(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】MWW骨格構造を有するホウ素含有ゼオライトの固体熱合成
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20220411BHJP
C01B 39/12 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C01B39/48
C01B39/12
(21)【出願番号】P 2019533683
(86)(22)【出願日】2017-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017072200
(87)【国際公開番号】W WO2018046481
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/098177
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】パルフレスク,アンドレイ-ニコラエ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】マウレル,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】タイ,ユイ
(72)【発明者】
【氏名】シヤオ,フェン-ショウ
(72)【発明者】
【氏名】モン,シヤンチュー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イエチン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/185633(WO,A1)
【文献】特表2016-506904(JP,A)
【文献】特表2016-506903(JP,A)
【文献】特表2015-532259(JP,A)
【文献】米国特許第05284643(US,A)
【文献】国際公開第2016/058541(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
B01J 21/00 - 38/74
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
YO
2およびB
2O
3(式中、Yは四価元素を表す)を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法であって、
(i)1つまたは複数のYO
2供給源、1つまたは複数のB
2O
3供給源、1つまたは複数の有機テンプレート、および種結晶を含む混合物を調製する工程、
(ii)(i)において得られた前記混合物を結晶化して、前記MWW骨格構造の層状前駆体を得る工程、
(iii)(ii)において得られた前記層状前駆体を焼成して、MWW骨格構造を有する前記ゼオライト材料を得る工程
を含み、ここで、前記1つまたは複数の有機テンプレートは、式(I)
R
1R
2R
3N (I)
(式中、R
1は(C
5~C
8)シクロアルキルであり、
式中、R
2およびR
3は互いに独立してHまたはアルキルである)
を有し、
(i)において調製され(ii)において結晶化された前記混合物は、(i)において調製され(ii)において結晶化された前記混合物中に含有されるYO
2を100質量%として、35質量%以下のH
2Oを含む、
方法。
【請求項2】
(i)において調製され(ii)において結晶化された前記混合物が、元素として計算しYO
2を100質量%として、5質量%以下のフッ化物を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)において調製され(ii)において結晶化された前記混合物が、それぞれの元素として計算しYO
2を100質量%として、5質量%以下のPおよび/またはAlを含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(ii)において得られる前記層状前駆体が、B-MCM-22(P)、B-ERB-1(P)、B-ITQ-1(P)、B-PSH-3(P)、B-SSZ-25(P)、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(iii)において得られるMWW骨格構造を有する前記ゼオライト材料が、B-MCM-22、B-ERB-1、B-ITQ-1、B-PSH-3、B-SSZ-25、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Yが、Si、Sn、Ti、Zr、Geおよびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記種結晶に任意に含有される有機テンプレートを除き、(i)において調製された前記混合物が、ピペリジンまたはヘキサメチレンイミンを含有しない、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(ii)における前記結晶化が、自己圧力下にて実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(ii)の後、かつ(iii)の前に、
(a)(ii)において得られた前記層状前駆体を単離する工程、
(b)(a)において得られた前記層状前駆体を任意に洗浄する工程、
(c)(a)または(b)において得られた前記層状前駆体を任意に乾燥させる工程、
(d)任意に、(a)、(b)、または(c)において得られた前記層状前駆体をイオン交換に供する工程、
(e)任意に、(a)、(b)、(c)、または(d)において得られた前記層状前駆体を同形置換に供する工程
を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(e)において、(a)、(b)、(c)、または(d)において得られた前記層状前駆体の骨格構造内のホウ素が、1つまたは複数の三価および/または四価元素に対して同形置換される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(iii)における前記焼成が、300~900℃の範囲の温度にて実施される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(iii)の後に、
(iv)(iii)において得られた前記MWW骨格構造を有するゼオライト材料を液体溶媒系により脱ホウ素化し、それにより、MWW骨格構造を有する脱ホウ素化ゼオライト材料を得る工程
であって、脱ホウ素化手順の完了後に少なくとも微量のホウ素がMWW骨格構造中に残る、工程
を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(iv)における前記脱ホウ素化が、50~125℃の範囲の温度にて実施される、請求項12に記載の方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、YO2およびB2O3(式中、Yは四価元素を表す)を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料の調製方法であって、含有されるYO2を100質量%として、35質量%以下のH2Oを含む混合物の固体熱結晶化を含む、方法に関する。更に、本発明は、前記方法に従って得られたおよび/または得ることができるMWW骨格構造を有するゼオライト材料、ならびに特定の用途において前記材料を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、厳密に規定された分子寸法の細孔もしくはキャビティまたはチャネル構造によって特徴付けられる微多孔質結晶性固体である。ゼオライトは、石油化学(例えば、流動接触分解および水素化分解)、イオン交換(例えば、水軟化および精製)、ならびにガスおよび溶媒の分離および除去において広く使用されてきた。ゼオライトの工業上の利用価値は、一般に、その構造の特有性およびゼオライトの製造コストに関連付けられる。特に、MFI、FAU、またはMORなどの骨格構造を有するいくつかのゼオライト材料は、そのようなゼオライトの化学的性質を異なる要求に合わせて調整できるため、極めて多様な工業用途に対応できることが判明している。
【0003】
近年発見されたゼオライト骨格のなかでも、MWW構造は、学術研究と実際的応用両方の点から大きな関心を集めている。MWW骨格構造は、2つの独立した細孔系により特徴付けられる。具体的には、一方の細孔系が、4.1Å×5.1Åの楕円形断面を有する二次元の正弦波形状の10員環(10-MR)チャネルを構成する。他方の細孔系は、10-MRウィンドウによってつながった巨大な12-MRスーパーケージを構成する。MWW骨格構造の構造上の詳細は、M.E.Leonowiczらによる、Science、vol.264(1994)、1910~1913ページに記載されている。前記の特有の構造的特徴に加えて、MWWゼオライトは、結晶化プロセスの後に有機テンプレート分子によりインターカレートされた層状前駆体を最初に形成することで合成される点も注目される。更に焼成を行うと、二次元層状前駆体間での脱ヒドロキシル化および縮合が、三次元MWW骨格を有するゼオライト生成物の形成をもたらす。
【0004】
10-MRチャネル系と12-MRチャネル系の特有の組み合わせのために、MWWゼオライト、特にアルミノケイ酸塩MCM-22は、炭化水素転化のための形状選択触媒として、更に石油、石油化学および製油工業における分離および精製プロセスのための吸着剤として、研究されてきた。例えば、米国特許第5,107,047号は、オレフィン異性化へのゼオライトMCM-22の応用を開示している。同様に、米国特許第4,992,615号は、プロピレンを用いたベンゼンのアルキル化による、液相中のイソおよびエチルベンゼンのアルキル化を開示している。
【0005】
ゼオライトMCM-22の合成は、既に大規模に研究されている。例えば、米国特許第4,954,325A号は、24時間~60日間にわたる80~225℃の範囲の温度の熱水条件下にて有機テンプレートとしてヘキサメチレンイミンを用いたゼオライトMCM-22の合成を開示している。しかし、有機テンプレートとしてヘキサメチレンイミンを用いることの欠点として、ヘキサメチレンイミンは毒性が高く、高価であり、MCM-22を含むMWWゼオライトの大規模合成に適さないということがある。
【0006】
米国特許第5,173,281A号は、特にアミノシクロヘキサン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘプタン、1,4-ジアザシクロヘプタン、およびアザシクロオクタンが用いられる、有機構造規定剤を用いた合成多孔質結晶性物質の合成に関する。米国特許第5,284,643A号は、Ga含有MCM-22の調製に関係し、ここで、ヘキサメチレンイミンが構造規定剤として特に用いられるが、とりわけ、可能な有機構造規定剤としてアミノシクロヘキサン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘプタン、1,4-ジアザシクロヘプタン、およびアザシクロオクタンも言及されている。
【0007】
これに対して、WO2015/185633Aは、種結晶を有する特定のシクロアルキルアミン有機テンプレートを用いる、MWW骨格構造を有する材料を製造するための容易で安価な方法を教示している。
【0008】
MWW骨格構造を有するホウ素含有ゼオライトの合成のためのプロセスがいくつか存在するが、そのようなゼオライトを得るために、合成プロセスを更に改善する必要が依然として残されている。最近では、Renら、J.Am.Chem.Soc.2012、134巻、15173~15176ページおよびJinら、Angew.Chern.Int.Ed.2013、52巻、9172~9175ページにおいて、アルミノケイ酸塩およびアルミノリン酸塩ベースのゼオライトの無溶媒合成が報告され、それに関連した利点、例えば、ゼオライト収率の増加、水質汚染の低減、および従来的合成方法論において直面する高圧条件の排除が強調されている。無溶媒合成方法論の重要性は、Morrisら、Angew.Chem.Int.Ed.2013、52巻、2163~2165ページにおいて強調されている。
【0009】
Wuらは、J.Am.Chem.Soc.2014、136巻、4019~4025ページにおいて、有機テンプレート、ならびに特にZSM-5およびβゼオライトの不在下でのゼオライトの無溶媒合成について述べている。WO2014/086300Aは、ゼオライトモレキュラーシーブ、特にZSM-5、βゼオライト、ならびにFAU、MOR、GIS、およびLTA骨格構造を有するゼオライト材料のための、有機テンプレートフリーの固体状態合成法に関係する。WO2016/058541Aは、ゼオライト材料の固体熱合成、ならびに特にMFI、BEA、EUO、TON、MTN、ITH、BEC、およびITW骨格構造を有するゼオライト材料に関する。
【0010】
従来の合成と比較して、固体熱合成は、無溶媒合成に伴う全ての利点を有するだけでなく、最小限の有機テンプレートを使用するものでもある。しかしながら、前記合成方法論は、特定の骨格構造型を示す特定の型のゼオライト材料の直接合成に限定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5,107,047号
【文献】米国特許第4,992,615号
【文献】米国特許第4,954,325号
【文献】米国特許第5,173,281A号
【文献】米国特許第5,284,643A号
【文献】WO2015/185633A
【文献】WO2014/086300A
【文献】WO2016/058541A
【非特許文献】
【0012】
【文献】M.E.Leonowiczら、Science、vol.264(1994)、1910~1913ページ
【文献】Renら、J.Am.Chem.Soc.2012、134巻、15173~15176ページ
【文献】Jinら、Angew.Chern.Int.Ed.2013、52巻、9172~9175ページ
【文献】Morrisら、Angew.Chem.Int.Ed.2013、52巻、2163~2165ページ
【文献】Wuら、J.Am.Chem.Soc.2014、136巻、4019~4025ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、YO2およびB2O3(式中、Yは、四価元素、特にSiを表す)を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料の改善された調製方法を提供することである。従って、溶媒を用いない固体熱的方法に従って、MWW骨格構造の層状前駆体を調製できることが期せずして見出された。前記層状前駆体がゼオライト材料の三次元共有結合構造を示さず、隣接する層の表面のヒドロキシル基の縮合をもたらす追加の焼成工程を用いることのみによって、前記層状前駆体がその中で最終的なMWW骨格構造へと変換され得るという事実を考えると、これは特に驚くべきことであった。従って、ゼオライト前駆体材料の調製のために、特に、共有結合ゼオライト骨格の長距離(long range)三次元骨格構造を示さず、むしろ、それぞれの層に面する表面上に位置する高含有量のヒドロキシル部分により高親水性である、緩やかに会合した二次元層の配列からなる、MWW骨格構造の層状ゼオライト前駆体の製造に対して、固体熱方法論を用いることができることが期せずして見出された。特に、大量のヒドロキシル基を含有する親水性構造の合成が無溶媒条件下で可能であることを見出したことは全く予想外であった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明は、YO2およびB2O3(式中、Yは四価元素を表す)を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法であって、
(i)1つまたは複数のYO2供給源、1つまたは複数のB2O3供給源、1つまたは複数の有機テンプレート、および種結晶を含む混合物を調製する工程、
(ii)(i)において得られた前記混合物を結晶化して、前記MWW骨格構造の層状前駆体を得る工程、
(iii)(ii)において得られた前記層状前駆体を焼成して、MWW骨格構造を有する前記ゼオライト材料を得る工程
を含み、ここで、前記1つまたは複数の有機テンプレートは、式(I)
R1R2R3N (I)
(式中、R1は(C5~C8)シクロアルキルであり、
式中、R2およびR3は互いに独立してHまたはアルキルである)
を有し、
(i)において調製され(ii)において結晶化された前記混合物は、(i)において調製され(ii)において結晶化された前記混合物中に含有されるYO2を100質量%として、35質量%以下のH2Oを含む、方法に関する。
【0015】
本発明に従えば、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物は、YO2を100質量%として、35質量%以下のH2Oを含む。従って、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物中に含有されるH2Oの量に関して、特定の制限はないが、YO2を100質量%として、35質量%以下であるH2Oの量を超えないことを条件とする。従って、例えば、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物は、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物中に含有されるYO2を100質量%として、30質量%以下のH2Oを含んでよく、ここで、混合物は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、より好ましくは25質量%以下、より好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下のH2Oを含む。ただし、本発明の方法に従えば、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物は、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物中に含有されるYO2を100質量%として、0.01質量%以下のH2Oを含むことが特に好ましい。
【0016】
1つまたは複数のYO2供給源、1つまたは複数のB2O3供給源、1つまたは複数の有機テンプレート、および種結晶に加えて、基本的に、工程(i)において混合物に供給され得る構成成分に関する制限はないが、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物は、特定量を超える特定の元素を含有しないことが好ましい。従って、例えば、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物は、特定量以下のフッ化物を含有することが好ましい。より具体的には、本発明の方法に従えば、(i)において調製された混合物は、元素として計算し、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物中に含有されるYO2を100質量%として、5質量%以下のフッ化物を含有することが好ましく、ここで、より好ましくは、(i)において調製された混合物は、元素として計算し、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物中に含有されるYO2を100質量%として、3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下のフッ化物を含有する。ただし、本発明の方法に従えば、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物は、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物中に含有されるYO2を100質量%として、0.001質量%以下のフッ化物を含有することが特に好ましい。本発明の意味の範囲内において、「元素として計算したフッ化物」とは、単一元素、すなわち、F2と対照される単原子種Fを指す。
【0017】
本発明に従えば、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物が、特定量を超えるリンおよび/またはAlを含有しないことが更に好ましい。特に、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物は、それぞれの元素として計算し、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物中に含有されるYO2を100質量%として、5質量%以下のPおよび/またはAlを含有することが更に好ましく、ここで、より好ましくは、前記混合物は、3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下のPおよび/またはAlを含有する。本発明の方法に従えば、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物は、それぞれの元素として計算し、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物中に含有されるYO2を100質量%として、0.001質量%以下のPおよび/またはAlを含有することが特に好ましい。
【0018】
本発明の意味の範囲内において、MWW骨格構造を有するゼオライト材料に関する用語「層状前駆体」とは、有機テンプレートを用いたMWW骨格構造を有するゼオライト材料の合成過程で得ることができるおよび/または得られた材料を指し、ここで、まず前記前駆体材料が結晶化され、有機テンプレート分子によりインターカレートされた層状前駆体を形成する。文献では、ゼオライト材料、特にMWW骨格構造を有するゼオライト材料の層状前駆体は、それに対する層状前駆体である、MWW骨格構造を有するゼオライト材料の名称の後に置かれた用語「(P)」によって示されることに留意されたい。従って、例えば、MWW骨格構造を有するMCM-22ゼオライト材料の層状前駆体は、MCM-22(P)と表される(例えば、Fronteraら、Microporous and Mesoporous Materials 2007、vol.106、107~114ページを参照)。前記層状前駆体から、三次元MWW骨格の形成につながる二次元層状前駆体間での脱ヒドロキシル化および縮合により、MWW骨格構造を有するゼオライト材料を得ることができる。典型的に、脱ヒドロキシル化および縮合は、層状前駆体の熱処理、特に層状前駆体の焼成により行われ、前記焼成は、300~900℃、より好ましくは400~700℃、より好ましくは450~650℃、より好ましくは500~600℃の範囲のどの温度にて行われてもよい。本発明の方法により(ii)において得られた層状前駆体に関しては、特定の制限は適用されず、原則として、任意の考えられる層状前駆体を得ることができるが、(iii)において、焼成時に、層状前駆体が、MWW骨格構造を有するゼオライト材料を形成し得ることを条件とする。ただし、本発明に従えば、(ii)において得られる層状前駆体は、B-MCM-22(P)、B-ERB-1(P)、B-ITQ-1(P)、B-PSH-3(P)、B-SSZ-25(P)、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることが好ましく、B-MCM-22(P)、B-ITQ-1(P)、B-SSZ-25(P)、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることがより好ましい。ただし、本発明に従えば、層状前駆体は、B-MCM-22(P)および/またはB-SSZ-25(P)を含むこと、好ましくはB-MCM-22(P)を含むことが特に好ましく、ここで、(ii)において得られる層状前駆体は、B-MCM-22(P)であることがより好ましい。
【0019】
一方、(iii)において得られるMWW骨格構造を有するゼオライト材料に関しては、この場合も、層状前駆体に関する特定の制限は適用されず、(iii)における層状前駆体の焼成時に(ii)における結晶化から得られた層状前駆体からゼオライト材料を得ることができることを条件として、原則として、本発明の方法に従えば、(iii)において、MWW骨格構造を有する任意のゼオライト材料を得ることができる。ただし、本発明に従えば、(iii)において得られるMWW骨格構造を有するゼオライト材料は、B-MCM-22、B-ERB-1、B-ITQ-1、B-PSH-3、B-SSZ-25、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることが好ましく、B-MCM-22、B-ITQ-1、B-SSZ-25、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることがより好ましい。ただし、本発明に従えば、MWW骨格構造を有するゼオライト材料は、B-MCM-22および/またはB-SSZ-25を含むこと、好ましくはB-MCM-22を含むことが特に好ましく、ここで、(iii)において得られるMWW骨格構造を有するゼオライト材料は、B-MCM-22であることがより好ましい。
【0020】
本発明に従えば、ホウ素含有ゼオライト材料のMWW骨格構造は、Yおよび酸素を含み、好ましくはY原子が酸素を介して相互に連結した形態をとる。より好ましくは、Y原子は四面体に配位され、MWW骨格構造中で酸素を介して相互に連結される。
【0021】
ゼオライト材料中の元素Yについて、使用できる元素Yの種類に関して本発明により何らかの制限が適用されることはないが、少なくともその一部がYO2としてMWW骨格構造に組み込まれ得ることを条件とする。従って、考えられる任意の四価元素Yを使用してもよく、前記元素は、好ましくはSi、Sn、Ti、Zr、Geおよびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される。ただし、Yは、より好ましくはSiおよび/またはTiであり、より好ましくはSiである。
【0022】
本発明に従えば、ホウ素はMWW骨格を有するゼオライト材料中に含有され、ここで、ホウ素はゼオライト材料のMWW骨格構造内に含有される。好ましくは、MWW骨格構造に含有されるホウ素原子は、酸素を介して相互連結し、より好ましくは、ホウ素原子は四面体に配位しており、MWW骨格構造内で酸素を介して相互連結している。
【0023】
工程(i)
本発明の方法の工程(i)によれば、1つまたは複数のYO2供給源が前記工程で製造される混合物中に含まれ、Yは、好ましくはSi、Sn、Ti、Zr、Geおよびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、ここで、Yは、より好ましくはSiおよび/またはTiであり、より好ましくはSiである。
【0024】
工程(i)においてYがSiである好ましい実施態様では、前記混合物中の1つまたは複数のYO2供給源は、1つまたは複数のSiO2供給源である。
【0025】
工程(i)の混合物中における1つまたは複数のSiO2供給源については、この場合も、それらの供給源に関して特に制限は適用されないが、前記供給源に含有されているか適切な化学的変換により前記供給源から供給され得るYO2の少なくとも一部が、SiO2としてMWW骨格構造に組み込まれ得ることを条件とする。本発明に従えば、前記1つまたは複数のYO2供給源は、好ましくはシリカ、シリケート、ケイ酸およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはシリカ、アルカリ金属シリケート、ケイ酸、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはヒュームドシリカ、コロイド状シリカ、反応性非晶質固体シリカ、シリカゲル、焼成シリカ、リチウムシリケート、ナトリウムシリケート、カリウムシリケート、ケイ酸、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはヒュームドシリカ、シリカゲル、焼成シリカ、ナトリウムシリケート、ケイ酸、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはヒュームドシリカ、シリカゲル、焼成シリカ、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、ここで、より好ましくは、1つまたは複数のYO2供給源は、シリカゲルである。
【0026】
より好ましくは、式SiO2・xH2Oのシリカゲルは、工程(i)の混合物中におけるYO2の供給源として用いられる。本発明の方法において特に好ましく使用されるシリカゲルの式中のxの値に関しては、特定の制限は適用されないが、(i)において調製され(ii)において結晶化された混合物が、(i)において調製され(ii)において結晶化された混合物中に含有されるYO2を100質量%として、35質量%以下のH2Oを含むことを条件とする。従って、例えば、式SiO2・xH2O中のxは、0.1~1.165のどの範囲にあってもよく、xは、好ましくは0.3~1.155の範囲、より好ましくは0.5~1.15の範囲、より好ましくは0.8~1.13の範囲にある。ただし、本発明に従えば、式SiO2・xH2O中のxは1~1.1の範囲にあることが特に好ましい。
【0027】
本発明の方法の工程(i)によれば、1つまたは複数の有機テンプレートが前記工程の混合物中に含まれ、ここで、前記1つまたは複数の有機テンプレートは式(I)
R1R2R3N (I)
を有し、
式中、R1は(C5~C8)シクロアルキルであり、
式中、R2およびR3は互いに独立してHまたはアルキルである。
【0028】
1つまたは複数の有機テンプレートの式(I)のR1基については、前記基は、好ましくは置換および/または非置換シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルからなる群から選択され、より好ましくは置換および/または非置換シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルからなる群から選択され、ここで、より好ましくは、R1は置換または非置換シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、より好ましくは置換または非置換シクロヘキシルである。より好ましくは、1つまたは複数の有機テンプレートの式(I)におけるR1は、非置換シクロヘキシルである。
【0029】
1つまたは複数の有機テンプレートの式(I)のR2およびR3基について、前記2つの基は、好ましくは、互いに独立してHまたは(C1~C3)アルキルである。より好ましくは、R2およびR3は、互いに独立して、H、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選択される。より好ましくは、1つまたは複数の有機テンプレートの式(I)におけるR2およびR3は、Hである。
【0030】
本発明の方法に従えば、工程(i)の混合物中の1つまたは複数の有機テンプレートは、置換および/または非置換(C5~C8)シクロアルキルアミンからなる群から選択され、好ましくは置換および/または非置換シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミン、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは置換および/または非置換シクロヘキシルアミンおよび/またはシクロヘプチルアミンからなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、非置換シクロヘキシルアミンは、工程(i)の混合物中の有機テンプレートである。
【0031】
本発明の方法の工程(i)によれば、種結晶が前記工程の混合物に含まれる。本発明の方法において用いてもよい種結晶の種類については、特定の制限は適用されず、本発明の効果を得るために任意の好適な材料を用いてもよいが、前記材料が、工程(ii)において得られるホウ素含有ゼオライト材料の層状前駆体の核生成を含んでよく、前記核生成から、前記材料の焼成後、工程(iii)においてMWW骨格構造を有するゼオライト材料が得られることを条件とする。ただし、本発明に従えば、種結晶は1つまたは複数のゼオライト材料を含み、前記1つまたは複数のゼオライト材料は互いに独立して骨格構造内にYO2およびX2O3を含み、Xは三価元素であり、Yは四価元素であることが好ましい。
【0032】
種結晶中に含まれることが好ましい1つまたは複数のゼオライト材料中にX2O3として含まれ得る三価元素Xについては、特定の制限は適用されず、原則として任意の好適な三価元素Xを用いてよいが、前記三価元素Xがゼオライト材料の骨格構造内にX2O3として含まれることを条件とする。ただし、本発明に従えば、種結晶中の元素Xは、Al、B、In、Ga、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、三価元素はAlおよび/またはBを含むことが好ましい。より好ましくは、種結晶中の三価元素XはAlである。
【0033】
他方で、上記とは独立に、種結晶中に含まれることが好ましい1つまたは複数のゼオライト材料中にYO2として含まれ得る四価元素Yについては、特定の制限は適用されず、原則として任意の好適な四価元素Yを用いてよいが、前記四価元素Yがゼオライト材料の骨格構造内にYO2として含まれることを条件とする。ただし、本発明に従えば、種結晶中の元素Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Geおよびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、四価元素YはSiおよび/またはTiを含むことが好ましい。より好ましくは、種結晶中の四価元素YはSiである。
【0034】
本発明の方法の工程(i)によれば、1つまたは複数のB2O3供給源が前記工程の混合物中に含まれる。本発明の方法に従って用いることができる1つまたは複数のB2O3供給源については、この場合も、それらの供給源に関して特に制限は適用されないが、前記供給源に含有されているか適切な化学的変換により前記供給源により供給され得るB2O3の少なくとも一部が、B2O3としてMWW骨格構造に組み込まれ得ることを条件とする。本発明に従えば、前記1つまたは複数のB2O3供給源は、好ましくはホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸塩、ホウ酸エステル、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、好ましくはホウ酸、酸化ホウ素、オルトホウ酸塩、ジホウ酸塩、トリホウ酸塩、テトラホウ酸塩、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、ここで、前記1つまたは複数のB2O3供給源は、より好ましくは酸化ホウ素および/またはホウ酸である。より好ましくは、ホウ酸は、工程(i)の混合物中におけるB2O3の供給源として用いられる。
【0035】
本発明の方法においてYO2およびB2O3が用いられ得る量に関しては、任意の好適な量を使用してよいが、ホウ素含有ゼオライト材料が本発明の方法に従って得られ、得られた材料のMWW骨格構造内にYO2およびB2O3の両方が含有されることを条件とする。従って、本発明の方法の好ましい実施態様に従えば、(i)において調製される混合物中の1つまたは複数のYO2供給源と1つまたは複数のB2O3供給源のYO2:B2O3モル比は、1:1~100:1の範囲にあり、好ましくは1.2:1~50:1、より好ましくは1.5:1~20:1、より好ましくは1.8:1~10:1、より好ましくは2:1~5:1、より好ましくは2.2:1~4:1の範囲にある。より好ましくは、(i)において調製される混合物中の1つまたは複数のYO2供給源と1つまたは複数のB2O3供給源のYO2:B2O3モル比は、2.5:1~3.5:1の範囲にある。
【0036】
種結晶に関しては、種結晶が1つまたは複数のゼオライト材料を含む場合、有機テンプレートが1つまたは複数のゼオライト材料の調製に用いられたか否かに応じて、前記種結晶が有機テンプレートを含むか否かに関する制限はない。従って、種結晶は、主として有機テンプレートを含有する未焼成形態にて使用するか、有機テンプレートが種結晶から焼成除去される焼成条件により、有機テンプレートを含有しない焼成形態にて使用することができる。
【0037】
本発明の方法に従えば、(i)において準備される1つまたは複数の有機テンプレートを除き、基本的に、(i)において準備される混合物に含有され得る更なる有機テンプレートに関する制限はない。従って、(i)において任意の好適な更なる有機テンプレートを調製してもよいが、(ii)においてホウ素含有ゼオライト材料の層状前駆体(layer precursor)を得ることができ、(iii)においてMWW骨格構造を有するゼオライト材料が前記材料の焼成後に得ることができることを条件とする。上記のように1つまたは複数の更なる有機テンプレートを添加することに加えて、それとは別に、前記1つまたは複数の任意の更なる有機テンプレートが種結晶から供給されてもよい。ただし、本発明に従えば、種結晶に任意に含有される有機テンプレートを除き、工程(i)に従い準備される混合物は、好ましくはピペリジンまたはヘキサメチレンイミンを含有しないことが好ましく、ピペリジンおよびヘキサメチレンイミン両方を含有しないことがより好ましく、式(I)に従う1つまたは複数の有機テンプレート以外に(C4~C7)アルキレンイミンおよび(C5~C8)アルキルアミンを含有しないことがより好ましく、式(I)に従う1つまたは複数の有機テンプレート以外にアルキレンイミンおよびアルキルアミンを含有しないことがより好ましい。本発明に従えば、(i)において準備される混合物は、種結晶中に任意に存在する有機テンプレートを含めて、式(I)に従う1つまたは複数の有機テンプレート以外に、更なる有機テンプレートを含有しないことが特に好ましい。発明の意味の範囲内において、特に指示がない限り、(i)において調製され(ii)において結晶化された混合物に含有される構成成分に関しての「含有しない」という表現は、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物中に含有されるYO2を100質量%として、5質量%以下の前記構成成分の量を示し、(i)において調製され工程(ii)において結晶化された混合物中に含有されるYO2を100質量%として、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下の前記構成成分の量を示す。
【0038】
本発明の方法において用いられ得る1つまたは複数の有機テンプレートの量については、特定の制限は適用されず、任意の好適な量を使用してよいが、YO2およびB2O3を含むMWW骨格構造を有するホウ素含有ゼオライト材料が得られることを条件とする。ただし、本発明の方法に従えば、好ましくは、(i)において調製される混合物中の1種以上の有機テンプレートと1種以上のYO2供給源の有機テンプレート:YO2モル比は、0.05:1~3:1であり、好ましくは0.1:1~1.5:1、より好ましくは0.2:1~0.8:1、より好ましくは0.25:1~0.5:1、より好ましくは0.3:1~0.4:1、より好ましくは0.32:1~0.35:1、より好ましくは0.33:1~0.34:1の範囲にあり、ここで、前記1つまたは複数の有機テンプレートは、任意に種結晶に含有される有機テンプレートを含まず、前記1つまたは複数のYO2供給源は、工程(i)において種結晶中に供給された量のYO2を含んでいても含んでいなくてもよく、工程(i)において種結晶により混合物に供給される量のYO2を含まないことが好ましい。
【0039】
本発明の方法に従えば、更に好ましくは、工程(i)に従い準備される混合物中の1つまたは複数のYO2供給源と1つまたは複数のB2O3供給源と1つまたは複数の有機テンプレートにおけるYO2:B2O3:有機テンプレートのモル比は、1:(0.01~1):(0.05~3)の範囲、好ましくは1:(0.02~0.8):(0.1~1.5)の範囲、より好ましくは1:(0.05~0.7):(0.2~0.8)の範囲、より好ましくは1:(0.1~0.6):(0.25~0.5)の範囲、より好ましくは1:(0.2~0.5):(0.3~0.4)の範囲、より好ましくは1:(0.25~0.45):(0.32~0.35)の範囲、より好ましくは1:(0.3~0.4):(0.33~0.34)の範囲にあり、ここで、1つまたは複数の有機テンプレートは、任意に種結晶に含有される有機テンプレートを含まず、前記1つまたは複数のYO2供給源は、種結晶により供給される量のYO2を含んでいても含んでいなくてもよく、工程(i)において種結晶がB2O3を含む場合、前記1つまたは複数のB2O3供給源は、種結晶中の量のB2O3を含んでいても含んでいなくてもよい。本発明に従えば、1つまたは複数のYO2供給源は、工程(i)において種結晶により混合物に供給される量のYO2を含んでおらず、1つまたは複数のB2O3供給源は、工程(i)における種結晶に含有され得る量のB2O3を含んでいないことが好ましい。
【0040】
原則として、本発明の方法の(i)において調製され得る更なる構成成分に関する制限はないが、(ii)においてホウ素含有ゼオライト材料の層状前駆体を得ることができ、その後、(iii)においてMWW骨格構造を有するホウ素含有ゼオライト材料を得ることができることを条件とする。従って、例えば、本発明の方法に従い、(i)において調製される混合物は、M2O(式中、Mは1つまたは複数のアルカリ金属Mを表す)の1つまたは複数の供給源を含むことが更に好ましい。この点に関して、1つまたは複数のアルカリ金属Mは、好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはLi、Na、Rbおよびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、ここで、より好ましくは前記1つまたは複数のアルカリ金属MはLiおよび/またはNaである。より好ましくは、本発明の方法の(i)において調製される混合物は、1つまたは複数のNa2O供給源を含む。本発明の意味の範囲内において、用語「M2O」は、それ自体で酸化物を指すものではないが、用語「YO2」および「X2O3」(例えばB2O3)がゼオライト材料の骨格構造の構成要素としての前記化合物の存在を表すように、「M2O」は、陰電荷を持つ骨格にイオン結合し、1つまたは複数の更なるカチオン性元素および/または部分との間でイオン交換され得る、骨格外元素としてのMを表す。
【0041】
工程(i)の混合物において1つまたは複数のM2O供給源が準備される場合、Mの種類に関しても、1つまたは複数のM2O供給源が準備され得る量に関しても、特定の制限は適用されない。従って、例えば、(i)において調製される混合物におけるM2O:YO2モル比は、0.0005:1~2:1、好ましくは0.001:1~1:1、より好ましくは0.005:1~0.5:1、より好ましくは0.01:1~0.3:1、より好ましくは0.03:1~0.1:1、より好ましくは0.05:1~0.08:1のどの範囲にあってもよい。より好ましくは、(i)において調製される混合物におけるM2O:YO2モル比は、0.06:1~0.07:1の範囲にある。
【0042】
更に、本発明の方法に従えば、(i)において調製される混合物におけるYO2:B2O3:M2Oモル比は、1:(0.01~1):(0.0005~2)の範囲、好ましくは1:(0.02~0.8):(0.001~1)の範囲、より好ましくは1:(0.05~0.7):(0.005~0.5)の範囲、より好ましくは1:(0.1~0.6):(0.01~0.3)の範囲、より好ましくは1:(0.2~0.5):(0.03~0.1)の範囲、より好ましくは1:(0.25~0.45):(0.05~0.08)の範囲であることが好ましい。より好ましくは、(i)において調製される混合物におけるYO2:B2O3:M2Oモル比は、1:(0.3~0.4):(0.06~0.07)の範囲にある。
【0043】
本発明の方法の好ましい実施態様に従えば、(i)において調製される混合物中の種結晶の量に関しては、何らの制限も適用されない。従って、例えば、(i)において準備される種結晶の量は、1つまたは複数のYO2供給源中のYO2を100質量%として、0.05~25質量%のどの範囲にあってもよく、好ましくは種結晶の量は0.1~20質量%、より好ましくは0.2~15質量%、より好ましくは0.5~12質量%、より好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~7質量%の範囲にある。より好ましくは、(i)において調製される混合物中の種結晶の量は、4~6質量%の範囲にある。
【0044】
工程(ii)
本発明の方法に従えば、工程(i)において得られた混合物は、ホウ素含有MWW型ゼオライト材料の層状前駆体を得るために、工程(ii)において結晶化される。
【0045】
工程(ii)の結晶化手順に関して、前記手順は、工程(i)の混合物の加熱を含むことが好ましく、ここで、任意の好適な温度を用いてもよいが、(ii)においてホウ素含有ゼオライト材料の層状前駆体が得られることを条件とする。従って、例えば、(ii)における結晶化は、80~250℃、好ましくは100~230℃、より好ましくは130~210℃、より好ましくは150~200℃、より好ましくは170~190℃の範囲の温度で実施されてもよい。より好ましくは、工程(ii)の結晶化プロセスは、175~185℃の範囲の温度にて工程(i)の混合物を加熱することを含む。
【0046】
工程(ii)において結晶化を行うことができる圧力に関しては、この場合も、特定の制限は適用されないが、YO2およびB2O3を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料が工程(ii)において得られることを条件とする。従って、例えば、工程(ii)における結晶化は、開放系などでの周囲圧力下で実施してよく、あるいは特に工程(ii)における結晶化が混合物の加熱を含む場合、周囲圧力と比較して上昇した圧力で実施してよい。従って、工程(ii)における結晶化は、YO2およびB2O3を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料を得るために開放系において実施することができ、あるいは結晶化が生じる際の圧力を人工的に高めることによって、かつ/または工程(ii)において結晶化された混合物において混合物の化学的反応および/もしくは物理的加熱により圧力を発生させることによって、周囲圧力と比較して高い圧力で結晶化することができる。従って、本発明の方法に従えば、工程(ii)において混合物は自己圧力下で結晶化することが好ましい。この効果のため、工程(ii)における結晶化は、好ましくは気密容器内で、より好ましくはオートクレーブ内で実施される。
【0047】
工程(ii)の結晶化手順の持続時間に関して、特定の制限はない。ただし、前記手順は、1日~25日、好ましくは3日~20日、より好ましくは5日~18日、より好ましくは7日~15日、より好ましくは9~12日の範囲の時間にわたって実行されることが好ましい。より好ましくは、工程(ii)の結晶化手順は、9.5~10.5日の範囲の時間にわたり実行されることが好ましい。
【0048】
本発明に従えば、工程(ii)の後、かつ工程(iii)の前に、本方法は、
(a)工程(ii)において得られた層状前駆体を、好ましくは濾過により、単離する工程、
(b)工程(a)において得られた層状前駆体を任意に洗浄する工程、
(c)工程(a)または(b)において得られた層状前駆体を任意に乾燥する工程、
(d)任意に、(a)、(b)、または(c)において得られた前記層状前駆体をイオン交換に供する工程、
(e)任意に、(a)、(b)、(c)、または(d)において得られた前記層状前駆体を同形置換に供する工程
を更に含むことが好ましい。
【0049】
本発明の方法の工程(a)において、(ii)において得られた層状前駆体は、濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーション、遠心分離、噴霧乾燥および/またはデカンテーション法などの任意の考えられる手段により単離されてもよく、これらの濾過方法は、吸引および/または加圧濾過工程を含んでもよい。好ましくは、工程(ii)において得られた層状前駆体の単離は、濾過および/または噴霧乾燥により行われ、より好ましくは濾過により行われる。
【0050】
本発明の方法の任意の工程(b)において、層状前駆体の洗浄は、任意の好適な洗浄剤を使用して任意の考えられる手段によって実施してよい。使用してよい洗浄剤は、例えば、水、アルコール、およびこれらのうち2種以上の混合物である。より具体的には、洗浄剤は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、またはこれらのうち2種以上の混合物からなる群から選択されてもよい。混合物の例は、メタノールとエタノール、メタノールとプロパノール、エタノールとプロパノール、もしくはメタノールとエタノールとプロパノールなどの、2種以上のアルコールの混合物、または、水とメタノール、水とエタノール、水とプロパノール、水とメタノールとエタノール、水とメタノールとプロパノール、もしくは水とメタノールとエタノールとプロパノールなどの、水と少なくとも1種のアルコールとの混合物である。より好ましくは、洗浄剤は、水および/または少なくとも1種のアルコールであり、より好ましくは水および/またはエタノールである。更により好ましくは、任意の工程(b)において、洗浄剤は水である。
【0051】
本発明の方法の任意の工程(c)において、層状前駆体の乾燥は、任意の考えられる温度によって実施してもよいが、層状前駆体に含まれる溶媒残留物および/または水分が除去されることを条件とする。従って、前記乾燥手順は基本的に、例えば、工程(a)または(b)において得られた層状前駆体の脱水、凍結乾燥、加熱、および/または減圧のいずれか1つにより実施してよい。
【0052】
好ましい実施態様に従えば、工程(c)における乾燥は、50~250℃、好ましくは80~200℃、より好ましくは100~150℃、より好ましくは110~130℃の範囲の温度まで、層状前駆体を加熱することにより実施される。一般に、任意の工程(c)の乾燥手順は、層状前駆体から溶媒および/または水分を実質的に除去することを可能にする持続時間にわたり実施される。好ましくは、乾燥は、1~48時間、より好ましくは2~24時間、より好ましくは5~16時間の範囲の持続時間にわたり実施される。
【0053】
本発明に従えば、(a)、(b)、または(c)において得られた層状前駆体は、好ましくは、(d)において、H+および/またはNH4
+、好ましくはNH4
+と共に、1つまたは複数のイオン交換手順に供される。(i)において調製された混合物が1つまたは複数のM2O供給源を含む、本発明の特に好ましい実施形態に従えば、本発明の特定のおよび好ましい実施形態のいずれかに従う1つまたは複数のアルカリ金属M、特にNaは、交換可能イオンとして、(a)、(b)、または(c)において得られた層状前駆体に含有され、従って、(d)において、H+および/またはNH4
+、好ましくはNH4
+に対して交換されることが好ましい。
【0054】
(d)における好ましいイオン交換手順に関しては、前記手順が少なくとも1回繰り返されることが更に好ましく、より好ましくは(d)におけるイオン交換手順が、1~5回、好ましくは1~4回、より好ましくは2または3回繰り返されることが更に好ましい。本発明に従えば、(d)において、(a)、(b)、または(c)で得られた層状前駆体のイオン交換手順が2回繰り返されることが特に好ましい。
【0055】
(d)における好ましいイオン交換手順が実行される温度に関しては、この場合も、特定の制限は適用されず、(a)、(b)、または(a)において得られた層状前駆体に含有される交換可能イオンの少なくとも一部が、H+および/またはNH4
+に対して、好ましくはNH4
+に対して交換され得ることを条件とする。従って、例えば、(d)におけるイオン交換手順は、30~160℃の範囲のどの温度で実行されてもよく、(d)におけるイオン交換手順は、好ましくは40~140℃、より好ましくは50~120℃、より好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃、より好ましくは75~85℃の範囲の温度で実行される。
【0056】
本発明に従えば、(d)におけるイオン交換手順は、1つまたは複数の溶媒を含む溶媒系中で行われることが好ましい。この効果のために用いることができる溶媒系に関して、特定の制限は適用されず、原則として、(d)において任意の溶媒系を用いることができるが、(a)、(b)、または(c)において得られた層状前駆体に含有される交換可能イオンの少なくとも一部が、H+および/またはNH4
+に対して、好ましくはNH4
+に対して交換され得ることを条件とする。従って、例えば、溶媒系は、水および/または1つもしくは複数の有機溶媒を含んでもよく、好ましくは、溶媒系に含有される1つまたは複数の溶媒は、水、一価アルコール、多価アルコール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,3,4-テトラオール、ペンタン-1,2,3,4,5-ペントール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される。本発明に従えば、(d)において好ましく用いられる溶媒系は、水を含むことが特に好ましく、より好ましくは、イオン交換手順は、溶媒系としての水中で行われ、より好ましくは脱イオン水中で行われる。
【0057】
イオン交換の持続時間に関しては、本発明に従えば、特定の制限は適用されず、イオン交換は、原則として、任意の好適な持続時間にわたり行われてよいが、(a)、(b)、または(c)において得られた層状前駆体に含有される交換可能イオンの少なくとも一部が、H+および/またはNH4
+に対して、好ましくはNH4
+に対して交換され得ることを条件とする。従って、例えば、(d)におけるイオン交換は、15分~6時間のどの範囲の持続時間にわたって行われてもよく、好ましくは(d)におけるイオン交換は、30分~3時間、より好ましくは45分~1.5時間の範囲の持続時間にわたって行われる。
【0058】
本発明の方法の任意の工程(e)において、(a)、(b)、(c)または(d)において得られた層状前駆体の骨格構造内のホウ素は、1つまたは複数の三価および/または四価元素に対して同形置換される。本発明に従えば、この効果のために用いることができる1つまたは複数の三価および/または四価元素については、特定の制限は適用されず、(a)、(b)、(c)または(d)において得られた層状前駆体の骨格構造内に含有されるホウ素の少なくとも一部が、前記元素の1つまたは複数に対して同形置換されることを条件とする。ただし、本発明の方法に従えば、互いに独立して、1つまたは複数の三価元素が、Al、Ga、In、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択されることが好ましく、1つまたは複数の四価元素が、Ti、Ge、Sn、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。ただし、本発明に従えば、(a)、(b)、(c)または(d)において得られた層状前駆体は、Alおよび/またはTi、好ましくはAlに対して同形置換されることが特に好ましい。
【0059】
任意の工程(e)における同位置換のための、より多くの三価および/または四価元素の1つが本発明の特定のおよび好ましい実施形態に従って用いられる形態に関しては、特定の制限は適用されず、(a)、(b)、(c)または(d)において得られた層状前駆体の骨格構造内に含有されるホウ素の少なくとも一部が、前記元素の1つまたは複数に対して同形置換されることを条件とする。ただし、本発明の方法に従えば、(e)において、同形置換のための1つまたは複数の三価および/または四価元素は、1つまたは複数の塩の形態で、好ましくはハロゲン化物、硫酸塩、亜硫酸塩、水酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、酢酸塩、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1つまたは複数の塩の形態で、供給されることが好ましく、より好ましくは塩化物、臭化物、硫酸塩、水酸化物、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1つまたは複数の塩の形態で、供給されることが好ましい。本発明に従えば、(e)における同形置換のための1つまたは複数の三価および/または四価元素は、それらの硝酸塩の形態で供給されることが特に好ましい。
【0060】
本発明に従えば、(e)における同形置換は、1つまたは複数の溶媒を含む溶媒系中で行われることが好ましい。この効果のために使用され得る溶媒系に関しては、特定の制限は適用されず、原則として、(e)において任意の溶媒系を用いてもよいが、(a)、(b)、(c)または(d)において得られた層状前駆体の骨格構造内に含有されるホウ素の少なくとも一部が、三価および/または四価元素の1つまたは複数に対して同形置換されることを条件とする。従って、例えば、溶媒系は、水および/または1つもしくは複数の有機溶媒を含んでもよく、好ましくは、溶媒系に含有される1つまたは複数の溶媒は、水、一価アルコール、多価アルコール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,3,4-テトラオール、ペンタン-1,2,3,4,5-ペントール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される。本発明に従えば、(e)において好ましく用いられる溶媒系は水を含むことが特に好ましく、より好ましくは、イオン交換手順は、溶媒系としての水中で行われ、より好ましくは脱イオン水中で行われる。
【0061】
(e)における同形置換の持続時間に関しては、本発明に従えば、特定の制限は適用されず、同形置換は、原則として、任意の好適な持続時間にわたり行われてよいが、(a)、(b)、(c)または(d)において得られた層状前駆体の骨格構造内に含有されるホウ素の少なくとも一部が、三価および/または四価元素の1つまたは複数に対して同形置換されることを条件とする。従って、例えば、(e)における同形置換は、0.5~10日のどの範囲の持続時間にわたって行われてもよく、好ましくは(e)における同形置換は、1~8日、より好ましくは2~6日、より好ましくは2.5~5.5日、より好ましくは3~5日、より好ましくは3.5~4.5日の範囲の持続時間にわたって行われる。
【0062】
(e)における同形置換が行われる温度に関しては、この場合も、特定の制限は適用されず、(a)、(b)、(c)または(d)において得られた層状前駆体の骨格構造内に含有されるホウ素の少なくとも一部が、三価および/または四価元素の1つまたは複数に対して同形置換されることを条件とする。従って、例えば、(e)における同形置換は、30~160℃の範囲のどの温度で行われてもよく、好ましくは(e)における同形置換は、50~140℃、より好ましくは70~120℃、より好ましくは90~110℃、より好ましくは95~105℃の範囲の温度で行われる。
【0063】
工程(iii)
本発明の方法に従えば、(ii)において得られた層状前駆体は、MWW骨格構造を有するホウ素含有ゼオライト材料を得るために焼成される。
【0064】
工程(iii)の焼成手順に関して、特定の制限は適用されないが、(iii)においてMWW骨格構造を有するホウ素含有ゼオライト材料が得られることを条件とする。従って、焼成は、任意の好適な条件下で実施してよく、前記プロセスは、好ましくは300~900℃、より好ましくは400~700℃、より好ましくは450~650℃の範囲の温度にて実施される。より好ましくは、工程(iii)における焼成手順は、500~600℃の温度にて実施される。
【0065】
本発明の好ましい実施態様に従えば、本発明の方法は、工程(iii)の後に、1つまたは複数の工程:
(iv)液体溶媒系により、工程(iii)において得られたMWW骨格構造を有するゼオライト材料を脱ホウ素化し、それにより、MWW骨格構造を有する脱ホウ素化ゼオライト材料を得る工程
を更に含んでもよい。
【0066】
本発明の脱ホウ素化手順は、ゼオライト骨格構造に含有されているホウ素原子の少なくとも一部が除去される手順に関する。本発明の意味の範囲内において、脱ホウ素化は、好ましくは、骨格構造内に含有されるホウ素の完全な除去をもたらすのではなく、いずれの場合にも、脱ホウ素化手順の完了後に少なくとも微量のホウ素が骨格中に残るように、ホウ素含有量の減少のみをもたらす。
【0067】
工程(iv)において使用される液体溶媒系は、好ましくは、水、一価アルコール、多価アルコール、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。一価アルコールおよび多価アルコールに関して、特定の制限は存在しない。好ましくは、これらのアルコールは、1~6個の炭素原子、より好ましくは1~5個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子を含む。前記多価アルコールは、好ましくは2~5個のヒドロキシル基、より好ましくは2~4個のヒドロキシル基、好ましくは2~3個のヒドロキシル基を含む。特に好ましい一価アルコールは、メタノール、エタノール、および1-プロパノールおよび2-プロパノールのようなプロパノールである。特に好ましい多価アルコールは、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、プロパン-1,2,3-トリオールである。上記の化合物の2種以上の混合物が用いられる場合、これらの混合物は、水ならびに少なくとも1種の一価アルコールおよび/または少なくとも1種の多価アルコールを含むことが好ましい。更により好ましくは、前記液体溶媒系は水からなる。
【0068】
工程(iv)の脱ホウ素化手順に用いられる液体溶媒系については、特定のおよび好ましい溶媒および溶媒の組み合わせ、特に溶媒系として好ましい水の他に、前記液体溶媒系に含まれ得る更なる構成成分に関する特定の制限は原則として適用されない。ただし、本発明に従えば、前記液体溶媒系は、無機もしくは有機酸またはその塩を含まないことが好ましく、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、および酒石酸からなる群から選択される。本発明に従えば、脱ホウ素化手順に使用される溶媒系は、無機もしくは有機酸またはその塩を含まないことが更に好ましく、ここで、脱ホウ素化手順に用いられる溶媒系は、水からなり、蒸留水中に存在し得る微量の不純物以外に更なる構成成分を含まないことが更により好ましい。
【0069】
工程(iv)の脱ホウ素化手順に用いられる液体溶媒系の量に対するホウ素含有ゼオライトの量に関する限り、特定の制限はない。好ましくは、液体溶媒系に対するMWW骨格構造を有するホウ素含有ゼオライト材料の質量比は、1:5~1:40、より好ましくは1:10~1:30、より好ましくは1:10~1:20の範囲、例えば、1:10~1:15、1:11~1:16、1:12~1:17、1:13~1:18、1:14~1:19、1:15~1:20の範囲にある。
【0070】
工程(iv)における脱ホウ素化手順に関して、前記プロセスは、好ましくは50~125℃、より好ましくは70~120℃、より好ましくは90~115℃、より好ましくは90~110℃、より好ましくは95~105℃の範囲の温度にて実施される。より好ましくは、工程(iv)における脱ホウ素化は、前記溶媒系の沸点にて実施される。前記溶媒系が2種以上の構成成分を含む場合、工程(iv)に従う脱ホウ素化は、好ましくは、最も低い沸点を有する構成成分の沸点にて実施される。本発明の更なる好ましい実施形態に従えば、工程(iv)に従う脱ホウ素化は、還流下にて実施される。従って、工程(iv)に従う脱ホウ素化に使用される好ましい容器は、還流冷却器を備える。工程(iv)における脱ホウ素化手順の実施中に、前記液体溶媒系の温度は、基本的に一定に維持されるか、変更される。より好ましくは、前記温度は基本的に一定に維持される。
【0071】
工程(iv)の脱ホウ素化手順の持続時間に関して、特定の制限はない。好ましくは、前記脱ホウ素化手順は、6~20時間、7~17時間、8~14時間の範囲の時間にわたって実施される。より好ましくは、工程(iv)における脱ホウ素化手順は、9~12時間の範囲の時間にわたって実施される。前記時間は、液体溶媒系が上記の脱ホウ素化温度下にて維持される時間として理解される。
【0072】
原則として、(i)で用いることができる種結晶に対して特定の制限は適用されないが、MWW骨格構造の層状前駆体を得ることが(ii)において得られ、それにより(iii)においてMWW骨格構造を有するゼオライト材料が得られることを条件とする。本発明に従えば、(i)において調製された混合物中の種結晶は、MWW骨格構造を有するゼオライト材料および/またはMWW骨格構造を有するゼオライト材料の層状前駆体を含むことが好ましい。より好ましくは、種結晶は、本発明の方法に従って得られたもしくは得ることができるMWW骨格構造を有するゼオライト材料、および/または本発明の方法の工程(ii)に従って得られたもしくは得ることができる層状前駆体を含む。更により好ましくは、種結晶は、本発明の方法の工程(ii)に従って得られたまたは得ることができる層状前駆体を含む。
【0073】
種結晶が、MWW骨格構造を有するゼオライト材料の層状前駆体を含む、本発明の特定のおよび好ましい実施形態に関しては、本発明に従えば、層状前駆体が、MCM-22(P)、[Ga-Si-O]-MWW(P)、[Ti-Si-O]-MWW(P)、ERB-1(P)、ITQ-1(P)、PSH-3(P)、SSZ-25(P)、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることが更に好ましく、層状前駆体は、より好ましくは、MCM-22(P)、ITQ-1(P)、SSZ-25(P)、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。本発明の方法に従えば、好ましい種結晶の層状前駆体は、MCM-22(P)および/またはSSZ-25(P)、好ましくはMCM-22(P)を含むことが特に好ましく、ここで、より好ましくは、MCM-22(P)は、(i)において調製され(ii)において結晶化される混合物中の種結晶として用いられる。
【0074】
他方、種結晶が、MWW骨格構造を有するゼオライト材料を含む、本発明の特定のおよび好ましい実施形態に関しては、本発明に従えば、ゼオライト材料は、MCM-22、[Ga-Si-O]-MWW、[Ti-Si-O]-MWW、ERB-1、ITQ-1、PSH-3、SSZ-25、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることが更に好ましく、ここで、ゼオライト材料は、より好ましくは、MCM-22、ITQ-1、SSZ-25、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。本発明の方法に従えば、好ましい種結晶のゼオライト材料は、MCM-22および/またはSSZ-25、好ましくはMCM-22を含むことが特に好ましく、ここで、より好ましくは、MCM-22は、(i)において調製され(ii)において結晶化される混合物中の種結晶として用いられる。
【0075】
本発明の意味の範囲内において、特に指示がない限り、「MCM-22」、「ERB-1」、「ITQ-1」、「PSH-3」、および「SSZ-25」としてそれぞれ示される化合物は、それらのAl含有形態、すなわち、Al-MCM-22、Al-ERB-1、Al-ITQ-1、Al-PSH-3、およびAl-SSZ-25をそれぞれ表す。特に指示がない限り、Al含有形態、すなわちAl-MCM-22(P)、Al-ERB-1(P)、Al-ITQ-1(P)、Al-PSH-3(P)、およびAl-SSZ-25(P)をそれぞれ表すそれぞれの層状前駆体に関しても同様である。
【0076】
(i)において調製された混合物が工程(ii)において結晶化に供される状態に関しては、特に制限は適用されないが、YO2およびB2O3を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料が得られ、原則として、この効果のために混合剤の任意の等級を用いることができることを条件とする。ただし、本発明の方法に従えば、1つまたは複数のYO2供給源、1つまたは複数のB2O3供給源、1つまたは複数の有機テンプレート、および種結晶を混合することに加えて、工程(ii)における結晶化の前に混合物を更に均質化することが好ましい。本発明の方法に従えば、前記好ましい均質化は、工程(ii)における結晶化の前の更なる混合工程によって達成され得、ここで、好ましくは、前記追加の混合は、(i)において調製された混合物の粉砕および/または磨砕を含み、より好ましくは、(i)において調製された混合物は、工程(ii)における結晶化の前にそれらを磨砕することによって均質化される。
【0077】
YO2およびB2O3を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料の調製方法に関することに加えて、本発明は更に、YO2およびB2O3を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料に関し、これは、本出願に記載した本発明の方法の特定のおよび好ましい実施形態のいずれかに従って前記材料が得られるからである。更に、本発明はまた、YO2およびB2O3を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料に関し、これは、本明細書に記載した本発明の方法の特定のおよび好ましい実施形態のいずれかに従って、前記材料が得られる、すなわち、それを得ることができるからである。特に、本発明は更に、YO2およびB2O3を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料に関し、これは、前記材料は、本発明の方法により得ることができるが、実際に前記材料が調製されるまたは得られる方法から独立して、本発明の方法により得ることができるYO2およびB2O3を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料は、前記方法によって直接得られた材料に限定されないからである。
【0078】
本発明のホウ素含有合成ゼオライト材料については、それらの化学的および物理的性質に関して特定の制限は適用されないが、本出願に規定された本発明の特定のまたは好ましい実施形態のいずれかに従って当該材料が得られることを条件とする。上記のことは本発明の材料の構造に関しても適用され、この点に関して特定の制限は適用されないが、当該材料がMWW骨格構造を示すことを条件とする。
【0079】
用途
本発明は更に、前述のMWW骨格構造を有するホウ素含有ゼオライト材料を使用する方法に関する。
【0080】
原則として、本発明の材料は、任意の好適な用途に用いることができる。従って、例えば、本発明の特定のおよび好ましい実施形態のいずれかに従うホウ素含有合成ゼオライト材料は、更なる構造改質のための前駆体として、触媒として、触媒担体として、吸着剤として、充填剤として、および/またはモレキュラーシーブとして用いることができる。好ましくは、本発明のゼオライト材料は、モレキュラーシーブとして使用され、より好ましくはイオン交換および/または気体もしくは液体混合物の分離のために吸着剤として使用され、より好ましくは炭化水素転化、脱水、エポキシ化、エポキシド開環、エーテル化、エステル化、アンモ酸化、またはディーゼル酸化触媒のために、より好ましくは異性化、アルキル化、またはエポキシ化のために、触媒として、および/または触媒構成成分として使用される。本発明に従えば、MWW骨格構造を有するゼオライト材料は、エポキシ化またはアルキル化、より好ましくはエポキシ化のための触媒として使用されることが特に好ましい。本発明に従えば、更に、本発明の方法の特定のおよび好ましい実施形態のいずれかに従って、得ることができるおよび/または得られた、MWW骨格構造を有するゼオライト材料は、プロピレンをプロピレンオキシドにエポキシ化するための触媒として使用されることが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】実施例1から得られた層状前駆体B-MWW(P)のXRD(X線回折)パターン、および層状前駆体の焼成後に実施例2から得られたB-MWW材料のXRD(X線回折)パターンを示す。
【
図2】実施例1から得られた層状前駆体B-MWW(P)の
29Si MAS NMRを示す。
【
図3】実施例1から得られた層状前駆体B-MWW(P)の
11B 2D 3QMAS NMRを示す。
【
図4】実施例2から得られたB-MWWゼオライト材料の
29Si MAS NMRを示す。
【
図5】実施例2から得られたB-MWWゼオライト材料の
11B 2D 3QMAS NMRを示す。
【
図6】実施例3から得られた、同形置換された層状前駆体[Al、B]-MCM-22(P)のXRD(X線回折)パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明は、以下の好ましい実施形態によって更に特徴付けられる。これらはそれぞれの従属関係によって示される実施形態の組み合わせを含む。
【0083】
1.YO2およびB2O3(式中、Yは四価元素を表す)を含むMWW骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法であって、
(i)1つまたは複数のYO2供給源、1つまたは複数のB2O3供給源、1つまたは複数の有機テンプレート、および種結晶を含む混合物を調製する工程、
(ii)(i)において得られた前記混合物を結晶化して、前記MWW骨格構造の層状前駆体を得る工程、
(iii)(ii)において得られた前記層状前駆体を焼成して、MWW骨格構造を有する前記ゼオライト材料を得る工程
を含み、ここで、前記1つまたは複数の有機テンプレートは、式(I)
R1R2R3N (I)
(式中、R1は(C5~C8)シクロアルキルであり、
式中、R2およびR3は互いに独立してHまたはアルキルである)
を有し、
ここで、(i)において調製され(ii)において結晶化された混合物は、(i)において調製され(ii)において結晶化された混合物中に含有されているYO2を100質量%として、35質量%以下のH2Oを含み、YO2を100質量%として、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、より好ましくは25質量%以下、より好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下のH2Oを含む、
方法。
【0084】
2.(i)において調製され(ii)において結晶化された混合物が、元素として計算しYO2を100質量%として、5質量%以下のフッ化物を含有し、元素として計算しYO2を100質量%として、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下またはフッ化物を含む、実施形態1に記載の方法。
【0085】
3.(i)において調製され(ii)において結晶化された混合物が、それぞれの元素として計算しYO2を100質量%として、5質量%以下のPおよび/またはAlを含有し、それぞれの元素として計算しYO2を100質量%として、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下のPおよび/またはAlを含有する、実施形態1または2に記載の方法。
【0086】
4.(ii)において得られる層状前駆体が、B-MCM-22(P)、B-ERB-1(P)、B-ITQ-1(P)、B-PSH-3(P)、B-SSZ-25(P)、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは、B-MCM-22(P)、B-ITQ-1(P)、B-SSZ-25(P)、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ここで、より好ましくは、層状前駆体は、B-MCM-22(P)および/またはB-SSZ-25(P)、好ましくはB-MCM-22(P)を含み、より好ましくは、(ii)において得られる層状前駆体は、B-MCM-22(P)である、実施形態1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
5.(iii)において得られるMWW骨格構造を有するゼオライト材料が、B-MCM-22、B-ERB-1、B-ITQ-1、B-PSH-3、B-SSZ-25、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは、B-MCM-22、B-ITQ-1、B-SSZ-25、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ここで、より好ましくは、MWW骨格構造を有するゼオライト材料は、B-MCM-22および/またはB-SSZ-25、好ましくはB-MCM-22を含み、より好ましくは、(iii)において得られるMWW骨格構造を有するゼオライト材料は、B-MCM-22である、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0088】
6.YがSi、Sn、Ti、Zr、Geおよびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、Yは好ましくはSiおよび/またはTiであり、より好ましくはYはSiである、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
7.1つまたは複数のYO2供給源が、シリカ、シリケート、ケイ酸、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、シリカ、アルカリ金属シリケート、ケイ酸、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、ヒュームドシリカ、コロイド状シリカ、反応性非晶質固体シリカ、シリカゲル、焼成シリカ、リチウムシリケート、ナトリウムシリケート、カリウムシリケート、ケイ酸、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、ヒュームドシリカ、シリカゲル、焼成シリカ、ナトリウムシリケート、ケイ酸、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、ヒュームドシリカ、シリカゲル、焼成シリカ、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、1つまたは複数の化合物を含み、ここで、より好ましくは、1つまたは複数のYO2供給源は、シリカゲル、好ましくは式SiO2・xH2O(式中、xは0.1~1.165、好ましくは0.3~1.155、より好ましくは0.5~1.15、より好ましくは0.8~1.13、より好ましくは1~1.1の範囲にある)のシリカゲルである、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
8.R1が、置換および/または非置換シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルからなる群から選択され、より好ましくは置換および/または非置換シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルからなる群から選択され、ここで、より好ましくは、R1は、置換または非置換シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、より好ましくは置換または非置換シクロヘキシルであり、より好ましくは非置換シクロヘキシルである、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
9.R2およびR3が、互いに独立してHまたは(C1~C3)アルキルであり、より好ましくは、R2およびR3は、互いに独立して、H、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選択され、より好ましくはR2およびR3はHである、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
10.前記種結晶がYO2およびX2O3を含み、式中、Xは三価元素であり、Xは、互いに独立して、好ましくはAl、B、In、Ga、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、Xは、より好ましくはAlおよび/またはBであり、より好ましくはXは、Alであり、Yは、好ましくはSi、Sn、Ti、Zr、Geおよびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、Yは、より好ましくはSiおよび/またはTiであり、より好ましくはYは、Siである、実施形態1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0093】
11.前記1つまたは複数のB2O3供給源が、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸塩、ホウ酸エステル、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、好ましくはホウ酸、酸化ホウ素、オルトホウ酸塩、ジホウ酸塩、トリホウ酸塩、テトラホウ酸塩、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、ここで、より好ましくは、前記1つまたは複数のB2O3供給源は、酸化ホウ素および/またはホウ酸であり、より好ましくはホウ酸である、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
12.(i)において調製された混合物中の1つまたは複数のYO2供給源と1つまたは複数のB2O3供給源のYO2:B2O3のモル比が、1:1~100:1、好ましくは1.2:1~50:1、より好ましくは1.5:1~20:1、より好ましくは1.8:1~10:1、より好ましくは2:1~5:1、より好ましくは2.2:1~4:1、より好ましくは2.5:1~3.5:1の範囲にある、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
13.前記1つまたは複数の有機テンプレートが、置換および/または非置換(C5~C8)シクロアルキルアミンからなる群から選択され、好ましくは、置換および/または非置換シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミン、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、ここで、より好ましくは前記1つまたは複数の有機テンプレートは、置換および/または非置換シクロヘキシルアミンおよび/またはシクロヘプチルアミンであり、より好ましくは非置換シクロヘキシルアミンである、実施形態1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0096】
14.前記種結晶に任意に含有される有機テンプレートを除き、(i)において調製される前記混合物が、ピペリジンまたはヘキサメチレンイミンを含有せず、好ましくはピペリジンおよびヘキサメチレンイミンを含有せず、より好ましくは式(I)に従う前記1つまたは複数の有機テンプレート以外に(C4~C7)アルキレンイミンおよび(C5~C8)アルキルアミンを含有せず、より好ましくは式(I)に従う前記1つまたは複数の有機テンプレート以外にアルキレンイミンおよびアルキルアミンを含有しない、実施形態1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
15.(i)において調製される混合物中の前記1つまたは複数の有機テンプレートと前記1つまたは複数のYO2供給源の有機テンプレート:YO2モル比が、0.05:1~3:1、好ましくは0.1:1~1.5:1、より好ましくは0.2:1~0.8:1、より好ましくは0.25:1~0.5:1、より好ましくは0.3:1~0.4:1、より好ましくは0.32:1~0.35:1、より好ましくは0.33:1~0.34:1の範囲にあり、ここで、前記1つまたは複数の有機テンプレートは、種結晶に任意に含有された有機テンプレートを含まない、実施形態1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0098】
16.(i)において調製される混合物中の前記1つまたは複数のYO2供給源と前記1つまたは複数のB2O3供給源と前記1つまたは複数の有機テンプレートにおけるYO2:B2O3:有機テンプレートのモル比は、1:(0.01~1):(0.05~3)の範囲、好ましくは1:(0.02~0.8):(0.1~1.5)の範囲、より好ましくは1:(0.05~0.7):(0.2~0.8)の範囲、より好ましくは1:(0.1~0.6):(0.25~0.5)の範囲、より好ましくは1:(0.2~0.5):(0.3~0.4)の範囲、より好ましくは1:(0.25~0.45):(0.32~0.35)の範囲、より好ましくは1:(0.3~0.4):(0.33~0.34)の範囲にあり、ここで、前記1つまたは複数の有機テンプレートは、前記種結晶に任意に含有された有機テンプレートを含まない、実施形態1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0099】
17.(i)において調製される前記混合物が、1つまたは複数のM2O供給源を含み、式中、Mは1つまたは複数のアルカリ金属Mを表し、ここで、前記1つまたは複数のアルカリ金属Mは、好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはLi、Na、Rbおよびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、ここで、より好ましくは前記1つまたは複数のアルカリ金属MはLiおよび/またはNaであり、より好ましくはNaである、実施形態1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0100】
18.(i)において調製される前記混合物のM2O:YO2モル比が、0.0005:1~2:1、好ましくは0.001:1~1:1、より好ましくは0.005:1~0.5:1、より好ましくは0.01:1~0.3:1、より好ましくは0.03:1~0.1:1、より好ましくは0.05:1~0.08:1、より好ましくは0.06:1~0.07:1の範囲にある、実施形態17に記載の方法。
【0101】
19.(i)において調製される前記混合物のYO2:B2O3:M2Oモル比が、1:(0.01~1):(0.0005~2)、好ましくは1:(0.02~0.8):(0.001~1)の範囲、より好ましくは1:(0.05~0.7):(0.005~0.5)の範囲、より好ましくは1:(0.1~0.6):(0.01~0.3)の範囲、より好ましくは1:(0.2~0.5):(0.03~0.1)の範囲、より好ましくは1:(0.25~0.45):(0.05~0.08)の範囲、より好ましくは1:(0.3~0.4):(0.06~0.07)の範囲にある、実施形態17または18に記載の方法。
【0102】
20.(i)において調製される前記混合物中の種結晶の量が、前記1つまたは複数のYO2供給源中のYO2を100質量%として、0.05~25質量%、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.2~15質量%、より好ましくは0.5~12質量%、より好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~7質量%、より好ましくは4~6質量%の範囲にある、実施形態1~19のいずれか一項に記載の方法。
【0103】
21.(ii)における前記結晶化が、好ましくは80~250℃、好ましくは100~230℃、より好ましくは130~210℃、より好ましくは150~200℃、より好ましくは170~190℃、より好ましくは175~185℃の範囲の温度における前記混合物の加熱を含む、実施形態1~20のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
22.(ii)における前記結晶化が、自己圧力下にて実施され、ここで、(ii)における結晶化が、好ましくは気密容器内で、より好ましくはオートクレーブ内で実施される、実施形態1~21のいずれか一項に記載の方法。
【0105】
23.(ii)における前記結晶化が、1~25日、好ましくは3~20日、より好ましくは5~18日、より好ましくは7~15日、より好ましくは9~12日、より好ましくは9.5~10.5日の範囲の期間にわたって実施される、実施形態1~22のいずれか一項に記載の方法。
【0106】
24.(ii)の後、かつ(iii)の前に、
(a)好ましくは濾過により、(ii)において得られた前記層状前駆体を単離する工程、
(b)(a)において得られた前記層状前駆体を任意に洗浄する工程、
(c)(a)または(b)において得られた前記層状前駆体を任意に乾燥させる工程、
(d)任意に、(a)、(b)、または(c)において得られた前記層状前駆体をイオン交換に供する工程、
(e)任意に、(a)、(b)、(c)、または(d)において得られた前記層状前駆体を同形置換に供する工程
を更に含む、実施形態1~23のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
25.(d)において、(a)、(b)、または(c)で得られた前記層状前駆体が、H+および/またはNH4
+、好ましくはNH4
+と共に、1つまたは複数のイオン交換手順に供される、実施形態24に記載の方法。
【0108】
26.(d)において、前記イオン交換手順が、1~5回、好ましくは1~4回、より好ましくは2または3回繰り返され、ここで、より好ましくは、前記イオン交換手順が2回繰り返される、実施形態24または25に記載の方法。
【0109】
27.(d)において、前記イオン交換手順が、好ましくは30~160℃、より好ましくは40~140℃、より好ましくは50~120℃、より好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃、より好ましくは75~85℃の範囲の温度で実行される、実施形態24~26のいずれか一項に記載の方法。
【0110】
28.(d)において、前記イオン交換手順が、1つまたは複数の溶媒を含む溶媒系中で行われ、ここで、前記1つまたは複数の溶媒が、好ましくは水および/または1つもしくは複数の有機溶媒を含み、より好ましくは、水、一価アルコール、多価アルコール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,3,4-テトラオール、ペンタン-1,2,3,4,5-ペントール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、1つまたは複数の溶媒を含み、より好ましくは前記1つまたは複数の溶媒が水を含み、ここで、より好ましくは、前記イオン交換手順は、溶媒系としての水中で行われ、より好ましくは脱イオン水中で行われる、実施形態24~27のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
29.(d)において、前記イオン交換が、15分~6時間、好ましくは30分~3時間、より好ましくは45分~1.5時間の範囲の持続時間にわたって行われる、実施形態24~28のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
30.(e)において、(a)、(b)、(c)、または(d)において得られた前記層状前駆体の前記骨格構造内のホウ素が、1つまたは複数の三価および/または四価元素に対して同形置換され、ここで、互いに独立して、前記1つまたは複数の三価元素は、好ましくはAl、Ga、In、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、前記1つまたは複数の四価元素は、好ましくはTi、Ge、Sn、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、ここで、より好ましくは(a)、(b)、(c)、または(d)において得られた前記層状前駆体が、Alおよび/またはTi、好ましくはAlに対して同形置換される、実施形態24~29のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
31.(e)において、同形置換のための1つまたは複数の三価および/または四価元素が、1つまたは複数の塩の形態で、好ましくは、ハロゲン化物、硫酸塩、亜硫酸塩、水酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、酢酸塩、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1つまたは複数の塩の形態で、より好ましくは塩化物、臭化物、硫酸塩、水酸化物、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1つまたは複数の塩の形態で供給され、ここで、より好ましくは、同形置換のための前記1つまたは複数の三価および/または四価元素は、それらの硝酸塩の形態で供給される、実施形態24~30のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
32.(e)において、同形置換が、1つまたは複数の溶媒を含む溶媒系中で行われ、ここで、前記1つまたは複数の溶媒が、好ましくは水および/または1つもしくは複数の有機溶媒を含み、より好ましくは、水、一価アルコール、多価アルコール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,3,4-テトラオール、ペンタン-1,2,3,4,5-ペントール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、1つまたは複数の溶媒を含み、より好ましくは前記1つまたは複数の溶媒が水を含み、ここで、より好ましくは、前記同形置換は、溶媒系としての水中で行われ、より好ましくは脱イオン水中で行われる、実施形態24~31のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
33.(e)において、同形置換が、0.5~10日、より好ましくは1~8日、より好ましくは2~6日、より好ましくは2.5~5.5日、より好ましくは3~5日、より好ましくは3.5~4.5日の範囲の持続時間にわたって行われる、実施形態24~32のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
34.(d)において、前記イオン交換手順が、30~160℃、好ましくは50~140℃、より好ましくは70~120℃、より好ましくは90~110℃、より好ましくは95~105℃の範囲の温度で実行される、実施形態24~33のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
35.実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法であって、(iii)における前記焼成が、300~900℃、より好ましくは400~700℃、より好ましくは450~650℃、より好ましくは500~600℃の範囲の温度にて実施される、方法。
【0118】
36.工程(iii)の後に、
(iv)(iii)において得られた前記MWW骨格構造を有するゼオライト材料を液体溶媒系により脱ホウ素化し、それにより、MWW骨格構造を有する脱ホウ素化ゼオライト材料を得る工程
を更に含む、実施形態1~35のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
37.(iv)における前記液体溶媒系が、水、一価アルコール、多価アルコール、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ここで、前記液体溶媒系は、無機もしくは有機酸またはその塩を含まず、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、および酒石酸からなる群から選択される、実施形態36に記載の方法。
【0120】
38.(iv)における前記脱ホウ素化が、50~125℃、好ましくは70~120℃、より好ましくは90~115℃、より好ましくは90~110℃の範囲の温度にて実施される、実施形態36または37に記載の方法。
【0121】
39.(iv)における前記脱ホウ素化が、6~20時間、好ましくは7~17時間、より好ましくは8~14時間、より好ましくは9~12時間の範囲の時間にわたって実施される、実施形態36~38のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
40.前記種結晶が、MWW骨格構造を有するゼオライト材料の層状前駆体を含み、
ここで、前記層状前駆体は、好ましくは、MCM-22(P)、[Ga-Si-O]-MWW(P)、[Ti-Si-O]-MWW(P)、ERB-1(P)、ITQ-1(P)、PSH-3(P)、SSZ-25(P)、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、
前記層状前駆体は、より好ましくは、MCM-22(P)、ITQ-1(P)、SSZ-25(P)、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、
前記層状前駆体は、より好ましくは、MCM-22(P)および/またはSSZ-25(P)、好ましくはMCM-22(P)を含み、ここで、より好ましくはMCM-22(P)は、(i)において調製され(ii)において結晶化される前記混合物中の種結晶として用いられる、
実施形態1~39のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
41.前記種結晶が、MWW骨格構造を有するゼオライト材料を含み、ここで、前記ゼオライト材料は、好ましくは、MCM-22、[Ga-Si-O]-MWW、[Ti-Si-O]-MWW、ERB-1、ITQ-1、PSH-3、SSZ-25、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、
ここで、前記ゼオライト材料は、より好ましくは、MCM-22、ITQ-1、SSZ-25、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、
より好ましくは、前記ゼオライト材料は、MCM-22および/またはSSZ-25、好ましくはMCM-22を含み、ここで、より好ましくは、MCM-22は、(i)において調製され(ii)において結晶化される混合物中の種結晶として用いられる、
実施形態1~40のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
42.(i)における前記混合物の調製後、かつ(ii)における結晶化の前に、前記混合物が、好ましくは混合によって均質化され、より好ましくは(i)において調製された前記混合物の粉砕および/または磨砕によって、より好ましくは磨砕によって、均質化される、実施形態1~41のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
43.前記種結晶が、実施形態1~42のいずれか一項に記載の方法の(ii)において得られたおよび/または得ることができる、MWW骨格構造を有するゼオライト材料の層状前駆体を含む、実施形態1~42のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
44.前記種結晶が、実施形態1~42のいずれか一項に記載の方法により得られたおよび/または得ることができる、MWW骨格構造を有するゼオライト材料を含む、実施形態1~43のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
45.実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法に従って得ることができるおよび/または得られたMWW骨格構造を有する合成ゼオライト材料。
【0128】
46.実施形態45に従うMWW骨格構造を有する合成ゼオライト材料を、モレキュラーシーブとして使用し、好ましくはイオン交換および/または気体もしくは液体混合物の分離のために吸着剤として使用し、好ましくは炭化水素転化、脱水、エポキシ化、エポキシド開環、エーテル化、エステル化、アンモ酸化、またはディーゼル酸化触媒のために、より好ましくは異性化、アルキル化、またはエポキシ化のための触媒としておよび/または触媒構成成分として使用する方法であって、より好ましくは、MWW骨格構造を有する前記ゼオライト材料を、エポキシ化またはアルキル化のための触媒として、好ましくはエポキシ化のための、より好ましくはプロピレンをプロピレンオキシドにエポキシ化するための触媒として使用する方法。
【0129】
[
図1]実施例1から得られた層状前駆体B-MWW(P)のXRD(X線回折)パターン(下の回折パターン参照)、および層状前駆体の焼成後に実施例2から得られたB-MWW材料のXRD(X線回折)パターン(上の回折パターン参照)を示す。図中には、横座標に沿って回折角度2θ(度)が示され、縦座標に沿って相対強度が任意単位でプロットされている。
[
図2]実施例1から得られた層状前駆体B-MWW(P)の
29Si MAS NMRを示す。図中には、横座標に沿って化学シフト(ppm)がプロットされ、縦座標に沿って相対強度が任意単位でプロットされている。
[
図3]実施例1から得られた層状前駆体B-MWW(P)の
11B 2D 3QMAS NMRを示す。図中には、図の右側の縦座標に沿って等方性化学シフト(ppm)がプロットされ、その反対側の縦座標に一次元等方性スペクトルが表示されている。図は、図の上側に沿って二次四重極スペクトルを更に表示し、その反対側の横座標に沿ってそれぞれの化学シフト(ppm)がプロットされている。それぞれのスペクトルの相対強度は任意単位で表示されている。
[
図4]実施例2から得られたB-MWWゼオライト材料の
29Si MAS NMRを示す。図中には、横座標に沿って化学シフト(ppm)がプロットされ、縦座標に沿って相対強度が任意単位でプロットされている。
[
図5]実施例2から得られたB-MWWゼオライト材料の
11B 2D 3QMAS NMRを示す。図中には、図の右側の縦座標に沿って等方性化学シフト(ppm)がプロットされ、その反対側の縦座標に一次元等方性スペクトルが表示されている。図は、図の上側に沿って二次四重極スペクトルを更に表示し、その反対側の横座標に沿ってそれぞれの化学シフト(ppm)がプロットされている。それぞれのスペクトルの相対強度は任意単位で表示されている。
[
図6]実施例3から得られた、同形置換された層状前駆体[Al、B]-MCM-22(P)のXRD(X線回折)パターンを示す。図中には、横座標に沿って回折角度2θ(度)が示され、縦座標に沿って相対強度が任意単位でプロットされている。
【実施例】
【0130】
2θにより3°~40°の範囲のCuKα(λ=1.5406Å)放射線を使用するRigaku Ultimate VI X線回折計(40kV、40mA)を備えたX線粉末回折(XRD)により、試料の結晶化度および相純度を決定した。
【0131】
Micromeritics ASAP 2010MおよびTristarシステムを用いて、BET表面積を決定するためのアルゴン収着等温線を求めた。
【0132】
固体29Si MAS NMRスペクトルを、Varian Infinity plus 400分光計で記録した。
【0133】
11B 2D 3QMAS NMR実験を、Bruker Infinity Plus 500分光計で記録した。
【0134】
Perkin-Elmer 3300DV発光分光計を用いた誘導結合プラズマ(ICP)により、試料の元素組成を決定した。
【0135】
参考例1:種結晶として使用する層状前駆体Al-MWW(P)の調製
10.40gのNaAlO2(43質量%のNa2O、53質量%のAl2O3)および6.0gのNaOHを、2.5Lガラスビーカー内の1239.4gの脱イオン水中に溶解させた。次いで、この溶液に、259gのLudox AS40(40質量%のSiO2)および 85.60gのヘキサメチレンイミンを添加した。得られたゲルは、SiO240.28:Al2O31.26:Na2O3.43:H2O1606:ヘキサメチレンイミン20.13のモル組成を有する。前記ゲルを2.5Lオートクレーブに移し、回転速度100rpmにて1時間かけて150℃まで加熱した。次いで、150℃にて168時間にわたり結晶化が実施された。
【0136】
結晶化プロセスの後、HNO3溶液により白色懸濁液を調整し、pHを約6.0にした。次いで、前記懸濁液を濾過し、脱イオン水で洗浄した。固体Al-MWW(P)生成物を、120℃にて16時間乾燥させた。
【0137】
[実施例1]
種結晶としてAl-MWW(P)を使用した層状前駆体B-MWW(P)の調製
0.12gのNaOH、0.88gのオルトホウ酸(H3BO3)、1.72gの固体シリカゲル(Qingdao Haiyang Chemical Reagent Co,Ltd.から入手したSiO2・1.16H2O)、参考例1から得た0.065gのAl-MCM-22(P)種結晶を、一緒に混合した。5分間粉砕した後、0.72gのシクロヘキシルアミンを添加し、得られた混合物を更に5分間粉砕して、0.0665のNa2O:1の(SiO2・1.16H2O):0.328のB2O3:0.335のシクロヘキシルアミン(100質量%のSiO2として、5質量%の種結晶を含む)のモル組成を有するゲルを得た。次いで、粉末混合物をオートクレーブに移して密閉した。180℃で10日間加熱した後、層状前駆体B-MWW(P)を得るために、結晶化生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄し、100℃にて4時間乾燥させた。
【0138】
図1は得られた材料のXRDを示しており(図に表示されている下のディフラクトグラムを参照)、このXRDから前記生成物がMWW骨格構造の層状前駆体の構造を有することは明らかである。
【0139】
得られた生成物のSi:Bモル比は、ICP分析による測定では、6.7である。
【0140】
図2は層状前駆体B-MWW(P)の
29Si MAS NMRを示す。スペクトルにおいて、-109~-119ppmにおけるB-MCM-22(P)のピークはSi(4Si)種に帰属し、約-102.8ppmにおけるピークはSi(3Si、1B)および/またはSi(3Si、1OH)に帰属する。
【0141】
図3は層状前駆体B-MWW(P)の
11B 2D 3QMAS NMRを示す。2D 3QMASスペクトルを剪定し、F1軸が等方性化学シフト次元となり、F2軸が二次四重極線形状を含むようにした。二次元等高線から、2つの異なるBサイト:骨格内の四配位ホウ素から生じるB[4]種と三方晶配位の骨格外ホウ素から生じるB[3]種が存在することが明らかになった。
【0142】
[実施例2]
層状前駆体からのB-MWWの調製
実施例1から得られた1gの層状前駆体B-MWW(P)を1MのNH4NO3溶液50mLに入れ、溶液を1時間にわたり80℃に加熱し、その後、固体生成物を単離した。この操作を2回繰り返した。次いで、B-MWWゼオライト材料を得るために、固体生成物を550℃にて5時間焼成した。
【0143】
図1は得られた材料のXRDを示しており(図に表示されている上のディフラクトグラムを参照)、このXRDから前記生成物がMWW骨格構造を有することは明らかである。
【0144】
B-MWW生成物のBET比表面積は、391m2/gであると決定された。
【0145】
図4はB-MWW生成物の
29Si MAS NMRを示し、ここでピークは全てSi(4 Si)種に帰属する。特に、層状前駆体のスペクトルと比較して、層状前駆体についてSi(3Si、1B)および/またはSi(3Si、1OH)に帰属する約-102.5ppmにおけるピークは、焼成後に-105.2ppmにシフトし、このことは、前駆体材料の層間のヒドロキシルの縮合により、前駆体の層間のSi(3Si、1OH)種がB-MWW生成物中でSi(4Si)種になることを示している。
【0146】
図5はB-MWW生成物の
11B 2D 3QMAS NMRを示す。2D 3QMASスペクトルを再度剪定し、F1軸が等方性化学シフト次元となり、F2軸が二次四重極ライン形状を含むようにした。焼成時に得られたB-MWWゼオライトの「剪定された」二次元
11B MQ-MASスペクトルは、四面体(B
TET)、変形四面体(B
D.TET)および八面体配位(B
OCT)環境におけるホウ素に帰属する、3つの異なるホウ素信号の存在を明らかに示し、ここで、共鳴について計算された等方性
11B化学シフトは、約-4.4(B
OCT)、13.3(B
D.TET)、および19.0(B
TET)ppmである。この結果は、550℃での焼成時に脱ホウ素化がある程度まで生じたことを明らかに示している。
【0147】
[実施例3]
AlによるB-MWWの層状前駆体の同形置換
実施例1から得た0.2gの層状前駆体B-MWW(P)を、0.15MのAl(NO3)3溶液20gに入れ、次に、アルミニウムに対してホウ素を同形置換するために、この溶液を4日間にわたり100℃に加熱した。次いで、固体を単離して、同形置換された層状前駆体[AI、B]-MCM-22(P)を得た。それぞれICP分析による測定では、得られた生成物のSi:Alモル比は10.3であり、Si:Bモル比は30.7であった。
【0148】
図6は得られた材料のXRDを示しており、このXRDから前記生成物がMWW骨格構造の層状前駆体の構造を有することは明らかである。
【0149】
引用文献:
- M.E.Leonowiczら、Science、vol.264(1994)、1910~1913ページ
- 米国特許第5,107,047号
- 米国特許第4,992,615号
- 米国特許第4,954,325A号
- 米国特許第5,173,281A号
- 米国特許第5,284,643A号
- WO2015/185633A
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