(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/153 20060101AFI20220412BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20220412BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20220412BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
G02F1/153
G02F1/15 502
G02F1/15 503
G02C7/10
E06B5/00 D
(21)【出願番号】P 2018008398
(22)【出願日】2018-01-22
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】油谷 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 智男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】藤村 浩
(72)【発明者】
【氏名】八代 徹
(72)【発明者】
【氏名】今野 剛彰
(72)【発明者】
【氏名】笹 登
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063849(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0313537(US,A1)
【文献】米国特許第04923289(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0227664(US,A1)
【文献】特開2016-045464(JP,A)
【文献】特開平10-206909(JP,A)
【文献】特表2007-529036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/153
G02F 1/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して設けられている第一基板及び第二基板と、
前記第一基板の前記第二基板と対向する側の表面に形成されている第一透明電極と、
前記第二基板の前記第一基板と対向する側の表面に形成されている第二透明電極と、
前記第一透明電極と前記第二透明電極の間に設けられている発色層を有し、
前記発色層は、エレクトロクロミック材料及び電解質を含み、
前記発色層の少なくとも一部は、
前記エレクトロクロミック材料と前記電解質とが混合された混合物を、当該層方向に濃度勾配が生ずるように形成されていることを特徴とするエレクトロクロミック素子。
【請求項2】
前記発色層は、前記第一透明電極に接して形成されており、酸化性エレクトロクロミック材料を含む層と、前記第二透明電極に接して形成されており、還元性エレクトロクロミック材料を含む層を有することを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項3】
前記酸化性エレクトロクロミック材料を含む層は、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物と、該トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物とは異なるラジカル重合性化合物を含む組成物の架橋物を含むことを特徴とする請求項2に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項4】
前記還元性エレクトロクロミック材料を含む層は、4級ピリジニウム塩構造を有する化合物と、導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子とを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項5】
前記第一基板の前記第二基板と対向しない側の表面と、前記第二基板の前記第一基板と対向しない側の表面とが凸面となるレンズ形状を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のレンズユニットを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子を有することを特徴とする調光メガネ。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子を有することを特徴とする調光窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック素子、レンズユニット、撮像装置、調光メガネ及び調光窓に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルターは、撮像装置の撮影品質を向上させることができるため、開発が進められているが、目的に応じて、レンズユニットを交換する必要がある。
【0003】
そこで、電気信号によって、透明な状態と、所定の光透過率を有する状態を切り替えることが可能な電気光学フィルターの開発が進められてきた。これによって、一つのレンズで二つの機能を発揮することが可能となり、交換が不要となるメリットがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、(a)2つの対向する表面を有する、光学基板と、(b)1つが他から離間され、前記基板の表面上に配置される、少なくとも2つの電極と、(c)少なくとも2つの電極(b)および基板(a)の表面と接触する、少なくとも1つの電気活性材料層と、を備える、電気活性光学デバイスが開示されている。ここで、電気活性光学デバイスは、印加される電圧の大きさに応答して、可変の光透過率を有する。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、印加電圧の大きさに応答する可変光透過率を有するアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャを備える光学素子が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの電気光学フィルターは、エレクトロクロミック材料のパターンや濃度勾配を形成することが考慮されていない。
【0007】
また、光学フィルターの別の応用として期待されるのが、調光メガネ用レンズとしての活用である。
【0008】
一般的なサングラスに用いられる染色レンズは、太陽光に含まれる紫外線から目を守るためや、グレアを抑制して視認性を向上させるために開発され、古くから普及している。染色レンズの中には、所定の光透過率のグラデーションのパターンが形成されているレンズもあり、近年では、その用途は、スポーツ、医療、ファッション等に広がっている。
【0009】
しかしながら、染色レンズは、光透過率が低いため、暗い場所では、視認性が低下するという問題がある。
【0010】
そこで、明るい場所では、着色して光透過率を下げ、暗い場所では、透明になって光透過率を上げるために、エレクトロクロミック材料を用いた調光メガネ用レンズが開発された(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
しかしながら、これらの調光メガネ用レンズは、エレクトロクロミック材料のパターンや濃度勾配を形成することが考慮されていない。
【0012】
さらに、光学フィルターの別の応用として期待されるのが、調光窓としての活用である。ビル等の建築物、飛行機、自動車等の移動体の窓は、環境の変化に応じて、外光が変化するため、調光窓を用いることによって、屋内の快適さを向上させることが期待される。
【0013】
しかしながら、これらの調光窓は、エレクトロクロミック材料のパターンや濃度勾配を形成することが考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように、エレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック材料のパターンや濃度勾配が形成されておらず、発色時に光透過率の分布を形成することができない。
【0015】
本発明は、上記の点に鑑み、発色時に光透過率の分布を形成することが可能なエレクトロクロミック素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、エレクトロクロミック素子において、対向して設けられている第一基板及び第二基板と、前記第一基板の前記第二基板と対向する側の表面に形成されている第一透明電極と、前記第二基板の前記第一基板と対向する側の表面に形成されている第二透明電極と、前記第一透明電極と前記第二透明電極の間に設けられている発色層を有し、前記発色層は、エレクトロクロミック材料及び電解質を含み、前記発色層の少なくとも一部は、前記エレクトロクロミック材料と前記電解質とが混合された混合物を、当該層方向に濃度勾配が生ずるように形成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発色時に光透過率の分布を形成することが可能なエレクトロクロミック素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一の実施の形態に係るエレクトロクロミック素子を示す断面図である。
【
図2】第二の実施の形態に係るエレクトロクロミック素子を示す断面図である。
【
図3】
図2の酸化性エレクトロクロミック層、還元性エレクトロクロミック層におけるエレクトロクロミック材料の濃度勾配の一例を示す図である。
【
図4】
図2の酸化性エレクトロクロミック層、還元性エレクトロクロミック層におけるエレクトロクロミック材料の濃度勾配の他の例を示す図である。
【
図5】
図2の酸化性エレクトロクロミック層、還元性エレクトロクロミック層におけるエレクトロクロミック材料の濃度勾配の他の例を示す図である。
【
図6】
図2の酸化性エレクトロクロミック層、還元性エレクトロクロミック層におけるエレクトロクロミック材料の濃度勾配の他の例を示す図である。
【
図7】
図2の酸化性エレクトロクロミック層、還元性エレクトロクロミック層におけるエレクトロクロミック材料のパターンの一例を示す上面図である。
【
図8】
図2の酸化性エレクトロクロミック層、還元性エレクトロクロミック層におけるエレクトロクロミック材料のパターンの他の例を示す図である。
【
図9】
図2の酸化性エレクトロクロミック層、還元性エレクトロクロミック層におけるエレクトロクロミック材料のパターンの他の例を示す図である。
【
図10】
図5の酸化性エレクトロクロミック層、還元性エレクトロクロミック層の光透過率を示す図である。
【
図11】第三の実施の形態に係る調光窓を示す図である。
【
図12】第四の実施の形態に係る調光メガネを示す図である。
【
図13】実施例1のエレクトロクロミック素子のエレクトロクロミック材料の濃度勾配が形成されている領域の光学特性の評価結果を示す図である。
【
図14】比較例1のエレクトロクロミック素子の光学特性の評価結果を示す図である。
【
図15】実施例2のエレクトロクロミック素子の光学特性の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更を実施することができる。
【0020】
(エレクトロクロミック素子)
図1に、第一の実施の形態に係るエレクトロクロミック素子を示す。
【0021】
エレクトロクロミック素子10は、平面状の第一基板11及び第二基板12が対向して設けられている。また、エレクトロクロミック素子10は、第一基板11の第二基板12と対向する側の表面、即ち、第一基板11の内側の表面に、第一透明電極13が面内で連続して形成されている。さらに、エレクトロクロミック素子10は、第二基板12の第一基板11と対向する側の表面、即ち、第二基板12の内側の表面に、第二透明電極14が面内で連続して形成されている。また、エレクトロクロミック素子10は、第一透明電極13と第二透明電極14との間に発色層15が設けられている。ここで、発色層15は、エレクトロクロミック材料及び電解質を含む。また、発色層15の少なくとも一部は、第一基板11(又は第二基板12)の表面に対して平行な方向に、エレクトロクロミック材料のパターン又は濃度勾配が形成されている。このため、第一透明電極13及び第二透明電極14の間に、所定の発色電圧を印加することによって、発色層15に含まれるエレクトロクロミック材料が酸化及び/又は還元し、発色層15が発色する。このとき、発色層15は、第一基板11(又は第二基板12)の表面に対して平行な方向に、エレクトロクロミック材料のパターン又は濃度勾配が形成されているため、エレクトロクロミック素子10は、発色時に光透過率の分布を形成することができる。
【0022】
図2に、第二の実施の形態に係るエレクトロクロミック素子を示す。
【0023】
エレクトロクロミック素子20は、発色層15が、第一透明電極13に接して形成されている酸化性エレクトロクロミック層21と、第二透明電極14に接して形成されている還元性エレクトロクロミック層22と、電解質を含む電解質層23から構成される以外は、エレクトロクロミック素子10と同一の構成である。ここで、酸化性エレクトロクロミック層21及び還元性エレクトロクロミック層22は、それぞれ酸化性エレクトロクロミック材料及び還元性エレクトロクロミック材料を含む。エレクトロクロミック素子20は、発色動作時に、第一透明電極13、第二透明電極14から供給された電荷が、それぞれ酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22に保持される。そのため、エレクトロクロミック素子20を発色状態とすれば、発色状態を維持するのに、ほとんど電力を必要とせず、結果として、消費電力が少ないデバイスを作製することが可能となる。
【0024】
なお、酸化性エレクトロクロミック層21の少なくとも一部は、酸化性エレクトロクロミック材料のパターン又は濃度勾配が形成されている。また、還元性エレクトロクロミック層22の少なくとも一部は、還元性エレクトロクロミック材料のパターン又は濃度勾配が形成されている。このため、エレクトロクロミック素子20は、発色時に光透過率の分布を形成することができる。
【0025】
(エレクトロクロミック材料のパターン又は濃度勾配)
次に、エレクトロクロミック素子20の酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22におけるエレクトロクロミック材料のパターン又は濃度勾配について、説明する。
【0026】
ここでは、特に、撮像装置に組み込まれるレンズユニットに応用される光学フィルターのパターン又は濃度勾配を具体例として説明する。なお、本実施の形態に係るエレクトロクロミック素子によって実現されうるパターン又は濃度勾配は、撮像装置に組み込まれるレンズユニットに応用される光学フィルターのパターン又は濃度勾配に限定されるわけではない。
【0027】
図3に、酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22におけるエレクトロクロミック材料の濃度勾配の一例として、ハーフトーンフィルターの例を示す。ハーフトーンフィルターは、一軸方向に光透過率が変化するフィルターである。なお、
図3(a)は、発色層15の上面図又は下面図であり、
図3(b)は、エレクトロクロミック素子20のA-A'断面図である。
【0028】
酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22は、エレクトロクロミック材料(図中、黒色部)が、第一基板11の表面(又は第二基板12の表面)に対して平行な方向に、一軸方向に沿った濃度分布を形成するように、エレクトロクロミック材料が分布している。具体的には、ハーフトーンフィルターは、一軸方向の一端A'の側の1/2の領域において、エレクトロクロミック材料の濃度が低く、一軸方向の他端Aの側の1/2の領域において、エレクトロクロミック材料の濃度が高い分布を有する。ここで、ハーフトーンフィルターは、一軸方向の一端A'の側の1/2の領域において、エレクトロクロミック材料の濃度が均一であり、一軸方向の他端Aの側の1/2の領域において、エレクトロクロミック材料の濃度勾配が形成されている。
【0029】
なお、ハーフトーンフィルターは、
図4に示すように、一軸方向の一端A'の側の1/2の領域において、エレクトロクロミック材料の濃度が均一であり、一軸方向の他端Aの側の1/2の領域において、エレクトロクロミック材料の濃度勾配が形成されていてもよい。
【0030】
また、エレクトロクロミック材料の濃度勾配が形成されている領域の割合は、
図3、4に示すように、1/2に限定されるものでなく、1/4等の任意の値に設定することが可能である。このようなフィルターは、撮像エリア内の光量を調整するのに適用することができる。
【0031】
図5に、酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22におけるエレクトロクロミック材料の濃度勾配の他の例として、アポダイゼーションフィルターを示す。アポダイゼーションフィルターは、中心部の光透過率が高く、中心から離れる程、光透過率が低くなるフィルターである。なお、
図5(a)は、発色層15の上面図又は下面図であり、
図5(b)は、エレクトロクロミック素子20のA-A'断面図である。
【0032】
酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22は、エレクトロクロミック材料(図中、黒色部)が、同心円状に一様な濃度勾配を形成するように、エレクトロクロミック材料が分布している。具体的には、アポダイゼーションフィルターは、中心において、エレクトロクロミック材料の濃度が0であり、中心から離れる程、エレクトロクロミック材料の濃度が高くなる分布を有する。このため、アポダイゼーションフィルターは、周辺に近い程、発色時の光透過率が低い。アポダイゼーションフィルターは、被写界深度を調整するのに適用される。
【0033】
図6に、酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22におけるエレクトロクロミック材料の濃度勾配の他の例として、超解像フィルターを示す。超解像フィルターは、中心の光透過率が低く、中心から離れる程、光透過率が高くなるフィルターである。なお、
図6(a)は、発色層15の上面図又は下面図であり、
図6(b)は、エレクトロクロミック素子20のA-A'断面図である。
【0034】
酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22は、エレクトロクロミック材料(図中、黒色部)が、同心円状に一様な濃度勾配を形成するように、エレクトロクロミック材料が分布している。具体的には、超解像フィルターは、
図5とは逆に、中心において、エレクトロクロミック材料の濃度が最も高く、中心から離れる程、エレクトロクロミック材料の濃度が低くなる分布を有する。このため、超解像フィルターは、中心に近い程、発色時の光透過率が低い。超解像フィルターは、解像度を調整するのに適用される。
【0035】
図7~9に、酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22におけるエレクトロクロミック材料のパターンの具体例として、クロスフィルターを示す。クロスフィルターは、イルミネーション等をより強く印象付ける「光の線」を創るフィルターである。
【0036】
図7~9においては、エレクトロクロミック材料Eが、酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22の表面の全域に亘って、パターニングされている。このため、酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22由来の光輝の全てにクロス効果が現れる。
【0037】
なお、酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22の表面の一部の領域(例えば、1/4の領域)に、エレクトロクロミック材料Eのパターンが形成されているパーシャル・クロスフィルターとしてもよい。パーシャル・クロスフィルターは、酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22由来の光輝のうち、エレクトロクロミック材料Eがパターニングされている領域由来の光輝のみにクロス効果が現れる。
【0038】
なお、エレクトロクロミック材料Eのパターンが形成されている領域、及び、エレクトロクロミック材料Eのパターンは、任意に設定することが可能である。
【0039】
以上のように、
図3~9のいずれの例においても、第一透明電極13と第二透明電極14の間に、所定の発色電圧を印加し、酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22を発色させることで、エレクトロクロミック素子20を特殊な機能を有する光学フィルターとすることができる。また、第一透明電極13と第二透明電極14の間に、所定の消色電圧を印加し、酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22を消色させることで、エレクトロクロミック素子20を透明な状態に戻すことができる。そのため、エレクトロクロミック素子20を、透明な状態と、光透過率の分布が形成されている状態に、電気的に切り替えることが可能となる。
【0040】
また、例えば、
図5の酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22は、第一透明電極13と第二透明電極14の間に、所定の発色電圧を印加する時間によって、消色状態から最大発色状態の間で任意の光透過率に設定することが可能である(
図10参照)。つまり、従来の光透過率が固定されている光学フィルターを併用することにより得られる効果が、単一のエレクトロクロミック素子20で得られる。従って、従来の光学フィルターを併用する場合と比較して、光学フィルターの交換が不要となる利点がある。また、メカ機構によって光学フィルターを交換する場合と比較して、小型化することが可能となり、振動が発生しないという利点がある。
【0041】
以上、エレクトロクロミック素子20を用いて、エレクトロクロミック材料のパターン又は濃度勾配を説明したが、エレクトロクロミック素子10を用いる場合も同様である。
【0042】
(エレクトロクロミック材料のパターン又は濃度勾配の形成方法)
エレクトロクロミック材料のパターン又は濃度勾配の形成方法としては、特に限定されないが、全面にエレクトロクロミック材料を形成した後、不要な部分を除去する方法と、必要な部分にのみ、エレクトロクロミック材料を形成する方法がある。
【0043】
また、エレクトロクロミック材料を成膜する方法としては、エレクトロクロミック材料を真空下で加熱等により昇華させて成膜する乾式工法、エレクトロクロミック材料が溶媒に溶解又は分散しているインクを印刷方式で成膜する湿式工法がある。
【0044】
乾式工法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。
【0045】
湿式工法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等を用いることができる。
【0046】
また、エレクトロクロミック材料の濃度勾配を形成する際には、面積階調方式と濃度階調方式のいずれを用いることも可能である。
【0047】
面積階調方式は、ディザリング等のアルゴリズムを用いて、所定の面積内のエレクトロクロミック材料の面積を調整する方式である。
【0048】
一方、濃度階調方式は、エレクトロクロミック材料の濃度、あるいは、エレクトロクロミック層の厚さを調整する方式である。
【0049】
なお、エレクトロクロミック材料のみのパターン又は濃度勾配を形成してもよいし、エレクトロクロミック材料と電解質を所定の比率で混合した混合物のパターン又は濃度勾配を形成してもよい。
【0050】
(エレクトロクロミック素子の各構成要素)
以下、エレクトロクロミック素子20の各構成要素について詳述する。
【0051】
(第一基板、第二基板)
第一基板11は、第一透明電極13を支持する機能を有し、第二基板12は、第二透明電極14を支持する機能を有する。また、第一透明電極13、第二透明電極14は、発色層15を挟持する機能を有する。
【0052】
第一基板11及び第二基板12としては、第一透明電極13、第二透明電極14を支持することが可能な透明材料であれば、公知の有機材料や無機材料を用いることができる。
【0053】
第一基板11及び第二基板12としては、ガラス基板、樹脂基板、樹脂フィルム等を用いることができる。第一基板11及び第二基板12として、樹脂フィルムを用いることで、薄型、軽量であり、フレキシブルなエレクトロクロミックモジュールを得ることが可能となる。
【0054】
ガラス基板を構成する材料としては、例えば、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、フロートガラス、ソーダ石灰ガラス等が挙げられる。
【0055】
樹脂基板、樹脂フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等が挙げられる。
【0056】
なお、第一基板11及び第二基板12は、水蒸気バリア性、ガスバリア性、紫外線耐性、及び視認性を高めるために、透明絶縁層、UVカット層、反射防止層等がコーティングされていてもよい。
【0057】
第一基板11及び第二基板12の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、長方形、丸型等が挙げられる。
【0058】
第一基板11及び第二基板12は、複数の基板を重ね合わせたものであってもよい。例えば、2枚のガラス基板を重ね合わせたもので、エレクトロクロミックモジュールを挟持する構造にすることで、水蒸気バリア性及びガスバリア性を高めることが可能である。
【0059】
(第一透明電極、第二透明電極)
第一透明電極13及び第二透明電極14を構成する材料としては、導電性を有する透明材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スズをドープした酸化インジウム(以下、「ITO」と称する場合がある)、フッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と称する場合がある)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、「ATO」と称する場合がある)、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0060】
第一透明電極13及び第二透明電極14としては、透明性を有するカーボンナノチューブや、Au、Ag、Pt、Cu等の導電性が高い非透過性材料を、微細なネットワーク状に形成して、透明度を保持したまま、導電性を改善した電極を用いてもよい。
【0061】
第一透明電極13及び第二透明電極14の夫々の厚さは、発色層15に含まれるエレクトロクロミック材料の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように、適宜調整することができる。
【0062】
例えば、第一透明電極13及び第二透明電極14を構成する材料として、ITOを用いる場合、第一透明電極13及び第二透明電極14の夫々の平均厚さを、50nm以上500nm以下程度とすることが好ましい。
【0063】
第一透明電極13及び第二透明電極14の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。
【0064】
但し、第一透明電極13及び第二透明電極14を構成する材料が塗布することが可能である場合、第一透明電極13及び第二透明電極14の形成方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
【0065】
(酸化性エレクトロクロミック層)
酸化性エレクトロクロミック層21の平均厚さは、0.1μm以上30μm以下であることが好ましく、0.4μm以上10μm以下であることがより好ましい。酸化性エレクトロクロミック層21の平均厚さが0.1μm以上であると、発色時の光学濃度を向上させることができ、30μm以下であると、酸化性エレクトロクロミック層21の均一性や表面平滑性を向上させることができる。
【0066】
なお、酸化性エレクトロクロミック層21は、2層以上の積層体であってもよい。
【0067】
また、酸化性エレクトロクロミック層21は、第一透明電極13の一部に形成されていてもよい。
【0068】
酸化性エレクトロクロミック層21は、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物と、他のラジカル重合性化合物を含む酸化性エレクトロクロミック組成物の架橋物を含むことが、酸化性エレクトロクロミック層21の耐溶剤性及び耐久性の点から、好ましい。
【0069】
酸化性エレクトロクロミック組成物は、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物と、他のラジカル重合性化合物を含むが、重合開始剤をさらに含むことが好ましく、必要に応じて、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0070】
-トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物-
トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物は、第一透明電極13の表面において、酸化還元反応するエレクトロクロミック機能を付与するために必要である。
【0071】
トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0072】
(A)n-(B)m・・・(1)
ただし、nは1又は2であり、nが2である場合、mは0であり、nが1である場合、mは0又は1である。
【0073】
Aは、下記一般式(2)で示される構造である。n=m=1である場合、Aは、R1からR15のいずれかの位置において、Bと結合している。n=2、m=0である場合、Aは、R1からR15のいずれかの位置において、Aと結合している。n=1、m=0である場合、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物は、Aである。
【0074】
Bは、下記一般式(3)で表される構造であり、R16からR21のいずれかの位置でAと結合している。
【0075】
【0076】
【化2】
(ただし、R
1からR
21は、各々独立に、1価の有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、R
1からR
21のうち、少なくとも1つは、ラジカル重合性基である。)
1価の有機基としては、特に限定されないが、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミド基(-CONH
2)、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノカルボニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換基を有していてもよいアルコキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、スルホンアミド基(-SO
2NH
2)、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいモノアリールアミノスルホニル基、置換基を有していてもよいジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよい複素環基等が挙げられる。これらの中でも、エレクトロクロミック素子10、20の動作安定性及び耐久性の点から、アルキル基、アルコキシ基、水素原子、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基が特に好ましい。
【0077】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0078】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0079】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0080】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0081】
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、4-メトキシフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基等が挙げられる。
【0082】
複素環基としては、例えば、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等から水素原子を1個除いた基が挙げられる。
【0083】
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0084】
ラジカル重合性基は、炭素-炭素二重結合を有し、ラジカル重合することが可能な基であれば、特に限定されない。
【0085】
ラジカル重合性基としては、例えば、下記一般式(4)で表される基、下記一般式(5)で表される基等が挙げられる。
【0086】
【化3】
(ただし、X
1は、単結合、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、-CO-、-COO-、-CONR
100-〔R
100は、水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。〕、又は-S-を表す。)
【0087】
【化4】
(ただし、Yは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、-COOR
101〔R
101は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又はCONR
102R
103(R
102及びR
103は、各々独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。)〕を表す。また、X
2は、一般式(4)のX
1の選択肢又はアルキレン基を表す。ただし、Y及びX
2の少なくともいずれかがオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、芳香族炭化水素基である。
【0088】
一般式(4)のアリーレン基としては、例えば、置換基を有してもよいフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0089】
一般式(4)のアルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0090】
一般式(4)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0091】
一般式(4)のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0092】
一般式(4)のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0093】
一般式(4)で表される基の具体例としては、ビニル基、スチリル基、2-メチル-1,3-ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基(CH2=CH-CONH-)、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
【0094】
一般式(5)のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0095】
一般式(5)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0096】
一般式(5)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0097】
一般式(5)のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0098】
一般式(5)で表される基の具体例としては、例えば、α-塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、α-シアノエチレン基、α-シアノアクリロイルオキシ基、α-シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
【0099】
なお、一般式(4)、(5)で表される基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0100】
ラジカル重合性基の中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0101】
トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物としては、下記一般式(1-1)から(1-3)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0102】
【化5】
(ただし、R
27からR
54は、各々独立に、1価の有機基であり、R
27からR
54のうち、少なくとも1つは、ラジカル重合性基である。)
【0103】
【化6】
(ただし、R
55からR
70は、各々独立に、1価の有機基であり、R
55からR
70のうち、少なくとも1つは、ラジカル重合性基である。)
【0104】
【化7】
(ただし、R
71からR
89は、各々独立に、1価の有機基であり、R
71からR
89のうち、少なくとも1つは、ラジカル重合性基である。)
1価の有機基及びラジカル重合性基は、一般式(1)と同様である。
【0105】
なお、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物は、上記化合物に限定されるものではない。
【0106】
-他のラジカル重合性化合物-
他のラジカル重合性化合物は、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物とは異なり、ラジカル重合性基を有する化合物である。
【0107】
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、1官能のラジカル重合性化合物、2官能のラジカル重合性化合物、3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマー等が挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が特に好ましい。
【0108】
他のラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性基としては、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性基と同様であり、これらの中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0109】
1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0111】
3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5-テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
なお、EO変性は、エチレンオキシ変性を意味し、PO変性は、プロピレンオキシ変性を意味する。
【0113】
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2-パーフルオロイソノニルエチルアクリレート等のフッ素原子を置換したもの、特公平5-60503号公報、特公平6-45770号公報に記載のシロキサンの繰り返し単位数が20~70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチル等のポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。
【0115】
トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物及び他のラジカル重合性化合物の少なくともいずれかがラジカル重合性基を2つ以上有していることが、架橋物を形成する点から、好ましい。
【0116】
酸化性エレクトロクロミック組成物中のトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物の含有量は、10質量%以上100質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。酸化性エレクトロクロミック組成物中のトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物の含有量が10質量%以上であると、酸化性エレクトロクロミック層21のエレクトロクロミック機能を充分に発現することができ、エレクトロクロミック素子10、20の耐久性が良好となり、発色感度が良好となる。
【0117】
-重合開始剤-
酸化性エレクトロクロミック組成物は、トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物と、他のラジカル重合性化合物との架橋反応を効率よく進行させるために、重合開始剤をさらに含むことが好ましい。
【0118】
重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられるが、重合効率の観点から、光重合開始剤が好ましい。
【0119】
熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルベルオキサイド、t-ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4'-アゾビス-4-シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0120】
光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-2-モルフォリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2-ベンゾイルナフタレン、4-ベンゾイルビフェニル、4-ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4-ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。上記以外の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10-フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0121】
なお、光重合促進剤を単独又は光重合開始剤と併用して用いることもできる。
【0122】
光重合促進剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル、4,4'-ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0123】
ラジカル重合性化合物の全量に対する重合開始剤の質量比は、0.5%以上40%以下であることが好ましく、1%以上20%以下であることがより好ましい。
【0124】
-他の成分-
他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶媒、可塑剤、レベリング剤、増感剤、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、フィラー等が挙げられる。
【0125】
(酸化性エレクトロクロミック層の形成方法)
酸化性エレクトロクロミック層21の形成方法は、塗布工程と、架橋工程を含むことが好ましく、必要に応じて、他の工程をさらに含む。
【0126】
-塗布工程-
塗布工程は、第一透明電極13上に、酸化性エレクトロクロミック組成物を含む塗布液を塗布する工程である。
【0127】
塗布液は、必要に応じて、溶媒により希釈して使用する。
【0128】
溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0129】
なお、溶媒による希釈率は、酸化性エレクトロクロミック組成物の溶解性、塗布方法、酸化性エレクトロクロミック層21の厚さ等に応じて、適宜選択することができる。
【0130】
塗布液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等が挙げられる。
【0131】
-架橋工程-
架橋工程は、第一透明電極13上に塗布された酸化性エレクトロクロミック組成物に対して、外部エネルギーを付与して架橋する工程である。
【0132】
外部エネルギーとしては、例えば、熱、光、放射線等が挙げられる。
【0133】
熱を付与する際には、空気、窒素等の気体、蒸気、各種熱媒体、赤外線、電磁波を用いて、塗布面の側、あるいは第一基板11の側から加熱することができる。
【0134】
加熱温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上170℃以下であることが好ましい。
【0135】
光を付与する際には、主に紫外光(UV)に発光波長を有する高圧水銀灯、メタルハライドランプ等の紫外光源を用いることができるが、ラジカル重合性化合物や光重合開始剤の吸収波長に合わせて、可視光源を用いることもできる。
【0136】
UVの照射光量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mW/cm2以上15,000mW/cm2以下であることが好ましい。
【0137】
(他の酸化性エレクトロクロミック層)
他の酸化性エレクトロクロミック層21を構成する材料としては、プルシアンブルー型錯体、酸化ニッケル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0138】
他の酸化性エレクトロクロミック層21の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。なお、他の酸化性エレクトロクロミック層21を構成する材料を塗布することが可能である場合、他の酸化性エレクトロクロミック層21の形成方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
【0139】
(還元性エレクトロクロミック層)
還元性エレクトロクロミック層22の平均厚さは、0.2μm~5.0μmであることが好ましい。還元性エレクトロクロミック層22の平均厚さが0.2μm以上であると、発色時の光学濃度を向上させることができ、5.0μm以下であると、還元性エレクトロクロミック層22の均一性や表面平滑性を向上させることができる。
【0140】
なお、還元性エレクトロクロミック層22は、2層以上の積層体であってもよい。
【0141】
また、還元性エレクトロクロミック層22は、第二透明電極14の一部に形成されていてもよい。
【0142】
還元性エレクトロクロミック層22に含まれる、還元性エレクトロクロミック材料としては、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系等の低分子系有機エレクトロクロミック材料等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0143】
これらの中でも、発消色電位が低く、良好な色値を示す点から、4級ピリジニウム塩構造を有する化合物が好ましい。
【0144】
4級ピリジニウム塩構造を有する化合物は、後述するように、導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子と組み合わせて用いることが好ましい。これにより、発色時の光学濃度及びコントラスト比を高くすることができる。
【0145】
4級ピリジニウム塩構造を有する化合物としては、特に限定されないが、ビオロゲン系化合物、ジピリジン系化合物等が挙げられる。
【0146】
ビオロゲン系化合物としては、例えば、特許第3955641号公報、特開2007-171781号公報に記載されている化合物等が挙げられる。
【0147】
ジピリジン系化合物としては、例えば、特開2007-171781号公報、特開2008-116718号公報に記載されている化合物等が挙げられる。
【0148】
これらの中でも、良好な発色の色値を示す点から、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0149】
【化8】
(ただし、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~8のアルキル基、又はアリール基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、-COOH、-PO(OH)
2、及び-Si(OC
kH
2k+1)
3(ただし、kは、1~20の整数である。)から選択される置換基を有し、X
-は、1価のアニオンであり、A、B、及びCは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、アリール基、又は複素環基であり、n、m、及びlは、それぞれ独立に、0、1又は2である。)
X
-としては、安定に4級ピリジニウム塩構造を形成することが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Br
-、Cl
-、ClO
4
-、PF
6
-、BF
4
-等が挙げられる。
【0150】
なお、一般式(6)で表される化合物は、上記化合物に限定されるものではない。
【0151】
還元性エレクトロクロミック材料は、導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子に担持されていてもよい。これにより、導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子の表面効果を利用して、効率よく還元性エレクトロクロミック材料に電子が注入されるため、従来のエレクトロクロミック素子と比較して高速応答が可能となる。更に、導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子を用いることで、還元性エレクトロクロミック層22を透明にすることができるため、還元性エレクトロクロミック材料の発色濃度を高くすることができる。
【0152】
なお、複数種の還元性エレクトロクロミック材料を、導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子に担持することもできる。
【0153】
導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子を構成する金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等を主成分とする金属酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0154】
これらの中でも、電気伝導性等の電気特性や光学特性等の物理的特性の点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タングステンが特に好ましい。
【0155】
導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子は、還元性エレクトロクロミック材料を効率よく担持するために、比表面積が大きいことが好ましい。例えば、導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子として、ナノ粒子の集合体を用いると、還元性エレクトロクロミック材料がより効率的に担持されるため、発消色の表示コントラスト比が優れる。
【0156】
(還元性エレクトロクロミック層の形成方法)
還元性エレクトロクロミック層22の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。また、還元性エレクトロクロミック層22を構成する材料を塗布することが可能である場合、還元性エレクトロクロミック層22の形成方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
【0157】
これらの中でも、生産性の点で、印刷法を用いることが好ましい。
【0158】
導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子に還元性エレクトロクロミック材料を担持する方法としては、例えば、第二透明電極14の表面に、粒径5nm~50nm程度の導電性金属酸化物粒子又は半導体性金属酸化物粒子を焼結した後、一般式(6)で表される化合物を吸着させる方法等が挙げられる。
【0159】
(電解質層)
電解質層23の平均厚さは、100nm以上100μm以下であることが好ましい。
【0160】
電解質層23は、液体状であってもよいし、固体状であってもよい。
【0161】
液体状の電解質層23としては、特に限定されないが、電解質溶液、イオン液体等を用いることができる。
【0162】
電解質溶液に含まれる電解質としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩、酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。
【0163】
電解質溶液に含まれる電解質の具体例としては、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3COO、KCl、NaClO3、NaCl、NaBF4、NaSCN、KBF4、Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2等が挙げられる。
【0164】
電解質を単独で使用する場合、電解質は、液体状であってもよいし、固体状であってもよい。
【0165】
イオン液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体になるため、有機イオンを含むイオン液体が好ましい。
【0166】
有機イオンを含むイオン液体のカチオンとしては、例えば、N,N-ジメチルイミダゾール塩、N,N-メチルエチルイミダゾール塩、N,N-メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N-ジメチルピリジニウム塩、N,N-メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム系等が挙げられる。
【0167】
有機イオンを含むイオン液体のアニオンとしては、大気中での安定性を考慮して、フッ素を含むアニオンを用いることが好ましい。
【0168】
フッ素を含むアニオンとしては、例えば、BF4
-、CF3SO3
-、PF4
-、(CF3SO2)2N-等が挙げられる。
【0169】
なお、イオン液体は、カチオンとアニオンを任意に組み合わせることができる。
【0170】
固体状の電解質層23の形態としては、例えば、ゲル型、高分子架橋型、液晶分散型等が挙げられる。電解質層23をゲル状、固体状に形成することで、エレクトロクロミック素子20の強度、信頼性を向上させることができる。
【0171】
固体状の電解質層23を形成する際に、電解質を樹脂中に保持することが好ましい。これにより、電解質層23のイオン伝導度と強度を高くすることができる。
【0172】
樹脂としては、光硬化樹脂が好ましい。これにより、低温条件において、短時間でエレクトロクロミック素子20を製造することができる。
【0173】
例えば、イオン液体を、光硬化性モノマー、光硬化性オリゴマー、及び液晶材料のいずれかに直接溶解させた後、光硬化させることにより、固体状の電解質層23を形成することができる。このとき、イオン液体の溶解性が低い場合は、イオン液体を溶媒に溶解させた後、光硬化性モノマー、光硬化性オリゴマー、及び液晶材料のいずれかと混合して用いればよい。
【0174】
溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0175】
(発色層)
エレクトロクロミック素子20における発色層15は、酸化性エレクトロクロミック層21と、還元性エレクトロクロミック層22と、電解質層23から構成される。
【0176】
一方、エレクトロクロミック素子10における発色層15は、単層であり、エレクトロクロミック材料及び電解質を含む以外は、エレクトロクロミック素子20における発色層15と同様である。
【0177】
なお、エレクトロクロミック素子10における発色層15は、酸化性エレクトロクロミック材料及び/又は還元性エレクトロクロミック材料を含む。
【0178】
(他の部材)
エレクトロクロミック素子10、20は、他の部材をさらに有していてもよい。
【0179】
他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、絶縁性多孔質層、封止材等が挙げられる。
【0180】
-絶縁性多孔質層-
絶縁性多孔質層は、第一透明電極13と第二透明電極14が、電気的に絶縁されるように隔離すると共に、電解質を保持する機能を有する。
【0181】
絶縁性多孔質層の平均厚さは、0.5μm以上3μm以下であることが好ましい。
【0182】
絶縁性多孔質層を構成する材料としては、透明で多孔質であれば、特に限定されるものではないが、絶縁性及び耐久性が高く、成膜性に優れた有機材料や無機材料、及びそれらの複合体を用いることが好ましい。
【0183】
絶縁性多孔質層は、酸化性エレクトロクロミック層21と還元性エレクトロクロミック層22の間に設けることが好ましい。
【0184】
絶縁性多孔質層の形成方法としては、焼結法、抽出法等を用いることができる。
【0185】
焼結法は、高分子粒子や無機粒子を、バインダに添加して部分的に融着させることで、粒子間に細孔を形成する。
【0186】
抽出法は、溶媒に可溶な物質と、溶媒に溶解しないバインダで構成される層を形成した後、溶媒で物質を溶解させることで、細孔を形成する。
【0187】
絶縁性多孔質層の形成方法として、加熱、脱気等により、高分子を発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成する放射線照射法等を用いてもよい。
【0188】
絶縁性多孔質層の具体例としては、金属酸化物粒子(例えば、SiO2粒子、Al2O3粒子)と、バインダを含む膜、多孔性有機膜(例えば、多孔性ポリウレタン膜、多孔性ポリエチレン膜)、多孔質状に形成されている無機絶縁膜等が挙げられる。これらの中でも、絶縁性に優れていること、屈折率が比較的低いこと、安価であることから、SiO2粒子と、バインダを含む膜を好適に用いることができる。
【0189】
絶縁性多孔質層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。また、絶縁性多孔質層を構成する材料を塗布することが可能である場合、絶縁性多孔質層の形成方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
【0190】
(封止材)
エレクトロクロミック素子10、20において、各層の側面を封止する封止材を設けることが好ましい。これにより、電解質の漏洩を防いだり、大気中の水分、酸素等のエレクトロクロミック素子10、20が安定的に動作するために不要な物質の侵入を防いだりすることができる。
【0191】
封止材を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂を用いることができる。
【0192】
封止材を構成する材料の具体例としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0193】
(エレクトロクロミック素子の用途)
次に、エレクトロクロミック素子20の用途について、説明する。
【0194】
エレクトロクロミック素子20は、レンズユニットに適用することができる。
【0195】
レンズユニットは、撮像装置に適用することができるが、第一基板11の第二基板12と対向しない側の表面と、第二基板12の第一基板11と対向しない側の表面とが凸面となるレンズ形状を有することが好ましい。
【0196】
撮像装置は、携帯端末、デジタルカメラ、自動車等の移動体に実装することができる。
【0197】
また、エレクトロクロミック素子20は、調光窓、調光メガネ等に適用することができる。
【0198】
【0199】
従来の調光窓は、均一発色を実現するが、調光窓30は、エレクトロクロミック素子20を有するため、グラデーション発色を実現することができる。これによって、調光窓30は、デザイン性を向上させることができる。ここで、エレクトロクロミック素子20は、第一基板の表面(又は第二基板の表面)に対して平行な方向に、酸化性エレクトロクロミック層、還元性エレクトロクロミック層に含まれるエレクトロクロミック材料(図中、黒色部)の一軸方向(図中、縦方向)に沿った濃度勾配が形成されている。
【0200】
ここで、第一基板11及び第二基板12を樹脂フィルムとすることにより、エレクトロクロミック素子20を調光フィルムとすることができる。
【0201】
図12に、第四の実施の形態に係る調光メガネを示す。
【0202】
従来の調光メガネは、均一発色を実現するが、調光メガネ40A、40Bは、エレクトロクロミック素子20を有するため、グラデーション発色を実現することができる。これによって、調光メガネ40は、デザイン性を向上させることができる。ここで、エレクトロクロミック素子20は、第一基板の表面(又は第二基板の表面)に対して平行な方向に、酸化性エレクトロクロミック層、還元性エレクトロクロミック層に含まれるエレクトロクロミック材料(図中、黒色部)の一軸方向に沿った濃度勾配が形成されている。なお、調光メガネ40A、40Bにおいて、一軸方向は、それぞれ、図中、縦方向、横方向である。
【0203】
以上、エレクトロクロミック素子20の用途を説明したが、エレクトロクロミック素子10の用途も同様である。
【実施例】
【0204】
次に、実施例を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、部は、質量部を意味する。
【0205】
[実施例1]
(第一基板の準備)
第一基板11としての、ガラス基板上に、第一透明電極13としての、厚さ約100nmのITO膜が形成されているITOガラス基板(40mm×40mm×0.7mm)を準備した。
【0206】
(酸化性エレクトロクロミック層の形成)
ポリエチレングリコールジアクリレートPEG400DA(日本化薬社製)と、光重合開始剤IRGACURE184(BASF社製)と、化学式
【0207】
【化9】
で表される酸化性エレクトロクロミック材料と、2-ブタノンを、質量比57:3:140:800で混合し、塗布液を調製した。
【0208】
スピンコート法により、ITOガラス基板のITO膜上に塗布液を塗布した。次に、窒素雰囲気下で、所定のCrのパターンが形成されている石英基板を介して、UVを照射して、塗布膜を硬化させ、酸化性エレクトロクロミック材料の濃度勾配(
図3参照)が形成されている、厚さ1.1μmの酸化性エレクトロクロミック層21を第一透明電極13上に形成した。
【0209】
なお、酸化性エレクトロクロミック材料の濃度勾配を形成する際には、面積階調方式を採用した。
【0210】
(第二基板の準備)
第二基板12としての、ガラス基板上に、第二透明電極14としての、厚さ約100nmのITO膜が形成されているITOガラス基板(40mm×40mm×0.7mm)を準備した。
【0211】
(還元性エレクトロクロミック層の形成)
酸化チタンST-21(石原産業社製)3g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(和光純薬社製)0.3g、水5.5g、エタノール1.0gを、12時間ビーズミル処理した後、ポリエチレングリコール#20,000(ナカライテスク社製)1.2gを加えて、ペーストを作製した。
スクリーン印刷法により、ITOガラス基板のITO膜上に、厚さ2μmになるように、ペーストを塗布し、室温で乾燥させた後、空気中、250℃で30分間焼成して、酸化チタン粒子を焼結した。
【0212】
なお、スクリーン印刷法で用いる印刷版には、酸化性エレクトロクロミック層21と同様のパターンが形成されている。
【0213】
スピンコート法により、酸化チタン粒子上に、化学式
【0214】
【化10】
で表される還元性エレクトロクロミック材料の1質量%2,2,3,3-テトラフロロプロパノール(以下、TFPと略記する)溶液を塗布した後、120℃で10分間アニール処理し、還元性エレクトロクロミック層22を第二透明電極14上に形成した。
【0215】
(電解質層の形成)
IRGACURE184(BASFジャパン社製)5部、PEG400DA(日本化薬社製)100部、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(メルク社製)50部を混合した後、樹脂ビーズスペーサーとしての、体積平均粒径30μmのミクロパールGS-230(積水化学工業社製)0.2部を加えて分散させ、電解質層用組成物を調製した。
【0216】
第一基板11に形成した酸化性エレクトロクロミック層21上に、電解質層用組成物50μLを給液した後、第二基板12に形成した還元性エレクトロクロミック層22が対向するように、貼り合わせた。このとき、駆動のためのコンタクト部を確保するために、第一基板11と第二基板12の端部を5mmずらした。次に、UV照射装置SPOT CURE(ウシオ電機社製)を用いて、10mW/cm2の条件で、波長250nmのUVを60秒間照射して、電解質組成物を硬化させ、エレクトロクロミック素子20を作製した。
【0217】
なお、アルゴン置換されているグローブボックス中で、電解質層23を形成した。
【0218】
(光学特性の評価)
二次元色彩輝度計CA-2000(コニカミノルタ社製)を用いて、エレクトロクロミック素子20の白色光源に対する透過光を撮影し、光学特性を評価した。具体的には、エレクトロクロミック素子20の第一透明電極13と第二透明電極14の間に1.5Vの電圧を約30秒間印加し、発色層15を発色させ、輝度の分布を測定した。
【0219】
図13に、実施例1のエレクトロクロミック素子のエレクトロクロミック材料の濃度勾配が形成されている領域の光学特性の評価結果を示す。なお、横軸は、
図3中、A-A'方向の位置を相対的に表している。
【0220】
図13から、実施例1のエレクトロクロミック素子のエレクトロクロミック材料の濃度勾配が形成されている領域は、
図3中、A-A'方向の一端から他端に向かって、一様に輝度が変化することがわかる。なお、実施例1のエレクトロクロミック素子の白色光の透過率は、約8%~約80%であった。
【0221】
また、実施例1のエレクトロクロミック素子の第一透明電極と第二透明電極の間を外部回路を通して短絡すると、発色層は速やかに消色した。このとき、実施例1のエレクトロクロミック素子の白色光の透過率は、均一であり、約80%であった。
【0222】
[比較例1]
酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22に、エレクトロクロミック材料の濃度勾配を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック素子を作製し、光学特性を評価した。
【0223】
図14に、比較例1のエレクトロクロミック素子のエレクトロクロミック材料の光学特性の評価結果を示す。
【0224】
図14から、比較例1のエレクトロクロミック素子は、輝度が均一であることがわかる。なお、比較例1のエレクトロクロミック素子の白色光の透過率は、均一であり、約8%であった。
【0225】
また、エレクトロクロミック素子の第一透明電極と第二透明電極の間を外部回路を通して短絡すると、発色層は速やかに消色した。このとき、比較例1のエレクトロクロミック素子の白色光の透過率は、均一であり、約80%であった。
【0226】
[実施例2]
酸化性エレクトロクロミック層21、還元性エレクトロクロミック層22に、
図5に示す濃度勾配を形成した以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミック素子を作製し、光学特性を評価した。
【0227】
図15に、実施例2のエレクトロクロミック素子の光学特性の評価結果を示す。
【0228】
図15から、実施例2のエレクトロクロミック素子は、
図5中、A-A'方向の中心の輝度が最も高く、両端に向かって、一様に輝度が低下することがわかる。なお、実施例2のエレクトロクロミック素子の白色光の透過率は、中心で約80%であり、両端で約8%であった。
【0229】
また、実施例2のエレクトロクロミック素子の第一透明電極と第二透明電極の間を外部回路を通して短絡すると、発色層は速やかに消色した。このとき、実施例2のエレクトロクロミック素子の白色光の透過率は、均一であり、約80%であった。
【0230】
[実施例3]
第一基板11及び第二基板12として、平凸レンズを用いた以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミックレンズを作製した。このとき、一方の平凸レンズの平面側に、第一透明電極、酸化性エレクトロクロミック層を形成し、他方の平凸レンズの平面側に、第二透明電極、還元性エレクトロクロミック層を形成した。
【0231】
(光学特性の評価)
エレクトロクロミックレンズの外観を目視で確認し、光学特性を評価した。具体的には、エレクトロクロミックレンズの第一透明電極と第二透明電極の間に1.5Vの電圧を約30秒間印加し、発色層を発色させた。その結果、エレクトロクロミックレンズのエレクトロクロミック材料の濃度勾配が形成されている領域では、一端から中心に向かって光透過率が一様に変化している様子を確認した。
【0232】
[実施例4]
実施例1のエレクトロクロミック素子を、電池、信号発生回路、駆動スイッチ、配線を具備した駆動フレームに実装し、調光メガネを作製した。
【0233】
(光学特性の評価)
調光メガネの外観を目視で確認し、光学特性を評価した。具体的には、調光メガネの駆動スイッチを押して、第一透明電極と第二透明電極の間に1.5Vの電圧を約30秒間印加し、発色層を発色させた。その結果、調光メガネのエレクトロクロミック材料の濃度勾配が形成されている領域では、一端から中心に向かって光透過率が一様に変化している様子を確認した。
【符号の説明】
【0234】
10、20 エレクトロクロミック素子
11 第一基板
12 第二基板
13 第一透明電極
14 第二透明電極
15 発色層
21 酸化性エレクトロクロミック層
22 還元性エレクトロクロミック層
23 電解質層
30 調光窓
40 調光メガネ
E エレクトロクロミック材料
【先行技術文献】
【特許文献】
【0235】
【文献】国際公開第2015/187226号
【文献】国際公開第2010/065713号
【文献】特開平6-300992号公報