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特許7055871伝導性濃縮樹脂組成物、伝導性ポリアミド樹脂組成物、その製造方法及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】伝導性濃縮樹脂組成物、伝導性ポリアミド樹脂組成物、その製造方法及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20220411BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220411BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20220411BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220411BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20220411BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220411BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/04
C08K3/34
C08L101/00
C08K7/02
C08L23/26
C08L23/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020528165
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 KR2019015134
(87)【国際公開番号】W WO2020096400
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-05-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0136373
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、キ-テ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミンス
(72)【発明者】
【氏名】イ、オン-ソク
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0090040(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0108976(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0070912(KR,A)
【文献】特表2010-514883(JP,A)
【文献】特開2013-000913(JP,A)
【文献】特表2005-508425(JP,A)
【文献】特開2004-143238(JP,A)
【文献】特開2004-143236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08,
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝導性濃縮樹脂組成物5~20重量%と;
ポリアミド樹脂35~65重量%と;
ポリ(アリーレンオキシド)樹脂0~40重量%と;
衝撃補強剤0~15重量%と;
極性重合体1~15重量%と;
非極性重合体1~20重量%と;
無機充填剤0~35重量%と;
を含む、伝導性ポリアミド樹脂組成物であって、
前記伝導性濃縮樹脂組成物が、
(a)ポリアミド樹脂50~95重量%、極性重合体2.5~20重量%及び非極性重合体2.5~30重量%を含むベース樹脂100重量部と;
(b)ナノカーボンフィブリル10~40重量部と;
(c)ナノカーボンプレート0.5~5重量部と;
(d)ナノシリケート0.5~4重量部と;
を含む、伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記伝導性濃縮樹脂組成物および前記伝導性ポリアミド樹脂組成物中の前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD6、ポリアミド6/MXD6、ポリアミド66/MXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド9T、ポリアミド9I、ポリアミド6/9T、ポリアミド6/9I、ポリアミド66/9T、ポリアミド6/12/9T、ポリアミド66/12/9T、ポリアミド6/12/9I及びポリアミド66/12/6Iからなる群から選択された1つ以上を含む、請求項1に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記伝導性濃縮樹脂組成物および前記伝導性ポリアミド樹脂組成物中の前記極性重合体は、極性基を含むオレフィンブロック共重合体であり、
前記伝導性濃縮樹脂組成物および前記伝導性ポリアミド樹脂組成物中の前記非極性重合体は、極性基を有していないオレフィンブロック共重合体である、請求項1または2に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記極性基はカルボキシ基である、請求項3に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記伝導性濃縮樹脂組成物および前記伝導性ポリアミド樹脂組成物中の前記極性重合体は、極性基を有する単量体を0.5~4重量%含む重合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記ナノカーボンフィブリルは、BET表面積が180~600m2/gである、請求項1~5のいずれか一項に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
前記ナノカーボンプレートは、平均厚さが2~50nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
前記衝撃補強剤は、芳香族ビニル系エラストマー及びオレフィン系エラストマーからなる群から選択された1つ以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
前記芳香族ビニル系エラストマーは、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)、スチレン-イソプレン共重合体(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、α-メチルスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン共重合体)-スチレン共重合体、及びこれらの変性重合体から選択された1つ以上である、請求項8に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
前記オレフィン系エラストマーは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、及びこれらの変性重合体から選択された1つ以上である、請求項8または9に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、ウォラストナイト、硫酸バリウム、炭酸バリウム及びシリカからなる群から選択された1つ以上を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項12】
前記伝導性ポリアミド樹脂組成物は、水分吸収率が1.5%以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の伝導性ポリアミド樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2018年11月8日付の韓国特許出願第10-2018-0136373号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、伝導性濃縮樹脂組成物、それを含む伝導性ポリアミド樹脂組成物、その製造方法及び成形品に関し、より詳細には、導電性材料の分散安定性を改善して機械的強度及び伝導性を高く維持させ、ナノシリケートを含むことで耐熱性及び表面特性を改善し、極性重合体と非極性重合体とを一定の重量比率で含めることで水分安定性を格段に高めた、伝導性濃縮樹脂組成物、それを含む伝導性ポリアミド樹脂組成物、それらの製造方法及び成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
エンジニアリングプラスチックの一種であるポリアミド樹脂は、機械的強度、加工性、耐久性、耐薬品性、耐候性などに優れるという利点があり、このような利点により、エンジン部品や自動車外装材、電気電子部品、産業材などの広範囲な分野に適用されてきた。
【0004】
これに加え、耐熱性、電気的特性、水分安定性などの物性を確保するために、ポリアミド樹脂に他の樹脂成分、一例としてポリフェニレンエーテル樹脂をアロイして使用する技術が開発されてきた。
【0005】
一方、前記のようなポリアミド/ポリフェニレンエーテルアロイ樹脂組成物を静電塗装処理などが要求される製品に適用するために、カーボンブラックのような伝導性フィラーを配合して使用しているが、伝導性フィラー成分は高価であり、取り扱いが難しく、繊維状フィラーを使用する場合、成形性などが低下するという問題があり、当業界で要求されるレベルの伝導性を確保するために過量の伝導性フィラーを配合する場合、耐衝撃性、成形性などの物性が低下するなどの問題があった。
【0006】
一例として、アロイ樹脂に衝撃補強剤、低分子量相溶化剤及び伝導性カーボンフィラーを導入した組成物が提案されたが、これは、最終品の衝撃強度には優れるが、耐熱性が劣り、分散の限界により表面特性を改善するのに制限があった。
【0007】
また、ポリアミドは押出機の上流側に供給し、導電性カーボンブラックは下流側に供給してポリアミド/ポリフェニレンエーテル樹脂組成物用マスターペレットを製造する方法が提案されたが、これもまた、分散安定性の改善に制限があり、製品の表面特性、耐熱性及び水分安定性の改善効果が僅かであるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】日本登録特許4183297B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来技術の問題点を解決するために案出されたもので、組成物間の相溶性や分散安定性などをさらに向上させることによって、従来と比較して機械的強度及び伝導性は同等レベルかあるいはさらに優れ、耐熱性及び外観特性は大きく改善されると共に、水分安定性に優れた、ポリアミドアロイ用伝導性濃縮樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記伝導性濃縮樹脂組成物を含むことによって、従来の公知の樹脂組成物と比較して耐熱性、外観特性及び水分安定性が非常に優れた伝導性ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記伝導性ポリアミド樹脂組成物を含んで製造された成形品を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、(a)ポリアミド樹脂50~95重量%、極性重合体2.5~20重量%及び非極性重合体2.5~30重量%を含むベース樹脂100重量部と;(b)ナノカーボンフィブリル10~40重量部と;(c)ナノカーボンプレート0.5~5重量部と;(d)ナノシリケート0.5~4重量部と;を含む伝導性濃縮樹脂組成物を提供する。
【0014】
前記ポリアミド樹脂は、一例として、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD6、ポリアミド6/MXD6、ポリアミド66/MXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド9T、ポリアミド9I、ポリアミド6/9T、ポリアミド6/9I、ポリアミド66/9T、ポリアミド6/12/9T、ポリアミド66/12/9T、ポリアミド6/12/9I及びポリアミド66/12/6Iからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0015】
前記極性重合体は、一例として、極性基を含むオレフィンブロック共重合体であり、前記非極性重合体は、極性基を有していないオレフィンブロック共重合体であってもよい。
【0016】
前記極性基は、一例として、カルボキシ基であってもよい。
【0017】
前記極性重合体は、一例として、極性基を有する単量体を0.5~重量%含む重合体であってもよい。
【0018】
前記ナノカーボンフィブリルは、一例として、BET表面積が180~600m2/gであってもよい。
【0019】
前記ナノカーボンプレートは、一例として、平均厚さが2~50nmであってもよい。
【0020】
また、本発明は、前記伝導性濃縮樹脂組成物5~20重量%と;ポリアミド樹脂35~65重量%と;ポリ(アリーレンオキシド)樹脂0~40重量%と;衝撃補強剤0~15重量%と;極性重合体1~15重量%と;非極性重合体1~20重量%と;無機充填剤0~35重量%と;を含む伝導性ポリアミド樹脂組成物を提供する。
【0021】
前記衝撃補強剤は、一例として、芳香族ビニル系エラストマー;オレフィン系エラストマー;またはこれらの全てを含むエラストマーから選択された1種以上であってもよい。
【0022】
前記芳香族ビニル系エラストマーは、一例として、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)、スチレン-イソプレン共重合体(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、α-メチルスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン共重合体)-スチレン共重合体、及びこれらの変性重合体から選択された1種以上であってもよい。
【0023】
前記オレフィン系エラストマーは、一例として、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、及びこれらの変性重合体から選択された1種以上であってもよい。
【0024】
前記無機充填剤は、一例として、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、ウォラストナイト、硫酸バリウム、炭酸バリウム、及びシリカからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0025】
前記伝導性ポリアミド樹脂組成物は、一例として、水分吸収率が1.5%以下であってもよい。
【0026】
また、本発明は、(a)ポリアミド樹脂50~95重量%、極性重合体2.5~20重量%及び非極性重合体2.5~30重量%を含むベース樹脂100重量部と;(b)ナノカーボンフィブリル10~40重量部と;(c)ナノカーボンプレート0.5~5重量部と;(d)ナノシリケート0.5~4重量部とを、混練ブロックが9個以上である押出機を用いて混練及び押出するステップを含む伝導性濃縮樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0027】
前記混練及び押出は、一例として、シリンダー温度が200~330℃である範囲内で行われてもよい。
【0028】
前記混練及び押出は、一例として、スクリュー回転数が100~500rpmである条件下で行われてもよい。
【0029】
また、本発明は、前記伝導性ポリアミド樹脂組成物を含む成形品を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る伝導性濃縮樹脂組成物は、繊維状フィラーと板状フィラーの相互分散効果、及びナノシリケートによる機械的強度、伝導性及び耐熱性の向上効果を提供し、また、極性重合体と非極性重合体との所定の重量比率での混合によって水分安定性に優れ、したがって、これを含む伝導性ポリアミド樹脂組成物は、従来の公知の樹脂組成物と比較して機械的強度、伝導性が同等かまたはさらに優れたレベルを維持しながらも、耐熱性、水分安定性及び外観特性は大きく改善された効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の伝導性濃縮樹脂組成物の製造のための、混練ブロックが9個以上備えられた押出機の模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本記載の伝導性濃縮樹脂組成物及びその製造方法などを詳細に説明する。
【0033】
本発明者らは、機械的強度は良いが、他のエンジニアリングプラスチックに比べて水分安定性が大きく劣るポリアミド66樹脂に、所定の重量比率で極性重合体と非極性重合体、ナノカーボンフィブリル、ナノカーボンプレート及びナノクレイを配合し、これを、混練ブロックが9個以上である二軸押出機を使用して溶融混練して製造した伝導性濃縮樹脂組成物を伝導性ポリアミド樹脂組成物に適用する場合、従来のアロイ樹脂組成物と比較して、機械的強度、成形性、伝導性、耐熱性及び表面特性などは同等レベルを維持しながらも、水分安定性が大きく改善されることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するに至った。
【0034】
本発明で使用された「伝導性濃縮樹脂組成物」という用語は、組成物の総重量を基準として、伝導性フィラーが少なくとも10重量%以上の濃度で含まれたことを意味する。
【0035】
本発明の伝導性濃縮樹脂組成物は、(a)ポリアミド樹脂50~95重量%、極性重合体2.5~20重量%及び非極性重合体2.5~30重量%を含むベース樹脂100重量部と;(b)ナノカーボンフィブリル10~40重量部と;(c)ナノカーボンプレート0.5~5重量部と;(d)ナノシリケート0.5~4重量部と;を含むことによって、繊維状であるナノカーボンフィブリルと板状であるナノカーボンプレートとの相互分散効果により、機械的物性などを高く維持しながらも伝導性をさらに改善させることができ、ナノシリケートによって耐熱性が向上し、極性重合体と非極性重合体との組み合わせによって水分安定性が大きく向上するという効果がある。
【0036】
前記ポリアミド樹脂は、当業界で通常使用される範囲内であれば、特に制限されずに適宜選択することができ、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD6、ポリアミド6/MXD6、ポリアミド66/MXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド9T、ポリアミド9I、ポリアミド6/9T、ポリアミド6/9I、ポリアミド66/9T、ポリアミド6/12/9T、ポリアミド66/12/9T、ポリアミド6/12/9I及びポリアミド66/12/6Iからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0037】
より好ましい一例として、前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、及びポリアミド12から選択された1種以上を含むホモポリマーあるいはコポリマーであってもよく、最も好ましくはポリアミド66を含むものである。この場合に、組成物の伝導性、成形加工性、耐熱性などがさらに優れるという効果を提供することができる。
【0038】
前記ポリアミド樹脂は、一例として、50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~85重量%であってもよく、この範囲内で、機械的物性、耐久性及び耐候性などに優れるという効果がある。
【0039】
前記極性重合体は、一例として、極性基を含むオレフィンブロック共重合体であってもよく、この場合に、他の物性の低下なしに、水分安定性に優れるという効果がある。
【0040】
前記極性基は、一例としてカルボキシ基であってもよく、この場合に、他の物性の低下なしに、水分安定性に優れるという効果がある。
【0041】
前記極性基を含むオレフィンブロック共重合体は、一例として、α,β-不飽和ジカルボン酸及びその無水物のうち少なくともいずれか1つの化合物で変性されたエチレン-α-オレフィン共重合体であってもよく、この場合に、水分安定性を大きく改善させる効果があるので、これを適用した組成物は、様々な環境条件でも元の大きさを維持できる能力である寸法安定性に優れるという効果がある。
【0042】
前記極性重合体に含まれるα-オレフィンは、一例として、炭素数3~10のα-オレフィン、または炭素数5~10のα-オレフィン、好ましくは1-オクテンであってもよく、この範囲内で、水分安定性が大きく改善されるという効果がある。
【0043】
本記載において、変性とは、本発明の属する技術分野で通常使用される重合体の変性方法による変性であれば、特に制限されず、一例として、非変性重合体に、α,β-不飽和ジカルボン酸及びその無水物のうち少なくともいずれか1つの化合物を投入してグラフトさせたことを意味することができ、他の一例として、非変性共重合体の製造時に、α,β-不飽和ジカルボン酸及びその無水物のうち少なくともいずれか1つの化合物を共単量体として投入して共重合させることを意味することができる。
【0044】
前記α,β-不飽和ジカルボン酸及びその無水物は、一例として、マレイン酸、フマル酸、クエン酸及びこれらの無水物であり、好ましくはマレイン酸無水物であり、この場合に、水分安定性が大きく改善されるという効果がある。
【0045】
前記極性重合体は、一例として、極性基を有する単量体を0.5~4重量%、0.5~3重量%、0.5~2.5重量%、または0.8~2重量%含む重合体であってもよく、この範囲内で、水分安定性に優れるという効果がある。
【0046】
前記極性重合体は、一例として、溶融指数(ASTM D1238、190℃、2.16kgを基準とする)が0.5~10g/10min、または1~7g/10minであってもよく、この範囲内で、相溶性及び加工性などに優れるという効果がある。
【0047】
前記極性重合体は、一例として、数平均分子量が50,000~400,000g/mol、好ましくは100,000~300,000g/molであってもよく、この範囲内で、物性及び加工性がいずれも優れるという効果がある。
【0048】
本記載において、数平均分子量は、基準物質(Standard material)としてPS(Polystyrene)を使用してGPC分析により測定することができる。
【0049】
前記極性重合体は、一例として、2.5~20重量%、好ましくは3~15重量%含まれてもよく、この範囲内で、水分安定性に優れるという効果がある。
【0050】
前記非極性重合体は、一例として、極性基がないオレフィンブロック共重合体であってもよく、この場合に、他の物性の低下なしに、水分安定性に優れるという効果がある。
【0051】
前記非極性重合体は、一例として、極性基を有する化合物で変性されていないエチレン-α-オレフィン共重合体であってもよく、この場合に、水分安定性が大きく改善されるという効果がある。
【0052】
前記非極性重合体に含まれるα-オレフィン共重合体は、一例として、炭素数3~10のα-オレフィン、または炭素数3~4のα-オレフィン、好ましくは1-ブテンであってもよく、この範囲内で、水分安定性が大きく改善されるという効果がある。
【0053】
前記非極性重合体は、一例として、溶融指数(ASTM D1238、190℃、2.16kgを基準とする)が5~40g/10min、10~35g/10min、20~35g/10min、または30~35g/10minであってもよく、この範囲内で、物性及び加工性などに優れるという効果がある。
【0054】
前記非極性重合体は、密度が、一例として0.840~0.920g/cm3であり、重量平均分子量が、一例として100,000~600,000g/mol、好ましくは120,000~500,000g/molであってもよく、この範囲内で、物性及び加工性に優れるという効果がある。
【0055】
本記載において、密度は常温(20±5℃)で測定される。
【0056】
本記載において、重量平均分子量は、基準物質(Standard material)としてPS(Polystyrene)を使用してGPC分析により測定することができる。
【0057】
前記非極性重合体は、一例として、2.5~30重量%、好ましくは5~25重量%含まれてもよく、この範囲内で、水分安定性に優れるという効果がある。
【0058】
前記ナノカーボンフィブリルは、厚さや直径がナノスケールである繊維状のカーボンを意味するもので、一例として、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、またはこれらの全てを含むことができ、この場合に、最終品の伝導性、機械的強度、耐熱性などに優れるという利点があり、伝導性及び機械的物性の観点から、好ましくは炭素ナノチューブを含むものである。
【0059】
本記載において、ナノスケールとは、他に定義されない限り、大きさが100nm以下、具体例として1~100nmの範囲を意味する。
【0060】
具体的な一例として、前記炭素ナノチューブは、単一壁炭素ナノチューブ(single-walled carbon nanotube、SWCNT)、二重壁炭素ナノチューブ(double-walled carbon nanotube、DWCNT)、及び3つ以上の複数の層で構成された多重壁炭素ナノチューブ(multi-walled carbon nanotube、MWCNT)から選択された1種以上であってもよい。
【0061】
また、前記炭素ナノチューブは、バンドル型(bundle又はrope type)あるいは非バンドル型(non-bundle又はentangle type)が可能であり、特に制限されず、適切に選択して実施できることを明示する。
【0062】
本発明において、「バンドル型」とは、複数個の炭素ナノチューブが一定の配列を有するかあるいはもつれている、バンドルあるいはロープの形態を意味する。
【0063】
本発明において、「非バンドル型」とは、上述したバンドルあるいはロープの形態のような一定の形状がない形態を意味する。
【0064】
前記ナノカーボンフィブリルは、BET表面積が、一例として、180~600m2/gまたは200~400m2/gであることを特徴とすることができ、好ましくは200~300m2/gであってもよい。この範囲内で、樹脂組成物の加工性に優れながらも、高いレベルの導電性を確保することができる。前記ナノカーボンフィブリルのBET表面積が小さすぎる場合には、粒子サイズの増加により導電性が低下することがあり、大きすぎる場合には、溶融及び混練時に溶融された組成物に加えられる張力が過剰となり、加工性の観点から好ましくない。
【0065】
本発明において、BET表面積は、窒素吸着を用いたブルナウアー(Brunauer)、エメット(Emmett)及びテラー(Teller)方法(ASTM 6556に準拠した方法)により測定される。
【0066】
また、前記ナノカーボンフィブリルは、一例として、平均直径が5~30nm、7~20nm、または10~15nmであってもよく、この範囲内で、最終品の電気伝導性、外観特性などが大きく改善される効果を提供することができる。
【0067】
前記ナノカーボンフィブリルの直径は、電子顕微鏡分析を通じて測定することができる。
【0068】
前記ナノカーボンフィブリルは、一例として、ベース樹脂100重量部を基準として、10~40重量部、好ましくは15~30重量部、より好ましくは15~25重量部含まれてもよく、この範囲内で、機械的物性及び伝導性に優れるという効果がある。
【0069】
前記ナノカーボンプレートは、平均厚さが2~50nmである板状のナノカーボンであって、具体的には、剥離グラファイト、グラフェンナノプレート、剥離膨張黒鉛などから選択された1種以上を含むことができ、好ましくは、平均厚さが2~50nmであるグラフェンナノプレートを含むものである。
【0070】
この場合に、繊維状の伝導性フィラーであるナノカーボンフィブリルとの相互分散効果により、ポリアミド樹脂組成物の電気的特性、機械的強度はもちろん、耐熱性などをさらに向上させる効果を提供することができる。
【0071】
前記ナノカーボンプレートは、一例として、平均厚さが2~50nm、好ましくは4~40nmであることを特徴とすることができ、この範囲内で、相互分散効果により、伝導性と表面特性が同時に改善される利点を提供する。
【0072】
前記ナノカーボンプレートの厚さは、通常の電子顕微鏡分析を通じて測定することができる。
【0073】
また、前記ナノカーボンプレートは、物性改善の観点、加工性などを考慮して、層状の剥離型ナノカーボンプレートを使用することが好ましい。
【0074】
本発明で使用された「層状の剥離型」という用語は、グラファイトを化学的及び/又は物理的な方法を通じて2~100nmの厚さに加工した形態を意味する。
【0075】
前記グラファイトの化学的及び/又は物理的な剥離方法は公知の技術に従い、一例として、ブロディ(Brodie)方法、ハマーズ(Hummers)方法などを用いてグラファイトを化学的に改質及び膨張させた後、超音波粉砕、急速加熱などの機械的な方法を通じて剥離することができる。
【0076】
前記ナノカーボンプレートは、一例として、ベース樹脂100重量部を基準として、0.5~5重量部、好ましくは1~4重量部含まれてもよく、この範囲内で、機械的物性及び伝導性に優れるという効果がある。
【0077】
本発明の伝導性濃縮樹脂組成物は、更に他の例として、(a)ポリアミド樹脂50~95重量%、極性重合体2.5~20重量%及び非極性重合体2.5~30重量%を含むベース樹脂100重量部と;(b)BET表面積が180~600m2/gであるナノカーボンフィブリル10~40重量部と;(c)平均厚さが2~50nmであるナノカーボンプレート0.5~5重量部と;(d)ナノシリケート0.5~4重量部と;を含むことによって、繊維状であるナノカーボンフィブリルと板状であるナノカーボンプレートとの相互分散効果により、機械的物性などを高く維持しながらも伝導性をさらに改善させることができ、ナノシリケートによって耐熱性が向上し、極性重合体と非極性重合体との組み合わせによって水分安定性が大きく向上するという効果がある。
【0078】
前記ナノシリケートは、粒子サイズ100nm以下や1~100nmのシリケートのように、本発明の属する技術分野でナノシリケートと称される物質であれば、特に制限されず、好ましくはナノクレイであってもよく、この場合に、耐熱性に優れるという効果がある。
【0079】
本発明において、ナノシリケートの粒子サイズは、電子顕微鏡分析などのように、この発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法により測定することができ、また他の具体例として、動的光散乱(Dynamic Light Scattering)方法で測定されてもよい。
【0080】
前記ナノクレイは、板状のシリケートがナノスケールで積層された層状構造体であって、本発明では、ナノカーボンフィブリルとの相互分散効果と共に、組成物の耐熱性及び寸法安定性などを改善するための目的でこれを配合する。
【0081】
本発明において、「ナノクレイ」とは、各層の厚さがナノスケールであることを意味するものであって、一例として、各層の厚さが1~100nm、1~50nm、好ましくは2~40nmであることを意味する。
【0082】
前記ナノクレイの厚さは、電子顕微鏡分析を通じて測定することができる。
【0083】
一例として、前記ナノクレイは、スメクタイト系、カオリナイト系、イライト系などの粘土から選択された1種以上を含むことができ、より具体的には、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バーミキュライト、カオリナイト、ハイドロマイカなどから選択された1種以上を含み、最も好ましくはモンモリロナイトを含むものである。この場合に、組成物の耐熱性などの改善効果がさらに優れるという利点がある。
【0084】
また、前記ナノクレイは、通常、改質剤を使用して有機化処理されたものを使用し、この場合に、有機物との相溶性の向上により、最終成形品の耐熱性などがさらに優れるという効果を提供することができる。
【0085】
一例として、改質剤は、テトラアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルホスホニウム塩、アルキル及びアリールを含有するアンモニウム塩から選択されてもよく、具体的には、ジメチルベンジル水素化タロー4級アンモニウム、ジメチル水素化タロー4級アンモニウム、メチルタロービス-2-ヒドロキシエチル4級アンモニウム、ジメチル水素化タロー2-エチルヘキシル4級アンモニウムなどから選択された1種以上であってもよく、この場合に、最終品の耐熱性に優れるという利点を提供する。
【0086】
最も好ましい一例として、前記ナノクレイは、改質剤としてメチルタロービス-2-ヒドロキシエチル4級アンモニウムを使用して有機化処理されたモンモリロナイトを含むものであり、この場合に、最終樹脂組成物の機械的な強度、伝導性、加工性などを高く維持しながらも、耐熱性に優れるという効果を提供することができる。
【0087】
本記載において、有機化処理は、本発明の属する技術分野で通常使用される有機化処理であれば、特に制限されず、一例として、混合、コーティング、イオン交換、置換反応などによる有機化であってもよい。
【0088】
前記ナノシリケートは、一例として、ベース樹脂100重量部を基準として、0.5~4重量部、好ましくは1~3重量部含まれてもよく、この範囲内で、機械的物性及び耐熱性に優れるという効果がある。
【0089】
本発明の伝導性濃縮樹脂組成物の製造方法は、(a)ポリアミド樹脂50~95重量%、極性重合体2.5~20重量%及び非極性重合体2.5~30重量%を含むベース樹脂100重量部と;(b)ナノカーボンフィブリル10~40重量部と;(c)ナノカーボンプレート0.5~5重量部と;(d)ナノシリケート0.5~4重量部とを、混練ブロックが9個以上である押出機を用いて混練及び押出するステップを含むことによって、繊維状であるナノカーボンフィブリルと板状であるナノカーボンプレートとの相互分散効果により、機械的物性などを高く維持しながらも伝導性をさらに改善させることができ、ナノシリケートによって耐熱性が向上し、極性重合体と非極性重合体との組み合わせによって、ポリアミド樹脂の弱点である水分安定性が大きく改善されるという効果がある。
【0090】
通常、押出工程は、原料物質を押出機に供給し、これを、加熱されたシリンダー形状の構造物内で溶融及び混練し、圧縮を加える方式で行われる。前記のような押出工程において、原料物質は、溶融された状態で機械的な圧力を受けるに伴い、その物性が変わり得、ある原料物質は、溶融混練後にその形状が変わることもある。したがって、押出時、その条件を適切に調節して原料物質を混練及び押出すると、機械的な物性などがさらに改善され得る。
【0091】
本発明は、特定の組成の原料物質を配合した後、これを、混練ブロックが9個以上である押出機を用いて混練及び押出することを特徴とし、このように伝導性濃縮樹脂組成物を製造する場合に、伝導性フィラー成分の分散性、組成物の相溶性が改善され、同等組成のポリアミドアロイ樹脂組成物と比較して、機械的強度、加工性などの物性は高く維持しながらも、伝導性、外観特性及び水分安定性が大きく向上した効果を提供することができる。
【0092】
下記図1は、本発明の伝導性濃縮樹脂組成物の製造のための混練ブロックが9個以上備えられた押出機の模式図である。以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0093】
前記押出機の種類は、特に制限されず、当業界で通常使用されているものであれば、適宜選択して行うことができ、一例として、1個のスクリューを備えた一軸押出機、または複数個のスクリューを備えた多軸押出機を使用することができ、材料の均一な混練、加工の容易性及び経済性などを考慮すると、スクリューが2個である二軸押出機を使用することが好ましい。
【0094】
通常、押出機は、シリンダーともいうバレル(barrel)の内部に材料を供給するための原料供給器(feeder)と、バレルの内部に供給された材料を運送及び混練するためのスクリュー(screw)と、混練された材料を押出するためのダイ(die)とで構成され、前記スクリューは、様々な機能を付与するために、複数個のスクリューエレメントで構成される。
【0095】
前記原料供給器は、1つ以上であってもよく、必要に応じて選択的に2つ以上または3つ備えられてもよい。一例として、主投入口及び選択的に補助投入口が備えられてもよく、補助投入口は、必要に応じて、2つ以上または3つ備えられてもよい。
【0096】
具体的な一例として、前記主投入口にベース樹脂、ナノカーボンフィブリル、ナノカーボンプレート及びナノシリケートが一括投入されてもよく、他の一例として、前記主投入口にベース樹脂を投入した後、補助投入口にナノカーボンフィブリル、ナノカーボンプレート及びナノシリケートを投入することができる。
【0097】
他の一例として、前記主投入口にベース樹脂を投入し、補助投入口1にナノカーボンフィブリル、ナノカーボンプレート及びナノシリケートの一部を投入した後、残量を補助投入口2に投入することも可能である。
【0098】
他の一例として、前記主投入口にベース樹脂を投入し、補助投入口1にはナノカーボンフィブリル、ナノカーボンプレート及びナノシリケートを投入し、補助投入口2には酸化防止剤や熱安定剤などの添加剤が投入されてもよい。
【0099】
本発明の混練ブロックは、前記スクリューエレメントの一例であって、具体的には、複数個のディスク、好ましい一例として、3~7枚、5~7枚、3~5枚、または4~5枚のディスクで構成され、通常、多角形あるいは楕円形などの断面を備えており、材料の移送方向に連続的に配列される。また、前記混練ブロックにおいてディスクの位相角(ディスク相互間の移動角を意味する)は、通常、45~90°をなす。
【0100】
また、混練ブロックは、材料の移送、分配及び混合能力を備えた正方向(forward)混練ブロックと、材料の移送能力なしに、分配及び混合能力のみを備えた直交(neutral)型混練ブロックと、材料を移送方向の反対方向に逆移送させる逆方向(backward)混練ブロックなどがある。
【0101】
本発明に係る伝導性濃縮樹脂組成物は、混練ブロックが、一例として、9個以上、10個以上、10~18個、または12~16個である押出機を用いて混練及び押出するステップを含んで製造されてもよい。このとき、混練ブロックは、樹脂の流れ方向に対して正方向、直交型、そして逆方向の順に組み合わせて使用することが効果的であり、混合方法に応じて、連続または分離されたブロックの組み合わせを使用することができる。この場合に、伝導性フィラー成分の分散性、組成物の相溶性などがさらに改善され、より高品質のポリアミドアロイ樹脂組成物を提供することができる。
【0102】
前記混練ブロックは、9個以上が連続的に配列されてもよく、他の一例として、スクリューの間に不連続的に配列されてもよい。具体的な一例として、主投入口と補助投入口1との間に3~6個の混練ブロックが連続的に備えられ、補助投入口1と補助投入口2との間に3~8個の混練ブロックが連続的に備えられ、補助投入口2と吐出口(図示せず)との間に2~5個の混練ブロックが備えられてもよい。このように配列される場合に、溶融混練時の局所的な発熱が制御され、原料物質の熱変形を防止することができ、ナノカーボンフィブリルの過度の切断が防止されて、電気伝導性及び機械的な物性に優れるという利点を提供する。
【0103】
本発明の製造方法において、前記混練及び押出は、バレル温度が、一例として、200~330℃、250~320℃、280~310℃、または290~310℃である範囲内で行うことができ、この場合に、単位時間当たりの処理量が適切であり、しかも、十分な溶融混練が可能となり得、樹脂成分の熱分解などの問題を引き起こさないという利点がある。
【0104】
また、前記混練及び押出は、スクリュー回転数が、一例として、100~500rpm、150~400rpm、100~350rpm、150~320rpm、200~310rpm、250~350rpm、または250~310rpmである条件下で行うことができ、この場合に、単位時間当たりの処理量が適切であるので、工程効率に優れながらも、伝導性フィラー(ナノカーボンフィブリルなど)の過度の切断を抑制して、最終品の伝導性などがさらに優れるという利点を提供する。
【0105】
また、前記混練及び押出を通じて収得された伝導性濃縮樹脂組成物は、ペレタイザによってペレットの形態で提供され得る。
【0106】
前記伝導性濃縮樹脂組成物の製造方法は、前述した伝導性濃縮樹脂組成物に関する特徴を全て共有する。
【0107】
本発明の伝導性ポリアミド樹脂組成物は、前記伝導性濃縮樹脂組成物5~20重量%と;ポリアミド樹脂35~65重量%と;ポリ(アリーレンオキシド)樹脂0~40重量%と;衝撃補強剤0~15重量%と;極性重合体1~15重量%と;非極性重合体1~20重量%と;無機充填剤0~35重量%と;を含むことによって、衝撃強度、耐熱性、伝導性などは、従来技術と比較して同等かまたはそれ以上の効果を有し、水分安定性は格段に優れるという効果を有する。
【0108】
以下、本発明に係る伝導性ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法を詳細に説明する。
【0109】
まず、本発明の伝導性ポリアミド樹脂組成物は、上述した伝導性濃縮樹脂組成物を含むことを特徴とする。
【0110】
一例として、前記伝導性ポリアミド樹脂組成物は、本発明に係る伝導性濃縮樹脂組成物5~20重量%と;ポリアミド樹脂35~65重量%と;ポリ(アリーレンオキシド)樹脂0~40重量%と;衝撃補強剤0~15重量%と;極性重合体1~15重量%と;非極性重合体1~20重量%と;無機充填剤0~35重量%と;を含むことを特徴とすることができる。
【0111】
本発明に係る伝導性ポリアミド樹脂組成物は、特定の組み合わせの伝導性フィラーが濃縮された伝導性濃縮樹脂組成物を含むことによって、従来の伝導性フィラーの飛散の問題を克服することができ、これに加えて、伝導性フィラー成分の分散の限界を克服できるので、従来と比較して伝導性、機械的物性などがさらに優れながらも、外観特性が改善された伝導性ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【0112】
また、本発明に係る伝導性ポリアミド樹脂組成物は、特定の重量比率の極性重合体と非極性重合体との組み合わせを含むことによって、ポリアミド樹脂が有する劣悪な水分安定性を克服した伝導性ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【0113】
以下、本願の伝導性ポリアミド樹脂組成物を各成分別に具体的に説明する。
【0114】
*ポリアミド樹脂
前記ポリアミド樹脂は、一例として、35~65重量%、40~60重量%、または40~50重量%含まれてもよく、この範囲内で、耐熱性、機械的強度などの物性を高く維持しながらも、伝導性に優れるという利点がある。
【0115】
前記ポリアミド樹脂は、特に限定されず、好ましい一例として、前述した伝導性濃縮樹脂組成物の製造時に使用されたものと同じものを使用することができ、この場合に、伝導性フィラーの分散性がさらに極大化されて、伝導性、耐熱性などの物性に優れた成形品を提供することができる。
【0116】
前記ポリアミド樹脂は、本記載の伝導性濃縮樹脂組成物において前述したポリアミド樹脂に関する特徴を全て共有する。
【0117】
*ポリ(アリーレンオキシド)樹脂
前記ポリ(アリーレンオキシド)樹脂は、一例として、0~40重量%、5~40重量%、10~35重量%、または20~35重量%含まれてもよく、この場合に、組成物の耐熱性及び機械的強度がさらに優れるので、このような物性が要求される製品に適用時、さらに有利であるという利点がある。
【0118】
前記ポリ(アリーレンオキシド)樹脂は、一例として、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)であり、具体例として、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,3,6-トリエチル-1,4-フェニレン)エーテル及びこれらの変性重合体から選択された1種以上の重合体、あるいはこれを含む共重合体であってもよく、好ましくは、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルまたはその共重合体であってもよい。
【0119】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂での変性重合体とは、不飽和カルボン酸またはその無水物などの反応性単量体と重合体が反応して、不飽和カルボン酸またはその無水物で変性されたものを意味する。
【0120】
前記反応性単量体は、具体的な一例として、クエン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、これらの無水物、及び(メタ)アクリル酸エステルから選択された1種以上であってもよい。
【0121】
*衝撃補強剤
前記衝撃補強剤は、一例として、芳香族ビニル系エラストマー及びオレフィン系エラストマーからなる群から選択された1種以上を含むことができ、この場合に、組成物の耐熱性、伝導性などの物性を高く維持しながらも、機械的な強度が大きく改善されるという効果を提供することができる。
【0122】
具体的な一例として、前記芳香族ビニル系エラストマーは、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)、スチレン-イソプレン共重合体(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、α-メチルスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-(エチレン-ブチレン/スチレン共重合体)-スチレン共重合体、及びこれらの変性重合体から選択された1種以上であってもよい。
【0123】
本発明において、変性重合体とは、不飽和カルボン酸またはその無水物などの反応性単量体と重合体が反応して、不飽和カルボン酸またはその無水物で変性されたものを意味する。
【0124】
前記反応性単量体は、具体的な一例として、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、アガリン酸、イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、これらの無水物、及び(メタ)アクリル酸エステルから選択された1種以上であってもよい。
【0125】
より好ましい一例として、前記芳香族ビニル系エラストマーは、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、及びマレイン酸無水物変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体のうち1種以上を含むことができ、この場合に、最終品の伝導性に優れながらも、衝撃強度がさらに改善されるという効果がある。
【0126】
前記オレフィン系エラストマーは、一例として、オレフィン系化合物単独、あるいはこれを含んで重合された共重合体であってもよく、前記オレフィン系化合物は、一例として、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン及びオクテンから選択された1種以上であってもよい。
【0127】
より具体的な一例として、前記オレフィン系エラストマーは、高密度ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、及びこれらの変性重合体から選択された1種以上であってもよく、ポリアミド樹脂との相溶性の確保の観点から、変性ポリオレフィンを使用することが好ましい。
【0128】
一例として、変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸、その無水物またはエポキシ系化合物と、ポリオレフィン系重合体との反応物であってもよく、具体的には、マレイン酸無水物変性ポリエチレン、マレイン酸無水物変性ポリプロピレン及びマレイン酸無水物変性エチレン-プロピレン共重合体から選択された1種以上であってもよく、この場合に、オレフィン系衝撃補強剤とポリアミド樹脂との相溶性が増加して、耐熱性、衝撃強度などの物性がさらに改善されるという利点がある。
【0129】
また、本発明の組成物は、衝撃補強剤として、前記芳香族ビニル系エラストマー及びオレフィン系エラストマーを全て含むことができ、一例として、芳香族ビニル系エラストマーとオレフィン系エラストマーとを1:1~2:1の重量比で混合して使用することもできる。
【0130】
前記衝撃補強剤は、一例として、組成物の総重量を基準として、0~15重量%、1~12重量%、または3~6重量%含まれてもよく、この範囲内で、組成物の耐熱性、電気的特性などが大きく低下しないと共に、衝撃強度が改善され得る。
【0131】
*無機充填剤(ナノシリケートを除く)
本発明の組成物は、必要に応じて選択的に無機充填剤を含むことができ、一例として、ガラス繊維、タルク、マイカ、ウォラストナイト、硫酸バリウム、炭酸バリウム及びシリカからなる群から選択された1種以上の無機充填剤を含むことができる。
【0132】
好ましくは、無機充填剤はガラス繊維を含むものであり、この場合に、組成物の強度や耐熱性などに優れながらも、加工が容易であるという利点がある。
【0133】
また、前記ガラス繊維は、一例として、エポキシシラン、アミノシラン及びウレタンから選択された1種以上の表面処理剤でコーティングされたものを使用することができ、この場合に、樹脂成分内の分散が容易であるので、加工性、物性などをさらに向上させることができる。
【0134】
前記無機充填剤は、一例として、組成物の総重量を基準として、0~35重量%、5~30重量%、10~30重量%、または10~20重量%含まれてもよく、この範囲内で、組成物の衝撃強度、耐熱性、電気的特性などの物性バランスに優れるという利点がある。
【0135】
*極性重合体
前記極性重合体は、一例として、1~15重量%、3~12重量%、または5~10重量%含まれてもよく、この範囲内で、他の物性を低下させることなく、水分安定性に優れるという利点がある。
【0136】
この他に、前記極性重合体は、本記載の伝導性濃縮樹脂組成物において前述した極性重合体に関する特徴を全て共有する。
【0137】
*非極性重合体
前記非極性重合体は、一例として、1~20重量%、3~15重量%、または5~10重量%含まれてもよく、この範囲内で、他の物性を低下させることなく、水分安定性に優れるという利点がある。
【0138】
この他に、前記非極性重合体は、本記載の伝導性濃縮樹脂組成物において前述した非極性重合体に関する特徴を全て共有する。
【0139】
*伝導性濃縮樹脂組成物
本発明に係る伝導性ポリアミド樹脂組成物は、伝導性フィラーとして伝導性濃縮樹脂組成物を含むことを特徴とすることができ、この場合に、伝導性フィラーの飛散の問題が大きく改善され得、伝導性フィラー成分の分散の限界が改善されることで、従来の同等組成のポリアミド樹脂組成物と比較して、耐熱性、電気伝導性はもちろん、表面特性及び水分安定性が大きく改善される利点を提供することができる。
【0140】
前述したように、本発明に係る伝導性濃縮樹脂組成物は、繊維状の伝導性フィラーと板状の伝導性フィラーとの相互分散による分散効果、ナノシリケートによる耐熱性の向上効果、及び極性重合体と非極性重合体との組み合わせによる水分安定性の増大効果をもたらすので、これを、伝導性ポリアミド樹脂組成物の製造時に含む場合に、機械的強度、耐熱性、水分安定性及び伝導性がいずれも極大化される効果を提供することができ、しかも外観特性が大きく改善されて高品質の成形品を提供するのに寄与することができる。
【0141】
一例として、前記伝導性濃縮樹脂組成物は、伝導性ポリアミド樹脂組成物の総重量を基準として、5~20重量%、8~15重量%、または8~12重量%含まれてもよく、この範囲内で、衝撃強度、耐熱性、伝導性などの物性バランスに優れながらも、加工が容易であり、最終成形品の水分安定性に優れるという利点を提供することができる。
【0142】
前記伝導性濃縮樹脂組成物は、前述した伝導性濃縮樹脂組成物及びその製造方法において説明した構成及び技術的特徴を全て含み、これについての詳細な説明は省略する。
【0143】
また、本発明の伝導性ポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて選択的に難燃剤、滑剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、調色剤、帯電防止剤、潤滑剤などの添加剤を1種以上さらに含むことができる。
【0144】
本発明に係る伝導性ポリアミド樹脂組成物は、熱変形温度が、一例として、180℃以上、185℃以上、180~280℃、185~280℃、190~260℃、230~250℃、または235~250℃であって、耐熱性に優れるという利点がある。
【0145】
なによりも、本発明に係る伝導性濃縮樹脂組成物を含む伝導性ポリアミド樹脂組成物は、これを含まない同等組成の樹脂と比較して、熱変形温度が10℃以上、15℃以上、多くは20℃ほど高いながらも、衝撃強度、表面品質も大きく改善された効果を提供し、特に水分安定性が格段に優れるという効果がある。
【0146】
本発明に係る伝導性ポリアミド樹脂組成物は、表面抵抗が、一例として、1011Ohm/sq以下、1010Ohm/sq以下、1010~106Ohm/sq、または109~107Ohm/sqであって、電気伝導性に優れることを特徴とすることができる。
【0147】
また、本発明に係る伝導性ポリアミド樹脂組成物は、一例として、水分吸収率が1.5%以下、0.5~1.2%、または0.6~1.0%であってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに水分安定性に優れるという効果がある。
【0148】
本発明の伝導性ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、一例として、本発明に係る伝導性濃縮樹脂組成物5~20重量%と;ポリアミド樹脂35~65重量%と;ポリ(アリーレンオキシド)樹脂0~40重量%と;衝撃補強剤0~15重量%と;極性重合体1~15重量%と;非極性重合体1~20重量%と;無機充填剤0~35重量%と;を含んで混練及び押出するステップを含むことを特徴とすることができる。
【0149】
前記混練及び押出は、一例として、バレル温度200~330℃、250~320℃、280~310℃、または290~310℃;及びスクリュー回転数100~500rpm、150~400rpm、250~350rpm、または250~310rpm;の条件下で行われてもよく、この範囲内で、樹脂成分の変形などを最小化しながらも、効率的な組成物の製造が可能である。
【0150】
さらに、前記のように製造された伝導性ポリアミド樹脂組成物は、通常の成形工程を通じて成形品として提供され得、一例として、押出、射出または中空成形を通じて押出成形品、射出成形品または中空成形品として製造され、これは様々な産業分野に適用することができる。
【0151】
本発明の伝導性濃縮樹脂組成物及びその製造方法を説明するにおいて、特に明示していない他の条件(一例として、押出機の構成やスペック、押出条件、添加剤など)は、当業界で通常行う範囲内であれば、特に制限されず、適宜選択して行うことができることを明示する。
【0152】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0153】
下記の実施例及び比較例において使用された材料は、次の通りである。
【0154】
*ポリアミド(PA):ポリアミド66重合体であって、インビスタ(Invista)社の3600製品を使用した。
【0155】
*極性重合体:密度0.870g/cm3、溶融指数5g/10minであるLG化学のLC670製品をマレイン酸無水物2重量%で変性して使用した。
【0156】
*非極性重合体:密度0.870g/cm3、溶融指数33g/10minであるLG化学のLC875製品を使用した。
【0157】
*ナノカーボンフィブリル:BET表面積が200~300m2/gである炭素ナノチューブであって、LG化学社の炭素ナノチューブCP1002M製品を使用した。
【0158】
*ナノカーボンプレート:平均厚さが2~50nmである層状剥離製品を使用し、天然グラファイトまたは膨張グラファイトを超音波粉砕を経た機械的な剥離法で製造して使用した。
【0159】
*ナノシリケート:ナノクレイであって、SCP社の30B製品を使用した。
【0160】
*ポリフェニレンエーテル(PPE):ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルであって、三菱社の100L製品を使用した。
【0161】
*スチレン系衝撃補強剤:スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体であって、LG化学社のSBS 501製品を使用した。
【0162】
*無機充填剤:エポキシシランで表面処理され、直径10~13μm及び長さ4mmであるガラス繊維であって、オーウェンスコーニング社の910製品を使用した。
【0163】
[実施例]
1.伝導性濃縮樹脂組成物の製造
実施例1
(a)ポリアミド66樹脂60重量%、極性重合体15重量%及び非極性重合体25重量%で構成されたベース樹脂100重量部に、(b)ナノカーボンフィブリル15重量部、(c)ナノカーボンプレート4重量部及び(d)ナノクレイ2重量部を、混練ブロックが16個である二軸押出機[SM社のT40]を用いて溶融混練した後、押出して、伝導性濃縮樹脂組成物ペレットを製造した。このとき、二軸押出機のシリンダー温度は300℃に設定し、スクリュー回転数は300rpmに設定した。このように製造されたペレットを「PMB-15phr」と略称する。
【0164】
実施例2
(a)ポリアミド66樹脂60重量%、極性重合体15重量%及び非極性重合体25重量%で構成されたベース樹脂100重量部に、(b)ナノカーボンフィブリル20重量部、(c)ナノカーボンプレート2重量部及び(d)ナノクレイ1重量部を投入する以外は、前記実施例1と同様の方法でペレットを製造した。このように製造されたペレットを「PMB-20phr」と略称する。
【0165】
比較例1
(a)ポリアミド66樹脂のみで構成されたベース樹脂100重量部に、(b)ナノカーボンフィブリル15重量部を、混練ブロックが7個である二軸押出機[SM社のT40]を用いて溶融混練した後、押出して、ペレットを製造した。このとき、二軸押出機のシリンダー温度は300℃に設定し、スクリュー回転数は300rpmに設定した。このように製造されたペレットを「REF-1」と略称する。
【0166】
比較例2
前記実施例1において、ポリアミド66樹脂60重量%、極性重合体15重量%及び非極性重合体25重量%で構成されたベース樹脂100重量部に、(b)ナノカーボンフィブリル15重量部を投入し、(c)ナノカーボンプレートと(d)ナノクレイを投入しなかったこと以外は、前記実施例1と同様の方法で伝導性濃縮樹脂組成物ペレットを製造した。このように製造されたペレットを「REF-2」と略称する。
【0167】
比較例3
前記実施例1において、(a)ポリアミド66樹脂のみで構成されたベース樹脂100重量部に、(b)ナノカーボンフィブリル20重量部を投入し、(c)ナノカーボンプレートと(d)ナノクレイを投入しなかったこと以外は、前記実施例1と同様の方法で伝導性濃縮樹脂組成物ペレットを製造した。このように製造されたペレットを「REF-3」と略称する。
【0168】
2.伝導性ポリアミド樹脂組成物の製造
実施例3~8及び比較例4~9
下記表1に記載された組成及び含量で成分を溶融混練した後、押出して、ペレットを製造した。このとき、スクリュー回転数は300rpmに設定し、投入速度は60kg/時間に設定した。製造されたペレットを、射出機[エンゲル社、80トン]を用いて、シリンダー温度290℃及び金型温度80℃の条件下で成形して、物性測定用試片を製造した。
【0169】
[試験例]
前記実施例3~8及び比較例4~9で製造された試片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0170】
*常温衝撃強度(J/m):ノッチ付きアイゾット衝撃強度で、厚さ4mmの試片を使用してISO 180A方法に準拠して測定し、試片にノッチ後、常温(23℃)で測定した。
【0171】
*低温衝撃強度(J/m):ノッチ付きアイゾット衝撃強度で、厚さ4mmの試片を使用してISO 180A方法に準拠して測定し、試片にノッチ後、低温(-30℃)で測定した。
【0172】
*熱変形温度(℃):厚さ4mmである試片を使用して、ISO 75-2方法に準拠して0.45MPaの応力下で測定した。
【0173】
*表面抵抗(Ohm/sq):射出試片の表面抵抗を、プロスタット(Prostat)社のPRS-801装備を使用して測定した。
【0174】
*外観特性:規格が100mm×100mm×3mmである平板試片の外観を目視で評価した。(G:表面にピンホールが観察されない、B:表面にピンホールが一部観察される、BB:表面にピンホールが多数観察される)
*水分吸収率(%):80ton Engel射出機を用いて、100mm×100mm×3mmの平板試片を射出して、40℃で72時間浸漬した後、下記数式1を用いて測定した。低い値であるほど水分安定性に優れるものと評価される。
【0175】
〔数1〕
水分吸収率(%)=[(水分吸収後の試片の重量-水分吸収前の試片の重量)/水分吸収前の試片の重量]×100
【0176】
【表1】
【0177】
前記表1に示したように、本発明に係る伝導性濃縮組成物を含む実施例3~8は、極性重合体、非極性重合体、または本発明に係る濃縮組成物を含まない比較例4~9と比較して、衝撃強度、耐熱性、伝導性などが同等以上の値を有しながらも、水分安定性が大きく改善されたことが確認できた。特に、比較例4の場合、繊維状であるナノカーボンフィブリルを単独で適用することによって、再凝集などにより相互分散効果が低下してしまい、表面ピンホール及び水分安定性などが低下することが確認できた。また、比較例5及び6の結果を参照すると、伝導性ポリアミド樹脂組成物の製造時に伝導性濃縮組成物を投入せずに、炭素ナノチューブを直接投入する場合、外観特性がさらに劣悪であることが確認できた。
図1