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特許7055463分岐型共重合体、それを用いた感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルムおよび光学装置
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  • 特許-分岐型共重合体、それを用いた感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルムおよび光学装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】分岐型共重合体、それを用いた感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルムおよび光学装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20220411BHJP
   G02F 1/00 20060101ALI20220411BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C08G73/10
G02F1/00
G03F7/004 512
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020500826
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 KR2019006822
(87)【国際公開番号】W WO2019245200
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-01-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0071580
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ベティ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ダ・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ドンミン・ジョン
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-231029(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0059097(KR,A)
【文献】国際公開第2018/080056(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/109514(WO,A1)
【文献】特開平03-210363(JP,A)
【文献】特開2000-221677(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114797(WO,A1)
【文献】特開2004-198678(JP,A)
【文献】特開2011-123277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00-73/26
G02F 1/00
G03F 7/004
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される分岐型アミド官能基;および
前記分岐型アミド官能基の末端に結合したポリイミドブロック;を含む、
分岐型共重合体:
【化1】
前記化学式1において、
Aは下記化学式2で表される官能基のうちの一つであり、
aは4である整数であり、
は直接結合または2価官能基のうちの一つである。
【化2】
前記化学式2において、Yは直接結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO-、-CR-、-(CH-、-O(CHO-、-COO(CHOCO-、-CONH-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群より選ばれたいずれか一つであり、前記においてR~Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1~10のアルキル基またはハロアルキル基であり、tは1~10の整数である。
【請求項2】
前記化学式1において、Lの2価官能基は、炭素数5~100のアルキレン基;または炭素数5~100のポリシロキサニレン基;である、請求項1に記載の分岐型共重合体。
【請求項3】
前記炭素数5~100のポリシロキサニレン基の数平均分子量が100g/mol~1000g/molである、請求項2に記載の分岐型共重合体。
【請求項4】
前記ポリイミドブロックは、ポリイミド主鎖または分枝鎖に結合された架橋官能基を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の分岐型共重合体。
【請求項5】
前記架橋官能基は、前記分岐型共重合体の全体重量を基準に5重量%~50重量%含まれる、請求項に記載の分岐型共重合体。
【請求項6】
前記ポリイミドブロックは、下記化学式3で表されるポリイミド繰り返し単位を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の分岐型共重合体:
【化3】
前記化学式3において、
は4価官能基であり、
はハロアルキル基および架橋官能基で置換された2価官能基である。
【請求項7】
前記ハロアルキル基および架橋官能基で置換された2価官能基は、下記化学式4で表されるものである、請求項に記載の分岐型共重合体:
【化4】
前記化学式4において、
11はハロアルキル基で置換されたアルキレン基であり、
およびXのうちの少なくとも一つは架橋官能基であり、残りは水素である。
【請求項8】
前記分岐型共重合体は、下記化学式5で表される共重合体または下記化学式6で表される共重合体を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の分岐型共重合体:
【化5】
前記化学式5および6において、
4下記化学式2で表される官能基のうちの一つであり、
a1は4である整数であり、
は2価官能基であり、
は4価官能基であり、
はハロアルキル基および架橋官能基で置換された2価官能基であり、
n1は1~10000の整数である。
【化6】
前記化学式2において、Yは直接結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO -、-CR -、-(CH -、-O(CH O-、-COO(CH OCO-、-CONH-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群より選ばれたいずれか一つであり、前記においてR ~R はそれぞれ独立して水素、炭素数1~10のアルキル基またはハロアルキル基であり、tは1~10の整数である。
【請求項9】
前記分岐型共重合体の重量平均分子量が1000g/mol~1000000g/molである、請求項1~のいずれか一項に記載の分岐型共重合体。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の分岐型共重合体を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、感光性樹脂フィルム。
【請求項12】
前記感光性樹脂フィルムの熱硬化温度が250℃以下である、請求項11に記載の感光性樹脂フィルム。
【請求項13】
請求項11に記載の感光性樹脂フィルムを含む、光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2018年6月21日付韓国特許出願第10-2018-0071580号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれている。
【0002】
本発明は、低温で硬化が可能であり、接着力および機械的特性に優れ、良好な絶縁特性およびパターン性を実現できる分岐型共重合体、それを用いた感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルムおよび光学装置に関する。
【背景技術】
【0003】
芳香族ポリイミド樹脂は大部分が非結晶性構造を有する高分子として、剛直な鎖構造によって優れた耐熱性、耐化学性、電気的特性、および寸法安定性を示す。このようなポリイミド樹脂は電気/電子材料に広く使われている。
【0004】
しかし、ポリイミド樹脂はイミド鎖内に存在するπ電子のCTC(charge transfer complex)形成により濃褐色を呈する限界があるため使用上多くの制限を従う。
【0005】
前記制限を解消し、無色透明なポリイミド樹脂を得るために、トリフルオロメチル(-CF)グループのような強い電子吸引基を導入してπ電子の移動を制限する方法;主鎖にスルホン(-SO-)グループ、エーテル(-O-)グループなどを導入して曲がった構造を設けて前記CTCの形成を減らす方法;または脂肪族環化合物を導入してπ電子の共鳴構造形成を阻害する方法などが提案された。
【0006】
しかし、前記提案によるポリイミド樹脂は曲がった構造または脂肪族環化合物によって十分な耐熱性を示すことが難しく、それを使用して製造されたフィルムは劣悪な機械的物性を示す限界が依然として存在する。
【0007】
最近ではポリイミドの機械的物性を向上させるためにポリイミド樹脂にアミド単位構造を導入したポリアミドイミド共重合体が開発されている。前記アミド単位構造は、前記共重合体に大きい結晶性を付与することによって、各種電子機器のディスプレイおよびウインドウカバーの素材としてガラスを代替できる水準の耐スクラッチ性の発現を可能にする。
【0008】
そこで、ポリイミド樹脂の機械的物性を向上させるだけでなく、各種光学装置に適用するための接着性、絶縁性、パターン性などが向上した新たな樹脂の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は低温で硬化が可能であり、接着力および機械的特性に優れ、良好な絶縁特性およびパターン性を実現できる分岐型共重合体に関する。
【0010】
また、本発明は、前記分岐型共重合体を用いた感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルムおよび光学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本明細書では、下記化学式1で表される分岐型アミド官能基;および前記分岐型アミド官能基の末端に結合したポリイミドブロック;を含む分岐型共重合体を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
前記化学式1において、Aは3価以上の官能基であり、aは3以上の整数であり、Lは直接結合または2価官能基のうちの一つである。
【0014】
本明細書ではまた、前記分岐型共重合体を含む感光性樹脂組成物が提供される。
【0015】
本明細書ではまた、前記感光性樹脂組成物の硬化物を含む感光性樹脂フィルムが提供される。
【0016】
本明細書ではまた、前記感光性樹脂フィルムを含む光学装置が提供される。
【0017】
以下、発明の具体的な実施形態による分岐型共重合体、それを用いた感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルムおよび光学装置についてより詳細に説明する。
【0018】
本明細書において特に制限しない限り、次の用語は下記のように定義され得る。
【0019】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0020】
本明細書において、置換基の例示は下で説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、「置換」という用語は、化合物内の水素原子の代わりに他の官能基が結合することを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置ならば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一または異なってもよい。
【0022】
本明細書において「置換または非置換された」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;1次アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルコキシシリルアルキル基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選ばれた1個以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示した置換基中の2以上の置換基が連結された置換または非置換されたことを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であり得る。すなわち、ビフェニル基はアリール基であり得、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されることもできる。
【0023】
本明細書において、
【化2】
は、他の置換基に連結される結合を意味し、直接結合はLで表される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0024】
本明細書において、アルキル基は、アルカン(alkane)に由来した1価の官能基であり、直鎖または分枝鎖であり得、前記直鎖アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1~20であることが好ましい。また、前記分枝鎖アルキル基の炭素数は3~20である。アルキル基の具体的な例としてはメチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,6-ジメチルヘプタン-4-イルなどがあるが、これらに限定されない。前記アルキル基は置換または非置換され得る。
【0025】
本明細書において、アルキレン基はアルカン(alkane)に由来した2価の官能基であり、これらは2価の官能基であることを除いては前述したアルキル基の説明が適用され得る。例えば、直鎖型、または分岐型として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などであり得る。前記アルキレン基は置換または非置換され得る。
【0026】
本明細書において、ハロアルキル基は、上述したアルキル基にハロゲン基が置換された官能基を意味し、ハロゲン基の例としてはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。前記ハロアルキル基は置換または非置換され得る。前記ハロアルキル基の具体例としてはトリフルオロメチル基(-CF)が挙げられる。
【0027】
本明細書において、多価官能基(multivalent functional group)は、任意の化合物に結合された複数の水素原子が除去された形態の残基であり、例えば2価官能基、3価官能基、4価官能基が挙げられる。一例として、アミド化合物に由来した4価の官能基はアミド化合物に結合された任意の水素原子4個が除去された形態の残基を意味する。
【0028】
本明細書において、直接結合または単結合は該当位置にいかなる原子または原子団も存在せず、結合線で連結されることを意味する。具体的には、化学式のうちのL、Lで表される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0029】
本明細書において、重量平均分子量または数平均分子量はGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量または数平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量または数平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用い得、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minのflow rateが挙げられる。
【0030】
I.分岐型共重合体
発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表される分岐型アミド官能基;および前記分岐型アミド官能基の末端に結合したポリイミドブロック;を含む分岐型共重合体が提供され得る。
【0031】
本発明者らは前記化学式1に示すように、3個以上のアミド官能基を含む分岐型(branched)官能基をコアとして含み、前記分岐型コア官能基の3個以上の末端でそれぞれポリイミドブロックが形成された枝形態の特異構造の共重合体を用いることによって、優れた硬化性能、接着性能および機械的物性を実現することができ、共重合体を用いて得られるフィルムの絶縁特性が向上し、ポジティブまたはネガティブパターンの形成も容易であることを実験により確認して発明を完成した。
【0032】
特に、テトラカルボン酸二無水物単量体モル数に対して過量のジアミン単量体を添加する反応により、3個以上のアミド官能基を含む分岐型(branched)官能基をコアとして導入することによって、前記分岐型アミド官能基に含まれた多数のアミド結合により結晶性を付与し、単にポリイミド単位構造を含むポリイミド重合体に対して優れた機械的物性を実現することができる。
【0033】
また、前記化学式1に示すように前記分岐型アミド官能基は、アミド官能基3個以上を枝形態で多数含むことによって、共重合体内で反応できる表面積が増加し、3次元網構造の架橋構造をより容易に形成できるため、優れた機械的物性を実現することができ、露光および化学的エッチングによって容易にパターンを形成できるため、各種光学デバイスに容易に適用することができる。
【0034】
しかも、前記分岐型アミド官能基はアミド結合とポリイミドブロックが直接結合するよりは高級脂肪族鎖あるいはポリシロキサン鎖を媒介として結合することによって、前記分岐型共重合体が適切な弾性を有するように誘導し得る。これにより、前記分岐型共重合体が高い引張伸び率や弾性モジュラス特性を示し、伸びる時発生する荷重を低くし、特定の熱処理工程以後にもフィルムの物性が大きく変化しない。また、フィルムの結晶化などによる構造変化を抑制することができ、前記共重合体から製造される成形品などが簡単に割れることを防止する優れた耐久性を実現することができる。
【0035】
さらに、前記分岐型アミド官能基末端に結合したポリイミドブロックには多数の架橋性官能基が含まれ、相対的に低温でも共重合体の架橋を誘導して硬化が進行され得、最終的には高い架橋密度を有する硬化物を得ることができる。これにより、前記分岐型共重合体の硬化物が含まれたフィルムは耐久性および絶縁特性が非常に優れて各種光学デバイスへの適用が容易である。
【0036】
具体的には、前記一実施形態の分岐型共重合体は、前記化学式1で表される分岐型アミド官能基を含み得る。前記分岐型アミド官能基は枝(Branced)形態を有し、官能基内に少なくとも1以上、好ましくは3以上のアミド結合を含み得る。
【0037】
前記分岐型アミド官能基に含まれた多数のアミド結合により結晶性を付与し、単にポリイミド単位構造を含むポリイミド重合体に対して優れた機械的物性を実現することができる。
【0038】
前記化学式1において、Aは3価以上、または3価~5価の官能基であり、aは3以上、または3~5の整数であり、Lは直接結合または2価官能基のうちの一つである。
【0039】
前記Aは分岐型アミド官能基の中心に位置する多価官能基であり、Aの末端に化学式1において括弧「()」で表される官能基がaだけ結合することができる。すなわち、前記化学式1において、aが3の場合、Aは3価官能基である。また、aが4の場合、Aは4価官能基である。また、aが5の場合、Aは5価官能基である。
【0040】
具体的な例を挙げて説明すると、前記化学式1において、Aが4価の官能基であり、aは4の整数である場合、下記化学式1-1のような官能基であり得る。
【0041】
【化3】
【0042】
前記化学式1-1において、Aは4価官能基であり、L~Lは互いに同一であるか相異し、それぞれ独立して直接結合または2価官能基のうちの一つである。
【0043】
前記分岐型アミド官能基はアミド官能基3個以上を枝形態で多数含むことによって、共重合体内で反応できる表面積が増加し、3次元網構造の架橋構造をより容易に形成できるため優れた機械的物性を実現することができ、露光および化学的エッチングによって容易にパターンを形成できるため各種光学デバイスへの適用が容易である。
【0044】
前記化学式1のLにおいて用いられた2価官能基は、前記分岐型アミド官能基の合成時に用いられるジアミン化合物に由来した官能基であり得る。具体的には、前記化学式1において、Lの2価官能基は、炭素数5~100のアルキレン基;または炭素数5~100のポリシロキサニレン基であり得る。前記化学式1において、Lの末端にポリイミドブロックが結合することを考慮する時、前記分岐型アミド官能基はアミド結合とポリイミドブロックが直接結合するよりは高級脂肪族鎖あるいはポリシロキサン鎖を媒介として結合することによって、前記分岐型共重合体が適切な弾性を有するように誘導し得る。
【0045】
具体的には、前記炭素数5~100のアルキレン基の例としては、9,10-ジオクチルノナデカン-1,19-ジイル(9,10-dioctylnonadecane-1,19-diyl)が挙げられる。
【0046】
また、前記炭素数5~100のポリシロキサニレン基の例としては下記化学式1-2で表されるポリジメチルシロキサニレン基が挙げられる。
【0047】
【化4】
【0048】
前記化学式1-2において、Zは1~10000の整数である。
【0049】
前記炭素数5~100のポリシロキサニレン基の数平均分子量が100g/mol~1000g/mol、または200g/mol~800g/mol、または400g/mol~500g/mol、または420g/mol~440g/molであり得る。
【0050】
一方、前記化学式1のA、または前記化学式1-1のA1は、前記分岐型アミド官能基の合成時に用いられるテトラカルボン酸二無水物化合物に由来した官能基であり得る。すなわち、前記化学式1において、Aは下記化学式2で表される官能基のうちの一つであり得る。また、前記化学式1-1において、A1は下記化学式2で表される官能基のうちの一つであり得る。
【0051】
【化5】
【0052】
前記化学式2において、Yは直接結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO2-、-CR-、-(CH-、-O(CHO-、-COO(CHOCO-、-CONH-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群より選ばれたいずれか一つであり、前記においてR~Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1~10のアルキル基またはハロアルキル基であり、tは1~10の整数である。
【0053】
より好ましくは前記化学式1のA、および前記化学式1-1のA1は4,4’-オキシジフタル酸無水物(4,4’-oxydiphthalic anhydride)に由来した下記化学式2-1の官能基であるか、ピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride)に由来した下記化学式2-2の官能基であり得る
【0054】
【化6】
【0055】
また、前記一実施形態の分岐型共重合体は、前記分岐型アミド官能基の末端に結合したポリイミドブロックを含み得る。前記ポリイミドブロックは、多数のポリイミド繰り返し単位からなるオリゴマーまたは高分子鎖を意味し、前記化学式1の分岐型アミド官能基の末端
【化7】
に結合し得る。より具体的には、ポリイミドブロックにおいてイミド官能基に含まれた窒素原子が前記化学式1の分岐型アミド官能基の末端
【化8】
に結合し得る。
【0056】
前記ポリイミドブロックは、大部分が非結晶性構造を有し、剛直な鎖状構造によって優れた耐熱性、耐化学性、電気的特性、および寸法安定性を示し得る。前記ポリイミドブロックは、ポリイミド主鎖または分枝鎖に結合された架橋官能基を含み得る。これにより、相対的に低温でも共重合体の架橋を誘導して硬化が行われ得、最終的には高い架橋密度を有する硬化物を得ることができる。これにより、前記分岐型共重合体の硬化物が含まれたフィルムは耐久性および絶縁特性が非常に優れて各種光学デバイスへの適用が容易である。
【0057】
前記架橋官能基の例は大きく限定されず、架橋物または硬化物形成の技術分野で広く使われる多様な架橋結合を形成するための架橋官能基が制限なしに用いられ得る。前記架橋官能基の例としては、ヒドロキシ基、チオール基、シラノール基、アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、アシルハライド基、ビニル基、およびエポキシ基からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。特に、好ましくは前記架橋官能基としてヒドロキシ基を用い得、この場合、ヒドロキシ基間の架橋が250℃以下、または220℃以下、180℃~250℃、または190℃~220℃の相対的に低温で行われ得る。
【0058】
すなわち、前記架橋官能基は、ヒドロキシ基、チオール基、シラノール基、アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、アシルハライド基、ビニル基、エポキシ基1種またはこれらの2種以上の混合を用い得る。
【0059】
前記架橋官能基は、前記分岐型共重合体の全体重量を基準に5重量%~50重量%、または10重量%~40重量%、または25重量%~30重量%含まれ得る。前記架橋官能基が前記分岐型共重合体の全体重量を基準に5重量%未満で過度に少なく含有される場合、低温でも共重合体の架橋が十分に誘導されることが難しく、十分な水準の架橋密度を確保することが難くなり、前記分岐型共重合体の硬化物が含まれたフィルムは耐久性および絶縁特性が減少し得る。
【0060】
一方、前記架橋官能基が前記分岐型共重合体の全体重量を基準に50重量%超で過度に過量含有される場合、前記分岐型共重合体の架橋密度が過度に増加することによって、モジュラスまたは結晶化度が過度に増加して目標とする弾性または弾性回復を確保することが難しい。
【0061】
具体的には、前記ポリイミドブロックは、下記化学式3で表されるポリイミド繰り返し単位を含み得る。
【0062】
【化9】
【0063】
前記化学式3において、Aは4価官能基であり、Lはハロアルキル基および架橋官能基で置換された2価官能基である。
【0064】
前記化学式3のA2は前記ポリイミドブロックの合成時に用いられるテトラカルボン酸二無水物化合物に由来した官能基であり得る。すなわち、前記化学式3において、A2は前記化学式2で表される官能基のうちの一つであり得る。
【0065】
一方、前記Lはポリイミドブロックの合成時に用いられるジアミン化合物に由来した官能基として、前記前記化学式3において、Lはハロアルキル基および架橋官能基で置換された2価官能基であり得る。
【0066】
前記Lにおいてハロアルキル基としてはトリフルオロメチル基を用い得、トリフルオロメチル(-CF)グループのような強い電子吸引基を導入してπ電子の移動を制限することによって、ポリイミドブロックのイミド鎖内に存在するπ電子のCTC(charge transfer complex)形成を抑制し、無色透明なポリイミドブロックを形成し得る。
【0067】
前記Lにおいて架橋官能基としては上述した架橋物または硬化物形成の技術分野で広く使われる多様な架橋結合を形成するための架橋官能基が制限なしに用いられ得る。前記架橋官能基の例としては、ヒドロキシ基、チオール基、シラノール基、アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、アシルハライド基、ビニル基、およびエポキシ基からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。特に、好ましくは前記架橋官能基としてヒドロキシ基を用い得、この場合、ヒドロキシ基間架橋が250℃以下、または220℃以下、180℃~250℃、または190℃~220℃の相対的に低温で行われ得る。
【0068】
具体的な例としては前記前記化学式3において、Lは下記化学式4で表される官能基であり得る。
【0069】
【化10】
【0070】
前記化学式4において、R11はハロアルキル基で置換されたアルキレン基であり、XおよびXのうちの少なくとも一つは架橋官能基であり、残りは水素である。好ましくは前記化学式4において、ジトリフルオロメチルメチレン基(-C(CF-)であり、XおよびXはそれぞれ独立してヒドロキシ基である。より好ましくは2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-bis(3-amino-4-hydroxyphenyl)hexafluoropropane)に由来した2価の官能基である下記化学式4-1であり得る。
【0071】
【化11】
【0072】
より具体的には、前記一実施形態の分岐型共重合体は、下記化学式5で表される共重合体または下記化学式6で表される共重合体を含み得る。
【0073】
【化12】
【0074】
前記化学式5および6において、Aは3価以上、または3価~5価の官能基であり、a1は3以上、または3~5の整数であり、Lは2価官能基であり、Aは4価官能基であり、Lはハロアルキル基および架橋官能基で置換された2価官能基であり、n1は1~10000、または10~10000、または50~10000、または100~10000の整数である。
【0075】
具体的には、前記化学式5および6のA4は前記化学式1のAと同一であり、前記化学式5および6のLは前記化学式1のLと同一であり、前記化学式5および6のAは前記化学式3のAと同一であり、前記化学式5および6のLは前記化学式3のLと同一である。
【0076】
前記化学式5で表される共重合体は、ポリイミドブロックの合成時に用いられる反応単量体であるジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物化合物のうち、ジアミン化合物のモル含有量をテトラカルボン酸無水物化合物のモル含有量より過量添加して得ることができる。
【0077】
前記化学式6で表される共重合体は、ポリイミドブロックの合成時に用いられる反応単量体であるジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物化合物のうち、テトラカルボン酸無水物化合物のモル含有量をジアミン化合物のモル含有量より過量に添加して得ることができる。
【0078】
前記分岐型共重合体の重量平均分子量が1000g/mol~1000000g/mol、または2000g/mol~500000g/mol、または3000g/mol~100000g/molであり得る。また、前記分岐型共重合体の数平均分子量が100g/mol~100000g/mol、または500g/mol~50000g/mol、または1000g/mol~16000g/molであり得る。
【0079】
これにより、前記分岐型共重合体の重合反応が安定的に行われ得、十分な機械的物性を確保し得る。前記分岐型共重合体の分子量が過度に減少すると、これより製造されるフィルムが十分な機械的物性や接着性を確保することが難しく、前記共重合体の分子量が過度に増加すると、前記分岐型共重合体のモジュラスまたは結晶化度が過度に増加して目標とする弾性または弾性回復を確保することが難しい。
【0080】
前記一実施形態の分岐型共重合体を製造する方法としては、第1ジアミン化合物およびポリカルボン酸無水物化合物を反応させる第1段階;前記第1段階の反応生成物、第2ジアミン化合物およびポリカルボン酸無水物を反応させる第2段階を含み、前記第1段階において、第1ジアミン化合物1モルに対して、ポリカルボン酸無水物化合物が0.5モル以下で反応させる方法が挙げられる。
【0081】
より具体的には、前記第1段階において、第1ジアミン化合物1モルに対してポリカルボン酸無水物化合物が0.5モル以下、または0.3モル以下、または0.01モル~0.5モル、または0.01モル~0.3モル、または0.02モル~0.3モルで反応させる場合、相対的に過量の第1ジアミンが化合物が添加されることによってポリカルボン酸無水物に存在する酸無水物基が第1ジアミンのアミノ基と反応してアミック酸化合物を生成した後、前記アミック酸化合物に存在するカルボキシ基がアミド化第1ジアミンのアミノ基と再び反応してポリアミド化合物を合成し得る。前記ポリアミド化合物は、前記一実施形態の分岐型アミド官能基が含有された前駆体化合物に該当する。
【0082】
前記第1段階において、第1ジアミン化合物1モルに対して、ポリカルボン酸無水物化合物を0.5モル超で添加すると、アミック酸化合物からポリアミド化合物への転換が十分に行われることが難しいため前記一実施形態のような分岐型アミド官能基が形成され難い。
【0083】
その後、前記第1段階で合成されたポリアミド化合物の末端アミノ基が第2ジアミン化合物およびポリカルボン酸無水物と反応してポリアミック酸を形成した後、閉環反応によりポリイミドブロックを形成する。
【0084】
前記第1段階および第2段階の反応は、いずれも100℃~200℃、または140℃~160℃で行われ得、反応時間は0.1時間~20時間内で調整可能である。
【0085】
前記第1ジアミン化合物は、炭素数5~100のアルキレン基の両末端にアミノ基が結合した化合物;または炭素数5~100のポリシロキサニレン基の両末端にアミノ基が結合した化合物を用い得、好ましい例としては、9,10-ジオクチルノナデカン-1,19-ジアミン(9,10-dioctylnonadecane-1,19-diamine)、またはポリジメチルシロキサニルジアミン(polydimethylsiloxanyl diamine)を用い得る。
【0086】
前記第2ジアミン化合物は、ハロアルキル基および架橋官能基で置換された2価官能基の両末端にアミノ基が結合した化合物を用い得、好ましい例としては、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-bis(3-amino-4-hydroxyphenyl)hexafluoropropane)を用い得る。
【0087】
前記第2ジアミン化合物100重量部に対して、前記第1ジアミン化合物は0.01重量部~20重量部、または0.1重量部~18重量部、または0.5重量部~17重量部で添加され得る。このように、前記第2ジアミン化合物に対して非常に少量の第1ジアミン化合物を添加することによって、前記第1段階反応で得られる反応生成物は、単一化合物(具体的には、多数のアミド基を含有したポリアミド化合物)であり、前記第2段階反応ではポリイミドオリゴマーまたは高分子ブロックが形成され得る。
【0088】
前記ポリカルボン酸無水物の例は大きく限定されないが、テトラカルボン酸二無水物が好ましく、具体的には4,4’-オキシジフタル酸無水物(4,4’-oxydiphthalic anhydride)、またはピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride)などを用い得る。
【0089】
前記第2段階では、第2ジアミン化合物1モルに対してポリカルボン酸無水物化合物が0.8モル~1.2モル、または0.9モル~1.1モル、または0.8モル~0.99モル、または0.9モル~0.99モル、または1.01モル~1.2モル、または1.01モル~1.1モルで反応させ得る。前記第2ジアミン化合物が1モルに対して、前記ポリカルボン酸無水物化合物が0.8モル~0.99モル、または0.9モル~0.99モルで反応する場合、前記化学式5のようなアミン末端ポリイミドブロックが形成され得る。また、前記第2ジアミン化合物が1モルに対して、前記ポリカルボン酸無水物化合物が1.01モル~1.2モル、または1.01モル~1.1モルで反応する場合、前記化学式6のような無水物末端ポリイミドブロックが形成され得る。
【0090】
そして、前記第1段階または第2段階の反応は、有機溶媒の存在下で行われ得る。前記有機溶媒の具体的な例としては、トルエン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いることもでき、混合して用いることもできる。
【0091】
II.感光性樹脂組成物
発明の他の実施形態によれば、前記一実施形態の分岐型共重合体を含む感光性樹脂組成物が提供され得る。前記分岐型共重合体に関する内容は前記一実施形態で上述したすべての内容を含み得る。
【0092】
そして、前記感光性樹脂組成物は、前記一実施形態の分岐型共重合体を有機溶媒に溶解または分散させたものであり得る。前記有機溶媒の具体的な例としてはトルエン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いることもでき、混合して用いることもできる。
【0093】
前記感光性樹脂組成物における固形分含有量は、前記感光性樹脂組成物全体重量を基準に10重量%~50重量%、または20重量%~40重量%、または25重量%~35重量%であり得る。
【0094】
また、前記感光性樹脂組成物は、前記一実施形態の分岐型共重合体と有機溶媒のほかに他の成分をさらに含み得る。非制限的な例として、前記感光性樹脂組成物が塗布された時、フィルム厚さの均一性や表面平滑性を向上させるか、あるいはフィルムと基板の密着性を向上させるか、あるいはフィルムの誘電率や導電性を変化させたり、あるいはフィルムの緻密性を増加させることのできる添加剤がさらに含まれ得る。このような添加剤としては各種溶媒、色材、無機フィラー、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体または架橋性化合物などを例示することができる。これらの添加量は大きく制限されず、前記感光性樹脂組成物全体重量を基準に0.1重量%~50重量%範囲内で自由に調整することができる。
【0095】
III.感光性樹脂フィルム
発明のまた他の実施形態によれば、前記他の実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物を含む感光性樹脂フィルムが提供され得る。具体的には、前記硬化物とは、前記他の実施形態の感光性樹脂組成物の硬化工程を経て得られる物質を意味し、前記感光性樹脂組成物の硬化工程では、前記一実施形態の分岐型共重合体の架橋反応が行われる。すなわち、前記他の実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物には前記一実施形態の分岐型共重合体の架橋物が含まれ得る。
【0096】
前記感光性樹脂フィルムの熱硬化温度が250℃以下、または180℃~250℃、または190℃~220℃であり得る。具体的には、前記一実施形態の分岐型共重合体のポリイミドブロックに含有された架橋官能基は250℃以下、または180℃~250℃、または190℃~220℃の温度で架橋を行い得、フィルム内部の分岐型共重合体の熱変形またはフィルム成形過程におけるフィルムの熱変形が最小化されることによって、最終的に得られる感光性樹脂フィルムにおいて優れた物性と共に均一な形態、数値を安定的に確保することができる。
【0097】
具体的には、前記感光性樹脂フィルムはASTM D882測定法による最大引張強度(ultimate tensile strength)が100MPa以上、または100MPa~150MPa、または120MPa~145MPaであり得る。また、前記感光性樹脂フィルムはASTM D882測定法による引張伸び率(tensile elongation,%)が2%以上、2%~10%、または5%~10%、または6%~8%であり得る。また、前記感光性樹脂フィルムはASTM D882測定法による弾性モジュラス(elastic modulus,GPa)が3GPa以上、または3GPa~10GPaまたは3GPa~5GPaまたは3.1GPa~3.6GPaであり得る。
【0098】
前記感光性樹脂フィルムの厚さが大きく限定されるものではないが、例えば、0.001μm~100μmの範囲内で自由に調整可能である。前記感光性樹脂フィルムの厚さが特定数値だけ増加したり減少する場合、感光性樹脂フィルムで測定される物性も一定数値だけ変化し得る。
【0099】
一方、前記感光性樹脂フィルムは、開口パターンを含み得る。前記開口パターンは最大直径が100μm以下である微細穴(ホール)が形成された前記感光性樹脂フィルムを意味し、前記微細穴は感光性樹脂フィルムに対する選択的露光および現像工程によって形成され得る。
【0100】
前記感光性樹脂フィルムが開口パターンを含む場合、電子機器、光学装置などへの適用時に他のフィルムとの連結通路(バイアホール)になり、絶縁フィルムなどに活用され得る。
【0101】
前記感光性樹脂フィルムの製造方法の例は大きく限定されるものではないが、例えば、前記他の実施形態の感光性樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1);前記塗膜を乾燥する段階(段階2);および前記乾燥された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階3)を含み得る。
【0102】
前記段階1は、上述した感光性樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階である。前記感光性樹脂組成物に関する内容は前記他の実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0103】
前記感光性樹脂組成物を基板に塗布する方法は特に制限されず、例えばスピンコート、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどの方法が用いられ得る。前記基板の例としてはシリコンウェハーが挙げられる。
【0104】
前記段階2は、前記感光性樹脂組成物を基板に塗布して形成された塗膜を乾燥する段階である。前記塗膜の乾燥段階はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって行われ得、50℃~150℃、または100℃~150℃温度で行われる。
【0105】
前記段階3は、前記乾燥処理された塗膜を熱処理して硬化する段階である。この時、前記熱処理はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって行われ得、180℃~250℃、または190℃~220℃温度で行われ得る。前記一実施形態の分岐型共重合体が含まれた感光性樹脂組成物の場合、熱処理による硬化温度が相対的に低温である250℃以下で行われることによって、共重合体の熱変形を最小化して最終的に得られるフィルムにおいて優れた物性と共に均一な形態、数値を安定的に確保することができる。
【0106】
一方、必要に応じて、前記段階3以前に乾燥処理された塗膜を露光および現像する段階をさらに含み得る。前記露光および現像する段階により乾燥処理された塗膜に開口パターンを形成することができる。
【0107】
前記塗膜を露光する方法の例は大きく限定されるものではないが、例えば、前記塗膜に所定のパターンが形成されたフォトマスクを接触して紫外線を照射したり、マスクに含まれた所定のパターンをプロジェクション対物レンズを介してイメージングした後紫外線を照射したり、レーザダイオード(Laser Diode)を光源として使用して直接イメージングした後紫外線を照射するなどの方式等により選択的に露光し得る。この時、紫外線照射条件の例としては5mJ/cm~600mJ/cmの光量で照射することが挙げられる。
【0108】
前記塗膜を現像する方法の例としてはアルカリ現像液を処理する方法が挙げられる。前記アルカリ現像液の例は大きく限定されるものではないが、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、アミン類などのアルカリ水溶液の濃度と温度を調整して用い得、商品として販売するアルカリ現像液も使用可能である。
【0109】
前記アルカリ現像液の具体的な使用量は大きく制限されないが、前記塗膜を損傷しない濃度と時間調整が必要であり、2.38重量%テトラメチルアンモニウム水酸化水溶液で150秒間現像し得る。
【0110】
IV.光学装置
発明のまた他の実施形態によれば、前記他の実施形態の感光性樹脂フィルムを含む光学装置が提供され得る。
【0111】
前記感光性樹脂フィルムは公知の方法によって光学装置、または電気装置などに導入され得る。前記感光性樹脂フィルムは、前記一実施形態の分岐型共重合体から製造されて優れた諸般物性と共に優れた安定性を実現することができる。これにより、高い信頼度を示し得る光学装置を提供するようになる。
【発明の効果】
【0112】
本発明によれば、低温で硬化が可能であり、接着力および機械的特性に優れ、良好な絶縁特性およびパターン性を実現できる分岐型共重合体、それを用いた液晶配向膜の製造方法、それを用いた感光性樹脂組成物、感光性樹脂フィルムおよび光学装置が提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】実施例1で合成された化学式aの化合物のH NMR Spectrumを示す図である。
図2】実施例1と参照例1で得られた共重合体のサイズ分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0114】
下記の実施例で発明をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0115】
<実施例>
実施例1
250mlフラスコにディーン・スターク装置を準備し、9,10-ジオクチルノナデカン-1,19-ジアミン 0.33g(0.64mmol)をジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)に溶解させた後、4,4’-オキシジフタル酸無水物 0.05g(0.16mmol)を添加して窒素環境下で150℃、2時間反応させ、下記化学式aで表される化合物を合成した。
【0116】
【化13】
【0117】
前記化学式aにおいて、Q~Qはいずれも9,10-ジオクチルノナデカン-1,19-ジイルである。参考までに、前記化学式aで表される化合物のH NMR Spectrum結果を下記図1に示した。
【0118】
その後、前記化学式aで表される化合物に、4,4’-オキシジフタル酸無水物 16.5g(0.053mol)と2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン 20g(0.055mol)を添加し、固体含有量が30wt%になるようにジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)とトルエンを添加し、150℃で12時間反応を行って分岐型共重合体を合成した。
【0119】
反応終了後MEDG溶媒に分岐型共重合体が溶解している感光性樹脂組成物98.5gを得た。前記分岐型共重合体の分子量はTHF溶媒を用いてGPCで測定した結果、数平均分子量(Mn=3000g/mol)、重量平均分子量(Mw=5500g/mol)であった。
【0120】
実施例2
前記実施例1で化学式aで表される化合物の代わりに化学式bで表される化合物を用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で分岐型共重合体および感光性樹脂組成物を得た。
【0121】
【化14】
【0122】
前記化学式bにおいて、Q~Qはいずれも9,10-ジオクチルノナデカン-1,19-ジイルである。
【0123】
前記化学式bで表される化合物は、250mlフラスコにディーン・スターク装置を準備し、9,10-ジオクチルノナデカン-1,19-ジアミン 0.48g(0.92mmol)をジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物 0.05g(0.22mmol)を添加して窒素環境下で150℃、2時間反応させ合成した。
【0124】
前記分岐型共重合体の分子量はTHF溶媒を用いてGPCで測定した結果、数平均分子量(Mn=1000g/mol)、重量平均分子量(Mw=3000g/mol)であった。
【0125】
実施例3
前記実施例1で9,10-ジオクチルノナデカン-1,19-ジアミンの代わりにポリジメチルシロキサニルジアミン(Mn=430g/mol)0.28g(0.64mmol)をジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)に溶解させた後、4,4’-オキシジフタル酸無水物 0.05g(0.16mmol)と反応させたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で分岐型共重合体および感光性樹脂組成物を得た。前記分岐型共重合体の分子量はTHF溶媒を用いてGPCで測定した結果、数平均分子量(Mn=5000g/mol)、重量平均分子量(Mw=100000g/mol)であった。
【0126】
実施例4
前記実施例1で9,10-ジオクチルノナデカン-1,19-ジアミンを3.3g(6.4mmol)を添加して反応させたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で分岐型共重合体および感光性樹脂組成物を得た。前記分岐型共重合体の分子量はTHF溶媒を用いてGPCで測定した結果、数平均分子量(Mn=16000)、重量平均分子量(Mw=35000)であった。
【0127】
<比較例>
比較例1
前記実施例1で化学式aで表される化合物の代わりに化学式cで表される化合物(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン)を用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で分岐型共重合体および感光性樹脂組成物を得た。
【0128】
【化15】
【0129】
<参照例>
参照例1
250mlフラスコにディーン・スターク装置を準備し、9,10-ジオクチルノナデカン-1,19-ジアミン 0.3g、4,4’-オキシジフタル酸無水物 16.9g、および2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)20gをジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)とトルエンに添加して150℃で12時間反応を行って線状ポリイミド共重合体を得た。前記線状ポリイミド共重合体の分子量はTHF溶媒を用いてGPCで測定した結果、数平均分子量(Mn=25000g/mol)、重量平均分子量(Mn=32000g/mol)であった。
【0130】
<実験例>
実験例1
前記実施例および比較例で得られた感光性樹脂組成物を800~1200rpmのスピンコート方式を用いて4インチのシリコンウェハー上に塗布した後、120℃温度で2分間乾燥して5.0μm厚さの感光性樹脂膜が形成された基板を得た。
【0131】
そして、前記基板に対して微細パターンが形成されたマスクを用いてブロードバンドアライナ(Broadband aligner)露光装置で500mJ/cmのエネルギで露光した。その後、露光された基板を2.38重量%テトラメチルアンモニウム水酸化水溶液で150秒間現像して超純水で洗浄した後、窒素下で乾燥して感光性樹脂膜にパターンを形成した。そして、再び200℃温度で2時間硬化してパターン化された感光性樹脂膜が形成された基板を得た。
【0132】
このように得られたパターン化された感光性樹脂膜が形成された基板をアセトン、DMF、GBLの中から選ばれた溶媒に30分間浸漬した後、イソプロピルアルコールで洗浄して窒素下で乾燥した。そして、顕微鏡を介してパターン化された感光性樹脂膜の表面状態を把握して次の基準下に耐化学性を評価し、下記表1にその結果を記載した。
優秀:溶け跡やクラックのような損傷なし
不良:溶け跡やクラックのような損傷あり
【0133】
【表1】
【0134】
前記表1に示すように、分岐型アミド官能基を含む実施例1~4共重合体から得られた感光性樹脂フィルムは、アセトン、DMF、GBLのすべての溶媒に対して優れた耐化学性を示した。これに対し、アミド官能基が含まれていない比較例1の共重合体から得られた感光性樹脂フィルムはアセトン、DMF、GBLのすべての溶媒に対して実施例に比べて不良な耐化学性を示した。
【0135】
実験例2
前記実施例および比較例で得られた感光性樹脂組成物を約1000rpmのスピンコート方式を用いて4インチシリコンウェハー上に塗布した後、120℃温度で約2分間乾燥して200℃で約1時間硬化して厚さが10μm~15μm厚さの感光性樹脂膜を形成した後、シリコンウェハーを除去して感光性樹脂フィルムを確保した。
【0136】
前記感光性樹脂フィルムに対して、Universal testing machineを用いてASTM D882測定法により最大引張強度(ultimate tensile strength,MPa)、引張伸び率(tensile elongation,%)、および弾性モジュラス(elastic modulus,GPa)をそれぞれ測定し、その結果は下記表2に示した。
【0137】
【表2】
【0138】
前記表2に示すように、分岐型アミド官能基を含む実施例1~4共重合体から得られた感光性樹脂フィルムは、122MPa~140MPaの最大引張強度、6.5%~7.6%の引張伸び率、3.1GPa~3.6GPaの弾性モジュラスを示して優れた機械的物性を実現することができた。これに対し、アミド官能基が含まれていない比較例1の共重合体から得られた感光性樹脂フィルムは37MPaの最大引張強度、1.9%の引張伸び率、2.8GPaの弾性モジュラスを示し、実施例に比べて機械的物性が不良であることを確認することができた。
【0139】
実験例3
前記実施例(Example)1で得られた分岐型共重合体と前記参照例(R.Example)1で得られた線状共重合体を対象に、DLS(dynamic light scattering)分析装置で溶液相で共重合体の粒径(hydrodynamic size)分布を測定し、その結果を下記図2に示した。
【0140】
下記図2を調べれば、参照例1で得られた2次元の線状共重合体は25nmで平均粒径が測定されたことに対し、実施例1で得られた分岐型共重合体の場合、参照例1より増加した100nmで平均粒径が測定され、実施例1の共重合体が分岐型の3次元構造を有することを確認することができる。
図1
図2