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特許7055475グラフト共重合体の製造方法、グラフト共重合体およびこれを含む熱可塑性樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】グラフト共重合体の製造方法、グラフト共重合体およびこれを含む熱可塑性樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20220411BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20220411BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C08F265/06
C08L51/06
C08L25/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020531000
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2019009733
(87)【国際公開番号】W WO2020032505
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0092433
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ボン・クン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ウォン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヨン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・レ・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ユン・ジョン
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-031830(JP,A)
【文献】特開平05-025227(JP,A)
【文献】特表2005-530899(JP,A)
【文献】特開2003-181985(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133190(WO,A1)
【文献】特開2015-196715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/00
C08F 285/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)アルキルアクリレート系単量体を投入し、重合して、シードを製造するステップと、
2)前記シードの存在下で、アルキルアクリレート系単量体を投入し、重合して、コアを製造するステップと、
3)前記コアの存在下で、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体を投入し、重合して、シェルを製造するステップとを含み、
アルキルアクリレート系重合体をさらに投入する、グラフト共重合体の製造方法であって、
前記ステップ1)において、前記アルキルアクリレート系単量体は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の全重量に対して、4~25重量%投入され、
前記ステップ2)において、前記アルキルアクリレート系単量体は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の全重量に対して、25~55重量%投入され、
前記ステップ3)において、前記芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体の和は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の全重量に対して、30~60重量%投入され、前記芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体は、65:35~85:15の重量比で投入され、
前記アルキルアクリレート系重合体は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.1~3重量部投入され、
前記アルキルアクリレート系重合体は、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)およびポリ(ブチルアクリレート)からなる群から選択される1種以上である、製造方法。
【請求項2】
前記アルキルアクリレート系重合体は、重量平均分子量が1,000~2,500g/molである、請求項1に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記アルキルアクリレート系重合体は、25℃で粘度が20~1,000cpsである、請求項1又は2に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記アルキルアクリレート系重合体を前記1)~3)ステップの一つ以上のステップで投入する、請求項1~3のいずれか一項に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記アルキルアクリレート系重合体を前記3)ステップの後に投入する、請求項1~4のいずれか一項に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記コアは、平均粒径が40~80nmである、請求項1~5のいずれか一項に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項7】
アルキルアクリレート系単量体単位を含むシードと、
前記シードおよびアルキルアクリレート系単量体単位を含むコアと、
前記コア、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含むシェルと、
アルキルアクリレート系重合体とを含む、グラフト共重合体であって、
前記シードの前記アルキルアクリレート系単量体単位は、前記グラフト共重合体の単量体の全重量に対して、4~25重量%であり、
前記コアの前記アルキルアクリレート系単量体単位は、前記グラフト共重合体の単量体の全重量に対して、25~55重量%であり、
前記シェルの前記芳香族ビニル系単量体単位およびビニルシアン系単量体単位の和は、前記グラフト共重合体の単量体の全重量に対して、30~60重量%であり、前記芳香族ビニル系単量体単位とビニルシアン系単量体単位の重量比は、65:35~85:15であり、
前記アルキルアクリレート系重合体は、前記グラフト共重合体の単量体の総和100重量部に対して、0.1~3重量部であり、
前記アルキルアクリレート系重合体は、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)およびポリ(ブチルアクリレート)からなる群から選択される1種以上である、グラフト共重合体。
【請求項8】
前記アルキルアクリレート系重合体は、重量平均分子量が1,000~2,500g/molであり、25℃で粘度が20~1,000cpsである、請求項7に記載のグラフト共重合体。
【請求項9】
前記アルキルアクリレート系重合体は、前記コアとシェルとの界面およびシェルのうち一つ以上の領域に位置する、請求項7又は8に記載のグラフト共重合体。
【請求項10】
前記コアは、平均粒径が40~80nmである、請求項7~9のいずれか一項に記載のグラフト共重合体。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか一項に記載のグラフト共重合体と、
芳香族ビニル系単量体単位およびビニルシアン系単量体単位を含むマトリックス共重合体とを含む熱可塑性樹脂組成物から製造され、
耐候性が1.8以下であり、
衝撃強度が13kg・cm/cm以上である、熱可塑性樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年8月8日付けの韓国特許出願第10‐2018‐0092433号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、グラフト共重合体の製造方法、グラフト共重合体およびこれを含む熱可塑性樹脂成形品に関し、グラフト共重合体の製造方法のうち、アルキルアクリレート系重合体をさらに投入するグラフト共重合体の製造方法、グラフト共重合体およびこれを含む熱可塑性樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、ASAグラフト共重合体を含む自動車用の熱可塑性樹脂組成物に対して、耐熱性だけでなく、耐候性強化の要求が増加している。
【0004】
そのため、粒径が小さいコアを使用する方法が提案されたが、機械的特性および流動性が低下するという問題が生じた。また、シェルの製造時にメチルメタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート系単量体を芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体とともにグラフト重合する方法が提案されたが、耐熱性および機械的特性が低下するという問題が生じた。また、ASAグラフト共重合体のコンパウンディング時にポリ(メチルメタクリレート)を投入する方法が提案されたが、耐候性は向上するものの、耐熱性および機械的特性が低下するという問題が生じた。
【0005】
したがって、耐熱性、耐候性および耐衝撃性がいずれも優れたグラフト共重合体に関する開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性などの基本物性を既存と同等の水準に維持しながら、耐候性、耐衝撃性および流動性を改善するグラフト共重合体の製造方法、グラフト共重合体およびこれを含む熱可塑性樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明は、1)アルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体からなる群から選択される1種以上を投入し、重合して、シードを製造するステップと、2)前記シードの存在下で、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を投入し、重合して、コアを製造するステップと、3)前記コアの存在下で、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体を投入し、重合して、シェルを製造するステップとを含み、アルキルアクリレート系重合体をさらに投入するグラフト共重合体の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位からなる群から選択される1種以上を含むシードと、前記シードおよびアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含むコアと、前記コア、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含むシェルと、アルキルアクリレート系重合体とを含むグラフト共重合体を提供する。
【0009】
また、本発明は、上述のグラフト共重合体と、芳香族ビニル系単量体単位およびビニルシアン系単量体単位を含むマトリックス共重合体とを含む熱可塑性樹脂組成物から製造され、耐候性が1.8以下であり、衝撃強度が13kg・cm/cm以上である熱可塑性樹脂成形品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のグラフト共重合体の製造方法によると、耐熱性などの基本物性を既存と同等の水準に維持しながら、耐候性、耐衝撃性、流動性および外観特性がより改善したグラフト共重合体および熱可塑性樹脂成形品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関する理解に資するため、本発明をより詳細に説明する。
【0012】
本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、本発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0013】
本発明において、アルキルアクリレート系重合体の粘度は、下記の条件でブルックフィールド(Brookfield)を用いて測定することができる。
【0014】
スピンドル(spindle)種類‐コーン(Cone) 種類(CPA‐52Z)、コーン角度(cone angle)=3゜、コーン半径(cone radius)=1.2cm、ギャップ(gap):13μm以下、測定せん断速度(shear rate):10~20/sec、測定温度:25℃
【0015】
本発明において、アルキルアクリレート系重合体の重量平均分子量は、溶出液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、waters breeze)を用いて、標準PS(ポリスチレンスタンダード;standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。
【0016】
本発明において、グラフト共重合体のシェルの重量平均分子量は、コアにグラフトされた芳香族ビニル系単量体単位とビニルシアン系単量体単位を含む共重合体の重量平均分子量を意味し得る。
【0017】
本発明において、グラフト共重合体のシェルの重量平均分子量は、グラフト共重合体をアセトンに溶解し、遠心分離した後、アセトンに溶解された部分(sol)をテトラヒドロフランに溶解した後、ゲル浸透クロマトグラフィ-(GPC、waters breeze)を用いて、標準PS(ポリスチレンスタンダード;standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。
【0018】
本発明において、シード、コアおよびグラフト共重合体の平均粒径は、動的光散乱(dynamic light scattering)法を用いて測定することができ、詳細には、Nicomp 380装備(製品名、PSS社製)を用いて測定することができる。
【0019】
本明細書において、平均粒径は、動的光散乱法で測定される粒度分布における算術平均粒径を意味し得る。算術平均粒径は、散乱強度(Intensity Distribution)平均粒径、体積分布(Volume Distribution)平均粒径および個数分布(Number Distribution)平均粒径として測定することができて、このうち、散乱強度平均粒径を測定することが好ましい。
【0020】
本発明において、グラフト共重合体内にアルキルアクリレート系重合体が含まれたか否かは、液体クロマトグラフィ質量分析計(LC‐MS)により分析することができる。
【0021】
本発明において、耐候性は、Ci4000 Weather‐Ometer(機器名、ATLAS社製、ランプ:キセノンアークランプ、フィルタ:石英(inner)、S.Boro(outer)、放射照度(irradiance):0.55W/m(340nm))を用いて、SAE J1960の条件で、6,000時間実験し、下記式によって算出することができる。
【0022】
【数1】
【0023】
前記式中、L´は、熱可塑性樹脂成形品に、6,000時間、SAE J1960の条件で光を照射した後、CIE LAB色座標系で測定したL値であり、Lは、光の照射の前に、CIE LAB色座標系で測定したL値であり、
a´は、熱可塑性樹脂成形品に、6,000時間、SAE J1960の条件で光を照射した後、CIE LAB色座標系で測定したa値であり、aは、光の照射の前に、CIE LAB色座標系で測定したa値であり、
b´は、熱可塑性樹脂成形品に、6,000時間、SAE J1960の条件で光を照射した後、CIE LAB色座標系で測定したb値であり、bは、光の照射の前に、CIE LAB色座標系で測定したb値である。
【0024】
本発明において、衝撃強度は、ASTM 256に準じて測定することができる。
【0025】
1.グラフト共重合体の製造方法
本発明の一実施形態によるグラフト共重合体の製造方法は、1)アルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体からなる群から選択される1種以上を投入し、重合して、シードを製造するステップと、2)前記シードの存在下で、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を投入し、重合して、コアを製造するステップと、3)前記コアの存在下で、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体を投入し、重合して、シェルを製造するステップとを含み、アルキルアクリレート系重合体をさらに投入する。
【0026】
前記アルキルアクリレート系重合体を投入すると、耐候性、流動性、機械的物性、表面光沢などの外観特性が改善したグラフト共重合体を製造することができる。
【0027】
また、前記アルキルアクリレート系重合体は、グラフト共重合体との相溶性に優れ、滑剤の役割も行うことができることから、グラフト共重合体の加工性を改善し、加工温度を低下させ、加工時間を短縮することができる。
【0028】
前記アルキルアクリレート系重合体は、重量平均分子量が1,000~2,500g/molまたは1,200~2,300g/molであってもよく、このうち1,200~2,300g/molが好ましい。上述の条件を満たすと、耐候性、流動性、機械的物性、表面光沢などの外観特性がより改善したグラフト共重合体を製造することができる。
【0029】
前記アルキルアクリレート系重合体は、多分散指数(Mw/Mn)が1~2または1.2~1.8であってもよく、このうち1.2~1.8であることが好ましい。上述の条件を満たすと、流動性および耐衝撃性がより改善したグラフト共重合体を製造することができる。
【0030】
前記アルキルアクリレート系重合体は、25℃で粘度が20~1,000cpsまたは100~900cpsであってもよく、このうち、100~900cpsが好ましい。上述の条件を満たすと、耐候性、流動性、機械的物性、表面光沢などの外観特性がより改善したグラフト共重合体を製造することができる。
【0031】
前記アルキルアクリレート系重合体は、グラフト共重合体の色相に影響を及ぼさないように、APHA色相が60以下であることが好ましい。
【0032】
前記アルキルアクリレート系重合体を前記1)~3)ステップのうち一つ以上のステップで投入することができ、前記3)ステップの後に投入することができる。このうち、前記3)ステップおよび前記3)ステップの後のいずれか一つ以上の時点で投入することが好ましい。
【0033】
前記アルキルアクリレート系重合体を前記3)ステップで投入した場合、耐候性、衝撃強度および引張強度などがより改善したグラフト共重合体を製造することができる。
【0034】
また、前記アルキルアクリレート系重合体を前記3)ステップで投入した場合、芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体とともに一定の速度で連続投入することが好ましい。前記アルキルアクリレート系重合体を一定の速度で連続投入すると、アルキルアクリレート系重合体の分散性が良好になり、耐候性、衝撃強度などに優れ、重合後の固形凝固物の含量が減少し得る。
【0035】
前記アルキルアクリレート系重合体を前記3)ステップの後に投入した場合、流動性がより改善したグラフト共重合体を製造することができる。
【0036】
また、前記3)ステップの後とは、前記3)ステップが完了し、凝集工程が行われる前を意味し得る。
【0037】
前記アルキルアクリレート系重合体を前記3)ステップおよび前記3)ステップの後の一つ以上の時点で投入した場合、前記1)ステップまたは2)ステップで投入することに比べ、重合安定性が改善して、固形凝固物の含量が減少し、流動性および耐衝撃性がより改善したグラフト共重合体を製造することができる。
【0038】
前記アルキルアクリレート系重合体は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.1~3重量部または0.5~2.0重量部投入され得、このうち、0.5~2.0重量部投入されることが好ましい。上述の条件を満たすと、耐候性、流動性、機械的物性、表面光沢などの外観特性がより改善したグラフト共重合体を製造することができる。
【0039】
前記アルキルアクリレート系重合体は、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)およびポリ(ブチルアクリレート)からなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、ポリ(ブチルアクリレート)が好ましい。
【0040】
前記アルキルアクリレート系重合体は、直接製造するか、市販の物質のうち、ADP1200(商品名、BASF社製)を用いることができる。
【0041】
一方、本発明の一実施形態によるグラフト共重合体の製造方法に含まれた1)~3)ステップについて、以下で詳細に説明する。
【0042】
1)ステップ
先ず、アルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体からなる群から選択される1種以上を投入し、重合して、シードを製造する。
【0043】
前記1)ステップで平均粒径が小さいシードを短時間で製造するためには、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を単独投入し、重合することが好ましく、耐衝撃性を考慮して、平均粒径が大きいシードを製造するためには、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体をともに投入し、重合することが好ましい。
【0044】
前記シードの平均粒径が小さい場合、グラフト共重合体の耐候性および着色性をより改善することができ、前記シードの平均粒径が大きい場合、グラフト共重合体の耐衝撃性をより改善することができる。
【0045】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートおよびラウリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、ブチルアクリレートが好ましい。
【0046】
前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α‐メチルスチレン、α‐エチルスチレン、p‐メチルスチレンおよびビニルトルエンからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、スチレンが好ましい。
【0047】
前記ビニルシアン系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α‐クロロアクリロニトリルおよびエタクリロニトリルから選択される1種以上であってもよく、このうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0048】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体からなる群から選択される1種以上は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の全重量に対して、4~25重量%または5~24重量%投入され得、このうち、5~24重量%投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、グラフト共重合体の耐候性、流動性、耐衝撃性および耐化学性、着色性などのバランスに優れるという利点がある。
【0049】
ここで、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体は、シード、コアおよびシェルを製造するステップで投入されるアルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体を意味し得る。
【0050】
前記シードは、平均粒径が20~60nmまたは25~55nmであってもよく、このうち、25~55nmが好ましい。上述の範囲を満たすと、重合時に安定性に優れ、耐候性および耐衝撃性が優れたグラフト共重合体を製造することができる。
【0051】
前記重合は、乳化重合であってもよく、50~85℃または60~80℃で行われてもよく、このうち、60~80℃で行われることが好ましい。上述の範囲を満たすと、乳化重合が安定的に行われ得る。
【0052】
前記1)ステップでは、開始剤、乳化剤、架橋剤、グラフト剤、電解質および水からなる群から選択される1種以上がさらに投入され得る。
【0053】
前記開始剤は、ラジカル開始剤であってもよく、前記開始剤は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物;t‐ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p‐メンタンヒドロペルオキシド、ジ‐t‐ブチルペルオキシド、t‐ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5‐トリメチルヘキサノールペルオキシド、t‐ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス‐2,4‐ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびアゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチルからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、無機過酸化物が好ましく、過硫酸カリウムがより好ましい。
【0054】
前記開始剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.01~3重量部または0.02~2.5重量部投入され得、このうち、0.02~2.5重量部投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、重合を容易に行うことができる。
【0055】
前記乳化剤は、アルキルスルホコハク酸金属塩、アルキル硫酸エステル金属塩、ロジン酸金属塩およびダイマー酸の金属塩からなる群から選択される1種以上が投入され得、このうち、アルキル硫酸エステル金属塩が投入されることが好ましい。
【0056】
前記アルキルスルホコハク酸金属塩は、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジ‐2‐エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジ‐2‐エチルヘキシルスルホコハク酸カリウム塩およびジ‐2‐エチルヘキシルスルホコハク酸からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0057】
前記アルキル硫酸エステル金属塩は、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウムおよびオクタデシル硫酸カリウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0058】
前記ロジン酸金属塩は、ロジン酸カリウム塩およびロジン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0059】
前記ダイマー酸の金属塩は、市販の物質のうちFS200(商品名、LG生活健康社製)を用いることができる。
【0060】
前記乳化剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.01~5重量部または0.05~4.5重量部投入され得、このうち、0.05~4.5重量部投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、目的とする平均粒径を有するシード、具体的にはシードラテックスを容易に製造することができる。
【0061】
前記架橋剤は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3‐ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート、ヘキサンジオールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシランからなる群から1種以上であってもよく、このうち、エチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0062】
前記架橋剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.01~1重量部または0.02~0.8重量部投入され得、このうち、0.02~0.8重量部投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、シードが適切な架橋度を有するとともに、コアの製造時にシードが適切に積層されて目的とする平均粒径を有するコアを製造することができる。
【0063】
前記グラフト剤は、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルアミンおよびトリアリルアミンからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、アリルメタクリレートが好ましい。
【0064】
前記グラフト剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.001~3.0重量部、0.005~2.5重量部投入され得、このうち、0.005~2.5重量部投入されることが最も好ましい。上述の範囲を満たすと、シードが適切な架橋度を有するとともに、コアの製造時にシードが適切に積層されて目的とする平均粒径を有するコアを製造することができる。
【0065】
前記電解質は、KCl、NaCl、KHCO、NaHCO、KCO、NaCO、KHSO、NaHSO、Na、K、KPO、NaPOまたはNaHPO、KOHおよびNaOHからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、KOHが好ましい。
【0066】
前記電解質は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.001~1重量部または0.01~0.8重量部投入され得、このうち、0.01~0.8重量部投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、粒径が小さいシード、具体的にはシードラテックスを安定的に取得することができる。
【0067】
前記水は蒸留水またはイオン交換水であってもよい。
【0068】
2)ステップ
次いで、前記シードの存在下で、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を投入し、重合して、コアを製造する。
【0069】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体の種類は、上述のとおりである。
【0070】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の全重量に対して、25~55重量%または30~50重量%投入され得、このうち、30~50重量%投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、グラフト共重合体の耐候性、流動性および耐化学性のバランスに優れるという利点がある。
【0071】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、一定の速度で連続投入され得、上述の方法で投入されると、重合時に除熱および過剰発熱による暴走を容易に抑制することができる。
【0072】
前記重合は、乳化重合であってもよく、50~85℃または60~80℃で行われ得、このうち、60~80℃で行われることが好ましい。上述の範囲を満たすと、乳化重合が安定的に行われ得る。
【0073】
前記コアは、前記シードよりも平均粒径が大きく、平均粒径が40~80nmまたは45~75nmであってもよく、このうち、45~75nmが好ましい。上述の範囲を満たすと、重合時に安定性に優れ、耐候性、着色性および衝撃強度に優れたグラフト共重合体を製造することができる。
【0074】
前記2)ステップでは、開始剤、乳化剤、架橋剤、グラフト剤、および水からなる群から選択される1種以上がさらに投入され得、重合時に除熱および過剰発熱による暴走を容易に抑制するために、アルキル(メタ)アクリレート系単量体とともに一定の速度で連続投入され得る。
【0075】
前記開始剤の種類は、上述のとおりであり、このうち、無機過酸化物が好ましく、過硫酸カリウムがより好ましい。
【0076】
前記開始剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.01~3重量部または0.02~2.5重量部投入され得、このうち、0.02~2.5重量部投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、重合を容易に行うことができる。
【0077】
前記乳化剤の種類は、上述のとおりであり、このうち、アルキル硫酸エステル金属塩が投入されることが好ましい。
【0078】
前記乳化剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.01~5重量部または0.05~4.5重量部投入され得、このうち、0.05~4.5重量部投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、目的とする平均粒径を有するコアを容易に製造することができる。
【0079】
前記架橋剤の種類は、上述のとおりである。
【0080】
前記架橋剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.01~1重量部または0.02~0.8重量部投入され得、このうち、0.02~0.8重量部投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、コアが適切な架橋度を有することができる。
【0081】
前記グラフト剤の種類は、上述のとおりである。
【0082】
前記グラフト剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.01~3.0重量部、0.02~2.5重量部投入され得、このうち、0.02~2.5重量部投入されることが最も好ましい。上述の範囲を満たすと、コアが適切な架橋度を有することができる。
【0083】
前記水は、蒸留水またはイオン交換水であってもよい。
【0084】
3)ステップ
次いで、前記コアの存在下で、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体を投入し、重合して、シェルを製造する。
【0085】
前記芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体の種類は、上述のとおりである。
【0086】
前記芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体の和は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の全重量に対して、30~60重量%または35~55重量%投入され得、このうち、35~55重量%投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、グラフト共重合体の耐候性、流動性および耐化学性のバランスに優れるという利点がある。
【0087】
前記芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体は、65:35~85:15または70:30~80:20の重量比で投入され得、このうち、70:30~80:20の重量比で投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、グラフト共重合体の流動性および耐化学性のバランスに優れるという利点がある。
【0088】
前記芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体は、一定の速度で連続投入され得、上述の方法で投入されると、重合時に除熱および過剰発熱による暴走を容易に抑制することができる。
【0089】
前記重合は、乳化重合であってもよく、50~85℃または60~80℃で行われ得、このうち、60~80℃で行われることが好ましい。上述の範囲を満たすと、乳化重合が安定的に行われ得る。
【0090】
前記シェルを含むグラフト共重合体は、コアよりも平均粒径が大きく、平均粒径が60~110nmまたは65~105nmであってもよく、このうち、65~105nmが好ましい。上述の範囲を満たすと、重合時に安定性に優れ、耐候性および衝撃強度に優れたグラフト共重合体を製造することができる。
【0091】
前記3)ステップでは、開始剤、活性化剤、乳化剤、分子量調節剤、および水からなる群から選択される1種以上がさらに投入され得、アルキル(メタ)アクリレート系単量体とともに一定の速度で連続投入され得る。
【0092】
前記開始剤の種類は、上述のとおりであり、このうち、有機過酸化物が好ましく、クメンヒドロペルオキシドがより好ましい。
【0093】
前記開始剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.01~3重量部または0.02~2.5重量部投入され得、このうち、0.02~2.5重量部投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、重合を容易に行うことができる。
【0094】
前記活性化剤は、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、硫酸第一鉄、デキストロースおよびピロリン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0095】
前記活性化剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.01~1重量部または0.1~0.8重量部投入され得、このうち、0.1~0.8重量部投入されることが好ましい。上述の含量を満たすと、重合開始を促進することができる。
【0096】
前記乳化剤の種類は、上述のとおりであり、このうち、ロジン酸金属塩が投入されることが好ましい。
【0097】
前記乳化剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.1~3重量部または0.5~2.5重量部投入され得、このうち、0.5~2.5重量部投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、目的とする平均粒径を有するグラフト共重合体を容易に製造することができる。
【0098】
前記分子量調節剤は、α‐メチルスチレンダイマー、t‐ドデシルメルカプタン、n‐ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物であってもよい。好ましくは、t‐ドデシルメルカプタンであってもよい。
【0099】
前記分子量調節剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体の総和100重量部に対して、0.001~1重量部または0.01~0.8重量部投入され得、このうち、0.01~0.8重量部投入されることが好ましい。上述の範囲を満たすと、シェルの重量平均分子量を適切に維持し、グラフト共重合体の機械的特性および表面特性をより改善することができる。
【0100】
前記水は、蒸留水またはイオン交換水であってもよい。
【0101】
本発明の一実施形態によるグラフト共重合体の製造方法は、前記3)ステップが完了すると、凝集、熟成、脱水、洗浄、乾燥工程などをさらに行って、グラフト共重合体粉末を製造することができる。
【0102】
2.グラフト共重合体
本発明の他の一実施形態によるグラフト共重合体は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位からなる群から選択される1種以上を含むシードと、前記シードおよびアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含むコアと、前記コア、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含むシェルと、アルキルアクリレート系重合体とを含む。
【0103】
前記アルキルアクリレート系重合体は、グラフト共重合体の耐候性、衝撃強度および引張強度などを改善することができる。
【0104】
前記アルキルアクリレート系重合体は、重量平均分子量が1,000~2,500g/molまたは1,200~2,300g/molであってもよく、このうち、1,200~2,300g/molが好ましい。上述の条件を満たすと、グラフト共重合体の耐候性、流動性、機械的物性、表面光沢などの外観特性をより改善することができる。
【0105】
前記アルキルアクリレート系重合体は、25℃で粘度が20~1,000cpsまたは100~900cpsであってもよく、このうち、100~900cpsが好ましい。上述の条件を満たすと、グラフト共重合体の耐候性、流動性、機械的物性、表面光沢などの外観特性をより改善することができる。
【0106】
その他、前記アルキルアクリレート系重合体に関する説明は、「1.グラフト共重合体の製造方法」で詳述したとおりである。
【0107】
前記アルキルアクリレート系重合体は、疎水性であり、前記コアとの相溶性に優れることから、前記コアとシェルとの界面およびシェルの一つ以上の領域に位置することができ、前記シェルに比べ、前記コアとシェルとの界面に過量で位置し得る。
【0108】
前記アルキルアクリレート系重合体が上述の領域に位置する場合、グラフト共重合体の耐候性、衝撃強度および引張強度などがより改善することができる。
【0109】
前記コアは、前記シードよりも平均粒径が大きく、平均粒径が40~80nmまたは45~75nmであってもよく、このうち、45~75nmが好ましい。上述の範囲を満たすと、重合時に安定性に優れ、耐候性、着色性および衝撃強度が優れたグラフト共重合体を製造することができる。
【0110】
一方、その他、前記シード、コアおよびシェルに関する説明は、「1.グラフト共重合体の製造方法」で詳述したとおりであり、本発明の他の一実施形態によるグラフト共重合体は、本発明の一実施形態によるグラフト共重合体の製造方法によって製造することができる。
【0111】
3.熱可塑性樹脂組成物
本発明の他の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、本発明の一実施形態によるグラフト共重合体と、芳香族ビニル系単量体単位およびビニルシアン系単量体単位を含むマトリックス共重合体とを含む。
【0112】
前記マトリックス共重合体に含まれた芳香族ビニル系単量体単位は、スチレン、α‐メチルスチレン、α‐エチルスチレン、p‐メチルスチレンおよびビニルトルエンからなる群から選択される1種以上の単位であってもよく、このうち、α‐メチルスチレン単位が好ましい。
【0113】
前記マトリックス共重合体に含まれたビニルシアン系単量体単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α‐クロロアクリロニトリルおよびエタクリロニトリルから選択される1種以上の単位であってもよく、このうち、アクリロニトリル単位が好ましい。
【0114】
前記マトリックス共重合体は、芳香族ビニル系単量体単位とビニルシアン系単量体単位を60:40~80:20または65:35~75:25の重量比で含むことができ、このうち、65:35~75:25の重量比で含むことが好ましい。上述の含量を満たすと、耐熱性、流動性および耐化学性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0115】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記グラフト共重合体とマトリックス共重合体を60:40~10:90または55:45~15:85の重量比で含むことができ、このうち、55:45~15:85の重量比で含むことが好ましい。上述の範囲を満たすと、耐候性、耐熱性、流動性、耐化学性および外観特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0116】
前記熱可塑性樹脂組成物は、用途に応じて、染料、顔料、滑剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、補強剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、可塑剤または無光沢剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0117】
4.熱可塑性樹脂成形品
本発明の他の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物で製造された熱可塑性樹脂成形品は、耐候性が1.8以下であり、衝撃強度が13kg・cm/cm以上であり、好ましくは耐候性が1.7以下であり、衝撃強度が13.5kg・cm/cm以上である。
【0118】
上述の条件を満たすと、自動車用および高耐候性を要する外装材および家具用のシートとしての適用に適する。
【実施例
【0119】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【0120】
実施例1
<シードの製造>
窒素置換された反応器にブチルアクリレート6.5重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム1.5重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.04重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.015重量部、電解質としてKOH0.1重量部および蒸留水60重量部を一括投入し、70℃まで昇温させた後、開始剤として過硫酸カリウム0.04重量部を一括投入して反応を開始した。次に、1時間重合した後、終了し、シードを取得した。
【0121】
<コアの製造>
前記シードが取得された反応器にブチルアクリレート43.5重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.7重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.25重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.09重量部、蒸留水35重量部および開始剤として過硫酸カリウム0.03重量部を混合した混合物を70℃で2時間一定の速度で連続投入しながら重合し、投入終了後、1時間さらに重合した後、終了し、コアを取得した。
【0122】
<シェルの製造>
前記コアが取得された反応器に蒸留水23重量部、スチレン38重量部、アクリロニトリル12重量部およびポリ(ブチルアクリレート)(商品名:ADP1200、BASF社製)1.0重量部、乳化剤としてロジン酸カリウム1.8重量部、分子量調節剤としてt‐ドデシルメルカプタン0.1重量部および開始剤としてクメンヒドロペルオキシド0.05重量部を含む第1混合物と、活性化剤としてピロリン酸ナトリウム0.09重量部、デキストロース0.12重量部、硫酸第一鉄0.002重量部を含む第2混合物をそれぞれ75℃で2.5時間一定の速度で連続投入しながら重合した。連続投入が完了した後、75℃で1時間さらに反応させ、60℃まで冷却させて重合反応を終了し、シェルを含むグラフト共重合体ラテックスを製造した。
【0123】
<グラフト共重合体粉末の製造>
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウム水溶液(濃度:23重量%)0.8重量部を適用して70℃で常圧凝集した後、93℃で熟成し、脱水および洗浄し、90℃の熱風で30分間乾燥した後、グラフト共重合体粉末を製造した。
【0124】
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
前記グラフト共重合体粉末40重量部、大粒径グラフト共重合体粉末4重量部(商品名:SA927、LG化学社製、グラフト共重合体の平均粒径:400nm)および硬質マトリックス共重合体(商品名:100UH、LG化学社製)56重量部を含む熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0125】
実施例2
シェルの製造で重合が完了した後、ポリ(ブチルアクリレート)(商品名:ADP1200、BASF社製)1重量部を投入した以外は、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0126】
実施例3
<シードの製造>
窒素置換された反応器にブチルアクリレート10重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム1.8重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.06重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.035重量部、電解質としてKOH0.1重量部および蒸留水65重量部を一括投入し、70℃まで昇温させた後、開始剤として過硫酸カリウム0.04重量部を一括投入して反応を開始した。次に、1時間重合した後、終了し、シードを製造した。
【0127】
<コアの製造>
前記シードが取得された反応器にブチルアクリレート40重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.5重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.15重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.075重量部、蒸留水32重量部および開始剤として過硫酸カリウム0.05重量部を70℃で2.0時間一定の速度で連続投入しながら重合し、投入終了後、1時間さらに重合した後、終了し、コアを取得した。
【0128】
<シェルの製造>
前記コアが取得された反応器に蒸留水20重量部、スチレン38重量部、アクリロニトリル12重量部およびポリ(ブチルアクリレート)(商品名:ADP1200、BASF社製)1.0重量部、乳化剤としてロジン酸カリウム1.8重量部、分子量調節剤としてt‐ドデシルメルカプタン0.1重量部および開始剤としてクメンヒドロペルオキシド0.05重量部を含む第1混合物と、活性化剤としてピロリン酸ナトリウム0.09重量部、デキストロース0.12重量部、硫酸第一鉄0.002重量部を含む第2混合物をそれぞれ75℃で2.5時間一定の速度で連続投入しながら重合した。連続投入が完了した後、75℃で1時間さらに反応させ、60℃まで冷却させて重合反応を終了し、シェルを含むグラフト共重合体ラテックスを製造した。
【0129】
<グラフト共重合体粉末の製造>
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウム水溶液(濃度:23重量%)0.8重量部を適用して70℃で常圧凝集した後、93℃で熟成し、脱水および洗浄し、90℃の熱風で30分間乾燥した後、グラフト共重合体粉末を製造した。
【0130】
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
前記グラフト共重合体粉末40重量部、大粒径グラフト共重合体粉末4重量部(商品名:SA927、LG化学社製、グラフト共重合体の平均粒径:400nm)および硬質マトリックス共重合体(商品名:100UH、LG化学社製)56重量部を含む熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0131】
実施例4
シェルの製造で重合が完了した後、ポリ(ブチルアクリレート)(商品名:ADP1200、BASF社製)1重量部を投入した以外は、実施例3と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0132】
実施例5
シェルの製造でポリ(ブチルアクリレート)(商品名:ADP1200、BASF社製)を0.5重量部で投入した以外は、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末および熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0133】
実施例6
シェルの製造でポリ(ブチルアクリレート)(商品名:ADP1200、BASF社製)を1.5重量部で投入した以外は、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末および熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0134】
比較例1
シェルの製造でポリ(ブチルアクリレート)(商品名:ADP1200、BASF社製)を投入しない以外は、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末および熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0135】
比較例2
<シードの製造>
窒素置換された反応器にブチルアクリレート6重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.8重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.04重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.02重量部、電解質としてKOH0.1重量部および蒸留水45重量部を一括投入し、70℃まで昇温させた後、開始剤として過硫酸カリウム0.04重量部を一括投入して反応を開始した。次に、1時間重合した後、終了し、シードを製造した。
【0136】
<コアの製造>
前記シードが取得された反応器にブチルアクリレート44重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.5重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.2重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.2重量部、蒸留水30重量部および開始剤として過硫酸カリウム0.05重量部を70℃で2.5時間一定の速度で連続投入しながら重合し、投入終了後、1時間さらに重合した後、終了し、コアを取得した。
【0137】
<シェルの製造>
前記コアが取得された反応器に蒸留水23重量部、スチレン38重量部、アクリロニトリル12重量部および乳化剤としてFS200(商品名、LG生活健康社製)0.8重量部、分子量調節剤としてt‐ドデシルメルカプタン0.1重量部および開始剤としてクメンヒドロペルオキシド0.05重量部を含む第1混合物と活性化剤としてピロリン酸ナトリウム0.09重量部、デキストロース0.12重量部、硫酸第一鉄0.002重量部を含む第2混合物をそれぞれ75℃で2.5時間一定の速度で連続投入しながら重合した。連続投入が完了した後、75℃で1時間さらに反応させ、60℃まで冷却させて重合反応を終了し、シェルを含むグラフト共重合体ラテックスを製造した。
【0138】
<グラフト共重合体粉末の製造>
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウム水溶液0.8重量部を適用して70℃で常圧凝集した後、93℃で熟成し、脱水および洗浄して90℃の熱風で30分間乾燥した後、グラフト共重合体粉末を製造した。
【0139】
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
前記グラフト共重合体粉末40重量部、大粒径グラフト共重合体粉末4重量部(商品名:SA927、LG化学社製、グラフト共重合体の平均粒径:400nm)および硬質マトリックス共重合体(商品名:100UH、LG化学社製)56重量部を含む熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0140】
比較例3
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
比較例2のグラフト共重合体粉末40重量部、大粒径グラフト共重合体粉末4重量部(商品名:SA927、LG化学社製、グラフト共重合体の平均粒径:400nm)、硬質マトリックス共重合体(商品名:100UH、LG化学社製)51重量部およびポリ(メチルメタクリレート)(商品名:BA611 grade、LGMMA社製)を含む熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0141】
比較例4
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
比較例1のグラフト共重合体粉末39重量部、ポリ(ブチルアクリレート)(商品名:ADP1200、BASF社製)1重量部、大粒径グラフト共重合体粉末4重量部(商品名:SA927、LG化学社製、グラフト共重合体の平均粒径:400nm)および硬質マトリックス共重合体(商品名:100UH、LG化学社製)56重量部を含む熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0142】
実験例1
実施例および比較例のグラフト共重合体の物性を下記のような方法で測定し、その結果を下記表1および表2に示した。
【0143】
(1)平均粒径(nm):動的光散乱法で粒度分析装置(particle size analyzer:NICOMP 380)で測定した。
【0144】
(2)重合転化率:(実際に取得されたグラフト共重合体の固形分重量)/処方上投入された単量体の固形分重量)×100
【0145】
(3)グラフト率(%):グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質重量(g)×100
【0146】
グラフトされた単量体の重量(g):グラフト共重合体1gをアセトン30gに溶解し、遠心分離した後の不溶性物質(gel)の重量
【0147】
ゴム質重量(g):グラフト共重合体粉末のうち理論上投入されたブチルアクリレートの重量部
【0148】
(4)シェルの重量平均分子量(g/mol):グラフト率の測定時にアセトンに溶解された部分(sol)をTHF溶液に溶解した後、GPCを用いて標準PS(ポリスチレンスタンダード:standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。
【0149】
【表1】
【0150】
表1を参照すると、実施例1~6のグラフト共重合体は、比較例1のグラフト共重合体に比べ、同等の水準の平均粒径および重合転換率を実現するが、グラフト率は劣り、重量平均分子量は高くなることを確認することができた。かかる結果から、アルキルアクリレート系重合体が、グラフト共重合体の平均粒径と重合転換率には影響を及ぼさないが、グラフト率と重量平均分子量には影響を及ぼすことを確認することができた。
【0151】
一方、比較例2のグラフト共重合体は、実施例に比べ、シードの製造時に乳化剤が少量の含量で投入されたため、平均粒径が大きいシードおよびコアが製造された。また、シェルの製造時にコアの数に比べ開始剤の量が多くなるため、シェルの重量平均分子量が小さくなり、そのため、前記コアにスチレン単位とアクリロニトリル単位がより多くグラフトされて、グラフト率が増加したことを確認することができた。
【0152】
実験例2
実施例および比較例の熱可塑性樹脂組成物に、滑剤(商品名:EBS、LG生活健康社製)1.5重量部、酸化防止剤(商品名:IR1076、BASF社製)1.0重量部および紫外線安定剤(商品名:Tinuvin770、BASF社製)1.0重量部を均一に混合した後、220℃で36パイ押出混練機を使用してペレットを製造した。ペレットの流動性を下記のような方法で測定し、その結果を下記表2および表3に示した。
【0153】
(5)流動指数(MI:melt flow index、g/10mins):ASTM D‐1238に準じて、20℃、10kg下で測定した。
【0154】
実験例3
実験例2で製造されたペレットを射出し、試験片を製造した。試験片の物性を下記のような方法で測定し、その結果を表2および表3に示した。
【0155】
(6)耐候性(△E):促進耐候性試験装置(weather‐o‐meter、ATLAS社製、Ci4000、キセノンアークランプ、Quartz(inner)/S.Boro(outer)フィルタ、照射量(irradiance) 0.55W/m at 340nm)適用、SAE J1960の条件で、6,000時間テストを行っており、下記の△Eは、促進耐候性実験前後の算術平均値であり、値が0に近いほど耐候性に優れることを示す。
【0156】
【数2】
【0157】
前記式中、L´は、熱可塑性樹脂成形品に、6,000時間、SAE J1960の条件で光を照射した後、CIE LAB色座標系で測定したL値であり、Lは、光の照射の前に、CIE LAB色座標系で測定したL値であり、
a´は、熱可塑性樹脂成形品に、6,000時間、SAE J1960の条件で光を照射した後、CIE LAB色座標系で測定したa値であり、aは、光の照射の前に、CIE LAB色座標系で測定したa値であり、
b´は、熱可塑性樹脂成形品に、6,000時間、SAE J1960の条件で光を照射した後、CIE LAB色座標系で測定したb値であり、bは、光の照射の前に、CIE LAB色座標系で測定したb値である。
【0158】
(7)アイゾット衝撃強度(kg/cm):試験片の厚さを1/4 Inとし、ASTM 256に準じて測定した。
【0159】
(8)引張強度(kg/cm):ASTM D638に準じて測定した。
【0160】
(9)熱変形温度(℃):ASTM D648に準じて測定した。
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
表2および表3を参照すると、実施例1~実施例6の熱可塑性樹脂の試験片は、比較例1の試験片に比べ、加工性(流動性)、耐候性および衝撃強度に優れ、引張強度および耐熱性(熱変形温度)は、同等の水準であることが分かった。
【0164】
また、実施例1~実施例6の熱可塑性樹脂の試験片は、平均粒径が大きいグラフト共重合体を含む比較例2の熱可塑性樹脂の試験片に比べ、耐衝撃性が同等の水準以上であったが、加工性、耐候性、引張強度および耐熱性には著しく優れたことを確認することができた。
【0165】
また、実施例1~実施例6の熱可塑性樹脂の試験片は、平均粒径が大きいグラフト共重合体とポリ(メチルメタクリレート)を含む比較例3の熱可塑性試験片に比べ、加工性は同等の水準以上であったが、耐候性、衝撃強度、引張強度および耐熱性には著しく優れたことを確認することができた。
【0166】
また、実施例1~実施例4と同量のポリ(ブチルアクリレート)を含む比較例4の熱可塑性樹脂組成物は、ポリ(ブチルアクリレート)をグラフト共重合体の製造過程で投入しなかったため、加工性、耐候性および衝撃強度が低下したことを確認することができた。
【0167】
かかる結果から、本発明の一実施形態によるグラフト共重合体は、耐衝撃性を向上させるために平均粒径を増加させたり、加工性および耐候性を向上させるためにポリ(メチルメタクリレート)をさらに含まなくても、優れた耐衝撃性、加工性および耐候性を実現できるということを確認することができた。また、グラフト共重合体の製造工程中にポリ(ブチルアクリレート)を追加したときに、加工性、耐候性および衝撃強度の改善効果が大きいことを確認することができた。