(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220412BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/14
(21)【出願番号】P 2018026078
(22)【出願日】2018-02-16
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 則康
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-016240(JP,A)
【文献】特開2001-105574(JP,A)
【文献】特開2004-284275(JP,A)
【文献】特開2009-090674(JP,A)
【文献】特開2007-307762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル孔から液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、
前記複数のノズル孔が形成されたノズルプレートと、
積層された複数のプレートからなり、前記ノズルプレートと接合して液室を形成する液室形成部材と、
前記ノズルプレートおよび/または前記液室形成部材を覆う保護部材と、を備え、
前記液室形成部材は、
前記複数のプレートのうち少なくとも一つのプレートに、前記保護部材と嵌め合わせる係合部が形成さ
れ、
前記保護部材は、前記係合部と嵌め合せ可能であり、
前記複数のプレートが積層された方向を積層方向とすると、前記係合部が形成され
た一つのプレート
の前記積層方向の厚さは、前記係合部の前記積層方向の
厚さ以下であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記係合部は、前記保護部材に向かって突出した突部であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記係合部は、前記保護部材に離れる方向に凹んだ凹部であることを特徴とする請求項
1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数のプレートが、拡散接合により接合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記液室形成部材は、個別液室に吐出液を供給する共通流路を形成し、
前記係合部が形成された少なくとも一つのプレートは、前記共通流路の一部分を形成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記係合部が形成された少なくとも一つのプレートが、エッチング工法にて形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えた液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の液体を吐出する装置(液体吐出装置、液滴吐出装置とも称する)では、液体吐出ヘッドを覆う保護部材が使用されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、保護部材を固定する突起を液体吐出ヘッドに形成する場合には、突起形成のために液体吐出ヘッドの大部分を加工する必要が生じ、部品コストが増大するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、部品コストを増大させることなく、液体吐出ヘッドに保護部材を取り付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の液体吐出ヘッドは、複数のノズル孔から液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、前記複数のノズル孔が形成されたノズルプレートと、積層された複数のプレートからなり、前記ノズルプレートと接合して液室を形成する液室形成部材と、前記ノズルプレートおよび/または前記液室形成部材を覆う保護部材と、を備え、前記液室形成部材は、前記複数のプレートのうち少なくとも一つのプレートに、前記保護部材と嵌め合わせる係合部が形成され、前記保護部材は、前記係合部と嵌め合せ可能であり、前記複数のプレートが積層された方向を積層方向とすると、前記係合部が形成された一つのプレートの前記積層方向の厚さは、前記係合部の前記積層方向の厚さ以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、部品コストを増大させることなく、液体吐出ヘッドに保護部材を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態にかかる液体吐出ヘッドの一例について、ヘッド本体とヘッドケーブル部とが分離した状態を示す模式図である。
【
図2】一実施形態の液体吐出ヘッドを構成するヘッド本体の一例を示した模式図であり、(A)は側面図、(B)は本体正面図、(C)は内部の概略構成を示す断面図である。
【
図3】液室部を構成する流路ユニットとハウジングを分解して示す模式図である。
【
図4】ノズル面に装着する保護部材の一例を説明する図であり、(A)は、保護部材を装着した状態を示す図であり、(B)は、保護部材を取りつける前の状態を示す図である。
【
図5】従来の保持部材の側面に形成された突起形状を説明する部分拡大図である。
【
図6】一実施形態の液体吐出ヘッドの突起形状を説明する図であり、(A)は保持部材の側面に形成された突起形状を示す図であり、(B)は突起形状を拡大した図である。
【
図7】突起形状を形成した金属プレートの一例を示す図であり、(A)は、共通流路および突起形状が形成された一枚のプレートの一部分を示す図であり、(B)は、複数のプレートにより形成された共通流路および突起形状を説明する部分断面図である。
【
図8】液体吐出ユニットの一例を示す側面図である。
【
図9】液体吐出ユニットの一例を示す上面図である。
【
図10】液体吐出ユニットの一例を示す側面図である。
【
図11】液体を吐出する装置の一例を示す図であり、(A)は要部構成の概略を示す斜視図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る液体吐出ヘッドおよび液体を吐出する装置について、図面を参照して説明する。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略または簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0009】
〔液体吐出ヘッド〕
本願において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズル(ノズル孔とも称する)から液体を吐出・噴射する機能部品である。
吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0010】
液体を吐出するエネルギー発生源としては、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0011】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0012】
まず、一実施形態の液体吐出ヘッドの構成例を、
図1、2を参照して説明する。
図1は、一実施形態にかかる液体吐出ヘッドの一例について、ヘッド本体とヘッドケーブル部とが分離した状態を示す模式図である。
図2は、一実施形態の液体吐出ヘッドを構成するヘッド本体の一例を示した模式図であり、(A)は側面図、(B)は本体正面図、(C)は内部の概略構成を示す断面図である。
【0013】
一実施形態の液体吐出ヘッドは、ヘッド本体7とケーブル部8とを有する。
ヘッド本体7は、圧力発生素子10の駆動により圧力室の液体に圧力を加え、ノズルから液体を吐出する液室部11、圧力発生素子10の駆動制御を行う駆動制御部3、駆動制御部3に接している放熱部材1、および、カバー部材4を有する。
また、液体吐出ヘッドは、駆動制御部3に信号を伝達する配線部材が、放熱部材1を有するヘッド本体7から分離可能に設けられている。具体的には、
図1に示すように、上位装置伝達配線部材2bを有するケーブル部8が、ヘッド本体7から分離可能に設けられている。
【0014】
以下に各構成の詳細を説明する。
液室部11は、複数のノズル、圧力室、リストリクタの機能を有する部材を積層して構成した流路ユニットと、流路ユニットに接合し、液体吐出のための圧力を発生する圧力発生素子10と、圧力発生素子10を収納し、流路ユニットに積層されたハウジング12とで構成される。
配線部材として、コネクタ基盤5に接続し、コネクタ6を介して上位装置からの電気信号の伝達を行う折り曲げ可能な上位装置伝達配線部材2bと、上位装置伝達配線部材2bと圧力発生素子10の間を接続する中継配線部材2aとを有する。
駆動制御部3は、中継配線部材2aに実装されて上位装置からの電気信号に基づいて圧力発生素子10の駆動制御を行う。
カバー部材4は、中継配線部材2a及び駆動制御部3を収容して保護する。
【0015】
放熱部材(ヒートシンク)1は、駆動制御部3の発熱を外部に放散する。
図2の構成例では、放熱部材1は、カバー部材4の外側に配設され、外気と接する面を有する第一の放熱部材1aと、カバー部材4の内側に配設され、駆動制御部3と当接する端部を有する第二の放熱部材1bとからなり、第一の放熱部材1aと第二の放熱部材1bとが互いに接触してなる。放熱部材1は、
図2(A)及び(C)に示すように、対向する両側の面にそれぞれ設けられている。
【0016】
次に、
図2(B)に示す液室部11の構成例を、
図3を参照して説明する。
図3は、液室部11を構成する流路ユニットとハウジングを分解して示した模式図である。液室部11は、ハウジング12、フィルタプレート13、マニホールド14、振動板15、リストリクタプレート16、及びノズルプレート(オリフィスプレートとも称する)17から構成されている。流路ユニットは、フィルタプレート13からノズルプレート17までを積層して形成されている。
【0017】
振動板15は圧力発生素子10に接合されている。
SUSベースに接合された圧力発生素子10に電圧が印加されると、圧力発生素子10は歪み、振動板15を介してリストリクタプレート16で構成される個別液室を圧縮し、ノズルプレート17のノズル孔から液体(インク)が吐出される。このとき、駆動制御部3で熱が発生する。発生した熱は、駆動制御部3と接合されている放熱部材1によって外部に放出される。
【0018】
以上が一実施形態の液体吐出ヘッドの一例であり、液体吐出ヘッドは上述した構成に限られるものではなく、ヘッド本体を保護する保護部材が装着可能な構造であれば他の構成であってもよい。
次に、液体吐出ヘッドに装着する保護部材について、
図4から7を参照して説明する。
【0019】
以降の説明において、流路部材(具体的には、フィルタプレート13からリストリクタプレート16まで)を保持するフレーム(例えば、ハウジング12)を、保持部材(液室形成部材ともいう)として説明する。また、保持部材は、ノズルプレート17を保持する役割を有する。
液室部11は、ノズルプレート17、流路部材、および保持部材を少なくとも有する。
個別液室(個別流路、加圧液室、圧力室、または加圧室とも称する)は、液体を吐出する複数のノズル孔に連なって通じる個別の流路である。
共通液室(共通流路または内部流路とも称する)は、複数の個別液室につながり、各個別液室にインクを供給する流路である。例えば、数十個の個別液室が、1つの共通液室に接続されている。共通液室の一部分は、保持部材により形成される。
【0020】
図4は、ノズル面に装着する保護部材の一例を説明する図であり、(A)は、保護部材を装着した状態を示し、(B)は、保護部材を取りつける前の状態を示す。
図4では、従来の保持部材20を用いて表している。保護部材30は、ノズルプレート17のノズル面(ノズル孔が形成される面)の端部(エッジ部分)と保持部材20の一部分とを覆うように装着される。
図4に示すように、ノズルプレート17を保持する保持部材20は、側面に突起形状(凸部、凸形状、突起部、突起、とも称する)21が形成されている。ここで、保持部材20の側面は、ノズル面と略垂直な面であり、複数のプレートの積層方向に平行な面である。また、保持部材20は、複数の側面を有するが、側面の一部分は、保護部材30で覆われる。突起形状21は、保護部材30で覆われる面に形成されることになる。
【0021】
保護部材30は、ノズルプレート17と保持部材20との一部分を覆う部材であり、保持部材20に形成された突起形状21に嵌め合せて固定する穴31が形成されている。
保護部材30の該当部にある穴31と、保持部材20の突起形状21とを嵌合させることによってノズル面のエッジ部分を覆い清掃部材が当接したときにエッジで清掃部材が損傷したり、逆に清掃部材の当接によってノズルプレート17が剥がれたりすることを防止している。
【0022】
図5は、従来の保持部材の側面に形成された突起形状を説明する部分拡大図である。従来技術では、保持部材20は、ブロック形状の金属片を用いて形成される。そのため、保持部材20に保護部材を固定するための突起形状21を形成する場合には、ブロック形状の金属片に対して、切削加工を行い、突起形状21を残して除去加工することが行われていた。そのため、突起形状21を除く側面全体を切削加工する必要があり、部品コストが高くなるという問題があった。
【0023】
そこで、本発明の液体吐出ヘッドの一態様は、保護部材を取り付けるための係合部(例えば、突起形状、凹み)を形成する部分を外形形状として含んだ部材を積層させることによって形成する構成とする。例えば、外形に凸形状を備えた薄板の形成は、エッチング工法や型抜きにより簡便に形成することができる。これにより、加工コストを増加させることなく、保護部材の取付け用の係合部としての突起形状を形成することが可能となる。加えて、保持部材の内部の流路も同時に形成することが可能である。以下に詳細を説明する。
【0024】
一実施形態の液体ヘッドにおいて、保持部材は、複数のプレート(例えば、金属プレート)を積層した構造を有し、複数のプレートのうち一つ以上のプレートは、保護部材と嵌め合せる突起形状となる凸部(突起部)が加工された外形形状を有する。
図6は、一実施形態の液体吐出ヘッドの突起形状を説明する図であり、(A)は保持部材の側面に形成された突起形状を示す図であり、(B)は突起形状を拡大した図である。
図6では、液室部11aの保持部材40が有する複数のプレートのうち、二枚のプレートによって突起形状41が形成される例を示している。
【0025】
図6(A)に示すように、保持部材40は、複数のプレートのうち、少なくとも一部を突起形状41の長さ(積層方向の幅)に対してこれと同等の厚さもしくはこれよりも薄いプレート部材の積層により形成する。また突起形状41は、プレート部材の外形形状として加工される。
図6(B)では、凸部が形成されたプレート部材としてプレート42-1、42-2の一部分を示す。プレート42-1、42-2は、突起形状41を形成する凸部421-1、421-2が、端部に外形形状として加工された例を示している。
このように保持部材を形成することにより、後から保持部材の側面の形状を加工する必要がなくなり、低コストで突起形状を形成することが可能となる。
【0026】
接合前のプレートの加工は、エッチング加工で行われ、エッチングの版によって所望の形状を形成する。このため、プレートの外形部分に微細な突起形状があっても加工コストの変動はなく、突起の有無に関わらず安価に所望の形状を形成することができる。また、保持部材40は、薄いプレートを重ね合わせて形成するため、複数のプレートを重ねる重ね方向(複数のプレートを積層する積層方向)における突起形状の位置は、プレートの厚さ(プレートの積層方向の幅)単位で容易にかつ精度よく形成することができる。このため、保護部材を取り付けるための突起形状を、加工コストを増やすことなく精度良く形成することができる。
【0027】
また、ノズル面を保持する保持部材もしくはその一部を外形に突起形状をもつ金属薄板を接合した部材により形成する構成とすることにより、凸形状を形成するための後加工をなくし、安価に構成することができる。
【0028】
上述したように、一実施形態の液体吐出ヘッドは、液滴を吐出する複数のノズルおよびノズル面を保護するための保護部材を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、ノズル面を保護するための保護部材を固定するための突起形状を、ノズル面に略垂直な側面(保護部材に覆われる面であって、ノズル面ではない面)に備える。また、ノズル面に垂直な方向に薄板(厚さの薄いプレート)を積層した構成であり、上述した突起形状は、薄板の外形形状にて形成され、突起形状のない薄板と積層することによって形成されていることを特徴とする。
【0029】
例えば、保持部材は、ノズル面を保護するための保護部材を固定するための突起形状をノズル面に垂直な側面に備え、これらの凸形状が、ノズル面に垂直な方向に積層された薄板によって形成されている。保持部材は、外形に凸部を持つ薄板と持たない薄板とを積層することによって突起形状を形成している。
【0030】
複数のプレートの接合方法としては、接着剤による接合も可能であるが、拡散接合工法を使用することが好ましい。拡散接合工法は、薄いプレートを複数枚重ねて、一括で接合する(複数枚の板を一度に接合する)ことができるため、接着剤を付与することなく、接合することにより加工コストの低減が可能になる。また、金属片から切削により形状を形成するよりもコストを抑えることが可能である。
【0031】
図7は、突起形状を形成した金属プレートの一例を示す図であり、(A)は、共通流路および突起形状が形成された一枚のプレートの一部分を示す図であり、(B)は、複数のプレートにより形成された共通流路および突起形状を説明する部分断面図であり、(A)に示すVIIB-VIIB線に沿った断面の一部分を示している。
図7では、金属プレートとして、
図6(B)に示す突起形状が形成されたプレート42-1、42-2と、突起形状が形成されていないプレート44-1から44-5を用いた加工例を示す。
図7(A)に示すように、プレート42-1は、端部に突起形状41用の凸部421-1が形成され、内部に共通流路43を形成する空間(孔、穴)422-1、アクチュエータを通す穴である貫通部45を形成する空間(孔、穴)423-1が形成されている。
【0032】
図7(B)では、プレート42-1、42-2およびプレート44-1から44-5により共通流路43の一部分を形成する保持部材の一例を示す。プレート42-2は、プレート42-1と同様に、凸部421-2および共通流路43および貫通部45を形成する空間が加工された形状である。
【0033】
プレート44-1から44-5は、外形形状に凸部が加工されていないプレートであり、プレート42-1の空間423-1と同様の、貫通部45を形成する空間が加工されている。
プレート44-1、44-2は、共通流路43を形成する空間が加工されていない形状である。プレート44-3から44-5は、プレート42-1の空間422-1と同様の、共通流路43を形成する空間が加工されている形状である。
図7(B)に示すように、プレート42-1、42-2、およびプレート44-3から44-5の複数のプレートは、各プレートが積層されることにより、各プレートに加工された空間がつながった共通流路43およびアクチュエータを通す貫通部45が形成される。また、二枚のプレート42-1、42-2には、端部に突起形状用の凸部421-1、421-2が加工され、プレート42-1、42-2が接合されることにより凸部421-1、421-2が接合されて突起形状41を形成する。
図7の例では、流路部材、ノズルプレート17は、プレート44-5に積層される。
【0034】
ノズル面の保護部材を保持する保持部材は、内部に、吐出液体を、吐出ノズルに連通した圧力発生部に供給する供給流路を備えている。保持部材には、ノズル面に垂直な方向において、突起形成部分と重なる位置(ノズル面からの突起形状が形成される部分までの間)に空間が形成されることになる。
従来の切削工法による製作においては、内部に流路を形成し、外周側面に凸形状を形成していた。
複数のプレートの接合後に内部の流路を加工することは、余分な加工時間を要することになる。そのため、内部の流路を外形に凸形状を形成する金属プレート内に同時に形成し(
図7(A))、複数の金属プレートを接合し、必要な流路を形成できるようにすることで、より部品加工コストを低減可能になる。
【0035】
金属プレートの外形はプレス、エッチングなどの工法があるが、いずれも型やマスクにより、形成するため、突起形状の有無は部品コストに影響しない。突起形状の形成と同時に内部に流路を形成する場合など、エッチング工法により精度よく複雑な形状を形成することができるため、エッチング工法であることが望ましい。
内部に流路がある場合、プレートを接合接着剤方式で接合すると、接着剤と液体の特性などにより、接液特性などを考慮しないと、内部に液体の漏れにつながる可能性が大きい。一方、拡散接合工法においては、接合部はプレートの素材のみで形成されるため接合部での内部の液体の漏れ発生のロバスト性を向上させることができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、保持部材は、突起形状(保護部材に向かって突出した突部)により保護部材と嵌め合わせる態様を説明したが、これに限られるものではない。例えば、保持部材は、保護部材と嵌め合わせる係合部として、保護部材に離れる方向に凹んだ凹部が形成されてもよく、保護部材は、係合部と嵌め合せ可能であればよい。
【0037】
〔液体吐出ユニット〕
一実施形態の液体吐出ユニットは、上述した液体吐出ヘッドを用いて構成することが可能である。
図8、
図9及び
図10に、一実施形態の液体吐出ヘッドをインクジェットヘッドとして搭載した液体吐出ユニットの一例を示す。
【0038】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに他の機能部品、機構が一体化したものであり、液体を吐出する機能に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0039】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0040】
例えば、液体吐出ユニット440として、
図8に示すように液体吐出ヘッド404とヘッドタンク441が一体化されているものがある。
図8に示す液体吐出ユニット440はキャリッジ403に搭載されている。キャリッジ403は、主走査移動機構を構成するガイド部材401により保持され、主走査方向に往復移動する。
図8には、後述する液体を吐出する装置を構成している部材のうち、被記録媒体(例えば、用紙等)を搬送するための手段である搬送ベルト412を示している。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。
【0041】
また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0042】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0043】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッド404を主走査移動機構の一部を構成するガイド部材401に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッド404と主走査移動機構493が一体化されているものがある。また、
図9に示すように、液体吐出ヘッド404とキャリッジ403と主走査移動機構493が一体化されているものがある。
図9に示す液体吐出ユニット440は、後述する液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。図中矢印D1は主走査方向を示す。
【0044】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0045】
また、液体吐出ユニットとして、
図10に示すように流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404にチューブ456が接続されて、液体吐出ヘッド404と供給機構が一体化されているものがある。このチューブ456を介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッド404に供給される。
流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0046】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0047】
〔液体を吐出する装置〕
一実施形態の液体を吐出する装置は、上述の液体吐出ヘッドを備えている。
なお、本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0048】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0049】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0050】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0051】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0052】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0053】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0054】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0055】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0056】
図11に、本発明の液体吐出ヘッドをインクジェットヘッドとして搭載した液体を吐出する装置であるインクジェット画像形成装置の一例を示す。
図11(A)は要部構成の概略を示す斜視図、(B)は側面図である。
【0057】
このインクジェット画像形成装置301は、装置本体の内部に、主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される液体吐出ユニットが印字機構部302に収納されている。装置本体の下方部には前方側から多数枚の記録紙303を積載可能な給紙カセット(給紙トレイ)304を抜き差し自在に装着することができ、また、記録紙303を手差しで給紙するための手差しトレイ305を開倒することができ、給紙カセット304或いは手差しトレイ305から給送される記録紙303を取り込み、印字機構部302によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ306に排紙する。
【0058】
印字機構部302は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド311と従ガイドロッド312とでキャリッジ313を主走査方向(紙面の垂直方向)に摺動自在に保持し、このキャリッジ313にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)の各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドからなる記録ヘッド314を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ313には記録ヘッド314に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ315を交換可能に装着している。
【0059】
インクカートリッジ315は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
【0060】
また、記録ヘッドとしてここでは各色の記録ヘッド314を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。さらに、記録ヘッド314として用いるインクジェットヘッドは、圧電素子などの電気機械変換素子で液室壁面を形成する振動板を介してインクを加圧するピエゾ型、或いは発熱抵抗体により気泡を生じさせてインクを加圧するバブル型、若しくはインク流路壁面を形成する振動板とこれに対向する電極との間の静電力で振動板を変位させてインクを加圧する静電型などを使用することができるが、本実施形態では静電型インクジェットヘッドを用いている。
【0061】
ここで、キャリッジ313は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド311に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向下流側)を従ガイドロッド312に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ313を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ317で回転駆動される駆動プーリ318と従動プーリ319との間にタイミングベルト320を張装し、このタイミングベルト320をキャリッジ313に固定しており、主走査モータ317の正逆回転によりキャリッジ313が往復駆動される。
【0062】
一方、給紙カセット304にセットした記録紙303を記録ヘッド314の下方側に搬送するために、給紙カセット304から記録紙303を分離給装する給紙ローラ321及びフリクションパッド322と、記録紙303を案内するガイド部材323と、給紙された記録紙303を反転させて搬送する搬送ローラ324と、この搬送ローラ324の周面に押し付けられる搬送コロ325及び搬送ローラ324からの記録紙303の送り出し角度を規定する先端コロ326とを設けている。搬送ローラ324は副走査モータ327によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0063】
そして、キャリッジ313の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ324から送り出された記録紙303を記録ヘッド314の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材329を設けている。この印写受け部材329の用紙搬送方向下流側には、記録紙303を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ331、拍車332を設け、さらに記録紙303を排紙トレイ306に送り出す排紙ローラ333及び拍車334と、排紙経路を形成するガイド部材335,336とを配設している。
【0064】
記録時には、キャリッジ313を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド314を駆動することにより、停止している記録紙303にインクを吐出して1行分を記録し、記録紙303を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、記録紙303の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ記録紙303を排紙する。
【0065】
また、キャリッジ313の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド314の吐出不良を回復するための回復装置337を配置している。回復装置はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ313は印字待機中にはこの回復装置337側に移動されてキャッピング手段で記録ヘッド314をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0066】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で記録ヘッド314の吐出口を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【符号の説明】
【0067】
11、11a 液室部
12 ハウジング
13 フィルタプレート
14 マニホールド
15 振動板
16 リストリクタプレート
17 ノズルプレート(オリフィスプレート)
20、40 保持部材
21、41 突起形状
30 保護部材
31 穴
42-1、42-2、44-1から44-5 プレート
41 突起形状
43 共通流路
45 貫通部
404 液体吐出ヘッド
421-1、421-2 凸部
422-1、423-1 空間
440 液体吐出ユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】