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特許7056036植物保護資材および植物保護資材用樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】植物保護資材および植物保護資材用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20220412BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20220412BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20220412BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20220412BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
A01G13/02 D ZBP
C08L67/02
C08L67/04
C08K5/29
A01G13/02 M
C08L101/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017161367
(22)【出願日】2017-08-24
(65)【公開番号】P2019037169
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】楠野 篤志
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-094882(JP,A)
【文献】特開2014-183805(JP,A)
【文献】特開2016-208849(JP,A)
【文献】特開2002-330691(JP,A)
【文献】国際公開第2015/042641(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/00-13/02
C08L 67/02-67/04
C08K 5/29
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とを含む脂肪族ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位および芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)、脂肪族オキシカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂(C)、並びにカルボジイミド化合物(D)を含む樹脂組成物からなる植物保護資材であって、
該樹脂組成物のメルトフローインデックス(MFR)が1g/10分以上、5g/10分以下であり、
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)及びポリエステル樹脂(C)の合計100質量部に対して、前記カルボジイミド化合物(D)を0.1~2質量部含む植物保護資材。
【請求項2】
前記カルボジイミド化合物(D)が、ポリカルボジイミド化合物である、請求項1に記載の植物保護資材。
【請求項3】
前記ポリカルボジイミド化合物が、脂肪族ポリカルボジイミド化合物である、請求項2に記載の植物保護資材。
【請求項4】
ネット状、筒状又はシート状である、請求項1ないしのいずれかに記載の植物保護資材。
【請求項5】
植物に巻き付けて使用される、請求項1ないしのいずれかに記載の植物保護資材。
【請求項6】
脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とを含む脂肪族ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位および芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)、脂肪族オキシカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂(C)、並びにカルボジイミド化合物(D)を含む植物保護資材用樹脂組成物であって、
該植物保護資材用樹脂組成物のメルトフローインデックス(MFR)が1g/10分以上、5g/10分以下であり、
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)及びポリエステル樹脂(C)の合計100質量部に対して、前記カルボジイミド化合物(D)を0.1~2質量部含む植物保護資材用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物保護資材および植物保護資材用樹脂組成物に関する。詳しくは、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂などを含む樹脂組成物よりなる植物保護資材およびそのための樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、森林の植物の野生鳥獣による被害は、主に、鹿、熊、ウサギ等によってもたらされる場合が多く、特に、植物が幼木や苗木の場合、ウサギ、鹿、牛、キリン等の草食動物による植物の木の芽、葉、樹皮等の食害による樹木の枯れや成長阻害が問題となっていた。
【0003】
このような野生鳥獣の食害から植物を保護する方法として、例えば、特許文献1には、樹木の幹に巻き付けて動物による食害を防止するネット又はシート状植物保護資材が記載されており、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部とポリカプロラクトン1~200重量部からなるポリエステル樹脂組成物100重量部に対してタルク5~100重量部を配合して得られるポリエステル樹脂組成物をネット状に成形してなる植物保護資材が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、少なくとも生分解性樹脂によりシート状に形成し、かつ樹木の幹の所定位置に巻付可能なバンド部と、少なくとも生分解性樹脂により形成し、前記バンド部を前記幹の所定位置に巻付けた際に、前記バンド部を筒状に固定可能な固定部を備える鳥獣害防止具が記載されている。特許文献3には、合成樹脂ネットからなる、角筒形状の網筒体の四隅のコーナー部に、L形の断面形状を備えた非硬質で変形及び復元が自在な合成樹脂製の縦帯を設けた獣害防止用網筒体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-346575号公報
【文献】特開2002-330691号公報
【文献】特開2004-187677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3には、植物保護資材や獣害防止器具の構成材料として生分解性樹脂を用いることが記載されている。これは、幼木などの樹木に取り付けて幼木を野生鳥獣の食害から保護し、その幼木が成長した後、若しくは、幼木ではなく樹木に取り付け食害から保護できた後に、それらの植物保護資材や獣害防止器具が不要となった際に、生分解性樹脂であれば、分解されて土中に還元される(土中でも分解される)ので、人手で取り外す手間と労力が不要であることによる。
【0007】
しかしながら、特許文献1~3に記載されている生分解性樹脂からなる植物保護資材や獣害防止器具では、空気中の水分などで生分解が進んでしまい、幼木や苗木が成長するために必要な十分な期間、植物を保護できずに分解されてしまう問題があった。また、これらの保護資材や器具を植物に取り付けるまで倉庫等に保管している期間中に、水分によって生分解が起こり、保護資材や器具に要求される形状や物性を維持できず(形状が崩れてしまう)、植物に取り付けて使用することができなくなるという問題もあった。
【0008】
また、シート状やネット状に加工して樹木に巻き付けて用いる保護資材では、その使用形態に適した形状に加工しやすい材料である必要がある。また、巻き付けるためには、シートとしての伸びも必要であり、取り付け時にシートが切れることがないように、且つ使用中に動物に噛み切られることがないように、相応の破断強度も必要である。
【0009】
しかし、従来の植物保護資材では、適度な生分解性を有し、かつ、このような成形加工性、伸縮性、強度などの物性にバランス良く優れるものが提供されていなかった。
【0010】
本発明は、植物保護のための所望の期間は植物を十分に保護し、その後分解し得る生分解性を有し、且つ、保管時には形状や物性を安定的に維持でき、破断強度等の機械的強度、伸縮性、成形加工性にも優れた植物保護資材並びに植物保護資材用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、カルボジイミド化合物(D)を、脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とを含む脂肪族ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位および芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)並びに脂肪族オキシカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂(C)に配合した樹脂組成物よりなる植物保護資材が、上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は以下の[1]~[5]を要旨とする。
【0013】
[1] 脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とを含む脂肪族ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位および芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)、脂肪族オキシカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂(C)、並びにカルボジイミド化合物(D)を含む樹脂組成物からなる植物保護資材。
【0014】
[2] 前記カルボジイミド化合物(D)が、ポリカルボジイミド化合物である、[1]に記載の植物保護資材。
【0015】
[3] 前記ポリカルボジイミド化合物が、脂肪族ポリカルボジイミド化合物である、[2]に記載の植物保護資材。
【0016】
[4] 前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)及びポリエステル樹脂(C)の合計100質量部に対して、前記カルボジイミド化合物(D)を0.1~2質量部含む、[1]ないし[3]のいずれかに記載の植物保護資材。
【0017】
[5] ネット状、筒状又はシート状である、[1]ないし[4]のいずれかに記載の植物保護資材。
【0018】
[6] 植物に巻き付けて使用される、[1]ないし[5]のいずれかに記載の植物保護資材。
【0019】
[7] 脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とを含む脂肪族ポリエステル樹脂(A)、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位および芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)、脂肪族オキシカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂(C)、並びにカルボジイミド化合物(D)を含む植物保護資材用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る植物保護資材用樹脂組成物では、生分解性樹脂である脂肪族ポリエステル樹脂(A)、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)、及びポリエステル樹脂(C)の加水分解を、カルボジイミド化合物(D)により遅延させることができる。このため、このカルボジイミド化合物(D)の配合により、植物保護資材の保管時等には生分解を防止して形状や物性を安定に維持し、また、植物保護資材として植物に適用した後も、植物保護のための所望の期間中は生分解を防止し、その後、植物保護資材が不要となった際には生分解されるように、生分解時期を制御することができる。また、脂肪族ポリエステル樹脂(A)、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、及びカルボジイミド化合物(D)の配合で、植物保護資材として必要な伸縮性や強度等の物性、成形加工性をバランスよく発現させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書において、“質量%”及び“質量部”と、“重量%”及び“重量部”とは、それぞれ同義である。
【0022】
また、本明細書において、「脂肪族ジオール」とは「脂肪族ジオール(鎖状ジオール)」と「脂環式ジオール(環状ジオール)」とを含む広義の「脂肪族ジオール」を意味する。また、「脂肪族ジカルボン酸」についても「脂肪族ジカルボン酸」と「脂環式ジカルボン酸」とを含む広義の「脂肪族ジカルボン酸」を意味する。「脂肪族オキシカルボン酸」についても同様である。
【0023】
本発明の植物保護資材は、植物保護資材が脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とを含む脂肪族ポリエステル樹脂(A)(以下、「成分(A)」と称す場合がある。)、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位および芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)(以下、「成分(B)」と称す場合がある。)、脂肪族オキシカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂(C)(以下、「脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)」又は「成分(C)」と称す場合がある。)、並びにカルボジイミド化合物(D)(以下、「成分(D)」と称す場合がある。)を含む本発明の植物保護資材用樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0024】
本発明の植物保護資材の特徴は、上記の成分(A)~(D)を含む樹脂組成物を成形して得られる成形体を用いることにある。成分(A)~(D)の詳細については、後述する。
【0025】
ポリブチレンサクシネート(PBS)に代表される生分解性樹脂である成分(A)~(C)の生分解のメカニズムとしては、加水分解が挙げられ、土中若しくは空気中の水分の存在で、ポリマーの末端カルボキシル基がその分解を進行させる。本発明では、生分解性樹脂である成分(A)~(C)に対して、成分(D)を配合する。成分(D)は生分解性樹脂の加水分解を起きにくくする成分であり、そのメカニズムは、成分(D)が成分(A)などの樹脂の末端カルボキシル基を部分的に保護することで、末端カルボキシル基と水分との接触を防ぎ、加水分解を防止することによる。これによって、生分解、生分解による分子量低下に到るまでの時間が遅延される結果、成分(A)~(C)の樹脂の分子量が維持されるようになり、形状、物性を保つことができるようになる。
ただし、成分(D)を入れすぎると、生分解が進みにくくなるので、成分(D)の配合量は、所望の生分解の時期、生分解を遅延すべき程度に応じて制御する必要がある。また、成分(D)を入れると、樹脂組成物の流動性(MFR)も下がることからバブルの安定性、ネックインの向上となり成形しやすくなるが、入れすぎると著しい流動性の低下のため樹脂圧が高くなり成形しにくくなる。この観点からも、好適な成分(D)の配合割合が設定される。
一般に、植物保護資材用樹脂組成物に要求される生分解性としては、例えば、幼木が食害を受けずに成長して、成木になるまで保護できれば、後は生分解して土中で分解することが望まれ、その生分解の速度と成形性等のバランスから、成分(D)の配合量は適度な量が設計される。
【0026】
本発明の植物保護資材の形状としてはネット状、筒状又はシート状が挙げられる。ここでシートは孔あきのメッシュ状のもの(メッシュシート)も含まれる。また、本発明の植物保護資材は、グリッド状であってもよい。
本発明の植物保護資材は、通常、植物に巻き付けて使用されるが、植物を囲むように、植物の周囲に取り付けて使用される場合もある。また、植物に覆い被せて使用される場合もある。
【0027】
ネットは繊維を縦及び横に組み合わせて固定したものである。縦糸と横糸の固定は製織によるものであってもよく、縦糸と横糸の接着、融着によるものであってもよい。ネットの好適な厚さ、幅、高さは以下に記載するシートと同様である。ネットを構成する繊維又は繊維束の太さは植物保護資材を適用する植物、被害を及ぼす野生鳥獣等の種類、使用環境(風の強さ等)などによるが、100~10,000デニールが好ましい。また、ネットのメッシュは0.1~100mmが好ましい。ネットは樹木の幹の周りに直接巻き付けてもよいし、樹木の周囲に巡らせた支柱に固定してフェンス様に取り付けることもできる。
【0028】
筒状の植物保護資材としては、厚さが通常0.1~10mm、好ましくは0.3~5mmで、長さ及び幅は特に限定はなく、適用する植物の大きさに合わせて、広幅、長尺物から切断するか、又は一定の規格のものを成形してそれを複数枚使用して所望の幅、長さのものを形成して使用に供する。筒状の植物保護資材は、円筒形に限らず、四か所に折り目をつけ、断面四角形状の角筒形に加工してもよく、通気性を確保するために表面に孔をあけたものでもよく、また設置の際に添え棒と固定できるように留め具を設けてもよい。筒状の植物保護資材は、例えば幼木に上から被せ、添え木で固定して使用される。
【0029】
シートとしては、厚さが通常0.1~10mm、好ましくは0.3~5mmで、長さ及び幅は特に限定はなく、適用する植物の大きさに合わせて、広幅、長尺物から切断するか、又は一定の規格のものを成形してそれを複数枚使用して所望の幅、長さのものを形成して使用に供する。シートの表面には格子状に凹凸を設けて補強作用を持たせるようにすることができる。シートの使用方法はネットと同様である。
【0030】
メッシュシートは上記シートに孔をあけるか、又は孔あきシートに成形されたものである。孔の形状は円、四角、亀甲等任意のものが使用できる。メッシュシートの厚さ、長さ、幅は上記シートと同様であり、メッシュを構成する縦部材と横部材の太さは0.1~10mm、目開きは0.1~10mmであることが好ましい。メッシュシートの使用方法はシートと同様である。
【0031】
グリッドは、全体の形状が柵又は垣根状のものに該当し、メッシュシートの縦部材と横部材が棒状又は板状のものであり、強度を要する場合に使用される。部材の太さ又は最大幅は1~100mm、目開きは10~500mmであることが好ましい。縦及び横の部材は交点で、はめ込み、接着又は融着されている。グリッドは予め所望の形状に成形するか、構成単位部材をそれぞれの形状に成形して組み合わせて使用するか、または縦及び横の部材を成形後、交点をはめ込み、接着又は融着して製造することができる。グリッドは、植物全体をカバーしたり、果樹等の周辺を囲うために使用することができる。棒あるいは筒状のグリッド部材は、これらを植物の周囲の地面に柵状に突き刺して動物の侵入を防いだり、同時に植物の傾斜、転倒を防止する支柱の役割もする。
【0032】
植物保護資材の成形方法としては、射出成形、押出成形、トランスファー成形、圧縮成形、ブロー成形等の各種成形方法が使用できる。例えば、ネットの成形方法としては、ミカン入れ網を作るダイヤ目合ネット方式やスクエア目合ネット方式で成形してもよいし、縦糸と横糸をそれぞれ金型から押出し融着する方法でもよい。縦糸と横糸は編まれてから加熱融着されてもよい。また、ネットを形成する糸は延伸されていてもよい。シートの成形方法としては、Tダイ押出し、ブロー、カレンダー成形等が挙げられる。その他メッシュシートやグリッドの成形方法としてはプラスチック製の篭、ざる、ゴルフクラブセパレーター、植栽用ネットもしくはフェンス等に適用される射出成形等の方法が使用できる。
【0033】
本発明の植物保護資材が適用される植物としては特に制限が無く、樹木、草、畑作物等何でもよい。植物保護資材は、植物の幹等に巻いたり、根、芽、葉、花、実等の特定部分の周囲を覆ったり、植物にドーム状に被せたり、植物を柵状に囲ったりして使用することができる。また、植物保護資材のうち薄手に成形したものは、植物の栽培で気温や光線の調節等に使用することができる。
【0034】
次に、本発明の植物保護資材の構成材料である本発明の植物保護資材用樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0035】
<脂肪族ポリエステル樹脂(A)>
脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位を必須成分とし、好ましくは、下記式(1)で表される脂肪族ジオール単位、並びに下記式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を必須成分とするものである。なお、脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、芳香族ジカルボン酸単位を含まないことで、後述の芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)とは区別される。
-O-R-O- (1)
-OC-R-CO- (2)
(上記式(1),(2)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を、Rは直接結合、2価の脂肪族炭化水素基、又は2価の脂環式炭化水素基を表す。)
【0036】
式(1)の脂肪族ジオール単位を与える脂肪族ジオール成分(a-1)は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でもエチレングリコール、1,4-ブタンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。
【0037】
式(2)の脂肪族カルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分(a-2)は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、中でもコハク酸、アジピン酸が好ましい。
【0038】
なお、上記脂肪族ジオール成分(a-1)、脂肪族ジカルボン酸成分(a-2)は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
【0039】
また、これらの構成単位の異なる2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(A)をブレンドして用いることもできる。具体的には、(a-1)が1,4-ブタンジオール、(a-2)がコハク酸である脂肪族ポリエステル系樹脂(A-1)と、(a-1)が1,4-ブタンジオール、(a-2)がコハク酸とアジピン酸である脂肪族ポリエステル系樹脂(A-2)とのブレンドが挙げられる。
【0040】
本発明で用いる脂肪族ポリエステル樹脂(A)には、更に脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。
【0041】
脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸成分の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、3-ヒドロキシ-n-吉草酸、ε-カプロラクトン、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。又は、これらの低級アルキルエステル、分子内エステルであってもよい。また、これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、又はラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、又は水溶液のいずれであってもよい。これらの中で好ましいものは、乳酸又はグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸成分は単独でも、2種以上の混合物としても使用することができる。
【0042】
脂肪族ポリエステル樹脂(A)がこれらの脂肪族オキシカルボン酸成分を含有する場合、その含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を構成する全構成成分中、下限が0モル%を超え、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0043】
また本発明の脂肪族ポリエステル樹脂(A)が、3官能以上の、脂肪族及び/又は脂環式多価アルコール、脂肪族及び/又は脂環式多価カルボン酸或いはその無水物、又は脂肪族多価オキシカルボン酸を共重合成分として含有していてもよく、これらの3官能以上の成分を含有することで、得られる脂肪族ポリエステル樹脂(A)の溶融粘度を高めることができ好ましい。この場合、3官能の脂肪族又は脂環式多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン又はその無水物が挙げられ、4官能の脂肪族又は脂環式多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトールが挙げられる。3官能の脂肪族又は脂環式多価カルボン酸或いはその無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸又はその無水物が挙げられ、4官能の脂肪族又は脂環式多価カルボン酸或いはその無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその無水物が挙げられる。また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)2個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に有するタイプと、(ii)1個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に有するタイプとに分かれ、いずれのタイプも使用可能である。具体的には(i)のタイプのリンゴ酸が挙げられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基を同一分子中に共有するタイプとに分かれ、いずれのタイプも使用可能である。具体的には、クエン酸や酒石酸が挙げられる。これらの3官能以上の成分は1種単独で使用することも2種以上混合して使用することもできる。
【0044】
脂肪族ポリエステル樹脂(A)がこれらの3官能以上の成分を含有する場合、その含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を構成する全構成成分中、下限が0モル%を超え、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
【0045】
本発明で使用する脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、公知の方法で製造することができる。例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸成分(a-2)と脂肪族ジオール成分(a-1)、更に脂肪族オキシカルボン酸単位や3官能以上の成分を導入する場合には、それらの成分も含めたジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができるが、経済性ならびに製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合法が好ましい。
【0046】
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下に行うのが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
【0047】
重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族~14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ-ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
【0049】
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。
【0050】
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧~10kPaであるが、常圧が好ましい。
【0051】
反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
【0052】
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.01×10Pa以上であり、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度下として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
【0053】
脂肪族ポリエステル樹脂(A)を製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、同一又は異なる反応装置を用いて、溶融重合のエステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した攪拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には凝縮器を結合し、該凝縮器にて重縮合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーを回収する方法が好んで用いられる。
【0054】
本発明において、目的とする重合度の脂肪族ポリエステル樹脂(A)を得るためのジオール成分とジカルボン酸成分とのモル比は、その目的や原料の種類により好ましい範囲は異なるが、ジカルボン酸成分1モルに対するジオール成分の量は、下限が通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル以上であり、上限が通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下、特に好ましくは1.2モル以下である。
【0055】
また、生分解性に影響を与えない範囲で、脂肪族ポリエステル樹脂(A)には、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入することができる。
【0056】
なお、上述の脂肪族ポリエステル樹脂(A)の製造工程の途中、又は製造された脂肪族ポリエステル樹脂(A)には、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤及び紫外線吸収剤等を添加してもよい。後述の芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)、脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)やカルボジイミド化合物(D)についても同様である。
【0057】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃を超えると柔軟性が低下するため、好ましくない。脂肪族ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、好ましくは-120℃以上、-5℃以下である。なおガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いた結晶化温度観測後、引き続き10℃/分の速度で昇温する際のガラス転移開始温度を記録することにより求めることができる。
【0058】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(A)のメルトフローインデックス(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常0.1g/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、特に好ましくは10g/10分以下である。
【0059】
なお、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を2種以上用いる場合、或いは、後述の芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)や脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)を2種以上用いる場合、MFRは、各樹脂のMFRとその割合とから見掛け上のMFRとして算出される。
例えば、脂肪族ポリエステル樹脂(A)として、MFRがMa-1g/10分の脂肪族ポリエステル系樹脂(A-1)をx質量%と、MFRがMa-2g/10分の脂肪族ポリエステル系樹脂(A-2)y質量%とを合計で100質量%混合して用いる場合、見掛け上のMFRは
log[MFR]=
(x/100)×log[Ma-1]+(y/100)×log[Ma-2]
で計算により求めることができる。芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)、脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)についても同様である。
【0060】
本発明では、脂肪族ポリエステル樹脂(A)は1種に限らず、前述の如く、構成成分の種類や成分比、製造方法、物性等の異なる2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(A)をブレンドして用いることができる。
【0061】
<芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)>
芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)は、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位、並びに芳香族ジカルボン酸単位を必須成分とし、芳香族ジカルボン酸単位の含有量が、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位との合計に対し、好ましくは5~50モル%であるものである。芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)に含まれる脂肪族ジオール単位は下記式(3)で表され、脂肪族ジカルボン酸単位は下記式(4)で表され、芳香族ジカルボン酸単位は下記式(5)で表されることが好ましい。
-O-R-O- (3)
-OC-R-CO- (4)
-OC-R-CO- (5)
(上記式(3)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、式(4)中、Rは直接結合、2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、式(5)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を表す。)
【0062】
式(3)の脂肪族ジオール単位を与える脂肪族ジオール成分(b-3)は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でもエチレングリコール、1,4-ブタンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。
【0063】
式(4)の脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分(b-4)は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、中でもコハク酸、アジピン酸が好ましい。
【0064】
式(5)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分(b-5)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でもテレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。
【0065】
なお、上記脂肪族ジオール成分(b-3)、脂肪族ジカルボン酸成分(b-4)、芳香族ジカルボン酸成分(b-5)は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
【0066】
本発明において使用される芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)において、生分解性を発現させるためには芳香環の合間に脂肪族鎖が存在することが必要である。そのため、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)中の芳香族ジカルボン酸単位の量は、脂肪族(及び/又は脂環式ジカルボン酸)単位と芳香族ジカルボン酸単位の合計に対し、下限が好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、特に好ましくは15モル%以上であり、上限が好ましくは55モル%以下、より好ましくは48モル%以下である。この量が少なすぎると脂肪族ポリエステル樹脂(A)との組成物とした際、引き裂き強度等の力学強度改良効果が低くなる傾向がある。また多すぎると生分解性が不十分となる傾向がある。
【0067】
本発明で用いる芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)には、更に脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。
【0068】
脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸成分の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、3-ヒドロキシ-n-吉草酸、ε-カプロラクトン、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。又は、これらの低級アルキルエステル、分子内エステルであってもよい。また、これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、又はラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、又は水溶液のいずれであってもよい。これらの中で好ましいものは、乳酸又はグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸成分は1種単独でも、2種以上の混合物としても使用することができる。
【0069】
芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)がこれらの脂肪族オキシカルボン酸成分を含有する場合、その含有量は、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)を構成する全構成成分中、下限が0モル%を超え上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0070】
また、生分解性に影響を与えない範囲で、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)にはウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入することができる。
【0071】
芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)と同様の製法により製造することができる。
【0072】
本発明に用いられる芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)のメルトフローインデックス(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常0.1g/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、特に好ましくは10g/10分以下である。
【0073】
芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)についても1種を単独で用いても良く、構成成分の種類や成分比、製造方法、物性等の異なる2種以上の芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)をブレンドして用いることもできる。
【0074】
<脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)>
脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)は、脂肪族オキシカルボン酸単位を必須成分とするものであり、その脂肪族オキシカルボン酸単位は、下記式(6)で表されることが好ましい。
-O-R-CO- (6)
(上記式(6)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を表す。)
【0075】
式(6)の脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸成分(c-6)の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、3-ヒドロキシ-n-吉草酸、ε-カプロラクトン、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体のいずれでもよい。これらの中で好ましいものは、乳酸又はグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸成分(c-6)は、2種類以上を混合して用いることもできる。脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)は、これらの脂肪族オキシカルボン酸単位を脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)を構成する全構成成分中に通常50モル%以上、好ましくは70~100モル%含むものである。
【0076】
また、生分解性に影響を与えない範囲で、脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)にはウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入することができる。
【0077】
本発明で使用する脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)の製法は、特に限定されるものではなく、オキシカルボン酸の直接重合法、あるいは環状体の開環重合法、微生物生産法等の公知の方法で製造することができる。
【0078】
本発明に用いられる脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)は結晶性、非晶性何れでも構わないが、結晶性を有する方が得られる植物保護資材用樹脂組成物の加水分解性を抑制でき好ましい。なお、結晶性/非晶性の判断は、示差走査熱量計測定において一旦融解させたサンプルを10℃/分で冷却固化させた後、引き続き10℃/分の速度で昇温する際の融解ピークの有無により実施できる。
【0079】
本発明に用いられる脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)は、ガラス転移温度が0℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃未満の脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)では、機械物性の改良効果が小さくなる。脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)のガラス転移温度は好ましくは50℃以上であり、通常90℃以下である。脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)のガラス転移温度は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)の項で記述した方法と同様の方法で測定することができる。
【0080】
本発明に用いられる脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)のメルトフローインデックス(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常0.1g/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下である。
【0081】
脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)についても1種を単独で用いても良く、構成成分の種類や成分比、製造方法、物性等の異なる2種以上の脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)をブレンドして用いることもできる。
【0082】
<カルボジイミド化合物(D)>
本発明の植物保護資材用樹脂組成物は、主に大気中の水分などによる成分(A)~(C)の加水分解を抑制する目的において、カルボジイミド化合物(D)を含む。
【0083】
用いられるカルボジイミド化合物(D)は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)であり、このようなカルボジイミド化合物は、例えば触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用いて、イソシアネート化合物を70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応させることにより合成することができる。
【0084】
このようなカルボジイミド化合物のうち、モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t-ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-t-ブチルカルボジイミド、ジ-β-ナフチルカルボジイミド等を例示することができる。これらの中では、工業的に入手が容易であるので、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
【0085】
また、ポリカルボジイミド化合物としては、例えば米国特許第2941956号明細書、特公昭47-33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069-2075(1963)、及びChemicalReview1981、81巻、第4号、p.619-621等に記載された方法により製造したものを用いることができる。
【0086】
ポリカルボジイミド化合物の製造原料である有機ジイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を挙げることができ、具体的には、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5-トリイソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート等を例示することができる。
【0087】
有機ジイソシアネートの脱炭酸縮合反応に用いられるカルボジイミド化触媒としては、有機リン系化合物や一般式M(OR)nで示される有機金属化合物(但し、Mはチタン、ナトリウム、カリウム、バナジウム、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、鉛、マンガン、ニッケル、カルシウムやバリウム等の金属原子を、Rは炭素原子数1~20のアルキル基又は炭素原子数6~20のアリール基を示し、nは金属原子Mが取り得る原子価を示す)が好適である。中でも、有機リン系化合物ではホスフォレンオキシド類が、有機金属化合物ではチタン、ハフニウム、又はジルコニウムのアルコシド類が活性が高く好ましい。
【0088】
ホスフォレンオキシド類の具体例としては、3-メチル-1-フェニル-2-ホスフォレン-1-オキシド、3-メチル-1-エチル-2-ホスフォレン-1-オキシド、1,3-ジメチル-2-ホスフォレン-1-オキシド、1-フェニル-2-ホスフォレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスフォレン-1-オキシド、1-メチル-2-ホスフォレン-1-オキシド及びこれらの二重結合異性体を例示することができる。中でも工業的に入手が容易な3-メチル-1-フェニル-2-ホスフォレン-1-オキシドが特に好ましい。
【0089】
これらのポリカルボジイミド化合物の合成時には、モノイソシアネートやその他の末端イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物を用いて、所望の重合度に制御することもできる。このような目的に用いられる化合物としては、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N-メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の水酸基含有化合物、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、β-ナフチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアミノ基含有化合物、コハク酸、安息香酸、シクロヘキサン酸等のカルボキシル基含有化合物、エチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等のメルカプト基含有化合物、及び種々のエポキシ基含有化合物等を例示することができる。
【0090】
本発明において、カルボジイミド化合物(D)としては特にポリカルボジイミド化合物を用いることが好ましく、その重合度は、下限が2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは20以下である。この重合度が大きすぎると組成物中における分散性が不十分となり、例えばインフレーションフィルムにおいて外観不良の原因になる場合がある。
【0091】
これらのカルボジイミド化合物(D)は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0092】
カルボジイミド化合物(D)の好ましい具体的な化合物は、脂肪族系のポリカルボジイミド化合物であり、その市販品としては例えば、日清紡社製のカルボジライトシリーズ、HMV8CAやLA-1がある。また芳香族系ポリカルボジイミド化合物としてはラインケミ-社製のスタバクゾールシリーズが好適に用いられる。
【0093】
<成分(A)~(D)の含有割合>
成分(A)~(D)を必須成分とする本発明の植物保護資材用樹脂組成物において、成分(A)の含有割合は、成分(A)~(C)の合計100質量部中、上限が好ましくは85質量部以下、より好ましくは80質量部以下、特に好ましくは75質量部以下であり、下限が好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、特に好ましくは50質量部以上である。成分(A)の含有割合が上記上限以下であると生分解が速すぎることなく、また、やわらかくなりすぎることなく、所望の物性を得ることができ、一方、成分(A)の含有割合が上記下限以上であると、生分解が遅くなりすぎず、柔軟性を十分に得ることができ、植物保護資材として好適である。
【0094】
また、成分(B)の含有割合は、成分(A)~(C)の合計100質量部中、上限が好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、特に好ましくは40質量部以下であり、下限が好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。成分(B)の含有割合が上記上限以下であると生分解が遅くなりすぎたり、やわらかくなりすぎることなく、所望の物性を得ることができ、一方、成分(B)の含有割合が上記下限以上であると、破断強度や柔軟性、伸びを十分に得ることができ、使用途中で劣化したりすることなく植物保護資材として好適である。
【0095】
成分(C)の含有割合は、成分(A)~(C)の合計100質量部中、上限が好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下であり、下限が好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上である。成分(C)の含有割合が上記上限以下であると生分解が遅すぎたり、硬くなりすぎたりすることがなく、植物に巻き付け易く、所望の物性を得ることができ、一方、成分(C)の含有割合が上記下限以上であると生分解が速すぎたり、縦横の伸びバランスが悪化したりすることがなく、植物保護資材として好適である。
【0096】
また、本発明の植物保護資材用樹脂組成物において、成分(D)の含有量は、成分(A)~(C)の合計100質量部に対して、上限が好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0.8質量部以下であり、下限が好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、特に好ましくは0.3質量部以上である。成分(D)の含有量が上記上限以下であると、架橋が進行しやすくなったり、物性が悪化したり、成形加工性が損なわれたり、生分解が極端に遅くなったりすることがなく、一方、成分(D)の含有量が上記下限以上であると、成分(D)を配合したことによる生分解の遅延効果等の本発明の効果を十分に得ることができ、好ましい。
【0097】
<その他の成分>
前述の通り、本発明の植物保護資材用樹脂組成物は、各成分(A)~(D)に含まれて、或いは、これらの成分を混合して樹脂組成物とする際に、物性や加工性等を調整する目的で、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、着色剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、架橋剤、可塑剤、充填材等の各種の添加剤が配合されてもよい。特に屋外での使用環境に対して物性維持のために紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を配合することが好ましい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で成分(A)~(C)以外の他の生分解性樹脂、例えば、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、或いはこれらの混合物を配合することもできる。
【0098】
<植物保護資材用樹脂組成物の製造方法>
本発明の植物保護資材用樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、ブレンドした脂肪族ポリエステル樹脂(A)、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)及び脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)の原料チップを同一の押出機で溶融混合する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法等が挙げられる。また、各々の原料チップを直接成形機に供給して樹脂組成物を調製すると同時に、その成形体を得ることも可能である。
【0099】
カルボジイミド化合物(D)は、このような組成物の調製時に添加しても良いし、脂肪族ポリエステル樹脂(A)、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)及び/又は脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)の任意の一成分ないしは二成分に練り混み、成形時に残りの成分とドライブレンドして成形してもよい。あるいは、脂肪族ポリエステル樹脂(A)、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)及び/又は脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)で高濃度のカルボジイミド化合物(D)を含むマスターバッチを調製し、成形時にカルボジイミド化合物(D)が所定濃度となるように、脂肪族ポリエステル樹脂(A)、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)及び/又は脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)をドライブレンドして希釈してもよい。
【0100】
<植物保護資材用樹脂組成物のMFR>
本発明の植物保護資材用樹脂組成物は、植物保護資材としての成形加工性を十分に得るために、後掲の実施例の項に記載の方法で測定されるメルトフローインデックス(MFR)が1g/10分以上、特に1.2g/10分以上であり、1.5g/10分以下、特に5g/10分以下であることが好ましい。MFRが上記下限以上であると成形加工性に優れ、一方上記上限以下であると得られる植物保護資材の機械的強度に優れ、好ましい。
【実施例
【0101】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
[測定、評価方法]
以下において、各種物性や特性の測定、評価は以下の方法で行った。
【0103】
<MFR測定>
MFR値は、JIS K7210(1990)に基づき、メルトインデクサーを用いて
190℃、荷重2.16kgにて測定した。
【0104】
<引張試験>
インフレーョンフィルムのMD、TDにおいてダンベル形状のサンプルに打抜き、JIS K7113従い、弾性率(MPa)、引張降伏強度(MPa)、引張破断強度(MPa)、引張伸び保持率(%)を測定した。
【0105】
<厚さ測定>
フィルム厚さは、マイクロメータを用い、各種試験用に打抜いた試験片につき、マイクロメータを使用して5点を計測し、その平均値を厚みとした。表には引張試験MD方向の試験片の厚みを記した。なお、生分解性試験に記載した厚みは、引張試験直前のものである。
【0106】
<成形性の評価>
40mmの押出し機、直径60mmの丸ダイを有するインフレーション成形機にて、設定厚み350μmとし、吐出量8kg/h、エアブロー一定にて、成形性(バブル、フロストの状態)、フィルムの口開き性、表面外観を調べ、下記基準で評価した。
<成形性の評価基準>
5:フロストラインが低く、バブルが安定し成形性が良好
4:フロストラインは少し高いが、成形性に問題ない状態
3:フロストラインが高く、成形性には少し問題ある状態
2:フロストラインが非常に高く、バブルが非常に不安定で成形性に問題のある状態
1:モーター負荷が高く、押出しできない状態。
【0107】
<形状安定性の評価>
三重県四日市の三菱ケミカル(株)四日市事業所内の街路樹にシートを5か月間巻き付け、形状変化の有無を確認した。亀裂が入る状態で脱落した場合は「変形あり」とし、脱落しない場合、或いは脱落しても亀裂が入らない場合を「変形なし」とした。
【0108】
<加水分解性試験>
フィルムをダンベル状に打抜き、40℃、90%RH下の恒温恒湿器に表1に記載した期間保管した後、23℃、50%RHで1日以上更に静置し、その後、上記の引張試験方法に従い、引張降伏強度(MPa)、引張破断強度(MPa)、引張伸び保持率(%)を測定した。
【0109】
<生分解性試験>
ポリエチレン製の容器に20%の水分量を有する土(三重県内農場土)を入れ、この上にフィルムをダンベル形状に打ち抜いたサンプルを並べ、更に約1cmの厚さに土をかぶせ、40℃の恒温器に保管した。表1に記載の経時時間後に取り出し、付着した土をブラシで丁寧に払落した後、23℃、50%RHで1日以上静置し、その後、上記の引張試験方法に従い、フィルム厚さ(μm)(13週のみ)、引張降伏強度(MPa)、引張破断強度(MPa)、引張伸び保持率(%)を測定した。
【0110】
<熱物性評価>
ガラス転移温度、融点の測定は、以下の通り行った。
SEIKO社製 示差走査熱量計,製品名:DSC6220を用い、10mgのサンプルを流量50mL/分の窒素気流下で加熱溶融させた後、-100℃まで冷却し5分間保持した。その後、10℃/分の速度で200°まで昇温し、5分間保持後、10℃/分の速度で冷却した。その際、昇温時におけるガラス転移開始温度および融解ピーク温度をそれぞれガラス転移温度および融点とした。
【0111】
[使用材料とその物性]
以下の実施例および比較例にて使用した使用材料の詳細は下記の通りである。
脂肪族ポリエステル樹脂(A):PBS(ポリブチレンサクシネート)(PTTMCC社製 BioPBS FZ91シリーズ)
融点:115℃
ガラス転移温度:-22℃
MFR(190℃、2.16kg):5g/10分
芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B):PBAT(ポリ(ブチレンアジペート-co-ブチレンテレフタレート))(BASF社製 ECOFLEX FBlend C1200)
ジカルボン酸成分中のテレフタル酸成分割合:52モル%
MFR(190℃、2.16kg):2.9g/10分
ガラス転移温度:-40℃
融点:110~125℃
脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C):PLA(結晶性ポリ乳酸)(NatureWorks製 INGEO 4032D)
ガラス転移温度:58℃
MFR(190℃、2.16kg):3.2g/10分
カルボジイミド化合物(D):CDI(脂肪族ポリカルボジイミド)(日清紡社製 カルボジライトLA-1)
無機フィラー(E):タルク(富士タルク工業(株)製 MG115)
【0112】
[実施例1~4、比較例1~3]
<実施例1>
脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてPBSを55.0質量部、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)としてPBATを30.0質量部、脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル樹脂(C)としてPLAを15.0質量部と、カルボジイミド化合物(D)であるカルボジライトLA-1を0.3質量部用い、これらをドライブレンドし、二軸混練機(日本製鋼所(株)製;TEX30)にてシリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpm、スクリュー回転方向は同方向とし、吐出量20Kg/hにてストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザーでペレット状に切断し、樹脂組成物を得た。得られた組成物のMFRを測定し、結果を表1に記載した。
【0113】
次に、単層のインフレーションフィルム成形機(三鈴エリー社製、製品名:MK-40、押し出し機シリンダー径=40mm、丸ダイ直径=60mm、ダイリップギャップ巾=1mm、デュアルリップ式エアリング装備)にて、シリンダー温度、ダイス温度190℃、ブローアップ比2、吐出量10kg/h、エアブロー一定とし、設定フィルム厚みが350μmのインフレーションフィルムを作成した。成形性として押出し性、バブルの安定性、フロストライン高さ、得られたフィルムの口開き性、外観を総合的に評価した。また得られたフィルムの品質として、引張弾性率(MPa)、引張降伏強度(MPa)、引張破断強度(MPa)、引張伸び保持率(%)を測定し、表1の原点の欄に示した。さらに形状安定性ならびに加水分解性試験、生分解性試験を実施し、その結果を表1に記載した。
【0114】
<実施例2>
実施例1において、カルボジイミド化合物(D)の配合量を0.5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様に実施し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
<実施例3>
実施例1において、カルボジイミド化合物(D)の配合量を0.8質量部に変更したこと以外は実施例1と同様に実施し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
<実施例4>
実施例1において、カルボジイミド化合物(D)の配合量を1.0質量部に変更したこと以外は実施例1と同様に実施し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
<比較例1>
実施例1において、カルボジイミド化合物(D)を配合しなかったこと以外は同様に実施し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0118】
<比較例2>
脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてPBSを60.0質量部、芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(B)としてPBATを30.0質量部、無機フィラー(E)としてタルク10.0質量部を用い、これらをドライブレンドし、二軸混練機(日本製鋼所(株)製;TEX30)にてシリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpm、スクリュー回転方向は同方向とし、吐出量20Kg/hにてストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザーでペレット状に切断して樹脂組成物を得た。それ以外は実施例1と同様に成形および評価を行った。結果を表2に示す。
【0119】
<比較例3>
実施例1において、カルボジイミド化合物(D)の配合量を3質量部に変更したこと以外は同様にして樹脂組成物を製造したが、得られた樹脂組成物はMFRが0.8g/10分と非常に小さく、押し出し機モータ負荷が大きくなり、フィルムを成形することができなかった。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
表1,2より次のことが分かる。
実施例1~4は、比較例1,2と比較して、カルボジイミド化合物(D)を含有することにより、成形性が向上していた。また、加水分解性試験の結果より、13週まで引張物性が維持され、倉庫等での保管性に優れた組成物であることが分かる。さらに、生分解性試験結果及び形状安定性の評価結果から、初期物性が5週まで維持され、樹木等に設置した場合において長期間の設置にも耐えられ、所望の期間、樹木等を鳥獣害から保護することが可能であることが分かる。
比較例3はカルボジイミド化合物(D)を3質量部添加した場合であり、樹脂組成物のMFRが大きく低下し、成形不可であった。