-Methylaminopropyl Isobutyl POSS、OctaAmmonium POSS、AminophenylCyclohexyl POSS、AminophenylIsobutyl POSSなどアミンが1つ以上置換されたPOSS;Maleamic Acid-Cyclohexyl POSS、Maleamic Acid-Isobutyl POSS、Octa Maleamic Acid POSSなどカルボン酸が1つ以上置換されたPOSS;EpoxyCyclohexylIsobutyl POSS、Epoxycyclohexyl POSS、Glycidyl POSS、GlycidylEthyl POSS、GlycidylIsobutyl POSS、GlycidylIsooctyl POSSなどエポキシドが1つ以上置換されたPOSS;POSS Maleimide Cyclohexyl、POSS Maleimide Isobutylなどイミドが1つ以上置換されたPOSS;AcryloIsobutyl POSS、(Meth)acrylIsobutyl POSS、(Meth)acrylateCyclohexyl POSS、(Meth)acrylate Isobutyl POSS、(Meth)acrylate Ethyl POSS、(Meth)acrylEthyl POSS、(Meth)acrylate Isooctyl POSS、(Meth)acrylIsooctyl POSS、(Meth)acrylPhenyl POSS、(Meth)acryl POSS、Acrylo POSSなど(メタ)アクリレートが1つ以上置換されたPOSS;CyanopropylIsobutyl POSSなどのニトリル基が1つ以上置換されたPOSS;NorbornenylethylEthyl POSS、NorbornenylethylIsobutyl POSS、Norbornenylethyl DiSilanoIsobutyl POSS、Trisnorbornenyl Isobutyl POSSなどノルボルネン基が1つ以上置換されたPOSS;AllylIsobutyl POSS、MonoVinylIsobutyl POSS、OctaCyclohexenyldimethylsilyl POSS、OctaVinyldimethylsilyl POSS、OctaVinyl POSSなどビニル基が1つ以上置換されたPOSS;AllylIsobutyl POSS、MonoVinylIsobutyl POSS、OctaCyclohexenyldimethylsilyl POSS、OctaVinyldimethylsilyl POSS、OctaVinyl POSSなどのオレフィンが1つ以上置換されたPOSS;炭素数5~30のPEGが置換されたPOSS;またはMercaptopropylIsobutyl POSSまたはMercaptopropylIsooctyl POSSなどのチオール基が1つ以上置換されたPOSS;などが挙げられる。
【0096】
一方、前記一実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物は、光反応性作用基を含むフッ素系化合物を含むことができる。前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物が含まれることによって、前記光硬化性を有するコーティング組成物から製造される低屈折層および反射防止フィルムは、より低い反射率および向上した透光率を有することができ、かつ耐アルカリ性および耐スクラッチ性をより高めることができる。
【0097】
前記フッ素系化合物には1つ以上の光反応性作用基を含みまたは置換することができ、前記光反応性作用基は光の照射によって、例えば可視光線または紫外線の照射によって重合反応に参加できる作用基を意味する。前記光反応性作用基は、光の照射によって重合反応に参加できる公知の多様な作用基を含むことができ、その具体的な例としては、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、ビニル(Vinyl)基またはチオール(Thiol)基が挙げられる。
【0098】
前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は、1~25重量%のフッ素含有量を有することができる。前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物でフッ素の含有量が小さすぎれば、前記一実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物から得られる最終結果物の表面にフッ素成分が十分に配列されなくて耐アルカリ性などの物性を十分に確保し難いこともある。また、前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物でフッ素の含有量が大きすぎれば、前記一実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物から得られる最終結果物の表面特性が低下したり、最終結果物を得るための後段工程中に不良品発生率が高くなることができる。一方、反射防止フィルムが適用された最終製品(例えば、TVやモニターなど)を生産するための後段工程中に発生できる剥離帯電圧による問題点を最小化するために、前記低屈折層は、1重量%~25重量%のフッ素含有量を有する光反応性作用基を含むフッ素系化合物を含むことができる。
【0099】
前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は、ケイ素またはケイ素化合物をさらに含むことができる。つまり、前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は、選択的に内部にケイ素またはケイ素化合物を含むことができ、具体的に、前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物中のケイ素の含有量は0.1重量%~20重量%でありうる。
【0100】
前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物に含まれるケイ素は、前記実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物から得られた低屈折層にヘイズ(haze)が発生するのを防止して透明度を高める役割をする。一方、前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物中のケイ素の含有量が大きすぎれば、前記実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物から得られた低屈折層が有する耐アルカリ性が低下できる。
【0101】
前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は2,000~200,000の重量平均分子量(GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)を有することができる。前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物の重量平均分子量が小さすぎれば、前記実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物から得られた低屈折層が十分な耐アルカリ特性を有さないこともある。また、前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物の重量平均分子量が大きすぎれば、前記実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物から得られた低屈折層が十分な耐久性や耐スクラッチ性を有さないこともある。
【0102】
具体的に、前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物は、i)一つ以上の光反応性作用基が置換され、少なくとも一つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物;ii)1以上の光反応性作用基で置換され、少なくとも一つの水素がフッ素で置換され、一つ以上の炭素がケイ素で置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物;iii)一つ以上の光反応性作用基が置換され、少なくとも一つのシリコンに1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子(例えば、ポリジメチルシロキサン系高分子);iv)1以上の光反応性作用基で置換され、少なくとも一つの水素がフッ素で置換されたポリエーテル化合物、または前記i)乃至iv)の中から2以上の混合物またはこれらの共重合体が挙げられる。
【0103】
前記光硬化性を有するコーティング組成物は、前記光重合性化合物100重量部に対して、前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物1~75重量部を含むことができる。前記光重合性化合物対比前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物が過剰で添加される場合、前記実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物のコーティング性が低下したり、前記実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物から得られた低屈折層が十分な耐久性や耐スクラッチ性を有さないこともある。また、前記光重合性化合物対比前記光反応性作用基を含むフッ素系化合物の量が少なすぎれば、前記実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物から得られた低屈折層が十分な耐アルカリ特性を有さないこともある。
【0104】
一方、前記光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。具体的に、前記光重合性化合物は(メタ)アクリレートまたはビニル基を1つ以上、または2つ以上、または3つ以上含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。
【0105】
前記(メタ)アクリレートを含む単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサエチルメタクリレート、ブチルメタクリレートまたはこれらの2種以上の混合物や、またはウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマー、デンドリティックアクリレートオリゴマー、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。この時、前記オリゴマーの分子量は1,000~10,000であるのが好ましい。
【0106】
前記ビニル基を含む単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、ジビニルベンゼン、スチレンまたはパラメチルスチレンが挙げられる。
【0107】
前記光硬化性を有するコーティング組成物中の前記光重合性化合物の含有量が特に限定されるものではないが、最終製造される低屈折層や反射防止フィルムの機械的物性などを考慮して、前記光硬化性を有するコーティング組成物の固形分中、前記光重合性化合物の含有量は20重量%~80重量%でありうる。前記光硬化性を有するコーティング組成物の固形分は、前記光硬化性を有するコーティング組成物中の液状成分、例えば、後述するように選択的に含まれることができる有機溶媒などの成分を除いた固体成分だけを意味する。
【0108】
一方、前記光重合性化合物は、上述した単量体またはオリゴマー以外にフッ素系(メタ)アクリレート系化合物をさらに含むことができる。前記フッ素系(メタ)アクリレート系化合物をさらに含む場合、前記(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーに対する前記フッ素系(メタ)アクリレート系化合物の重量比は0.1%~10%でありうる。
【0109】
前記フッ素系(メタ)アクリレート系化合物の具体的な例としては、下記の化学式11乃至15からなる群より選択される1種以上の化合物が挙げられる。
【0110】
【0111】
前記化学式11において、R1は水素基または炭素数1~6のアルキル基であり、aは0~7の整数であり、bは1~3の整数である。
【0112】
【0113】
前記化学式12において、cは1~10の整数である。
【0114】
【0115】
前記化学式13において、dは1~11の整数である。
【0116】
【0117】
前記化学式14において、eは1~5の整数である。
【0118】
【0119】
前記化学式15において、fは4~10の整数である。
【0120】
前記光硬化性を有するコーティング組成物は無機微細粒子を含むことができ、低屈折層または反射防止フィルムの特性などを考慮して、通常知られている無機微細粒子を含むことができる。この時、無機微細粒子は、ナノメートルまたはマイクロメートル単位の直径を有する無機粒子を意味する。
【0121】
具体的に、前記無機微細粒子は、10~100nmの数平均粒径を有する中空シリカ粒子でありうる。前記中空シリカ粒子は、粒子の表面および/または内部に空の空間が存在するシリカ粒子を意味する。前記中空シリカ粒子は、中実粒子に比べて低い屈折率を有して優れた反射防止特性を示すことができる。
【0122】
前記中空シリカ粒子は、数平均粒径が10~100nm、好ましくは20~70nm、より好ましくは30~70nmであり、粒子形状は球状であるのが好ましいが、不定形でも構わない。
【0123】
また、前記中空型無機ナノ粒子としては、その表面がフッ素系化合物でコーティングされたものを単独で使用したり、フッ素系化合物で表面がコーティングされない中空型無機ナノ粒子と混合して使用することができる。前記中空型無機ナノ粒子の表面をフッ素系化合物でコーティングすれば、表面エネルギーをより低くすることができ、これによって、前記実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物内で前記中空型無機ナノ粒子がより均一に分布でき、前記光硬化性を有するコーティング組成物から得られるフィルムの耐久性や耐スクラッチ性をより高めることができる。
【0124】
前記中空型無機ナノ粒子の表面にフッ素系化合物をコーティングする方法として通常知られている粒子コーティング方法や重合方法などを特に制限なしに使用することができ、例えば、前記中空型無機ナノ粒子およびフッ素系化合物を水と触媒の存在下でゾル-ゲル反応させて、加水分解および縮合反応を通して前記中空型無機ナノ粒子の表面にフッ素系化合物を結合させることができる。
【0125】
そして、前記中空シリカ粒子は、所定の分散媒に分散させたコロイド状で組成物に含まれることができる。前記中空シリカ粒子を含むコロイド状は、分散媒に有機溶媒を含むことができる。
【0126】
この時、前記中空シリカは、前記有機溶媒により容易に分散されるために表面に置換された所定の作用基を含むことができる。前記中空シリカ粒子表面に置換可能な有機作用基の例は、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリレート基、ビニル基、ヒドロキシ基、アミン基、アリル(allyl)基、エポキシ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アミン基、またはフッ素などが前記中空シリカの表面に置換されることができる。
【0127】
前記中空シリカ粒子のコロイド状で中空シリカ粒子の固形分含有量は、前記一実施形態の光硬化性を有するコーティング組成物中の中空シリカの含有量範囲や前記光硬化性を有するコーティング組成物の粘度などを考慮して決定され、例えば、前記コロイド状のうち、前記中空シリカ粒子の固形分含有量は5重量%~60重量%でありうる。
【0128】
ここで、前記分散媒中の有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ガンマブチロラクトンなどのエステル類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル類;またはこれらの混合物を含むことができる。
【0129】
前記低屈折層の製造のための光硬化性コーティング組成物は、前記光重合性化合物100重量部に対して、前記中空シリカ粒子10~320重量部、または50~200重量部を含むことができる。前記中空粒子が過剰で添加される場合、バインダーの含有量低下によってコーティング膜の耐スクラッチ性や耐摩耗性が低下することができる。
【0130】
一方、前記光重合開始剤としては、光硬化性樹脂組成物に用いられるものとして知られている化合物であれば特に制限なしに使用でき、具体的に、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、オキシン系化合物、またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
【0131】
前記光重合性化合物100重量部に対して、前記光重合開始剤は0.1~100重量部の含有量で使用することができる。前記光重合開始剤の量が少なすぎれば、前記光硬化性を有するコーティング組成物の光硬化段階で未硬化されて残留する物質が発生することができる。前記光重合開始剤の量が多すぎれば、未反応の開始剤が不純物として残留したり架橋密度が低くなって製造されるフィルムの機械的物性が低下したり反射率が非常に高くなることができる。
【0132】
一方、前記光硬化性コーティング組成物は、有機溶媒をさらに含むことができる。
【0133】
前記有機溶媒の非制限的な例示として、ケトン類、アルコール類、アセテート類およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0134】
このような有機溶媒の具体的な例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、i-プロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0135】
前記有機溶媒は、前記光硬化性を有するコーティング組成物に含まれる各成分を混合する時期に添加されたり各成分が有機溶媒に分散または混合された状態で添加されながら、前記光硬化性を有するコーティング組成物に含まれることができる。前記光硬化性を有するコーティング組成物中の有機溶媒の含有量が少なすぎれば、前記光硬化性を有するコーティング組成物の流れ性が低下して、最終製造されるフィルムに縞模様が生じるなど不良が発生することができる。また、前記有機溶媒の過剰添加時に固形分含有量が低くなり、コーティングおよび成膜が十分に行われなくてフィルムの物性や表面特性が低下することができ、乾燥および硬化過程で不良が発生することができる。したがって、前記光硬化性を有するコーティング組成物は、含まれる成分の全体固形分の濃度が1~50重量%、または2~20重量%となるように有機溶媒を含むことができる。
【0136】
一方、前記反射防止フィルムは、前記ハードコーティング組成物を基材の一面に塗布し乾燥、光硬化を経た後、低屈折層形成用光硬化性コーティング組成物を前記形成されたハードコーティング層上に塗布し、塗布された結果物を光硬化することによって得ることができる。この時、前記ハードコーティング層は半硬化することができ、低屈折層を硬化の際、最終硬化される方法が最も望ましい。
【0137】
前記基材の具体的な種類や厚さは特に限定されるものではなく、低屈折層または反射防止フィルムの製造に使用されるものとして知られている基材を特に制限なしに使用することができる。例えば、前記基材として、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセチルプロピルセルロースフィルム、アセチルブチルセルロースフィルムのようなセルロースフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムのようなポリエステルフィルム;ポリビニルアセテートフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリスルホンフィルム;ポリアクリールフィルム;ポリアミドフィルム;ポリスチレンフィルム;または位相差フィルムなどが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0138】
前記光硬化性コーティング組成物を塗布するために、通常使用される方法および装置を何らの制限なく使用することができ、例えば、Meyer barなどのバーコーティング法、グラビアコーティング法、2 roll reverseコーティング法、vacuum slot dieコーティング法、2 rollコーティング法などを使用することができる。
【0139】
前記光硬化性を有するコーティング組成物を光硬化させる段階では、200~400nm波長の紫外線または可視光線を照射することができ、照射時の露光量は100~4,000mJ/cm2が望ましい。露光時間も特に限定されるものではなく、用いられる露光装置、照射光線の波長または露光量により適切に変化させることができる。
【0140】
また、前記光硬化性を有するコーティング組成物を光硬化させる段階では、開始剤が酸素によって分解されるのを防止するために窒素パージングなどを行うことができる。
【0141】
一方、最終乾燥された前記ハードコーティング層は、5μm超過10μm未満の厚さを有することができる。前記ハードコーティング層の厚さが5μm以下であれば、有機粒子あるいは無機粒子が凝集して反射防止フィルムの表面上に高さが高く、かつ不規則に分布するピークが存在することがあり、前記ハードコーティング層の厚さが10μm以上であれば、コーティング層が厚くて、コーティングフィルムの取扱い時にクラックが発生しやすいという短所がある。この時、低屈折層は1nm~300nm、または50nm~200nmの厚さを有することができる。上述した範囲でハードコーティング層および低屈折層の厚さを調整することによって、特定範囲の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)が実現可能で、反射防止フィルムの防眩機能を維持しながらもイメージの鮮明度を高めることができる。
【0142】
一方、本発明の他の実施形態によれば、上述した反射防止フィルムを含むディスプレイ装置が提供され得る。
【0143】
前記ディスプレイ装置は、互いに対向する一対の偏光板;前記一対の偏光板の間に順次積層された薄膜トランジスター、カラーフィルターおよび液晶セル;およびバックライトユニットを含む液晶ディスプレイ装置でありうる。
【0144】
図1aおよび
図1bに、それぞれ本発明の一実施例による反射防止フィルムが具備された一般のTFTディスプレイ装置およびCOTパネルディスプレイ装置の概略的な構造を示した。また、
図1aおよび
図1bに示す構造の代わりに、偏光板およびバックライトユニットの間に前記反射防止フィルムが具備された構造も可能である。
【発明の効果】
【0145】
本発明によれば、高解像度ディスプレイに適用の際、スパークリング現象が少なく視認性に優れ、ディスプレイ製作時に作業性に優れた反射防止フィルムと優れた外部ブラック視感および明暗比などの光特性および高い画面の鮮明度を提供するディスプレイ装置が提供され得る。
【0146】
前記反射防止フィルムは、高解像度ディスプレイに適用されてパネル不良隠蔽力が高く、反射防止性能と視認性に優れた特性を提供することができる。特に、パネル内部の反射率の高いCOTパネルに適用して反射防止性能を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【
図1a】実施例1の反射防止フィルムが設けられた一般のTFTディスプレイ装置の断面を概略的に示した図である。
【
図1b】実施例1の反射防止フィルムが設けられたCOTパネルディスプレイ装置の断面を概略的に示した図である。
【
図2】実施例3で製造されたハードコーティング層表面の光学顕微鏡写真(反射モード、倍率:10倍)である。
【
図3】実施例4で製造されたハードコーティング層表面の光学顕微鏡写真(反射モード、倍率:10倍)である。
【
図4】実施例1で製造された反射防止フィルム表面の光学顕微鏡写真(反射モード、倍率:20倍)である。
【
図5】比較例4で製造された反射防止フィルム表面の光学顕微鏡写真(反射モード、倍率:10倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0148】
本発明の具体的な実施形態を下記実施例でより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明の具体的な実施形態を例示するためのものであって、本発明の具体的な実施形態の内容が下記実施例によって限定されるものではない。
【0149】
<製造例:ハードコーティング組成物および低屈折層形成用光硬化性コーティング組成物の製造>
(1)ハードコーティング組成物の製造
下記表1の成分を均一に混合してハードコーティング組成物を製造した。表1で使用されているすべての成分の含有量はg単位で示した。また、下記表1で粒子の総和は、有機微粒子および無機ナノ粒子の和を意味する。
【0150】
【0151】
1)PETA:Pentaerythritol triacrylate(分子量298g/mol)
2)TMPTA:Trimethylolpropane triacrylate(分子量296g/mol)
3)8BR-500:ウレタン系アクリルオリゴマー、分子量250,000g/mol、Taisei Fine Chemical社製品。
4)UA-306T:ウレタン系アクリルオリゴマー、分子量1,000g/mol、kyoeisha社製品。
5)I184(Irgacure184):光開始剤、Ciba社製品。
6)BYK-300:レベリング剤、Tego社製品。
7)IPA(Isopropyl alcohol)
8)EtOH(Ethyl alcohol)
9)微粒子1:体積平均粒径2μmであり、屈折率が1.555である球状有機微粒子のアクリル-スチレン共重合樹脂、Techpolymer、Sekisui Plastic社製品。
10)シリカ1:体積平均粒径100nmのシリカ粒子、X24-9600A、Shinetsu社製品。
11)シリカ2分散液:メタノールに30wt%の比率で分散した体積平均粒径12nmのナノシリカの分散液、MA-ST、Nissan Chemical社製品。
【0152】
(2)低屈折層形成用光硬化性コーティング組成物の製造
前記表2の成分を混合し、MIBK(methyl isobutyl ketone)およびジアセトンアルコール(DAA)の1:1混合溶液(重量比)に固形分が5wt%となるように希釈して、低屈折層形成用光硬化性コーティング組成物を製造した。表2で使用されているすべての成分の含有量はg単位で示した。
【0153】
【0154】
1)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、分子量524.51g/mol、Kyoeisha社製品。
2)THRULYA 4320:中空シリカ分散液、MIBK溶媒中の固形分20wt%、日揮触媒化成社製品。
3)RS907:光反応性作用基を含むフッ素系化合物、MIBK溶媒中の固形分30重量%で希釈、DIC社製品。
4)EP0408:ポリシルセスキオキサン、Hybrid Plastics社製品
【0155】
<実施例および比較例:反射防止フィルムの製造>
下記表3に示されているように、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムにMeyer Barで前記製造例でそれぞれ製造されたハードコーティング組成物を塗布し、90℃で1分間乾燥した後、150mJ/cm2の紫外線を照射してハードコーティング層を製造した。
【0156】
以後、前記製造例でそれぞれ製造された低屈折層製造用樹脂組成物をMeyer Bar#3でハードコーティング層上に塗布し、90℃で1分間乾燥した。そして、窒素パージング下で、前記乾燥物に180mJ/cm2の紫外線を照射して110nmの厚さを有する低屈折層を形成することによって、眩しさ/反射防止フィルムを製造した。
【0157】
【0158】
<実験例:ハードコーティング層および反射防止フィルムの物性測定>
前記製造されたハードコーティング層の物性およびこれを含む反射防止フィルムの物性を下記の方法により測定し、これを表4に示した。
【0159】
1.ハードコーティング層の表面分析
実施例3および4で製造されたハードコーティング層の表面を分析するために、ハードコーティング層が形成されたフィルムの裏面に黒色フィルムを接着させた後、ハードコーティング層の表面が光学顕微鏡(BX-51、Olympus社製)の対物レンズ側に向かうように載せた後、対物レンズの倍率を10倍に設定して前記ハードコーティング層の表面を測定した。測定した光学顕微鏡写真を
図2および
図3にそれぞれ示した。
【0160】
図2および
図3を参照すれば、実施例3および4を通して製造されたハードコーティング層の表面の凹凸形状は、ピークの高さが低く、かつバレーは浅く、広く広がっている構造を有することが分かる。また、ハードコーティング層の厚さが厚くて、粒子が凝集して形成された突起のような凹凸が存在しないだけでなく、ピークの大きさが小さく、高さも低くて比較的に均一な凹凸の大きさ分布を示すことを確認できる。
【0161】
2.反射防止フィルムの透光度、内部ヘイズおよび外部ヘイズの測定
反射防止フィルムの総ヘイズは、内部ヘイズと外部ヘイズとの和であり、次の方法で総ヘイズおよび内部ヘイズを測定した後、外部ヘイズは、総ヘイズから内部ヘイズを引くことで求められる。具体的に、ヘイズ測定器(HM-150、A光源、村上色彩技術研究所社製)を使用して、JIS K 7361規格によって透過度を3回測定し、JIS K 7105規格によってヘイズを3回測定した後、それぞれの平均値を計算して透光度と総ヘイズを求めた。また、製造されたコーティング層の表面を扁平にするために、ヘイズが0である接着剤を表面に貼り付けて外部凹凸が接着剤に埋められるようにした後、前記ヘイズ測定器でヘイズを3回測定した後、平均値を計算して内部ヘイズを求めた。以降、求められた総ヘイズ値から内部ヘイズ値を引いて外部ヘイズを求めた。
【0162】
3.反射防止フィルムの粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)の測定
表面凹凸の粗さ尖度およびスウェディッシュ高さは、白色光3次元光学干渉プロファイラー(3D optical profiler、モデル名:NewView7300、Zygo社製)装備を利用して測定する。この時、使用するレンズ倍率は10倍、0.5倍ズーム測定条件にして1.40×1.05mm2領域を測定した。
【0163】
製造された反射防止フィルムをサンプルステージに平らな状態にのせて、optical profilerイメージを得た後、分析を進行した。分析以降、前記一般式1による粗さ尖度およびスウェディッシュ高さを計算した。
【0164】
4.反射防止フィルムの平均反射率測定
SHIMADZU社のSolidSpec 3700を利用して平均反射率を測定した。
【0165】
具体的に、反射防止フィルムのハードコーティング層が形成されない面に光が透過しないようにブラックテープ(Vinyl tape472 Black、3M社製)を貼り付け、sampling interval 1 nm、time constant 0.1 sec、slit width 20nm、medium scanning speedで測定条件を固定した後、100Tモードを適用して常温で前記反射防止フィルムに380nm~780nm波長領域の光を照射して測定した。
【0166】
5.耐スクラッチ性測定
スチールウール(#0000)に荷重をかけて27rpmの速度で10回往復し、実施例および比較例から得られた反射防止フィルムの表面を擦った。肉眼で観察される1cm以下のスクラッチが一つ以下となる最大荷重を確認して、耐スクラッチ性を評価した。
【0167】
6.反射防止フィルムの不良凹凸評価
実施例および比較例で製造された反射防止フィルムの不良凹凸の有無を確認するために、反射防止フィルムのハードコーティング層が形成されない面に光が透過しないようにブラックテープ(Vinyl tape472 Black、3M社製)を貼り付けた後、光学顕微鏡(BX-51、Olympus社製)を使って反射イメージを撮影した。撮影したイメージの大きさは640×480pixelであり、倍率は10倍あるいは20倍の中から選択することができる。光量は、光学顕微鏡上部から出る最大光量の50%~100%の範囲内で調整された。
【0168】
使用されたイメージで反射防止フィルムの表面に存在する干渉斑(レインボウ)の有無を観察して、下記基準により評価した。このような干渉斑(レインボウ)が反射防止フィルムに存在する場合、後続工程で不良画素を誘発できる原因となるため、存在しないのが望ましい。評価結果のうち実施例1および比較例4の反射防止フィルムに対する光学顕微鏡写真をそれぞれ
図4および
図5に示した。
【0169】
<測定基準>
×:干渉斑(レインボウ)が存在しない。
△:干渉斑(レインボウ)が1~3個以下に存在する(倍率20倍基準)。
○:干渉斑(レインボウ)が3個超過して存在する(倍率20倍基準)。
【0170】
【0171】
前記表4からわかるように、同一のハードコーティング層組成物を使っても、ハードコーティング層の厚さが5μm以下である反射防止フィルム(比較例1)、ハードコーティング層組成物内に12nm直径を有するナノシリカ(無機ナノ粒子)の含有量が高すぎる反射防止フィルム(比較例2乃至4)の場合、本発明の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)の範囲を同時に満足しないことが分かる。
【0172】
反面、実施例の反射防止フィルムは、3.5超過6未満の粗さ尖度(Rku)および200nm未満のスウェディッシュ高さ(H)を同時に満足しながら、低い外部ヘイズを表すと同時に優れた耐スクラッチ性を確保できることが確認される。
【0173】
また、光反応性作用基を含むフッ素系化合物および反応性作用基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンを同時に含まない低屈折層組成を有する参考例1の場合、本発明の粗さ尖度(Rku)およびスウェディッシュ高さ(H)の範囲は満足するが、実施例に比べて耐スクラッチ性は低下することが分かる。
【0174】
さらに、
図4および5を参照すれば、前記のような物性を有する実施例の反射防止フィルムは、比較例の反射防止フィルムとは異なり、干渉斑(レインボウ)が存在しないので、不良画素が存在しない液晶ディスプレイ装置を実現することができる。