(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】加熱調理用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
A23D9/00 506
(21)【出願番号】P 2018050627
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】相馬 邦彦
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101049117(CN,A)
【文献】特開平02-069142(JP,A)
【文献】特開平10-191885(JP,A)
【文献】特開2007-236206(JP,A)
【文献】国際公開第2005/046354(WO,A1)
【文献】特開2019-092461(JP,A)
【文献】特開2019-092462(JP,A)
【文献】特開2006-034297(JP,A)
【文献】特開平05-140584(JP,A)
【文献】特開昭62-022546(JP,A)
【文献】米国特許第05260077(US,A)
【文献】国際公開第03/094633(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/028483(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/114711(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボラージ油および/または月見草油と大豆油とを配合した、
フライ調理用または炒め調理用の油脂組成物であって、
大豆油の配合量が50質量%以上であり、γ-リノレン酸の含有量が0.4質量%以下である、上記油脂組成物。
【請求項2】
月見草油と大豆油が配合されている、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
大豆油以外に、5~50質量%の植物油脂をさらに含有する、請求項1または2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
前記植物油脂が、菜種油、ヒマワリ油、パーム油、コーン油、紅花油のうちの1種以上である、請求項3に記載の油脂組成物。
【請求項5】
菜種油を含有し、菜種油の配合量が50質量%未満である、請求項1~4のいずれかに記載の油脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の油脂組成物を製造する方法であって、
ボラージ油および/または月見草油と大豆油とを配合した油脂組成物のγ-リノレン酸含有量を0.4質量%以下、
大豆油の配合量を50質量%以上とすることを含む、上記方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の油脂組成物を用いて
フライ調理または炒め調理することを含む、食品の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の油脂組成物を用いて
フライ調理または炒め調理することを含む、
フライ調理または炒め調理した食品における青草臭を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理用の油脂組成物に関する。特に本発明は、大豆油を含有する加熱調理用油脂組成物に関しており、加熱調理した食品における青草臭を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
植物油脂は、さまざまな食品に広く使用されている。特に植物油脂は、コレステロールや飽和脂肪酸による健康への悪影響の心配が少ないなどの観点から、動物油脂や乳脂肪の代替物としても用いられている。
【0003】
しかし、植物油脂には青臭さなど独特の風味がある場合があり、例えば、大豆油に関しては、いわゆる「戻り臭」が発生しやすく、特に加熱調理した場合に独特の青草臭が顕著に感じられる場合がある。
【0004】
大豆油に起因する臭気に関しては、これまで、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、大豆油に菜種油を添加することによって、大豆油の戻り臭や加熱調理時に発生する加熱臭を低減させることが記載されている。また、特許文献2~3には、焙煎胡麻油などの焙煎油を大豆油に添加することによって、大豆油などに起因する不快な臭いを抑制することが記載されている。さらに、特許文献4には、大豆油を含有する食用油脂を明所保存した際に生じる臭い(大豆油の明所臭)を抑制するために、n-6系長鎖不飽和脂肪酸としてアラキドン酸を配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-191885号公報
【文献】特開2007-236206号公報
【文献】国際公開WO2009/028483号
【文献】国際公開WO2013/114711号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る技術は、その効果が十分でないところがあり、特許文献2~3に係る技術は、焙煎した胡麻油を極めて限られた濃度で用いることが必要であり、技術的な汎用性が限定的である。また、特許文献4は、大豆油を明所保存した際に生じる臭い(大豆油の明所臭)に関する技術であり、加熱調理によって顕著になる大豆油の青草臭には対処できない。
【0007】
揚げ物や炒め物を調理するための加熱調理油として植物油脂が広く用いられているが、植物油脂として大豆油を配合すると、加熱調理した後の揚げ物や炒め物に青草臭が生じる場合があった。特に、大豆油を多く使用すると、加熱調理食品に濃厚感を付与することができるが、上述の青草臭が顕在化してしまう。
【0008】
このような状況に鑑み、本発明の目的は、大豆油を含有する油脂組成物について、加熱調理によって顕著になる青草臭を効果的に抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが上記課題について鋭意検討したところ、大豆油を含有する加熱調理用油脂組成物において少量のボラージ油および/または月見草油を配合することによって、加熱調理した食品に生じる青草臭を大きく抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
(1) ボラージ油および/または月見草油と大豆油とを配合した加熱調理用油脂組成物であって、γ-リノレン酸の含有量が0.4質量%以下である、上記油脂組成物。
(2) 大豆油の割合が50質量%以上である、(1)に記載の油脂組成物。
(3) 大豆油以外に、5~50質量%の植物油脂をさらに含有する、(1)または(2)に記載の油脂組成物。
(4) 前記植物油脂が、菜種油、ヒマワリ油、パーム油、コーン油、紅花油のうちの1種以上である、(3)に記載の油脂組成物。
(5) フライ調理用または炒め調理用である、(1)~(4)のいずれかに記載の油脂組成物。
(6) (1)~(5)のいずれかに記載の油脂組成物を製造する方法であって、ボラージ油および/または月見草油と大豆油とを配合した油脂組成物のγ-リノレン酸含有量を0.4質量%以下とすることを含む、上記方法。
(7) (1)~(5)のいずれかに記載の油脂組成物を用いて加熱調理することを含む、食品の製造方法。
(8) (1)~(5)のいずれかに記載の油脂組成物を用いて加熱調理することを含む、加熱調理した食品における青草臭を抑制する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る加熱調理用油脂組成物によれば、大豆油を含有しながらも、加熱調理した食品に青草臭が生じることを効果的に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、大豆油を配合した加熱調理用油脂組成物に関しており、ボラージ油および/または月見草油が配合され、γ-リノレン酸の含有量が0.4質量%以下である。
【0013】
加熱調理用油脂組成物
本発明に係る油脂組成物は、加熱調理に用いられるものである。本発明において加熱調理とは、食材に熱を加えて調理することを意味し、例えば、揚げる、炒める、蒸す、焼く、炊く、電子レンジ調理などの調理法が挙げられる。好ましい態様において、本発明に係る油脂組成物を用いて食材をフライ(油ちょう)や炒め調理することができる。
本発明に係る油脂組成物は、好ましくはフライ(油ちょう)に用いられる油脂組成物(フライ油)である。本発明においてフライとは、比較的多量の食用油脂を熱媒として使用する加熱調理方法をいい、日常的に幅広く用いられるものである。本発明に係る油脂組成物は、衣をつけてフライするような場合はもちろん、衣がないような素揚げに用いることもできる。本発明によれば、加熱調理後の食品における青草臭を抑制することができ、フライした食品としては、例えば、天ぷら、から揚げ、とんかつ、コロッケ、さつま揚げ、即席麺、揚げせんべい、かりんとう、フライドポテト、フライドチキン、ドーナツなどを挙げることができる。フライ調理を実施する場所は、一般家庭はもちろん、スーパーマーケットなどの店舗のバックヤード、大規模な食品工場など、多くの場所が挙げられる。本発明に係る油脂組成物を食品工場などにおいて連続して使用する場合、フライ作業終了後に、揚げ種に吸収されて減少した分の油を継ぎ足しながら使用することができる(この操作を「差し油」、「足し油」などという)。
【0014】
また、本発明に係る油脂組成物は、好ましくは炒め調理に用いられる油脂組成物(炒め油)である。炒め調理の態様は特に限定されないが、例えば、フライパンや中華鍋、炒め釜、回転釜などの調理器具に油脂組成物(炒め油)を添加し、加熱して食材を調理することができる。炒め調理に用いる食材は特に制限されないが、例えば、キャベツ、ホウレンソウ、コマツナ、ナス、インゲン、ブロッコリー、ダイコン、ニンジン、ジャガイモなどの野菜類、マイタケ、シメジなどのきのこ類、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉などの獣肉類、スズキ、タラ、タコ、イカ、エビ、貝類などの魚介類、パスタ、中華麺などの麺類、米飯類などを挙げることができる。これらの食材は、必要に応じて調理前に下茹で、あく抜きなどの下処理をしておくことができる。本発明によれば、加熱調理後の食品における青草臭を抑制することができ、炒め調理した食品としては、例えば、野菜炒め、炒飯、焼きそばなどを挙げることができる。
【0015】
本発明に係る油脂組成物を、オーブンや電子レンジなどの加熱調理に用いる場合、例えば、油脂組成物を予め食材に付着させてから加熱調理することができる。
本発明に係る加熱調理用油脂組成物は、大豆油を含有する。植物油脂の一つである大豆油は、大豆の種子から採取される油脂であり、菜種油とともに広く用いられている植物油脂である。本発明に用いられる大豆油は特に制限されず、大豆から採取される油脂であれば制限なく使用することができる。大豆油を含有する油脂を加熱調理に使用すると、加熱調理によって青草臭が顕在化することがあるところ、本発明によれば、それを効果的に抑制することができる。大豆油の配合量は特に制限されないが、好ましい態様において50質量%以上であり、70質量%以上や80質量%以上であってもよい。
【0016】
ボラージ油および/または月見草油
本発明に係る加熱調理用油脂組成物は、ボラージ油および/または月見草油を含有する。ボラージ油(ボラジ油)は、ムラサキ科の植物であるルリジサの種子から得られる植物油脂であり、不飽和脂肪酸であるγ-リノレン酸含量が多いことが知られている。また、月見草油は、イブニングプリムローズとも言われる月見草から得られる植物油脂であり、不飽和脂肪酸であるγ-リノレン酸含量が多いことが知られている。γ-リノレン酸は、植物油脂の中ではボラージ油や月見草油などに含まれることが知られているが、ボラージ油中のγ-リノレン酸濃度は月見草油の約2倍ともいわれており、好ましい態様において、本発明に係る油脂組成物にはボラージ油を配合する。本発明においては、大豆油に起因する青草臭を抑制するために少量のボラージ油および/または月見草油を油脂組成物に配合するが、ボラージ油や月見草油によって大豆油の青草臭が抑制されることはこれまでに全く知られておらず、本発明によって奏される優れた効果である。
【0017】
本発明においては、ボラージ油および/または月見草油を油脂組成物に配合するが、油脂組成物のγ-リノレン酸含有量が0.4質量%以下となるように配合する。0.4質量%より多くなるように配合すると、加熱調理食品からボラージ油を加熱することによって生じる劣化臭が感じられるため、好ましくない。また、ボラージ油および/または月見草油を配合した本発明に係る油脂組成物は、γ-リノレン酸の含有量が、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.15質量%以下である。また、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましい。
【0018】
その他の成分など
本発明においては、上記した大豆油などの他に、1種または複数種の油脂を配合することができる。大豆油と併用する油脂の配合量は、50質量%未満が好ましく、30質量%以下や20質量%以下としてもよい。本発明の油脂組成物に配合する油脂は、食用であれば特に限定されるものではなく、植物由来であるか、動物由来であるか、また、合成品であるかも問わない。例えば、菜種油(キャノーラ油を含む)、コーン油、ヒマワリ油、紅花油、綿実油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、オリーブ油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ココナッツ油、カカオ脂、牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂、魚油、アザラシ脂、藻類油などを単独または組み合わせて使用することができる。植物油脂は、遺伝子組換えの技術を用いて品種改良した植物から抽出したものであってもよく、例えば、菜種油、ヒマワリ油、紅花油などでは、オレイン酸含量を高めたハイオレイックタイプの品種から得られた油脂を使用することができる。また、水素添加油脂、グリセリンと脂肪酸のエステル化油、エステル交換油、分別油脂なども適宜使用することができる。
【0019】
また、本発明の油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて通常用いられる添加剤を添加することができる。前記添加剤としては、保存安定性向上、酸化安定性向上、熱安定性向上、低温化での結晶抑制等を目的としたものであって、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等の乳化剤、トコフェロール、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、茶抽出物、コエンザイムQ、オリザノール等の抗酸化剤、β-カロテン等の色素、香料、シリコーンなどが挙げられる。前記添加剤を添加する場合は、加熱調理用油脂組成物に対して10質量%以下とすることが風味の点で好ましく、5質量%以下や3質量%以下としてもよい。本発明の一つの態様において、添加剤を無添加とすることができる。
【0020】
本発明に係る油脂組成物は、原料を撹拌して混合することによって製造することができる。混合および撹拌は、油脂を加温した状態で実施してもよい。また、混合および攪拌は、加圧、減圧、常圧下で実施することが可能であり、ある態様では、常圧下で混合が行われる。
【0021】
本発明に係る油脂組成物を製造する装置は、特に限定されないが、例えば、攪拌機、加熱用のジャケットなどを備えた加温可能な攪拌槽、邪魔板等を備えた通常の攪拌・混合装置を用いることができる。回転数、攪拌時間などの撹拌条件は、原材料が均一に混合されれば、特に制限されない。攪拌機における攪拌翼の形状は特に制限されないが、例えば、プロペラ型、かい十字型、ファンタービン型、ディスクタービン型またはいかり型などとすることができる。
【0022】
一つの態様において、本発明は、上述の油脂組成物を用いて加熱調理することを含む食品の製造方法であり、また別の態様において、本発明は、上述の油脂組成物を用いて加熱調理した食品である。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を具体的な実験に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本明細書において濃度などは質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0024】
材料
以下の実験においては、下記の材料を使用した。
・大豆油(昭和産業、「大豆白絞油」)
・菜種油(昭和産業、「昭和キャノーラ油」)
・ヒマワリ油(昭和産業、「昭和オレインリッチ」)
・パーム油(不二製油、「パームエース10」)
・ボラージ油(サミット製油、「ボラージシード油(精製)」)
・月見草油(サミット製油、「月見草油(精製)」)
・アマニ油(日清オイリオ、「日清アマニ油」)
・エゴマ油(サミット製油、「エゴマ油(精製)」)
・オリーブ油(昭和産業、「昭和エクストラバージンオリーブオイル」)
・ココナッツ油(日清オイリオ、「日清有機エキストラバージンココナッツオイル」)
γ-リノレン酸の測定方法
「基準油脂分析試験法2.4.1.2‐2013」に従って、油脂組成物の前処理を実施し、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いてγ-リノレン酸を定量した。標準試薬として、γ-リノレン酸メチル(SIGMA‐Aldrich)を用いた。
<GCMS条件>
装置 GCMS‐QP2000(島津製作所)
カラム TCFFAP
注入量 1.0μL
気化室温度 230℃
注入モード スプリット
スプリット比 1:30
全流量 104.0mL/分
カラム流量 1.00mL/分
線速度 23.7cm/秒
カラム温度 210℃
パージ流量 3.0mL/分
分析時間 60分
SIM条件 s/z 79
イオン化方式 EI(イオン化電圧90eV)
【0025】
実験1:大豆油を含有する加熱調理用油脂組成物
下表の配合に基づいて、大豆油を含有するフライ用油脂組成物を調製した。次いで、調製した油脂組成物を用いて、冷凍コロッケ(サンマルコ食品、「北海道でつくったコロッケ(野菜)」)を180℃で5分間フライして調理した。
調理したコロッケについて、常温で1時間保管後にコロッケを試食し、コロッケの香味について官能評価した。具体的には、専門パネラー10人で下記の基準に基づいて評価し、平均点を算出した。いずれの評価項目についても、点数が高いほど良好である。
(風味の総合評価)
・5点:揚げ物の風味が非常に強く、濃厚感をしっかりと感じる
・4点:揚げ物の風味が強く、濃厚感を感じる
・3点:揚げ物の風味がやや強く、濃厚感をやや感じる
・2点:揚げ物の風味がやや弱く、濃厚感があまりない
・1点:揚げ物の風味が弱く、濃厚感がない
(揚げ物における青草臭)
・5点:青草臭を全く感じない
・4点:青草臭をほとんど感じない
・3点:青草臭をやや感じるが許容範囲
・2点:青草臭を感じる
・1点:青草臭を強く感じる
【0026】
【0027】
表1に示したとおり、大豆油を多く配合することによって、揚げ物の風味は良好になるが、青草臭が顕著に感じられることが確認された。
実験2:フライ用油脂組成物の製造と評価
下表の配合に基づいて、フライ用油脂組成物を調製した。実験1に記載の方法でコロッケを調理し、評価した。
【0028】
【0029】
表2に示したとおり、少量のボラージ油または月見草油を配合することによって、青草臭が抑制された揚げ物を得ることができた。
実験3:フライ用油脂組成物の製造と評価
下表の配合に基づいて、フライ用油脂組成物を調製した。実験1に記載の方法でコロッケを調理し、評価した。ただし、本実験では、調理したコロッケについて、常温で1時間保管後に、揚げ物を食した時に感じる油脂が劣化したような臭い(劣化臭)についても官能評価した。具体的には、専門パネラー10人で下記の基準に基づいて評価し、平均点を算出した。点数が高いほど良好である。
(揚げ物における劣化臭)
・5点:劣化臭を全く感じない
・4点:劣化臭をほとんど感じない
・3点:劣化臭をやや感じるが許容範囲
・2点:劣化臭をかなり感じる
・1点:劣化臭を強く感じる
【0030】
【0031】
表3に示したとおり、本発明によれば、少量のγ-リノレン酸を含有させることによって、大豆油を多く配合しているにもかかわらず、青草臭が抑制された揚げ物を得ることができた。また、ボラージ油を多く配合すると、揚げ物の青草臭は抑制されるものの、劣化した油脂の臭い(劣化臭)が感じられる揚げ物となり、好ましくないものであった(サンプル3-7)。
【0032】
実験4:炒め調理用油脂組成物の製造と評価
下表の配合に基づいて、炒め調理用油脂組成物を調製した。次いで、調製した油脂組成物を用いて、野菜炒めを調理した。具体的には、油脂組成物13gをフライパンに入れて均一に広げた後、フライパンを中火で30秒間加熱し、カット野菜150gを入れて5分間炒めて野菜炒めを調理した。調理した野菜炒めについて、常温で1時間保管後に試食し、野菜炒めの香味について官能評価した。専門パネラー10人で下記の基準に基づいて評価し、平均点を算出した。いずれの評価項目も、点数が高いほど良好である。
(風味の総合評価)
・5点:炒め物の風味が非常に強く、濃厚感をしっかりと感じる
・4点:炒め物の風味が強く、濃厚感を感じる
・3点:炒め物の風味がやや強く、濃厚感をやや感じる
・2点:炒め物の風味がやや弱く、濃厚感があまりない
・1点:炒め物の風味が弱く、濃厚感がない
(炒め物における青草臭)
・5点:青草臭を全く感じない
・4点:青草臭をほとんど感じない
・3点:青草臭をやや感じるが許容範囲
・2点:青草臭を感じる
・1点:青草臭を強く感じる
(炒め物における劣化臭)
・5点:劣化臭を全く感じない
・4点:劣化臭をほとんど感じない
・3点:劣化臭をやや感じるが許容範囲
・2点:劣化臭をかなり感じる
・1点:劣化臭を強く感じる
【0033】
【0034】
表4に示したとおり、炒め油として使用した場合においても、本発明に係る油脂組成物は、大豆油を多く配合しているにもかかわらず、青草臭が抑制された炒め物を得ることができた。また、ボラージ油を多く配合すると、炒め物の青草臭は抑制されるものの、劣化した油脂の臭いが感じられる炒め物となり、好ましくないものであった(サンプル4-4)。