(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】超音波計測装置及び超音波計測方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/526 20060101AFI20220411BHJP
G01S 7/52 20060101ALI20220411BHJP
G01S 7/524 20060101ALI20220411BHJP
G01S 11/14 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
G01S7/526 J
G01S7/52 F
G01S7/524 R
G01S11/14
(21)【出願番号】P 2021082507
(22)【出願日】2021-05-14
(62)【分割の表示】P 2017066935の分割
【原出願日】2017-03-30
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】大野 祥希
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-222226(JP,A)
【文献】特開平03-233395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0132844(US,A1)
【文献】特開2012-065308(JP,A)
【文献】特表2012-524271(JP,A)
【文献】国際公開第2011/087088(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52 - G01S 11/16
G01S 15/00 - G01S 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機から受信機へ超音波ビームを送信して、送信から受信までの伝搬時間を求めることより前記送信機と前記受信機間における距離を測定する超音波計測装置において、
複数の振動子がアレイ状に配置された前記送信機と、
前記振動子の送信タイミングを制御するタイミング調整・同期回路と、
前記複数の振動子のうち第1周波数で超音波を送信する第1群の前記振動子と、
前記複数の振動子のうち第2周波数で超音波を送信する第2群の前記振動子と、
前記第1群及び第2群の前記振動子から送信される前記超音波ビームが重なる位置に配置された前記受信機と、
前記受信機で得られた信号の位相から受信時刻基準点を求め、前記送信機で送信を開始した時刻と前記受信時刻基準点とに基づいて前記送信機と前記受信機間における距離を求める解析装置と、を備え、
前記第1群の前記振動子及び前記第2群の前記振動子の送信は、一方は送信継続時間が有限な超音波バースト波、他方は連続波とされたことを特徴とする超音波計測装置。
【請求項2】
前記振動子の送信タイミングを前記タイミング調整・同期回路によって順番に遅らせることで、測定方向を決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波計測装置。
【請求項3】
前記振動子の送信タイミングを前記タイミング調整・同期回路によって変えることで、測定方向を切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波計測装置。
【請求項4】
前記第1群の前記振動子及び前記第2群の前記振動子の数は、測定箇所の大きさに応じて決定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波計測装置。
【請求項5】
前記第1群の前記振動子及び前記第2群の前記振動子の送信は、少なくともいずれか一方が、送信継続時間が有限な超音波バースト波とされたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波計測装置。
【請求項6】
前記送信機は前記振動子をオンオフ信号で駆動するスイッチ回路を備え、
前記解析装置は、前記スイッチ回路より前記送信機で送信を開始した時刻を決定するトリガ信号を得て前記受信機で得られた信号をサンプリングすることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波計測装置。
【請求項7】
前記第1群及び第2群の前記振動子から送信される前記超音波ビームのサイズは、いずれか一方が他方よりも小さくされたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波計測装置。
【請求項8】
送信機から受信機へ超音波ビームを送信して、送信から受信までの伝搬時間を求めることより前記送信機と前記受信機間における距離を測定する超音波計測方法であって、
前記送信機は複数の振動子がアレイ状に配置され、前記複数の振動子は第1群と第2群にグループ分けされ、第1群の前記振動子は第1周波数で、第2群の前記振動子は第2周波数であり、前記第1群の前記振動子及び前記第2群の前記振動子の送信は、一方は送信継続時間が有限な超音波バースト波、他方は連続波とされた超音波を送信し、
前記第1群及び前記第2群の前記振動子から送信される前記超音波ビームが重なる位置に配置された前記受信機で得られた信号の位相から受信時刻基準点を求め、
前記送信機で送信を開始した時刻と前記受信時刻基準点とに基づいて前記送信機と前記受信機間における距離を求めることを特徴とする超音波計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いた高精度位置計測の装置及び方法であり、特に超音波の伝搬時間を利用してデバイス間の相対距離を計測する超音波計測装置及び超音波計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を利用して、基準点からある距離だけ離れた位置にある空気中の測定対象物の変位を測定する技術が知られている。超音波による距離計測は、人が入るには危険な場所での計測や、距離計測を連続的に管理する場合などにも有用であり、空中でも液中でも金属の中でも、音が伝わる環境ならば、距離計測が可能となる。
【0003】
また、超音波を利用して、加工ライン上のワークを非破壊で検査するインライン検査において、加工の前に凹凸形状のみならず、その表面状態をより正確に判別したり、加工後に加工が正確に行われたかどうかの判別、例えば基準位置から穴の深さを求めたりすることが行われている。
【0004】
例えば、自動車のエンジンの製造工場には鋳物等であるシリンダブロックの加工ラインがあり、シリンダブロックの製造工程では、加工ライン、つまりインラインにおいて、凹凸形状のみならず、その表面状態の判別、加工が適切に行われたことの判別などより精密な検査が要求されている。
【0005】
さらに、超音波を媒体とした超音波式変位センサを用いたものは、測定距離が長いので搬送ラインに用いるには適している。しかし、単に用いただけでは精度が他方式に比較して低く、測定面の大きさも大きくならざるを得なかった。
【0006】
超音波を利用して、基準点からある距離だけ離れた位置にある空気中の測定対象物の変位を測定する技術では、対象物に超音波を照射し、その送信時刻と対象物における受信時刻との差に基づいて対象物の変位を測定するものが知られている。このような変位測定装置では、超音波の受信を検出するための電圧閾値の決定方法が変位測定精度において重要となり、受信強度の低下に伴い到達時間の判定に誤差が増加する。さらに、超音波の空気中における減衰や分散の影響によって、対象物に到達するまでの経路においてその波形が変化し、その波形変化が受信時刻の決定において障害となる。
【0007】
そのため、超音波の受信時刻を検出するために超音波の受信した電圧閾値を利用せず、周波数掃引波の超音波を用い、送信信号と受信信号との位相差に基づく変位測定法が提案されている。しかしながら、測定可能な変位の範囲が超音波の一波長以内に限られる。
【0008】
そこで、波長より広い範囲にわたって変化する変位を、波長より十分微小な分解能を持って高精度で計測するため、異なる2つの周波数f1及びf2による位相遅延計測を切り替えながら2度行うことで、実質的に「f1-f2」の周波数を使用して位相を計測することが知られ、特許文献1に記載されている。
【0009】
また、波形発生器から波形受信機へタイミング情報を正確に伝達するため、超音波バーストを送信することが知られているが、超音波バーストは周波数スペクトラムにおいて無限の広がりを持っている。それに対し、実在の波形発生器、波動伝搬媒質及び波形受信機は、不均等な振幅周波数特性及び位相周波数特性を多少なり有している。そのため、矩形の電気信号パルスや矩形の超音波バーストは受信端において変形を受け、タイミング情報を厳密に伝達することが困難である。
【0010】
特に、超音波計測装置で使用している圧電セラミック素子は狭帯域の周波数特性を有するため、受信波形は強い歪みを受ける。また、超音波バーストの前縁のような、信号的に過渡応答特性の強く影響する領域を使用すると、送受信素子の特性のばらつきが計測精度やタイミング情報の伝達精度に影響を与えやすくなる。さらに、波形の包絡線は伝送路の振幅周波数特性及び位相周波数特性の双方の影響を受けるため、これら特性を有する伝送路を利用する場合には、包絡線の形状が変化し易くなり、その結果、タイミング情報の伝達精度が低下する。
【0011】
この欠点を補い精度を向上するため、位相の一致する点がただ一つ設けられた送信信号として、二つの周波数からなるうなり信号となった超音波バーストを送信する。そして、この位相一致点を受信時刻基準点とする位相一致法と呼ばれる測定手段が知られ、例えば、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2004-191145号公報
【文献】特許第4621924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来技術である位相一致法は、良質なうなりを発生して受信することが重要となる。そのため、特許文献2では、送信機で周波数信号を複数生成し、位相を調整した後、複数の周波数信号を合成している。そして、生成された合成波形を記憶し、D/A変換してアナログ信号に変換する。さらに、増幅部でアナログ信号を増幅して超音波素子である圧電型セラミック振動体を駆動し、合成された複数の周波数信号を超音波で受信機へ送信している。
【0014】
したがって、合成波形の生成に複雑な処理が必要でコスト高となるばかりでなく、増幅部はアナログ信号を扱うため、無駄な消費電力を必要とする。また、歪みの少ない良質なうなりが必要となる。また、超音波素子を駆動するには大振幅、高出力が必要になり、高周波数で駆動するには超音波としては比較的に低周波数の40kHzで駆動せざるを得なかった。
【0015】
また、低周波数の超音波素子は低エネルギで振動を発生できるが、遠方まで伝達すると、そのビーム径は大きくなり、特許文献2に記載のものでは小型のターゲットの位置測定には不向きであった。さらに、小ビーム径を持つ高周波数素子は、駆動させるためにより高いエネルギを必要としており、電気回路的に合成して良質な合成波形としてうなりを発生させることが極めて困難であった。
【0016】
さらに、特許文献2に記載のものでは、測定可能な方向は、送信機の向かう方向が一方向のみであり、ターゲットが移動する場合などは測定が困難であった。つまり、そのためには超音波の測定方向を変化させる必要があり、送信機側を可動、あるいはセンサを複数配置させなければならなかった。
【0017】
しかし、センサを複数配置しても測定箇所を変える毎に、センサ位置を変更する必要があり時間及びコストの面からみてデメリットが大きい。また、広い測定面を有するセンサの代表は画像に基づく測定が知られているが、光を使用するため工作機近傍のラインにおいては光学系の汚損により正しく測定できないことが多い。そのため、画像による測定は、シリンダブロックの加工ライン等には適していなかった。
【0018】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、合成波形の生成を簡単にしてコストを抑制すると共に、測定可能な方向を容易に可変することを可能とする。そして、複数の測定箇所、移動するターゲットに対しても距離測定を高精度で行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明は、送信機から受信機へ超音波ビームを送信して、送信から受信までの伝搬時間を求めることより前記送信機と前記受信機間における距離を測定する超音波計測装置において、複数の振動子がアレイ状に配置された前記送信機と、前記振動子の送信タイミングを制御するタイミング調整・同期回路と、前記複数の振動子のうち第1周波数で超音波を送信する第1群の前記振動子と、前記複数の振動子のうち第2周波数で超音波を送信する第2群の前記振動子と、第1群及び第2群の前記振動子から送信される前記超音波ビームが重なる位置に配置された前記受信機と、前記受信機で得られた信号の位相から受信時刻基準点を求め、前記送信機で送信を開始した時刻と前記受信時刻基準点とに基づいて前記送信機と前記受信機間における距離を求める解析装置と、を備え、前記第1群の前記振動子及び前記第2群の前記振動子の送信は、一方は送信継続時間が有限な超音波バースト波、他方は連続波とされたことを備えたものである。
【0020】
これにより、複数の振動子をアレイ状に配置し、第1群の振動子は第1周波数で、第2群の振動子は第2周波数で超音波を送信し、それぞれの超音波ビームが重なる位置に配置された受信機で得られた信号の位相から受信時刻基準点を求めるので、受信機での合成波形の生成を簡単にしてコストを抑制すると共に、測定可能な方向を容易に可変することが可能となる。
ここで、超音波ビームが重なる位置とは、超音波ビームが重なることによって発生するうなりを受信することができる位置という意味であり、必ずしも超音波ビームが初めて重なる位置のみを意味するものではない。
また、前記送信機と前記受信機における距離とは、前記送信機から前記受信機への超音波の経路の距離を意味するものであり、必ずしも送信機と受信機との直線距離のみを意味するものではない。
【0021】
また、上記のものにおいて、前記振動子の送信タイミングを前記タイミング調整・同期回路によって順番に遅らすことで、測定方向を決定することが望ましい。
【0022】
さらに、上記のものにおいて、前記振動子の送信タイミングを前記タイミング調整・同期回路によって変えることで、測定方向を切り替えることが望ましい。
【0023】
さらに、上記のものにおいて、前記第1群の前記振動子及び前記第2群の前記振動子の数は、測定箇所の大きさに応じて決定されることが望ましい。
【0024】
さらに、上記のものにおいて、前記第1群の前記振動子及び前記第2群の前記振動子の送信は、少なくともいずれか一方が、送信継続時間が有限な超音波バースト波とされたことが望ましい。
【0025】
さらに、上記のものにおいて、前記送信機は前記振動子をオンオフ信号で駆動するスイッチ回路を備え、前記解析装置は、前記スイッチ回路より前記送信機で送信を開始した時刻を決定するトリガ信号を得て前記受信機で得られた信号をサンプリングすることが望ましい。
これにより、送信から受信までの伝搬時間の算出がより正確となる。また、駆動回路の消費電力を低減し、高周波数の超音波の送信が可能となる。
【0026】
さらに、上記のものにおいて、第1群及び第2群の前記振動子から送信される前記超音波ビームのサイズは、いずれか一方が他方よりも小さくされたことが望ましい。
これにより、測定軸方向以外による影響を避けることができる。
【0027】
また、本発明は、送信機から受信機へ超音波ビームを送信して、送信から受信までの伝搬時間を求めることより前記送信機と前記受信機間における距離を測定する超音波計測方法であって、前記送信機は複数の振動子がアレイ状に配置され、前記複数の振動子は第1群と第2群にグループ分けされ、第1群の前記振動子は第1周波数で、第2群の前記振動子は第2周波数であり、前記第1群の前記振動子及び前記第2群の前記振動子の送信は、一方は送信継続時間が有限な超音波バースト波、他方は連続波とされた超音波を送信し、前記第1群及び前記第2群の前記振動子から送信される前記超音波ビームが重なる位置に配置された前記受信機で得られた信号の位相から受信時刻基準点を求め、前記送信機で送信を開始した時刻と前記受信時刻基準点とに基づいて前記送信機と前記受信機間における距離を求めるものである。
ここで、超音波ビームが重なる位置とは、超音波ビームが重なることによって発生するうなりを受信することができる位置という意味であり、必ずしも超音波ビームが初めて重なる位置のみを意味するものではない。
また、前記送信機と前記受信機における距離とは、前記送信機から前記受信機への超音波の経路の距離を意味するものであり、必ずしも送信機と受信機との直線距離のみを意味するものではない。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数の振動子をアレイ状に配置し、第1群の振動子は第1周波数で、第2群の振動子は第2周波数で超音波を送信し、それぞれの超音波ビームが重なる位置に配置された受信機で得られた信号の位相から受信時刻基準点を求めるので、合成波形の生成を簡単にしてコストを抑制すると共に、測定可能な方向を容易に可変することが可能となる。したがって、複数の測定箇所、移動するターゲットに対しても距離測定を高精度で省エネルギなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による一実施形態に係る超音波計測装置の基本構成図
【
図4】本発明による一実施形態に係る波形合成の説明図
【
図5】本発明による一実施形態に係る測定例を示す図
【
図6】本発明による一実施形態に係る距離の測定方法を示す図
【
図7】本発明による一実施形態に係る測定の応用例を示す図
【
図8】本発明の一実施形態における送信機の信号処理を示すブロック図
【
図9】一実施形態における送受信の信号処理を示すブロック図
【
図10】本発明の一実施形態における受信機の信号処理を示すブロック図
【
図12】従来技術による位相一致法におけるうなり波の合成方法を示す説明図
【
図14】本発明による他の実施形態に係る波形合成の説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
超音波距離計測は、空中でも液中でも金属の中でも、音が伝わる環境ならば、距離計測が可能となり、測定距離が60mmから10mと長い。それにより、種々のポジショニングとして、ロボット吸着前の高さ制御、ロボットアームの位置決め、鋼板の位置ずれ検出、工作機械等の位置決め、溶接位置の倣い制御、液晶ガラスの位置決め、太陽電池基板の搬送停止位置測定など幅広く用いられている。
【0032】
また、自動車の生産のような多機種少量生産の下では、生産効率、ラインの全長、付帯設備に係るコスト、及びラインの稼働率などの観点から、機種ごとの専用ラインで製品を組み立てるよりも、多機種に対応できる多機種混合ラインで製品を組み立てる方が好ましい。また、自動車のエンジンの製造工場には鋳物等であるシリンダブロックの加工ラインがあり、シリンダブロックの製造工程では、加工ライン、つまりインラインにおいて複数箇所の測定が行われている。
【0033】
したがって、測定箇所を能動的に変化させることを可能とし、かつ超音波を使用することでオイルミストや粉塵のような悪環境でも安定して測定を可能とする。また、超音波周波数を任意に最適化して被測定物にマッチしたスポットサイズを選択できるようにする。
【0034】
超音波計測装置は、送信機により超音波を送信し受信機で受信することにより、対象物の有無や対象物までの距離を検出する。超音波の送信・受信には超音波素子が用いられ、超音波素子は電気エネルギを印加して超音波を発生、又は超音波振動エネルギを電気信号に変換する素子で、通常超音波センサには圧電現象を利用したチタン酸バリウム振動素子を用いる。
【0035】
圧電素子は交流電圧を加えると素子が振動し、固有の周波数を持ち、その周波数と同じ周波数の交流電圧を加えることで効率良く振動する。一般的に40kHzのものが多く使用され、長い距離を測定するには低い周波数、短い距離を正確に測るには高い周波数のものが使われている。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波計測装置10の基本構成図、
図2は送信方法を示す原理図である。超音波の測定方向を変化させる技術として、超音波フェーズドアレイ方式が知られている。
図1は、超音波フェーズドアレイとなるように送信機3と受信機1共に、送信側の振動素子3-1、3-2、3-3、…3-n、受信側の振動素子1-1、1-2、1-3、…1-n、を平面的にアレイ状に配置したものである。
【0037】
送信側の振動素子3-1、3-2、3-3、…3-nは、タイミング調整・同期回路13によって送信タイミングが制御され、さらにこの振動素子から受信を行う。送信側の振動素子3-1、3-2、3-3、…3-nは、
図2に示すように送信機の振動素子3-1の作る波21、振動素子3-2の作る波22、振動素子3-3の作る波23が合成され、意図する方向に走る単一の波24を形成するように複数の超音波を送信する。
【0038】
同様に、受信機1は複数の素子からの入力を合成する。これにより、複雑形状の検査及び測定、移動するターゲットの距離測定、複数箇所の測定などに柔軟に対応することができる。なお、送信機3を複数の振動素子3-1、3-2、3-3、…3-nで平面的にアレイ状に配置して、受信機1は振動素子1-nの数を少なくしても良く、低価格化には有利である。
【0039】
図2は送信機3から振動素子を順番に少しずつ遅れて音波を送信した様子であり、送信機3の各振動素子のタイミングをずらしながら送信したものである。個々の振動素子が作る波21、22、23の位相がそろう面、波24が送信機3のアレイ全体として生成する波となる。図に示すように振動素子3-1、3-2、3-3の送信タイミングがずれているため、進行方向25がアレイの方向に対して角度を持っている。
【0040】
うなり信号となった超音波バーストを送信し、この位相一致点を受信時刻基準点とする位相一致法と呼ばれる測定手段で高精度化を図ることができるが、従来技術である位相一致法は、良質なうなりを発生して受信することが重要となる。そのため、送信機で周波数信号を複数生成し、位相を調整した後、複数の周波数信号を合成している。したがって、超音波の測定方向を変化させるために超音波フェーズドアレイ方式とすることは極めて困難であった。
【0041】
図11は、従来の超音波による位置測定の説明図、
図12は、従来技術である位相一致法におけるうなり波の合成方法を示す説明図であり、
図11、12を参照して本願の特徴である上記を詳細に説明する。
【0042】
図11において、超音波送信機50は40kHz程度で超音波バーストを送信する。距離Lだけ離れた位置に設置された超音波受信機51で受信する。送信波形52は、包絡線が矩形となっているので開始位置は一意的に決まるはずであるが、受信波形53は受信側素子による減衰、応答特性により変形する。また、フィルタにより周波数選択性を持たせることは、帯域外のノイズを除去し、システムの信号対雑音比を向上させ、測定距離を延長するためには不可欠となる。したがって、受信波形53から受信信号の包絡線54から単純に閾値を設定して受信時刻を得るものでは正確に伝搬時間を決定することが困難となる。
【0043】
図12の従来技術は、
図11の欠点を解消するもので、位相一致法と呼ばれる測定手段
である。周波数f1(60)、周波数f2(61)の波形を合成してf1+f2のうなり信号62を計算し、メモリ64に格納する。超音波送信機63ではメモリ64に格納されたデータをD/A変換して振幅と位相が変化するアナログ信号に変換して駆動回路65(アナログ増幅回路)へ伝達する。駆動回路65では、超音波素子である圧電型セラミックを駆動するのに必要な電力に変換する。超音波素子66は、超音波バースト67を送信する。
【0044】
合成波形は、測定距離、超音波素子の特性、ターゲットの大きさ等に応じてそれぞれ生成することとなり、その都度、メモリ64に格納されるデータが必要となる。駆動回路65は、増幅部はアナログ信号を扱うため、無駄な消費電力を必要とする。また、超音波素子を駆動するには大振幅、高出力が必要になり、高周波数で駆動するには超音波としては比較的に低周波数の40kHzで駆動せざるを得なかった。
【0045】
また、低周波数の超音波素子は低エネルギで振動を発生できるが、遠方まで伝達すると、そのビーム径は大きくなり、40kHz程度の駆動では小型のターゲットの位置測定には不向きであった。さらに、小ビーム径を持つ高周波数素子は、駆動させるためにより高いエネルギを必要としており、300kHz程度の高周波数の信号を電気回路的に合成すること、高出力で歪み無く駆動することは困難であった。
【0046】
図12の従来技術を
図1、2で示した超音波フェーズドアレイ方式に応用しようとすると、合成波形を電気的に生成したうえで、送信機3の各振動素子のタイミングをずらしながら送信しなければならず、極めて複雑化することとなる。また、仮にできたとしても、送信機3で周波数信号を複数生成し、位相を調整した後、送信機3で超音波バースト67を送信することとなる。したがって、正確に伝搬時間を決定することが困難となり、複数の周波数信号を電気的に合成してから測定方向を変化できる超音波フェーズドアレイ方式とすることは極めて困難であった。
【0047】
そこで、本発明では2種の異なる単一周波数波の超音波をフェーズドアレイ方式で任意方向へ送信することとし、受信側で空間的にうなり信号を合成する。これにより、送信機3は、タイミングをずらしながら2種の異なる周波数の超音波を送信すれば良い。したがって、フェーズドアレイ方式を用い、任意の方向の距離を測定できる位相一致法を実現することが容易となる。
【0048】
図3は、一実施形態に係る構成図、
図4は、波形合成の説明図であり、送信機3のアレイを構成する振動素子の半数のグループを第1周波数である周波数f1で、残りの半数のグループを第2周波数である周波数f2で超音波ビームを送信する。
図4で示すように、
図2と同様に、第1群の振動子3-1、3-2、3-3のタイミングをずらしながら周波数f1で送信する。振動素子3-1、3-2、3-2の周波数f1の作る波の位相がそろう面が周波数f1の波41となり、矢印43のような進行方向となる。なお、振動素子のグループ分けは、半数ずつとせずに、一方を多くしても良く、測定箇所に応じて決定することで柔軟な対応ができる。
【0049】
一方、第2群の振動子3-6、3-7、3-8のタイミングをずらしながら周波数f2でf1と同時に送信する。振動素子3-6、3-7、3-8の周波数f2の作る波の位相がそろう面が周波数f2の波42となり、矢印44のような進行方向となる。波41と波42は、共に受信機1の振動素子1-5に向かう。これにより、異なる2つの周波数f1、f2が受信機の振動素子1-5で空間的に合成され、うなり波形を受信する。受信されたうなり波形に対して位相一致法を用いて超音波の到着時刻を正確に求めることができる。
【0050】
図13は、他の実施形態に係る構成図、
図14は、他の実施形態に係る波形合成の説明図であり、送信機3のアレイを構成する振動素子の半数のグループを第1周波数である周波数f1で、残りの半数のグループを第2周波数である周波数f2で超音波ビームを送信する。
図3、4の構成に対して周波数f1と周波数f2で送信する振動素子を交互に配置した点が異なる。
図14で示すように、
図2と同様に、第1群の振動子3-1、3-2、3-3のタイミングをずらしながら周波数f1で送信する。振動素子3-1、3-2、3-3の周波数f1の作る波の位相がそろう面が周波数f1の波41となり、矢印43のような進行方向となる。なお、
図3、4の構成に対して周波数f1の波の進行方向43と周波数f2の波の進行方向44を略平行にできるので、送信機3から受信機1までの経路を略同一にできる。したがって、各振動素子の大きさに係わらず、超音波の到着時刻をより正確に求めることができる。なお、本実施形態では、周波数f1と周波数f2とを最初から合成して発生させることができるので、うなりを周波数f1の波と周波数f2の波の進行方向を変えることにより、うなりそのものの伝搬方向を変えることができる。
【0051】
一方、第2群の振動子3-6、3-7、3-8のタイミングをずらしながら周波数f2でf1と同時に送信する。振動素子3-6、3-7、3-8の周波数f2の作る波の位相がそろう面が周波数f2の波42となり、矢印44のような進行方向となる。波41と波42は、共に受信機1の振動素子1-5に向かう。これにより、異なる2つの周波数f1、f2が空間的に合成され、受信機1でうなり波形を受信する。受信されたうなり波形に対して位相一致法を用いて超音波の到着時刻を正確に求めることができる。
【0052】
図5は測定例を示し、被測定物70に測定箇所70-1、70-2と言うように2カ所の測定すべきターゲットがある。シリンダブロックの加工ラインなどで良くある例である。通常ならば、測定箇所70-1、70-2のそれぞれに対向するように配置された2組の超音波計測装置10が必要となる。
【0053】
本実施例では、送信側の振動素子3-1、3-2、3-3、…3-nの送信タイミングをタイミング調整・同期回路13によって変えることで、測定方向を切り替えることができる。そのため、一つの超音波計測装置10で測定方向を切り替えて検出が可能となる。また、測定箇所であるターゲットの大きさに応じて送信する振動素子の数を決定すれば良く、ターゲットの大きさが大きい場合は、周波数f1及びf2で送信する振動素子の数を増やすことで対応が可能となる。
【0054】
図6は、距離の測定方法を示す図であり、横軸は時間、縦軸は被測定物70までの距離を示している。送信機3は、
図2で示すように時刻T=0で振動素子3-1の送信を開始し、順次、振動素子3-2、振動素子3-3を時刻T=t1までに送信する。送信タイミングは、タイミング調整・同期回路13によって制御される。
【0055】
送信機3は、空中へ高周波数の超音波を送信するため、超音波素子を高電圧のオンオフ信号、つまり矩形波でパルス的に駆動するスイッチ回路で所定時間だけ連続する超音波バースト波、あるいは超音波パルスの連続波として送信する。
【0056】
受信機1で得られた信号は解析装置でサンプリングしてA/D変換され、メモリに記録される。そして、受信波形から位相差が0となる点を検出する位相一致法により受信時刻基準点が求められる。送信機3へ送信を開始するため送信トリガを掛けた時刻と、求められた受信時刻基準点とに基づいて伝搬遅延時間を求め、送信機3から受信機1までの距離を決定する。
【0057】
図14で示したように、送信機3のアレイを構成する振動素子の半数を周波数f1で、残りの半数を周波数f2で送信するので、波41と波42は、被測定物70で反射され、共に受信機1の振動素子1-5(
図14)に向かう。これにより、異なる2つの周波数f1、f2が受信機1の振動素子1-5で空間的に合成され、うなり波形として受信される。受信された時の到着時刻をtrとすると、
図6の距離L1とL2は、媒体の音速をVとして、
【0058】
L1+L2=(tr-t1)×Vとして求められる。
【0059】
なお、送信機3の周波数f1、周波数f2の送信は、少なくともいずれか一方が、送信継続時間が有限な超音波バースト波であれば良く、他方を連続波としても良い。距離L1+L2は、超音波バースト波とした方のタイミングによって決定すれば良い。もちろん両方共に、バースト波であっても良い。
【0060】
距離測定においては、送信機3の波41と波42の超音波ビームの重なるエリアが測定可能なエリアとなる。そのため、一方を連続波とした場合、その超音波ビームのサイズを大きくすることで測定軸方向での測定可能エリアが広がり、測定方向に対する誤差となる恐れがある。そこで、一方の超音波ビームのサイズを他方の超音波ビームのサイズよりも小さくすることが好ましく、バースト波とする超音波ビームを連続波とする超音波ビームのサイズより小さくすることがより好ましい。
【0061】
図7は、加工ラインでの測定例を示し、加工ラインの両側に超音波計測装置10となる超音波フェーズドアレイで構成された送信機3及び受信機1を配置した例である。ライン搬送過程においては、搬送される加工物の種類や大きさを測定することで加工ミスなどの歩留まりを向上させることができる。そして、種類判別には接触式センサや非接触の画像センサが多く使用されている。しかし、接触式センサの場合、判定箇所に正対する位置に配置する必要があり、ライン進行方向には設置することができない。また、画像センサの場合、汚損の可能性がある。
【0062】
本発明によれば、測定方向を切り替えることができるため、超音波計測装置10を一対として図のように配置することで、進行方向に対して前面、側面、背面における測定箇所70-3、70-4、70-5、70-6の測定、検出が可能となる。
ここで、超音波計測装置10を構成する超音波素子6,7(
図9参照)は、回路(送信用回路、受信用回路)の切り替えにより送信機3としても受信機1としても使用することができる。よって、送信機3と受信機1を別々に設けても良いし、一つの超音波計測装置10が内部の超音波素子への回路の切り替えにより送信機3としても受信機1としても使用できるようにしても良い。
【0063】
なお、測定とは例えば距離測定であり、測定箇所70-3に穴、段差等があればその深さ測定を行い、加工が正常に行われたどうかを判定できる。また、被測定物70にその種類に応じて段差によるマークを付与しておけば、被測定物70の種類、品番等の判別を行うことができる。これにより、複雑形状の検査及び測定、移動するターゲットの距離測定、複数箇所の測定などに柔軟に対応することができる。
【0064】
図8は、送信機の信号処理の詳細、
図9は送受信機の信号処理、
図10は受信機の信号処理の詳細を示すブロック図である。
図8は、上に
図4における超音波素子である振動素子3-1、3-2、3-3の信号処理、下に振動素子3-6、3-7、3-8の信号処理を示している。なお、
図8、
図9、
図10において超音波素子として図示しているものは、超音波フェーズドアレイとなるように配置された振動素子を示している。
【0065】
図8において、タイミング調整・同期回路13によって、測定の事前準備が開始され、その信号は、CPU4-1に入力される。CPU4-1は矩形波であるパルス信号を生成する。周波数f1(304kHz)によるパルス信号がスイッチ回路5-1に入力され、振動素子3-1が駆動される。スイッチ回路5-1では振幅歪みが問題になるようなアナログ信号を増幅する訳でないので、連続波であっても駆動回路自体で無駄な消費電力を必要としないオンオフするだけとなる。
【0066】
タイミング調整・同期回路13の信号は、送信機3の振動素子3-6を制御するCPU4-2に入力される。CPU4-2は矩形波であるパルスバースト信号を生成する。周波数f2(296kHz)によるパルスバースト信号がスイッチ回路5-2に入力され、振動素子3-6が所定時間だけ駆動される。
【0067】
振動素子3-1側は、296kHz、振動素子3-6側は、304kHzのパルス信号を生成する。スイッチ回路5-1、5-2は、電気的に合成されたうなり信号のようなアナログ信号を扱う訳でないので、駆動回路自体で無駄な消費電力を必要としないオンオフするだけで良い。したがって、高周波数の300kHz前後まで大振幅、高出力で駆動することが可能となり、歪みも無く、測定精度も距離的にも一桁上げることができる。
【0068】
図8に示すように、うなり信号は、周波数f1、位相φ1の信号と、周波数f2、位相φ2の信号との合成である。二つの位相は各々の周波数で高速に変化するが、その差では-πからπの間を変化するだけとなる。したがって、うなり信号の1パケット中には位相差が0になる点が必ず一つだけ存在する。
【0069】
受信機1では、振動素子3-1側と振動素子3-6側とで送信された信号が区間的に合成されるので、合成された信号の位相は-πからπの間を変化するだけとなる。この中に位相一致点は一点存在するので、合成波形から受信時刻基準点として解析装置9で抽出する。これにより、受信時刻基準点の検出を数μsの精度で検出できる。
【0070】
図9において、送信機3は、スイッチ回路5で出力したパルス信号をトリガ信号として解析装置9へ伝達している。スイッチ回路5の入力側のタイミング調整・同期回路13からスイッチ回路5に至る遅延時間の影響を避けることができる。
【0071】
受信機1は超音波素子7により、送信機3より送出された超音波パルスバースト波と、送信機3より送出された超音波パルスの連続波と、が合成されたバースト的なうなり信号を受信する。超音波素子7は、帯域外のノイズを除去してシステムの信号対雑音比を向上させるフィルタ8を介して解析装置9へ接続される。
【0072】
図10の受信機1において、送信機3により送信された超音波パルスバースト波と、連続波である超音波パルス波とは、受信機1の位置(
図4の1-5)で、つまり空間的にうなり信号として合成され、そのうなり信号が超音波素子7で受信される。超音波素子7で受信された信号は、フィルタ8を介して解析装置9へ送られ、帯域外のノイズの除去、増幅等を経て分析される。
【0073】
解析装置9は、位相一致法により受信時刻基準点を求める。そして、送信を開始するためタイミング調整・同期回路13により送信トリガを掛けた時刻と、求められた受信時刻基準点とに基づいて伝搬遅延時間を求め、送信機3から受信機1までの距離を決定する。
【0074】
図9、
図10において、解析装置9では、受信機1での受信信号を送信機3より入力された送信を開始した時刻を決定するトリガ信号を基準にしてサンプリングしてA/D変換し、FFT処理を行う。つぎに、送信機3の時刻原点におけるキャリヤの位相を求め、その差より位相一致点を求めて受信時刻基準点とする。受信時刻基準点が検出できれば、トリガを掛けた時刻と受信時刻基準点との差として伝搬遅延時間が分かり、送信機3から受信機1までの距離を決定することができる。
【0075】
A/D変換する際のメモリのアドレスは受信時刻に対応するので、伝搬遅延時間は、送信機3にトリガを掛けた時刻のメモリ書き込み番地を解析装置9で記録し、受信信号がサンプリングされた際の記録アドレスにより求めることができる。
【0076】
伝搬遅延時間には超音波素子の応答時間も含まれるため、実際の距離の測定においては、伝搬遅延時間を距離に換算する必要があり、応答時間等をキャンセルする必要がある。そのため、送信機3及び受信機1を所定の距離だけ離して設置し、その距離を基準として相対変位を計測する。送信機と受信機間の距離では無く、変位を測定する場合は、例えば受信機1の位置を基準ゲージに合わせて移動し、送信機3と受信機1間の距離の変化を校正値とする。
【0077】
また、この校正は基準ゲージに相当するものを変えて数点で測定し、校正値を求めることが良い。また、超音波計測装置10の測定結果は大気変化の影響を受けるので、解析装置9で気温も記録しておき、距離測定の校正を行うことが望ましい。
【0078】
また、測定に信号の位相を使うため、周囲の反射波によるマルチパスによる測定誤差を受けるが、短時間のバースト波を使っているので解析装置9での信号処理をバーストの継続時間に比べて十分高速に行えば、計測時間をバーストの継続時間に近づけることができる。したがって、マルチパス波と直接波の行路差が測定距離以上あればマルチパスによる影響を避けることができる。
【0079】
また、周波数が同じで振動素子の寸法が異なった場合、振動素子寸法が大きい場合は指向性が鋭くなり、近距離ではビーム幅が大きいが、遠距離で超音波ビームはあまり広がらない。一方、振動素子寸法が小さいと指向性が鈍くなり、近距離でビーム幅が小さくなる。
【0080】
従来、複数箇所の測定には「センサの複数配置」や「広い測定面を有するセンサ」などの方法が採られている。しかし、センサを複数配置しても測定箇所を変える毎に、センサ位置を変更する必要があり時間・コストの面からみてデメリットが大きい。また、画像に基づく測定では、光を使用するため工作機近傍のラインにおいては光学系の汚損により正しく測定できないことも多い。
【0081】
本発明では、超音波フェーズドアレイで構成された送信機3及び受信機1とを配置することで、測定箇所を能動的に変化させることが可能となる。また、超音波を使用するためオイルミストや粉塵のような悪環境でも安定して測定が可能である。さらに、超音波周波数を任意に最適化できるため被測定物にマッチしたスポットサイズを選択できる。
【符号の説明】
【0082】
1 受信機
1-1、1-2、1-3、…1-n (受信側)振動素子
3 送信機
3-1、3-2、3-3、…3-n (送信側)振動素子
(3-1、3-2、3-3 第1群の振動子)
(3-6、3-7、3-8 第2群の振動子)
4-1、4-2 CPU
5、5-1、5-2 スイッチ回路
6 超音波素子(送信側)
7 超音波素子(受信側)
8 フィルタ
9 解析装置
10 超音波計測装置
13 タイミング調整・同期回路
21、22、23、24、41、42 波
25 進行方向
43、44 矢印
50、63 超音波送信機
51 超音波受信機
52 送信波形
53 受信波形
54 包絡線
60 周波数f1
61 周波数f2
62 うなり信号
64 メモリ
65 駆動回路
66 超音波素子
67 超音波バースト
70 被測定物
70-1、70-2、70-3、70-4、70-5、70-6 測定箇所