(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された射出成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220411BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220411BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20220411BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20220411BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20220411BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08K3/08
C08K7/00
C08K7/06
H05K9/00 X
(21)【出願番号】P 2021501011
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 KR2019015571
(87)【国際公開番号】W WO2020145500
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0004003
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、キ-テ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨンチュ
(72)【発明者】
【氏名】イ、オン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】ユン、チャンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミンス
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2017-0090040(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0177765(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106700526(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ベース樹脂80~100重量%及び補強樹脂0~20重量%を含む熱可塑性樹脂100重量部に、b)平均直径3~15μmの線状のカーボン繊維2~60重量部、c)BET比表面積200~400m
2/gのカーボンナノフィブリル1~5重量部、d)カーボンナノプレート1~15重量部、及びe)金属粉末1~25重量部を含
み、
前記c)カーボンナノフィブリルは、平均直径が4~30nm、かつ縦横比が80~500であり、前記d)カーボンナノプレートは、平均厚さが2~50nmの板状のナノカーボンであることを特徴とする、耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記b)成分からe)成分までの総重量の和は5~80重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ベース樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記補強樹脂は衝撃補強樹脂であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記e)金属粉末は磁性金属粉末であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記磁性金属粉末は、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択された1種以上の金属粉末であることを特徴とする、請求項
5に記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記e)金属粉末は、平均直径が1~100μmであることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、潤滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤及び無機充填材からなる群から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂組成物は、熱変形温度が150℃以上であり、電磁波遮蔽dB値が47以上であることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ISO 180A方法による試片の厚さ4mmの条件で、ノッチ付きアイゾット衝撃強度が70KJ/m
2以上であることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
a)ベース樹脂80~100重量%及び補強樹脂0~20重量%を含む熱可塑性樹脂100重量部と;b)平均直径3~15μmの線状のカーボン繊維2~60重量部と;c)BET比表面積200~400m
2/gのカーボンナノフィブリル1~5重量部と;d)カーボンナノプレート1~15重量部と;e)金属粉末1~25重量部とを、押出機を用いて250~320℃及び250~350rpmの条件下で溶融混練して押出するステップを含
み、前記c)カーボンナノフィブリルは、平均直径が4~30nm、かつ縦横比が80~500であり、前記d)カーボンナノプレートは、平均厚さが2~50nmの板状のナノカーボンであることを特徴とする、耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記押出後、押出物をペレタイザで切断してペレットを収得するステップを含むことを特徴とする、請求項
11に記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、電磁波遮蔽能を有する射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2019年1月11日付の韓国特許出願第10-2019-0004003号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された射出成形品に関し、より詳細には、衝撃強度などのような機械的物性と伝導性に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽能、特に高周波数の電磁波の遮蔽効率に優れるので、自動車部品及び電気電子部品に使用することができ、さらに、アルミニウム、マグネシウム合金などの金属の代替材として有用に使用することができる熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された射出成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
市場のニーズに応じて、電子製品は、小型化、高集積化、及び高性能化が進んでおり、これによって、さらに高い耐熱性と電磁波遮蔽性能を有する素材が求められる状況である。
【0004】
アルミニウム、マグネシウム、銅などのような金属素材の場合、放熱や電磁波遮蔽性能に著しい効果を示すため電子部品に多く使用されているが、成形性及び生産性が良くなく、部品のデザインが制限的であるという限界を有する。
【0005】
これにより、従来にカーボン繊維で強化された熱可塑性樹脂組成物が開発されたが、導電性には優れる反面、電磁波遮蔽性能や外観品質及び耐熱性は望むほど達成されなかった。
【0006】
また、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂などのような熱可塑性樹脂に多重壁炭素ナノチューブと炭素系伝導性添加剤を含む樹脂組成物が開発されたが、これもまた、十分な電磁波遮蔽性能と耐熱性を達成するのに失敗した。
【0007】
そこで、基本となる機械的物性と伝導性に優れながらも、耐熱性、電磁波遮蔽能及び外観品質がいずれも優れた自動車部品及び電気電子部品用のプラスチック素材の開発が切実な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、衝撃強度などのような機械的物性と伝導性に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽能、特に高周波数の電磁波の遮蔽効率に優れるので、自動車部品及び電気電子部品に使用することができ、さらに、アルミニウム、マグネシウム合金などの金属の代替材として有用に使用することができる熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された射出成形品を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、a)ベース樹脂80~100重量%及び補強樹脂0~20重量%を含む熱可塑性樹脂100重量部と;b)平均直径3~15μmの線状のカーボン繊維2~60重量部と;c)BET比表面積200~400m2/gのカーボンナノフィブリル1~5重量部と;d)カーボンナノプレート1~15重量部と;e)金属粉末1~25重量部とを含む耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、a)ベース樹脂80~100重量%及び補強樹脂0~20重量%を含む熱可塑性樹脂100重量部と;b)平均直径3~15μmの線状のカーボン繊維2~60重量部と;c)BET比表面積200~400m2/gのカーボンナノフィブリル1~5重量部と;d)カーボンナノプレート1~15重量部と;e)金属粉末1~25重量部とを、押出機を用いて250~320℃及び250~350rpmの条件下で溶融混練して押出するステップを含む耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、本記載の熱可塑性樹脂組成物を含む電磁波遮蔽能を有する射出成形品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、衝撃強度などのような機械的物性と伝導性に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽能、特に高周波数の電磁波の遮蔽効率に優れるので、自動車部品及び電気電子部品に使用することができ、さらに、アルミニウム、マグネシウム合金などの金属の代替材として有用に使用することができる熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された射出成形品を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の製造のための、混練ブロックが9個以上備えられた押出機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された射出成形品を詳細に説明する。
【0017】
本発明者らは、ナイロン66のような熱可塑性樹脂に、線状のカーボン繊維、カーボンナノフィブリル、カーボンナノプレート及び金属粉末を所定の重量比で混合した場合に、製造された熱可塑性樹脂組成物が、衝撃強度などのような機械的物性に優れながらも、耐熱性及び電磁波遮蔽性能などが大きく向上することを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0018】
本発明の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物は、a)ベース樹脂80~100重量%及び補強樹脂0~20重量%を含む熱可塑性樹脂100重量部と;b)平均直径3~15μmの線状のカーボン繊維2~60重量部と;c)BET比表面積200~400m2/gのカーボンナノフィブリル1~5重量部と;d)カーボンナノプレート1~15重量部と;e)金属粉末1~25重量部とを含むことを特徴とする。このような場合に、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能がいずれも優れるという効果がある。
【0019】
他の例として、本発明の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物は、a)ベース樹脂80~100重量%及び補強樹脂0~20重量%を含む熱可塑性樹脂100重量部と;b)線状のカーボン繊維2~60重量部と;c)カーボンナノフィブリル1~5重量部と;d)カーボンナノプレート1~15重量部と;e)金属粉末1~25重量部とを含むことを特徴とし、このような場合に、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能がいずれも優れるという効果がある。
【0020】
本記載において、平均長さ、平均直径、及び/又は平均厚さは、別に定義しない限り、光学顕微鏡(TEM)を用いて対象を40個測定し、これらを算術平均した値である。
【0021】
以下、本記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物などを構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0022】
a)ベース樹脂
本記載に係るベース樹脂は、一例として、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましい例として、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、ポリアミド樹脂であってもよく、この場合に、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れながらも、機械的物性と耐熱性が大きく向上するという効果がある。
【0023】
前記ポリアミド樹脂は、一例として、ナイロン4.6、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン6.10、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、MXD6及び共重合ポリアミドから選択された1種以上であってもよく、好ましくはナイロン66であり、この場合に、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性と電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0024】
前記ポリアミド樹脂は、一例として、96重量%硫酸水溶液100mlにポリアミド1gを溶解させて製造された溶液を使用して20℃で測定した相対粘度が、1.5~5、好ましくは2.0~4.5、より好ましくは2.1~2.8であってもよく、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性と電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0025】
前記共重合ポリアミドは、一例として、前記ポリアミドのうちの2以上のポリアミドの単量体を含んで重合された共重合体である。
【0026】
前記ポリカーボネート樹脂は、MIで表される溶融指数(300℃、1.2kg)が、一例として、5~40g/10分又は10~35g/10分であってもよく、好ましくは15~30g/10分であり、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性と電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0027】
前記ポリエステル樹脂は、一例として、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(エステル)ウレタン、及びポリエーテルエステルから選択された1種以上であってもよく、好ましくはポリブチレンテレフタレートであってもよく、この場合に、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0028】
前記ポリエステル樹脂は、MIで表される溶融指数(250℃、2.16kg)が、一例として、5~50g/10分又は0~40g/10分であってもよく、好ましくは15~30g/10分であり、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性と電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0029】
前記ポリケトン樹脂は、一例として、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、またはこれらの混合であってもよい。
【0030】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、一例として、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,3,6-トリエチル-1,4-フェニレン)エーテル及びこれらの変性重合体から選択された1種以上の重合体、あるいはこれを含む共重合体であってもよく、好ましくは、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)またはその共重合体であってもよい。
【0031】
本発明において、変性重合体とは、不飽和カルボン酸またはその無水物などの反応性単量体と重合体が反応して製造された生成物を意味する。
【0032】
前記ポリスチレン樹脂は、一例として、ホモポリスチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、及びスチレン-ブタジエン共重合体から選択された1種以上であってもよい。
【0033】
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂は、一例として、ポリフェニレンスルフィド樹脂であってもよい。
【0034】
前記ポリオレフィン樹脂は、特に制限されないが、具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、及びプロピレン-1-ブテン共重合体などからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0035】
本記載に係る補強樹脂は、一例として、衝撃補強樹脂であってもよく、好ましくは、不飽和カルボン酸及びその無水物からなる群から選択された1種以上(以下、‘変性剤’という)でグラフトされた変性ポリオレフィン樹脂であってもよく、この場合に、衝撃強度が大きく向上するという効果がある。
【0036】
前記グラフト方法、すなわち、変性方法は、本発明の属する技術分野で通常使用される変性方法であれば、特に制限されず、一例として、溶融混練法、溶液法またはスラリー法によって行われてもよい。
【0037】
前記溶融混練法は、一例として、ポリオレフィン樹脂と変性剤を、ラジカル重合用触媒下で、押出機を用いて150~350℃の温度で溶融混練する方法であってもよい。
【0038】
また、前記溶液法又はスラリー法は、一例として、トルエン、キシレンなどのような有機溶媒に、ポリオレフィン樹脂、変性剤及びラジカル重合触媒を投入して溶解又はスラリー状態にした後、80~350℃の温度で撹拌しながらグラフト(変性)反応させる方法であってもよい。
【0039】
前記不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂の変性に使用される不飽和カルボン酸であれば、特に制限されず、一例として、アクリル酸、α-エチルアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ハロゲン化マレイン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ハロゲン化シトラコン酸、クロトン酸、ハロゲン化クロトン酸、イタコン酸、ハロゲン化イタコン酸、及びシス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはマレイン酸であってもよい。
【0040】
ここで、ポリオレフィン樹脂は、一例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、及びプロピレン-1-ブテン共重合体などからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはポリエチレンであってもよく、この場合に、衝撃強度及び電磁波遮蔽性能が向上するという効果がある。
【0041】
前記変性ポリオレフィン樹脂は、一例として、変性剤を0.5~4重量%、0.5~3重量%、0.5~2.5重量%、または0.8~2重量%含む、すなわち、変性又はグラフトされた重合体であってもよく、この範囲内で、衝撃強度が大きく向上するという効果がある。
【0042】
b)線状のカーボン繊維
本記載に係る線状のカーボン繊維は、平均直径が3~15μm又は5~12μmであり、好ましくは6~12μmであり、より好ましくは5~10μmであってもよく、この範囲内で、製品の強度及び遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0043】
前記線状のカーボン繊維は、一例として、2~60重量部又は10~50重量部であり、好ましくは15~40重量部であり、より好ましくは20~35重量部であり、最も好ましくは30~35重量部であってもよく、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0044】
本記載において、線状のカーボン繊維は、本発明の属する技術分野で線状のカーボン繊維として定義又は区別されるものであれば、特に制限されないが、通常、全体的に“一”字状を有するカーボン繊維を意味し、具体的には、ストランド内に螺旋状又は円筒状に巻かれた構造がなく、“一”字状であるカーボン繊維を意味し、一例として、ストランド内の長手方向に90°以上、好ましくは30°以上、より好ましくは10°以上曲がっていない“一”字状のカーボン繊維を意味する。
【0045】
前記線状のカーボン繊維は、平均長さが、一例として、0.1~12mm、0.2~9mm、または0.3~6mmであってもよく、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0046】
前記線状のカーボン繊維は、一例として、10~100k又は40~60kのラージトウ(Large Tow)繊維であってもよく、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。ここで、1kは、1,000個の短繊維ストランドを意味する。
【0047】
c)カーボンナノフィブリル
本記載に係るカーボンナノフィブリルは、BET比表面積が180~600m2/gであり、好ましくは200~500m2/gであり、より好ましくは200~400m2/gであってもよく、この範囲内で、伝導性、耐熱性及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0048】
本記載において、BET比表面積は、BET法によって測定された比表面積として定義され、窒素吸着を使用したブルナウアー(Brunauer)、エメット(Emmett)及びテラー(Teller)方法(ASTM 6556に準拠した方法)により測定される。
【0049】
前記カーボンナノフィブリルは、一例として、1~5重量部であり、好ましくは1~4重量部であり、より好ましくは1~3重量部であり、最も好ましくは1~2重量部であってもよく、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0050】
前記カーボンナノフィブリルは、一例として、平均直径が4~30nm、または5~20nmであり、縦横比(aspect ratio)が80~500であってもよく、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0051】
本記載において、カーボンナノフィブリルの縦横比は、水平断面の横と縦との比率を意味し、横及び縦のうちの短い長さ(2a)に対して、横と縦のうちの長い長さ(2b)の比率値(b/a)で示す。
【0052】
前記カーボンナノフィブリルは、平均長さが、一例として、1~500μm、または2~200μmであってもよく、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0053】
本記載において、カーボンナノフィブリルの平均直径、縦横比及び平均長さは、電子顕微鏡(SEM)を用いて対象を40個測定し、これらを算術平均した値である。
【0054】
d)カーボンナノプレート
本記載に係るカーボンナノプレートは、一例として、1~15重量部、1~10重量部、または2~10重量部であり、好ましくは3~10重量部であり、より好ましくは5~10重量部であり、最も好ましくは3~5重量部であってもよく、この範囲内で、引張強度及び衝撃強度が改善され、耐熱性に優れるという効果がある。
【0055】
前記d)カーボンナノプレートは、平均厚さが、一例として、2~50nmであって、板状のナノカーボンと称することができ、具体例として、剥離グラファイト、グラフェンナノプレート及び剥離膨張黒鉛などから選択された1種以上を含むことができ、この範囲内で、引張強度及び衝撃強度が改善され、耐熱性に優れるという効果がある。
【0056】
本記載において、カーボンナノプレートの平均厚さは、電子顕微鏡(SEM)を用いて対象を40個測定し、これらを算術平均した値である。
【0057】
e)金属粉末
本記載に係る金属粉末は、一例として、1~25重量部または1~20重量部であり、好ましくは3~20重量部であり、より好ましくは5~20重量部であり、最も好ましくは10~20重量部であってもよく、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0058】
前記e)金属粉末は、一例として、磁性金属粉末であってもよく、好ましくは、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群から選択された1種以上の金属粉末であり、より好ましくはニッケル(Ni)金属粉末であり、この場合に、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0059】
前記e)金属粉末は、一例として、平均直径が1~100μmであってもよく、好ましくは20~80μmであり、より好ましくは30~70μmであり、最も好ましくは40~60μmであり、この範囲内で、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0060】
本記載において、金属粉末の平均直径は、光学顕微鏡(TEM)を用いて対象を40個測定し、これらを算術平均した値である。
【0061】
前記e)金属粉末は、一例として、有機バインダーでコーティングされた金属粉末であってもよく、前記有機バインダーは、ステアリン酸のような本発明の属する技術分野で通常使用される有機バインダーであれば、特に制限されない。
【0062】
前記b)成分からe)成分までの総重量の和は、一例として、5~80重量部、または20~70重量部であってもよく、好ましくは30~60重量部であり、より好ましくは36~55重量部であり、最も好ましくは48~55重量部であり、この範囲内で、引張強度、衝撃強度及び伝導性に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0063】
添加剤
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、難燃剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、潤滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤及び無機充填材からなる群から選択された1種以上の添加剤を、必要に応じてさらに含むことができる。
【0064】
前記添加剤は、一例として、0.1~20重量部含まれてもよく、好ましくは0.1~10重量%であってもよく、この範囲内で、樹脂組成物の物性を妨げないと共に、添加剤固有の特性が良好に発現されるという効果がある。
【0065】
前記難燃剤は、本発明の属する技術分野で通常使用される難燃剤であれば、特に制限されず、具体例として、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)などのようなハロゲン系難燃剤、アルキルホスフェート、アリルホスフェートなどのようなリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどのような無機系難燃剤から1種以上を選択して使用することができる。
【0066】
前記無機充填材は、炭素を含まず、無機成分からなる無機充填材であれば、特に制限されない。
【0067】
残りの添加剤も、難燃剤と同様に、本発明の属する技術分野で通常使用されるものであれば、特に制限されない。
【0068】
上述した内容は、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な結合及び限定が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような結合及び限定が本発明の範囲に属することも当然である。
【0069】
熱可塑性樹脂組成物
本記載に係る熱可塑性樹脂組成物は、一例として、熱変形温度が150℃以上であり、電磁波遮蔽dB値(@1GHz)が47以上であってもよく、好ましくは、熱変形温度が150~250℃であり、電磁波遮蔽dB値が47~60であり、より好ましくは、熱変形温度が215~250℃であり、電磁波遮蔽dB値が50~60であり、最も好ましくは、熱変形温度が240~245℃であり、電磁波遮蔽dB値が50~55であり、この範囲内で、機械的物性、伝導性及び外観品質に優れるという効果がある。
【0070】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ISO 180A方法による試片の厚さ4mmの条件で、ノッチ付きアイゾット衝撃強度が70KJ/m2以上、好ましくは70~120KJ/m2、より好ましくは80~120KJ/m2以上であってもよく、この範囲内で、伝導性、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能に優れるという効果がある。
【0071】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、a)ベース樹脂80~100重量%及び補強樹脂0~20重量%を含む熱可塑性樹脂100重量部と;b)平均直径3~15μmの線状のカーボン繊維2~60重量部と;c)BET比表面積200~400m2/gのカーボンナノフィブリル1~5重量部と;d)カーボンナノプレート1~15重量部と;e)金属粉末1~25重量部とを、押出機を用いて250~320℃及び250~350rpmの条件下で溶融混練して押出するステップを含むことを特徴とする。このように製造される熱可塑性樹脂組成物は、伝導性及び衝撃強度に優れながらも、耐熱性、外観品質及び電磁波遮蔽性能がいずれも優れるという効果がある。
【0072】
下記の
図1は一例であって、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造のための、混練ブロックが9個以上備えられた押出機の模式図である。以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0073】
前記押出機の種類は、特に制限されず、当業界で通常使用されているものであれば、適宜選択して行うことができ、一例として、1個のスクリューを備えた一軸押出機、または複数個のスクリューを備えた多軸押出機を使用することができ、材料の均一な混練、加工の容易性及び経済性などを考慮すると、スクリューが2個である二軸押出機を使用することが好ましい。
【0074】
通常、押出機は、シリンダーともいうバレル(barrel)の内部に材料を供給するための原料供給器(feeder)と、バレルの内部に供給された材料を運送及び混練するためのスクリュー(screw)と、混練された材料を押出するためのダイ(die)とで構成され、前記スクリューは、様々な機能を付与するために、複数個のスクリューエレメントで構成される。
【0075】
前記原料供給器は、1つ以上であってもよく、必要に応じて選択的に2つ以上または3つ備えられてもよい。一例として、主投入口及び選択的に補助投入口が備えられてもよく、補助投入口は、必要に応じて、2つ以上または3つ備えられてもよい。
【0076】
具体的な一例として、前記主投入口に熱可塑性樹脂、線状のカーボン繊維、カーボンナノフィブリル、カーボンナノプレート及び金属粉末が一括投入されてもよく、他の一例として、前記主投入口に熱可塑性樹脂を投入した後、補助投入口に線状のカーボン繊維、カーボンナノフィブリル、カーボンナノプレート及び金属粉末を投入することができる。
【0077】
他の一例として、前記主投入口に熱可塑性樹脂を投入し、補助投入口1に線状のカーボン繊維、カーボンナノフィブリル、カーボンナノプレート及び金属粉末のうちの一部を投入した後、残量を補助投入口2に投入することも可能である。
【0078】
他の一例として、前記主投入口に熱可塑性樹脂を投入し、補助投入口1には線状のカーボン繊維、カーボンナノフィブリル、カーボンナノプレート及び金属粉末を投入し、補助投入口2には酸化防止剤や熱安定剤などの添加剤が投入されてもよい。
【0079】
本発明の混練ブロックは、前記スクリューエレメントの一例であって、具体的には、複数個のディスク、好ましい一例として、3~7枚、5~7枚、3~5枚、または4~5枚のディスクで構成され、通常、多角形あるいは楕円形などの断面を備えており、材料の移送方向に連続的に配列される。また、前記混練ブロックにおいてディスクの位相角(ディスク相互間の移動角を意味する)は、通常、45~90°をなす。
【0080】
また、混練ブロックは、材料の移送、分配及び混合能力を備えた正方向(forward)混練ブロックと、材料の移送能力なしに、分配及び混合能力のみを備えた直交(neutral)方向混練ブロックと、材料を移送方向の反対方向に逆移送させる逆方向(backward)混練ブロックなどがある。
【0081】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、混練ブロックが、一例として、9個以上、10個以上、10~18個、または12~16個である押出機を用いて混練及び押出するステップを含んで製造されてもよい。このとき、混練ブロックは、樹脂の流れ方向に対して正方向、直交方向、そして、逆方向の順に組み合わせて使用することが効果的であり、混合方法に応じて、連続又は分離されたブロックの組み合わせを使用することができる。この場合に、分散性、相溶性などがさらに改善され、より高品質の熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0082】
前記混練ブロックは、9個以上が連続的に配列されてもよく、他の一例として、スクリューの間に不連続的に配列されてもよい。具体的な一例として、主投入口と補助投入口1との間に3~6個の混練ブロックが連続的に備えられ、補助投入口1と補助投入口2との間に3~8個の混練ブロックが連続的に備えられ、補助投入口2と吐出口(図示せず)との間に2~5個の混練ブロックが備えられてもよい。このように配列される場合に、溶融混練時の局所的な発熱が制御され、原料物質の熱変形を防止することができ、線状のカーボン繊維及びカーボンナノフィブリルの過度の切断が防止されて、電気伝導性及び機械的な物性に優れるという利点を提供する。
【0083】
前記混練及び押出は、バレル温度が、一例として、250~320℃、280~310℃、または290~310℃である範囲内で行われてもよく、この場合に、単位時間当たりの処理量が適切であると共に、十分な溶融混練が可能となり得、樹脂成分の熱分解などの問題を引き起こさないという利点がある。
【0084】
また、前記混練及び押出は、スクリュー回転数が、一例として、250~350rpm、または250~310rpmである条件下で行われてもよく、この場合に、単位時間当たりの処理量が適切であるので、工程効率に優れながらも、伝導性フィラー(ナノカーボンフィブリルなど)の過度の切断を抑制して、最終品の伝導性などがさらに優れるという利点を提供する。
【0085】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、一例として、押出後、押出物をペレタイザで切断してペレットを収得するステップを含むことができ、この場合に、取り扱いが容易であり、射出成形を通じて電磁波遮蔽射出成形品の製造が容易であるという利点がある。
【0086】
前記a)~e)成分に関する具体的な内容は、上述した内容と同一であるので省略する。
【0087】
射出成形品
本記載の射出成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする。
【0088】
前記射出成形品の製造方法は、一例として、本記載の耐熱性と電磁波遮蔽能に優れた熱可塑性樹脂組成物を、バレル温度250~300℃及び金型温度60~100℃の温度下で射出成形して製造するものであってもよい。このように製造された射出成形品は、熱変形温度150℃以上、及び、電磁波遮蔽dB(@1GHz)値47以上、または47~60であってもよく、好ましくは50~60であり、より好ましくは50~55を満たすことができる。
【0089】
前記射出成形品は、一例として、自動車部品または電気電子部品であってもよく、特に、電装部品カバー、回路部品、インバータカバーなどの用途で、アルミニウム合金、マグネシウム合金などのような金属材質の部品の代替品として有用に適用される。
【0090】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0091】
[実施例]
下記の実施例及び比較例で使用した成分は、次の通りである。
(a1)ナイロン66樹脂として、相対粘度2.4、数平均分子量14,000g/molであるInvista社の製品3600を使用した。
(a2)ポリカーボネート樹脂として、溶融指数(300℃、1.2kg)30g/10分であるLG化学の製品1330を使用した。
(a3)ポリブチレンテレフタレート樹脂として、溶融指数(250℃、2.16kg)30g/10分であるLG化学の製品GP2000を使用した。
(a4)無水マレイン酸0.5~2重量%で変性されたポリエチレン樹脂を使用した。
(a5)ポリフェニレンエーテル樹脂として、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル(旭化成社の製品201A)を使用した。
(b)炭素繊維として、平均直径7μmであり、50kラージトウ製品であるZoltek社の製品Pyrofilを使用した。
(c)カーボンナノフィブリルとして、BET比表面積が200~300m2/gであり、平均直径が10~15nm、炭素純度95重量%であるLG化学の製品CP1002Mを使用した。
(d)カーボンナノプレートとして、日本黒鉛社の板状の黒鉛製品であるCB-100を使用した。
(e)金属粉末として、平均直径が50μmであるニッケル金属粉末を使用した。
【0092】
(実施例1~6及び比較例1~4)
下記の表1に記載の通り、当該成分を二軸押出機に投入し、温度250~320℃及び回転数300回転/分に設定し、溶融混練して押出した後、吐出された押出物をペレタイザで切断してペレットに製造した。評価用試片は、製造されたペレットを射出機[エンゲル社、80トン]を用いて射出温度(バレル温度)250~300℃及び金型温度70~100℃の条件下で射出成形して製造した。
【0093】
[試験例]
前記実施例1~6及び比較例1~4で製造された試片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表1に示した。
1)引張強度及び伸び率:ASTM D638方法によって測定し、試片の厚さは3.2mmであり、測定速度は5mm/minとし、測定単位はMPaとした。
2)衝撃強度:ノッチ付きアイゾット(Notched Izod)衝撃強度であって、ISO 180A方法に準拠して測定し、試片の厚さは4mmであり、試片にノッチを付けた後、常温(23℃)で測定し、測定単位はkJ/m2とした。
3)熱変形温度:ISO 75-2方法に準拠して測定し、試片の厚さは4mmであり、0.45MPaの応力下で測定し、測定単位は℃とした。
4)表面抵抗:組成物の射出試片の表面抵抗を、プロスタット(Prostat)社のPRS-801を用いて測定した。
5)電磁波遮蔽:1GHzで遮蔽のレベルを、エレクトロメトリクス(Electro metrics)社のEM2107Aを用いて測定した。
6)外観品質:目視で射出試片の外観を評価した。このとき、成形性及び外観が優れる場合を○、外観が良好な場合を△、外観が低調な場合を×、外観が非常に不良な場合を××と評価した。
【0094】
【0095】
前記表1に示したように、本発明に係る(b)~(e)成分を全て含む本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1~6参照)は、(b)~(e)成分のうちの一部が省略された熱可塑性樹脂組成物(比較例1~4参照)と比較して、引張強度、衝撃強度、熱変形温度(耐熱性)及び伝導性は概ね高く、外観品質はさらに優れ、電磁波遮蔽性能は遥かに優れることが確認できた。特に、ナイロン66を含み、(b)~(e)を総重量48~55重量部の範囲以内で混合した実施例1~3の場合には、引張強度、熱変形温度(耐熱性)及び電磁波遮蔽性能が著しく向上することが確認できた。